【文献】
Benjamin et al.,Silicon Oxycarbide Beads from Continuously Produced Polysilsesquioxane as Stqble Anode Material for Lithium-ion Batteries,American Chemical Sosiety,2018年,vol.1, iss.6,pp.2961-2970
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(q−1)を含み、該工程(q−1)において上記有機ケイ素化合物を非酸化性ガス雰囲気下で500℃/分以上の昇温速度で800℃以上の温度に加熱し、次いで該温度で1時間以上加熱処理する、請求項16に記載の方法。
工程(q−1)を含み、該工程(q−1)において上記有機ケイ素化合物を非酸化性ガス雰囲気下で500℃/分以上の昇温速度で950℃〜1500℃の範囲にある所定の温度に加熱し、次いで該温度で1時間以上加熱処理する、請求項16又は17に記載の方法。
工程(q−2)を含み、該工程(q−2)において、有機ケイ素化合物を、600℃以下の環境から上記予め800℃以上の温度に加熱された非酸化性ガス雰囲気に移動させることにより該非酸化性ガス雰囲気に暴露し、上記温度で加熱処理する、請求項16〜18の何れか1項に記載の方法。
工程(q−2)を含み、該工程(q−2)において有機ケイ素化合物を予め950℃〜1500℃の範囲にある所定の温度に加熱された非酸化性ガス雰囲気下に暴露し、次いで該温度で1時間以上加熱処理する、請求項16〜19の何れか1項に記載の方法。
上記有機ケイ素化合物が、ロータリーキルン型、ローラーハースキルン型、バッチキルン型、プッシャーキルン型、メッシュベルトキルン型、カーボン炉、トンネルキルン型、シャトルキルン型、台車昇降式キルン型、又はこれらのうち少なくとも2つ以上の組合せで加熱される、請求項16〜20の何れか1項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のとおり、各種電子機器・通信機器の小型化、ハイブリッド自動車等の急速な普及に伴い、これら機器等の駆動電源として採用される二次電池においては、初期効率やサイクル特性等の各種電池特性の更なる向上が常に求められており、とりわけ負極活物質に注目した研究開発は活発である。
【0011】
このような状況の下、本発明者らも特許文献1や特許文献2をはじめとして各種負極活物質を開発しており、特にSiOC複合材料を用いた負極活物質については産業規模の量産に向け、種々の製造工程に注目した検討も重ねている。その製造工程に注目した検討の中で、本発明者らは、原料となるポリシルセスキオキサンを熱処理してSiOC複合材料に変換する際に昇温速度を変化させると、生成されるSiOC複合材料の構造や含有成分等に違いが生じ、更に特定範囲の昇温速度でポリシルセスキオキサンの加熱及び熱処理を行う場合には、特異な構造及び成分組成を有するSiOC系コアシェル構造体が生成させることを発見した。更に加えて、本発明者らは、二次電池において該コアシェル構造体を負極活物質として用いたところ、良好な初期効率(初期容量)を維持しつつ優れたサイクル特性を実現できることも発見した。
即ち、本発明は、上述の発見により完成されたものであり、本発明の課題は、良好な初期効率(初期容量)を維持しつつ優れたサイクル特性を実現できる負極活物質用材料及び該材料の製造方法、並びに該材料を負極活物質として用いた負極用組成物、負極及び二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明によれば以下が提供される。
[1]以下の構成要素(A)及び(B)を含み、かつ条件(i)及び(ii)を満たすコアシェル構造体:
(A)少なくともSi(ケイ素)とO(酸素)とC(炭素)とを構成元素として含有し、かつ結晶性炭素と非晶性炭素とを構成成分として含有するコア;並びに
(B)上記コアを内包し、かつグラフェン層を有するSiOC構造体を含むシェル、
(i)一般式SiOxCy(0.5<x<1.8、1.0<y<5.0)で表される原子組成を有すること、
(ii)粉体抵抗測定により求められる比抵抗が1.0×10
5Ω・cm未満の所定の値であること。
【0013】
[2]粉体抵抗測定により求められる体積抵抗率が1.0Ω・cm以下の所定の値である、[1]に記載のコアシェル構造体。
[3]ラマン分光スペクトルにおける強度比H
G/H
mが1.80以上の所定の値である、[1]又は[2]に記載のコアシェル構造体。
[4]ラマン分光スペクトルにおける強度比H
G/H
mが2.20以上の所定の値である、[1]〜[3]の何れか1つに記載のコアシェル構造体。
【0014】
[5]上記コアと上記シェルとは化学的に結合している、[1]〜[4]の何れか1つに記載のコアシェル構造体。
[6]ラマン分光スペクトルにおいてピーク強度比H
D/H
Gが1.50未満の所定の値である、[1]〜[5]の何れか1つに記載のコアシェル構造体。
[7]C/Siモル比が1.35以上である、[1]〜[6]の何れか1つに記載のコアシェル構造体。
[8]上記コアのC/Siモル比が上記シェルのC/Siモル比よりも小さい、[1]〜[7]の何れか1つに記載のコアシェル構造体。
【0015】
[9]上記シェルは、上記コアの表面に位置する中間層と、該中間層上に位置する表層とを含み、
上記コア、中間層及び表層はそれぞれ、C(炭素)の含有割合の違いで特徴付けられるものであり、(コアのC/Siモル比)<(表層のC/Siモル比)<(中間層のC/Siモル比)の関係を満たす、[1]〜[8]の何れか1つに記載のコアシェル構造体。
[10]略球状粒子の形状を有し、かつ粒子径が100nm〜50μmの範囲にある、[1]〜[9]の何れか1つに記載のコアシェル構造体。
[11][1]〜[10]の何れか1つに記載のコアシェル構造体を負極活物質として含む、負極用組成物。
[12]炭素系導電助剤及び/又は結着剤を更に含む、[11]に記載の負極用組成物。
[13][11]又は[12]に記載の負極用組成物を含む、負極。
【0016】
[14][13]に記載の負極を少なくとも1つ備えた、二次電池。
[15]リチウムイオン二次電池である、[14]に記載の二次電池。
[16]以下の工程(q−1)又は(q−2)を含む、[1]〜[10]の何れか1つに記載のコアシェル構造体を製造する方法:
(q−1)以下の一般式(I)で表されるポリシルセスキオキサン構造を有する有機ケイ素化合物を非酸化性ガス雰囲気下で100℃/分以上の昇温速度で800℃以上の温度に加熱し、次いで該温度で1時間以上加熱処理すること;
(q−2)以下の一般式(I)で表されるポリシルセスキオキサン構造を有する有機ケイ素化合物を予め800℃以上の温度に加熱された非酸化性ガス雰囲気に暴露し、次いで該温度で1時間以上加熱処理すること、
【化1】
式中、R
1及びR
4はそれぞれ独立に、炭素数1から45の置換又は非置換のアルキル、置換または非置換のアリール、及び置換又は非置換のアリールアルキルからなる群から選択され、炭素数の1から45のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン又はシクロアルケニレンで置き換えられてもよいものとし、置換又は非置換のアリールアルキル中のアルキレンにおいて任意の水素はハロゲンで置換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−又はシクロアルキレンで置き換えられてもよく、
R
2、R
3、R
5及びR
6はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜45の置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、及び置換又は非置換のアリールアルキルからなる群から選択され、炭素数の1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン、シクロアルケニレン又は−SiR
12−で置き換えられてもよく、置換又は非置換のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン、シクロアルケニレン又は−SiR
12−で置き換えられてもよく、
nは1以上の整数を示す。
【0017】
[17]工程(q−1)を含み、該工程(q−1)において上記有機ケイ素化合物を非酸化性ガス雰囲気下で500℃/分以上の昇温速度で800℃以上の温度に加熱し、次いで該温度で1時間以上加熱処理する、[16]に記載の方法。
[18]工程(q−1)を含み、該工程(q−1)において上記有機ケイ素化合物を非酸化性ガス雰囲気下で500℃/分以上の昇温速度で950℃〜1500℃の範囲にある所定の温度に加熱し、次いで該温度で1時間以上加熱処理する、[16]又は[17]に記載の方法。
[19]工程(q−2)を含み、該工程(q−2)において、有機ケイ素化合物を、600℃以下の環境から上記予め800℃以上の温度に加熱された非酸化性ガス雰囲気に移動させることにより該非酸化性ガス雰囲気に暴露し、上記温度で加熱処理する、[16]〜[18]の何れか1つに記載の方法。
[20]工程(q−2)を含み、該工程(q−2)において有機ケイ素化合物を予め950℃〜1500℃の範囲にある所定の温度に加熱された非酸化性ガス雰囲気下に暴露し、次いで該温度で1時間以上加熱処理する、[16]〜[19]の何れか1つに記載の方法。
【0018】
[21]上記有機ケイ素化合物が、ロータリーキルン型、ローラーハースキルン型、バッチキルン型、プッシャーキルン型、メッシュベルトキルン型、カーボン炉、トンネルキルン型、シャトルキルン型、台車昇降式キルン型、又はこれらのうち少なくとも2つ以上の組合せで加熱される、[16]〜[20]の何れか1つに記載の方法。
[22]上記非酸化性ガス雰囲気が不活性ガスを含む雰囲気である、[16]〜[21]の何れか1つに記載の方法。
[23]上記非酸化性ガス雰囲気が窒素ガス及び/又はアルゴンガスを含む雰囲気である、[16]〜[22]の何れか1つに記載の方法。
【0019】
[24]上記有機ケイ素化合物が、以下の一般式(II)で表されるポリシルセスキオキサンを含む、[16]〜[23]の何れか1つに記載の方法:
【化2】
式中、R
1及びR
4はそれぞれ独立に、置換又は非置換の炭素数1〜45のアルキル、置換又は非置換のアリール、及び置換又は非置換のアリールアルキルからなる群から選択され、炭素数の1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン又はシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、置換又は非置換のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン又はシクロアルケニレンで置き換えられてもよい。
【0020】
[25]上記有機ケイ素化合物が、以下の一般式(III)で表されるポリシルセスキオキサンを含む、[16]〜[24]の何れか1つに記載の方法:
【化3】
式中、R
1及びR
4はそれぞれ独立に、炭素数1〜45の置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、及び置換又は非置換のアリールアルキルからなる群から選択され、炭素数の1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン又はシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、置換又は非置換のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン、またはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、
