特許第6986880号(P6986880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京応化工業株式会社の特許一覧

特許6986880レジスト組成物、及びレジストパターン形成方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986880
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】レジスト組成物、及びレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20211213BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20211213BHJP
   C08F 212/00 20060101ALI20211213BHJP
   C08F 220/30 20060101ALI20211213BHJP
   C08F 232/08 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   G03F7/038 601
   G03F7/20 521
   G03F7/20 501
   C08F212/00
   C08F220/30
   C08F232/08
【請求項の数】7
【全頁数】96
(21)【出願番号】特願2017-136603(P2017-136603)
(22)【出願日】2017年7月12日
(65)【公開番号】特開2019-20487(P2019-20487A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年4月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 広人
(72)【発明者】
【氏名】矢萩 真人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
【審査官】 川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−179292(JP,A)
【文献】 特開2010−061097(JP,A)
【文献】 特開2014−024999(JP,A)
【文献】 特開2001−051407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/038
G03F 7/20
C08F 212/00
C08F 220/30
C08F 232/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、
下記一般式(a0−1)で表される化合物から誘導される構成単位(a0)と、下記一般式(a10−1)で表される化合物から誘導される構成単位(a10)とを有し、且つ下記一般式(1)で表される構成単位を有しない高分子化合物(A1)と、
露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)と、
を含有する、レジスト組成物。
【化1】
[式(a0−1)中、Rax0は重合性基含有基である。Wax0は、ベンゼンから(nax0+1)個の水素原子を除いた基である。但し、Rax0とWax0とで縮合環構造が形成されていてもよい。nax0は、1〜3の整数である。式(a10−1)中、Rax1CH=C(R)−Yax0−で表される基であり、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、Yax0は単結合、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又はこれらの組合せからなる基である。Wax1は、(nax1+1)価の芳香族炭化水素基である。但し、Rax1とWax1とで縮合環構造が形成されていてもよい。nax1は、1〜3の整数である。]
【化2】
[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Zは単結合、メチレン基、−C(=O)−O−Rz1−、−O−Rz1−、−O−C(=O)−Rz1−、又は−Rz2−Rz1−であり、ZはFe、Co、Ni、Cr、又はRuである。Rz1は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、又は炭素数2〜10のアルケニレン基であり、エステル基、若しくはエーテル基を有していてもよい。Rz2はフェニレン基、又はナフチレン基である。]
【請求項2】
前記高分子化合物(A1)が、さらに、下記一般式(a11−1)で表される化合物から誘導される構成単位(a11)(但し、前記構成単位(a0)及び前記構成単位(a10)に該当するものを除く)を有する、請求項1に記載のレジスト組成物。
【化3】
[式(a11−1)中、Rax2は重合性基含有基である。Wax2は、(nax2+1)価の芳香族炭化水素基である。但し、Rax2とWax2とで縮合環構造が形成されていてもよい。Rax02は、Wax2(芳香族炭化水素基)を構成する水素原子を置換する置換基である。nax2は、0〜3の整数である。nax2が2以上の場合、複数のRax02が相互に結合して環構造を形成してもよい。]
【請求項3】
前記高分子化合物(A1)が、さらに、下記一般式(a12−1)で表される構成単位(a12)を有する、請求項1又は2に記載のレジスト組成物。
【化4】
[式(a12−1)中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。Yax3は、単結合又は2価の連結基である。Lax3は−O−、−COO−、−CON(R’)−、−OCO−、−CONHCO−又は−CONHCS−であり、R’は水素原子又はメチル基を示す。但し、Lax3が−O−の場合、Yax3は−CO−にはならない。Rax3は、水素原子、脂肪族炭化水素基、ラクトン含有環式基、−SO−含有環式基又はカーボネート含有環式基である。但し、Rax3は非酸解離性基である。]
【請求項4】
前記高分子化合物(A1)中の前記構成単位(a0)の割合は、前記高分子化合物(A1)を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、5〜95モル%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のレジスト組成物。
【請求項5】
前記高分子化合物(A1)中の前記構成単位(a10)の割合は、前記高分子化合物(A1)を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、5〜95モル%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のレジスト組成物。
【請求項6】
前記高分子化合物(A1)中の前記構成単位(a0)の割合は、前記高分子化合物(A1)を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、20〜40モル%であり、
前記前記高分子化合物(A1)中の前記構成単位(a10)の割合は、前記高分子化合物(A1)を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、55〜80モル%である、
請求項4又は5に記載のレジスト組成物。
【請求項7】
支持体上に、請求項1〜6のいずれか一項に記載のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を有する、レジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物、レジストパターン形成方法及び高分子化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィー技術においては、例えば基板の上にレジスト材料からなるレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的露光を行い、現像処理を施すことにより、前記レジスト膜に所定形状のレジストパターンを形成する工程が行われる。レジスト膜の露光部が現像液に溶解する特性に変化するレジスト材料をポジ型、レジスト膜の露光部が現像液に溶解しない特性に変化するレジスト材料をネガ型のレジスト材料という。
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速にパターンの微細化が進んでいる。微細化の手法としては、一般に、露光光源の短波長化(高エネルギー化)が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザーや、ArFエキシマレーザーを用いた半導体素子の量産が行われている。また、これらのエキシマレーザーより短波長(高エネルギー)のEUV(極紫外線)や、EB(電子線)、X線などについても検討が行われている。
【0003】
レジスト材料には、これらの露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性が求められる。
このような要求を満たすレジスト材料として、従来、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分と、露光により酸を発生する酸発生剤成分と、を含有する化学増幅型レジスト組成物が用いられている。
例えば上記現像液がアルカリ現像液(アルカリ現像プロセス)の場合、ポジ型の化学増幅型レジスト組成物としては、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂成分(ベース樹脂)と酸発生剤成分とを含有するものが一般的に用いられている。かかるレジスト組成物を用いて形成されるレジスト膜は、レジストパターン形成時に選択的露光を行うと、露光部において、酸発生剤成分から酸が発生し、該酸の作用によりベース樹脂の極性が増大して、レジスト膜の露光部がアルカリ現像液に対して可溶となる。そのためアルカリ現像することにより、レジスト膜の未露光部がパターンとして残るポジ型パターンが形成される(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、レジスト材料として、従来、アルカリ現像液に可溶性の基材成分(アルカリ可溶性基材成分)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分と、架橋剤成分と、を含有する化学増幅型レジスト組成物も用いられている。かかる化学増幅型レジスト組成物は、例えば、露光により酸発生剤成分から酸が発生すると、該酸が作用して該アルカリ可溶性基材成分と架橋剤成分との間で架橋が起こり、この結果、アルカリ現像液に対する溶解性が減少する。そのため、レジストパターンの形成において、かかる化学増幅型レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜を選択的に露光すると、レジスト膜露光部はアルカリ現像液に対して難溶性へ転じる一方で、レジスト膜未露光部はアルカリ現像液に対して可溶性のまま変化しないため、アルカリ現像液で現像することによりネガ型レジストパターンが形成される(例えば特許文献2参照)。
【0005】
また、ポリヒドロキシスチレンポリマーに、架橋基を導入した高分子化合物を含む基材成分と、露光により酸を発生する酸発生剤成分と、を含有する化学増幅型レジスト組成物も報告されている。かかる化学増幅型レジスト組成物は、露光により酸発生剤成分から酸が発生すると、該酸が作用して該架橋基を介して基材成分間の架橋が起こり、この結果、アルカリ現像液に対する溶解性が減少する(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−241385号公報
【特許文献2】特開2007−084502号公報
【特許文献3】特許第5723829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さらに近年、レジストパターンの微細化がますます進むなか、高解像度で良好な形状のパターンを形成する技術が求められている。
上述したポジ型の化学増幅型レジスト組成物を用いて、より微細な寸法のパターンを形成しようとすると、レジスト膜露光部の、特に膜厚方向で、光学強度の弱い領域が生じてレジストパターンの解像性が低下しやすいという問題がある。
これに対し、上記のような微細な寸法のパターンを形成するには、アルカリ可溶性基材成分と酸発生剤成分と架橋剤成分とを含有する化学増幅型レジスト組成物を用い、光学強度の弱い領域を選択的に溶解除去してレジストパターン(ネガ型レジストパターン)を形成する方法が有用である。しかしながら、この架橋剤成分を含有する、従来の化学増幅型レジスト組成物では、架橋剤による可塑効果により、感度、解像性及びラフネスが低下する場合がある。
特許文献3に記載の架橋基を導入した高分子化合物を含む基材成分と酸発生剤成分とを含有する化学増幅型レジスト組成物は、高分子化合物に導入された架橋基の親水性及び反応性が低い。そのため、基材成分の親水性及び反応性が低下し、レジスト組成物の感度、解像性及びラフネスが低下する場合がある。また、架橋剤成分を含有しない場合には、所望のパターンを形成するための架橋が不十分となる場合がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、感度、解像性及びラフネスが向上したレジスト組成物及びレジストパターン形成方法、並びに該レジスト組成物用の基材成分として有用な高分子化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、下記一般式(a0−1)で表される化合物から誘導される構成単位(a0)と、下記一般式(a10−1)で表される化合物から誘導される構成単位(a10)とを有し、且つ下記一般式(1)で表される構成単位を有しない高分子化合物(A1)を含有することを特徴とするレジスト組成物である。
【0010】
【化1】
[式(a0−1)中、Rax0は重合性基含有基である。Wax0は、(nax0+1)価の芳香族炭化水素基である。但し、Rax0とWax0とで縮合環構造が形成されていてもよい。nax0は、1〜3の整数である。式(a10−1)中、Rax1は重合性基含有基である。Wax1は、(nax1+1)価の芳香族炭化水素基である。但し、Rax1とWax1とで縮合環構造が形成されていてもよい。nax1は、1〜3の整数である。]
【0011】
【化2】
[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Zは単結合、メチレン基、−C(=O)−O−Rz1−、−O−Rz1−、−O−C(=O)−Rz1−、又は−Rz2−Rz1−であり、ZはFe、Co、Ni、Cr、又はRuである。Rz1は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、又は炭素数2〜10のアルケニレン基であり、エステル基、又はエーテル基を有していてもよい。Rz2はフェニレン基、又はナフチレン基である。]
【0012】
本発明の第2の態様は、支持体上に、前記第1の態様に係るレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び前記露光後のレジスト膜をアルカリ現像してレジストパターンを形成する工程を有することを特徴とするレジストパターン形成方法である。
【0013】
本発明の第3の態様は、下記一般式(a0−1)で表される化合物から誘導される構成単位(a0)と、下記一般式(a10−1)で表される化合物から誘導される構成単位(a10)とを有し、且つ下記一般式(1)で表される構成単位を有しないことを特徴とする高分子化合物である。
【0014】
【化3】
[式(a0−1)中、Rax0は重合性基含有基である。Wax0は、(nax0+1)価の芳香族炭化水素基である。但し、Rax0とWax0とで縮合環構造が形成されていてもよい。nax0は、1〜3の整数である。式(a10−1)中、Rax1は重合性基含有基である。Wax1は、(nax1+1)価の芳香族炭化水素基である。但し、Rax1とWax1とで縮合環構造が形成されていてもよい。nax1は、1〜3の整数である。]
【0015】
【化4】
[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Zは単結合、メチレン基、−C(=O)−O−Rz1−、−O−Rz1−、−O−C(=O)−Rz1−、又は−Rz2−Rz1−であり、ZはFe、Co、Ni、Cr、又はRuである。Rz1は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、又は炭素数2〜10のアルケニレン基であり、エステル基、又はエーテル基を有していてもよい。Rz2はフェニレン基、又はナフチレン基である。]
【発明の効果】
【0016】
本発明のレジスト組成物及びレジストパターン形成方法によれば、感度、解像性及びラフネスの向上が図られる。
本発明の高分子化合物は、レジストパターン形成において、感度、解像性及びラフネスの向上が図られるという点で、レジスト組成物用の基材成分として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」又は「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基又はアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有していてもよい」又は「置換基を有してもよい」と記載する場合、水素原子(−H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(−CH−)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0018】
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、アクリル酸(CH=CH−COOH)のカルボキシ基末端の水素原子が有機基で置換された化合物である。
アクリル酸エステルは、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該α位の炭素原子に結合した水素原子を置換する置換基(Rα0)は、水素原子以外の原子又は基であり、たとえば炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。また、置換基(Rα0)がエステル結合を含む置換基で置換されたイタコン酸ジエステルや、置換基(Rα0)がヒドロキシアルキル基やその水酸基を修飾した基で置換されたαヒドロキシアクリルエステルも含むものとする。なお、アクリル酸エステルのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、アクリル酸のカルボニル基が結合している炭素原子のことである。
以下、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸エステルをα置換アクリル酸エステルということがある。また、アクリル酸エステルとα置換アクリル酸エステルとを包括して「(α置換)アクリル酸エステル」ということがある。
【0019】
「アクリルアミドから誘導される構成単位」とは、アクリルアミドのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
アクリルアミドは、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよく、アクリルアミドのアミノ基の水素原子の一方または両方が置換基で置換されていてもよい。なお、アクリルアミドのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、アクリルアミドのカルボニル基が結合している炭素原子のことである。
アクリルアミドのα位の炭素原子に結合した水素原子を置換する置換基としては、前記α置換アクリル酸エステルにおいて、α位の置換基として挙げたもの(置換基(Rα0))と同様のものが挙げられる。
【0020】
「ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位」とは、ヒドロキシスチレンのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。「ヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位」とは、ヒドロキシスチレン誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「ヒドロキシスチレン誘導体」とは、ヒドロキシスチレンのα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。それらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいヒドロキシスチレンの水酸基の水素原子を有機基で置換したもの;α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいヒドロキシスチレンのベンゼン環に、水酸基以外の置換基が結合したもの等が挙げられる。なお、α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
ヒドロキシスチレンのα位の水素原子を置換する置換基としては、前記α置換アクリル酸エステルにおいて、α位の置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0021】
「ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体から誘導される構成単位」とは、ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「ビニル安息香酸誘導体」とは、ビニル安息香酸のα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。それらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいビニル安息香酸のカルボキシ基の水素原子を有機基で置換したもの;α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいビニル安息香酸のベンゼン環に、水酸基およびカルボキシ基以外の置換基が結合したもの等が挙げられる。なお、α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
【0022】
「スチレン」とは、スチレンおよびスチレンのα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたものも含む概念とする。
「スチレン誘導体」とは、スチレンのα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。それらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいヒドロキシスチレンのベンゼン環に置換基が結合したもの等が挙げられる。なお、α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
「スチレンから誘導される構成単位」、「スチレン誘導体から誘導される構成単位」とは、スチレン又はスチレン誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
【0023】
上記α位の置換基としてのアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、炭素数1〜5のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基)等が挙げられる。
また、α位の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
また、α位の置換基としてのヒドロキシアルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、水酸基で置換した基が挙げられる。該ヒドロキシアルキル基における水酸基の数は、1〜5が好ましく、1が最も好ましい。
【0024】
(レジスト組成物)
本発明の第1の態様に係るレジスト組成物は、露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するものである。
かかるレジスト組成物の一実施形態としては、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)(以下「(A)成分」ともいう)を含有するレジスト組成物が挙げられる。
