(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1種のメタクリル樹脂として、重量平均分子量が180,000を超えて300,000以下のメタクリル樹脂と、重量平均分子量が5,000以上70,000未満のメタクリル樹脂と、重量平均分子量が70,000以上180,000以下のメタクリル樹脂とを含有する、請求項1又は2に記載のメタクリル樹脂組成物。
前記少なくとも1種のメタクリル樹脂として、ピーク分子量が互いに異なる2種のメタクリル樹脂を含み、以下の条件(IV)、(V)、および(VI)を満足するメタクリル樹脂混合物と、重量平均分子量が70,000以上180,000以下のメタクリル樹脂とを含有する、請求項1又は2に記載のメタクリル樹脂組成物。
(IV)前記メタクリル樹脂混合物の微分分子量分布曲線におけるピーク分子量のうち、最も高いピーク分子量をHPとするとき、HPの値が、式:180000≦HP≦220000を満足すること
(V)前記メタクリル樹脂混合物の微分分子量分布曲線におけるピーク分子量のうち、HPよりも低いピーク分子量をLPとするとき、LPの値が、式:24000≦LP≦35000を満足すること
(VI)前記メタクリル樹脂混合物の微分分子量分布曲線において、HPにおけるピークの高さを示す値をaとし、LPにおけるピークの高さを示す値をbとするとき、a/bで示されるPRの値が、式:1.32≦PR≦1.60を満足すること
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、特段の言及がない限り、数値範囲「A〜B」とは「A以上B以下」を表す。
【0017】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、少なくとも1種のメタクリル樹脂を含有し、以下の条件(I)、(II)、および(III)を満たす組成物である。
【0018】
(I) 前記メタクリル樹脂組成物の微分分子量分布曲線において、始点から終点までのピーク面積に対する始点から分子量30,000までのピーク面積の割合(%)をW1とするとき、W1の値が、式:18≦W1≦27を満足すること
(II) 前記メタクリル樹脂組成物の微分分子量分布曲線において、始点から終点までのピーク面積に対する始点から分子量80,000までのピーク面積の割合(%)をW2とするとき、W2の値が、式:41≦W2≦52を満足すること
(III) 前記メタクリル樹脂組成物の微分分子量分布曲線において、始点から終点までのピーク面積に対する分子量300,000から終点までのピーク面積の割合(%)をW3とするとき、W3の値が、式:10≦W3≦14を満足すること
【0019】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、上記の条件(I)、(II)、(III)のすべてを満たすことによって、以下(特に実施例)にて詳細に説明する耐溶剤性、面衝撃性、耐糸曳き性、および流動性のすべてを所望のレベルで維持することができる。
【0020】
上記条件(I)、(II)、および(III)におけるW1、W2、およびW3は、JIS K 7252−1〜4(プラスチック−サイズ排除クロマトグラフィーによる高分子の平均分子量及び分子量分布の求め方−第1部〜第4部)に準じて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等の従来公知のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を利用して求めることができる。
【0021】
より具体的には、まず、市販されているメタクリル樹脂の単分散の分子量標準物質(数平均分子量、質量平均分子量などの分子量が既知であり、分子量分布の狭い標準物質)を用いて、溶出時間(t)と、分子量(M)の対数(logM)との相関を示す校正曲線()を予め作成しておく。
【0022】
次に、測定対象となるメタクリル樹脂組成物の試料を適切な溶媒に溶解して希薄溶液を調製する。この溶液を移動相(溶離液)に注入して、SECカラムに導入する。なお、このSECカラムには、均一の大きさの細孔又は種々の大きさの細孔を有する非吸着性の微粒子が充填されている。試料は、かかるSECカラムを通過するにつれて分子量(流体力学的体積)の相違によって相互に分離され得る。このSECカラムにおいて、分子量の大きなメタクリル樹脂は細孔の中に浸透できないのでより早く溶出する。一方、分子量の小さなメタクリル樹脂は細孔の中に浸透することができるのでその溶出が遅くなる。そして、溶離液中のメタクリル樹脂の濃度を連続的に濃度検出器で検出してSECクロマトグラムを得る。
【0023】
ここで、予め単分散の分子量標準物質を用いて作成した校正曲線によって、SECクロマトグラムにおける任意の溶出時間(t)に対応するメタクリル樹脂の分子量(M)を求める。
【0024】
上記で得たデータに基づいて、メタクリル樹脂の分子量(M)に対して、dW/d(logM)をプロットすることによって、「微分分子量分布曲線」を作成する。「W」は濃度分率を指す。
【0025】
より具体的には、かかる微分分子量分布曲線は、各溶出時間(t
i)におけるメタクリル樹脂の分子量(M
i)およびそのシグナル強度(H
i)から、メタクリル樹脂の分子量(M
i)に対して、以下の式に従って計算したdW
i/d(logM
i)をプロットすることによって作成することができる。
【0027】
式中、Iは、データ収集間隔(分)を示す。
【0028】
上記で作成した微分分子量分布曲線の例として、
図8に示す実施例1のメタクリル樹脂組成物の微分分子量分布曲線を参照する。
図8に示すように、微分分子量分布曲線とdW/d(logM)=0の直線とが交わる点のうち、低分子量側の点を点A(始点)、高分子量側の点を点B(終点)とすると、始点から終点までの曲線と上記直線で囲まれる面積(本明細書において、ピーク面積と称する。)を100とした場合に、始点から終点までのピーク面積に対する始点から分子量30,000までのピーク面積の割合(%)を「W1」とし、始点から分子量80,000までのピーク面積の割合(%)を「W2」とし、分子量300,000から終点までの面積の割合(%)をW3とする。
【0029】
上記の条件(I)〜(III)で規定する通り、本発明では、これら「W1」、「W2」および「W3」の各値を所定の範囲内に設定することにより、上述の効果を得ることができる。
【0030】
より具体的には、条件(I)で規定する通り、「W1」の値は18〜27であり、20〜26であることが好ましく、23〜26であることがより好ましく、24〜26であることが更に好ましい。W1の値が、27よりも高いと、面衝撃性が低下するおそれがある。W1の値が、18よりも低いと、流動性および耐溶剤性が低下するおそれがある。
【0031】
条件(II)で規定する通り、「W2」の値は、41〜52であり、43〜50であることが好ましく、44〜50であることがより好ましく、48〜50であることが更に好ましい。W2の値が、52よりも高いと、耐糸曳性、および耐溶剤性が低下するおそれがある。W2の値が、41よりも低いと、流動性が低下するおそれがある。
【0032】
条件(III)で規定する通り、「W3」の値は、10〜14であり、10〜13であることが好ましく、10〜11であることがより好ましい。W3の値が、14よりも高いと、流動性が低下するおそれがある。W3の値が、10よりも低いと耐糸曳性、および耐溶剤性が低下するおそれがある。
【0033】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、少なくとも1種のメタクリル樹脂を含有する。なお、本明細書において、特段の言及がない限り、「メタクリル樹脂」に関する事項は、本発明のメタクリル樹脂組成物に含まれる全てのメタクリル樹脂に当てはまる。
メタクリル樹脂は、メタクリル酸アルキルに由来する単量体単位(以下、メタクリル酸アルキル単位と称することがある。)を有する。メタクリル酸アルキルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられ、メタクリル酸メチルが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
メタクリル酸アルキル単位の含有量は、該メタクリル樹脂に含まれる全単量体単位100重量%に対して、98.4重量%以上であることが好ましく、98.4〜99.1重量%であることがより好ましく、98.5〜98.8重量%が更に好ましい。なお、かかる含有量は、例えば、熱分解ガスクロマトグラフィーなどを利用した分析によって求めることができる。
ここで本発明のメタクリル樹脂組成物が、2種以上のメタクリル樹脂を含んでいる場合、本明細書における「メタクリル酸アルキル単位の含有量」とは、各メタクリル樹脂に含まれるメタクリル酸アルキル単位の量ではなく、各メタクリル樹脂に含まれるメタクリル酸アルキル単位の含有量の合計であり、「全単量体単位100重量%」とは、各メタクリル樹脂に含まれる全単量体単位の含有量を100重量%とするのではなく、各メタクリル樹脂に含まれる全単量体単位の合計量を100重量%とする。
