特許第6985702号(P6985702)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985702
(24)【登録日】2021年11月30日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】振動発電装置および振動発電素子
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/06 20060101AFI20211213BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   H02N1/06
   B81B3/00
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-105434(P2018-105434)
(22)【出願日】2018年5月31日
(65)【公開番号】特開2019-213294(P2019-213294A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2019年11月19日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト/超高効率データ抽出機能を有する学習型スマートセンシングシステムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】年吉 洋
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 久幸
(72)【発明者】
【氏名】森田 將裕
【審査官】 三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−011547(JP,A)
【文献】 特開2014−050249(JP,A)
【文献】 特開2017−070163(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/019919(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/06
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに噛合する第1固定櫛歯部および第1可動櫛歯部で構成される第1振動発電構成体と、
互いに噛合する第2固定櫛歯部および第2可動櫛歯部で構成される第2振動発電構成体と、
前記第1振動発電構成体に接続される第1出力電極と、
前記第2振動発電構成体に接続される第2出力電極と、を備え、
前記第1振動発電構成体の静電容量と前記第2振動発電構成体の静電容量とを異ならせることで、前記第1振動発電構成体および前記第2振動発電構成体の開放電圧は、互いに同期し、かつ、振幅が異な
前記第1可動櫛歯部および前記第2可動櫛歯部は同一の可動部に設けられ、
前記第1振動発電構成体および前記第2振動発電構成体の内、静電容量の大きい振動発電構成体の出力を電力用出力とし、静電容量の小さい振動発電構成体の出力を、前記電力用出力の振幅情報を得るためのモニタ用信号とする、振動発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動発電装置に用いられる振動発電素子であって、
前記第1固定櫛歯部および前記第1可動櫛歯部で構成される前記第1振動発電構成体と、
前記第2固定櫛歯部および前記第2可動櫛歯部で構成される前記第2振動発電構成体と、を備え、
前記第1固定櫛歯部に含まれる櫛歯の各々が互いに分離形成されて前記第1出力電極が各々に接続されると共に、前記第2固定櫛歯部に含まれる櫛歯の各々が互いに分離形成されて前記第2出力電極が各々に接続されるか、または、前記第1可動櫛歯部に含まれる櫛歯の各々が互いに分離形成されて前記第1出力電極が各々に接続されると共に、前記第2可動櫛歯部に含まれる櫛歯の各々が互いに分離形成されて前記第2出力電極が各々に接続される、振動発電素子。
【請求項3】
請求項1に記載の振動発電装置に用いられる振動発電素子であって、
前記第1固定櫛歯部および前記第1可動櫛歯部で構成される前記第1振動発電構成体と、
前記第2固定櫛歯部および前記第2可動櫛歯部で構成される前記第2振動発電構成体と、を備え、
前記第1固定櫛歯部と前記第2固定櫛歯部とが電気的に絶縁され、前記第1固定櫛歯部に前記第1出力電極が接続されると共に前記第2固定櫛歯部に前記第2出力電極が接続されるか、または、前記第1可動櫛歯部と前記第2可動櫛歯部とが電気的に絶縁され、前記第1可動櫛歯部に前記第1出力電極が接続されると共に前記第2可動櫛歯部に前記第2出力電極が接続される、振動発電素子。
【請求項4】
請求項に記載の振動発電素子において、
互いに電気的に絶縁された前記第1固定櫛歯部および前記第2固定櫛歯部の少なくとも一方は互いに分離形成された2以上の固定櫛歯群を有し、または、互いに電気的に絶縁された前記第1可動櫛歯部および前記第2可動櫛歯部の少なくとも一方は互いに分離形成された2以上の可動櫛歯群を有する、振動発電素子。
【請求項5】
請求項から請求項までのいずれか一項に記載の振動発電素子であって、
前記第1固定櫛歯部および前記第1可動櫛歯部で構成される前記第1振動発電構成体と、
前記第2固定櫛歯部および前記第2可動櫛歯部で構成される前記第2振動発電構成体と、を備え、
前記第1固定櫛歯部および前記第1可動櫛歯部に含まれる櫛歯の総数が、前記第2固定櫛歯部および前記第2可動櫛歯部に含まれる櫛歯の総数と異なる、振動発電素子。
【請求項6】
請求項から請求項までのいずれか一項に記載の振動発電素子であって、
前記第1固定櫛歯部および前記第1可動櫛歯部で構成される前記第1振動発電構成体と、
前記第2固定櫛歯部および前記第2可動櫛歯部で構成される前記第2振動発電構成体と、を備え、
互いに噛合する前記第1固定櫛歯部および前記第1可動櫛歯部の少なくとも一方の櫛歯高さが、互いに噛合する前記第2固定櫛歯部および前記第2可動櫛歯部の櫛歯高さと異なる、振動発電素子。
