特許第6987359号(P6987359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987359
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   B41J2/165 209
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-148432(P2019-148432)
(22)【出願日】2019年8月13日
(62)【分割の表示】特願2015-101144(P2015-101144)の分割
【原出願日】2015年5月18日
(65)【公開番号】特開2019-188826(P2019-188826A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2019年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【弁護士】
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 紫野
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−274637(JP,A)
【文献】 特開2015−058557(JP,A)
【文献】 特開2008−036825(JP,A)
【文献】 特開2006−297905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される連続媒体に対して液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記連続媒体に対して空吐出滴を吐出する空吐出動作を制御する空吐出制御手段と、を備え、
前記空吐出制御手段は、前記連続媒体以外の領域に対して空吐出滴を吐出する第1空吐出動作と、前記第1空吐出動作の後であって、先頭頁の印刷を開始する前に、前記連続媒体に対して空吐出滴を吐出する第2空吐出動作と、を制御する
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
前記空吐出制御手段は、前記連続媒体に対して画像形成領域内で空吐出滴が鏤められて着弾する第3空吐出動作を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項3】
前記空吐出制御手段は、環境湿度が所定値以下であるとき、前記第2空吐出動作を行った後に、前記先頭頁の印刷を開始する前に、前記連続媒体に対して空吐出滴が着弾する第4空吐出動作を制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項4】
前記空吐出制御手段は、前記連続媒体の搬送速度が所定速度以下であるときには、前記第2空吐出動作を行った後に、前記先頭頁の印刷を開始する前に、前記連続媒体に対して空吐出滴が着弾する第4空吐出動作を制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項5】
前記第2空吐出動作によって前記連続媒体に対して空吐出滴が着弾する領域は、前記第4空吐出動作によって前記連続媒体に対して空吐出滴が着弾する領域に比べ大きい
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の液体を吐出する装置。
【請求項6】
前記空吐出制御手段は、前記第4空吐出動作では、前記連続媒体に対してライン状に空吐出滴を着弾させる制御をする
ことを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項7】
前記空吐出制御手段は、前記連続媒体が加速中に、前記連続媒体に対して空吐出滴を吐出する前記第2空吐出動作を制御する
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
搬送される連続媒体に対して液体を吐出するノズルを有する液体吐出手段から前記連続媒体に対して空吐出滴を吐出する空吐出動作の制御をコンピュータに行わせるためのプログラムであって、
前記連続媒体以外の領域に対して空吐出滴を吐出する第1空吐出動作と、前記第1空吐出動作の後であって、先頭頁の印刷を開始する前に、前記連続媒体に対して空吐出滴を吐出する第2空吐出動作と、の制御をコンピュータに行なわせる
ことを特徴とするプログラム。
【請求項9】
前記第2空吐出動作では、前記連続媒体が加速中に、前記連続媒体に対して空吐出滴を吐出する
ことを特徴とする請求項8に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体を吐出する装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
