【文献】
篠崎直也ほか,2つのセンサーを使用した高精度台はかりの開発,センシングフォーラム資料,第27回,2010年09月27日,第189−191頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被計量物を載置する計量皿が、荷重検出センサを含む荷重検出ユニットの複数個によって支持され、前記荷重検出ユニットの各々で計測された計量データが加算されて前記被計量物の荷重が算出される計量装置であって、
前記荷重検出ユニットの各々に対応して設けられた、前記荷重検出ユニットから出力される離散的な計量データを用いて、該離散的な計量データを繋ぐ補間式を生成する補間式生成部と、
前記荷重検出ユニットの各々に対応して設けられた、前記補間式を用いて任意のサンプリングタイミングにおける前記計量データのサンプリングデータを生成するサンプリングデータ生成部と、
前記サンプリングデータ生成部の各々が同一のサンプリングタイミングで生成した複数の前記サンプリングデータを加算し、得られたサンプリング加算データを出力する加算部と、
を備えることを特徴とする計量装置。
被計量物を載置する計量皿が、荷重検出センサを含む荷重検出ユニットの複数個によって支持され、前記荷重検出ユニットの各々で計測された計量データが加算されて前記被計量物の荷重が算出される計量装置の計量方法であって、
前記荷重検出ユニットの各々から出力される離散的な計量データを用いて、該離散的な計量データを繋ぐ補間式を前記荷重検出ユニットごとに生成する補間式生成ステップと、
前記荷重検出ユニットの各々に対応する前記補間式を用いて、各荷重検出ユニットの計量データの同一のサンプリングタイミングにおけるサンプリングデータを生成するサンプリングデータ生成ステップと、
前記サンプリングデータ生成ステップにおいて同一のサンプリングタイミングに生成された前記サンプリングデータの各々を加算する加算ステップと、
を備えることを特徴とする計量方法。
【背景技術】
【0002】
重い被計量物を量る台秤等では、内部に組み込まれた複数の荷重検出センサを使って計量し、各荷重検出センサによる計量値を合算して被計量物の重量を算出することが行われている。
例えば下記特許文献1には、複数の音叉センサを使って被計量物の重量を算出する計量装置が記載されている。
音叉センサは、
図19に示すように、音叉振動子1の両端に加わる荷重Fに応じて音叉振動子1の振動数が変化する原理を利用して荷重を検出しており、荷重に応じて変化する音叉振動子1の振動周波数を圧電素子2で検出し、その信号をデジタル処理して荷重を求めている。
【0003】
音叉振動子1の振動周波数の検出には、振動周期Tを測定し、その逆数(1/T)により振動周波数を算出するレシプロカル方式が用いられている。
図20は、この振動周期の測定方法を示している。音叉振動子から出力される音叉パルスが、それを数える波数カウンタに入力する。波数カウンタは、音叉パルスを一定数カウントするとオフ状態からオン状態に遷移し、オン状態で音叉パルスを所定数(N
IN個)カウントするとオン状態からオフ状態に遷移し、この動作を繰り返す。波数カウンタのオン・オフ信号と周期T
REFの基準クロックとがANDゲートに入力し、波数カウンタがオン状態の間の基準クロック数(N
PEF個)で表される周期データが周期測定カウンタから出力される。この場合、音叉パルスの周期(T
IN)は、
T
IN=(N
REF/N
IN)×T
REF
となり、音叉振動子の振動周波数は、1/T
INとなる。この振動周波数の演算や、それに基づく荷重データの算出が演算部で行われる。演算部は、周期測定カウンタから周期データが出力されるごとに音叉振動子に作用する荷重データを算出して出力する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図21に模式的に示すように、計量皿に載る被計量物を複数の音叉式センサ11、12で測定する場合、音叉式センサ11に作用する荷重と、音叉式センサ12に作用する荷重とが異なっていると、
図20の波数カウンタのオン期間の長さが相違するので、
図22に示すように、音叉式センサ11の検知データに基づいて測定される重量値の測定タイミングと、音叉式センサ12の検知データに基づいて測定される重量値の測定タイミングとに“ズレ”が生じる。
そのため、両方の音叉式センサ11、12の検知データに基づいて測定された重量値を加算すると、測定タイミングの異なる重量値を合算することになる。