【請求項7】
請求項から請求項までのいずれか一項に記載の振動発電素子であって、
前記第1固定櫛歯部および前記第1可動櫛歯部で構成される前記第1振動発電構成体と、
前記第2固定櫛歯部および前記第2可動櫛歯部で構成される前記第2振動発電構成体と、を備え、
前記第1固定櫛歯部および前記第1可動櫛歯部の互いに噛合する櫛歯の間隔が、前記第2固定櫛歯部および前記第2可動櫛歯部の互いに噛合する櫛歯の間隔と異なる、振動発電素子。
【請求項8】
請求項から請求項までのいずれか一項に記載の振動発電素子であって、
前記第1固定櫛歯部および前記第1可動櫛歯部で構成される前記第1振動発電構成体と、
前記第2固定櫛歯部および前記第2可動櫛歯部で構成される前記第2振動発電構成体と、を備え、
前記第2固定櫛歯部または前記第2可動櫛歯部の櫛歯長さは、前記第1固定櫛歯部および前記第1可動櫛歯部の櫛歯長さよりも短く設定され、かつ、非振動時において前記第2固定櫛歯部と前記第2可動櫛歯部とが非噛合状態となるように設定されている、振動発電素子。
【請求項9】
請求項から請求項までのいずれか一項に記載の振動発電素子において、
前記第1振動発電構成体および前記第2振動発電構成体は、互いに噛合する櫛歯の少なくとも一方にエレクトレットが形成されている、振動発電素子。
【請求項10】
請求項1に記載の振動発電装置に用いられる振動発電素子であって、
前記第1固定櫛歯部および前記第1可動櫛歯部で構成される前記第1振動発電構成体と、
前記第2固定櫛歯部および前記第2可動櫛歯部で構成される前記第2振動発電構成体と、を備え、
前記第1振動発電構成体および前記第2振動発電構成体は、互いに噛合する櫛歯の少なくとも一方にエレクトレットが形成され、
前記エレクトレットの単位面積当たりの電荷量が、前記第1振動発電構成体と前記第2振動発電構成体とで異なっている、振動発電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発電装置および振動発電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境中からエネルギーを収穫するエナジーハーベスティング技術の一つとして、振動発電素子を用いて環境振動から発電を行う手法が注目されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の振動発電素子では、櫛歯構造の固定電極および可動電極を備え、可動電極の振動によって固定電極と可動電極との対向面積が変化することにより発電を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−070163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、振動発電素子から電力を取り出すための電源回路を振動発電素子に接続すると、電源回路の影響で振動発電素子からの出力波形が変化し、振動発電素子振動状態を正確に把握することが難しいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様による振動発電装置は、互いに噛合する第1固定櫛歯部および第1可動櫛歯部で構成される第1振動発電構成体と、互いに噛合する第2固定櫛歯部および第2可動櫛歯部で構成される第2振動発電構成体と、前記第1振動発電構成体に接続される第1出力電極と、前記第2振動発電構成体に接続される第2出力電極と、を備え、前記第1振動発電構成体の静電容量と前記第2振動発電構成体の静電容量とを異ならせることで、前記第1振動発電構成体および前記第2振動発電構成体の開放電圧は、互いに同期し、かつ、振幅が異なり、前記第1可動櫛歯部および前記第2可動櫛歯部は同一の可動部に設けられ、前記第1振動発電構成体および前記第2振動発電構成体の内、静電容量の大きい振動発電構成体の出力を電力用出力とし、静電容量の小さい振動発電構成体の出力を、前記電力用出力の振幅情報を得るためのモニタ用信号とする。
本発明の第2の態様による振動発電素子は、前記振動発電装置に用いられる振動発電素子であって、前記第1固定櫛歯部および前記第1可動櫛歯部で構成される前記第1振動発電構成体と、前記第2固定櫛歯部および前記第2可動櫛歯部で構成される前記第2振動発電構成体と、を備え、前記第1固定櫛歯部に含まれる櫛歯の各々が互いに分離形成されて前記第1出力電極が各々に接続されると共に、前記第2固定櫛歯部に含まれる櫛歯の各々が互いに分離形成されて前記第2出力電極が各々に接続されるか、または、前記第1可動櫛歯部に含まれる櫛歯の各々が互いに分離形成されて前記第1出力電極が各々に接続されると共に、前記第2可動櫛歯部に含まれる櫛歯の各々が互いに分離形成されて前記第2出力電極が各々に接続される。
本発明の第3の態様による振動発電素子は、前記振動発電装置に用いられる振動発電素子であって、前記第1固定櫛歯部および前記第1可動櫛歯部で構成される前記第1振動発電構成体と、前記第2固定櫛歯部および前記第2可動櫛歯部で構成される前記第2振動発電構成体と、を備え、前記第1固定櫛歯部と前記第2固定櫛歯部とが電気的に絶縁され、前記第1固定櫛歯部に前記第1出力電極が接続されると共に前記第2固定櫛歯部に前記第2出力電極が接続されるか、または、前記第1可動櫛歯部と前記第2可動櫛歯部とが電気的に絶縁され、前記第1可動櫛歯部に前記第1出力電極が接続されると共に前記第2可動櫛歯部に前記第2出力電極が接続される。
本発明の第4の態様による振動発電素子は、前記振動発電装置に用いられる振動発電素子であって、前記第1固定櫛歯部および前記第1可動櫛歯部で構成される前記第1振動発電構成体と、前記第2固定櫛歯部および前記第2可動櫛歯部で構成される前記第2振動発電構成体と、を備え、前記第1振動発電構成体および前記第2振動発電構成体は、互いに噛合する櫛歯の少なくとも一方にエレクトレットが形成され、前記エレクトレットの単位面積当たりの電荷量が、前記第1振動発電構成体と前記第2振動発電構成体とで異なっている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、振動発電素子の振動状態を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る振動発電装置の概略構成を示す図である。
