(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を有さない基、芳香族性を有さない化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を含むものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を含むものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」又は「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基又はアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(−H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(−CH
2−)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、アクリル酸(CH
2=CH−COOH)のカルボキシ基末端の水素原子が有機基で置換された化合物である。
アクリル酸エステルは、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該α位の炭素原子に結合した水素原子を置換する置換基(R
α0)は、水素原子以外の原子又は基であり、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。また、置換基(R
α0)がエステル結合を含む置換基で置換されたイタコン酸ジエステルや、置換基(R
α0)がヒドロキシアルキル基やその水酸基を修飾した基で置換されたαヒドロキシアクリルエステルも含むものとする。なお、アクリル酸エステルのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、アクリル酸のカルボニル基が結合している炭素原子のことである。
以下、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸エステルをα置換アクリル酸エステルということがある。また、アクリル酸エステルとα置換アクリル酸エステルとを包括して「(α置換)アクリル酸エステル」ということがある。
【0019】
≪レジスト組成物≫
本発明のレジスト組成物は、酸の作用により現像液に対して溶解性が変化する成分(A)、及び放射線の照射により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有するレジスト組成物である。
本発明において、レジスト組成物は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)(以下、「(A)成分」ともいう)を含有する。
かかるレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的露光を行うと、露光部では酸が発生し、該酸の作用により(A)成分の現像液に対する溶解性が変化する一方で、未露光部では(A)成分の現像液に対する溶解性が変化しないため、露光部と未露光部との間で現像液に対する溶解性の差が生じる。そのため、該レジスト膜を現像すると、当該レジスト組成物がポジ型である場合は、露光部が溶解除去されてポジ型のレジストパターンが形成され、当該レジスト組成物がネガ型である場合は、未露光部が溶解除去されてネガ型のレジストパターンが形成される。
【0020】
本明細書においては、露光部が溶解除去されてポジ型レジストパターンを形成するレジスト組成物をポジ型レジスト組成物といい、未露光部が溶解除去されてネガ型レジストパターンを形成するレジスト組成物をネガ型レジスト組成物という。
本発明において、レジスト組成物は、ポジ型レジスト組成物であってもよく、ネガ型レジスト組成物であってもよい。
前記実施形態のレジスト組成物は、露光により酸を発生する酸発生能を有するものであり、具体的には、本実施形態のレジスト組成物は、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下、「(B)成分」ともいう)を含有するものである。
【0021】
≪基材成分≫
本発明において、「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物であって、好ましくは分子量が500以上の有機化合物が用いられる。該有機化合物の分子量が500以上であることにより、膜形成能が向上し、加えて、ナノレベルのレジストパターンを形成しやすい。
基材成分として用いられる有機化合物は、非重合体と重合体とに大別される。
非重合体としては、通常、分子量が500以上4000未満のものが用いられる。以下、「低分子化合物」という場合は、分子量が500以上4000未満の非重合体を示す。
重合体としては、通常、分子量が1000以上のものが用いられる。以下、「樹脂」又は「高分子化合物」という場合は、分子量が1000以上の重合体を示す。
重合体の分子量としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量を用いるものとする。
本実施形態のレジスト組成物に用いられる基材成分としては、少なくとも(A)成分が用いられ、該(A)成分とともに他の高分子化合物及び/又は低分子化合物を併用してもよい。
【0022】
[(A)成分]
本発明のレジスト組成物において、(A)成分は、酸の作用により現像液に対して溶解性が変わる成分であって、式(1)で表される構成単位(a−1)と、式(2)で表される構成単位(a−2)を有する高分子化合物を含有する。
【0023】
かかる(A)成分を含有するレジスト組成物を用いて形成されたレジスト膜を露光した場合、構成単位(a−1)及び(a−2)は、酸の作用によりその構造中の少なくとも一部の結合が開裂し、極性が増大する。このため、本実施形態のレジスト組成物は、現像液が有機系現像液の場合(溶剤現像プロセス)においてネガ型となり、現像液がアルカリ現像液の場合(アルカリ現像プロセス)においてポジ型となる。(A)成分は、露光前後で極性が変化するため、(A)成分を用いることにより、アルカリ現像プロセスだけでなく、溶剤現像プロセスにおいても良好な現像コントラストを得ることができる。
つまり、溶剤現像プロセスを適用する場合、(A)成分は、露光前は有機系現像液に対して溶解性が高い。露光により酸が発生すると、該酸の作用により極性が高くなって有機系現像液に対する溶解性が減少する。このため、レジストパターンの形成において、当該レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部は有機系現像液に対して可溶性から難溶性に変化する一方で、未露光部は可溶性のまま変化しないため、有機系現像液で現像することにより、露光部と未露光部との間でコントラストをつけることができ、ネガ型レジストパターンを形成することができる。
一方、アルカリ現像プロセスを適用する場合は、(A)成分は、露光前はアルカリ現像液に対して溶解性が低い。露光により酸が発生すると、該酸の作用により極性が高くなってアルカリ現像液に対する溶解性が増加する。このため、レジストパターンの形成において、当該レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部はアルカリ現像液に対して難溶性から可溶性に変化する一方で、未露光部は難溶性のまま変化しないため、アルカリ現像液で現像することにより、露光部と未露光部との間でコントラストをつけることができ、ポジ型レジストパターンが形成することができる。
【0024】
・構成単位(a−1)
構成単位(a−1)は、ラクトン含有環式基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位である。ここで、ラクトン含有環式基とは、環骨格中に−O−C(=O)−構造を含む環式基を意味し、「(メタ)アクリル酸エステル」は、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを指し示す。
「ラクトン含有環式基」は、環骨格中に−O−C(=O)−構造を含む環式基を意味し、「ラクトン含有多環式基」とは、その環骨格中に−O−C(=O)−を含む環(ラクトン環)を含有する多環式基を示す。ラクトン環をひとつ目の環として数え、さらに他の環構造を有する場合を、その構造に関わらず多環式基と称する。ラクトン含有多環式基としては、ラクトン環にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形態で、他の環構造が縮環された多環式基等が挙げられる。
【0025】
構成単位(a−1)を採用することで、高分子化合物のガラス転移温度(T
g)が高められる。かかる構成単位(a−1)を有する(A)成分を用いることで、レジストパターン形成の際、特に、レジスト膜の未露光部への酸の拡散が抑制され、ラフネスの低減された良好な形状のパターンが形成される。
構成単位(a−1)のラクトン含有環式基は、高分子化合物(A)を含有するレジスト組成物をレジスト膜の形成に利用した場合に、レジスト膜の基板への密着性を向上させたり、水を含有する現像液との親和性を向上させたりするのに有効であり、ラインワイズラフネス(LWR)及び現像欠陥を良好にする。
構成単位(a−1)としては、下記式(1)で表される構成単位が好ましい。
【0026】
【化5】
[式(1)中、Rは、水素原子、アルキル基又はハロゲン化アルキル基であり;Laは、下記式(1−1)又は式(1−2)から選択される。]
【0027】
【化6】
[式中、「*」は、結合手であり;A1は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、水酸基、−COOR’、−OC(=O)R’、ヒドロキシアルキル基又はシアノ基であり;A2は、酸素原子(−O−)又は硫黄原子(−S−)を含んでいてもよいアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子であり;B1、B2及びB3は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、水酸基、−COOR’、−OC(=O)R’、ヒドロキシアルキル基又はシアノ基であり;R’は、水素原子又はアルキル基である。]
【0028】
前記式(1−1)又は式(1−2)の構造を有するラクトン基を有する高分子化合物(A)は、レジスト膜の形成に利用する場合に、レジスト膜の基板への密着性を向上させたり、水を含有する現像液との親和性を向上させたりするのに有効であり、ELの向上、CH形成の最大・最小CDの改善の効果を有するようにする。
【0029】
前記式(1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はハロゲン化アルキル基である。
Rにおけるアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
Rにおけるハロゲン化アルキル基は、前記アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0030】
前記式(1)中、Laはラクトン含有多環式基であって、具体的には、Laは、下記式(1−1)又は式(1−2)から選択される。
【0031】
【化7】
[式中、「*」は、結合手であり;A1は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、水酸基、−COOR’、−OC(=O)R’、ヒドロキシアルキル基又はシアノ基であり;A2は、酸素原子(−O−)又は硫黄原子(−S−)を含んでいてもよいアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子であり;B1、B2及びB3は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、水酸基、−COOR’、−OC(=O)R’、ヒドロキシアルキル基又はシアノ基であり;R’は、水素原子又はアルキル基である。]
