(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪拡散剤組成物≫
半導体基板への不純物拡散に用いられる拡散剤組成物であって、不純物拡散成分(A)を含む。
不純物拡散成分(A)は、半導体基板の表面に塗布することにより拡散層を形成可能であって、窒素原子を含むホウ素化合物である。
かかる不純物拡散成分(A)を用いることにより、拡散剤組成物を用いて、半導体基板にホウ素を良好に拡散させることができる。
また、上記の拡散剤組成物を用いることにより、不純物拡散成分を拡散させる対象の半導体基板が、その表面にナノスケールの微小な空隙を有する三次元構造をその表面に備える場合であっても、微小な空隙の内表面全面を含め、半導体基板表面に拡散剤組成物を均一に塗布できる。これにより、半導体基板にホウ素が均一に拡散される。
【0016】
以下、拡散剤組成物が含む、必須又は任意の成分について説明する。
【0017】
〔不純物拡散成分(A)〕
不純物拡散成分(A)は、半導体基板の表面に塗布することにより拡散層を形成可能であって、窒素原子を含むホウ素化合物である。
例えば、窒素原子が有する非共有電子対による基板表面への吸着や、ホウ素化合物がアルキル基等の有機基(特に炭化水素基)を有する場合の基板表面への吸着によって、窒素原子を含むホウ素化合物が基板表面に、1〜数分子のレベルの厚さで配列され拡散層が形成されると考えられる。
また、基板表面へのホウ素化合物の吸着性の観点から、ホウ素化合物中のホウ素原子が4価の状態でないのが好ましい。ホウ素原子が4価の状態であるホウ素化合物の例としては、トリエチルアミンとBH
3との錯体のような錯体化合物が挙げられる。
【0018】
上記の所定の条件を満たすホウ素化合物としては、例えば、下記式(a1)又は下記式(a2):
【化1】
(式(a1)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、窒素原子を含有しない有機基、又は窒素原子含有基であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4の少なくとも1つは、窒素原子含有基であり、R
1とR
2と、R
2とR
4と、R
3とR
4と、及びR
1とR
3とは、それぞれ独立に、相互に結合して環を形成してもよい。
式(a2)中、R
5、R
6、及びR
7は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、窒素原子を含有しない有機基、又は窒素原子含有基であり、R
5、R
6、及びR
7の少なくとも1つは、窒素原子含有基であり、R
5、R
6、及びR
7のうちの2つは、相互に結合して環を形成してもよい。)
で表される化合物が好ましい。
【0019】
式(a1)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4としての窒素原子を含有しない有機基は、窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロ原子の例としては、O、S、B等が挙げられる。
【0020】
R
1、R
2、R
3、及びR
4としての窒素原子を含有しない有機基は特に限定されないが、好適な例としては、−R
a1で表される基と、−O−R
a1で表される基とが挙げられる。
R
a1は、置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよいヘテロシクリル基である。
【0021】
R
a1が置換基を有してもよい炭化水素基である場合の、炭化水素基の好適な例としては、アルキル基、脂肪族環式基、シクロアルキルアルキル基、アルケニル基、芳香族炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素原子数は、特に限定されないが、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜6が特に好ましい。
【0022】
アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、及びn−イコシル基が挙げられる。
【0023】
脂肪族環式基は、単環式基であっても、多環式基であってもよい。単環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。多環式基としては、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、及びテトラシクロドデシル基等が挙げられる。
【0024】
シクロアルキルアルキル基としては、シクロペンチルメチル基、2−シクロペンチルエチル基、3−シクロペンチルプロピル基、4−シクロロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、2−シクロヘキシルエチル基、3−シクロヘキシルプロピル基、及び4−シクロヘキシルブチル基が挙げられる。
【0025】
アルケニル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルケニル基の好適な例としては、前述のアルキル基の好適な例に対応するアルケニル基が挙げられる。特に好ましいアルケニル基としては、ビニル基、及びアリル基が挙げられる。
【0026】
芳香族炭化水素基の好適な例としては、フェニル基、ナフチル基、及びビフェニリル基が挙げられる。これらの中ではフェニル基が好ましい。
【0027】
R
a1が置換基を有してもよいヘテロシクリル基である場合、当該ヘテロシクリル基は窒素原子を含有しないヘテロシクリル基であれば特に限定されない。
ヘテロシクリル基の好適な例としては、フラニル基、チエニル基、ピラニル基、チオピラニル基、テトラヒドロフラニル基、及びテトラヒドロチエニル基が挙げられる。
【0028】
R
a1が置換基を有する基である場合、当該置換基の好適な例としては、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、水酸基、メルカプト基、炭素原子数2〜7の脂肪族アシルオキシ基、ベンゾイル基、炭素原子数2〜7のアルコキシカルボニル基、及びフェノキシカルボニル基等が挙げられる。
R
a1が複数の置換基を有する場合、当該複数の置換基は、それぞれ異なっていてもよい。
【0029】
R
1、R
2、R
3、及びR
4が窒素原子含有基である場合、当該窒素原子含有基は有機基であっても無機基であってもよい。
窒素原子含有基の好適な例としては、アミノ基、イソシアネート基、及び窒素原子を含む有機基が挙げられる。
【0030】
窒素原子を含む有機基としては、−NHR
a1で表される基、−N(R
a1)
2で表される基、−R
a2−(R
a3)
pで表される基、及び−O−R
a2−(R
a3)
pで表される基が挙げられる。
R
a1は、前述の通りである。窒素原子を含む有機基が複数のR
a1を含む場合、当該有機基中の複数のR
a1は互いに異なっていてもよい。R
a2の好適な例は、R
a1と同様である。
R
a2は、前述のR
a1からp個の水素原子を除いた(p+1)価の基である。
R
a3は、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、イソシアネート基、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するモノ又はジアルキルアミノ基、並びにカルバモイル基からなる群より選択される基である。窒素原子を含む有機基が複数のR