【0035】
メタクリル樹脂は、さらにメタクリル酸アルキル単位以外の他の単量体単位を含んでいてもよく、例えば、アクリル酸エステルに由来する単量体単位(以下、アクリル酸エステル単位と称することがある。)を含んでいてもよい。
【0036】
アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸シクロペンタジエン等が挙げられ、アクリル酸メチル、またはアクリル酸エチルが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
メタクリル樹脂に含まれ得る上述のアクリル酸エステル単位の含有量は、0〜1.6重量%であることが好ましく、0.9〜1.6重量%であることがより好ましく、更には1.2〜1.5重量%が好ましい。ただし、メタクリル酸アルキル単位とアクリル酸エステル単位との合計を100重量%とする。なお、かかる含有量は、例えば、熱分解ガスクロマトグラフィーなどを利用した分析によって求めることができる。
ここで本発明のメタクリル樹脂組成物が、2種以上のメタクリル樹脂を含んでいる場合、本明細書における「メタクリル酸アルキル単位の含有量」とは、各メタクリル樹脂に含まれるメタクリル酸アルキル単位の量ではなく、各メタクリル樹脂に含まれるメタクリル酸アルキル単位の含有量の合計である。
【0038】
アクリル酸エステル単位の含有量が上記の範囲以外であると、得られる共重合体の解重合が進行し、射出成形時の熱安定性が低下するおそれがある。アクリル酸エステル単位の重量割合が1.6重量%を超えると、得られる車両部材等の成形品の耐熱性(後述のビカット軟化点等)が低下するおそれがある。
【0039】
ここで、上述の熱分解ガスクロマトグラフィーなどによる分析としては、従来公知の分析法を採用することができる。
【0040】
例えば、本発明のメタクリル樹脂組成物を熱分解炉にて所定の温度(400℃以上)にて熱分解し、発生した分解ガスをガスクロマトグラフィーにより分析し、上記メタクリル樹脂について構成する各モノマー成分に対応するピークの面積比を求め、重量比(%)に換算することによって求めることができる。
【0041】
面積比を重量比(%)に換算する方法としては、例えば、メタクリル樹脂の標準品(市販品として入手可能であり、モノマー成分の種類およびその重量割合が既知であるもの)について、予め上記と同様にして各モノマー成分に対応するピークの面積比を求めることによって、かかる面積比からモノマー成分の重量比(%)を換算することのできるファクターを算出し、また必要に応じて、複数の標準品を用いて検量線を作成し、このようなファクターを算出することによって、かかるファクターを用いて、本発明のメタクリル樹脂組成物中に含まれるメタクリル樹脂のモノマー成分の面積比を対応する重量比(%)に換算することが可能である。なお、これらのピークが一部重なる場合には、重複する面積を従来公知の方法により補正して上記の比率を算出することもできる。
【0042】
上記モノマー成分としては、メタクリル酸アルキルおよびアクリル酸エステル以外にも、メタクリル酸アルキルおよび/またはアクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体を含んでいてもよい。かかる他の単量体としては、例えばラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能性モノマー、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能性モノマー等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
単官能性モノマーとしては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロペンタジエン等のメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸またはこれらの酸無水物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の窒素含有モノマー;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマーなどが挙げられる。
【0044】
多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート等のグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリル等の不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多塩基酸のアルケニルエステル;トリメチロールプロパントリアクリレート等の多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0045】
上記メタクリル酸アルキルや他の単量体等の単量体成分を重合し、メタクリル樹脂を製造する方法としては、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等の公知の重合法が挙げられ、好ましくは塊状重合法である。
【0046】
塊状重合法は、重合安定剤を使用しないためにより外観に優れるメタクリル樹脂を得ることができる。また、懸濁重合の場合とは異なり、重合温度が100℃よりも高く、その結果、メタクリル樹脂のシンジオタクティシティが低下しやすいため、メタクリル樹脂の流動性がより増加する。更に、連続的に塊状重合を行った場合、例えば、上記単量体成分と必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤等とを反応容器の中に連続的に供給しながら反応容器内で所定の時間滞留させて得られる部分重合体を、連続的に抜き出すことにより行うことができるので、高い生産性でメタクリル樹脂を得ることができる。
【0047】
本発明のメタクリル樹脂組成物に含まれるメタクリル樹脂の製造において、重合温度は、好ましくは110〜175℃である。
【0048】
上述のメタクリル樹脂の製造方法、特に塊状重合においては、例えば、重合開始剤や連鎖移動剤を使用してもよい。重合開始剤として、例えば、ラジカル開始剤を用いることができる。
【0049】
ラジカル開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸などのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、カプリリルパーオキサイド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソブチルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−n−ブチルパーオキシジカーボネート、ビス(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−エチルヘキサノエート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソノナエート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシ−イソノナエート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物などが挙げられる。
【0050】
これらの重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0051】
重合開始剤の種類は、生成するメタクリル樹脂や使用する原料モノマーの種類に応じて選定され得る。ラジカル開始剤としては、その重合温度での半減期が1分以内であるものが好ましい。
【0052】
重合開始剤の使用量は、目標の重合率や反応条件などに応じて調整すればよい。
【0053】
本発明において使用することのできる連鎖移動剤は、単官能および多官能のいずれの連鎖移動剤であってもよい。連鎖移動剤としては、具体的には、例えば、n−プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、2−エチルヘキシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン;フェニルメルカプタン、チオクレゾールなどの芳香族メルカプタン;エチレンチオグリコールなどの炭素数18以下のメルカプタン類;エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール類;水酸基をチオグリコール酸または3−メルカプトプロピオン酸でエステル化したもの、1,4−ジヒドロナフタレン、1,4,5,8−テトラヒドロナフタレン、β−テルピネン、テルピノーレン、1,4−シクロヘキサジエン、硫化水素などが挙げられる。これらの連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
