特許第6986910号(P6986910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6986910電圧印加装置および出力電圧波形の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986910
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】電圧印加装置および出力電圧波形の形成方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/3183 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   G01R31/28 Q
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-174700(P2017-174700)
(22)【出願日】2017年9月12日
(65)【公開番号】特開2019-50331(P2019-50331A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2020年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】石井 滋樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山 克昌
(72)【発明者】
【氏名】成川 健一
(72)【発明者】
【氏名】品川 衡二
(72)【発明者】
【氏名】名倉 卓身
【審査官】 小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−104859(JP,A)
【文献】 特表2010−507355(JP,A)
【文献】 特開2001−121697(JP,A)
【文献】 特開平9−178820(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0049527(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26−31/3193
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された複数の被検査デバイスに対して電気的特性を検査するテスタにおいて、前記被検査デバイスに電圧を印加する電圧印加装置であって、
前記電圧印加装置は、設定電圧値を含む所定の設定条件が与えられた際に、前記所定の設定条件に適合した、複数の過渡ステップを有するステップ状の過渡電圧波形が形成されるように、過渡電圧設定パラメータとして、過渡ステップ数、ステップ時間、ステップ電圧を設定する電圧設定部を有し、
前記電圧印加装置は、前記電圧設定部で設定された前記過渡電圧設定パラメータに基づいて、前記ステップ状の過渡電圧波形を有する出力電圧を出力し、
前記出力電圧を、前記電圧印加装置に接続された前記被検査デバイスへステップ入力した際の応答が、設定電圧に対しオーバーシュートが生じる2次以上の高次遅れ系であり、
前記電圧設定部に設定された前記各過渡ステップの前記ステップ時間の終点が、前記高次遅れ系のステップ応答曲線における立ち上がり時間の終点から行き過ぎ時間までの間の時間になるように設定されることを特徴とする電圧印加装置。
【請求項2】
デジタルアナログコンバータと、出力回路とをさらに有し、前記電圧設定部で設定された前記過渡電圧設定パラメータを含む信号が、前記デジタルアナログコンバータおよび前記出力回路を経て、前記ステップ状の過渡電圧波形を有する出力電圧として出力されることを特徴とする請求項1に記載の電圧印加装置。
【請求項3】
前記過渡電圧波形は、前記過渡ステップの前記ステップ電圧が、前記過渡ステップが進行するにつれて小さくなるように形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電圧印加装置。
【請求項4】
前記電圧設定部は、前記所定の設定条件に対応して、前記過渡電圧設定パラメータとして、前記過渡ステップ数、前記ステップ時間、前記ステップ電圧が複数記憶されたデータベースから、前記所定の設定条件に適合した前記過渡ステップ数、前記ステップ時間、前記ステップ電圧を取得することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電圧印加装置。