R
2、R
3、R
5及びR
6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜45の置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、及び置換又は非置換のアリールアルキルからなる群から選択され、炭素数の1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン、シクロアルケニレン又は−SiR
1 2−で置き換えられてもよく、置換又は非置換のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン、シクロアルケニレン又は−SiR
1 2−で置き換えられてもよく、
nは1以上の整数を示す。
【0021】
[26]上記有機ケイ素化合物が、以下の一般式(IV)で表されるポリシルセスキオキサンを含む、[16]〜[25]の何れか1つに記載の方法:
【化4】
式中、R
1及びR
4はそれぞれ独立に、炭素数1〜45の置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、及び置換又は非置換のアリールアルキルからなる群から選択され、炭素数の1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン又はシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、置換又は非置換のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン、またはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、
R
2、R
3、R
5及びR
6はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜45の置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、及び置換又は非置換のアリールアルキルから選択され、炭素数の1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン、シクロアルケニレンまたは−SiR
1 2−で置き換えられてもよく、置換又は非置換のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン、シクロアルケニレン又は−SiR
1 2−で置き換えられてもよく、
nは1以上の整数を示す。
【0022】
[27](p)以下の一般式(V)で表されるシラン化合物を加水分解及び重縮合させることにより上記有機ケイ素化合物を取得すること、
を更に含む、[16]〜[26]の何れか1つに記載の方法:
R
10Si(R
7)(R
8)(R
9) ・・・ (V)
式中、R
7、R
8及びR
9はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基又は炭素数1〜4のアルキルオキシであり、R
10は、炭素数1〜45の置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、及び置換又は非置換のアリールアルキルからなる群から選択され、炭素数の1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン又はシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、置換又は非置換のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン又はシクロアルケニレンで置き換えられてもよい。
【0023】
[28][1]〜[10]の何れか1つに記載のコアシェル構造体を負極活物質として用いることにより負極用組成物を取得することを含む、負極用組成物を製造する方法。
【0024】
[29][16]〜[27]の何れか1つに記載の方法により製造されるコアシェル構造体。
[30][1]〜[10]の何れか1つに記載のコアシェル構造体である、請求項[29]に記載のコアシェル構造体。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、二次電池において良好な初期効率(初期容量)を維持しつつ優れたサイクル特性を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
<コアシェル構造体>
本発明に係るコアシェル構造体は、以下の構成要素(A)及び(B)を含み、かつ条件(i)及び(ii)を満たすコアシェル構造体である。
(A)少なくともSi(ケイ素)とO(酸素)とC(炭素)とを構成元素として含有し、かつ結晶性炭素と非晶性炭素とを構成成分として含有するコア;並びに
(B)上記コアを内包し、かつグラフェン層を有するSiOC構造体を含むシェル、
(i)一般式SiOxCy(0.5<x<1.8、1.0<y<5.0)で表される原子組成を有すること、
(ii)粉体抵抗測定により求められる比抵抗が1.0×10
5Ω・cm未満の所定の値であること。
【0028】
上述のとおり、本発明に係るコアシェル構造体は、その構造的な特徴として、コア(内核)と、該コアを内包するシェル(外殻)とをそれぞれ順に構成要素(A)及び(B)として含む。
【0029】
ここで、「内包する」とは、上記シェルが上記コアを取り囲んだ構造を言うが、上記コアの表面が部分的に上記シェルに覆われた構造であれば足りる。即ち、「内包する」とは、上記コアの表面が完全に上記シェルで覆われた場合に加え、該シェルに覆われていないコアの表面部分が外部に露出した場合も含む。
【0030】
本発明におけるこのようなコアシェル構造は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察により確認することができる。
この点、上記シェルが上記コアを内包する具体的形態として、
図2のSEMに示されるような構造が例示される。
図2で示される構造では、シェルは、コアの表面を覆う中間層と、該中間層の外側表面に存在する表層とを主要な構成要素として含み、後述のとおり該コア、中間層及び表層はSi、O及びCによる原子組成並びに含有成分の違いによって特徴付けられる。本発明において、このようなコアと、中間層及び表層を含むシェルとで形成されるコアシェル構造体は好ましい実施形態である。
【0031】
なお、本発明において、コアシェル構造体は、ナノないしマイクロメートルスケールの粒子サイズを有する略球状粒子であることが好ましく、この場合、該略球状粒子の粒子径は、より具体的には約1nm〜約990μmの範囲にあってもよく、好ましくは約10nm〜約600μmの範囲にあり、場合により約50nm〜約500μm、約100nm〜約400μmの範囲にあってもよい。更に加えて、本発明に係るコアシェル構造体を負極活物質として利用する場合、実用的な電極厚みの範囲が約10μm〜100μmであることを考慮すると、上記コアシェル構造体の粒子径は、より好ましくは約100nm〜約50μmの範囲、更により好ましくは約500nm〜約10μmである。ここで、コアシェル構造体の形状や粒子サイズ(粒子径)は、SEM観察により確認ないし測定されるものである。
【0032】
さらに加えて、本発明において、上記コアと上記シェルとは化学的に結合していることが好ましい。
より具体的には、本発明のコアシェル構造体は例えば、後述のとおり各種ポリシルセスキオキサンを所定の昇温速度で加熱処理することにより直接的に取得することができる。この場合、ポリシルセスキオキサンの加熱処理によりコアもシェルも直接的に形成されることから、コアとシェルとが、ポリシルセスキオキサンに由来する所定の化学骨格で連結された状態でコアシェル構造体が得られることになる。このような化学骨格としては、Si−O−C、C−C、Si−O、Si−O−Si等を含む化学骨格が挙げられる。
【0033】
この点、本発明のコアシェル構造体は、SiOxCy(0.5<x<1.8、1.0<y<5.0)で表示される元素組成比を有する。xが0.5〜1.8の範囲であれば、ナノドメイン構造が形成された非晶質シリコン酸化物成分が生成され、十分な電池容量が得られる。yの値は、1.0〜5.0とされ、特に限定されるものではないが、例えば1.0〜4.0、1.0〜3.0程度としてもよい。但し、本発明の構造体はグラフェン層が発達している点が特徴の1つであり、この事を考慮すると、これらyの数値範囲は必須の条件ではない。
【0034】
本発明におけるコア及びシェルは何れも、構成元素としてSi(ケイ素)とO(酸素)とC(炭素)とを含有する点は共通する。
しかしながら、コア及びシェルは、これら構成要素に含有される、炭素(C)によって形成される成分に違いがある。即ち、コアは、結晶性炭素と非晶性炭素とを構成成分として含有することにより特徴付けられるものであるのに対し、シェルは、グラフェン層を有すSiOC構造体を構成成分として含有することにより特徴付けられるものである。
【0035】
本発明に係るコアシェル構造体においては、シェル部分でグラフェンの層構造が形成されていることから、当該コアシェル構造体は、粉体抵抗測定及びラマン分光法において一定の特徴を示す。
【0036】
即ち、本発明に係るコアシェル構造体は、粉体抵抗測定において求められる比抵抗が1.0×10
5Ω・cm未満の所定の値であることを要する。更に、該比抵抗は、好ましくは1.0×10
4Ω・cm以下、より好ましくは1.0×10
3Ω・cm以下、更により好ましくは1.0×10
2Ω・cm以下、なお更により好ましくは1.0Ω・cm以下である。粉体抵抗測定において求められる比抵抗がこのような値を取れば、コアシェル構造体は、負極材料として好適な導電性を保持することになる。
【0037】
加えて、比抵抗の下限については、比抵抗が低いほど優れた導電性を実現できるので特に限定されるものでもない。各種グラフェン材料の比抵抗を考慮すると、本発明に係るコアシェル構造体の比抵抗の下限としては、例えば1.0×10
−3Ω・cm以上とすることができる。なお、本発明においては、上述の上限値及び下限値のうちの任意の値と組み合わせた数値範囲を採用することができ、それら比抵抗の数値範囲は、本明細書に実施形態として明確に開示されるものである。
【0038】
更に、粉体抵抗の測定手法は、特に限定はなく当業者において知られる各種手法を採用することができる。例えば、三菱ケミカルアナリテック社製の粉体抵抗測定システムMCP−PD51、低抵抗経路レスタ−GP、高抵抗計ハイレスタ−UX等の市販の粉体抵抗測定装置を用いて測定することもできる。
【0039】
更に、
図4及び5に示すように、本発明のコアシェル構造体をラマン分光法により測定すると、取得されるスペクトルにおいて1590cm
−1付近(Gバンド/グラフェン層)、1325cm
−1付近(Dバンド/非晶性炭素)に散乱がみとめられる。
ここで、Gバンドの強度(ピーク高さ)をH
Gとし、Dバンドの強度(ピーク高さ)をH
Dとする。更に、
図5に示す通り、GバンドとDバントの間の極小点をm点とし、そのm点の強度をH
mとする。
【0040】
強度比H
G/H
mが大きいほど、グラフェン層が発達していることになる。この点、本発明のコアシェル構造体は、ラマンスペクトルにおける強度比H
G/H