連鎖移動剤の種類および使用量は、生成するメタクリル樹脂や使用する原料モノマーの種類に応じて選定され得る。連鎖移動剤として、n−オクチルメルカプタン、またはn−ドデシルメルカプタンが好ましい。
【0055】
上記原料モノマー、重合開始剤、連鎖移動剤などに加えて、例えば離型剤、ブタジエンおよびスチレンブタジエンゴム(SBR)などのゴム状重合体、熱安定剤、紫外線吸収剤などを用いてもよい。
なお、ここで、離型剤とは、得られるメタクリル樹脂組成物の成形性を向上させるために用いられるものである。熱安定剤は、生成するメタクリル樹脂の熱分解を抑制するために用いられるものである。紫外線吸収剤は、生成するメタクリル樹脂の紫外線による劣化を抑制するために用いられるものである。
【0056】
離型剤としては、特に制限されないが、例えば、高級脂肪酸エステル、高級脂肪族アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩等が挙げられる。なお、離型剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
高級脂肪酸エステルとしては、具体的には、例えば、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸プロピル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸オクチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸プロピル、パルミチン酸ブチル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ベヘン酸メチル、ベヘン酸エチル、ベヘン酸プロピル、ベヘン酸ブチル、ベヘン酸オクチルなどの飽和脂肪酸アルキルエステル;オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸オクチル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸プロピル、リノール酸ブチル、リノール酸オクチルなどの不飽和脂肪酸アルキルエステル;ラウリン酸モノグリセリド、ラウリン酸ジグリセリド、ラウリン酸トリグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、パルミチン酸ジグリセリド、パルミチン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ベヘン酸モノグリセリド、ベヘン酸ジグリセリド、ベヘン酸トリグリセリドなどの飽和脂肪酸グリセリド;オレイン酸モノグリセリド、オレイン酸ジグリセリド、オレイン酸トリグリセリド、リノール酸モノグリセリド、リノール酸ジグリセリド、リノール酸トリグリセリドなどの不飽和脂肪酸グリセリドなどが挙げられる。これらのなかでも、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリドなどが好ましい。
【0058】
高級脂肪族アルコールとしては、具体的には、例えば、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコールなどの飽和脂肪族アルコール;オレイルアルコール、リノリルアルコールなどの不飽和脂肪族アルコールなどが挙げられる。これらのなかでも、ステアリルアルコールが好ましい。
【0059】
高級脂肪酸としては、具体的には、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸などの飽和脂肪酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、セトレイン酸、エルカ酸、リシノール酸などの不飽和脂肪酸などが挙げられる。
【0060】
高級脂肪酸アミドとしては、具体的には、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミドなどの飽和脂肪酸アミド;オレイン酸アミド、リノール酸アミド、エルカ酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド;エチレンビスラウリル酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N−オレイルステアロアミドなどのアミド類などが挙げられる。これらのなかでも、ステアリン酸アミドやエチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。
【0061】
高級脂肪酸金属塩としては、例えば、上述した高級脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩などが挙げられる。
【0062】
離型剤の使用量は、メタクリル樹脂100重量部に対して、0.01〜1.0重量部となるように調整することが好ましく、0.01〜0.50重量部となるように調整することがより好ましい。なお、本発明のメタクリル樹脂組成物が2種以上のメタクリル樹脂を含んでいる場合、本明細書において、「メタクリル樹脂100重量部」とは、複数のメタクリル樹脂の合計量を100重量部とするものである。
【0063】
熱安定剤としては、特に制限されないが、例えば、ヒンダードフェノール系熱安定剤、リン系熱安定剤や有機ジスルフィド化合物などが挙げられる。これらのなかでも、有機ジスルフィド化合物が好ましい。なお、熱安定剤は、単独で使用してよく、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0064】
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、例えば、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、オクタデシル 3−(3,5−di−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルメチル)−2,4,6−トリメチルベンゼンなどが挙げられる。これらのなかでも、オクタデシル 3−(3,5−di−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
【0065】
リン系熱安定剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン、ジフェニルトリデシルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。これらのなかでも、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが好ましい。
【0066】
有機ジスルフィド化合物としては、例えば、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジ−n−プロピルジスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジ−sec−ブチルジスルフィド、ジ−tert−ブチルジスルフィド、ジ−tert−アミルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、ジ−tert−オクチルジスルフィド、ジ−n−ドデシルジスルフィド、ジ−tert−ドデシルジスルフィドなどが挙げられる。これらのなかでも、ジ−tert−アルキルジスルフィドが好ましく、さらに好ましくはジ−tert−ドデシルジスルフィドである。
【0067】
熱安定剤の使用量は、メタクリル樹脂100重量部に対して、1〜2000重量ppmであることが好ましい。本発明のメタクリル樹脂組成物から成形体を得るために、メタクリル樹脂組成物(より詳細には、脱揮後のメタクリル樹脂組成物)を成形する際、成形効率を高める目的でその成形温度を高めに設定することがある。そのような場合において、熱安定剤を配合すると、より効果的である。
【0068】
紫外線吸収剤の種類としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、オキサルアニリド系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのなかでも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、オキサルアニリド系紫外線吸収剤が好ましい。
【0069】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンジロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0070】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸エチル、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0071】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0072】
