特許第6986984号(P6986984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6986984減塩から揚げ用ミックス並びに減塩から揚げの製造方法及び呈味改善方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6986984
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】減塩から揚げ用ミックス並びに減塩から揚げの製造方法及び呈味改善方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20211213BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20211213BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20211213BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20211213BHJP
【FI】
   A23L7/157
   A23L5/10 E
   A23L27/00 D
   A23L27/10 H
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-11801(P2018-11801)
(22)【出願日】2018年1月26日
(65)【公開番号】特開2019-126323(P2019-126323A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2020年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】日清フーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 真人
(72)【発明者】
【氏名】榊原 通宏
【審査官】 澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−141807(JP,A)
【文献】 特開昭59−232059(JP,A)
【文献】 特開2014−027893(JP,A)
【文献】 特開2017−135996(JP,A)
【文献】 特開2016−202067(JP,A)
【文献】 Aromatic Soy Sauce Flavour Fried Chicken Batter(日清 からあげグランプリ最高金賞店監修 から揚げ粉 香ばししょうゆ味), Mintel GNPD [online],記録番号(ID#) 3883331,2015年9月,[retrieved on 2021.05.11],Retrieved from the Internet,URL<https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/3883331/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母エキス0.3〜2.5質量%と、クエン酸0.01〜0.5質量%とを含有し、且つクエン酸の含有量が酵母エキスの含有量以下である、減塩から揚げ用ミックスであって、食塩相当量が、該ミックス100g当たり5.5〜7gである、減塩から揚げ用ミックス。
【請求項2】
食塩相当量が100g当たり5.5〜7gである、減塩から揚げ用衣材を用いた減塩から揚げの製造方法であって、
前記減塩から揚げ用衣材の固形分中に、酵母エキス0.3〜2.5質量%と、クエン酸0.01〜0.5質量%とが含有され、且つクエン酸の含有量が酵母エキスの含有量以下である、減塩から揚げの製造方法。
【請求項3】
食塩相当量が100g当たり5.5〜7gである、減塩から揚げ用衣材を用いた減塩から揚げの呈味改善方法であって、
前記減塩から揚げ用衣材の固形分中に、酵母エキス0.3〜2.5質量%と、クエン酸0.01〜0.5質量%とが含有され、且つクエン酸の含有量が酵母エキスの含有量以下である、減塩から揚げの呈味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減塩と嗜好性との両立が可能な減塩から揚げ用ミックス並びに減塩から揚げの製造方法及び呈味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
