(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ファインピッチ回路の形成に適したプリント配線板銅箔として、酸化処理及び還元処理(以下、酸化還元処理と総称することがある)を経て形成された微細凹凸を粗化処理面として備えた粗化処理銅箔が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1(国際公開第2014/126193号)には、最大長さが500nm以下の銅複合化合物からなる針状の微細凹凸で形成した粗化処理層を表面に備えた表面処理銅箔が開示されている。また、特許文献2(国際公開第2015/040998号)には、銅複合化合物からなる最大長さが500nm以下のサイズの針状の凸状部より形成された微細凹凸を有する粗化処理層と、当該粗化処理層の表面にシランカップリング剤処理層とを少なくとも一面に備えた銅箔が開示されている。これらの文献の粗化処理銅箔によれば、粗化処理層の微細凹凸によるアンカー効果により絶縁樹脂基材との良好な密着性を得ることができると共に、良好なエッチングファクターを備えたファインピッチ回路の形成が可能になるとされている。特許文献1及び2に開示される微細凹凸を有する粗化処理層はいずれも、アルカリ脱脂等の予備処理を行った後、酸化還元処理を経て形成されている。こうして形成される微細凹凸は銅複合化合物の針状結晶及び/又は板状結晶で構成される特有の形状を有するものであり、かかる微細凹凸を備えた粗化処理面は、微細銅粒の付着により形成された粗化処理面や、エッチングにより凹凸が付与された粗化処理面よりも概して微細である。
【0004】
一方、近年の携帯用電子機器等の高機能化に伴い、大量の情報の高速処理をすべく信号の高周波化が進んでおり、高周波用途に適したプリント配線板が求められている。このような高周波用プリント配線板には、高周波信号を品質低下させずに伝送可能とするために、伝送損失の低減が望まれる。プリント配線板は配線パターンに加工された銅箔と絶縁樹脂基材とを備えたものであるが、伝送損失は、銅箔に起因する導体損失と、絶縁樹脂基材に起因する誘電体損失とから主としてなる。したがって、絶縁樹脂基材に起因する誘電体損失を低減すべく、低誘電率の熱可塑性樹脂を用いることができれば好都合である。しかしながら、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂や液晶ポリマー(LCP)樹脂に代表されるような低誘電率の熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂とは異なり、化学的な活性が低く、それ故銅箔との密着力が低いとの問題がある。
【0005】
かかる問題に対処した銅張積層板の製造方法として、粗化処理銅箔の粗化処理面の酸化状態を制御することで、熱可塑性樹脂との密着力を向上させる手法が提案されている。例えば、特許文献3(国際公開第2017/150043号)には、酸化銅及び亜酸化銅を含む針状結晶で構成される微細凹凸を備えた粗化処理面を有する粗化処理銅箔に熱可塑性樹脂シートを貼り付けて銅張積層板を製造する方法が開示されており、この粗化処理面は連続電気化学還元分析(SERA)により決定される酸化銅厚さが1〜20nmであり、かつ、SERAにより決定される亜酸化銅厚さが15〜70nmであることが記載されている。この方法によれば、粗化処理銅箔の粗化処理面と熱可塑性樹脂との親和性を高められる結果、高い剥離強度を実現できるとされている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
粗化処理銅箔
本発明による銅箔は粗化処理銅箔である。この粗化処理銅箔は少なくとも一方の側に粗化処理面を有する。粗化処理面は針状結晶及び/又は板状結晶で構成される。これらの針状結晶及び/又は板状結晶が微細凹凸を形成して粗化処理面を形成している。針状結晶及び/又は板状結晶は亜酸化銅(Cu
2O)及び所望により酸化銅(CuO)を含む。すなわち、亜酸化銅は必須成分であり、酸化銅は任意成分である。そして、この粗化処理面は、連続電気化学還元分析(SERA)により決定される亜酸化銅厚さが71〜300nmであり、かつ、連続電気化学還元分析(SERA)により決定される酸化銅厚さが0〜20nmである。このように、連続電気化学還元分析(SERA)により決定される亜酸化銅厚さ及び酸化銅厚さをそれぞれ上記範囲内に制御することで、低誘電率の熱可塑性樹脂に対する耐熱剥離強度を有意に向上することができる。すなわち、前述のとおり、従来の粗化処理銅箔を熱可塑性樹脂と貼り付けた場合、エンジン周囲の高温条件等の過酷な環境での長時間の加熱により密着力の低下を招きうる。かかる高温処理に伴う銅箔及び樹脂間の剥離強度(すなわち耐熱剥離強度)の低下は、銅箔を構成する銅の樹脂基材中への拡散により生じると考えられる。