a3を含む場合、当該有機基中の複数のR
a3は互いに異なっていてもよい。
pは、−O−R
a2−(R
a3)
pで表される基における、−R
a3の置換数である。pは1以上の整数である。pの上限は、R
a2の炭素原子数に応じて適宜定められる。pは、典型的には、1〜6の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1又は2が特に好ましく、1が最も好ましい。
【0031】
式(a1)中、R
1とR
2と、R
2とR
4と、R
3とR
4と、及びR
1とR
3とは、それぞれ独立に、相互に結合して環を形成してもよい。
この場合、R
1とR
2と、R
2とR
4と、R
3とR
4と、又はR
1とR
3とが結合して形成される2価基としては、下記式(i)〜(viii)で表される基が挙げられる。
−NR
a4−R
a5−NR
a4−・・・(i)
−NR
a4−BH−NR
a4−・・・(ii)
−NR
a4−BH−BH−NR
a4−・・・(iii)
−NR
a4−BH−NR
a4−NR
a4−・・・(iv)
−NR
a4−NR
a4−NR
a4−NR
a4−・・・(v)
−NR
a4−BH−NR
a4−BH−NR
a4−・・・(vi)
−O−R
a5−O−・・・(vii)
−O−R
a6−O−・・・(viii)
【0032】
上記式(i)〜(viii)において、R
a4は、水素原子、−R
a1で表される基、−O−R
a1で表される基、又は−CO−R
a1で表される基である。式(i)〜(viii)中の複数のR
a4は、同一であっても異なっていてもよい。
式(i)、及び式(vii)中のR
a5は、直鎖状でも分岐鎖状でもよいアルキレン基である。当該アルキレン基の好適な例としては、−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH(CH
2CH
3)−、−CH
2CH
2CH(CH
2CH
3)−、−CH
2−C(CH
3)
2−CH
2−、及び−C(CH
3)
2C(CH
3)
2−が挙げられる。
式(viii)中のR
a6は、酒石酸アミド化合物から2つの水酸基を除いた2価基である。
【0033】
式(a2)中、R
5、R
6、及びR
7は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、窒素原子を含有しない有機基、又は窒素原子含有基である。これらの基の例は、式(a1)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4について説明した例と同様である。
【0034】
また、式(a2)において、R
5、R
6、及びR
7のうちの2つは、相互に結合して環を形成してもよい。この場合、R
5とR
6と、R
6とR
7と、又はR
5とR
7とが結合して形成される2価基としては、前述の式(i)〜(vi)で表される基が挙げられる。
【0035】
以下式(a1)で表される化合物の好適な例と、式(a2)で表される化合物の好適な例とについて、より詳細に説明する。
【0036】
式(a1)で表される化合物の好適な例としては、下記式(a1−1):
【化2】
(式(a1−1)中、R
8〜R
15は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7〜11の芳香族アシル基である。R
8とR
9と、R
10とR
11と、R
12とR
13と、及びR
14とR
15とは、それぞれ独立に、相互に結合して環を形成してもよい。)
【0037】
R
8〜R
15としての脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよい。R
8〜R
15としての脂肪族炭化水素基は、直鎖状の飽和炭化水素基が好ましい。
R
8〜R
15としての脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
R
8〜R
15としての脂肪族炭化水素基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘプチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、及びn−デシル基が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、及びイソプロピル基が好ましく、メチル基、及びエチル基がより好ましい。
【0038】
R
8〜R
15としての芳香族炭化水素基の炭素原子数は6〜10である。R
8〜R
15としての芳香族炭化水素基の好適な例は、フェニル基、α−ナフチル基、及びβ−ナフチル基であり、フェニル基が好ましい。
【0039】
R
8〜R
15としてのアラルキル基の炭素原子数は7〜12である。R
8〜R
15としてのアラルキル基の好適な例としては、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、及びβ−ナフチルメチル基であり、ベンジル基、及びフェネチル基が好ましい。
【0040】
R
8〜R
15としての脂肪族アシル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、任意に不飽和結合を有してもよい。R
8〜R
15としての脂肪族アシル基は、直鎖状の飽和脂肪族アシル基が好ましい。
R
8〜R
15としての脂肪族アシル基の炭素原子数は、2〜6が好ましく、2〜4がより好ましく、2又は3が特に好ましい。
R
8〜R
15としての脂肪族アシル基の好適な例としては、アセチル基、プロピオニル基、n−ブタノイル基、n−ペンタノイル基、n−ヘキサノイル基、n−ヘプタノイル基、n−オクタノイル基、n−ノナノイル基、及びn−デカノイル基が挙げられ、アセチル基、プロピオニル基、n−ブタノイル基、n−ペンタノイル基、及びn−ヘキサノイル基が好ましく、アセチル基、及びプロピオニル基がより好ましい。
【0041】
R
8〜R
15としての芳香族アシル基の炭素原子数は7〜11である。R
8〜R
15としての芳香族アシル基の好適な例は、ベンゾイル基、α−ナフトイル基、及びβ−ナフトイル基であり、ベンゾイル基がより好ましい。
【0042】
式(a1−1)で表される化合物の好適な具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【化3】
【0043】
式(a1)で表される化合物の他の好適な例としては、下記式(a1−2):
【化4】
(式(a1−2)中、R
16及びR
17は、それぞれ2価の有機基である。)
【0044】
R
16及びR
17としての2価の有機基としては、−R
18−NR
20−R
19−で表される基や、酒石酸アミド由来の基が挙げられる。
酒石酸アミド由来の基とは、酒石酸アミド化合物から2つの水酸基を除いた2価基である。
R
18及びR
19は、それぞれ独立に炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、メチレン基、又はエタン−1,2−ジイル基が好ましい。R
20は、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7〜11の芳香族アシル基であり、これらの具体例はR
