特許第6985659号(P6985659)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985659
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】無線通信方法及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/02 20090101AFI20211213BHJP
【FI】
   H04W52/02 111
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-68653(P2017-68653)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-170724(P2018-170724A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年2月25日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産業創造技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】児島 史秀
(72)【発明者】
【氏名】中矢 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】浪平 篤
(72)【発明者】
【氏名】樽屋 啓之
【審査官】 永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−057072(JP,A)
【文献】 特開2014−49874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおける無線通信方法において、
データの受信を開始する通信期間と、データの受信を開始しないスリープ期間とを、上記ノードにおいて周期的に設定された基本間隔内に割り当て、
上記通信期間内に、第1データ及び第2データを順番に上記ノードへ送信し、
上記第2データを受信するか否かの判定に応じて、上記スリープ期間を開始するタイミングを制御し、
上記通信期間内に上記第2データの送信が開始され、
上記通信期間外に上記第2データの送信が終了されること
を特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおける無線通信方法において、
データの受信を開始する通信期間と、データの受信を開始しないスリープ期間とを、上記ノードにおいて周期的に設定された基本間隔内に割り当て、
上記通信期間内に、第1データ及び第2データを順番に上記ノードへ送信し、
上記第2データを受信するか否かの判定に応じて、上記スリープ期間を開始するタイミングを制御し、
上記判定は、上記ノードの有するノード情報、又は上記第2データに格納された情報に基づいて判定し、
前記ノード情報は、上記ノードに用いられる装置の種類、給電方法、及びバッテリの最大値に対する上記ノード情報が取得されたときのバッテリ残量値の比率を示す寄与率の少なくとも何れかを有すること
を特徴とする無線通信方法。
【請求項3】
上記判定において上記ノードが上記第2データを受信する場合、上記第2データを受信した後に上記スリープ期間を開始すること
を特徴とする請求項1又は2記載の無線通信方法。
【請求項4】
上記通信期間は、
上記第1データを受信するための第1通信期間と、
上記第1通信期間の後に指定され、上記第2データを受信するための第2通信期間と、
を有し、
上記判定において上記ノードが上記第2データを受信しない場合、上記第2通信期間の代わりに上記スリープ期間を開始すること
を特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の無線通信方法。
【請求項5】
収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおける無線通信システムにおいて、
データを受信する通信期間と、データを受信しないスリープ期間とを、上記ノードにおいて周期的に設定された基本間隔内に割り当てる割り当て手段と、
上記通信期間内に、第1データ及び第2データを順番に上記ノードへ送信する送信手段と、
上記第2データを受信するか否かの判定に応じて、上記スリープ期間を開始するタイミングを制御する制御手段とを備え、
上記制御手段は、上記通信期間内に上記第2データの送信が開始され、上記通信期間外に上記第2データの送信が終了されること
を特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおける無線通信システムにおいて、
データを受信する通信期間と、データを受信しないスリープ期間とを、上記ノードにおいて周期的に設定された基本間隔内に割り当てる割り当て手段と、
上記通信期間内に、第1データ及び第2データを順番に上記ノードへ送信する送信手段と、
上記第2データを受信するか否かの判定に応じて、上記スリープ期間を開始するタイミングを制御する制御手段とを備え、
上記判定は、上記ノードの有するノード情報、又は上記第2データに格納された情報に基づいて判定し、
前記ノード情報は、上記ノードに用いられる装置の種類、給電方法、及びバッテリの最大値に対する上記ノード情報が取得されたときのバッテリ残量値の比率を示す寄与率の少なくとも何れかを有すること
