(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
顕微鏡カメラの光学系には軸上/倍率色収差が存在し、レンズなどの光学系を最適設計することで、色収差を低減することが行われている。しかしながら、設計の自由度に制限があるために収差を十分に小さくできない場合や、観察光学系以外の用途の制約により対物側での収差補正ができない場合などでは、高精度な要求に対しては、仕様を満足することができないという問題が生じている。
【0007】
また、一般にグレースケール画像を用いた画像処理が行われているが、グレースケール画像を撮像するモノクロセンサは、一般的に可視光全域(380nm〜780nm)にわたる感度特性を有しており、モノクロ画像処理では色収差の影響を如実に受けることになる。したがって、オートフォーカスでは焦点位置ずれ、アライメントではパターン輪郭が不明瞭になり、検出能力の低下あるいは精度低下に繋がるという問題点があった。
【0008】
また、色収差を除去するために単色光の照明を利用することが多いが、様々な表面反射率が存在する場合に単色光の照明を利用した場合には、各々バンドパスフィルタなどのフィルタを物理的に交換する必要があり、観察光学系の光軸調整が必要になるなど、大きな手間が必要となっていた。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、色収差の影響を排除してオートフォーカスや位置決めを行うことで高精度な加工を行うダイシング装置及びダイシング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためにダイシング装置の一の態様は、ワークを保持する保持部と、対物レンズと、対物レンズを介してワークを照射する第1の光源と、対物レンズを介してワークからの反射光を受光する撮像素子と、を有し、撮像素子から基準となる色の画像信号と基準となる色以外の色の画像信号とを含む複数の色の画像信号を取得する観察光学部と、ワークの表面の色に応じて複数の色のうち少なくとも1つの色を選択する選択部と、ワークに対する対物レンズの相対位置を、選択された色の画像信号のコントラストが最大となる合焦位置に設定するオートフォーカス部と、観察光学部における基準となる色の合焦位置と基準となる色以外の色の合焦位置との差分を色毎に記憶する記憶部と、オートフォーカス部によって設定された合焦位置を、記憶部に記憶された差分であって、選択された色の差分に基づいて補正する補正部と、補正された合焦位置の情報に基づいてワークを加工する加工部と、を備えた。
【0011】
本態様によれば、ワークの表面の色に応じて複数の色のうち少なくとも1つの色を選択し、ワークに対する対物レンズの相対位置を選択された色の画像信号のコントラストが最大となる合焦位置に設定し、設定された合焦位置を、記憶部に記憶された観察光学部における基準となる色の合焦位置と基準となる色以外の色の合焦位置との差分に基づいて補正するようにしたので、色収差の影響を排除してオートフォーカスや位置決めを行うことができ、高精度な加工を行うことができる。
【0012】
ワークの表面の色を使用者が入力する入力部を備えることが好ましい。これにより、ワークの表面の色を適切に取得することができる。
【0013】
また、観察光学部が取得した複数の色の画像信号に基づいてワークの表面の色を識別する識別部を備えてもよい。さらに、識別部はワークの表面の色相角を識別してもよい。これにより、ワークの表面の色を適切に取得することができる。
【0014】
複数の色は、赤、緑、及び青の3色であり、基準となる色は緑であることが好ましい。これにより、観察光学部として原色カラーフィルタが配置された撮像素子を用いることができる。
【0015】
加工部は、観察光学部と一体に設けられ、対物レンズを介してワークにレーザー光を照射してワークを加工する第2の光源を備え、合焦位置においてワークにレーザー光を照射するとレーザー光がワークの内部に集光される。本態様は、レーザー光をワークの内部に集光させてワークを加工するレーザーダイシング装置に好適である。
【0016】