連続媒体に対して液体を吐出する装置においては、液体吐出手段である液体吐出ヘッドのノズルの状態を維持、回復するという、装置の主たる目的以外の目的を持つ空吐出滴を吐出する空吐出動作を行う。なお、連続媒体は、ロール紙、連続紙、帳票、ウエブ媒体などと称されるものを含む。また、空吐出は、フラッシング、予備吐出などとも称される吐出を含む。
【0003】
印刷中に行われる空吐出動作として、連続媒体の一定の長さ毎にライン状に空吐出滴が着弾するラインフラッシング動作と、画像形成領域上に視認し難い大きさで空吐出滴が鏤められて着弾するスターフラッシング動作が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−059875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、連続媒体を使用する場合、液体吐出ヘッドがデキャップされてから先頭頁の印刷を開始するまでの待機時間が長くなると、ノズル内の液体の増粘が進行して、先頭頁の印刷開始時に正常な吐出を行うことができなくなるという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、先頭頁から正常な吐出を行なえるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体を吐出する装置は、
搬送される連続媒体に対して液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記連続媒体に対して空吐出滴を吐出する空吐出動作を制御する空吐出制御手段と、を備え、
前記空吐出制御手段は、前記連続媒体以外の領域に対して空吐出滴を吐出する第1空吐出動作と、前記第1空吐出動作の後であって、先頭頁の印刷を開始する前に、前記連続媒体に対して空吐出滴を吐出する第2空吐出動作と、を制御する
構成とした。
【0008】
本発明によれば、先頭頁から正常な吐出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る液体を吐出する装置の一例を示す側面説明図である。
図2】液体吐出ユニットの要部平面説明図である。
図3】ヘッドユニットを構成する1つの液体吐出ヘッドの一例のノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)の断面説明図である。
図4】同じくノズル配列方向(液室短手方向)の断面説明図である。
図5】同装置の制御手段のブロック説明図である。
図6】同制御手段を構成する上位装置のブロック説明図である。
図7】同制御手段を構成する出力制御装置のブロック説明図である。
図8】本発明の第1実施形態の説明に供する印刷制御シーケンスと空吐出復動作の関係を説明する説明図である。
図9】同実施形態における空吐出動作の制御の説明に供するフロー図である。
図10】印字中空吐出動作におけるラインフラッシング(第1印刷中空吐出)及びスターフラッシング(第2印刷中空吐出)の説明に供する連続媒体上における空吐出滴の着弾状況の説明図である。
図11】先頭頁直前空吐出と印刷中空吐出を組み合わせたときの連続媒体上における空吐出滴の着弾状況の説明図である。
図12】本発明の第2実施形態における空吐出動作の制御の説明に供するフロー図である。
図13】同じく連続媒体上における空吐出滴の着弾状況の説明図である。
図14】本発明の第3実施形態における空吐出動作の制御の説明に供するフロー図である。
図15】本発明の第4実施形態における空吐出動作の制御の説明に供するフロー図である。
図16】本発明の第5実施形態における空吐出動作の制御の説明に供するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について図1を参照して説明する。図1は同装置の概略説明図である。
【0011】
この装置は、連続媒体10を搬入する搬入手段1と、搬入手段1から搬入された連続媒体10を印刷手段5に案内搬送する案内搬送手段3と、連続媒体10に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段5と、連続媒体10を乾燥する乾燥手段7と、連続媒体10を排出する排出手段9などを備えている。
【0012】
連続媒体10は搬入手段1の元巻きローラ11から送り出され、搬入手段1、案内搬送手段3、乾燥手段7、排出手段9の各ローラによって案内、搬送されて、排出手段9の巻取りローラ91にて巻き取られる。
【0013】
この連続媒体10は、印刷手段5において、搬送ガイド部材59上を液体吐出ユニット50及び液体吐出ユニット55に対向して搬送され、液体吐出ユニット50から吐出される液体によって画像が形成され、液体吐出ユニット55から吐出される処理液で後処理が行われる。
【0014】
