(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非水系電池用収納容器から引き出される電極リード線部材であって、短冊状をした金属製平板の外表面に、ポリビニルアルコール系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂と、水溶性のフッ素化合物とを含有した溶液を塗布・乾燥させた保護層が形成されていて、前記保護層の表面にシーラント層が積層されてなり、
前記水溶性のフッ素化合物は、フッ化金属又はその誘導体であり、
前記保護層が、熱処理により架橋していて耐水性を有してなり、ポリビニルアルコール系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂と、水溶性のフッ素化合物とからなる架橋体であり、
下記の「電解液強度保持率の測定方法」に基づいて測定した、前記電極リード線部材の、電解液強度保持率Kの値が、10%超過であることを特徴とする電極リード線部材。
・電解液強度保持率の測定方法:電池外装用積層体を用いて、50×50mm(ヒートシール幅が5mm)の4方袋に製袋して、その中にLiPF6を1mol/リットル添加したプロピレンカーボネート(PC)/ジエチルカーボネート(DEC)電解液(純水を0.5wt%添加した電解液)を2cc計量し、充填して包装し、前記4方袋の中に、電極リード線部材の金属製平板の外表面の一部に保護層をディスペンサー方式にて印刷し、その保護層の上に、ヒートシールによりシーラント層が積層された電極リード線部材を入れて、60℃のオーブンに100時間保管後、電極リード線部材の保護層とシーラント層との層間接着強度(k2)を測定し、事前に測定しておいた、前記電解液に暴露する前の保護層とシーラント層であるポリプロピレン(PP)フィルムとの層間接着強度(k1)と、前記電解液に暴露した後の層間接着強度(k2)との比率を電解液強度保持率K=(k2/k1)×100(%)とする。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的な環境問題の高まりと共に、電気自動車の普及や、風力発電・太陽光発電などの自然エネルギーの有効活用が課題となっている。それに伴って、これらの技術分野では、電気エネルギーを貯蔵するための蓄電池として、リチウムイオン電池などの2次電池やキャパシタが注目されている。また、電気自動車などに使用されるリチウムイオン電池を収納する外装容器には、アルミニウム箔と樹脂フィルムを積層した電池外装用積層体を使用して作成した平袋や、絞り成形または張出成形による成形容器が使用されて薄型軽量化が図られている。
ところで、リチウムイオン電池の電解液は水分や光に弱いという性質を有している。そのため、リチウムイオン電池用の外装材料には、ポリアミドやポリエステルからなる基材層とアルミニウム箔とが積層された、防水性や遮光性に優れた電池外装用積層体が使用されている。
【0003】
このような電池外装用積層体を用いて作成された収納容器に、リチウムイオン電池を収納するには、例えば、
図3(a)に示すように、あらかじめ電池外装用積層体を用いて、凹部31を有するトレー状の形状を絞り成形などにより成形し、そのトレーの凹部31にリチウムイオン電池(図示せず)および電極などの付属品を収納する。次いで、
図3(b)に示すように、電池外装用積層体からなる蓋材33を上から重ねて電池を包み、トレーのフランジ部32と蓋材33の四方の側縁部34をヒートシールして電池を密閉する。このようなトレーの凹部31に電池を載置する方法により形成された収納容器35では、上から電池を収納できるため、生産性が高い。
【0004】
上述した
図3(a)に示したリチウムイオン電池の載置容器30において、トレーの深さ(以下、トレーの深さを「絞り」ということがある)は、従来、小型のリチウムイオン電池においては5〜6mm程度であった。ところが、近年では、電気自動車用などの用途では、これまでより大型電池用の収納容器が求められている。大型電池用の収納容器を製造するには、より深い絞りのトレーを成形しなければならなくなり技術的な困難さが増している。
また、リチウムイオン電池の内部に水分が侵入した場合、電解液が水分で分解して、強酸が発生する。この場合、電池外装用の積層体の内側から発生した強酸が浸透し、その結果としてアルミ箔が強酸で腐食して劣化してしまい、電解液の液漏れが発生し、電池性能が低下するだけでなく、リチウムイオン電池が発火する恐れがあるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の電池外装用積層体を構成するアルミ箔や電極リード線部材の表面層が、強酸で腐食するのを防止する対策として、特許文献1には、アルミ箔の表面にクロメート処理を施すことによりクロム化処理被膜を形成し、耐蝕性を向上させる対策が開示されているが、クロメート処理は重金属であるクロムを使用することから環境対策の点から問題であり、6価クロムは人体に影響を与える有害物質であるため使用できず、3価クロムのクロメート処理液を使用している。また、クロメート処理以外の化成処理では耐蝕性を向上させる効果が薄いという問題はある。