を特徴とする無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおける無線通信方法及び無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ワイヤレスネットワークにおいて、小型で安価であり、かつ低出力のデジタル無線通信を行うことのできる、IEEE802.15.4の規格に準拠する通信デバイスが用いられている。IEEE802.15.4の規格に準拠するネットワークでは、図11に示すように、収集制御局であるCS(Collection station)71と、1つ以上のノード72−1〜72−4とにより構成されたツリー型のトポロジが採用されている。 ツリー型トポロジでは、より下位のノード72が、より上位のノード72やCS71に向けて、必要に応じてデータを伝送することが行われている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
図12は、下位のノード72−3、72−4からのデータをCS71へ送信する場合におけるタイムチャートの例を示している。CS71及び各ノード72は、それぞれ基本間隔T(間欠待受周期(単位:時間t))内においてアクティブ期間(通信期間T1(単位:時間t))と、スリープ期間T2(単位:時間t)とが割り当てられている。通信期間T1においては、無線通信を行うことが可能となり、スリープ期間T2においては、受信側がスリープ状態に移行することで、無線通信を行うことができなくなる。あえて基本間隔T内においてスリープ期間T2を設けることにより消費電力を節減することができ、ひいてはシステム全体の使用電力を抑えること可能となる。
【0004】
ノード72−3からCS71に向けてデータを送信する場合には、ノード72−3からノード72−1を中継させてCS71の経路となる。かかる場合には、ノード72−3とこれよりも上位にあるノード72−1との間では、上位のノード72−1がマスター、下位のノード72−3がスレーブの関係となる。同様にノード72−1とCS71との間では、上位のノードとしてのCS71がマスター、下位のノード72−1がスレーブの関係となる。このようなマスターとスレーブとの関係において、より上位のマスターが基本間隔Tにおける通信期間T1のタイミングを決定し、より下位のスレーブが、このマスター側において決定された通信期間T1のタイミングに合わせてデータを送信することとなる。
【0005】
このような規則の下で、図12において先ずノード72−3は、タイミングt91において生成したデータD81を、タイミングt92において開始するマスターとしてのノード72−1の通信期間T1に合わせて送信する。このデータD81を受信したノード72−1は、タイミングt93において開始するマスターとしてのCS71の通信期間T1に合わせて当該データD81を送信する。これによりCS71は、このデータD81を自ら設定した通信期間T1内において受信することが可能となる。
【0006】
同様に、ノード72−4からCS71に向けてデータを送信する場合には、ノード72−4からノード72−1を中継させてCS71の経路となる。ノード72−4は、タイミングt94において生成したデータD82を、タイミングt95において開始するマスターとしてのノード72−1の通信期間T1に合わせて送信する。このデータD82を受信したノード72−1は、タイミングt96において開始するマスターとしてのCS71の通信期間T1に合わせて当該データD82を送信する。これによりCS71は、このデータD82を自ら設定した通信期間T1内において受信することが可能となる。
【0007】
CS71は、上述した無線通信の処理動作方法に基づいて、ツリー型ネットワークにおける各ノード72からのデータを全て収集することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015−198333号公報
【特許文献2】特開2014−23085号公報
【特許文献3】特開2014−103580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した従来のツリー型トポロジでは、ノード72に割り当てられる各期間T1、T2の省電力動作は、各ノード72に共通した仕様で運用される。このため、ノード72の種類等に関わらず、ノード72には、一定の各期間T1、T2が割り当てられる。これにより、ノード72毎における省電力の効果を得られないという懸念が挙げられる。
【0010】
特に、ノード72として用いられる装置等の種類が増えるにつれて、各ノード72に必要とする情報の内容や情報量が異なる傾向を示す。これに伴い、各ノード72の通信期間T1は、情報量を多く必要とするノード72を基準として割り当てられる。このため、少ない情報量に対応したノード72には、不要な長さの通信期間T1が割り当てられる。これにより、電力の過剰な消費につながり、システムの特性を劣化させる可能性がある。このような事情により、各ノード72の省電力動作を実現することが望まれている。
【0011】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおいて、各ノードにおける省電力の動作を実現できる無線通信方法及び無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上述した問題点を解決するために、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおいて、データの受信を開始する通信期間と、データの受信を開始しないスリープ期間とを、ノードにおいて周期的に設定された基本間隔内に割り当て、通信期間内に、第1データ及び第2データを順番にノードへ送信し、第2データを受信するか否かの判定に応じて、スリープ期間を開始するタイミングを制御し、通信期間内に第2データの送信が開始され、通信期間外に第2データの送信が終了される無線通信方法及びシステムを発明した。
【0013】
