特許第6987567号(P6987567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本放送協会の特許一覧

<>
  • 特許6987567-配信装置、受信装置及びプログラム 図000002
  • 特許6987567-配信装置、受信装置及びプログラム 図000003
  • 特許6987567-配信装置、受信装置及びプログラム 図000004
  • 特許6987567-配信装置、受信装置及びプログラム 図000005
  • 特許6987567-配信装置、受信装置及びプログラム 図000006
  • 特許6987567-配信装置、受信装置及びプログラム 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987567
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】配信装置、受信装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/238 20110101AFI20211220BHJP
   H04N 21/431 20110101ALI20211220BHJP
【FI】
   H04N21/238
   H04N21/431
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-152742(P2017-152742)
(22)【出願日】2017年8月7日
(65)【公開番号】特開2019-33362(P2019-33362A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年6月29日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)日本放送協会のウェブサイト<http://www.nhk.or.jp/strl/open2017/>にて公開 (2)NHK技研公開2017にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】関口 頌一朗
(72)【発明者】
【氏名】西村 敏
(72)【発明者】
【氏名】山本 正男
【審査官】 岩井 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−282276(JP,A)
【文献】 特開2007−329847(JP,A)
【文献】 特開2010−103773(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0191997(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/049810(WO,A1)
【文献】 特開2013−183209(JP,A)
【文献】 特開2009−049467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00−21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配信装置から、複数の動画の組み合わせのうちの1つ、及び当該複数の動画を縮小して並べたサムネイル動画を受信する受信部と、
前記サムネイル動画から、視聴する動画の選択操作を受け付ける選択部と、
前記視聴する動画の再生準備が完了するまでの間、前記サムネイル動画のうち、前記視聴する動画の領域を拡大して表示する表示制御部と、を備え、
前記受信部は、ネットワークの帯域幅に基づいて、前記選択操作の頻度が閾値以上となった場合に、前記視聴する動画のビットレートを下げ、前記サムネイル動画のビットレートを上げることにより、前記視聴する動画及び前記サムネイル動画それぞれのビットレートを選択し、前記配信装置へ要求する受信装置。
【請求項2】
配信装置から、複数の動画の組み合わせのうちの1つ、及び当該複数の動画を縮小して並べたサムネイル動画を受信する受信部と、
前記サムネイル動画から、視聴する動画の選択操作を受け付ける選択部と、
前記視聴する動画の再生準備が完了するまでの間、前記サムネイル動画のうち、前記視聴する動画の領域を拡大して表示する表示制御部と、を備え、
前記受信部は、ネットワークの帯域幅に基づいて、前記選択操作の頻度が閾値未満となった場合に、前記視聴する動画のビットレートを上げ、前記サムネイル動画のビットレートを下げることにより、前記視聴する動画及び前記サムネイル動画それぞれのビットレートを選択し、前記配信装置へ要求する受信装置。
【請求項3】
