(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
(縦型熱処理装置)
最初に、一実施形態に係る搬送方法により搬送可能な反応管ユニットを有する縦型熱処理装置の構成例について説明する。以下では、二重管構造の縦型熱処理装置を説明するが、一重管構造の縦型熱処理装置であってもよい。
図1及び
図2は縦型熱処理装置の構成例を示す断面図であり、
図1は縦断面を示し、
図2は横断面を示す。
【0011】
図1に示されるように、縦型熱処理装置1は、基板である半導体ウエハ(以下「ウエハW」という。)を収容する反応管34と、反応管34の下端の開口を気密に塞ぐ蓋体36と、反応管34内に収容可能であり、多数枚のウエハWを所定の間隔で保持する基板保持具であるウエハボート38と、反応管34内へガスを導入するガス供給手段40と、反応管34内のガスを排気する排気手段41と、ウエハWを加熱する加熱手段42とを有する。
【0012】
反応管34は、下端が開放された有天井の円筒形状の内管44と、下端が開放されて内管44の外側を覆う有天井の円筒形状の外管46とを有する。内管44及び外管46は、石英等の耐熱性材料により形成されており、同軸状に配置されて二重管構造となっている。
【0013】
内管44の天井部44Aは、例えば平坦になっている。内管44の一側には、その長手方向(上下方向)に沿ってガス供給管を収容するノズル収容部48が形成されている。例えば
図2に示されるように、内管44の側壁の一部を外側へ向けて突出させて凸部50を形成し、凸部50内をノズル収容部48として形成している。ノズル収容部48に対向させて内管44の反対側の側壁には、その長手方向(上下方向)に沿って幅L1の矩形状の開口52が形成されている。
【0014】
開口52は、内管44内のガスを排気できるように形成されたガス排気口である。開口52の長さは、ウエハボート38の長さと同じであるか、又は、ウエハボート38の長さよりも長く上下方向へそれぞれ延びるようにして形成されている。即ち、開口52の上端は、ウエハボート38の上端に対応する位置以上の高さに延びて位置され、開口52の下端は、ウエハボート38の下端に対応する位置以下の高さに延びて位置されている。具体的には、
図1に示されるように、ウエハボート38の上端と開口52の上端との間の高さ方向の距離L2は0mm〜5mm程度の範囲内である。また、ウエハボート38の下端と開口52の下端との間の高さ方向の距離L3は0mm〜350mm程度の範囲内である。
【0015】
反応管34の下端は、例えばステンレス鋼により形成される円筒形状のマニホールド54によって支持されている。マニホールド54の上端にはフランジ部56が形成されており、フランジ部56上に外管46の下端を設置して支持するようになっている。フランジ部56と外管46との下端との間にはOリング等のシール部材58を介在させて外管46内を気密状態にしている。
【0016】
マニホールド54の上部の内壁には、円環状の支持部60が設けられており、支持部60上に内管44の下端を設置してこれを支持するようになっている。マニホールド54の下端の開口には、蓋体36がOリング等のシール部材62を介して気密に取り付けられており、反応管34の下端の開口、即ち、マニホールド54の開口を気密に塞ぐようになっている。蓋体36は、例えばステンレス鋼により形成される。
【0017】
蓋体36の中央部には、磁性流体シール部64を介して回転軸66が貫通させて設けられている。回転軸66の下部は、ボートエレベータよりなる昇降手段68のアーム68Aに回転自在に支持されている。
【0018】
回転軸66の上端には回転プレート70が設けられており、回転プレート70上に石英製の保温台72を介してウエハWを保持するウエハボート38が載置されるようになっている。従って、昇降手段68を昇降させることによって蓋体36とウエハボート38とは一体として上下動し、ウエハボート38を反応管34内に対して挿脱できるようになっている。
【0019】
ガス供給手段40は、マニホールド54に設けられており、内管44内へ成膜ガス、エッチングガス、パージガス等のガスを導入する。ガス供給手段40は、複数(例えば3本)の石英製のガス供給管76、78、80を有している。各ガス供給管76、78、80は、内管44内にその長手方向に沿って設けられると共に、その基端がL字状に屈曲されてマニホールド54を貫通するようにして支持されている。
【0020】
ガス供給管76、78、80は、