例えば、被計量物が容器に入れた液体であると、音叉式センサ11、12の各々を用いて測定される重量値は、液揺れのために時間的に変化する。このように、重量値が時間的に変化する場合は、測定タイミングの異なる重量値を合算しても、被計量物の精確な重量値を得ることができない。
【0006】
精確な重量値を得ようとすると、それぞれの重量値の時間的変化が収まるまで待つ必要がある。
図23は、容器に入れた液体を被計量物として、その重量値を測定したときの重量値の時間変動を示している。重量値の時間的変化が収まるまでには、多くの時間が掛かることが分かる。
【0007】
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、複数の荷重検出センサを用いて被計量物を計量する計量装置であって、高精度の計量を短時間に実施できる装置を提供し、また、その計量方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被計量物を載置する計量皿が、荷重検出センサを含む荷重検出ユニットの複数個によって支持され、荷重検出ユニットの各々で計測された計量データが加算されて被計量物の荷重が算出される計量装置であって、荷重検出ユニットの各々に対応して設けられた、荷重検出ユニットから出力される離散的な計量データを用いて、この離散的な計量データを繋ぐ補間式を生成する補間式生成部と、荷重検出ユニットの各々に対応して設けられた、前記補間式を用いて任意のサンプリングタイミングにおける計量データのサンプリングデータを生成するサンプリングデータ生成部と、サンプリングデータ生成部の各々が同一のサンプリングタイミングで生成した複数のサンプリングデータを加算し、得られたサンプリング加算データを出力する加算部と、を備えることを特徴とする。
この計量装置では、各々の荷重検出ユニットの計量データから生成された夫々の補間式を用いて同一タイミングのサンプリングデータを得ることができ、それらを加算することで、サンプリングタイミングに“ズレ”がないサンプリングデータ同士を合算することができる。
【0009】
また、本発明の計量装置では、荷重検出センサとして、加わる荷重に応じて振動周波数が変化する音叉式センサを用いることができる。
音叉式センサからは離散的な計量データが得られるため、本発明の計量装置の荷重検出センサとして適している。
【0010】
また、本発明の計量装置では、補間式生成部で、フルーエンシ補間、線形補間、多項式補間、あるいはスプライン補間を行うための補間式が生成される。
各種の補間式が利用可能である。
【0011】
また、本発明の計量装置では、サンプリング加算データに含まれるノイズ成分を除去するため、ノッチフィルタを備えるノイズ除去部をさらに設けることが望ましい。
ノッチフィルタを用いて、サンプリング加算データに含まれる液揺れの周波数成分等を除去することができる。
【0012】
また、本発明の計量装置では、ノイズ除去部に、さらに、加算部から前後して出力されるサンプリング加算データの差分を算出する差分算出部と、差分算出部から出力されるサンプリング差分データからノイズ成分を除去するようにフィルタ係数の更新を繰り返す適応ノッチフィルタと、を設け、サンプリング加算データが入力するノッチフィルタのフィルタ係数として適応ノッチフィルタのフィルタ係数をコピーするようにしても良い。
サンプリング加算データに周波数が不明なノイズが乗っていても、それを適応的に除去することができる。
【0013】
また、本発明の計量装置では、ノッチフィルタの出力のステップ応答を補正するステップ応答補正部を更に設けることが望ましい。
ステップ応答が悪いIIR(無限インパルス応答)フィルタの特性を改善できる。
【0014】
また、本発明は、被計量物を載置する計量皿が、荷重検出センサを含む荷重検出ユニットの複数個によって支持され、荷重検出ユニットの各々で計測された計測データが加算されて被計量物の荷重が算出される計量装置の計量方法であって、荷重検出ユニットの各々から出力される離散的な計量データを用いて、この離散的な計量データを繋ぐ補間式を荷重検出ユニットごとに生成する補間式生成ステップと、荷重検出ユニットの各々に対応する補間式を用いて、各荷重検出ユニットの計量データの同一のサンプリングタイミングにおけるサンプリングデータを生成するサンプリングデータ生成ステップと、サンプリングデータ生成ステップにおいて、同一のサンプリングタイミングで生成された複数のサンプリングデータを加算する加算ステップと、を備えることを特徴とする。