8〜R
15について説明した具体例と同様である。
【0045】
式(a1−2)中、R
16及びR
17が酒石酸アミド由来の基である場合の、式(a1−2)で表される化合物の好適な具体例としては、下記式(a1−2−1):
【化5】
(式(a1−2−1)中、R
21〜R
28は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7〜11の芳香族アシル基である。)
で表される化合物が挙げられる。
【0046】
R
21〜R
28について、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、及び炭素原子数7〜11の芳香族アシル基の具体例は、R
8〜R
15について説明した具体例と同様である。
【0047】
式(a1−2−1)で表される化合物の好適な具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【化6】
【0048】
また、式(a2)で表される化合物の好適な具体例としては、下記式(a2−1):
【化7】
(式(a2−1)中、R
29は、含窒素複素環基、又は窒素含有基で置換された窒素原子を含まない環式基であり、R
30及びR
31は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7〜11の芳香族アシル基である。R
30及びR
31は、相互に結合して環を形成してもよい。)
で表される化合物が挙げられる。
【0049】
R
29は、窒素含有基で置換されていてもよい含窒素複素環基、又は窒素含有基で置換された窒素原子を含まない環式基である。つまり、R
29は、窒素原子を必須に含む、環式基である。
【0050】
R
29としての含窒素複素環基は、含窒素芳香族複素環基であっても、含窒素脂肪族複素環基であってもよい。
含窒素複素環基は、種々の含窒素複素環から、1つの水素原子を除いた1価の基である。含窒素複素環から除かれる水素原子は、環を構成するいずれの原子に結合していてもよく、炭素原子に結合していても、窒素原子に結合していても、窒素原子以外のヘテロ原子に結合していてもよい。
【0051】
含窒素複素環基を与える含窒素芳香族複素環の好適な例としては、例えば、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、テトラジン、ペンタジン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、及びキノキサリン等が挙げられる。
含窒素複素環基を与える含窒素脂肪族複素環の好適な例としては、ピロジリン、ピラゾリジン、トリアゾリジン、ピロリン、ピラゾリン、イミダゾリン、トリアゾリン、ピペリジン、ピペラジン、トリアジナン、テトラジナン、ペンタジナン、モルホリン、チオモルホリン、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、2−イミダゾリジノン、フタルイミド、s−トリアジン−2,4,6−トリオン等が挙げられる。
【0052】
R
29が、窒素含有基で置換された窒素原子を含まない環式基である場合、環式基は、芳香族基であっても脂肪族環式基であってもよく、窒素原子以外のヘテロ原子を含む複素環基であってもよい。
環式基は、芳香族基であるのが好ましく、フェニル基、ナフチル基、及びビフェニリル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0053】
R
29が、窒素含有基で置換された窒素原子を含まない環式基である場合、置換基としての窒素含有基の好適な例としては、ニトロ基、イソシアネート基、−NR
31R
32で表されるアミノ基又は置換アミノ基、−CONH−R
33で表されるカルバモイル基又は置換カルバモイル基が挙げられる。
また、下記式で表される、ホウ素原子と窒素原子とを含む基も窒素含有基として好ましい。
【化8】
【0054】
−NR
31R
32で表されるアミノ基又は置換アミノ基において、R
31、及びR
32の好適な例としては、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7〜11の芳香族アシル基である。
R
31、及びR
32は、相互に結合して環を形成してもよい。
これらの基の具体例は、R
8〜R
15について説明した具体例と同様である。
【0055】
−CONH−R
33で表されるカルバモイル基又は置換カルバモイル基において、R
33の好適な例としては、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7〜11の芳香族アシル基である。
これらの基の具体例は、R
8〜R
15について説明した具体例と同様である。
【0056】
以上説明した窒素含有基の中では、ニトロ基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、フェニルアミノ基、カルバモイル基、及びイソシアネート基が好ましく、ニトロ基、及びアミノ基がより好ましい。
【0057】
R
29が、窒素含有基で置換された窒素原子を含まない環式基である場合、環式基上の窒素含有基の数は特に限定されない。環式基上の窒素含有基の数は、1〜4が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0058】
式(a2−1)で表される化合物の好適な具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【化9】
【0059】
式(a2)で表される化合物の他の好適な具体例としては、下記式(a2−2):
【化10】
(式(a2−2)中、R
34、及びR
35は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7〜11の芳香族アシル基であり、R
36、及びR
37は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7〜11の芳香族アシル基である。R
34及びR
35は、相互に結合して環を形成してもよい。R
34及びR
36は、相互に結合して環を形成してもよい。R
35及びR
37は、相互に結合して環を形成してもよい。R
36及びR
37は、相互に結合して環を形成してもよい。)
【0060】
R
34、R
35、R
36、及びR
37が、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7〜11の芳香族アシル基である場合、これらの基の具体例は、R
8〜R
15について説明した具体例と同様である。
【0061】
R
34、及びR
35としては水素原子が好ましい。R
36、及びR
37としては、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素原子数1〜10のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基が特に好ましい。
【0062】
R
34及びR
36が、相互に結合して環を形成するか、R
35及びR
37が、相互に結合して環を形成する場合、R
34とR
36とが、又はR
35とR
37とが形成する2価基は、例えば、アルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、例えば、トリメチレン基、及びテトラメチレン基が好ましい。
