特許第6987822号(P6987822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987822蒸発源装置、成膜装置、成膜方法および電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987822
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】蒸発源装置、成膜装置、成膜方法および電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20211220BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20211220BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   C23C14/24 B
   H05B33/14 A
   H05B33/10
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-176783(P2019-176783)
(22)【出願日】2019年9月27日
(65)【公開番号】特開2021-55123(P2021-55123A)
(43)【公開日】2021年4月8日
【審査請求日】2020年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】風間 良秋
(72)【発明者】
【氏名】近藤 喜成
【審査官】 松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−224393(JP,A)
【文献】 特開平07−253276(JP,A)
【文献】 実開昭54−047350(JP,U)
【文献】 実開昭60−002190(JP,U)
【文献】 特開2012−009442(JP,A)
【文献】 特開2013−035710(JP,A)
【文献】 特公昭43−016932(JP,B1)
【文献】 特開昭62−169321(JP,A)
【文献】 特開平01−226795(JP,A)
【文献】 特開昭53−099554(JP,A)
【文献】 特開昭51−064657(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2018−0098428(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 21/203
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 27/32
H01L 21/363
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
H01L 51/50−51/56
H05B 3/02− 3/18
H05B 3/40− 3/82
C30B 1/00−35/00
F28F 9/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着材料が収容される容器と、
前記容器の周囲に配されヒータ線が螺旋状に設けられた第1のヒータと、
前記第1のヒータの外側に配されヒータ線が螺旋状に設けられた第2のヒータと、
を備えて、前記第1のヒータの螺旋状に設けられたヒータ線によって取り囲まれた前記容器を加熱する蒸発源装置において、
前記第1のヒータと前記第2のヒータとが接触しないように前記第1のヒータと前記第2のヒータとの間に配置され前記第1のヒータと第2のヒータのいずれか一方のヒータ線を支持する第1の支持部材と、前記第1のヒータと第2のヒータのいずれか他方のヒータ線を支持する第2の支持部材と、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とを固定する固定部材と、を各々が含む複数の支持部材組と、
前記複数の支持部材組のうちの一つの支持部材組の少なくとも一部が差し込まれる溝を複数有して前記複数の支持部材組を位置決め固定する位置決め部材と、
を備えることを特徴とする蒸発源装置。
【請求項2】
前記第2の支持部材は前記第2のヒータの外側に配置され前記第2のヒータのヒータ線を支持し、前記第1の支持部材は前記第1のヒータのヒータ線を支持ることを特徴とする請求項1に記載の蒸発源装置。
【請求項3】
前記第2の支持部材は前記第1のヒータの内側に配置され前記第1のヒータのヒータ線を支持し、前記第1の支持部材は前記第2のヒータのヒータ線を支持ることを特徴とする請求項1に記載の蒸発源装置。
【請求項4】
前記第2の支持部材は前記第1のヒータと前記第2のヒータとの間に配置され前記他方のヒータ線を支持することを特徴とする請求項1に記載の蒸発源装置。
【請求項5】
前記位置決め部材は、前記容器を支持する支柱が嵌合する嵌合穴が設けられた円板状の部材を含み、前記溝は、前記円板状の部材の外周側において周方向に複数設けられている請求項乃至4のいずれか1項に記載の蒸発源装置。
【請求項6】
前記位置決め部材は、リング状の部材を含み、前記溝は、前記リング状の部材の内周面において周方向に複数設けられている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の蒸発源装置。
【請求項7】
前記第1の支持部材は絶縁部材である請求項1からのいずれか1項に記載の蒸発源装置。
【請求項8】
前記第2の支持部材は絶縁部材である請求項からのいずれか1項に記載の蒸発源装置。
【請求項9】
前記第1の支持部材は、前記一方のヒータ線が係合する係合溝また係合孔を有する請求項1からのいずれか1項に記載の蒸発源装置。
【請求項10】
前記第2の支持部材は、前記他方のヒータ線が係合する係合溝または係合孔を有する請求項からのいずれか1項に記載の蒸発源装置。
【請求項11】
前記第1のヒータと前記第2のヒータが、それぞれ異なる2本のヒータ線で構成され、それぞれ別々に制御される構成となっている請求項1から10のいずれか1項に記載の蒸発源装置。
【請求項12】
前記第1のヒータと前記第2のヒータが一本のヒータ線で構成され、同一に制御される構成となっている請求項1から10のいずれか1項に記載の蒸発源装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の蒸発源装置と、
該蒸発源装置が配置され、被蒸着体に前記蒸着材料の蒸着が行われる真空チャンバと、を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項14】