マロン酸エステル系紫外線吸収剤としては、通常、2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類が用いられ、例えば、2−(パラメトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル等が挙げられる。
【0073】
オキサルアニリド系紫外線吸収剤としては、通常、2−アルコキシ−2’−アルキルオキサルアニリド類が用いられ、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキサルアニリド等が挙げられる。
【0074】
紫外線吸収剤の使用量は、得られるメタクリル樹脂組成物に含まれるメタクリル樹脂100重量部に対して、5〜1000重量ppmであることが好ましい。
【0075】
本発明のメタクリル樹脂組成物としては、耐溶剤性、面衝撃性、耐糸曳き性、および流動性の観点から、重量平均分子量が異なる3種以上のメタクリル樹脂を含有する組成物が好ましく、重量平均分子量が180,000を超えて300,000以下のメタクリル樹脂(A)と、重量平均分子量が5,000以上70,000未満のメタクリル樹脂(B)と、重量平均分子量が70,000以上180,000以下のメタクリル樹脂(C)とを含有する組成物がより好ましく、メタクリル樹脂(A)、メタクリル樹脂(B)、およびメタクリル樹脂(C)からなる群より選ばれる2種のメタクリル樹脂を含むメタクリル樹脂混合物と、残り1種のメタクリル樹脂を含有する組成物がさらに好ましく、メタクリル樹脂(A)とメタクリル樹脂(B)を含むメタクリル樹脂混合物(X)と、メタクリル樹脂(C)とを含有する組成物がよりいっそう好ましい。
なお、上記重量平均分子量が異なる3種以上のメタクリル樹脂とは、例えば、重量平均分子量が異なる2種類のメタクリル樹脂(A)と、1種類のメタクリル樹脂(B)との組み合わせや、重量平均分子量が異なる3種類のメタクリル樹脂(C)の組み合わせや、重量平均分子量が異なる2種類のメタクリル樹脂(C)と、1種類のメタクリル樹脂(B)と、1種類のメタクリル樹脂(C)も含まれる。
【0076】
メタクリル樹脂(A)の重量平均分子量としては、180,000を超えて230,000以下であることが好ましく、180,000を超えて210,000以下であることがより好ましい。メタクリル樹脂(B)の重量平均分子量としては、20,000以上70,000未満であることが好ましく、30,000〜60,000であることがより好ましい。メタクリル樹脂(C)の重量平均分子量としては、70,000〜110,000であることが好ましい。本発明のメタクリル樹脂組成物は、メタクリル樹脂(A)を2つ以上含んでいてもよく、メタクリル樹脂(B)を2つ以上含んでいてもよく、メタクリル樹脂(C)を2つ以上含んでいてもよい。
重量平均分子量が上記の範囲であるメタクリル樹脂(A)、メタクリル樹脂(B)、およびメタクリル樹脂(C)を用いることで、成形体の耐溶剤性、面衝撃性、および耐糸曳き性を向上させることができ、より流動性に優れるメタクリル樹脂組成物を得ることができる。
【0077】
上記重量平均分子量の測定方法および上記微分分子量分布曲線の作成方法は、メタクリル樹脂組成物におけるW1、W2、およびW3の算出方法で上述した方法(SECを利用した方法)と同様である。
【0078】
本発明のメタクリル樹脂組成物が、メタクリル樹脂(A)、メタクリル樹脂(B)、およびメタクリル樹脂(C)を含有する組成物である場合、メタクリル樹脂(A)の含有量は、メタクリル樹脂(C)100重量部に対して、117重量部〜630重量部であることが好ましく、150重量部〜280重量部であることがさらに好ましい。メタクリル樹脂(B)の含有量は、メタクリル樹脂(C)100重量部に対して、70重量部〜450重量部であることがより好ましく、90重量部〜200重量部であることがさらに好ましい。メタクリル樹脂(A)、およびメタクリル樹脂(B)の含有量を上記の範囲にすることで、成形体の耐溶剤性、面衝撃性、および耐糸曳き性を向上させることができ、より流動性に優れるメタクリル樹脂組成物を得ることができる。
【0079】
メタクリル樹脂混合物(X)に含まれるメタクリル樹脂(A)の含有量として、好ましくは50〜70重量%であり、より好ましくは、55〜65重量%である。メタクリル樹脂混合物(X)に含まれるメタクリル樹脂(B)の含有量として、好ましくは30〜50重量%であり、より好ましくは35〜45重量%である。ただし、メタクリル樹脂(A)とメタクリル樹脂(B)の含有量の合計を100重量%とする。メタクリル樹脂(A)、およびメタクリル樹脂(B)の含有量を上記の範囲にすることで、成形体の耐溶剤性、面衝撃性、および耐糸曳き性を向上させることができ、より流動性に優れるメタクリル樹脂組成物を得ることができる。
【0080】
メタクリル樹脂(A)50〜70重量%とメタクリル樹脂(B)30〜50重量%とを含むメタクリル樹脂混合物として、好ましくは、ピーク分子量が互いに異なる2種のメタクリル樹脂(メタクリル樹脂(A)およびメタクリル樹脂(B))を含み、以下の条件(IV)、(V)、および(VI)を満足するメタクリル樹脂混合物(Y)である。
(IV)前記メタクリル樹脂混合物の微分分子量分布曲線におけるピーク分子量のうち、最も高いピーク分子量をHPとするとき、HPの値が、式:180000≦HP≦220000を満足すること
(V)前記メタクリル樹脂混合物の微分分子量分布曲線におけるピーク分子量のうち、HPよりも低いピーク分子量をLPとするとき、LPの値が、式:24000≦LP≦35000を満足すること
(VI)微分分子量分布曲線において、HPにおけるピークの高さを示す値をaとし、LPにおけるピークの高さを示す値をbとするとき、a/bで示されるPRの値が、
式:1.32≦PR≦1.60を満足すること
【0081】
HPの値は、180000〜220000であり、180000〜200000であることが好ましい。HPの値が、220000よりも高いと、流動性に優れない場合がある。HPの値が、180000よりも低いと、耐溶剤性、および耐糸曳き性に優れない場合がある。
LPの値は、24000〜35000であり、25000〜28000であることが好ましい。LPの値が、35000よりも高いと、流動性に優れない場合がある。LPの値が、24000よりも低いと、耐熱性、および面衝撃強度に優れない場合がある。メタクリル樹脂混合物の微分分子量分布曲線において、HPよりも低いピーク分子量が複数存在する場合、HPに次いで高いピーク分子量が24000〜35000であることが好ましく、25000〜28000であることがより好ましい。
PRの値は、1.32〜1.60であり、1.35〜1.40であることが好ましい。PRの値が、1.60よりも高いと、流動性に優れない場合がある。PRの値が、1.32よりも低いと、耐溶剤性、および耐糸曳き性に優れない場合がある。
なお、HP、LPおよびPRの算出に必要な微分分子量分布曲線の作成方法は、メタクリル樹脂組成物におけるW1、W2、およびW3の算出方法で上述した方法(SECを利用した方法)と同様である。微分分子量分布曲線におけるピーク分子量とは、微分分子量分布曲線の極大分子量である。
【0082】
HPの値は、例えば、メタクリル樹脂(A)の含有量と分子量によって調整することができ、LPの値は、メタクリル樹脂(B)の含有量と分子量によって調整することができる。また、PRの値は、例えば、メタクリル樹脂(A)とメタクリル樹脂(B)の含有量と分子量によって調整することができる。
【0083】
本発明のメタクリル樹脂組成物が、メタクリル樹脂混合物(Y)とメタクリル樹脂(C)とを含有する組成物である場合、メタクリル樹脂混合物(Y)の含有量は、70〜90重量%であることが好ましく、75〜80重量%であることがより好ましい。メタクリル樹脂(C)の含有量は、10〜30重量%であることが好ましく、20〜25重量%であることがより好ましい。メタクリル樹脂混合物(Y)、およびメタクリル樹脂(C)の含有量を上記の範囲にすることで、成形体の耐溶剤性、面衝撃性、および耐糸曳き性を向上させることができ、より流動性に優れるメタクリル樹脂組成物を得ることができる。
また、本発明のメタクリル樹脂組成物が、メタクリル樹脂混合物(Y)とメタクリル樹脂(C)とを含有する組成物である場合、メタクリル樹脂混合物(Y)中のメタクリル酸アルキル単位の含有量は、98.5重量%〜100重量%であることが好ましく、アクリル酸エステル単位の含有量は、0〜1.5重量%であることが好ましく(ただし、メタクリル樹脂混合物(Y)中のメタクリル酸アルキル単位とアクリル酸エステル単位の合計量を100重量%とする。)、メタクリル樹脂(C)中のメタクリル酸アルキル単位の含有量は、96〜98重量%であることが好ましく、アクリル酸エステル単位の含有量は、2〜4重量%であることが好ましい(ただし、メタクリル樹脂(C)中のメタクリル酸アルキル単位とアクリル酸エステル単位の合計量を100重量%とする。)。メタクリル樹脂混合物(Y)中のメタクリル酸アルキル単位とアクリル酸エステル単位、およびメタクリル樹脂(C)中のメタクリル酸アルキル単位とアクリル酸エステル単位の含有量を上記の範囲にすることで、成形体の耐溶剤性、面衝撃性、および耐糸曳き性を向上させることができ、より流動性に優れるメタクリル樹脂組成物を得ることができる。
