(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光学要素を用いて物体平面に配置されたパターンが像平面に結像可能であるように該物体平面(OS)と該像平面(IS)の間の投影ビーム経路に配置された光学面を有する複数の該光学要素と、
前記物体平面から前記像平面まで進行する投影放射線の波面の制御可能な影響のための波面操作システム(WFM)と、
を含み、
前記波面操作システムが、前記投影ビーム経路に配置されたマニピュレータ要素(ME)と該投影ビーム経路の放射線に対する該マニピュレータ要素の光学効果を可逆に変化させるための作動デバイス(DR)とを有するマニピュレータ(MAN)を有し、
前記マニピュレータ要素のマニピュレータ面が、投影レンズの最近接視野平面から有限距離(D)にこの視野平面と光学的に近接して、該マニピュレータ要素の局所的に異なる光学効果が、該視野平面の異なる視野点から発するビームに対して前記作動デバイスを用いて調節可能であるように配置される、
前記投影レンズの物体平面(OS)の領域に配置されたマスクのパターンを該投影レンズの像平面(IS)内に動作波長λ<260nmを有する電磁放射線を用いて結像するための該投影レンズ(PO)であって、
前記マスクを前記物体平面に対して変位させること及び/又は該マスクを変形することによって引き起こされる結像特性の変化に前記マニピュレータの感度を適応させるための感度適応システムであって、該マニピュレータの該感度は、該マニピュレータにおいて定められる操作値変化と、該操作値変化によって得られる結像品質又はリソグラフィ誤差に対する効果との間の関係を表しており、該適応は、第1の感度から、該第1の感度とは異なる第2の感度への切り替えを含む、感度適応システム、
を特徴とする投影レンズ(PO)。
前記マニピュレータ要素(ME)は、担持デバイス(MT)を用いて移動可能に担持され、かつ作動制御システムの制御信号に依存する方式で位置変化デバイス(PC)を用いて前記最近接視野平面に対する第1の位置(P1)から第2の位置(P2)まで変位可能であることを特徴とする請求項1に記載の投影レンズ。
前記投影レンズが、光軸(OA)を有し、前記マニピュレータ要素(ME)は、前記位置変化デバイス(PC)を用いて該マニピュレータ要素の領域内で該光軸と平行にシフト可能であり、及び/又は
前記マニピュレータ要素は、前記位置変化デバイス(PC)を用いて該マニピュレータ要素の前記領域内で前記光軸を横切って延びる傾斜軸の周りに傾斜可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の投影レンズ。
前記マニピュレータ要素(ME)は、前記マニピュレータの前記感度を適応させる目的に対して、作動制御システムの制御信号に依存する方式で前記最近接視野平面に対する第1の位置(P1)から第2の位置(P2)まで変位されることを特徴とする請求項9に記載の投影露光方法。
前記投影レンズに割り当てられた作動制御システムのストレージに格納されて、閾値によって定められる異なる相互に隣接する操作値範囲に対する前記マニピュレータの2又は3以上の異なる感度を有する感度シリーズが存在し、
感度が、前記マニピュレータに対する定められた操作値変化とそれによって得られる定められた操作値範囲内の前記投影露光装置の結像品質に対する効果との間の関係を示し、
前記感度シリーズ内の閾値が超過されたか又は到達されなかった場合に、第1の感度からそれとは異なる第2の感度への切り換えが行われ、制御アルゴリズムが、それによって修正される、
ことを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の投影露光方法。
前記マスクの位置、及び/又は該マスクの変形状態、及び/又は前記マニピュレータの位置が確立され、該マニピュレータの前記感度は、該マスクの該確立された位置、及び/又は該確立された変形状態、及び/又は該マニピュレータの該確立された位置に依存する方式で自動的に選択されることを特徴とする請求項9、請求項10、又は請求項11に記載の投影露光方法。
投影露光装置が、投影露光装置の機能を制御するための中央コントローラを有し、波面操作システム(WFM)を作動するための制御モジュールが、該制御デバイスに割り当てられ、マニピュレータ(MAN)が、該制御モジュールによって投影露光装置の動作中に他の制御信号に従って作動可能であることを特徴とする請求項13に記載の投影露光装置。
前記マスクを保持するための前記デバイスは、前記物体平面に対して垂直な変位方向の該マスクの直線的変位のための組み込み持ち上げデバイス、及び/又は該変位方向に対して垂直に延びる傾斜軸の周りに該マスクを傾斜させるための組み込み傾斜デバイスを有することを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の投影露光装置。
【背景技術】
【0002】
ドイツ特許出願番号102015209051.5がこれにより引用によって組み込まれる。
【0003】
最近、半導体構成要素及び例えばフォトリソグラフィマスク等の他の微小構造化構成要素を生成するのに使用されているのは、主としてマイクロリソグラフィ投影露光方法である。ここで、結像される構造パターン、例えば、半導体構成要素の層の線パターンを担持又は形成するマスク(レチクル)又は他のパターン発生デバイスが使用される。パターンは、投影露光装置内の照明系と投影レンズの間にある投影レンズの物体平面の領域に配置され、照明系によって供給される照明放射線によって照明される。パターンによって修正された放射線は、露光される基板上にパターンを縮小スケールで結像する投影レンズを通って投影放射線として進行する。基板の面は、物体平面に対して光学的に共役な投影レンズの像平面に配置される。一般的に、基板は、感放射線層(レジスト、フォトレジスト)によって被覆される。
【0004】
投影露光装置の開発の目的のうちの1つは、リソグラフィによって基板上に益々小さい寸法を有する構造を発生させることにある。例えば、半導体構成要素の場合に、より小さい構造はより高い集積密度をもたらし、一般的に、これは、生成される微細構造化構成要素の機能に対して好ましい効果を有する。
【0005】
発生可能な構造のサイズは、採用される投影レンズの解像力に決定的に依存し、第1に投影に使用される投影放射線の波長を短縮することにより、第2に工程に使用される投影レンズの像側開口数NAを増大することによって拡大することができる。
【0006】
最近の高解像度投影レンズは、深紫外(DUV)範囲又は極紫外(EUV)範囲の260nmよりも短い波長で作用する。
【0007】
深紫外(DUV)範囲の波長の場合に、収差(例えば、色収差、像視野曲率)の十分な補正を確実にするために、屈折力を有する透過屈折光学要素(レンズ要素)と、屈折力を有する反射要素、すなわち、曲面ミラーとの両方を有する反射屈折投影レンズが通常使用される。一般的に、少なくとも1つの凹ミラーが含まれる。この場合に、NA=1.35及びλ=193nmにおける液浸リソグラフィを用いて40nmの寸法を有する構造の投影を可能にする解像力が得られる。
【0008】
集積回路は、フォトリソグラフィ構造化段階(露光)と、エッチング及びドーピング等のその後の基板処理段階とのシーケンスによって生成される。個々の露光は、通常は異なるマスク又は異なるパターンを用いて実施される。完成した回路が望ましい機能を示すためには、製造された構造、例えば、接点、線、及びダイオード、トランジスタ、及び他の電気機能ユニットの構成要素が計画された回路レイアウトの理想形に可能な限り近づくように、個々のフォトリソグラフィ露光段階を可能な最大限度まで互いに整合させることが必要である。
【0009】
取りわけ、連続露光段階で発生される構造が互いに十分近くに位置しない場合に、すなわち、オーバーレイ精度が不十分な場合に、製造誤差が発生する場合がある。フォトリソグラフィ工程の様々な製造段階からの構造のオーバーレイ精度は、通常は「オーバーレイ」という用語で示される。この用語は、例えば、連続する2つのリソグラフィ平面のオーバーレイ精度を表している。いかなるタイプの位置合わせ誤差も、短絡又は接続欠損等の製造誤差をもたらし、従って、回路の機能を制限する可能性があるので、オーバーレイは、集積回路を製造する時の重要なパラメータである。
【0010】
更に多重露光方法においても、連続露光のオーバーレイ精度に対して高い要求が課せられる。一例として、二重パターン化法(又は二重露光方法)では、基板、例えば、半導体ウェーハが連続して2回露光され、その後にフォトレジストが処理される。一例として、1回目の露光工程において適切な構造幅を有する標準構造が投影される。2回目の露光工程に対しては、異なるマスク構造を有する第2のマスクが使用される。一例として、第2のマスクの周期構造を第1のマスクの周期構造に対して半周期だけ変位させることができる。一般的に2つのマスクのレイアウトの間の差は大きい場合があり、かなり複雑な構造の場合は特に大きい場合がある。二重パターン化は、基板上の周期構造の周期の短縮をもたらすことができる。この周期短縮は、連続露光のオーバーレイ精度が十分に良好な場合に、すなわち、オーバーレイ誤差が臨界値を超えない場合に首尾良くもたらすことができる。