蒸着材料を収容した容器を、前記容器の周囲に配されヒータ線が螺旋状に設けられた第1のヒータと前記第1のヒータの外側に配されヒータ線が螺旋状に設けられた第2のヒータとによって前記第1のヒータの螺旋状に設けられたヒータ線によって取り囲まれた前記容器を加熱して、被蒸着体に前記蒸着材料の蒸着を行う成膜方法であって、
前記第1のヒータと前記第2のヒータとが接触しないように、前記第1のヒータと第2のヒータの間に配置されて前記第1のヒータと第2のヒータのいずれか一方のヒータ線を支持する第1の支持部材と、前記第1のヒータと第2のヒータのいずれか他方のヒータ線を支持する第2の支持部材と、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とを固定する固定部材と、を各々が含む複数の支持部材組と、前記複数の支持部材組のうちの一つの支持部材組の少なくとも一部が差し込まれる溝を複数有して前記複数の支持部材組を位置決め固定する位置決め部材と、によって、前記第1のヒータと前記第2のヒータとを支持して前記第1のヒータと前記第2のヒータとの間隔を維持した状態で、前記容器を加熱することを特徴とする成膜方法。
【請求項15】
請求項14に記載の成膜方法によって、電子デバイスの被蒸着体に蒸着材料を蒸着させて成膜することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発源装置、成膜装置、成膜方法および電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイの一種として、有機材料の電界発光を用いた有機EL素子を備えた有機EL装置が注目を集めている。かかる有機ELディスプレイ等の電子デバイスの製造において、蒸発源装置を用いて、基板上に有機材料や金属電極材料などの蒸着材料を蒸着させて成膜を行う工程がある。
【0003】
複数のヒータを有する構成としては、例えば、特許文献1のような成膜装置が知られている。この成膜装置は、原料が充填される坩堝と、坩堝を覆うように配置された第1のヒータと、さらに第1のヒータを覆うように配置された熱反射板と、熱反射板を覆うように配置された第2のヒータと、を備えた構成となっている。しかし、この特許文献2の第2のヒータは、シュラウドを加熱して冷却面に凝縮または吸着している不純物ガスを加熱して除去するためのもので、坩堝の加熱に寄与するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−35710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、特許文献1の成膜装置において、熱反射板を取り外し、第2のヒータの輻射熱が坩堝に直接照射されるように構成することが考えられるが、第1のヒータ、第2のヒータ具体的な支持構造が記載されていない。特に、第1のヒータと第2のヒータが接触すると接触部が損傷するおそれがある。また、剥き出しの電熱線を用いている場合には、異常電流が流れ、焼損するおそれもある。
【0006】
本発明の目的は、容器を多重に取り囲む複数のヒータを、ヒータ同士が接触しないように支持し、効率的に容器内の蒸着材料を加熱することができる蒸発源装置、成膜装置、成膜方法および電子デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の蒸発源装置は、
蒸着材料が収容される容器と、
前記容器の周囲に配されヒータ線が螺旋状に設けられた第1のヒータと、
前記第1のヒータの外側に配されヒータ線が螺旋状に設けられた第2のヒータと、
を備えて、前記第1のヒータの螺旋状に設けられたヒータ線によって取り囲まれた前記容器を加熱する蒸発源装置において、
前記第1のヒータと前記第2のヒータとが接触しないように前記第1のヒータと前記第2のヒータとの間に配置され前記第1のヒータと第2のヒータのいずれか一方のヒータ線を支持する第1の支持部材と、前記第1のヒータと第2のヒータのいずれか他方のヒータ線を支持する第2の支持部材と、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とを固定する固定部材と、を各々が含む複数の支持部材組と、
前記複数の支持部材組のうちの一つの支持部材組の少なくとも一部が差し込まれる溝を複数有して前記複数の支持部材組を位置決め固定する位置決め部材と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の成膜装置は、
上記した蒸発源装置と、
前記蒸発源装置が配置され、前記蒸着材料の蒸着が行われる真空チャンバと、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の成膜方法は、
蒸着材料を収容した容器を、前記容器の周囲に配されヒータ線が螺旋状に設けられた第1のヒータと前記第1のヒータの外側に配されヒータ線が螺旋状に設けられた第2のヒータとによって前記第1のヒータの螺旋状に設けられたヒータ線によって取り囲まれた前記容器を加熱して、被蒸着体に前記蒸着材料の蒸着を行う成膜方法であって、
前記第1のヒータと前記第2のヒータとが接触しないように、前記第1のヒータと第2のヒータの間に配置されて前記第1のヒータと第2のヒータのいずれか一方のヒータ線を支持する第1の支持部材と、前記第1のヒータと第2のヒータのいずれか他方のヒータ線を支持する第2の支持部材と、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とを固定する固定部材と、を各々が含む複数の支持部材組と、前記複数の支持部材組のうちの一つの支持部材組の少なくとも一部が差し込まれる溝を複数有して前記複数の支持部材組を位置決め固定する位置決め部材と、によって、前記第1のヒータと前記第2のヒータとを支持して前記第1のヒータと前記第2のヒータとの間隔を維持した状態で、前記容器を加熱することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の電子デバイスの製造方法は、
上記成膜方法によって、電子デバイスの被蒸着体に蒸着材料を蒸着させて成膜することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容器を多重に取り囲む複数のヒータを、ヒータ同士が接触しないように確実に支持でき、効率的に容器内の蒸着材料を加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す断面図。