【0007】
また、従来の電極リード線部材は、正極と負極の両方の電極のうち、正極の電極部材であるアルミ材は耐電解液性が良いが、負極の電極部材である銅板は、表層にニッケルメッキを付与し、さらに三価クロムのクロメート処理を施しても耐電解液性が劣る。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みて行われたものであり、リチウムイオン電池の電解液が水分と反応してフッ酸が発生し、腐食性が増大しても、その悪影響を回避しリチウムイオン電池の寿命が延びるように、耐蝕性を向上させた非水系電池用の電極リード線部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電解液に有機電解質を使用した非水系電池用収納容器において、外装材のラミネートフィルム積層体と電極リード線部材とが接合される部分の、短冊状をした金属製平板の外表面に、印刷により帯状のパターンに保護層を形成し、腐食性の電解液に対する耐蝕性を向上させることを技術思想としている。この保護層は、ポリビニルアルコール系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂と、フッ素化合物とを含有した溶液を塗布・乾燥させて形成される。
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、アルミ箔と樹脂フィルムとのラミネートフィルム積層体を外装材に用いてなる非水系電池用収納容器から引き出される電極リード線部材であって、短冊状をした金属製平板の外表面に、ポリビニルアルコール系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂と、フッ素化合物とを含有した溶液を塗布・乾燥させて保護層が形成されていることを特徴とする電極リード線部材を提供する。
【0011】
また、前記フッ素化合物が、水溶性であることが好ましい。
【0012】
また、前記保護層が、前記金属製平板の外表面に、印刷により帯状のパターンに形成されてなることが好ましい。
【0013】
また、前記保護層が、熱処理により架橋又は非晶化して、耐水性を有することが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記電極リード線部材が使用された、非水系電池用収納容器を提供する。
【0015】
また、前記電極リード線部材の、前記外装材との接合部に沿う断面で見た両端部が押し潰されて、断面中央部よりも厚みが薄くされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
電極リード線部材の、ポリビニルアルコール系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂と、フッ素化合物とを含有した溶液を塗布した後、乾燥させて保護層が形成されている保護層が、熱処理により、架橋又は非晶化することにより耐水性を持つようになり、電極リード線部材の、断面で見た両端部から電解液の外部への漏洩や大気中の水分が内部に浸入するのを抑えることができる。
電極リード線部材の、断面で見た両端部が押し潰されて、断面中央部よりも厚みが薄くされていると、電極リード線部材とラミネートフィルム積層体との密着が良くなり空隙部が少なくなり、電解液の外部への漏洩や大気中の水分が内部に浸入するのが低減される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係わる電極リード線部材を、電池外装用積層体を用いて製造したリチウムイオン電池用の収納容器から、引き出したものを例に取り上げ、
図1および
図2を参照しながら説明する。
図1に示すように、本発明の電極リード線部材18及びリチウムイオン電池17は、電池外装用積層体10を折り重ねて作成された電池用外装容器20に内包されている。
さらに、電池用外装容器20の三方の側縁部19は、ヒートシールして袋状に製袋されたものである。電極リード線部材18は、
図1の様に電池用外装容器20から引き出されている。なお、本発明に係わる電極リード線部材18を用いて製造したリチウムイオン電池の電池用収納容器における収納方法は、
図3に示した。
【0019】
ラミネートフィルム積層体からなる電池外装用積層体10は、
図2に示すように、基材層11と、アルミ箔12と、樹脂フィルム13とが、それぞれ接着剤層15,16を介して接着されている。
