【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
(参考例)
下記の試験例において、評価サンプル中の酢酸の含有量、カルダモニンの含有量の測定は、以下の通り行った。
(1)酢酸の含有量の定量方法
サンプルは、酢酸の濃度が100mg%付近になるように超純水で希釈し、以下の条件に従って、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、酢酸のピーク面積を分析した。また、超純水で希釈した100mg%の酢酸を、標準サンプルとして同様に分析し、外部標準法により各サンプルの酢酸の含有量を算出した。
・測定機器:高速液体クロマトグラフィー(島津製作所社製、機種LC−10ADVP)
・移動相(1)4mMp−トルエンスルホン酸水溶液、流速0.9mL/min
・移動相(2)4mMp−トルエンスルホン酸、80μMEDTAを含む16mMBis−Tris水溶液、流速0.9mL/min
・カラム:Shodex KC810P+KC−811×2(昭和電工社製)
・カラム温度:50℃
・検出:電気伝導度検出器CDD−10
VP(島津製作所社製)
【0032】
(2)カルダモニンの含有量の定量方法
サンプルは、メタノールで希釈しても良く、以下の条件に従って、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、カルダモニンのピーク面積を分析した。また、メタノールで希釈した100mg%のカルダモニンを、標準サンプルとして同様に分析し、外部標準法により各サンプルのカルダモニンの含有量を算出した。
・測定機器:高速液体クロマトグラフィー(島津製作所社製、機種LC−10ADVP)
・移動相:75%メタノール水溶液、0.5 ml/min
・カラム:Cadenza CD−C18 Prod#CD005 150mm×4.6mm(3μm)(Imtakt社製)
・カラム温度:30℃
・検出:フォトダイオードアレイ検出器 SPD−M30A(島津製作所社製、346nm)
【0033】
(試験例1)カルダモニン含有量の検討
(1)試験品の調製
カルダモニン粉末(Shaanxi Yuantai Biological Technology製、Specification:98%)をエチルアルコール中に1質量%になるよう分散した。この分散液を更にエチルアルコールにて希釈し、表1に記載のカルダモニン濃度の酸刺激抑制剤S1を調製した。玄米酢(酸度6.1%)8.5質量%に水91質量%、及び各酸刺激抑制剤S1を0.5質量%混合し、試験品1〜7を調製した。また、玄米酢(酸度6.1%)8.5質量%に水91.5質量%を混合した液(酸刺激抑制剤S1添加なし)をコントロールとした。
【0034】
(2)官能評価試験
(1)で調製した各試験品について、下記分析型官能評価専門パネラー6名により、「飲み込んだ時の喉刺激」、「飲み込んだ後の喉刺激」、「ムレ臭」、「酸味」の4項目を評価した。
【0035】
(分析型官能評価専門パネラー)
分析型官能評価専門パネラーは、味や香りに関する判定能力が、下記の識別試験(I)及び識別試験(II)により担保された専門パネラーである。
識別試験(I):味質識別試験
五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨味:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
識別試験(II):
濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
【0036】
(評価方法)
官能評価は、(i)サンプルの提示、(ii)官能評価項目のすり合わせ、(iii)試し評価・キャリブレーション、(iv)本評価の順に行った。
(i)サンプルの提示
官能評価におけるパネラーのバイアス(偏り)を排除し、評価の精度を高めるために、サンプル提供を次の通りに設定した。100mL用ペットボトルに充填密閉したサンプルを常温(25℃)にし、評価毎に上記容器から20mLプラスチックカップに計量スプーンで小さじ1杯(約5mL)程度移し、各パネラーに提示した。その際、サンプルの試験区番号や内容物の情報はパネラーに知らせず、各試験区のサンプルをランダムに提示した。
【0037】
(ii)官能評価項目のすり合わせ