から揚げは、各種の食材からなる具材の表面に衣材を付着させて油ちょうすることで得られる揚げ物食品である。一般的にから揚げの衣材は、粉末状の衣材を具材にまぶして用いるブレダータイプと、水溶きした液状の衣材を具材に絡めて用いるバッタータイプとに分類される。いずれのタイプの衣材を用いても、油ちょうによって、具材は、衣材により直接揚げ油に触れることなく加熱されてジューシーに仕上がり、衣材は、揚げ油に直接触れることで水分が蒸発してサクサクとした乾いた食感の衣となる。
【0003】
から揚げは、その油ちょう中に衣(衣材)の水分が蒸発し、周辺に存する揚げ油が内部に浸透するため、含油量が比較的多く、油の風味を味わう料理とも言えるが、一方で、油っぽく飽きられやすいという問題がある。この問題に対応するため、から揚げは味付けが濃くなる傾向があり、特に食塩が多用されて塩分が比較的多く含有される傾向がある。から揚げに塩分を多めに含めておかないと、揚げ物食品としては味気ない、物足りないものとなり、油っぽさが際立ってしまうためである。
【0004】
しかし、食塩(ナトリウム)は過剰摂取により、高血圧などの症状を示し、脳卒中などの循環器系疾患の発症リスクを高めることが示唆されている。わが国では標準的な食塩摂取量の基準が定めらており、これを目安に食塩摂取量を低減することが推奨されている。こうした背景の下、近年の食の健康志向の高まりもあって、消費者の減塩嗜好が強まっており、から揚げについても、ナトリウム含有量が通常よりも低減された減塩から揚げが注目されている。
【0005】
減塩から揚げは、塩味をはじめとする呈味が不足気味であるため、油っぽく飽きやすいものとなりがちである。そこで、減塩から揚げの表面に極少量の食塩等の調味料を均一に付着させて味付けをすることで、少量の塩分でも塩味を感じられるようにする方法が提案されている。しかし、から揚げの表面に極少量の調味料を均一付着させることは容易ではなく、実際にそれを試みても、1個のから揚げの中に塩味の濃い部分と薄い部分とが混在する状態となってしまうことが多く、そのような塩味が部分的に異なる減塩から揚げでは、塩味に対する不満が噴出し、喫食の際に塩味が足りないと感じた人が食塩を振りかけてしまう場合があり、せっかくの減塩の意義が薄れてしまうことになる。
【0006】
減塩食品の呈味改善を図った技術として、例えば特許文献1には、従来の液状醤油は揚げ物などの食品にかけると染み込むためにかけすぎを助長し、過剰な塩分摂取を引き起こすおそれがあることから、液状醤油に代わるものとして、モズクをすり潰したものに醤油を加えて煮詰めた醤油が記載されており、特許文献1記載の醤油によれば、少量で味付けができ、減塩が達成できるとされている。しかし特許文献1記載の醤油には、前述した、食品の表面に少量を均一付着させ難いという問題が依然として残っており、減塩効果に改善の余地がある。
【0007】
また特許文献2には、減塩飲食品に、植物性蛋白質加水分解物及び酵母エキスの一方のみを配合しただけでは、塩味不足によって損なわれたおいしさを付与する効果に乏しいが、両方を配合した場合には、減塩飲食品に塩味を付与することなくおいしさを付与できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−334020号公報
【特許文献2】特開2011−4668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、塩分が少なくても呈味性が通常のから揚げに劣らず、高い嗜好性を維持しながら減塩が可能な、減塩から揚げ用ミックス並びに減塩から揚げの製造方法及び呈味改善方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、酵母エキス0.3〜2.5質量%と、クエン酸0.01〜0.5質量%とを含有し、且つクエン酸の含有量が酵母エキスの含有量以下である、減塩から揚げ用ミックスである。
【0011】
また本発明は、食塩相当量が非減塩から揚げ用衣材のそれと比較して減量されている、減塩から揚げ用衣材を用いた減塩から揚げの製造方法であって、前記減塩から揚げ用衣材の固形分中に、酵母エキス0.3〜2.5質量%と、クエン酸0.01〜0.5質量%とが含有され、且つクエン酸の含有量が酵母エキスの含有量以下である、減塩から揚げの製造方法である。
【0012】
