(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、あらゆる場所に存在するモノをインターネットに接続し、新たな利用方法を生み出すIoT(Internet of Things)が活発に議論・導入されている。IoTでは、モノをインターネットに接続するために、無線通信方式を利用することも多い。しかしながら、固定的に設置されるタイプのモノの場合、設置した当初に比べて周囲の環境が変動してしまうと、電波環境が悪化し、接続圏外になってしまう可能性がある。
【0003】
電波環境の変動に柔軟に対応するには、チェイス合成が有効である(例えば、非特許文献1参照)。チェイス合成とは、送信側が同じ信号を何度も再送し、受信側は再送された同一の信号群を適切に合成することで、受信信号エネルギーを高めて受信感度を向上する技術である。
【0004】
図11は、チェイス合成を実現するための無線通信装置の受信部の構成例を示す図である。なお、他の無線通信装置は、同じ信号を複数回送信しているものとする。受信アンテナは他の無線通信装置が送信した信号を受信する。無線部は、受信した信号に対して周波数変換を行い、ベースバンド信号を得る。時間区間蓄積部は、タイミング管理部の指示に基づき、周波数変換されたベースバンド信号から、他の無線通信装置が何度も送信した信号を1つずつ含む時間区間の信号それぞれを抜き出して保持する。時間区間合成部は、時間区間蓄積部に蓄積された各時間区間の信号をそれぞれ重み付けした上で合成し、信号電力を高める。合成のアルゴリズムには、例えば最小平均二乗誤差(Minimum Mean Square Error;MMSE)アルゴリズムなどがある。復調部は、合成された信号に対して復調処理を行い、復調情報を得る。
【0005】
無線通信システムにおける受信側の無線通信装置が
図11に示す受信部を備える場合、例えば、受信側の無線通信装置は受信した信号を正しく復調できたときにAckを送信側の無線通信装置に返送する。送信側の無線通信装置は、受信側の無線通信装置からのAckを受け取るまでは同じ信号を再送し続ける。これにより、電波環境が悪化し、接続が圏外になっても、受信側の無線通信装置は、再送された信号の電波を合成しつづけることで信号電力を高め、接続を回復することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図11に示す構成では、タイミング管理部において、どの無線通信装置から送信された信号がどのタイミングで到来するかが既知であることを前提としている。例えば、タイミング管理部は、予め何らかの方法で信号送信時刻のテーブルを取得し、そのテーブルに基づいて各無線通信装置の送信タイミングを得る。しかしながら、IoT向けに活発に利用されているアンライセンス帯では、様々な無線通信装置が自律分散的に信号を送信する。そのため、受信側の無線通信装置では、どの無線通信装置から送信された信号がどのタイミングで到来するかについては未知である。従来の構成では、既知のタイミング以外で信号が到来した場合、信号送信時刻のテーブルでは同期検出を行うことができないために、時間区間蓄積部に所望信号が含まれる時間区間の信号を適切に保持することができず、時間区間合成部は信号電力を高められないことがあった。そのため、接続圏外になった場合に受信可能な状態に回復することができないことがあった。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、悪い電波環境であっても信号送信タイミングが未知の通信先からの無線信号を正常に受信できる無線通信装置及び無線信号受信方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、プリアンブルが設定された信号を他の無線通信装置から無線により受信する受信部と、前記受信部が受信した前記信号に含まれるプリアンブルを用いて前記他の無線通信装置との同期を検出する同期検出部と、前記受信部が受信した前記信号から、前記同期検出部により同期が検出されたタイミングに基づいて抽出した信号を蓄積する信号蓄積部と、前記信号蓄積部に蓄積された前記信号をブラインドアダプティブアレーアンテナのアルゴリズムに従って合成する合成部と、前記合成部により合成された前記信号を復調する復調部と、を備える無線通信装置である。
【0010】