つまり、R
34とR
36と、又はR
35とR
37とが、ホウ素原子及び窒素原子とともに飽和脂肪族5員環を形成するか、飽和脂肪族6員環を形成するのが好ましい。
【0063】
式(a2−2)で表される化合物の好適な具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【化11】
【0064】
式(a2)で表される化合物の他の好適な具体例としては、下記式(a2−3):
【化12】
(式(a2−3)中、R
38は、含窒素複素環基、又は窒素含有基で置換された窒素原子を含まない環式基であり、R
39及びR
40は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7〜11の芳香族アシル基である。R
39及びR
40は、相互に結合して環を形成してもよい。)
で表される化合物が挙げられる。
【0065】
R
38としての含窒素複素環基、又は窒素含有基で置換された窒素原子を含まない環式基の好適な例については、式(a2−1)におけるR
29について説明した例と同様である。
R
39、及びR
40が、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7〜11の芳香族アシル基である場合、これらの基の具体例は、R
8〜R
15について説明した具体例と同様である。
【0066】
式(a2−3)で表される化合物の中では、−OR
39と−OR
40とが下記構造を形成している化合物が好ましい。
【化13】
【0067】
式(a2−3)で表される化合物の好適な具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【化14】
【0073】
式(a2)で表される化合物の他の好適な具体例としては、下記式(a2−4):
【化20】
(式(a2−4)中、R
41及びR
42は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7〜11の芳香族アシル基である。
R
43は、炭素原子数1〜10のアルキレン基、
−BR
45−、−BR
45−BR
45−、
−BR
45−NR
46−、
−NR
46−NR
46−、
−BR
45−NR
46−BR
45−、又は、
−BR
45−NR
46−BR
45−NR
46−BR
45−
である。
R
46は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7〜11の芳香族アシル基である。
R
44及びR
45は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、炭素原子数7〜11の芳香族アシル基、含窒素複素環基、又は窒素含有基で置換された窒素原子を含まない環式基である。)
で表される化合物が挙げられる。
【0074】
R
41、R
42、R
44、R
45、及びR
46が、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7〜11の芳香族アシル基である場合、これらの基の具体例は、R
8〜R
15について説明した具体例と同様である。
R
44及びR
45が、含窒素複素環基、又は窒素含有基で置換された窒素原子を含まない環式基である場合、これらの基の具体例は、R
29について説明した具体例と同様である。
【0075】
式(a2−4)で表される化合物の中では、下記式(a2−4−1)〜(a2−4−8)で表される化合物が好ましい。
【化21】
【0076】
式(a2−4−6)で表される化合物としては、例えば、下記式で表される化合物が好ましい。
【化22】
【0077】
式(a2−4−7)で表される化合物としては、例えば、下記式で表される化合物が好ましい。
【化23】
【化24】
【化25】
【0078】
式(a2−4)で表される化合物の好適な具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【化26】
【0079】
式(a2)で表される化合物の他の好適な具体例としては、下記式(a2−5):
【化27】
(式(a2−5)中、R
46〜R
51は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7〜11の芳香族アシル基である。R
46とR
47と、R
48とR
49と、及びR
50とR
51とは、それぞれ独立に、相互に結合して環を形成してもよい。)
で表される化合物が挙げられる。
【0080】
R
46〜R
51が、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜10の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7〜11の芳香族アシル基である場合、これらの基の具体例は、R
8〜R
15について説明した具体例と同様である。
【0081】
式(a2−5)で表される化合物の好適な具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【化28】
【0082】
拡散剤組成物中の不純物拡散成分(A)の含有量は特に限定されない。拡散剤組成物中の不純物拡散成分(A)の含有量は、0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。
【0083】
〔加水分解性シラン化合物(B)〕
拡散剤組成物は、加水分解性シラン化合物(B)を含有していてもよい。拡散剤組成物が加水分解性シラン化合物(B)を含む場合、拡散剤組成物を半導体基板に塗布して薄膜を形成する際に、加水分解性シラン化合物が加水分解縮合して、塗布膜内にケイ素酸化物系の極薄い膜が形成される。塗布膜内に、ケイ素酸化物系の極薄い膜が形成される場合、前述の不純物拡散成分(A)の基板外への外部拡散が抑制され、拡散剤組成物からなる膜が薄膜であっても、良好且つ均一に半導体基板に不純物拡散成分(A)を拡散させやすい。
【0084】
加水分解性シラン化合物(B)は、加水分解により水酸基を生成させ、且つSi原子に結合する官能基を有する。加水分解により水酸基を生成させる官能基としては、アルコキシ基、イソシアネート基、ジメチルアミノ基及びハロゲン原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素原子数1〜5の、直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基が好ましい。好適なアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、及びn−ブトキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0085】
加水分解により水酸基を生成させる官能基としては、速やかに加水分解されやすいことと、加水分解性シラン化合物(B)の取り扱い性や入手の容易性の点から、イソシアネート基、及び炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、及びイソシアネート基がより好ましい。
【0086】
炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基を有する加水分解性シラン化合物(B)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−n−ペンチルオキシシラン、トリメトキシモノエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、モノメトキシトリエトキシシラン、トリメトキシモノ−n−プロポキシシラン、ジメトキシジ−n−プロポキシラン、モノメトキシトリ−n−プロポキシシラン、トリメトキシモノ−n−ブトキシシラン、ジメトキシジ−n−ブトキシシラン、モノメトキトリ−n−トリブトキシシラン、トリメトキシモノ−n−ペンチルオキシシラン、ジメトキシジ−n−ペンチルオキシシラン、モノメトキシトリ−n−ペンチルオキシシラン、トリエトキシモノ−n−プロポキシシラン、ジエトキシジ−n−プロポキシシラン、モノエトキシトリ−n−プロポキシシラン、トリエトキシモノ−n−ブトキシシラン、ジエトキシジ−n−ブトキシシラン、モノエトキシトリ−n−ブトキシシラン、トリエトキシモノ−n−ペンチルオキシシラン、ジエトキシジ−n−ペンチルオキシシラン、モノエトキシトリ−n−ペンチルオキシシラン、トリ−n−プロポキシモノ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロポキシジ−n−ブトキシシラン、モノ−n−プロポキシトリ−n−プロポキシシラン、トリ−n−プロポキシモノ−n−ペンチルオキシシラン、ジ−n−プロポキシジ−n−ペンチルオキシシラン、モノ−n−プロポキシトリ−n−ペンチルオキシシラン、トリ−n−ブトキシモノ−n−ペンチルオキシシラン、ジ−n−ブトキシジ−n−ペンチルオキシシラン、モノ−n−ブトキシトリ−n−ペンチルオキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−n−ペンチルオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、及びエチルトリ−n−ペンチルオキシシランが挙げられる。これらの加水分解性シラン化合物(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記のアルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物も加水分解性シラン化合物(B)として使用できる。
【0087】
これらの中では、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、及びエチルトリエトキシシランが好ましく、テトラメトキシシラン、及びテトラエトキシシランが特に好ましい。
【0088】
イソシアネート基を有する加水分解性シラン化合物(B)としては、下記式(b1)で表される化合物が好ましい。
(R
b1)
4−nSi(NCO)
n・・・(b1)
(式(b1)中、R
b1は炭化水素基であり、nは3又は4の整数である。)
【0089】
式(b1)中のR
b1としての炭化水素基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。R
b1としては、炭素原子数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素原子数1〜12の芳香族炭化水素基、炭素原子数1〜12のアラルキル基が好ましい。
【0090】
炭素原子数1〜12の脂肪族炭化水素基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、シクロオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、及びn−ドデシル基が挙げられる。
【0091】
炭素原子数1〜12の芳香族炭化水素基の好適な例としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、及びビフェニリル基が挙げられる。
【0092】
炭素原子数1〜12のアラルキル基の好適な例としては、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、2−α−ナフチルエチル基、及び2−β−ナフチルエチル基が挙げられる。
【0093】
以上説明した炭化水素基の中では、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0094】
式(b1)で表される加水分解性シラン化合物(B)の中では、テトライソシアネートシラン、メチルトリイソシアネートシラン、及びエチルトリイソシアネートシランが好ましく、テトライソシアネートシランがより好ましい。
【0095】
なお、イソシアネート基を有する加水分解性シラン化合物(B)と、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基を有する加水分解性シラン化合物(B)とを併用することもできる。この場合、イソシアネート基を有する加水分解性シラン化合物(B)のモル数Xと、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基を有する加水分解性シラン化合物(B)のモル数Yとの比率X/Yは、1/99〜99/1が好ましく、50/50〜95/5がより好ましく、60/40〜90/10が特に好ましい。
【0096】
拡散剤組成物が加水分解性シラン化合物(B)を含む場合の、拡散剤組成物中の加水分解性シラン化合物(B)の含有量は特に限定されないが、Siの濃度として、0.001〜3.0質量%が好ましく、0.01〜1.0質量%がより好ましい。拡散剤組成物がこのような濃度で加水分解性シラン化合物(B)を含有することにより、拡散剤組成物を用いて形成された薄い塗布膜からの不純物拡散成分(A)の外部拡散を良好に抑制しやすく、不純物拡散成分を良好且つ均一に半導体基板に拡散させやすい。
【0097】
〔有機溶剤(S)〕
拡散剤組成物は、通常、薄膜の塗布膜を形成できるように、溶媒として有機溶剤(S)を含む。有機溶剤(S)の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
【0098】
また、拡散剤組成物が、加水分解性シラン化合物(B)を含む場合、拡散剤組成物は実質的に水を含まないのが好ましい。拡散剤組成物中が実質的に水を含まないとは、加水分解性シラン化合物(B)が、その添加による所望する効果が得られない程度まで加水分解されてしまう量の水を、拡散剤組成物が含有しないことを意味する。
【0099】