【請求項5】
デバイス電源(DPS)またはパラメトリック測定ユニット(PMU)のいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電圧印加装置。
【請求項6】
基板上に形成された複数の被検査デバイスに対して電気的特性を検査するテスタにおいて、前記被検査デバイスに電圧を印加する電圧印加装置から出力する出力電圧波形の形成方法であって、
設定電圧値を含む所定の設定条件が与えられた際に、前記所定の設定条件に適合した複数の過渡ステップを有するステップ状の過渡電圧波形が形成されるように、過渡電圧設定パラメータとして、過渡ステップ数、ステップ時間、ステップ電圧を設定し、
前記過渡電圧設定パラメータに基づいて、前記ステップ状の過渡電圧波形を有する出力電圧を形成し、
前記電圧印加装置から出力された出力電圧を、前記電圧印加装置に接続された前記被検査デバイスへステップ入力した際の応答が、設定電圧に対しオーバーシュートが生じる2次以上の高次遅れ系であり、
前記各過渡ステップの前記ステップ時間の終点が、前記高次遅れ系のステップ応答曲線における立ち上がり時間の終点から行き過ぎ時間までの間の時間になるように設定されることを特徴とする出力電圧波形の形成方法。
【請求項7】
前記過渡電圧波形は、前記過渡ステップの前記ステップ電圧が、前記過渡ステップが進行するにつれて小さくなるように形成されることを特徴とする請求項6に記載の出力電圧波形の形成方法。
【請求項8】
前記所定の設定条件に対応して、前記過渡電圧設定パラメータとして、前記過渡ステップ数、前記ステップ時間、前記ステップ電圧が複数記憶されたデータベースから、前記所定の設定条件に適合した前記過渡ステップ数、前記ステップ時間、前記ステップ電圧を取得することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の出力電圧波形の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスの電気的検査を行うテスタに用いられる、デバイスに電圧を印加する電圧印加装置および出力電圧波形の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)における全てのプロセスが終了した段階で、ウエハに形成されている複数の被検査デバイス(Device Under Test;DUT)について、種々の電気的検査が行われる。
【0003】
このような検査対象デバイスであるDUTの電気的特性の検査は、プローブカードを介してテスタにより行われる。プローブカードは、ウエハ上のDUTの電極パッドに接触させらせる複数のプローブ(接触子)を備えており、各プローブをウエハ上の各電極パッドに接触させた状態で、テスタから各プローブに電気信号を送ることにより、ウエハ上のDUTの検査が行われる。
【0004】
テスタは、DUTに所定の電圧を印加する電圧印加装置であるデバイス電源(Device Power Supply;DPS)を有し、DPSからDUTに所定の電圧が印加される。DPSの出力電圧の立ち上がり波形(過渡電圧)は、DPSの回路特性や、デバイス電源ラインに接続される負荷によって決まる。具体的には、DPSからDUTまでのデバイス電源ラインに大容量負荷を接続する構成と、大容量負荷を接続しない構成が存在するが、大容量負荷を接続する構成にDPSの受動素子で構成される位相補償回路を最適化させると、大容量負荷を接続しない場合にDPSの出力電圧の立ち上がり波形が劣化し、例えばオーバーシュートが発生する。
【0005】
このように出力電圧の立ち上がり波形が劣化すると、出力電圧が単調に増加しないことでDUTが誤動作したり、立ち上がり波形に過大なオーバーシュートが発生している場合には、DUTにストレスを与えてしまうという問題がある。
【0006】