mが1.80以上の所定の値であることが好ましく、より好ましくは1.85以上、1.90以上、更により好ましくは2.00以上、2.10以上、2.20以上、特に好ましくは2.30以上、2.40以上、最も好ましくは2.50以上、2.53以上、2.55以上、2.58以上、2.60以上、2.70以上、場合により2.75以上、2.76以上、2.78以上、2.80以上、2.81以上、2.82以上、2.83以上、2.84以上、2.85以上、2.86以上、2.87以上、2.88以上、2.89以上、2.90以上である。強度比H
G/H
mがこのような値であれば、シェル部分においてグラフェン層構造が発達していることになる。
なお、強度比H
G/H
mの上限は特に限定されるものでもないが、例えば7.00以下、6.00以下、5.00以下、場合により4.00以下、4.50以下、3.00以下であり、これらの上限値を上記下限値のうちの任意の値と組み合わせた数値範囲を採用することができ、それら強度比H
G/H
mの数値範囲は、本明細書に実施形態として明確に開示されるものである。
【0041】
更に、本発明のコアシェル構造体は、Dバンドにおけるピーク高さ(H
D)に対するGバンドにおけるピーク高さ(H
G)の比(ピーク高さ比H
D/H
G)が1.50未満であることが好ましい。上述のとおりDバンドは非晶性炭素の存在を示唆し、Gバンドはグラフェン層の存在を示唆するものであるから、ピーク高さ比H
D/H
Gが小さい程、グラフェン層が豊富に存在していることを意味する。即ち、本発明のコアシェル構造体において、ラマンスペクトルにおける強度比H
G/H
mが1.80以上であり、かつピーク高さ比H
D/H
Gが1.50未満であれば、グラフェン層構造が十分な量存在し、本発明所定の効果が確実に得られる。ピーク高さ比H
D/H
Gは、好ましくは1.49以下、より好ましくは1.48以下、1.45以下、更により好ましくは1.42以下、特に好ましくは1.40以下、場合により1.38以下、1.35以下、1.32以下、1.30以下である。
なお、ピーク高さ比H
D/H
Gの下限値は特に限定されるものでもないが、例えば0.30以上、0.40以上、0.50以上、0.60以上、場合により0.70以上、0.80以上、である。加えて、これらの下限値を上記上限値のうちの任意の値と組み合わせた数値範囲を採用することができ、それらピーク高さ比H
D/H
Gの数値範囲は、本明細書に実施形態として明確に開示されるものである。
【0042】
更に、本発明のコアシェル構造体にけるフリー炭素のモル比は、好ましくは1.10以上、より好ましくは1.15以上、更により好ましくは1.18以上、特に好ましくは1.20以上、場合により1.25以上である。
なお、フリー炭素のモル比の計算方法は、以下の実施例に示す通りである。加えて、元素組成分析により取得したSiOCモル比においてフリー炭素のモル比は自ずと決まるものであるから、その上限値は特に限定されるものではないが、高くて2.5程度を示す。
【0043】
更に、特定の実施形態においては、上記コア及びシェルそれぞれについて元素分析をした場合に、これら構成要素におけるケイ素(Si)の含有率(mol%)に対する炭素(C)の含有率(mol%)のモル比率が以下の関係を満たすことが好ましい。
(コアのC/Siモル比)<(シェルのモル比C/Siモル比)
【0044】
更に、特定の実施形態においては、シェルは、上述の通りコアの表面を覆う中間層と、該中間層の外側表面に存在する表層とを含む。この場合、コア、中間層及び表層が以下の関係を満たすことが好ましい。
(コアのC/Siモル比)<(表層のC/Siモル比)<(中間層のC/Siモル比)
【0045】
加えて、コア、中間層及び表層が、上記関係を満たすことに加え、以下の条件(a)及び(b)を満たすことが更に好ましい。
条件(a):コアのC/Siモル比が5.0以下(例えば0.5〜5.0);
条件(b):中間層及び表層のC/Siモル比が8.0以上(例えば8.0〜20.0)。
上述のような条件を満たすコアシェル構造体を二次電池用負極活物質として用いた場合、二次電池において充放電レート特性及びサイクル特性を信頼性良く向上させることができる。
【0046】
更に、コアの元素構成比C:O:Si(モル比)は、好ましくは1.0〜5.0:0.5〜1.8:1.0、より好ましくは1.0〜4.5:0.5〜1.8:1.0、更により好ましくは1.0〜4.0:0.5〜1.8:1.0である。
更に加えて、中間層の元素構成比C:O:Si(モル比)は、好ましくは10.0〜20.0:0.5〜1.8:1.0、より好ましくは11.0〜18.0:0.5〜1.8:1.0、更により好ましくは12.0〜16.0:0.5〜1.8:1.0、特により好ましくは13.0〜16.0:0.5〜1.8:1.0、場合により14.0〜16.0:0.5〜1.8:1.0である。
【0047】
更に加えて、表層の元素構成比C:O:Si(モル比)は、好ましくは8.0〜18.0:0.5〜1.8:1.0、より好ましくは9.0〜16.0:0.5〜1.8:1.0、更により好ましくは、10.0〜15.0:0.5〜1.8:1.0、特に好ましくは11.0〜14.0:0.5〜1.8:1.0、場合により11.0〜13.0:0.5〜1.8:1.0である。
【0048】
なお、本発明のコアシェル構造体、並びにその構成要素となるコア及びシェル(中間層/表層)の元素構成比は、各種測定技術を用いて取得すればよく、特に限定されるものでもない。例えば、オージェ電子分光法(AES)、イオンエッチングを併用したXPS分析やSIMS分析等を用いることができる。
【0049】
更に加えて、本発明のコアシェル構造体は、X線光電子分光法(XPS)によって表面を分析した場合、
図6や以下の実施例の表3にも示される通り炭素比率が高く、更にXPSスペクトルにおけるC1sメインピークが比較的鋭い。XPSスペクトルにおけるC1sメインピークが鋭いということ、並びに291eVにサブピーク構造(シェイクアップピーク)が確認できることから、結晶性炭素の存在が示唆され、グラフェン層構造が発達していることが支持される。したがって、本発明のコアシェル構造体におけるシェルは、グラフェン層を有するSiOC構造体を含むことを特徴としている。
【0050】
本発明のコアシェル構造体をX線光電子分光法(XPS)によって表層を分析した場合に、C:O:Si(Atom%単位)の元素組成比が、好ましくは50.0〜98.0:1.0〜25.0:1.0〜25.0、より好ましくは60.0〜98.0:1.0〜20.0:1.0〜20.0、更により好ましくは70.0〜98.0:1.0〜15.0:1.0〜15.0、特に好ましくは80.0〜98.0:1.0〜10.0:1.0〜10.0、場合により84.0〜98.0:1.0〜8.0:1.0〜8.0、86.0〜98.0:1.0〜12.0:1.0〜12.0、88.0〜98.0:1.0〜6.0:1.0〜6.0、90.0〜98.0:1.0〜5.0:1.0〜5.0である。
【0051】
本発明のコアシェル構造体において、XPSスペクトルにおけるC:O:Si(Atom%単位)の元素組成比が上記範囲にあると、グラフェン層がより高度に発達したシェル(表層)を実現できる。このようなシェルに結晶性炭素と非晶性炭素とを含む黒鉛質炭素を含有してなるコアが内包されたコアシェル構造によれば、当該コアシェル構造体を二次電池用負極活物質として用いた場合、製造される二次電池において良好な充放電レート特性及びサイクル特性を実現できる。
【0052】
<コアシェル構造体の製造方法>
本発明のコアシェル構造体は、具体的には、以下の一般式(I)で表されるポリシルセスキオキサン構造を有する有機ケイ素化合物を不活性雰囲気下で所定の温度に急速に加熱し、次いで該温度で1時間以上熱処理することにより取得することができる。即ち、本発明に係るコアシェル構造体を製造する方法は、以下の工程(q−1)又は(q−2)を含む。
(q−1)以下の一般式(I)で表されるポリシルセスキオキサン構造を有する有機ケイ素化合物を非酸化性ガス雰囲気下で100℃/分以上の昇温速度で800℃以上の温度に加熱し、次いで該温度で1時間以上加熱処理すること;
(q−2)以下の一般式(I)で表されるポリシルセスキオキサン構造を有する有機ケイ素化合物を予め800℃以上の温度に加熱された非酸化性ガス雰囲気に暴露し、次いで該温度で1時間以上加熱処理すること、
【0053】
【化1】
式中、R
1及びR
4はそれぞれ独立に、炭素数1から45の置換又は非置換のアルキル、置換または非置換のアリール、及び置換又は非置換のアリールアルキルからなる群から選択され、炭素数の1から45のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン又はシクロアルケニレンで置き換えられてもよいものとし、置換又は非置換のアリールアルキル中のアルキレンにおいて任意の水素はハロゲンで置換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−又はシクロアルキレンで置き換えられてもよく、
R
2、R
3、R
5及びR
6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜45の置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、及び置換又は非置換のアリールアルキルからなる群から選択され、炭素数の1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン、シクロアルケニレン又は−SiR
12−で置き換えられてもよく、置換又は非置換のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン、シクロアルケニレン又は−SiR
12−で置き換えられてもよく、
nは1以上の整数を示す。
本発明において、「ハロゲン」は、字義通りに理解され、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などを示すが、中でもフッ素または塩素が好ましい。
【0054】
上記有機ケイ素化合物としては、より具体的には、以下の化学式(II)、化学式(III)、化学式(IV)及びそれらの複合構造からなる群から選択される少なくとも1つの構造を有するポリシルセスキオキサンを採用することができる。これらポリシルセスキオキサンは、工程(q−1)又は(q−2)において急速に加熱され、所定時間熱処理されると、上述のようなコアシェル構造体に変換される。
以下、本発明で採用し得るポリシルセスキオキサンの具体例について説明する。
【0055】
まず、一般式(II)で表されるポリシルセスキオキサンは、ケージ型ポリシルセスキオキサンである。
【化2】
式中、R
1およびR
4はそれぞれ独立に、置換又は非置換の炭素数1〜45のアルキル、置換又は非置換のアリール、及び置換又は非置換のアリールアルキルからなる群から選択され、炭素数の1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン又はシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、置換又は非置換のアリールアルキル基中のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン又はシクロアルケニレンで置き換えられてもよい。
【0056】
更に、一般式(II)で表されるケージ型ポリシルセスキオキサンの好ましい具体例としては、一般式(V)〜(X)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
ここで、これらの式中、Meはメチル基を、Phはフェニル基を、Naphthylはナフチル基を表す。
【0057】
更に、一般式化(III)で表される化合物は、梯子型ポリシルセスキオキサンである。