請求項1に記載の無線通信方法は、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおける無線通信方法において、データの受信を開始する通信期間と、データの受信を開始しないスリープ期間とを、上記ノードにおいて周期的に設定された基本間隔内に割り当て、上記通信期間内に、第1データ及び第2データを順番に上記ノードへ送信し、上記第2データを受信するか否かの判定に応じて、上記スリープ期間を開始するタイミングを制御し、上記通信期間内に上記第2データの送信が開始され、上記通信期間外に上記第2データの送信が終了されることを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の無線通信方法は、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおける無線通信方法において、データの受信を開始する通信期間と、データの受信を開始しないスリープ期間とを、上記ノードにおいて周期的に設定された基本間隔内に割り当て、上記通信期間内に、第1データ及び第2データを順番に上記ノードへ送信し、上記第2データを受信するか否かの判定に応じて、上記スリープ期間を開始するタイミングを制御し、上記判定は、上記ノードの有するノード情報、又は上記第2データに格納された情報に基づいて判定し、前記ノード情報は、上記ノードに用いられる装置の種類、給電方法、及びバッテリの最大値に対する上記ノード情報が取得されたときのバッテリ残量値の比率を示す寄与率の少なくとも何れかを有することを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の無線通信方法は、請求項1又は2記載の発明において、上記判定において上記ノードが上記第2データを受信する場合、上記第2データを受信した後に上記スリープ期間を開始することを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の無線通信方法は、請求項1〜3の何れか1項記載の発明において、上記通信期間は、上記第1データを受信するための第1通信期間と、上記第1通信期間の後に指定され、上記第2データを受信するための第2通信期間と、を有し、上記判定において上記ノードが上記第2データを受信しない場合、上記第2通信期間の代わりに上記スリープ期間を開始することを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の無線通信システムは、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおける無線通信システムにおいて、データを受信する通信期間と、データを受信しないスリープ期間とを、上記ノードにおいて周期的に設定された基本間隔内に割り当てる割り当て手段と、上記通信期間内に、第1データ及び第2データを順番に上記ノードへ送信する送信手段と、上記第2データを受信するか否かの判定に応じて、上記スリープ期間を開始するタイミングを制御する制御手段とを備え、上記制御手段は、上記通信期間内に上記第2データの送信が開始され、上記通信期間外に上記第2データの送信が終了されることを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の無線通信システムは、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおける無線通信システムにおいて、 データを受信する通信期間と、データを受信しないスリープ期間とを、上記ノードにおいて周期的に設定された基本間隔内に割り当てる割り当て手段と、上記通信期間内に、第1データ及び第2データを順番に上記ノードへ送信する送信手段と、上記第2データを受信するか否かの判定に応じて、上記スリープ期間を開始するタイミングを制御する制御手段とを備え、上記判定は、上記ノードの有するノード情報、又は上記第2データに格納された情報に基づいて判定し、前記ノード情報は、上記ノードに用いられる装置の種類、給電方法、及びバッテリの最大値に対する上記ノード情報が取得されたときのバッテリ残量値の比率を示す寄与率の少なくとも何れかを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上述した構成からなる本発明によれば、第2データを受信するか否かの判定に応じて、スリープ期間を開始するタイミングを制御する。このため、第2データの必要性に応じて、各ノードの消費電力を制御することができる。これにより、各ノードにおける省電力の動作を実現することが可能となる。
【0020】
また、上述した構成からなる本発明によれば、第2データの送信は通信期間外に終了する。第2データを受信する場合には、第2データを受信したあとにスリープ期間を開始する。このため、第2データを必要とするノードに対してのみ、通信期間を延長させることができ、他のノードに対しては、通信期間を延長する必要が無い。これにより、各ノードにおける省電力の効果を向上させることが可能となる。
【0021】
また、上述した構成からなる本発明によれば、第2データを受信しない場合、第2通信期間の代わりにスリープ期間を開始する。このため、第2データを受信しないノードに対して、通信期間を通常よりも短縮することができる。これにより、各ノードにおける省電力の効果をさらに向上させることが可能となる。
【0022】
また、上述した構成からなる本発明によれば、ノードの有するノード情報に基づいて、第2データを受信するか否かを判定する。このため、収集制御局が取得したノード情報に基づいて、各ノードに適した通信期間を詳細に設定することができる。これにより、各ノードにおける省電力の効果をさらに向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明が適用される無線通信システムの例を示す模式図である。
図2】一のノードを被制御端末として割り当てた場合における制御支援端末の特定例を示す図である。
図3】制御支援端末以外のノード間における上りデータ通信時のタイムチャートである。
図4】(a)〜(c)は、第1実施形態における通信期間の例を示す図である。
図5】第2実施形態における通信期間比率の第1例を示す図である。
