特許第6987745号(P6987745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987745熱硬化性樹脂組成物、硬化物、成形材料、及び、成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987745
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、硬化物、成形材料、及び、成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20211220BHJP
   C08L 79/00 20060101ALI20211220BHJP
   C08G 65/04 20060101ALI20211220BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20211220BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   C08L71/02
   C08L79/00 B
   C08G65/04
   C08K5/13
   C08K5/17
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-514166(P2018-514166)
(86)(22)【出願日】2017年3月3日
(86)【国際出願番号】JP2017008472
(87)【国際公開番号】WO2017187783
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2019年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2016-89601(P2016-89601)
(32)【優先日】2016年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505136963
【氏名又は名称】株式会社ASM
(73)【特許権者】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 聖司
(72)【発明者】
【氏名】増原 悠策
(72)【発明者】
【氏名】趙 長明
(72)【発明者】
【氏名】大塚 恵子
(72)【発明者】
【氏名】木村 肇
(72)【発明者】
【氏名】松本 明博
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/083522(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 71/00−71/14
C08L 79/00−79/08
C08G 65/00−65/48
C08K 5/00−5/59
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイミド基を有する化合物、及び、
環状分子と、該環状分子の開口部を串刺し状に貫通する直鎖状分子と、該直鎖状分子の両端を封鎖する封鎖基とからなるポリロタキサンを含有し、
更に、1分子中に2個以上のアルケニル基を有する芳香族化合物、及び、1分子中に2個以上のアミノ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有し、
前記1分子中に2個以上のアルケニル基を有する芳香族化合物は、下記式(5)で表される化合物であり、
前記1分子中に2個以上のアミノ基を有する化合物は、下記式(7)で表される化合物である
熱硬化性樹脂組成物。
【化5】
式(5)中、Rは炭素数2〜6の置換又は無置換のアルケニル基であり、sは1〜4の整数であり、Xは一価の原子若しくは原子団又は二価以上の残基であり、lは1以上の整数であり、Xがアルケニル基を含まない場合、s及びlのうちの少なくともいずれかは2以上であり、Xが一価の原子又は原子団の場合、lは1である。Rが複数ある場合、各
は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【化7】
式(7)中、Vは、二価の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、又は、二価の置換若しくは無置換の脂環式炭化水素基である。
【請求項2】
マレイミド基を有する化合物は、1分子中に2個以上のマレイミド基を有する請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
マレイミド基を有する化合物は、マレイミド基に加え、アルケニル基及び/又はアミノ基を有する請求項1又は2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
ポリロタキサンは、直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、かつ、環状分子がα−シクロデキストリン由来の分子である請求項1、2又は3記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4記載の熱硬化性樹脂組成物にフィラーを配合してなる成形材料。
【請求項7】
請求項6記載の成形材料を硬化させてなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物に関する。また、本発明は、該熱硬化性樹脂組成物を用いてなる硬化物、成形材料、及び、成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子デバイス用の封止材料として、低ソリ性、低応力性、高熱伝導性、高絶縁性等の利点を有することから、エポキシ樹脂が広く用いられてきた。しかしながら、デバイスの高性能化や使用条件の過酷化により、従来のエポキシ樹脂では、耐熱性等に関する要求を満たすことが困難になっている。特に、近年の省エネルギー化の流れから注目されているパワーデバイス関連では、炭化ケイ素素子や窒化ガリウム素子の開発が進められており、これらの素子では200℃以上の温度での動作保証が求められている。そのため、200℃以上の温度での動作保証に対応できる新たな封止材料が求められており、エポキシ樹脂に代わる封止材料としてマレイミド樹脂が注目されている。
【0003】
マレイミド樹脂は、高耐熱性であり、寸法安定性に優れるが、一般的に、得られる硬化物が脆いという欠点があった。この欠点を改善するための方法として、マレイミド樹脂の分子構造を改良する方法(特許文献1)や、ゴムや熱可塑性樹脂を添加する方法(特許文献2、3)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−295111号公報
【特許文献2】特開平7−149952号公報
【特許文献3】特開平6−41332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなマレイミド樹脂中の分子構造を改良する方法では、分子の構造が硬化物の耐熱性に影響し、高耐熱性と強靭性とを両立させることが困難であることがわかった。また、特許文献2、3に開示されているような、マレイミド樹脂にゴムや熱可塑性樹脂を添加する方法では、要求される靭性を出すために多量のゴムや熱可塑性樹脂の添加が必要となり、その結果、機械的強度や耐熱性を低下させてしまうといった課題があることがわかった。