銅の拡散防止は、銅箔表面に亜鉛やニッケル等の金属防錆処理を施すことにより一般的に行われるが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の熱可塑性樹脂に対しては銅の拡散を十分に防止できない。これに対して、本発明の粗化処理銅箔は、その粗化処理面に連続電気化学還元分析(SERA)により厚さ換算で決定される所定量の亜酸化銅を含んでおり、純銅(Cu)と比較して安定な亜酸化銅が拡散防止層として機能することにより、熱可塑性樹脂中への銅の拡散を効果的に抑制するものと考えられる。さらに、粗化処理面を構成する亜酸化銅は電気を通さない不導体成分のため、熱可塑性樹脂との密着力を向上すべく粗度を比較的大きくしても、高周波信号伝送において問題となる銅箔の表皮効果による信号劣化が生じにくい。その結果、本発明の粗化処理銅箔を低誘電率の熱可塑性樹脂と貼り合わせて銅張積層板又はプリント配線板とした場合に、高周波信号の伝送損失を有意に低減しながら、優れた耐熱剥離強度を発揮することが可能となる。
【0014】
上記観点から、粗化処理銅箔の粗化処理面は、連続電気化学還元分析(SERA)により決定される亜酸化銅厚さが71〜300nmであり、好ましくは100〜300nm、より好ましくは120〜300nm、さらに好ましくは200〜300nm、特に好ましくは250〜300nmである。また、粗化処理銅箔の粗化処理面は、連続電気化学還元分析(SERA)により決定される酸化銅厚さが0〜20nmであり、好ましくは1〜20nm、より好ましくは2〜15nm、さらに好ましくは3〜10nmである。こうすることで、粗化処理銅箔に望ましい耐酸性を付与しながら、熱可塑性樹脂との耐熱剥離強度をより一層向上することができる。
【0015】
上述の酸化銅厚さ及び亜酸化銅厚さを決定するためのSERA分析は、市販のSERA分析装置(例えばECIテクノロジー社製のQC−100)を用いて、例えば以下の手順で行うことができる。まず、分析のために粗化処理銅箔8.0mm
2の領域をO−リングガスケットで隔離し、ホウ酸緩衝液を注入し、窒素で飽和させる。上記領域に30μA/cm
2の電流密度I
dを印加し、−0.40V〜−0.60Vに現れるCu
2O還元反応、及び−0.60V〜−0.85Vに現れるCuO還元反応にかかる時間を計測し、それぞれt
1及びt
2(秒)とする。CuO及びCu
2Oの各々の厚さT(nm)はファラデーの法則から求まる定数Kを用い、T=K・I
d・tの式に基づき算出する。なお、CuOに関する定数Kの値は6.53×10
−5(cm
3/A・sec)であり、Cu
2OについてのKの値は2.45×10
−4(cm
3/A・sec)である。
【0016】
粗化処理銅箔の粗化処理面を構成する針状結晶及び/又は板状結晶は、酸化還元処理を経て形成されうるものであり、典型的には、針状結晶及び/又は板状結晶が銅箔面に対して略垂直及び/又は斜め方向に生い茂った形状(例えば芝生状)に観察されるものである。針状結晶及び板状結晶は互いに明確に区別できる必要はなく、針状のようにも見える板状結晶であってもよいし、板状のようにも見える針状結晶であってもよい。
【0017】
粗化処理銅箔は粗化処理面を両側に有するのが好ましい。すなわち、粗化処理銅箔は、樹脂と貼り合わせることが予定されている面のみならず、その反対側の面にも上述の粗化処理面を有するのが好ましい。こうすることで、当該反対側の面において優れたレーザー加工性を実現することができる。これは、粗化処理面を構成する亜酸化銅は純銅と比較してCO
2レーザーの吸収率が良いこと、及び針状結晶及び/又は板状結晶によってもたらされる凹凸形状に起因してCO
2レーザーを輻射により吸収する効果も得られることによるものと考えられる。したがって、銅張積層板における銅箔にCO
2レーザーを直接照射してビアホールを形成するダイレクトレーザー穴開け加工を行う際に、当該レーザー照射を施す面を上述の粗化処理面とすることにより、銅箔表面に黒化処理等の前処理を施すことなく穴開け加工を行うことが可能となり、生産性が極めて向上する。
【0018】
粗化処理銅箔の厚さは特に限定されないが、0.1〜70μmが好ましく、より好ましくは0.5〜18μmである。なお、本発明の粗化処理銅箔は、通常の銅箔の表面に粗化処理を行ったものに限らず、キャリア付銅箔の銅箔表面に粗化処理を行ったものであってもよい。
【0019】