本発明の一態様は、上述の無線通信装置であって、前記合成部は、前記アルゴリズムとしてConstant Modulus Algorithm(CMA)アルゴリズムを用いる。
【0011】
本発明の一態様は、上述の無線通信装置であって、前記合成部は、前記信号蓄積部に蓄積された前記信号それぞれのウェイトを算出し、絶対値が大きい前記ウェイトから順に予め定めた個数の前記ウェイトを選択し、選択された前記ウェイトを対応する前記信号に適用して合成する。
【0012】
本発明の一態様は、上述の無線通信装置であって、前記合成部は、前記信号蓄積部に蓄積された前記信号それぞれのウェイトを算出し、絶対値が大きい前記ウェイトから順に予め定めた個数の前記ウェイトを選択し、選択された前記ウェイトに対応する前記信号それぞれのウェイトを再算出し、再算出された前記ウェイトを対応する前記信号に適用して合成する。
【0013】
本発明の一態様は、上述の無線通信装置であって、前記合成部は、前記信号蓄積部に蓄積された前記信号それぞれのウェイトを算出し、算出された前記ウェイトのうち絶対値が閾値を超えるウェイトを選択し、選択された前記ウェイトを対応する前記信号に適用して合成する。
【0014】
本発明の一態様は、上述の無線通信装置であって、前記合成部は、前記信号蓄積部に蓄積された前記信号それぞれのウェイトを算出し、算出された前記ウェイトのうち絶対値が閾値を超えるウェイトを選択し、選択された前記ウェイトに対応する前記信号それぞれのウェイトを再算出し、再算出された前記ウェイトを対応する前記信号に適用して合成する。
【0015】
本発明の一態様は、上述の無線通信装置であって、前記復調部により復調された情報を元に干渉信号のレプリカ信号を生成する干渉レプリカ信号生成部と、前記干渉レプリカ信号生成部が生成した前記レプリカ信号を前記信号蓄積部に蓄積された前記信号から減算する減算部とを備え、前記合成部は、前記減算部により前記レプリカ信号が減算された前記信号をブラインドアダプティブアレーアンテナのアルゴリズムに従って合成する。
【0016】
本発明の一態様は、プリアンブルが設定された信号を他の無線通信装置から無線により受信する受信ステップと、前記受信ステップにおいて受信した前記信号に含まれるプリアンブルを用いて前記他の無線通信装置との同期を検出する同期検出ステップと、前記受信ステップにおいて受信した前記信号から、前記同期検出ステップにおいて同期が検出されたタイミングに基づいて抽出した信号を蓄積する信号蓄積ステップと、前記信号蓄積ステップにおいて蓄積された前記信号をブラインドアダプティブアレーアンテナのアルゴリズムに従って合成する合成ステップと、前記合成ステップにおいて合成された前記信号を復調する復調ステップと、を有する無線信号受信方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、悪い電波環境であっても信号送信タイミングが未知の通信先からの無線信号を正常に受信可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0020】
[第一の実施形態]
図1は、第一の実施形態による無線通信装置1が備える受信部10の構成例を示す図である。同図に示す受信部10は、複数の無線通信装置が一つの定められたプリアンブルを含む信号を自律分散的に送信する環境において受信した信号をチェイス合成し、受信信号電力を向上させるための構成を有する。受信部10は、受信アンテナ11、無線部12、同期検出部13、時間区間蓄積部14、ブラインド時間区間合成部15及び復調部16を備える。同図に示す受信部10の構成が、
図11に示す従来技術の受信部の構成と異なる点は、タイミング管理部に代えて同期検出部13を備え、時間区間合成部に代えてブラインド時間区間合成部15を備える点である。
【0021】
受信アンテナ11は、他の無線通信装置が送信した信号を受信する。無線部12は、受信アンテナ11が受信した信号に周波数変換を行い、ベースバンド信号を得る。同期検出部13は、受信信号に含まれるプリアンブルを利用して、他の無線通信装置から送信された信号を検出する。時間区間蓄積部14は、同期検出部13における検出のタイミングに従って、周波数変換されたベースバンド信号から、所定の時間区間のベースバンド信号を抽出して蓄積する。抽出されたベースバンド信号を、時間区間信号と記載する。ブラインド時間区間合成部15は、時間区間蓄積部14に蓄積された各時間区間信号をそれぞれ重み付けした上で合成し、信号電力を高める。復調部16は、ブラインド時間区間合成部15が合成した信号に復調処理を行い、復調情報を得る。