【0011】
従って、不十分なオーバーレイは、製造中の優良部品の収率を大きく低減する場合があり、その結果、優良部品当たりの製造費が増加する。
【0012】
WO 2014/139719 A1は、投影レンズの物体平面から像平面まで進行する投影放射線の波面に対する制御可能な影響のための波面操作システムを有する投影レンズを記載している。波面操作システムは、投影ビーム経路に配置されたマニピュレータ面を有するマニピュレータを有する。マニピュレータは、近視野方式で、すなわち、例えば、物体平面と最初の後続レンズの間にある最近接視野平面から小さい距離に配置される。マニピュレータは、マニピュレータ面の面形態又は屈折率分布を可逆方式で修正することを可能にする作動デバイスを含む。マニピュレータは、マニピュレータ面の光学的使用領域にわたる固有周期に則して投影放射線の光路長変化の複数の極大点と複数の極小点を発生させることができるように構成される。その結果、とりわけオーバーレイ誤差を小さく保つこと又はそれを低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、異なる作動条件下で異なるフォトリソグラフィ工程を小さいオーバーレイ誤差しか伴わずに実施することを可能にするマイクロリソグラフィのための投影レンズ、投影露光装置、及び投影露光方法を提供するという目的に基づいている。特に、マスクの可能な位置変化は、その制御の範囲内で考慮することができるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この問題は、
当初請求項1に記載の特徴を含む投影レンズ、
当初請求項10に記載の特徴を含む投影露光方法、及び
当初請求項14に記載の特徴を含む投影露光装置によって解決される。有利な発展は、
当初従属請求項に指定されている。全ての請求項の文言は、引用によって本明細書の内容の一部になっている。
[当初請求項1]
光学要素を用いて物体平面に配置されたパターンが像平面に結像可能であるように該物体平面(OS)と該像平面(IS)の間の投影ビーム経路に配置された光学面を有する複数の該光学要素と、
前記物体平面から前記像平面まで進行する投影放射線の波面の制御可能な影響のための波面操作システム(WFM)と、
を含み、
前記波面操作システムが、前記投影ビーム経路に配置されたマニピュレータ要素(ME)と該投影ビーム経路の放射線に対する該マニピュレータ要素の光学効果を可逆に変化させるための作動デバイス(DR)とを有するマニピュレータ(MAN)を有し、
前記マニピュレータ要素のマニピュレータ面が、投影レンズの最近接視野平面から有限距離(D)にこの視野平面と光学的に近接して、該マニピュレータ要素の局所的に異なる光学効果が、該視野平面の異なる視野点から発するビームに対して前記作動デバイスを用いて調節可能であるように配置される、
前記投影レンズの物体平面(OS)の領域に配置されたマスクのパターンを該投影レンズの像平面(IS)内に動作波長λ<260nmを有する電磁放射線を用いて結像するための該投影レンズ(PO)であって、
前記マスクを前記物体平面に対して変位させること及び/又は該マスクを変形することによる結像特性の変化に前記マニピュレータの感度を適応させるための感度適応システム、
を特徴とする投影レンズ(PO)。
[当初請求項2]
前記マニピュレータ要素(ME)は、担持デバイス(MT)を用いて移動可能に担持され、かつ作動制御システムの制御信号に依存する方式で位置変化デバイス(PC)を用いて前記最近接視野平面に対する第1の位置(P1)から第2の位置(P2)まで変位可能であることを特徴とする当初請求項1に記載の投影レンズ。
[当初請求項3]
光学要素を用いて物体平面に配置されたパターンが像平面に結像可能であるように該物体平面(OS)と該像平面(IS)の間の投影ビーム経路に配置された光学面を有する複数の該光学要素と、
前記物体平面から前記像平面まで進行する投影放射線の波面への制御可能な影響のための波面操作システム(WFM)と、
を含み、
前記波面操作システムが、前記投影ビーム経路に配置されたマニピュレータ要素(ME)と該投影ビーム経路の放射線に対する該マニピュレータ要素の光学効果を可逆に変化させるための作動デバイス(DR)とを有するマニピュレータ(MAN)を有し、
前記マニピュレータ要素のマニピュレータ面が、投影レンズの最近接視野平面から有限距離(D)にこの視野平面と光学的に近接して、該マニピュレータ要素の局所的に異なる光学効果が、該視野平面の異なる視野点から発するビームに対して前記作動デバイスを用いて調節可能であるように配置される、
前記投影レンズの物体平面(OS)の領域に配置されたマスクのパターンを該投影レンズの像平面(IS)内に動作波長λ<260nmを有する電磁放射線を用いて結像するための該投影レンズ(PO)であって、
前記マニピュレータ要素(ME)は、担持デバイス(MT)を用いて移動可能に担持され、かつ作動制御システムの制御信号に依存する方式で位置変化デバイス(PC)を用いて前記最近接視野平面に対する第1の位置(P1)から第2の位置(P2)まで変位可能である、
ことを特徴とする投影レンズ(PO)。
[当初請求項4]
前記投影レンズが、光軸(OA)を有し、前記マニピュレータ要素(ME)は、前記位置変化デバイス(PC)を用いて該マニピュレータ要素の領域内で該光軸と平行にシフト可能であり、及び/又は
前記マニピュレータ要素は、前記位置変化デバイス(PC)を用いて該マニピュレータ要素の前記領域内で前記光軸を横切って延びる傾斜軸の周りに傾斜可能である、
ことを特徴とする当初請求項1又は当初請求項3に記載の投影レンズ。
[当初請求項5]
少なくとも10μmの前記距離の変化が、少なくとも1つの視野点に対して調節可能であり、該距離の該変化は、好ましくは、10μmから100μmの範囲にあることを特徴とする当初請求項1から当初請求項4のいずれか1項に記載の投影レンズ。
[当初請求項6]
前記最近接視野平面は、投影レンズ(PO)の前記物体平面(OS)であることを特徴とする当初請求項1から当初請求項5のいずれか1項に記載の投影レンズ。
[当初請求項7]
屈折力を有する光学面が、前記マニピュレータ面での前記投影放射線の開口数NAMが物体側開口数NAOに等しいように前記物体平面(OS)と該マニピュレータ面(MS)の間に配置されないことを特徴とする当初請求項1から当初請求項6のいずれか1項に記載の投影レンズ。
[当初請求項8]
以下の条件:
(i)前記視野平面の視野点から発する各ビームが、前記マニピュレータ面で部分開口直径SADを有する部分開口を照明し、条件SAD/DFP<0.2が、第1のマニピュレータ面に適用され、DFPは、該マニピュレータ面の光学的使用直径の最大値であること、 (ii)前記マニピュレータ面と前記最近接視野平面の間の前記距離(D)は、30mm又はそれよりも短いこと、
(iii)条件SAR<0.1が、前記マニピュレータ面での部分口径比SARに対して適用されること、
のうちの少なくとも1つが、前記投影ビーム経路内の前記マニピュレータ面の位置に適用される、
ことを特徴とする当初請求項1から当初請求項7のいずれか1項に記載の投影レンズ。
[当初請求項9]
(i)前記マニピュレータが制御アルゴリズムに基づいて制御されるように構成された作動制御システムが、投影レンズに割り当てられ、
(ii)閾値によって定められた異なる相互に隣接する操作値範囲に対して前記マニピュレータの2又は3以上の異なる感度を有する感度シリーズ(SST)が、前記作動制御システムのストレージに格納され、感度が、該マニピュレータでの定められた操作値変化とそれによって得られる定められた操作値範囲内の投影レンズの結像特性に対する効果との間の関係を表し、
(iii)前記作動制御システムは、前記感度シリーズ内の閾値が超過されたか又は到達されなかった場合に、第1の感度からそれとは異なる第2の感度への切り換えが行われ、前記制御アルゴリズムがそれによって修正されるように構成される、
ことを特徴とする当初請求項1から当初請求項8のいずれか1項に記載の投影レンズ。
[当初請求項10]
感放射線基板をマスクのパターンの少なくとも1つの像で露光するための投影露光方法であって、
前記マスクを投影露光装置の照明系と投影レンズとの間に前記パターンが該投影レンズの物体平面の領域に配置されるように保持する段階と、
前記基板を該基板の感放射線面が前記物体平面に対して光学的に共役な前記投影レンズの像平面の領域に配置されるように保持する段階と、
前記マスクの照明領域を動作波長λ<260nmを有する前記照明系によって与えられる照明放射線で照明する段階と、
前記照明領域に位置する前記パターンの一部を前記投影レンズを用いて前記基板上の像視野に投影する段階であって、前記像視野内の像発生に寄与する前記投影放射線の全ての光線が投影ビーム経路を形成する前記投影する段階と、
前記投影ビーム経路に配置されたマニピュレータ面と該マニピュレータ面の面形態及び/又は屈折率分布を可逆に変化させるための作動デバイスとを有するマニピュレータを作動することにより、前記物体平面から前記像平面まで進行する前記投影放射線の波面に影響を及ぼす段階と
を含み、