コンピュータを、請求項1又は請求項2に記載の受信装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画の配信装置、受信装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のカメラが同時に撮影を行い、これらの映像を切り替えながら視聴するシステムは、映像制作及び編集の場面や、監視カメラによるサーベイランスの場面等で広く利用されている。例えば、非特許文献1では、多視点から被写体を撮影する多視点ロボットカメラ技術が提案されている。
しかし、複数のカメラから撮影した映像をコンテンツとして視聴者が視聴する際には、既に制作者により編集された単一の動画になっており、視聴者側に視点を選択して視聴する自由はなかった。
【0003】
このような状況において、非特許文献2では、視聴端末に専用ソフトウェアをインストールすることにより、視聴者が任意に視点を変えながらストリーミング形式で動画を視聴できる多視点カメラ動画のコンピュータ上での視聴システムが提案されている。
【0004】
また、インターネット上でアダプティブストリーミング方式によりストリーミング動画配信を行うために、MPEG−DASH(MPEG−Dynamic Adaptive Streaming over HTTP)、HLS(HTTP Live Streaming)等の規格が制定されている(例えば、非特許文献3参照)。これらは、視聴環境の構築に専用のソフトウェアを必要とせず、ウェブブラウザでの動画視聴を想定して標準化された技術である。
特許文献1には、多視点動画のストリーミングをネットワーク経由で切り替え、Windows(登録商標)上のウェブブラウザで再生する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−183209号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】池谷 健佑、映像情報メディア学会誌、2016年、Vol.70、No.5、pp.719−721
【非特許文献2】Jian−Guang Lou、Proceedings of the 13th annual ACM international conference on Multimedia、2005年、pp.161−170
【非特許文献3】平林 光治、映像情報メディア学会誌、2013年、Vol.67、No.2、pp.109−115
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、動画のストリーミング視聴は、視聴端末が動画配信サーバから受信したファイルを再生環境下でバッファリングし、デコードするための十分な量がバッファリングできた時点で再生を開始する。したがって、視聴端末は、ストリーミング視聴時に動画を切り替えるためには、異なる動画をサーバに対して再度要求してバッファリングしてから再生を行う。このため、動画を切り替えた後に映像が再生されるまでに遅延が発生する。
【0008】
動画の切り替えに時間を要すると、視聴者が動画切り替えの操作を行っても瞬時に切り替わらないため、視聴体験の質を損なってしまう。全ての動画を同時に配信し、受信端末で全ての動画を常時デコードしておくことで切り替え時の遅延を低減できるが、視聴していない動画についても配信することになるため、通信帯域及び処理負荷が増大していた。
【0009】
本発明は、複数の動画を効率的に配信し、かつ、視聴動画を高速に切り替えられる配信装置、受信装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る配信装置は、複数の動画の組み合わせ、及び当該複数の動画を縮小して並べたサムネイル動画を記録する記録部と、受信装置からの要求に応じて、前記複数の動画のうちの1つ、及び前記サムネイル動画を、前記受信装置へ送信する送信部と、を備え、前記送信部は、前記受信装置において前記サムネイル動画から選択された視聴する動画の要求を受け付け、前記サムネイル動画は、前記受信装置において前記視聴する動画の再生準備が完了するまでの間、前記サムネイル動画のうち、前記視聴する動画の領域を拡大して表示するためのものである。
【0011】
前記記録部は、前記複数の動画及び前記サムネイル動画のそれぞれについて、複数のビットレートで記録してもよい。
【0012】
本発明に係る受信装置は、配信装置から、複数の動画の組み合わせのうちの1つ、及び当該複数の動画を縮小して並べたサムネイル動画を受信する受信部と、前記サムネイル動画から、視聴する動画の選択操作を受け付ける選択部と、前記視聴する動画の再生準備が完了するまでの間、前記サムネイル動画のうち、前記視聴する動画の領域を拡大して表示する表示制御部と、を備える。
【0013】
前記受信部は、ネットワークの帯域幅に基づいて、前記視聴する動画及び前記サムネイル動画それぞれのビットレートを選択し、前記配信装置へ要求してもよい。