図2】実施形態に係る蒸発源装置の概略構成を示す断面図。
図3】(A)は、図2の蒸発源装置のより詳細な断面図、(B),(C)は、それぞれ異なるタイプのヒータ構成を示す斜視図。
図4】(A)は支持部材組の分解図,(B)は、支持部材組を示す図、(C)は支持部材組によって支持される2重のヒータと容器の関係を示す図、(D),(E)は支持部材組の位置決め部材を示す斜視図。
図5】(A)は第1のヒータに第1の支持部材を組付けた状態を示す図、(B)は(A)に第2のヒータを装着し、第2の支持部材を組み付ける状態を示す図。
図6】(A)〜(C)は、ヒータ支持構造の変形例1を示す説明図、(D)〜(F)は、変形例2を示す説明図。
図7】(A)〜(C)は、ヒータ支持構造の変形例3を示す説明図、(D)〜(F)は、参考例1を示す説明図。
図8】(A)〜(C)は、ヒータ支持構造の変形例を示す説明図。
図9】(A)〜(B)は、ヒータ支持構造の参考例2を示す説明図、(C)〜(D)は、ヒータ支持構造の参考例3を示す説明図、(E)〜(F)は、ヒータ支持構造の参考例4を示す説明図。
図10】(A)〜(C)は、ヒータ支持構造の変形例を示す説明図。
図11図11(A)は電子デバイスとしての有機EL表示装置の全体図、図11(B)は1画素の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲を、それらの構成に限定するものではない。また、以下の説明における、装置の形状、寸法、材質などは、特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0014】
本発明は、蒸発源装置に関し、特に、蒸着により被蒸着体に薄膜を形成するための成膜装置、成膜方法および電子デバイスの製造方法に好適である。本発明は、例えば、被蒸着体である基板の表面に真空蒸着により所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に好ましく適用できる。基板の材料としては、ガラス、樹脂、金属などの任意の材料を選択できる。なお、蒸発源装置の被蒸着体は、平板状の基板に限られない。例えば、凹凸や開口のある機械部品を被蒸着体としてもよい。また、蒸着材料としても、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択できる。また、有機膜だけではなく金属膜を成膜することも可能である。本発明の技術は、具体的には、電子デバイスや光学部材などの製造装置に適用可能であり、特に、有機電子デバイス(例えば、有機EL表示装置、薄膜太陽電池、有機CMOSイメージセンサ)の製造に好適である。
【0015】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る成膜装置の構成を模式的に示す断面図である。成膜装置は、真空チャンバ200を有する。真空チャンバ200の内部は、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。なお、ここでいう真空とは、通常の大気圧(典型的には1013hPa)より低い圧力の気体で満たされた状態をいう。真空チャンバ200の内部には、概略、基板保持ユニット(不図示)によって保持された被蒸着体である基板201と、マスク202と、蒸発源装置100が設けられる。基板保持ユニットは、基板201を載置するための受け爪などの支持具や、基板を押圧保持するためのクランプなどの押圧具によって基板を保持する。
【0016】
基板201は、搬送ロボット(不図示)により真空チャンバ200内に搬送されたのち、基板保持ユニットによって保持され、成膜時には水平面(XY平面)と平行となるよう固定される。マスク202は、基板201上に形成する所定パターンの薄膜パターンに対応する開口パターンをもつマスクであり、例えばメタルマスクである。成膜時にはマスク202の上に基板201が載置される。なお、本実施形態では成膜時に基板201が水平面と平行となるように固定されるものとしたが、これに限定はされない。基板201は成膜時に水平面と交差するように固定されてもよいし、水平面と垂直となるように固定されてもよい。また、本実施形態では基板201の成膜面が重力方向下方を向いた状態で成膜が行われるデポアップの構成を採用しているが、これに限定はされず、基板201の成膜面が重力方向上方を向いた状態で成膜が行われるデポダウンの構成であってもよい。あるいは、基板201が垂直に立てられた状態、すなわち、基板201の成膜面が重力方向と平行な状態で成膜が行われる構成であってもよい。
【0017】
蒸発源装置100は、蒸着材料6が収容される容器4と、容器4を二重に取り囲む螺旋状の第1のヒータ1と、第2のヒータ2とを備えている。第1のヒータ1は容器側、第2のヒータ2は容器4と反対側に位置し、第2のヒータ2の外側には、加熱効率を高めるための円筒状のリフレクタ102が設けられている。
【0018】
容器4の材質としては、例えばセラミック、高融点の金属、カーボン材料などが知られているが、これに限定されず、蒸着材料6の物性や加熱温度との関係で好ましいものが用いられる。リフレクタ102は熱効率を高める保温材(断熱材)であり、例えば金属等を利用できるが、これに限定されない。
【0019】
制御部207は、第1のヒータ1と第2のヒータ2の制御、例えば加熱の開始や終了のタイミング制御、温度制御を行うが、蒸発源装置100の他の制御、例えば、シャッタを設ける場合はその開閉タイミング制御、蒸発源駆動機構を設ける場合はその駆動制御(蒸発源の移動制御)なども行う。
制御部207の構成は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、I/O、UIなどを有するコンピュータにより構成可能である。この場合、制御部207の機能は、メモリ
又はストレージに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピュータとしては、汎用のコンピュータを用いてもよいし、組込型のコンピュータ又はPLC(programmable logic controller)を用いてもよい。あるいは、制御部207の機能の一部又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。なお、成膜装置ごとに制御部207が設けられていてもよいし、1つの制御部207が複数の成膜装置を制御してもよい。
【0020】