前記マニピュレータ要素の前記マニピュレータ面が、前記投影レンズの最近接視野平面から有限距離(D)にこの視野平面に光学的に近接して該マニピュレータ要素の局所的に異なる光学効果が該視野平面の異なる視野点から発するビームに対して前記作動デバイスを用いて調節可能であるように配置され、
前記マスクを前記物体平面に対して変位させる段階及び/又は該マスクを変形する段階と、
前記マスクを前記物体平面に対して変位させる段階によって及び/又は該マスクを変形する段階によって引き起こされる結像特性の変化に前記マニピュレータの感度を適応させる段階と
を特徴とする投影露光方法。
[当初請求項11]
前記マニピュレータ要素(ME)は、前記マニピュレータの前記感度を適応させる目的に対して、作動制御システムの制御信号に依存する方式で前記最近接視野平面に対する第1の位置(P1)から第2の位置(P2)まで変位されることを特徴とする当初請求項10に記載の投影露光方法。
[当初請求項12]
前記投影レンズに割り当てられた作動制御システムのストレージに格納されて、閾値によって定められる異なる相互に隣接する操作値範囲に対する前記マニピュレータの2又は3以上の異なる感度を有する感度シリーズが存在し、
感度が、前記マニピュレータに対する定められた操作値変化とそれによって得られる定められた操作値範囲内の前記投影露光装置の結像品質に対する効果との間の関係を示し、 前記感度シリーズ内の閾値が超過されたか又は到達されなかった場合に、第1の感度からそれとは異なる第2の感度への切り換えが行われ、制御アルゴリズムが、それによって修正される、
ことを特徴とする当初請求項10又は当初請求項11に記載の投影露光方法。
[当初請求項13]
前記マスクの位置、及び/又は該マスクの変形状態、及び/又は前記マニピュレータの位置が確立され、該マニピュレータの前記感度は、該マスクの該確立された位置、及び/又は該確立された変形状態、及び/又は該マニピュレータの該確立された位置に依存する方式で自動的に選択されることを特徴とする当初請求項10、当初請求項11、又は当初請求項12に記載の投影露光方法。
[当初請求項14]
動作波長λ<260nmを有する紫外光を放出するための光源(LS)と、
前記光源の前記光を受光するための、そしてマスクのパターンに向けられる照明放射線を形成するための照明系(ILL)と、
前記マスクの構造を感光基板上に結像するための投影レンズ(PO)と、
前記マスクを前記照明系と前記投影レンズの間に前記パターンが該投影レンズの物体平面の領域に配置されるように保持するためのデバイスと、
前記基板を該基板の感放射線面が前記物体平面に対して光学的に共役な前記投影レンズの像平面の領域に配置されるように保持するためのデバイスと、
を含む、投影レンズの像区域の領域に配置された感放射線基板を該投影レンズの物体面の領域に配置されたマスクのパターンの少なくとも1つの像で露光するための投影露光装置であって、
前記投影レンズは、当初請求項1から当初請求項9のうちの1項に従って具現化される、
ことを特徴とする投影露光装置。
[当初請求項15]
投影露光装置が、投影露光装置の機能を制御するための中央コントローラを有し、波面操作システム(WFM)を作動するための制御モジュールが、該制御デバイスに割り当てられ、マニピュレータ(MAN)が、該制御モジュールによって投影露光装置の動作中に他の制御信号に従って作動可能であることを特徴とする当初請求項14に記載の投影露光装置。
[当初請求項16]
前記マスクを保持するための前記デバイスは、前記物体平面に対して垂直な変位方向の該マスクの直線的変位のための組み込み持ち上げデバイス、及び/又は該変位方向に対して垂直に延びる傾斜軸の周りに該マスクを傾斜させるための組み込み傾斜デバイスを有することを特徴とする当初請求項14又は当初請求項15に記載の投影露光装置。
【0016】
投影レンズは、投影レンズの物体平面から像平面まで進行する投影放射線の波面に対する制御可能な影響のための波面操作システムを有する。投影ビーム経路に配置された波面操作システムの構成要素の効果は、制御デバイスの制御信号に依存して変化可能な方式で調節することができ、その結果、投影放射線の波面は、ターゲットを定めた方式で修正することができる。波面操作システムの光学効果は、例えば、特定の予め定められた機会の場合に、又は露光の前に、又は他に露光中の状況に依存する方式で修正することができる。
【0017】
波面操作システムは、投影ビーム経路に配置された(少なくとも)1つのマニピュレータ面を有する。マニピュレータは、マニピュレータ面の面形態及び/又は屈折率分布を可逆方式で修正することを可能にする作動デバイス(actuating device)を含む。その結果、マニピュレータ面によって影響を受ける投影放射線の波面は、ターゲットを定めた方式で修正することができる。この光学効果の変更は、マニピュレータを別のマニピュレータと交換することなく可能である。
【0018】
マニピュレータ(又はマニピュレータの作動デバイス)は、1又は2以上の作動部材又はアクチュエータを含み、その現在操作値は、作動制御システムの制御信号に基づいて修正又は調節することができる。操作値変化が、例えば、マニピュレータ要素をシフトさせる、傾斜させる、又は変形するためのアクチュエータの移動である場合に、操作値変化をアクチュエータ動程(アクチュエータ・トラベル)と呼ぶことができる。一例として、操作値変化は、温度変化又は電圧変化として存在することができる。
【0019】
マニピュレータ面は、(i)投影ビーム経路に配置され、(ii)投影放射線に対するマニピュレータ面の面形態及び/又は向きの変化が投影放射線の波面変化をもたらす平面又は曲面を意味するように理解される。一例として、投影レンズの他の光学構成要素に対して変位可能なレンズ要素のあらゆる曲面は、マニピュレータ面と考えることができる。更に別の例は、レンズ要素又はミラーの機械的又は熱的に変形可能な面を含む。レンズ要素の局所熱操作の場合に、一般的にレンズ要素の屈折率も空間内で局所的に変化することになる。例えば、レンズ要素の厚みに起因して、この変化が投影放射線の方向に成分を持たず、すなわち、屈折率が投影放射線の方向に対する直交方向にしか変化しないと仮定することができる場合に、レンズ要素の屈折率の局所変化は、マニピュレータ面において発生する効果として考えることも好適である。一例として、これは、薄い平面板に適用される。
【0020】
マニピュレータ面は、投影レンズの最近接視野平面と「光学的に近接して」配置される。この「近視野配置」は、取りわけ、マニピュレータ面が、投影レンズの瞳平面よりも最近接視野平面に実質的により近くに配置されることを意味する。この場合に、視野平面の視野点から発する各ビームは、様々な視野点に対して異なる波面変化をもたらすことができるようにマニピュレータ面の光学的使用領域の最大直径D
FPよりも実質的に小さい部分開口直径SADをマニピュレータ面において有する部分開口を照明する。
【0021】
像視野にわたって変化を有する光学効果を発生させるためには、マニピュレータ要素において0.5又はそれよりも小さい比SAD/D
FPが存在するべきである。それよりも大きい値の場合に、一般的に収差の関連視野変動を調節することは殆ど不可能である。好ましくは、条件SAD/D
FP<0.2が成り立つべきである。特に、条件SAD/D
FP<0.1さえも適用することができる。ここで、部分開口直径SADは、単一視野点から発する投影光のビームの直径を意味するように理解すべきである。比率SAD/D
FPは、観察視野点のレベルには一般的に無関係である。
【0022】
本発明者は、マニピュレータのマニピュレータ面が視野平面に光学的に非常に近く配置される場合に、波面に対するマニピュレータの効果が、投影レンズの物体平面に対するパターン担持マスクの相対位置に敏感に依存する可能性があると決定した。特に、マスクが、軸線方向シフト及び/又は傾斜によって物体平面の領域内でマスクの設定値位置に対して変位した場合に、及び/又はマスクが、それに対して作用する力によって変形された場合に、様々な視野点から発するビームのマニピュレータ面での部分開口寸法又は部分開口直径の比較的強い相対変化が存在する可能性がある。
【0023】
更に確認されたことは、近視野方式で配置されたマニピュレータ面部分開口寸法又は部分開口直径の明確な相対変化が、マニピュレータのいわゆる「感度」の有意な変化をもたらす可能性があるということである。本出願では、感度という用語は、マニピュレータにおいて定められる操作値変化とこの操作値変化によって得られる結像品質又はリソグラフィ誤差に対する効果との間の関係を表している。
【0024】
システム内の望ましい介入に必要とされるマニピュレータ又はそのアクチュエータにおける操作値変化は、制御プログラムから進んで一部の作動制御システムにおいて目的関数(メリット関数)を最適化する補正アルゴリズムによって確立される。これが達成すべきは、取りわけ、他の収差に悪影響を及ぼす個々の残存収差の最小化があるのではなく、全ての関連影響変数の許容値への均衡のとれた低減が提供されることである。
【0025】