本実施形態のレジスト組成物において、(A)成分は、一般式(a0−1)で表される化合物から誘導される構成単位と、一般式(a10−1)で表される化合物から誘導される構成単位(a10)とを有し、且つ一般式(1)で表される構成単位を有しない高分子化合物(A1)(以下「(A1)成分」という。)を含む。
【0025】
本実施形態のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的露光を行うと、該レジスト膜の露光部では酸が発生し、該酸の作用により(A)成分の現像液に対する溶解性が変化する一方で、該レジスト膜の未露光部では(A)成分の現像液に対する溶解性が変化しないため、レジスト膜の露光部と未露光部との間で現像液に対する溶解性の差が生じる。そのため、該レジスト膜をアルカリ現像すると、レジスト膜未露光部が溶解除去されて、ネガ型のレジストパターンが形成される。
【0026】
本明細書においては、レジスト膜露光部が溶解除去されてポジ型レジストパターンを形成するレジスト組成物をポジ型レジスト組成物といい、レジスト膜未露光部が溶解除去されてネガ型レジストパターンを形成するレジスト組成物をネガ型レジスト組成物という。本実施形態のレジスト組成物は、レジストパターン形成時の現像処理にアルカリ現像液を用いるアルカリ現像プロセス用として好適なものである。
【0027】
本実施形態のレジスト組成物は、露光により酸を発生する酸発生能を有するものであり、(A)成分が露光により酸を発生してもよく、(A)成分とは別に配合された添加剤成分が露光により酸を発生してもよい。
具体的には、本実施形態のレジスト組成物は、(1)露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下「(B)成分」という。)を含有するものであってもよく;(2)(A)成分が露光により酸を発生する成分であってもよく;(3)(A)成分が露光により酸を発生する成分であり、かつ、さらに(B)成分を含有するものであってもよい。
すなわち、上記(2)又は(3)の場合、(A)成分は、「露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分」となる。(A)成分が露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分である場合、後述する(A1)成分が、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する高分子化合物であることが好ましい。このような高分子化合物としては、露光により酸を発生する構成単位を有する樹脂を用いることができる。露光により酸を発生する構成単位を誘導するモノマーには、公知のものを用いることができる。本実施形態のレジスト組成は、上記(1)の場合であることが特に好ましい。
【0028】
<(A)成分>
(A)成分は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分である。
本発明において「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物であり、好ましくは分子量が500以上の有機化合物が用いられる。該有機化合物の分子量が500以上であることにより、膜形成能が向上し、加えて、ナノレベルのレジストパターンを形成しやすくなる。
基材成分として用いられる有機化合物は、非重合体と重合体とに大別される。
非重合体としては、通常、分子量が500以上4000未満のものが用いられる。以下「低分子化合物」という場合は、分子量が500以上4000未満の非重合体を示す。
重合体としては、通常、分子量が1000以上のものが用いられる。以下「樹脂」、「高分子化合物」又は「ポリマー」という場合は、分子量が1000以上の重合体を示す。
重合体の分子量としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量を用いるものとする。
【0029】
本実施形態のレジスト組成物において、(A)成分には、一般式(a0−1)で表される化合物から誘導される構成単位(以下これを「構成単位(a0)」という。)と、一般式(a10−1)で表される化合物から誘導される構成単位(以下これを「構成単位(a10)」という。)とを有し、且つ一般式(1)で表される構成単位を有しない高分子化合物(A1)が少なくとも用いられ、さらに、該(A1)成分以外の高分子化合物及び/又は低分子化合物が併用されてもよい。
(A1)成分を少なくとも含有するレジスト組成物を用いて、レジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的に露光を行うと、該レジスト膜の露光部では、例えばレジスト組成物が(B)成分を含有する場合には該(B)成分から酸が発生し、該酸の作用により、架橋性を有する構成単位(a0)を介して(A1)成分間で架橋が起こり、この結果、該レジスト膜露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が減少する。そのため、レジストパターンの形成において、本実施形態のレジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜を選択的に露光すると、レジスト膜露光部はアルカリ現像液に対して難溶性へ転じる一方で、レジスト膜未露光部はアルカリ現像液に対して可溶性のまま変化しないため、アルカリ現像液で現像することにより、ネガ型レジストパターンが形成される。
【0030】
・(A1)成分について
(A1)成分は、一般式(a0−1)で表される化合物から誘導される構成単位(構成単位(a0))と、一般式(a10−1)で表される化合物から誘導される構成単位(構成単位(a10)とを有し、且つ一般式(1)で表される構成単位を有しない高分子化合物である。
(A1)成分としては、構成単位(a0)及び構成単位(a10)に加えて、さらに、芳香環(ヒドロキシ基が結合した芳香環を除く)を側鎖に含む構成単位を有する共重合体が好ましい。
(A1)成分としては、構成単位(a0)及び構成単位(a10)に加えて、さらに、非酸解離性基を側鎖に含む構成単位を有する共重合体であってもよい。
また、(A1)成分は、構成単位(a0)及び構成単位(a10)に加えて、上記以外のその他構成単位を有するものでもよい。
【0031】
≪構成単位(a0)≫
構成単位(a0)は、下記一般式(a0−1)で表される化合物から誘導される構成単位であり、架橋性を有する。
【0032】
【化5】
[式中、Rax0は重合性基含有基である。Wax0は、(nax0+1)価の芳香族炭化水素基である。但し、Rax0とWax0とで縮合環構造が形成されていてもよい。nax0は、1〜3の整数である。]
【0033】
前記式(a0−1)中、Rax0は重合性基含有基である。
Rax0における「重合性基」とは、重合性基を有する化合物がラジカル重合等により重合することを可能とする基であり、例えばエチレン性二重結合などの炭素原子間の多重結合を含む基をいう。
重合性基としては、例えばビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フルオロビニル基、ジフルオロビニル基、トリフルオロビニル基、ジフルオロトリフルオロメチルビニル基、トリフルオロアリル基、パーフルオロアリル基、トリフルオロメチルアクリロイル基、ノニルフルオロブチルアクリロイル基、ビニルエーテル基、含フッ素ビニルエーテル基、アリルエーテル基、含フッ素アリルエーテル基、スチリル基、ビニルナフチル基、含フッ素スチリル基、含フッ素ビニルナフチル基、ノルボルニル基、含フッ素ノルボルニル基、シリル基等が挙げられる。
重合性基含有基としては、重合性基のみから構成される基でもよいし、重合性基と該重合性基以外の他の基とから構成される基でもよい。該重合性基以外の他の基としては、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が挙げられる。
【0034】
Rax0としては、例えば、化学式:CH=C(R)−Yax0−で表される基、が好適に挙げられる。この化学式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、Yax0は、単結合または2価の連結基である。
【0035】
前記の化学式中、Rにおける炭素数1〜5のアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1〜5のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。Rとしては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0036】
前記の化学式中、Yax0における2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
【0037】
・置換基を有してもよい2価の炭化水素基:
Yax0が置換基を有してもよい2価の炭化水素基である場合、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよいし、芳香族炭化水素基でもよい。
【0038】
・・Yax0における脂肪族炭化水素基
脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。該脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0039】
・・・直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基
該直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数1〜6がより好ましく、炭素数1〜4がさらに好ましく、炭素数1〜3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[−CH−]、エチレン基[−(CH−]、トリメチレン基[−(CH−]、テトラメチレン基[−(CH−]、ペンタメチレン基[−(CH−]等が挙げられる。
該分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が2〜10であることが好ましく、炭素数3〜6がより好ましく、炭素数3又は4がさらに好ましく、炭素数3が最も好ましい。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、−CH(CH)−、−CH(CHCH)−、−C(CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CH)(CHCHCH)−、−C(CHCH−等のアルキルメチレン基;−CH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−、−C(CHCH−、−CH(CHCH)CH−、−C(CHCH−CH−等のアルキルエチレン基;−CH(CH)CHCH−、−CHCH(CH)CH−等のアルキルトリメチレン基;−CH(CH)CHCHCH−、−CHCH(CH)CHCH−等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0040】
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0041】
・・・構造中に環を含む脂肪族炭化水素基
該構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含んでもよい環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては前記と同様のものが挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、炭素数3〜12であることがより好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3〜6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7〜12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0042】
環状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることがより好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基がさらに好ましい。
前記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、その環構造を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されてもよい。該ヘテロ原子を含む置換基としては、−O−、−C(=O)−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−O−が好ましい。
【0043】
・・Yax0における芳香族炭化水素基
該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でもよいし、多環式でもよい。芳香環の炭素数は5〜30であることが好ましく、炭素数5〜20がより好ましく、炭素数6〜15がさらに好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基またはヘテロアリーレン基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を2つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基)等が挙げられる。前記アリール基またはヘテロアリール基に結合するアルキレン基の炭素数は、1〜4であることが好ましく、炭素数1〜2であることがより好ましく、炭素数1であることが特に好ましい。
【0044】
前記芳香族炭化水素基は、当該芳香族炭化水素基が有する水素原子が置換基で置換されていてもよい。たとえば当該芳香族炭化水素基中の芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることがより好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子およびハロゲン化アルキル基としては、前記環状の脂肪族炭化水素基が有する水素原子を置換する置換基として例示したものが挙げられる。
【0045】
・ヘテロ原子を含む2価の連結基:
Yax0がヘテロ原子を含む2価の連結基である場合、該連結基として好ましいものとしては、−O−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−、−NH−C(=NH)−(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−O−、一般式−Y21−O−Y22−、−Y21−O−、−Y21−C(=O)−O−、−C(=O)−O−Y21−、−[Y21−C(=O)−O]m”−Y22−、−Y21−O−C(=O)−Y22−または−Y21−S(=O)−O−Y22−で表される基[式中、Y21およびY22はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、m”は0〜3の整数である。]等が挙げられる。
前記へテロ原子を含む2価の連結基が−C(=O)−NH−、−C(=O)−NH−C(=O)−、−NH−、−NH−C(=NH)−の場合、そのHはアルキル基、アシル等の置換基で置換されていてもよい。該置換基(アルキル基、アシル基等)は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜8であることがさらに好ましく、1〜5であることが特に好ましい。
一般式−Y21−O−Y22−、−Y21−O−、−Y21−C(=O)−O−、−C(=O)−O−Y21−、−[Y21−C(=O)−O]m”−Y22−、−Y21−O−C(=O)−Y22−または−Y21−S(=O)−O−Y22−中、Y21およびY22は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、前記2価の連結基としての説明で挙げた(置換基を有していてもよい2価の炭化水素基)と同様のものが挙げられる。
21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
22としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基またはアルキルメチレン基がより好ましい。該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
式−[Y21−C(=O)−O]m”−Y22−で表される基において、m”は0〜3の整数であり、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、1が特に好ましい。つまり、式−[Y21−C(=O)−O]m”−Y22−で表される基としては、式−Y21−C(=O)−O−Y22−で表される基が特に好ましい。なかでも、式−(CHa’−C(=O)−O−(CHb’−で表される基が好ましい。該式中、a’は、1〜10の整数であり、1〜8の整数が好ましく、1〜5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。b’は、1〜10の整数であり、1〜8の整数が好ましく、1〜5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
【0046】
上記の中でも、Yax0としては、単結合、エステル結合[−C(=O)−O−、−O−C(=O)−]、エーテル結合(−O−)、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又はこれらの組合せであることが好ましく、単結合、エステル結合[−C(=O)−O−、−O−C(=O)−]がより好ましい。
【0047】
前記式(a0−1)中、Wax0は、(nax0+1)価の芳香族炭化水素基である。
Wax0における芳香族炭化水素基としては、芳香環から(nax0+1)個の水素原子を除いた基が挙げられる。ここでの芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は5〜30であることが好ましく、炭素数5〜20がより好ましく、炭素数6〜15がさらに好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい。該芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
また、Wax0における芳香族炭化水素基としては、2以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から(nax0+1)個の水素原子を除いた基も挙げられる。
上記の中でも、Wax0としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンまたはビフェニルから(nax0+1)個の水素原子を除いた基が好ましく、ベンゼンから(nax0+1)個の水素原子を除いた基がより好ましい。
【0048】
但し、Rax0とWax0とで縮合環構造が形成されていてもよい。
Rax0とWax0とで縮合環構造を形成する場合、その縮合環構造には、Wax0に由来する芳香環が含まれる。また、Rax0に由来する重合性基の、炭素原子間の多重結合が開裂して、(A1)成分の主鎖を形成する。すなわち、該縮合環を構成する炭素原子の一部が(A1)成分の主鎖を構成する。
【0049】
前記式(a0−1)中、nax0は、1〜3の整数であり、1又は2が好ましい。
【0050】
上述した構成単位(a0)の好ましい具体例としては、下記一般式(a0−u1)で表される構成単位が挙げられる。
【0051】
【化6】
[式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Yax0’は、ヘテロ原子を含む2価の連結基又は単結合である。Wax0は、(nax0+1)価の芳香族炭化水素基である。nax0は、1〜3の整数である。]
【0052】
前記式(a0−u1)中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。中でも、Rαは、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0053】
前記式(a0−u1)中、Yax0’は、ヘテロ原子を含む2価の連結基又は単結合である。
Yax0’における、ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、上記Yax0におけるヘテロ原子を含む2価の連結基と同様である。中でも、Yax0’は、単結合、エステル結合[−C(=O)−O−、−O−C(=O)−]が好ましい。
【0054】
前記式(a0−u1)中、Wax0、nax0は、上記式(a0−1)中のWax0、nax0とそれぞれ同様である。
【0055】
上記の一般式(a0−u1)で表される構成単位としては、例えば、下記の一般式(a0−u1−1)〜(a0−u1−5)でそれぞれ表される構成単位が好適に挙げられる。
【0056】
【化7】
[式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。nax0は、1〜3の整数である。n01、n02、n04及びn05は、それぞれ独立に、0又は1である。n03及びn06は、それぞれ独立に、1又は2である。]
【0057】
以下に、前記一般式(a0−1)で表される化合物から誘導される構成単位(構成単位(a0))の具体例を示す。
以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
【0058】
【化8】
【0059】
【化9】
【0060】
【化10】
【0061】
【化11】
【0062】
【化12】
【0063】
また、上述した構成単位(a0)としては、下記一般式(a0−u1−8)で表される構成単位も好適に挙げられる。以下に、この具体例を合わせて示す。以下の式中、nax0は、1〜3の整数である。
【0064】
【化13】
【0065】
上記例示の中でも、構成単位(a0)は、一般式(a0−u1−1)で表される構成単位、一般式(a0−u1−3)でそれぞれ表される構成単位が好ましい。
これらの中でも、化学式(a0−u1−11)〜(a0−u1−13)、(a0−u1−31)〜(a0−u1−33)のいずれかで表される構成単位が特に好ましい。
【0066】
(A1)成分が有する構成単位(a0)は、1種でもよく2種以上でもよい。
(A1)成分中の構成単位(a0)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、5〜95モル%が好ましく、5〜50モル%がより好ましく、10〜40モル%がさらに好ましく、20〜40モル%が特に好ましい。
構成単位(a0)の割合を下限値以上とすることによって、レジスト組成物の感度、解像性又はラフネスがより向上する。一方、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとりやすくなる。
【0067】
≪構成単位(a10)≫
構成単位(a10)は、下記一般式(a10−1)で表される化合物から誘導される構成単位である。
【0068】
【化14】
[式(a10−1)中、Rax1は重合性基含有基である。Wax1は、(nax1+1)価の芳香族炭化水素基である。但し、Rax1とWax1とで縮合環構造が形成されていてもよい。nax1は、1〜3の整数である。]
【0069】
前記式(a10−1)中、Rax1は、重合性基含有基であり、前記(a0−1)中のRax0と同様のものが挙げられる。
前記式(a10−1)中、Wax1は、(nax1+1)価の芳香族炭化水素基であり、前記(a0−1)中のWax0と同様のものが挙げられる。
【0070】
但し、Rax1とWax1とで縮合環構造が形成されていてもよい。
Rax1とWax1とで縮合環構造を形成する場合、その縮合環構造には、Wax1に由来する芳香環が含まれる。また、Rax1に由来する重合性基の、炭素原子間の多重結合が開裂して、(A1)成分の主鎖を形成する。すなわち、該縮合環を構成する炭素原子の一部が(A1)成分の主鎖を構成する。
【0071】
前記式(a10−1)中、nax1は、1〜3の整数であり、1又は2が好ましい。
【0072】
上述した構成単位(a10)の好ましい具体例としては、下記一般式(a10−u1)で表される構成単位が挙げられる。
【0073】
【化15】
