【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産業創造技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
松浦芳樹 ほか,マルチホップ双方向通信を考慮した無線アクセス優先制御方式,信学技報(IEICE Technical Report),日本,一般社団法人電子情報通信学会,2013年07月10日,vol.113, no.132, ASN2013-51,pp.23-28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
通信が開始される上りデータ通信の各通信経路のチャネル又は上記下りデータ通信の各通信経路のチャネルの順に、上記分割した各分割リソース単位を互いに重複することなく割り当て、
上記分割した全ての分割リソース単位に対して上記チャネルが割り当てた場合には、新たに通信が開始されるチャネルに対する上記分割リソース単位の割り当て動作を停止すること
を特徴とする請求項2記載の無線通信方法。
【背景技術】
【0002】
近年、ワイヤレスネットワークにおいて、小型で安価であり、かつ低出力のデジタル無線通信を行うことのできる、IEEE802.15.4の規格に準拠する通信デバイスが用いられている。IEEE802.15.4の規格に準拠するネットワークでは、
図9に示すように、収集制御局であるCS(Collection station)71と、1つ以上のノード72−1〜72−4とにより構成されたツリー型のトポロジが採用されている。 ツリー型トポロジでは、より下位のノード72が、より上位のノード72やCS71に向けて、必要に応じてデータを伝送することが行われている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
図10は、下位のノード72−3、72−4からのデータをCS71へ送信する場合におけるタイムチャートの例を示している。CS71並びに各ノード72は、それぞれ基本間隔(間欠待受周期)T内においてアクティブ期間(通信期間)T1と、スリープ期間T2とが割り当てられている。通信期間T1において無線通信を行うことが可能となり、スリープ期間T2においては受信側がスリープ状態に移行することで互いに無線通信を行うことができなくなる。あえて基本間隔T内においてスリープ期間T2を設けることにより消費電力を節減することができ、ひいてはシステム全体の使用電力を抑えること可能となる。
【0004】
ノード72−3からCS71に向けてデータを送信する場合には、ノード72−3からノード72−1を中継させてCS71の経路となる。かかる場合には、ノード72−3とこれよりも上位にあるノード72−1との間では、上位のノード72−1がマスター、下位のノード72−3がスレーブの関係となる。同様にノード72−1とCS71との間では、上位のノードとしてのCS71がマスター、下位のノード72−1がスレーブの関係となる。このようなマスターとスレーブとの関係においてより上位のマスターが基本間隔Tにおける通信期間T1のタイミングを決定し、より下位のスレーブがこのマスター側において決定された通信期間T1のタイミングに合わせてデータを送信することとなる。
【0005】
このような規則の下で、
図10において先ずノード72−3は、タイミングt91において生成したデータD81を、タイミングt92において開始するマスターとしてのノード72−1の通信期間T1に合わせて送信する。このデータD81を受信したノード72−1は、タイミングt93において開始するマスターとしてのCS71の通信期間T1に合わせて当該データD81を送信する。これによりCS71は、このデータD81を自ら設定した通信期間T1内において受信することが可能となる。
【0006】
同様に、ノード72−4からCS71に向けてデータを送信する場合には、ノード72−4からノード72−1を中継させてCS71の経路となる。ノード72−4は、タイミングt94において生成したデータD82を、タイミングt95において開始するマスターとしてのノード72−1の通信期間T1に合わせて送信する。このデータD82を受信したノード72−1は、タイミングt96において開始するマスターとしてのCS71の通信期間T1に合わせて当該データD82を送信する。これによりCS71は、このデータD82を自ら設定した通信期間T1内において受信することが可能となる。
【0007】
CS71は、上述した無線通信の処理動作方法に基づいて、ツリー型ネットワークにおける各ノード72からのデータを全て収集することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した従来のツリー型トポロジでは、ノード72がセンサ等のように各種データをセンシングし、これをCS71において収集する場合には、特に一刻一秒を争う緊急性の高いデータではない場合が殆どであるため、上述したようにより上位のノード72やCS71によって定義される周期的な待ち受け用の通信期間T1に合わせてデータを送信することで特段問題が生じることは無い。