図2図2は、第1固定櫛歯部の他の構成を示す図である。
図3図3は、本実施の形態の比較例を説明するための図である。
図4図4は、本実施の形態の振動発電装置の動作を説明する図である。
図5図5は、振動発電装置を用いた電源装置のブロック図である。
図6図6は、振動発電装置の変形例1を示す図である。
図7図7は、振動発電装置の変形例2を示す図である。
図8図8は、振動発電装置の変形例3を示す図である。
図9図9は、振動発電装置の変形例4を示す図である。
図10図10は、振動発電装置の変形例5を示す図である。
図11図11は、振動発電装置の変形例6を示す図である。
図12図12は、可動部に設けられた複数の可動櫛歯電極を電気的に分離した場合の構成を示す図である。
図13図13は、固定櫛歯群および可動櫛歯群を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る振動発電装置1の概略構成を示す図であり、(a)は平面図、図1(b)は、(a)のA−A断面図である。図1に示す振動発電装置1は、2つの振動発電構成体11A,11Bが設けられた振動発電デバイス10と、振動発電構成体11Aに接続された電力出力用電極20Aと、振動発電構成体11Bに接続されたモニタ用電極20Bとを備えている。振動発電デバイス10は、たとえばSOI(Silicon On Insulator)基板を用いて、一般的なMEMS加工技術により形成される。SOI基板は、たとえばハンドル層が形成される下部Si層と、BOX層が形成されるSiO層と、デバイス層が形成される上部Si層とを重ねて構成されている。
【0009】
振動発電デバイス10は、ベース12と、固定櫛歯電極13a,13b,13cおよび13dが形成された固定部13と、可動櫛歯電極14a,14b,14c,14dおよび14eが形成された可動部14と、可動部14を弾性支持する弾性支持部15とを備えている。可動部14は、一対の弾性支持部15によりベース12に対して弾性的に支持されている。なお、固定櫛歯電極および可動櫛歯電極の数は図1に示したものに限定されない。
【0010】
図1(b)のA−A断面図から分かるように、可動櫛歯電極14a〜14eを有する可動部14と固定櫛歯電極13a〜13dとはSOI基板の上部Si層120から形成され、可動部14および固定櫛歯電極13a〜13dの上面には導電層であるアルミ層131,141が形成されている。なお、アルミ層131,141は、必ずしも可動部14および固定櫛歯電極13a〜13dの上面全体に形成されている必要はない。固定櫛歯電極13a〜13dはSiO層110を介して下部Si層100で形成されるベース12上に固定されている。
【0011】
噛合している固定櫛歯電極13a〜13dと可動櫛歯電極14a〜14eの少なくとも一方には、それぞれ対向面の表面近傍にエレクトレットが形成されている。これにより、固定櫛歯電極13a〜13dと可動櫛歯電極14a〜14eの対向面の少なくとも一方とが、それぞれ帯電されている。なお、エレクトレットを形成する方法としては、例えば、特開2016−149914号公報に示唆されているような方法が知られている。
【0012】
振動発電デバイス10は、外部からの振動により、可動櫛歯電極14a〜14eが固定櫛歯電極13a〜13dに対してx軸方向に振動することで、発電を行う。電力出力用電極20Aは、振動発電構成体11Aを構成する固定櫛歯電極13a,13bおよび13cに接続されており、振動発電構成体11Aにより生じる電流の出力端子として用いられる。一方、モニタ用電極20Bは固定櫛歯電極13dに接続されており、振動発電構成体11Bにより生じる電流の出力端子として用いられる。
【0013】
なお、図1に示した実施の形態では、振動発電デバイス10に設けられた固定櫛歯電極13a〜13dは互いに分離して形成され、各々が電気的に絶縁されている。固定櫛歯電極13a〜13cから成る櫛歯電極群は第1固定櫛歯部を構成し、固定櫛歯電極13dは第2固定櫛歯部を構成する。図1に示す例では、第2固定櫛歯部を構成する固定櫛歯電極は一つの固定櫛歯電極13dのみで構成されているが、例えば、第2固定櫛歯部を構成する固定櫛歯電極の数が複数の場合には、モニタ用電極20Bはそれら固定櫛歯電極の全てに接続される。
【0014】
第1固定櫛歯部の各固定櫛歯電極13a〜13cは振動発電デバイス10の内部において、または外部において電力出力用電極20Aに電気的に接続さされている。ここで、振動発電デバイス10の内部においてとは、振動発電デバイス10単体において配線が形成されているということである。一方、振動発電デバイス10の外部においてとは、振動発電デバイス10単体では固定櫛歯電極13a〜13cは電気的に接続されておらず、振動発電デバイス10が実装されている回路基板側において固定櫛歯電極13a〜13cが回路基板の配線によって電気的に接続されていることを意味している。第2固定櫛歯部の固定櫛歯電極13dはモニタ用電極20Bに接続されている。
【0015】
図1では固定櫛歯電極13a〜13dが分離しているが、図2に示すように固定櫛歯電極13a〜13cを一体としても良い。図2に示す例では、第1固定櫛歯部を構成する固定櫛歯電極13a〜13cは接続部13eによって接続されており、電力出力用電極20Aは接続部13eに接続されている。その他の構成は、図1に示す振動発電装置1と同様である。図1の構成の場合には、モニタ用電極20Bに接続される第2固定櫛歯部の固定櫛歯電極の数を、モニタ信号として必要な出力の大きさやモニタ信号の用途に応じて調整することができる。
【0016】
図3は、本実施の形態の比較例を示す図である。本実施の形態の振動発電装置1では、電力出力用電極20Aとモニタ用電極20Bとから2つの出力を取り出すことができるが、図3(a)に示す振動発電装置30は、1組の可動櫛歯部31および固定櫛歯部32で構成される振動発電構成体を一つ備え、その一つの振動発電構成体から電流を出力する1出力構成となっている。図3(b)は、可動櫛歯部31の振動の振幅xを示し、図3(c)は図3(b)のような振動状態における可動櫛歯部31および固定櫛歯部32間の開放電圧Vを示す。