[式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Yax1は、ヘテロ原子を含む2価の連結基又は単結合である。Wax1は、(nax1+1)価の芳香族炭化水素基である。nax1は、1〜3の整数である。]
【0074】
前記式(a10−u1)中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。中でも、Rαは、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0075】
前記式(a10−u1)中、Yax1は、ヘテロ原子を含む2価の連結基又は単結合である。
Yax1における、ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、上記Yax0におけるヘテロ原子を含む2価の連結基と同様である。中でも、Yax1は、単結合、エステル結合[−C(=O)−O−、−O−C(=O)−]が好ましい。
【0076】
前記式(a10−u1)中、Wax1は、(nax1+1)価の芳香族炭化水素基である。Wax1における芳香族炭化水素基としては、芳香環から(nax1+1)個の水素原子を除いた基が挙げられる。ここでの芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は5〜30であることが好ましく、炭素数5〜20がより好ましく、炭素数6〜15がさらに好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい。該芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
また、Wax1における芳香族炭化水素基としては、2以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から(nax1+1)個の水素原子を除いた基も挙げられる。
上記の中でも、Wax1としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環から(nax1+1)個の水素原子を除いた基が好ましく、ベンゼン、ナフタレン、又はアントラセンから(nax1+1)個の水素原子を除いた基がより好ましく、ベンゼン又はナフタレンから(nax1+1)個の水素原子を除いた基がさらに好ましい。
【0077】
前記式(a10−u1)中、nax1は、1〜3の整数であり、1又は2が好ましい。
【0078】
上記の一般式(a10−u1)で表される構成単位としては、例えば、下記の一般式(a10−u1−1)〜(a10−u1−4)でそれぞれ表される構成単位が好適に挙げられる。
【0079】
【化16】
[式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。nax1は、1〜3の整数である。n11、n12、n14及びn15は、それぞれ独立に、0又は1である。n13及びn16は、それぞれ独立に、1又は2である。]
【0080】
以下に、前記一般式(a10−1)で表される化合物から誘導される構成単位(構成単位(a10))の具体例を示す。
以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
【0081】
【化17】
【0082】
【化18】
【0083】
【化19】
【0084】
【化20】
【0085】
また、上述した構成単位(a10)としては、下記一般式(a10−u1−5)で表される構成単位も好適に挙げられる。以下に、この具体例を合わせて示す。以下の式中、nax1は、1〜3の整数である。
【0086】
【化21】
【0087】
上記例示の中でも、構成単位(a10)は、一般式(a10−u1−1)〜(a10−u1−4)でそれぞれ表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、一般式(a10−u1−1)で表される構成単位がより好ましい。
これらの中でも、構成単位(a10)は、化学式(a10−u1−11)、(a10−u1−21)又は(a10−u1−31)のいずれかで表される構成単位が好ましい。
【0088】
(A1)成分が有する構成単位(a10)は、1種でもよく2種以上でもよい。
(A1)成分が構成単位(a10)を有する場合、(A1)成分中の構成単位(a10)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、50〜95モル%であることが好ましく、55〜80モル%がより好ましく、60〜70モル%が特に好ましい。
構成単位(a10)の割合を下限値以上とすることにより、感度、現像性又はラフネスがより向上する。一方、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとりやすくなる。
【0089】
≪一般式(1)で表される構成単位≫
(A1)成分は、下記一般式(1)で表される構成単位を有しない。
【0090】
【化22】
[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Zは単結合、メチレン基、−C(=O)−O−Rz1−、−O−Rz1−、−O−C(=O)−Rz1−、又は−Rz2−Rz1−であり、ZはFe、Co、Ni、Cr、又はRuである。Rz1は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、又は炭素数2〜10のアルケニレン基であり、エステル基、又はエーテル基を有していてもよい。Rz2はフェニレン基、又はナフチレン基である。]
【0091】
(A1)成分は、上記構成単位(a0)と上記構成単位(a10)とを有するものであっても、上記一般式(1)で表される構成単位を有するものは除かれる。
レジスト組成物中に含有される基材成分が、一般式(1)で表される構成単位を有する高分子化合物を含有する場合、レジスト組成物中の金属の含有量が高くなる。この場合、最終的に製造される半導体素子や液晶表示素子の電気特性や信頼性が損なわれるおそれがある。
本実施形態のレジスト組成物では、(A1)成分が一般式(1)で表される構成単位を有しないため、レジスト組成物中の金属の含有量を低く抑えることができる。レジスト組成物中の金属の含有量が高いと、金属不純物の影響により半導体素子や液晶素子の性能や安定性が低下する場合がある。また、金属不純物の影響は、高集積化に伴い増大する。そのため、レジスト組成物中の金属の含有量を低く抑えることにより、最終的製品である半導体素子や液晶表示素子の電気特性や信頼性が高められる。加えて、半導体素子や液晶表示素子の高集積化を容易とする。
【0092】
(A1)成分は、上記一般式(1)で表される構成単位に加えて、金属錯体から誘導されるいかなる構成単位も有しないことが好ましい。(A1)成分が、金属錯体から誘導される構成単位を有しないことにより、レジスト組成物中の金属含有量がより低減され、最終製品である半導体素子や液晶表示素子の電気特性や信頼性をより高めることができる。
【0093】
≪構成単位(a11)≫
(A1)成分は、上述した構成単位(a0)及び構成単位(a10)に加えて、さらに、芳香環(ヒドロキシ基が結合した芳香環を除く)を側鎖に含む化合物から誘導される構成単位(a11)を有する共重合体が好ましい。
芳香環(ヒドロキシ基が結合した芳香環を除く)を側鎖に含む化合物、としては、例えば、下記一般式(a11−1)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0094】
【化23】
[式(a11−1)中、Rax2は重合性基含有基である。Wax2は、(nax2+1)価の芳香族炭化水素基である。但し、Rax2とWax2とで縮合環構造が形成されていてもよい。Rax02は、Wax2(芳香族炭化水素基)を構成する水素原子を置換する置換基である。nax2は、0〜3の整数である。nax2が2以上の場合、複数のRax02が相互に結合して環構造を形成してもよい。]
【0095】
前記式(a11−1)中、Rax2は、重合性基含有基であり、前記式(a0−1)中のRax0と同様のものが挙げられる。
前記式(a11−1)中、Wax2は、(nax2+1)価の芳香族炭化水素基であり、前記式(a0−1)中のWax0と同様のものが挙げられる。
【0096】
但し、Rax2とWax2とで縮合環構造が形成されていてもよい。
Rax2とWax2とで縮合環構造を形成する場合、その縮合環構造には、Wax2に由来する芳香環が含まれる。また、Rax2に由来する重合性基の、炭素原子間の多重結合が開裂して、(A1)成分の主鎖を形成する。すなわち、該縮合環を構成する炭素原子の一部が(A1)成分の主鎖を構成する。
【0097】
前記式(a11−1)中、Rax02は、Wax2(芳香族炭化水素基)を構成する水素原子を置換する置換基である。
Rax02における置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルキルシリル基などが挙げられる。
Rax02における置換基としてのアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基がより好ましい。
Rax02における置換基としてのアルコキシ基は、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
Rax02における置換基としてのアシルオキシ基は、その炭素数が2〜6であることが好ましく、CHC(=O)−O−(アセトキシ基)、CC(=O)−O−がより好ましく、CHC(=O)−O−(アセトキシ基)が特に好ましい。
Rax02における置換基としてのアルキルシリル基は、炭素数3〜6のアルキルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチル−iso−プロピルシリル基、ジメチル−n−プロピルシリル基、ジメチル−n−ブチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基がより好ましく、トリメチルシリル基がさらに好ましい。
【0098】
前記式(a11−1)中、nax2は、0〜3の整数であり、0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
ax2が2以上の場合、複数のRax02が相互に結合して、環構造を形成してもよい。ここで形成する環構造は、炭化水素環であってもよいし複素環であってもよい。例えば、Wax2における同一の芳香環に結合する2つのRax02と、この2つのRax02が結合する芳香環(Wax2)の一辺(炭素原子間の結合)と、によって形成する環構造が挙げられる。
【0099】
上述した構成単位(a11)の好ましい具体例としては、下記一般式(a11−u1)で表される構成単位が挙げられる。
【0100】
【化24】
[式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Yax2は、ヘテロ原子を含む2価の連結基又は単結合である。Wax2は、(nax2+1)価の芳香族炭化水素基である。Rax02は、Wax2(芳香族炭化水素基)を構成する水素原子を置換する置換基である。nax2は、0〜3の整数である。nax2が2以上の場合、複数のRax02が相互に結合して環構造を形成してもよい。]
【0101】
前記式(a11−u1)中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。中でも、Rαは、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0102】
前記式(a11−u1)中、Yax2は、ヘテロ原子を含む2価の連結基又は単結合である。
Yax2における、ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、上記Yax0におけるヘテロ原子を含む2価の連結基と同様である。中でも、Yax2は、単結合、エステル結合[−C(=O)−O−、−O−C(=O)−]が好ましい。
【0103】
前記式(a11−u1)中、Wax2は、(nax2+1)価の芳香族炭化水素基である。Wax2における芳香族炭化水素基としては、芳香環から(nax2+1)個の水素原子を除いた基が挙げられる。ここでの芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は5〜30であることが好ましく、炭素数5〜20がより好ましく、炭素数6〜15がさらに好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい。該芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
また、Wax2における芳香族炭化水素基としては、2以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から(nax2+1)個の水素原子を除いた基も挙げられる。
上記の中でも、Wax2としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環から(nax2+1)個の水素原子を除いた基が好ましく、ベンゼン、ナフタレン、又はアントラセンから(nax2+1)個の水素原子を除いた基がより好ましく、ベンゼン又はナフタレンから(nax2+1)個の水素原子を除いた基がさらに好ましい。
【0104】
前記式(a11−u1)中、nax2は、0〜3の整数であり、0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0105】
かかる構成単位(a11)としては、例えば、下記の一般式(a11−u1−1)〜(a11−u1−4)でそれぞれ表される構成単位が好適に挙げられる。
【0106】
【化25】
[式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rβは、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基又はアルキルシリル基である。nax2は、0〜3の整数である。nax2が2以上の場合、複数のRβが相互に結合して、環構造を形成してもよい。n21、n22、n24及びn25は、それぞれ独立に、0又は1である。n23及びn26は、それぞれ独立に、1又は2である。]
【0107】
前記の式(a11−u1−1)〜(a11−u1−6)中、Rβにおけるアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルキルシリル基は、前記式(a11−1)中のRax02における置換基として例示したアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルキルシリル基と同様である。
【0108】
以下に、前記一般式(a11−1)で表される化合物から誘導される構成単位(構成単位(a11))の具体例を示す。
以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
【0109】
【化26】
【0110】
【化27】
【0111】
【化28】
【0112】
【化29】
【0113】
また、上述した構成単位(a11)としては、下記一般式(a11−u1−5)又は(a11−u1−6)で表される構成単位も好適に挙げられる。
【0114】
【化30】
[式中、Rβは、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基又はアルキルシリル基である。nax2は、0〜3の整数である。nax2が2以上の場合、複数のRβが相互に結合して、環構造を形成してもよい。]
【0115】
前記の式(a11−u1−5)及び(a11−u1−6)中、Rβにおけるアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルキルシリル基は、前記式(a11−1)中のRax02における置換基として例示したアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルキルシリル基と同様である。
【0116】
以下に、前記一般式(a11−u1−5)又は(a11−u1−6)で表される構成単位の具体例を示す。
【0117】
【化31】
【0118】
上記例示の中でも、構成単位(a11)は、一般式(a11−u1−1)〜(a11−u1−4)でそれぞれ表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、一般式(a11−u1−1)、(a11−u1−2)で表される構成単位がより好ましい。
これらの中でも、構成単位(a11)は、化学式(a11−u1−11)、(a11−u1−13)又は(a11−u1−21)のいずれかで表される構成単位が好ましい。
【0119】
(A1)成分が有する構成単位(a11)は、1種でもよく2種以上でもよい。
(A1)成分が構成単位(a11)を有する場合、(A1)成分中の構成単位(a11)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、5〜40モル%であることが好ましく、10〜35モル%がより好ましく、10〜30モル%がさらに好ましく、10〜20モル%が特に好ましい。
構成単位(a11)の割合を下限値以上とすることにより、耐エッチング性や感度、解像性、又はラフネスがより向上する。特に、一方、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとりやすくなる。
【0120】
≪構成単位(a12)≫
(A1)成分は、上述した構成単位(a0)及び構成単位(a10)に加えて、又は構成単位(a0)、構成単位(a10)及び構成単位(a11)に加えて、さらに、非酸解離性基を側鎖に含む構成単位(a12)を有していてもよい。
構成単位(a12)としては、例えば、下記一般式(a12−1)で表される構成単位が好適に挙げられる。
【0121】
【化32】
[式(a12−1)中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。Yax3は、単結合又は2価の連結基である。Lax3は−O−、−COO−、−CON(R’)−、−OCO−、−CONHCO−又は−CONHCS−であり、R’は水素原子又はメチル基を示す。但し、Lax3が−O−の場合、Yax3は−CO−にはならない。Rax3は、水素原子、脂肪族炭化水素基、ラクトン含有環式基、−SO−含有環式基又はカーボネート含有環式基である。但し、Rax3は非酸解離性基である。]
【0122】
前記式(a12−1)中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。
Rにおける炭素数1〜5のアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
Rにおける炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1〜5のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基がさらに好ましく、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0123】
前記式(a12−1)中、Yax3は、単結合又は2価の連結基である。
Yax3における2価の連結基としては、上述した一般式(a0−1)中のYax0における2価の連結基と同様のものが挙げられる。中でも、Yax3としては、単結合、エステル結合[−C(=O)−O−]、エーテル結合(−O−)、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又はこれらの組合せであることが好ましい。
【0124】
前記式(a12−1)中、Lax3は−O−、−COO−、−CON(R’)−、−OCO−、−CONHCO−又は−CONHCS−である。前記式中のR’は水素原子又はメチル基を示す。但し、Lax3が−O−の場合、Yax3は−CO−にはならない。
【0125】
前記式(a12−1)中、Rax3は、水素原子、脂肪族炭化水素基、ラクトン含有環式基、−SO−含有環式基又はカーボネート含有環式基である。但し、Rax3は非酸解離性基である。なお、「非酸解離性基」とは、露光により当該レジスト組成物中に酸が発生した際(例えば、露光により酸を発生する構成単位又は(B)成分から酸が発生した際)に、該酸が作用しても解離することなくそのまま当該構成単位中に残る基である。
【0126】
・脂肪族炭化水素基:
Rax3が、脂肪族炭化水素基である場合、該脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
Rax3における脂肪族炭化水素基が、直鎖状の脂肪族炭化水素基である場合、該直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数1〜5の直鎖状アルキル基が好ましく、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0127】
Rax3における非酸解離性の脂肪族炭化水素基が、環状の脂肪族炭化水素基である場合、該環状の脂肪族炭化水素基は、単環式基であっても多環式基であってもよい。該環式基は、レジスト組成物の樹脂成分に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
該環式基が単環式の脂肪族炭化水素基である場合、該単環式基は、炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましく、炭素数3〜6のシクロアルキル基がより好ましく、シクロヘキシル基がさらに好ましい。これらの単環式基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を置換基として有していてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。これらの中でも、置換基を有していないシクロヘキシル基が好ましい。
該環式基が多環式の脂肪族炭化水素基である場合、該多環式基は、炭素数4〜20の脂肪族多環式基が好ましく、炭素数6〜15の脂肪族多環式基がより好ましく、炭素数7〜12の脂肪族多環式基がさらに好ましい。特にトリシクロデシル基、アダマンチル基、テトラシクロドデシル基、イソボルニル基、ノルボルニル基から選ばれる少なくとも1種であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。これらの多環式基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を置換基として有していてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。これらの中でも、置換基を有していないアダマンチル基が好ましい。
【0128】
上記の中でも、Rax3における脂肪族炭化水素基としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基か好ましく、炭素数1〜5の直鎖状アルキル基がより好ましく、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0129】
式(a12−1)におけるRax3が脂肪族炭化水素基である場合の構成単位(a12)の具体例としては、例えば、下記式(a4−1)〜(a4−9)でそれぞれ表される構成単位が挙げられる。
【0130】
【化33】
[式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。]
【0131】
上記のほか、式(a12−1)におけるRax3が脂肪族炭化水素基である場合の構成単位(a12)としては、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類から誘導される構成単位も挙げられる。
【0132】
上記の中でも、Rax3が脂肪族炭化水素基である場合の構成単位(a12)としては、上記式(a4−2)、(a4−7)、(a4−8)、又は(a4−9)で表される構成単位が好ましく、式(a4−2)、(a4−8)で表される構成単位がより好ましく、式(a4−8)で表される構成単位がさらに好ましい。
【0133】
前記式(a12−1)中のRax3が脂肪族炭化水素基である場合、(A1)成分が構成単位(a12)を有することにより、形成されるレジストパターンのドライエッチング耐性が向上する。また、(A1)成分の疎水性が高まる。疎水性の向上は、特に溶剤現像プロセスの場合に、解像性、レジストパターン形状等の向上に寄与する。
【0134】
・ラクトン含有環式基:
「ラクトン含有環式基」とは、その環骨格中に−O−C(=O)−を含む環(ラクトン環)を含有する環式基をである。ラクトン環をひとつ目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。ラクトン含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
