(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明および本明細書において、特記しない限り、記載されている基は置換基を有してもよく無置換であってもよい。ある基が置換基を有する場合、置換基としては、アルキル基(例えば炭素数1〜6のアルキル基)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば炭素数1〜6のアルコキシ基)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アシル基、カルボキシ基、カルボキシ基の塩、スルホン酸基、スルホン酸基の塩等を挙げることができる。また、置換基を有する基について「炭素数」とは、特記しない限り、置換基の炭素数を含む炭素数を意味するものとする。
【0026】
また、本発明および本明細書において、強磁性粉末とは、複数の強磁性粒子の集合を意味する。集合とは、これを構成する粒子が直接接触している態様に限定されず、結合剤、添加剤等が、粒子同士の間に介在している態様も包含される。以上の点は、非磁性粉末等の他の粉末についても同様とする。
【0027】
[磁気記録媒体用硬化剤]
本発明の一態様は、一般式1で表される化合物を含む磁気記録媒体用硬化剤に関する。一般式1は、以下の通りである。上記磁気記録媒体用硬化剤は、一般式1で表される化合物の一種のみであることができ、同じ合成原料に由来し構造が異なる二種以上の一般式1で表される化合物を含む混合物であることもできる。以下に、一般式1について説明する。
【0029】
一般式1中、Xは、一価の複素環基または一般式2で表される一価の基を表す。
【0030】
一価の複素環基(以下、単に「複素環基」とも記載する。)としては、環構造を構成するヘテロ原子として、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の炭素原子以外の原子を1つ以上含む複素環基を挙げることができ、環構造を構成するヘテロ原子として少なくとも窒素原子を1つ以上有する含窒素複素環基が好ましい。また、複素環基に含まれる複素環は、単環であってもよく縮合環であってもよく、芳香族環であってもよく非芳香族環であってもよい。複素環基としては、5〜10員環の複素環基が好ましく、5〜7員環の複素環基がより好ましい。一価の複素環基の具体例としては、例えば、置換または無置換のイミダゾリル基、置換または無置換のピラゾリル基、置換または無置換のトリアゾリル基、置換または無置換のベンズイミダゾリル基、置換または無置換のピリジル基、置換または無置換のピリミジノ基、置換または無置換のキノリノ基等を挙げることができ、置換または無置換のイミダゾリル基、置換または無置換のピラゾリル基、置換または無置換のベンズイミダゾリル基、置換または無置換のトリアゾリル基が好ましく、ブロック剤の解離反応の反応性の観点からは、置換または無置換のイミダゾリル基、置換または無置換のピラゾリル基がより好ましく、置換または無置換のピラゾリル基が更に好ましい。
上記具体例の複素環基等の各種複素環基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基を有する複素環基について、置換基の置換位置は特に限定されない。置換基としては、先に例示した置換基を挙げることができ、アルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜3のアルキル基が更に好ましい。
【0031】
一般式1中、Xは、一態様では一般式2で表される一価の基であることができる。一般式2は、以下の通りである。
【0033】
一般式2中、R
1はアルキル基を表す。本発明および本明細書において、「アルキル基」には、直鎖アルキル基、分岐を有するアルキル基およびシクロアルキル基が包含され、置換アルキル基および無置換アルキル基が包含される。置換アルキル基について、置換基としては先に例示した置換基が挙げられる。
R
1で表されるアルキル基も、直鎖アルキル基、分岐アルキル基およびシクロアルキル基のいずれかのアルキル基であることができ、直鎖アルキル基または分岐アルキル基であることが好ましく、直鎖アルキル基であることがより好ましい。また、R
1で表されるアルキル基は、置換アルキル基または無置換アルキル基であることができ、無置換アルキル基であることが好ましい。R
1で表されるアルキル基の炭素数は、1〜20の範囲であることが好ましく、1〜18の範囲であることがより好ましく、1〜13の範囲であることが更に好ましく、1〜6の範囲であることが一層好ましく、1〜3の範囲であることがより一層好ましい。
【0034】
一般式2中、R
2は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
R
2で表されるアルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基およびシクロアルキル基のいずれかのアルキル基であることができ、直鎖アルキル基または分岐アルキル基であることが好ましく、直鎖アルキル基であることがより好ましい。また、R
2で表されるアルキル基は、置換アルキル基または無置換アルキル基であることができ、無置換アルキル基であることが好ましい。R
2で表されるアルキル基の炭素数は、1〜10の範囲であることが好ましく、1〜6の範囲であることがより好ましく、1〜3の範囲であることが更に好ましい。R
2で表されるアルキル基は、メチル基であることが更に一層好ましい。
R
2で表されるアリール基は、置換または無置換のアリール基であることができ、無置換アリール基であることが好ましい。アリール基とは、一価の芳香族炭素環基であり、アリール基に含まれる環構造は、単環であっても縮合環であってもよい。R
2で表されるアリール基は、5〜20員環のアリール基であることが好ましく、フェニル基またはナフチル基であることがより好ましく、フェニル基であることが更に好ましい。
【0035】
一般式2中、*は隣接する炭素原子との結合位置を表す。隣接する炭素原子とは、一般式1においてXと結合しているカルボニル基(−C(=O)−)中の炭素原子である。
【0036】
一般式1中、mは2以上の整数を表す。したがって、一般式1で表される化合物には、Zと連結している部分構造「X−C(=O)NH−」が複数(m個)含まれる。これら複数の部分構造は、一態様では同一構造であることができ、他の一態様では異なる構造であることができる。これら複数の部分構造は、一般式1で表される化合物の合成の容易性の観点からは、同一構造であることが好ましい。