評価を実施するにあたり、パネラー全体で討議し、各評価項目の特性に対してすり合わせを行って、各パネラーが共通認識を持つようにした。総合評価についても、官能評価の結果をもとに基準化できるように、パネラー全体で事前に協議した上で設定した。
【0038】
(iii)試し評価・キャリブレーション
いくつかの酢酸濃度の異なるサンプルを用いて、各評価項目について評価基準の訓練を行った。訓練に際しては、パネラー自身の評価結果を伝えることで、繰り返し評価における再現性を確認させた。
【0039】
(iv)本評価
上記の訓練により各パネラーの評価基準の妥当性を担保した後、試験品及びコントロールを用いて官能評価を行った。評価は具体的には次のようにして行った。サンプルを100mLペットボトルに充填密閉し、上記容器から20mLプラスチックカップに評価毎に計量スプーンで小さじ1杯(約5mL)程度移し、直後にカップに直接鼻を近づけて臭いをかいでムレ臭を評価し、また、計量スプーンで小さじ1杯(約5mL)分程度液を口に含み、飲み込んだ時の喉刺激、飲み込んだ後の喉刺激、及び酸味を評価した。鼻腔から臭いが消えたら次のサンプルの評価を行った。また、サンプルを口に含んだ後は、蒸留水を口に含み、口内における風味を十分に消した後、次のサンプルの評価を行った。
【0040】
(評価基準)
評価項目毎の評価点の算出は、6名の評価を加重平均した。5点評価の3.3点を合格点(効果あり)とし、3.5点以上を良好な効果があるものとし、4点以上をより良好な効果があるものとし、4.5以上を最も良好な効果があるものとした。また、各評価項目の評価点で1項目でも評価点が3点未満となったものは不合格とした。
【0041】
<飲み込んだ時の喉刺激:サンプルを飲み込んだ際に感じる喉の痛みや違和感、イガイガ感、チクチク感>
5:コントロールと比較して喉刺激を弱く感じる。
4:コントロールと比較して喉刺激をやや弱く感じる。
3:コントロールと比較して同程度の喉刺激を感じる。
2:コントロールと比較して喉刺激をやや強く感じる。
1:コントロールと比較して喉刺激を強く感じる。
【0042】
<飲み込んだ後の喉刺激:サンプルを完全に飲み込んだ後に感じる喉の痛みや違和感、イガイガ感、チクチク感>
5:コントロールと比較して喉刺激を弱く感じる。
4:コントロールと比較して喉刺激をやや弱く感じる。
3:コントロールと比較して同程度の喉刺激を感じる。
2:コントロールと比較して喉刺激をやや強く感じる。
1:コントロールと比較して喉刺激を強く感じる。
【0043】
<酸味:舌で感じる酸っぱい味>
5:コントロールと比較して酸味を弱く感じる。
4:コントロールと比較して酸味をやや弱く感じる。
3:コントロールに比較して同程度の酸味を感じる。
2:コントロールと比較して酸味をやや強く感じる。
1:コントロールと比較して酸味を強く感じる。
【0044】
<ムレ臭:チーズ臭、むれた足や脱いだ靴下の臭いのような臭い>
5:コントロールと比較して、ムレ臭を弱く感じる。
4:コントロールと比較して、ムレ臭をやや弱く感じる。
3:コントロールと比較して、同程度のムレ臭を感じる。
2:コントロールと比較して、ムレ臭をやや強く感じる。
1:コントロールと比較して、ムレ臭を強く感じる。
【0045】
各試験品(評価サンプル)の官能評価結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示されるように、酢酸含有量が0.5w/v%である試験品にカルダモニン(1.0×10
−8〜100ppm)を添加することにより、喉刺激、ムレ臭及び酸味の抑制効果が認められた。
【0048】
(試験例2)酢酸含有量の影響
(1)試験品の調製
カルダモニン粉末(Shaanxi Yuantai Biological Technology製、Specification:98%)をエチルアルコール中に1質量%になるように溶解し、酸刺激抑制剤S2を調製した。表2に示す酢酸含有量となるように玄米酢(酸度6.1%)を水と混合し、前記酸刺激抑制剤S2を表2に示すカルダモニン含有量となるように添加し、試験品8〜11を調製した。また、酸刺激抑制剤を添加していないものをコントロールとした(以降の各試験例において同じ)。
【0049】
(2)官能評価試験
(1)で調製した各試験品について、官能評価を試験例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2に示されるように、酢酸含有量を0.25〜2.00w/v%の範囲で変更した試験品についても、カルダモニンを添加することにより、喉刺激、ムレ臭及び酸味の抑制効果が認められた。