図4に示すように、電極リード線部材18は、アルミニウム製、あるいはニッケルメッキを施した銅板製の短冊状の金属製平板21に、ポリビニルアルコール系樹脂又はポリビニルエーテル系樹脂(以下、単に「ポリビニルアルコール系樹脂」という場合がある。)と、フッ素化合物とを含有した溶液を塗布した後、乾燥させて形成されている保護層22が積層されている。該保護層22の表面上に、シーラント層23が、積層されている。
保護層22は、フッ化金属又はその誘導体からなるフッ素化合物と、ポリビニルアルコール系樹脂とを架橋させて形成されており、耐水性を向上させ、且つ、金属製平板21の表面を活性化させ、耐食性を向上させることができる。但し、フッ化金属又はその誘導体が含まれていなくても、保護層22の耐蝕性は向上している。
保護層22は、金属製平板21の外表面に印刷により帯状のパターンに形成されている。金属製平板21の外表面に形成されている帯状の保護層22は、熱処理により、架橋または非晶化することにより耐水性が向上している。
また、フッ化金属のように、水溶液の状態では遊離して酸性になる物質を、保護層22に含有させることにより、金属表面が活性化されて、耐食性が向上すると共に、金属製平板21の外表面と保護層22とが強く接着される。
【0020】
ところで、ポリビニルアルコールの骨格を有するポリビニルアルコール系樹脂は、一般的にガスバリヤ性が良いことが知られている。本発明に係わる電極リード線部材の保護層22は、ポリビニルアルコール系樹脂を用いて形成されていることから、保護層22を構成する樹脂内部は、空隙が少なく、特に湿度の低い雰囲気下では、水素ガスのような分子径の小さなガス分子に対してもガスバリヤ性がある。このことから、リチウム電池やキャパシタのような非水系電解液を用いた電池において、水分の存在しない電池内部の構成部材に、本発明の保護層22が使用される場合は、電解液や水分に対するバリヤ性が高いと考えられる。従って、フッ酸等の金属表面を腐食させる物質に対するバリヤ性も高いので腐食防止の効果があると予想される。このように、ポリビニルアルコール系樹脂からなる保護層22は、架橋させることにより、耐蝕性の向上を図ることができる。
【0021】
電極リード線部材18の金属製平板21は、一般的に、正極はアルミ板、負極は銅板にニッケルメッキで被覆した金属が使用される。アルミラミネートフィルムからなる電池外装用積層体10との熱接合を容易にするために、電極リード線部材18の接合部分に事前に、シーラント層23を形成して置く。シーラント層23は、金属製平板21を表裏両側から挟み込むように、両面に積層することが好ましい。
もし、金属製平板21の表層に、耐蝕性の保護層22を形成させていないと、電解液の浸透により、金属製平板21の表層で水分と電解液とが反応してフッ酸が発生し、金属製平板21が腐食する。そのことにより、金属製平板21とシーラント層23との接着を劣化させる。よって、少なくとも金属製平板21の電池側の表層面を、ポリビニルアルコール系樹脂と、フッ素化合物とを含有した溶液を塗布した後、乾燥させて保護層22が形成されていることが好ましい。
図4(b)に示すように、外装材との接合部分においては、金属製平板21の断面の外周部全体に、保護層22を積層する必要がある。
従来技術では、電極リード線部材に用いられるアルミ製の金属製平板21についての電解液に対する腐食防止対策としては、クロメート処理が広く用いられている。しかし、アルミ製の金属製平板21と比較して、銅にニッケルメッキを施した金属製平板21に対しては、クロメート処理の効果が小さい。ところが、本発明による電極リード線部材18は、銅にニッケルメッキを施した金属製平板21についても電解液に対する腐食防止の効果があることが解った。
このことから、本発明の保護層22による電解液に対する腐食防止は、腐食防止のメカニズムが、従来技術のクロメート処理と異なっていると考えられる。
シーラント層23は、
図5に示すように、正極と負極の双方にまたがるように積層しても良い。これにより、正極と負極とが一体化した電極リード線部材を得ることができる。また、保護層22の腐食防止効果は、アルミ板やニッケルメッキ銅板など各種金属板に対して得られるので、保護層22を正極と負極の双方の金属製平板21に設けることが好ましい。
【0022】