【化4】
式中、R
1及びR
4はそれぞれ独立に、炭素数1〜45の置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、及び置換又は非置換のアリールアルキルからなる群から選択され、炭素数の1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン又はシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、置換又は非置換のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン、またはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、
R
2、R
3、R
5およびR
6はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜45の置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、及び置換又は非置換のアリールアルキルからなる群から選択され、炭素数の1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン、シクロアルケニレン又は−SiR
1 2−で置き換えられてもよく、置換又は非置換のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン、シクロアルケニレン又は−SiR
1 2−で置き換えられてもよく、
nは1以上の整数を示す。
【0058】
一般式(III)で表される梯子型ポリシルセスキオキサンの具体例としては、国際公開第2003/024870号及び国際公開第2004/081084号の各パンフレットに記載された化合物が挙げられ、本発明のコアシェル構造体を生成可能なものであれば何ら限定されることなく用いることができる。
以下に、梯子型ポリシルセスキオキサンの好ましい具体例として一般式(XI)〜(XIII)でそれぞれ表される化合物を示す。
【化5】
ここで、これらの式中、Meはメチル基を、Phはフェニル基を表す。
【0059】
一般式化合物(IV)で合される化合物は、ランダム構造型ポリシルセスキオキサンである。
【化6】
式中、R
1及びR
4はそれぞれ独立に、炭素数1〜45の置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、及び置換又は非置換のアリールアルキルからなる群から選択され、炭素数の1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン又はシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、置換又は非置換のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン、またはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、
R
2、R
3、R
5及びR
6はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜45の置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、及び置換又は非置換のアリールアルキルから選択され、炭素数の1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン、シクロアルケニレンまたは−SiR
1 2−で置き換えられてもよく、置換又は非置換のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン、シクロアルケニレン又は−SiR
1 2−で置き換えられてもよく、
nは1以上の整数を示す。
【0060】
なお、上記一般式(II)、(III)及び(IV)において、R
1およびR
4はそれぞれ独立に、炭素数1〜45の置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、及び置換又は非置換のアリールアルキルからなる群から選択される。より具体的には、R
1およびR
4はそれぞれ独立に、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基、ハロゲン、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、より好ましくはフェニル基やナフチル基等の芳香族基である。
【0061】
上述のとおり、工程(q−1)の態様における熱処理条件については、上記所定の非酸化性雰囲気下で100℃/分以上の昇温速度で800℃以上の温度に加熱し、次いで該温度で1時間以上加熱処理することを必要する。
【0062】
上記のとおり原料となるポリシルセスキオキサンが100℃/分以上の昇温速度で急速に加熱すると、ポリシルセスキオキサンのシェル生成部(表層部)において−Si−フェニル基、−Si−メチル基等の化学基や水素(H
2)の脱離量が増加し、その結果、グラフェン層構造が形成されるものと推測される。
【0063】
つまり、本発明のコアシェル構造体において所定のコアシェル構造を生成する目的から、工程(q−1)において昇温速度は100℃/分以上に調整される。昇温速度は、100℃/分以上である限り、特に限定されるものでもないが、シェルにおいて信頼性よくグラフェン層構造を形成する観点からは、好ましくは100℃/分〜1000℃/分、より好ましくは200℃/分〜1000℃/分、更により好ましくは300℃/分〜1000℃/分、場合により100℃/分〜900℃/分、200℃/分〜900℃/分、300℃/分〜800℃/分、400℃/分〜600℃/分である。
【0064】
本発明においては、工程(q−1)の態様で急速加熱してもよいが、本発明所定のコアシェル構造を生成し得る工程(q−2)の態様を採用することもできる。
即ち、工程(q−2)の態様では、上記有機ケイ素化合物を予め800℃以上の温度に加熱された非酸化性ガス雰囲気に暴露し、次いで該温度で1時間以上加熱処理する。原料となる有機ケイ素化合物は、予め800℃以上の温度に加熱された非酸化性ガス雰囲気に直接暴露されることから、該有機ケイ素化合物は急速に該温度に加熱されることとなり、シェル部分にグラフェンの層構造が発達したコアシェル構造体が形成されることになる。
【0065】
更に、本発明所定のコアシェル構造及びシェル(表層)におけるグラフェン層の十分な生成を促進させるために、工程(q−1)又は(q−2)においてポリシルセスキオキサンが急速加熱され、及び熱処理される温度は、1000℃以上であることが好ましい。本発明のコアシェル構造体が生成される限り特に限定されるものでもない。該温度の範囲としては、例えば800℃〜2500℃程度、好ましくは1000℃〜2000℃程度、より好ましくは1000℃〜1600℃程度、特に好ましくは1000℃〜1500℃程度、最も好ましくは1000℃〜1400℃程度である。
【0066】
加えて、工程(q−2)の態様を採用する場合、より具体的には、上記有機ケイ素化合物は、例えば約600℃以下、好ましくは約550℃以下、より好ましくは約500℃以下、更により好ましくは約450℃以下、場合により約400℃以下、約350℃以下、約300℃以下の環境から、上記予め800℃以上の温度に加熱された非酸化性ガス雰囲気に移動させることにより該非酸化性ガス雰囲気に暴露し、加熱処理を行ってもよい。上記所定温度の環境から上記予め800℃以上の温度に加熱された非酸化性ガス雰囲気に有機ケイ素化合物を移動させる具体的態様は、特に限定は無いが、例えば、以下に述べる原料フィーダ等の原料供給手段を用いて有機ケイ素化合物を加熱炉内に投入する態様が挙げられる。
【0067】
更に、熱処理時間については、1時間以上であれば特に限定されるものでもないが通常1〜30時間程度、好ましくは1〜24時間程度、より好ましくは1〜16時間程度、場合により1〜12時間程度、1〜10時間程度、1〜8時間程度、1〜7時間、1〜6時間程度である。熱処理時間は、原料として用いるポリシルセスキオキサンの性質、生成されるコアシェル構造やシェル(表層)におけるグラフェン層の形成具体等に応じて適宜決定すればよいが、さらに生産効率の観点からは所望のコアシェル構造体が取得できる最小熱処理時間を採用すれば足りる。なお、上述の加熱/熱処理の温度も同様のことが言える。
【0068】
なお、本発明における「非酸化性ガス雰囲気」には、不活性ガス雰囲気、還元性雰囲気、これら雰囲気を併用した混合雰囲気が包含される。不活性ガス雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等不活性ガスが挙げられ、これら不活性ガスは一種を単独で用いてもよいし又は二種以上を混合して用いてもよい。加えて、不活性ガスは、一般に使用されているものであれば足りるが、高純度規格のものが好ましい。還元性雰囲気としては、水素などの還元性ガスを含む雰囲気が包含される。例えば、2容積%以上の水素ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気が挙げられる。加えて、還元性雰囲気として、場合により水素ガス雰囲気そのものを使用してもよい。
【0069】
加えて、非酸化性雰囲気の環境は、上記所定のガスを熱処理炉内の雰囲気を置換又は該炉内に供給することで作り出せる。
熱処理炉内に上記ガスを供給する場合、そのガス流量は、採用する熱処理炉の仕様(例えば炉の形状やサイズ)に応じて適正な範囲に適宜調整すればよく、特に限定されるものではないが、炉内容量の5%〜100%/分程度、好ましくは5〜30%/分程度とすることができる。より具体的には、炉内容積が40L程度のロータリーキルン炉を用いる場合には、ガス流量(パージ量)は、例えば10〜15L/分程度とすることができる。
【0070】
工程(q−1)又は(q−2)の熱処理に採用され得る熱処理炉としては、例えば、ロータリーキルン型、ローラーハースキルン型、バッチキルン型、プッシャーキルン型、メッシュベルトキルン型、カーボン炉、トンネルキルン型、シャトルキルン型、台車昇降式キルン型等の各種熱処理炉が挙げられる。これら熱処理炉は、一種のみ用いてもよく、又は2種以上を組合せてもよい。なお、2種以上を組み合わせる場合、各熱処理炉は直列若しくは並列に連結されてもよい。
【0071】
更に加えて、厳密な加熱速度の制御を可能にする高速昇温炉を用いてもよく、このような高速昇温炉としては、例えば超高温カーボン炉NM−30Gシリーズ(型式NM 8×20−30G、NM 15×20−30G;ネムス株式会社製)、超高速昇温炉底昇降炉FUBシリーズ(型式FUB712PB、FUB722PB、FUB732PB;株式会社東洋製作所製)、超高速昇温電気炉FUSシリーズ(型式FUS612PB、FUS622PB、FUS632PB;株式会社アサヒ理化製作所製)が挙げられる。
【0072】
上述のような熱処理炉において、工程(q−1)の態様により、所定の昇温速度に制御して上記所定の有機ケイ素化合物が加熱処理されてもよいし、及び/又は工程(q−2)の態様により予め所定の温度に加熱された熱処理炉内の非酸化性雰囲気に該有機ケイ素化合物が暴露されてもよい。特に工程(q−2)の態様の場合、具体的には、原料フィーダ等の原料供給装置を備えた熱処理炉を採用し、予め所定の温度に加熱した熱処理炉内に、該フィーダにより原料となる上記有機ケイ素化合物を投入することにより、該有機ケイ素化合物の急速加熱が可能になる。ロータリーキルン等の加熱炉においては、振動式フィーダ、コンベア式フィーダ(例えばベルトコンペア型、スクリューコンベアー型)等の各種原料フィーダを採用する構成は、当該技術分野においてはよく知られており、これら駆動方式の原料フィーダを採用することができる。