図6】第2実施形態における通信期間比率の第2例を示す図である。
図7】第2実施形態における通信期間比率の第3例を示す図である。
図8】第3実施形態における基本間隔内において通信期間の時間割合を増大させ、その分においてスリープ期間を短縮する例を示す図である。
図9】第3実施形態における収集制御局からあるノードに対して緊急用の制御データを送信する場合におけるタイムチャートである。
図10】第3実施形態における被制御端末のノードから収集制御局に向けて非常に緊急の上りデータ通信を行う場合におけるタイムチャートである。
図11】IEEE802.15.4の規格に準拠するネットワークの例を示す図である。
図12】従来技術の問題点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態としての無線通信方法について詳細に説明する。 図1は、本実施形態の無線通信システム1の例を示す模式図である。無線通信システム1は、無線通信端末として、収集制御局(Collection Station:以下CSという。)2を根としたノード3−1、3−2、3−3、3−4とを備え、いわゆるツリー型のトポロジが採用されている。 この無線通信システム1では、より下位のノード3が、より上位のノード3やCS2に向けて上りデータ通信を行う。また無線通信システム1では、より上位のノード3やCS2が、より下位のノード3に向けて下りデータ通信する。
【0025】
CS2は、最上位のマスターデバイスであり、各ノード3−1〜3−4から上りデータ通信により送信されてくるデータを収集する。また、CS2は、この無線通信システム1全体を制御するための中央制御部としての役割も担い、ある特定のノード3に対して制御系のデータを下りデータ通信する。
【0026】
ノード3は、データの発信や中継等を始めとしたデータの送受信を行うことが可能なデバイスの総称であり、例えばIEEE802.15.4の規格に準拠する通信デバイスである。ノード3は、所定のデータをセンシングしてこれを無線により送信するセンサとして具現化されるほか、例えば携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末、ノート型のパーソナルコンピュータ(PC)等のような無線通信が可能な端末装置として具現化されてもよい。またこのノード3はアクチュエータのような制御系を含むものでもよい。かかる場合には、例えばバルブを停止する制御を行ったり、ロボットの制御を行ったり、ガスを停止するための制御を行うことを可能とするデバイスとして具現化される。ノード3が制御系を含むアクチュエータ等として具現化されるものであれば、CS2から他のノード3を介して下りデータ通信されてくる制御用のデータに基づき、各種制御動作を実行していくこととなる。
【0027】
本実施形態においては、図1に示す無線通信システム1に示すように、CS2の下に4つのノード3−1、3−2、3−3、3−4、3−5が配置されている場合を例にとり説明をするが、これに限定されるものではない。即ち、CS2の下位リンクに配置されるノード3は、CS2にデータを収集させるものであれば、いかなる枝分かれのパターンで構成されるツリー構造とされてもよく、また1以上のいかなる数のノード3で構成されてもよい。
【0028】
本実施形態の無線通信システム1では、例えばCS2及び被制御端末並びにこれらの経路上に配置された全てのノード3を制御支援端末として特定してもよい。図2に示す例では、ノード3−4を被制御端末として割り当てた場合、CS2、ノード3−1、ノード3−4を制御支援端末として特定されることとなる。本実施形態においては、この制御支援端末間の無線通信と、それ以外の経路間の無線通信との間で、通信の方式が共通であるほか、例えば通信の方式が互いに異なってもよい。
【0029】
図3は、ノード3間として、ノード3−5からノード3−2を中継させてCS2へデータを上りデータ通信する場合におけるタイムチャートの一例を示している。CS2及び各ノード3−2、3−5には、それぞれ基本間隔T(間欠待受周期(単位:時間t))内においてアクティブ期間(通信期間T1(単位:時間t))と、スリープ期間T2(単位:時間t)とが割り当てられている。通信期間T1においては、無線通信を行うことが可能となり、スリープ期間T2においては、受信側がスリープ状態に移行することで、無線通信を行うことができなくなる。あえて基本間隔T内においてスリープ期間T2を設けることにより消費電力を節減することができ、ひいてはシステム全体の使用電力を抑えること可能となる。
【0030】
ノード3−5からCS71に向けてデータを送信する場合には、ノード3−5とこれよりも上位にあるノード3−2との間では、上位のノード3−2がマスター、下位のノード3−5がスレーブの関係となる。同様にノード3−2とCS2との間では、上位のノードとしてのCS2がマスター、下位のノード3−2がスレーブの関係となる。このようなマスターとスレーブとの関係においてより上位のマスターが基本間隔T内に通信期間T1のタイミングを割り当て、より下位のスレーブがこのマスター側において割り当てられた通信期間T1のタイミングに合わせてデータを送信することとなる。
【0031】
このような規則の下で、図3に示すように、先ずノード3−5は、タイミングt11において生成したデータD21を、マスターとしてのノード3−2のタイミングt12において開始する通信期間T1に合わせて送信する。このデータD21を受信したノード3−2は、タイミングt13において開始するマスターとしてのCS2の通信期間T1に合わせて当該データD21を送信する。これによりCS2は、このデータD21を自ら設定した通信期間T1内において受信することが可能となる。
【0032】