【0022】
図2は、
図1に示す無線通信装置1が備える受信部10の処理の一例を示すフロー図である。
図1に示す受信部10を備えた無線通信装置が属する無線通信システムにおいて、複数の無線通信装置は、自律分散的に通信を行い、かつ全ての無線通信装置が一つの定められたプリアンブルを利用しうる。このような無線通信規格として、例えば、IEEE802.15.4gがある(例えば、参考文献1参照)。
【0023】
(参考文献1)IEEE Std 802.15.4g,"Part 15.4: Low-Rate Wireless Personal Area Networks (LR-WPANs) Amendment 3: Physical Layer (PHY) Specifications for Low-Data-Rate, Wireless, Smart Metering Utility Networks",2012年4月
【0024】
無線部12は、受信アンテナ11が他の無線通信装置から受信した無線信号の周波数変換を行い、ベースバンド信号を得る(ステップS1)。同期検出部13は、受信ベースバンド信号と既知のプリアンブルと間の相関値を算出する。同期検出部13は、算出した相関値が閾値を超えた場合に同期検出したと判断し、その同期検出のタイミングを切り出して時間区間蓄積部14に通知する(ステップS2)。いつどの無線通信装置が信号を送信するか全く未知の状況であるため、同期検出部13は、この同期検出を、信号受信時に毎回行う。
【0025】
時間区間蓄積部14は、同期検出部13から通知された同期検出のタイミング(時刻)から予め定めた時間区間分のベースバンド信号を切り取って時間区間信号を抽出する。時間区間蓄積部14は、抽出した時間区間信号を蓄積する(ステップS3)。時間区間の長さ又は時間区間信号の長さは、本実施形態が用いられる無線通信システムにおける送信信号の時間的な長さに基づいて決定すれば良い。
【0026】
ブラインド時間区間合成部15は、時間区間蓄積部14に蓄積された時間区間信号群に対して、ブラインドアダプティブアレーアンテナのアルゴリズムを適用し、合成する(ステップS4)。例えば、ブラインドアダプティブアレーアンテナのアルゴリズムとして、Constant Modulus Algorithm(CMA)アルゴリズムを用いることができる。CMAは、複数のアレー素子の出力に対して、合成結果の振幅がなるべく一定になるように重み付け合成を行うアルゴリズムである。送信時の信号波形が一定振幅に近いもの、例えば、GFSK(Gaussian Frequency-Shift Keying)変調のような場合に有効である。また、ブラインドアダプティブアレーアンテナのアルゴリズムとして、CMA以外のアルゴリズムを用いることもできる。例として、PI(パワーインバージョン)法を初めとする既知のブラインドアダプティブアレーアンテナのアルゴリズムや、CMAやPIから派生したMulti-Target CMAなど(例えば、参考文献2参照)の技術が利用可能である。ブラインドアダプティブアレーアンテナのアルゴリズムを適用することで、時間区間蓄積部14に複数の無線通信装置の信号が蓄積されている場合でも、ある一つの無線通信装置の信号の電力だけが強められるように合成することができる。
【0027】
(参考文献2)Y. FUJINO,D. UCHIDA,T. FUJITA,O. KAGAMI and K. WATANABE,“A Subspace Estimation Method based on Eigenvalue Decomposition for Multi-Target Constant Modulus Algorithm”,in Proc. WCNC,2007年,p.1232-1236
【0028】
復調部16は、ブラインド時間区間合成部15が合成して得た信号に対して復調処理を行い、復調情報を得る(ステップS5)。復調部16が、復調すべき十分な数の無線通信装置の信号を復調していないと判断した場合(ステップS6:NO)、受信部10は、ステップS4に戻って処理を繰り返す。このとき、受信部10は、参考文献2にあるように、前回復調された無線通信装置の信号ではない無線通信装置の信号を取得するよう、前回と異なるウェイトを用いて信号合成する。