ここで、液体吐出ユニット50には、例えば、媒体搬送方向上流側から、4色分のフルライン型ヘッドユニット51K、51C、51M、51Y(以下、色の区別しないときは「ヘッドユニット51」という。)が配置されている。
【0015】
各ヘッドユニット51は、液体吐出手段であり、それぞれ、搬送される媒体10に対してブラックK,シアンC、マゼンタM、イエローYの液体を吐出する。なお、色の種類及び数はこれに限るものではない。
【0016】
ヘッドユニット51は、例えば、図2に示すように、複数の液体吐出ヘッド(これを、単に「ヘッド」ともいう。)100をベース部材52上に千鳥状に並べてヘッドアレイとしたものを使用しているが、これに限らない。また、ヘッドユニット51は、液体吐出ヘッドとこの液体吐出ヘッドに液体供給するヘッドタンクとで構成しているが、これに限るものではなく、液体吐出ヘッド単独の構成でもよい。
【0017】
次に、ヘッドユニットを構成する1つの液体吐出ヘッドの一例について図3及び図4を参照して説明する。図3は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)の断面説明図、図4は同じくノズル配列方向(液室短手方向)の断面説明図である。
【0018】
この液体吐出ヘッドは、ノズル板101と、流路板(液室基板)102と、振動板部材103とを接合している。そして、振動板部材103を変位させる圧電アクチュエータ111と、共通流路部材としてフレーム部材120とを備えている。
【0019】
これにより、液滴を吐出する複数のノズル104に通じる個別液室(圧力室、加圧室などとも称される。)106、個別液室106に液体を供給する流体抵抗部を兼ねた液体供給路107と、液体供給路107に通じる液導入部108とを形成している。隣り合う個別液室106はノズル配列方向で隔壁106Aによって隔てられている。
【0020】
そして、フレーム部材120の共通流路としての共通液室110から振動板部材103に形成したフィルタ部109を通じて、液導入部108、液体供給路107を経て複数の個別液室106に液体を供給する。
【0021】
圧電アクチュエータ111は、振動板部材103の個別液室106の壁面を形成する変形可能な振動領域130を挟んで、個別液室106とは反対側に配置されている。
【0022】
この圧電アクチュエータ111は、ベース部材113上に接合した複数の積層型圧電部材112を有している。圧電部材112にはハーフカットダイシングによって溝加工して、駆動波形を与える柱状の圧電素子(圧電柱)112Aと、支柱112Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0023】
そして、圧電素子112Aを振動板部材103の振動領域130に形成した島状の凸部103aに接合している。また、支柱112Bを振動板部材103の凸部103bに接合している。
【0024】
この圧電部材112は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極が設けられ、圧電素子112Aの外部電極に駆動波形を与えるための可撓性を有するフレキシブル配線基板としてのFPC115が接続されている。
【0025】
フレーム部材120には、ヘッドタンクや液体カートリッジから液体が供給される共通液室110が形成されている。
【0026】
この液体吐出ヘッドにおいては、例えば圧電素子112Aに印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子112Aが収縮し、振動板部材103の振動領域130が下降して個別液室106の容積が膨張することで、個別液室106内に液体が流入する。
【0027】
その後、圧電素子112Aに印加する電圧を上げて圧電素子112Aを積層方向に伸長させ、振動板部材103の振動領域130をノズル104方向に変形させて個別液室106の容積を収縮させる。これにより、個別液室106内の液体が加圧され、ノズル104から液体が吐出(噴射)される。
【0028】
そして、圧電素子112Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材103の振動領域130が初期位置に復元し、個別液室106が膨張して負圧が発生するので、共通液室110から液体供給路107を通じて個別液室106内に液体が充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の吐出のための動作に移行する。
【0029】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0030】
次に、この装置の制御手段の概要について図5ないし図7を参照して説明する。図5は同制御手段のブロック説明図、図6は同制御手段を構成する上位装置のブロック説明図、図7は同制御手段を構成する出力制御装置のブロック説明図である。