前記式(a12−1)中のRax3がラクトン含有環式基である場合、該ラクトン含有環式基としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、下記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)でそれぞれ表される基が挙げられる。下記一般式中、「*」は結合手である(以下、本明細書において同じ)。
【0135】
【化34】
[式中、Ra’21は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基又はシアノ基であり;R”は水素原子、アルキル基、ラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基、又は−SO−含有環式基である。A”は酸素原子(−O−)もしくは硫黄原子(−S−)を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子である。n’は0〜2の整数であり、m’は0又は1である。]
【0136】
前記式(a2−r−1)〜(a2−r−7)中、Ra’21におけるアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。該アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
Ra’21におけるアルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。該アルコキシ基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、前記Ra’21におけるアルキル基として挙げたアルキル基と酸素原子(−O−)とが連結した基が挙げられる。
Ra’21におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
Ra’21におけるハロゲン化アルキル基としては、前記Ra’21におけるアルキル基の水素原子の一部又は全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン化アルキル基としては、フッ素化アルキル基が好ましく、パーフルオロアルキル基が特に好ましい。
【0137】
Ra’21における−COOR”、−OC(=O)R”において、R”はいずれも水素原子、アルキル基、ラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基、又は−SO−含有環式基である。
R”におけるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれでもよく、炭素数は1〜15が好ましい。
R”が直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基の場合は、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜5であることがさらに好ましく、メチル基又はエチル基であることが特に好ましい。
R”が環状のアルキル基の場合は、炭素数3〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。具体的には、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
R”におけるラクトン含有環式基としては、前記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)でそれぞれ表される基と同様のものが挙げられる。
R”におけるカーボネート含有環式基としては、後述のカーボネート含有環式基と同様であり、具体的には一般式(ax3−r−1)〜(ax3−r−3)でそれぞれ表される基が挙げられる。
R”における−SO−含有環式基としては、後述の−SO−含有環式基と同様であり、具体的には一般式(a5−r−1)〜(a5−r−4)でそれぞれ表される基が挙げられる。
Ra’21におけるヒドロキシアルキル基としては、炭素数が1〜6であるものが好ましく、具体的には、前記Ra’21におけるアルキル基の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された基が挙げられる。
上記の中でも、Ra’21としては、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0138】
前記一般式(a2−r−2)、(a2−r−3)、(a2−r−5)中、A” における炭素数1〜5のアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。該アルキレン基が酸素原子または硫黄原子を含む場合、その具体例としては、前記アルキレン基の末端又は炭素原子間に−O−又は−S−が介在する基が挙げられ、たとえば−O−CH−、−CH−O−CH−、−S−CH−、−CH−S−CH−等が挙げられる。A”としては、炭素数1〜5のアルキレン基又は−O−が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
【0139】
下記に一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)でそれぞれ表される基の具体例を挙げる。
【0140】
【化35】
【0141】
【化36】
【0142】
・−SO−含有環式基:
「−SO−含有環式基」とは、その環骨格中に−SO−を含む環を含有する環式基であり、具体的には、−SO−における硫黄原子(S)が環式基の環骨格の一部を形成する環式基である。その環骨格中に−SO−を含む環をひとつ目の環として数え、該環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。−SO−含有環式基は、単環式基であってもよく多環式基であってもよい。
前記式(a12−1)中のRax3が−SO−含有環式基である場合、該−SO−含有環式基としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。−SO−含有環式基は、特に、その環骨格中に−O−SO−を含む環式基、すなわち、−O−SO−中の−O−S−が環骨格の一部を形成するスルトン(sultone)環を含有する環式基であることが好ましい。
−SO−含有環式基として、より具体的には、下記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−4)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0143】
【化37】
[式中、Ra’51は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基又はシアノ基である。R”は水素原子、アルキル基、ラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基、又は−SO−含有環式基である。A”は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子である。n’は0〜2の整数である。]
【0144】
前記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−2)中、A”は、前記一般式(a2−r−2)、(a2−r−3)、(a2−r−5)中のA”と同様である。
Ra’51におけるアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基としては、それぞれ前記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)中のRa’21についての説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
下記に一般式(a5−r−1)〜(a5−r−4)でそれぞれ表される基の具体例を挙げる。式中の「Ac」は、アセチル基を示す。
【0145】
【化38】
【0146】
【化39】
【0147】
【化40】
【0148】
・カーボネート含有環式基:
「カーボネート含有環式基」とは、その環骨格中に−O−C(=O)−O−を含む環(カーボネート環)を含有する環式基である。カーボネート環をひとつ目の環として数え、カーボネート環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。カーボネート含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
前記式(a12−1)中のRax3がカーボネート含有環式基である場合、該カーボネート含有環式基としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、下記一般式(ax3−r−1)〜(ax3−r−3)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0149】
【化41】
[式中、Ra’x31は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基又はシアノ基である。R”は、水素原子、アルキル基、ラクトン含有環式基、カーボネート含有環式基、又は−SO−含有環式基である。A”は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子である。p’は0〜3の整数であり、q’は0又は1である。]
【0150】
前記一般式(ax3−r−2)〜(ax3−r−3)中、A”は、前記一般式(a2−r−2)、(a2−r−3)、(a2−r−5)中のA”と同様である。
Ra’ 31におけるアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基としては、それぞれ前記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)中のRa’21についての説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
下記に一般式(ax3−r−1)〜(ax3−r−3)でそれぞれ表される基の具体例を挙げる。
【0151】
【化42】
【0152】
上記式(a12−1)中のRax3におけるラクトン含有環式基、−SO−含有環式基、カーボネート含有環式基としては、それぞれ、上述した一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)でそれぞれ表される基、一般式(a5−r−1)〜(a5−r−4)でそれぞれ表される基、一般式(ax3−r−1)〜(ax3−r−3)でそれぞれ表される基が好適に挙げられる。
中でも、Rax3は、ラクトン含有環式基又は−SO−含有環式基が好ましく、前記一般式(a2−r−1)、(a2−r−2)、(a2−r−6)又は(a5−r−1)でそれぞれ表される基がより好ましい。具体的には、前記化学式(r−lc−1−1)〜(r−lc−1−7)、(r−lc−2−1)〜(r−lc−2−18)、(r−lc−6−1)、(r−sl−1−1)、(r−sl−1−18)でそれぞれ表される、いずれかの基がより好ましい。さらに好ましくは、Rax3は、ラクトン含有環式基であり、前記化学式(r−1c−1−1)又は(r−1c−1−2)が好適な例として挙げられる。
【0153】
上記一般式(a12−1)中のRax3が、ラクトン含有環式基、−SO−含有環式基、カーボネート含有環式基である場合、(A1)成分が構成単位(a12)を有することにより、(A1)成分の親水性が高くなり、レジスト膜の基板への密着性を高める上で有効である。
【0154】
(A1)成分が有する構成単位(a12)は、1種でもよく2種以上でもよい。
(A1)成分が構成単位(a12)を有する場合、構成単位(a12)の割合は、該(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、1〜50モル%であることが好ましく、3〜40モル%であることがより好ましく、5〜30モル%であることがさらに好ましく、10〜20モル%であることが特に好ましい。
構成単位(a12)の割合が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、構成単位(a12)を含有させることによる効果が充分に得られ、一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、他の構成単位とのバランスをとることができ、種々のリソグラフィー特性及びパターン形状が良好となる。
【0155】
≪その他構成単位≫
(A1)成分は、構成単位(a0)、構成単位(a10)、構成単位(a11)、構成単位(a12)以外のその他構成単位を有してもよい。
かかるその他構成単位を誘導する化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシ基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のジカルボン酸ジエステル類;酢酸ビニル等のビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド結合含有重合性化合物類;エポキシ基含有重合性化合物類等が挙げられる。
【0156】
本実施形態のレジスト組成物において、(A)成分は、構成単位(a0)及び構成単位(a10)を有し、且つ上記一般式(1)で表される構成単位を有しない高分子化合物(A1)((A1)成分)を含むものである。
好ましい(A1)成分としては、構成単位(a0)と構成単位(a10)と構成単位(a11)とを少なくとも有し、且つ一般式(1)で表される構成単位を有しない高分子化合物が挙げられる。または、(A1)成分としては、構成単位(a0)と構成単位(a10)と構成単位(a12)とを少なくとも有し、且つ一般式(1)で表される構成単位を有しない高分子化合物が挙げられる。
【0157】
具体的には、構成単位(a0)と構成単位(a10)との繰り返し構造を有する高分子化合物、構成単位(a0)と構成単位(a10)と構成単位(a11)との繰り返し構造を有する高分子化合物、構成単位(a0)と構成単位(a10)と構成単位(a12)との繰り返し構造を有する高分子化合物が好適に挙げられる。
【0158】
(A1)成分の重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではなく、500〜50000が好ましく、1000〜30000がより好ましく、2000〜20000がさらに好ましい。
(A1)成分のMwがこの範囲の好ましい上限値以下であると、レジストとして用いるのに充分なレジスト溶剤への溶解性があり、この範囲の好ましい下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状がより良好となる。
【0159】
(A1)成分の分散度(Mw/Mn)は、特に限定されず、1.0〜4.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.5〜2.5が特に好ましい。尚、Mnは数平均分子量を示す。
【0160】
本実施形態のレジスト組成物が含有する(A1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のレジスト組成物は、(A)成分として、前記(A1)成分に該当しない、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分を併用してもよい。
(A)成分中の(A1)成分の割合は、(A)成分の総質量に対し、25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。(A1)成分の割合が25質量%以上であると、高感度化や解像性、ラフネス改善などの種々のリソグラフィー特性に優れたレジストパターンが形成されやすくなる。
【0161】
(A1)成分は、各構成単位を誘導するモノマーを重合溶媒に溶解し、ここに、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート(たとえばV−601など)等のラジカル重合開始剤を加えて重合することにより製造することができる。あるいは、(A1)成分は、各構成単位を誘導するモノマーにおいて官能基が保護されたモノマーを重合溶媒に溶解し、ここに、上記のようなラジカル重合開始剤を加えて重合し、その後、脱保護反応を行うことにより製造することができる。なお、重合の際に、たとえばHS−CH−CH−CH−C(CF−OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、末端に−C(CF−OH基を導入してもよい。このように、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基が導入された共重合体は、現像欠陥の低減やLER(ラインエッジラフネス:ライン側壁の不均一な凹凸)の低減に有効である。
【0162】
本実施形態のレジスト組成物において、(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のレジスト組成物中、(A)成分の含有量は、形成しようとするレジスト膜厚等に応じて調整すればよい。
【0163】
<その他の成分>
本実施形態のレジスト組成物は、(A)成分に加えて、さらに、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、後述する(B)〜(F)成分、(S)成分等が挙げられる。
【0164】
≪(B)成分≫
本実施形態のレジスト組成物は、(A)成分に加えて、さらに、酸発生剤成分(以下「(B)成分」という。)を含有してもよい。
(B)成分としては、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを使用することができる。
このような酸発生剤としては、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤;ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤;ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが挙げられる。なかでも、オニウム塩系酸発生剤を用いるのが好ましい。
【0165】
オニウム塩系酸発生剤としては、例えば下記一般式(b−0)で表される化合物を用いることができる。
【0166】
【化43】
[式中、R100は、置換基を有していてもよいハロゲン化アルキル基、置換基を有していてもよい環式基、または置換基を有していてもよいアルケニル基を表す。mは1以上の整数であって、M’m+はm価のオニウムカチオンである。]
【0167】
{アニオン部}
式(b−0)中、R100は、置換基を有していてもよいハロゲン化アルキル基、置換基を有していてもよい環式基、または置換基を有していてもよいアルケニル基を表す。
100におけるハロゲン化アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
ハロゲン化アルキル基におけるアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基である場合、炭素数は1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが特に好ましく;環状のアルキル基である場合、炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜10であることがさらに好ましく、炭素数6〜10であることが特に好ましい。
ハロゲン化アルキル基においては、当該ハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子および水素原子の合計数に対するハロゲン原子の数の割合(ハロゲン化率(%))が、10〜100%であることが好ましく、50〜100%であることが好ましく、100%が最も好ましい。該ハロゲン化率が高いほど、酸の強度が強くなるため好ましい。
【0168】
前記R100における環式基は、環状の炭化水素基であることが好ましく、該環状の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよいが、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよいが、通常は飽和であることが好ましい。
前記R100における環状の脂肪族炭化水素基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等から1個以上の水素原子を除いた基;カンファー等から1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。これらの中でも、カンファーから1個以上の水素原子を除いた基がより好ましい。
前記R100におけるアルケニル基は、炭素数2〜10のアルケニル基であることが好ましい。
前記R100において、「置換基を有していてもよい」とは、前記ハロゲン化アルキル基、環式基、またはアルケニル基における水素原子の一部または全部が置換基(水素原子以外の他の原子または基)で置換されていてもよいことを意味する。
100における置換基の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0169】
前記R100における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヘテロ原子、アルキル基等が挙げられる。
前記ハロゲン原子、アルキル基としては、R100において、ハロゲン化アルキル基におけるハロゲン原子、アルキル基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
前記ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。
【0170】
前記式(b−0)で表される化合物のアニオン部「R100−SO」の具体例としては、トリフルオロメタンスルホネート、ヘプタフルオロプロパンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、1−アダマンタンスルホネート、2−ノルボルナンスルホネート、d−カンファー−10−スルホネート、ベンゼンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート等が挙げられる。
【0171】
また、オニウム塩系酸発生剤としては、前記一般式(b−0)で表される化合物以外にも、例えば、下記の一般式(b−1)で表される化合物(以下「(b−1)成分」ともいう)、一般式(b−2)で表される化合物(以下「(b−2)成分」ともいう)又は一般式(b−3)で表される化合物(以下「(b−3)成分」ともいう)を用いることもできる。
【0172】
【化44】
[式中、R101、R104〜R108はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。R104、R105は、相互に結合して環を形成していてもよい。R102はフッ素原子又は炭素数1〜5のフッ素化アルキル基である。Y101は単結合又は酸素原子を含む2価の連結基である。V101〜V103はそれぞれ独立に単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。L101〜L102はそれぞれ独立に単結合又は酸素原子である。L103〜L105はそれぞれ独立に単結合、−CO−又は−SO−である。mは1以上の整数であって、M’m+はm価のオニウムカチオンである。]
【0173】
{アニオン部}
・(b−1)成分のアニオン部
式(b−1)中、R101は、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。
【0174】
置換基を有していてもよい環式基:
該環式基は、環状の炭化水素基であることが好ましく、該環状の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
【0175】
101における芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素数は3〜30であることが好ましく、炭素数5〜30であることがより好ましく、炭素数5〜20がさらに好ましく、炭素数6〜15が特に好ましく、炭素数6〜10が最も好ましい。但し、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