【0084】
本発明のメタクリル樹脂組成物の製造方法としては、上述のメタクリル樹脂と、必要に応じて任意の適切な他の成分(上述の離型剤、ゴム状重合体、熱安定剤、紫外線吸収剤等)とを混練する方法等が挙げられる。
重量平均分子量が異なる3種以上のメタクリル樹脂を含有するメタクリル樹脂組成物の製造方法としては、3種以上のメタクリル樹脂をそれぞれ製造した後、3種以上のメタクリル樹脂を混練する方法や、2種のメタクリル樹脂を混練してメタクリル樹脂混合物を製造し、メタクリル樹脂混合物と残りのメタクリル樹脂を混練する方法等が挙げられる。
メタクリル樹脂混合物の製造方法としては、2種のメタクリル樹脂をそれぞれ製造した後、これらを押出機中で混練する方法や、多段重合法を用いて、2種のうちの一方のメタクリル樹脂を含む組成物(シロップ)の存在下で、他方のメタクリル樹脂を形成し得る単量体成分を重合させた後にかかるシロップを押出機中にて混練する方法等が挙げられる。
【0085】
かかる多段重合は、例えば、国際公開第2014−088082号に記載の方法が挙げられる。
図7に例示として示すように、2つの反応槽を用いて実施され、各反応槽において好ましくは連続塊状重合が実施され得る。例えば、第1の反応槽10にて2種のうちの一方のメタクリル樹脂が調製され、第2の反応槽20にてかかる一方のメタクリル樹脂の存在下で他方のメタクリル樹脂を調製することができる。
【0086】
多段重合でメタクリル樹脂混合物(Y)を製造する場合、HPの値は、第1の反応槽10内の連鎖移動剤濃度や温度等によって調整され得る。例えば、第1の反応槽10において連鎖移動剤濃度を低くすると、HPの値が高くなる傾向があり、第1の反応槽10内の温度を低くすることによって、HPの値が高くなる傾向がある。
また、LPの値は、第2の反応槽20内の連鎖移動剤濃度や温度等によって調整され得る。例えば、第2の反応槽20において連鎖移動剤濃度を低くすると、LPの値が高くなる傾向があり、第2の反応槽20内の温度を低くすることによって、LPの値が高くなる傾向がある。
またPRの値は、例えば、第1の反応槽10および第2の反応槽20での重合率によって調整され得る。例えば、第1の反応槽での重合率を上げるか、あるいは第2の反応槽での重合率を下げることによって、PRの値は高くすることができる。
各反応槽での重合率は、例えば、上述の重合開始剤の濃度によって調整され得る。
【0087】
第1の反応槽10における反応槽内の温度は、110〜160℃であることが好ましく、110〜150℃であることがより好ましく、120〜140℃であることが更に好ましい。第1の反応槽10における反応槽内の温度が上記の範囲である場合、第1の反応槽10における連鎖移動剤濃度は、第1の反応槽10に供給する原料モノマーの総重量に対して、0.08〜0.10重量%であることが好ましい。
第2の反応槽20において反応槽内の温度は、170〜190℃であることが好ましく、175〜185℃であることがより好ましい。第2の反応槽20における反応槽内の温度が上記の範囲である場合、第2の反応槽20に供給される連鎖移動剤濃度は、第2の反応槽20に供給する原料モノマーの総重量に対して、0.40〜0.60重量%であることが好ましい。
【0088】
LP値が条件(V)に規定する目標の範囲から外れる場合、第2の反応槽の連鎖移動剤濃度を変えて、LP樹脂の分子量を調整することができるが、LP樹脂とHP樹脂の両ピークのテールが重なる場合、PR値は、多少変化し得る。そのため、まず、LPの値を目標の範囲内に調整した後、その重合率を調整することによって、PR値を調整するのが望ましい。
【0089】
本発明では、上記の条件(I)〜(III)の全てを満たすことによって、優れた耐溶剤性、耐熱性、面衝撃性、耐糸曳き性に優れる成形体を得ることができ、且つ流動性に優れるメタクリル樹脂組成物を提供することができる。なお、「流動性」、「耐溶剤性」、「面衝撃性」および「耐糸曳き性」の評価基準については、以下の実施例にて詳しく説明する。
上記の条件(I)〜(III)におけるW1、W2、およびW3の値は、組成物に含まれるメタクリル樹脂の重量平均分子量と含有量によって調整され得る。
本発明のメタクリル樹脂組成物が、メタクリル樹脂(A)、メタクリル樹脂(B)、およびメタクリル樹脂(C)を含有する組成物である場合、W1、W2、およびW3は、メタクリル樹脂(A)、メタクリル樹脂(B)、およびメタクリル樹脂(C)の各分子量と各含有量等によって、調整され得る。例えば、メタクリル樹脂(C)の含有量を増加させると、W1、W2、およびW3の値が大きくなる傾向があり、メタクリル樹脂(A)の含有量を増加させると、W2およびW3の値が大きくなる傾向があり、メタクリル樹脂(B)の含有量を増加させると、W1およびW2の値が大きくなる傾向があり、メタクリル樹脂(A)の分子量を小さくする、W3が小さくなる傾向があり、メタクリル樹脂(B)の分子量を小さくすると、W1が大きくなる傾向があり、メタクリル樹脂(C)の分子量を小さくすると、W1およびW2が大きくなる傾向がある。
本発明のメタクリル樹脂組成物が、メタクリル樹脂混合物(Y)とメタクリル樹脂(C)とを含有する組成物である場合、W1、W2、およびW3は、メタクリル樹脂混合物(Y)のHP、LPおよびPR、メタクリル樹脂混合物(Y)の含有量、メタクリル樹脂(C)の分子量および含有量等によって調整され得る。例えば、HPの値を大きくすると、W3の値が大きくなる傾向があり、LPの値を大きくすると、W1の値が小さくなる傾向があり、PRの値を大きくすると、W1およびW2の値が小さくなり、W3が大きくなる傾向がある。
【0090】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、上述の条件(I)〜(III)の全てを満足することによって、耐溶剤性、耐熱性、面衝撃強度および耐糸曳き性に優れ、さらに流動性にも優れることから、様々な成形体、例えば、テールランプカバー、ヘッドランプカバー、バイザーおよびメーターパネルのカバー等の車両用部材、レンズ、ディスプレイ保護板、光学フィルムおよび導光板等の光学部材、化粧品容器用の部材などに好ましく用いられ、中でも車両用部材の成形用材料として特に好ましく用いられ得る。本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形体は、押出成形法、射出成形法等の方法で製造することができるが、本発明のメタクリル樹脂組成物は、流動性に優れるので、射出成形法により製造することが好ましい。
【実施例】
【0091】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0092】
まず、「流動性」、「耐溶剤性」、「面衝撃性」および「耐糸曳き性」の評価方法について、それぞれ詳しく説明する。
【0093】
<「流動性」の評価方法>
射出成形機(東洋機械金属(株)製の「Si −180V CH450C型」)を用いて、以下の実施例1〜6および比較例2〜6のメタクリル樹脂組成物、または比較例1のメタクリル樹脂混合物を、円形スパイラル金型内にそれぞれ金型の中央部から射出して射出成形品を成形し、このとき金型内におけるメタクリル樹脂組成物(あるいはメタクリル樹脂混合物)の到達距離(mm)を測定した(以下、「スパイラル流動長」(mm)と呼ぶ場合もある)。なお、到達距離は、金型から射出成形品に転写された目盛りを読み取ることで判断した。ここで、到達距離が長いほど、メタクリル樹脂組成物(あるいはメタクリル樹脂混合物)が流動性に優れていることを示す。射出条件および評価に用いた円形金型は、以下の通りである。
【0094】
成形温度設定:ヒータ1:250℃ ヒータ2:260℃ ヒータ3:260℃
ヒータ4:240℃ ヒータ5:220℃
金型温度:60℃
射出速度:100mm/秒
保圧:50MPa
保圧時間:5秒
冷却時間:30秒
計量時のスクリュー回転数:60rpm
背圧:10MPa
最大射出圧力が150MPaになるようスクリューの計量位置を調整し、その際の樹脂の流動長を読み取った。
円形スパイラル金型:厚さ2mm、幅10mmの円形スパイラル金型を用いた。
【0095】
<「耐溶剤性」の評価方法>
まず、射出成形機(東芝機械(株)製の「IS130F−V型」)を用いて、以下の実施例1〜6および比較例2〜6のメタクリル樹脂組成物、または比較例1のメタクリル樹脂混合物を射出成形し、長さ250mm×幅25.4mm×厚さ3mmの平板を得た。なお、射出条件は、以下の通りであった。
【0096】
成形温度設定HN:260℃ H1:260℃ H2:260℃ H3:230℃ H4:210℃
金型温度:60℃
成形サイクル