【0037】
一般式1中のmが1の化合物は、ブロック剤が解離することにより、イソシアネート基を1分子中に1つ有する単官能イソシアネート化合物をもたらすことができる。一方、一般式1中のmが2以上の整数を表す化合物は、ブロック剤が解離することにより、イソシアネート基を1分子中に2つ以上有する多官能イソシアネート化合物をもたらすことができる。磁気記録媒体の走行耐久性の更なる向上の観点からは、多官能イソシアネート化合物を使用することが好ましいため、mは2以上の整数を表すことが好ましい。mは、例えば2〜8の範囲の整数であることができ、2〜6の範囲の整数であることが好ましく、2〜4の範囲の整数であることがより好ましく、2または3であることが更に好ましい。
【0038】
一般式1中、Zはm価の有機基(以下、単に「有機基」とも記載する。)を表す。Zで表される有機基は、例えば、−C(=O)−O−、−O−、−C(=O)−NR−(Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す)、アリーレン基(例えばフェニレン基)および炭素数1〜30の置換または無置換のアルキレン基(シクロアルキレン基も包含される。)からなる群から選択される1つまたは2つ以上の二価の基の組み合わせから構成される有機基を表すことができる。Zは、上記群から選択される2つ以上の組み合わせから構成される構造に、環構造を含むこともできる。一態様では、Zで表される有機基は、「−NH−C(=O)―O―」で表される二価の基を1つ以上含むことができ、2つ以上(例えば2〜4つ)含むことが好ましく、3つ以上含むことがより好ましい。また、一態様では、Zで表される有機基は、アリーレン基を1つ以上含むことができ、2つ以上(例えば2〜4つ)含むことが好ましく、3つ以上含むことがより好ましい。上記アリーレン基は、5〜20員環のアリーレン基であることが好ましく、5〜12員環のアリーレン基であることがより好ましく、フェニレン基であることが更に好ましい。また、上記アリーレン基は置換または無置換アリーレン基であることができる。置換アリーレン基としてはアルキル置換アリーレン基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基が置換したアルキル置換アリーレン基がより好ましい。また、一態様では、Zで表される有機基は、シクロアルキレン基を1つ以上含むことができ、2つ以上(例えば2〜4つ)含むことが好ましく、3つ以上含むことがより好ましい。上記シクロアルキレン基は、5〜20員環のシクロアルキレン基であることが好ましく、5〜12員環のシクロアルキレン基であることがより好ましく、シクロヘキシレン基であることが更に好ましい。また、上記シクロアルキレン基は置換または無置換シクロアルキレン基であることができる。置換シクロアルキレン基としてはアルキル置換シクロアルキレン基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基が置換したアルキル置換シクロアルキレン基がより好ましい。
また、ブロック剤が解離して生じたイソシアネート基の硬化反応の反応性の観点からは、Zで表される有機基は、この有機基に含まれるアリーレン基またはシクロアルキレン基が、隣接する窒素原子と直接結合するか、もしくは隣接する窒素原子とアルキレン基(シクロアルキレン基を除く)を介して結合することが好ましく、アリーレン基が隣接する窒素原子と直接結合することがより好ましい。
【0039】
Zで表される有機基の具体例としては、以下の有機基を例示することができる。以下の有機基の構造中、*は隣接する窒素原子との結合位置を表す。隣接する窒素原子とは、一般式1中の部分構造「X−C(=O)NH−」に含まれる窒素原子である。以下において、nは、1以上の整数を表し、例えば1〜6の範囲の整数を表す。
【0043】
なお一般式1中、mは2以上の整数を表すため、Zで表される有機基は、隣接する窒素原子との結合位置を2つ以上含む。例えば上記に例示した有機基は、隣接する窒素原子との結合位置を表す*を2つ以上含む。
Zが2価の有機基を表す一般式1で表される化合物は、一般式1中のZにおいて隣接する窒素原子との結合位置の1つがイソシアネート基の加水分解により生じた付加体との結合位置を表す副生物との混合物として得られる場合もある。上記付加体が生成する反応のスキームの概略を以下に示す。以下において、縦波線は、以下に示されている構造が化合物の一部分であることを示すために用いられている。また、以下においてRは置換基を表し、R−NCOで表される化合物は、例えば、一般式1で表される化合物の合成に使用されるイソシアネート化合物またはそのイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の一部がブロック剤により保護されて生じた反応生成物である。このような副生物は、Zが3価以上の有機基を表す一般式1で表される化合物についても生成され得る。
また、Zで表される有機基の具体例としては、上記に示したZの具体例の構造中、*を3つ以上含むものについては、少なくとも2つの*が隣接する窒素原子との結合位置を表し、残りの*がイソシアネート基の加水分解により生じた付加体との結合位置を表すものも挙げることができる。Zが3価以上の有機基を表す一般式1で表される化合物は、このように生じた、隣接する窒素原子との結合位置の数が異なる(即ち価数mが異なる)化合物の混合物として得られる場合もある。
【0045】
<分子量>
一般式1で表される化合物は、磁気記録媒体の走行耐久性の更なる向上の観点からは、磁気記録媒体の結合剤として一般的に使用されている樹脂より低分子量の化合物であることが好ましい。低分子量の化合物ほど、架橋密度を高めることに寄与し得ると考えられるためである。一般式1で表される化合物は、磁気記録媒体用硬化剤として、単一構造の化合物に単離して使用してもよく、同じ合成原料に由来する異なる構造の二種以上の化合物の混合物として使用してもよい。本発明および本明細書では、一般式1で表される化合物の分子量は、磁気記録媒体用硬化剤として使用される形態の分子量として、重量平均分子量で記載するものとする。本発明および本明細書において、「重量平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC;Gel Permeation Chromatography)により測定された値を標準ポリスチレン換算して求められる重量平均分子量である。一般式1で表される化合物の重量平均分子量は、500〜10,000の範囲であることが好ましく、500〜7,000の範囲であることがより好ましく、500〜5,000の範囲であることが更に好ましく、500〜3,000の範囲であることが一層好ましく、500〜2,000の範囲であることがより一層好ましい。GPCの測定条件としては、以下の条件を採用することができる。後述の実施例に記載の重量平均分子量は、以下の測定条件により測定された値である。