本発明は、機械的強度や耐熱性を大きく低下させることなく、靭性、接着性に優れる硬化物を得ることができる熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該熱硬化性樹脂組成物を用いてなる硬化物、成形材料、及び、成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、マレイミド基を有する化合物、及び、環状分子と、該環状分子の開口部を串刺し状に貫通する直鎖状分子と、該直鎖状分子の両端を封鎖する封鎖基とからなるポリロタキサンを含有し、更に、1分子中に2個以上のアルケニル基を有する芳香族化合物、1分子中に2個以上のアミノ基を有する化合物、及び、1分子中にアルケニル基とアミノ基とをそれぞれ1個ずつ有する芳香族化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する熱硬化性樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、マレイミド基を有する化合物とポリロタキサンとを組み合わせて用いることにより、機械的強度、耐熱性、及び、靭性に優れる硬化物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、マレイミド基を有する化合物(以下、「マレイミド化合物」ともいう)を含有する。
例えば、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンを縮合して得られるポリイミド化合物は、分子が直線状に成長する。このポリイミド化合物は、強度が強く、主に金属への接着性に優れ、例えば、フレキシブル銅張積層板に使用されるが、硬化時の水やアルコールの副生によりボイド(気泡)が発生しやすいという不具合がある。その一方、本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いられるマレイミド化合物は、付加反応で硬化が進行するため、副生物がなく、実質的にボイドは発生しないという長所をもつ。また、マレイミド化合物は、強度に優れるうえに、硬化反応において、分子が3次元網目構造状に成長するため、金属に加えて、ガラス、有機材料等の幅広い材料への接着性に優れ、例えば、ガラス基材銅張積層板や有機基材銅張積層板等で使用される。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、このようなマレイミド化合物とポリロタキサンとを組み合わせて用いることで、上述したマレイミド化合物の優れた特性を維持したまま硬化物に高い靭性を付与することができるため、更なる用途拡大が期待できる。
【0009】
前記マレイミド化合物は、1分子中に2個以上のマレイミド基を有することが好ましい。1分子中に2個以上のマレイミド基を有することにより、容易に3次元網目構造を形成することができ、より耐熱性の高い硬化物が得られる。
また、前記マレイミド化合物は、芳香族環を有するマレイミド化合物であることが好ましい。
【0010】
1分子中に2個以上のマレイミド基を有する化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物等が挙げられる。
【0011】
【化1】
【0012】
式(1)中、Zは二価以上の残基であり、nは2以上の整数である。
【0013】
前記式(1)中、Zで表される二価以上の残基としては、例えば、炭素数1〜9の置換又は無置換の脂肪族炭化水素基や、フェニレン基、ナフタレン基、ベンゼントリイル基、ベンゼンテトライル基等の置換又は無置換の芳香族炭化水素基や、これらの脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基を含む基等が挙げられる。
【0014】
前記式(1)で表される化合物のなかでも、硬化物の耐熱性の観点から、下記式(2)で表される化合物、及び、下記式(3)で表される化合物が好ましい。また、前記式(1)で表される化合物以外では、硬化物の耐熱性の観点から、下記式(4)で表される構造を有する化合物が好ましい。
【0015】
【化2】
【0016】
式(2)中、Yは、結合手、炭素数1〜6の置換若しくは無置換のアルキレン基、−N=N−、−N=C=N−、−C(=O)−、−SO−、−S(=O)−、−O−、−S−、二価の置換若しくは無置換の環式脂肪族炭化水素基、又は、二価の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基であり、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6の置換若しくは無置換の炭化水素基、炭素数1〜6の置換若しくは無置換のアルコキシ基、又は、ハロゲン基であり、o及びpは、それぞれ独立に、0〜4の整数である。oが2以上である場合、複数あるRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、pが2以上である場合、複数あるRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0017】
【化3】
【0018】
式(3)中、Rは、炭素数1〜6の置換若しくは無置換の炭化水素基、炭素数1〜6の置換若しくは無置換のアルコキシ基、又は、ハロゲン基であり、qは0〜4の整数である。qが2以上である場合、複数あるRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0019】
【化4】
【0020】
式(4)中、Rは、炭素数1〜6の置換若しくは無置換の炭化水素基、炭素数1〜6の置換若しくは無置換のアルコキシ基、又は、ハロゲン基であり、rは0〜3の整数であり、mは2以上である。rが2以上である場合、複数あるRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0021】
式(2)のYにおける芳香族炭化水素基や、式(2)のR及びR、式(3)のR、並びに、式(4)のRにおける炭化水素基やアルコキシ基が置換されている場合、置換基としては、例えば、ハロゲン基、ヒドロキシ基、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、複素環基等が挙げられる。
【0022】
前記マレイミド化合物としては、具体的には例えば、4、4’−ビスマレイミドビフェニル、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドシクロヘキシル)メタン、ビス(3−マレイミドシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−プロピル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジプロピル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−ブチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジブチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミド−5−メチルフェニル)メタン、1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェニルオキシ)フェニル]プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェニルオキシ)フェニル]プロパン、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(3−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(3−マレイミドフェニル)スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェニルオキシ)フェニル]スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(3−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホキシド、ビス(3−マレイミドフェニル)スルホキシド、ビス(4−マレイミドフェニル)ジフェニルシラン、1,4−ビス(4−マレイミドフェニル)シクロヘキサン、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、1,3−フェニレンビスマレイミド、1,4−フェニレンビスマレイミド、1,2−フェニレンビスマレイミド、ナフタレン−1,5−ジマレイミド、4−クロロ−1,3−フェニレンビスマレイミド、ノボラック型ポリマレイミド、ザイロック型ポリマレイミド等が挙げられる。これらのマレイミド化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