射出タイマ(TR1):18% 冷却タイマ(TR3):30% 中間タイマ(TR4):3%
保圧時の圧力
PH1〜PH4:成形品にヒケがないよう調整した。
保圧タイマ TRH1:12秒 TRH2:7秒 TRH3:30秒
保圧時の射出速度 VH1:20%
充填時の射出速度
VI1:70% VI2:65% VI3:60% VI4:53% VI5:44%
計量ストローク位置 LS5:成形品にヒケがないよう調整した。
射出速度切替位置
LS4A:35mm LS4B:26mm LS4C:18mm LS4D:12mm
保圧切替位置 LS4:8mm
スクリュー回転数 SRN:96%
スクリュー背圧:20%
【0097】
次いで、得られた平板を80℃の真空乾燥機で5時間乾燥させた後、デシケータ中に入れ、試験片(長さ250mm×幅25.4mm×厚さ3mmの平板)を得た。
【0098】
得られた試験片を用いて、耐溶剤性試験を行った。この試験は、23℃/40%RHの恒温恒湿室内で行った。試験方法には、カンチレバー法を採用し、下記(a)〜(d)の手順で行った。
【0099】
(a)試験片の一端部を固定台に挟んで支え、固定位置から146mmの位置(支点)において、試験片の下側から試験片を支え、試験片を水平に保つ。
【0100】
(b)試験片の他端部に荷重をかけて、試験片に所定の表面応力を発生させる。
【0101】
(c)試験片の上面に、エタノール(和光純薬工業(株)製の「試薬1級エタノール」)を塗布する。なお、エタノールが揮発してなくならないように、定期的にエタノールを塗布する。
【0102】
(d)エタノールの塗布を開始してから試験片にクレーズが発生するまでの時間(秒)を計測する。この方法を用いて、ある表面応力での「クレーズ発生時間」(秒)を測定し、試験片の耐溶剤性を評価した。ここで、クレーズ発生時間が長いほど、耐溶剤性に優れていることを示す。
【0103】
なお、所定の表面応力に対する荷重は、下記の式(i)より算出した。
【0104】
表面応力(MPa)=[(6×A×B)/(C×D
2)]×10
−6 ・・・(i)
A:荷重(N)
B:支点から荷重をかけている位置までの長さ(m)
C:試験片の幅(m)
D:試験片の厚さ(m)
【0105】
<「面衝撃性」の評価方法>
射出成形機(東洋機械金属(株)製の「Si −180V CH450C型」)を用いて、以下の実施例1〜6および比較例2〜6のメタクリル樹脂組成物、または比較例1のメタクリル樹脂混合物を射出成形し、縦150mm×横90mm×厚さ2mmの平板を得た。なお、射出条件は、以下の通りであった。
【0106】
成形温度設定:ヒータ1:255℃ ヒータ2:260℃ ヒータ3:260℃
ヒータ4:240℃ ヒータ5:220℃ ホッパー:60℃
金型温度:60℃
射出速度:20mm/秒
保圧:60MPa
保圧時間:5秒
冷却時間:30秒
スクリュー回転数:60rpm
背圧:10MPa
【0107】
以下にて説明する実施例1〜6および比較例2〜6のメタクリル樹脂組成物、または比較例1のメタクリル樹脂混合物の面衝撃性の評価試験法について、
図5および
図6を参照しながら説明する。なお、
図5は、試験治具(112)に試験片(109)を固定した状態の一例について上からみた模式図であり、
図6は、この評価試験において、試験治具(112)に固定した試験片(109)に金属球(111)を落下させている状態を横からみた一例を表す模式図である。
【0108】
まず、
図5、6に示すように、試験治具(112)上に、縦15cm×横9cm×厚さ2mmの試験片(109)を置き、更にその上に鉄板(108)を置き
図5,6のようにクリップ等(110)にて試験片(109)を治具に固定した。試験治具(112)は金属球を落下させるため縦3.5cm×横4.7cm×高さ1.9cmの空間があり、鉄板(108)は上からみて中心部が縦15cm×横9cmの長方形状に切り抜かれた厚み2mmのものである。また、試験片には射出成形にて得られた平板を23℃/40%RH雰囲気で12時間状態調整させたものを用いた。
【0109】
次に、重量31.9gのスチール球を平板の中心に落下させ、JIS K7211−1のステアケース法(定落下質量)に準拠し、メタクリル樹脂組成物(あるいはメタクリル樹脂混合物)を用いて50%破壊エネルギー(mJ)を測定し、「面衝撃強度」とした。また、試験装置は落下衝撃試験機473311−1((株)東洋精機製作所製)を用いた。ここで、面衝撃強度が高いほど面衝撃性に優れていることを示す。
【0110】
<「耐糸曳き性」の評価方法)>
(耐糸曳き性の評価試験をするための試験片の作製法)
評価試験の対象となる以下の実施例1〜6および比較例2〜6のメタクリル樹脂組成物、または比較例1のメタクリル樹脂混合物を、射出成形機(東芝機械(株)製の「IS130F−V型」)により射出成形し、縦210mm×横120mm×厚さ3mmの平板(101)を作製した(
図1参照)。射出条件は、以下の通りであった。
【0111】
成形温度設定
HN:260℃ H1:260℃ H2:260℃ H3:230℃ H4:210℃
金型温度:60℃
成形サイクル
射出タイマ(TR1):18% 冷却タイマ(TR3):30% 中間タイマ(TR4):3%
保圧時の圧力
PH1〜PH4:成形品にヒケがないよう調整した。
保圧タイマ
TRH1:12秒 TRH2:7秒 TRH3:30秒
保圧時の射出速度 VH1:20%
充填時の射出速度
VI1:70% VI2:65% VI3:60% VI4:53% VI5:44% 計量ストローク位置 LS5:成形品にヒケがないよう調整した。
射出速度切替位置
LS4A:35mm LS4B:26mm LS4C:18mm LS4D:12mm
保圧切替位置 LS4:8mm
スクリュー回転数 SRN:96%
スクリュー背圧:20%
【0112】
次いで、この平板(101)を、パネルソーにより、
図2に示すように縦20mm×横40mm×厚さ3mmに切断して試験片(102)を計22枚作製した。また、試験片は80℃の真空乾燥機で8時間以上乾燥させた後に23℃/40%RHの恒温恒湿室内にて12時間以上状態調整を行った後に試験に用いた。なお、
図1は切断する前の平板(101)をその上側から見た模式図であり、
図2は切断した後の各試験片(102)をその上側から見た模式図である。
【0113】
(耐糸曳き性の評価試験法)
以下にて説明する実施例1〜6および比較例2〜6のメタクリル樹脂組成物、または比較例1のメタクリル樹脂混合物の耐糸曳き性の評価試験法について、
図3および
図4を参照しながら、詳しく説明する。なお、
図3は、評価試験開始前の状態の一例を表す模式図であり、
図4は、この評価試験において、メタクリル樹脂組成物(あるいはメタクリル樹脂混合物)の試験片(102)が糸を曳いている状態の一例を表す模式図である。
【0114】
図3に示すように、ホットプレート(103)上に、縦15cm×横15cm×厚さ3mmのSUS34製のプレートを敷き、これを熱板(104)とした。一方、高さ調整が可能なハイトゲージ(105)にアルミ製の棒(106)を挟み込ませ、さらにこのアルミ棒(106)に、上述した作製法により得た縦20mm×横40mm×厚さ3mmのメタクリル樹脂組成物(あるいはメタクリル樹脂混合物)の試験片(102)をクリップで留めて固定した。
【0115】
次に、所定温度に加熱した熱板(104)に、試験片(102)のその作製の際にパネルソーにより切断されていない面(20mm×3mm)を15秒間押し当てることにより、試験片(102)の接触部を熱板(104)上で溶融させた後、
図4に示すように試験片(102)を持ち上げて糸(107)が曳いた長さをハイトゲージ(105)の目盛りで読み取った。
【0116】
上記の操作を5回繰り返し、所定の温度における試験片の糸曳きの長さの平均値を求めた。熱板の温度は最初240℃から、20℃ずつ上げて測定を続ける。そして、この糸曳きの長さの平均値がはじめて10mm以上になったときの温度を「糸曳き開始温度」(℃)とした。ここで、この糸曳き開始温度が高いほど、耐糸曳き性に優れていることを示す。
【0117】
<「ビカット軟化温度」の測定方法>
JIS K7206(B50法)に準拠して、ヒートデストーションテスター((株)安田精機製作所製の「148−6連型」)を用いて、以下の実施例1〜6および比較例2〜6のメタクリル樹脂組成物、または比較例1のメタクリル樹脂混合物を射出成形して得た試験片において、そのビカット軟化温度(℃)を測定した。
【0118】
<メタクリル樹脂組成物、メタクリル樹脂混合物の評価方法>
次に、熱分解ガスクロマトグラフィーによるメタクリル樹脂組成物(あるいはメタクリル樹脂混合物)の評価方法について詳しく説明する。
【0119】
(熱分解測定)
以下にて説明する実施例1〜6および比較例2〜6のメタクリル樹脂組成物、または比較例1のメタクリル樹脂混合物のペレットを熱分解ガスクロマトグラフィーにより以下の条件で分析し、単量体成分として使用したメタクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルに対応するピークの面積をそれぞれ測定することによって、各メタクリル樹脂組成物(あるいはメタクリル樹脂混合物)を評価した。