粗化処理銅箔は、粗化処理面に有機防錆層を有するのが好ましい。有機防錆層は特に限定されないが、トリアゾール化合物及びシランカップリング剤の少なくともいずれか一方を含むのが好ましい。トリアゾール化合物の例としては、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、アミノトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、クロロベンゾトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、ナフトトリアゾールが挙げられる。シランカップリング剤の例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシ官能性シランカップリング剤、又は3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性シランカップリング剤、又は3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性シランカップリング剤、又はビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシシラン等のビニル官能性シランカップリング剤、又は3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリル官能性シランカップリング剤、又は3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル官能性シランカップリング剤、又はイミダゾールシラン等のイミダゾール官能性シランカップリング剤、又はトリアジンシラン等のトリアジン官能性シランカップリング剤等が挙げられる。有機防錆層はトリアゾール化合物を含むのがより好ましく、トリアゾール化合物の好ましい例としてはベンゾトリアゾール(BTA)及びカルボキシベンゾトリアゾール(CBTA)が挙げられる。BTA、CBTA等のトリアゾール化合物を含む有機防錆層は、粗化処理銅箔と密着させる熱可塑性樹脂がフッ素系樹脂である場合に特に好ましい。トリアゾール化合物がより好ましい理由としては次のことが挙げられる。トリアゾール化合物は粗化処理表面の亜酸化銅と銅錯体を形成することにより、通常の銅箔に形成した場合と比べ、表面により緻密に成分が付着するため、優れた防錆機能を発揮できると考えられる。そのため、粗化処理銅箔の長期保管時における酸化銅厚さ及び亜酸化銅厚さを上述した所定の範囲内に維持しやすくすることができる。また、高温等の過酷な環境下に曝された場合、トリアゾール化合物を含む有機防錆層により表面の微細凹凸が維持されるため、高い信頼性を維持することができると考えられる。
【0020】
製造方法
本発明による粗化処理銅箔は、あらゆる方法によって製造されたものであってよいが、酸化還元処理を経て製造されるのが好ましい。以下、本発明による粗化処理銅箔の好ましい製造方法の一例を説明する。この好ましい製造方法は、銅箔を用意する工程と、上記銅箔に特定の有機物を付着させる工程と、有機物が付着された銅箔の表面に対して酸化処理及び還元処理を順次行う粗化工程(酸化還元処理)とを含んでなる。
【0021】
(1)銅箔の準備
粗化処理銅箔の製造に使用する銅箔としては電解銅箔及び圧延銅箔の双方の使用が可能であり、より好ましくは電解銅箔である。また、銅箔は、無粗化の銅箔であってもよいし、予備的粗化を施したものであってもよい。銅箔の厚さは特に限定されないが、0.1〜70μmが好ましく、より好ましくは0.5〜18μmである。銅箔がキャリア付銅箔の形態で準備される場合には、銅箔は、無電解銅めっき法及び電解銅めっき法等の湿式成膜法、スパッタリング及び化学蒸着等の乾式成膜法、又はそれらの組合せにより形成したものであってもよい。
【0022】
粗化処理が行われることになる銅箔の表面は、ISO25178に準拠して測定される最大高さSzが1.5μm以下であるのが好ましく、より好ましくは、1.2μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。上記範囲内であると、本発明の粗化処理銅箔に望ましい表面プロファイルを実現しやすくなる。Szの下限値は特に限定されないが、Szは0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上である。
【0023】
(2)有機物付着処理
上記銅箔の表面に特定の有機物を付着させる。有機物の付着は酸洗処理の中で行うのが好ましい。例えば、銅箔を特定の有機物が添加された酸洗溶液に浸漬した後、水洗するのが好ましい。こうすることにより、銅箔表面に特定の有機物を付着させることができ、後述する酸化還元処理工程において、樹脂との密着性及びレーザー加工性に有利な表面性状を有する粗化処理銅箔を得ることが可能となる。酸洗溶液に添加する有機物は、銅表面に被膜を形成する活性有機硫黄化合物のスルホン酸又はその塩が好ましい。