上記目的を達成するためにダイシング方法の一の態様は、ワークを保持部に保持する保持工程と、対物レンズを介してワークを照射し、対物レンズを介してワークからの反射光を受光し、基準となる色の画像信号と基準となる色以外の色の画像信号とを含む複数の色の画像信号を観察光学部により取得する観察工程と、ワークの表面の色に応じて複数の色のうち少なくとも1つの色を選択する選択工程と、ワークに対する対物レンズの相対位置を、選択された色の画像信号のコントラストが最大となる合焦位置に設定するオートフォーカス工程と、観察光学部における基準となる色の合焦位置と基準となる色以外の色の合焦位置との差分を色毎に記憶部に記憶する記憶工程と、オートフォーカス工程によって設定された合焦位置を、記憶された差分であって、選択された色の差分に基づいて補正する補正工程と、補正された合焦位置の情報に基づいてワークを加工する加工工程と、を備えた。
【0017】
本態様によれば、ワークの表面の色に応じて複数の色のうち少なくとも1つの色を選択し、ワークに対する対物レンズの相対位置を選択された色の画像信号のコントラストが最大となる合焦位置に設定し、設定された合焦位置を、記憶部に記憶された観察光学部にお
ける基準となる色の合焦位置と基準となる色以外の色の合焦位置との差分に基づいて補正するようにしたので、色収差の影響を排除してオートフォーカスや位置決めを行うことができ、高精度な加工を行うことができる。
【0018】
ダイシング方法は、コンピュータに上記の各工程を実現させるためのプログラムとして構成し、当該プログラムを記憶したCD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)等
の非一時的な記録媒体を構成することも可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、色収差の影響を排除してオートフォーカスや位置決めを行うことで高精度な加工を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0022】
〔レーザーダイシング装置の構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係るレーザーダイシング装置10の概略を示した構成図である。同図に示すように、レーザーダイシング装置10は、ワークWを移動させるステージ12、加工光学部20と観察光学部30とが一体に設けられた光学ユニット40、光学ユニットとワークWとの間の距離を変更する駆動部50、及び制御部60を備える。
【0023】
ステージ12(保持部の一例)は、XYZθ方向に移動可能に構成され、ステージ12に載置されたワークWを吸着保持する。
【0024】
光学ユニット40は、ワークWに対向する位置に配置されており、ワークWの内部に多光子吸収による改質領域を形成するための加工用レーザー光L1をワークWに対して照射する。
【0025】
制御部60は、レーザーダイシング装置10の各部の動作の制御やワークWの加工に必要なデータの記憶等を行う。
【0026】
レーザーダイシング装置10はこの他に、図示しないワーク搬送手段を備えている。
【0027】
次に、光学ユニット40の詳細構成について説明する。
【0028】
図1に示すように、光学ユニット40の加工光学部20は、加工用レーザー光源22、コリメートレンズ24、ミラー26、及びレンズ28を備える。
【0029】
加工用レーザー光源22(第2の光源の一例)は、ワークWの内部に改質領域を形成するための加工用レーザー光L1を出射する。加工用レーザー光L1は、例えば、波長が1
.1μm、パルス幅が1μs以下であって、集光点におけるピークパワー密度が1×10
8(W/cm
2)以上のレーザー光である。
【0030】
加工用レーザー光L1の光路上には、加工用レーザー光源22側から順に、コリメートレンズ24、ミラー26、及びレンズ28が配置される。
【0031】
コリメートレンズ24は、入射したレーザー光を平行状態に調整する。ミラー26は、レーザー光の光軸の向きを90度変えるように配置されている。レンズ28は、入射したレーザー光を加工光学部20から出射する。
【0032】
また、光学ユニット40の観察光学部30は、観察用レーザー光源32、コリメートレンズ34、ハーフミラー36、及びSD(Standard Definition)カラーカメラ38を備
える。
【0033】
観察用レーザー光源32(第1の光源の一例)は、例えばLD(Laser Diode)光源や