【0031】
制御部700は、ホスト側から印刷ジョブデータを受信して処理し、出力装置500に転送する上位装置600と、上位装置600から印刷画像データを受領して印刷に係わる制御を行う出力制御装置500とで構成される。
【0032】
上位装置600は、処理時間を要するRIP(Raster Image Processor)処理を行う。出力制御装置500は印刷処理を行う。
【0033】
上位装置600は、ホスト装置から出力される印刷ジョブデータ(ジョブデータ、印刷データ)に基づいて、RIP(Raster Image Processor)処理を行う装置である。すなわち、上位装置600は、印刷ジョブデータに基づいて、各色に対応するビットマップデータである印刷画像データを作成する。
【0034】
また、上位装置600は、印刷ジョブデータ及びホスト装置の情報などに基づいて、印刷動作を制御するためのデータである制御情報データを作成する。ここで、制御情報データとは、印刷条件(印刷形態、印刷種別、給排紙情報、印刷面順、印刷用紙サイズ、印刷画像データのデータサイズ、解像度、紙種情報、階調、色情報及び印刷を行うページ数の情報など)に関するデータを含む。
【0035】
ここで、上位装置600は、図6に示すように、CPU601、ROM602、RAM603、HDD604、外部I/F605、画像データ用I/F606、制御情報用I/F607などを有する。
【0036】
そして、外部I/F605を介してホスト装置から印刷ジョブデータを受領して、YMCKのビットマップデータを生成し、生成した各色のビットマップデータをRAM603に書き出し、各色のビットマップデータを圧縮して符号化し、HDD604に一旦格納する。
【0037】
その後、印刷動作が開始されるときに、各色のビットマップデータを復号化して一時的にRAM603に書き込み、各色のビットマップデータを読み出し、各色の印刷画像データとして、画像データ用I/F606を介して、出力制御装置500側に転送する。
【0038】
また、印刷動作の進行などに応じて、出力制御装置500との間で、制御情報用I/F607を介して、制御情報データの送受信を行う。
【0039】
出力制御装置500は、図7に示すように、装置全体の制御を司るCPU511、ROM512、RAM513、I/Oななどを含むマイクロコンピュータと、画像メモリと、通信インタフェースなどで構成した主制御部(システムコントローラ)501を備えている。
【0040】
主制御部501は、上位装置600から転送される印刷画像データ及び印刷情報データに基づいて媒体10に画像を形成するために、印刷制御部502に印刷画像データを送出する。
【0041】
印刷制御部502は、主制御部501から受領したが印刷画像データをシリアルデータで転送するとともに、この印刷用データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ503に出力する。
【0042】
また、印刷制御部502は、内部ROMに格納されている共通駆動波形のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動波形をヘッドドライバ503に対して出力する。
【0043】
ヘッドドライバ503は、シリアルに入力される1つのヘッドユニット51に相当する印刷画像データに基づいて印刷制御部502から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択して圧力発生手段としての圧電素子112Aに対して与えて液体を吐出させる。このとき、駆動波形を構成するパルスの一部又は全部或いはパルスを形成する波形要素の全部又は一部を選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0044】
また、主制御部501は、モータドライバ504を介して、搬入手段1の元巻きローラ11、搬入手段1、案内搬送手段3、乾燥手段7及び排出手段9の各ローラ、排出手段9の巻取りローラ91などの各ローラ類510を駆動制御する。なお、駆動力はすべてのローラに与える必要はない。
【0045】
また、主制御部501には、環境湿度を検出する湿度センサ508、その他各種センサからなるセンサ群506からの検出信号が入力され、また、操作部507との間で各種情報の入出力及び表示情報のやり取りを行う。
【0046】
主制御部501は、空吐出制御手段を兼ねており、連続媒体10に対して空吐出滴を吐出させてノズル104の状態を維持又は回復する空吐出動作を制御し、連続媒体10の搬送開始から先頭頁の印刷開始までの間に、連続媒体10に対して空吐出滴を吐出させる先頭頁前空吐出動作を含む空吐出動作に係わる制御をする。
【0047】
次に、本発明の第1実施形態における空吐出動作について図8及び図9を参照して説明する。図8は同実施形態の説明に供する印字制御シーケンスと空吐出動作の関係を説明する説明図、図9は同実施形態における空吐出動作の制御の説明に供するフロー図である。なお、図における「FL」は「フラッシング」の略である。