前記1分子中に2個以上のマレイミド基を有する化合物のマレイミド基は、硬化物の耐熱性の観点から、分子が線対称性を有するようになる位置に存在することが好ましい。
【0023】
前記マレイミド化合物は、マレイミド基に加え、アルケニル基及び/又はアミノ基を有していてもよい。
アルケニル基を有するマレイミド化合物としては、例えば、N−アリルマレイミド、N−メタクリルマレイミド、メタクリル酸N−エチルマレイミジル、アクリル酸N−エチルマレイミジル等が挙げられる。
アミノ基を有するマレイミド化合物としては、例えば、N−アミノメチルマレイミド、N−(2−アミノエチル)マレイミド、N−(4−アミノフェニル)マレイミド等が挙げられる。
【0024】
本発明の熱硬化性樹脂組成物全体中における前記マレイミド化合物の含有量の好ましい下限は30質量%、好ましい上限は95質量%であり、より好ましい下限は50質量%、より好ましい上限は85質量%である。
【0025】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、環状分子と、該環状分子の開口部を串刺し状に貫通する直鎖状分子と、該直鎖状分子の両端を封鎖する封鎖基とからなるポリロタキサンを含有する。
【0026】
前記環状分子は、開口部に直鎖状分子が串刺し状に貫通するように包接可能であり、かつ、前記直鎖状分子上で移動可能な化合物である。
前記環状分子により前記直鎖状分子を包接する方法としては、従来公知の方法(例えば、特開2005−154675号公報記載の方法等)を用いることができる。
なお、本明細書において、前記環状分子の「環状」とは、実質的に環状であることを意味し、前記直鎖状分子上で移動可能であれば、完全な閉環構造体でなくてもよく、例えば、螺旋構造体であってもよい。
【0027】
前記環状分子としては、例えば、環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン等の環状ポリマーや、ピラーアレーン類、シクロファン類、環拡張ポルフィリン類、シクロデキストリン類等が挙げられる。
前記環状ポリマーとしては、例えば、クラウンエーテル及びその誘導体、カリックスアレーン及びその誘導体、シクロファン及びその誘導体、クリプタンド及びその誘導体等が挙げられる。
前記環状分子としては、用いる直鎖状分子の種類によって適宜選択されるが、入手の容易さ、及び、封鎖基の種類を多数選択できることから、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等のシクロデキストリン類が好ましい。例えば、後述するように、直鎖状分子としてポリエチレングリコールを選択した場合には、得られる包接体の安定性の観点から、α−シクロデキストリンが好ましい。
【0028】
前記環状分子としてシクロデキストリン類を使用する場合、該シクロデキストリン類の水酸基の一部が、前記マレイミド化合物との相溶性を向上させる修飾基(以下、「溶解性付与基」ともいう)によって修飾されていることが好ましい。
【0029】
前記溶解性付与基としては、例えば、アセチル基、炭素数1〜18のアルキル基、トリチル基、トリメチルシリル基、フェニル基、ポリエステル鎖、オキシエチレン鎖、ポリアクリル酸エステル鎖等が挙げられる。これらの修飾基は単独で導入されていてもよいし、2種以上が導入されていてもよい。2種以上の修飾基を導入する場合、例えば、オキシエチレン鎖とポリエステル鎖とを導入する場合、シクロデキストリン類の水酸基を、まずオキシエチレン鎖で修飾し、導入されたオキシエチレン鎖末端の水酸基を起点として、ポリエステル鎖を導入する方法等を用いることができる。具体的には、シクロデキストリン自体に存在する水酸基にヒドロキシプロピル基を付加した後、該ヒドロキシプロピル基の水酸基を介してε−カプロラクトンの開環重合を行い、ポリカプロラクトン(ポリエステル)鎖を導入することができる。
【0030】
前記溶解性付与基の導入率は、前記マレイミド化合物との相溶性の観点から、環状分子としてシクロデキストリン類を用いる場合、シクロデキストリン類の全水酸基に対して、好ましい下限が10モル%、好ましい上限が90モル%、より好ましい下限が30モル%、より好ましい上限が70モル%である。
【0031】
本発明の熱硬化性樹脂組成物に含有されるポリロタキサンは、熱硬化反応に直接関与できる置換基(以下、「硬化反応性置換基」ともいう)を有していてもよい。前記ポリロタキサンが硬化反応性置換基を有する場合、該硬化反応性置換基は、環状分子、例えば、シクロデキストリン類の水酸基に直接導入されていてもよいし、前記溶解性付与基の末端反応点、例えば、シクロデキストリン類の水酸基にヒドロキシプロピル基を付加した後、該ヒドロキシプロピル基の水酸基を介してε−カプロラクトンの開環重合を行うことによりポリカプロラクトン(ポリエステル)鎖を導入し、形成されたポリカプロラクトン鎖の末端水酸基に導入されていてもよい。ポリロタキサンが硬化反応性置換基を有する場合、相溶性が改善される。また、ポリロタキサンも硬化反応を起こすため、ポリロタキサンが分子レベル(nmオーダー)で分散し、透明な硬化物が得られる。一方、ポリロタキサンが硬化反応性置換基を有しない場合、ポリロタキサンはμmオーダーで分散し、不透明な硬化物が得られる。即ち、光学電子材料等、透明性が求められる用途に用いる場合、前記ポリロタキサンは、硬化反応性置換基を有することが好ましい。
【0032】
前記硬化反応性置換基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
なお、本明細書において、前記「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の少なくともいずれかを意味する。
【0033】
前記硬化反応性置換基は、該硬化反応性置換基を導入する前の環状分子の有する水酸基等の反応性基と、該反応性基と反応可能な官能基及び硬化反応性置換基を有する化合物とを反応させることによって導入することができる。
【0034】
前記反応性基と反応可能な官能基及び硬化反応性置換基を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル基を導入する場合は、例えば、(メタ)アクリロイルクロリド、(メタ)アクリル酸無水物、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
ビニル基を導入する場合は、例えば、p−ビニル安息香酸、p−ビニル安息香酸クロリド、イソシアン酸3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジル、クロロ酢酸ビニル等が挙げられる。
アリル基を導入する場合は、例えば、p−アリル安息香酸、p−アリル安息香酸クロリド、イソシアン酸アリル、イソチオシアン酸アリル等が挙げられる。
なかでも、入手のしやすさ及び反応性の高さの観点から、(メタ)アクリロイルクロリド、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソシアン酸3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジル、クロロ酢酸ビニル、イソシアン酸アリルが好ましい。