GPC装置:HLC−8220(東ソー社製)
ガードカラム:TSKguardcolumn Super HZM−H
カラム:TSKgel Super HZ 2000、TSKgel Super HZ 4000、TSKgel Super HZ−M(東ソー社製、4.6mm(内径)×15.0cm、3種カラムを直列連結)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、安定剤(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)含有
溶離液流速:0.35mL/分
カラム温度:40℃
インレット温度:40℃
屈折率(Refractive Index:RI)測定温度:40℃
サンプル濃度:0.3質量%
サンプル注入量:10μL
【0046】
<合成方法>
一般式1で表される化合物は、イソシアネート化合物をブロック剤と反応させることとにより、イソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基を保護することによって得ることができる。イソシアネート基がブロック剤によって保護された構造が、一般式1中の部分構造「X−C(=O)NH−」である。合成原料として使用されるイソシアネート化合物は、市販品として入手可能であり、公知の方法で合成することもできる。この点は、ブロック剤についても同様である。合成原料として使用されるイソシアネート化合物により一般式1中のZで表される有機基がもたらされ、ブロック剤により一般式1中のXがもたらされる。イソシアネート化合物とブロック剤との反応については、公知技術を適用することができる。例えば、イソシアネート化合物とブロック剤との反応は、イソシアネート化合物とブロック剤を反応溶媒に添加して反応溶液を調製し、この反応溶液を加熱下で撹拌することにより行うことができる。反応は、例えば窒素雰囲気下等の不活性雰囲気下で行うことが好ましい。反応溶媒の種類、加熱温度、反応時間等の反応条件は特に限定されるものではなく、使用するイソシアネート化合物およびブロック剤の種類に応じて設定すればよい。反応生成物の構造は、公知の方法で同定することができる。例えば、合成原料の使用量および反応生成物について求められた重量平均分子量から、反応生成物の構造を同定することができる。また、反応溶液を赤外分光法(IR;Infrared Spectroscopy)により分析してイソシアネート基のピークが消失したことをもって、合成原料として使用したイソシアネート化合物のすべてのイソシアネート基がブロック剤により保護された化合物が得られたことを確認することができる。
【0047】
以上説明した磁気記録媒体用硬化剤は、磁気記録媒体用組成物の成分として使用することができる。かかる磁気記録媒体用組成物は、好ましくは熱硬化性組成物であることができ、加熱処理により硬化反応を進行させて硬化層を形成するために使用されることが好ましい。以下では、磁気記録媒体の磁性層を形成するために使用され得る磁気記録媒体用組成物について説明する。ただし上記磁気記録媒体用硬化剤は、非磁性支持体と磁性層との間に設けられる非磁性層を形成するために、非磁性粉末および結合剤を含む磁気記録媒体用組成物の成分として使用することもできる。また、上記磁気記録媒体用硬化剤は、非磁性支持体の磁性層を有する表面とは反対側の表面に設けられるバックコート層を形成するために、非磁性粉末および結合剤を含む磁気記録媒体用組成物の成分として使用することもできる。
【0048】
[磁気記録媒体用組成物]
本発明の一態様にかかる磁気記録媒体用組成物は、強磁性粉末と、結合剤と、上記磁気記録媒体用硬化剤と、を含む磁気記録媒体用組成物である。かかる磁気記録媒体用組成物(以下、単に「組成物」とも記載する。)は、強磁性粉末を含む組成物であるため、磁気記録媒体の磁性層を形成するために使用することができる。
【0049】
上記組成物は、上記磁気記録媒体用硬化剤を、この組成物を用いて形成される磁性層の強度向上の観点から、強磁性粉末100.0質量部に対して、1.0質量部以上含むことが好ましく、2.0質量部以上含むことがより好ましい。また、磁性層において強磁性粉末の含有率(充填率と呼ばれる。)が高いことは記録密度向上の観点から好ましい。したがって、記録密度向上の観点からは、磁性層において強磁性粉末以外の成分の含有率が低いことは好ましい。この観点からは、上記組成物は、上記磁気記録媒体用硬化剤を、強磁性粉末100質量部に対して、8.0質量部以下含むことが好ましく、5.0質量部以下含むことがより好ましい。なお、上記組成物は、いわゆる一剤型の組成物であってもよく、二剤型以上の多剤型の組成物であってもよい。例えば、強磁性粉末および結合剤を含む組成物(第1剤)と、上記磁気記録媒体用硬化剤またはこの硬化剤を含む組成物(第2剤)とが、磁性層形成に用いられる前に混合される態様等も、上記組成物に包含される。上記および下記の各種成分に関する含有率は、多剤型の組成物については、組成物を構成する成分がすべて混合された状態での含有率をいうものとする。
【0050】
以下に、上記磁気記録媒体用組成物に含まれる(または含まれ得る)各種成分について説明する。
【0051】
<強磁性粉末>
強磁性粉末は、好ましくは、平均粒子サイズが50nm以下である。平均粒子サイズが50nm以下の強磁性粉末は、近年求められている高密度記録に対応し得る強磁性粉末であるためである。ただし、強磁性粉末の平均粒子サイズが小さくなるほど、強磁性粉末を構成する粒子の比表面積が大きくなるため吸着水の量が増え、強磁性粉末の含水量は高まる傾向がある。先に記載したように、強磁性粉末の吸着水はイソシアネート化合物の失活の原因となり得るため、強磁性粉末の平均粒子サイズが小さくなるほど、イソシアネート化合物は失活し易くなる傾向があると考えられる。これに対し、上記磁気記録媒体用硬化剤は、イソシアネート基がブロック剤により保護されているため、平均粒子サイズが小さい強磁性粉末とともに上記組成物に含まれても、イソシアネート基と強磁性粉末の吸着水との反応を抑制することができる。なお強磁性粉末の平均粒子サイズは、磁化の安定性の観点からは、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。
