(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体のガラス転移温度が、前記(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体のガラス転移温度よりも低く、かつ、前記(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体のガラス転移温度が−40℃以下であり、前記(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体のガラス転移温度が−50℃以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の押出成形又はブロー成形用ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載のPAS樹脂組成物により、押出成形性や柔軟性に劣るといった問題は解消された。しかし、当該PAS樹脂組成物を−40℃程度となる冷却配管等に適用すると、十分な靭性が得られず、改善の余地が残されていた。
一方、
PAS樹脂に対して、無作為にオレフィン系共重合体を併用すると、分散不良により、押出成形又はブロー成形に用いる樹脂ペレット作製時に押出機のベントホールから原料が漏れ出す現象、いわゆるベントアップが発生するという問題がある。また、押出成形又はブロー成形により得られる成形品の表面に膨れが発生したりするため生産性が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その課題は、低温下での靭性に優れ、かつ、押出機によるペレット作製時のベントアップが抑えられ、良好な外観を有する成形品の成形が可能な押出成形又はブロー成形用ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エポキシ基含有オレフィン系
共重合体を含むPAS樹脂組成物において、特定のエポキシ基非含有オレフィン系
共重合体を特定の割合で併用すると、押出成形性・ブロー成形性を維持しつつ、低温での靭性のさらなる向上を図ることができることを見出しなされたものである。
前記課題を解決する本発明の一態様は以下の通りである。
【0009】
(1)樹脂成分として、(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂と、(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体と、(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体とを含有し、 前記樹脂成分の含有量が95質量%以上であり、
前記(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対する、前記(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体及び前記(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体の合計含有量が33〜55質量部であり、かつ、前記(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対する前記(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体の含有量が5〜20質量部であり、
前記(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体が、α−オレフィン由来の構成単位と、α,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位とを含み、かつ、前記(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位中のアルコール残基の炭素数が2
〜20であり、
前記(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体が、α−オレフィン由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位とを含み、かつ、前記(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位中のアルコール残基の炭素数が2〜20であり、前記(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体に対する、前記(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有率が30〜40質量%である、押出成形又はブロー成形用ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
【0010】
(2)前記(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂のピーク分子量が50000以上である、前記(1)に記載の押出成形又はブロー成形用ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
【0011】
(3)前記(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体のガラス転移温度が、前記(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体のガラス転移温度よりも低く、かつ、前記(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体のガラス転移温度が−40℃以下であり、前記(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体のガラス転移温度が−50℃以下である、前記(1)又は(2)に記載の押出成形又はブロー成形用ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
【0012】
(4)ISO179/1eAに従って測定される、−40℃におけるノッチ付きシャルピー衝撃強さが25kJ/m
2以上である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の押出成形又はブロー成形用ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
【0013】
(5)ISO527−1,2に従って測定される引張破壊呼び歪みが20%以上である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の押出成形又はブロー成形用ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
【0014】
(6)さらに、酸化防止剤、離型剤、腐食防止剤、及び核剤からなる群より選択される1種以上を含む、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の押出成形又はブロー成形用ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低温での靭性に優れ、かつ、押出機によるペレット作製時のベントアップが抑えられ、良好な外観を有する成形品の成形が可能な押出成形又はブロー成形用ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態の