なお、本明細書において、前記「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の少なくともいずれかを意味する。
【0035】
前記硬化反応性置換基の導入率は、環状分子としてシクロデキストリン類を用いる場合、シクロデキストリン類の全水酸基に対して、好ましい下限が5モル%、好ましい上限が80モル%である。前記硬化反応性置換基の導入率がこの範囲であることにより、硬化物が透明性に特に優れるものとなる。前記硬化反応性置換基の導入率のより好ましい下限は10モル%、より好ましい上限は50モル%である。
【0036】
前記環状分子が前記直鎖状分子を包接する際に最大限に包接できる量(最大包接量)に対する前記環状分子の包接量を百分率で示したものを包接率とするとき、包接率の好ましい下限は0.1%、好ましい上限は60%であり、より好ましい下限は1%、より好ましい上限は50%であり、更に好ましい下限は5%、更に好ましい上限は40%である。
なお、前記最大包接量は、直鎖状分子の長さ、及び、環状分子の厚さによって決定することができる。例えば、直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がα−シクロデキストリンである場合の最大包接量は実験的に求められている(Macromolecules 1993,26,5698−5703参照)。
【0037】
前記直鎖状分子は、環状分子の開口部に串刺し状に包接され得るものであり、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、カゼイン、ゼラチン、でんぷん、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、及び、これらとその他のオレフィン系単量体との共重合体等)、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等)、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等)、アクリル樹脂(ポリ(メタ)アクリル酸、ポリメチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルブチラール樹脂等)、ポリアミド樹脂(ナイロン(登録商標)等)、ポリイミド樹脂、ポリジエン樹脂(ポリイソプレン、ポリブタジエン等)、ポリシロキサン樹脂(ポリジメチルシロキサン等)、ポリスルホン樹脂、ポリイミン樹脂(ポリエチレンイミン等)、ポリアミン樹脂、ポリ無水酢酸系樹脂、ポリ尿素系樹脂、ポリスルフィド樹脂、ポリフォスファゼン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリハロオレフィン樹脂、及び、これらの共重合体、誘導体、変性体等が挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテルが好ましく、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレンがより好ましく、ポリエチレングリコールが更に好ましい。
なお、本明細書において、前記「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の少なくともいずれかを意味する。
【0038】
前記直鎖状分子の質量平均分子量の好ましい下限は3000、好ましい上限は30万である。直鎖状分子の質量平均分子量がこの範囲であることにより、ポリロタキサンとマレイミド化合物との相溶性を悪化させることなく得られる硬化物の靭性を向上させる効果により優れるものとなる。前記直鎖状分子の質量平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は5万である。
なお、前記直鎖状分子の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリエチレングリコール換算により求められる値である。GPCによってポリエチレングリコール換算による質量平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、TSKgel SuperAWM−H(東ソー社製)等が挙げられる。
また、前記直鎖状分子以外の質量平均分子量は、特に断りがない限り、GPCで測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による質量平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、TSKgel SuperHM−M(東ソー社製)等が挙げられる。
【0039】
本発明において用いるポリロタキサンは、直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、かつ、環状分子がα−シクロデキストリン由来の分子であることが好ましい。
【0040】
前記封鎖基は、環状分子に包接された直鎖状分子の両末端に配置され、環状分子が脱離しないように作用する役割を有する。直鎖状分子の両端を封鎖基で封鎖する方法としては、従来公知の方法(例えば、特開2005−154675号公報記載の方法等)を用いることができる。
【0041】
前記封鎖基としては、例えば、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、ピレン類、アントラセン類等や、質量平均分子量1000〜100万の高分子の主鎖又は側鎖等が挙げられる。
なかでも、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、ピレン類が好ましく、アダマンタン基類、トリチル基類がより好ましい。
前記質量平均分子量1000〜100万の高分子としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリル酸エステル等が挙げられる。
これらの封鎖基は、ポリロタキサン中で2種以上混在していてもよい。
【0042】
前記ポリロタキサンの含有量は、前記マレイミド化合物100質量部に対して、好ましい下限が1質量部、好ましい上限が20質量部である。前記ポリロタキサンの含有量がこの範囲であることにより、得られる硬化物が靭性及び機械的強度に特に優れるものとなる。前記ポリロタキサンの含有量のより好ましい下限は3質量部、より好ましい上限は10質量部である。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物全体中における前記ポリロタキサンの含有量の好ましい下限は0.5質量%、好ましい上限は10質量%である。前記ポリロタキサンの含有量がこの範囲であることにより、得られる硬化物が靭性及び機械的強度に特に優れるものとなる。前記ポリロタキサンの含有量のより好ましい下限は2質量%、より好ましい上限は5質量%である。
【0043】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、更に、硬化剤として、前記マレイミド化合物以外の1分子中に2個以上のアルケニル基を有する芳香族化合物、1分子中に2個以上のアミノ基を有する化合物、及び、1分子中にアルケニル基とアミノ基とをそれぞれ1個ずつ有する芳香族化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。これらの化合物は、3次元網目構造の形成を促し、得られる硬化物の耐熱性を更に向上させる役割を有する。
【0044】
前記1分子中に2個以上のアルケニル基を有する芳香族化合物としては、例えば、下記式(5)で表される化合物等が挙げられる。
【0045】
【化5】
【0046】