【0052】
本発明および本明細書において、特記しない限り、強磁性粉末等の各種粉末の平均粒子サイズは、透過型電子顕微鏡を用いて、以下の方法により測定される値とする。
粉末を、透過型電子顕微鏡を用いて撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして粉末を構成する粒子の写真を得る。得られた粒子の写真から目的の粒子を選びデジタイザーで粒子の輪郭をトレースし粒子(一次粒子)のサイズを測定する。一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
以上の測定を、無作為に抽出した500個の粒子について行う。こうして得られた500個の粒子の粒子サイズの算術平均を、粉末の平均粒子サイズとする。上記透過型電子顕微鏡としては、例えば日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いることができる。また、粒子サイズの測定は、公知の画像解析ソフト、例えばカールツァイス製画像解析ソフトKS−400を用いて行うことができる。後述の実施例に示す平均粒子サイズは、透過型電子顕微鏡として日立製透過型電子顕微鏡H−9000型、画像解析ソフトとしてカールツァイス製画像解析ソフトKS−400を用いて測定された値である。
【0053】
粒子サイズ測定のために磁気記録媒体から試料粉末を採取する方法としては、例えば特開2011−048878号公報の段落0015に記載の方法を採用することができる。
【0054】
本発明および本明細書において、特記しない限り、粉末を構成する粒子のサイズ(粒子サイズ)は、上記の粒子写真において観察される粒子の形状が、
(1)針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粒子を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、
(2)板状または柱状(ただし、厚みまたは高さが板面または底面の最大長径より小さい)の場合は、その板面または底面の最大長径で表され、
(3)球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粒子を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
【0055】
また、粉末の平均針状比は、上記測定において粒子の短軸の長さ、即ち短軸長を測定し、各粒子の(長軸長/短軸長)の値を求め、上記500個の粒子について得た値の算術平均を指す。ここで、特記しない限り、短軸長とは、上記粒子サイズの定義で(1)の場合は、粒子を構成する短軸の長さを、同じく(2)の場合は、厚みまたは高さを各々指し、(3)の場合は、長軸と短軸の区別がないから、(長軸長/短軸長)は、便宜上1とみなす。
そして、特記しない限り、粒子の形状が特定の場合、例えば、上記粒子サイズの定義(1)の場合、平均粒子サイズは平均長軸長であり、同定義(2)の場合、平均粒子サイズは平均板径である。同定義(3)の場合、平均粒子サイズは、平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)である。
【0056】
強磁性粉末の好ましい具体例としては、強磁性六方晶フェライト粉末を挙げることができる。強磁性六方晶フェライト粉末の詳細については、例えば特開2011−216149号公報の段落0134〜0136を参照できる。
【0057】
強磁性粉末の好ましい具体例としては、強磁性金属粉末を挙げることもできる。強磁性金属粉末の詳細については、例えば特開2011−216149号公報の段落0137〜0141を参照できる。
【0058】
磁性層における強磁性粉末の含有率(充填率)は、好ましくは50〜90質量%の範囲であり、より好ましくは60〜90質量%の範囲である。上記充填率が高いことは、記録密度向上の観点から好ましい。
【0059】
<結合剤>
結合剤は、一種以上の樹脂である。結合剤としては、磁気記録媒体の結合剤として通常使用される各種樹脂を用いることができる。例えば、結合剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等を共重合したアクリル樹脂、ニトロセルロース等のセルロース樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルキラール樹脂等から選ばれる樹脂を単独で用いるか、または複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいものはポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、および塩化ビニル樹脂である。これらの樹脂は、ホモポリマーでもよく、コポリマー(共重合体)でもよい。これらの樹脂は、後述する非磁性層および/またはバックコート層においても結合剤として使用することができる。
【0060】
上記組成物を用いて磁性層を形成する場合、一般式1で表される化合物からブロック剤が解離すると、イソシアネート基が発生する。そのため、このイソシアネート基と硬化反応し得る官能基(架橋構造を形成可能な官能基)を有する成分が上記組成物に含まれることが好ましい。かかる成分が含まれることにより、架橋構造の形成によって磁性層の強度を高めることができるためである。イソシアネート基と硬化反応し得る官能基としては、活性水素含有基を挙げることができる。活性水素含有基としては、ヒドロキシ基、アミノ基(好ましくは一級アミノ基または二級アミノ基)、メルカプト基、カルボキシ基等を挙げることができ、ヒドロキシ基、アミノ基およびメルカプト基が好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。一態様では、結合剤として使用される樹脂の一種以上として、活性水素含有基を含む樹脂を使用することが好ましい。活性水素含有基を含む樹脂において、活性水素含有基濃度は、0.10meq/g〜2.00meq/gの範囲であることが好ましい。なおeqは当量( equivalent)であり、SI単位に換算不可の単位である。また、活性水素含有基濃度は単位「mgKOH/g」により表示することもできる。一態様では、活性水素含有基を含む樹脂において、活性水素含有基濃度は、1〜20mgKOH/gの範囲であることが好ましい。
【0061】