このような問題に対応した技術として、特許文献1には、テスタの電源から半導体ウエハの半導体素子に電圧を印加する際にステップ状に電圧を印加する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平3−17581号公報(実願平1−78138号のマイクロフィルム)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の技術では、単にステップ状に電圧を印加するだけで、時間管理がされていないため、各段でオーバーシュートが発生するおそれがあり、DUTに対する悪影響を確実に解消することは困難である。また、各段でのオーバーシュートを発生させないようにするためには、1段あたりの電圧上昇を小さくして回数を増やす必要があるが、この場合には、定常電圧になるまで非常に時間がかかってしまう。
【0009】
したがって、本発明は、回路の変更をともなうことなく、DUTに印加される出力電圧の立ち上がり波形の劣化を抑制して、短時間で設定電圧値に到達させることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点は、基板上に形成された複数の被検査デバイスに対して電気的特性を検査するテスタにおいて、前記被検査デバイスに電圧を印加する電圧印加装置であって、前記電圧印加装置は、設定電圧値を含む所定の設定条件が与えられた際に、前記所定の設定条件に適合した、複数の過渡ステップを有するステップ状の過渡電圧波形が形成されるように、過渡電圧設定パラメータとして、過渡ステップ数、ステップ時間、ステップ電圧を設定する電圧設定部を有し、前記電圧印加装置は、前記電圧設定部で設定された前記過渡電圧設定パラメータに基づいて、前記ステップ状の過渡電圧波形を有する出力電圧を出力し、前記出力電圧を、前記電圧印加装置に接続された前記被検査デバイスへステップ入力した際の応答が、設定電圧に対しオーバーシュートが生じる2次以上の高次遅れ系であり、前記電圧設定部に設定された前記各過渡ステップの前記ステップ時間の終点が、前記高次遅れ系のステップ応答曲線における立ち上がり時間の終点から行き過ぎ時間までの間の時間になるように設定されることを特徴とする電圧印加装置を提供する。
【0011】
上記第1の観点において、前記デバイス電源は、デジタルアナログコンバータと、出力回路とをさらに有し、前記電圧設定部で設定された前記過渡電圧設定パラメータを含む信号が、前記デジタルアナログコンバータおよび前記出力回路を経て、前記ステップ状の過渡電圧波形を有する出力電圧として出力される構成とすることができる。
【0012】
前記過渡電圧波形は、前記過渡ステップの前記ステップ電圧が、前記過渡ステップが進行するにつれて小さくなるように形成されることが好ましい。
【0013】
前記電圧設定部は、前記所定の設定条件に対応して、前記過渡電圧設定パラメータとして、前記過渡ステップ数、前記ステップ時間、前記ステップ電圧が複数記憶されたデータベースから、前記所定の設定条件に適合した前記過渡ステップ数、前記ステップ時間、前記ステップ電圧を取得する構成とすることができる。
【0014】
前記電圧印加装置として、デバイス電源(DPS)、パラメトリック測定ユニット(PMU)を挙げることができる。
【0015】
本発明の第2の観点は、基板上に形成された複数の被検査デバイスに対して電気的特性を検査するテスタにおいて、前記被検査デバイスに電圧を印加する電圧印加装置から出力する出力電圧波形の形成方法であって、設定電圧値を含む所定の設定条件が与えられた際に、前記所定の設定条件に適合した複数の過渡ステップを有するステップ状の過渡電圧波形が形成されるように、過渡電圧設定パラメータとして、過渡ステップ数、ステップ時間、ステップ電圧を設定し、前記過渡電圧設定パラメータに基づいて、前記ステップ状の過渡電圧波形を有する出力電圧を形成し、前記電圧印加装置から出力された出力電圧を、前記電圧印加装置に接続された前記被検査デバイスへステップ入力した際の応答が、設定電圧に対しオーバーシュートが生じる2次以上の高次遅れ系であり、前記各過渡ステップの前記ステップ時間の終点が、前記高次遅れ系のステップ応答曲線における立ち上がり時間の終点から行き過ぎ時間までの間の時間になるように設定されることを特徴とする出力電圧波形の形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、設定電圧値を含む所定の設定条件が与えられた際に、前記所定の設定条件に適合した、複数の過渡ステップを有するステップ状の過渡電圧波形が形成されるように、過渡電圧設定パラメータとして、過渡ステップ数、ステップ時間、ステップ電圧を設定し、設定された過渡電圧設定パラメータに基づいて、ステップ状の過渡電圧波形を有する出力電圧を出力するにあたり、電圧印加装置から出力された出力電圧をデバイス電源に接続された被検査デバイスへステップ入力した際の応答が設定電圧に対しオーバーシュートが生じる2次以上の高次遅れ系であることから、電圧設定部に設定された各過渡ステップのステップ時間の終点が、高次遅れ系のステップ応答曲線における立ち上がり時間の終点から行き過ぎ時間までの間の時間になるように設定する。