活性有機硫黄化合物のスルホン酸又はその塩の好ましい例としては、ビス−(3−スルホプロピル)ジスルフィド、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸、3−(N,N−ジメチルチオカルバモイル)−チオプロパンスルホン酸、3−[(アミノ−イミノメチル)チオ]−1−プロパンスルホン酸、o−エチルジチオカーボネート−S−(3−スルホプロピル)−エステル、3−(ベンゾチアゾリル−2−メルカプト)−プロピル−スルホン酸、エチレンジチオジプロピルスルホン酸、チオグリコール酸、チオリン酸−o−エチル−ビス−(ω−スルホプロピル)エステルジナトリウム塩、チオリン酸−トリス−(ω−スルホプロピル)エステルトリナトリウム塩等が挙げられる。酸洗溶液における活性有機硫黄化合物のスルホン酸又はその塩(例えばビス−(3−スルホプロピル)ジスルフィド)の好ましい濃度は25〜200ppmであり、より好ましくは50〜150ppmである。酸洗溶液は硫酸系水溶液であるのが好ましく、硫酸系水溶液の硫酸濃度は特に限定されないが好ましくは1〜20体積%である。また、銅箔の硫酸系水溶液の浸漬時間は特に限定されないが好ましくは2秒〜2分である。
【0024】
(3)酸化還元処理
こうして、上記酸洗処理を行った銅箔の表面に対して、酸化処理及び還元処理を順次行う湿式による粗化工程を施すのが好ましい。特に、溶液を用いた湿式法で銅箔の表面に酸化処理を施すことで、銅箔表面に酸化銅(酸化第二銅)を含有する銅化合物を形成する。その後、当該銅化合物を還元処理して酸化銅の一部又は全部を亜酸化銅(酸化第一銅)に転換させることにより、亜酸化銅及び酸化銅(存在する場合)を含有する銅複合化合物からなる針状結晶及び/又は板状結晶で構成される微細凹凸を銅箔の表面に形成することができる。ここで、微細凹凸は、銅箔の表面を湿式法で酸化処理した段階で、酸化銅を主成分とする銅化合物により形成される。そして、当該銅化合物を還元処理したときに、この銅化合物により形成された微細凹凸の形状を概ね維持したまま、酸化銅の一部又は全部が亜酸化銅に転換されて、亜酸化銅及び酸化銅(存在する場合)を含有する銅複合化合物からなる微細凹凸となる。このように銅箔の表面に湿式法で適正な酸化処理を施した後に、還元処理を施すことで、微細凹凸の形成が可能となる。
【0025】
(3a)酸化処理
上記酸洗処理が施された銅箔に対して水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ溶液を用いて酸化処理を行う。アルカリ溶液(酸化処理液)には、銅箔を微細に腐食させる機能と、腐食により溶出した銅イオンを再析出させる機能がある。したがって、アルカリ溶液で銅箔の表面を処理することにより、酸化銅を主成分とする銅複合化合物からなる針状結晶及び/又は板状結晶で構成される微細凹凸を銅箔の表面に形成することができる。このとき、上述のように銅箔上に予め特定の有機物を付着させておくことで、アルカリ溶液による銅箔の腐食及び再析出の密度が疎になり、腐食及び再析出が一部分に集中すると考えられる。その結果、通常の酸化処理では作製が困難な、樹脂との密着性及びレーザー加工性に有利な表面性状を有する粗化処理銅箔を得ることが可能となる。アルカリ溶液の温度は60〜85℃が好ましく、アルカリ溶液のpHは10〜14が好ましい。また、アルカリ溶液は酸化の観点から塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩を含むのが好ましく、その濃度は100〜500g/Lが好ましい。酸化処理は電解銅箔をアルカリ溶液に浸漬することにより行うのが好ましく、その浸漬時間(すなわち酸化時間)は10秒〜20分が好ましく、より好ましくは30秒〜10分である。
【0026】
酸化処理に用いるアルカリ溶液は酸化抑制剤をさらに含むのが好ましい。すなわち、アルカリ溶液により銅箔の表面に対して酸化処理を施した場合、上記微細凹凸の凸状部が過度に成長し、所望の長さを超える場合があり、所望の微細凹凸を形成することが困難になる。そこで、上記微細凹凸を形成するために、銅箔表面における酸化を抑制可能な酸化抑制剤を含むアルカリ溶液を用いることが好ましい。好ましい酸化抑制剤の例としては、アミノ系シランカップリング剤が挙げられる。アミノ系シランカップリング剤を含むアルカリ溶液を用いて銅箔表面に酸化処理を施すことで、当該アルカリ溶液中のアミノ系シランカップリング剤が銅箔の表面に吸着し、アルカリ溶液による銅箔表面の酸化を抑制することができる。その結果、酸化銅の針状結晶及び/又は板状結晶の成長を抑制することができ、所望の微細凹凸を備えた望ましい粗化処理面を形成することができる。アミノ系シランカップリング剤の具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、特に好ましくはN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランである。これらはいずれもアルカリ性溶液に溶解し、アルカリ性溶液中に安定に保持されると共に、上述した銅箔表面の酸化を抑制する効果を発揮する。アルカリ溶液におけるアミノ系シランカップリング剤(例えばN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)の好ましい濃度は0.01〜20g/Lであり、より好ましくは0.02〜20g/Lである。