結合剤については、例えば、特開2010−24113号公報の段落0028〜0031も参照できる。結合剤として使用される樹脂の平均分子量は、重量平均分子量として、例えば10,000以上200,000以下であることができ、20,000以上200,000以下であることが好ましい。上記組成物において、結合剤の含有率は、強磁性粉末100.0質量部に対し、例えば5.0〜50.0質量部であることができ、10.0〜30.0質量部の範囲であることが好ましい。なお本発明および本明細書において、特記しない限り、ある成分は一種のみ用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。二種以上が用いられる場合、本発明および本明細書において、ある成分に関する含有率とはそれら二種以上の合計含有率をいうものとする。
【0062】
<その他の成分>
磁性層は、必要に応じて添加剤を含むことができる。したがって、上記組成物は、一種以上の添加剤を含むこともできる。添加剤としては、研磨剤、潤滑剤、突起形成剤、分散剤、分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、カーボンブラック等を挙げることができる。添加剤は、所望の性質に応じて市販品を適宜選択して、または公知の方法で製造して、任意の量で使用することができる。例えば、研磨剤については、特開2012−133837号公報の段落0069を参照できる。潤滑剤については、特開2016−126817号公報の段落0030〜0033、0035および0036を参照できる。非磁性層を形成するために使用される組成物(非磁性層形成用組成物)に潤滑剤が含まれていてもよい。非磁性層形成用組成物に含まれ得る潤滑剤については、特開2016−126817号公報の段落0030〜0031、0034、0035および0036を参照できる。また、突起形成剤については、特開2016−126817号公報の段落0055を参照できる。分散剤については、特開2012−133837号公報の段落0061および0071を参照できる。分散剤は、非磁性層形成用組成物に含まれていてもよい。非磁性層形成用組成物に含まれ得る分散剤については、特開2012−133837号公報の段落0061を参照できる。カーボンブラックについては、特開2012−133837号公報の段落0072を参照できる。
また、添加剤の一例としては、特開2015−28830号公報に記載されているポリアルキレンイミン鎖およびポリエステル鎖を含む化合物を挙げることができる。この化合物については、同公報の段落0025〜0071および実施例の記載を参照できる。また、一態様では、添加剤の一種以上が活性水素含有基を含むことができる。
また、上記組成物は、溶媒を含むことができる。溶媒としては、一種または二種以上の溶媒を任意の割合で混合して使用することができる。溶媒については、例えば特開2015−28830号公報の段落0093〜0094を参照できる。上記組成物の溶媒含有率は、強磁性粉末100.0質量部に対して、例えば100.0〜1500.0質量部であることができ、200.0〜1000.0質量部であることが好ましい。
【0063】
上記組成物は、各種成分を同時に、または任意の順序で混合して調製することができる。
【0064】
[磁気記録媒体および磁気記録媒体の製造方法]
本発明の更なる態様は、
非磁性支持体上に磁性層を有する磁気記録媒体であって、上記磁性層が上記磁気記録媒体用組成物を硬化した硬化層である磁気記録媒体;ならびに、
非磁性支持体上に磁性層を形成することを含み、
上記磁性層を形成することは、
非磁性支持体上に上記磁気記録媒体用組成物を塗布して塗布層を形成すること、および、
上記塗布層に加熱処理を施すこと、
を含む、非磁性支持体上に磁性層を有する磁気記録媒体の製造方法、
に関する。
【0065】
以下、上記磁気記録媒体および上記磁気記録媒体の製造方法について、更に詳細に説明する。
【0066】
<磁性層>
磁性層は、上記磁気記録媒体用組成物を非磁性支持体の表面に直接、または非磁性支持体上に設けられた非磁性層等の他の層の表面に塗布し乾燥させて塗布層を形成し、この塗布層に加熱処理等の処理を施すことにより、形成することができる。この塗布層に加熱処理を施すことにより、一般式1で表される化合物においてブロック剤を解離させてイソシアネート基を発生させることができ、更にこのイソシアネート基の硬化反応(架橋構造の形成)を進行させることができる。加熱処理について、詳細は後述する。また、磁性層に含まれる各種成分および磁性層の形成に使用される組成物については、先に記載した通りである。
【0067】
<非磁性層>
次に非磁性層について説明する。
上記磁気記録媒体は、非磁性支持体上に直接磁性層を有することもでき、非磁性支持体と磁性層との間に非磁性粉末と結合剤を含む非磁性層を有することもできる。非磁性層に含まれる非磁性粉末は、無機粉末でも有機粉末でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機粉末としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の粉末が挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2011−216149号公報の段落0146〜0150を参照できる。非磁性層に使用可能なカーボンブラックについては、特開2010−24113号公報の段落0040〜0041も参照できる。非磁性層における非磁性粉末の含有率(充填率)は、好ましくは50〜90質量%の範囲であり、より好ましくは60〜90質量%の範囲である。
【0068】
非磁性層の結合剤、添加剤等のその他詳細は、非磁性層に関する公知技術が適用できる。また、例えば、結合剤の種類および含有率、添加剤の種類および含有率等に関しては、磁性層に関する公知技術も適用できる。一態様では、非磁性層を、上記磁気記録媒体用硬化剤を用いて形成することができる。この場合に非磁性層を形成するために使用される組成物については、上記磁気記録媒体用組成物に関する記載を、上記記載中に強磁性粉末と記載されている部分を非磁性層と読み替えて適用することができる。この点は、後述するバックコート層についても同様である。また他の一態様では、公知の硬化剤を用いて非磁性層および/またはバックコート層を形成することもできる。
【0069】