【0029】
復調部16は、復調すべき十分な数の無線通信装置の信号を復調したと判断した場合(ステップS6:YES)、処理を終了する。なお、例えば、事前に複数の無線通信装置間で認証プロセスを行っておき、通信しうる無線通信装置数の最大数を、復調すべき無線通信装置の十分な数としても良い。また、例えば、運用者が、本実施形態が適用される無線通信システムを構成する無線通信装置数を復調すべき無線通信装置の十分な数として予め設定しておいても良い。
【0030】
図3及び
図4を用いて、複数のアレー素子の出力にアダプティブアレーアンテナのアルゴリズムを適用する場合と、チェイス合成の合成対象となる時間区間に適用する場合の違いを説明する。
【0031】
図3は、複数のアレー素子の出力にアダプティブアレーアンテナのアルゴリズムを適用する場合を示す図である。同図では、無線通信装置A1と無線通信装置B1とが同時に無線信号を送信する。無線通信装置A1からの無線信号が所望波の場合、無線通信装置B1からの無線信号は干渉波である。また、無線通信装置B1からの無線信号が所望波の場合、無線通信装置A1からの無線信号は干渉波である。受信側の無線通信装置Cは、複数のアレー素子D1、D2を有している。複数のアレー素子D1、D2のいずれにも、同じ時刻に所望波と干渉波が到来する。ただし、各アレー素子の空間的な位置の違いにより、所望波と干渉波は、各アレー素子D1、D2それぞれの出力の中で異なる位相で重なり合っている。無線通信装置Cは、各アレー素子D1、D2の出力に適切に重み付けを行った上で合成する。すなわち、無線通信装置Cは、所望波に関しては各アレー素子の出力を同相合成し、干渉波に関しては各アレー素子の出力を逆相合成する。この合成により得られる出力は、所望波については信号電力が高められ、干渉波については信号電力が弱められた信号になり、受信感度の向上が期待できる。
【0032】
図4は、チェイス合成の合成対象となる時間区間にアダプティブアレーアンテナのアルゴリズムを適用する場合を示す図である。本実施形態では、
図3に示すアレー素子に代えて、時間区間が用いられる。無線通信装置1は、無線通信装置A2、B2が送信した無線信号を受信する。本実施形態では、複数の無線通信装置が自律分散的に動作する環境を前提としている。この環境では、
図3に示す場合と異なり、無線通信装置1の時間区間蓄積部14に蓄積された時間区間信号はいずれも所望波と干渉波の双方を含んでいるわけでなく、所望波のみを含む場合、干渉波のみを含む場合、所望波と干渉波の双方を含む場合など様々な場合が想定される。これらがいずれも含まれる場合であっても、所望波と干渉波が完全に重なる可能性は非常に低いため、ここでは異なる時間に受信したものとして考える。
【0033】
同期検出部13は、異なる時刻に到来する信号を同期検出し、各時間区間の信号をまとめて保持する。上述のように、各時間区間には基本的に1無線通信装置の信号のみが含まれる。ブラインド時間区間合成部15は、同一の無線通信装置の信号が含まれる時間区間は強め合うように信号を合成し、同一の無線通信装置の信号が含まれない時間区間は信号の重みを小さくすることで、ある無線通信装置の信号のみ取り出すことが可能となる。
【0034】
以上に述べた通り、複数のアレー素子の出力にアダプティブアレーアンテナのアルゴリズムを適用する場合と、蓄積された時間区間信号に適用する場合では、対象となる信号の特徴が異なる。そこで、本実施形態により信号電力が向上するかどうかを検証するための実験を行った。
【0035】
図5は、
図1に示す受信部10によりチェイス合成を実施したときの信号対雑音比(Signal to Noise ratio:SNR)とパケット誤り率(Packet Error Rate, PER)とを示す図である。同図では、無線通信装置1に対して、無線通信装置Aと無線通信装置Bとから交互に1パケットずつの無線信号が到来するとした。また、各無線通信装置A、Bが送信するパケットは不変とした。無線通信装置1は、同期検出部13により到来した順に信号を同期検出し、時間区間蓄積部14に蓄積した。そして、ブラインド時間区間合成部15は、蓄積された先頭の時間区間信号から予め定めた合成パケット数分をアダプティブアレーアンテナのアルゴリズムに従って合成した。すなわち、合成パケット数が3のときは、無線通信装置Aの信号2つと無線通信装置Bの信号1つを合成している。