101における芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、又はこれらの芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
101における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香環から水素原子1つを除いた基(アリール基:例えばフェニル基、ナフチル基など)、前記芳香環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えばベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0176】
101における環状の脂肪族炭化水素基は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基が挙げられる。
この構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子1個を除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、炭素数3〜12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3〜6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7〜30のものが好ましい。中でも、該ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン;ステロイド骨格を有する環式基等の縮合環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンがより好ましい。
【0177】
なかでも、R101における環状の脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカン又はポリシクロアルカンから水素原子1つ以上を除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンから水素原子1つを除いた基がより好ましく、アダマンチル基、ノルボルニル基が特に好ましく、アダマンチル基が最も好ましい。
【0178】
脂環式炭化水素基に結合してもよい、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数1〜6がより好ましく、炭素数1〜4がさらに好ましく、炭素数1〜3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[−CH−]、エチレン基[−(CH−]、トリメチレン基[−(CH−]、テトラメチレン基[−(CH−]、ペンタメチレン基[−(CH−]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、−CH(CH)−、−CH(CHCH)−、−C(CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CH)(CHCHCH)−、−C(CHCH−等のアルキルメチレン基;−CH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−、−C(CHCH−、−CH(CHCH)CH−、−C(CHCH−CH−等のアルキルエチレン基;−CH(CH)CHCH−、−CHCH(CH)CH−等のアルキルトリメチレン基;−CH(CH)CHCHCH−、−CHCH(CH)CHCH−等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0179】
また、R101における環状の炭化水素基は、複素環等のようにヘテロ原子を含んでもよい。R101における環状の炭化水素基として、具体的には、上記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、上記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−4)でそれぞれ表される−SO−含有環式基、その他下記の化学式(r−hr−1)〜(r−hr−16)でそれぞれ表される複素環式基が挙げられる。
【0180】
【化45】
【0181】
また、置換基を有していてもよい環式基としては、酸解離性基も挙げられる。
【0182】
101の環式基における置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。
置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基がより好ましい。
置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等の水素原子の一部又は全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
置換基としてのカルボニル基は、環状の炭化水素基を構成するメチレン基(−CH−)を置換する基である。
【0183】
置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基:
101の鎖状のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素数が1〜20であることが好ましく、炭素数1〜15であることがより好ましく、炭素数1〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が3〜20であることが好ましく、炭素数3〜15であることがより好ましく、炭素数3〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
また、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基としては、酸解離性基も挙げられる。
【0184】
置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基:
101の鎖状のアルケニル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、炭素数が2〜10であることが好ましく、炭素数2〜5がより好ましく、炭素数2〜4がさらに好ましく、炭素数3が特に好ましい。直鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、1−メチルビニル基、2−メチルビニル基、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基などが挙げられる。
鎖状のアルケニル基としては、上記の中でも、直鎖状のアルケニル基が好ましく、ビニル基、プロペニル基がより好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0185】
101の鎖状のアルキル基又はアルケニル基における置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、上述したR101における環式基等が挙げられる。
【0186】
上記の中でも、R101は、置換基を有していてもよい環式基が好ましく、置換基を有していてもよい環状の炭化水素基であることがより好ましい。より具体的には、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;前記一般式(a2−r−1)、(a2−r−3)〜(a2−r−7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基;前記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−4)でそれぞれ表される−SO−含有環式基などが好ましい。
【0187】
前記式(b−1)中、R102は、炭素数1〜5のフッ素化アルキル基又はフッ素原子である。
102は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、又はフッ素原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
【0188】
前記式(b−1)中、Y101は、酸素原子を含む2価の連結基又は単結合である。
101における2価の連結基は、酸素原子以外の原子を含有してもよい。酸素原子以外の原子としては、たとえば炭素原子、水素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
酸素原子を含む2価の連結基としては、例えば、酸素原子(エーテル結合:−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、オキシカルボニル基(−O−C(=O)−)、アミド結合(−C(=O)−NH−)、カルボニル基(−C(=O)−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)等の非炭化水素系の酸素原子含有連結基;該非炭化水素系の酸素原子含有連結基とアルキレン基との組み合わせ等が挙げられる。この組み合わせに、さらにスルホニル基(−SO−)が連結されていてもよい。
かかる酸素原子を含む2価の連結基としては、例えば、下記一般式(y−al−1)〜(y−al−7)でそれぞれ表される連結基が挙げられる。
【0189】
【化46】
[式中、V’101は、炭素数1〜5のアルキレン基又は単結合であり、V’102は、炭素数1〜30の2価の飽和炭化水素基又は単結合である。]
【0190】
V’102における2価の飽和炭化水素基は、炭素数1〜30のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0191】
V’101およびV’102におけるアルキレン基としては、それぞれ、直鎖状のアルキレン基でもよく分岐鎖状のアルキレン基でもよく、直鎖状のアルキレン基が好ましい。
V’101およびV’102におけるアルキレン基として、具体的には、メチレン基[−CH−];−CH(CH)−、−CH(CHCH)−、−C(CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CH)(CHCHCH)−、−C(CHCH−等のアルキルメチレン基;エチレン基[−CHCH−];−CH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−、−C(CHCH−、−CH(CHCH)CH−等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n−プロピレン基)[−CHCHCH−];−CH(CH)CHCH−、−CHCH(CH)CH−等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[−CHCHCHCH−];−CH(CH)CHCHCH−、−CHCH(CH)CHCH−等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[−CHCHCHCHCH−]等が挙げられる。
また、V’101又はV’102における前記アルキレン基における一部のメチレン基が、炭素数5〜10の2価の脂肪族環式基で置換されていてもよい。当該脂肪族環式基は、前記R101における環状の脂肪族炭化水素基から水素原子をさらに1つ除いた2価の基が好ましく、シクロへキシレン基、1,5−アダマンチレン基又は2,6−アダマンチレン基がより好ましい。
【0192】
101としては、エステル結合を含む2価の連結基、又はエーテル結合を含む2価の連結基が好ましく、上記式(y−al−1)〜(y−al−5)でそれぞれ表される連結基がより好ましい。
【0193】
前記式(b−1)中、V101は、アルキレン基、フッ素化アルキレン基又は単結合である。
101におけるアルキレン基、フッ素化アルキレン基は、それぞれ、炭素数1〜4であることが好ましい。V101におけるフッ素化アルキレン基としては、V101におけるアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。なかでも、V101は、単結合、又は炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましい。
【0194】
(b−1)成分のアニオン部の具体例としては、たとえば、Y101が単結合となる場合、トリフルオロメタンスルホネートアニオンやパーフルオロブタンスルホネートアニオン等のフッ素化アルキルスルホネートアニオンが挙げられ;Y101が酸素原子を含む2価の連結基である場合、下記式(an−1)〜(an−3)のいずれかで表されるアニオンが挙げられる。
【0195】
【化47】
[式中、R”101は、置換基を有していてもよい脂肪族環式基、前記式(r−hr−1)〜(r−hr−6)でそれぞれ表される基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基であり;R”102は、置換基を有していてもよい脂肪族環式基、前記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、又は前記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−4)でそれぞれ表される−SO−含有環式基であり;R”103は、置換基を有していてもよい芳香族環式基、置換基を有していてもよい脂肪族環式基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり;v”はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、q”はそれぞれ独立に1〜20の整数であり、t”は1〜3の整数であり、n”は0または1である。]
【0196】
R”101、R”102およびR”103の置換基を有していてもよい脂肪族環式基は、前記R101における環状の脂肪族炭化水素基として例示した基であることが好ましい。前記置換基としては、R101における環状の脂肪族炭化水素基を置換してもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0197】
R”103における置換基を有していてもよい芳香族環式基は、前記R101における環状の炭化水素基における芳香族炭化水素基として例示した基であることが好ましい。前記置換基としては、R101における該芳香族炭化水素基を置換してもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0198】
R”101における置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基は、前記R101における鎖状のアルキル基として例示した基であることが好ましい。R”103における置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基は、前記R101における鎖状のアルケニル基として例示した基であることが好ましい。
【0199】
・(b−2)成分のアニオン部
式(b−2)中、R104、R105は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、または置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ、式(b−1)中のR101と同様のものが挙げられる。ただし、R104、R105は、相互に結合して環を形成していてもよい。
104、R105は、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のフッ素化アルキル基であることがより好ましい。
該鎖状のアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜7、さらに好ましくは炭素数1〜3である。R104、R105の鎖状のアルキル基の炭素数は、上記炭素数の範囲内において、レジスト用溶剤への溶解性も良好である等の理由により、小さいほど好ましい。また、R104、R105の鎖状のアルキル基においては、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また、200nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するため好ましい。前記鎖状のアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基である。
【0200】
式(b−2)中、V102、V103は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基、またはフッ素化アルキレン基であり、それぞれ、式(b−1)中のV101と同様のものが挙げられる。
式(b−2)中、L101、L102は、それぞれ独立に単結合又は酸素原子である。
【0201】
・(b−3)成分のアニオン部
式(b−3)中、R106〜R108は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ、式(b−1)中のR101と同様のものが挙げられる。
103〜L105は、それぞれ独立に、単結合、−CO−又は−SO−である。
【0202】
上記の中でも、(B)成分としては、(b−0)成分または(b−1)成分が好ましい。
(b−1)成分のアニオン部としては、フッ素化アルキルスルホネートアニオンが好ましく、パーフルオロブタンスルホネートアニオンがより好ましい。
【0203】
(B)成分の好ましいアニオン部として具体的には、ノナフルオロブタンスルホネート、d−カンファー−10−スルホネートが挙げられる。
【0204】
・・カチオン部((M’m+1/m
前記式(b−1)中、M’m+は、m価のオニウムカチオンである。mは1以上の整数である。
M’m+のオニウムカチオンとしては、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンが好ましい。
好ましいカチオン部((M’m+1/m)としては、下記の一般式(ca−1)〜(ca−5)でそれぞれ表される有機カチオンが挙げられる。
【0205】
【化48】
[式中、R201〜R207、およびR211〜R212は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアルケニル基を表す。R201〜R203、R206〜R207、R211〜R212は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。R208〜R209は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。R210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよい−SO−含有環式基である。L201は、−C(=O)−または−C(=O)−O−を表す。Y201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基またはアルケニレン基を表す。xは1または2である。W201は(x+1)価の連結基を表す。Wは、置換基を有していてもよい炭化水素基である。Rs1〜Rs4は、それぞれ独立に、置換基である。nb1〜nb4は、それぞれ独立に、0〜3の整数である。]
【0206】
前記の式(ca−1)〜(ca−4)中、R201〜R207、およびR211〜R212におけるアリール基としては、炭素数6〜20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
201〜R207、およびR211〜R212におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素数1〜30のものが好ましい。
201〜R207、およびR211〜R212におけるアルケニル基としては、炭素数が2〜10であることが好ましい。
201〜R207、およびR210〜R212が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、アリール基、下記の一般式(ca−r−1)〜(ca−r−7)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0207】
【化49】
[式中、R’201はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。]
【0208】
R’201の置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基は、上述の式(b−1)中のR101と同様のものが挙げられる他、置換基を有していてもよい環式基又は置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基として、酸解離性基も挙げられる。
【0209】
上記の中でも、R201〜R207、およびR210〜R212が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5の直鎖状アルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0210】
201〜R203、R206〜R207、R211〜R212は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子や、カルボニル基、−SO−、−SO−、−SO−、−COO−、−CONH−または−N(R)−(該Rは炭素数1〜5のアルキル基である。)等の官能基を介して結合してもよい。形成される環としては、式中のイオウ原子をその環骨格に含む1つの環が、イオウ原子を含めて、3〜10員環であることが好ましく、5〜7員環であることが特に好ましい。形成される環の具体例としては、たとえばチオフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環、チアントレン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、9H−チオキサンテン環、チオキサントン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、テトラヒドロチオフェニウム環、テトラヒドロチオピラニウム環等が挙げられる。
【0211】
208〜R209は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、アルキル基となる場合、相互に結合して環を形成してもよい。
【0212】
210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよい−SO−含有環式基である。
210におけるアリール基としては、炭素数6〜20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
210におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素数1〜30のものが好ましい。
210におけるアルケニル基としては、炭素数が2〜10であることが好ましい。
210における、置換基を有していてもよい−SO−含有環式基としては、「−SO−含有多環式基」が好ましく、上記一般式(a5−r−1)で表される基がより好ましい。
【0213】
201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基又はアルケニレン基を表す。
201におけるアリーレン基は、上述の式(b−1)中のR101における芳香族炭化水素基として例示したアリール基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
201におけるアルキレン基、アルケニレン基は、上述の式(b−1)中のR101における鎖状のアルキル基、鎖状のアルケニル基として例示した基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0214】
前記式(ca−4)中、xは、1または2である。
201は、(x+1)価、すなわち2価または3価の連結基である。
201における2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が好ましく、上述したYax0と同様の、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が例示できる。W201における2価の連結基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、環状であることが好ましい。なかでも、アリーレン基の両端に2個のカルボニル基が組み合わされた基が好ましい。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