【0032】
A1におけるアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。該アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
A1におけるアルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。該アルコキシ基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、前記A1におけるアルキル基として挙げたアルキル基と酸素原子(−O−)とが連結した基が挙げられる。
A1におけるハロゲン化アルキル基としては、前記A1におけるアルキル基の水素原子の一部又は全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。該ハロゲン化アルキル基としては、フッ素化アルキル基が好ましく、特にパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0033】
A1における−COOR’、−OC(=O)R’について、R’は、水素原子又はアルキル基である。
R’におけるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、炭素数は1〜15が好ましい。R’が直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基の場合は、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜5であることがさらに好ましく、メチル基又はエチル基であることが特に好ましい。R’が環状のアルキル基の場合は、炭素数3〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。具体的には、フッ素原子又はフッ素化アルキル基で置換されていてもよく、されていなくてもよいモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
A1におけるヒドロキシアルキル基としては、炭素数が1〜6であるものが好ましく、具体的には、前記A1におけるアルキル基の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された基が挙げられる。
【0034】
前記式(1−1)中、A2は、酸素原子(−O−)又は硫黄原子(−S−)を含んでいてもよいアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子であり;B1、B2及びB3は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、水酸基、−COOR’,−OC(=O)R’、ヒドロキシアルキル基又はシアノ基を示す。
A2におけるアルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。該アルキレン基が酸素原子又は硫黄原子を含む場合、その具体例としては、前記アルキレン基の末端又は炭素原子の間に、−O−又は−S−が介在する基が挙げられ、例えば、−O−CH
2−、−CH
2−O−CH
2−、−S−CH
2−、−CH
2−S−CH
2−等が挙げられる。A2としては、炭素数1〜5のアルキレン基又は−O−が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
【0035】
前記式(1−2)中、B1、B2及びB3は、式(1−1)におけるA1の定義と同一である。
【0036】
前記式(1−1)において、A1は水素原子であり、A2はメチレン基である場合が好ましく、前記式(1−2)において、B1、B2及びB3は水素原子である場合が好ましい。
【0037】
以下に、式(1−1)及び(1−2)でそれぞれ表される基の具体例を挙げる。
【0040】
前記式(1−1)の具体例において、前記式(1−1−a)ないし式(1−1−e)で表される基の中では、特に(1−1−a)で表される基が好ましく、前記式(1−2)の具体例において、前記式(1−2−a)で表される基が好ましい。
【0041】
以下に、構成単位(a−1)の具体例を表す。
【0043】
(A)成分中、構成単位(a−1)の割合は、当該(A)成分を含む全構成単位の合計に対して5〜70モル%であることが好ましく、10〜60モル%であることがより好ましく、20〜60モル%であることがさらに好ましく、20〜50モル%であることが最も好ましい。
構成単位(a−1)の割合が好ましい下限値以上であると、レジストパターン形成の際、レジスト膜の未露光部への酸の拡散がより抑剤され、ELの向上、CH形成の最大・最小CDが改善された良好な形状のパターンが形成されやすくなる。一方、構成単位(a−1)の割合が好ましい上限値以下であると、他の構成単位とのバランスをとりやすくなり、形成されるレジストパターンは、リソグラフィー特性に優れ、良好な形状が得られやすい。
【0044】
・構成単位(a−2)
構成単位(a−2)は、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位である。
「酸分解性基」は、酸の作用により、当該酸分解性基の構造中の少なくとも一部の結合が開裂し得る酸分解性を有する基である。
酸の作用により極性が増大する酸分解性基としては、例えば、酸の作用により分解して極性基を生じる基が挙げられる。
極性基としては、例えば、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルホ基(−SO
3H)等が挙げられる。これらの中でも、スルホ基又は構造中に−OHを含有する極性基(以下「OH含有極性基」ということがある。)が好ましく、スルホ基又はカルボキシ基又は水酸基が好ましく、カルボキシ基又は水酸基が特に好ましい。
【0045】
酸分解性基として、より具体的には、前記極性基が酸解離性基で保護された基(例えば、OH含有極性基の水素原子を、酸解離性基で保護した基)が挙げられる。
ここで、「酸解離性基」とは、
(i)酸の作用により、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る酸解離性を有する基、又は、
(ii)酸の作用により一部の結合が開裂した後、さらに脱炭酸反応が生じることにより、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る基、
の双方をいう。
酸分解性基を構成する酸解離性基は、当該酸解離性基の解離により生成する極性基よりも極性の低い基であることが必要であり、これにより、酸の作用により該酸解離性基が解離した際に、該酸解離性基よりも極性の高い極性基が生じて極性が増大する。その結果、(A)成分全体の極性が増大する。極性が増大することにより、相対的に、現像液に対する溶解性が変化し、現像液が有機系現像液の場合には溶解性が減少する。
【0046】
酸解離性基としては、特に限定されず、これまで、化学増幅型レジスト用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものを用いることができる。
【0047】
構成単位(a−2)としては、下記式(2)で表される構成単位が好ましい。
【0048】
【化11】
[式(2)中、Rは、水素原子、アルキル基又はハロゲン化アルキル基であり;Zは、単結合又はアルキル基を示し;Cpは、下記一般式(Cp−1)で表される基である。]
【0049】
【化12】
[式中、R
2は、第三級アルキル基であり、n
pは、正の整数であり、*は、Zとの結合位置を示す。]
【0050】
Rにおけるアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
前記式(2)中、Rにおけるハロゲン化アルキル基は、前記アルキル基の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0051】
前記式(2)中、Zは、連結基として、単結合又はアルキル基を示す。
Zにおけるアルキル基は、前記Rで定義した炭素数1〜5のアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0052】
前記式(2)中、C
pは、前記一般式(Cp−1)で表される基である。
C
pにおけるR
2は、第三級アルキル基を示し、第三級アルキル基は、炭素数4〜10であることが好ましく、炭素数4〜6であることがより好ましく、tert−ブチル基が最も好ましい。
C
pにおけるn
pは、正の整数を示し、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が最も好ましい。
前記式(2)において、R
2はtert−ブチル基であり、n
pは1であることが好ましい。
【0053】
前記構成単位(a−2)は、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位である。
かかる構成単位(a−2)における酸分解性基は、酸の作用により、酸分解性基の構造中の少なくとも一部の結合が開裂するのに必要な活性化エネルギーが他の酸分解性基に比べて相対的に低い(すなわち、酸の作用により、前述の酸解離性基が解離しやすい)。
前記構成単位(a−2)における酸分解性基は、酸の作用により分解して極性基(カルボキシ基)を生じる。すなわち、該酸分解性基は、前記極性基が特定の単環構造の酸解離性基で保護された基である。
【0054】
本発明において、(A)成分に含まれるポリマーの好ましい構成単位(a−2)の例としては、下記の構成単位等が挙げられる。
【0056】
本態様のレジスト組成物中、構成単位(a−2)の割合は、当該(a−2)成分を含む全構成単位の合計に対して5〜70モル%であることが好ましく、10〜60モル%であることがより好ましく、20〜60モル%であることがさらに好ましく、20〜50モル%であることが最も好ましい。
構成単位(a−2)の割合を下限値以上とすることにより、感度、解像性、LWR等のリソグラフィー特性も向上する。また、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0057】
・追加成分
本実施形態のレジスト組成物は、(A)成分として、前記(a−1)又は(a−2)成分に該当しない、酸の作用により、有機系現像液に含まれる有機溶剤に対する溶解性が減少する基材成分(以下、「(A’)成分」ともいう)を併用してもよい。
(A’)成分としては、特に限定されず、化学増幅型レジスト組成物用の基材成分として従来から知られている多数のもの(例えば、ArFエキシマレーザー用、KrFエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のベース樹脂)から任意に選択して用いればよい。
【0058】
本実施形態のレジスト組成物において、(A’)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のレジスト組成物中、(A’)成分の割合は、形成しようとするレジスト膜厚等に応じて調整すればよい。
【0059】
≪酸発生剤成分≫
本発明のレジスト組成物において、露光により酸を発生する酸発生剤成分である(B)成分を含有する。(B)成分は、下記のように示すアニオン部とカチオン部をそれぞれ1種含有し、一つ以上の酸発生剤を含有することができる。
【0060】
{アニオン部}
(B)成分は、下記式(3)で表されるアニオンを有する酸発生剤を含有する。
【0061】
【化14】
[式中、Yは、置換基を有していてもよい炭素数5〜30の単環式又は多環式炭化水素基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基;nは、1〜5の整数である。]
【0062】