感度を考慮することにより、マニピュレータの許容操作値変化は、制御技術手段によって操作値限界値よりも低い大きさに制限することができる。許容操作値範囲を時としてマニピュレータの「範囲」と呼ぶ。マニピュレータが線形挙動を示し、従って、許容操作値範囲で操作値の大きさとそれによって引き起こされる波面変化のサイズとの間に少なくとも近似的に比例関係が存在するように許容操作値範囲又は許容範囲を定めることを好適とすることができる。
【0026】
多くの場合において、2又は3以上のマニピュレータ要素の光学効果は、各個々のマニピュレータ移動の光学効果の和に等しいという仮定(線形性仮定)の下で作動することが実際的であることが見出されている。この線形性仮定は、ある一定の状況下では、特に視野に近いマニピュレータ面の位置(及びそれに結びつけられる部分開口(subaperture)寸法の比較的強い変化というオプション)の場合に、もはや全体の範囲にわたって有効というわけではない可能性があることが確認されている。
【0027】
これらの態様が考慮されない場合に、作動制御システムは、ある一定の作動条件下で最適な操作値変化を確立することができない場合がある。この点に関して重要な作動条件は、特に、物体平面に対するマスクの変位及び/又はマスクの変形によって引き起こされる結像特性の変化を含む。
【0028】
本発明の一態様により、物体平面に対してマスクを変位させること及び/又はマスクを変形することにより、マニピュレータの感度を結像特性の変化に適応させるための感度適応システムが具備される。その結果、投影露光装置は、上述の臨界条件に個々に反応することができ、臨界条件下であっても工程に対して指定された結像品質を与えることができる。
【0029】
感度適応システムの範囲で感度を調節又は適応させるための1つのオプションは、上述の結像特性変化への反応としてマニピュレータ要素の位置をターゲットを定めた方式で修正することにある。一実施形態では、マニピュレータ要素は、担持デバイスを用いて移動可能に担持され、作動制御システムの制御信号に依存する方式で位置変化デバイスを用いて最近接視野平面に対する第1の位置からそことは異なる第2の位置まで変位させることができる。その結果、例えば、レチクルの位置変化及び/又はレチクルの形態変化によって引き起こされる可能性がある寄生効果を制限し、時に最小化することができる。レチクルの変位は、マニピュレータ要素の部分開口寸法の強い相対変化をもたらす場合があり、その結果としてマニピュレータの感度が変化する可能性があり、それによって線形性仮定は、もはや全範囲わたって有効なものと考えられない場合がある。従って、例えば、光学効果が操作変数の変化の程度と実質的に線形に相関するという仮定を第2の位置に置かれたマニピュレータ要素を有するマニピュレータに対して再度十分な精度量を用いて行うことができるように第2の位置を選択することができる。その結果、修正された結像条件への適応を欠く場合におけるものよりもより正確な波面補正が可能である。
【0030】
位置変化は、マニピュレータ要素のいずれかの剛体自由度に関連する可能性がある。マニピュレータ要素の位置変化は、例えば、マニピュレータ要素の領域内の投影レンズの光軸の方向の広域変位、光軸と垂直に位置合わされた傾斜軸に関連する傾斜、及び/又は光軸に対して垂直な変位を含むことができる。
【0031】
一例示的実施形態では、投影レンズは光軸を有し、マニピュレータ要素は、その領域内で光軸と平行に位置変化デバイスを用いてシフト可能である。そのようなシフトの場合に、最近接視野平面とマニピュレータ要素の間の距離変化は、一般的に全ての視野点に関して同じ大きさを有する。これに代えて又はこれに加えて、マニピュレータ要素が、その領域内で光軸を横断して延びる傾斜軸の周りに位置変化デバイスを用いて傾斜可能であるように位置変化デバイスを構成することを可能にすることができる。そのような傾斜の場合に、最近接視野平面からの距離の様々な変化が異なる視野点に対して出現する場合がある。一部の視野点に関しては関連の部分開口寸法の増加の場合があり、同時に、他の視野点に関しては関連の部分開口寸法の減少の可能性がある。
【0032】
本発明の別の態様により、近視野方式で(最近接視野平面に対して光学的に近接して)配置されたマニピュレータ要素が担持デバイスを用いて移動可能に担持され、作動制御システムの制御信号に依存する方式で位置変化デバイスを用いて最近接視野平面に対する第1の位置から第2の位置まで変位可能である汎用投影レンズが具備される。この実施形態は、感度適応システムの存在とは無関係に有利とすることができる。
【0033】
例えば、第1の位置と第2の位置の間の少なくとも10μmの距離によって与えられる最近接視野平面までの距離変化が少なくとも1つの視野点に対して調節可能である場合であれば有利であることが見出されている。その結果、多くの場合に、補正目的に使用可能な感度変化を達成することができる。一般的に、距離変化が10μmから100μmの範囲にある場合であれば有利である。原理的には可能であるが距離変化が下限を大きく下回る場合に、位置測定の精度及びマニピュレータの調節精度が制限効果を有することができる。上限を大きく超える距離変化は、大きい距離変化を同時に高い位置決め精度で得るべきである場合に、マニピュレータ要素を変位させるために与えられる構成要素のより複雑な機械的構造を必要とする場合がある。一般的に、好ましい範囲では、出費と使用間の適切な妥協が取得可能である。
【0034】
一部の実施形態では、マニピュレータ要素の隣に位置する視野平面(最近接視野平面)は、投影レンズの物体平面である。この場合に、マニピュレータ面での投影放射線の開口数NA
Mが物体側開口数NA
Oに等しいように、物体平面とマニピュレータ面の間には屈折力を有する光学面が配置されないような配置を選択することができる。その結果、望ましいマニピュレータ効果の特に正確な視野依存調節が可能である。
【0035】
投影レンズ内で物体平面と像平面の間に中間像平面が存在し、その領域内に実中間像が発生される場合に、最近接視野平面は、投影レンズのこの中間平面とすることができる。この場合に、マニピュレータの移動を設計する時及び感度を決定する時に、実中間像の補正状態を考慮するべきである。
【0036】
多くの場合に、視野平面の可能な限り多くの視野点に対して、マニピュレータ要素の効果は、隣接視野点とは無関係に調節することができることが望ましい。特に、投影ビーム経路内のマニピュレータ面の位置に関して、(i)視野平面の視野点から発する各ビームが、マニピュレータ面において部分開口直径SADを有する部分開口を照明し、D
FPが、マニピュレータ面の光学的使用直径の最大値である時に、条件SAD/D
FP<0.2が成り立つこと、(ii)マニピュレータ面と最近接視野平面の間の距離が30mm又はそれよりも短いこと、(iii)マニピュレータ面での部分口径比SARに対して条件SAR<0.1が成り立つことのうちの少なくとも1つが成り立つ場合に、最近接視野平面からの有利に小さい距離を取得することができる。
【0037】
部分口径比SARは、ビーム経路内の光学要素又は光学面の位置を定量化するために上述の条件のうちの1つに使用される。明確な定義により、投影ビーム経路内の光学要素の光学面の部分口径比SARは、部分開口直径SADと光学的自由直径DCAの間の比率としてSAR:=SAD/DCAによって定められる。部分開口直径SADは、光学要素のうちで所与の視野点から発するビームの光線によって照明される部分の最大直径によって与えられる。光学的自由直径DCAは、光学要素の面のうちで物体視野から到着する全ての光線によって照明される領域を含む光学要素の基準軸の周りで最も小さい円の直径である。
【0038】
従って、視野平面(物体平面、像平面、又は中間像平面)内ではSAR=0が成り立つ。瞳平面内ではSAR=1が成り立つ。従って、「近視野」面は0に近い部分口径比を有し、「近瞳」面は1に近い部分口径比を有する。
【0039】
基準平面(例えば、視野平面又は瞳平面)からの光学面の光学的近接度又は光学距離は、いわゆる部分口径比SARによって表すことができる。本出願の目的では、光学面の部分口径比SARは次式のように定められる。
SAR=sign CRH(MRH/(|CRH|+|MRH|))
式中のMRHは周辺光線高さを表し、CRHは主光線高さを表し、符号関数であるsign xは、xの符号を表し、慣例によってsign 0=1である。主光線高さは、大きさに関して最大視野高さを有する物体視野の視野点の主光線のビーム高さを意味するように理解される。この場合に、光線高さは符号付きのものであるように理解される。周辺光線高さは、光軸と物体平面の間の交点から進行する最大開口を有する光線の光線高さを意味するように理解される。この視野点は、特に軸外像視野の場合に、物体平面に配置されたパターンを転写することに寄与する必要はない。
【0040】
部分口径比は、ビーム経路内で視野平面又は瞳平面への近接度に対する尺度である符号付き変数である。定義により、部分口径比は、−1と+1の間の値に正規化され、この場合に、各視野平面内で部分口径比はゼロであり、瞳平面内で−1から+1に、又はその逆方向に急変する。従って、1という絶対値を有する部分口径比は瞳平面を決定する。
【0041】
従って、近視野平面は、0に近い部分口径比を有し、それに対して近瞳平面は、大きさに関して1に近い部分口径比を有する。部分口径比の符号は、基準平面の上流又は下流の位置を指定する。