これにより電圧印加装置の出力回路の変更をともなうことなく、被検査デバイスに印加される過渡電圧波形を、オーバーシュート等がほとんど生じないものとすることができる。また、これによりステップ時間を短時間とすることもでき、短時間で設定電圧値に到達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るデバイス電源が用いられる検査装置の一例の概略構成を示す断面図である。
図2図1の検査装置における制御部のハードウェア構成を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るデバイス電源を示すブロック図である。
図4】出力電圧の立ち上がり波形を形成する方法を示すフローチャートである。
図5図4の出力電圧の立ち上がり波形を形成する方法により形成された出力電圧の過渡電圧波形の一例を模式的に示す図である。
図6】一般的な、2次遅れ系のステップ応答出力の曲線を示す図である。
図7】0.5V、0.2V、0.15V、0.1V、0.05Vの電圧をそれぞれ出力した場合の2次遅れ系のステップ応答を示す図である。
図8】ステップ電圧を0.5V→0.2V→0.15V→0.1V→0.05Vとしたステップ状の過渡電圧波形を出力し、各ステップにおけるステップ時間の終点を、立ち上がり時間Trの終点から行き過ぎ点Tpの間の時間になるように設定して重畳し、合計が1Vとなるように出力した際の過渡電圧波形の2次遅れ系のステップ応答を示す図である。
図9】DPSから1Vの電圧を出力し、DUT端に大きなオーバーシュートが生じる条件において、実際に、DPSから出力される過渡電圧波形を、ステップ電圧を0.5V→0.2V→0.15V→0.1V→0.05Vと変化させた5ステップとし、各ステップのステップ時間を、立ち上がり時間Trの終点から行き過ぎ点Tpの間に対応する時間になるように設定して出力した過渡電圧波形を示す図である。
図10図9の過渡電圧波形が出力された際に、実際のDUT端での応答波形を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<検査装置>
図1は、本発明の一実施形態に係るデバイス電源が用いられる検査装置の一例の概略構成を示す断面図である。
【0019】
図1において、検査装置1は、ウエハWに形成された複数のDUTに対し、検査信号の授受を行うためのプローブを接触させるためのプローバ2と、ウエハWの各DUTに電気信号を送るとともに、DUTからの応答信号を受信してウエハW上のDUTの電気的特性検査を行うテスタ3とを備えている。
【0020】
プローバ2は、複数のウエハWを収納する容器であるFOUP10が載置され、ウエハWを搬送する搬送装置(図示せず)を有するローダ部11と、ウエハWの検査が行われる検査室12と、検査室12内でウエハWを載置した状態で、ウエハWをX、Y、Z及びθ方向に移動させる駆動部(図示せず)を有する載置台13と、載置台13の上方に配置されたホルダ14と、このホルダ14に支持され、支持基板15aと複数のプローブ(接触子)15bとを有するプローブカード15と、複数のプローブ15bとウエハWに形成された複数のDUTの電極パッド(図示せず)との位置合わせを行うアライメント機構16と、プローバ2の制御を行うプローバ制御部17とを備えている。プローブカード15は、ポゴピンを介して多数の接続端子を有する接続リング21およびインターポーザ(パフォーマンスボード)22を介してテスタ3に接続されている。
【0021】
テスタ3は、テスタ本体31と、テスタ制御部32とを有している。テスタ本体31は、ウエハWのDUTに電圧を印加する電圧印加装置であるデバイス電源(DPS)33と、DUTのテストを行うために必要な回路およびコンデンサ等の部品(図示せず)とを有している。