また本発明は、食塩相当量が非減塩から揚げ用衣材のそれと比較して減量されている、減塩から揚げ用衣材を用いた減塩から揚げの呈味改善方法であって、前記減塩から揚げ用衣材の固形分中に、酵母エキス0.3〜2.5質量%と、クエン酸0.01〜0.5質量%とが含有され、且つクエン酸の含有量が酵母エキスの含有量以下である、減塩から揚げの呈味改善方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、塩分が少なくても呈味性が通常のから揚げに劣らず、高い嗜好性を維持しながら減塩が可能な減塩から揚げが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の減塩から揚げ用ミックスは、酵母エキス及びクエン酸の両方を含有する点で特徴付けられる。両成分を含有するから揚げ用ミックスは、塩分を低減しても塩味をはじめとする呈味の不足が感じられにくいため、該ミックスを用い且つ塩分が通常よりも減量された減塩から揚げは、減塩と嗜好性とが高いレベルで両立されたものとなる。
【0015】
本発明で用いる酵母エキスは、酵母からの抽出物であり、形態は特に制限されず、液体でもよく、液体の酵母エキスを乾燥して得られる粉末でもよい。本発明では、2種以上の酵母エキスを組み合わせて用いることができる。また、酵母としては食用に利用できる酵母であれば特に制限されないが、好ましい酵母として例えば、サッカロマイセス・セルビシエ等のサッカロマイセス属酵母、トルラ酵母を例示できる。特にサッカロマイセス・セルビシエは、ビール酵母、ワイン酵母、パン酵母などとして広く利用されており、酵母エキスの風味自体も食品の風味を阻害しないため、本発明で好ましく用いられる。また、酵母エキスを得るための酵母からの抽出法は特に制限されず、一般的な粉砕法、溶媒抽出法、酸分解法、酵素分解法等を適宜利用できる。
【0016】
酵母エキスの含有量は、本発明の減塩から揚げ用ミックスの全質量に対して0.3〜2.5質量%であり、好ましくは0.8〜2質量%である。酵母エキスの含有量が0.3質量%未満であると、ミックス中の塩分を減量した場合にそれに伴う塩味の低減を補う効果が低下するため、該ミックスを用いて得られた減塩から揚げの嗜好性が低下するおそれがある。また、酵母エキスの含有量が2.5質量%を超えると、酵母の風味が強くなり過ぎる結果、から揚げの風味に悪影響が出るおそれがある。
【0017】
本発明で用いるクエン酸は、食用に利用できるものであれば特に制限されず、無水物でも水和物でもよく、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等を例示できる。本発明では、2種以上のクエン酸を組み合わせて用いることができる。
【0018】
クエン酸の含有量は、本発明の減塩から揚げ用ミックスの全質量に対して0.01〜0.5質量%であり、好ましくは0.05〜0.2質量%である。クエン酸の含有量が0.01質量%未満であると、ミックス中の塩分を減量した場合にそれに伴う塩味の低減を補う効果が低下するため、該ミックスを用いて得られた減塩から揚げの嗜好性が低下するおそれがある。また、クエン酸の含有量が0.5質量%を超えると、から揚げに酸味の悪影響が出るおそれがある。
【0019】
また、本発明の減塩から揚げ用ミックスにおいては、クエン酸の含有量が酵母エキスの含有量以下である必要がある。クエン酸の含有量が酵母エキスの含有量よりも多いと、ミックス中の塩分を減量した場合にそれに伴う塩味の低減を補う効果が低下するため、該ミックスを用いて得られた減塩から揚げの嗜好性が低下するおそれがある。クエン酸の含有量と酵母エキスの含有量との比率は、前記の通り前者≦後者を前提として、前者/後者として、好ましくは0.01〜0.9、さらに好ましくは0.05〜0.7である。
【0020】
本発明の減塩から揚げ用ミックスは、典型的には、前記成分(酵母エキス、クエン酸)に加えてさらに、穀粉類を含有する。穀粉類としては、一般的にから揚げ用衣材として使用されている穀粉又は澱粉を特に制限なく用いることができ、例えば、小麦粉(例えば強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉)、ライ麦粉、米粉等の穀粉;馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ等の未加工澱粉、及びこれら未加工澱粉に油脂加工、α化、エーテル化、エステル化、架橋、酸化等の処理の1つ以上を施した加工澱粉等の澱粉が挙げられ、これら穀粉及び澱粉からなる群から選択される1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。穀粉類は通常、本発明の減塩から揚げ用ミックスの主成分であり、穀粉類の含有量は、本発明の減塩から揚げ用ミックスの全質量に対して、好ましくは50〜99.8質量%である。