【0120】
(熱分解条件)
試料調製:メタクリル樹脂組成物(あるいはメタクリル樹脂混合物)を精秤(目安2〜3mg)し、樋状に形成した金属セルの中央部に入れ、金属セルを畳んでその両端を軽くペンチで押さえて封入した。
熱分解装置:CURIE POINT PYROLYZER JHP−22(日本分析工業(株)製)
金属セル:Pyrofoil F590(日本分析工業(株)製)
恒温槽の設定温度:200℃
保温パイプの設定温度:250℃
熱分解温度:590℃
熱分解時間:5秒
【0121】
(ガスクロマトグラフィー分析条件)
ガスクロマトグラフィー分析装置:GC−14B((株)島津製作所製)
検出方法:FID
カラム:7G 3.2m×3.1mmφ((株)島津製作所製)
充填剤:FAL−M((株)島津製作所製、パックドカラム)
キャリアガス:Air/N
2/H
2=50/100/50(kPa)、80ml/分
カラムの昇温条件:100℃で15分間保持→10℃/分で150℃まで昇温→150℃で14分間保持
INJ温度:200℃
DET温度:200℃
【0122】
上記の熱分解条件で各メタクリル樹脂組成物(あるいはメタクリル樹脂混合物)を熱分解させ、発生した分解生成物を上記のガスクロマトグラフィー分析条件下で測定を行ったときに検出されるメタクリル酸メチルに対応するピークの面積(a1)及びアクリル酸メチルに対応するピークの面積(b1)を測定した。そして、これらのピークの面積から、ピークの面積比A(=b1/a1)を求めた。
【0123】
一方、メタクリル酸メチル単位に対するアクリル酸メチル単位の重量比がW0(既知)(アクリル酸メチル単位の重量/メタクリル酸メチル単位の重量)であるメタクリル樹脂の標準品を上記の熱分解条件下で熱分解させ、発生した分解生成物を上記のガスクロマトグラフィー分析条件下で測定を行ったときに検出されるメタクリル酸メチルに対応するピークの面積(a0)及びアクリル酸メチルに対応するピークの面積(b0)を測定し、これらピークの面積から、ピークの面積比A0(=b0/a0)を求めた。
そして、このピークの面積比A0と、上記の重量比W0とから、ファクターf(=W0/A0)を求めた。
次に、上記のピークの面積比Aに上記のファクターfを乗じることにより、測定対象の上記メタクリル樹脂組成物(あるいはメタクリル樹脂混合物)に含まれるメタクリル樹脂におけるメタクリル酸メチル単位に対するアクリル酸メチル単位の重量比W(アクリル酸メチル単位の重量/メタクリル酸メチル単位の重量)を求め、この重量比Wから、メタクリル酸メチル単位及びアクリル酸メチル単位の合計量に対するメタクリル酸メチル単位の比率(重量%)およびアクリル酸メチル単位の比率(重量%)をそれぞれ算出した。以下の実施例および比較例では、特に、メタクリル樹脂組成物に含まれるメタクリル樹脂におけるメタクリル酸メチル単位の比率(重量%)およびアクリル酸メチル単位の比率(重量%)を求めた。
【0124】
(GPC測定)
以下にて説明する実施例1〜6および比較例2〜6のメタクリル樹脂組成物、または比較例1のメタクリル樹脂混合物のペレットをGPC測定により以下の条件で分析し、W1、W2およびW3を求めた。また、各メタクリル樹脂の重量平均分子量と、メタクリル樹脂混合物のHP、LP、およびPRを評価した。
【0125】
(GPC分析条件)
測定装置:東ソー(株)製 HLC−8220
カラム:TSKgel super HM−H 2本 および SuperH 2500 1本を直列に接続
検出器:RI検出器
溶液調整:THFを溶媒とし、サンプルの0.4%溶液を用いる
カラム温度:40℃
注入量:10μL
流速:0.35ml/分
【0126】
上記の条件にて、各メタクリル樹脂組成物(あるいはメタクリル樹脂混合物)の溶出時間に対するRI検出強度を測定した。検量線用標準サンプルとして、単分散の重量平均分子量が既知で分子量の異なる以下の7種類のメタクリル樹脂(Shodex STANDARD M−75 昭和電工(株)製)を用いた。
重量平均分子量
標準試料1 927, 000
標準試料2 524, 000
標準試料3 203, 000
標準試料4 62, 200
標準試料5 20, 000
標準試料6 6, 570
標準試料7 2, 920
【0127】
(W1、W2およびW3の求め方)
実施例1〜6および比較例2〜6のメタクリル樹脂組成物、または比較例1のメタクリル樹脂混合物について、上記のGPC分析条件で得られた結果から、前述の方法で微分分子量分布曲線を作成した。微分分子量分布曲線とdW/d(logM)=0の直線とが交わる点のうち、低分子量側の点を点A(始点)、高分子量側の点を点B(終点)とし、始点から終点までの曲線と上記直線で囲まれるピーク面積を100とした場合、始点から終点までのピーク面積に対する始点から分子量30,000までの面積の割合(%)を「W1」とし、始点から分子量80,000までの面積の割合(%)を「W2」とし、分子量300,000から終点までの面積の割合(%)をW3として算出した。
【0128】
(重量平均分子量およびHP、LP、PRの求め方)
各メタクリル樹脂の重量平均分子量は、上記のGPC分析条件で得られた結果から、前述の方法で微分分子量分布曲線を作成することで求めた。また、メタクリル樹脂混合物のHP、LP、およびPRは、上記のGPC分析条件で得られた結果から、前述の方法で微分分子量分布曲線を作成し、微分分子量分布曲線におけるピーク分子量のうち、最も高いピーク分子量をHPとし、HPよりも低いピーク分子量をLPとし、更に、微分分子量分布曲線において、HPにおけるピークの高さを示す値をaとし、LPにおけるピークの高さを示す値をbとするとき、a/bで示される値をPRとして求めた。
【0129】
以下、本発明を実施例により詳しく説明する。本発明の実施例、比較例では、以下にあげるメタクリル樹脂混合物(1)〜(2)およびメタクリル樹脂(3)〜(5)を使用した。
【0130】
(メタクリル樹脂混合物(1)の製造について)
本実施例においては、概略的には、
図7を参照しながら、上述の例示の実施形態に従って、連続重合を2段で実施して得たメタクリル樹脂混合物をペレットの形態で製造した。
【0131】
本実施例においてメタクリル樹脂混合物を製造するために、
図7に示す装置を用いた。第1の反応槽10として容量13Lの完全混合型反応槽を用い、第2の反応槽20として容量8Lの完全混合型反応槽を用いた。
【0132】
第1の反応槽10において、メタクリル酸メチル99.8質量部、アクリル酸メチル0.500質量部、連鎖移動剤[n−オクチルメルカプタン]0.101質量部、離型剤[ステアリルアルコール]0.100質量部および重合開始剤[t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート]0.00850質量部を混合してシロップ1を得た。
また、第1の反応槽10内でのシロップ1の滞留時間は61.8分となるように流量を調整した。
第1の反応槽10内での温度(T1)は127℃であり、第1の反応槽10の外壁面を取り囲むジャケット13の温度を127℃とし、実質的に熱の出入りのない断熱状態で連続重合を行った。
【0133】
次に、第2の反応槽20に供給する原料モノマー溶液2を準備する。なお、この原料モノマー溶液2は、メタクリル酸メチル95.1質量部、アクリル酸メチル0.500質量部、連鎖移動剤[n−オクチルメルカプタン]4.33質量部および重合開始剤[1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン]0.0696質量部を混合したものであった。
【0134】
第2の反応槽20において、原料モノマー溶液2とシロップ1とが1:9.7の質量割合で混合するように流量を調整した。なお、かかる混合物の第2の反応槽20における滞留時間は37.5分であった。
第2の反応槽20内での温度(T2)は186℃であり、第2の反応槽20の外壁面を取り囲むジャケット23の温度を186℃とし、実質的に熱の出入りのない断熱状態で連続重合を行い、シロップ2を得た。
なお、この連続重合は、第1の反応槽10および第2の反応槽20が反応混合物(混合液)で満たされて実質的に気相が存在しない状態(満液状態)で実施した。
【0135】
第2の反応槽20内の反応混合物を第2の反応槽20の頂部に位置する抜き出し口21bから、メタクリル樹脂組成物として連続的に抜き出した。これにより得られたメタクリル樹脂組成物を、抜き出しライン25に通し、予熱器31にて200℃に加熱して、ベント付き脱揮押出機33にて、250℃で未反応の原料モノマー等の揮発性成分を除去し、脱揮後のメタクリル樹脂組成物を溶融状態で押出して、水冷後、裁断してペレットとして排出ライン35から排出させた。これにより、メタクリル樹脂混合物をペレットの形態で製造した(以下、「メタクリル樹脂混合物(1)」と呼ぶ)。
メタクリル樹脂混合物(1)のHPは186000であり、LPは27000であり、PRは1.36であった。
【0136】
(メタクリル樹脂混合物(2)の製造について)