この計量方法により、サンプリングタイミングに“ズレ”がないサンプリングデータ同士を合算することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の計量装置及び計量方法により、複数の荷重検出センサを用いて被計量物を計量するときの計量精度を高めることができ、且つ、計量時間の短縮化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る計量装置の構成をブロック図で示している。
この装置は、被計量物が載置された計量皿3を支える複数の荷重検出ユニット21、22と、各荷重検出ユニット21、22に内蔵された荷重検出センサ211、221と、荷重検出ユニット21、22から出力される離散的な計量データを用いて、この離散的な計量データを繋ぐ補間式を生成する補間式生成部31、32と、補間式を用いて指定されたタイミングにおける計量データのサンプリングデータを生成するサンプリングデータ生成部41、42と、サンプリングデータ生成部41、42に対して共通の計測タイミングを指示する計測タイミング指示部51と、サンプリングデータ生成部41、42の夫々が同一のタイミングに生成したサンプリングデータを加算する加算部52と、必要に応じて加算部52の出力からノイズを除去するノイズ除去部60とを備えている。
なお、補間式生成部31、32、サンプリングデータ生成部41、42、計測タイミング指示部51、加算部52及びノイズ除去部60は、マイクロコンピュータやDSP(Digital Signal Processer)等の演算処理装置がプログラムで指定された処理を実行することにより実現される。
【0018】
この装置では、音叉センサ等の荷重検出センサ211、221がそれぞれに加わる荷重を検知し、その検知データを基に各荷重検出ユニット21、22で計量データが算出されて、荷重検出ユニット21、22から離散的に出力される。
補間式生成部31、32は、荷重検出ユニット21、22から出力される離散的な計量データを用いて、この離散的な計量データを繋ぐ補間式を生成する。
例えば、線形補間を行う場合は、
図2(a)に示すように、時刻t
0に出力された計量データS
toと、時刻t
1に出力された計量データS
t1とから、時刻t
0と時刻t
1との間の任意の時刻tにおける計量データS
tを求める式として、
図2(b)に示す補間式を作成する。
【0019】
また、フルーエンシ補間を行う場合は、
図3に示すフルーエンシ標本化関数s(t)を用いて補間式を作成する。
フルーエンシ標本化関数s(t)は、着目するサンプリングデータ(基準データ)の入力時刻をt
0、基準データの前に入力したサンプリングデータの入力時刻をt
-1、更にその前に入力したサンプリングデータの入力時刻をt
-2、基準データの後に入力したサンプリングデータの入力時刻をt
1、更にその後に入力したサンプリングデータの入力時刻をt
2とするとき、
図4に示すように、
区間{t
-2、(t
-2+t
-1)/2}の関数が式(54)のs
1(t)で表され、
区間{(t
-2+t
-1)/2、t
-1}の関数が式(55)のs
2(t)で表され、
区間{t
-1、(t
-1+t
0)/2}の関数が式(56)のs
3(t)で表され、
区間{(t
-1+t
0)/2、t
0}の関数が式(57)のs
4(t)で表され、
区間{t
0、(t
0+t
1)/2}の関数が式(58)のs
5(t)で表され、
区間{(t
0+t
1)/2、t
1}の関数が式(59)のs
6(t)で表され、
区間{t
1、(t
1+t
2)/2}の関数が式(60)のs
7(t)で表され、
区間{(t
1+t
2)/2、t
2}の関数が式(61)のs
8(t)で表される区分的多項式である。
フルーエンシ標本化関数s(t)では、基準データの振幅が1、基準データの前後の二つずつのサンプリングデータの振幅が全て0に設定されている。
【0020】
図5は、離散的なサンプリングデータの入力に合わせて、基準データの振幅に実際のサンプリングデータの振幅を適用し、基準データ以外のサンプリングデータの振幅を0に設定したフルーエンシ標本化関数71、72、73、74、75が順次作成される様子を示している。