ところで、本発明に係わる電極リード線部材の保護層22は、ポリビニルアルコール系樹脂と、フッ素化合物とを含有した溶液を塗布・乾燥させて形成される。ポリビニルアルコール系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で製造することができる。例えば、ビニルエステル系モノマーの重合体又はその共重合体をケン化して、ポリビニルアルコール系樹脂を製造することができる。本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂とは、ポリビニルアルコール樹脂、及び変性ポリビニルアルコール樹脂から選ばれる少なくとも1種の水溶性樹脂のことである。ここで、ビニルエステル系モノマーの重合体又はその共重合体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルや、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等のビニルエステル系モノマーの単独重合体又は共重合体、及びこれと共重合可能な他のモノマーの共重合体などが挙げられる。共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン等のオレフィン類、アルキルビニルエーテル等のエーテル基含有モノマー、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセト酢酸アリル、アセト酢酸エステル等のカルボニル基(ケトン基)含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸類、塩化ビニルや塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、及び不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常90〜100モル%が好ましく、95モル%以上がより好ましい。
【0023】
本発明に使用できるポリビニルアルコール系樹脂とその誘導体としては、アルキルエーテル変性ポリビニルアルコール樹脂、カルボニル変性ポリビニルアルコール樹脂、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール樹脂、アセトアミド変性ポリビニルアルコール樹脂、アクリルニトリル変性ポリビニルアルコール樹脂、カルボキシル変性ポリビニルアルコール樹脂、シリコーン変性ポリビニルアルコール樹脂、エチレン変性ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。それらの中でも、アルキルエーテル変性ポリビニルアルコール樹脂、カルボニル変性ポリビニルアルコール樹脂、カルボキシル変性ポリビニルアルコール樹脂、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール樹脂が好ましい。
一般に入手可能な、ポリビニルアルコール系樹脂の市販品としては、日本合成化学(株)製、日本酢ビ・ポバール(株)製、日本カーバイド工業(株)製などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂は、1種又は2種以上の混合物を用いてもよい。
【0024】
また、日本カーバイド工業(株)製のクロスマーHシリーズ(商品名)は、ポリビニルエーテル系樹脂(ビニルエーテルポリマー)としても知られているが、本発明では、水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂の代わりに、水酸基を有しても水酸基をしなくてもよいポリビニルエーテル系樹脂を用いることもできる。ポリビニルエーテル系樹脂としては、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ノルボルニルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、ノルボルネニルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等の、脂肪族ビニルエーテルの単独重合体又は共重合体、及びこれと共重合可能な他のモノマーの共重合体などが挙げられる。ビニルエーテル系モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、上述したビニルエステル系モノマーと共重合可能な他のモノマーと同様なものが挙げられる。
2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、その他、各種グリコールや多価アルコールのモノビニルエーテル等の、水酸基を有する脂肪族ビニルエーテルをモノマーに含むポリビニルエーテル系樹脂は、水溶性を有し、かつ水酸基に対する架橋反応が可能なので、本発明に好適に用いることができる。
これらのポリビニルエーテル系樹脂は、ビニルエーテルモノマーが樹脂の製造(重合)工程に利用可能であることから、ビニルエステル系ポリマーを経由して製造されるポリビニルアルコール系樹脂とは異なり、ケン化処理を経ることなく、製造可能である。また、ビニルエステル系モノマーとビニルエーテル系モノマーを含む共重合体、又はこれをケン化して得られる、ビニルアルコール−ビニルエーテル共重合体を用いることもできる。ポリビニルエーテル系樹脂以外のポリビニルアルコール系樹脂と、ポリビニルエーテル系樹脂の混合物を用いることもできる。