【0073】
ところで、工程(q−1)又は(q−2)において熱処理されるポリシルセスキオキサンは、以下の一般式(V)で表されるシラン化合物を酸触媒下で加水分解及び重縮合(ゾル/ゲル反応)させて取得することができる。
R
10Si(R
7)(R
8)(R
9) (V)
式中、R
7、R
8及びR
9はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基又は炭素数1〜4のアルキルオキシであり、R
10は、炭素数1〜45の置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、及び置換又は非置換のアリールアルキルからなる群から選択され、炭素数の1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン又はシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、置換又は非置換のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン又はシクロアルケニレンで置き換えられてもよい。
【0074】
一般式(V)において、上記置換されたアルキル基の置換基としては、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10アルケニル、炭素数1〜5のアルコキシ、フェニルやナフチル等の芳香族基が好ましい。
一般式(V)で表されるシラン化合物としては、主にオルガノトリクロロシランやオルガノトリアルコキシランの類が挙げられる。より具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、メチルジメトキシエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、メトキシメチルトリエトキシシラン、メチルチオメチルトリエトキシシラン、メトキシカルボニルメチルトリエトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の置換又は非置換のアルキルトリアルコキシシラン化合物類;フェニルトリメトキシシラン、4−メトキシフェニルトリメトキシシラン、2−クロロフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、2−メトキシフェニルトリエトキシシラン、フェニルジメトキシエトキシシラン、フェニルジエトキシメトキシシラン等の置換又は非置換のアリールトリアルコキシシラン化合物類等が挙げられる。
【0075】
このようなシラン化合物加水分解及び重縮合により取得されるポリシルセスキオキサンは、市販品や特注品等を予め入手し、工程(q−1)又は(q−2)における加熱処理に原料として供試してもよいが、適宜所望のポリシルセスキオキサンを自前で合成して用いてもよい。
【0076】
即ち、本発明に係る製造方法は、工程(q−1)又は(q−2)の前に、以下の工程(p)を更に含んでもよい。
(p)一般式(V)で表されるシラン化合物を加水分解及び重縮合させることにより上記有機ケイ素化合物を取得することを更に含んでもよい。
以下に、工程(p)における上記シラン化合物の加水分解及び重縮合の条件について説明する。
【0077】
(溶媒)
工程(p)における反応液を構成する溶媒は、上記シラン化合物の加水分解/重縮合を進行させるものであれば特に限定されるものでもない。具体的には、上記シラン化合物の加水分解を補助するために水を含み得るが、水に加えてメタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル等のエーテル類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、DMF、トルエンな等の芳香族炭化水素溶剤を含む有機溶媒が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよいし又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0078】
(触媒)
工程(p)における反応液は、上記シラン化合物の加水分解及び重縮合を促進する触媒を任意に含んでもよい。このような触媒としては具体的には酸性触媒及び塩基性触媒が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく又は酸性触媒と塩基性触媒とを組み合わせて用いてもよい。
【0079】
酸性触媒としては、有機酸、無機酸のいずれも使用可能である。
具体的には、有機酸としてはギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸などが例示され、無機酸としては塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などが例示される。これらの中でも、加水分解反応およびその後の重縮合反応の制御が容易にでき、コスト安であり、かつ反応後の処理も容易であることから、塩酸及び酢酸を用いることが好ましい。
【0080】
塩基性触媒としては、一般的に周期律表Ia属、IIa属の金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩又は有機窒素化合物、アンモニア等の塩基性物質が挙げられる。より具体的には、アンモニアの他、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物、アンモニアテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、アンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドおよびベンジルトリエチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0081】
また、上記シラン化合物としてトリクロロシラン等のハロゲン化シランを用いた場合には、水の存在下で酸性水溶液が形成され、特に酸性触媒を別途加えずとも加水分解及び重縮合反応は進むため、触媒を別途加える必要もない。
したがって、工程(p)において触媒は任意成分である。
【0082】
(加水分解及び重縮合反応の条件)
次に、工程(p)における加水分解および重縮合の反応条件について説明する。
【0083】
反応液中、上記シラン化合物の割合は、特に限定されるものでもないが、反応液100質量部に対して、例えば約0.1質量部から約30質量部、好ましくは約0.1質量部から約25質量部、より好ましくは約0.5質量部から約20質量部である。
【0084】
溶媒の割合について、上記加水分解及び/重縮合反応が進行する限り特に限定されるものでもないが、上記シラン化合物100質量部に対して、例えば約100質量部から約1500質量部、好ましくは約200質量部から約1400質量部、より好ましくは約300質量部から約1300質量部、特に好ましくは約400質量部から約1200質量部である。なお、これらの割合範囲を採用した場合において、上述のとおり溶媒として水のみを用いてもよい、又は水とその他溶媒(アルコールや有機溶媒等)との混合溶媒を用いてもよい。
【0085】
触媒を添加する場合、その割合は、所望の加水分解及び重縮合反応が得られるように適宜調整すればよく、特に限定されるものでもないが、上記シラン化合物100質量部に対して、例えば約0.02質量部から約15質量部、好ましくは約0.02質量部から約10質量部、より好ましくは約0.02から約8質量部、場合により約0.04質量部から約7質量部、約0.08質量部から約6質量部である。
【0086】
各成分の添加順序や添加方法は、特に限定されるものでもないが、一般に、例えば、反応容器に溶媒及び任意に触媒溶液を投入し、場合により反応容器内の雰囲気を所定のガス雰囲気(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス)に置換した後、反応容器内の溶液に撹拌下で上記シラン化合物を添加(滴下)し、反応液を攪拌しながら所定の反応温度及び反応時間で加水分解及び重縮合反応を行うことができる。
【0087】
更に、加水分解及び/又は重縮合の反応温度は、特に限定されるものでもないが、例えば約−20℃から約80℃、好ましくは約0℃から約70℃、場合により約0℃から約40℃、約10℃から約30℃、例えば常温(e.g.室温;20℃〜25℃程度)が挙げられる。反応時間についても、特に限定されるものでもないが、例えば約0.5時間から約100時間、場合によっては約1時間〜約80時間、約1時間から約6時間が挙げられる。
【0088】
反応液のpHは、上記シラン化合物の加水分解及び重縮合反応が良好に進行するよう適宜調整すればよく、特に限定されるものでもないが、通常0.8〜12の範囲で、使用する具体的なシラン化合物や所望される有機ケイ素化合物(ポリシルセスキオキサン)生成物の形状や性質に応じて選択すればよい。ここで、反応液pHの調整は、上述の酸性触媒及び塩基性触媒を含む酸や塩基を利用できる。
【0089】
さらに加えて、用いるシラン化合物の性質や所望される有機ケイ素化合物(ポリシルセスキオキサン)生成物の形状や性質を考慮し、工程(p)において、まず上記シラン化合物の加水分解反応を行い、その後に、重縮合反応を行うことにより有機ケイ素化合物を合成することとしてもよい。
より詳細には、有機ケイ素化合物として特に球状ポリシルセスキオキサンを合成したい場合には、工程(p)を以下のような工程(p−1)及び(p−2)による二段階反応に分けて行うことができる。
【0090】
工程(p−1):一般式(V)で表されるシラン化合物を酸性条件下で加水分解させ、該シラン化合物の加水分解物を生成させること、
工程(p−2):工程(p−1)で生成した加水分解物を塩基性条件下で重縮合させることにより、上記有機ケイ素化合物として球状ポリシルセスキオキサン粒子を取得すること。
【0091】
工程(p−1)において、より具体的には、酸性水性媒体中において上記シラン化合物を加水分解させることにより加水分解物を生成させることができ、該シラン化合物の加水分解反応は、例えば、酸性水性媒体中に上記シラン化合物を滴下することにより進行させることができる。
ここで、工程(p−1)では、所望の加水分解が十分に進行するよう、加水分解反応速度が重縮合反応速度よりも高く、加水分解反応が優位に進行する酸性条件を採用するものである。このような酸性条件を実現するpH領域は、原料とするシラン化合物の種類により異なるが、通常は、pH3〜6、好ましくはpH4〜6に調整することができる。なお、この酸性の程度は、加水分解物生成の平衡、反応時間や部分縮合物の量・縮合数などに影響するが、粒子径に大きく影響するものではない。
【0092】
なお、この酸性pH領域の媒体を調製する上で用いられ得る酸としては、上述の酸性触媒を用いればよいが、加水分解反応及びその後の重縮合反応を制御して行うことが容易にでき、入手やpH調整も容易であることから、酢酸が最も好ましく用いられる。例えば、酸性水性媒体として希酢酸水溶液を用いる場合、pH値は5.0〜5.8程度となる。
【0093】
次いで、工程(p−2)においては、より具体的には、工程(p−1)において得られる加水分解物を含む反応液に対して撹拌下に塩基性物質を添加することにより、該反応液を塩基性とし、上記加水分解物を重縮合させ、上記有機ケイ素化合物として球状ポリシルセスキオキサン粒子を取得することができる。
【0094】