なお、ここでは、サンプリングデータの振幅が1秒後に0から1に変わる場合を示しているが、入力するサンプリングデータの振幅が時間によって変化するときは、それに応じて個々のフルーエンシ標本化関数71、72、73、74、75のピークが変化することになる。
図5の実線80は、フルーエンシ標本化関数71、72、73、74、75を線形結合した線であり、補間式を表している。時刻tにおける補間値81は、フルーエンシ標本化関数71、72及び73の時刻tの値を加算することにより求めることができる。
【0021】
計測タイミング指示部51は、所定数のクロック信号が入力するごとに、サンプリングデータ生成部41、42に対して同時にサンプリングデータの生成を指示する。
サンプリングデータ生成部41、42は、補間式生成部31、32の各々で作成された補間式を用いて、生成指示がされた時刻のサンプリングデータを算出する。
加算部52は、サンプリングデータ生成部41、42の夫々が同一のタイミングで生成したサンプリングデータを加算し、出力する。
ノイズ除去部60の動作については後述する。
【0022】
図6は、
図23の場合と同一計量条件のもとで、二つの荷重検出センサの計量値に対して、線形補間を適用したときの合算計量値の時間変動を示している。
また、
図7は、
図23の場合と同一計量条件のもとで、二つの荷重検出センサの計量値に対して、フルーエンシ補間を適用したときの合算計量値の時間変動を示している。
いずれの場合も、計量値の時間変動は、
図23の場合に比べて、極めて短時間で収束している。
そのため、この計量装置では、計量時間の短縮化が可能であり、また、高精度の計量が可能である。
図8は、
図6及び
図7における一部の時間帯の特性を拡大して示している。
図8において、点線は線形補間を実施したときの特性を示し、実線はフルーエンシ補間を実施したときの特性を示している。
図8から、フルーエンシ補間の方が、線形補間に比べてノイズが乗り難く、好ましいことが分かる。
一方、線形補間は、演算量がフルーエンシ補間に比べて少なく、処理負担が軽いという利点がある。
なお、ここでは、フルーエンシ補間及び線形補間について説明したが、多項式補間((N+1)個のサンプリングデータを繋ぐN次多項式を補間式とする補間)やスプライン補間((N+1)個のサンプリングデータ間をN個の多項式による曲線で繋ぎ合わせた区分多項式を補間式とする補間)等による補間を行っても良い。
【0023】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、
図1の構成において、加算部52から出力される合算計量値のノイズを除去するノイズ除去部60の構成について説明する。
図9は、
図8に示す合算計量値の時間変動部分の周波数特性を示している。
図9において、パワーが大きい周波数成分(丸印で囲んだ部分)は、被計量物の液揺れによって発生している。この周波数成分を除くことで、合算計量値のノイズを大幅に抑制できる。
ノイズの抑制には、特定周波数のゲインを極小化できるノッチフィルタを使用する。
図10には、ノッチフィルタのブロック図を示している。
図10において、nはサンプル番号を表し、x(n)はノッチフィルタへの入力信号、e(n)はノッチフィルタの出力信号、u(n)は状態変数を表している。また、a(n)はフィルタ係数であり、rは除去帯域幅を決定する帯域幅決定パラメータである。
【0024】
ノッチフィルタの係数a(n)とノッチフィルタの中心周波数f(n)との関係は、
a(n)=−(1+r)cos{2π・f(n)/fs} (数1)
で与えられる。ここで、fsはサンプリング周波数(=計測タイミング指示部51から出力されるサンプリング指示の周波数)である。
ノッチフィルタの振幅特性は、
図11に示すように、帯域幅決定パラメータrの値により変化し、rが1に近づくほど、中心周波数f(n)での帯域幅が狭くなり、急峻な減衰特性を持つ。一方、rが0に近づくと、帯域幅が広くなり、減衰特性が緩やかになるが、中心周波数f(n)に一致しない周波数のノイズであっても、その周波数がf(n)の近傍であれば、減衰される。
こうした点を考慮し、これまでの実験結果等を踏まえて、r=0.3に設定する。
【0025】
フィルタ係数a(n)は、(数1)において、f(n)を
図9のパワー最大の周波数に設定し、パラメータrをr=0.3に設定して求めることができる。
こうして設定した固定フィルタ係数を持つノッチフィルタを通すことで、加算部52から出力される合算計量値の時間変動は、抑制される。
図12は、このノッチフィルタを通して出力される合算計量値の時間変動を示している。