【0042】
感度適応システムを提供するための更に別の手法は、マニピュレータに様々な感度を割り当てることにあり、これらの感度の間で作動条件に依存してターゲットを定めた方式で選択を行うことができる。この対策は、マニピュレータ要素の位置を変化させるオプションに加えて設けることができる。しかし、マニピュレータの位置変化が構造的理由から不可能である場合に、又はそれが可能ではあるが望ましくない場合であっても、変化した結像特性への感度の適応をこのようにして達成することが可能である。
【0043】
例示的実施形態は、(i)マニピュレータが制御アルゴリズムに基づいて制御されるように構成された作動制御システムが、投影レンズに割り当てられ、(ii)閾値(又は限界値)によって定められる様々な相互に隣接する操作値範囲に対して、マニピュレータの2又は3以上の異なる感度を有する感度シリーズが作動制御システムのストレージに格納され、感度が、マニピュレータにおいて定められる操作値変化と、定められた操作値範囲で投影レンズの結像特性に対して操作値変化によって得られる効果との間の関係を表し、かつ(iii)作動制御システムが、感度シリーズ内の閾値が超過された又は到達されなかった場合に、第1の感度からそれとは異なる第2の感度への切り換えが行われ、それによって制御アルゴリズムが修正されるように構成されることを特徴とする。
【0044】
この構成の結果として、作動条件に依存する方式でマニピュレータを作動して制御アルゴリズムを確立する時に2又は3以上の異なる感度を考慮することが可能である。
【0045】
一実施形態では、マスクの位置、マスクの変形状態、及び/又はマニピュレータの位置が確立され、マニピュレータの感度は、こうして確立されたマスクの位置、こうして確立されたマスクの変形状態、及び/又は確立されたマニピュレータの位置に依存する方式で自動的に選択される。
【0046】
本発明はまた、本出願に記載かつ主張するタイプの投影レンズを有し、及び/又は投影露光方法を実施するように構成された投影露光装置に関する。
【0047】
本発明の更に別の利点及び態様は、特許請求の範囲と下記で図に基づいて説明する本発明の好ましい例示的実施形態の以下の説明とにより明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、半導体素子及び他の微細構造化構成要素の生成において採用可能であり、マイクロメートルの数分の一まで細かい分解能を取得するために深紫外(DUV)範囲からの光又は電磁放射線を用いて作動するマイクロリソグラフィ投影露光装置WSCの例を示している。約193nmの作動波長λを有するArFエキシマレーザが、光源LSの1次放射線源として機能する。他のUV光源、例えば、157nmの作動波長を有するF
2レーザ又は248nmの作動波長を有するArFエキシマレーザも可能である。
【0050】
光源LSの下流に配置された照明系ILLは、その発生面ES上において、大きくて鮮明な境界が定められ、かつ実質的に均一に照明される照明視野を発生させ、これは、光路内で照明系ILLの背後に配置された投影レンズPOのテレセントリック性要件に適応される。照明系ILLは、様々な照明モード(照明設定)を調節するためのデバイスを有し、このデバイスは、例えば、様々なコヒーレンス度σ(シグマ)を有する従来の軸上(on−axis)照明と軸外(off−axis)照明との間で切り換えることができる。一例として、軸外照明モードは、環状照明、二重極照明、四重極照明、又はあらゆる他の多重極照明を含む。適切な照明系の設計はそれ自体公知であり、従って、本出願ではこれ以上詳細に説明することはしない。特許出願US 2007/0165202 A1(WO 2005/026843 A2に対応する)は、様々な実施形態の範囲に使用することができる照明系の例を示している。この点に関して、この特許出願の開示内容は、引用によって本明細書の内容になっている。
【0051】
光源LSから光を受光し、この光から、発生平面ESに位置する照明視野又はレチクルMに誘導される照明領域を形成する光学構成要素は、投影露光装置の照明系ILLの一部である。
【0052】
照明系の下流には、レチクルに配置されたパターンPATが、照明系の発生平面ESと一致し、本出願ではレチクル平面OSとも呼ぶ投影レンズPOの物体平面OSの領域に位置するようにマスクM(レチクル)を保持及び操作するためのデバイスRSが配置される。走査作動の目的で、マスクは、この平面と平行に光軸OA(z方向)に対して垂直な走査方向(y方向)にスキャナドライブを用いて移動可能である。
【0053】
デバイスRSは、物体平面に対してz方向に、すなわち、物体平面と垂直にマスクを直線的に変位させるための組み込み持ち上げデバイスと、x方向に延びる傾斜軸の周りにマスクを傾斜させるための組み込み傾斜デバイスとを含む。
【0054】
レチクル平面OSの下流には、縮小レンズとして機能する投影レンズPOが続き、投影レンズPOは、マスクMに配置されたパターンの像を縮小スケールで、例えば、1:4(|β|=0.25)又は1:5(|β|=0.20)のスケールで、投影レンズPOの像平面ISの領域に位置する感光基板面SSを有するフォトレジスト層で被覆された基板W上に結像する。
【0055】
この例示的な場合では半導体ウェーハWである露光される基板は、ウェーハをレチクルMと同期して光軸OAと垂直に走査方向(y方向)に移動するためのスキャナドライブを含むデバイスWSによって保持される。デバイスWSは、像平面に対してz方向に基板を直線的に変位させるための持ち上げデバイスと、x方向に延びる傾斜軸の周りに基板を傾斜させるための傾斜デバイスとを更に含む。
【0056】
「ウェーハ台」とも呼ぶデバイスWS及び「レチクル台」とも呼ぶデバイスRSは、この実施形態では投影露光装置の中央制御デバイスCU内に組み込まれた走査制御デバイスを用いて制御されるスキャナデバイスの構成物である。
【0057】
照明系ILLによって発生される照明視野は、投影露光中に使用される有効物体視野OFを定める。この例示的な場合では、物体視野は矩形であり、走査方向(y方向)と平行に測定される高さA
*を有し、走査方向と垂直に測定される幅B
*>A
*を有する。一般的に、アスペクト比AR=B
*/A
*は、2と10の間にあり、特に3と6の間にある。有効物体視野は、光軸の隣のある距離に位置する(軸外視野)。有効物体視野に対して光学的に共役な像面IS上の有効像視野も同じく軸外視野であり、有効物体視野と同じ形態を有し、高さBと幅Aの間に有効物体視野と同じアスペクト比を有するが、絶対視野寸法は、投影レンズの結像スケールβだけ縮小され、すなわち、A=|β|A
*及びB=|β|B
*である。
【0058】
投影レンズが液浸レンズとして設計及び作動される場合に、投影レンズの発生面と像平面ISの間に置かれた液浸液の薄層が、投影レンズの作動中に透過照明される。液浸作動中には像側開口数NA>1が可能である。乾式レンズとしての構成も可能であり、この場合に、像側開口数は値NA<1に制限される。高解像度投影レンズには一般的なこれらの条件下では、投影レンズの一部又は全部の視野平面(物体平面、像平面、時に1又は2以上の中間像平面)の領域内に比較的大きい開口数、例えば、0.15よりも大きく、0.2よりも大きく、又は0.3よりも大きい値を有する投影放射線が存在する。
【0059】
投影露光装置WSCは、環境の影響及び他の撹乱に対する反応として、及び/又は格納された制御データに基づいて投影露光装置の結像関連特性の適時の微細な最適化をもたらすように構成された作動制御システムを有する。この目的のために、作動制御システムは、投影露光装置の投影挙動へのターゲットを定めた介入を可能にする複数のマニピュレータを有する。能動的に作動可能なマニピュレータは、1又は2以上の作動部材(又は1又は2以上のアクチュエータ)を含み、その現在操作値は、作動制御システムの制御信号に基づいて定められた操作値の変化を起こすことによって修正することができる。
【0060】
投影レンズ又は投影露光装置には、取りわけ波面操作システムWFMが装備され、波面操作システムWFMは、物体平面OSから像平面ISに進行する投影放射線の波面を作動制御システムの制御信号によって可変調節することができる波面操作システムの光学効果の意味の範囲で制御可能な方式で修正するように構成される。この例示的実施形態の波面操作システムは、作動デバイスDRを用いて可逆修正することができる面形態及び/又は屈折率分布を有する投影ビーム経路に配置されたマニピュレータ面MSを有する投影レンズの物体平面の直近の投影ビーム経路に配置されたマニピュレータ要素MEを有するマニピュレータMANを有する。
【0061】
更なる説明に向けて、
図2は、マスクMの領域内でマニピュレータ要素MEの直後のxz平面内の概略縦断面を示している。マニピュレータ要素MEは、投影放射線に対して透過性を有する材料、例えば、合成溶融シリカで作られた板形の光学要素である。物体平面OSに対面する光入射側は、マニピュレータ面MSとして機能し、反対の光発生面は、マニピュレータ面に対して実質的に平行に延びる。
【0062】