Yにおける置換基を有していてもよい環式基の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を有さない炭化水素基を意味する。また、脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
【0063】
Yにおける芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素数は、3〜30であることが好ましく、5〜30がより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜10が最も好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
Yにおける芳香族炭化水素基が有する芳香環として、具体的には、ベンゼン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、又はこれらの芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環などが挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
Yにおける芳香族炭化水素基として、具体的には、前記芳香環から水素原子を1つ除いた基(アリール基:例えば、フェニル基、ナフチル基など)、前記芳香環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0064】
Yにおける環状の脂肪族炭化水素基は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基が挙げられる。
この構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基等が挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3〜6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7〜30のものが好ましい。中でも、該ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン;ステロイド骨格を有する環式基等の縮合環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンがより好ましい。
中でも、Yにおける環状の脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカン又はポリシクロアルカンから水素原子を1個以上除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンから水素原子を1個除いた基がより好ましく、アダマンチル基、ノルボルニル基が特に好ましく、アダマンチル基が最も好ましい。
【0065】
脂環式炭化水素基に結合してもよい、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましく、1〜3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[−CH
2−]、エチレン基[−(CH
2)
2−]、トリメチレン基[−(CH
2)
3−]、テトラメチレン基[−(CH
2)
4−]、ペンタメチレン基[−(CH
2)
5−]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、−CH(CH
3)−、−CH(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CH
3)(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)(CH
2CH
2CH
3)−、−C(CH
2CH
3)
2−等のアルキルメチレン基;−CH(CH
3)CH
2−、−CH(CH
3)CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2CH
2−、−CH(CH
2CH
3)CH
2−、−C(CH
2CH
3)
2−CH
2−等のアルキルエチレン基;−CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2−等のアルキルトリメチレン基;−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2−等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0066】
また、Yにおける環状の炭化水素基は、複素環等のようにヘテロ原子を含んでもよい。具体的には、前記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−6)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、前記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−2)でそれぞれ表される−SO
2−含有多環式基、その他に、下記化学式(r−hr−1)〜(r−hr−16)でそれぞれ表される複素環式基が挙げられる。
【0070】
前記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−6)中、Ra’
21は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、−COOR
02”、−OC(=O)R
02”、ヒドロキシアルキル基又はシアノ基であり;R
02”は、水素原子、アルキル基又はラクトン含有多環式基であり;A”は、酸素原子(−O−)もしくは硫黄原子(−S−)を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子であり;m’は、0又は1である。
【0071】
前記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−6)中、Ra’
21におけるアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。該アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
Ra’
21におけるアルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。該アルコキシ基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、前記Ra’
21におけるアルキル基として挙げたアルキル基と酸素原子(−O−)とが連結した基が挙げられる。
Ra’
21におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
Ra’
21におけるハロゲン化アルキル基としては、前記Ra’
21におけるアルキル基の水素原子の一部又は全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン化アルキル基としては、フッ素化アルキル基が好ましく、特にパーフルオロアルキル基が好ましい。
Ra’
21における−COOR
02”、−OC(=O)R
02”について、R
02”は、水素原子、アルキル基又はラクトン含有多環式基である。
R
02”におけるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、炭素数は1〜15が好ましい。R
02”が直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基の場合は、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜5であることがさらに好ましく、メチル基又はエチル基であることが特に好ましい。R
02”が環状のアルキル基の場合は、炭素数3〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。具体的には、フッ素原子又はフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
R
02”におけるラクトン含有多環式基としては、前記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−6)でそれぞれ表される基が挙げられる。
Ra’
21におけるヒドロキシアルキル基としては、炭素数が1〜6であるものが好ましく、具体的には、前記Ra’
21におけるアルキル基の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された基が挙げられる。
【0072】
前記一般式(a2−r−1)、(a2−r−2)、(a2−r−4)中、A”における炭素数1〜5のアルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。該アルキレン基が酸素原子又は硫黄原子を含む場合、その具体例としては、前記アルキレン基の末端又は炭素原子間に、−O−又は−S−が介在する基が挙げられ、例えば、−O−CH
2−、−CH
2−O−CH
2−、−S−CH
2−、−CH
2−S−CH
2−等が挙げられる。A”としては、炭素数1〜5のアルキレン基又は−O−が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
【0073】
前記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−2)中、Ra’
51は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、−COOR
05”、−OC(=O)R
05”、ヒドロキシアルキル基又はシアノ基であり;R
05”は、水素原子、アルキル基又は−SO
2−含有多環式基であり;A”は、酸素原子(−O−)もしくは硫黄原子(−S−)を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子である。
【0074】
前記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−2)中、A”は、前記一般式(a2−r−1)中のA”と同様である。
Ra’
51におけるアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基としては、それぞれ前記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−6)中のRa’
21の説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
R
05”におけるアルキル基としては、前記R
02”におけるアルキル基と同様のものが挙げられる。
R
05”における−SO
2−含有多環式基としては、前記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−2)でそれぞれ表される基が挙げられる。
Yの環式基における置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。
置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基が最も好ましい。
置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等の水素原子の一部又は全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
置換基としてのカルボニル基は、環状の炭化水素基を構成するメチレン基(−CH
2−)を置換する基である。
【0075】