図2に示されるように、内管44のノズル収容部48内に周方向に沿って一列になるように設置されている。各ガス供給管76、78、80には、その長手方向に沿って所定の間隔で複数のガス孔76A、78A、80Aが形成されており、各ガス孔76A、78A、80Aより水平方向に向けて各ガスを放出できるようになっている。所定の間隔は、例えばウエハボート38に支持されるウエハWの間隔と同じになるように設定される。また、高さ方向の位置は、各ガス孔76A、78A、80Aが上下方向に隣り合うウエハW間の中間に位置するように設定されており、各ガスをウエハW間の空間部に効率的に供給できるようになっている。ガスの種類としては、成膜ガス、エッチングガス、及びパージガスが用いられ、各ガスを流量制御しながら必要に応じて各ガス供給管76、78、80を介して供給できるようになっている。
【0021】
マニホールド54の上部の側壁であって、支持部60の上方には、ガス出口82が形成されており、内管44と外管46との間の空間部84を介して開口52より排出される内管44内のガスを排気できるようになっている。ガス出口82には、排気手段41が設けられる。排気手段41は、ガス出口82に接続された排気通路86を有しており、排気通路86には、圧力調整弁88及び真空ポンプ90が順次介設されて、反応管34内を真空引きできるようになっている。
【0022】
外管46の外周側には、外管46を覆うように円筒形状の加熱手段42が設けられている。加熱手段42は、反応管34内に収容されるウエハWを加熱する。
【0023】
縦型熱処理装置1の全体の動作は、例えばコンピュータ等の制御手段95により制御される。また、縦型熱処理装置1の全体の動作を行うコンピュータのプログラムは、記憶媒体96に記憶されている。記憶媒体96は、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、フラッシュメモリ、DVD等であってよい。
【0024】
(反応管ユニットの搬送方法)
一実施形態に係る反応管ユニットの搬送方法の一例について説明する。一実施形態に係る反応管ユニットの搬送方法は、例えば新規に縦型熱処理装置を導入する際や既設の反応管を洗浄する際に反応管ユニットを搬送して移動させるときに利用することができる。反応管ユニットは、多数枚のウエハに対して一括で熱処理を行うバッチ式の縦型熱処理装置の複数の構成部品を取り付けて組み立てられる構造体である。構成部品は、例えば反応管、ガス導入管、熱電対等である。反応管は、一重管構造であってもよく、内管及び外管を有する二重管構造であってもよい。一実施形態に係る反応管ユニットの搬送方法によれば、反応管の内部に、反応管の内壁面とガス供給管との衝突を和らげる緩衝部材を取り付け、台車の上に除振部材を介して反応管を載置して搬送する。これにより、台車による反応管ユニットの搬送時の振動を抑制し、また、ガス供給管の振動に起因してガス供給管が反応管に接触し、反応管が破損することを抑制できる。
【0025】
以下、一実施形態に係る反応管ユニットの搬送方法の一例について、反応管(内管及び外管)にガス供給管が取り付けられて組み立てられた反応管ユニットを搬送する場合を説明する。
図3は、反応管ユニットの搬送方法の一例を示すフローチャートである。
【0026】
一実施形態に係る反応管ユニットの搬送方法は、内管の内部に緩衝部材を配置する工程S101と、内管の移動を規制する規制部材を配置する工程S102と、反応管ユニットを台車に載置する工程S103と、反応管ユニットを搬送する工程S104と、を有する。
【0027】
工程S101は、内管の内部に緩衝部材を配置する工程である。工程S101では、例えば内管の内壁面に沿って緩衝部材を配置する。工程S101では、ガス供給管の内管の中心方向への移動を規制するように緩衝部材を配置することが好ましい。これにより、ガス供給管の振動振幅を小さくし、振動を軽減することができる。また、工程S101では、緩衝部材として弾性部材を使用し、弾性力によりガス供給管を内管の内壁面の方向へ押し付けるように緩衝部材を配置することが好ましい。これにより、ガス供給管は内管44の中心方向に戻ろうとする反発力により緩衝部材を押圧した状態となるため、反応管ユニットの振動に起因するガス供給管のガタツキが生じにくい。
【0028】
図4及び
図5は緩衝部材200の構成例を示す断面図であり、
図4は縦断面を示し、
図5は横断面を示す。なお、
図4では、ガス供給管78,80の図示を省略している。
図4及び
図5に示されるように、緩衝部材200は、内管44の内部に、内管44の内壁面に沿って略円筒形状を有して配置されている。緩衝部材200は、その外周が反応管34に取り付けられたガス供給管76,78,80と接しており、ガス供給管76,78,80の内管44の中心方向への移動を規制する。緩衝部材200は、例えばビニールや帯電防止フィルムによる形成され、内部に空気等の気体を入れる導入口201を有する風船であってよい。緩衝部材200として風船を用いることで、導入口201から空気を入れる、抜くという単純作業で内管44の内部に緩衝部材200を配置することができる。また、空気の量を調節することで風船の大きさを容易に変えることができるので、サイズが異なる内管44に対しても一つの緩衝部材200で対応することができる。
【0029】
なお、
図4及び