作動デバイスは、互いに独立に作動可能である複数のアクチュエータ(この図には示していない)を含み、これらのアクチュエータは、マニピュレータ面MSの面形態をマニピュレータ要素の弾性変形によって修正することができるように板形マニピュレータ要素MEに接触する。この例示的な場合では、湾曲したプロファイルがx方向に調節される。
図2には変形状態は、破線を用いた湾曲マニピュレータ面MS’で示している。
【0063】
マニピュレータ要素MEは、担持デバイスMTを用いて投影レンズのフレーム配置に対して移動可能に担持される。この例示的な場合では、担持デバイスは、マニピュレータ要素の場所で光軸OAの延びに平行なマニピュレータ要素の連続広域シフト(zシフト)を可能にし、これに代えて又はこれに加えて、光軸と垂直に延びる傾斜軸TEの周りのマニピュレータ要素の連続傾斜を可能にする。これらの位置変位又は位置変化は、作動デバイスによって引き起こされる変形とは独立して可能である。
【0064】
これらの変位(zシフト及び/又は傾斜)は、投影露光装置の作動中に作動制御システムによってオペレータの介入なく開始することができる。この目的のために、マニピュレータ要素を全体的に最近接視野平面(物体平面OS)に対する第1の位置P1から第2の位置P2(又は第3の位置、第4の位置のような)まで作動制御システムの制御信号に依存する方式で変位させるように構成された位置変化デバイスPCが設けられる。このデバイスを用いて、マニピュレータ面から物体平面OS又はマスクMのパターンまでの距離を広域的に(すなわち、全ての視野点に対して同じに)又は局所的に別様に(すなわち、視野依存方式で、又は様々な視野点に対して別様に)修正することができる。
【0065】
取得可能な距離変化は、好ましくは、10μm又はそれよりも大きい。一例として、これらの距離変化は、10μmから100μmの範囲にあり、時にそれよりも更に大きいとすることができる。一般的に、1μmのオーダーの位置変化デバイスの位置決め精度で十分である。
【0066】
マニピュレータ要素及び/又はレチクルに対する位置を検出するためのデバイスを設けることができる。例示的にレチクル位置は、レンズの結像効果の測定に基づいて決定することができる。また、投影レンズに対するレチクル位置は、少なくとも1つの専用センサを用いてモニタすることができる。近視野マニピュレータ要素MEの位置を決定するために、例えば、レチクル又はレチクルホルダ上の基準位置に対するマニピュレータ要素上又はマニピュレータ要素のフレーム上の基準位置の距離を測定するセンサを設けることができる。比較的長い時間間隔にわたるセンサドリフトの効果を最小化するために、例えば、予め決められた完全歪みプロファイルの場合の距離は、結像効果の測定によって測定することができる。一例として、そのような較正は、レンズ設定の範囲で可能である。
【0067】
光学的に見ると、マニピュレータ面MSは、位置変化デバイスによって取得可能な位置変化とは無関係に第1の位置P1と第2の位置P2との両方において物体平面OSの直近に、すなわち、「近視野位置」に配置される。これは、取りわけ
図3から識別可能である。
図3は、光軸OAに平行な(z方向の)マニピュレータ面MS又は第1のマニピュレータ要素MEの平面図を示している。この場合に、実線を用いて示す丸形縁部を有する矩形領域FP1は、マニピュレータ要素が第1の位置に置かれた時にマニピュレータ面のうちで有効物体視野OFから到着する光線によって照明される領域を表している。この領域を第1の「フットプリント」とも呼ぶ。
【0068】
本出願では、投影放射線のフットプリントは、投影ビームと投影ビームが通過する面(この場合に、マニピュレータ面MS)との間の交差部のサイズ及び形状を表している。物体平面OSまでの光学近接度は、縁部領域が若干丸まった状態の物体視野OFの矩形形態を実質的に有するフットプリントによって識別可能である。更に、フットプリントは、物体視野と全く同じように光軸OAから離れて位置する。投影放射線によって使用される光学領域は、視野に対して光学的に近接した照明視野領域の形態を有するが、視野平面に対してフーリエ変換された瞳平面の領域内では実質的に円形の領域が照明され、従って、瞳の領域内のフットプリントは、少なくとも近似的に円形の形態を有する。マニピュレータ面MSにおいて照明される領域は、x方向に有効直径D
FPを有する(第1の位置で)。
【0069】
マニピュレータ要素が第1の位置から第2の位置まで変位した場合に、同じくフットプリントのサイズの変化がある。破線を用いて示す小さめの第2のフットプリントFP2は、物体平面により近く位置する第2の位置P2に出現する。
【0070】
投影レンズの場合に、ビームは物体平面の各視野点から発し、ビームの直径は、物体平面から増大する距離と共に増大する。この場合の物体側開口数NA
Oは、各ビームの開口角αの符号に対応する。視野点から発する各ビームは、マニピュレータ面MSにおいて円形の部分開口を照明し、部分開口の直径を部分開口直径SADとして表示している。
図2から、部分開口直径SADが、物体平面から増大する距離及び増大する像側開口数と共に増大することを直ちに見ることができる。マニピュレータは、物体平面に非常に近く配置されるので、複数の部分開口は、照明領域FP内でx方向の相互重複なく互いに隣接する。好ましくは、条件SAD/D
FP<0.2、特に、条件SAD/D
FP<0.1さえも満たされるべきである。
【0071】
これらの条件が守られる場合に、例えば、視野依存歪曲補正が可能になるように制御可能マニピュレータを用いて投影レンズの像視野内の歪曲に場所依存方式で影響を及ぼすことができる。この影響は、マニピュレータが、様々な視野点から発するビームに対して光路長に異なる変化を導入することができることによって達成される。光路長の変化を光路長変化とも呼ぶ。
【0072】
マニピュレータは、視野曲率を補正するために使用することができる。
【0073】
x方向の光路長変化の局所分布は、マニピュレータの作動デバイスを波面補正の視野依存性を調節することができるように作動することによって変化可能である。この場合の波面変化の形態及び大きさは、当該ビームに属する部分開口の範囲でのマニピュレータによる光路長変化のプロファイルに依存する。
【0074】
物体平面に対してマニピュレータ要素の位置を変化させるというオプションの結果として、マニピュレータ要素の(軸方向)位置(及び/又は傾斜角)に依存する方式で様々なサイズの部分開口直径が出現する。
図2の例では、第1の視野点F1から第1のビームが発し、このビームは、マニピュレータ要素が第1の位置(物体平面から遠く離れた)に置かれた時にマニピュレータ面MSに第1の部分開口直径SAD1を発生する。マニピュレータ要素が、物体平面に近い第2の位置P2まで軸線方向シフトによって変位した場合に、同じビームに対して第1の部分開口直径SAD1よりも有意に小さい第2の部分開口直径SAD2がマニピュレータ面において出現する。従って、視野平面の光学近接度の結果として、部分開口寸法の比較的強い変化(例えば、部分開口直径を用いて定量化可能な(quantifiable))がある。
【0075】
本出願の範囲では1%又はそれよりも大きい部分開口寸法の相対変化を強い変化と見なし、その光学効果をターゲットを定めた方式に使用することができる。
【0076】
図2に記載の概略図では、マスクMのパターンPATは、投影レンズの物体平面OS内に調節可能性の範囲内で正確に置かれている。このマスク位置からの逸脱に対する様々な理由が存在することができる。一例として、第1の調節の範囲で、パターンが系統的に物体平面の外側、例えば、投影レンズから大きい距離に留まるようにレチクルを配置することを可能にすることができる。第1の調節の場合に、マスク(レチクル)を最適物体平面に対してではなく、規準物体平面に対してしかシフトさせることができない。一例として、この位置調節は、製造公差及び組立公差に起因する像収差を補償するために行うことができる。これは、投影レンズに固定距離で組み立てられた近視野マニピュレータ要素(例えば、透過板)に対するレチクルの位置の変化も意味する。平面板のz位置スペーサは、第1の調節中の位置シフトマニピュレータの特殊な場合と考えることができる。
【0077】
更に、例えば、熱効果(レンズ加熱に起因する)の結果として物体平面に対するマスク又はパターンの最適位置が投影露光装置の使用寿命にわたって変化する可能性もあり、従って、求める結像品質を達成するためにはマスクを系統的に物体平面の外側に配置するべきである。また、レチクルを取り替えた後に、物体平面に対してパターンの位置は以前に予め定めた位置から逸脱する可能性もある。
【0078】
概略
図4を用いて、物体平面OSに対するz方向の、すなわち、光軸OAに平行なレチクル又はマスクMの広域変位が、近視野方式で配置されたマニピュレータ要素MEの領域内でどのような効果を有することができるかを説明する。
図2と同様に、初期状態で、板形マニピュレータ要素MEは、
図2に記載の第1の位置P1に対応し、例えば、基準位置と考えることができる第1の位置P1にある。