有機溶剤(S)の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール類のモノエーテル;ジイソペンチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ベンジルメチルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、及びパーフルオロテトラヒドロフラン等のモノエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレンエチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、及びジプロピレングリコールジブチルエーテル等のグリコール類の鎖状ジエーテル類;1,4−ジオキサン等の環状ジエーテル類;1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、3−ペンタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、及びイソホロン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート、及びイソプロピル−3−メトキシプロピオネート、プロピレンカーボネート、及びγ−ブチロラクトン等のエステル類;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の活性水素原子を持たないアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルヘキサン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、リモネン、及びピネン等のハロゲンを含んでいてもよい脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、1−メチルプロピルベンゼン、2−メチルプロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルジメチルベンゼン、及びジプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、及び2−フェノキシエタノール等の1価アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、及びジプロピレングリコール等のグリコール類が挙げられる。なお、上記の好ましい有機溶剤(S)の例示において、エーテル結合とエステル結合とを含む有機溶剤はエステル類に分類される。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
拡散剤組成物が加水分解性シラン化合物(B)を含む場合、有機溶剤(S)は、加水分解性シラン化合物(B)と反応する官能基を持たないものが好ましく使用される。特に加水分解性シラン化合物(B)がイソシアネート基を有する場合、加水分解性シラン化合物(B)と反応する官能基を持たない有機溶剤(S)を用いるのが好ましい。
【0101】
加水分解性シラン化合物(B)と反応する官能基には、加水分解により水酸基を生成し得る基と直接反応する官能基と、加水分解により生じる水酸基(シラノール基)と反応する官能基との双方が含まれる。加水分解性シラン化合物(B)と反応する官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0102】
加水分解性シラン化合物(B)と反応する官能基を持たない有機溶剤の好適な例としては、上記の有機溶剤(S)の具体例のうち、モノエーテル類、鎖状ジエーテル類、環状ジエーテル類、ケトン類、エステル類、活性水素原子を持たないアミド系溶剤、スルホキシド類、ハロゲンを含んでいてもよい脂肪族炭化水素系溶剤、及び芳香族炭化水素系溶剤の具体例として列挙された有機溶剤が挙げられる。
【0103】
〔その他の成分〕
拡散剤組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、粘度調整剤等の種々の添加剤を含んでいてもよい。また、拡散剤組成物は、塗布性や、製膜性を改良する目的でバインダー樹脂を含んでいてもよい。バインダー樹脂としては種々の樹脂を用いることができ、アクリル樹脂が好ましい。
【0104】
それぞれ所定量の以上説明した成分を均一に混合することにより、拡散剤組成物が得られる。
【0105】
≪半導体基板の製造方法≫
半導体基板の製造方法は、
前述の拡散剤組成物を塗布することによる塗布膜の形成と、
拡散剤組成物中の不純物拡散成分(A)の、半導体基板への拡散と、を含む。
以下、塗布膜を形成する工程を「塗布工程」とも記し、不純物拡散成分(A)を、半導体基板へ拡散させる工程を「拡散工程」とも記す。以下、塗布工程、及び拡散工程について順に説明する。
【0106】
〔塗布工程〕
塗布工程では、半導体基板上に拡散剤組成物を塗布して塗布膜を形成する。以下、塗布工程について、拡散剤組成物、半導体基板、塗布方法の順に説明する。
【0107】
(半導体基板)
半導体基板としては、従来から不純物拡散成分を拡散させる対象として用いられている種々の基板を特に制限なく用いることができる。半導体基板としては、典型的にはシリコン基板が用いられる。拡散剤組成物に含まれる、不純物拡散成分がホウ素を含有するため、シリコン基板としてはn型シリコン基板が好適に使用される。
シリコン基板等の半導体基板は、半導体基板の表面が自然に酸化されることにより形成される自然酸化膜を備えることが多い。例えばシリコン基板は、主にSiO
2からなる自然酸化膜を備えることが多い。
半導体基板に、不純物拡散成分を拡散させる場合、典型的には、フッ化水素酸の水溶液等を用いて、半導体基板表面の自然酸化膜が除去される。
しかし、前述の拡散剤組成物を用いる場合、半導体基板表面の自然酸化膜を除去してもよく、除去しなくてもよい。
半導体基板表面の自然酸化膜を除去しない場合、自然酸化膜を除去する場合と比較して、不純物拡散成分が、半導体基板中にやや良好に拡散しやすい。
例えば、シリコン基板の表面の自然酸化膜を除去しない場合、比較的ケイ素の密度の低い自然酸化膜中にホウ素原子(ホウ素化合物)が取り込まれることで、半導体基板の表層に、効率よくホウ素原子(ホウ素化合物)が取り込まれると考えられる。
その結果、半導体基板の表面に硼ケイ酸ガラス様の薄膜が形成され、半導体基板中にホウ素が良好に拡散されると推察される。
【0108】
半導体基板は、立体構造を拡散剤組成物が塗布される面上に有していてもよい。本発明によれば、半導体基板がこのような立体構造、特に、ナノスケールの微小なパターンを備える立体構造をその表面に有する場合であっても、以上説明した拡散剤組成物を、例えば30nm以下の膜厚となるように塗布して形成された薄い塗布膜を半導体基板上に形成することによって、不純物拡散成分を半導体基板に対して良好且つ均一に拡散させることができる。
【0109】
パターンの形状は特に限定されないが、典型的には、断面の形状が矩形である直線状又は曲線状のライン又は溝であったり、ホール形状が挙げられる。
【0110】
半導体基板が、立体構造として平行な複数のラインが繰り返し配置されるパターンをその表面に備える場合、ライン間の幅としては1μm以下、100nm以下、60nm以下、又は20nm以下の幅に適用可能である。ラインの高さとしては、30nm以上、100nm以上、1μm以上、又は5μm以上の高さに適用可能である。
【0111】
(塗布方法)
拡散剤組成物を用いて形成される塗布膜の膜厚は特に限定されない。拡散剤組成物は、拡散剤組成物を用いて形成される塗布膜の膜厚が、好ましくは30nm以下、より好ましくは0.2〜10nmとなるように半導体基板上に塗布される。
拡散剤組成物を塗布する方法は、所望の膜厚の塗布膜を形成できる限り特に限定されない。拡散剤組成物の塗布方法としては、スピンコート法、インクジェット法、及びスプレー法が好ましい。なお、塗布膜の膜厚は、エリプソメーターを用いて測定された5点以上の膜厚の平均値である。
【0112】
塗布膜の膜厚は、半導体基板の形状や、任意に設定される不純物拡散成分(A)の拡散の程度に応じて、任意の膜厚に適宜設定される。
【0113】