ここで、工程(p−2)においては、所望の重縮合反応が十分に進行するように、重縮合反応速度が加水分解反応速度よりも高く、該重縮合反応が優位に進行する塩基性条件を採用するものである。このような塩基性条件を実現するpH領域は、原料とするシラン化合物の種類により異なり、適宜に設定すればよいが、通常、pH3以下、又はpH7以上であることが一般的である。これらの領域のうち、粒径の揃った球状の単粒子体を得るには、およそpH7〜12に調整することが好ましい。この塩基性の強度に応じて得られる粒子径が小さくなる。また、基質濃度を高くすると、一般的に重合度があがり、粒子径は大きくなる。
【0095】
pH値をおよそpH7〜12の領域に調整するのに用いる塩基性物質としては、上述の塩基性触媒を用いればよいが、反応後の除去が容易であることからアンモニアが最も好ましい。アンモニアは、アンモニア水、例えば市販されている濃度28重量%のアンモニア水を2〜100倍程度に適宜希釈したものを使用してもよい。塩基性物質としてアンモニア水を用いた場合、工程(p−1)において取得される反応液のpH値が、最終的な重縮合反応系として、およそ7.8〜10.1となり、当該重縮合反応を介して球状ポリシルセスキオキサン粒子が均一に分散した状態の溶液が得られる。
【0096】
さらに、工程(p−1)における加水分解反応、及び工程(p−1)における重縮合反応に際し、反応液の撹拌速度、各材料の添加速度等を変化させることにより、生成されるポリシルセスキオキサン粒子の形状、大きさ、粒度分布等を調整することもできる。
【0097】
本発明に係るコアシェル構造体の製造方法は、更に以下のような工程の少なくとも1つを任意に含んでもよい。
(a)加水分解反応および重縮合反応を経てポリシルセスキオキサンを生成した後、任意に、濾過分離(例えば加圧濾過)、固液分離、溶媒留去、遠心分離或いは傾斜等の方法により、液体画分を分離及び除去し、得られた固形画分をポリシルセスキオキサンの被熱処理対象として工程(q−1)又は(q−2)に供試すること。このような固形分と液体との分離方法は、各種汎用技術が当業者に知られているので、適宜それらを用いることができる。
(b)さらに、上記取得した固形画分を水洗浄あるいは有機溶剤洗浄し、有機溶媒の留去、乾燥(減圧乾燥及び/又は加熱乾燥)等すること。
【0098】
<負極用組成物及びの製造方法>
本発明の更なる別の態様によれば、負極用組成物が開示される。該負極用組成物は、上記コアシェル構造体を負極活物質として含むものである。
更に加えて、本発明の更なる別の態様によれば、該負極用組成物の製造方法も開示される。該負極用組成物の製造方法は、上記コアシェル構造体を負極活物質として用いることにより負極用組成物を取得することを含むものである。
【0099】
本発明による負極用組成物は、後述の炭素系導電助剤及び/又は結着剤等の追加成分を更に含んでもよい。
【0100】
炭素系導電助剤として機能する炭素系物質の具体例としては、黒鉛、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノフォーム、ピッチ系炭素繊維、ポリアクリロニトリル系炭素繊維および無定形炭素などの炭素系物質が好ましく挙げられる。これら炭素系物質は、単独で使用してもよいし、又は二種以上の混合物を使用してもよい。
【0101】
本発明において用いられる結着剤としては、二次電池において使用可能なものであれば足り、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、アルギン酸、グルコマンナン、アミロース、サッカロース及びその誘導体や重合物、さらに夫々のアルカリ金属塩の他、ポリイミド樹脂やポリイミドアミド樹脂が挙げられる。これら結着剤は単独で使用してもよいし、二種以上の混合物を使用してもよい。
【0102】
さらに、結着剤に加えて、例えば、集電体と負極活物質との結着性を向上させ、負極活物質の分散性を改善し、結着剤自体の導電性を向上させる等の別機能を付与し得る添加剤を必要に応じて添加することもできる。このような添加剤の具体例としては、スチレン−ブタジエン・ゴム系ポリマー、スチレン−イソプレン・ゴム系ポリマー等が挙げられる。
【0103】
上述のように本発明による負極用組成物が炭素系導電助剤及び/又は結着剤等の追加成分を更に含むものである場合、本発明による負極用組成物の製造方法は、以下の工程(r)を含み得る。
工程(r):本発明のコアシェル構造体と上記追加成分とを混合し、又は本発明のコアシェル構造体に対して上記追加成分を複合化させ若しくは被覆させること。
【0104】
工程(r)を達成する上で利用できる具体的手法としては、各種撹拌子や撹拌ブレード、メカノフュージョン、ボールミル、振動ミル等を用いた機械的混合法等により、上記コアシェル構造体と炭素系物質を分散させる方法が挙げられ、中でもプライミクス株式会社製の薄膜旋回型高速ミキサー〔フィルミックス(登録商標)シリーズ〕等を用いて実現できる薄膜旋回方式による分散処理が好ましく用いられる。本発明による負極用組成物の製造方法において、これらの機械的混合法や分散方法は、一種を単独で用いて負極用組成物を取得してもよいし、段階的に複数の手法を組合せて負極用組成物を取得してもよい。
【0105】
例えば、工程(r)において、約1〜5重量%濃度の結着剤水溶液に、本発明のコアシェル構造体及び任意に炭素系導電助剤をそれぞれ所定量で添加し、撹拌子やその他ミキサー等を用いて混合してもよい。更に、得られた混合物に、所定の固形分濃度となるよう必要に応じて更に水を添加し、さらに撹拌を続けてスラリー状組成物とし、これを本発明の負極活用組成物をとしてもよい。更に加えて、該スラリー状組成物に対して上述の薄膜旋回方式による分散処理を加えたものを本発明の負極活用組成物としてもよい。
【0106】
更に、上記任意選択の工程(r)において、適宜目的に応じて、また所望の電池特性が得られるように上記コアシェル構造体と炭素系物質とは任意の割合で混合すればよい。
なお、本発明による負極活用組成物の製造方法は、上記工程に先行して、上記コアシェル構造体を製造する方法に含まれ得る各工程を任意に含んでもよく、それら任意の工程を含む実施形態も本明細書に明確に開示されるものである。
【0107】
<負極及びその製造方法>
本発明の更なる別の態様によれば、負極が開示される。
更に、本発明の更なる別の態様によれば、負極を製造する方法も開示され、本発明の負極は、該負極を製造する方法により取得されるものである。当該方法は、上記コアシェル構造体又は負極用組成物を用いて負極を取得することを含む。
以下に具体的な製造工程の例を示す。
【0108】
本発明の負極は、具体的には、上記負極活物質としてのコアシェル構造体、又は該コアシェル構造体を負極活物質として含む上記負極用組成物を用いて製造されるものである。
より詳細には、例えば、負極は、上記コアシェル構造体又は負極用組成物を、一定の形状に成形する方法、又は銅箔などの集電体に塗布させる方法に基づいて製造してもよい。負極の成形方法は、特に限定なく任意の方法を用いればよく、各種公知の方法を用いてもよい。
【0109】
より詳細には、例えば、予め調製した負極用組成物を、銅、ニッケル、ステンレスなどを主体とする棒状体、板状体、箔状体、網状体などの集電体にドクターブレード法、スラリーキャスト法、スクリーン印刷法等の手法により直接コーティングしてもよい。あるいは、上記負極用組成物を別途、支持体上にキャスティングし、その支持体上に形成された負極用組成物フィルムを剥離し、剥離した負極用組成物フィルムを集電体にラミネートして負極極板を形成してもよい。
加えて、上記終電体や支持体状に塗工した負極用組成物に対して、風乾処理や所定の温度による乾燥処理工程を行い、及び/又は更に必要に応じてプレス処理や打ち抜き処理等による加工処理工程を行うことにより、最終的な負極体を取得することとしてもよい。
【0110】
なお、本発明による該負極を製造する方法は、上記工程に先行して、上述のコアシェル構造体を製造する方法並びに負極用組成物を製造する方法に含まれ得る各工程を任意に含んでもよく、それら実施形態も本明細書に明確に開示されるものである。加えて、上記負極の形態はあくまでも例示であり、負極の形態は、これらに限定されるものではなく、その他の形態として提供され得ることは言うまでもない。
【0111】
<二次電池及びその製造方法>
本発明の更なる別の態様によれば、二次電池が提供される。
更に、本発明の更なる別の態様によれば、二次電池の製造方法も提供される。当該方法は、上述の負極を用いることにより二次電池を製造することを含む。
【0112】
本発明の二次電池は、本発明の負極を少なくとも1つ備えたものである。本発明の二次電池は、本発明の負極を少なくとも1つ備え、かつ二次電池として機能するのである限り、その他構成要素や構造は特に限定されるものでもないが、より具体的には、上記負極に加えて、正極及びセパレータをそれぞれ少なくとも1つ備える。本発明の二次電池は、本発明の負極、並びに正極とセパレータとがそれぞれ複数備える場合においては、正極/セパレータ/負極/セパレータの順序でこれら構成要素を交互に積層したラミネート型の積層構造を採用してもよい。あるいは、正極と負極とをセパレータを介してコイル状に捲回させた積層構造を採用してもよい。さらに加えて、本発明の二次電池は、電解液又は個体電解質を含み得る。
【0113】
本発明による二次電池は、具体的には、本発明による二次電池の製造方法により取得される二次電池である。該二次電池は、所望の用途や機能等を考慮し、適宜に設計すればよく、その構成は特に限定されるものでもないが、既存の二次電池の構成を参考に、本発明に係る負極を用いて二次電池を構成することができる。加えて、本発明の二次電池のタイプとしては、上記負極が適用できるものであれば特に限定されるものでもないが、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池が挙げられる。これら電池は、以下の実施例において実証されるとおり、本発明の所望の効果が発揮され得ることから、特に好ましい実施形態と言える。
以下、本発明による二次電池及びその製造方法が特にリチウムイオン二次電池の場合の実施形態について例示する。
【0114】
まず、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出可能な正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶媒を混合して正極活物質組成物を準備する。上記正極活物質組成物を負極と同様、各種手法を用いて金属集電体上に直接コーティング及び乾燥し、正極板を準備する。
上記正極活物質組成物を別途、支持体上にキャスティングし、この支持体上に形成されたフィルムを剥離し、同フィルムを金属集電体上にラミネートして正極を製造することも可能である。正極の成形方法は、特に限定されるものではないが、各種公知の手法を用いて形成することができる。
【0115】
上記正極活物質としては、当該二次電池の分野で一般的に使われるリチウム金属複合酸化物を用いることができる。例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、スピネル構造を持ったマンガン酸リチウム、コバルトマンガン酸リチウム、オリビン構造を持ったリン酸鉄、いわゆる三元系リチウム金属複合酸化物、ニッケル系リチウム金属複合酸化物など挙げられる。また、リチウムイオンの脱−挿入が可能な化合物であるV
2O
5、TiS及びMoSなども使用することができる。
【0116】