Yにおける置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜15であることがより好ましく、3〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
【0076】
Yにおける置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、炭素数が2〜10であることが好ましく、2〜5がより好ましく、2〜4がさらに好ましく、3が特に好ましい。直鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、1−メチルビニル基、2−メチルビニル基、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基などが挙げられる。
鎖状のアルケニル基としては、前記の中でも、直鎖状のアルケニル基が好ましく、ビニル基、プロペニル基がより好ましく、ビニル基が特に好ましい。
Yの鎖状のアルキル基又はアルケニル基における置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、前記Yにおける環式基等が挙げられる。
【0077】
中でも、Yは、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましく、置換基を有していてもよい環式基がより好ましく、置換基を有していてもよい環状の炭化水素基であることがさらに好ましい。
その中でも、フェニル基、ナフチル基、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基、前記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−6)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、前記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−2)でそれぞれ表される−SO
2−含有多環式基が好ましく、これらの中でも、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基、前記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−2)でそれぞれ表される−SO
2−含有多環式基がより好ましい。
【0078】
前記式(3)において、Yは、ヒドロキシル基で置換され得る多環式炭化水素基、又は1個以上の炭素原子がカルボニル基で置換され得る多環式炭化水素基であることが好ましい。
【0079】
本発明において、(B)成分のアニオンの好ましい例としては、下記の酸発生剤PAG−1、PAG−2、及びPAG−5のアニオン等が挙げられる。
【0081】
本発明において、酸発生剤として、フッ素原子(F)を3個有する(B)成分を含む場合、発生する酸が十分な酸の強度を有することにより、ELの向上、CH形成の最大・最小CDの改善の効果を有する。
【0082】
{カチオン部}
(B)成分のカチオン部としては、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを用いることができる。
具体的に、カチオン部としては、オニウムカチオンであり、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンが好適に挙げられ、下記一般式(ca−1)〜(ca−4)でそれぞれ表される有機カチオンが特に好ましい。
【0083】
【化19】
[式中、R
201〜R
207、及びR
211〜R
212は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基、アルキル基又はアルケニル基を表し、R
201〜R
203、R
206〜R
207、R
211〜R
212は、相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。R
208〜R
209は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R
210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよい−SO
2−含有環式基であり、L
201は、−C(=O)−又は−C(=O)−O−を表し、Y
201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基又はアルケニレン基を表し、xは、1又は2であり、W
201は、(x+1)価の連結基を表す。]
【0084】
R
201〜R
207、及びR
211〜R
212におけるアリール基としては、炭素数6〜20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
R
201〜R
207、及びR
211〜R
212におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素数1〜30のものが好ましい。
R
201〜R
207、及びR
211〜R
212におけるアルケニル基としては、炭素数が2〜10であることが好ましい。
R
201〜R
207、及びR
210〜R
212が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、アリール基、下記式(ca−r−1)〜(ca−r−7)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0085】
【化20】
[式中、R’
201は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。]
【0086】
R’
201の置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基は、前述の式(3)中のYにおける置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状アルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基を同様のものも挙げられる。
【0087】
R
201〜R
203、R
206〜R
207、R
211〜R
212は、相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成する場合、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子や、カルボニル基、−SO−、−SO
2−、−SO
3−、−COO−、−CONH−又は−N(R
N)−(該R
Nは、炭素数1〜5のアルキル基である。)等の官能基を介して結合してもよい。形成される環としては、式中の硫黄原子をその環骨格に含む1個の環が、硫黄原子を含めて、3〜10員環であることが好ましく、5〜7員環であることが特に好ましい。形成される環の具体例としては、例えば、チオフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環、チアントレン環、ジベンゾチオフェン環、9H−チオキサンテン環、チオキサントン環、フェノキサチイン環、テトラヒドロチオフェニウム環、テトラヒドロチオピラニウム環等が挙げられる。
【0088】
R
208〜R
209は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、アルキル基となる場合、相互に結合して環を形成してもよい。
【0089】
R
210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよい−SO
2−含有環式基である。
R
210におけるアリール基としては、炭素数6〜20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
R
210におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素数1〜30のものが好ましい。
R
210におけるアルケニル基としては、炭素数が2〜10であることが好ましい。
R
210における置換基を有していてもよい−SO
2−含有環式基としては、前述の「−SO
2−含有多環式基」が好ましく、一般式(a5−r−1)で表される基がより好ましい。
【0090】
Y
201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基又はアルケニレン基を表す。
Y
201におけるアリーレン基は、前述の式(3)中のYにおける芳香族炭化水素基として例示したアリール基から水素原子を1個除いた基が挙げられる。
Y
201におけるアルキレン基、アルケニレン基は、前述の式(3)中のYにおける鎖状のアルキル基、鎖状のアルケニル基として例示した基から水素原子を1個除いた基が挙げられる。
【0091】
前記式(ca−4)中、xは、1又は2である。
W
201は、(x+1)価、すなわち2価又は3価の連結基である。
W
201における2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が好ましい。W
201における2価の連結基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、環状であることが好ましい。中でも、アリーレン基の両端に2個のカルボニル基が組み合わされた基が好ましい。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
W
201における3価の連結基としては、前記W
201における2価の連結基から水素原子を1個除いた基、前記2価の連結基にさらに前記2価の連結基が結合した基などが挙げられる。W
201における3価の連結基としては、アリーレン基に2個のカルボニル基が結合した基が好ましい。
【0092】
前記式(ca−1)で表される好適なカチオンとして、具体的には、下記式(ca−1−1)〜(ca−1−67)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0095】
【化23】
[式中、g1、g2、g3は繰返し数を示し、g1は1〜5の整数であり、g2は0〜20の整数であり、g3は0〜20の整数である。]
【0096】
【化24】
[式中、R”
201は、水素原子又は置換基であって、該置換基としては、前記R
201〜R
207、及びR
210〜R
212が有していてもよい置換基として挙げたものと同様である。]
【0097】
前記式(ca−2)で表される好適なカチオンとして、具体的には、ジフェニルヨードニウムカチオン、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン等が挙げられる。
【0098】
前記式(ca−3)で表される好適なカチオンとして、具体的には、下記式(ca−3−1)〜(ca−3−6)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0100】
前記式(ca−4)で表される好適なカチオンとして、具体的には、下記式(ca−4−1)〜(ca−4−2)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0102】
前記の中でも、カチオン部は、一般式(ca−1)で表されるカチオンが好ましく、式(ca−1−1)〜(ca−1−67)でそれぞれ表されるカチオンがより好ましい。
【0103】
(B)成分は、上述した酸発生剤を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レジスト組成物が(B)成分を含有する場合、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜60質量部であることが好ましく、1〜50質量部であることがより好ましく、1〜40質量部であることがさらに好ましい。