【0010】
一方、ノード72が例えばアクチュエータとしての役割を担う場合、即ちバルブを停止させる制御を行ったり、ガス管を閉める制御を行うためのいわゆる制御系が加わるものである場合には、CS71からかかる制御系のノード72に対してこれを制御するための制御系データを下りデータ通信する場合がある。この制御系のデータD83は、時には緊急でバルブを停止したり、緊急でガス管を止める制御が求められる場合もあり、いわゆる緊急性を要するデータD83をノード72に送信しなければならない場合もある。
【0011】
即ち、ノード72からCS71への上りデータ通信、並びにCS71からノード72への下りデータ通信の双方向の通信が行われる上で、CS71によるデータ収集と制御は、そもそも期待される伝送品質が異なる。
【0012】
このような互いに期待される伝送品質が異なる上りデータ通信及び下りデータ通信において、ノード72を介した同一の通信経路を共用し、更には同一の周波数チャネルを共用するのが現状であった。
【0013】
しかしながら、上りデータ通信及び下りデータ通信において、互いに同一の通信経路や同一の周波数チャネルを共用する場合には、双方にそれぞれ求められる伝送品質に応じた最適な設計を行うのが難しいことに加え、通信するデータフレームが衝突する恐れがあった。
【0014】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおいて、上りデータ通信及び下りデータ通信のデータ衝突を防止すると共に、それぞれ期待される通信品質に応じて自立的なチャネル割り当てや通信経路割り当てを可能とした無線通信方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上述した問題点を解決するために、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行う際に、周波数又は通信時間からなる通信リソースを予め複数に分割した各分割リソース単位とした上で、これを上記ノードから上記収集制御局への上りデータ通信のチャネル及び上記収集制御局から上記ノードへの下りデータ通信のチャネルに対して、互いに重複することなく割り当て
、より上位のノードにより指定された周期的な待ち受け用の通信期間に合わせてノード間のデータの送受信を行い、少なくとも一のノードを被制御端末として予め割り当てると共に、上記収集制御局及び上記被制御端末並びにこれらの経路上に配置された全てのノードを制御支援端末として特定し、上記収集制御局から上記被制御端末への少なくとも下りデータ通信については、上記制御支援端末における上記通信期間の時間割合を増大させるように制御する無線通信方法及びシステムを発明した。
【0016】
第1発明に係る無線通信方法は、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおける無線通信方法において、周波数又は通信時間からなる通信リソースを予め複数に分割した各分割リソース単位とした上で、これを上記ノードから上記収集制御局への上りデータ通信のチャネル及び上記収集制御局から上記ノードへの下りデータ通信のチャネルに対して、互いに重複することなく割り当て
、より上位のノードにより指定された周期的な待ち受け用の通信期間に合わせてノード間のデータの送受信を行い、少なくとも一のノードを被制御端末として予め割り当てると共に、上記収集制御局及び上記被制御端末並びにこれらの経路上に配置された全てのノードを制御支援端末として特定し、上記収集制御局から上記被制御端末への少なくとも下りデータ通信については、上記制御支援端末における上記通信期間の時間割合を増大させるように制御することを特徴とする。
【0017】
第2発明に係る無線通信方法は、第1発明において、上記上りデータ通信に割り当てられた各分割リソース単位には、当該上りデータ通信の各通信経路のチャネルを互いに重複することなく割り当て、上記下りデータ通信に割り当てられた各分割リソース単位には、当該下りデータ通信の各通信経路のチャネルを互いに重複することなく割り当てることを特徴とする。
【0018】
第3発明に係る無線通信方法は、第2発明において、通信が開始される上りデータ通信の各通信経路のチャネル又は上記下りデータ通信の各通信経路のチャネルの順に、上記分割した各分割リソース単位を互いに重複することなく割り当て、上記分割した全ての分割リソース単位に対して上記チャネルが割り当てた場合には、新たに通信が開始されるチャネルに対する上記分割リソース単位の割り当て動作を停止することを特徴とする。