【0022】
テスタ制御部32は、テスタ3の各構成部を制御する。本実施形態では、特に、DPS33の制御に特徴があり、DPS33の一部として機能する電圧設定部41を有している。テスタ制御部32は、典型的にはコンピュータである。図2は、図1に示したテスタ制御部32のハードウェア構成の一例を示している。テスタ制御部32は、主制御部101と、キーボード、マウス等の入力装置102と、プリンタ等の出力装置103と、表示装置104と、記憶装置105と、外部インターフェース106と、これらを互いに接続するバス107とを備えている。主制御部101は、CPU(中央処理装置)111、RAM(ランダムアクセスメモリ)112およびROM(リードオンリメモリ)113を有している。記憶装置105は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に対する情報の記録および読み取りを行うようになっている。記憶媒体としては、例えばハードディスク、光ディスク、フラッシュメモリのような半導体メモリ等を挙げることができる。記憶媒体には、本実施形態に係る検査方法を行うためのレシピ等が記憶されている他、後述する、DPS33の電圧設定部において設定されるDUTへの印加電圧を設定するためのデータベースとしても機能する。
【0023】
<デバイス電源>
次に、電圧印加装置であるデバイス電源33について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係るデバイス電源を示すブロック図である。
図3に示すように、DPS33は、DPS本体40と、テスタ制御部32の一部をなす電圧設定部41とを有する。DPS本体40は、デジタルアナログコンバータ(DAC)42と、出力回路43とを有し、電圧設定部41からの設定電圧信号(デジタル信号)が入力され、DAC42によりアナログ信号に変換され、出力回路43を経て所定の出力電圧が出力される。出力電圧は給電線路44を介してDUT45に印加される。給電線路44のDPS33側がDPS端44aであり、DUT45側がDUT端44bである。給電線路44のDUT端44b側に、負荷46が設けられている。負荷46の値は検査の種類等により変化し、ゼロの場合もある。
【0024】
電圧設定部41は、DUT45に印加されるDUT端の電圧が、オーバーシュート等がない適切なものとなるように、DPS端における出力電圧の立ち上がり波形(過渡電圧波形)を形成するためのパラメータを設定するものである。具体的には、記憶装置105の記憶媒体におけるデータベースには、設定電圧値(定常値)を含む条件、例えば、設定電圧値の他、出力回路43の回路特性、DUT端の負荷46の値等に対応して、出力電圧の立ち上がり波形(過渡電圧波形)を設定するための過渡電圧設定パラメータが複数記憶されており、設定電圧値(定常値)を含む条件が与えられたときにデータベースから適合する過渡電圧設定パラメータを取得して、後述するように出力電圧の立ち上がり波形(過渡電圧波形)を設定する。
【0025】
<出力電圧波形の形成方法>
次に、出力電圧波形の形成方法について説明する。ここでは、電圧設定部41は、出力電圧の立ち上がり波形(過渡電圧波形)を設定し、DUT端における立ち上がり波形(過渡電圧波形)がオーバーシュートしないように出力電圧波形を形成する。具体的には、電圧設定部41は、出力電圧の立ち上がり波形(過渡電圧波形)がステップ状になるように電圧設定する。
【0026】
図4は、出力電圧の立ち上がり波形を形成する方法を示すフローチャートである。最初に、設定電圧値(定常値)の値を含む条件が与えられたときに、それに応じて、記憶装置105の記憶媒体におけるデータベースから入力電圧の立ち上がり波形(過渡電圧波形)の過渡電圧設定パラメータを取得する(ステップ1)。
【0027】
本実施形態では出力電圧の立ち上がり波形(過渡電圧波形)をステップ状(階段状)に設定するため、過渡電圧設定パラメータとしては、過渡ステップ数、ステップ時間、ステップ電圧が用いられ、データベースには、設定電圧値(定常値)を含む条件、例えば、設定電圧値の他、出力回路43の回路特性、DUT端の負荷46の値等に対応した、過渡ステップ数、ステップ時間、およびステップ電圧のデータが複数格納されている。過渡ステップ数は、ステップ状の過渡電圧波形のステップ数であり、ステップ時間は過渡電圧波形の一つのステップの時間であり、ステップ電圧は過渡電圧波形の一つのステップにおける上昇電圧である。このとき、設定電圧値(定常値)を含む条件が与えられると、その条件に応じた過渡ステップ数、ステップ時間、ステップ電圧を取得し、設定する。
