(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のシーラントフィルムは、外層(A)、中間層(B)及び内層(C)が順に積層された積層フィルムであり、その外層(A)及び内層(C)がポリエチレン系樹脂を含有し、外層(A)及び内層(C)の各層中の樹脂成分の平均密度がいずれも0.940g/cm
3以上である。そして、外層(A)及び内層(B)間の中間層(B)が、直鎖状低密度ポリエチレン(b1)及び環状オレフィン系樹脂(b2)を含有し、直鎖状低密度ポリエチレン(b1)の密度が0.937g/cm
3以上であり、前記中間層(B)中に含まれる樹脂成分中の前記環状オレフィン系樹脂(b2)の含有量が20〜40質量%のシーラントフィルムである。
【0015】
[外層(A)]
本発明のシーラントフィルムの外層(A)に使用するポリエチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状中密度ポリエチレン(LMDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー等が例示できる。これらポリエチレン系樹脂は、単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。これらの中でも好適な耐衝撃性を得やすいことから、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状中密度ポリエチレンを好ましく使用でき、直鎖状低密度ポリエチレンが特に好ましい。また、これら中・低密度ポリエチレンに併用して高密度ポリエチレン(HDPE)を使用することも好ましい。
【0016】
直鎖低密度ポリエチレンとしては、シングルサイト触媒を用いた低圧ラジカル重合法により、エチレン単量体を主成分として、これにコモノマーとしてブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン等のα−オレフィンを共重合したものである。LLDPE中のコモノマー含有率としては、0.5〜20モル%の範囲であることが好ましく、1〜18モル%の範囲であることがより好ましい。
【0017】
前記シングルサイト触媒としては、周期律表第IV又はV族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物及び/又はイオン性化合物の組合せ等のメタロセン触媒系などの種々のシングルサイト触媒が挙げられる。また、シングルサイト触媒は活性点が均一であるため、活性点が不均一なマルチサイト触媒と比較して、得られる樹脂の分子量分布がシャープになるため、フィルムに成膜した際に低分子量成分の析出が少なく、シール強度の安定性や耐衝撃性に優れた物性の樹脂が得られるので好ましい。
【0018】
外層(A)中には、好適な耐衝撃性を得やすいことから、当該層を形成する樹脂成分全量に対してポリエチレン系樹脂を60質量%以上で含有することが好ましく、80質量%以上で含有することがより好ましく、90質量%以上で含有することがさらに好ましい。なかでも樹脂成分としてポリエチレン系樹脂のみを含有し、当該樹脂成分中の60質量%以上を直鎖状低密度ポリエチレンとすることが好ましく、80質量%以上とすることがより好ましく、90質量%以上とすることがさらに好ましい。
【0019】
また、外層(A)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記ポリエチレン系樹脂の他の樹脂を併用してもよい。その他の併用できる樹脂種としては、例えば、上記ポリエチレン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂等を例示でき、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂を例示できる。
【0020】
これら他の樹脂を使用する場合には、外層(A)に含まれる樹脂成分中の40質量%以下とすることが好ましく、20質量%以下とすることがより好ましく、10質量%以下とすることがより好ましい。また下限は特に制限されるものではないが、所望する特性に応じて1質量%以上の含有量にて適宜使用すればよい。
【0021】
本発明のシーラントフィルムに使用する外層(A)は、その層中に使用する樹脂成分の平均密度が0.940g/cm
3以上、好ましくは0.940〜0.945g/cm
3の層である。樹脂成分の平均密度を当該範囲とすることで、レトルト殺菌処理等の高温処理時の外観ムラを好適に抑制できる。当該平均密度は、当該層に使用する樹脂が樹脂a、樹脂b、樹脂c・・・である場合に、これら樹脂の密度をd
a、d
b、d
c・・・、層中に使用する樹脂の質量をW