導電助剤を添加してもよく、リチウムイオン電池で一般的に使用されるものを利用することができる。製造された電池において分解又は変質を起こさない電子伝導性材料であることが好ましい。具体例としては、カーボンブラック(アセチレンブラック等)、黒鉛微粒子、気相成長炭素繊維、及びこれらの二種以上の組み合わせなどが挙げられる。また、結着剤としては、例えば、フッ化ビニリデン/六フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリ四フッ化エチレン及びその混合物、スチレンブタジエン・ゴム系ポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものでない。また、溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、アセトン、水などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
この時、正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶媒の含有量は、特に限定されるものでもないが、リチウムイオン電池で一般的に使用される量を目安に適宜選択することができる。
【0117】
正極と負極との間に介在するセパレータとしては、リチウムイオン電池で一般的に使われるものを利用すればよいが、特に限定されるものでもなく、所望の用途や機能等を勘案の上、適宜選択すればよい。電解質のイオン移動に対して低抵抗であるか、又は電解液含浸能に優れるものが好ましい。具体的には、ガラスファイバー、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ四フッ化エチレン、ポリイミド、あるいはその化合物のうちから選択された材質であって、不織布または織布の形態でもよい。
より具体的には、リチウムイオン電池の場合には、ポリエチレン、ポリプロピレンのような材料からなる巻き取り可能なセパレータを使用し、リチウムイオンポリマー電池の場合には、有機電解液含浸能に優れたセパレータを使用する事が好ましい。
【0118】
電解液としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、ジブチルカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、スルフォラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼンまたは、ジエチルエーテルなどの溶媒またはそれらの混合溶媒に、六フッ化リンリチウム、四フッ化ホウ素リチウム、六アンチモンリチウム、六フッ化ヒ素リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、Li(CF
3SO
2)
2N、LiC
4F
9SO
3、LiSbF
6、LiAlO
4、LiAlCl
4、LiN(C
xF
2x+1SO
2)(C
yF
2y+1SO
2)(ただし、xおよびyは自然数)、LiCl、LiIのようなリチウム塩からなる電解質のうち一種またはそれらを二種以上混合したものを溶解したものを使用できる。
【0119】
また、電解液に替えて種々の非水系電解質や固体電解質も使用できる。例えば、リチウムイオンを添加した各種イオン液体、イオン液体と微粉末を混合した擬似固体電解質、リチウムイオン導電性固体電解質などが使用可能である。
【0120】
更にまた、充放電サイクル特性を向上させる目的で、上記電解液に、負極活物質表面に安定な被膜形成を促進する化合物を適宜含有させることもできる。例えば、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロベンゼン、環状フッ素化カーボネート〔フルオロエチレンカーボネート(FEC)、トリフルオロプロピレンカーボネート(TFPC)、など〕、または、鎖状フッ素化カーボネート〔トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)、トリフルオロジエチルカーボネート(TFDEC)、トリフルオロエチルメチルカーボネート(TFEMC)など〕などのフッ素化カーボネートが効果的である。なお、上記環状フッ素化カーボネートおよび鎖状フッ素化カーボネートは、エチレンカーボネートなどのように、溶媒として用いることもできる。
【0121】
上述のような正極極板と負極極板との間にセパレータを配して電池構造体を形成し、係る電池構造体をワインディングするか、または折りたたんで円筒形電池ケース、または角型電池ケースに入れた後、電解液を注入することによりリチウムイオン電池を完成させてもよい。あるいは、上記電池構造体をバイセル構造に積層した後、これを有機電解液に含浸させ、得られた物をパウチに入れて密封することにより、本発明の二次電池としてリチウムイオンポリマー電池を取得してもよい。
【0122】
なお、本発明による二次電池の製造方法は、上記工程に加え、上記コアシェル構造体の製造方法、負極用組成物の製造方法並びに負極の製造方法に含まれる各工程を先行して更に含んでもよい。
【0123】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0124】
各実施例及び各比較例において製造した材料について各種分析・評価を行った。
まず、各種分析・評価の方法を以下に示す。
なお、以下、Phはフェニル基を示し、Meはメチル基を示す。
【0125】
<走査型電子顕微鏡(SEM)による観察>
実施例及び比較例で製造した各材料についてSEM観察を行った。
SEMとして超高分解能分析走査電子顕微鏡 SU−70及び走査電子顕微鏡SU8020(何れも株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、任意の加速電圧で測定した。
<オージェ電子分光法(AES)による元素分析>
実施例で製造したコアシェル構造体についてコア、並びに表層及び中間層(シェル)の元素組成を分析した。
なお、測定装置には走査型オージェ電子分光分析装置(AES/SAM)PHI710(アルバック・ファイ株式会社製)を用い、電子線加速電圧を10kVとして、イオンミリング処理により切断したSiOC粒子の断面についてAES分析を行った。
【0126】
<元素分析法>
炭素元素分析については、酸素循環燃焼・TCD検出方式による炭素元素分析装置として、株式会社住化分析センター製NCH−21型を用い、酸素元素分析については、高温炭素反応・NDIR検出方式による酸素元素分析装置として、株式会社堀場製作所EMGA−2800を用い、さらにSi元素分析については、灰化−アルカリ溶融−酸溶解・ICP発行分析法によるケイ素元素分析装置として、セイコー電子工業株式会社製SPS4000を用い、それぞれ、元素分析を行った。
【0127】
<レーザーラマン分光測定>
レーザーラマン分光法により実施例及び比較例で製造した材料について炭素質物質の検出及び解析を行った。より詳細には、レーザーラマン分光分析装置としてレーザーラマン顕微鏡RAMAN−11(ナノフォトン社製)を用い、以下の条件により測定を行った。
(1)レーザー波長:532nm
(2)データ取得:露光時間を10秒とし、1測定点で5回測定して平均化スペクトルを取得した。
(3)グレーティング:300 lines/mm
(4)対物レンズ:50倍(NA=0.80)
【0128】
<X線光電子分光法(XPS)による元素分析>
XPSにより実施例及び比較例で製造した材料について表面層の分析をした。より詳細には、X線光電子分光分析装置としてQuantera SXM(アルバック・ファイ株式会社製)を用い、以下の条件により測定を行った。
(1)X線:単色 Al Kα(hv=1486.6eV)25W/15kV
(2)測定領域:100μmφ
(3)測定手順:サーベイスキャン[結合エネルギー範囲:0〜1200eV;パスエネルギー:224eV;積算回数:3回]で表面元素種を確認後、以下の条件でナロースキャンを行った。C(C1s)光電スペクトルは、パスエネルギーは26eV、積算回数は12回で取得した。
(4)測定中の帯電中和:あり
【0129】
<粉体抵抗測定>
実施例及び比較例で製造した材料について、粉体の体積抵抗率を粉体抵抗測定器にて測定した。より詳細には粉体抵抗測定システムMCP-PD51(三菱ケミカルアナリテック社製)を用い、以下の条件により測定を行った。
(1)負荷荷重:15 kN
(2)検出方法:四探針方式
(3)電極間隔:3mm
【0130】
<電池特性の評価>
実施例及び比較例で製造した材料を含有する負極活物質を調製し、それら負極活物質を用いた負極並びにリチウムイオン二次電池について以下の通り充放電サイクル試験を行って電池特性を評価した。以下に、その手順を示す。
北斗電工製HJR−110mSM、HJ1001SM8AもしくはHJ1010mSM8Aを用い、充電・放電ともに測定は、定電流で行った。その際、負極活物質(SiOC粒子)1g重量あたり、理論容量に対して20分の1となるような電流値0.05Cとした。
また、充電は、電池電圧が0Vまで低下するまでの容量とし、放電は、電池電圧が1.5Vに到達するまでの容量とした。各充放電の切り替え時には、30分間、開回路で休止後、放電した。
【0131】
サイクル特性についても同様の条件で行った。ただし、上記電流値では、1サイクルに長時間を有するため、3サイクル以降は電流値を0.05Cから0.5C相当の電流値へ上げて行った。
また、可逆容量は、初回の放電容量とし、初回充放電率は、第1サイクルにおいて、充電容量に対する放電容量の比率とし、サイクル試験後の容量維持率は、初回の充電量に対するサイクル後の充電容量で表示した。
【0132】
<ポリシルセスキオキサンの調製>
(合成例1)
重量で1.3ppmに調整したpH5.3の酢酸水溶液222.9gを500mL四つ口フラスコ中で攪拌しながら、メチルトリメトキシシラン27.24g(0.200mol)とフェニルトリメトキシシラン9.91g(0.050mol)の混合物を滴下した。滴下後、そのまま室温で2時間攪拌した後に、0.37重量%のアンモニア水7.90gを撹拌しながら滴下し、pH9.5とした。滴下後、そのまま室温でさらに攪拌した後、攪拌を止め、一晩静置した。 得られたポリシルセスキオキサンの白濁液を100メッシュの金網でろ過した後、目開き1マイクロメートルのメンブランフィルターで吸引ろ過して球状ポリシルセスキオキサン(1)を19.34g得た。
【0133】
(合成例2)
重量で1.3ppmに調整したpH5.3の酢酸水溶液458.0gを1000mL四つ口フラスコ中で攪拌しながらメチルトリメトキシシラン66.11g(0.500mol)を滴下した。滴下後、そのまま室温で2時間攪拌した後、0.37重量%のアンモニア水16.08gを撹拌しながら滴下し、pH9.3とした。滴下後、そのまま室温でさらに攪拌した後、攪拌を止め、一晩静置した。
得られたポリシルセスキオキサンの白濁液を100メッシュの金網でろ過した後、目開き1マイクロメートルのメンブランフィルターで吸引ろ過して球状ポリシルセスキオキサン前駆体(2)を33.83g得た。
【0134】
[実施例1]
(コアシェル構造体の調製)
本実施例では、概略、
図8に示すような構造を有するロータリーキルンを用い、合成例1で取得した球状ポリシルセスキオキサン(1)を熱処理することにより、SiOC粒子を製造した。
図8において、ロータリーキルン10は、概略、原料投入ホッパー2と、原料フィーダ3と、ポリシルセスキオキサン等の原料Qの熱処理が行われる円筒状レトルト部材7と、該レトルト部材7が貫通する円筒状加熱室4と、該加熱室4の内部に設けられたヒータ6と、加熱処理により製造されたSiOC構造体Pを回収する回収部8とを備える。加えて、