【0021】
第
4発明に係る無線通信システムは、収集制御局を根とした2以上のノードが配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型の無線通信システムにおいて、周波数又は通信時間からなる通信リソースを予め複数に分割した各分割リソース単位とした上で、これを上記ノードから上記収集制御局への上りデータ通信のチャネル及び上記収集制御局から上記ノードへの下りデータ通信のチャネルに対して、互いに重複することなく割り当て
、より上位のノードにより指定された周期的な待ち受け用の通信期間に合わせてノード間のデータの送受信を行い、少なくとも一のノードを被制御端末として予め割り当てると共に、上記収集制御局及び上記被制御端末並びにこれらの経路上に配置された全てのノードを制御支援端末として特定し、上記収集制御局から上記被制御端末への少なくとも下りデータ通信については、上記制御支援端末における上記通信期間の時間割合を増大させるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上述した構成からなる本発明によれば、上りデータ通信と下りデータ通信との間で互いに分割リソース単位が重複しないように制御することに加えて、各通信経路のチャネルも互いに重複しないように別々の分割リソース単位に割り当てる。これにより、上りデータ通信と下りデータ通信の各データフレームが互いに衝突するのを防止でき、しかも上りデータ通信の各通信経路のチャネル間、下りデータ通信の各通信経路のチャネル間でも互いにデータフレームが衝突するのを防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態としての無線通信方法について詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される無線通信システム1の例を示す模式図である。無線通信システム1は、無線通信端末として、収集制御局(Collection Station:以下CSという。)2を根としたノード3−1、3−2、3−3、3−4とを備え、いわゆるツリー型のトポロジが採用されている。 この無線通信システム1では、より下位のノード3が、より上位のノード3やCS2に向けて上りデータ通信を行う。また無線通信システム1では、より上位のノード3やCS2が、より下位のノード3に向けて下りデータ通信する。
【0025】
CS2は、最上位のマスターデバイスであり、各ノード3−1〜3−4から上りデータ通信により送信されてくるデータを収集する。また、CS2は、この無線通信システム1全体を制御するための中央制御部としての役割も担い、ある特定のノード3に対して制御系のデータを下りデータ通信する。
【0026】
ノード3は、データの発信や中継等を始めとしたデータの送受信を行うことが可能なデバイスの総称であり、例えばIEEE802.15.4の規格に準拠する通信デバイスである。ノード3は、所定のデータをセンシングしてこれを無線により送信するセンサとして具現化されるものもあれば、例えば携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末、ノート型のパーソナルコンピュータ(PC)等のような無線通信が可能な端末装置として具現化されるものであってもよい。またこのノード3はアクチュエータのような制御系を含むものであってもよい。かかる場合には、例えばバルブを停止する制御を行ったり、ロボットの制御を行ったり、ガスを停止するための制御を行うことを可能とするデバイスとして具現化される。ノード3が制御系を含むアクチュエータ等として具現化されるものであれば、CS2から他のノード3を介して下りデータ通信されてくる制御用のデータに基づき、各種制御動作を実行していくこととなる。
【0027】
本実施の形態においては、
図1に示す無線通信システム1に示すように、CS2の下に4つのノード3−1、3−2、3−3、3−4が配置されている場合を例にとり説明をするが、これに限定されるものではない。即ち、CS2の下位リンクに配置されるノード3は、CS2にデータを収集させるものであれば、いかなる枝分かれのパターンで構成されるツリー構造とされていてもよく、また2以上のいかなるノード数で構成されていてもよい。
【0028】
各これらCS2及びノード3−1〜3−4間の通信経路それぞれについてチャネルが割り当てられる。
図1では、ノード3−1からCS2への上りデータ通信のチャネルをChU1、ノード3−2からノード3−1への上りデータ通信のチャネルをChU2、ノード3−3からノード3−1への上りデータ通信のチャネルをChU3、ノード3−4からノード3−2への上りデータ通信のチャネルをChU4としている。同様に