押出成形又はブロー成形用ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物(以下、「PAS樹脂組成物」とも呼ぶ。)は、樹脂成分として、(A)PAS樹脂と、(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体と、(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体とを含有する。そして、樹脂成分の含有量が95質量%以上である。また、(A)PAS樹脂100質量部に対する、(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体及び(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体の合計含有量が33〜55質量部であり、かつ、(A)PAS樹脂100質量部に対する(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体の含有量が5〜20質量部である。さらに、(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体が、α−オレフィン由来の構成単位と、α,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位とを含み、かつ、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位中のアルコール残基の炭素数が2〜20である。さらに、(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体が、α−オレフィン由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位とを含み、かつ、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位中のアルコール残基の炭素数が2〜20であり、(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体に対する、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有率が30〜40質量%である。
【0017】
(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体は
、PAS樹脂との相溶性が高く、PAS樹脂と併用することで押出成形・ブロー成形を良好に行うことができ、さらには靭性の向上にも寄与する。本実施形態においては、低温下での靭性を向上させるため、(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体を併用しつつ、それらの含有率を特定の範囲に設定することで、低温での靭性、優れた押出成形性・ブロー成形性の実現を図っている。一方、(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体
単独では、PAS樹脂との相溶性に劣り、低温下での靭性の向上を図ることができない。また、分散不良により、成形品の表面に膨れが発生したり、押出機によるペレット作製時にベントアップが発生したりする。
尚、低温下での靭性とは、ISO179/1eAに従って測定される、−40℃におけるノッチ付きシャルピー衝撃強さが25kJ/m
2以上であることをいう。
以下に、本実施形態のPAS樹脂組成物の各成分について説明する。
【0018】
[(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂]
PAS樹脂は、機械的性質、電気的性質、耐熱性その他物理的・化学的特性に優れ、且つ加工性が良好であるという特徴を有する。
PAS樹脂は、主として、繰返し単位として−(Ar−S)−(但しArはアリーレン基)で構成された高分子化合物であり、本実施形態では一般的に知られている分子構造のPAS樹脂を使用することができる。
【0019】
上記アリーレン基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’−ジフェニレンスルフォン基、p,p’−ビフェニレン基、p,p’−ジフェニレンエーテル基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基等が挙げられる。PAS樹脂は、上記繰返し単位のみからなるホモポリマーでもよいし、下記の異種繰返し単位を含んだコポリマーが加工性等の点から好ましい場合もある。
【0020】
ホモポリマーとしては、アリーレン基としてp−フェニレン基を用いた、p−フェニレンサルファイド基を繰返し単位とするポリフェニレンサルファイド樹脂が好ましく用いられる。また、コポリマーとしては、前記のアリーレン基からなるアリーレンサルファイド基の中で、相異なる2種以上の組み合わせが使用できるが、中でもp−フェニレンサルファイド基とm−フェニレンサルファイド基を含む組み合わせが特に好ましく用いられる。この中で、p−フェニレンサルファイド基を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含むものが、耐熱性、成形性、機械的特性等の物性上の点から適当である。また、これらのPAS樹脂の中で、2官能性ハロゲン芳香族化合物を主体とするモノマーから縮重合によって得られる実質的に直鎖状構造の高分子量ポリマーが、特に好ましく使用できる。尚、本実施形態に用いるPAS樹脂は、異なる2種類以上の分子量のPAS樹脂を混合して用いてもよい。
【0021】
尚、直鎖状構造のPAS樹脂以外にも、縮重合させるときに、3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物等のモノマーを少量用いて、部分的に分岐構造又は架橋構造を形成させたポリマーや、低分子量の直鎖状構造ポリマーを酸素等の存在下、高温で加熱して酸化架橋又は熱架橋により溶融粘度を上昇させ、成形加工性を改良したポリマーも挙げられる。
【0022】
本実施形態に使用する基体樹脂としてのPAS樹脂の溶融粘度(310℃・せん断速度1200sec
−1)は、上記混合系の場合も含め、機械的物性と流動性のバランスの観点から、80〜250Pa・sのものを用いる。PAS樹脂は、90〜200Pa・sが好ましく、100〜190Pa・sがより好ましく、100〜180Pa・sが特に好ましい。
【0023】
低温下における靭性の向上及び所望の引張破壊呼び歪みを示すPAS樹脂組成物を得やすいことから、PAS樹脂のピーク分子量は50000以上が好ましく、55000以上がより好ましい。また、所望する引張破壊呼び歪みと、良好な押出成形性・ブロー成形性との両立の点から、PAS樹脂のピーク分子量は、100000以下が好ましく、80000以下がより好ましい。
【0024】
PAS樹脂のピーク分子量は、高温ゲル浸透クロマトグラフ法により、標準ポリスチレン換算された分子量分布のピークトップの分子量として測定することができる。高温ゲル浸透クロマトグラフ法では、例えば、(株)センシュー科学製のSSC−7000等の装置(UV検出器:検出波長360nm)を用いて測定することができる。測定用の試料は、PAS樹脂を、溶媒である1−クロロナフタレンに230℃10分の条件で濃度0.05質量%となるように溶解させたものを用いることができる。また、PAS樹脂のピーク分子量は、周知の方法に従って、PAS樹脂の製造時の重合条件を調整することによって調整することができる。