【0017】
可動櫛歯部31の移動により噛合状態の可動櫛歯電極と固定櫛歯電極との対向面積が変化すると、櫛歯電極の電荷が移動して可動櫛歯電極と固定櫛歯電極との間に電圧が発生する。その結果、開放電圧Vの波形は、可動櫛歯部31の振動の振幅xと同期し、かつ、比例した振幅を有する波形となる。一方、振動発電装置30に電源回路33を接続した場合、整流回路の出力電圧がコンデンサの定格電圧まで上昇すると、電圧が一定のまま抵抗を介して電流が流れる挙動を示す。その結果、コンデンサの定格電圧に達したところで電圧がサチュレーションし、端子間電圧Vは図3(d)に示すように可動櫛歯部31の振幅xに比例した振幅を有する波形とならない。そのため、図3(d)に示す電圧信号Vから、可動櫛歯部31の振動状態を正確に把握することができない。
【0018】
図4は、図2に示した振動発電装置1に電源回路33を接続した場合の図である。図2に示したように、電力出力用電極20Aを有する振動発電構成体11Aの可動櫛歯電極と、モニタ用電極20Bを有する振動発電構成体11Bの可動櫛歯電極とは、同一の可動部14に設けられている。そのため、電源回路33が接続されている場合でも、図4(d)に示すモニタ用電極20Bの電圧V2は、図4(b)に示す可動部14の振幅xに比例した振幅を有する波形となる。一方、電力出力用電極20Aの電圧V1の波形は、電源回路33の影響を受けて図4(c)のような波形となる。
【0019】
前述した図3(a)に示す構成では固定櫛歯部32の固定櫛歯電極の数は4であるが、図4(a)の振動発電構成体11Bの固定櫛歯電極の数は1である。そのため、図4(d)の電圧波形の振幅は、図3(c)の電圧波形の振幅より小さくなる。このように、本実施の形態の振動発電装置1では、モニタ信号用の振動発電構成体11Bの固定櫛歯電極数を、電力用の振動発電構成体11Aの固定櫛歯電極数よりも少なくすることで、電力出力用電極20Aからの出力電力の減少を小さく抑えつつモニタ用信号を得られるような構成とした。
【0020】
図5は、モニタ用電極20Bの出力信号の応用例の一例を示したものであり、振動発電装置1を用いた電源装置のブロック図である。電力用の振動発電構成体11Aの出力は電源部2の電圧変換回路21へ入力される。電源部2には、電圧変換回路21の他に振幅検出回路22および充電部23を備えている。モニタ用の振動発電構成体11Bの出力は振幅検出回路22に入力され、振幅検出回路22で検出された振幅情報が電圧変換回路21へ入力される。電圧変換回路21は、振幅検出回路22から入力された振幅情報に基づいて、例えば、振動発電構成体11Aからの電力が効率よく出力されるように電圧変換を行い、充電部23へ出力する。そのためには、振動発電構成体11Aの出力の振幅情報を正確に把握する必要があるが、本実施の形態では、振動発電構成体11Bの出力を利用することで振幅情報を正確に把握することができる。
【0021】
(変形例1)
図6は振動発電装置1の変形例1を説明する図である。図6(a)は、振動発電デバイス10に設けられた可動櫛歯電極および固定櫛歯電極の構成を示す模式図である。図4に示した構成では、振動発電構成体11Bの固定櫛歯電極数を振動発電構成体11Aの固定櫛歯電極数よりも少なく設定することで、振動発電構成体11Bによるモニタ用信号の振幅の大きさが、振動発電構成体11Aによる出力信号の振幅の大きさよりも小さくなるようにした。
【0022】
変形例1では、固定櫛歯電極の数ではなく、固定櫛歯電極と可動櫛歯電極との間隔を振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとで異ならせ、それにより振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとで静電容量を相違させて、振動発電構成体11A,11Bの出力を異ならせるようにした。図6(a)では、振動発電構成体11Bの固定櫛歯電極13c,13dの横幅W2を振動発電構成体11Aの固定櫛歯電極13a,13bの横幅W1よりも小さく設定した。その結果、振動発電構成体11A,11Bにおける固定櫛歯電極と可動櫛歯電極との間隔d1,d2はd1<d2のようになる。なお、振動発電構成体11Bの固定櫛歯電極13c,13dの横幅をW2に設定する代わりに、例えば可動櫛歯電極14d,14eの横幅をW2に設定しても良い。
【0023】
なお、図6(a)では、固定櫛歯電極の横幅を異ならせることで振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとの間で出力を異ならせることを説明するため、振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとで固定櫛歯電極の数を同数とした。しかし、固定櫛歯電極の横幅を異ならせる場合においても、振動発電構成体11Aの出力を可能な限り大きくするためには、振動発電構成体11Bの固定櫛歯電極数を図4(a)の場合と同様の固定櫛歯電極数とするのが好ましい。
【0024】
図6(a)のように、固定櫛歯電極13c,13dの横幅W2をW2<W1のように設定すると、固定櫛歯電極13c,13dの側面と可動櫛歯電極14c〜14eの側面との間隔が広くなり、振動発電構成体11Aの静電容量に比べて振動発電構成体11Bの静電容量が小さくなる。可動部14が振動したときの電荷移動量は静電容量が大きい方が大きいので、図6(c)に示す振動発電構成体11Bの開放電圧V4は、図6(b)に示す振動発電構成体11Aの開放電圧V3よりも振幅が小さくなる。開放電圧V3,V4の振幅は、いずれも振動する可動部14の振幅に比例して変化する。
【0025】