【0025】
また、保護層22には、フッ化金属又はその誘導体であって、ポリビニルアルコール系樹脂を架橋させる物質を含有していることが好ましい。フッ化金属又はその誘導体などのフッ素化合物は、水溶性のポリビニルアルコール系樹脂と混ぜ合わせる必要があることから、水溶性を有するのが好ましい。フッ化金属又はその誘導体の具体例としては、例えば、フッ化クロム、フッ化鉄、フッ化ジルコニウム、フッ化チタン、フッ化ハフニウム、ジルコンフッ化水素酸およびそれらの塩、チタンフッ化水素酸およびそれらの塩、等のフッ化物が挙げられる。これらのフッ化金属又はその誘導体は、ポリビニルアルコール系樹脂を架橋させる物質であると同時に、不動態であるアルミニウムのフッ化物を形成するF
−イオンを含む物質でもある。その結果、金属製平板21がアルミニウム製である場合には、金属製平板21の表面が不動態化され、耐食性が向上すると考えられる。
【0026】
この金属製平板21の表層面に、保護層22を形成するには、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(日本合成化学(株)製、日本酢ビ・ポバール(株)製、日本カーバイド工業(株)製など)を0.2〜6wt%、及びフッ化クロム(III)を0.1〜3wt%溶解した水溶液を用いて、乾燥後の厚みが0.1〜5μm程度となるように塗布した後、更にオーブンにて加熱乾燥及び焼き付け接着及び架橋化を行なうことにより、保護層22を形成することができる。
図6に、ポリビニルアルコール系樹脂(日本合成化学(株)製)を3wt%、及びフッ化クロム(III)を1wt%溶かした水溶液を用いて乾燥後の厚みが0.6μmとなるように塗布し、更に200℃のオーブンにて加熱乾燥の処理をして形成した保護層を、示差熱分析装置で測定した結果の一例を示す。融点を確認したところ、融点のピークが無いことから架橋していることが解った。
【0027】
このように、金属製平板21の表層面に、保護層22が積層されていると、保護層22の耐圧強度が高いので、シーラント層23であるポリプロピレン層又はポリエチレン層の厚みを薄くしても耐圧強度が保持できる。そのため、金属製平板21のエッジ部分(側縁部)から、リチウムイオン電池の内部に水分が浸入することが少なくなり、リチウムイオン電池の電解液の経時劣化が減少するので、電池の製品寿命が長くなる。
更に、微量の水分が電池内部に浸入して、電解液と水分とが反応して電解液が分解することによりフッ酸が発生した場合にも、金属製平板21の表層面に積層されたポリビニルアルコール系樹脂からなる保護層22は、空隙が少ないので、ガスバリヤ性が高く、シーラント層23に沿って、発生したフッ酸を、電池の外部へ拡散させることができる。また、微量のフッ酸が、金属製平板21であるアルミ板の表面に接触しても、アルミ板の表面に形成されている不動態化膜により金属製平板21の腐食が防止されて、金属製平板21とシーラント層23との層間接着の強度が保たれ、耐圧強度の保持がなされるので、電池の液漏れが発生しない。
【0028】
保護層22の表面に接合するシーラント層23の厚さは、50〜300μmが良く、防水性を考えると50〜150μmが最も良い。金属製平板21の厚さが200μm以上であると、剛性が強いため、金属製平板21の側縁部(エッジ部)にスルーホールが出来て、電解液のシールが完全に出来ない場合がある。そこで、
図4(b)に示すように、外装材との接合部に沿う断面で見た場合に、金属製平板21の両端部24が押し潰されて、断面中央部よりも厚みが薄くされていることが好ましい。これにより、保護層22の表面に接合するシーラント層23の厚みを薄くできる。
ポリビニルアルコール系樹脂からなる保護層22の厚みは、0.1〜5.0μmが望ましく、更に望ましくは0.5〜3μmである。保護層22が、この程度の厚みであると、防湿性や接着強度の性能が向上する。
【0029】
保護層22は、印刷方法により、金属製平板21の外表面の必要な部分に形成される。印刷方式としては、インクジェット方式、ディスペンサー方式、スプレーコート方式など、公知の印刷方法を用いることが可能である。本発明に使用できる印刷方法は任意であるが、金属製平板21の両表面だけでなく、電極リード線部材の断面で見た側縁部(エッジ部)も印刷する必要があるため、インクジェット方式とディスペンサー方式が良い。特に、ディスペンサー方式において、10mm幅程度に、狭い幅で印刷できる塗布ヘッドを用いて実験したところ、最も適した方式であることが分った。