SLD(Super Luminescent Diode)光源等からなり、加工用レーザー光L1とは異なる
波長であって、ワークWの表面で反射可能な波長を有する観察用レーザー光L2を出射する。
【0034】
コリメートレンズ34は、入射したレーザー光を平行状態に調整する。ハーフミラー36は、加工用レーザー光L1の光軸と観察用レーザー光L2の光軸とが交差する位置に配置され、加工光学部20から入射した加工用レーザー光L1を透過するとともに、入射した観察用レーザー光L2を反射して光軸の向きを90度変える。
【0035】
SDカラーカメラ38は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やC
CD(Charge-Coupled Device)などの撮像素子を用いて被写体(ここではワークW)を撮
像するデジタルカメラである。撮像素子は、受光量に応じた電荷を生成する多数の光電変換素子(フォトダイオード)を備えている。各フォトダイオードは、行方向及び列方向に均等に配置されており、その周囲に設けられた画素分離領域により、画素毎に分離されている。フォトダイオードで生成された電荷は、各フォトダイオードに接続されているキャパシタに蓄積され、キャパシタに蓄積された電荷が画像信号として読み出される。
【0036】
画素を構成するフォトダイオードの前面には、カラーフィルタが形成されている。カラーフィルタは、ベイヤー配列等の所定の配列構造で配置された、赤(R)、緑(G)、青(B)の原色カラーフィルタから構成されており、各フォトダイオードに対していずれか1色のカラーフィルタが対応するように配置される。
【0037】
このように構成されたSDカラーカメラ38は、広がった波長をもつ照明光を使用しても、R、G、Bのそれぞれの画素からの信号のみ選択することで、それぞれR、G、Bの狭い帯域の波長の照明光を用いて取得した画像と同等なRチャンネル画像、Gチャンネル画像、及びBチャンネル画像の3枚の画像を取得することができる。これらの画像は、それぞれR、G、Bの単色光に近い色収差特性を有している。
【0038】
以上のように構成された光学ユニット40は、加工用レーザー光源22において出射された加工用レーザー光L1が、コリメートレンズ24で平行化され、ミラー26で光軸を90度変えられた後、レンズ28を介して加工光学部20から出力される。
【0039】
また、観察用レーザー光源32において出射された観察用レーザー光L2は、コリメートレンズ34で平行化され、ハーフミラー36で光軸を90度変えられて観察光学部30から出力される。ここで、加工光学部20から出力された加工用レーザー光L1は、観察
光学部30に入射し、ハーフミラー36を透過して観察用レーザー光L2と同じ光路で観察光学部30から出力される。
【0040】
また、光学ユニット40は、レンズ42及び対物レンズ44を備えている。レンズ42は、入射したレーザー光を透過して対物レンズ44に入射させる。対物レンズ44は、コンデンスレンズ(集光レンズ)であり、入射したレーザー光を集光させる。
【0041】
観察光学部30から出力された加工用レーザー光L1及び観察用レーザー光L2は、光路上に配置されたレンズ42を介して対物レンズ44に入射する。対物レンズ44に入射した加工用レーザー光L1及び観察用レーザー光L2は、それぞれZ方向(ワーク厚み方向)に異なる距離に集光される。光学ユニット40のZ方向高さ(対物レンズ44とワークWの表面との間隔、ワークに対する対物レンズの相対位置の一例)が適切に調整された状態では、対物レンズ44に入射した加工用レーザー光L1は、対物レンズ44によりワークWの内部の所望の深さに集光され、対物レンズ44に入射した観察用レーザー光L2は、対物レンズ44によりワークWの表面に集光される。
【0042】
ワークWの表面で反射された観察用レーザー光L2の反射光は、対物レンズ44に戻り、対物レンズ44及びレンズ42を透過してハーフミラー36に入射する。ハーフミラー36に入射した反射光は、ハーフミラー36により光軸の向きが90度変えられ、コリメートレンズ34を透過してSDカラーカメラ38に入射する。すなわち、SDカラーカメラ38は、対物レンズ44を介して反射光を受光する。
【0043】