【0036】
図5の横軸は合成前の1パケットのSNRであり、縦軸は無線通信装置AのPERである。同図に示すように、合成パケット数1の場合に比べて、合成パケット数2の場合のほうが、PERは増加している。これは、合成パケット数1の場合は無線通信装置Aのみの信号が存在しているのに対し、合成パケット数2の場合は無線通信装置Bの信号が干渉波として含まれるためである。理想的には、合成パケット数2の場合でも、無線通信装置Aのパケットの重みを1、無線通信装置Bのパケットの重みを0とすれば、合成パケット数1と同じ結果が得られる。しかしながら、干渉による重み算出誤差があるため、グラフに示される通り劣化している。
【0037】
合成パケット数を3に増やした場合、無線通信装置Aのパケットの電力が向上し、PERは減少する。合成パケット数を4に増やした場合、無線通信装置Bのパケットが干渉波として増えるためにPERは再び増加する。合成パケット数をさらに増やしていくと、PERは減少していく上に、干渉波が増加した場合でもその劣化量は小さくなっている。劣化量が小さくなるのは、信号電力が増加し、重み算出誤差が小さくなっていくためである。このように、
図5に示す実験結果から、本実施形態では複数のアレー素子ではなく蓄積された時間区間信号群を合成対象とするが、信号電力向上及び干渉電力低減の効果を得ることができていることが分かる。
【0038】
図6〜
図8は、
図1に示すブラインド時間区間合成部15の詳細な構成の例を示す図である。
図6に示すブラインド時間区間合成部15a、
図7に示すブラインド時間区間合成部15b、又は、
図8に示すブラインド時間区間合成部15cを、
図1に示すブラインド時間区間合成部15として用いることができる。
【0039】
図6は、ブラインド時間区間合成部15aの構成を示す図である。ブラインド時間区間合成部15aは、ウェイト算出部151及び重み付け合成部152を備える。ウェイト算出部151は、時間区間蓄積部14から入力した時間区間信号群を用いてウェイト算出を行い、各時間区間信号のウェイト(重み)を算出する。重み付け合成部152は、時間区間蓄積部14から入力した時間区間信号群と、ウェイト算出部151により算出されたウェイトを用いて各時間区間信号の重み付け合成を行い、結果を出力する。
【0040】
図7は、ブラインド時間区間合成部15bの構成を示す図である。ブラインド時間区間合成部15bは、ウェイト算出部153、ウェイト選択部154及び重み付け合成部155を備える。ウェイト算出部153は、
図6のウェイト算出部151と同様に各時間区間信号のウェイトを算出する。ウェイト選択部154は、ウェイト算出部153が算出したウェイトのうち一部のウェイトのみを選択する。重み付け合成部155は、時間区間蓄積部14から入力した時間区間信号群に、ウェイト選択部154が選択したウェイトを用いて重み付けを行って合成する。なお、ウェイト選択部154は、選択したウェイトについてはそのまま、選択しなかった残りのウェイトについは0(又は0に近い値)に書き換えて、重み付け合成部155に出力してもよい。重み付け合成部155は、ウェイト選択部154から受け取ったウェイトを用いて、各時間区間信号に重み付けを行い、合成する。
【0041】
複数のアレー素子を用いる場合と異なり、蓄積された時間区間信号を用いる場合は、所望波が全く含まれない時間区間信号が存在する可能性がある。ある基準に従って、所望波が含まれない可能性の高い時間区間信号を排除することで、信号電力向上効果のさらなる向上が期待できる。ウェイト選択部154が一部のウェイトを選択する基準として、ウェイト算出部153が算出したウェイトのうち、絶対値の大きいものから順に予め定められたウェイト数分を選択する方法がある。予め定めるウェイト数は、例えば本実施形態が用いられる無線通信システムにおける送信再送回数の上限値に定めても良い。また、一部のウェイトを選択する基準として、ウェイト算出部153が算出したウェイトのうち、絶対値が予め定めた閾値を超えるウェイトのみを選択する方法がある。予め定める閾値は、最も絶対値が大きいウェイトで全ウェイトを正規化している場合、0から1の間で定めれば良い。
【0042】