本実施形態の無線通信システム1では、データの受信を開始する通信期間T1とデータの受信を開始しないスリープ期間T2とを、ノード3において周期的に設定された基本間隔T内に割り当て(割り当て手段)、ノード3の通信期間T1内に、第1データD1及び第2データD2を順番にノード3へ送信する(送信手段)。その後、第2データD2を受信するか否かの判定に応じて、スリープ期間T2を開始するタイミングを制御する(制御手段)。
【0033】
割り当て手段では、例えばCS2又は上位のノード3が、下位のノード3に通信期間T1を割り当てる。送信手段では、例えばCS2が、ノード3に各データD1、D2を送信する。制御手段では、例えばノード3が、第2データD2の前半に格納されたヘッダ情報に基づいて受信するか否かを判定し、スリープ期間T2を開始するタイミングを制御する。
【0034】
第1データD1は、ノード3に取り付けられたデバイスの制御データを含み、例えば緊急性を要する制御用データや、通信期間T1における割り当ての変更に関するデータ等を含む。第1データD1は、通信期間T1の期間内に送信が開始及び終了される。
【0035】
第2データD2は、一部のノード3にのみ必要となるデータを含み、例えば通信に必要となるデータ等を含む。第2データD2は、第1データD1の送信が終了したあと、通信期間T1の期間内に送信が開始され、通信期間T1の期間外に送信が終了される。
【0036】
本実施形態の無線通信システム1では、ノード3は、第2データD2を受信するか否かの判定に応じて、スリープ期間T2を開始するタイミングを制御する。このため、第2データD2の必要性に応じて、各ノード3のスリープ期間T2を制御することができる。これにより、各ノード3における省電力の動作を実現することが可能となる。
【0037】
上述した判定により第2データD2を受信する場合の一例として、図4(a)のノード3−1を用いて説明する。この場合、ノード3−1は、第2データD2を受信した後に、スリープ期間T21を開始する。すなわち、ノード3−1は、第2データD2を受信するために、通信期間T11に延長期間T1hを加える。このため、第2データD2を必要とするノード3−1に対してのみ、通信期間T1を延長させることができる。これにより、各ノード3における省電力の効果を向上させることが可能となる。
【0038】
上述した判定により第2データD2を受信しない場合の一例として、図4(b)のノード3−2を用いて説明する。この場合、ノード3−2は、例えば第2データD2の前半に格納されたヘッダ情報に基づいて、第2データD2を受信しないと判断する。その後、通信期間T12の終了と同時に、スリープ期間T22を開始する。このため、ノード3−2は、第2データD2を受信するノード3−1に比べて、通信期間T1を延長する必要が無く、通信期間T12を短くすることができる。これにより、各ノード3における省電力の効果を向上させることが可能となる。
【0039】
なお、制御手段において、各ノード3が第2データD2を受信するか否かの判定は、例えばCS2から各ノード3に予め判定に関する情報を送信してもよい。この場合、CS2は、各ノード3から取得した同期用信号Bに基づき、各ノード3に対する判定に関する情報を生成し、各ノード3に送信する。
【0040】
上述した判定を行う場合の例として、図4(c)のノード3−3を用いて説明する。この場合、ノード3−3における通信期間T1は、第1データD1が送信される第1通信期間T13と、第2データD2が送信される第2通信期間T14とを有する。第2通信期間T14は、第1通信期間T13の後に割り当てられ、例えば第1通信期間T13と離間して割り当てられてもよい。第2通信期間T14の長さは、例えば第1通信期間T13の長さよりも短い。
【0041】
このとき、判定により第2データD2を受信する場合、上述した図4(a)のノード3−1と同様に、ノード3−3は、第2データD2を受信した後に、スリープ期間T23を開始する。これに対し、判定により第2データD2を受信しない場合、ノード3−3は、第1通信期間T13の終了後、第2通信期間T14を開始する代わりにスリープ期間T24を開始する。このため、第2データD2を受信しない場合に、通信期間T1を大幅に短くすることができる。これにより、各ノード3における省電力の効果を大幅に向上させることが可能となる。
【0042】
また、上述したノード3は、CS2を含む概念とされていてもよい。即ち、各ノード3において行われる処理は、CS2において行われるものであってもよいし、CS2において行われる処理はノード3において行われるものであってもよい。また、CS2はいわゆるノード3に置き換えられるものであってもよい。
【0043】
また、上述した各処理は、CS2とノード3間との通信、及びノード3同士の通信において同様に適用可能であることは勿論である。
【0044】
第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態としての無線通信方法について詳細に説明する。なお、上述した実施形態と同様の主な構成については、説明を省略する。
【0045】
本実施形態の無線通信システム1では、ノード3の有するノード情報を周期的に取得し(取得手段)、各周期に取得されたノード情報に基づいて、ノード3における通信期間比率Rを設定する(設定手段)。
【0046】
取得手段では、例えばノード3から発信されたノード情報を、CS2が取得する。設定手段は、例えばCS2が通信期間比率Rを設定する。
【0047】
ノード3は、ノード3に用いられる装置の種類、給電方法、及び給電状況を示す寄与率の少なくとも何れかを含むノード情報を有する。装置の種類は、ノード3を具現化した端末装置のほか、例えばバルブを停止する制御等を行うことを可能とするデバイスに関する情報を含み、装置等に必要となる通信頻度等を含む。給電方法は、ノード3を具現化した端末装置等を給電するために用いられる方法であり、例えば太陽電池、乾電池、外部給電等からの給電方法に関する情報を含む。寄与率は、ノード3を具現化した端末装置等に用いられるバッテリの最大値に対するバッテリ残量値の比率を示す。
【0048】