(B)成分の含有量を前記範囲とすることで、パターン形成が充分に行われる。また、レジスト組成物の各成分を有機溶剤に溶解した際、均一な溶液が得られやすく、レジスト組成物としての保存安定性が良好となるため好ましい。
【0104】
≪他の成分≫
本実施形態のレジスト組成物は、上述した(A)及び(B)成分に加えて、前記成分以外の他の成分をさらに含有してもよい。他の成分としては、例えば、以下に示す(D)成分、(E)成分、(F)成分、(S)成分などが挙げられる。
【0105】
[(D)成分:酸拡散制御剤成分]
本実施形態のレジスト組成物は、(A)成分に加えて、又は(A)成分及び(B)成分に加えて、さらに酸拡散制御剤成分(以下、「(D)成分」ともいう)を含有してもよい。(D)成分は、レジスト組成物において露光により発生する酸をトラップするクエンチャー(酸拡散制御剤)として作用するものである。
(D)成分は、露光により分解して酸拡散制御性を失う光崩壊性塩基(D1)(以下、「(D1)成分」ともいう)であってもよく、該(D1)成分に該当しない含窒素有機化合物(D2)(以下、「(D2)成分」ともいう)であってもよい。
【0106】
・(D1)成分について
(D1)成分を含有するレジスト組成物とすることで、レジストパターンを形成する際に、露光部と未露光部とのコントラストを向上させることができる。
(D1)成分としては、露光により分解して酸拡散制御性を失うものであれば特に限定されず、下記一般式(d1−1)で表される化合物(以下、「(d1−1)成分」ともいう)、下記一般式(d1−2)で表される化合物(以下、「(d1−2)成分」ともいう)、及び下記一般式(d1−3)で表される化合物(以下、「(d1−3)成分」ともいう)からなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
(d1−1)〜(d1−3)成分は、レジスト膜の露光部においては分解して酸拡散制御性(塩基性)を失うためクエンチャーとして作用せず、未露光部においてクエンチャーとして作用する。
【0107】
【化27】
[式中、Rd
1〜Rd
4は、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。但し、式(d1−2)中のRd
2におけるS原子に隣接する炭素原子には、フッ素原子は結合していないものとする。Yd
1は、単結合又は2価の連結基である。mは、1以上の整数であって、M
m+は、それぞれ独立に、m価の有機カチオンである。]
【0108】
{(d1−1)成分}
・・アニオン部
式(d1−1)中、Rd
1は、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ前記式(3)中のYと同様のものが挙げられる。
これらの中でも、Rd
1としては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい脂肪族環式基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましい。これらの基が有していてもよい置換基としては、水酸基、オキソ基、アルキル基、アリール基、フッ素原子、フッ素化アルキル基、前記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−6)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、エーテル結合、エステル結合、又はこれらの組み合わせが挙げられる。エーテル結合やエステル結合を置換基として含む場合、アルキレン基を介していてもよい。
前記芳香族炭化水素基としては、フェニル基もしくはナフチル基がより好ましい。
前記脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
前記鎖状のアルキル基としては、炭素数が1〜10であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基;1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基等の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0109】
前記鎖状のアルキル基が置換基としてフッ素原子又はフッ素化アルキル基を有することができ、このうち、フッ素化アルキル基の炭素数は、1〜11が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。該フッ素化アルキル基は、フッ素原子以外の原子を含有してもよい。フッ素原子以外の原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
Rd
1としては、直鎖状のアルキル基を構成する一部又は全部の水素原子がフッ素原子により置換されたフッ素化アルキル基であることが好ましく、直鎖状のアルキル基を構成する水素原子の全てがフッ素原子で置換されたフッ素化アルキル基(直鎖状のパーフルオロアルキル基)であることが特に好ましい。
【0110】
以下に、(d1−1)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0112】
・・カチオン部
式(d1−1)中、M
m+は、m価の有機カチオンである。
M
m+の有機カチオンとしては、前記一般式(ca−1)〜(ca−4)でそれぞれ表されるカチオンと同様のものが好適に挙げられ、前記一般式(ca−1)で表されるカチオンがより好ましく、前記式(ca−1−1)〜(ca−1−67)でそれぞれ表されるカチオンがさらに好ましい。
(d1−1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
{(d1−2)成分}
・・アニオン部
式(d1−2)中、Rd
2は、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ前記式(3)中のYと同様のものが挙げられる。
ただし、Rd
2における、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していない(フッ素置換されていない)ものとする。これにより、(d1−2)成分のアニオンが適度な弱酸アニオンとなり、(D)成分としてのクエンチング能が向上する。
Rd
2としては、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましい。鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、3〜10であることがより好ましい。脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等から1個以上の水素原子を除いた基(置換基を有していてもよい);カンファー等から1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
Rd
2の炭化水素基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記式(d1−1)のRd
1における炭化水素基(芳香族炭化水素基、脂肪族環式基、鎖状のアルキル基)が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0114】
以下に、(d1−2)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0116】
・・カチオン部
式(d1−2)中、M
m+は、m価の有機カチオンであり、前記式(d1−1)中のM
m+と同様である。
(d1−2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
{(d1−3)成分}
・・アニオン部
式(d1−3)中、Rd
3は、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ前記式(3)中のYと同様のものが挙げられ、フッ素原子を含む環式基、鎖状のアルキル基、又は鎖状のアルケニル基であることが好ましい。中でも、フッ素化アルキル基が好ましく、前記Rd
1のフッ素化アルキル基と同様のものがより好ましい。
【0118】
式(d1−3)中、Rd
4は、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ前記式(3)中のYと同様のものが挙げられる。
中でも、置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、環式基であることが好ましい。
Rd
4におけるアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。Rd
4のアルキル基の水素原子の一部が水酸基、シアノ基等で置換されていてもよい。
Rd
4におけるアルコキシ基は、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜5のアルコキシ基として、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。中でも、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0119】
Rd
4におけるアルケニル基は、前記式(3)中のYと同様のものが挙げられ、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基が好ましい。これらの基は、さらに置換基として、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を有していてもよい。
【0120】
Rd
4における環式基は、前記式(3)中のYと同様のものが挙げられ、シクロペンタン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた脂環式基、又は、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基が好ましい。Rd
4が脂環式基である場合、レジスト組成物が有機溶剤に良好に溶解することにより、リソグラフィー特性が良好となる。また、Rd
4が芳香族基である場合、EUV等を露光光源とするリソグラフィーにおいて、該レジスト組成物が光吸収効率に優れ、感度やリソグラフィー特性が良好となる。
【0121】
式(d1−3)中、Yd
1は、単結合又は2価の連結基である。
Yd
1における2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基)、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が挙げられる。
Yd
1としては、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、アルキレン基又はこれらの組み合わせであることが好ましい。アルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることがより好ましく、メチレン基又はエチレン基であることがさらに好ましい。
【0122】
以下に、(d1−3)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0125】
・・カチオン部
式(d1−3)中、M
m+は、m価の有機カチオンであり、前記式(d1−1)中のM
m+と同様である。
(d1−3)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0126】
(D1)成分は、前記(d1−1)〜(d1−3)成分のいずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記の中でも、(D1)成分としては、少なくとも(d1−1)成分を用いることが好ましい。