図5の例では、反応管34の内部に温度センサが配置されていない場合を説明したが、温度センサが配置されている場合であっても同様の緩衝部材200を用いることができる。
【0030】
また、
図4及び
図5の例では、緩衝部材200が内部に空気等の気体を入れた風船である場合を説明したが、緩衝部材200はこれに限定されず、例えばウレタン等のクッション材であってもよい。緩衝部材200としてウレタン等のクッション材を用いる場合、例えば略円筒形状に加工してガス供給管76,78,80の内管44の中心方向への移動を規制するように内管44の内部に配置すればよい。
【0031】
工程S102は、内管の移動を規制する規制部材を配置する工程である。工程S102では、例えば外管に取り付けられたマニホールドのフランジ部に、内管の径方向への移動を規制する規制部材を配置する。規制部材を配置することにより、反応管ユニットの振動により内管が移動し、内管が他の部材(例えば、外管)と接触して破損することを防止することができる。
【0032】
図6及び
図7は、それぞれ規制部材の構成例を示す断面図及び斜視図である。
図6及び
図7に示されるように、規制部材300は、例えば外管46に取り付けられたマニホールド54の支持部60に取り付けられている。規制部材300は、固定部301と、移動部302と、調節部303と、シール部材304と、を有する。
【0033】
固定部301は、水平部分301aと垂直部分301bとを有するL字状に形成されており、水平部分301aと支持部60とが例えば締結部材(図示せず)により固定されている。移動部302は、垂直部分301bに、ネジ等の調節部303により内管44の径方向に移動可能に取り付けられている。シール部材304は、移動部302における内管44の側に設けられている。シール部材304は、例えばフッ素ゴムシートであってよい。工程S102では、調節部303により移動部302を内管44の側に移動させてシール部材304を内管44の内壁面に接触させる。これにより、内管44の径方向への移動を抑制することができる。また、シール部材304と内管44の内壁面との間の摩擦力により、内管44の上下方向への移動を抑制することができる。
【0034】
工程S103は、緩衝部材及び規制部材が取り付けられた反応管ユニットを、除振部材を介して台車の上に載置する工程である。工程S103では、台車の上に除振部材を介して反応管ユニットを載置するので、台車の振動が除振部材で吸収されて反応管ユニットに伝達する振動が軽減される。
【0035】
図8及び
図9は台車の構成例を示す図であり、
図8は台車の昇降部を上昇させた状態を示し、
図9は台車の昇降部を下降させた状態を示す。
図8(a)及び
図9(a)は台車を斜めから見た図であり、
図8(b)及び
図9(b)は台車を側面から見た図である。なお、
図8(a)及び
図9(a)では台車の上にカートが搭載されている状態を示し、
図8(b)及び
図9(b)では台車の上にカートが搭載されていない状態を示す。以下では、説明の便宜上、
図8及び
図9における+X方向を前方向、−X方向を後方向、+Y方向を左方向、−Y方向を右方向、+Z方向を上方向、−Z方向を下方向として説明する。
【0036】
台車500は、反応管ユニットの下端を支持して移動可能なカート510を搭載して水平方向に移動自在に構成された移動式のチューブカートである。台車500は、本体501と、操作用ハンドル502と、ガイドレール503と、カート固定部504と、反応管支持部505と、昇降機構506と、キャスタ507と、を有する。
【0037】
本体501は、平面視で矩形に形成されている。本体501には、操作用ハンドル502、ガイドレール503、カート固定部504、反応管支持部505、昇降機構506、及びキャスタ507が取り付けられている。
【0038】
操作用ハンドル502は、本体501の後端に取り付けられており、本体501から上方に延びて形成されている。操作用ハンドル502は、例えば略U字状に形成されている。作業者は、操作用ハンドル502を握って台車500を前後方向、左右方向に移動させることができる。
【0039】
ガイドレール503は、例えば2本設けられている。2本のガイドレール503a,503bは、本体501の上面に前後方向に延びて互いに平行に、それぞれ本体501の左端及び右端に配置されている。カート510には2本のガイドレール503a,503bのそれぞれと対応して車輪511が設けられており、ガイドレール503上を前後方向に移動自在となっている。また、カート510には、反応管支持部505の外径よりも大きい開口512が形成されている。開口512は、カート510がガイドレール503の後端に位置するときに反応管支持部505が開口512を通ってカート510の下方と上方との間を移動可能となる位置に形成されている。
【0040】
カート固定部504は、カート510をガイドレール503の後端位置において本体501に固定するボルト等の締結部材である。