【0021】
また、本発明の減塩から揚げ用ミックスにおいては、前記の穀粉類に代えて、又は穀粉類と共に、小麦粉等の穀粉に種々の加工を施してなる穀粉加工物を用いることができる。前記穀粉加工物としては、穀粉焼成物、穀粉含有生地粉砕物、穀粉顆粒化物を例示でき、本発明ではこれらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の減塩から揚げ用ミックスに前記穀粉加工物が含有されていると、該ミックスを用いて得られたから揚げ(減塩から揚げ)において、衣のカリカリとした食感が一層向上すると共に、時間経過に伴う衣のべたつきを抑制することができるため好ましい。前記穀粉加工物の含有量は、本発明の減塩から揚げ用ミックスの全質量に対して、好ましくは75〜90質量%であり、さらに好ましくは80〜90質量%である。
【0022】
前記穀粉焼成物は、小麦粉等の穀粉を焼成して得られる。前記穀粉焼成物の製造時における穀粉の焼成温度(品温)は、好ましくは105〜200℃である。
前記穀粉含有生地粉砕物は、小麦粉等の穀粉に加水し常法に従って調製した穀粉含有生地を、乾燥及び/又は加熱処理した後に粉砕して得られる。穀粉含有生地の乾燥処理の一例として、該生地の含水量を5〜17質量%とする処理が挙げられる。また、穀粉含有生地の加熱処理の一例として、該生地をその品温が105〜170℃となる条件で加熱する処理が挙げられる。
前記穀粉顆粒化物は、1種以上の穀粉を顆粒状にするか、又は1種以上の穀粉とデキストリン、澱粉及び糖類からなる群から選択される1種以上との混合物を顆粒状にして得られる。穀粉又は穀粉を含む混合物を顆粒状にする方法としては、流動層造粒、加水造粒、噴霧乾燥等、公知の方法を採用できる。
【0023】
本発明の減塩から揚げ用ミックスは、必要に応じ、前記成分(酵母エキス、クエン酸、穀粉類、穀粉加工物)以外の他の成分を含有してもよい。この他の成分としては、から揚げ用ミックスに通常配合し得る成分を特に制限なく用いることができ、例えば、糖類、卵粉、食塩、粉末醤油、果実由来の酢酸発酵物などの各種発酵物、粉末味噌、アミノ酸やその他の調味料、香辛料、香料、ビタミン等の栄養成分、着色料、粉末油脂などが挙げられ、求めるから揚げの特性(例えば中華風、和風、洋風)などに応じて、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの他の成分の含有量は、本発明の減塩から揚げ用ミックスの全質量に対して、好ましくは30質量%以下程度である。
【0024】
本発明の減塩から揚げ用ミックスにおいて、塩分含量は特に制限されず、減塩を謳っていない通常のから揚げ用ミックス(非減塩から揚げ用ミックス)と同程度であってもよいが、本発明の減塩から揚げ用ミックスの真価は、塩分含量が非減塩から揚げ用ミックスのそれよりも低減された場合に発揮される。塩味の感じ方には個人差があり、食塩以外の調味料や添加物による呈味効果の影響を受けるものの、通常のから揚げ用ミックスの塩分含量は、食塩相当量として、該ミックス100g当たり8〜10g程度であるので、減塩から揚げ用ミックスを謳うためには、その塩分含量は食塩相当量として、該ミックス100g当たり8g以下程度とすべきである。
【0025】
減塩とそれによる呈味性の低下抑制とのバランスの観点から、本発明の減塩から揚げ用ミックスの食塩相当量は、該ミックス100g当たり、好ましくは5.0〜8.0g、さらに好ましくは5.5〜7.5gである。
また、同様の観点から、本発明の減塩から揚げ用ミックスの塩分含量(食塩相当量)は、通常のから揚げ用ミックス(非減塩から揚げ用ミックス)のそれに対して、25質量%以上少ないことが好ましく、30質量%以上少ないことがさらに好ましい。
【0026】
尚、前記の「食塩相当量」は、食品(から揚げ用ミックス)に含まれるナトリウムの量を食塩(塩化ナトリウム)の量に換算したもので、食品中のナトリウム含量(単位:g)の数値に2.54を乗じて算出される。