【0025】
尚、本実施形態のPAS樹脂組成物は、その効果を損なわない範囲で、樹脂成分として、上述のPAS樹脂に加えて、その他の樹脂成分を含有してもよい。その他の樹脂成分としては、特に限定はなく、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶樹脂、弗素樹脂、環状オレフィン系樹脂(環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー等)、熱可塑性エラストマー、シリコーン系ポリマー、各種の生分解性樹脂等が挙げられる。また、2種類以上の樹脂成分を併用してもよい。その中でも、機械的性質、電気的性質、物理的・化学的特性、加工性等の観点から、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、液晶樹脂等が好ましく用いられる。
【0026】
[(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体]
本実施形態において、(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体は、α−オレフィン由来の構成単位と、α,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位とを含む。また、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位中のアルコール残基の炭素数が2〜20である。当該エポキシ基含有オレフィン系共重合体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
以下、各構成単位について説明する。尚、以下において、(メタ)アクリル酸エステルを(メタ)アクリレートともいう。例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルをグリシジル(メタ)アクリレートともいう。また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸との両方を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとの両方を意味する。
【0027】
(α−オレフィン由来の構成単位)
α−オレフィンとしては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等が挙げられ、特にエチレンが好ましい。α−オレフィンは、1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。α−オレフィン由来の構成単位の含有量は、特に限定されないが、例えば、(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体中、40〜98質量%とすることができる。(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体がα−オレフィン由来の構成単位を共重合成分として含むことで、樹脂部材には可撓性が付与されやすい。
【0028】
(α,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位)
α,β−不飽和酸のグリシジルエステルとしては、特に限定されず、例えば、以下の一般式(1)に示される構造を有するものを挙げることができる。
【0029】
【化1】
(但し、R
1は、水素原子又は炭素原子数1以上10以下のアルキル基を示す。)
【0030】
上記一般式(1)で示される化合物としては、例えば、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、エタクリル酸グリシジルエステル等が挙げられ、特にメタクリル酸グリシジルエステルが好ましい。α,β−不飽和酸のグリシジルエステルは、1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体に対するα,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位の含有比率は、流動性の向上の観点から、3.0〜12.0質量%であることが好ましく、5.0〜10.0質量%がより好ましい。尚、2種以上を併用した場合の(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体に対するα,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位の含有比率は、混合後の(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体全量に対するα,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位の含有比率である。
【0031】
((メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位)
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステルは、アルコール残基の炭素数が2〜20のものである。当該炭素数が2未満であると低温環境下での靭性を高めることが難しくなり、アルコール残基の炭素数が20を超える(メタ)アクリル酸エステルは入手が困難であり、原料のコストアップ等の原因となる。当該炭素数は、好ましくは4〜10であり、より好ましくは4〜8である。当該(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−n−ノニル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ペンチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸−n−ヘプチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸−n−ノニル等のメタクリル酸エステルが挙げられる。中でも、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、及びアクリル酸−n−オクチルが好ましく、特にアクリル酸−n−ブチルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有量は、(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体中1〜50質量%以下とすることが好ましい。上記含有量を1質量%以上にすることで、低温環境下での靱性をより高めることができるとともに、50質量%以下にすることで、耐熱性が低下することを抑制することができる。下限値は、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上とすることができ、上限値は、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、又は30質量%以下とすることができる。中でも、5〜45質量%以下であることがより好ましく、10〜40質量%以下であることがさらに好ましく、15〜35質量%以下であることが特に好ましい。