レジスト組成物が(D1)成分を含有する場合、(D1)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜10質量部であることが好ましく、0.5〜8質量部であることがより好ましく、1〜8質量部であることがさらに好ましい。
(D1)成分の含有量が好ましい下限値以上であると、特に良好なリソグラフィー特性及びレジストパターン形状が得られやすい。一方、上限値以下であると、感度を良好に維持でき、スループットにも優れる。
【0127】
(D1)成分の製造方法:
前記(d1−1)成分、(d1−2)成分の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により製造することができる。
また、(d1−3)成分の製造方法は、特に限定されず、例えば、US2012−0149916号公報に記載の方法と同様にして製造される。
【0128】
・(D2)成分について
酸拡散制御剤成分としては、前記(D1)成分に該当しない含窒素有機化合物成分(以下、「(D2)成分」ともいう)を含有してもよい。
(D2)成分としては、酸拡散制御剤として作用するもので、かつ(D1)成分に該当しないものであれば特に限定されず、公知のものから任意に用いればよい。中でも、脂肪族アミンが好ましく、この中でも、特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンがより好ましい。
脂肪族アミンとは、1個以上の脂肪族基を有するアミンであり、該脂肪族基は、炭素数が1〜12であることが好ましい。
脂肪族アミンとしては、アンモニアNH
3の水素原子の少なくとも1個を、炭素数12以下のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換したアミン(アルキルアミンもしくはアルキルアルコールアミン)又は環式アミンが挙げられる。
アルキルアミン及びアルキルアルコールアミンの具体例としては、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。これらの中でも、炭素数5〜10のトリアルキルアミンがさらに好ましく、トリ−n−ペンチルアミン又はトリ−n−オクチルアミンが特に好ましい。
【0129】
環式アミンとしては、例えば、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環化合物が挙げられる。該複素環化合物としては、単環式のもの(脂肪族単環式アミン)であってもよく、多環式のもの(脂肪族多環式アミン)であってもよい。
脂肪族単環式アミンとして、具体的には、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
脂肪族多環式アミンとしては、炭素数が6〜10のものが好ましく、具体的には、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0130】
その他の脂肪族アミンとしては、トリス(2−メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、トリエタノールアミントリアセテート等が挙げられ、トリエタノールアミントリアセテートが好ましい。
【0131】
また、(D2)成分としては、芳香族アミンを用いてもよい。
芳香族アミンとしては、4−ジメチルアミノピリジン、ピロール、インドール、ピラゾール、イミダゾール又はこれらの誘導体、トリベンジルアミン、2,6−ジイソプロピルアニリン、N−tert−ブトキシカルボニルピロリジン等が挙げられる。
【0132】
(D2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レジスト組成物が(D2)成分を含有する場合、(D2)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常、0.01〜5質量部の範囲で用いられる。前記範囲とすることにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等が向上する。
【0133】
[(E)成分:有機カルボン酸、並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物]
本実施形態のレジスト組成物には、感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等の向上の目的で、任意の成分として、有機カルボン酸、並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(E)(以下、「(E)成分」ともいう)を含有してもよい。
有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられ、これらの中でも、特にホスホン酸が好ましい。
リンのオキソ酸の誘導体としては、例えば、前記オキソ酸の水素原子を炭化水素基で置換したエステル等が挙げられ、前記炭化水素基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基等が挙げられる。
リン酸の誘導体としては、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸エステルなどが挙げられる。
ホスホン酸の誘導体としては、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸エステルなどが挙げられる。
ホスフィン酸の誘導体としては、ホスフィン酸エステルやフェニルホスフィン酸などが挙げられる。
(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(E)成分を含有する場合、(E)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常、0.01〜5質量部の範囲で用いられる。
【0134】
[(F)成分:フッ素添加剤成分]
本実施形態のレジスト組成物には、レジスト膜に撥水性を付与するために、フッ素添加剤成分(以下、「(F)成分」ともいう)を含有してもよい。
(F)成分としては、例えば、特開2010−002870号公報、特開2010−032994号公報、特開2010−277043号公報、特開2011−13569号公報、特開2011−128226号公報に記載の含フッ素高分子化合物を用いることができる。(F)成分として、より具体的には、下記一般式(f1−1)で表される構成単位(f1)を有する重合体が挙げられる。但し、上述の(A)成分に該当する高分子化合物を除く。
前記構成単位(f1)を有する重合体としては、構成単位(f1)のみからなる重合体(ホモポリマー);該構成単位(f1)と下記一般式(m−1)で表される構成単位との共重合体;該構成単位(f1)と、アクリル酸又はメタクリル酸から誘導される構成単位と、下記一般式(m−1)で表される構成単位との共重合体が好ましい。
ここで、該一般式(m−1)で表される構成単位としては、1−エチル−1−シクロオクチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位、1−メチル−1−アダマンチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位が好ましい。
【0135】
【化32】
[式中、複数のRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。式(f1−1)中、Rf
102及びRf
103は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を表し、Rf
102及びRf
103は、同じであっても異なっていてもよい。nf
1は、0〜5の整数であり、Rf
101は、フッ素原子を含む有機基である。式(m−1)中、R
21は、アルキル基であり、R
22は、当該R
22が結合した炭素原子と共に脂肪族環式基を形成する基である。]
【0136】
前記式(f1−1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。前記式(f1−1)中のRは、上述の前記式(1)中のRと同様である。
Rとしては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
式(f1−1)中、Rf
102及びRf
103のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。Rf
102及びRf
103の炭素数1〜5のアルキル基としては、前記Rの炭素数1〜5のアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基又はエチル基が好ましい。Rf
102及びRf
103の炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基として、具体的には、炭素数1〜5のアルキル基の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。中でも、Rf
102及びRf
103としては、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はエチル基が好ましい。
式(f1−1)中、nf
1は、0〜5の整数であり、0〜3の整数が好ましく、0又は1であることがより好ましい。
【0137】
式(f1−1)中、Rf
101は、フッ素原子を含む有機基であり、フッ素原子を含む炭化水素基であることが好ましい。
フッ素原子を含む炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよく、炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10が特に好ましい。
また、フッ素原子を含む炭化水素基は、当該炭化水素基における水素原子の25%以上がフッ素化されていることが好ましく、50%以上がフッ素化されていることがより好ましく、60%以上がフッ素化されていることが、浸漬露光時のレジスト膜の疎水性が高まることから特に好ましい。
中でも、Rf
101としては、炭素数1〜5のフッ素化炭化水素基がより好ましく、トリフルオロメチル基、−CH
2−CF
3、−CH
2−CF
2−CF
3、−CH(CF
3)
2、−CH
2−CH
2−CF
3、−CH
2−CH
2−CF
2−CF
2−CF
2−CF
3が特に好ましい。
【0138】
式(m−1)中、R
21におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。該直鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜5であることが好ましく、1〜4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基又はn−ブチル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。該分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が3〜10であることが好ましく、3〜5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、イソプロピル基が特に好ましい。
【0139】
式(m−1)中、R
22は、当該R
22が結合した炭素原子と共に脂肪族環式基を形成する基である。R
22が形成する脂肪族環式基は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂肪族環式基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3〜10のものが好ましく、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等が挙げられる。多環式の脂肪族環式基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7〜12のものが好ましく、例えば、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0140】