なお、図6では、図2に示すように複数の固定櫛歯電極を2つのグループに分離する場合を例に説明したが、図1に示すように複数の固定櫛歯電極を各々分離する場合においても、振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとの間で櫛歯の間隔を異ならせることで、振動発電構成体11Aの出力と振動発電構成体11Bの出力とを異ならせることができる。
【0026】
(変形例2)
図7は振動発電装置1の変形例2を説明する図である。図7は、振動発電デバイス10に設けられた可動櫛歯電極および固定櫛歯電極の構成を示す模式図である。図7において、(a)は振動発電デバイス10の平面図、(b)はD1−D1断面図、(c)はD2−D2断面図である。
【0027】
変形例2では、固定櫛歯電極の高さを振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとで異ならせることで、可動電極と固定電極の対向面積を相違させて、振動発電構成体11A,11Bの出力を異ならせるようにした。図7では、振動発電構成体11Bの固定櫛歯電極13c,13dの高さH2(図7(c)参照)を、振動発電構成体11Aの固定櫛歯電極13a,13bの高さH1(図7(b)参照)よりも小さく設定した。
【0028】
なお、図7では、固定櫛歯電極の高さを異ならせることで振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとの間で出力を異ならせることを説明するため、振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとで固定櫛歯電極の数を同数とした。しかし、固定櫛歯電極の高さを異ならせる場合においても、振動発電構成体11Aの出力を可能な限り大きくするためには振動発電構成体11Bの固定櫛歯電極数を図4(a)の場合と同様の固定櫛歯電極数とするのが好ましい。
【0029】
図7に示すように、固定櫛歯電極13c,13dの高さH2をH2<H1のように設定すると、振動発電構成体11Bにおける固定櫛歯電極と可動櫛歯電極との対向面積が振動発電構成体11Aの場合よりも小さくなる。そのため、可動部14が変位したときの対向面積の変化量は、振動発電構成体11Aの場合に比べて振動発電構成体11Bの場合の方が小さくなる。その結果、変形例1の場合と同様に、振動発電構成体11Bの開放電圧は振動発電構成体11Aの開放電圧よりも小さくなる。いずれの開放電圧の場合も、それらの振幅は振動する可動部14の振幅に比例して変化する。
【0030】
図7では、振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとの間で固定櫛歯電極の高さを異ならせたが、可動櫛歯電極側において高さを異ならせるようにしても良い。さらに、図7(c)では、振動発電構成体11Bにおいて固定櫛歯電極13dのみを高さH2に設定したが、例えば、可動櫛歯電極14dおよび14eの高さもH2に設定するようにしても良い。
【0031】
なお、図7では、図2に示すように複数の固定櫛歯電極を2つのグループに分離する場合を例に説明したが、図1に示すように複数の固定櫛歯電極を各々分離する場合においても、振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとの間で櫛歯高さを異ならせることで、振動発電構成体11Aの出力と振動発電構成体11Bの出力とを異ならせることができる。
【0032】
(変形例3)
図8は振動発電装置1の変形例3を説明する図である。図8(a)は、振動発電デバイス10に設けられた可動櫛歯電極および固定櫛歯電極の構成を示す模式図である。図8(b)は振動発電構成体11Aの開放電圧V5の波形を示し、図8(c)は振動発電構成体11Bの開放電圧V6の波形を示す。変形例3では、固定櫛歯電極の数ではなく、固定櫛歯電極の長さを振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとで異ならせることで、可動電極と固定電極との噛み合い開始時期を相違させて、振動発電構成体11A,11Bの出力を異ならせるようにした。
【0033】
図8(a)では、振動発電構成体11Bの固定櫛歯電極13c,13dの長さL2を、振動発電構成体11Aの固定櫛歯電極13a,13bの長さL1よりも短く設定した。なお、図8(a)では、固定櫛歯電極の長さを異ならせることで振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとの間で出力を異ならせることを説明するため、振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとで固定櫛歯電極の数を同数とした。しかし、固定櫛歯電極の長さを異ならせる場合においても、振動発電構成体11Aの出力を可能な限り大きくするためには振動発電構成体11Bの固定櫛歯電極数を図4(a)の場合と同様の固定櫛歯電極数とするのが好ましい。
【0034】
図8(a)のように固定櫛歯電極13a〜13dの長さL1,L2をL2<L1と設定することで、可動部14の振動の振幅に同期して、振動発電構成体11Aの開放電圧V5は図8(b)のような波形となり、振動発電構成体11Bの開放電圧V6は図8(c)のような波形となる。
【0035】
図8(a)の可動部14のx方向の位置は、エレクトレットによる電気力と弾性支持部15の弾性力とがつりあっている状態を示している。図8(a)に示す状態では、振動発電構成体11Bの固定櫛歯電極13c、13dと可動櫛歯電極14c〜14eとは噛合していない。x0は可動部14の振幅である。図8(b),(c)のt=0のときには、可動部14は釣り合いの位置にある。
【0036】
時刻t=0から、可動部14がx軸正方向に移動し始めると、図8(b)に示すように振動発電構成体11Aの開放電圧V5は上昇し始める。しかし、振動発電構成体11Bにおいては、固定櫛歯電極13c、13dと可動櫛歯電極14c〜14eとは噛合していないので電荷の移動が無く、開放電圧V6はV6=0のままである。
【0037】