【0041】
反応管支持部505は、本体501に対して上下に移動する。反応管支持部505は、昇降機構506が操作されることにより昇降する。反応管支持部505は、例えば反応管ユニットの下端を載置可能な円板状部材であってよい。反応管支持部505の上面の外周部には、例えば周方向に沿って反応管ユニットの下端と対応する位置に除振部材505aが設けられている。これにより、反応管ユニットが除振部材505aを介して反応管支持部505に支持されるので、台車500の振動が反応管ユニットに伝達することを抑制することができる。除振部材505aは、例えば除振ゲルであってよい。除振ゲルは共振を抑える効果があり、振動自体を抑制することができる。
【0042】
昇降機構506は、伸縮部506aと、ハンドル506bと、を有する。伸縮部506aは、本体501の上面と反応管支持部505との間に取り付けられている。ハンドル506bは、例えば本体501の後端に取り付けられており、伸縮部506aを伸縮させる。作業者によりハンドル506bが操作されると、本体501に対して反応管支持部505が上昇又は下降する。例えば、昇降機構506が操作されることにより反応管支持部505が上昇端まで上昇すると、
図8(a)に示されるように、反応管支持部505の上面位置がカート510の上面位置よりも高くなる。一方、昇降機構506が操作されることにより反応管支持部505が下降端まで下降すると、
図9(a)に示されるように、反応管支持部505の上面位置がカート510の上面位置よりも低くなる。例えば、カート510に反応管ユニットが載置されているときに反応管支持部505を下降端から上昇端に向かって上昇させると、反応管ユニットが反応管支持部505の上面に支持されてカート510から離間する。
【0043】
キャスタ507は、本体501の下面に設けられている。キャスタ507は、例えばクリーンルーム対応キャスタである。キャスタ507は、例えばロック機構付キャスタを含んでいてよい。図示の例では、台車500の前方側にロック機構付キャスタが設けられている。
【0044】
工程S104は、台車500の上に載置された反応管ユニットを搬送する工程である。工程S104では、反応管支持部505を上昇させて反応管支持部505の上面で反応管ユニットを下側から支持し、反応管ユニットをカート510から離間させた状態で台車500を移動させることが好ましい。これにより、台車500の振動がカート510に伝達することで大きくなる振動が反応管ユニットへ伝達することを防止できる。そのため、反応管ユニットをカート510上に載置して台車500を移動させる場合と比較して、反応管ユニットに伝達する振動を抑制することができる。
【0045】
以上に説明したように、本開示によれば、反応管34の内部に、反応管34の内壁面とガス供給管76,78,80との衝突を和らげる緩衝部材200を取り付け、台車500の上に除振部材505aを介して反応管34を載置して搬送する。これにより、台車500による反応管ユニットの搬送時の振動を抑制し、また、ガス供給管76,78,80の振動に起因してガス供給管76,78,80が反応管34に接触し、反応管34が破損することを抑制できる。
【0046】
また、本開示によれば、ガス供給管76,78,80の内管44の中心方向への移動を規制するように緩衝部材200を配置するので、ガス供給管76,78,80の振動振幅を小さくし、振動を軽減することができる。
【0047】
また、本開示によれば、緩衝部材200として弾性部材を使用し、弾性力によりガス供給管76,78,80を内管44の内壁面の方向へ押し付けるように緩衝部材200を配置する。これにより、ガス供給管76,78,80は、内管44の中心方向に戻ろうとする反発力により緩衝部材200を押圧した状態となる。そのため、反応管ユニットの振動に起因するガス供給管76,78,80のガタツキが生じにくい。
【0048】
また、本開示によれば、台車500の反応管支持部505を上昇させて反応管支持部505の上面で反応管ユニットを下側から支持し、反応管ユニットをカート510から離間させた状態で台車500を移動させる。これにより、台車500の振動がカート510に伝達することで大きくなる振動が反応管ユニットへ伝達することを防止できる。そのため、反応管ユニットをカート510上に載置して台車500を移動させる場合と比較して、反応管ユニットに伝達する振動を抑制することができる。
【0049】
また、本開示によれば、外管46に取り付けられたマニホールド54の支持部60に内管44の径方向への移動を規制する規制部材300を配置する。これにより、反応管ユニットの振動により内管44が移動し、内管44が他の部材(例えば、外管46)と接触して破損することを防止することができる。
【0050】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。