【0028】
設定すべき過渡ステップがあるか否かを判断し(ステップ2)、設定すべき過渡ステップがある場合には過渡電圧を設定(出力)する(ステップ3)。ステップ時間の終了を判断し(ステップ4)、終了した時点でステップ2に戻り、過渡ステップがある場合、次の過渡ステップについて、ステップ3の過渡電圧の設定(出力)を行う。これを繰り返して、次に設定する過渡ステップがなくなった時点で、設定電圧すなわち出力電圧の立ち上がり波形(過渡電圧波形)を出力する(ステップ5)。
【0029】
このときの実際に設定した出力電圧の過渡電圧波形の一例を図5に示す。本例は、設定電圧値を1V、過渡ステップ数を6とした場合の例である。図5では、便宜上、ステップ時間、ステップ電圧を均等にした例を示しているが、これらの値は、条件によって最適化される。
【0030】
<パラメータの設定手法>
次に、電圧設定パラメータである過渡ステップ数、ステップ時間、ステップ電圧の設定手法について説明する。
【0031】
テスタに接続されるDUTは、寄生キャパシタや寄生インダクタンスを考慮するとRLC回路であると考えられ、ステップ入力に対する応答は、例えば2次遅れ系になり、オーバーシュートが発生するものと考えられる。
【0032】
2次遅れ系のステップ応答出力の曲線は、一般的に図6のようになることが知られている。図6中、Amaxは最大行き過ぎ量(オーバーシュート)、すなわち出力値と目標値との差が最大となる値である。Tは行き過ぎ時間であり、これは最大行き過ぎ量になるまでの時間である。Tは、出力値が目標値の10%から90%に達するまでの時間である立ち上がり時間である。Tは、出力値が目標値の50%に値に達するまでの時間である遅延時間である。Tは目標値からがある誤差範囲に入るまでの時間である整定時間であり、Tはむだ時間である。
【0033】
また、2次遅れ系のステップ応答の式は以下の(1)式で表される。
【数1】
ただし、t:時間、ω:固有角周波数、ξ:減衰係数であり、0<ξ<1である。
【0034】
本実施形態のように、過渡電圧をステップ状に印加する場合、各ステップでオーバーシュートが発生せず、迅速に設定電圧値(定常値)まで上昇させることが必要である。そのためには、各過渡ステップにおける電圧値に対応して得られる図6の曲線において、立ち上がり時間Trの終点から行き過ぎ点Tpの間で次の設定出力に切り替えることが有効であることが判明した。したがって、本実施形態では、上述した各過渡ステップのステップ時間の終点を、各過渡ステップのステップ電圧に対応する2次遅れ系のステップ応答の曲線における立ち上がり時間Trの終点から行き過ぎ点Tpまでの間の時間になるように設定する。
【0035】
このとき、過渡ステップのステップ電圧は、過渡ステップが進行するにつれて小さくなることが好ましい。すなわち、過渡ステップtの設定電圧をVとし、その前段の過渡ステップt−1の設定電圧をVt−1、その後段の過渡ステップt+1の設定電圧をVt+1とした場合、V−Vt−1>Vt+1−Vとなるようにすることが好ましい。このときの過渡ステップtのステップ電圧がV−Vt−1であり、過渡ステップt+1のステップ電圧がVt+1−Vである。このようにすることにより、オーバーシュートをより生じ難くすることができる。
【0036】
例えば、上記(1)式に従えば、0.5V、0.2V、0.15V、0.1V、0.05Vの電圧をそれぞれ出力した場合の2次遅れ系のステップ応答は、図7に示すようになる。そして、図8に示すように、1Vの電圧を出力した場合の2次遅れ系のステップ応答では大きなオーバーシュートを生じるのに対し、ステップ電圧を0.5V→0.2V→0.15V→0.1V→0.05Vとしたステップ状の過渡電圧波形を出力し、各ステップにおけるステップ時間の終点を、立ち上がり時間Trの終点から行き過ぎ点Tpの間の時間になるように設定して重畳し、合計が1Vとなるように出力することにより、2次遅れ系のステップ応答においてオーバーシュートを除去できることがわかる。なお、立ち上がり時間Trの終点から行き過ぎ点Tpの間に対応する時間では、各ステップにおいて、理論的にはオーバーシュートが発生する場合もあり得るが、実際には、各電圧が重畳される際に応答の遅れが存在し、オーバーシュートはほとんど生じない。