SDカラーカメラ38は、入射した観察用レーザー光L2の反射光から、ワークWの表面の画像を取得する。
【0044】
図2は、制御部60の構成を示すブロック図である。同図に示すように、制御部60は、CPU(Central Processing Unit)62、メモリ64、入出力回路66、ユーザイン
ターフェース68、画像処理部70、オートフォーカス制御部72、加工制御部74、及びバス76を備えている。
【0045】
CPU62は、制御部60の各部を統括制御する。メモリ64は、動作プログラムが記憶されているROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時の作業領域となるRAM(Random Access Memory)と、画像データを一時的に記憶しておくフレームメモリにより構成されている。入出力回路66は、ステージ12、加工光学部20、観察光学部30、及び駆動部50と制御信号の入出力を行うためのインターフェースである。
【0046】
ユーザインターフェース68は、使用者が各部の動作を操作するスイッチ類やテレビモニタ、表示灯などの表示装置を備えている。テレビモニタは、SDカラーカメラ38で撮像したワークWの画像の表示、又はプログラム内容や各種メッセージ等を表示する。表示灯は、レーザーダイシング装置10の加工中、加工終了、非常停止等の稼働状況を表示する。
【0047】
画像処理部70は、SDカラーカメラ38において撮像した画像について各種の画像処理を行う。オートフォーカス制御部72(オートフォーカス部の一例)は、SDカラーカメラ38において撮像した画像に基づいて、駆動部50によって光学ユニット40のZ方向高さを変更することで、SDカラーカメラ38において撮像された画像のコントラストが最大となる合焦位置、すなわち観察用レーザー光L2の集光点がワークWの表面に一致する位置に移動させる(オートフォーカス動作)。
【0048】
加工制御部74は、光学ユニット40とワークWとのXYZθ方向の位置決めを行うと
ともに、ワークWに加工用レーザー光L1を照射しながらステージ12をX方向に加工送りさせ、またY方向にインデックス送りさせる。バス76は、制御部60の各部を相互に接続してデータを伝送する。
【0049】
このように構成された制御部60は、SDカラーカメラ38が取得したワークWの表面の画像に基づいて、オートフォーカス制御部72によって光学ユニット40をオートフォーカス動作させる。前述のように、加工用レーザー光L1の集光点と観察用レーザー光L2の集光点とはZ方向に異なる位置であり、観察用レーザー光L2の集光点がワークWの表面に一致しているとき、加工用レーザー光L1の集光点はワークWの厚さ方向の所望の距離に設定される。
【0050】
光学ユニット40(加工部の一例)が観察用レーザー光L2の集光点をワークWの表面に一致させた状態で、ステージ12をXY方向に移動させることで、加工用レーザー光L1によってワークWの所望の深さにスクライブラインに沿った改質領域を形成することができる。
【0051】
〔画像情報の利用方法:第1の実施形態〕
前述のように、加工用レーザー光L1及び観察用レーザー光L2は、対物レンズ44を介してワークWに入射する。ここで、対物レンズ44は、加工用レーザー光L1に対して最適化されているため、観察用レーザー光L2の波長では色収差が発生する。色収差を有する状態でオートフォーカス動作を行うと、測定精度が悪化してしまう。
【0052】
したがって、ワークWの加工の際には、色収差の影響を低減したオートフォーカスを行う必要がある。第1の実施形態に係るレーザーダイシング装置10は、ワークWの表面の色に応じて、オートフォーカスや位置決めに利用する画像のR/G/Bのカラーチャンネルを使用者が指定することで、適切な色の画像を画像処理に利用する。
【0053】
図3は、第1の実施形態に係るダイシング方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【0054】
ステップS1において、使用者は、ユーザインターフェース68(入力部の一例、
図2参照)を用いてワークWの表面色を入力する。
【0055】