【0027】
(3b)還元処理
上記酸化処理が施された銅箔(以下、酸化処理銅箔という)に対して還元処理液を用いて還元処理を行う。還元処理により酸化銅の一部又は全部を亜酸化銅(酸化第一銅)に転換させることで、亜酸化銅及び酸化銅(存在する場合)を含有する銅複合化合物からなる針状結晶及び/又は板状結晶で構成される微細凹凸を銅箔の表面に形成することができる。この還元処理は、酸化処理銅箔に還元処理液を接触させることにより行えばよく、還元処理液中に酸化処理銅箔を浸漬させる手法や、酸化処理銅箔に還元処理液をシャワーで掛ける手法により行うのが好ましく、その処理時間は2〜60秒が好ましく、より好ましくは5〜30秒である。なお、好ましい還元処理液はジメチルアミンボラン水溶液であり、この水溶液はジメチルアミンボランを10〜40g/Lの濃度で含有するのが好ましい。また、ジメチルアミンボラン水溶液は炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを用いてpH12〜14に調整されるのが好ましい。このときの水溶液の温度は特に限定されず、室温であってよい。こうして還元処理を行った銅箔は水洗し、乾燥するのが好ましい。
【0028】
(4)防錆処理
所望により、銅箔に有機防錆剤で防錆処理を施し、有機防錆層を形成してもよい。これにより、粗化処理銅箔の粗化処理面において、SERAによって厚さ換算で決定される亜酸化銅及び酸化銅の各量がそれぞれ所定の範囲内に制御された状態で維持することができ、その維持された状態で粗化処理面に絶縁樹脂基材を貼り付けることが容易となる。また、耐湿性、耐薬品性及び接着剤等との密着性等を向上することもできる。有機防錆層は特に限定されないが、トリアゾール化合物及びシランカップリング剤の少なくともいずれか一方を含むのが好ましい。トリアゾール化合物の例としては、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、アミノトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、クロロベンゾトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、及びナフトトリアゾールが挙げられ、特に好ましくはベンゾトリアゾールである。シランカップリング剤の例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシ官能性シランカップリング剤、又は3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性シランカップリング剤、又は3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性シランカップリング剤、又はビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシシラン等のビニル官能性シランカップリング剤、又は3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリル官能性シランカップリング剤、又は3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル官能性シランカップリング剤、又はイミダゾールシラン等のイミダゾール官能性シランカップリング剤、又はトリアジンシラン等のトリアジン官能性シランカップリング剤等が挙げられる。有機防錆層は、トリアゾール化合物やシランカップリング剤等の有機防錆剤を適宜希釈して塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
【0029】
銅張積層板
本発明の粗化処理銅箔は銅張積層板の作製に用いられるのが好ましい。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、上記粗化処理銅箔と、この粗化処理銅箔の粗化処理面に設けられる絶縁樹脂基材とを備えた銅張積層板が提供される。粗化処理銅箔は絶縁樹脂基材の片面に設けられてもよいし、両面に設けられてもよい。絶縁樹脂基材はプリプレグ及び/又は樹脂シートであるのが好ましい。プリプレグとは、合成樹脂板、ガラス板、ガラス織布、ガラス不織布、紙等の基材に合成樹脂を含浸させた複合材料の総称である。一方、樹脂シートはカットされたシート片であってもよいし、ロールから引き出された長尺シートであってもよく、その形態は特に限定されない。また、絶縁樹脂基材には絶縁性を向上させる等の観点からシリカ、アルミナ等の各種無機粒子からなるフィラー粒子等が含有されていてもよい。絶縁樹脂基材の厚さは特に限定されないが、1〜1000μmが好ましく、より好ましくは2〜400μmであり、さらに好ましくは3〜200μmである。絶縁樹脂基材は複数の層で構成されていてよい。