【0048】
印刷ジョブを開始すると、ヘッド100のノズル面をキャッピングしているキャップに対して空吐出滴を吐出させる印字前空吐出動作(印刷前空吐出動作、印字前フラッシング)を行う。すなわち、印字前空吐出動作では連続媒体10以外の領域に対して空吐出滴を吐出する。
【0049】
そして、連続媒体10の搬送速度が設定速度に到達したときには、先頭頁の印刷開始前に、先頭頁前空吐出動作(先頭頁前フラッシング)を行う。この先頭頁前空吐出動作では、搬送されている連続媒体100に対して空吐出滴を吐出させる。また、本実施形態のように、連続媒体10の搬送速度が設定速度に到達した後先頭頁の印刷開始前に行う先頭頁前空吐出(動作)を、以下では「先頭頁直前空吐出(動作)」という。
【0050】
その後、先頭頁からの印字(印刷)が開始されると、印字中空吐出動作(印刷中空吐出動作、印字中フラッシング)を行う。この印字中空吐出動作では、搬送されている連続媒体100に対して空吐出滴を吐出させる。この印字中空吐出動作としては、第1印字中空吐出動作(第1印刷中空吐出動作)としてのラインフラッシング動作、あるいは、第2印字中空吐出動作(第2印刷中空吐出動作)としてのスターフラッシング動作を行う。
【0051】
そして、印字が終了し、連続媒体10の搬送が停止したときには、ヘッド100のノズル面をキャッピングしているキャップに対して空吐出滴を吐出させる印字後空吐出動作(印刷後空吐出動作、印字後フラッシング)を行う。
【0052】
このように、連続媒体10の搬送開始から搬送速度が設定速度に到達した後、先頭頁の印字(印刷)を開始する前に、連続媒体10に対して空吐出滴を吐出する先頭頁前空吐出(先頭頁直前空吐出)を行うことで、先頭頁から正常な吐出を行うことができ、先頭頁から正常な画像を確保できる。
【0053】
つまり、この装置では、印刷ジョブを開始すると、ヘッドユニット51はヘッド100がデキャップされた状態で、連続媒体10に対向し、連続媒体10の搬送速度が設定速度に達するまで待機する。そのため、連続媒体10の搬送速度が設定速度に達して先頭頁の印字を開始するまでの時間が長くなると、ヘッド100のノズル104内の液体の乾燥が進行し、先頭頁の印字開始時にはノズル104内が増粘し、正常な吐出ができなくなることがある。そこで、先頭頁の印字開始直前に空吐出動作を行うことで、先頭頁から正常な吐出を確保でき、画像品質を向上できる。
【0054】
次に、印字中空吐出動作におけるラインフラッシング動作及びスターフラッシング動作について図10を参照して説明する。
【0055】
本実施形態の装置では、主制御部501の空吐出動作を制御する空吐出制御手段(プログラムで構成)は、印刷中における空吐出(フラッシング、予備吐出)動作として、連続媒体10に対して一定の長さごとにライン状に空吐出滴が着弾する第1印字中空吐出(これを「ラインフラッシング」という。)動作と、連続媒体10の画像形成領域に対して視認されにくい小さな滴が鏤められて着弾する第2印字中空吐出(これを「スターフラッシング」という。)動作を制御することができるようにしている。
【0056】
ここで、ラインフラッシング動作では、図10(a)に示すように、全てのノズルから空吐出滴401を吐出させることで、空吐出滴401がライン状に着弾する。また、スターフラッシング動作では、図10(b)に示すように、小さな空吐出滴402が鏤められて星状に点在して着弾する。
【0057】
ここで、ラインフラッシングは、ページ内の画像品質に影響を与えないものの、ページ間のラインフラッシングによる空吐出滴が着弾した部分は損紙となる。一方、スターフラッシングは、損紙を発生させないものの、ページ内の画像品質に地汚れとして視認されるおそれがある。
【0058】
また、ラインフラッシングでは、画像品質に影響を与えない頁間に空吐出滴を着弾させるために、サテライトを考慮せずに、滴速度を大きくすることができ、回復効率が高くなる。一方、スターフラッシングでは、画像形成領域に着弾させ、また画像形成に使用する小さな滴を兼用するために、空吐出滴は滴速度、滴体積共に大きくすることができない。
【0059】
したがって、先頭頁直前空吐出動作でより強力な回復動作を行わなければならない印刷条件(低湿度環境、低印字速度など)は、印刷中空吐出としてスターフラッシングが選択されている場合である。
【0060】
次に、先頭頁直前空吐出と印刷中空吐出を組み合わせた例について図11を参照して説明する。図11は連続媒体上における空吐出滴の着弾状況を説明する説明図である。
【0061】
図11(a)の例では、先頭頁直前空吐出動作で空吐出滴403を吐出した後、印字動作に入り、一定の長さ毎にライン状に空吐出滴401が着弾するラインフラッシング動作を行っている。