式(5)中、Rは炭素数2〜6の置換又は無置換のアルケニル基であり、sは1〜4の整数であり、Xは一価の原子若しくは原子団又は二価以上の残基であり、lは1以上の整数であり、Xがアルケニル基を含まない場合、s及びlのうちの少なくともいずれかは2以上であり、Xが一価の原子又は原子団の場合、lは1である。Rが複数ある場合、各Rは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
前記式(5)中、Xで表される一価の原子又は原子団としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜6の置換又は無置換のアルキル基等が挙げられる。
前記式(5)中、Xで表される二価以上の残基としては、例えば、炭素数1〜6の置換又は無置換のアルキレン基、−N=N−、−N=C=N−、−C(=O)−、−SO−、−S(=O)−、−O−、−S−、二価の置換又は無置換の環式脂肪族炭化水素基、二価の置換又は無置換の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0048】
前記式(5)で表される化合物のなかでも、硬化物の耐熱性の観点から、下記式(6)で表される化合物が好ましい。
【0049】
【化6】
【0050】
式(6)中、Wは、結合手、炭素数1〜6の置換若しくは無置換のアルキレン基、−N=N−、−N=C=N−、−C(=O)−、−SO−、−S(=O)−、−O−、−S−、二価の置換若しくは無置換の環式脂肪族炭化水素基、又は、二価の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基であり、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数2〜6の置換又は無置換のアルケニル基であり、t及びuは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、t+uは2以上である。t又はuが2以上である場合、複数あるR又はRは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0051】
前記1分子中に2個以上のアルケニル基を有する芳香族化合物としては、具体的には例えば、2,2’−ジアリルビスフェノールA、2,2’−ジアリルビスフェノールF、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3,5−ジ(2−プロペニルフェニル)]プロパン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]スルホキシド、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]スルフィド、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]エーテル、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]エチルベンゼン、1,1−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]シクロヘキサン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス−[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]プロパン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]ケトン、9,9−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]フルオレン、3,3−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]フタリド、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3−メチル−5−(2−プロペニル)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル]プロパン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル]メタン等が挙げられる。
【0052】
前記1分子中に2個以上のアミノ基を有する化合物は、硬化物の耐熱性の観点から、下記式(7)で表される化合物が好ましい。
【0053】
【化7】
【0054】
式(7)中、Vは、二価の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、又は、二価の置換若しくは無置換の脂環式炭化水素基である。
【0055】
前記1分子中に2個以上のアミノ基を有する化合物としては、具体的には例えば、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン、ビス(4−アミノフェニル)メチルホスフィンオキサイド、ビス(3−アミノフェニル)メチルホスフィンオキサイド、ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキサイド、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,1−ビス(p−アミノフェニル)フタラン、6,6’−ジアミノ−2,2’−ジピリジル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、2,5−ビス(m−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ−ル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジアミノナフタリン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾ−ル、2,4−ビス(β−アミノ−tert−ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−tert−ブチルフェニル)エ−テル、ビス(p−β−メチル−α−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニルジアミン、4,4`−メチレンビスシクロヘキサンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン等が挙げられる。
【0056】
前記1分子中に2個以上のアルケニル基を有する芳香族化合物のアルケニル基、及び、前記1分子中に2個以上のアミノ基を有する化合物のアミノ基は、硬化物の耐熱性の観点から、分子が線対称性を有するようになる位置に存在することが好ましい。
【0057】
前記1分子中にアルケニル基とアミノ基とをそれぞれ1個ずつ有する芳香族化合物としては、例えば、2−アリルアニリン、2−アリル−5−メトキシアニリン、4−アリルアニリン、4−イソプロペニルアニリン、2−メチル−4−イソプロペニルアニリン、3−メチル−4−イソプロペニルアニリン、3−クロロ−4−イソプロペニルアニリン、4−イソブテニルアニリン等が挙げられる。
【0058】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が前記硬化剤を含有する場合、前記マレイミド化合物と前記硬化剤との含有割合としては、マレイミド化合物/硬化剤(モル比)の好ましい下限が0.5、好ましい上限が5である。マレイミド化合物/硬化剤(モル比)がこの範囲であることにより、得られる硬化物が耐熱性及び柔軟性に特に優れるものとなる。マレイミド化合物/硬化剤(モル比)のより好ましい下限は1、より好ましい上限は3である。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物全体中における前記硬化剤の含有量の好ましい下限は4.5質量%、好ましい上限は60質量%であり、より好ましい下限は10質量%、より好ましい上限は45質量%である。