【0030】
高周波用途に適した銅張積層板を提供する観点から、絶縁樹脂基材は熱可塑性樹脂を含むのが好ましく、より好ましくは、絶縁樹脂基材に含まれる樹脂成分の大半(例えば50重量%以上)又は殆ど(例えば80重量%以上若しくは90重量%以上)が熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂の好ましい例としては、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、フッ素樹脂、ポリアミド(PA)、ナイロン、ポリアセタール(POM)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、シクロオレフィン(COP)、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。望ましい誘電正接及び優れた耐熱性の観点から、熱可塑性樹脂のより好ましい例としては、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、フッ素樹脂、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。低誘電率の観点から、特に好ましい熱可塑性樹脂はフッ素樹脂である。フッ素樹脂の好ましい例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。なお、絶縁樹脂基材の粗化処理銅箔への貼り付けは、加熱しながらプレスすることにより行うのが好ましく、こうすることで熱可塑性樹脂を軟化させて粗化処理面の微細凹凸に入り込ませることができる。その結果、微細凹凸(特に針状結晶及び/又は板状結晶)の樹脂への食い込みによるアンカー効果により銅箔と樹脂との密着性を確保することができる。
【0031】
プリント配線板
本発明の粗化処理銅箔はプリント配線板の作製に用いられるのが好ましい。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、上記粗化処理銅箔を備えたプリント配線板が提供される。プリント配線板に関する具体例としては、本発明の銅張積層板に回路形成した片面又は両面プリント配線板や、これらを多層化した多層プリント配線板等が挙げられる。多層プリント配線板は、内層基板に熱可塑性樹脂層を介して銅箔を貼り付けた多層銅張積層板に回路形成したものであってもよく、さらにビルドアップ層を形成したものであってもよい。また、回路形成方法は、サブトラクティブ法であってもよいし、モディファイド・セミアディティブ(MSAP)法であってもよい。本発明の粗化処理銅箔を備えたプリント配線板は、信号周波数10GHz以上の高周波帯域で用いられる自動車用アンテナ、携帯電話基地局アンテナ、高性能サーバー、衝突防止用レーダー等の用途で用いられる高周波基板として好適に用いられる。特に、本発明のプリント配線板は、上記粗化処理銅箔を備えることにより、銅箔と熱可塑性樹脂との耐熱剥離強度に優れるものであり、それ故、車載用ミリ波センサーといった、高温条件下で使用される機器等に用いられる高周波基板に極めて適する。
【実施例】
【0032】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0033】
例1〜4
(1)粗化処理銅箔の作製
(1a)電解銅箔の作製
銅電解液として以下に示される組成の硫酸酸性硫酸銅溶液を用い、陰極にチタン製の回転電極を用い、陽極にはDSA(寸法安定性陽極)を用いて、溶液温度45℃、電流密度55A/dm
2で電解し、厚さ18μmの電解銅箔を得た。この電解銅箔の析出面及び電極面の最大高さSzをISO25178に準拠してレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製、VK−X100)を用いて測定したところ、析出面のSzが0.8μm、電極面のSzが1.2μmであった。
<硫酸酸性硫酸銅溶液の組成>
‐ 銅濃度:80g/L
‐ 硫酸濃度:260g/L
‐ ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド濃度:30mg/L
‐ ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体濃度:50mg/L
‐ 塩素濃度:40mg/L
【0034】
(1b)有機物付着処理