201における3価の連結基としては、前記W201における2価の連結基から水素原子を1個除いた基、前記2価の連結基にさらに前記2価の連結基が結合した基などが挙げられる。W201における3価の連結基としては、アリーレン基に2個のカルボニル基が結合した基が好ましい。
【0215】
前記式(ca−5)中、Wは、置換基を有していてもよい炭化水素基である。
における炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
【0216】
・脂肪族炭化水素基
における2価の炭化水素基としての脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0217】
・・直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基
前記直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましく、1〜3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[−CH−]、エチレン基[−(CH−]、トリメチレン基[−(CH−]、テトラメチレン基[−(CH−]、ペンタメチレン基[−(CH−]等が挙げられる。
前記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が2〜10であることが好ましく、炭素数3〜6がより好ましく、炭素数3又は4がさらに好ましく、炭素数3が最も好ましい。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、−CH(CH)−、−CH(CHCH)−、−C(CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CH)(CHCHCH)−、−C(CHCH−等のアルキルメチレン基;−CH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−、−C(CHCH−、−CH(CHCH)CH−、−C(CHCH−CH−等のアルキルエチレン基;−CH(CH)CHCH−、−CHCH(CH)CH−等のアルキルトリメチレン基;−CH(CH)CHCHCH−、−CHCH(CH)CHCH−等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0218】
・・構造中に環を含む脂肪族炭化水素基
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、前記と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、炭素数3〜12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては炭素数3〜6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては炭素数7〜12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0219】
・芳香族炭化水素基
芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。
前記Wにおける2価の炭化水素基としての芳香族炭化水素基は、炭素数が3〜30が好ましく、炭素数5〜30がより好ましく、炭素数5〜20がさらに好ましく、炭素数6〜15が特に好ましく、炭素数6〜10が最も好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環;等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
該芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基、好ましくはフェニレン基、ナフチレン基);前記芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基);等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0220】
の炭化水素基が有していてよい置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、オキソ基(=O)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH)等が挙げられる。
【0221】
なかでも、Wとしては、芳香族炭化水素基が好ましく、芳香族炭化水素基が有する芳香環としてはベンゼン、ビフェニル又はナフタレンが好ましく、ベンゼン、ビフェニルがより好ましい。
【0222】
前記式(ca−5)中、Rs1〜Rs4は、それぞれ独立に、置換基である。
s1〜Rs4の各置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、アリール基、アリールチオ基、上記の一般式(ca−r−1)〜(ca−r−7)でそれぞれ表される基が挙げられる。
置換基としてのアリールチオ基としては、フェニルチオ基又はビフェニルチオ基が挙げられる。
【0223】
前記式(ca−5)中、nb1〜nb4は、それぞれ独立に、0〜3の整数であり、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0224】
前記式(ca−1)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca−1−1)〜(ca−1−75)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0225】
【化50】
【0226】
【化51】
【0227】
【化52】
[式中、g1、g2、g3は繰返し数を示し、g1は1〜5の整数であり、g2は0〜20の整数であり、g3は0〜20の整数である。]
【0228】
【化53】
【0229】
【化54】
[式中、R”201は水素原子又は置換基であって、該置換基としては前記R201〜R207、およびR210〜R212が有していてもよい置換基として挙げたものと同様である。]
【0230】
前記式(ca−2)で表される好適なカチオンとして具体的には、ジフェニルヨードニウムカチオン、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン等が挙げられる。
【0231】
前記式(ca−3)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca−3−1)〜(ca−3−6)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0232】
【化55】
【0233】
前記式(ca−4)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca−4−1)〜(ca−4−2)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0234】
【化56】
【0235】
前記式(ca−5)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca−5−1)〜(ca−5−2)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0236】
【化57】
【0237】
上記の中でも、(B)成分のカチオン部((M’m+1/m)は、一般式(ca−1)で表されるカチオンが好ましく、式(ca−1−1)〜(ca−1−75)でそれぞれ表されるカチオンがより好ましい。
【0238】
以下に好適な(B)成分の具体例を挙げる。
【0239】
【化58】
【0240】
本実施形態のレジスト組成物において、(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のレジスト組成物中、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、1〜40質量部であることが好ましく、5〜35質量部であることがより好ましく、9〜30質量部であることがさらに好ましく、9〜15質量部であることが特に好ましい。
(B)成分の含有量が前記の好ましい下限値以上であると、レジストパターン形成において、感度、解像性能、LWR(ラインワイズラフネス)低減、形状等のリソグラフィー特性がより向上する。一方、好ましい上限値以下であると、レジスト組成物の各成分を有機溶剤に溶解した際、均一な溶液が得られやすく、レジスト組成物としての保存安定性がより高まる。
【0241】
≪(D)成分≫
本実施形態のレジスト組成物は、(A)成分に加えて、さらに、レジスト組成物において露光により発生する酸の拡散を制御する酸拡散制御剤成分(以下「(D)成分」という。)を含有することが好ましい。
【0242】
・(D1)成分
本実施形態のレジスト組成物は、(D)成分として、露光により分解して酸拡散制御性を失う光崩壊性塩基(D1)((D1)成分)を含有することが好ましい。
この(D1)成分を含有するレジスト組成物とすることで、レジストパターンを形成する際に、レジスト膜の露光部と未露光部とのコントラストをより向上させることができる。
(D1)成分としては、酸拡散制御剤成分のうち露光により分解して酸拡散制御性を失うものであれば特に限定されず、下記一般式(d1−1)で表される化合物(以下「(d1−1)成分」という。)、下記一般式(d1−2)で表される化合物(以下「(d1−2)成分」という。)及び下記一般式(d1−3)で表される化合物(以下「(d1−3)成分」という。)からなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
(d1−1)〜(d1−3)成分は、それぞれ、レジスト膜の露光部では分解して酸拡散制御性(塩基性)を失うためクエンチャーとして作用せず、レジスト膜の未露光部ではクエンチャーとして作用する。
【0243】
【化59】
[式中、Rd〜Rdは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。但し、式(d1−2)中のRdにおける、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していないものとする。Ydは、単結合又は2価の連結基である。mは1以上の整数であって、Mm+は、それぞれ独立に、m価の有機カチオンである。]
【0244】
{(d1−1)成分}
・・アニオン部
式(d1−1)中、Rdは、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ前記式(b−1)中のR101と同様のものが挙げられる。
これらのなかでも、Rdとしては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい脂肪族環式基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましい。
これらの基が有していてもよい置換基としては、水酸基、オキソ基、アルキル基、アリール基、フッ素原子、フッ素化アルキル基、上記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、エーテル結合、エステル結合、又はこれらの組み合わせが挙げられる。エーテル結合やエステル結合を置換基として含む場合、アルキレン基を介していてもよく、この場合の置換基としては、上記の式(y−al−1)〜(y−al−5)でそれぞれ表される連結基が好ましい。これらの中でも、置換基としては、水酸基が好ましい。
前記芳香族炭化水素基としては、フェニル基又はナフチル基がより好ましい。
前記脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
前記鎖状のアルキル基としては、炭素数が1〜10であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基;1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基等の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0245】
前記鎖状のアルキル基が置換基としてフッ素原子又はフッ素化アルキル基を有するフッ素化アルキル基である場合、フッ素化アルキル基の炭素数は、1〜11が好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜4がさらに好ましい。該フッ素化アルキル基は、フッ素原子以外の原子を含有してもよい。フッ素原子以外の原子としては、例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
Rdとしては、直鎖状のアルキル基を構成する一部又は全部の水素原子がフッ素原子により置換されたフッ素化アルキル基であることが好ましく、直鎖状のアルキル基を構成する水素原子の全てがフッ素原子で置換されたフッ素化アルキル基(直鎖状のパーフルオロアルキル基)であることが特に好ましい。
【0246】
以下に、(d1−1)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0247】
【化60】
【0248】
・・カチオン部
式(d1−1)中、Mm+は、m価の有機カチオンである。
m+の有機カチオンとしては、前記一般式(ca−1)〜(ca−4)でそれぞれ表されるカチオンと同様のものが好適に挙げられ、前記一般式(ca−1)で表されるカチオンがより好ましく、前記式(ca−1−1)〜(ca−1−75)でそれぞれ表されるカチオンがさらに好ましい。
(d1−1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0249】
{(d1−2)成分}
・・アニオン部
式(d1−2)中、Rdは、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、前記式(b−1)中のR101と同様のものが挙げられる。
ただし、Rdにおける、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していない(フッ素置換されていない)ものとする。これにより、(d1−2)成分のアニオンが適度な弱酸アニオンとなり、(D)成分としてのクエンチング能が向上する。
Rdとしては、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましい。鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数3〜10であることがより好ましい。脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等から1個以上の水素原子を除いた基(置換基を有していてもよい);カンファー等から1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
Rdの炭化水素基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記式(d1−1)のRdにおける炭化水素基(芳香族炭化水素基、脂肪族環式基、鎖状のアルキル基)が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0250】
以下に、(d1−2)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0251】
【化61】
【0252】
・・カチオン部
式(d1−2)中、Mm+は、m価の有機カチオンであり、前記式(d1−1)中のMm+と同様である。
(d1−2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0253】
{(d1−3)成分}
・・アニオン部
式(d1−3)中、Rdは、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、前記式(b−1)中のR101と同様のものが挙げられ、フッ素原子を含む環式基、鎖状のアルキル基、又は鎖状のアルケニル基であることが好ましい。中でも、フッ素化アルキル基が好ましく、前記Rdのフッ素化アルキル基と同様のものがより好ましい。
【0254】
式(d1−3)中、Rdは、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、前記式(b−1)中のR101と同様のものが挙げられる。
なかでも、置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、環式基であることが好ましい。
Rdにおけるアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。Rdのアルキル基の水素原子の一部が水酸基、シアノ基等で置換されていてもよい。
Rdにおけるアルコキシ基は、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜5のアルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。なかでも、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0255】
Rdにおけるアルケニル基は、上記式(b−1)中のR101と同様のものが挙げられ、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基が好ましい。これらの基は、さらに置換基として、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を有していてもよい。
【0256】
Rdにおける環式基は、上記式(b−1)中のR101と同様のものが挙げられ、シクロペンタン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた脂環式基、又は、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基が好ましい。Rdが脂環式基である場合、レジスト組成物が有機溶剤に良好に溶解することにより、リソグラフィー特性が良好となる。また、Rdが芳香族基である場合、該レジスト組成物が光吸収効率に優れ、感度やリソグラフィー特性が良好となる。
【0257】
式(d1−3)中、Ydは、単結合又は2価の連結基である。
Ydにおける2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基)、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が挙げられる。これらは、それぞれ、上述した一般式(a10−u1)中のYax1における、ヘテロ原子を含む2価の連結基と同様のものが挙げられる。
Ydとしては、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、アルキレン基又はこれらの組み合わせであることが好ましい。アルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることがより好ましく、メチレン基又はエチレン基であることがさらに好ましい。
【0258】
以下に、(d1−3)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0259】
【化62】
【0260】
【化63】
【0261】
・・カチオン部
式(d1−3)中、Mm+は、m価の有機カチオンであり、前記式(d1−1)中のMm+と同様である。
(d1−3)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0262】
(D1)成分は、上記(d1−1)〜(d1−3)成分のいずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レジスト組成物が(D1)成分を含有する場合、レジスト組成物中、(D1)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、0.5〜8質量部がより好ましく、1〜8質量部がさらに好ましい。
(D1)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、特に良好なリソグラフィー特性及びレジストパターン形状が得られやすい。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、感度を良好に維持でき、スループットにも優れる。
【0263】
・(D2)成分
また、本実施形態のレジスト組成物は、(D)成分として、上記の(D1)成分に該当しない含窒素有機化合物成分(以下「(D2)成分」という。)を含有してもよい。
(D2)成分としては、酸拡散制御剤として作用するもので、かつ、(D1)成分に該当しないものであれば特に限定されず、公知のものから任意に用いればよい。なかでも、脂肪族アミンが好ましく、この中でも特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンがより好ましい。
脂肪族アミンとは、1つ以上の脂肪族基を有するアミンであり、該脂肪族基は炭素数が1〜12であることが好ましい。
脂肪族アミンとしては、アンモニアNHの水素原子の少なくとも1つを、炭素数12以下のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換したアミン(アルキルアミンもしくはアルキルアルコールアミン)又は環式アミンが挙げられる。
アルキルアミン及びアルキルアルコールアミンの各具体例としては、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン(トリアミルアミン)、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。これらの中でも、炭素数5〜10のトリアルキルアミンがさらに好ましく、トリ−n−ペンチルアミン又はトリ−n−オクチルアミンが特に好ましい。
【0264】
環式アミンとしては、例えば、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環化合物が挙げられる。該複素環化合物としては、単環式のもの(脂肪族単環式アミン)であっても多環式のもの(脂肪族多環式アミン)であってもよい。
脂肪族単環式アミンとして、具体的には、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
脂肪族多環式アミンとしては、炭素数が6〜10のものが好ましく、具体的には、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0265】
その他脂肪族アミンとしては、トリス(2−メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、トリエタノールアミントリアセテート等が挙げられ、トリエタノールアミントリアセテートが好ましい。
【0266】
また、(D2)成分としては、芳香族アミンを用いてもよい。
芳香族アミンとしては、4−ジメチルアミノピリジン、ピロール、インドール、ピラゾール、イミダゾールまたはこれらの誘導体、トリベンジルアミン、2,6−ジイソプロピルアニリン、N−tert−ブトキシカルボニルピロリジン等が挙げられる。
【0267】
(D2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レジスト組成物が(D2)成分を含有する場合、レジスト組成物中、(D2)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましい。(D2)成分の含有量を、前記の好ましい範囲とすることにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等が向上する。
【0268】
≪(C)成分≫
本実施形態のレジスト組成物には、(A)成分に加えて、さらに、架橋剤成分(以下これを「(C)成分」ともいう。)を含有させてもよい。但し、(C)成分の含有量が増加すると、(C)成分の可塑効果により、レジスト組成物の感度、解像性、ラフネス等のリソグラフィー特性が劣化する恐れがあるため、本実施形態のレジスト組成物は(C)成分を含有しないことが好ましい。本実施形態のレジスト組成物は、架橋性を有する構成単位(a0)を有する(A1)成分を含有するため、(C)成分を含有していなくても、レジスト膜の露光により生じた酸の作用により、(A1)成分間で架橋が起こる。