尚、本実施形態においてアルコール残基とは、(メタ)アクリル酸エステルのうち、エステル結合を形成しているアルコール由来の部位のことを指す。
【0032】
(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体は、従来公知の方法で共重合を行うことにより製造することができる。例えば、通常よく知られたラジカル重合反応により共重合を行うことによって、上記オレフィン系共重合体を得ることができる。オレフィン系共重合体の種類は、特に問われず、例えば、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0033】
本実施形態に用いる(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体は、その効果を害さない範囲で、他の共重合成分由来の構成単位を含有することができる。
【0034】
(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体としては、例えば、エチレン−グリシジルメタクリレート−エチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−プロピルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−ペンチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−ヘキシルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−ヘプチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−オクチルアクリレート共重合体等が挙げられ、エチレン−グリシジルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−ペンチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−ヘキシルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−ヘプチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−オクチルアクリレート共重合体が好ましく、中でも、エチレン−グリシジルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体が好ましい。エチレン−グリシジルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体の具体例としては、「LOTADER(登録商標) AX8700」(アルケマ(株)製)、「LOTADER(登録商標) AX8750」(アルケマ(株)製)等が挙げられる。
【0035】
(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体のガラス転移温度は、低温下での靭性向上の観点から−40℃以下であることが好ましく、−70〜−40℃がより好ましい。尚、(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体のガラス転移温度よりも(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体のガラス転移温度の方が低いことが好ましい。
【0036】
本実施形態のPAS樹脂組成物中の(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体の含有量については後述する。
【0037】
[(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体]
本実施形態において、(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体は、α−オレフィン由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位とを含む。そして、エポキシ基非含有オレフィン系共重合体に対する、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有率が30〜40質量%である。
(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体に含まれる、α−オレフィン由来の構成単位、及び(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位は、それぞれ、(B)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体において説明したものと同じである。
尚、(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体において、(メタ)アクリル酸エステルは、アルコール残基の炭素数が2〜20のものである。当該炭素数が2未満であると低温環境下での靭性を高めることが難しく、アルコール残基の炭素数が20を超える(メタ)アクリル酸エステルは入手が困難であり、原料のコストアップ等の原因となる。当該炭素数は、好ましくは4〜10であり、より好ましくは4〜8である。
【0038】
(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体に対する、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有率が30〜40質量%であるが、当該構成単位の含有率が30質量%未満であると、低温環境下での靭性を高めることが難しく、40質量%を超えると、ペレット作製時のハンドリング性が悪くなる可能性が生じる。当該構成単位の含有率は、31〜39質量%が好ましく、32〜38質量%がより好ましい。
【0039】
(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体としては、例えば、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−プロピルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−ペンチルアクリレート共重合体、エチレン−ヘキシルアクリレート共重合体、エチレン−ヘプチルアクリレート共重合体、エチレン−オクチルアクリレート共重合体等が挙げられ、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−ペンチルアクリレート共重合体、エチレン−ヘキシルアクリレート共重合体、エチレン−ヘプチルアクリレート共重合体、エチレン−オクチルアクリレート共重合体が好ましく、中でも、エチレン−ブチルアクリレート共重合体が好ましい。エチレン−ブチルアクリレート共重合体の具体例としては、「LOTRYL(登録商標) 35BA40T」(アルケマ(株)製)等が挙げられる。
【0040】
(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体のガラス転移温度は、低温下での靭性向上の観点から−50℃以下であることが好ましく、−70〜−50℃であることがより好ましい。また、上述した通り、(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体のガラス転移温度は、(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体のガラス転移温度よりも低いことが好ましい。