次に、成膜の基本的な手順について説明する。容器4内部に蒸着材料6が収容されると、制御部207の制御によって第1のヒータ1,第2のヒータ2が動作を開始し、蒸着材料6が加熱される。温度が十分に高まったら、真空チャンバ200内にマスク202および基板201が搬入され、基板201とマスク202のアライメントなどが行われる。その後、蒸発源装置100のシャッタが閉状態から開状態となると、蒸発または昇華した蒸着材料6が基板201の表面に付着し、薄膜を形成する。複数の容器4に別種の蒸着材料6を収容しておくことで共蒸着も可能である。形成された膜を、不図示の膜厚モニタで測定しながら制御を行うことで、基板201上に所望の厚さを持った膜が形成される。一様な厚さで成膜するために、例えば、基板201を回転させたり、蒸発源駆動機構により蒸発源装置100を移動させたりしながら蒸着を行ってもよい。また、基板201の大きさによっては、複数の蒸発源を並行して加熱することも好ましい。容器4の形状は任意である。また、蒸発源の種類も、点状の蒸発源、線状の蒸発源、面状の蒸発源のいずれでも構わない。
【0021】
後述するように、ある種類の蒸着材料が成膜された基板上に別種の蒸着材料を成膜することで、複層構造を形成できる。その場合、容器内の蒸着材料を交換したり、容器自体を別種の蒸着材料が格納されたものに交換したりしてもよい。また、真空チャンバ内に複数の蒸発源装置を設けて交換しながら用いてもよいし、基板201を現在の成膜装置から搬出し、別種の蒸着材料が収納された蒸発源装置を備える他の成膜装置に搬入してもよい。
【0022】
<蒸発源装置の構成>
次に、図2乃至図5を参照して、本実施形態の蒸発源装置について説明する。
まず、図2を参照して、蒸発源装置100の全体構成について説明する。
蒸発源装置100は、蒸着材料6が収容される容器4と、容器4を取り囲むように配置される螺旋状の第1のヒータ1と、第1のヒータ1よりも大径で第1のヒータ1を取り囲むように配置される螺旋状の第2のヒータ2が、同心状に容器4を二重に取り囲んでいる。また、この第2のヒータ2を取り囲むように、円筒状のリフレクタ102が同心状に配置され、さらに、リフレクタ102を取り囲むように冷却ジャケット104が同心状に配置されている。リフレクタ102及び冷却ジャケット104の下端は基台106に固定され、容器4の底部は、基台106の中央に立設される支柱101に支持されている。
【0023】
第1のヒータ1および第2のヒータ2の間には、容器側の第1のヒータ1を支持するヒータ線支持部を有する第1の支持部材10が設けられている。また、第2のヒータ2を支持する第2の支持部材20が、第2のヒータ2に対して容器と反対側に配置されている。この第1の支持部材10と第2の支持部材20は、ボルト、ナット等によって構成される固定部材30によって結合され、一組の支持部材組40を構成している。この支持部材組40は、第1のヒータ1と第2のヒータ2の周方向に複数組設けられ、支持部材組40の下端部は、位置決め部材50によって互いに連結されている。位置決め部材50は、基台106上に固定されている。
【0024】
次に、図3図5を参照して、第1のヒータ1及び第2のヒータ2のヒータ支持構造をより詳細に説明する。図3は、図2の蒸発源装置の容器を省略して示す断面図、図4(A)は一つの支持部材組の分解図,(B)は支持部材組を示す図、(C)は支持部材組によ
って支持される2重のヒータと容器の関係を示す図、(D),(E)は支持部材組の位置決め部材を示す斜視図である。また、図5(A)は第1のヒータと第2のヒータを分解して示す図、(B)は組立状態を示す図である。
図3に示すように、第1のヒータ1および第2のヒータ2は抵抗加熱式の発熱方式であり、タングステン、タンタル、モリブデン等の高融点金属線、あるいは金属パイプ状のシーズヒータを含むヒータ線5を、所定ピッチのつる巻き線に沿って円筒コイル状に成形したものある。第1のヒータ1および第2のヒータ2は、容器4の中心軸線Nと平行方向(以下、軸方向という)の高さが同一で、第1のヒータ1の外径よりも容器4と反対側の第2のヒータ2の内径が所定寸法だけ大きく設定されている。第1のヒータ1の中心軸と第2のヒータ2の中心軸は、容器4の中心軸線Nと同心的に配置され、第1のヒータ1と第2のヒータ2の間は、所定間隔だけ離間している。第1のヒータ1および第2のヒータ2は、図3(A),(B)に示すように、それぞれ異なる2本のヒータ線5,5で構成され、その上下両端にリード線が接続される端子7、7が設けられ、それぞれ別々に制御されるタイプとすることができる。また、図3(C)に示すように、一本のヒータ線5を折り返し、同じヒータ線5で第1のヒータ1と第2のヒータ2を構成し、同一に制御されるタイプとすることでもできる。図3(C)の場合には、第1のヒータ1と第2のヒータ2の上端に、U字状の折り返し部5aが位置しており、端子7,7はヒータ線5の両端の2か所で、第1のヒータ1と第2のヒータ2は直列接続となる。いずれの場合にも、端子間に電圧をかけることによって、ジュール熱によって発熱する。容器4は、発熱したヒータ線5から容器4外面への熱輻射によって加熱される。
【0025】
次に、図4を参照して、第1のヒータおよび第2のヒータを支持する第1の支持部材および第2の支持部材について説明する。
支持部材組40を構成する第1の支持部材10及び第2の支持部材20は、ステアタイト、アルミナ等の耐熱性の絶縁部材によって構成される。第1の支持部材10は、図4(C)に示すように、容器4の中心軸線Nと平行方向(以下、軸方向と称す)に延びる長尺の板状部材で、軸方向の長さは、第1のヒータ1の軸方向長さよりも長く、上下両端部が第1のヒータ1の上下両端よりも所定寸法だけ突出している。また、第1の支持部材10の板面は、容器4の中心軸線Nと直交する放射方向に沿って配置されている。第1の支持部材10の容器側の側辺10aは、図4(A)に示すように、軸方向に直線状に延び、第1のヒータ1の巻きピッチと同一ピッチで、ヒータ線5が係合する第1のヒータ線支持部としての係合溝12が巻き数分だけ軸方向に設けられており、螺旋状に成形された各ヒータ線5が、一巻き毎に係合溝12に係合する。
【0026】
また、第1の支持部材10の容器4と反対側の容器と反対側の側辺10bも、容器4の中心軸線Nと平行方向に延びる直線状であり、下端部には、容器4と反対側に突出する突片15が設けられている。第1の支持部材10の係合溝12の奥端から容器と反対側の側辺10bまでの寸法は、第1のヒータ1の外径より大きく、第2のヒータ2の内径と同一か僅かに小さい。第2のヒータ2は、第1の支持部材10の容器4と反対側の側辺に沿って、軸方向及び回転方向に移動自在に支持されるが、下方への移動は、第2のヒータ2の下端が当接して、突片15によって規制される。
【0027】