拡散剤組成物を半導体基板表面に塗布した後に、半導体基板の表面を有機溶剤によりリンスするのも好ましい。塗布膜の形成後に、半導体基板の表面をリンスすることにより、塗布膜の膜厚をより均一にすることができる。特に、半導体基板がその表面に立体構造を有するものである場合、立体構造の底部(段差部分)で塗布膜の膜厚が厚くなりやすい。しかし、塗布膜の形成後に半導体基板の表面をリンスすることにより、塗布膜の膜厚を均一化できる。
【0114】
リンスに用いる有機溶剤としては、拡散剤組成物が含有していてもよい前述の有機溶剤を用いることができる。
【0115】
〔拡散工程〕
拡散工程では、拡散剤組成物を用いて半導体基板上に形成された薄い塗布膜中の不純物拡散成分(A)を半導体基板に拡散させる。不純物拡散成分(A)を半導体基板に拡散させる方法は、加熱により拡散剤組成物からなる塗布膜から不純物拡散成分(A)を拡散させる方法であれば特に限定されない。
【0116】
典型的な方法としては、拡散剤組成物からなる塗布膜を備える半導体基板を電気炉等の加熱炉中で加熱する方法が挙げられる。この際、加熱条件は、所望する程度に不純物拡散成分(A)が拡散される限り特に限定されない。
【0117】
通常、酸化性気体の雰囲気下で塗布膜中の有機物を焼成除去した後に、不活性ガスの雰囲気下で半導体基板を加熱して、不純物拡散成分(A)を半導体基板中に拡散させる。
有機物を焼成する際の加熱は、好ましくは300〜1000℃、より好ましくは400〜800℃程度の温度下において、好ましくは1〜120分、より好ましくは5〜60分間行われる。
不純物拡散成分(A)を拡散させる際の加熱は、好ましくは700℃以上1400℃以下、より好ましくは700℃以上1200℃未満の温度下において、好ましくは1〜120分、より好ましくは5〜60分間行われる。
前述の不純物拡散成分(A)を含む拡散剤組成物を用いるため、例えば、拡散時の温度が1000℃以下のような低めの温度であっても、不純物拡散成分(A)が半導体基板中に良好に拡散する。
なお、本発明の典型的な組成の場合、有機物をあまり含まないため、焼成のための加熱はスキップしてもよい。
【0118】
また、25℃/秒以上の昇温速度で半導体基板を速やかに所定の拡散温度まで昇温させることができる場合、拡散温度の保持時間は、30秒以下、10秒以下、又は1秒未満のようなごく短時間であってもよい。この場合、半導体基板表面の浅い領域において、高濃度で不純物拡散成分(A)を拡散させやすい。
【0119】
以上説明した方法によれば、ナノメートルスケールの微小な空隙を有する三次元構造をその表面に備える半導体基板を用いる場合であっても、半導体基板での欠陥の発生を抑制しつつ、半導体基板に良好且つ均一に不純物拡散成分を拡散させることができる。
このため、本発明にかかる方法は、微小な立体的な構造を有するマルチゲート素子の製造に好適に適用できる。本発明にかかる方法は、不純物拡散成分の拡散時の半導体基板での欠陥の発生を抑制できるので、特に、CMOSイメージセンサーのようのCMOS素子や、ロジックLSIデバイス等の半導体素子の製造に好適に適用できる。
【実施例】
【0120】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0121】
〔実施例1、及び比較例1〕
実施例1において、以下の化合物A1を不純物拡散成分((A)成分)として用いた。比較例1において、以下の化合物A2(トリエチルアミンボラン)を(A)成分として用いた。比較例2において、以下の化合物A3(ピナコールボラン)を(A)成分として用いた。比較例3において、以下の化合物A4(トリメチルボレート)を(A)成分として用いた。
【化29】
【0122】
上記の(A)成分を、それぞれ酢酸ブチルに濃度0.5質量%となるように溶解させて、実施例1、及び比較例1〜3の拡散剤組成物を得た。
【0123】
平坦な表面を備えるシリコン基板(6インチ、n型)の表面に、スピンコーターを用いて実施例1、及び比較例1〜3の拡散剤組成物をそれぞれ塗布して、表1に記載の膜厚の塗布膜を形成した。シリコン基板としては、濃度0.5質量%のフッ化水素酸水溶液への浸漬によって、表面の自然酸化膜が除去された基板を用いた。
塗布膜の形成後、以下の方法に従って、不純物拡散成分の拡散処理を行った。
ラピッドサーマルアニール装置(ランプアニール装置)を用いて、流量1L/mの窒素雰囲気下において昇温速度25℃/秒の条件で加熱を行い、表1に記載の拡散温度、及び拡散時間1秒にて拡散処理を行った。拡散時間の始点は、基板の温度が所定の拡散温度に達した時点である。拡散の終了後、半導体基板を室温まで急速に冷却した。
【0124】
不純物拡散成分の拡散処理の結果、半導体基板がn型からp型に反転したか否かを確認した。反転した場合を○と評価し、反転しなかった場合を×と評価する、評価結果を表1に記す。
なお、1200℃での拡散試験から順に行い、最初に×評価となった温度よりも低い温度での拡散試験は行っていない。
【0125】
【表1】
【0126】
表1によれば、基板表面に吸着されやすい構造を有し、半導体基板の表面に塗布することにより厚さ数nmの拡散層を形成できる(A)成分を用いた実施例1では、1100℃以下でも良好の(A)成分が半導体基板に拡散することが分かる。
なお、実施例1について、1200℃で拡散処理を行った半導体基板のシート抵抗値は593(Ω/sq.)であり、1100℃で拡散処理を行った半導体基板のシート抵抗値は682(Ω/sq.)であり、1000℃で拡散処理を行った半導体基板のシート抵抗値は1552(Ω/sq.)であり、900℃で拡散処理を行った半導体基板のシート抵抗値は50447(Ω/sq.)であった。
【0127】
他方、比較例1から、ホウ素原子が4価の状態であったり、窒素原子を含まなかったりする、基板表面に吸着されにくい構造の(A)成分を用いた比較例1〜3では、膜厚0.2nm以下の極薄い膜しか形成できず、1100℃以下の温度では、(A)成分が半導体基板表面に良好に拡散しなかった。
【0128】
〔実施例2〕
実施例2において、以下の化合物A5を不純物拡散成分((A)成分)として用いた。
【化30】
【0129】
上記の(A)成分を、酢酸ブチルに濃度0.5質量%となるように溶解させて、実施例2の拡散剤組成物を得た。
【0130】
平坦な表面を備えるシリコン基板(6インチ、n型)の表面に、スピンコーターを用いて実施例2の拡散剤組成物を塗布した後、酢酸ブチルによるリンスを行い、膜厚1.7nmの塗布膜を形成した。シリコン基板としては、濃度0.5質量%のフッ化水素酸水溶液への浸漬によって、表面の自然酸化膜が除去された基板を用いた。
塗布膜の形成後、実施例1と同様の方法で、拡散温度1000℃、及び1100℃で不純物拡散成分の拡散処理を行った。
その結果、1000℃で拡散処理を行った半導体基板のシート抵抗値は9699(Ω/sq.)であり、1100℃で拡散処理を行った半導体基板のシート抵抗値は1748(Ω/sq.)であった。
これらの結果から、実施例2の拡散剤組成物を用いる場合、1100℃以下の拡散温度で(A)成分が良好に拡散することが分かる。
【0131】
〔実施例3〕
実施例3において、以下の化合物A6を不純物拡散成分((A)成分)として用いた。
【化31】
【0132】
上記の(A)成分を、酢酸ブチルに濃度0.5質量%となるように溶解させて、実施例3の拡散剤組成物を得た。
【0133】