【0269】
(C)成分は、特に限定されず、これまでに知られている化学増幅型のネガ型レジスト組成物に用いられている架橋剤の中から任意に選択して用いることができる。
(C)成分としては、例えば2,3−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチルノルボルナン、2−ヒドロキシ−5,6−ビス(ヒドロキシメチル)ノルボルナン、シクロヘキサンジメタノール、4,4’−ビフェニルジメタノール、3,4,8(又は9)−トリヒドロキシトリシクロデカン、2−メチル−2−アダマンタノール、1,4−ジオキサン−2,3−ジオール、1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサンなどの、ヒドロキシ基又はヒドロキシアルキル基あるいはその両方を有する環状炭化水素又はその含酸素誘導体が挙げられる。
【0270】
また、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、グリコールウリルなどのアミノ基含有化合物に、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドと低級アルコールを反応させ、該アミノ基の水素原子をヒドロキシメチル基又は低級アルコキシメチル基で置換した化合物、エポキシ基を有する化合物が挙げられる。
これらのうち、メラミンを用いたものをメラミン系架橋剤、尿素を用いたものを尿素系架橋剤、エチレン尿素、プロピレン尿素等のアルキレン尿素を用いたものをアルキレン尿素系架橋剤、グリコールウリルを用いたものをグリコールウリル系架橋剤、エポキシ基を有する化合物を用いたものをエポキシ系架橋剤という。
(C)成分としては、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、アルキレン尿素系架橋剤、グリコールウリル系架橋剤、およびエポキシ系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特にグリコールウリル系架橋剤が好ましい。
【0271】
メラミン系架橋剤としては、メラミンとホルムアルデヒドとを反応させて、アミノ基の水素原子をヒドロキシメチル基で置換した化合物、メラミンとホルムアルデヒドと低級アルコールとを反応させて、アミノ基の水素原子を低級アルコキシメチル基で置換した化合物等が挙げられる。具体的には、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシブチルメラミン等が挙げられ、なかでもヘキサメトキシメチルメラミンが好ましい。
【0272】
尿素系架橋剤としては、尿素とホルムアルデヒドとを反応させて、アミノ基の水素原子をヒドロキシメチル基で置換した化合物、尿素とホルムアルデヒドと低級アルコールとを反応させて、アミノ基の水素原子を低級アルコキシメチル基で置換した化合物等が挙げられる。具体的には、ビスメトキシメチル尿素、ビスエトキシメチル尿素、ビスプロポキシメチル尿素、ビスブトキシメチル尿素等が挙げられ、なかでもビスメトキシメチル尿素が好ましい。
【0273】
アルキレン尿素系架橋剤としては、下記一般式(C−1)で表される化合物が挙げられる。
【0274】
【化64】
[式中、R’及びR’は、それぞれ独立に、水酸基又は低級アルコキシ基である。R’及びR’は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基又は低級アルコキシ基である。vは、0〜2の整数である。]
【0275】
’とR’が低級アルコキシ基であるとき、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基であり、直鎖状でもよいし分岐鎖状でもよい。R’とR’は、同じであってもよく、互いに異なっていてもよく、同じであることがより好ましい。
’とR’が低級アルコキシ基であるとき、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基であり、直鎖状でもよいし分岐鎖状でもよい。R’とR’は、同じであってもよく、互いに異なっていてもよく、同じであることがより好ましい。
vは、0〜2の整数であり、好ましくは0又は1である。
アルキレン尿素系架橋剤としては、特に、vが0である化合物(エチレン尿素系架橋剤)および/またはvが1である化合物(プロピレン尿素系架橋剤)が好ましい。
【0276】
上記一般式(C−1)で表される化合物は、アルキレン尿素とホルマリンとを縮合反応させることにより、また、この生成物を低級アルコールと反応させることにより得ることができる。
【0277】
アルキレン尿素系架橋剤の具体例としては、例えば、モノ及び/又はジヒドロキシメチル化エチレン尿素、モノ及び/又はジメトキシメチル化エチレン尿素、モノ及び/又はジエトキシメチル化エチレン尿素、モノ及び/又はジプロポキシメチル化エチレン尿素、モノ及び/又はジブトキシメチル化エチレン尿素等のエチレン尿素系架橋剤;モノ及び/又はジヒドロキシメチル化プロピレン尿素、モノ及び/又はジメトキシメチル化プロピレン尿素、モノ及び/又はジエトキシメチル化プロピレン尿素、モノ及び/又はジプロポキシメチル化プロピレン尿素、モノ及び/又はジブトキシメチル化プロピレン尿素等のプロピレン尿素系架橋剤;1,3−ジ(メトキシメチル)4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ(メトキシメチル)−4,5−ジメトキシ−2−イミダゾリジノンなどを挙げられる。
【0278】
グリコールウリル系架橋剤としては、N位がヒドロキシアルキル基および炭素数1〜4のアルコキシアルキル基の一方又は両方で置換されたグリコールウリル誘導体が挙げられる。かかるグリコールウリル誘導体は、グリコールウリルとホルマリンとを縮合反応させることにより、また、この生成物を低級アルコールと反応させることにより得ることができる。
グリコールウリル系架橋剤の具体例としては、例えばモノ,ジ,トリ及び/又はテトラヒドロキシメチル化グリコールウリル;モノ,ジ,トリ及び/又はテトラメトキシメチル化グリコールウリル;モノ,ジ,トリ及び/又はテトラエトキシメチル化グリコールウリル;モノ,ジ,トリ及び/又はテトラプロポキシメチル化グリコールウリル;モノ,ジ,トリ及び/又はテトラブトキシメチル化グリコールウリルなどが挙げられる。
【0279】
エポキシ系架橋剤としては、エポキシ基を有するものであれば特に限定されず、任意に選択して用いることができる。その中でも、エポキシ基を2つ以上有するものが好ましい。エポキシ基を2つ以上有することにより、架橋反応性が向上する。
エポキシ基の数は、2つ以上であることが好ましく、より好ましくは2〜4つであり、最も好ましくは2つである。
エポキシ系架橋剤として好適なものを以下に示す。
【0280】
【化65】
【0281】
(C)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レジスト組成物が(C)成分を含有する場合、(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましく、3〜30質量部がより好ましく、3〜20質量部がさらに好ましく、5〜15質量部が最も好ましい。
(C)成分の含有量が下限値以上であると、架橋形成が充分に進行し、解像性能、リソグラフィー特性がより向上する。また、膨潤の少ない良好なレジストパターンが得られる。また、この上限値以下であると、レジスト組成物の保存安定性が良好であり、感度の経時的劣化が抑制されやすくなる。
【0282】
≪(E)成分≫
本実施形態のレジスト組成物には、感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等の向上の目的で、任意の成分として、有機カルボン酸並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(E)(以下「(E)成分」という)を含有させることができる。
有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられ、これらの中でも特にホスホン酸が好ましい。
リンのオキソ酸の誘導体としては、例えば、上記オキソ酸の水素原子を炭化水素基で置換したエステル等が挙げられ、前記炭化水素基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基等が挙げられる。
リン酸の誘導体としては、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸エステルなどが挙げられる。
ホスホン酸の誘導体としては、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸エステルなどが挙げられる。
ホスフィン酸の誘導体としては、ホスフィン酸エステルやフェニルホスフィン酸などが挙げられる。
本実施形態のレジスト組成物において、(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(E)成分を含有する場合、(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲であることが好ましい。
【0283】
≪(F)成分≫
本実施形態のレジスト組成物は、レジスト膜に撥水性を付与するために、フッ素添加剤成分(以下「(F)成分」という)を含有してもよい。
(F)成分としては、例えば、特開2010−002870号公報、特開2010−032994号公報、特開2010−277043号公報、特開2011−13569号公報、特開2011−128226号公報に記載の含フッ素高分子化合物を用いることができる。
(F)成分としてより具体的には、下記式(f1−1)で表される構成単位(f1)を有する重合体が挙げられる。構成単位(f1)は、塩基解離性を示す。構成単位(f1)を有する(F)成分は、アルカリ現像液に対して分解性を示す。
前記重合体としては、下記一般式(f1−1)で表される構成単位(f1)のみからなる重合体(ホモポリマー);該構成単位(f1)と、アクリル酸もしくはメタクリル酸から誘導される構成単位との共重合体;該構成単位(f1)と、ラクトン含有環式基を含む構成単位との共重合体などが好適に挙げられる。
【0284】
【化66】
[式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。Rf102及びRf103は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を表す。Rf102及びRf103は同じであっても異なっていてもよい。nfは1〜5の整数である。Rf101は、フッ素原子を含む有機基である。]
【0285】
式(f1−1)中、α位の炭素原子に結合したRの炭素数1〜5のアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1〜5のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子またはメチル基が最も好ましい。
【0286】
式(f1−1)中、Rf102及びRf103のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rf102及びRf103の炭素数1〜5のアルキル基としては、上記Rの炭素数1〜5のアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基又はエチル基が好ましい。
Rf102及びRf103の炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基として、具体的には、炭素数1〜5のアルキル基の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
なかでもRf102及びRf103としては、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0287】
式(f1−1)中、nfは1〜5の整数であり、1〜3の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0288】
式(f1−1)中、Rf101は、フッ素原子を含む有機基であり、フッ素原子を含む炭化水素基であることが好ましい。
フッ素原子を含む炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよく、炭素数は1〜20であることが好ましく、炭素数1〜15であることがより好ましく、炭素数1〜10が特に好ましい。
また、フッ素原子を含む炭化水素基は、当該炭化水素基における水素原子の25%以上がフッ素化されていることが好ましく、50%以上がフッ素化されていることがより好ましく、60%以上がフッ素化されていることが、レジスト膜の疎水性が高まることから特に好ましい。
なかでも、Rf101としては、炭素数1〜6のフッ素化炭化水素基がより好ましく、トリフルオロメチル基、−CH−CF、−CH−CF−CF、−CH(CF、−CH−CH−CF、−CH−CH−CF−CF−CF−CFが特に好ましい。
【0289】
(F)成分の重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、1000〜50000が好ましく、5000〜40000がより好ましく、10000〜30000が特に好ましい。(F)成分のMwが、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのにレジスト用溶剤への充分な溶解性があり、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
(F)成分の分散度(Mw/Mn)は、1.0〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.2〜2.5が特に好ましい。
【0290】
本実施形態のレジスト組成物において、(F)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(F)成分を含有する場合、(F)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜10質量部であることが好ましい。
【0291】
≪(S)成分≫
本実施形態のレジスト組成物は、レジスト材料を有機溶剤成分(以下「(S)成分」という)に溶解させて製造することができる。
(S)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジスト組成物の溶剤として公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
(S)成分としては、例えば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
本実施形態のレジスト組成物において、(S)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。なかでも、PGMEA、PGME、γ−ブチロラクトン、EL、シクロヘキサノン及びこれらから選択される2種以上の混合溶剤が好ましい。
(S)成分の使用量は、特に限定されず、レジスト組成物を基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。一般的には、レジスト組成物の固形分濃度が1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%の範囲内となるように(S)成分は用いられる。
【0292】
本実施形態のレジスト組成物には、さらに、所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、含有させることができる。
【0293】
以上説明した本実施形態のレジスト組成物は、一般式(a0−1)で表される化合物から誘導される構成単位(構成単位(a0))と一般式(a10−1)で表される化合物から誘導される構成単位(構成単位(a10)とを有し、且つ一般式(1)で表される構成単位を有しない高分子化合物((A1)成分)を含有するものである。
半導体素子や液晶表示素子の製造では、急速にパターンの微細化が進み、より高い解像性能を有するレジスト材料が求められている。これに対し、架橋剤成分を含有する、従来の化学増幅型レジスト組成物において、架橋剤成分又は酸発生剤成分の配合量を増加することで、レジスト膜露光部の架橋効率の向上が図られてきた。しかし、架橋剤成分又は酸発生剤成分の配合量を増加した場合、レジスト膜未露光部の現像液への溶解性が低下するため、現像コントラストが低減して、解像性能が不充分であった。また、架橋剤成分又は酸発生剤成分の配合量が過剰になると、レジスト膜の形成が困難となる問題があった。また、架橋剤成分の配合量を増加すると、架橋剤成分の可塑効果により、感度、解像性、ラフネス等のリソグラフィー特性が劣化する問題があった。
本実施形態のレジスト組成物においては、架橋基を含む構成単位(a0)の導入により、架橋剤成分を含有していなくても、レジスト膜の露光部での架橋効率が向上する。そのため、本実施形態のレジスト組成物は、架橋剤成分の含有量を低減又は零とすることができ、架橋剤成分による悪影響を排除することができる。これにより、感度、解像、ラフネス(LWR)などのリソグラフィー特性が向上したレジストパターンを形成することができる。
【0294】
また、構成単位(a0)は、従来用いられていた架橋基よりも親水性と反応性が高い架橋基を含む。そのため、構成単位(a0)を有する基材成分を含有するレジスト組成物は、従来の架橋基を含む基材成分を含有するレジスト組成物と比較して、感度、解像、ラフネス(LWR)などのリソグラフィー特性がより向上したレジストパターンを形成することができる。
【0295】
さらに、本実施形態のレジスト組成物は、一般式(1)で表される構成単位を有しない。そのため、レジスト組成物中の金属の含有量を低く抑えることができ、最終的に製造される半導体素子や液晶表示素子の電気特性や信頼性を高められる。加えて、高集積化が容易となる。
【0296】
(レジストパターン形成方法)
本発明の第2の態様に係るレジストパターン形成方法は、支持体上に、上述した実施形態のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び前記露光後のレジスト膜をアルカリ現像してレジストパターンを形成する工程を有する方法である。
かかるレジストパターン形成方法の一実施形態としては、例えば以下のようにして行うレジストパターン形成方法が挙げられる。
【0297】
まず、上述した実施形態のレジスト組成物を、支持体上にスピンナー等で塗布し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、例えば80〜150℃の温度条件にて40〜120秒間、好ましくは50〜90秒間施してレジスト膜を形成する。
次に、該レジスト膜に対し、例えばArF露光装置、KrF露光装置、電子線描画装置、EUV露光装置等の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介した露光またはマスクパターンを介さない電子線の直接照射による描画等による選択的露光を行った後、ベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、たとえば80〜150℃の温度条件にて40〜120秒間、好ましくは50〜90秒間施す。
次に、前記レジスト膜を現像する。現像は、アルカリ現像であっても有機溶剤現像であってもよいが、アルカリ現像が好ましい。アルカリ現像の処理には、アルカリ現像液を用いて行う。有機溶剤現像の処理には、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)を用いて行う。
現像処理後、好ましくはリンス処理を行う。アルカリ現像後のリンス処理は、純水を用いた水リンスが好ましい。有機溶剤現像後のリンス処理は、有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。また、現像又はリンス処理の後に、レジストパターン上に付着している現像液又はリンス液を、超臨界流体により除去する処理を行ってもよい。
アルカリ現像もしくは有機溶剤現像の処理後またはリンス処理後、乾燥を行う。また、場合によっては、上記現像処理後にベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。
このようにして、レジストパターンを形成することができる。
【0298】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
また、支持体としては、上述のような基板上に、無機系および/または有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)や、多層レジスト法における下層有機膜等の有機膜が挙げられる。
ここで、多層レジスト法とは、基板上に、少なくとも一層の有機膜(下層有機膜)と、少なくとも一層のレジスト膜(上層レジスト膜)とを設け、上層レジスト膜に形成したレジストパターンをマスクとして下層有機膜のパターニングを行う方法であり、高アスペクト比のパターンを形成できるとされている。すなわち、多層レジスト法によれば、下層有機膜により所要の厚みを確保できるため、レジスト膜を薄膜化でき、高アスペクト比の微細パターン形成が可能となる。
多層レジスト法には、基本的に、上層レジスト膜と、下層有機膜との二層構造とする方法(2層レジスト法)と、上層レジスト膜と下層有機膜との間に一層以上の中間層(金属薄膜等)を設けた三層以上の多層構造とする方法(3層レジスト法)とに分けられる。
【0299】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。上述した本実施形態のレジスト組成物は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EBまたはEUV用としての有用性が高い。
【0300】
レジスト膜の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよい。
液浸露光は、予めレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で露光(浸漬露光)を行う露光方法である。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ、露光されるレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましい。かかる溶媒の屈折率としては、前記範囲内であれば特に制限されない。
空気の屈折率よりも大きく、かつ、前記レジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
フッ素系不活性液体の具体例としては、CHCl、COCH、COC、C等のフッ素系化合物を主成分とする液体等が挙げられ、沸点が70〜180℃のものが好ましく、80〜160℃のものがより好ましい。フッ素系不活性液体が上記範囲の沸点を有するものであると、露光終了後に、液浸に用いた媒体の除去を、簡便な方法で行えることから好ましい。
フッ素系不活性液体としては、特に、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されたパーフロオロアルキル化合物が好ましい。パーフロオロアルキル化合物としては、具体的には、パーフルオロアルキルエーテル化合物、パーフルオロアルキルアミン化合物を挙げることができる。
さらに、具体的には、前記パーフルオロアルキルエーテル化合物としては、パーフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)(沸点102℃)を挙げることができ、前記パーフルオロアルキルアミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(沸点174℃)を挙げることができる。
液浸媒体としては、コスト、安全性、環境問題、汎用性等の観点から、水が好ましく用いられる。
【0301】
アルカリ現像プロセスで現像処理に用いるアルカリ現像液としては、例えば0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液が挙げられる。
【0302】
アルカリ現像の処理は、公知の現像方法により実施することが可能であり、たとえば現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0303】