また、
図13は、
図12に示す時間変動の周波数特性を示している。
図12を
図6、
図7と比較し、
図13を
図9と比較すれば明らかなように、固定フィルタ係数を持つノッチフィルタは、ノイズ除去に大きく貢献している。
【0026】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、ノイズ除去用のノッチフィルタのフィルタ係数を適応的に設定するノイズ除去部60について説明する。
このノイズ除去部60は、
図14に示すように、加算部52から出力されるサンプリングデータの後退差分を算出して差分信号を出力する差分算出部621と、差分信号からフラットな信号を得るようにフィルタ係数の更新を繰り返す適応ノッチフィルタ622と、適応ノッチフィルタ622のフィルタ係数の収束状態を監視するフィルタ係数監視部623と、加算部52から出力されるサンプリングデータのノイズを除去するノッチフィルタ626と、適応ノッチフィルタ622のフィルタ係数が収束状態にあるとき、適応ノッチフィルタ622のフィルタ係数をノッチフィルタ626のフィルタ係数としてコピーする係数更新部624と、ノッチフィルタ626の出力のステップ応答を補正するステップ応答補正部627と、適応ノッチフィルタ622のフィルタ係数が収束状態に無いとき、加算部52から出力されるサンプリングデータをノッチフィルタ626を通さずに出力する選択部625と、を備えている。
【0027】
このノイズ除去部60において、差分算出部621は、加算部52から順次出力される合算計量値のサンプリングデータの時間的に前後するデータx(n)、x(n−1)を用いて次式(数2)により差分信号y(n)を算出し、出力する。
y(n)=x(n)−x(n−1) (数2)
y(n)は、合算計量値の信号から直流成分(即ち、被計量物の重量に相当する成分)を除いたノイズ成分の信号に相当する。
【0028】
適応ノッチフィルタ622は、
図15に示すように、ノッチフィルタ626(
図10)と同様の構成を有している。この適応ノッチフィルタ622は、差分信号y(n)からノイズ成分を除去するため、次式(数3)によりノッチ係数a(n)の更新を繰り返す。
a(n+1)=a(n)−μ(n)u(n−1)e(n) (数3)
μ(n)=μ
0Σλ
ke
2(n−k)
(Σは、k=0からnまで加算)
(数3)において、λは忘却係数、μ
0はステップサイズ、μ(n)は可変ステップサイズである。
【0029】
係数監視部623は、適応ノッチフィルタ622のフィルタ係数a(n)を監視し、
a(n)−a(n−1)≦0.02 (数4)
のとき、フィルタ係数が収束状態にあると判定し、(数4)の収束条件を満たさないとき、フィルタ係数が収束状態にないと判定する。係数監視部623は、その判定結果を選択部625及び係数更新部624に伝える。
適応ノッチフィルタ622のフィルタ係数が収束状態にあるとき、選択部625は、加算部52から順次出力される合算計量値のサンプリングデータx(n)をノッチフィルタ626に供給し、係数更新部624は、このノッチフィルタ626のフィルタ係数として適応ノッチフィルタ622のフィルタ係数をコピーする。
このノッチフィルタ626は、加算部52から出力される合算計量値の信号からノイズ成分を除いて出力する。
【0030】
なお、選択部625は、適応ノッチフィルタ622のフィルタ係数が収束状態にないときには、加算部52からの合算計量値の信号を、ノッチフィルタ626を通さずに出力する。これは、ノッチフィルタ626のフィルタ係数の更新が完了しなければ、合算計量値の信号に対するノイズ除去効果が得られないためである。
【0031】
ステップ応答補正部627は、ノッチフィルタ626のステップ応答による出力信号の乱れを補正する。
ステップ信号が入力するノッチフィルタ626では、帯域幅決定パラメータrの値に応じて、リンギングや立ち上がりの遅れなどのステップ応答が発生する。ステップ応答補正部627は、ノッチフィルタ626の出力信号に含まれる「ステップ応答を悪化させる成分」を打ち消す信号を発生して、出力信号の乱れを補正する。
【0032】
具体的には、次のとおりである。
図16に示すように、ノッチフィルタの伝達関数は(数5)で表せる。ここで、X(z)は入力、Y(z)は出力である。
(数6)に示す振幅Aのステップ信号がノッチフィルタに入力すると、ノッチフィルタの出力は(数7)のようになる。