【0041】
(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体に含まれる(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位は、(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体に含まれる(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位と同じであることが好ましい。例えば、(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体及び(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体のいずれにおいても、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位はブチルアクリレートであることが好ましい。
【0042】
本実施形態のPAS樹脂組成物は、樹脂成分として以上の(A)〜(C)を含有する。そして、当該樹脂成分の含有量は95質量%以上であり、96質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上が特に好ましい。本実施形態のPAS樹脂組成物において、樹脂成分以外の成分としては後述する他の成分及び/又は充填材が挙げられる。
【0043】
また、本実施形態において、(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対する、(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体及び(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体の合計含有量は33〜55質量部である。当該合計含有量が33質量部未満であると、低温環境下での靭性を高めることが難しく、55質量部を超えると、押出機によるペレット作製時のベントアップ、成形品表面の膨れ、ガス成分の増加、流動性の低下等の問題が起こり得る。当該合計含有量は、37〜55質量部が好ましく、39〜54質量部がより好ましい。
さらに、(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対する(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体の含有量が5〜20質量部である。(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体の含有量が5質量部未満であると、低温環境下での靭性を高めることが難しく、20質量部を超えると、成形品の表面に膨れが発生したり、押出機によるペレット作製時にベントアップが発生したりする。(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体の含有量は、6〜18質量部が好ましく、7〜15質量部がより好ましい。
【0044】
[他の成分]
本実施形態のPAS樹脂組成物は、上記成分の他に、その効果を阻害しない範囲で、所望の物性付与のために、従来、PAS樹脂に配合されている種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤の好適な例としては、酸化防止剤、離型剤、腐食防止剤、及び核剤からなる群より選択される1種以上が挙げられる。添加剤の使用量は、PAS樹脂組成物の全質量に対して、樹脂成分の質量の比率が95質量%以上である限りにおいて特に限定されない。
【0045】
[充填材]
本実施形態のPAS樹脂組成物は、その効果を阻害しない範囲で、充填材を含んでいてもよい。PAS樹脂組成物の引張破壊呼び歪みが低下しないようにするため、PAS樹脂組成物における充填材の含有量は、5質量%未満であり、3質量
%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0質量%が特に好ましい。充填材の含有量が5質量%未満であると、ISO527−1,2に従って測定される引張破壊呼び歪みが20%以上とすることができる。
【0046】
充填材の具体例としては、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、及び金属繊維(例えば、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、銅繊維、及び真鍮繊維等)等の無機繊維;ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維、及びアクリル樹脂繊維等の有機繊維;シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ硅酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、硅藻土、及びウォラストナイト等)、金属酸化物(例えば、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、及びアルミナ等)、炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、及び硫酸バリウム等)、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、及び各種金属粉末等の粉末状無機充填材;マイカ、ガラスフレーク、及び各種の金属箔等の板状充填材が挙げられる。これらの無機充填材は、2種以上を併用することができる。
【0047】
<押出成形品・ブロー成形品>
本実施形態のPAS樹脂組成物は、押出成形品又はブロー成形品に適用するのが好適である。当該押出成形品又はブロー成形品は、上述のPAS樹脂組成物を用い、押出成形又はブロー成形を行うことにより製造される。上述したPAS樹脂組成物を材料として用いることを除いては、一般的な押出成形品と同様である。
【0048】
押出成形品の製造方法は特に限定されない。例えば、円筒状の配管は、チューブ用のダイスを用いて押出成形される。押出成形品が配管である場合、多層配管であっても、単層配管であってもよい。配管を、ニップル等の管継手に押し込んでも、ひび割れや裂けが生じにくいことから、配管は、前述のPAS樹脂組成物からなる単層配管であることが好ましい。
【0049】
本実施形態のPAS樹脂組成物は、上述の通り、低温下での靭性に優れるため、その押出成形品、ブロー成形品としては、冷却配管等に適用することが好ましい。また、押出機によるペレット作製時のベントアップを低減でき、また押出成形又はブロー成形により得られる成形品表面に膨れ等がなく外観が良好である。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例により本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。尚、特に断りがない限り、原料は市販品を用いた。
【0051】
[実施例1〜4、比較例1〜12]
各実施例・比較例において、表1に示す各原料成分をドライブレンドした後、シリンダー温度320℃の二軸押出機に投入して(ガラス繊維は押出機のサイドフィード部より別添加)、溶融混練し、ペレット化した。尚、表1において、各成分の数値は質量部を示す。また、使用した各原料成分の詳細を以下に示す。