【0059】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲において、必要に応じて、その他の樹脂、硬化促進剤、強化用繊維材料、酸化防止剤、顔料(染料)、紫外線吸収剤、難燃剤、カップリング剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0060】
前記その他の樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、カルボキシ変性ニトリルゴム等のゴム成分や、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ナイロン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0061】
前記硬化促進剤としては、例えば、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、ベンジルジメチルアミン、トリスジメチルアミノメチルフェノール、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7等のアミン類や、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ヘプタデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類や、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィン)エタン、ビス(ジフェニルホスフィン)メタン等のホスフィン類や、オクチル酸スズ、塩化スズ、塩化アルミニウム等の金属化合物や、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド等の第四級ホスホニウム塩や、三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル錯体、三塩化ホウ素−アミン錯体等のホウ素化合物や、過酸化ベンゾイル、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルピロピオネート)等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0062】
前記強化用繊維材料としては、例えば、紙、綿、麻、バナナ繊維、竹繊維、バガス繊維等の植物繊維、絹、羊毛等の動物繊維や、ガラスファイバー、セラミックファイバー、カーボンファイバー、シリコンカーバイドファイバー等の無機繊維や、アラミド繊維、ポリエステルファイバー、ナイロンファイバー等の合成高分子繊維等が挙げられる。これらの強化用繊維材料の形態としては、例えば、不織布、織布、フィラメント、ストランド、チョップドストランド、ヤーン、ロービング等が挙げられる。
【0063】
前記酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)ブチル酸]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルル−3,3’−チオジプロピオネート、リフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、環状ネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、環状ネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、環状ネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−tert−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等が挙げられる。
【0064】
前記顔料(染料)としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、モリブデンレッド、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、紺青、群青、ベンガラ、カーボンブラック等が挙げられる。
【0065】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{(2’−ヒドロキシ−3’,3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル}メチル]ブチルマロネート等が挙げられる。
【0066】
前記難燃剤としては、例えば、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂や、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン、2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン等の臭素系難燃剤や、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ−2,6−キシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、赤リン等のリン系難燃剤や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物等が挙げられる。また、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の難燃助剤を併用してもよい。
【0067】
前記カップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−6−(アミノヘキシル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)−1,3−ベンゼンジメタンアミン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトシキシラン、ビニルトリ(β―メトキシエトキシ)シラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0068】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記マレイミド化合物、前記ポリロタキサン、及び、必要に応じて用いられる硬化剤や硬化促進剤等の添加剤を、有機溶媒に均一に溶解した後、該有機溶媒を除去する方法や、ロール、ニーダー等の溶融混合装置を用いて均一に混練する方法等によって製造することができる。
【0069】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物もまた、本発明の1つである。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、用いる材料の種類や配合比率によって異なるが、通常、熱硬化性樹脂組成物を製造する際の溶融混合温度や溶液混合温度ではほとんど硬化反応は進行せず、得られた熱硬化性樹脂組成物を更に加熱することにより硬化させることができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化させる際の硬化性は、硬化促進剤の有無や、加熱温度や、昇温の仕方等により異なり、これらの条件を調節することで硬化反応を制御することができる。
【0070】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化させる際の硬化温度は、通常、80〜350℃であり、120〜300℃が好ましく、150〜250℃がより好ましい。本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化させる際の硬化時間は、通常、6〜24時間であり、6〜12時間が好ましい。