第2の支持部材20も、軸方向に延びる長尺の板状部材で、軸方向長さは、第2のヒータ2の軸方向長さよりも長く、上下両端部が第2のヒータ2の上下両端よりも所定寸法だけ突出している。また、第2の支持部材20の板面も、容器4の中心軸線Nと直交する放射方向に沿って配置されている。第2の支持部材20の容器側の側辺20aは、軸方向に直線状に延び、第2のヒータ2と対応する部分に、第2のヒータ2の各ヒータ線5が係合する第2のヒータ線支持部としての係合溝22が設けられている。この第2の支持部材20の容器側の側辺20aの上下両端部には、第1の支持部材10の上下両端部と重なるように、容器側に向かって突出する固定片24,25が設けられている。この固定片24,
25と第1の支持部材10とが重なる部分を、図4(B)に示すように、ボルト、ナット等によって構成される固定部材30によって結合することで、支持部材組40が構成される。固定片25と第1の支持部材10の重なる部分には、ボルトが挿通される挿通孔33が設けられている。固定部材30としては、ねじ結合に限らず、たとえば、リベット結合でもよいし、凹凸係合するような結合構造であってもよい。この例では、第1の支持部材10と第2の支持部材20の軸方向長さは同一で、上下端の位置を合わせて固定されるようになっている。第1の支持部材10と第2の支持部材20の係合溝12,22は、軸方向に同一位置に設定されている。
【0028】
第1の支持部材10と第2の支持部材20の支持部材組40は、複数組、図示例では、6組周方向に等配され、その下端部において、図3及び図4(D)に示すように、位置決め部材50によって、軸方向、周方向及び径方向に位置決めされた状態で位置決め固定されている。各組の支持部材組40の第1のヒータ1および第2のヒータ2の係合溝12,22の軸方向位相は、ヒータ線の巻きピッチの範囲で、1/6ピッチずつずらしておけば、上下端の位置は一定に保持される。
位置決め部材50は円板状で、その中心に、容器4を支持する支柱101が嵌合する嵌合穴51が設けられ、外周には中心に向かって半径線方向に沿って、所定幅で直線状に切り込まれた位置決め溝52が、支持部材組40に対応して周方向に複数、この例では6箇所に設けられている。位置決め溝52に支持部材組40の下端部が軸方向下方、かつ径方向内方に向けて差し込まれ、下端部が基台に当接し、内側面が位置決め溝52の内径端に突き当てられることで、第1のヒータ1及び第2のヒータ2が、容器4に対して同心的に位置決めされる。
位置決め部材としては、外周側から位置決め溝を設けるものに限定されず、たとえば、図4(E)に示すように、リング状の位置決め部材250を用いることもできる。すなわち、位置決め部材250の内周面に、半径方向外方に向かって、所定幅で直線状に切り込まれた位置決め溝252を備えた構成とする。位置決め部材250の外周面はリフレクタに嵌り込む構成とする。このようなリング状の位置決め部材250を用いれば、支持部材組40の上端部、あるいは中途部において位置決めすることも可能である。
また、位置決め部材の他の例として、蒸発源装置100の基台106自体に位置決め溝を設け、基台106を位置決め部材として用いることもできる。
【0029】
次に、図5を参照して、第1の支持部材10と第2の支持部材20の組付け手順について説明する。
・第1のヒータ1と第2のヒータ2が、独立構成の場合(図3(A),図3(B)の場合)
まず、第1のヒータ1の外周側に、第1の支持部材10を容器側の側辺10aを合わせ、櫛歯状の係合溝12に第1のヒータ1の所定巻き数のヒータ線5を一巻き毎に係合させ、第1の支持部材10を組み付ける。この第1の支持部材10を、第1のヒータ1の周方向6箇所に組み付けた後、図5(A)に示すように、第2のヒータ2を第1の支持部材10の容器4と反対側の側辺10bに沿って装着する。上端側から装着すると、第2のヒータ2の下端は、第1の支持部材10の側辺10bに沿って滑って第1の支持部材10の突片15に当接する。
【0030】
次に、図5(B)に示すように、第2のヒータ2を突片15から上方に持ち上げて第2の支持部材20の係合溝22に、第2のヒータ2のヒータ線5を一巻き毎にすべて係合させ、第1の支持部材10と第2の支持部材20を重ねて、上下両端部を重ねて固定部材30によって固定する。この固定手順を6箇所で行い、各支持部材組40の下端部を、位置決め部材50の位置決め溝52に差し込むことで、支持部材組40の軸方向位置、径方向位置、および周方向位置が正確に定まり、第1のヒータ1と第2のヒータ2が、容器に対して同心的に組付けられる。
このように第1のヒータ1と第2のヒータ2が容器4に対して同心的に位置決めされるので、容器を均一に効率的に加熱することができる。
・第1のヒータ1と第2のヒータ2が、繋がっている場合(図3(C)の場合)
この場合には、図5(A)の状態はなく、図5(B)に示す状態を参照して説明すると、第1のヒータ1と第2のヒータ2の間に、第1の支持部材10を挿入し、第1の支持部材10の係合溝12に、第1のヒータ1のヒータ線5を一巻き毎に係合させる。また、第2の支持部材1020の係合溝22に第2のヒータ2のヒータ線5を係合し、第1の支持部材10と第2の支持部材20を重ねて固定部材30によって固定して支持部材組40を構成する。この支持部材組40を6箇所で作成し、各支持部材組40の下端部を、位置決め部材50の位置決め溝52に差し込み固定する。これにより、支持部材組40の軸方向位置、径方向位置、および周方向位置が正確に定まり、第1のヒータ1と第2のヒータ2が、容器に対して同心的に組付けられることになる。
【0031】
[ヒータの支持構造の変形例]
次に、上記ヒータの支持構造の変形例について説明する。以下の説明では、主として上記実施形態で示した支持形態と異なる点についてのみ説明するものとし、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略するものとする。
【0032】
変形例1
図6(A)乃至(C)は、ヒータの支持構造の変形例1を示している。(A)は一つの支持部材組を構成する部材の分解図、(B)は一つの支持部材組を示す図、(C)は支持部材組によって支持される2重のヒータと容器の関係を示す図である。