図1では、CS2からノード3−1への下りデータ通信のチャネルをChD1、CS2からノード3−2への下りデータ通信のチャネルをChD2、CS2からノード3−3への下りデータ通信のチャネルをChD3、CS2からノード3−4への下りデータ通信のチャネルをChD4としている。
【0029】
本発明を適用した無線通信システム1では、
図2(a)に示すような周波数チャネルからなる通信リソースを予め複数に分割した分割リソース単位21を構成する。この分割リソース単位21は、時間分割されたスロット、及び周波数分割された帯域の双方を含む概念である。各分割リソース単位21には、上りデータ通信又は下りデータ通信の各チャネルが割り当て可能とされている。即ち、この分割リソース単位21にそれぞれ各通信のチャネルが割り当てられることにより、周波数チャネルが完成することとなる。本発明においては、これら複数の分割リソース単位21を上りデータ通信及び下りデータ通信に対して互いに重複することなく割り当てる。
図2(a)の例では、8つに分割した分割リソース単位21−1〜21−8のうち、上りデータ通信のチャネルに分割リソース単位21−1〜21−5を割り当て、下りデータ通信のチャネルに分割リソース単位21−6〜21−8を割り当てる。このようにして、上りデータ通信のチャネルと、下りデータ通信のチャネル間において、互いに重複して割り当てられる分割リソース単位21が存在しないように制御されることとなる。なお、この分割リソース単位21においていずれのチャネルも割り当てられない、いわゆる残存分割リソース単位が含まれるものであってもよい。なお、以下の例では、8つの分割リソース単位により構成する場合を例にとり説明をするが、分割リソース単位数は分割の数に応じて他のいかなる数で構成されるものであってもよい。
【0030】
また本発明を適用した無線通信システム1では、
図2(b)に示すような通信時間からなる通信リソースを予め複数に分割した時分割の分割リソース単位22を構成するようにしてもよい。各時分割の分割リソース単位22には、上りデータ通信又は下りデータ通信の各チャネルが割り当て可能とされている。即ち、この時分割の分割リソース単位22にそれぞれ各通信のチャネルが割り当てられることにより、時分割チャネルが完成することとなる。本発明においては、これら複数の分割リソース単位22を上りデータ通信及び下りデータ通信に対して互いに重複することなく割り当てる。
図2(b)の例では、8つに分割した分割リソース単位22−1〜22−8のうち、上りデータ通信のチャネルに分割リソース単位22−1〜22−3を割り当て、下りデータ通信のチャネルに分割リソース単位22−4〜22−8を割り当てる。このようにして、上りデータ通信のチャネルと、下りデータ通信のチャネル間において、互いに重複して割り当てられる分割リソース単位22が存在しないように制御されることとなる。なお、この分割リソース単位22においていずれのチャネルも割り当てられない、いわゆる残存分割リソース単位が含まれるものであってもよい。
【0031】
このような周波数又は通信時間からなる通信リソースを分割した分割リソース単位21、22を割り当てる上で、上りデータ通信に割り当てられた各分割リソース単位21、22には、当該上りデータ通信の各通信経路のチャネルChDを互いに重複することなく割り当てる。同様に下りデータ通信に割り当てられた各分割リソース単位21、22には、当該くだりデータ通信の各通信経路のチャネルChUを互いに重複することなく割り当てる。
【0032】
図3の例では、分割リソース単位21について、分割リソース単位21−1にチャネルChU1を、分割リソース単位21−2にチャネルChU2を、分割リソース単位21−3にチャネルChU3を、分割リソース単位21−4にチャネルChU4を割り当てる。また分割リソース単位21−6にチャネルChD1を、分割リソース単位21−7にチャネルChD4を、分割リソース単位21−8にチャネルChD3を割り当てる。
【0033】
このようにして、上りデータ通信と下りデータ通信との間で互いに分割リソース単位21が重複しないように制御することに加えて、各通信経路のチャネルも互いに重複しないように別々の分割リソース単位21に割り当てる。
【0034】
これにより、上りデータ通信と下りデータ通信の各データフレームが互いに衝突するのを防止でき、しかも上りデータ通信の各通信経路のチャネル間、下りデータ通信の各通信経路のチャネル間でも互いにデータフレームが衝突するのを防止することが可能となる。
【0035】
上述した
図3の例では、周波数からなる通信リソースを分割した分割リソース単位21を例にとり説明をしたが、時分割の分割リソース単位22についても同様に、各通信経路のチャネルも互いに重複しないように別々の分割リソース単位21に割り当てることで、上述した作用効果が得られる。
【0036】