時刻t1において可動部14が図8(a)の符号t1で示す位置に移動すると、振動発電構成体11Bの固定櫛歯電極13c、13dと可動櫛歯電極14c〜14eとが噛合するようになる。時刻t1の後は、振動発電構成体11Aも振動発電構成体11Bも固定櫛歯電極と可動櫛歯電極との対向面積が増加し、開放電圧V5,V6の両方が上昇する。
【0038】
図示上側に移動する可動部14の変位が、時刻t2において振幅x0に達する。そのとき、振動発電構成体11A,11Bの開放電圧V5,V6は正のピークとなる。時刻t2以後は可動部14がx軸負方向に移動するので、振動発電構成体11Aも振動発電構成体11Bも固定櫛歯電極と可動櫛歯電極との対向面積が減少する。その結果、開放電圧V5,V6は下降する。
【0039】
可動部14が図示下側に移動開始した後、時刻t3になると振動発電構成体11Bの対向面積はゼロとなり、時刻t3以後も対向面積はゼロのままなので開放電圧V6はV6=0となる。一方、振動発電構成体11Aの対向面積は時刻t3以後も減少するので、開放電圧V5は正のまま減少する。そして、時刻t4において可動部14の釣り合い位置となり、時刻t4以後は電荷の移動方向が逆になるので開放電圧V5は負となる。
【0040】
上述のように、振動発電構成体11Bの固定櫛歯電極13c,13dの長さL2を振動発電構成体11Aの固定櫛歯電極13a,13bの長さL1よりも短く設定することにより、開放電圧V6は開放電圧V5の最大ピーク付近でのみV6≠0となる。すなわち、振動発電構成体11Bの固定櫛歯電極13c,13dと可動櫛歯電極14c〜14eとが噛合状態となる出力最大ピーク付近でのみ、モニタ用信号が出力される。
【0041】
図8に示す構成では、固定櫛歯電極側の櫛歯長さを振動発電構成体11AではL1とし振動発電構成体11BではL2としたが、可動櫛歯電極側の櫛歯長さをL1,L2に設定するようにしても良い。例えば、可動櫛歯電極14a〜14cをL1とし、可動櫛歯電極14dおよび14eをL2に設定する。
【0042】
なお、図8では、図2に示すように複数の固定櫛歯電極を2つのグループに分離する場合を例に説明したが、図1に示すように複数の固定櫛歯電極を各々分離する場合においても、振動発電構成体11Bの固定櫛電極の櫛歯長さを振動発電構成体11Aの固定櫛電極の櫛歯長さよりも短く設定し、かつ、非振動時において振動発電構成体11Bが非噛合状態となるように設定することで、振動発電構成体11Aの出力と振動発電構成体11Bの出力とを異ならせることができる。
【0043】
(変形例4)
図9は振動発電装置1の変形例4を説明する図である。上述の図2に示した構成では、振動発電構成体11A,11Bの可動櫛歯電極を全て可動部14の図示右側に配置したが、変形例4では、振動発電構成体11Bの可動櫛歯電極14d,14eを可動部14の図示左側に配置するような構成とした。振動発電構成体11Aは、可動部14の右側に配置された可動櫛歯電極14a〜14dと、可動櫛歯電極14a〜14dと噛合する固定櫛歯電極13a〜13cとで構成される。振動発電構成体11Bは、可動部14の左側に配置された可動櫛歯電極14e,14fと、可動櫛歯電極14e,14fと噛合する固定櫛歯電極13dとで構成される。
【0044】
可動部14がx軸の正方向に変位すると、振動発電構成体11Aにおける可動櫛歯電極14a〜14dと固定櫛歯電極13a〜13cとの対向面積が増加し、振動発電構成体11Bにおける可動櫛歯電極14e,14fと固定櫛歯電極13dとの対向面積が減少する。逆に、可動部14がx軸の負方向に変位すると、振動発電構成体11Aにおける可動櫛歯電極14a〜14dと固定櫛歯電極13a〜13cとの対向面積が減少し、振動発電構成体11Bにおける可動櫛歯電極14e,14fと固定櫛歯電極13dとの対向面積が増加する。そのため、振動発電構成体11Aの開放電圧の波形に対して振動発電構成体11Bの開放電圧の波形は位相が180度だけずれているが、振動発電構成体11A,11Bの各開放電圧の波形は可動部14の振幅に同期した波形となっている。すなわち、上述した実施の形態の場合と同様に、振動発電構成体11Bのモニタ用電極20Bから出力される信号を、振動発電構成体11Aから出力される電力のモニタ用信号として利用することができる。
【0045】
なお、図9では複数の固定櫛歯電極を2つのグループに分離する場合を例に説明したが、複数の固定櫛歯電極を図1のように各々分離して、それらを可動部14の図示右側および図示左側に分けて配置するようにしても良い。
【0046】
(変形例5)
図10は振動発電装置1の変形例5を説明する図である。上述した実施の形態および変形例では、振動発電デバイス10は、固定櫛歯電極に対して可動櫛歯電極が同一面内で変位する構成であったが、図10に示すように可動櫛歯電極が面外振動する構成であっても良い。
【0047】
図10において、SOI基板の下部Si層100で形成されるベース12の上には、SiO層110を介して上部Si層120で形成される第1固定櫛歯部41A,第2固定櫛歯部41Bおよびカンチレバー42が形成されている。カンチレバー42には、第1固定櫛歯部41Aに噛合する第1可動櫛歯部40Aと第2固定櫛歯部41Bに噛合する第2可動櫛歯部40Bとが形成されている。第1固定櫛歯部41Aには電力出力用電極20Aが接続されており、第2固定櫛歯部41Bにはモニタ用電極20Bが接続されている。なお、第1および第2可動櫛歯部40A,40B、第1および第2固定櫛歯部41A,41Bおよびカンチレバー42の上面に形成される導電層(図1のアルミ層131,141に相当)については、図示を省略した。
【0048】
振動発電構成体11Aは第1可動櫛歯部40Aと第1固定櫛歯部41Aとで構成され、振動発電構成体11Bは第2可動櫛歯部40Bと第2固定櫛歯部41Bとで構成される。電極面にエレクトレットを設けるのは第1の実施の形態の場合と同様である。振動発電デバイス10に外部振動が印加されるとカンチレバー42がz方向に撓み、第1および第2固定櫛歯部41A,41Bに対して第1および第2可動櫛歯部40A,40Bがz方向に振動する。振動発電構成体11Bの櫛歯電極数は振動発電構成体11Aの櫛歯電極数よりも少ないので、振動発電構成体11Bの出力は振動発電構成体11Aの出力よりも小さい。