この変形例1は、基本的には、上記実施形態と同様に、第1のヒータ1と第2のヒータ2の間に配置される第1の支持部材10によって、容器側の第1のヒータ1を支持し、容器の反対側の第2のヒータ2を、第2のヒータ2の容器4と反対側に配置される第2の支持部材20によって支持するものであるが、加えて補助的に第1のヒータ1の巻き部内周を支持する補助支持部材45が設けられている。この補助支持部材45は、軸方向に延びる長尺の板状部材で、その容器側の側辺及び容器と反対側の側辺は直線状に延びており、両端部が第1の支持部材10に固定部材に30よって結合されている。この例では、第1の支持部材10の上下両端部に容器側に延びる固定片16,17が設けられ、この固定片16,17が補助支持部材45の両端部に重ね合わされて固定部材30によって固定されている。
【0033】
変形例2
図6(D)〜(F)は、ヒータの支持構造の変形例2を示している。(D)は一つの支持部材組を構成する部材の分解図、(E)は一つの支持部材組を示す図、(F)は支持部材組によって支持される2重のヒータと容器の関係を示す図である。
【0034】
上記実施形態では、第1のヒータ1と第2のヒータ2の間に配置される第1の支持部材10によって、容器4側の第1のヒータ1を支持し、容器4の反対側の第2のヒータ2を、第2のヒータ2の容器4と反対側に配置される第2の支持部材20によって支持する構成となっているが、この変形例2は、反対側を支持するようにしたものである。すなわち、第1のヒータ1と第2のヒータ2の間に配置される第1の支持部材210によって、容器4と反対側の第2のヒータ2を支持し、容器側の第1のヒータ1を、第1のヒータ1の容器側(内側)に配置される第2の支持部材220によって支持する構成となっている。第1の支持部材210は、容器4と反対側の側辺10bに、第2のヒータ2のヒータ線を支持する係合溝12が設けられ、第2の支持部材220の容器と反対側の側辺20bに、第1のヒータ1のヒータ線を支持する係合溝22が設けられている。この第1支持部材210と第2の支持部材220の両端部が固定部材30によって結合され、一つの支持部材組240を構成している。
【0035】
変形例3
図7(A)〜(C)は、ヒータの支持構造の変形例3を示している。(A)は一つの支持部材組を構成する部材の分解図、(B)は一つの支持部材組を示す図、(C)は支持部材組によって支持される2重のヒータと容器の関係を示す図である。
【0036】
この変形例3では、第1のヒータ1と第2のヒータ2の間に、第1のヒータ1を支持する第1の支持部材310と共に、第2のヒータ2を支持する第2の支持部材320を配置したもので、第1の支持部材310と第2の支持部材320の両端部が固定部材30によって結合されて、一つの支持部材組340を構成している。第2の支持部材320は、第2のヒータ2の容器側、すなわち、第1のヒータ1と第2のヒータ2の間に配置され、容器側の側辺20aではなく、容器と反対側の側辺320bにヒータ線が係合する係合溝22が設けられている。
【0037】
参考例1
図7(D)〜(F)は、ヒータの支持構造の参考例1を示している。(D)は一つの支持部材組を構成する部材の分解図、(E)は一つの支持部材組を示す図、(F)は支持部材組によって支持される2重のヒータと容器の関係を示す図である。
【0038】
この参考例1は、第1のヒータ1と第2のヒータ2の間に第1の支持部材も第2支持部材も配置されておらず、第1のヒータ1を支持する第4の支持部材410と、第2のヒータ2を支持する第5の支持部材420と、を備えている。第4の支持部材410は、第1のヒータ1に対して第2のヒータ2と反対側(容器側)に配置され、第5の支持部材420は第2のヒータ2に対して第1のヒータ1の反対側(容器と反対側)に配置され、第4の支持部材410と第5の支持部材420の両端部が固定部材30によって結合されて、一つの支持部材組440を構成している。第4の支持部材410は、容器4と反対側の側辺410bに、第1のヒータ1のヒータ線5を支持する第5のヒータ線支持部である第5の係合溝412が設けられている。第5の支持部材420は、容器側の側辺420aに、
第2のヒータ2のヒータ線5を支持する第6のヒータ線支持部である第6の係合溝422が設けられている。このように第1のヒータ1と第2のヒータ2の間に支持部材が無くても、第1のヒータ1と第2のヒータ2を、所定間隔を保った状態で支持することができる。
【0039】
変形例
図8(A)〜(C)は、ヒータの支持構造の変形例を示している。(A)は一つの支持部材組を構成する部材の分解図、(B)は一つの支持部材組を示す図、(C)は支持部材組によって支持される2重のヒータと容器の関係を示す図である。
【0040】
この変形例は、容器側の第1のヒータ1を支持する第1の支持部材510と、容器と反対側の第2のヒータを支持する第2の支持部材520を備えた構成であるが、第1の支持部材510及び第2の支持部材520共に、ヒータ線を支持する第1のヒータ線支持部及び第2のヒータ線支持部として、係合溝ではなく、ヒータ線が挿通される係合孔512,522備えた構成となっている。
【0041】
したがって、第1の支持部材510は、一部が第1のヒータ1と第2のヒータ2の間に位置し、一部が第1のヒータ1に対して容器側に位置している。すなわち、第1の支持部材510は、第1のヒータ1に対して、容器側と、容器と反対側に跨って配置されることになる。また、第2の支持部材520は、一部が第1のヒータ1と第2のヒータ2の間に位置し、一部が第2のヒータ2に対して容器と反対側に位置している。すなわち、第2の支持部材520は、第2のヒータ2に対して容器側と容器と反対側に跨って配置されてい
る。この第1の支持部材510と第2の支持部材520の両端部が、固定部材30によって結合されて、一つの支持部材組540を構成している。
【0042】
支持部材組540の組付け手順
次に、この変形例の支持部材組540の組付け手順について説明する。
・第1のヒータ1と第2のヒータ2が、独立構成の場合(図3(A),図3(B)の場合)
第1の支持部材510の係合孔512への第1のヒータ1のヒータ線5の支持は、第1
のヒータ1のヒータ線5の端から、第1の支持部材510の上端あるいは下端に位置する係合孔から順番に通していき、ヒータ線を全ての係合孔512に挿通する。複数の第1の支持部材510に第1のヒータ1を支持する場合には、複数枚の第1の支持部材510を重ね、重ねた状態で、第1の支持部材510の上端あるいは下端に位置する係合孔から順番に通し、ヒータ線5を重ねた第1の支持部材510の全ての係合孔係に挿通する。その後、重ねた第1の支持部材510を周方向に離間するように移動させればよい。
【0043】