なお、本発明においては、上述したように上りデータ通信に割り当てられる分割リソース単位21、22と下りデータ通信に割り当てられる分割リソース単位21、22を予め決定し、その割り当てた分割リソース単位21、22の範囲内で、上りデータ通信と下りデータ通信の各通信経路のチャネルを割り当てるようにしてもよいが、これに限定されるものではない。
【0037】
また本発明は、このような上りデータ通信のチャネルと、下りデータ通信のチャネルにおける各分割リソース単位21の割り当てを以下に説明する方法に基づいて実行するようにしてもよい。
【0038】
例えば、
図4(a)に示すように分割リソース単位22−1〜22−8に対して最初に通信を開始するチャネルChU3に分割リソース単位22−1を割り当てる。次に
図4(b)に示すように、チャネルChD4の通信が開始された場合には、これに分割リソース単位22−8を割り当て、更にチャネルChD1の通信が開始された場合には、これに分割リソース単位22−7を割り当て、次にチャネルChU4の通信が開始された場合には、これに分割リソース単位22−2を割り当てる。このように上りデータ通信の場合には、通信が開始される通信経路のチャネルから順に分割リソース単位22−1から昇順に割り当て、下りデータ通信の場合には、通信が開始される通信経路のチャネルから順に分割リソース単位22−8から降順に割り当てる。その結果、何れは
図4(c)に示すように、分割した全ての分割リソース単位22に対して上りデータ通信及び下りデータ通信のチャネルが割り当てることとなる。即ち分割リソース単位22には、上りデータ通信のチャネルと、下りデータ通信のチャネルにより占有され、未使用の残存分割リソース単位が一つも存在しない状態となる。
【0039】
このような状態になった場合において、仮に新たに通信が開始されるチャネルが発生した場合においても、これに対する分割リソース単位22の割り当て動作を停止する。これにより、既に他のチャネルが割り当てられている分割リソース単位22に対して重複して別のチャネルが割り当てられることを防止することができる。しかも、この割り当て方法によれば、通信が開始されるチャネルから分割リソース単位22を順次割り当てるものであるから、通信の優先度の高いチャネルについては分割リソース単位22が漏れなく割り当てられることとなる。また、上りデータ通信に割り当てられる分割リソース単位22と、下りデータ通信に割り当てられる分割リソース単位22を事前に分類するのではなく、あくまで新たに通信が開始されるチャネルから優先的に割り当てた結果、最終的に上りデータ通信と下りデータ通信の分割リソース単位22の割り当て境界が自然に決まる構成となっている。このため、上りデータ通信及び下りデータ通信の何れか一方において分割リソース単位22が余り、他方において分割リソース単位が足りなくなることが無くなり、より効率的な分割リソース単位22の割り当てを実現することが可能となる。
【0040】
なお、上述した分割リソース単位22の割り当て方法を、分割リソース単位21の割り当て方法に対して適用するようにしてもよいことは勿論である。
【0041】
また、本発明によれば、各チャネルへの分割リソース単位21の割り当てを、上りデータ通信及び下りデータ通信間のそれぞれのデータフレームの交換状況を識別した上で実行するようにしてもよい。ここでいうデータフレームの交換状況の識別とは、データフレームの通信量や通信頻度、通信が開始されているチャネル数等を上りデータ通信と下りデータ通信とについて、それぞれ判別することを意味する。またデータフレームの交換状況の識別は、緊急性を要するデータの送信か否かも含まれる。これらの判別を行うことにより、分割リソース単位21、22を優先的に割り当てるべきチャネルを判別することができる。仮にデータフレームの交換状況が活発なチャネルに対しては優先的に分割リソース単位21、22を割り当て、データフレームの交換状況が低調なチャネルについては分割リソース単位21、22の割り当ての優先順位を下げるようにしてもよい。
【0042】
特に、CS2から各ノード3へ緊急性を要する制御用データを下りデータ通信を介して送る場合がある。この緊急性を要する制御用データとは、緊急でバルブを停止するための制御データや、緊急でガス管を止めるための制御データである。このような緊急性の有無についても予めデータフレームにフラグ等を立てておくことで、これを識別することができる。この緊急性が高いほどデータフレームの交換状況が高くなるように設定しておくことにより、この緊急性の高い下りデータ通信に対して優先的に分割リソース単位21、22を割り当てることが可能となる。
【0043】