図2に記載の状況と同様に、同じ物体側開口数及び対応する開口角αの場合に、視野点F1から発するビームが、マニピュレータ面MSにおいて第1の部分開口直径SAD1を有する部分開口をもたらすことになる。しかし、マスクは、パターンPATが直接に物体平面OSに位置するようには配置されず、代わりにパターンPATは、物体平面から離れてマニピュレータ要素MEからより大きい距離に位置する。より正確には、マスクは、z方向に平行な絶対変位値ΔZだけ物体平面OSに対して変位される。本出願では、この変位をz偏心とも呼ぶ。他の点では変化のない結像条件の場合に、視野点F1に対応するパターンPATの位置から発したビームは、マニピュレータ面MSにおいて、より大きい部分開口直径SAD1’を有する、より大きい部分開口を照明することになる。この場合に、部分開口直径の拡大の程度は、z偏心の絶対値に線形依存する。
【0079】
物体側高開口投影レンズの場合の典型的な指標に関連する例では、レチクル(マスク)から3mmの距離を有する近視野板の形態にあるマニピュレータ要素及びz方向に100μmのレチクルシフトの場合に、部分開口寸法の相対変化が数パーセント、例えば、概ね3%であってよい。
【0080】
例えば、波面を補正するためにマニピュレータ面MSの面形態が部分開口の領域内で変化するようにマニピュレータ要素MEが変形される場合に、ビームが、像発生マスクとマニピュレータ面の間の小さめの距離の場合に、より大きい距離の場合(部分開口直径SAD1’を含む)とは異なる変形面セクションを照明することは明らかである。従って、パターンPATが直接に物体平面OSに配置されず、その外側に、例えば、z方向に変位した場合に、通過する投影放射線に対して作動されたマニピュレータ要素の異なる光学効果及びこの光学効果の異なる視野依存性が更に存在する。従って、マニピュレータ要素における予め定められた操作値の変化は、像発生マスクが配置される場所におけるマニピュレータ要素からの距離に依存して投影放射線に対して全体的に異なる効果を有することになる。言い換えれば、物体平面に対するマスクの変位の場合に、マニピュレータの感度が有意な変化を有する場合がある。
【0081】
図2を用いて上述したように、z方向シフトによってマニピュレータ要素MEを第1の位置P1から第2の位置P2まで変位させるというオプションを使用することで、マニピュレータの上述の感度変化を少なくとも部分的に補償することができる。この補償は
図4から明らかになる。マニピュレータ要素MEがマスク又は物体平面の方向に第2の位置P2までシフトされる場合に、このシフト後にF1におけるビームに属するマニピュレータ面MSにおける部分開口が、部分開口直径SAD1に実質的に対応する第2の部分開口直径SAD2を有するようにシフト経路(矢印)を適応させることができる。
【0082】
その結果、第1の位置から第2の位置へのマニピュレータ要素MEのzシフトによって第一近似でもたらすことができることは、マスクが物体平面OSからz方向に変位した
図4に示す状況に対するマニピュレータの感度が、マニピュレータ要素MEが第1の位置P1に置かれ、パターンPATが物体平面OSと実質的に一致するマスク基準位置にマスクが置かれた時に、対応する変形に対してマニピュレータが有する感度に実質的に対応することである。
【0083】
従って、近視野方式でz方向に変位可能に配置されたマニピュレータ要素MEを有するマニピュレータは、マニピュレータの感度を物体平面に対するマスクの変位による結像特性の変化に適応させることができる感度適応システムの機能構成要素として機能する。
【0084】
感度の変化は、マニピュレータ要素の傾斜の場合にも出現する可能性がある。ここで、板の傾斜は、単独で既に光学効果を発生させることができる。従って、レチクルの傾斜に則して単純に板を傾斜させるだけではもはや十分ではない場合がある。単純な板の傾斜ではなく、追加的に他のマニピュレータを使用することによって板の傾斜効果を補償することを可能にすることができる。
【0085】
下記では、特定の例示的実施形態を
図5から
図7及び表1に基づいてより詳細に説明する。この例示的な場合では、マニピュレータ要素は、投影放射線に対して透過性を有し、縁部に配置された複数のアクチュエータを用いて変形することができる平行平面板である。
図5の例示的な場合では、板は、光軸に関して回転対称な方式で変形される(例えば、ゼルニケZ9に従って)。
図5は、矩形の光学的使用領域OUAのみを示している。球面変形の中心は、光学的使用領域の外側の光軸OA上に位置する。円弧形の線は、同じ大きさの変形を有する線、すなわち、非変形平面板の場合に仮定される中立位置からの同じz方向変位(光軸に平行な)を有する線を表している。
図5の右手縁部にある図は、変形の半径方向プロファイルDEF(r)を示している。この例示的な場合では、光軸の場所で中立位置からの−40nmの変形が存在し、更に最大正変形のリングにおいて反対方向に約+25nmの変形が存在する。小さめの最大振幅又は有意に大きい最大振幅(例えば、数百ナノメートル)が発生する可能性もある。
【0086】
この回転対称変形は、このマニピュレータの一例示的自由度に過ぎない。他の形態の変形、例えば、円柱変形、波形変形、鞍形(saddle−shaped)変形等が可能である。
【0087】
図6及び
図7は、マニピュレータの効果を最近接視野平面(レチクル平面)に対するマニピュレータ要素の位置の関数として示している。x方向の視野点を図の各々のx軸上に指定している。y軸は、代表的なゼルニケ係数に関連する定量値を指定している。この場合に、
図6A及び
図7Aの各々は、x方向の歪曲に対する効果に関連する値([nm]のゼルニケ係数Z2によって指定している)を示し、
図6B及び
図7Bの各々は、y方向の歪曲に対する効果([nm]のゼルニケ係数Z3によって指定している)を示している。
図6は、投影レンズの物体平面とマニピュレータ面MSの間の3mmの距離Dの場合の条件を示し、
図7の場合は、距離は2倍、すなわち、6mmである。
【0088】
実線の曲線(solid curves)は、各場合に動程Aの場合のマニピュレータの光学効果を表しており、それに対して破線(dashed lines)は、2倍大きく、すなわち、2Aの動程の場合の光学効果を表している。動程が長くなると、球面変形の曲率半径は縮小し、すなわち、より強い変形が調節される。
【0089】
表1及び表2は、x方向の視野点FP1、FP2等(xにおけるFP)に関連する動程A(@A)及び2倍大きい動程2
*A(@2
*A)に対する上述の図に属するゼルニケ係数Z2[nm]及びZ3[nm]の値を第1の位置に関して指定し(表1)、更に第2の位置に関して指定している(表2)。
表1−位置1でのマニピュレータ要素
【表1】
表2−位置2でのマニピュレータ要素
【表2】
【0090】
これらの表に示す第1の位置と第2の位置の間の比較的大きい位置変化(約3mm)は、機能原理を示すための例としての目的で選択したものである。実際には、一般的に、例えば、10μmと100μmの間程度の実質的に小さい距離変化で十分である。
【0091】
個々の像の各々は、動程が2倍になった場合に波面に対する影響が2倍になるようにマニピュレータが各場合に固定位置に対して線形効果を有することを示している。従って、マニピュレータは、各位置で線形性仮定を満たす。
【0092】
しかし、
図6と
図7の比較は、マニピュレータの絶対光学効果がマニピュレータの位置の変化と共に大きく変化することも示している。より大きい距離(3mmの代わりに6mm)の場合に、同じ動程(A及び2A)が、通過する投影ビームの波面に対して絶対値でより強い影響をもたらすことを見ることができる。
【0093】
従って、最近接物体平面に対するマニピュレータ要素の軸線方向位置の変化(光軸に平行な変位の結果として)がマニピュレータの感度の変化を達成することを見ることができる。これは、感度適応システムの範囲で、例えば、物体平面に対してマスクを変位させること及び/又はマスクを変形することによって引き起こされる可能性がある結像特性の変化にマニピュレータの感度を適応させるために使用することができる。
【0094】
下記では、作動制御システムが投影レンズの設定作動条件に依存してターゲットを定めた方式で選択することができる異なる感度がマニピュレータに割り当てられる実施形態を例を用いて説明する。既に上述のように、本出願の範囲での「感度」という用語は、マニピュレータにおいて定められる操作値変化とこの操作値変化によって得られる投影レンズの結像特性に対する効果との間の関係を表している。この関係は、ある操作値範囲内で測定及び/又は計算によって十分な精度を用いて既知である。この例示的実施形態では、感度は、作動制御システムがアクセス可能なストレージ内に適切なデータ構造、いわゆる「感度テーブル」の形態で電子的に格納される。
図8は、感度テーブルTABの例の概略的な図解である。このテーブルは、この例示的な場合では投影レンズの結像特性をパラメータ化するのに使用される考えている視野の様々な視野点FPに対するゼルニケ係数Z2、Z3、Z4等に対して1μmの操作値変化SW(SW=1μm)がどのような効果を有するかを表している。この場合に、1μmの操作値変化は、x座標X
1及びy座標Y
1を有する視野点に対してZ2
11という値のZ2係数の変化を達成する。同じx座標X
1及び異なるy座標Y
2を有する隣接視野点に対しては、同じ操作値変化がZ2