第2の支持部材520の係合孔522への第2のヒータ2のヒータ線5の支持も、同様に、第2のヒータ2のヒータ線5を、端から、第2の支持部材520の上端あるいは下端に位置する係合孔から順番に挿通し、ヒータ線を全ての係合孔に挿通する。複数の第2の支持部材520に第2のヒータ2を支持する場合には、複数枚の第2の支持部材520を重ね、重ねた状態で、ヒータ線を、第2の支持部材520の上端あるいは下端に位置する係合孔522から順番に通し、複数の第2の支持部材520の全ての係合孔522に挿通する。その後、重ねた第2の支持部材520を周方向に離間するように移動させればよい。このように、ヒータ線5を挿通した第1の支持部材510と第2の支持部材520の上下両端部を固定部材530によって結合することによって、支持部材組540が構成される。
・第1のヒータ1と第2のヒータ2が繋がっている場合(図3(C)の場合)
図3(C)の第1のヒータ1と第2のヒータ2がつながっていて、同じ制御で加熱されているものの場合は、ヒータ線5をらせん状に加工すると同時に支持部材を組み立てる手順となる。たとえば、第1の支持部材と第2の支持部材を予め固定部材30で固定して支持部材組540を構成しておき、2本のヒータ線5を螺旋状に加工しながら、各係合孔522に通すことによって、組み付けることができる。
【0044】
参考例2
図9(A),(B)は、ヒータの支持構造の参考例2を示している。(A)は第3の支持部材670を示す図、(B)は第3の支持部材670によって支持される2重のヒータと容器の関係を示す図である。
【0045】
この参考例2は、互いに隣り合う第1のヒータ1と第2のヒータ2の間に配置され、容器側の第1のヒータ1と容器と反対側の第2のヒータの両方を支持する第3の支持部材670を備えた構成となっている。第3の支持部材670は、軸方向に延びる長尺の板状部材であり、容器側の直線状の側辺671には、第1のヒータ1のヒータ線を一巻き毎に支持する第3のヒータ線支持部としての第3の係合溝672aが櫛歯状に設けられ、容器と反対側の側辺673には、第2のヒータ2のヒータ線5を一巻き毎に支持する第4のヒータ線支持部としての第4の係合溝672bが櫛歯状に設けられている。この位相は基本的に同一位相である。そして、第3の支持部材672を、容器4の周方向に複数、たとえば、実施形態1と同様に、6箇所に配置し、複数の第3の支持部材670の下端部を、図4に記載したような位置決め部材50によって連結する。このようにすれば、第3の支持部材670だけで、第1のヒータ1と第2のヒータ2を支持することができ、構造が簡素化され、組付け作業が容易となる。
【0046】
参考例3
図9(C),(D)は、ヒータの支持構造の参考例3を示している。(A)は第3の支持部材770を示す図、(B)は第3の支持部材770によって支持される2重のヒータと容器の関係を示す図である。
【0047】
この参考例3も、参考例2と同様に、互いに隣り合う第1のヒータ1と第2のヒータ2の間に配置され、容器側の第1のヒータ1と容器と反対側の第2のヒータの両方を支持する第3の支持部材770を備えた構成となっている。この第3の支持部材770も、軸方向に延びる長尺の板状部材であるが、容器側の直線状の側辺771の近傍には、第1のヒータ1のヒータ線を一巻き毎に支持する第3のヒータ線支持部としての第3の係合孔772aが櫛歯状に設けられ、容器と反対側の側辺773の近傍には、第2のヒータ2のヒータ線5を一巻き毎に支持する第4のヒータ線支持部である第4の係合孔772bが設けられている。そして、第3の支持部材772を、容器4の周方向に複数配置し、複数の第3の支持部材770の下端部を、図4に記載のような位置決め部材50によって連結する。
第3の支持部材770の組付け手順については、変形例の場合と同様である。
・第1のヒータ1と第2のヒータ2が、独立構成の場合(図3(A),図3(B)の場合)
螺旋状の第1のヒータ1のヒータ線5を、端から第3の支持部材770の第3の係合孔772aに係合し、第2のヒータ2のヒータ線5を、端から第3の支持部材772の第4の係合孔772bに係合することができる。
・第1のヒータ1と第2のヒータ2が繋がっている場合(図3(C)の場合)
図3(C)の第1のヒータ1と第2のヒータ2がつながっていて、同じ制御で加熱されているものの場合は、ヒータ線5を螺旋状に加工すると同時に、第3の支持部材770の第3の係合孔772a及び第4の係合孔772bを組み付ける手順となる。
【0048】
参考例4
図9(E),(F)は、ヒータの支持構造の参考例4を示している。(E)は第3の支持部材870を示す図、(F)は第3の支持部材870によって支持される2重のヒータと容器の関係を示す図である。
【0049】
この参考例4も、参考例2と同様に、互いに隣り合う第1のヒータ1と第2のヒータ2の間に配置され、容器側の第1のヒータ1と容器4と反対側の第2のヒータ2の両方を支持する第3の支持部材870を備えた構成となっている。この第3の支持部材870は、容器側の直線状の側辺871の近傍には、第1のヒータ1のヒータ線5を一巻き毎に支持する第3のヒータ線支持部である第3の係合孔872aが一列に設けられ、容器と反対側の側辺873の近傍には、第2のヒータ2のヒータ線5を一巻き毎に係合する第4のヒータ線支持部である第4の係合溝872bが設けられている。そして、第3の支持部材872を、容器4の周方向に複数配置し、複数の第3の支持部材870の下端部を、位置決め部材850によって連結する。このようにすれば、第3の支持部材870だけで、第1の
ヒータ1と第2のヒータ2を支持することができ、構造の簡素化され、組付け作業が容易となる。なお、この第3の支持部材870において、容器側の側辺871に係合溝を設け、容器と反対側の側縁に、係合孔を設けるようにしてもよい。
この第3の支持部材870の組付け手順についても、変形例の場合と同様である。
・第1のヒータ1と第2のヒータ2が、独立構成の場合(図3(A),図3(B)の場合)
螺旋状の第1のヒータ1のヒータ線5を、端から第3の支持部材870の第3の係合孔872aに係合し、第2のヒータ2のヒータ線5を、端から第3の支持部材870の第4の係合溝872bに係合することができる。
・第1のヒータ1と第2のヒータ2が繋がっている場合(図3(C)の場合)
図3(C)の第1のヒータ1と第2のヒータ2がつながっていて、同じ制御で加熱されているものの場合は、ヒータ線5を螺旋状に加工すると同時に、第3の支持部材870の第3の係合孔872a及び第4の係合溝872bに組み付ける手順となる。
【0050】
変形例
図10(A)〜(C)は、ヒータの支持構造の変形例を示している。(A)は支持部材組の分解図、(B)は支持部材組を示す図、(C)は支持部材組によって支持される3重のヒータと容器の関係を示す図である。