更に本発明によれば、識別したデータフレームの交換状況に基づいて上りデータ通信の通信経路又は下りデータ通信の通信経路を制御するようにしてもよい。本発明では、上りデータ通信の通信経路と、下りデータ通信の通信経路が重複してもよく、例えばチャネルChU1とチャネルChD1とが同一の通信経路に割り当てられていても良い。但し、データフレームの交換状況がより活発な通信経路や、上述のように緊急性の高い下りデータ通信を行う場合には、上りデータ通信の通信経路との衝突を避けるべく、上りデータ通信の通信経路とは重複しない通信経路ChD2、ChD3、ChD4を設定するようにしてもよい。これにより、データフレームの交換状況がより活発な通信経路や、上述のように緊急性の高い下りデータ通信につき、通信リソースを互いに異ならせることに加え、通信経路の面においても同様に上りデータ通信との通信衝突を効果的に防止することができる。
【0044】
このように本発明は、データフレームの交換状況に応じてチャネルを割り当てる分割リソース単位21、22や通信経路を自立分散的に制御することが可能となる。
【0045】
また、上述したノード3は、CS2を含む概念とされていてもよい。即ち、各ノード3において行われる処理は、CS2において行われるものであってもよいし、CS2において行われる処理はノード3において行われるものであってもよい。また、CS2はいわゆるノード3に置き換えられるものであってもよい。
【0046】
また、上述した各処理は、CS2とノード3間との通信、及びノード3同士の通信において同様に適用可能であることは勿論である。
【0047】
第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態としての無線通信方法について詳細に説明する。この第2実施形態において、上述した第1実施形態と同一の構成要素、部材に関しては同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
【0048】
第2実施形態では、上述した第1実施形態の処理動作を行うことを前提とした上で、更に以下に説明する処理動作を実行する。
【0049】
先ずノード3のうち、少なくとも一のノード3を被制御端末として割り当てる。この被制御端末とは、ノード3のうち、制御系を含むアクチュエータ等として具現化されるものであり、かつ緊急性を要する制御用データがCS2から送信される可能性のあるノードとする。ここでいう緊急性を要する制御用データとは、緊急でバルブを停止するための制御データや、緊急でガス管を止めるための制御データである。
【0050】
この被制御端末の割り当ては、無線通信システム1の管理者やユーザ等が予め人為的に行うようにしてもよいし、各ノード3から送られてくる情報に基づいてCS2側において被制御端末として自動的に特定するようにしてもよい。かかる場合には、緊急性を要するケースを予め類型化しておき、ノード3から送られてくる情報が緊急性を要するケースに含まれるものであれば、これを被制御端末として特定するようにしてもよい。これ以外には、ノード3から送られてくる情報に基づいて被制御端末であるか否かを判別するようにしてもよい。例えばCS2があるノード3から受信した信号がロボットから送られてくる特有の信号等であることを識別した場合、緊急性を要する制御用データを送付する可能性があることを識別し、これを被制御端末として割り当てるようにしてもよい。
【0051】
無線通信システム1では、CS2及び被制御端末並びにこれらの経路上に配置された全てのノードを制御支援端末として特定する。
図5に示す例ではノード3−4を被制御端末として割り当てた場合、CS2、ノード3−1、ノード3−4を制御支援端末として特定されることとなる。本発明においては、この制御支援端末間の無線通信と、それ以外の経路間の無線通信との間で、通信の方式が互いに異なる。
【0052】
図6は、制御支援端末以外のノード3間として、ノード3−5からノード3−2を中継させてCS2へデータを上りデータ通信する場合におけるタイムチャートを示している。CS2並びに各ノード3−2、3−5は、それぞれ基本間隔(間欠待受周期)T内においてアクティブ期間(通信期間)T1と、スリープ期間T2とが割り当てられている。通信期間T1において無線通信を行うことが可能となり、スリープ期間T2においては受信側がスリープ状態に移行することで互いに無線通信を行うことができなくなる。あえて基本間隔T内においてスリープ期間T2を設けることにより消費電力を節減することができ、ひいてはシステム全体の使用電力を抑えること可能となる。
【0053】
ノード3−5からCS2に向けてデータを送信する場合には、ノード3−5とこれよりも上位にあるノード3−2との間では、上位のノード3−2がマスター、下位のノード3−5がスレーブの関係となる。同様にノード3−2とCS2との間では、上位のノードとしてのCS2がマスター、下位のノード3−2がスレーブの関係となる。このようなマスターとスレーブとの関係においてより上位のマスターが基本間隔Tにおける通信期間T1のタイミングを決定し、より下位のスレーブがこのマスター側において決定された通信期間T1のタイミングに合わせてデータを送信することとなる。