上記得られた電解銅箔を液温40℃、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド濃度が100ppm、硫酸濃度が10体積%の有機物含有硫酸水溶液に23秒間(例1及び2)又は5分間(例3及び4)浸漬した後、水洗した。
【0035】
(1c)粗化処理(酸化還元処理)
上記酸洗処理が施された電解銅箔の両面に対して、以下に示される粗化処理(酸化還元処理)を行った。すなわち、以下に示される酸化処理及び還元処理をこの順に行った。
【0036】
<酸化処理>
上記酸洗処理が施された電解銅箔に対して酸化処理を行った。この酸化処理は、当該電解銅箔を液温75℃、pH=12、亜塩素酸濃度が100〜500g/L、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン濃度が10g/Lの水酸化ナトリウム溶液に、3分間(例1及び3)又は10分間(例2及び4)浸漬させることにより行った。こうして、電解銅箔の両面に、銅複合化合物からなる針状結晶及び/又は板状結晶で構成される微細凹凸を形成した。
【0037】
<還元処理>
上記酸化処理が施された試料に対して還元処理を行った。この還元処理は、上記酸化処理により微細凹凸が形成された試料を、炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを用いてpH=13に調整したジメチルアミンボラン濃度が10〜40g/Lの水溶液に1分間浸漬することにより行った。このときの水溶液の温度は室温とした。こうして還元処理を行った試料を水洗し、乾燥した。これらの工程により、電解銅箔の両面の酸化銅の一部を還元して亜酸化銅とし、酸化銅及び亜酸化銅を含む銅複合化合物からなる微細凹凸を有する粗化処理面とした。こうして、針状結晶及び/又は板状結晶で構成される粗化処理面を両側に有する粗化処理銅箔を得た。
【0038】
(1d)有機防錆層の形成
上記得られた粗化処理銅箔に対して有機防錆層の形成を行った。この有機防錆層の形成は、粗化処理銅箔を有機防錆剤としてベンゾトリアゾールを6g/Lの濃度で含む水溶液に液温25℃で30秒間浸漬した後、180℃の熱風に10秒間曝して乾燥させることにより行った。
【0039】
(2)粗化処理銅箔の評価
作製された粗化処理銅箔について、以下に示される各種評価を行った。
【0040】
<SERA測定>
粗化処理銅箔の粗化処理面を連続電気化学還元分析(SERA)により酸化銅(CuO)厚さと亜酸化銅(Cu
2O)厚さを測定した。このSERA分析には、測定装置としてECIテクノロジー社製のQC−100を用いた。手順は以下のとおりとした。まず、分析のために粗化処理銅箔8.0mm
2の領域をO−リングガスケットで隔離し、ホウ酸緩衝液を注入し、窒素で飽和させた。上記領域に30μA/cm
2の電流密度I
dを印加し、−0.40V〜−0.60Vに現れるCu
2O還元反応、及び−0.60V〜−0.85Vに現れるCuO還元反応にかかる時間を計測し、それぞれt
1及びt
2(秒)とした。CuO及びCu
2Oの各々の厚さT(nm)はファラデーの法則から求まる定数Kを用い、T=K・I
d・tの式に基づき算出した。なお、CuOに関する定数Kの値は6.53×10
−5(cm
3/A・sec)であり、Cu
2Oについての定数Kの値は2.45×10
−4(cm
3/A・sec)である。上記定数KはK=M/(z・F・ρ)(式中、Mは分子量であり、zは電荷数であり、Fはファラデー定数であり、ρは密度である)の式に基づき算出した。
【0041】
すなわち、CuOに関する定数K(=6.53×10
−5(cm
3/A・sec))は、K=M/(z・F・ρ)の式に、次の値を入力して算出した。
M(分子量)=79.545(g/mol)
z(電荷数)=2(CuO+H
2O+2e
−→Cu+2OH
−)
F(ファラデー定数)=96494(C/mol)=96500(A・sec/mol)
ρ(密度)=6.31(g/cm
3)
【0042】
また、Cu
2Oに関する定数K(=2.45×10
−4(cm
3/A・sec))は、K=M/(z・F・ρ)の式に、次の値を入力して算出した。
M(分子量)=143.09(g/mol)
z(電荷数)=1(Cu
2O+H
2O+2e
−→2Cu+2OH
−)
F(ファラデー定数)=96494(C/mol)=96500(A・sec/mol)
ρ(密度)=6.04(g/cm
3)
【0043】
<粗化処理面(微細凹凸)の観察>
粗化処理銅箔の粗化処理面を構成する微細凹凸(析出面側)の表面及び断面をSEMで観察したところ、例1〜4のいずれにおいても、粗化処理面は無数の板状のようにも見える針状結晶で構成される微細凹凸からなることが確認された。
【0044】
<熱可塑性樹脂(PTFE)に対する常態剥離強度>