電極リード線部材の保護層22の表面に接合しておくシーラント層23は、アルミラミネートフィルム10の最内層に用いられる樹脂フィルム13と同一、又は類似の樹脂フィルムを用いるのが好ましい。樹脂フィルム13が、一般的に使用されているポリプロピレンの場合、シーラント層23は、無延伸ポリプロピレン(CPP)、無水マレイン酸変性プロピレン単独のフィルムもしくは、グリシジルメタクリレート等のエポキシ官能基を有するモノマーで変性されたポリプロピレンの単独フィルムであるか、これとポリプロピレンとの多層フィルムであっても良い。樹脂フィルム13がポリエチレンの場合も、シーラント層23は、ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリエチレンもしくは、グリシジルメタクリレート等のエポキシ官能基を有するモノマーで変性されたポリエチレン単体であってもよく、さらに、これとポリエチレン及びその共重合体との多層フィルムでもよい。この場合は、電解液と接触する面に、無水マレイン酸やアクリル酸の共重合体、グリシジルメタクリレート等で変性されたポリエチレンなどであっても良い。
【0030】
本発明が用いられる非水系電池としては、2次電池であるリチウムイオン電池や電気二重層キャパシタなどの電解液に有機電解質を使用したものが挙げられる。有機電解質としては、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチレンカーボネートなどの炭酸エステル類を媒質とするものが一般的であるが、特にこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
(測定方法)
・電極リード線部材の金属製平板とシーラント層との接着強度の測定方法:シーラント層の上にアルミラミネートフィルムをヒートシールした測定サンプルを用いて、JIS C6471「フレキシブルプリント配線板用銅張積層板試験方法」に規定された測定方法により測定した。
・電解液強度保持率の測定方法:電池外装用積層体を用いて、50×50mm(ヒートシール幅が5mm)の4方袋に製袋して、その中にLiPF
6を1mol/リットル添加したPC/DEC電解液に純水を0.5wt%添加して、それを2cc計量し、充填して包装した。この4方袋の中に、電極リード線部材の金属製平板の外表面の一部に保護層をディスペンサー方式にて印刷した。その保護層の上に、ヒートシールによりシーラント層が積層された電極リード線部材を入れて、60℃のオーブンに100時間保管後、電極リード線部材の保護層とシーラント層との層間接着強度(k2)を測定する。
ここで、事前に測定しておいた、電解液に暴露する前の保護層とシーラント層であるポリプロピレン(PP)フィルムとの層間接着強度(k1)と、電解液に暴露した後の層間接着強度(k2)との比率を電解液強度保持率K=(k2/k1)×100(%)とした。
(測定装置)
・接着強度の測定装置:島津製作所製、型式:AUTOGRAPH AGS‐100A引張試験装置
【0032】
(実施例1)
リチウム電池用の電極リード線部材の金属製平板として、厚みが200μmのアルミ板を50mm×60mmの寸法に切断したアルミ片を用いた。脱脂洗浄したこのアルミ片の表面に、ポリビニルアルコール系樹脂(日本合成化学(株)製)を3wt%、及びフッ化クロム(III)を1wt%溶かした水溶液を用いて、乾燥後の厚みが1μmとなるように、10mm幅型のディスペンサーにて両面塗布し、保護層を積層した。更に、200℃のオーブンにて加熱乾燥し、保護層の樹脂を、焼き付けると同時に架橋化させた。この時に、金属製平板の両表面の表層だけでなく、金属製平板の側縁部(両端面)も保護層が形成されていることを確認した。
さらに、この金属製平板の外表面の保護層の表面上に、無水マレイン酸変性ポリプロピレンフィルムの単層フィルム(三井化学製ポリプロピレン系樹脂、品名/アドマーQE060を、フィルム製膜機で100μmに製膜したフィルムを使用)を、ヒートシールにて両面接合し、実施例1の電極リード線部材を得た。
実施例1の電極リード線部材のシーラント層の上にアルミ箔(厚み20μm)/無水マレイン酸変性ポリプロピレンフィルム(厚み100μm)からなる、厚みが120μmのアルミラミネートフィルムをヒートシールして、実施例1の電極リード線部材を用いた測定サンプルを作製した。
この実施例1の測定サンプルから接着強度測定用の試験片を採取し、金属製平板とシーラント層との接着強度を測定したところ、46N/inchの接着強度を示した。
また、実施例1の測定サンプルについて、電解液強度保持率Kを測定した結果は、K=88%であった。
【0033】
(実施例2)
リチウム電池用の電極リード線部材の金属製平板として、厚みが200μmの銅板片(寸法50mm×60mm)の表面にニッケルスルファミン酸メッキを2〜5μmの厚みで施して、その一部に、ポリビニルアルコール系樹脂(日本合成化学(株)製)を3wt%、及びフッ化クロム(III)を1wt%溶かした水溶液を用いて、乾燥後の厚みが1μmとなるように塗布し、保護層を積層した。更に、200℃のオーブンにて加熱乾燥し、保護層の樹脂を、焼き付けると同時に架橋化させた。