次に、ステップS2において、入力されたワークWの表面の色が赤であるか否かを判定する。赤である場合は、ステップS3に移行し、Rチャンネル画像を画像処理に利用する。すなわち、画像処理部70は、SDカラーカメラ38が撮像した画像からRチャンネル画像を作成し、オートフォーカス制御部72は、作成されたRチャンネル画像に基づいて光学ユニット40をオートフォーカス動作させ、加工制御部74は、作成されたRチャンネル画像に基づいてステージ12を制御してワークWの位置決めを行い、XY方向送りを行い、加工用レーザー光L1により改質領域を形成する。その後、本フローチャートに係る処理を終了する。
【0056】
赤でない場合は、ステップS4に移行し、入力されたワークの表面の色が緑であるか否かを判定する。緑である場合は、ステップS5に移行し、Gチャンネル画像を画像処理に利用し、本フローチャートに係る処理を終了する。
【0057】
緑でない場合は、ステップS6に移行し、入力されたワークWの表面の色が青であるか否かを判定する。青である場合は、ステップS7に移行し、Bチャンネル画像を画像処理に利用し、本フローチャートに係る処理を終了する。
【0058】
青でない場合は、ステップS8に移行し、入力されたワークWの表面の色が紫色であるか否かを判定する。紫色である場合は、ステップS9に移行し、Rチャンネル画像とBチャンネル画像とを合成して画像処理に利用し、本フローチャートに係る処理を終了する。
【0059】
紫色でない場合は、ステップS10に移行し、入力されたワークWの表面の色が黄色であるか否かを判定する。黄色である場合は、ステップS11に移行し、Rチャンネル画像とGチャンネル画像とを合成して画像処理に利用し、本フローチャートに係る処理を終了する。
【0060】
黄色でない場合は、ステップS12に移行し、Gチャンネル画像とBチャンネル画像とを合成して画像処理に利用し、本フローチャートに係る処理を終了する。
【0061】
以上のように、ワークWの表面の色に応じた色の画像を画像処理に利用することができる。これにより、利用する光学系の色収差の影響を低減することができ、オートフォーカスの精度向上や位置決めの検出能力の向上を図ることができる。
【0062】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態に係るレーザーダイシング装置10は、ワークWの表面の色を自動的に認識し、最適なカラーチャンネルの画像を自動計算し、画像処理に利用する。
【0063】
図4は、第2の実施形態に係るダイシング方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【0064】
ステップS21において、SDカラーカメラ38によってワークWを撮像し、カラー画像を取得する。
【0065】
次に、ステップS22において、取得したカラー画像をL*a*b表色系に変換し、画素毎の色相角データを採取する。L*a*b表色系とは、明度L*とクロマネティクス指数a*、b*とからなる均等色空間を用いた表色系である。なお、L*u*v*表色系やH
SI(Hue,Saturation,Intensity)表色系に変換して色相角データを採取してもよい。
【0066】
続いて、ステップS23において、画像処理部70(選択部の一例、識別部の一例)は、採取した画素毎の色相角データに基づいて、ワークWの表面の色を識別する。
【0067】
具体的には、画素毎の色相角をHough変換により色相角投票空間に投票し、最も投票数の多い色相角をワークWの表面の色として認識する。なお、無彩色の場合は彩度情報を得ることができないため、色相角も不定となる。したがって、この処理はある一定の彩度しきい値を超える画素について行う。
【0068】
次に、ステップS23において、ワークWの表面の色の色相角に応じた係数A
R、A
G、及びA
Bを算出する。係数は、例えば色相角がRとGとの中央の場合は、A
R=0.5、A
G=0.5、A
B=0である。また、R:G=2:1の角度の場合であれば、A
R=2/3、A
G=1/3、A
B=0である。
【0069】
最後に、ステップS24において、算出した係数A
R、A
G、及びA
Bに応じた画像データを合成し、合成した画像データを画像処理に利用する。画像データは、例えば画像データ=Rチャンネル画像×A
R+Gチャンネル画像×A
G+Bチャンネル画像×A
Bとして合成する。
【0070】
この画像データに基づいて、オートフォーカス制御部72は駆動部50を制御して光学