【0049】
なお、図10に示す構成では、固定櫛歯電極および可動櫛歯電極の総数を振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとで異ならせることで出力の振幅を異ならせるようにしたが、面外振動であるため、固定櫛歯電極および可動櫛歯電極の長さを異ならせるようにしても出力の振幅を異ならせることができる。もちろん、変形例1(図6参照)の場合と同様に、噛合する固定櫛歯電極と可動櫛歯電極との間隔を振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとで異ならせても、出力の振幅を異ならせることができる。
【0050】
ところで、振動発電構成体11A,11Bの各出力の大きさは、固定櫛歯電極と可動櫛歯電極との間の電極間隔や、固定櫛歯電極と可動櫛歯電極との間の対向面積や、固定櫛歯電極や可動櫛歯電極に形成されたエレクトレットの電荷量に依存する。上述した実施の形態および変形例では、固定櫛歯電極の長さや高さを異ならせることで振動発電構成体11A,11Bの対向面積を異ならせたり、固定櫛歯電極の幅を異ならせることで振動発電構成体11A,11Bにおける櫛歯電極間隔を異ならせたりした。しかし、振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとの間で単位面積当たりのエレクトレット電荷量を異ならせることで、振動発電構成体11Aの出力と振動発電構成体11Bの出力とを異ならせることもできる。
【0051】
(変形例6)
上述した実施の形態や変形例では、複数の固定櫛歯電極を絶縁された2つの固定櫛歯部に分離したが、一つの可動部14に設けられた複数の可動櫛歯電極を絶縁された2つの可動櫛歯部に分離しても良いし、一つの可動部14に設けられた複数の可動櫛歯電極を各々電気的に絶縁されるように形成しても良い。
【0052】
図11では、可動部14に形成された可動櫛歯電極14a〜14eの内、可動櫛歯電極14a〜14cを振動発電構成体11Aの可動櫛歯部とし、可動櫛歯電極14d,14eを振動発電構成体11Bの可動櫛歯部とした。可動部14において、可動櫛歯電極14a〜14cを形成している上部Si層120と可動櫛歯電極14d,14eを形成している上部Si層120とは分離されており、可動櫛歯電極14a〜14cと可動櫛歯電極14d,14eとは電気的に絶縁されている。可動櫛歯電極14a〜14cには電力出力用電極20Aが接続されており、可動櫛歯電極14d,14eにはモニタ用電極20Bが接続されている。
【0053】
図12は、一つの可動部14に設けられた複数の可動櫛歯電極14a〜14eを各々電気的に絶縁されるように形成した場合を示す。可動櫛歯電極14a〜14eは下部Si層100の上にSiO層110を介して形成されており、各可動櫛歯電極14a〜14eの上部Si層120は互いに分離され電気的に絶縁された構成となっている。可動櫛歯電極14a〜14cには電力出力用電極20Aが接続され、可動櫛歯電極14d,14eにはモニタ用電極20Bが接続されている。電力出力用電極20Aおよびモニタ用電極20Bの接続は、振動発電デバイス10の内部で接続される構成でも良いし、振動発電デバイス10の外部において接続される構成でも良い。図12の構成の場合も、図1の構成の場合と同様に、モニタ用電極20Bが接続される可動櫛歯電極の数を、モニタ信号として必要な出力の大きさやモニタ信号の用途に応じて調整することができる。
【0054】
上述した実施形態、変形例で説明した振動発電装置1および振動発電デバイス10をまとめて説明すると以下のとおりである。
(1)図1図2に示すように、振動発電装置1は、振動発電構成体11Aを構成する固定櫛歯電極13a〜13cおよび可動櫛歯電極14a〜14dと、振動発電構成体11Bを構成する固定櫛歯電極13dおよび可動櫛歯電極14d,14eとを有する振動発電デバイス10を備える。そして、電力出力用電極20Aが接続される固定櫛歯電極13a〜13cの数と、モニタ用電極20Bが接続される固定櫛歯電極13dの数を異ならせることで、すなわち、固定櫛歯電極と可動櫛歯電極の総数を振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Aとで異ならせて、振動発電構成体11Aの出力と振動発電構成体11Bの出力とを異ならせるようにした。ここで、出力が異なるとは、振動発電構成体11Bによるモニタ用信号の振幅の大きさが、振動発電構成体11Aによる出力信号の振幅の大きさと異なるということである。
【0055】
このように、電力出力とは別に可動部14の振幅と同期したモニタ用信号を出力できる構成とすることで、モニタ用信号を利用して振動発電デバイス10の振動状態を正確に把握することができる。例えば、図5で説明したように、モニタ用信号を利用することで発電電力を効率よく利用することができる。
なお、モニタ用信号を発電電力の効率化に使用する場合について説明したが、例えば、故障検知用のトリガ信号や異常動作時の保護回路への入力信号としても使用することができる。
【0056】
(2)振動発電デバイス10において、振動発電構成体11A,11Bの固定櫛歯電極13a〜13dの各々が図1に示すように電気的に絶縁されている場合には、振動発電構成体11Aの固定櫛歯電極13a〜13cに電力出力用電極20Aが接続され、振動発電構成体11Bの固定櫛歯電極13dにモニタ用電極20Bが接続される。また、図12に示すように振動発電構成体11A,11Bの可動櫛歯電極14a〜14eの各々が電気的に絶縁されている場合には、振動発電構成体11Aの可動櫛歯電極14a〜14dに電力出力用電極20Aが接続され、振動発電構成体11Bの可動櫛歯電極14d,14eにモニタ用電極20Bが接続される。
【0057】
図2の構成のように、振動発電デバイス10の段階で電力出力用電極20Aに接続される櫛歯電極とモニタ用電極20Bに接続される櫛歯電極とグループで分離されている場合に比べ、図1の構成のように全ての固定櫛歯電極を互いに電気的に絶縁して形成した場合、モニタ信号として必要な出力の大きさやモニタ信号の用途に応じて、モニタ用電極20Bが接続される櫛歯電極の数を容易に調整することができる。