図8は、ブラインド時間区間合成部15cの構成を示す図である。ブラインド時間区間合成部15cは、ウェイト算出部156、ウェイト選択部157、ウェイト再算出部158及び重み付け合成部159を備える。ウェイト算出部156は、
図6のウェイト算出部151及び
図7のウェイト選択部154と同様に各時間区間信号のウェイトを算出する。ウェイト選択部157は、
図7のウェイト選択部154と同様に一部のウェイトを選択する。ウェイト再算出部158は、ウェイト選択部157がウェイトを選択した後、選択されたウェイトと紐づく時間区間信号だけを用いて、改めてウェイト算出を行う。重み付け合成部159は、入力された時間区間信号群に、ウェイト再算出部158が算出したウェイトを用いて重み付けを行って合成する。なお、ウェイト再算出部158は、ウェイト選択部157が選択しなかったウェイトについては再算出結果を0(又は0に近い値)として重み付け合成部159に出力してもよい。重み付け合成部159は、ウェイト再算出部158から受け取ったウェイトを用いて、各時間区間信号に重み付けを行い、合成する。
【0043】
ウェイト算出部156によるウェイト算出では、所望波が含まれない可能性の高い時間区間信号も考慮されるため、ウェイト算出誤差が大きくなる。従って、ウェイト選択部157において所望波を含む可能性の高い時間区間信号のみを選択した後、改めてウェイト再算出部158においてウェイト算出を行うことで、ウェイト算出誤差の小さいウェイトを得ることができる。ウェイト選択部157は、
図7のウェイト選択部154と同様に、一部のウェイトを選択する基準として、ウェイト算出部156が算出したウェイトのうち、絶対値が大きい順に予め定められたウェイト数分を選択する方法と、絶対値が予め定めた閾値を超えるウェイトを選択する方法がある。
【0044】
[第二の実施形態]
本実施形態の無線通信装置は、第一の無線通信装置の機能に加えて、干渉キャンセル機能を有する。
図9は、第二の実施形態による無線通信装置1aが備える受信部10aの構成例を示す図である。同図において、
図1に示す第一の実施形態による無線通信装置1と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図9に示す無線通信装置1aが、
図1に示す無線通信装置1と異なる点は、干渉レプリカ信号生成部21及び減算部22をさらに備える点である。
図5に示したように、干渉による重み算出誤差によって、PERは劣化する。そこで
図9に示す構成の受信部10aでは、干渉を低減するために、先に干渉波を送信する無線通信装置のパケットを復調する。干渉レプリカ信号生成部21は、復調部16による復調処理により得られた復調情報を利用して干渉レプリカ信号を生成する。減算部22は、生成された干渉レプリカ信号を、時間区間蓄積部14が蓄積した時間区間信号から減算し、ブラインド時間区間合成部15に出力する。
【0045】
図10は、
図9に示す無線通信装置1aが備える受信部10aの処理の一例を示すフロー図である。同図において、
図2に示す第一の実施形態のフロー図と同一の所定には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0046】
無線通信装置1aは、
図2に示す構成と同様に信号を復調する(ステップS1〜ステップS5)。すなわち、無線部12は、受信アンテナ11が受信した無線信号の周波数変換を行い、ベースバンド信号を得る。同期検出部13は、受信ベースバンド信号と既知のプリアンブルとの間の相関値を算出し、相関値が閾値を超えたときにその同期検出のタイミングを切り出す。時間区間蓄積部14は、同期検出部13から出力された同期検出のタイミングに従って、予め定めた時間区間分のベースバンド信号を分切り取った時間区間信号を蓄積する。ブラインド時間区間合成部15は、時間区間蓄積部14に蓄積された時間区間信号群に対して、ブラインドアダプティブアレーアンテナのアルゴリズムを適用し、合成する。復調部16は、ブラインド時間区間合成部15が合成して得た信号に対して復調処理を行い、復調情報を得る。
【0047】