ユニット40をオートフォーカス動作させ、加工制御部74は、ステージ12を制御してワークWの位置決めを行い、XY方向送りを行う。その後、本フローチャートに係る処理を終了する。
【0071】
以上のように、取得した画像からワークWの表面の色を認識し、認識した色に応じた色の画像を画像処理に利用することができる。これにより、利用する光学系の色収差の影響を低減することができ、オートフォーカスの精度向上や位置決めの検出能力の向上を図ることができる。
【0072】
〔第3の実施形態〕
第3の実施形態に係るレーザーダイシング装置10は、緑(基準となる色の一例)を基準としたときの赤及び青(基準となる色以外の色の一例)の色収差によるオフセットをあらかじめ取得しておき、このオフセットデータを用いて合焦位置を補正する。
【0073】
図5は、第3の実施形態に係るダイシング方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【0074】
最初に、ステップS31(記憶工程の一例)において、レーザーダイシング装置10の光学ユニット40(観察光学部30、レンズ42、対物レンズ44)の色収差データを取得し、記憶する。この処理は、装置の出荷時などの調整の際に予め行う。
【0075】
色収差データの取得は、まずステージ12に基準となるワークW
Sを載置し、このワークW
Sを駆動部50により光学ユニット40のZ方向高さ(対物レンズ44とワークW
Sの表面との距離)を変更しつつSDカラーカメラ38によってワークW
Sを撮像し、各Z方向高さにおけるワークW
SのRチャンネル画像、Gチャンネル画像、及びBチャンネル画像を取得する。そして、これらの画像のコントラストからフォーカス強度を抽出し、Rチャンネル画像、Gチャンネル画像、及びBチャンネル画像のフォーカス強度がピークとなる光学ユニット40のZ方向高さをそれぞれ取得する。
【0076】
図6は、光学ユニット40の各Z方向高さにおけるRチャンネル画像、Gチャンネル画像、及びBチャンネル画像のフォーカス強度の一例を示した図であり、横軸は光学ユニット40のZ方向高さ、縦軸はフォーカス強度を表している。同図に示す例では、Gチャンネル画像のフォーカス強度がピークとなる光学ユニット40のZ方向高さに対して、Rチャンネル画像のフォーカス強度がピークとなる光学ユニット40のZ方向高さは1μm低く、Bチャンネル画像のフォーカス強度がピークとなる光学ユニット40のZ方向高さは+1.2μm高い。したがって、緑を基準としたときの赤の色収差によるオフセット(差分の一例)を+1μm、緑を基準としたときの青の色収差によるオフセットを−1.2μmとして色毎にメモリ64(記憶部の一例)に記憶する。
【0077】
色収差データを記憶したら、製品のワークWの加工を行うことができる。製品のワークWの加工は、まずステップS32において、ステージ12に製品のワークWを載置し(保持工程の一例)、光学ユニット40のZ方向高さを変更しつつSDカラーカメラ38によってワークWを撮像し、各Z方向高さにおけるカラー画像を取得する(観察工程の一例)。
【0078】
続いて、ステップS33において、ステップS32において取得した各Z方向高さにおいて撮像したカラー画像から、各Z方向高さにおけるRチャンネル画像、Gチャンネル画像、及びBチャンネル画像(基準となる色の画像信号と基準となる色以外の色の画像信号とを含む複数の色の画像信号の一例)を作成する。
【0079】
図7は、光学ユニット40のそれぞれ異なるZ方向高さh
1、h
2及びh
3において取得したカラー画像100、102及び104と、カラー画像100をRGB各色に分解したRチャンネル画像100R、Gチャンネル画像100G、及びBチャンネル画像100Bと、カラー画像102をRGB各色に分解したRチャンネル画像102R、Gチャンネル画像102G、及びBチャンネル画像102Bと、カラー画像104をRGB各色に分解したRチャンネル画像104R、Gチャンネル画像104G、及びBチャンネル画像104Bとの一例を示す図である。ここでは、ワークWの表面の位置合わせマークを撮像している。
【0080】
次に、ステップS34において、画像処理部70(選択部の一例)は、Rチャンネル画像、Gチャンネル画像、及びBチャンネル画像からそれぞれフォーカス強度を算出して画像処理に利用する色を決定し、その色の画像を用いて合焦位置を測定する。