【0014】
前記受信部は、前記選択操作の頻度が閾値以上となった場合に、前記視聴する動画のビットレートを下げ、前記サムネイル動画のビットレートを上げてもよい。
【0015】
前記受信部は、前記選択操作の頻度が閾値未満となった場合に、前記視聴する動画のビットレートを上げ、前記サムネイル動画のビットレートを下げてもよい。
【0016】
前記複数の動画は、多視点動画であり、前記選択部は、前記選択操作として、前記複数の動画の連続切り替えの開始及び終了を受け付けてもよい。
【0017】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、前記配信装置又は前記受信装置の各部として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の動画を効率的に配信し、かつ、視聴動画を高速に切り替えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る配信システムの概念図である。
図2】実施形態に係るエンコーダの動作例を示す図である。
図3】実施形態に係る配信サーバ及び受信装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る配信サーバと受信装置との間での動画切り替えの動作を示す図である。
図5】実施形態に係る視聴中の動画の切り替え時におけるビットレートの決定処理を示すフローチャートである。
図6】実施形態に係る動画視聴中のビットレートの変更処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
図1は本実施形態に係る配信システム1の概念図である。
複数のカメラCが同時に撮影を行い、各映像信号が後段のエンコーダEに入力される。エンコーダEは、入力された映像信号をMPEG−DASHに符号化し、配信サーバ10(配信装置)上に配置する。
【0021】
配信サーバ10は、視聴端末である受信装置20から動画の視聴要求を受け、要求された動画を、受信装置20に対してインターネット経由でストリーミング配信する。
なお、エンコーダEに入力される映像は、カメラCで撮影した映像には限られず、例えば、録画機器に収録した再生映像が入力されてもよい。また、入力される映像の数(カメラCの数)も限定されない。
【0022】
図2は、本実施形態に係るエンコーダEの動作例を示す図である。
エンコーダEは、複数のカメラから入力された映像信号を、それぞれMPEG−DASH形式の動画データに変換し、これら複数の動画をAdaptation Setと呼ばれる1つのグループにまとめ、単一のマニフェストファイル(MPDファイル)を生成する。Adaptation Setで1つのグループにまとめられた複数の動画のうち、ある時点で受信装置20へ配信している動画は1つとなる。
【0023】
また、エンコーダEは、各カメラCの映像を縮小してタイル状に並べて連結した動画(以降、サムネイル動画と呼ぶ)を生成し、各カメラCの映像に対応する動画とは別にMPEG−DASH形式の動画とし、マニフェストファイルを生成する。
【0024】
エンコードされた各カメラCの映像に対応した動画及びサムネイル動画と、各カメラCの映像に対応した動画をまとめたマニフェストファイル及びサムネイル動画のマニフェストファイルとは、配信サーバ10に配置される。
【0025】
図3は、本実施形態に係る配信サーバ10及び受信装置20の機能構成を示すブロック図である。
配信サーバ10は、記録部11と、送信部12とを備える。これらの各部は、配信サーバ10の制御部(CPU)が所定のソフトウェアを実行することにより実現される。
【0026】
記録部11は、カメラCの映像それぞれに対応した複数の動画の組み合わせ、及びこれら複数の動画を縮小して並べたサムネイル動画をエンコーダEから受け取り、配信サーバ10の内部又は外部に設けられたストレージに記録する。
このとき、記録部11は、複数の動画及びサムネイル動画のそれぞれについて、複数のビットレートで受け取り記録する。
【0027】
送信部12は、受信装置20からの要求に応じて、複数の動画のうちの1つ、及びサムネイル動画を、受信装置20へ送信する。
【0028】
受信装置20は、テレビ、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン又はタブレット端末等の視聴端末であり、選択部21と、受信部22と、表示制御部23とを備える。これらの各部は、受信装置20の制御部(CPU)が所定のソフトウェアを実行することにより実現される。
【0029】
選択部21は、サムネイル動画から、視聴する動画の選択操作を受け付ける。