(F)成分の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、1000〜50000が好ましく、5000〜40000がより好ましく、10000〜30000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのにレジスト用溶剤への充分な溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
(F)成分の分散度(Mw/Mn)は、1.0〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.2〜2.5が最も好ましい。
(F)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(F)成分を含有する場合、(F)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常、0.5〜10質量部の割合で用いられる。
【0141】
本実施形態のレジスト組成物には、さらに、所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0142】
[(S)成分:有機溶剤成分]
本実施形態のレジスト組成物は、レジスト材料を有機溶剤成分(以下、「(S)成分」ともいう)に溶解させて製造することができる。
(S)成分としては、用いる各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジスト組成物の溶剤として公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
例えば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)等を挙げることができる。
(S)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
中でも、PGMEA、PGME、γ−ブチロラクトン、EL(乳酸エチル)、シクロヘキサノンが好ましい。
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶剤も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2の範囲内とすることが好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてEL又はシクロヘキサノンを配合する場合は、PGMEA:EL(乳酸エチル)又はシクロヘキサノンの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。さらに、PGMEAとPGMEとシクロヘキサノンとの混合溶剤も好ましい。
また、(S)成分として、その他には、PGMEA及びEL(乳酸エチル)の中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
【0143】
(S)成分の使用量は、特に限定されず、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。一般的には、レジスト組成物の固形分濃度が1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%の範囲内となるように、(S)成分は用いられる。
【0144】
以上説明した実施形態のレジスト組成物が用いられたレジストパターン形成方法によれば、より微細なパターンを良好な形状で形成できる、という効果が得られる。より微細なパターンとして、寸法が50nm以下のレジストパターンが形成される。例えば、微細なラインアンドスペースパターンを、パターン倒れを生じずに形成できる。加えて、微細なトレンチパターンを、高解像度で形成できる。
寸法が50nm以下という微細なパターンを基板上に形成しようとすると、露光の際、レジスト膜に照射される光の強度が、露光部及び未露光部のそれぞれで一様でなくなる。
また、レジスト膜の露光部の、特に膜厚方向において、光学強度の弱い領域が生じる。
これに対して、本発明に係るレジストパターン形成方法では、酸の作用によって酸分解性基の構造中の少なくとも一部の結合が開裂するのに必要な活性化エネルギーが低い構成単位(a−1)及び(a−2)を有する高分子化合物((A)成分)を含有するレジスト組成物が用いられる。かかる2種の特定の構成単位を有する高分子化合物を採用したことで、レジストパターン形成の際、レジスト膜未露光部への酸の拡散が抑制され、加えて、レジスト膜内での酸、露光又は加熱による反応が均一に起こりやすくなる。また、本発明に係るレジストパターン形成方法では、有機系現像液と組み合わせたネガ型現像プロセスを適用したことで、光学強度の弱い領域が選択的に溶解除去される。
また、以上説明した実施形態のレジスト組成物が用いられたレジストパターン形成方法においては、レジスト組成物の樹脂成分として(A)成分及び酸発生剤として(B)成分を採用したことで、ELの向上、コンタクトホール(Contact Hole,CH)の形成において最大・最小CDの偏差の低減の改善の効果を有する。
【0145】
≪レジストパターン形成方法≫
本発明の第2の態様であるレジストパターン形成方法は、第1の態様に記載された組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び、前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程、を含む。
さらに具体的には、レジストパターン形成方法は、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物を用いて、支持体上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び、前記露光後のレジスト膜を、現像液を用いた現像によりパターニングしてレジストパターンを形成する工程、を含む。
かかるレジストパターン形成方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0146】
まず、支持体上に、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物を、スピンナーなどで塗布し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、例えば、80〜150℃の温度条件にて40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施してレジスト膜を形成する。
ここでのレジスト組成物には、上述のレジスト組成物が用いられる。
次に、該レジスト膜に対し、例えば、ArF露光装置、電子線描画装置、EUV露光装置等の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたフォトマスク(マスクパターン)を介した露光、又はフォトマスクを介さない電子線の直接照射による描画等により選択的露光を行う。
その後、ベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、例えば、80〜150℃の温度条件にて40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。
次に、前記露光、ベーク(PEB)処理後のレジスト膜を現像する。
アルカリ現像プロセスである場合は、アルカリ現像液を用い、溶剤現像プロセスである場合は、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)を用いて行う。
現像の後、好ましくはリンス処理を行う。リンス処理は、アルカリ現像プロセスである場合は、純水を用いた水リンスが好ましく、溶剤現像プロセスである場合は、有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
溶剤現像プロセスの場合、前記現像処理又はリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を、超臨界流体により除去する処理を行ってもよい。
現像処理後又はリンス処理後、乾燥を行う。また、場合によっては、前記現像処理後にベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。このようにして、レジストパターンが得られる。
前記のような操作を行うことにより、微細なレジストパターンを形成することができる。
【0147】
前記支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
また、支持体としては、上述のような基板上に、無機系及び/又は有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)や多層レジスト法における下層有機膜等の有機膜が挙げられる。
ここで、多層レジスト法とは、基板上に、少なくとも一層の有機膜(下層有機膜)と、少なくとも一層のレジスト膜(上層レジスト膜)とを設け、上層レジスト膜に形成したレジストパターンをマスクとして下層有機膜のパターニングを行う方法であり、高アスペクト比のパターンを形成できるとされている。すなわち、多層レジスト法によれば、下層有機膜により所要の厚みを確保できるため、レジスト膜を薄膜化でき、高アスペクト比の微細なパターン形成が可能となる。
多層レジスト法には、基本的に、上層レジスト膜と下層有機膜との二層構造とする方法(2層レジスト法)と、上層レジスト膜と下層有機膜との間に一層以上の中間層(金属薄膜等)を設けた三層以上の多層構造とする方法(3層レジスト法)と、に分けられる。
【0148】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、F
2エキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。本実施形態のレジストパターン形成方法は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EB又はEUV用としての有用性が高く、ArFエキシマレーザー、EB又はEUV用として特に有用である。
【0149】
レジスト膜の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよい。
液浸露光は、予め、レジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で露光(浸漬露光)を行う露光方法である。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ、露光されるレジスト膜の有する屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましい。かかる溶媒の屈折率としては、前記範囲内であれば特に制限されない。
空気の屈折率よりも大きく、かつ、前記レジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系有機溶剤、炭化水素系有機溶剤等が挙げられる。
フッ素系不活性液体の具体例としては、C
3HCl
2F
5、C
4F
9OCH
3、C
4F
9OC
2H
5、C
5H
3F
7等のフッ素系化合物を主成分とする液体等が挙げられ、沸点が70〜180℃のものが好ましく、80〜160℃のものがより好ましい。フッ素系不活性液体が前記範囲の沸点を有するものであると、露光終了後に、液浸に用いた媒体の除去を、簡便な方法で行えることから好ましい。