【0037】
このように、本実施形態では、設定電圧値を含む複数の設定条件に対応して、過渡電圧設定パラメータとして、過渡ステップ数、ステップ時間、およびステップ電圧のデータが複数格納されており、テスタ3のDPS33において、電圧設定部41が、与えられた所定の設定条件に応じて、データベースから過渡ステップ数、ステップ時間、ステップ電圧を取得し、ステップ状に出力電圧を形成する。このとき、テスタに接続されるDUTは、寄生キャパシタや寄生インダクタンスを考慮するとRLC回路であると考えられ、ステップ入力に対する応答は例えば2次遅れ系になるものと考えられることから、各過渡ステップにおけるステップ時間の終点を、2次遅れ系のステップ応答曲線における立ち上がり時間Trの終点から行き過ぎ点Tpの間に対応する時間になるように設定する。これにより、DPS33の出力回路43の変更をともなうことなく、DPS33から出力されてDUT端44bに印加される電圧の立ち上がり波形を、オーバーシュート等がほとんど生じないものとすることができる。また、これによりステップ時間を短時間とすることもでき、短時間で設定電圧値に到達させることができる。
【0038】
DPSから1Vの電圧を出力し、DUT端に大きなオーバーシュートが生じる条件において、実際に、図9に示すように、DPS33から出力される過渡電圧波形を、ステップ電圧を0.5V→0.2V→0.15V→0.1V→0.05Vと変化させた5ステップとし、各ステップのステップ時間を、立ち上がり時間Trの終点から行き過ぎ点Tpの間に対応する時間になるように設定して出力した。その結果、DUT端での応答波形は図10のように、出力応答が重畳されてスロープが形成されたものとなり、オーバーシュートが生じないことが確認された。
【0039】
従来、テスタにおいては、プローブカードと接続されるポゴピンの端部(ポゴ端)での性能がスペックされるため、DUT端に負荷を接続した場合は、期待した電源波形が得られるかどうかを評価することが必要になり、評価した結果、オーバーシュート等が発生する場合は、補償回路をプローブカードに作りこむ等の対策が必要であったが、本実施形態では、DPS回路の変更が不要であるばかりでなく、このような補償回路も用いる必要もなく、かつ、期待した電源波形が得られるかどうかは評価の時間も必要なく、簡易にオーバーシュートを抑制することができる。このため、本実施形態の技術は極めて有用である。
【0040】
<他の適用>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、本発明の思想の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、ステップ電圧をステップの進行にともなって徐々に減少させたが、これに限るものでなく、電圧が一定の場合や、後続のステップの電圧の増加分が増加する場合、増加および減少が混在する場合等であってもよい。
【0041】
また、上記実施形態ではDUT端における電圧の二次遅れ系のオーバーシュートを抑制する場合について示したが、これに限らず、電圧のオーバーシュートが生じる高次遅れ系であれば適用でき、さらに、DUT端における電圧が単調に増加しない等、他の立ち上がり波形不良の場合にも適用することができる。
【0042】
さらに、上記実施形態では、テスタに用いられる、デバイスに電圧を印加する電圧印加装置として、DPSの場合について説明したが、これに限らず、DUTに電圧を印加する際に用いられるテスタ構成要素のパラメトリック測定ユニット(PMU)や、各種ドライバ等、他の電圧印加装置に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0043】
1;検査装置
2;プローバ
3;テスタ
31;テスタ本体
32;テスタ制御部
33;デバイス電源(DPS)
40;DPS本体
41;電圧設定部
45;DUT
46;負荷
W;ウエハ
図1
図2
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図8
図9
図10