本発明および本明細書において、非磁性層には、非磁性粉末とともに、例えば不純物として、または意図的に、少量の強磁性粉末を含む実質的に非磁性な層も包含されるものとする。ここで実質的に非磁性な層とは、この層の残留磁束密度が10mT以下であるか、保磁力が7.96kA/m(100Oe)以下であるか、または、残留磁束密度が10mT以下であり、かつ保磁力が7.96kA/m(100Oe)以下である層をいうものとする。非磁性層は、残留磁束密度および保磁力を持たないことが好ましい。
【0070】
<非磁性支持体>
次に、非磁性支持体(以下、単に「支持体」とも記載する。)について説明する。非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリアミドが好ましい。これらの支持体には、あらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、加熱処理等を行ってもよい。
【0071】
<バックコート層>
上記磁気記録媒体は、非磁性支持体の磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末および結合剤を含むバックコート層を有することもできる。バックコート層には、カーボンブラックおよび無機粉末のいずれか一方または両方が含有されていることが好ましい。バックコート層については、バックコート層に関する公知技術を適用することができる。例えば、特開2006−331625号公報の段落0018〜0020および米国特許第7,029,774号明細書の第4欄65行目〜第5欄38行目の記載を、バックコート層について参照できる。また、バックコート層に含まれる結合剤および任意に含まれ得る各種添加剤については、磁性層および/または非磁性層の処方に関する公知技術を適用することもできる。
【0072】
<各種厚み>
非磁性支持体の厚みは、好ましくは3.0〜20.0μm、より好ましくは3.0〜10.0μm、更に好ましくは3.0〜6.0μmである。
【0073】
磁性層の厚みは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量、ヘッドギャップ長、記録信号の帯域等に応じて最適化することができる。磁性層の厚みは、高密度記録化の観点から、好ましくは10nm〜150nmであり、より好ましくは20nm〜120nmであり、更に好ましくは30nm〜100nmである。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する二層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。二層以上に分離する場合の磁性層の厚みとは、これらの層の合計厚みとする。
【0074】
非磁性層の厚みは、例えば0.1〜1.5μmであり、0.1〜1.0μmであることが好ましい。
【0075】
バックコート層の厚みは、0.9μm以下であることが好ましく、0.1〜0.7μmの範囲であることが更に好ましい。
【0076】
磁気記録媒体の各層および非磁性支持体の厚みは、公知の膜厚測定法により求めることができる。一例として、例えば、磁気記録媒体の厚み方向の断面を、イオンビーム、ミクロトーム等の公知の手法により露出させた後、露出した断面において走査型電子顕微鏡によって断面観察を行う。断面観察において厚み方向の1箇所において求められた厚み、または無作為に抽出した2箇所以上の複数箇所、例えば2箇所、において求められた厚みの算術平均として、各種厚みを求めることができる。または、各層の厚みは、製造条件から算出される設計厚みとして求めてもよい。
【0077】
<製造工程>
磁性層、ならびに任意に設けられる非磁性層およびバックコート層を形成するための組成物を調製する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程を含む。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる全ての原料は、どの工程の最初または途中で添加してもよい。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもよい。各層形成用組成物を調製するためには、公知技術を用いることができる。混練工程では、オープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダ等の強い混練力をもつニーダを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については、特開平1−106338号公報および特開平1−79274号公報に記載されている。また、各層形成用組成物を分散させるためには、分散メディアとして、ガラスビーズおよびその他の分散ビーズからなる群から選ばれる一種以上の分散ビーズを用いることができる。このような分散ビーズとしては、高比重の分散ビーズであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、およびスチールビーズが好適である。これら分散ビーズの粒径(ビーズ径)および充填率は最適化して用いることができる。分散機は公知のものを使用することができる。各層形成用組成物を、塗布工程に付す前に公知の方法によってろ過してもよい。ろ過は、例えばフィルタろ過によって行うことができる。ろ過に用いるフィルタとしては、例えば孔径0.01〜3μmのフィルタ(例えばガラス繊維製フィルタ、ポリプロピレン製フィルタ等)を用いることができる。
【0078】
磁性層は、磁性層形成用組成物(上記磁気記録媒体用組成物)を、非磁性支持体表面上に直接塗布するか、または非磁性層形成用組成物と逐次もしくは同時に重層塗布する工程を経て形成することができる。バックコート層は、非磁性支持体の磁性層が設けられた(または追って設けられる)表面とは反対側の表面上にバックコート層形成用組成物を塗布する工程を経て形成することができる。
【0079】
塗布工程後には、乾燥処理、磁性層の配向処理、表面平滑化処理(カレンダ処理)等の各種処理を行うことができる。塗布工程および各種処理については、公知技術を適用することができ、例えば特開2010−24113号公報の段落0051〜0057を参照できる。
【0080】