平坦な表面を備えるシリコン基板(6インチ、n型)の表面に、スピンコーターを用いて実施例3の拡散剤組成物を塗布して、膜厚27nmの塗布膜を形成した。シリコン基板としては、濃度0.5質量%のフッ化水素酸水溶液への浸漬によって、表面の自然酸化膜が除去された基板を用いた。
塗布膜の形成後、実施例1と同様の方法で、拡散温度900℃、1000℃、及び1100℃で不純物拡散成分の拡散処理を行った。
その結果、900℃で拡散処理を行った半導体基板のシート抵抗値は7338(Ω/sq.)であり、1000℃で拡散処理を行った半導体基板のシート抵抗値は1075(Ω/sq.)であり、1100℃で拡散処理を行った半導体基板のシート抵抗値は596(Ω/sq.)であった。
これらの結果から、実施例3の拡散剤組成物を用いる場合、1100℃以下の拡散温度で(A)成分が良好に拡散することが分かる。
【0134】
〔実施例4〜11〕
実施例4〜11において、以下の化合物A7〜A13を不純物拡散成分((A)成分)として用いた。
【化32】
【0135】
それぞれ、表2に記載の種類の(A)成分を、表2に記載の種類の溶剤に濃度0.5質量%となるように溶解させて、実施例4〜11の拡散剤組成物を得た。
【0136】
平坦な表面を備えるシリコン基板(6インチ、n型)の表面に、スピンコーターを用いて実施例4〜11の拡散剤組成物を塗布して、表2に記載の膜厚の塗布膜を形成した。シリコン基板としては、濃度0.5質量%のフッ化水素酸水溶液への浸漬によって、表面の自然酸化膜が除去された基板を用いた。
なお、実施例11については、塗布後に酢酸ブチルによるリンスを行った。
塗布膜の形成後、実施例1と同様の方法で、拡散温度1000℃不純物拡散成分の拡散処理を行った。
いずれの実施例でも、拡散処理後、半導体基板がn型からp型に反転していた。拡散処理後の半導体基板のシート抵抗値を測定した結果を表2に記す。
【0137】
【表2】
【0138】
表2によれば、基板表面に吸着されやすい構造を有し、半導体基板の表面に塗布することにより拡散層を形成できる(A)成分を用いた実施例4〜11では、1000℃において良好に(A)成分を半導体基板に拡散させることができることが分かる。
【0139】
〔実施例12〕
前述の化合物A1を(A)成分として用いた。(A)成分を、酢酸ブチルに濃度1.0質量%となるように溶解させて拡散剤組成物を得た。
次いで、幅500nm、深さ2.8μmの複数の溝を有するシリコン基板(n型)の表面に、スピンコーターを用いて拡散剤組成物を塗布して、塗布膜を形成した。シリコン基板としては、濃度0.5質量%のフッ化水素酸水溶液への浸漬によって、表面の自然酸化膜が除去された基板を用いた。
塗布後には、酢酸ブチルによるリンスを行った。
かかる塗布操作を10回繰り返し、膜厚17.4nmの塗布膜を形成した。なお、10回の繰り返し塗布を行ったのは、塗布膜の形成状態を観察しやすくするためである。
【0140】
塗布膜形成後の半導体基板の断面を電子顕微鏡で観察したところ、凹部(溝)の内表面前面に、ほぼ均一に塗布膜が形成されていることが分かった。
【0141】
次いで、ラピッドサーマルアニール装置(ランプアニール装置)を用いて、流量1L/mの窒素雰囲気下において昇温速度25℃/秒の条件で加熱を行い、拡散温度1100℃、及び拡散時間10秒にて拡散処理を行った。拡散時間の始点は、基板の温度が所定の拡散温度に達した時点である。拡散の終了後、半導体基板を室温まで急速に冷却した。
【0142】
拡散処理後の半導体基板の表面を、走査型静電容量顕微鏡法(SCM法)により観察し、半導体基板表面のキャリア分布を確認したところ、凹凸を有する半導体基板の全表面が、ほぼ均一にp型化されていたことが分かった。
【0143】
〔実施例13〕
前述の化合物A1を(A)成分として用いた。(A)成分を、酢酸ブチルに濃度1.0質量%となるように溶解させて拡散剤組成物を得た。
次いで、幅80nm、深さ200nmの複数の溝を有するSiN被覆基板の表面に、スピンコーターを用いて拡散剤組成物を塗布して、酢酸ブチルによるリンスを行った。
塗布膜形成後の半導体基板の断面を電子顕微鏡で観察したところ、凹部(溝)の内表面前面に、ほぼ均一に塗布膜が形成されていることが分かった。
【0144】
〔実施例14〜25〕
前述の化合物A1と、加水分解性シラン化合物(B)((B)成分、アルコキシシラン化合物)とを、それぞれ、表3に記載の濃度であるように、酢酸ブチルに溶解させて、実施例14〜25の拡散剤組成物を得た。
表3に記載の(B)成分は以下の通りである。
B1:メチルトリエトキシシラン
B2:ジメチルジメトキシシラン
B3:フェニルトリエトキシシラン
【0145】
平坦な表面を備えるシリコン基板(6インチ、n型)の表面に、スピンコーターを用いて実施例14〜25の拡散剤組成物を塗布した後、酢酸ブチルによるリンスを行って表3に記載の膜厚の塗布膜を形成した。シリコン基板としては、濃度0.5質量%のフッ化水素酸水溶液への浸漬によって、表面の自然酸化膜が除去された基板を用いた。
塗布膜の形成後、実施例1と同様の方法で、拡散温度1000℃不純物拡散成分の拡散処理を行った。
いずれの実施例でも、拡散処理後、半導体基板がn型からp型に反転していた。拡散処理後の半導体基板のシート抵抗値を測定した結果を表3に記す。
【0146】
【表3】
【0147】
実施例14〜25によれば、基板表面に吸着されやすい構造を有し、半導体基板の表面に塗布することにより拡散層を形成できる(A)成分を含む拡散剤組成物を用いる場合、拡散剤組成物が加水分解性シラン化合物(B)を含んでいても、1000℃において良好に(A)成分を半導体基板に拡散させることができることが分かる。
【0148】
〔実施例26、実施例27〕
実施例26、及び実施例27において、前述の化合物A1を不純物拡散成分((A)成分)として用いた。(A)成分を、酢酸ブチルに濃度1.0質量%となるように溶解させた液を、実施例26、及び実施例27において、拡散剤組成物として用いた。
【0149】
平坦な表面を備えるシリコン基板(6インチ、n型)の表面に、スピンコーターを用いて拡散剤組成物をそれぞれ塗布した後、ジブチルエーテルによるリンスを行い、膜厚3.0nmの塗布膜を形成した。
実施例26では、その表面に自然酸化膜を備えるシリコン基板をそのまま用いた。実施例27では、シリコン基板としては、濃度0.5質量%のフッ化水素酸水溶液への浸漬によって、表面の自然酸化膜が除去された基板を用いた。
【0150】
塗布膜の形成後、以下の方法に従って、不純物拡散成分の拡散処理を行った。
ラピッドサーマルアニール装置(ランプアニール装置)を用いて、流量1L/mの窒素雰囲気下において昇温速度15℃/秒の条件で加熱を行い、拡散温度950℃、及び拡散時間25秒にて拡散処理を行った。拡散時間の始点は、基板の温度が所定の拡散温度に達した時点である。拡散の終了後、半導体基板を室温まで急速に冷却した。
【0151】
実施例26及び実施例27のいずれでも、拡散処理後、半導体基板がn型からp型に反転していた。拡散処理後の半導体基板のシート抵抗値を測定した結果を表4に記す。
【0152】
【表4】
【0153】
実施例26と、実施例27とから、シリコン基板表面の自然酸化膜を除去しても除去しなくても、不純物拡散成分がシリコン基板に良好に拡散されることが分かる。
また、実施例26と、実施例27との比較から、シリコン基板表面の自然酸化膜を除去する場合、自然酸化膜を除去しない場合と比較して、不純物拡散成分を良好に拡散させやすいことが分かる。