【0081】
ここでは、Rチャンネル画像100R、102R、及び104R、Gチャンネル画像100G、102G、及び104G、Bチャンネル画像100B、102B、及び104Bのフォーカス強度を比較し、コントラストが最も高い画像を抽出し、その画像の色を画像処理に利用する色とする。
図7に示すように、位置合わせマークのコントラストが最も高く撮像されているのはRチャンネル画像100R、102R、及び104Rであるため、画像処理に利用する色を赤に決定する(選択工程の一例)。すなわち、ここではワークWの表面の色は、赤、緑、及び青のうち赤に最も近い。
【0082】
さらに、Rチャンネル画像100R、102R、及び104Rのうち、位置合わせマークのコントラストが最も高く撮像されているのはRチャンネル画像102Rであるため、カラー画像102を撮像した際の光学ユニット40のZ方向高さh
2を合焦位置に設定する(オートフォーカス工程の一例)。
【0083】
最後に、ステップS35(補正工程の一例)において、オートフォーカス制御部72(補正部の一例)は、合焦位置からオフセット分を加算し、光学ユニット40のZ方向高さを緑基準の合焦位置に補正する。本実施形態では、オートフォーカス動作に用いられた色は赤(選択された色の一例)である。そして、メモリ64に、緑を基準としたときの赤の色収差によるオフセット「+1μm」が記憶されている。したがって、合焦位置に赤の色収差によるオフセットを加算して、光学ユニット40のZ方向高さを(h
2+1μm)とする。
【0084】
図8は、ワークWを撮像した際の光学ユニット40の各Z方向高さにおけるRチャンネル画像、Gチャンネル画像、及びBチャンネル画像のフォーカス強度の一例を示した図であり、横軸は光学ユニット40のZ方向高さ、縦軸はフォーカス強度を表している。同図に示すように、光学ユニット40のZ方向高さh
2におけるRチャンネル画像が最もフォーカス強度が高い。したがって、光学ユニット40はZ方向高さh
2の位置に合焦位置として設定される。
【0085】
ここで、
図6に示したように、本実施形態では、基準となるGチャンネル画像のフォーカス強度がピークとなる光学ユニット40のZ方向高さに対して、Rチャンネル画像のフォーカス強度がピークとなる光学ユニット40のZ方向高さは1μm低い。
【0086】
このため、緑基準の合焦位置の光学ユニット40のZ方向高さは、
図8に示すように、設定された合焦位置に対して+1μm分だけ補正し、(h
2+1μm)とする必要がある。したがって、オートフォーカス制御部72は、光学ユニット40のZ方向高さを(h
2+1μm)に補正する。
【0087】
このように補正された合焦位置の情報に基づいて、ワークWを加工する。すなわち、補正された合焦位置において加工用レーザー光L1をワークWに照射することで、加工用レーザー光L1を、ワークWの内部の所望の深さに集光することができる(加工工程の一例)。
【0088】
以上のように、利用する光学系の色収差データをあらかじめ測定し、緑を基準としたときの赤及び青の色収差によるオフセットをあらかじめ取得する。これを緑以外の色の画像データを用いて得られた合焦位置の結果にオフセットデータとして加算することで、合焦位置を常に緑基準とすることができ、光学系の色収差の影響を低減することができる。したがって、オートフォーカスの精度向上や位置決めの検出能力の向上を図ることができる。
【0089】
なお、本実施形態においては、画像処理に利用する色をRチャンネル画像、Gチャンネル画像、及びBチャンネル画像のフォーカス強度に基づいて決定したが、第1の実施形態のようにユーザインターフェース68からの入力に基づいて決定してもよいし、第2の実施形態のように画像の色相角データに基づいて決定してもよい。
【0090】
各実施形態において、レーザー光を用いたレーザーダイシング装置を例に説明したが、ブレードを用いたダイシング装置のカメラにも適用することができる。この場合は、補正された合焦位置の情報に基づいてブレードのZ方向高さを制御することで、高精度な加工をすることができる。
【0091】
本発明の技術的範囲は、上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合わせることができる。