メタクリル樹脂混合物(1)の製造において、第1の反応槽10で混合する連鎖移動剤[n−オクチルメルカプタン]の量を0.093質量部に、第2の反応槽20に供給する原料モノマー溶液2に含まれる連鎖移動剤[n−オクチルメルカプタン]の量を4.49質量部にしたこと以外は、メタクリル樹脂混合物(1)の製造方法と同様にしてペレット状のメタクリル樹脂混合物を得た(以下、「メタクリル樹脂混合物(2)」と呼ぶ)。メタクリル樹脂混合物(2)のHPは213000であり、LPは27000であり、PRは1.38であった。
【0137】
(メタクリル樹脂(3)について)
攪拌機を備えた重合反応器に、メタクリル酸メチル96.8重量部、アクリル酸メチル2.95重量部と、重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.0323重量部と、連鎖移動剤としてn−オクチルメルカプタン0.178重量部と最終的に得られる樹脂組成物総量の0.1重量phrに相当する量のステアリルアルコールをそれぞれ連続的に供給し、175℃にて平均滞留時間27.0分間で重合反応を行った。次いで、重合反応器から出てきた反応液を脱揮押出機に供給し、未反応の単量体成分を気化させて回収し、充分に混練した後、賦形して、ペレット状のメタクリル樹脂を得た(以下、「メタクリル樹脂(3)」と呼ぶ)。
メタクリル樹脂(3)の重量平均分子量は、93000であった。
【0138】
(メタクリル樹脂(4)について)
攪拌機を備えた重合反応器に、メタクリル酸メチル97.0重量部、アクリル酸メチル2.89重量部と、重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.0160重量部と、連鎖移動剤としてn−オクチルメルカプタン0.0850重量部と最終的に得られる樹脂組成物総量の0.1重量phrに相当する量のステアリルアルコールをそれぞれ連続的に供給し、175℃にて平均滞留時間36.1分間で重合反応を行った。次いで、重合反応器から出てきた反応液を脱揮押出機に供給し、未反応の単量体成分を気化させて回収し、充分に混練した後、賦形して、ペレット状のメタクリル樹脂を得た(以下、「メタクリル樹脂(4)」と呼ぶ
メタクリル樹脂(4)の重量平均分子量は、158000であった。
【0139】
(メタクリル樹脂(5)について)
攪拌機を備えた重合反応器に、メタクリル酸メチル91.6重量部、アクリル酸メチル8.00重量部と、重合開始剤としてt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.0097重量部と、連鎖移動剤としてn−オクチルメルカプタン0.389重量部と、最終的に得られる樹脂組成物総量の0.1重量phrに相当する量のステアリルアルコールをそれぞれ連続的に供給し、140℃にて平均滞留時間59.1分間で重合反応を行った。次いで、重合反応器から出てきた反応液を脱揮押出機に供給し、未反応の単量体成分を気化させて回収し、充分に混練した後、賦形して、ペレット状のメタクリル樹脂を得た(以下、「メタクリル樹脂(5)」と呼ぶ)。
メタクリル樹脂(5)の重量平均分子量は、65000であった。
【0140】
(実施例1)
メタクリル樹脂混合物(1)90重量%と、メタクリル樹脂(3)10重量%とを混合した。次いで、1軸押出機(スクリュー径40mm)を用いて、樹脂温度が250℃になるように溶融混練してストランド状に押し出し、水冷してストランドカッターで切断することによりペレット状のメタクリル樹脂組成物を得て、各種物性測定を行った。また、得られたメタクリル樹脂組成物の微分分子量分布曲線を
図8に示した。
【0141】
(実施例2)
メタクリル樹脂混合物(1)80重量%と、メタクリル樹脂(3)20重量%とを混合したこと以外は、実施例1と同様にしてペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。得られたメタクリル樹脂組成物を用いて、各種物性評価を行った。
【0142】
(実施例3)
メタクリル樹脂混合物(1)70重量%と、メタクリル樹脂(3)30重量%とを混合したこと以外は、実施例1と同様にしてペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。得られたメタクリル樹脂組成物を用いて、各種物性評価を行った。
【0143】
(実施例4)
メタクリル樹脂混合物(1)90重量%と、メタクリル樹脂(4)10重量%とを混合したこと以外は、実施例1と同様にしてペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。得られたメタクリル樹脂組成物を用いて、各種物性評価を行った。
【0144】
(実施例5)
メタクリル樹脂混合物(1)80重量%と、メタクリル樹脂(4)20重量%とを混合したこと以外は、実施例1と同様にしてペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。得られたメタクリル樹脂組成物を用いて、各種物性評価を行った。
【0145】
(実施例6)
メタクリル樹脂混合物(1)70重量%と、メタクリル樹脂(4)30重量%とを混合したこと以外は、実施例1と同様にしてペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。得られたメタクリル樹脂組成物を用いて、各種物性評価を行った。
【0146】
(比較例1)
メタクリル樹脂混合物(1)について各種物性測定を行った。
【0147】
(比較例2)
メタクリル樹脂混合物(1)60重量%と、メタクリル樹脂(3)40重量%とを混合したこと以外は、実施例1と同様にしてペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。得られたメタクリル樹脂組成物を用いて、各種物性評価を行った。
【0148】
(比較例3)
メタクリル樹脂混合物(1)60重量%と、メタクリル樹脂(4)40重量%とを混合したこと以外は、実施例1と同様にしてペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。得られたメタクリル樹脂組成物を用いて、各種物性評価を行った。
【0149】
(比較例4)
メタクリル樹脂混合物(1)75重量%と、メタクリル樹脂(5)25重量%とを混合したこと以外は、実施例1と同様にしてペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。得られたメタクリル樹脂組成物を用いて、各種物性評価を行った。
【0150】
(比較例5)
メタクリル樹脂混合物(2)75重量%と、メタクリル樹脂(4)25重量%とを混合したこと以外は、実施例1と同様にしてペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。得られたメタクリル樹脂組成物を用いて、各種物性評価を行った。
【0151】
(比較例6)
メタクリル樹脂混合物(1)48重量%と、メタクリル樹脂(3)39重量%と、メタクリル樹脂(4)13重量%とを混合したこと以外は、実施例1と同様にしてペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。得られたメタクリル樹脂組成物を用いて、各種物性評価を行った。
【0152】
各実施例および比較例で得られたメタクリル樹脂組成物(またはメタクリル樹脂混合物)に含まれるメタクリル樹脂について測定したアクリル酸メチルの割合、メタクリル酸メチルの割合ならびに上述の評価方法による評価結果を以下の表1にまとめて記載する。
【0153】
【表1】
【0154】
実施例1〜6では、いずれにおいても、W1、W2およびW3の値が本発明において規定する条件(I)〜(III)の範囲内にあるので、すなわち条件(I)〜(III)をすべて満たすので、面衝撃強度、スパイラル流動長、クレーズ発生時間、糸曳き開始温度のすべての物性が優れている。
【0155】
比較例1では、W1の値が規定範囲よりも高いので、実施例1〜6と比較して、面衝撃強度が低い。
【0156】
比較例2では、W3の値が規定範囲よりも低い。その結果、実施例1〜6と比較して、クレーズ発生時間が短く、糸曳き開始温度も低い。
【0157】
比較例3では、W2の値が規定範囲よりも低い。その結果、実施例1〜6と比較して、スパイラル流動長の値が低い。
【0158】
比較例4では、W2の値が規定範囲よりも高い。その結果、実施例1〜6と比較して、クレーズ発生時間が短く、糸曳き開始温度も低い。
【0159】
比較例5では、W3の値が規定範囲よりも高い。その結果、実施例1〜6と比較して、スパイラル流動長の値が低い。
【0160】
比較例6では、W1の値が規定範囲よりも低い。その結果、実施例1〜6と比較して、スパイラル流動長の値が低く、クレーズ発生時間が短い。
【0161】
このように、比較例1〜6では、本発明において規定する条件(I)〜(III)のすべてを満たさないので、本発明の実施例1〜6のように優れた面衝撃性、流動性、耐溶剤性、および耐糸曳き性のすべてを良好なレベルで維持することはできなかった。