上記各変形例では、第1のヒータと第2のヒータで容器を二重に取り囲む構成となっているが、3つ以上の複数の欄施状のヒータを多重配置とする場合にも適用可能である。この変形例は、容器4を、第1のヒータ1と第2のヒータ2に加えて、第2のヒータ2の容器4と反対側に配置された第3のヒータ3を備え、容器を3つのヒータで取り囲む構成となっている。
この場合、複数のヒータの、互いに隣り合う第1のヒータ1と第2のヒータ2の間、および第2のヒータ2と第3のヒータ3の間に、それぞれ第1の支持部材910A、910Bが配置されている。一方の第1の支持部材910Aは、その容器側の側辺に、第1のヒータ1のヒータ線を支持する係合溝12が設けられている。また、他方の第1の支持部材910Bの容器側の側辺に、第2のヒータ2のヒータ線を支持する係合溝12が設けられている。
そして、複数のヒータのうち、容器4に面した第1のヒータ1と容器4と最も離れた側に位置する第3のヒータ3のうち、互いに隣り合うヒータの間に配置される、前記第1の支持部材910A,910Bによって支持されていない側のヒータ、この例では第3のヒータ3のヒータ線を支持する係合溝22を有する第2の支持部材920を、さらに備えている。この例では、第2の支持部材920は、第3のヒータ3の容器と反対側に配置されている。
なお、この3重配置の場合も、第1の支持部材910Aについて、二重配置の場合の変形例1のように、補助支持部材を設けることができる。また、変形例2のように、第1の支持部材910Aによる支持を容器と反対側の第2のヒータ、第1の支持部材910Bによる支持を容器と反対側の第3のヒータとし、第2の支持部材920を第1のヒータの容器側に配置して第1のヒータを支持するように構成することができる。また、第1のヒータと第2のヒータ間、あるいは第2のヒータと第3のヒータの間に、変形例3、変形例4参考例1あるいは変形例のような構成例を適用することができる。さらに、参考例2参考例4のように、第1のヒータと第2のヒータの間、あるいは第2のヒータと第3のヒータの間に、第3の支持部材を適用することも可能である。
【0051】
<電子デバイスの製造方法の具体例>
次に、図11を参照して、上記蒸発源装置を備える成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。電子デバイスの例として、有機電子デバイスである有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示している。図11(A)は有機EL表示装置60の全体図、図11(B)は1画素の断面構造を表している。
【0052】
まず、有機EL表示装置について説明する。図11(A)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本図の有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0053】
図11(B)は、図11(A)のA−B線における部分断面模式図である。画素62は、被蒸着体である基板63上に、第1電極(陽極)64と、正孔輸送層65と、発光層66R,66G,66Bのいずれかと、電子輸送層67と、第2電極(陰極)68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R,66G,66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R,66G,66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と第2電極68は、複数の発光素子62R,62G,62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0054】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極64が形成された基板63を準備する。
【0055】
第1電極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0056】
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。ここで、本ステップでの成膜や、以下の各レイヤーの成膜において用いられる成膜装置は、上記各実施形態のいずれかに記載された蒸発源装置を備えている。蒸発源装置が上記実施形態の構成を持ち、上記実施形態に記載の加熱制御を行うことにより、容器の開口付近を高温に保ったまま、蒸着レートを一定に保つことができ、一定の膜厚の正孔輸送層65の成膜を行うことができる。
【0057】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。本例によれば、マスクと基板とを良好に重ね合わせることができ、高精度な成膜を行うことができる。
【0058】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0059】
電子輸送層67までが形成された基板をスパッタリング装置に移動し、第2電極68を成膜し、その後プラズマCVD装置に移動して保護層70を成膜して、有機EL表示装置60が完成する。
【0060】
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0061】
このようにして得られた有機EL表示装置は、発光素子ごとに発光層が精度よく形成される。従って、上記製造方法を用いれば、発光層の位置ずれに起因する有機EL表示装置の不良の発生を抑制することができる。本実施形態に係る成膜装置によれば、蒸発源装置の加熱を適切に制御することにより、良好な蒸着が可能となる。
【符号の説明】
【0062】
1 第1のヒータ、2 第2のヒータ、3 第3のヒータ
5 ヒータ線
10、210、310、510、910A、910B 第1の支持部材
20、220、320、520、920 第2の支持部材
12 係合溝(第1のヒータ線支持部)、22 係合溝(第2のヒータ線支持部)
670、770、870 第3の支持部材
672a、772a、872a 第3の係合溝、第3の係合孔(第3のヒータ線支持部)
672b、772b、872b 第4の係合溝、第4の係合孔、(第4のヒータ線支持部)
410 第4の支持部材、420 第5の支持部材
411 第5の係合溝(第5のヒータ線支持部)
422 第6の係合溝(第6のヒータ線支持部)
40、240、340、440、540,940 支持部材組
50 位置決め部材
4 容器、6 蒸着材料
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
図9
図10
図11