複数の動画は、例えば被写体を複数のカメラCで撮影した多視点の動画の組み合わせであり、選択部21は、選択操作として、複数の動画の連続切り替えの開始及び終了を受け付けてもよい。例えば、タッチパネル上でのタッチの時間又は移動距離等に応じて、サムネイル動画の各カメラCに対応する領域が順に切り替えて表示され、タッチの終了により1つのカメラCに対応する動画が選択される。
【0030】
受信部22は、選択操作に応じて、配信サーバ10へ視聴するカメラCの映像を要求し、対応する動画及びサムネイル動画を受信する。
このとき、受信部22は、ネットワークの帯域幅に基づいて、視聴するカメラ映像に対応する動画及びサムネイル動画それぞれのビットレートを選択し、配信サーバ10へ要求する。
【0031】
具体的には、受信部22は、選択操作の頻度が閾値以上となった場合に、視聴するカメラ映像に対応する動画のビットレートを下げ、サムネイル動画のビットレートを上げる。
また、受信部22は、選択操作の頻度が閾値未満となった場合に、視聴するカメラ映像に対応する動画のビットレートを上げ、サムネイル動画のビットレートを下げる。
【0032】
表示制御部23は、視聴するカメラ映像に対応する動画の再生準備が完了するまでの間、サムネイル動画のうち、視聴する動画に対応する領域を拡大してディスプレイに表示する。表示制御部23は、視聴するカメラ映像に対応する動画の再生準備が完了し、再生を開始すると、このカメラ映像に対応する動画をディスプレイに表示させる。
【0033】
図4は、本実施形態に係る配信サーバ10と受信装置20との間での動画切り替えの動作を示す図である。
配信サーバ10は、受信装置20から動画の要求があると、複数の動画のうち要求されたカメラCの動画を受信装置20に対して配信する。さらに、配信サーバ10は、各カメラCの動画と共に、サムネイル動画についても受信装置20に対して同時に配信する。
このように、配信サーバ10は、常時、選択されている動画及びサムネイル動画の2つのストリーム動画を受信装置20に対して配信する。
【0034】
受信装置20は、配信サーバ10から受信した動画を表示しつつ、視聴者から動画の切り替え操作を受け付ける。配信サーバ10は、受信装置20から動画の切り替えが要求されると、要求されたカメラCのセグメントに配信を切り替える。
【0035】
視聴する動画の切り替えの処理は以下の手順で行われる。
受信装置20は、配信サーバ10から、選択したカメラC(例えば1番目)の動画及びサムネイル動画を受信し、同期して再生する。このとき、受信装置20は、選択したカメラCの動画と、サムネイル動画の対応する領域との表示サイズを同じにし、かつ、画面上での表示位置を同じにした上で、選択されたカメラCの動画が前面に表示されるように再生する(図4上段)。
【0036】
受信装置20は、動画の切り替え操作が行われると、まず背面で再生しているサムネイル動画のうち、切り替え後の動画(例えば3番目)にあたる部分を切り出し、前面で再生している動画のサイズまで拡大し、選択されていた動画より前面に表示する。これによって、サムネイル動画を切り出して拡大した動画がディスプレイ上で視聴される。
受信装置20は、サムネイル動画への表示切り替えが完了すると、配信サーバ10から受信していたカメラCの動画の要求を停止し、新たに切り替え後のカメラCの動画を配信サーバ10に対して要求する(図4中段)。
【0037】
受信装置20は、新たに要求したカメラCの動画を再生し始めると、この動画を、表示中の拡大したサムネイル動画より前面に切り替えて表示する(図4下段)。
ここまでの処理により、一連の動画切り替えの動作が完了する。
【0038】
なお、動画切り替えの操作は、例えば、視聴者がPCを使用している場合には再生ソフトウェア上の切り替えボタンを押して行ってよい。
また、視聴者がスマートフォン又はタブレット端末等の携帯型電子機器を使用している場合には、画面をタッチしてなぞる(ドラッグする)ことで切り替えを行ってもよい。この場合、受信装置20は、ドラッグの距離に応じて、サムネイル動画における表示領域を連続的に切り替え、タッチ終了時に選択されているカメラCの映像に対応する動画を配信サーバ10へ要求する。
【0039】
図5は、本実施形態に係る視聴中の動画の切り替え時におけるビットレートの決定処理を示すフローチャートである。
エンコーダEは、各カメラCの映像及びサムネイル動画について、それぞれ複数のビットレートでMPEG−DASH形式へのエンコードを行っており、受信装置20は、視聴者側の回線速度に応じて、どの画質の動画を受信すべきかを自動又は手動で決定する。
【0040】
ここで、各カメラCの映像は、N種類のビットレートB〜B(B<B<・・・<B)でエンコードされ、サムネイル動画は、M種類のビットレートT〜T(T<T<・・・<T)でエンコードされているものとする。