本実施形態の無線通信システム1では、各ノード3に異なる通信期間比率R(通信期間T1/基本間隔T)が設定される。通信期間比率Rは、ノード情報に基づいて設定される。ノード情報は、ノード3から必要に応じて定期的に送信される同期用信号Bに含まれる。同期用信号Bは、ノード情報のほか、同期用信号Bを発信するときの通信期間比率Rを含む。CS2は、ノード3から周期的に送信される同期用信号Bを取得し、各周期に取得された同期用信号Bに含まれるノード情報に基づいて、通信期間比率Rを設定する。これにより、ノード3における省電力の動作を実現することが可能となる。なお、CS2が同期用信号Bを取得する周期は、任意である。
【0049】
本実施形態の無線通信システム1では、例えばノード情報に含まれる通信頻度が高い場合や、給電状態が良好(例えば給電し易い環境、バッテリ消費量が少ない等)である場合に、通信期間比率Rが高くなるように設定される。例えば図5では、ノード3−1、ノード3−2、ノード3−3の順に、通信頻度が高い又は給電状態が良好である。このため、ノード3−1の通信期間比率R1が最も高く、次にノード3−2の通信期間比率R2が高く、ノード3−3の通信期間比率R3が最も低い。このように、ノード情報に基づいて、通信期間比率Rを設定することで、各ノード3に適した通信期間比率Rを設定することができ、ノード3における省電力の動作を実現することが可能となる。なお、通信期間比率Rは、例えば1つの閾値を用いた2段階で設定されるほか、例えば100分率等の3段階以上で設定されてもよい。
【0050】
本実施形態の無線通信システム1では、例えばノード情報に基づいて、通信期間比率Rに加えて同期用信号Bを送信する頻度が設定されてもよい。例えばノード3−2における通信期間比率R2は、ノード3−1における通信期間比率R1よりも低い。このため、ノード3−2における同期用信号Bを送信する頻度を、ノード3−1に比べて少なくすることで、ノード3−2における電力の消費を抑制することができる。このように、通信期間比率Rに比例して同期用信号Bを送信する頻度を設定することで、同期用信号Bを送信する頻度を制御することができ、ノード3における省電力の効果をさらに高めることが可能となる。
【0051】
通信期間比率Rは、例えばノード情報に含まれる装置の種類に基づいて設定される。各ノード3は、装置の種類によって通信頻度等が異なる場合がある。このため、装置の種類に基づく通信期間比率Rを設定することで、各ノード3における省電力の動作を実現することができる。
【0052】
装置の種類として、例えばノード3−1としてPCのように通信機能の比較的優れた端末装置が用いられ、ノード3−3としてバルブを停止する制御デバイスが用いられた場合、制御デバイスは端末装置よりも通信頻度が少なくてもよい。このため、ノード3−3の通信期間比率R3として、ノード3−1の通信期間比率R1よりも低い値が設定されることで、電力の消耗を抑制することができる。また、ノード3−1では、通信頻度に対応した通信期間比率R1が設定されることで、安定した運営を継続することが可能となる。
【0053】
通信期間比率Rは、例えばノード情報に含まれる給電方法に基づいて設定される。各ノード3は、給電方法によって給電状況等が異なる場合がある。このため、給電方法に基づき通信期間比率Rを設定することで、各ノード3における省電力の動作を実現することができる。
【0054】
給電方法として、例えば図6に示すように、ノード3−2として常時給電される外部給電が用いられ、ノード3−5として太陽電池による給電が用いられた場合、設置環境や天候に依存する太陽電池は、外部給電に比べて、給電量の経時変化が大きい。このため、ノード3−5では、一定周期毎に異なる通信期間比率R5が設定され、例えば給電がされ難い曇天時には通信期間比率R5aとし、給電がされ易い晴天時には通信期間比率R5aよりも高い通信期間比率R5bとする。これにより、ノード3−5に最適な通信期間比率R5を設定することができ、電力の消耗を抑制することができる。また、ノード3−2では、一定周期毎に等しい通信期間比率R2が設定されることで、安定した運営を継続することが可能となる。
【0055】
通信期間比率Rは、例えばノード情報に含まれるバッテリの寄与率に基づいて設定される。通信期間比率Rは、例えば寄与率に比例して設定される。このため、寄与率の変動にあわせた通信期間比率Rを設定することで、各ノード3における省電力の動作を実現することができる。
【0056】
例えば図7に示すように、ノード3−1としてバッテリの消費が小さい装置等が用いられ、ノード3−4としてバッテリの消費が大きい装置等が用いられる。この場合、ノード3−1とノード3−4の寄与率が互いに略等しいときは、ノード3−4の通信期間比率R4aは、ノード3−1の通信期間比率R1と略等しい。これに対し、経時に伴いノード3−4の寄与率が低下する。このため、ノード3−4の通信期間比率R4bは、ノード3−1の通信期間比率R1よりも低くなる。これにより、ノード3−4のバッテリの消費量を抑制することができる。
【0057】
このように、寄与率の高いノード3ほど、高い通信期間比率Rを設定することで、ノード3毎におけるバッテリ消費量の均一化を図ることができ、ネットワーク内の公平性を確立することができる。また、給電状態の良好なノード3と、給電状態の劣悪なノード3とが混在した場合においても、各ノード3の相対的なバッテリ消費量を均一化させることができる。これにより、各ノード3における省電力の動作効果を向上させることが可能となる。また、一部のノード3のみのバッテリ消耗により無線ネットワーク全体の動作が継続困難となる事態を回避でき、安定した運営を継続することが可能となる。
【0058】