a、W
b、W
c・・・とした際に、(d
aW
a+d
bW
b+d
cW
c・・・)/(W
a+W
b+W
c・・・)で算出される密度である。
【0022】
外層(A)に使用する各樹脂の密度は、使用する樹脂成分の平均密度が上記範囲となれば特に制限されないが、ポリエチレン系樹脂においては、0.880g/cm
3以上であることが好ましく、0.920g/cm
3以上であることがより好ましく、0.940〜0.950g/cm
3であることが特に好ましい。また、他の樹脂についても、0.920g/cm
3以上のものを使用することが好ましい。
【0023】
外層(A)に使用する樹脂成分のMFRは、0.1〜20g/10分(190℃、21.18N)、好ましくは0.3〜10g/10分(190℃、21.18N)、より好ましくは0.5〜5g/10分(190℃、21.18N)である。MFRがこの範囲であると、各種の多層成膜法において良好な成膜性が得られる点で好ましい。
【0024】
[中間層(B)]
本発明のシーラントフィルムの中間層(B)は、密度が0.937g/cm
3以上の直鎖状低密度ポリエチレン(b1)を含有する。当該直鎖状低密度ポリエチレンを含有することで、好適な耐衝撃性と共に、高温処理時のレトルト殺菌処理時の内面同士の融着や外観ムラを好適に抑制できる。直鎖状低密度ポリエチレン(b1)の密度は、好ましくは0.940g/cm
3以上、より好ましくは0.940〜0.945g/cm
3である。
【0025】
直鎖状低密度ポリエチレン(b1)のMFRは、0.1〜20g/10分(190℃、21.18N)、好ましくは0.3〜10g/10分(190℃、21.18N)、より好ましくは0.5〜5g/10分(190℃、21.18N)である。MFRがこの範囲であると、環状オレフィン系樹脂(b2)との相溶性に優れ、なおかつ各種の多層成膜法において良好な成膜性が得られる点で好ましい。
【0026】
中間層(B)中の直鎖状低密度ポリエチレン(b1)の含有量は、好適な耐衝撃性や高温処理時の耐熱性を得やすいことから、中間層(B)に含まれる樹脂成分中の60〜80質量%であることが好ましく、65〜75質量%であることがより好ましい。
【0027】
本発明のシーラントフィルムの中間層(B)には環状オレフィン系樹脂(b2)を含有することで、優れた易引き裂き性や直進カット性を実現できる。当該環状オレフィン系樹脂(b2)としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」という。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」という。)等が挙げられる。また、COP及びCOCの水素添加物も、特に好ましい。また、環状オレフィン系樹脂の重量平均分子量は、5,000〜500,000が好ましく、より好ましくは7,000〜300,000である。
【0028】
前記ノルボルネン系重合体と原料となるノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体である。このようなノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデテトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、ジメタノテトラヒドロフルオレン、フェニルノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、メトキシカルボニルテトラシクロドデセン等が挙げられる。これらのノルボルネン系単量体は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0029】
前記ノルボルネン系共重合体は、前記ノルボルネン系単量体と共重合可能なオレフィンとを共重合したものであり、このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20個を有するオレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエンなどが挙げられる。
【0030】
中間層(B)中に含まれる環状オレフィン系樹脂(b2)の含有量は、中間層(B)に含まれる樹脂成分中の20〜40質量%であることが好ましく、25〜35質量%であることがより好ましい。環状オレフィン系樹脂(b2)の含有量を当該範囲とすることで、耐衝撃性を損なうことなく、好適な易引き裂き性や直進カット性を実現できる。
【0031】