【0071】
本発明の熱硬化性樹脂組成物にフィラーを配合してなる成形材料もまた、本発明の1つである。前記フィラーを配合することにより、高導電性、高熱伝導性、絶縁性、低吸湿性といった機能を向上させることができ、用途に合った熱硬化性樹脂組成物とすることができる。
前記フィラーとしては、各種形状の無機フィラー又は有機フィラーを用いることができる。具体的には例えば、アルミニウム粉、鉄粉、銅粉等の金属粒子、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、クレイ、マイカ、タルク、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、水酸化アルミニウム、アルミナ、ガラス等の無機粒子や、木粉、パルプ粉、各種織物粉砕物、熱硬化性樹脂硬化物の粉砕品等の有機粒子等が挙げられる。
【0072】
本発明の成形材料全体中における前記フィラーの含有量の好ましい下限は1質量%、好ましい上限は90質量%である。前記フィラーの含有量がこの範囲であることにより、作業性を悪化させることなく高導電性等の機能を向上させる効果により優れるものとなる。前記フィラーの含有量のより好ましい下限は5質量%、より好ましい上限は80質量%である。
【0073】
本発明の成形材料を製造する方法としては、例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物と前記フィラーとを溶融混練する方法等が挙げられる。
【0074】
本発明の成形材料を硬化させてなる成形体もまた、本発明の1つである。
本発明の成形材料を硬化させて本発明の成形体を得る方法としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的には例えば、射出成形法、溶融注型法、圧縮成形法、トランスファー成形法、プリプレグ積層プレス成形法、プリプレグオートクレーブ成形法、マッチドダイ成形法、ハンドレイアップ成形法、SMC(Sheet Molding Compound)プレス成形法、BMC(Bulk Molding Compound)成形法、レジンインフュージョン成形法、フィラメントワインディング成形法、引き抜き成形法、ピンワインディング成形法等が挙げられる。
【0075】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、溶剤に溶解させ、ワニスとして前記強化用繊維材料に含浸乾燥する方法、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法等を行うことによりプリプレグを形成することができる。
【0076】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、半導体封止材料、印刷回路基板等の電気・電子材料や、バランスシャフトギヤ、クラッチフェーシング、ブレーキライニング、ディスクパッド等の自動車部品や、鉄道車両・航空機・船舶等に用いられる、構造材料、部品、内外装材、床材、壁材、パネル等に使用できる。また、建築物に用いられる、内外装材、天井材、壁材、断熱パネルや、冷蔵・冷凍倉庫パネル等にも使用できる。更に、タンクやプラントの各種パイプ断熱保温材等にも応用できる。その他、レジンコンクリートや、ゴルフシャフトや釣り竿等のスポーツ用途や、塗料や、接着剤等にも応用可能である。なかでも、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて得られる硬化物は、高い破壊靭性と高い耐熱性とを有することから、半導体用封止材料に好適である。
【発明の効果】
【0077】
本発明によれば、機械的強度や耐熱性を大きく低下させることなく、靭性、接着性に優れる硬化物を得ることができる熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該熱硬化性樹脂組成物を用いてなる硬化物、成形材料、及び、成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】実施例1、実施例2、及び、比較例1で得られた硬化物における貯蔵弾性率E’と温度との関係を示すグラフである。
図2】実施例1、実施例2、及び、比較例1で得られた硬化物における損失弾性率E’’と温度との関係を示すグラフである。
図3】実施例1、実施例2、及び、比較例1で得られた硬化物における損失正接tanδと温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。以下、製造例に用いたポリロタキサンは、特開2011−241401号公報に記載された方法を参考にして調製した。
【0080】
(製造例1)
(ポリロタキサンの製造)
直鎖状分子として、ポリエチレングリコール(質量平均分子量35000)、環状分子として、ヒドロキシプロピル基を導入した後、ε−カプロラクトンをグラフト重合したα−シクロデキストリン(ヒドロキシプロピル基の導入率51モル%)、封鎖基としてアダマンタンアミン基を有するポリロタキサン(環状分子の包接率25%、質量平均分子量470000、水酸基価74mgKOH/g、以下、「PR」ともいう)の35質量%キシレン溶液300gに、重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン50mgを添加し、25℃で30分間撹拌することにより、ジブチルヒドロキシトルエンを完全に溶解させた。次いで、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート11.8gを添加し、25℃で30分間撹拌した後、60℃まで昇温し、そのまま4時間反応させた。得られた反応液を25℃まで冷却した後、大量のメタノール中に添加、撹拌し、遠心分離法により沈殿物を取り出した。得られた沈殿物を大量のアセトンに溶解させ、大量のメタノール中に添加、撹拌して再沈殿させ、遠心分離法により沈殿物を取り出した。得られた沈殿物を乾燥させ、環状分子に硬化反応性置換基であるメタクリロイルオキシエチルカルバモイル基を有するポリロタキサン(以下、「MPR」ともいう)108.9gを得た。得られたMPRについて、硬化反応性置換基の導入率を求めたところ、50モル%であった。
【0081】
(製造例2)
(カプロラクトングラフト化環状物の製造)
環状分子としてヒドロキシプロピル基を導入したヒドロキシプロピル化β−シクロデキストリン(ヒドロキシプロピル基の導入率25.9モル%)30gを熱風乾燥機を使用し、常圧下で120℃にて1時間乾燥させた。乾燥したヒドロキシプロピル化β−シクロデキストリン(乾燥減量1重量%)27gにε−カプロラクトン122gと触媒として2−エチルヘキサン酸スズ0.858gを加え120℃で7時間重合を行い、重合終了後、室温まで冷却し、ε−カプロラクトンをグラフト化したカプロラクトングラフト化環状物(以下、「PCL−PO−β−CD」ともいう)149gを得た。
【0082】
(実施例1)
PR6.6gを3倍量のアセトンに溶解させ、これを90℃に加熱した2,2’−ジアリルビスフェノールA100gに加えた。110℃で60分、真空脱気を行い、アセトンを除去した。次いで、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン116.2gを加え、170℃で加熱溶融させ、120℃で15分、真空脱気を行い、熱硬化性樹脂組成物を得た。得られた熱硬化性樹脂組成物を3mm厚のテフロン(登録商標)板をスペーサーとするアルミ板の型に注型し、順に、160℃で2時間、180℃で2時間、200℃で2時間、230℃で2時間、250℃で2時間加熱することにより、硬化物を得た。
【0083】
(実施例2)