復調部16が、復調すべき十分な数の無線通信装置の信号を復調していないと判断した場合(ステップS6:NO)、干渉レプリカ信号生成部21は、復調情報が示す復調された信号系列を再変調する(ステップS7)。さらに、干渉レプリカ信号生成部21は、再変調された信号を利用して、時間区間蓄積部14に蓄積された時間区間信号のチャネル推定を行う(ステップS8)。チャネル推定は、例えば、時間領域で相関演算を行うことで得ても良いし、周波数領域でZF(Zero Forcing)アルゴリズムやMMSEアルゴリズムを適用して得ても良い。干渉レプリカ信号生成部21は、各時間区間信号に対するチャネル推定結果を、再変調された信号に付与する。これにより、干渉レプリカ信号生成部21は、蓄積された各時間区間信号に対応する干渉レプリカ信号を生成することができる(ステップS9)。
【0048】
減算部22は、時間区間蓄積部14に蓄積された時間区間信号それぞれから、ステップS9においてその時間区間信号に対応して生成された干渉レプリカ信号を減算し、干渉を低減する(ステップS10)。時間区間蓄積部14は、干渉が低減された時間区間信号をブラインド時間区間合成部15に出力する。受信部10aは、ステップS4からの処理を行う。そして、復調部16が、復調すべき十分な数の無線通信装置の信号を復調したと判断した場合(ステップS6:NO)、処理を終了する。
【0049】
図9に示す構成の受信部10aを用いることによって、
図1に示す構成の受信部10よりもさらに誤り率を低減することができる。例えば、
図5に示すように合成パケット数を増やしたとき、干渉波を取り込むと誤り率が劣化してしまうが、
図9の構成の受信部10aを用いることにより、劣化量を低減できる。
【0050】
以上説明した実施形態によれば、無線通信装置は、受信ベースバンド信号と既知プリアンブル信号の相関値を算出し、算出した相関値が閾値を超えたタイミングを同期信号として切り出す。無線通信装置は、切り出した同期信号に従い時間区間を決定し、ブラインドアダプティブアレーアンテナのアルゴリズムを適用してチェイス合成を行う。これにより、無線通信装置は、他の無線通信装置からの送信信号がいずれのタイミングで到来するか未知の場合においても、チェイス合成を用い信号電力を高め、悪い電波環境においても正常に信号を受信することができる。従って、無線通信装置は、複数の端末が自律分散的に信号を送信する環境において、再送された信号を適切に合成し、受信信号電力を高めることで、電波環境の悪化による接続圏外から回復することが可能となる。
【0051】
上述した実施形態によれば、無線通信装置は、受信部と、同期検出部と、信号蓄積部と、合成部と、復調部とを有する。受信部は、プリアンブルが設定された信号を他の無線通信装置から無線により受信する。受信部は、例えば、受信アンテナ11及び無線部12である。同期検出部は、受信部が受信した信号に含まれるプリアンブルを用いて他の無線通信装置との同期を検出する。信号蓄積部は、受信部が受信した信号から、同期検出部により同期が検出されたタイミングに基づいて抽出した信号を蓄積する。信号蓄積部は、例えば、時間区間蓄積部14である。合成部は、信号蓄積部に蓄積された信号をブラインドアダプティブアレーアンテナのアルゴリズムに従って合成する。合成部は、例えば、ブラインド時間区間合成部15である。復調部は、合成部により合成された信号を復調する。
【0052】
合成部は、信号蓄積部に蓄積された信号それぞれのウェイトを算出し、絶対値が大きいウェイトから順に予め定めたウェイト数のウェイトを、又は、絶対値が閾値以上のウェイトを選択し、選択されたウェイトを対応する信号に適用して重み付けし、合成してもよい。あるいは、合成部は、信号蓄積部に蓄積された信号それぞれのウェイトを算出し、絶対値が大きいウェイトから順に予め定めた個数のウェイトを、又は、絶対値が閾値以上のウェイトを選択し、選択されたウェイトに対応する信号それぞれのウェイトを再算出し、再算出されたウェイトを対応する信号に適用して重み付けし、合成してもよい。
【0053】
また、無線通信装置は、干渉レプリカ信号生成部と、減算部をさらに備えてもよい。干渉レプリカ信号生成部は、復調部により復調された情報を元に干渉信号のレプリカ信号を生成する。減算部は、干渉レプリカ信号生成部が生成したレプリカ信号を信号蓄積部に蓄積された信号から減算する。合成部は、減算部によりレプリカ信号が減算された信号をブラインドアダプティブアレーアンテナのアルゴリズムに従って合成する。
【0054】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。