本実施形態の無線通信システム1は、例えば寄与率に基づいてノード3に制御端末又は被制御端末として割り当てることができる。例えば図7に示すように、寄与率の低いノード3−4は、寄与率の高いノード3−1の下位に指定することができる。このため、給電状態が良好なノード3を優先的に多くのデータフレームを中継する動作形態が自立分散的に形成される。これにより、より安定した運営を継続することが可能となる。また、ノード3毎におけるバッテリ消費量の均一化を図ることができ、ネットワーク内の公平性を確立することができる。
【0059】
また、本実施形態の無線通信システム1では、周期的に取得された寄与率に基づいて、各ノード3における制御端末又は被制御端末の割り当てを変更することができる。このため、経時変化により各ノード3の寄与率が変化した場合においても、各ノード3の相対的なバッテリ消費量を均一化させることができる。これにより、一部のノード3のみのバッテリ消耗により無線ネットワーク全体の動作が継続困難となる事態を回避でき、安定した運営を継続することが可能となる。
【0060】
なお、ノード3に制御端末又は被制御端末として割り当てるとき、例えば装置の種類、給電方法、及び寄与率の少なくとも何れかに基づくようにしてもよい。この場合、より安定した運営を継続することが可能となる。ノード3に制御端末又は被制御端末として割り当てるとき、装置の種類、給電方法、及び寄与率の何れかを優先するか否かの設定は、任意である。
【0061】
なお、本実施形態の無線通信システム1は、例えば上述した実施形態と組み合わせてもよい。すなわち、CS2又は各ノード3よりも上位のノード3は、各ノード3のノード情報を取得し、第2データD2を受信するか否かの判定に関する情報を生成し、各ノード3に送信する。各ノード3は、ノード情報又は受信したCS2又は上位のノード3によって生成された判定に関する情報に基づいて、第2データD2を受信するか否かを判定する。このため、CS2が取得したノード情報に基づいて、各ノード3に適した通信期間T1を詳細に設定することができる。これにより、各ノード3における省電力の効果をさらに向上させることが可能となる。
【0062】
第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態としての無線通信方法について詳細に説明する。なお、上述した実施形態と同様の主な構成については、説明を省略する。
【0063】
本実施形態の無線通信システム1では、複数のノード3のうち、少なくとも一のノード3を被制御端末として割り当てる。この被制御端末とは、ノード3のうち、制御系を含むアクチュエータ等として具現化されるものであり、かつ緊急性を要する制御用データがCS2から送信される可能性のあるノード3とする。ここでいう緊急性を要する制御用データとは、緊急でバルブを停止するための制御データや、緊急でガス管を止めるための制御データである。本実施形態においては、この制御支援端末間の無線通信と、それ以外の経路間の無線通信との間で、通信の方式が互いに異なる。
【0064】
この被制御端末の割り当ては、無線通信システム1の管理者やユーザ等が予め人為的に行うようにしてもよいし、各ノード3から送られてくる情報に基づいてCS2側において被制御端末として自動的に特定するようにしてもよい。かかる場合には、緊急性を要するケースを予め類型化しておき、ノード3から送られてくる情報が緊急性を要するケースに含まれるものであれば、これを被制御端末として特定するようにしてもよい。これ以外には、ノード3から送られてくる情報に基づいて被制御端末であるか否かを判別するようにしてもよい。例えばCS2があるノード3から受信した信号がロボットから送られてくる特有の信号等であることを識別した場合、緊急性を要する制御用データを送付する可能性があることを識別し、これを被制御端末として割り当てるようにしてもよい。
【0065】
制御支援端末(CS2、ノード3−1、ノード3−4)については、図8に示すように、基本間隔T内において通信期間T1の時間割合を増大させ、その分においてスリープ期間T2を短縮する。この通信期間T1の増大量はいかなるものであってもよいが、図8に示すように基本間隔T全てを通信期間T1に割り当ててスリープ期間T2を0にしてもよい。また図8に示すように通信期間T1を終点Ts1〜Ts3等に設定することで基本間隔Tよりも短くするようにしてもよい。かかる場合には終点Ts1〜Ts3がスリープ期間T2の始点となる。
【0066】
ここでCS2からノード3−4に対して制御データを送信する場合には、この制御支援端末であるCS2からノード3−1を介してノード3−4へこれを送信することとなるが、これら制御支援端末(CS2、ノード3−1、ノード3−4)については図9のタイムチャートに示すように基本間隔T全てを通信期間T1に割り当ててスリープ期間T2を0にする場合を例に取り説明をする。このようにアクティブな通信期間T1の時間割合を増大させた状態で、CS2からノード3−4に対して制御用のデータD22を下りデータ通信する。
【0067】
CS2はタイミングt14においてこのデータD22を生成し、これをノード3−1へ送信する。ノード3−1は基本間隔全てが通信期間T1に割り当てられているため、タイミングt14においてデータD22を受信することができ、同じタイミングt14において当該データD22をノード3−4へ送信することができる。ノード3−4も基本間隔全てが通信期間T1に割り当てられているため、データD22をこのタイミングt14において受信することができる。
【0068】
このため、本実施形態によれば、CS2からノード3−4に対してデータD22をより迅速に下りデータ通信することが可能となる。仮にデータD22が緊急性を要するものである場合においても、スリープ期間T2が経過するまで待機すること無くデータD22を被制御端末としてのノード3−4に送信することが可能となり、当該データD22に基づいて行われるノード3−4における各種制御が迅速に実行させることとなる。その結果、CS2から被制御端末としてのノード3−4へのデータD22の送信が遅れることによる深刻な制御遅延を引き起こしてしまうことを防止することができる。