有機溶剤現像の処理に用いる有機系現像液が含有する有機溶剤としては、上述の(A)成分(露光前の(A)成分)を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤の中から適宜選択できる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、ニトリル系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
ケトン系溶剤は、構造中にC−C(=O)−Cを含む有機溶剤である。エステル系溶剤は、構造中にC−C(=O)−O−Cを含む有機溶剤である。アルコール系溶剤は、構造中にアルコール性水酸基を含む有機溶剤である。「アルコール性水酸基」は、脂肪族炭化水素基の炭素原子に結合した水酸基を意味する。ニトリル系溶剤は、構造中にニトリル基を含む有機溶剤である。アミド系溶剤は、構造中にアミド基を含む有機溶剤である。エーテル系溶剤は、構造中にC−O−Cを含む有機溶剤である。
有機溶剤の中には、構造中に上記各溶剤を特徴づける官能基を複数種含む有機溶剤も存在するが、その場合は、当該有機溶剤が有する官能基を含むいずれの溶剤種にも該当するものとする。たとえば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、上記分類中のアルコール系溶剤、エーテル系溶剤のいずれにも該当するものとする。
炭化水素系溶剤は、ハロゲン化されていてもよい炭化水素からなり、ハロゲン原子以外の置換基を有さない炭化水素溶剤である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
有機系現像液が含有する有機溶剤としては、上記の中でも、極性溶剤が好ましく、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、ニトリル系溶剤等が好ましい。
【0304】
ケトン系溶剤としては、たとえば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、メチルアミルケトン(2−ヘプタノン)等が挙げられる。これらの中でも、ケトン系溶剤としては、メチルアミルケトン(2−ヘプタノン)が好ましい。
【0305】
エステル系溶剤としては、たとえば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶剤としては、酢酸ブチルが好ましい。
【0306】
ニトリル系溶剤としては、たとえば、アセトニトリル、プロピオ二トリル、バレロニトリル、ブチロ二トリル等が挙げられる。
【0307】
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としては、たとえば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、たとえばイオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましく、非イオン性のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、有機系現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%であり、0.005〜2質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましい。
【0308】
有機溶剤現像処理は、公知の現像方法により実施することが可能であり、たとえば有機系現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に有機系現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に有機系現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で有機系現像液塗出ノズルをスキャンしながら有機系現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0309】
有機溶剤現像後にリンス処理を行う場合、リンス処理に用いるリンス液が含有する有機溶剤としては、たとえば前記有機系現像液に用いる有機溶剤として挙げた有機溶剤のうち、レジストパターンを溶解しにくいものを適宜選択して使用できる。通常、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤およびエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を使用する。これらのなかでも、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤及びアミド系溶剤から選択される少なくとも1種類が好ましく、アルコール系溶剤およびエステル系溶剤から選択される少なくとも1種類がより好ましく、アルコール系溶剤が特に好ましい。
リンス液に用いるアルコール系溶剤は、炭素数6〜8の1価アルコールが好ましく、該1価アルコールは直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。具体的には、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。これらのなかでも、1−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−ヘキサノールが好ましく、1−ヘキサノール、2−ヘキサノールがより好ましい。
これらの有機溶剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記以外の有機溶剤や水と混合して用いてもよい。ただし、現像特性を考慮すると、リンス液中の水の含有量は、リンス液の全量に対し、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下さらに好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
リンス液には、必要に応じて公知の添加剤を添加できる。該添加剤としては、例えば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、前記と同様のものが挙げられ、非イオン性の界面活性剤が好ましく、非イオン性のフッ素系界面活性剤又は非イオン性のシリコン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤を添加する場合、その添加量は、リンス液の全量に対して、通常0.001〜5質量%であり、0.005〜2質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましい。
【0310】
リンス液を用いたリンス処理(洗浄処理)は、公知のリンス方法により実施できる。該リンス処理の方法としては、たとえば一定速度で回転している支持体上にリンス液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【0311】
以上説明した本実施形態のレジストパターン形成方法によれば、上述した(レジスト組成物)が用いられているため、感度が高く、解像性、ラフネス等のリソグラフィー特性が向上したレジストパターンを形成できる。
【0312】
(高分子化合物)
本発明の第3の態様に係る高分子化合物は、下記一般式(a0−1)で表される化合物から誘導される構成単位(a0)と、下記一般式(a10−1)で表される化合物から誘導される構成単位(a10)とを有し、且つ下記一般式(1)で表される構成単位を有しないものである。
【0313】
【化67】
[式(a0−1)中、Rax0は重合性基含有基である。Wax0は、(nax0+1)価の芳香族炭化水素基である。但し、Rax0とWax0とで縮合環構造が形成されていてもよい。nax0は、1〜3の整数である。式(a10−1)中、Rax1は重合性基含有基である。Wax1は、(nax1+1)価の芳香族炭化水素基である。但し、Rax1とWax1とで縮合環構造が形成されていてもよい。nax1は、1〜3の整数である。]
【0314】
【化68】
[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Zは単結合、メチレン基、−C(=O)−O−Rz1−、−O−Rz1−、−O−C(=O)−Rz1−、又は−Rz2−Rz1−であり、ZはFe、Co、Ni、Cr、又はRuである。Rz1は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、又は炭素数2〜10のアルケニレン基であり、エステル基、若しくはエーテル基を有していてもよい。Rz2はフェニレン基、又はナフチレン基である。]
【0315】
本実施形態の高分子化合物は、上述した(レジスト組成物)についての説明における(A1)成分(構成単位(a0)と構成単位(a10)とを有し、且つ一般式(1)で表される構成単位を有しない高分子化合物)と同じものであり、構成単位(a0)及び構成単位(a10)以外に有してもよい構成単位の種類、(A1)成分中の各構成単位の含有割合などについては上記と同様である。
【0316】
本実施形態の高分子化合物は、構成単位(a0)を誘導するモノマーと、構成単位(a10)を誘導するモノマーと、必要に応じてこれら以外の構成単位を誘導するモノマーと、を重合溶媒に溶解し、ここに、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート(たとえばV−601など)等のラジカル重合開始剤を加えて重合することにより製造することができる。あるいは、本実施形態の高分子化合物は、各構成単位を誘導するモノマーにおいて官能基が保護されたモノマーを重合溶媒に溶解し、ここに、上記のようなラジカル重合開始剤を加えて重合し、その後、脱保護反応を行うことにより製造することができる。なお、重合の際に、たとえばHS−CH−CH−CH−C(CF−OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、末端に−C(CF−OH基を導入してもよい。このように、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基が導入された共重合体は、現像欠陥の低減やLER(ラインエッジラフネス:ライン側壁の不均一な凹凸)の低減に有効である。
【0317】
本実施形態の高分子化合物は、レジスト組成物用のベース樹脂として有用である新規な物質であり、膜形成能を有する基材成分、加えて、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂成分((A1)成分)としてレジスト組成物に好適に配合できる。
【実施例】
【0318】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
本実施例では、化学式(1)で表される化合物を「化合物(1)」と表記し、他の化学式で表される化合物についても同様に表記する。
【0319】
<高分子化合物の製造例>
(製造例1:高分子化合物A1−1の製造)
p−アセトキシスチレン(26.28g、0.16モル)、p−ヒドロキシメチルスチレン(5.10g、0.04モル)、及びジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(以下、「V−601」と略す:6.625g、0.029モル)をプロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセテート(以下、「PGMEA」と略す:63.0g)に溶解し、80℃で6時間重合反応を行った。
次いで、室温で、重合液をメタノール・水 混合溶液(400g)に30分かけて滴下し、30分間攪拌した。撹拌後の溶液をろ過し、得られた析出物をメタノール・水 混合溶液(350g)に加えて室温で30分間分散させた。分散液をろ過し、得られたろ取物に対して、再度、メタノール・水 混合溶液(350g)を加えて、室温で30分間再分散させた。再分散液をろ過し、得られたろ取物を一晩減圧乾燥した。
乾燥物(25.87g)に対して、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PGME」と略す:39.24g)、メタノール(39.03g)、トリエチルアミン(20.87g、0.21モル)、及びジメチルアミノピリジン(5.03g、0.04モル)を加えた後、加熱還流で6時間脱保護反応を行った。加熱還流後に反応液を冷却し、室温で、1%塩酸(782g)に滴下し、滴下終了後に1時間攪拌した。
撹拌後にろ過して析出物を得た後、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」と略す:517g)を用いて前記析出物を溶解し、1wt%塩酸(259g)を加えて攪拌した後に静置して、上層(MIBK層)を分液して得た。このMIBK溶液に対する塩酸洗浄を3回行った後に、水を用いた水洗浄を3回行った。
水洗したMIBK溶液を濃縮し、減圧乾燥することで、目的の高分子化合物A1−1を15.8g得た。
得られた高分子化合物A1−1について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は4.0Kであり、分子量分散度(PDI(Mw/Mn))は1.62であった。
また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(150MHz_13C−NMR)及びプロトン1核磁気共鳴スペクトル(600MHz_H−NMR)により求められた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))は、1/m=80/20であった。
【0320】
【化69】
【0321】
(製造例2〜8:高分子化合物A1−2〜A1−8の製造)
使用するモノマーの種類と使用量を変更した以外は製造例1と同様にして、高分子化合物A1−2〜A1−8を得た。各高分子化合物のMw、PDI、組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))を製造例1と同様に測定した。
【0322】
(製造例9:高分子化合物A1−9の製造)
p−エトキシエトキシスチレン(26.92g、0.14モル)、スチレン(5.13g、0.05モル)、p−ヒドロキシメチルフェニルメタクリレート(9.61g、0.05モル)、及びV−601(7.541g、0.033モル)をメチルエチルケトン(以下、「MEK」と略す:72.6g)に溶解し、加熱還流で5時間重合反応を行った。
次いで、重合液に、酢酸(25.22g、0.42モル)及びメタノール(134.6g)を加えて、30℃で脱保護反応を行った。得られた反応液に、酢酸エチル(488g)及び水(976g)を加えて攪拌し、静置後に、下層(水層)を除去した。上層の有機溶液を122gになるまで濃縮し、ヘプタン(1220g)に滴下して攪拌し、濾過した。得られた析出物を、一晩減圧乾燥することで、目的の高分子化合物A1−9を14.30g得た。
得られた高分子化合物A1−9について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は3.6Kであり、分子量分散度(PDI(Mw/Mn))は1.61であった。
また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(150MHz_13C−NMR)及びプロトン1核磁気共鳴スペクトル(600MHz_H−NMR)により求められた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))は、l/m/n=60/20/20であった。
【0323】
【化70】
【0324】
(製造例10〜12:高分子化合物A1−10〜A1−12の製造)
使用するモノマーの種類と使用量を変更した以外は製造例9と同様にして、高分子化合物A1−10〜A1−12を得た。各高分子化合物のMw、PDI、組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))を製造例9と同様に測定した。
【0325】
(製造例13:高分子化合物A1−13の製造)
ビニルナフトール(25.00g、0.15モル)、スチレン(3.68g、0.04モル)、p−ヒドロキシメチルスチレン(6.58g、0.05モル)、及びV−601(11.800g、0.051モル)をPGME(71.58g)に溶解し、80℃で6時間重合反応を行った。
次いで、室温で、重合液をメタノール・水 混合溶液(474g)に30分かけて滴下し、30分間攪拌した。攪拌後の溶液をろ過し、得られた析出物をメタノール・水 混合溶液(415g)に加えて室温で30分間分散させた。分散液をろ過し、得られたろ取物に対して、再度、メタノール・水 混合溶液(415g)を加えて室温で30分間再分散させた。再分散液をろ過し、得られたろ取物を一晩減圧乾燥させることで、目的の高分子化合物A1−13を22.85g得た。
得られた高分子化合物A1−13について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は3.8Kであり、分子量分散度(PDI(Mw/Mn))は1.90であった。
また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(150MHz_13C−NMR)及びプロトン1核磁気共鳴スペクトル(600MHz_H−NMR)により求められた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))は、l/m/n=70/10/20であった。
【0326】
【化71】
【0327】
(製造例14:高分子化合物A1−14の製造)
使用するモノマーの種類と使用量を変更した以外は製造例13と同様にして、高分子化合物A1−14を得た。各高分子化合物のMw、PDI、組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))を製造例13と同様に測定した。
【0328】
上記製造例1〜14で製造した高分子化合物A1−1〜A1−14の構成単位、各構成単位の割合(モル比)、Mw及びPDIを表1〜3に示す。
【0329】
【表1】
【0330】
【表2】
【0331】
【表3】
【0332】
(高分子化合物A2−1、A2−2の製造)
高分子化合物A2−1〜A2−2は、それぞれ、各高分子化合物を構成する下記の構成単位を誘導するモノマーを、所定のモル比で用いてラジカル重合させることにより得た。高分子化合物A2−1〜A2−2の構成単位、各構成単位の割合(モル比)、Mw及びPDIを表4に示す。
【0333】
【表4】
【0334】
<レジスト組成物の調製>
(実施例1〜56、比較例1〜12)
表5〜8に示す各成分を混合して溶解し、各例のレジスト組成物(固形分濃度1.5質量%)をそれぞれ調製した。
【0335】
【表5】
【0336】
【表6】
【0337】
【表7】
【0338】
【表8】
【0339】
表5〜8中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)−1〜(A)−14:上記の高分子化合物A1−1〜A1−14。
(A)−15〜(A)−16:上記の高分子化合物A2−1〜A2−2。
【0340】
(B)−1〜(B)−2:下記の化学式(b−1−1)〜(b−1−2)でそれぞれ表される化合物からなる酸発生剤。
【0341】
【化72】
【0342】
(D)−1:n−トリオクチルアミン。
(D)−2:下記の化学式(D1−2)で表される化合物からなる光崩壊性塩基。
【0343】
【化73】
【0344】
(C)−1〜(C)−2:下記化学式(C−1)〜(C−2)で表される化合物からなる架橋剤。
【0345】
【化74】
【0346】
(S)−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールモノメチルエーテル=20/80(質量比)の混合溶剤。
【0347】
<EB露光によるレジストパターンの形成>
ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した8インチシリコン基板上に、各例のレジスト組成物をそれぞれ、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、温度110℃で60秒間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚40nmのレジスト膜を形成した。
次に、前記レジスト膜に対し、電子線描画装置JEOL−JBX−9300FS(日本電子株式会社製)を用い、加速電圧100kVにて、ターゲットサイズをライン幅50〜26nmの1:1ラインアンドスペースパターン(以下「LSパターン」)とする描画(露光)を行った後、100℃で60秒間の露光後加熱(PEB)処理を行った。
次いで、23℃にて、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液「NMD−3」(商品名、東京応化工業株式会社製)を用いて、60秒間のアルカリ現像を行った。その後、純水を用いて60秒間水リンスを実施した。
その結果、ライン幅50〜26nmの1:1のLSパターンが形成された。
【0348】
[最適露光量(Eop)の評価]
前記のレジストパターンの形成方法によってターゲットサイズのLSパターンが形成される最適露光量Eop(μC/cm)を求めた。これを「Eop(μC/cm)」として表9〜12に示した。
【0349】
[解像性の評価]
上記Eopにおける限界解像度、具体的には、最適露光量Eopから露光量を少しずつ増大させてLSパターンを形成していく際に、倒れずに解像するパターンの最小寸法を、走査型電子顕微鏡S−9380(日立ハイテクノロジー社製)を用いて求めた。これを「解像性能(nm)」として表9〜12に示した。
【0350】
[LWR(ラインワイズラフネス)の評価]
上記<レジストパターンの形成>で形成したLSパターンについて、LWRを示す尺度である3σを求めた。これを「LWR(nm)」として表9〜12に示した。
「3σ」は、走査型電子顕微鏡(加速電圧800V、商品名:S−9380、日立ハイテクノロジーズ社製)により、ラインの長手方向にラインポジションを400箇所測定し、その測定結果から求めた標準偏差(σ)の3倍値(3σ)(単位:nm)を示す。
該3σの値が小さいほど、ライン側壁のラフネスが小さく、より均一な幅のLSパターンが得られたことを意味する。
【0351】
【表9】
【0352】
【表10】
【0353】
【表11】
【0354】
【表12】
【0355】
表9〜12に示す結果から、本発明を適用した実施例1〜56のレジスト組成物によれば、EB露光によるレジストパターンの形成において、感度が高く、高解像度でラフネスが低減された良好な形状のレジストパターンを形成できること、が確認できた。
【0356】
<KrF露光によるレジストパターンの形成>
反射防止膜(BARC)処理を施した8インチシリコン基板上に、各例のレジスト組成物をそれぞれ、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、温度110℃で60秒間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚40nmのレジスト膜を形成した。
次に、前記レジスト膜に対し、KrF露光装置NSR−S203−B(株式会社NIKON製)を用い、ターゲットサイズをライン幅200〜100nmの1:1ラインアンドスペースパターン(以下「LSパターン」)とする露光を行った後、100℃で60秒間の露光後加熱(PEB)処理を行った。
次いで、23℃にて、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液「NMD−3」(商品名、東京応化工業株式会社製)を用いて、60秒間のアルカリ現像を行った。その後、純水を用いて60秒間水リンスを実施した。
その結果、ライン幅200〜100nmの1:1のLSパターンが形成された。
【0357】
[Eop、解像性、LWRの評価]
「<EB露光によるレジストパターンの形成>」と同様の方法で、Eop、解像性能、及びLWRを求めた。これらを「Eop(mJ/cm)」、「解像性能(nm)」、及び「LWR(nm)」として表13〜16に示した。
【0358】
【表13】
【0359】
【表14】
【0360】
【表15】
【0361】
【表16】
【0362】
表13〜16に示す結果から、本発明を適用した実施例1〜56のレジスト組成物によれば、KrF露光によるレジストパターンの形成において、感度が高く、高解像度でラフネスが低減された良好な形状のレジストパターンを形成できること、が確認できた。