フッ素系不活性液体としては、特に、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル化合物が好ましい。パーフルオロアルキル化合物としては、具体的には、パーフルオロアルキルエーテル化合物やパーフルオロアルキルアミン化合物を挙げることができる。
さらに、具体的には、前記パーフルオロアルキルエーテル化合物としては、パーフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)(沸点102℃)を挙げることができ、前記パーフルオロアルキルアミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(沸点174℃)を挙げることができる。
液浸媒体としては、コスト、安全性、環境問題、汎用性等の観点から、水が好ましく用いられる。
【0150】
アルカリ現像プロセスにおいて、現像処理に用いるアルカリ現像液としては、上述の成分(A)(露光前の成分(A))を溶解し得るものであればよく、公知のアルカリ現像液の中から適宜選択できる。例えば、0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液が挙げられる。
溶剤現像プロセスにおいて、現像処理に用いる有機系現像液が含有する有機溶剤としては、上述の成分(A)(露光前の成分(A))を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤の中から適宜選択できる。具体的には、ケトン系有機溶剤、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、ニトリル系有機溶剤、アミド系有機溶剤、エーテル系有機溶剤等の極性溶剤、炭化水素系有機溶剤等が挙げられる。また、現像液には、有機溶剤が80質量%以上含有され得る。
【0151】
ケトン系有機溶剤は、構造中にC−C(=O)−Cを含む有機溶剤である。エステル系有機溶剤は、構造中にC−C(=O)−O−Cを含む有機溶剤である。アルコール系有機溶剤は、構造中にアルコール性水酸基を含む有機溶剤であり、「アルコール性水酸基」は、脂肪族炭化水素基の炭素原子に結合した水酸基を意味する。ニトリル系有機溶剤は、構造中にニトリル基を含む有機溶剤である。アミド系有機溶剤は、構造中にアミド基を含む有機溶剤である。エーテル系有機溶剤は、構造中にC−O−Cを含む有機溶剤である。
有機溶剤の中には、構造中に前記各溶剤を特徴づける官能基を複数種含む有機溶剤も存在するが、その場合は、当該有機溶剤が有する官能基を含むいずれの溶剤種にも該当するものとする。例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、前記分類中の、アルコール系有機溶剤又はエーテル系有機溶剤のいずれにも該当するものとする。
炭化水素系有機溶剤は、ハロゲン化されていてもよい炭化水素からなり、ハロゲン原子以外の置換基を有さない炭化水素溶剤である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記の中でも、溶剤現像プロセスの現像に用いられる現像液は、高解像性のレジストパターンが得られやすいことから、エステル系有機溶剤及びケトン系有機溶剤からなる群より選ばれる1種以上を含有することが好ましく、エステル系有機溶剤を含有することがより好ましい。
【0152】
エステル系有機溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられる。
前記の中でも、エステル系有機溶剤としては、酢酸ブチルが好ましい。
【0153】
ケトン系有機溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、メチルアミルケトン(2−ヘプタノン)等が挙げられる。
前記の中でも、ケトン系有機溶剤としては、メチルアミルケトン(2−ヘプタノン)が好ましい。
【0154】
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤がより好ましい。
有機系現像液に界面活性剤を配合する場合、その配合量は、有機系現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%であり、0.005〜2質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましい。
【0155】
現像の処理は、公知の現像方法により実施することが可能であり、例えば、現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0156】
溶剤現像プロセスの現像後のリンス処理に用いるリンス液が含有する有機溶剤としては、例えば、前記有機系現像液に用いる有機溶剤として挙げた有機溶剤のうち、レジストパターンを溶解させ難いものを適宜選択して用いることができる。通常、炭化水素系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、アミド系有機溶剤及びエーテル系有機溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を用いる。これらの中でも、炭化水素系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤及びアミド系有機溶剤から選択される少なくとも1種類が好ましく、エステル系有機溶剤及びケトン系有機溶剤から選択される少なくとも1種類がより好ましく、エステル系有機溶剤が特に好ましい。
これらの有機溶剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、前記以外の有機溶剤や水と混合して用いてもよい。ただし、現像特性を考慮すると、リンス液中の水の含有量は、リンス液の全量に対し、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下さらに好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
リンス液には、必要に応じて、公知の添加剤を添加することができる。該添加剤としては、例えば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、前記と同様のものが挙げられ、非イオン性の界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤を添加する場合、その添加量は、リンス液の全量に対して、通常0.001〜5質量%であり、0.005〜2質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましい。
【0157】
リンス液を用いたリンス処理(洗浄処理)は、公知のリンス方法により実施することができる。該方法としては、例えば、一定速度で回転している支持体上にリンス液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【実施例】
【0158】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって限定されるものではない。
【0159】
<レジスト組成物の基材成分:高分子化合物>
本実施例に用いた基材成分P−1〜P−14は、各高分子化合物を構成する構成単位を提供するモノマーM−1〜M−10を、所定のモル比で用いてラジカル重合させることによりそれぞれ得た。
【0160】
【化33】
【0161】
高分子化合物P−1〜P−14について、
13C−NMRにより求められた該高分子化合物の共重合組成比(高分子化合物中の各構成単位の割合(モル比))、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)及び分子量分散度(PDI)を表1に併記した。
【0162】
【表1】
【0163】
<レジスト組成物>
表2に示す各成分を混合して溶解し、各例のレジストパターン形成方法で用いるレジスト組成物をそれぞれ調製した。
【0164】
【表2】
【0165】
表2中、各略号は、それぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は、配合量(質量部)である。
(A)P−1〜P−14:前記表1の高分子化合物P−1〜P−14。
(B)PAG−1及びPAG−4:下記化学式で表される酸発生剤。
【0166】
【化34】
【0167】
(D)成分Q−1及びQ−2:下記化学式で表される拡散抑制剤。
【0168】
【化35】
【0169】
(F)成分:下記の構成単位を有する重合体。
【0170】
【化36】
【0171】
(S)成分
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0172】
<ネガ型レジストパターンの形成:実施例1〜10及び比較例1〜9>
12インチのシリコンウェーハ上に、有機系反射防止膜組成物「ARC95」(商品名、ブリューワーサイエンス社製)をスピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥することにより、膜厚97nmの有機系反射防止膜を形成した。
次いで、該膜上に、前記[表2]のレジスト組成物をそれぞれスピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、温度110℃で60秒間の条件にてポストアプライベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚85nmのレジスト膜を形成した。
次に、該レジスト膜に対し、液浸用ArF露光装置S610[Nikon社製;NA(開口数)=1.30、Crosspole]により、各フォトマスク[att−PSM 6%透明度、スペース幅63nm/ピッチ90nm]を介して、ArFエキシマレーザー(193nm)を選択的にそれぞれ照射した。
その後、90℃で60秒間ポストエクスポージャーベーク(PEB)処理を行った。
次いで、酢酸ブチルを用いて30秒間の溶剤現像を施し、振り切り乾燥を行った。
その結果、いずれの例においても、ネガ型のパターンが形成された。
【0173】
<ネガ型レジストパターンの評価>
[Exposure Latitude特性の評価]
本願の実施例において、ホール幅45nmピッチ幅90nmのホールパターン(以下、「CHパターン」という)が形成された。前記CHパターンが形成される露光量において、CHパターンのホール幅がターゲットサイズの約±5%の範囲内で形成されるときの露光量を求め、次の式により、ELマージン(単位:%)を求めた。下記において、Eop(mJ/cm
2)は、レジストパターンの形成方法により、ターゲットサイズのCHパターンが形成される最適の露光量を表す。
ELマージン(%)=(|E1−E2|/Eop)×100
E1:ホール幅42.75nmのCHパターンが形成されたときの露光量(mJ/cm
2)
E2:ホール幅47.25nmのCHパターンが形成されたときの露光量(mJ/cm
2)
また、ELマージンはその値が大きいほど、露光量の変動に伴うパターンサイズの変化量が小さいことを表す。
【0174】
[最大CD、最小CD特性の評価]
Exposure Latitude特性と同じCHパターンにおいて、以下の基準で評価を行う。
最大CD:露光量を少なくしていった際に隣のホールとつながらずにホールを形成できる最大のCD
最小CD:露光量を多くしていった際にホールが埋まらず形成されている最小のCD
その結果を[表3]に示した。
【0175】
【表3】
【0176】
表3に表す結果から、実施例1〜10は、比較例1〜9に比べて、EL値が大きいことから、露光量に対するCD変動が小さく安定であることが分かる。
また、実施例1〜10は、比較例1〜9に比べて、最大CD及び最小CDの差が大きいことから、パターンを形成できる範囲が広くマージンが広いことが分かる。
また、本発明のレジスト組成物を用いると、ネガ型現像及びポジ型現像のいずれも良好なパターンを形成することができ、どのような現像においても問題がないことを確認することができる。