【0052】
(試験例3)食酢の種類による影響
(1)試験品の調製
カルダモニン粉末(Shaanxi Yuantai Biological Technology製、Specification:98%)をエチルアルコール中に1質量%になるように溶解し、酸刺激抑制剤S2を調製した。表3に示す各食酢(玄米酢、りんご酢、醸造酢)を酢酸含有量が0.5質量%となるように水と混合し、前記酸刺激抑制剤S2を表3に示すカルダモニン含有量となるよう添加し、試験品12〜14を調製した。
【0053】
(2)官能評価試験
(1)で調製した各試験品について、官能評価を試験例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
表3に示されるように、食酢が、玄米酢、りんご酢、醸造酢のいずれであっても、カルダモニンを添加することにより、喉刺激、ムレ臭及び酸味の抑制効果が認められた。
【0056】
(試験例4)各種の酢酸含有飲食品におけるカルダモニンの添加効果
1.果汁含有食酢飲料
(1)試験品の調製
カルダモニン粉末(Shaanxi Yuantai Biological Technology製)をエチルアルコール中に0.01質量%になるように溶解し、酸刺激抑制剤S3を調製した。表4に示す配合量で、食酢(玄米酢、りんご酢、醸造酢)、果汁(りんご果汁、ブルーベリー果汁、ざくろ果汁、レモン果汁、ピーチ果汁、ピンクグレーブフルーツ果汁)、有機酸(クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸)を水に混合した後、上記酸刺激抑制剤S3を添加し、試験品15〜23を調製した。食酢及び酸刺激抑制剤S3の配合量は、それぞれ表4に示す酢酸含有量、カルダモニン含有量となるように設定した。
【0057】
(2)官能評価試験
(1)で調製した各試験品(評価サンプル)について、官能評価を試験例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
2.加工酢、ドレッシング、パスタソース、ピクルス
(1)試験品の調製
カルダモニン粉末(Shaanxi Yuantai Biological Technology製)をエチルアルコール中に0.01質量%又は0.1質量%になるように溶解し、其々、酸刺激抑制剤S3、酸刺激抑制剤S4を調製した。
【0060】
試験品24〜27は、表5に示す配合量で、食酢、調味料等を水に混合した後、酸刺激抑制剤S3又は酸刺激抑制剤S4を其々添加することによって調製した。食酢及び酸刺激抑制剤の配合量は、それぞれ表5に示す酢酸含有量、カルダモニン含有量となるように設定した。
【0061】
試験品28は、みじん切りにしたニンニク6g、タマネギ115gをオリーブオイル33.7gで炒め、ざく切りにしたトマト840g、塩4g、及び1gを加えて煮込むことによってトマトソースを調製した。このトマトソース94質量%に醸造酢5.0質量%、水0.53質量%を加え混合し、前述の酸刺激抑制剤S3を0.47質量%添加することによって調製した。
【0062】
試験品29は、市販のピクルス(Branston ORIGINAL(Mizkan社製))99.85質量%に前述の酸刺激抑制剤S3を0.15質量%添加することによって調製した。
【0063】
(2)官能評価試験
(1)で調製した各試験品について、官能評価を試験例1と同様に行った。結果を表5に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
表4、5に示されるように、カルダモニンによる喉刺激、ムレ臭及び酸味の抑制効果は、種々の酢酸含有飲食品において認められた。
【0066】
(試験例5)カルダモニン抽出液の添加効果
(1)試験品の調整
カルダモン粉末(S&B社製)0.5重量部を醸造酢(酸度15%)99.5重量部に添加後常温(25℃)にて半日静置し、ろ紙(No.2)にてろ過を行った。ろ液に対し100倍又は10倍量の水を混合し、酸刺激抑制剤S5、酸刺激抑制剤S6を得た。
【0067】
表6に示す配合量で、酸刺激抑制剤S5又はS6を玄米酢(酸度6.1%)と水に混合し、試験品30〜33を得た。
【0068】
(2)官能評価試験
(1)で調製した各試験品について、官能評価を試験例1と同様に行った。結果を表6に示す。
【0069】
【表6】
【0070】
表6に示されるように、酸刺激抑制剤の添加によって、喉刺激、ムレ臭及び酸味の抑制効果が認められた。