【0058】
なお、図1または図12に示す例では、固定櫛歯電極13a〜13dの各々または可動櫛歯電極14a〜14eの各々が電気的に絶縁される構成とした。一方、図2に示す例では振動発電構成体11Aの固定櫛歯電極13a〜13cは電気的に一体に形成され、図11に示す例では振動発電構成体11Aの可動櫛歯電極14a〜14cおよび振動発電構成体11Bの可動櫛歯電極14d,14eはそれぞれ電気的に一体に形成されていた。しかしながら、このような構成に限らず、図13の(a),(b)に示すような構成としても良い。
【0059】
図13(a)では、電力出力用電極20Aが接続される固定櫛歯電極13a〜13cは、固定櫛歯電極13cと電気的に一体形成されている固定櫛歯電極13a,13bから成る固定櫛歯群G1とを有している。なお、固定櫛歯電極13cも一つの固定櫛歯電極から成る固定櫛歯群と考えることができる。モニタ用電極20Bが接続される固定櫛歯電極13d,13eは互いに電気的に絶縁されており、この場合も、固定櫛歯電極13dおよび固定櫛歯電極13eの各々が固定櫛歯群を構成していると考えることができる。
【0060】
図13(b)に示す例では、電力出力用電極20Aが接続される14a〜14dは、電気的に一体となっている可動櫛歯電極14a,14b(固定櫛歯群G2)に対して可動櫛歯電極14c,14dはそれぞれ電気的に絶縁されている。可動櫛歯電極14c,14dは、それぞれ一つの可動櫛歯電極から成る可動櫛歯群を構成している。モニタ用電極20Bが接続される可動櫛歯電極14e,14fは互いに電気的に絶縁されている。可動櫛歯電極14e,14fも、それぞれ一つの可動櫛歯電極から成る可動櫛歯群を構成している。
【0061】
このように、図13(a)では互いに電気的に絶縁された第1固定櫛歯部(固定櫛歯電極13a〜13c)および第2固定櫛歯部(固定櫛歯電極13d,13e)の少なくとも一方は電気的に絶縁された2以上の固定櫛歯群を有する。また、図13(b)では互いに電気的に絶縁された第1可動櫛歯部(可動櫛歯電極14a〜14d)および第2可動櫛歯部(可動櫛歯電極14e,14f)の少なくとも一方は電気的に絶縁された2以上の可動櫛歯群を有する。
【0062】
(3)振動発電構成体11Aの出力と振動発電構成体11Bの出力とを異ならせる方法としては、図1,2,9〜13に示すように固定櫛歯電極および可動櫛歯電極の総数を振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとで異ならせても良いし、変形例2(図7参照)で説明したように、噛合する固定櫛歯電極および可動櫛歯電極の少なくとも一方の櫛歯高さを振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとで異ならせても良いし、変形例1(図6参照)で説明したように、噛合する固定櫛歯電極と可動櫛歯電極との間隔を振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとで異ならせても良い。
【0063】
(4)また、図8のように可動櫛歯電極が固定櫛歯電極に対して面内振動する構成の振動発電デバイス10において、振動発電構成体11Bの固定櫛歯電極13d,13dの櫛歯長さを振動発電構成体11Aの固定櫛歯電極13a,13bの櫛歯長さよりも短く設定し、または、振動発電構成体11Bの可動櫛歯電極14d,14eの櫛歯長さを振動発電構成体11Aの可動櫛歯電極14a,14bの櫛歯長さよりも短く設定し、かつ、非振動時において固定櫛歯電極13d,13dと可動櫛歯電極14d,14eとが非噛合状態となるように設定しても良い。
【0064】
そのような構成とすることで、振動発電構成体11Bの固定櫛歯電極13c,13dと可動櫛歯電極14c〜14eとが噛合状態となる出力最大ピーク付近でのみ、モニタ用信号が出力されることになる。その結果、モニタ用信号によって電力出力用電極20Aの出力のピークタイミングを検知することができる。
【0065】
(5)また、変形例5に記載したように、エレクトレットの単位面積当たりの電荷量を振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとで異ならせることで、振動発電構成体11Aと振動発電構成体11Bとで出力の振幅を異ならせることができる。その結果、振動発電構成体11Bの出力の振幅は可動部14の振動振幅に比例した波形となり、振動発電構成体11Bの出力をモニタ信号として利用することができる。
【0066】
なお、上述した実施形態では、図1,2に示すようにSOI基板の上部Si層120を用いて櫛歯電極を形成し、固定櫛歯電極を物理的に分離することで電気的絶縁を図るようにしたが、電気的絶縁を図る方法としてはこれに限らない。例えば、石英で櫛歯を形成し、その櫛歯にシリコン層を形成し、シリコン層をエレクトレット化すること櫛歯電極を形成しても良い。その場合、シリコン層を形成する際に、図1のように櫛歯毎に形成して電気的に絶縁された櫛歯電極を形成しても良いし、図2のように2つのグループに分けてシリコン層を形成することで電気的に絶縁された2グループの櫛歯電極としても良い。
【0067】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1,30…振動発電装置、10…振動発電デバイス、11A,11B…振動発電構成体、12…ベース、13a〜13d…固定櫛歯電極、14…可動部、14a〜14e…可動櫛歯電極、15…弾性支持部、20A…電力出力用電極、20B…モニタ用電極、21…電力変換部、22…振幅検出回路、23…充電部、31…可動櫛歯部、32…固定櫛歯部、40A…第1可動櫛歯部、40B…第2可動櫛歯部、41A…第1固定櫛歯部、41B…第2固定櫛歯部、42…カンチレバー、G1…固定櫛歯群、G2…可動櫛歯群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13