【0052】
(A)PAS樹脂((A)成分)
・PPS樹脂1:溶融粘度130Pa・s(せん断速度:1200sec
−1、310℃)、ピーク分子量:65000
・PPS樹脂2:特開2006−63255号公報の実施例1に記載のPPS樹脂1、ピーク分子量:41000
【0053】
(PPS樹脂の溶融粘度の測定)
上記PPS樹脂の溶融粘度は以下のようにして測定した。
(株)東洋精機製作所製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmLのフラットダイを使用し、バレル温度310℃、せん断速度1200sec
−1での溶融粘度を測定した。
【0054】
(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体((B)成分)
・エポキシ基含有オレフィン系共重合体1:アルケマ(株)製、LOTADERAX8750、E70%−GMA5%−BA25%、ガラス転移温度:−45℃
・エポキシ基含有オレフィン系共重合体2:アルケマ(株)製、LOTADERAX8700、E67%−GMA8%−BA25%、ガラス転移温度:−45℃
・エポキシ基含有オレフィン系共重合体3:住友化学(株)製、ボンドファースト7M、E67%−GMA6%−MA27%、ガラス転移温度:−33℃
・エポキシ基含有オレフィン系共重合体4:住友化学(株)製、ボンドファースト7L、E70%−GMA3%−MA27%、ガラス転移温度:−33℃
尚、上記各エポキシ基含有オレフィン系共重合体において、Eはエチレン(α−オレフィン由来の構成単位)を、GMAはグリシジルメタクリレート(α,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位)を、BAはブチルアクリレート((メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位)を、MAはメチルアクリレートを示す。また、それぞれの構成単位に付された百分率の数値は各構成単位の質量百分率を示す。以下の(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体においても同様である。
【0055】
(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体((C)成分)
・エポキシ基非含有オレフィン系共重合体1:アルケマ(株)製、LOTRYL35BA40T、E65%−BA35%、ガラス転移温度:−55℃
・エポキシ基非含有オレフィン系共重合体2:ダウ・ケミカル日本(株)製、ENGAGE8842、E−1ーオクテン共重合体、ガラス転移温度:−61℃
・エポキシ基非含有オレフィン系共重合体3:三井化学(株)製、タフマーMH7020、無水マレイン酸変性E−ブテン、ガラス転移温度:−65℃
・エポキシ基非含有オレフィン系共重合体4:アルケマ(株)製、LOTRYL29MA03、E71%−MA29%、ガラス転移温度:−33℃
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
[評価]
得られた各実施例・比較例のペレットを用いて以下の評価を行った。
(1)−40℃シャルピー衝撃強さ(ノッチ付き)
射出成形機で、シリンダー温度320℃、金型温度150℃でISO179/1eAに準じてシャルピー衝撃試験片を成形し、所定の温度雰囲気下に1時間以上放置後、−40℃にてシャルピー衝撃強さ(ノッチ付き)を測定した。測定結果を表1及び表2に示す。尚、当該シャルピー衝撃強さが25kJ/m
2以上であると低温下における靭性が高いと言える。
【0059】
(2)引張破壊呼び歪み
射出成形により、シリンダー温度320℃、金型温度150℃で、ISO3167に準じた試験片(幅10mm、厚み4mmt)を作製した。この試験片を用い、ISO527−1,2に準じて引張り破壊呼び歪み(%)を測定した。引張り破壊呼び歪み(%)が100以上を「A」、50以上〜100未満を「B」、20以上〜50未満を「C」、20未満を「D」として評価した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0060】
(3)成形品表面の膨れ
射出成形により、シリンダー温度320℃、金型温度150℃で、ISO3167に準じた試験片を作製した。この試験片の外観を目視観察し、膨れや剥離の箇所の個数が0の場合を「A」、3個未満の場合を「B」、3個以上の場合を「D」として評価した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0061】
(4)押出機によるペレット作製時のベントアップ
二軸押出機によりシリンダー温度320℃、吐出量20kg/hr、スクリュー回転数200rpmで押出して、ペレットを作製する際に、30分以上ダイ近傍のベント穴から樹脂が漏れ出してこない場合を「A」、10分以上30分未満押出を継続した場合にベント穴から樹脂が漏れ出してくる場合を「B」、10分未満でベント穴から樹脂が漏れ出してくる場合を「D」として評価した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0062】
表1、表2より、実施例1〜4はいずれの評価結果も満足できる結果であった。すなわち、実施例1〜4のPAS樹脂組成物はいずれも、低温での靭性に優れ、かつ、押出機によるペレット作製時のベントアップが抑えられ、良好な外観の成形品を成形可能であることが分かる。これに対して、比較例1〜12は、すべての評価結果を同時に良好な結果とすることができなかった。例えば、(C)成分を用いていない比較例1は、低温での靭性に劣り、(B)成分を用いていない比較例2は、押出機によるペレット作製時のベントアップが見られ、良好な外観の成形品が得られなかった。また、(C)成分においてのみ実施例2と異ならせた比較例3〜5は低温での靭性に劣っていた。さらに、(B)成分及び(C)成分の合計含有量が33質量部に満たない比較例6及び12は、低温での靭性に劣っていた。さらに、ガラス繊維を添加し、樹脂成分の含有量が95質量%に満たない比較例7は、引張破壊呼び歪みに劣っていた。さらに、(B)成分の構成単位として、メチルアクリレート(アルコール残基の炭素数:1)を含むものを用いた比較例8及び9は、低温での靭性に劣っていた。さらに、(B)成分及び(C)成分の合計含有量が55質量部を超えた比較例10は、押出機によるペレット作製時のベントアップが見られた。さらに、(C)成分の含有量が20質量部を超えた比較例11は、押出機によるペレット作製時のベントアップが見られ、良好な外観の成形品が得られなかった。
【課題】低温での靭性に優れ、かつ、押出機によるペレット作製時のベントアップが抑えられ、良好な外観の成形品の成形が可能な押出成形又はブロー成形用ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂成分として、(A)PAS樹脂と、(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体と、(C)エポキシ基非含有オレフィン系共重合体とを含有し、樹脂成分の含有量が95質量%以上であり、(A)樹脂成分100質量部に対する、(B)成分及び(C)成分の合計含有量が33〜55質量部であり、かつ、(A)成分100質量部に対する(C)成分の含有量が5〜20質量部であり、(B)成分及び(C)成分が所定の構成単位を所定の含有率で含む押出成形又はブロー成形用PAS樹脂組成物である。