(数7)を逆Z変換すると、ノッチフィルタの出力y(n)は(数8)のようになる。
(数8)において第2項がステップ応答を悪化させる項である。
ステップ応答補正部627は、ノッチフィルタ入力の瞬時値x(n)を用いて、ノッチフィルタの出力y(n)から(数8)の第2項をキャンセルさせる項((数9)の第2項)を作成し、(数9)のw(n)をステップ応答補正部627から出力する。
【0033】
図17は、液体を容器に入れた同一の被計量物に対して、従来の方法で計量した場合、補間を実施した場合、補間及びノッチフィルタによるノイズ除去を実施した場合、並びに補間・ノイズ除去及びステップ応答補正を実施した場合の4通りの計量結果を示している。
図17から、補間の実施により計量時間の短縮化が図れること、しかし、液揺れの影響を短時間で完全に抑えることは難しいことが分かる。また、補間及びノイズ除去により、液揺れの影響が短時間で除去できることが分かり、補間及びノイズ除去とステップ応答補正とを実施することにより、液揺れの影響がさらに短時間で収束することが分かる。
【0034】
図18は、補間、適応ノッチフィルタを用いるノイズ除去及びステップ応答補正を実施する計量方法の手順をフロー図で示している。
各荷重検出ユニットから離散的計量データが出力されると(ステップ1)、それらの計量データを繋ぐ補間式を生成し(ステップ2)、補間式を用いて同一タイミングのサンプリンデータを生成する(ステップ3)。
次いで、各荷重検出ユニットの計量データに基づく同一タイミングの複数のサンプリンデータを加算してサンプリング加算データを生成し(ステップ4)、時間的に前後するサンプリング加算データの差分を算出し(ステップ5)、得られたサンプリング差分データを適応ノッチフィルタに与えて、ノイズ除去が可能なフィルタ係数を求める(ステップ6)。
【0035】
適応ノッチフィルタのフィルタ係数が収束条件を満たす場合は(ステップ7でYes)、そのフィルタ係数を、サンプリング加算データが入力するノッチフィルタのフィルタ係数として設定し、そのノッチフィルタでサンプリング加算データのノイズを除去する(ステップ8)。
また、ステップ7において、適応ノッチフィルタのフィルタ係数が収束条件を満たさない場合は(ステップ7でNo)、サンプリング加算データをノッチフィルタを通さずに出力する。
サンプリング加算データのノイズをノッチフィルタで除去したときは、ノッチフィルタの出力に対してノッチフィルタのステップ応答を補正する処理を行った後、出力する(ステップ9)。
こうした処理により、複数の荷重検出センサを用いて被計量物を計量するときの計量精度を高め、計量時間を短縮することができる。
【0036】
ここでは、荷重検出センサとして音叉センサを用いる場合について説明したが、本発明は、他の荷重検出センサを用いる場合にも適用できる。
【0037】
本発明の計量装置には、次のような態様も含まれる。
計量装置が、適応ノッチフィルタのフィルタ係数の収束状態を監視するフィルタ係数監視部を備え、適応ノッチフィルタのフィルタ係数が収束状態にあるとき、適応ノッチフィルタのフィルタ係数がコピーされたノッチフィルタにサンプリング加算データが供給され、適応ノッチフィルタのフィルタ係数が収束状態に無いとき、サンプリング加算データがノッチフィルタを経ずに出力されること。
【0038】
本発明の計量方法には、次のような態様も含まれる。
加算ステップで得られたサンプリング加算データに含まれるノイズ成分をノッチフィルタで除去するノイズ除去ステップをさらに備えること。
ノイズ除去ステップでは、さらに、サンプリング加算データの時間的に前後するデータの差分を算出してサンプリング差分データを得る差分算出ステップと、サンプリング差分データを適応ノッチフィルタに与えてノイズ成分を除去するフィルタ係数を求めるフィルタ係数算出ステップと、サンプリング加算データが入力するノッチフィルタのフィルタ係数としてフィルタ係数算出ステップで求めた適応ノッチフィルタのフィルタ係数をコピーするフィルタ係数設定ステップと、を備えること。
ノイズ除去ステップでは、さらに、ノッチフィルタの出力のステップ応答を補正するステップ応答補正ステップを更に備えること。
フィルタ係数算出ステップにおける適応ノッチフィルタのフィルタ係数の収束状態を監視し、フィルタ係数が収束状態にあるとき、フィルタ係数設定ステップに進み、適応ノッチフィルタのフィルタ係数が収束状態に無いとき、サンプリング加算データを、ノッチフィルタを経ずに出力すること。