PRの配合量を11.0gとしたこと以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物及び硬化物を得た。
【0084】
(実施例3)
PR6.6gに代えて、MPR6.5gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物及び硬化物を得た。
【0085】
(実施例4)
MPRの配合量を10.9gとしたこと以外は実施例3と同様にして、熱硬化性樹脂組成物及び硬化物を得た。
【0086】
(実施例5)
ビス(4−マレイミドフェニル)メタン116.2gに代えて、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド183gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物及び硬化物を得た。
【0087】
(実施例6)
PR6.6gに代えて、MPR6.5gを用いたこと以外は実施例5と同様にして、熱硬化性樹脂組成物及び硬化物を得た。
【0088】
(実施例7)
PR5.8gを3倍量のアセトンに溶解させ、これを170℃に加熱したビス(4−マレイミドフェニル)メタン100g、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド50g、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)へキサン16.7gの混合物に加え130℃で20分、真空脱気を行い、アセトンを除去した。そこに加熱融解したメタフェニレンジアミン25gを加え、熱硬化性樹脂組成物を得た。得られた熱硬化性樹脂組成物を3mm厚のテフロン(登録商標)板をスペーサーとするアルミ板の型に注型し、順に、160℃で2時間、180℃で2時間、200℃で2時間、230℃で2時間、250℃で2時間加熱することにより、硬化物を得た。
【0089】
(実施例8)
PR5.8gに代えて、MPR5.8gを用いたこと以外は実施例7と同様にして、熱硬化性樹脂組成物及び硬化物を得た。
【0090】
(比較例1)
PRを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物及び硬化物を得た。
【0091】
(比較例2)
PRを用いなかったこと以外は実施例5と同様にして、熱硬化性樹脂組成物及び硬化物を得た。
【0092】
(比較例3)
PRを用いなかったこと以外は実施例7と同様にして、熱硬化性樹脂組成物及び硬化物を得た。
【0093】
(比較例4)
PRに代えて、PCL−PO−β−CD6.6gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物及び硬化物を得た。
【0094】
(比較例5)
PRに代えてPCL−PO−β−CD11.0gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物及び硬化物を得た。
【0095】
(比較例6)
ビス(4−マレイミドフェニル)メタン116.2gに代えて、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド183gを用いたこと以外は比較例4と同様にして、熱硬化性樹脂組成物及び硬化物を得た。
【0096】
(比較例7)
PR5.8gに代えて、PCL−PO−β−CD5.8gを用いたこと以外は実施例7と同様にして、熱硬化性樹脂組成物及び硬化物を得た。
【0097】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各硬化物について、以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0098】
(破壊靱性)
実施例及び比較例で得られた各硬化物について、材料万能試験機(ミネベア社製、「テクノグラフAL−50kNB」)を用いて、ASTM D5045に従い、3点曲げ法により、支点間距離40mm、荷重速度1mm/分の条件で破壊靱性試験を行い、臨界応力拡大係数KICを算出した。
【0099】
(曲げ強度及び曲げ弾性率)
実施例及び比較例で得られた各硬化物について、材料万能試験機(ミネベア社製、「テクノグラフAL−50kNB」)を用いて、JIS K−7203に従い、3点曲げ法により、支点間距離48mm、荷重速度1.5mm/分の条件で曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。
【0100】
(線膨張係数)
実施例及び比較例で得られた各硬化物について、熱機械特性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、「TG−DTA220」)を用いて、JIS K−7197に従い、5℃/分の昇温速度、荷重5Nの条件で線膨張係数を測定した。
【0101】
(動的粘弾性測定)
実施例及び比較例で得られた各硬化物について、粘弾性測定装置(ユービーエム社製、「Rheogel−4000FZ」)を用いて、周波数1Hz、昇温速度2℃/分、−100℃〜350℃の温度範囲で、貯蔵弾性率E’、損失弾性率E’’、損失正接tanδを測定した。測定は曲げモードで行い、損失正接のピーク温度をガラス転移温度とした。
図1〜3は、それぞれ、実施例1、実施例2、及び、比較例1で得られた硬化物における、貯蔵弾性率E’と温度との関係を示すグラフ、損失弾性率E’’と温度との関係を示すグラフ、及び、損失正接tanδと温度との関係を示すグラフである。
【0102】
(熱分解温度)
実施例及び比較例で得られた各硬化物について、示差熱熱重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、「TG−DTA220」)を用いて、昇温速度10℃/分で25℃〜600℃まで空気雰囲気下で加熱し、5%重量減少温度を熱分解温度として測定した。
【0103】
(引張せん断接着強度)
実施例及び比較例と同様の方法で調製した熱硬化性樹脂組成物について、引張せん断接着強度を測定した。
試験片としては無酸素銅(JIS C1020P)を用いた。試験片の前処理は、アセトンで脱脂、240番の研磨紙で研磨後、流冷水、次いで温水で洗浄し、乾燥した。調製した熱硬化性樹脂組成物を試験片に塗布し、160℃で2時間、180℃で2時間、200℃で2時間、230℃で2時間、250℃で2時間加熱することにより、引張せん断接着強度試験片を得た。材料万能試験機(ミネベア社製、「テクノグラフAL−50kNB」)を用いて、JIS K−6850に従い、荷重速度5mm/分の条件で引張せん断接着強度を測定した。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
実施例1〜4と比較例1とを比較した場合、実施例5〜6と比較例2とを比較した場合、及び、実施例7〜8と比較例3とを比較した場合、ポリロタキサンを配合することで、破壊靭性(臨界応力拡大係数)が約1.2〜1.5倍に向上していることがわかる。更に引張せん断接着強度が約1.1〜1.9倍に向上していることもわかる。その一方で曲げ強度、曲げ弾性率に大きな低下はない。更に、実施例1〜4と比較例4〜5とを比較した場合、実施例5〜6と比較例6とを比較した場合、及び、実施例7〜8と比較例7とを比較した場合、曲げ強度や曲げ弾性率を大きく低下させることなく、破壊靱性(臨界応力拡大係数)を向上する効果が得られるためには環状分子が軸分子上をスライドする構造が重要であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明によれば、機械的強度や耐熱性を大きく低下させることなく、靭性、接着性に優れる硬化物を得ることができる熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該熱硬化性樹脂組成物を用いてなる硬化物、成形材料、及び、成形体を提供することができる。
図1
図2
図3