熱可塑性樹脂基材として、PTFE基材(RO3003 Bondply、ROGERS Corporation製、厚さ125μm)を用意した。このPTFE基材に、上記SERA測定が行われた直後の粗化処理銅箔(厚さ18μm)をその粗化処理面が当該基材と当接するように積層し、真空プレス機を使用して、プレス圧2.4MPa、温度370℃、プレス時間30分の条件でプレスして銅張積層板を作製した。次に、この銅張積層板にエッチング法により、0.4mm幅の剥離強度測定用直線回路を備えた試験基板を作製した。こうして形成した直線回路を、JIS C 5016−1994のA法(90°剥離)に準拠してPTFE基材から引き剥がして、常態剥離強度(kgf/cm)を測定した。この測定は、卓上材料試験機(STA−1150、株式会社オリエンテック製)を用いて行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0045】
<熱可塑性樹脂(PTFE)に対する耐熱剥離強度>
0.4mm幅の剥離強度測定用直線回路を備えた試験基板をオーブンに入れて150℃又は171℃で10日間加熱したこと以外は、上述したPTFEに対する常態剥離強度と同様の手順により、PTFEに対する耐熱剥離強度(kgf/cm)を測定した。結果は表1に示されるとおりであった。なお、UL規格によって求められる耐熱剥離強度の望ましい値は、上記いずれの条件においても0.36kgf/cm以上である。
【0046】
<レーザー加工性>
上記(1)で得られた粗化処理銅箔を用いてレーザー加工性評価用積層体を以下のように作成した。まず、熱可塑性樹脂としてPTFE基材(RO3003 Bondply、ROGERS Corporation製、厚さ125μm)を用意した。次いで、このPTFE基材の両面に上記(1)で得られた粗化処理銅箔をその粗化処理面が当該基材と当接するように積層し、真空プレスを使用して、プレス圧2.4MPa、温度370℃、プレス時間30分の条件でプレスし、レーザー加工性評価用積層体を得た。なお、上記(1)で得られた粗化処理銅箔の両面には同様の粗化処理が施されているため、粗化処理銅箔のPTFE基材との密着面及び当該密着面と反対側の面には同様の粗化処理面が存在する。得られたレーザー加工性評価用積層体に対して、炭酸ガスレーザーを用いて、マスク径2.0mm、パルス幅14μsec.、パルスエネルギー19.3mJ、オフセット0.8、レーザー光径153μm、狙い径70μmの条件で、一方の粗化処理銅箔側からレーザー加工を施し、当該粗化処理銅箔及び熱可塑性樹脂を貫通して他方の粗化処理銅箔に到達するビアホールを各例につき100穴ずつ形成した。形成したビアホールの加工径を計測し、狙い径近傍(70μm±5μm)のビアホール径の割合を算出して、以下の基準で格付け評価した。結果は表1に示されるとおりであった。
‐評価A:70μm±5μmのビアホール径の割合が80%以上
‐評価B:70μm±5μmのビアホール径の割合が60%以上80%未満
‐評価C:70μm±5μmのビアホール径の割合が60%未満
【0047】
例5(比較)
上記(1b)の有機物付着処理の代わりに、電解銅箔を液温40℃、硫酸濃度が10体積%の硫酸水溶液に23秒間浸漬した後、水洗することからなる、有機物を添加しない酸洗処理を行ったこと以外は、例1と同様にして粗化処理銅箔の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0048】
例6(比較)
上記(1b)の有機物付着処理の代わりに、電解銅箔を液温40℃、硫酸濃度が10体積%の硫酸水溶液に23秒間浸漬した後、水洗することからなる、有機物を添加しない酸洗処理(有機物非添加)を行ったこと以外は、例2と同様にして粗化処理銅箔の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0049】
例7(比較)
上記(1b)の有機物付着処理の代わりに、電解銅箔を液温40℃、硫酸濃度が10体積%の硫酸水溶液に23秒間浸漬した後、水洗することからなる、有機物を添加しない酸洗処理を行ったこと、及び上記(1d)の有機防錆層の代わりに以下に示す手順で無機防錆層を形成したこと以外は、例1と同様にして粗化処理銅箔の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0050】
(無機防錆層の形成)
粗化処理銅箔に対して、無機防錆処理及びクロメート処理からなる防錆処理を行った。まず、無機防錆処理として、ピロリン酸浴を用い、ピロリン酸カリウム濃度80g/L、亜鉛濃度0.2g/L、ニッケル濃度2g/L、液温40℃、電流密度0.5A/dm
2で亜鉛−ニッケル合金防錆処理を行った。次いで、クロメート処理として、亜鉛−ニッケル合金防錆処理の上に、更にクロメート層を形成した。このクロメート処理は、クロム酸濃度が1g/L、pH=11、溶液温度25℃、電流密度1A/dm
2で行った。こうして、粗化処理銅箔の両面に無機防錆層を形成した。
【0051】
【表1】