また、視聴者側のネットワーク帯域幅をWとする。なお、この帯域幅Wは、時刻毎に変化し得る。
【0041】
ステップS1において、受信装置20は、動画再生に伴って、視点の切り替え操作(動画切り替え操作)の受け付けを開始し、動画再生の終了までループする。
【0042】
ステップS2において、受信装置20は、視点が操作されたか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS3に移り、判定がNOの場合、処理はステップS7に移る。
【0043】
ステップS3において、受信装置20は、視点を切り替え、動画を受信する対象のカメラCを決定する。
【0044】
ステップS4において、受信装置20は、過去一定時間に行われた動画の切り替え回数が閾値以上か否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS5に移り、判定がNOの場合、処理はステップS7に移る。
【0045】
ステップS5において、受信装置20は、現在視聴中のカメラ映像に対応する動画のビットレートが最低画質(B)か否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS7に移り、判定がNOの場合、処理はステップS6に移る。
【0046】
ステップS6において、受信装置20は、視聴者による動画の切り替え回数が多いと判断し、選択されたカメラ映像に対応する動画のビットレートを1段階低くし、切り替え中に表示するサムネイル動画のビットレートを自動的に高くする。
これにより、動画の切り替え時にカメラ映像に対応する動画からサムネイル動画に表示を切り替えたとき、及びサムネイル動画から再びカメラ映像に対応する動画に表示を戻すときに、それぞれ画質の差異が小さくなるため、操作の多い視聴者にとっては違和感が小さくなる。
【0047】
ここで、ビットレート制御のトリガとなる一定時間及び操作回数の閾値は、例えば配信者がコンテンツの種類又は動画の長さ等に応じて事前に決定する値である。これらは、現在受信している2つの動画のビットレートのレベルに応じて段階的に設定され、動的に変更されてもよい。
【0048】
サムネイル動画のビットレートは、カメラ映像に対応する動画のビットレートをBからBi−1に下げたとき、例えば以下の数式に従い、カメラ映像に対応する動画とサムネイル動画との和が受信装置20の帯域幅W以下になるようにしつつ、最大のビットレートが自動的に選択される。
maxT s.t. Bi−1+T≦αW
ただし、係数αは、0以上1以下の値をとる安全率であり、配信者が事前に決定する値である。
【0049】
なお、サムネイル動画のビットレートを選択する処理は、MPEG−DASH又は他のアダプティブストリーミングのプロトコルに標準的に備わっている、ビットレートの最適化機能によって自動的に行われてよい。
【0050】
ステップS7において、動画の再生が継続している場合、処理はステップS1に戻り、再生が終了すると、処理は終了する。
【0051】
図6は、本実施形態に係る動画視聴中のビットレートの変更処理を示すフローチャートである。
ステップS11において、受信装置20は、動画再生に伴って、所定の周期(例えば、5秒毎)で、動画再生の終了まで以下の処理を繰り返す。
【0052】
ステップS12において、受信装置20は、過去一定時間のうちに行われた動画の切り替え回数を計測し、この回数が閾値未満か否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS13に移り、判定がNOの場合、処理はステップS15に移る。
【0053】
ステップS13において、受信装置20は、現在のサムネイル動画のビットレートが最低画質(T)か否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS15に移り、判定がNOの場合、処理はステップS14に移る。
【0054】
ステップS14において、受信装置20は、視聴者による動画の切り替え回数が減少したと判断し、切り替え中に表示するサムネイル動画のビットレートを1段階低くし、カメラ映像のビットレートを自動的に高くする。
これにより、現在視聴しているカメラ映像に対応する動画のビットレートが高くなるため画質が向上し、操作が少ない視聴者は、高画質な動画を視聴できる。
【0055】
ここで、操作回数を計測する周期と、ビットレート制御のトリガとなる一定時間及び操作回数の閾値は、例えば配信者がコンテンツの種類又は動画の長さ等に応じて事前に決定する値である。これらは、現在受信している2つの動画のビットレートのレベルに応じて段階的に設定され、動的に変更されてもよい。
【0056】