さらに、この金属製平板の外表面の保護層の表面上に、無水マレイン酸変性ポリプロピレンフィルム単層(三井化学製ポリプロピレン系樹脂、品名/アドマーQE060を、フィルム製膜機で100μmに製膜したフィルムを使用)をヒートシールにより、両面熱接合して、実施例2の電極リード線部材を得た。
実施例2の電極リード線部材を用いて、実施例1と同様にアルミラミネートフィルムをヒートシールして実施例2の測定サンプルを得て、金属製平板とシーラント層との接着強度を測定したところ、44N/inchの接着強度を示した。
また、実施例2の電池収納容器の一部分について、電解液強度保持率Kを測定した結果は、K=78%であった。
【0034】
(実施例3)
金属製平板の一部に塗布する水溶液として、ポリビニルアルコール系樹脂(日本酢ビ・ポバール(株)製)を2wt%、及びフッ化クロム(III)を2wt%溶かした水溶液を用いて、乾燥後の厚みが0.8μmとなるように塗布し、保護層を積層した以外は、実施例2と同様にして、実施例3の電極リード線部材及び測定サンプルを得た。
実施例3の電極リード線部材及び測定サンプルについて、金属製平板とシーラント層との接着強度を測定したところ、44N/inchの接着強度を示した。
また、実施例3の電池収納容器の一部分について、電解液強度保持率Kを測定した結果は、K=74%であった。
【0035】
(実施例4)
金属製平板の一部に塗布する水溶液として、ポリビニルアルコール系樹脂(日本カーバイド工業(株)製)を2wt%、及びフッ化クロム(III)を2wt%溶かした水溶液を用いて、乾燥後の厚みが0.8μmとなるように塗布し、保護層を積層した以外は、実施例2と同様にして、実施例4の電極リード線部材及び測定サンプルを得た。
実施例4の電極リード線部材及び測定サンプルについて、金属製平板とシーラント層との接着強度を測定したところ、46N/inchの接着強度を示した。
また、実施例4の電池収納容器の一部分について、電解液強度保持率Kを測定した結果は、K=77%であった。
【0036】
(比較例1)
アルミ板に、保護層を積層しない以外は実施例1と同様にして、比較例1の電極リード線部材及び測定サンプルを得て、金属製平板とシーラント層との接着強度を測定したところ、54N/inchの接着強度を示した。また、比較例1の測定サンプルについて、電解液強度保持率Kを測定した結果は、K=10%以下であった。
【0037】
(比較例2)
リチウム電池用の電極リード線部材の金属製平板として、厚みが200μmの銅板片(寸法50mm×60mm)の表面に2〜5μm程度のスルファミン酸ニッケルメッキを施して、その一部に、ポリビニルアルコール系樹脂(日本合成化学(株)製)を3wt%、及びフッ化クロム(III)を1wt%混ぜた塗料を用いて、乾燥後の厚みが1μmとなるように塗布し、保護層を積層した。その積層後に加熱乾燥の処理をしなかった以外は、実施例1と同様にして比較例2の電極リード線部材及び測定サンプルを得た。
比較例2の電極リード線部材及び測定サンプルについて、金属製平板とシーラント層との接着強度を測定したところ、46N/inchの接着強度を示した。また、比較例2の測定サンプルについて、電解液強度保持率Kを測定した結果は、K=10%以下であった。電解液強度保持率の測定後には、電解液への暴露のため、電極リード線部材の金属製平板とシーラント層とが剥離現象(デラミ)を起した。
【0038】
以上の結果を、表1にまとめて示す。表1において、「電極リード線部材の金属製平板とシーラント層との接着強度」は、単に「接着強度」とした。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1および実施例2は、ポリビニルアルコール系樹脂として日本合成化学(株)製を使用した。実施例3は、ポリビニルアルコール系樹脂として日本酢ビ・ポバール(株)製を使用した。実施例4は、ポリビニルアルコール系樹脂として日本カーバイド工業(株)製を使用した。実施例1〜4において、これらのポリビニルアルコール系樹脂を3wt%又は2wt%、及びフッ化クロム(III)を1wt%又は2wt%混ぜた塗料を用いて、電極リード線部材の金属製平板に塗布し、保護層を形成していることから、電極リード線部材の金属製平板とシーラント層との接着強度が40N/inch以上である。また、シーラント層と金属製平板との間に保護層を塗布した電極リード線部材は、リチウム電池の電解液に対しても耐性があり、耐圧強度も高かった。
一方、比較例1は、電極リード線部材に保護層を形成しなかった場合であるが、電極リード線部材の金属製平板とシーラント層との接着強度は、54N/inchと高い値であるが、電解液強度保持率Kが10%以下であり電解液耐性が無い。
また、比較例2は、電極リード線部材に保護層を塗布してもその加熱乾燥をしなかった場合であるが、電極リード線部材の金属製平板とシーラント層との接着強度は、46N/inchであるが、電解液強度保持率Kが10%以下であり電解液耐性が無い。