【0062】
図11(b)の例では、先頭頁直前空吐出動作で空吐出滴403を吐出した後、印字動作に入り、印刷中空吐出動作で画像形成領域に空吐出滴402が鏤められて着弾するスターフラッシング動作を行っている。
【0063】
ここでは、先頭頁直前空吐出動作で空吐出滴403を吐出する領域(媒体搬送方向の幅)は印刷中空吐出動作としてのラインフラッシング動作で空吐出滴401を吐出する領域よりも広く、つまり、媒体搬送方向におけるフラッシング回数(空吐出回数)を多くしている。
【0064】
これにより、より確実にノズルの状態を回復して先頭頁から正常な吐出を行うことができる。
【0065】
なお、先頭頁直前空吐出動作は空吐出を行うタイミングに関するものであり、使用する空吐出パターン(空吐出滴の着弾パターン)を限定するものではない。したがって、空吐出パターンとしては、先頭頁直前空吐出動作用の空吐出パターンを使用することもできるし、ラインフラッシング動作の空吐出パターンを使用することもできる。つまり、先頭頁直前空吐出動作はラインフラッシング動作の複数回の繰り返しで構成することもできるし、1回のラインフラッシング動作で構成することもできる。
【0066】
次に、本発明の第2実施形態について図12及び図13を参照して説明する。図12は同実施形態における空吐出動作の制御の説明に供するフロー図、図13は同じく連続媒体上における空吐出滴の着弾状況を説明する説明図である。
【0067】
本実施形態では、印刷中空吐出動作としてスターフラッシングが選択されている場合、先頭頁直前空吐出動作を行った後、先頭頁の印刷開始前に空吐出滴がライン状に着弾する空吐出動作としてのラインフラッシング動作を行っている。
【0068】
すなわち、スターフラッシング動作だけでは増粘した液体の排出が不十分になるおそれがあるので、先頭頁の印刷を開始する前に、ラインフラッシング動作を行って、より確実に増粘液体を排出し、ノズルの状態を維持回復する。
【0069】
次に、本発明の第3実施形態について図14を参照して説明する。図14は同実施形態における空吐出動作の制御の説明に供するフロー図である。
【0070】
本実施形態では、環境湿度が所定値以下のときには、先頭頁直前空吐出動作を行った後、先頭頁の印刷開始前に空吐出滴がライン状に着弾する空吐出動作としてのラインフラッシング動作を行っている。
【0071】
すなわち、環境湿度が低いと、増粘が進行しやすくなるので、先頭頁直前空吐出動作に併せて、先頭頁の印刷を開始する前に、ラインフラッシング動作を行って、より確実に増粘液体を排出し、ノズルの状態を維持回復する。
【0072】
次に、本発明の第4実施形態について図15を参照して説明する。図15は同実施形態における空吐出動作の制御の説明に供するフロー図である。
【0073】
本実施形態では、連続媒体10の搬送速度が所定速度以下のとき、つまり、印刷速度が所定速度以下のときには、先頭頁直前空吐出動作を行った後、先頭頁の印刷開始前に空吐出滴がライン状に着弾する空吐出動作としてのラインフラッシング動作を行っている。
【0074】
すなわち、連続媒体10の搬送速度(印刷速度)が遅いと、先頭頁の印刷開始までの間に増粘が進行しやすくなるので、先頭頁直前空吐出動作に併せて、先頭頁の印刷を開始する前に、ラインフラッシング動作を行って、より確実に増粘液体を排出し、ノズルの状態を維持回復する。
【0075】
なお、上記第2ないし第4実施形態において、先頭頁前空吐出動作を行った後、先頭頁の印字を開始する前に行う、空吐出滴がライン状に着弾する空吐出動作として、印字中空吐出動作としてのラインフラッシング動作を行っているが、これに限定されない。印字中空吐出動作としてのラインフラッシング動作と異なる空吐出パターンで空吐出滴がライン状に着弾する空吐出とすることもできる。
【0076】
次に、本発明の第5実施形態について図16を参照して説明する。図16は同実施形態における空吐出動作の制御の説明に供するフロー図である。
【0077】
本実施形態では、連続媒体10の搬送を開始してから設定速度に到達するまでの間の加速中に先頭頁前空吐出動作を行っている。
【0078】
このように構成すれば、連続媒体10の搬送速度が設定速度に到達した後速やかに先頭頁の印刷を開始することができる。
【0079】
また、先頭頁前空吐出動作を行った後に吐出状態を検知して、不良ノズルが検知されたときには先頭頁前空吐出動作を繰り返すこともでき、より確実に先頭頁から正常な吐出を行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0080】
5 印刷手段
10 連続媒体
50 液体吐出ユニット
51 ヘッドユニット
100 液体吐出ヘッド(ヘッド)
500 出力制御装置
600 上位装置
図1
図2
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図16