磁性層形成用組成物の塗布工程後の任意の段階で、磁性層形成用組成物を塗布して形成された塗布層の加熱処理が行われる。この加熱処理は、一例として、カレンダ処理の前および/または後に実施することができる。加熱処理は、例えば、上記磁性層形成用組成物の塗布層が形成された支持体を加熱雰囲気下に置くことにより実施することができる。加熱雰囲気は、雰囲気温度50〜90℃の雰囲気であることができ、雰囲気温度50〜80℃の雰囲気であることがより好ましい。この雰囲気は、例えば大気雰囲気であることができる。加熱雰囲気下での加熱処理は、例えば12〜72時間、好ましくは24〜48時間実施することができる。この加熱処理により、一般式1で表される化合物からブロック剤を解離させてイソシアネート基を発生させることができ、更に、イソシアネート基の硬化反応を進行させることができる。一方、特開平4−3313号公報(特許文献1)の実施例には、ブロック剤としてオキシム化合物を用いてイソシアネート基を保護したブロックイソシアネート化合物が開示されている。このブロックイソシアネート化合物は、ブロック剤の解離のために100℃程度またはそれ以上の温度での加熱処理を要し、更には触媒を要する。具体的には、特開平4−3313号公報の実施例では、触媒としてジブチル錫ジラウレートを使用し、100℃の加熱処理を行っている。これに対し、先に説明した本発明の一態様にかかる磁気記録媒体用硬化剤は、100℃を下回る温度での加熱処理、例えば雰囲気温度50〜90℃の雰囲気での加熱処理により、ブロック剤を解離させてイソシアネート基を発生させることができる。また、ブロック剤を解離させる反応を触媒する触媒を使用することなく、かかる加熱処理によってブロック剤を解離させることも可能である。したがって、先に記載した本発明の一態様にかかる磁気記録媒体用組成物は、一態様では、ブロック剤を解離させる反応を触媒する触媒を含まない組成物であることができる。
【0081】
以上の工程により、本発明の一態様にかかる磁気記録媒体用組成物を硬化した硬化層である磁性層を非磁性支持体上に有する磁気記録媒体を得ることができる。上記硬化層は、熱硬化層(加熱処理により硬化反応を進行させて形成された硬化層)であることが好ましい。上記磁気記録媒体は、一態様ではテープ状の磁気記録媒体(磁気テープ)であることができ、他の一態様ではディスク状の磁気記録媒体(磁気ディスク)であることができる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。以下に記載の「部」は質量部であり、特記しない限り各種工程は大気中室温下(雰囲気温度20〜25℃)で実施した。
【0083】
[ブロックイソシアネート化合物の合成例]
窒素雰囲気下、200mL三口フラスコに、ポリイソシアネート化合物、ブロック剤および溶媒を導入した。このフラスコの内温(液温)を40℃に加熱し、2時間撹拌した。反応生成物BL−2の合成例以外では、反応溶液を採取し赤外分光法(IR)により分析してイソシアネート基のピークが消失したことを確認した後、フラスコの内温を室温まで冷却し反応生成物(反応生成物濃度50質量%の溶液)を得た。得られた反応生成物の重量平均分子量を先に記載の方法により求めたところ、表1に記載の値であった。
また、反応生成物BL−2の合成例以外については、合成原料の使用量および反応生成物の重量平均分子量から、各合成例により、以下の構造を有するブロックイソシアネート化合物が生成されたことが確認できる。反応生成物BL−2の合成例では、ポリイソシアネート化合物の使用量を、反応生成物BL−1を得るために使用した量より減量したため、反応生成物BL−2の構造は以下のように記載できる。
以下の構造中にnを含む反応生成物については、反応生成物に含まれる主成分の構造において、n=1であると考えられる。
【0084】
以下の表1において、「MEK」はメチルエチルケトンを示し、混合溶媒の混合比は質量基準である。また、表1中のポリイソシアネート化合物は、いずれも市販品であり、コロネート3041は東ソー社製であり、その他のポリイソシアネート化合物は三井化学社製である。各市販品は、下記ポリイソシアネート化合物である。
コロネート3041:2,4−トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体
タケネートD−110N:キシリレンジイソシアネート2,4−トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体
タケネートD−120N:水素化キシリレンジイソシアネート2,4−トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体
タケネートD−140N:イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体
タケネートD−160N:ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体
タケネートD−165N:HDI(Hexamethylene diisocyanate)ビウレット
タケネートD−170N:HDIイソシアヌレート
タケネートD−178N:HDIアファロネート
【0085】
【表1】
【0086】
【化9】
【0087】
【化10】
【0088】
【化11】
【0089】
【化12】
【0090】
【化13】
【0091】
[実施例1]
【0092】
(1)磁性層形成用組成物(磁気記録媒体用組成物)の調製
以下の成分をオープンニーダで混練した後、サンドミルを用いて分散させて分散液を調製した。
【0093】
強磁性六方晶フェライト粉末:100.0部
酸素を除く組成(モル比):Ba/Fe/Co/Zn=1/9/0.2/1
保磁力Hc:160kA/m(2000Oe)
平均粒子サイズ(平均板径):20nm
平均板状比:2.7
BET(Brunauer−Emmett− Teller)比表面積:60m
2/g
飽和磁化σs:46A・m
2/kg(46emu/g)
特開2015−28830号公報に記載のポリエチレンイミン誘導体J−1:10.0部
ポリウレタン樹脂(東洋紡績株式会社製バイロン(登録商標)UR4800、SO
3Na濃度:70eq/ton、重量平均分子量70,000、ヒドロキシ基濃度4〜6mgKOH/g):4.0部
塩化ビニル樹脂(カネカ社製MR104、重量平均分子量5,5000、ヒドロキシ基濃度0.33meq/g):10.0部
α−Al
2O
3(平均粒子サイズ0.1μm):8.0部
カーボンブラック(平均粒子サイズ:0.08μm):0.5部
シクロヘキサノン: 600.0部
【0094】
上記で得られた分散液に下記の成分を加え撹拌した後、超音波処理し、1μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過し、磁性層形成用組成物(磁気記録媒体用組成物)を得た。
【0095】
ブチルステアレート:1.5部
ステアリン酸:0.5部
ステアリン酸アミド:0.2部
メチルエチルケトン:50.0部