【0027】
本発明の減塩から揚げ用ミックスは、常温常圧で粉末状であるところ、いわゆるまぶしタイプの衣材としても使用可能であり、また、バッタータイプの衣材としても使用可能である。
前記まぶしタイプは、液体と混ぜずに粉末状のまま具材の表面に直接まぶして使用するミックス(衣材)であり、まぶす操作としては、例えば、1)具材の上方からミックスを振り掛ける操作、2)ミックス及び具材を袋の中に投入し、該袋の開口部を閉じた状態で振盪する操作、3)皿等に比較的広い範囲でミックスを散布し、散布されたミックス上で具材を転がす操作、などが挙げられるがこれらの操作に限定されない。
前記バッタータイプは、液体と混ぜて液状(いわゆるバッター液)としてから具材の表面に付着させて使用するミックス(衣材)である。混合する液体としては、水、油、調味料、卵液、牛乳等を含んだ水性液体を例示できる。ミックスと液体との混合比率は、一般的にはミックス:液体として、1:1〜1:8程度である。
【0028】
本発明の減塩から揚げ用ミックスは、鶏、豚、牛、羊、ヤギなどの畜肉類、魚介類などの種々の具材のから揚げに使用することができ、特に畜肉類に好適に用いることができる。本発明の減塩から揚げ用ミックス(衣材)を用いた、から揚げの製造方法の好ましい一例として、粉末状の該ミックスを具材に付着させた後、油ちょうする工程を有するものが挙げられる。具材に対するミックスの付着量は、具材の種類やミックスの組成などを考慮して適宜変更すればよいが、一般的には、具材100gに対してミックス5〜30gである。また、油ちょうは、常法に従って行うことができ、加熱温度(油温)、加熱時間等は具材の種類や大きさ等に応じて適宜設定すればよい。
【0029】
次に、本発明の減塩から揚げの製造方法及び本発明の減塩から揚げの呈味改善方法について説明する。これら両方法は、前述した本発明の減塩から揚げ用ミックスの技術思想に基づくものであり、両方法については、前述した本発明の減塩から揚げ用ミックスと異なる部分を主に説明し、特に説明しない部分については、該ミックスについての説明が適宜適用される。
【0030】
本発明の減塩から揚げの製造方法及び呈味改善方法は何れも、食塩相当量が非減塩から揚げ用衣材のそれと比較して減量されている、「特定の減塩から揚げ用衣材」を用いた点で特徴付けられる。この特定の減塩から揚げ用衣材は、その固形分中に、酵母エキス0.3〜2.5質量%と、クエン酸0.01〜0.5質量%とが含有されている。
【0031】
前記の特定の減塩から揚げ用衣材は、常温常圧で粉末状であり、液体と混ぜずにそのまま具材にまぶして使用するいわゆるまぶしタイプでもよく、あるいは液状のバッタータイプでもよい。まぶしタイプの場合は、前述した本発明の減塩から揚げ用ミックスを、そのまま前記の特定の減塩から揚げ用衣材として使用することができる。また、バッタータイプの場合は、前述した本発明の減塩から揚げ用ミックスと液体とを混ぜて調製したものを、前記の特定の減塩から揚げ用衣材として使用することができる。
【0032】
尚、前記の特定の減塩から揚げ用衣材における酵母エキスの含有量及びクエン酸の含有量は、それぞれ、該衣材の固形分の質量当たりの割合として算出されるものである。例えば、衣材が常温常圧で粉末状である場合(いわゆるまぶしタイプの衣材である場合)は、その粉末状の衣材の質量を基準として、該衣材における酵母エキス及びクエン酸それぞれの含有量が算出される。また、衣材が常温常圧で液状の場合(いわゆるバッタータイプの衣材である場合)は、その液状の衣材から液体(非固形分)を除いた、固形分の質量を基準として、該衣材における酵母エキス及びクエン酸それぞれの含有量が算出される。従って、前記の特定の減塩から揚げ用衣材がバッタータイプである場合は、バッター液の調製に用いる粉末状の衣材の質量に加えてさらに、該粉末状の衣材と混合する液体(水、油、調味料、卵液、牛乳等)に含まれる固形分も考慮して、そのバッタータイプの衣材における酵母エキス及びクエン酸それぞれの含有量が決定される。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1〜18及び比較例1〜10〕
酵母エキス(味の素製)、無水クエン酸(ニチカ製)、クエン酸三ナトリウム(マルゴ製)、コハク酸二ナトリウム(マルゴ製)、DL−アラニン(マルゴ製)、小麦粉(日清フーズ製)を下記表1〜4に示す割合で均一に混合して、粉末状のから揚げ用ミックスを製造した。