図8において、矢印a、b、c、dは、上記熱処理対象ないし生成物(ケイ素酸化物/ケイ素酸化物構造体)の進行方向を示し、矢印rはレトルト部材7の回転方向を示す。更に、符号PGはパージガス、符号Vは各部材に設置されたバルブ、符号Mは酸素濃度計、符号2aは原料投入ホッパー2におけるガス置換室、符号7aは、レトルト部材7におけるスリット部をそれぞれ示す。
【0135】
より詳細には、レトルト部材7の材質はCIP材とし、以下のような温度制御が可能となるように所定容量のカーボンヒータを用いた。加えて、レトルト部材7の寸法については、レトルト長を1800mmLとした。
【0136】
ヒータの配置については、
図8ではヒータ6がレトルト部材の上部及び下部に配置されているが、本実施例ではレトルト部材の左右の横面それぞれに配置されたものを使用した。加えて、加熱炉の周囲には、カーボン断熱材を配置し、更に外殻に水冷ジャケットを装備した。
【0137】
レトルト内へのフィードは、球状ポリシルセスキオキサン(1)をガス置換室内に投入しアルゴンガスにてガス置換後、ホッパー内に落とし、スクリューフィーダにて1時間当たり1kgのフィード速度で行い、ヒータ加熱ゾーンでの滞留時間が1時間になるようにレトルト回転数を調整した。加えて、レトルト内部は、アルゴンガス及び水素ガス(4vol%)の混合ガスを10L/分の流量で供給し、非酸化性ガス雰囲気を維持しつつ、球状ポリシルセスキオキサン(1)の熱分解生成ガスを排ガス管へ追い出しを行った。
【0138】
熱処理温度はレトルトの温度が1200℃になるように制御し、球状ポリシルセスキオキサン(1)を熱処理することでSiOC構造体を取得した。
まず、原料である球状ポリシルセスキオキサン(1)は、フィーダから、予め1200℃に加熱されたレトルト内非酸化性ガス雰囲気に投入され、暴露されることにより、急速に加熱される。
ここで、フィーダの温度は、装置内に入るまではほぼ室温であるが、フィーダ先端部は装置内にあり、この装置内にあるフィーダ先端部の温度は300〜500℃程度である。加えて、フィーダ内の上記室温部から先端の原料落下口までは、距離も短く、原料粉体の移動時間は1分程度である。
【0139】
上記取得したケイ素酸化物をφ3mmのアルミナボールを仕込んだ目開き32μmのスレンレス製の振動篩機を用いて解砕及び分級することにより最大粒子径が32μmであるSiOC粒子(3)を取得した。
得られたSiOC粒子(3)について、上記各種分析法により分析した。
【0140】
(負極体の作成)
カルボキシメチルセルロースの2重量%水溶液20g中に、SiOC粒子(3)3.2gと0.4gのデンカ株式会社製アセチレンブラックを加え、フラスコ内で攪拌子を用いて15分間混合した後、固形分濃度が15重量%となるよう蒸留水を加え、さらに15分間撹拌してスラリー状組成物を調製した。このスラリー状組成物をプライミックス社製の薄膜旋回型高速ミキサー(フィルミックス40−40型)に移し、回転数20m/sで30秒間、撹拌分散を行った。分散処理後のスラリーを、ドクターブレード法により、銅箔ロール上にスラリーを150μmの厚さにて塗工した。
【0141】
塗工後30分風乾した後、80℃のホットプレートにて90分乾燥した。乾燥後、負極シートを2t小型精密ロールプレス(サンクメタル社製)にてプレスした。プレス後、φ14.50mmの電極打ち抜きパンチHSNG−EPにて電極を打ち抜き、ガラスチューブオーブンGTO―200(SIBATA)にて、80℃で、12時間以上減圧乾燥を行い、負極体を作成した。
【0142】
(リチウムイオン二次電池の作成及び評価)
図9に示す構造の2032型コイン電池を作成した。正極3として金属リチウム、セパレータ2として微多孔性のポリプロピレン製フィルム、負極1として上記負極体を使用し、電解液としてLiPF6を1モル/Lの割合で溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネート1:1(体積比)混合溶媒を使用した。
次いで、リチウムイオン二次電池の電池特性の評価を実施した。充放電試験機としては、北斗電工製HJ1001SM8Aを用いた。充放電条件としては、充電・放電共に0.05Cにて定電流で行い、放電終止電圧1mV、充電終止電圧は1500mVとした。
【0143】
[比較例1](比較対象のSiOC粒子の調製)
SSA−Sグレードのアルミナ製ボートに合成例1で取得した球状ポリシルセスキオキサン(1)15.0重量部をのせた後、該ボートを真空パージ式チューブ炉KTF43N1−VPS(光洋サーモシステム社製)にセットし、熱処理条件として、アルゴン雰囲気下(高純度アルゴン99.999%)にて、Arを200ml/分の流量で供給しつつ、4℃/分の割合で1200℃まで昇温して1200℃で1時間熱処理したのち50℃以下まで冷却しチューブ炉から取り出しSiOC粒子を得た。
【0144】
<結果>
(SEM観察)
実施例1で製造したSiOC粒子(3)並びに比較例1で製造したSiOC粒子(4)のSEM写真を
図1に示す。
まず、
図1(a)は、実施例1で製造したSiOC粒子(3)のSEM写真である(10000倍)。一方、
図1(b)は、比較例1で製造したSiOC粒子(4)のSEM写真である(10000倍)。
これらSEM写真においてSiOC粒子(3)(実施例1)とSiOC粒子(4)(比較例1)とを見比べると、SiOC粒子(4)の表面は比較的平滑であるのに対し、SiOC粒子(3)の表面には粗く二次的な構造が形成されていることが判る。
【0145】
実施例1に係るSiOC粒子(3)の表層及び内部構造を詳細に分析するため、SiOC粒子(3)をイオンミリング処理により切断し、その断面をSEM観察した。SiOC粒子(3)の断面のSEM写真を
図2に示す(50000倍)。
【0146】
図2のSEM写真において観察される通り、SiOC粒子(3)は、球状のコア101と、そのコア表面を取り囲む中間層102及び該中間層の上に形成される表層103からなるシェルとで構成される、球状コアシェル構造体100の形態を有することが明らかとなった。
【0147】
(AES分析)
次に、SiOC粒子(3)において観察されたコア101、中間層102、及び表層103の各部分の詳しい元素組成を調べるために上述のAES分析を行った。得られたAESスペクトルを
図3に示し、取得された各部分の元素組成のプロファイルを表1に示す。
【0148】
【表1】
【0149】
表1において各部の対Si比を比較すると解るとおり、コアに対して表層及び中間層は炭素(C)の含有率が高く、更に中間層の炭素含有率が最も高いことが判明した。
【0150】
(材料全体の元素組成分析及びラマン分光分析)
更に、SiOC粒子(3)及びSiOC粒子(4)について、上述の元素分析法により元素組成を調べ、更に上述のラマン分光法により表面解析を行った。
SiOC粒子(3)及びSiOC粒子(4)の元素分析の結果及びラマンスペクトルから得られた各種ピーク高さ比の値を表2に示し、これら材料について取得されたラマンスペクトルを
図4及び5に示す。
【0151】
【表2】
【0152】
表2に示されるとおり、SiOC粒子(4)ではフリー炭素の比率が1.06であるのに対し、SiOC粒子(3)ではフリー炭素の比率が1.29である。つまり、SiOC粒子(3)では炭素(C)の割合が比較的上昇していることが判る。これは、高い昇温速度による急激な加熱により、ポリシルセスキオキサン粒子の表層部でSiを含む化学基の脱離と有機成分のグラファイト化が特別に促進されたためだと推測される。
なお、フリー炭素の比率については、Siは必ず4つの元素と結合し、Siの結合相手はO又はCであること、並びにOは必ずSiと結合することを考慮すると、元素組成分析において、Si―O結合及びSi−C結合の量比が決まり、残部のCの比率がフリー炭素の比率として算出される(J.Am.Ceram.Soc.,Volume89,Issue 7,p2188−2195(2006)参照)。
【0153】
次に、ラマン分光法による測定結果に注目すると、表2に示されるとおり、SiOC粒子(3)のH
G/H
m比が、SiOC粒子(4)のそれよりも顕著に高くなっていることが認められる。このようにH
G/H
m比が顕著に高くなっているということは、SiOC粒子(3)の表層部分においてはグラフェン層構造が発達していることを裏付けている。
即ち、上記結果によれば、原料となるポリシルセスキオキサンの熱処理時において急速加熱すること、即ち比較的高い昇温速度で加熱し及び加熱処理する態様を採用することにより、グラフェン層構造が発達したシェルに黒鉛質炭素を比較的多く含んでなる球状コアが内包されたコアシェル粒子を製造できることが示された。
【0154】
(XPS分析)
SiOC粒子(3)及びSiOC粒子(4)の表面層の更なる分析のため、これら材料を更にXPS分析に供試した。
XPS分析により取得された元素組成(C/O/Si)を表3に示し、XPSスペクトルを
図6(a)及び(b)に示す。
【0155】
【表3】
【0156】
表3に示されるとおり、比較例1のSiOC粒子(4)に対して、実施例1のSiOC粒子(3)は、炭素の比率が顕著に高い。
更に、
図6(a)及び(b)に示されるXPSスペクトルにおいては、SiOC粒子(3)のC1sのメインピークが、SiOC粒子(4)のそれと比較して非常に鋭いことが認められる。C1sのメインピークが鋭いということ、さらに、291eVにサブピーク構造
(シェイクアップピーク)が確認できる点から、結晶性炭素の存在が示唆され、グラフェン層構造が表層において発達していることが裏付けられた。
このように、XPS分析の結果も、ラマン分光測定の結果と同様、原料となるポリシルセスキオキサンの熱処理時において比較的高い昇温速度を採用することにより、グラフェン層構造が発達したシェルに黒鉛質炭素を比較的多く含んでなる球状コアが内包されたコアシェル粒子を製造できることを支持するものであった。
【0157】
(粉体抵抗測定)
SiOC粒子(3)及びSiOC粒子(4)の更なる性状分析のため、これら材料の粉体抵抗測定に供試した。その結果を表4に示す。
【0158】
【表4】
【0159】
表4に示される通り、実施例1のSiOC粒子(3)は、比較例1のSiOC粒子(4)よりも、比抵抗の値がはるかに小さい。具体的には、実施例1のSiOC粒子(3)の比抵抗は、0.6Ω・cm程度であり、この値は、導電助剤として一般に用いられるアセチレンブラックの比抵抗とほぼ同等である。即ち、このように本発明に係る実施例1のSiOC粒子(3)において比抵抗が格別小さくなっているということは、SiOC系の特異なコアシェル構造を有しつつも、そのシェル部が炭素リッチな状態になっており、粒子全体として導電性が格段に向上していることを意味している。
よって、本発明に係る実施例1のSiOC粒子(3)は、負極材料としては好適な導電性を実現できる材料であることが明らかになった。
【0160】
(充放電サイクル試験の結果)
実施例1及び比較例1でそれぞれ作製したリチウムイオン電池についての充放電サイクル試験の結果を
図7に示す。
図7に示される通り、本発明に係るSiOC粒子(3)を負極活物質として用いた実施例1のリチウムイオン二次電池は、比較例1のリチウムイオン二次電池と比べ、若干初期効率が低いものの十分に実用に耐える良好な範囲にあり、更にサイクル特性に優れたものであった。
本実施例により、本発明によれば、良好な初期効率(初期容量)を維持しつつ優れたサイクル特性を実現できる負極活物質、負極材並びに二次電池を提供することが可能となることが示された。
【0161】
[実施例2]
合成例2で合成した球状ポリシルセスキオキサン前駆体(2)を実施例1と同様の急速加熱処理に供試することにより、SiOC粒子を製造する。
当該SiOC粒子は、実施例1のSiOC粒子(3)と同様に本発明所定のコアシェル構造を有し、良好な初期効率(初期容量)を維持しつつ優れたサイクル特性を示す負極活物質として利用され得る。