カメラ映像に対応する動画のビットレートは、サムネイル動画のビットレートをTからTj−1に下げたとき、例えば以下の数式に従い、カメラ映像に対応する動画とサムネイル動画との和が帯域幅W以下になるようにしつつ、最大のビットレートが自動的に選択される。
maxB s.t. B+Tj−1≦αW
【0057】
なお、カメラ映像に対応する動画のビットレートを選択する処理は、サムネイル動画のビットレートを選択する処理(図5)と同様に、アダプティブストリーミングの機構によって自動的に行われてよい。
【0058】
ステップS15において、動画の再生が継続している場合、処理はステップS11に戻り、再生が終了すると、処理は終了する。
【0059】
本実施形態によれば、配信システム1は、複数のカメラCの映像それぞれに対応する動画のいずれか1つと、サムネイル動画とを、配信サーバ10から同時に配信する。受信装置20は、受信した2つの動画を同期して再生し、動画の切り替え時には、切り替え後の動画再生の準備が整うまでサムネイル動画の一部領域を拡大表示することで代替する。
したがって、配信システム1は、複数の動画全てを同時に配信して動画の切り替えを行うシステムに比べて、現在視聴している動画及びサムネイル動画の2つのみを配信するので、配信帯域を節約できる。この結果、配信システム1は、複数の動画を効率的に配信し、かつ、視聴動画を高速に切り替えられる。
【0060】
動画をストリーミング配信する際に、視聴者は、PC、スマートフォン、タブレット端末等、様々な電子機器を使用して動画を視聴することが想定される。配信システム1は、MPEG−DASHを用いて、受信ソフトウェアをウェブブラウザ上のウェブアプリ形式で実装することにより、専用のソフトウェアをインストールせずに、様々な電子機器上での実行が可能になる。
【0061】
また、配信システム1は、カメラ映像に対応する動画とサムネイル動画とを、それぞれ複数のビットレートでエンコードして記録する。受信装置20がこれらをダウンロードする際に、ネットワークの帯域幅に応じて、両者のビットレート配分を制御することで視聴者の視聴スタイルに合わせた配信が可能になる。
【0062】
視聴者によっては、1つの動画を連続して視聴したり、動画の切り替えを短時間に何度も行いながら視聴したりする等、視聴スタイルは多様である。配信システム1は、視聴者毎の動画切り替えの操作頻度に応じて、現在視聴しているカメラ映像に対応する動画のビットレートと、動画切り替え中に表示するサムネイル動画のビットレートとの配分を制御する。頻繁に切り替えを行う視聴者に対しては、サムネイル動画の画質を向上させ、切り替えの頻度が低い視聴者に対しては、切り替え後の動画の画質を向上させることにより、視聴者の視聴スタイル合わせた満足度の高い画質での配信が可能になる。
【0063】
また、画面をタッチして操作するスマートフォン又はタブレット端末等の受信装置20は、複数の動画を切り替えて視聴する場合、タッチ操作に応じて切り替え候補の動画を連続的に表示させることにより、視聴者に直感的な操作方法を提供できる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0065】
本実施形態では、動画の配信プロトコルにMPEG−DASHを使用しているが、これには限られず、受信する動画のビットレートを自動的に制御する機能を持つ他のアダプティブストリーミングの方式を利用してもよい。
【0066】
本実施形態では、主に配信システム1の構成と動作について説明したが、本発明はこれに限られず、各構成要素を備え、配信サーバ10から受信装置20へ複数の動画を配信するための方法、又はプログラムとして構成されてもよい。
【0067】
さらに、配信システム1の機能を実現するためのプログラムをコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。
【0068】
ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0069】
さらに「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時刻の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時刻プログラムを保持しているものも含んでもよい。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0070】
C カメラ
E エンコーダ
1 配信システム
10 配信サーバ(配信装置)
11 記録部
12 送信部
20 受信装置
21 選択部
22 受信部
23 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6