シクロヘキサノン:50.0部
トルエン:3.0部
ブロックイソシアネート化合物:2.5部(上記合成例で得られた反応生成物BL−1(反応生成物濃度50質量%の溶液)として5.0部使用)
【0096】
(2)非磁性層形成用組成物の調製
以下の成分をオープンニーダで混練した後、サンドミルを用いて分散させて分散液を得た。
【0097】
カーボンブラック:100.0部
DBP(Dibutyl Phthalate)吸油量:100ml/100g
pH:8
BET比表面積:250m
2/g
揮発分:1.5質量%
ポリウレタン樹脂(東洋紡績株式会社製バイロンUR4800、SO
3Na濃度:70eq/ton、重量平均分子量70,000):20.0部
塩化ビニル樹脂(OSO
3K濃度:70eq/ton):30.0部
トリオクチルアミン:4.0部
シクロヘキサノン:140.0部
メチルエチルケトン:170.0部
ブチルステアレート:2.0部
ステアリン酸:2.0部
ステアリン酸アミド:0.1部
【0098】
上記で得られた分散液に下記の成分を加え撹拌した後、1μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過し、非磁性層形成用組成物を得た。
【0099】
ブチルステアレート:1.5部
ステアリン酸:1.0部
メチルエチルケトン:50.0部
シクロヘキサノン:50.0部
トルエン:3.0部
ポリイソシアネート化合物(東ソー社製コロネート3041):5.0部
【0100】
(3)バックコート層形成用組成物の調製
以下の成分をロールミルで予備混練した後にサンドミルで分散し、ポリエステル樹脂(東洋紡績社製バイロン500)4.0部、ポリイソシアネート化合物(東ソー社製コロネート3041)14.0部、およびα−Al
2O
3(住友化学社製)5.0部を添加し、攪拌およびろ過してバックコート層形成用組成物を得た。
【0101】
カーボンブラック(平均粒子サイズ40nm):85.0部
カーボンブラック(平均粒子サイズ100nm):3.0部
ニトロセルロース:28.0部
ポリウレタン樹脂:58.0部
銅フタロシアニン系分散剤:2.5部
ポリウレタン樹脂(東ソー社製ニッポラン2301):0.5部
メチルイソブチルケトン:0.3部
メチルエチルケトン:860.0部
トルエン:240.0部
【0102】
(4)磁気テープの作製
厚み5.0μmのポリエチレンナフタレート支持体の両表面にコロナ放電処理を施した。
上記ポリエチレンナフタレート支持体の一方の表面上に、上記の非磁性層形成用組成物を非磁性層の乾燥後の厚みが1.0μmになるように塗布し、更にその直後にその上に磁性層の乾燥後の厚みが100nmになるように磁性層形成用組成物を同時重層塗布した。両層が湿潤状態にあるうちに0.5T(5000G)の磁力をもつコバルト磁石と0.4T(4000G)の磁力をもつソレノイドにより垂直配向処理を施した後に乾燥処理を施した。その後、上記ポリエチレンナフタレート支持体のもう一方の表面上に上記のバックコート層形成用組成物を、バックコート層の乾燥後の厚みが0.5μmとなるように塗布した後、金属ロールから構成される7段のカレンダでカレンダロールの表面温度100℃にて速度80m/minでカレンダ処理を行った。その後、雰囲気温度70℃の雰囲気において24時間の加熱処理を行った後、1/2インチ(0.0127メートル)幅にスリットして磁気テープを作製した。
【0103】
[実施例2〜13、比較例2]
反応生成物BL−1に代えて表2に示す反応生成物を5.0質量部使用した点以外、実施例1と同様に磁気テープを作製した。
【0104】
[比較例1]
反応生成物BL−1に代えてポリイソシアネート化合物R−1(東ソー社製コロネート3041)を5.0質量部使用した点以外、実施例1と同様に磁気テープを作製した。ポリイソシアネート化合物R−1(東ソー社製コロネート3041)の構造を以下に示す。
【0105】
【化14】
【0106】
[走行耐久性の評価方法]
Al
2O
3/TiC製の7mm×7mmの断面を有する角柱バーのエッジに磁性層表面を接触させるように150度の角度で磁気テープを渡し、荷重100g、秒速6mの条件で磁気テープの長さ100mの部分を1パス摺動させた。摺動後の角柱バーのエッジを光学顕微鏡にて観察し、付着物(磁性層表面が摺動により削れた削れ物)の付着状態を評価した。評価は官能評価とし、10段階評価した。10は付着物が最も少なく、1は付着物が最も多い。評価結果が5以上であれば、付着物が少なく走行耐久性が良好な磁気テープと判定することができる。
【0107】
磁性層の形成時にイソシアネート基の硬化反応が良好に進行すると磁性層表面の平滑性が高まる傾向がある。そして磁性層表面の平滑性が高いことは、電磁変換特性向上につながる。そこで実施例および比較例の各磁気テープについて、以下の方法により電磁変換特性の評価を行った。
【0108】
[電磁変換特性:SNR(Signal−to−Noise Ratio)の評価方法]
LTO(Linear−Tape−Open)−Gen4(Generation 4)ドライブを用いて、記録トラック幅11.5μm、再生トラック幅5.3μm、線記録密度172kfciと86kfciで信号の記録および再生を行った。再生信号をスペクトラムアナライザーで周波数分析し、線記録密度172kfciで記録された信号の再生時のキャリア信号の出力と、線記録密度86kfciで記録された信号の再生時のスペクトル全帯域の積分ノイズとの比をSNRとした。レファレンステープとして富士フイルム社製LTO−Gen4テープを用いた。比較例1のSNRを0dBとし、各磁気テープのSNRを相対値として求めた。なお単位kfciとは、線記録密度の単位(SI単位系に換算不可)である。
【0109】
【表2】
【0110】
表2に示すようにブロック剤によって保護されていないポリイソシアネート化合物を用いて磁性層を形成した比較例1が、実施例と比べて走行耐久性および電磁変換特性が劣っていた理由は、ポリイソシアネート化合物の失活が生じたことが原因と本発明者らは考えている。
また、表2に示す結果から、実施例1〜13は、ブロック剤としてオキシム化合物を使用したブロックイソシアネートを用いて磁性層を形成した比較例2と比べて、走行耐久性および電磁変換特性の評価結果が良好であった。このことは、実施例1〜13で磁性層の形成に用いたブロックイソシアネート化合物が、磁性層形成時の加熱処理(雰囲気温度70℃)によりブロック剤の解離および解離により発生したイソシアネート基の硬化反応(架橋構造の形成)が良好に進行したことを示していると考えられる。