12という値のZ2係数の変化を達成する。同じ手法に従って興味のある全ての収差又はゼルニケ係数に関して視野の複数の視野点(例えば、5個の視野点と100個の視野点の間の)に対するマニピュレータの1μmの操作値変化の場合の関連の変化が検出されて感度テーブルに格納される。
【0095】
一般的に、感度テーブルは、特定の操作値範囲(有効範囲)に対してしか有効ではない。一例示的実施形態では、許容操作値範囲は、現在の操作値変化の大きさと、それによって引き起こされる波面変化の大きさとの間に大体の比例関係がもたらされるように、マニピュレータがこの操作値範囲で十分な精度で線形挙動を示すように定められる。従って、感度テーブルTABに対して有効な操作値範囲で、2μmの操作値変化は、1μmの操作値変化の実質的に2倍の大きさのゼルニケ係数をもたらす。従って、感度テーブルは、各場合に十分な精度で線形挙動を仮定できる定められた操作値範囲に対してのみ有効である。
【0096】
操作値範囲のマニピュレータの厳密に線形の挙動は必要ではない。数学的に厳密な線形性からの小さいずれは許容される。実際に通常適切な実施形態により、本出願の範囲では、動程指定が2倍にされた場合に、それによって誘導される波面収差のRMS(二乗平均平方根)が、単一動程指定の場合に誘導される波面収差のRMSの2倍から最大でも1%、特に最大でも0.1%しかずれないことが成り立つ場合に、1つの自由度を有するマニピュレータが、特にこの自由度において線形であると考えられる。
【0097】
図2から
図4に関して上述したように、比較的小さい位置変化が比較的大きい部分開口寸法変化、従って、観察視野点に依存する比較的大きい光学効果変化を既にもたらしている可能性があるので、最近接視野平面に対して光学的に近接して配置されたマニピュレータ要素に対する線形性仮定の有効性に対する原理に基づく臨界が存在する。例示的実施形態では、これらの状況は、閾値(臨界値)によって定められる様々な相互に隣接する操作値範囲に対して2又は3以上の異なるマニピュレータ感度を有する感度シリーズが、作動制御システムのストレージに格納された状態で存在することによって考慮される。このようにして、それぞれの作動条件に最適な感度又は感度テーブルを感度シリーズから選択することにより、作動条件に依存して異なる感度をマニピュレータに割り当てることができる。
【0098】
次いで、
図9を用いて、作動制御システムがレチクル(マスク)の位置に依存する方式で感度シリーズSSTの複数の感度から現在の状況に最適なマニピュレータ感度を自動的に選択する投影露光装置の作動に関連する例を説明する。
【0099】
この例示的な場合では、マスク(レチクル)は、レチクル台RSの持ち上げデバイスを用いて光軸と平行に(z方向に)投影レンズの物体平面に対して変位させることができる。レチクルのz位置(軸方向位置)をパラメータPOS−Rで表している。この例示的な場合では、レチクルの3つの直接に隣接する位置範囲を網羅する3つの異なる感度テーブル(第1の感度テーブルTAB−1、第2の感度テーブルTAB−2、及び第3の感度テーブルTAB−3)が作動制御システムのストレージに格納される。レチクル位置POS−Rが下側閾値LLから上側閾値ULの範囲に位置する場合に、定められた操作値変化と結像特性に対する効果との間の関係は、第2の感度テーブルTAB−2によって十分に正確に表される。下側閾値よりも低い位置(POS−R<LL)又は上側閾値よりも高い位置(POS−R>UL)ではほぼ線形の挙動からの有意なずれが存在し、従って、ここでは各場合に他の感度テーブルのうちの1つを基準として用いるべきである。
【0100】
制御は、次に、レチクル位置がテーブルTAB−2からの下側閾値を下回って位置する場合(POS−R<LL)に、第1の感度テーブルTAB−1に基づくべきである。レチクル位置POS−Rが上側閾値ULを上回って位置する場合に、制御は、第3の感度テーブルTAB−3に基づいて実施すべきである。
【0101】
この例示的な場合では、感度に基づいて制御アルゴリズムを検査し、時に変化させるためのルーチンが、この例示的な場合では組み込み波面測定システムを用いた新しい収差測定を含有するトリガ段階TRIGによってトリガされる。この測定を用いて、投影レンズの現在の結像特性を表すデータが発生される。
【0102】
その後の位置検出段階POSにおいて、レチクルの現在位置を表すデータが発生される。一例として、この目的のために、(1又は2以上の)対応するレチクル位置センサからデータを取得することができる。
【0103】
任意的に、場合によって存在する(1又は2以上の)更に別のマニピュレータ要素の位置を追加的に検出することができ、これらの位置を後に考慮することができる。
【0104】
その後の選択段階SEL−TABにおいて、対応するレチクル位置に適合する感度テーブルの選択が実施される。レチクル位置に依存する方式で、マニピュレータに適する感度がストレージから呼び出される。レチクルの位置が第2の感度テーブルTAB−2の下側閾値LLと上側閾値ULの間に位置することを位置検出段階が決定した場合に、この第2の感度テーブルが更に別の制御に対する基準として使用される。レチクル位置が上側閾値を上回って位置する場合(UL<POS−R)には、第3の感度テーブルTAB−3が、その後に続くものに対する基準として使用される。
【0105】
しかし、この例示的な場合では、レチクルの位置は、第2の感度テーブルの下側閾値LLを下回って位置するものとし、すなわち、条件POS−R<LLが満たされるものとする。この場合に、投影レンズの結像特性を使用するその後のモデル化段階MODにおいて第1の感度テーブルTAB−1の感度を用いてモデルが計算される。この目的のために、対応する感度及び他のパラメータが最適化の目的でロードされる。
【0106】
その後の最適化段階OPTでは、モデルの最適化が行われる。最適化段階は、取りわけ、結像挙動を適応させるために使用される全てのマニピュレータの可能な動程変化を達成する。
【0107】
その後の検査段階CHECKでは、場合によって最適化段階によって修正されたレチクル動程(すなわち、操作値変化)がモニタされる。この場合に、最適化段階OPTを含めたレチクル位置POS−Rが、第1の感度テーブルTAB−1の有効範囲に依然として置かれているか否かに関して検査が実施される。有効範囲を僅かに超えた場合に最適化器が無限ループに入ることを防止するために、検査段階で超過の大きさに対する閾値を使用することができ、この検査段階は、新しく選択される感度テーブルを用いた新しい最適化がこの閾値を超えた後に初めて実施されるように機能する。
【0108】
最適化が第1の感度テーブルTAB−1の有効範囲の外側に位置するレチクル位置をもたらした場合に、手順は、適合する感度テーブルを選択するための新しい選択段階SEL−TABにおいて続けられる。一方、最適化段階を含めたレチクル位置が依然として第1の感度テーブルTAB−1の有効範囲に位置することを検査段階CHECKが示した場合に、作動制御システムによる投影レンズの制御は、第1の感度テーブルTAB−1の第1の感度に基づいて制御アルゴリズムを相応に修正することによって続行される。
【0109】
図8の例示的な場合では、工程は、収差測定によってトリガされる。検査を実施し、必要に応じて、事前に固定的に予め決められた時点でフィードフォワードモデルに基づいて制御アルゴリズムの補正を実施することができる。
【0110】
この例示的な場合では、レチクル位置は、それを表すセンサデータに基づいて位置合わされる。原理的には、センサに基づく位置合わせなしで、例えば、レチクルマニピュレータの動程を追加することによって作動させることができる。
【0111】
この例示的な場合では、例示目的で3つの感度テーブルが具備される。一部の場合に、感度シリーズにおいて2つの異なる感度テーブルを与えるだけで十分とすることができる。また、感度シリーズにおいて3よりも多い、例えば、4、5、6、又は7以上の異なる感度テーブルを有することができる。
【0112】
2又は3以上の異なる感度テーブルを有する変形の場合に、既に利用可能な少なくとも2つの異なる感度テーブル(初期感度テーブル)に基づく計算アルゴリズムを用いて少なくとも1つの更に別の派生感度テーブルを計算し、派生感度テーブルを用いてマニピュレータを制御することを可能にすることができる。派生感度テーブルの値は、例えば、初期感度テーブルの値からの内挿によって計算することができる。このようにして、現在の状態(例えば、現在のレチクル位置)により適する感度を確立することを可能にすることができ、それによって再度改善されたマニピュレータ効果が得られる。
【0113】
例示的実施形態をマニピュレータ要素として変形可能平面板を有するマニピュレータに基づいて記述した。本発明は、これに限定されない。一例として、US 7990622 B2により、マニピュレータ要素は、液体充填間隙を有する多部分マニピュレータ要素として具現化することができる。
【0114】
例示的実施形態の一部の態様を軸外視野を有するシステムに基づいて記述した。技術的観点からは、軸外視野は必要ではない。本明細書で記述したタイプの近視野マニピュレータは、対応する利点を伴いながら軸上系において同様に使用することができる。