【0069】
ちなみに、これら制御支援端末(CS2、ノード3−1、ノード3−4)間において、ノード3−4からCS2に向けてデータD23を上りデータ通信を行う場合には、この時間割合を増大させた通信期間T1を利用して行うようにしてもよい。また図9に示すようにCS2、ノード3−1、ノード3−4が制御支援端末として特定されておらず、通信期間T1の時間割合を増大されていない場合を仮定し、マスター側から指定された通信期間T1に合わせてデータD23を送信するようにしてもよい。かかる場合には、図9に示すようにタイミングt15においてノード3−4が生成したデータD23を、タイミングt16において開始する通信期間T1においてノード3−1へ上りデータ通信する。そしてノード3−1は、CS2により指定されたタイミングt17において開始する通信期間T1においてデータD23を送信することとなる。
【0070】
特に緊急性を要する制御用のデータを送る必要があるノード3は、全体のノード数の中で僅かに過ぎない。従って、全ノード数に対する、制御支援端末の割合は、非常に小さいものとなる。このような制御支援端末のみ上述したように通信期間T1の時間割合を増大させ、それ以外のノード3については従来と同様に通信期間T1の時間割合を増大させることなくスリープ期間T2を長く取ることにより、無線通信システム1全体の消費電力はそれほど上昇することなく、同様に省電力性は維持し続けることが可能となる。
【0071】
従って本実施形態によれば、システム全体の省電力性は維持しつつ、CS2からノード3への緊急性を要するデータをより迅速に下りデータ通信することが可能となる。
【0072】
なお本実施形態は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば図8に示す通信期間T1の増大量をCS2から被制御端末のノード3へ送信するまでの許容遅延時間に基づいて決定するようにしてもよい。ここでいう許容遅延時間とは、CS2から被制御端末のノード3に緊急性を要する制御用のデータを送る上で許容される遅延時間である。この許容遅延時間は、例えばCS2において制御用のデータを生成した時点を開始時として何秒以内等のように定義されるものであってもよい。無線通信システム1は、実際に制御支援端末の特定時において被制御端末から送信される情報に基づいて許容遅延時間を識別し、当該許容遅延時間に基づいて通信期間T1の増大量を決定するようにしてもよい。特に被制御端末が複数存在する場合には、それぞれから送信されてくる情報を把握し、当該被制御端末間において互いに増大量を異ならせるようにしてもよい。
【0073】
ちなみに被制御端末における許容遅延時間は、当該被制御端末から取得した情報に基づいて設定するようにしてもよいが、予めCS2側にユーザ又はシステム管理者を介して入力されるものであってもよい。また無線通信システム1が稼動後にCS2が各ノード3に都度問合せをし、その応答に含まれるデータを識別することで許容遅延時間を算出するようにしてもよい。かかる場合には、ノード3から送られてくるデータが、制御系を有するアクチュエータ特有のデータか否かを先ず判別し、アクチュエータ特有のデータであればその詳細を分析する。例えば、ノード3がアクチュエータであってバルブを閉める制御を担うものであれば、そのバルブが閉まるまでの時間や、そのバルブが設けられた管体を流れる流体の流速、更にはその管体のサイズ等のデータを取得し、これに基づいて許容遅延時間を設定するようにしてもよい。かかる場合には、通信期間T1の時間割合の増大量は、許容遅延時間が長くなるにつれて短くなるように設定することが望ましい。
【0074】
また無線通信システム1は、通信期間T1の時間割合の増大量を決定する上で更にCS2から被制御端末間のノード数に応じて決定するようにしてもよい。例えば図2の例では、CS2から被制御端末としてのノード3−4間のノード数は、1となる。このCS2から被制御端末間のノード数が多くなるほど、CS2から被制御端末のノード3に緊急性を要するデータが到達するのが遅くなってしまう。逆にこのCS2から被制御端末間のノード数が多くなるにつれて、この通信期間T1の時間割合の増大量を長くすることにより、被制御端末への緊急性を要する制御データの到達時間を速めることが可能となる。
【0075】
更に本実施形態によれば、図10に示すように、被制御端末のノード3からCS2に向けて非常に緊急の上りデータ通信を行う場合には、時間割合が増大された通信期間T1を優先的に使用するようにしてもよい。例えば被制御端末としてのノード3−4がアクチュエータとしての制御機能を持つと共に、各種データを検出するセンシング機能を備えるものである場合において、例えば破裂音やノイズ、ネジの緩み等、故障に繋がる緊急用のデータが検出される場合がある。このような緊急用のデータがt18において検出された場合には、ノード3−4は、これに基づくデータD24を生成してノード3−1に送信する。ノード3−1は、係るデータD24をCS2へ上りデータ通信する。
【0076】
制御支援端末は、通信期間T1の時間割合が予め増大されていることから、仮に通信期間T1を基本間隔Tまで時間割合を増大させることにより、t18において生成された緊急用のデータD24はスリープ期間T2において特に待機することなく即座にCS2に送ることが可能となる。
【0077】
なお、本実施形態の無線通信システム1は、例えば上述した実施形態と組み合わせてもよい。これにより、システム全体における省電力の効果をさらに向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0078】
1 無線通信システム
2,71 CS
3,71 ノード
72 ノード
B 同期用通信
D データ
R 通信期間比率
T 基本間隔
T1 通信期間
T2 スリープ期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12