【0035】
〔試験例1〕
生の鶏もも肉を肉片1個当たりの重量が25gとなるように切り分け、試験対象のから揚げ用ミックスを、該ミックスの付着量が肉100g当たり10gとなるよう、複数個の肉片全体にまぶして付着させた。ミックスの付着した肉片を、170℃に熱したサラダ油で3分間油ちょうして、鶏肉のから揚げを製造した。油ちょう後、粗熱が取れたから揚げを、訓練された10名の専門パネラーに食してもらい、塩味を下記評価基準により評価してもらった。その結果を10名それぞれの評価点(5点満点)の平均値として下記表1〜4に示す。
【0036】
(塩味の評価基準)
5点:塩味が丁度良く、極めて良好。
4点:塩味にやや物足りないか又はやや塩味が強く、良好。
3点:塩味に物足りないか又は塩味が強く感じられ、やや不良。
2点:塩味がわずかしかないか、塩辛いか、又は苦味が感じられ、不良。
1点:塩味がほとんど感じられないか、塩辛すぎるか、又は苦味が強く、極めて不良。
【0037】
尚、前記の実施例及び比較例のミックスとは別に、小麦粉及び食塩のみを用いて、食塩の含有量が互いに異なる通常のから揚げ用ミックス(非減塩から揚げ用ミックス)を複数種製造し、それら複数種のミックスを用いて前記と同様の手順でから揚げを製造してその塩味を評価したところ、評価点の平均値が4.5点で塩味が良好と評価されたから揚げは、その製造に用いたミックスの食塩相当量が、該ミックス100g当たり8.0gであった。下記表1〜4には、この塩味良好なから揚げの製造に用いたミックスを「参考例」として載せると共に、評価対象(実施例又は比較例)のミックスの食塩相当量S1(単位:g/100g)と参考例のミックスの食塩相当量S0(単位:g/100g)とを用いて次式により算出した、各実施例及び比較例のミックスの減塩率を掲載した。
減塩率(質量%)={(S1−S0)/S0}×100
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示す通り、各実施例のミックスは、塩味良好な参考例の通常の非減塩から揚げ用ミックスよりも食塩相当量が少なく減塩されているにもかかわらず、酵母エキス及びクエン酸を含有するため、から揚げの塩味の評価点が3点を超えている。このことから、酵母エキス及びクエン酸の併用が、減塩から揚げ用ミックスに懸念されるから揚げの呈味性低下を効果的に抑制し、高い嗜好性を維持し得るのに有効であることがわかる。
【0040】
【表2】
【0041】
表2の各実施例及び比較例は、酵母エキスの含有量が互いに異なるところ、実施例と比較例との対比から、酵母エキスの含有量としては、実施例3及び7〜10の範囲である0.3〜2.5質量%が適切であることが明白であり、特に、実施例3及び8〜9の範囲である0.8〜2質量%が好ましいことがわかる。
【0042】
【表3】
【0043】
表3の各実施例及び比較例は、クエン酸の含有量が互いに異なるところ、実施例と比較例との対比から、クエン酸の含有量としては、実施例3及び11〜14の範囲である0.01〜0.5質量%が適切であることが明白であり、特に、実施例3及び12〜13の範囲である0.05〜0.2質量%が好ましいことがわかる。
【0044】
【表4】
【0045】
表4においては、特に比較例10が、ミックスにおけるクエン酸の含有量が酵母エキスの含有量よりも多いために、評価が極めて低くなった点が注目される。このことから、から揚げ用ミックスにおいて減塩と嗜好性との両立を図るためには、酵母エキス及びクエン酸を単に含有させるだけでなく、さらに、クエン酸の含有量を酵母エキスの含有量以下とするべきであることがわかる。
【0046】
〔試験例2〕
実施例3の粉末状のから揚げ用ミックス(減塩から揚げ用ミックス)100gと水100gとを混合して、バッター液を調製した。このバッター液を用い、バッター液の付着量が肉100gあたり20gとなるよう全体に付着させた以外は試験例1と同様の手順で、鶏肉のから揚げを製造し、その塩味を評価したところ、10名の専門パネラーの評価点の平均値は4.4点であった。一方、参考例の非減塩から揚げ用ミックス100gと水100gとを混合してバッター液を調製し、これを用いてから揚げを製造したところ、その塩味の評価点の平均値は4.1点であったことから、実施例3のから揚げ用ミックスは、いわゆるバッタータイプの衣材としても有用であることがわかる。