【0054】
このような規則の下で、
図6に示すように先ずノード3−5は、タイミングt11において生成したデータD21を、マスターとしてのノード3−2のタイミングt12において開始する通信期間T1に合わせて送信する。このデータD21を受信したノード3−2は、タイミングt13において開始するマスターとしてのCS2の通信期間T1に合わせて当該データD21を送信する。これによりCS2は、このデータD21を自ら設定した通信期間T1内において受信することが可能となる。
【0055】
これに対して、制御支援端末(CS2、ノード3−1、ノード3−4)については、
図7に示すように基本間隔T内において通信期間T1の時間割合を増大させ、その分においてスリープ期間を短縮する。この通信期間の増大量はいかなるものであってもよいが、
図7に示すように基本間隔T全てを通信期間T1に割り当ててスリープ期間を0にしてもよい。また
図7に示すように通信期間T1を終点Ts1〜Ts3等に設定することで基本間隔Tよりも短くするようにしてもよい。かかる場合には終点Ts1〜Ts3がスリープ期間の始点となる。
【0056】
ここでCS2からノード3−4に対して制御データを送信する場合には、この制御支援端末であるCS2からノード3−1を介してノード3−4へこれを送信することとなるが、これら制御支援端末(CS2、ノード3−1、ノード3−4)については
図8のタイムチャートに示すように基本間隔全てを通信期間に割り当ててスリープ期間を0にする場合を例に取り説明をする。このようにアクティブな通信期間の時間割合を増大させた状態で、CS2からノード3−4に対して制御用のデータD22を下りデータ通信する。
【0057】
CS2はタイミングt14においてこのデータD22を生成し、これをノード3−1へ送信する。ノード3−1は基本間隔全てが通信期間に割り当てられているため、タイミングt14においてデータD22を受信することができ、同じタイミングt14において当該データD22をノード3−4へ送信することができる。ノード3−4も基本間隔全てが通信期間に割り当てられているため、データD22をこのタイミングt14において受信することができる。
【0058】
このため、本発明によれば、CS2からノード3−4に対してデータD22をより迅速に下りデータ通信することが可能となる。仮にデータD22が緊急性を要するものである場合においても、スリープ期間が経過するまで待機すること無くデータD22を被制御端末としてのノード3−4に送信することが可能となり、当該データD22に基づいて行われるノード3−4における各種制御が迅速に実行させることとなる。その結果、CS2から被制御端末としてのノード3−4へのデータD22の送信が遅れることによる深刻な制御遅延を引き起こしてしまうことを防止することができる。
【0059】
ちなみに、これら制御支援端末(CS2、ノード3−1、ノード3−4)間において、ノード3−4からCS2に向けてデータD23を上りデータ通信を行う場合には、この時間割合を増大させた通信期間を利用して行うようにしてもよい。また
図8に示すようにCS2、ノード3−1、ノード3−4が制御支援端末として特定されておらず、通信期間の時間割合を増大されていない場合を仮定し、マスター側から指定された通信期間に合わせてデータD23を送信するようにしてもよい。かかる場合には、
図8に示すようにタイミングt15においてノード3−4が生成したデータD23を、タイミングt16において開始する通信期間においてノード3−1へ上りデータ通信する。そしてノード3−1は、CS2により指定されたタイミングt17において開始する通信期間においてデータD23を送信することとなる。
【0060】
特に緊急性を要する制御用のデータを送る必要があるノード3は、全体のノード数の中で僅かに過ぎない。従って、全ノード数に対する、制御支援端末の割合は、非常に小さいものとなる。このような制御支援端末のみ上述したように通信期間T1の時間割合を増大させ、それ以外のノード3については従来と同様に通信期間T1の時間割合を増大させることなくスリープ期間を長く取ることにより、無線通信システム1全体の消費電力はそれほど上昇することなく、同様に省電力性は維持し続けることが可能となる。
【0061】
従って本発明によれば、システム全体の省電力性は維持しつつ、CS2からノード3への緊急性を要するデータをより迅速に下りデータ通信することが可能となる。このような下りデータ通信を行う上で、緊急性を要するデータを識別することにより、これを優先的に分割リソース単位21、22に割り当てることが可能となる。このため、緊急性を要する下りデータ通信が、上りデータ通信と衝突してしまうのを強固に防止することが可能となる。