また、中間層(B)中に使用する環状オレフィン系樹脂(b2)は、そのガラス転移温度が140℃以下であることが好ましく、50〜140℃であることがより好ましく、70〜120℃であることがさらに好ましい。環状オレフィン系樹脂(b2)として当該ガラス転移温度のものを使用することで、良好な耐熱性や剛性を得やすく、また、落下等に対する耐破袋性を向上させやすくなる。また、良好な相溶性を得やすくなり、外観ムラを抑制しやすくなる。ガラス転移温度(Tg)は、DSCにより測定して得られる値である。
【0032】
環状オレフィン系樹脂(b2)のMFRは、0.2〜17g/10分(230℃、21.18N)、好ましくは3〜15g/10分(230℃、21.18N)、より好ましくは5〜13g/10分(230℃、21.18N)である。MFRがこの範囲であると、直鎖状低密度ポリエチレン(b1)との相溶性に優れ、なおかつ各種の多層成膜法において良好な成膜性が得られる点で好ましい。
【0033】
本発明に使用する環状オレフィン系樹脂として使用できる市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体(COC)としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス社製「トパス(TOPAS)」等が挙げられる。
【0034】
中間層(B)中の樹脂成分としては、上記直鎖状低密度ポリエチレン(b1)と環状オレフィン系樹脂(b2)のみを含有することも好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で、これら樹脂成分以外の他の樹脂を併用してもよい。その他の併用できる樹脂種としては、例えば、上記外層(A)にて、例示したポリエチレン系樹脂や、ポリプロピレン系樹脂等を例示できる。
【0035】
これら他の樹脂を使用する場合には、中間層(B)に含まれる樹脂成分中の20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましい。また下限は特に制限されるものではないが、所望する特性に応じて1質量%以上の含有量にて適宜使用すればよい。
【0036】
[内層(C)]
本発明のシーラントフィルムにおける内層(C)は、ポリエチレン系樹脂を含有し、層中の樹脂成分の平均密度が0.940g/cm
3以上の層である。当該内層(C)はシーラントフィルムのヒートシール層となる層である。
【0037】
内層(C)に使用するポリエチレン系樹脂や、当該ポリエチレン系樹脂に併用可能な樹脂等は、上記外層(A)と同様のものを例示でき、好ましいものも同様である。また、当該ポリエチレン系樹脂や他の樹脂の含有量、内層中の樹脂成分の密度や平均密度についても、上記外層(A)と同様の範囲を好ましい範囲として例示できる。
【0038】
また、内層(C)においては、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状中密度ポリエチレン等の中・低密度ポリエチレンに併用して高密度ポリエチレン(HDPE)を使用することも好ましい。中・低密度ポリエチレンと、高密度ポリエチレンとを併用する場合には、内層(C)に使用する樹脂成分中の中・低密度ポリエチレンの含有量を40〜80質量%、高密度ポリエチレンの含有量を20〜60質量%とすることが好ましく、中・低密度ポリエチレンの含有量を45〜75質量%、高密度ポリエチレンの含有量を25〜55質量%とすることがより好ましい。
【0039】
[シーラントフィルム]
本発明のシーラントフィルムは、上記外層(A)、中間層(B)及び内層(C)が順に積層された積層フィルムである。本発明のシーラントフィルムは、当該構成により、好適な易引き裂き性及び直進カット性を有しながらも、レトルト殺菌処理等の高温処理時に内面融着や外観ムラが生じない包装材を実現できる。また、好適なシール性や耐破袋性も実現しやすいことから、レトルト包装材用途に好適である。
【0040】
本発明のシーラントフィルムの厚みは使用する用途や態様に応じて適宜調整すればよいが、包装用途における耐熱性や流通時の耐破袋性、ヒートシール性等の観点から、その総厚みが20〜150μmであることが好ましく、40〜100μmであることがより好ましい。
【0041】
また、各層の厚み比率としては、シール性、易引き裂き性、及びラミネート性の観点より、外層(A)の厚み比率がシーラントフィルムの総厚の10〜40%の範囲であることが好ましく、15〜30%であることがより好ましい。また、内層(C)の厚み比率は10〜40%の範囲であることが好ましく、15〜30%の範囲であることがより好ましい。また、中間層(B)の厚み比率としては20〜80%であることが好ましく、40〜70%であることがより好ましい。
【0042】
具体的な厚みとしては、外層(A)の厚みとしては、2〜60μmであることが好ましく、3〜45μmであることがより好ましい。中間層(B1)の厚みは4〜120μmであることが好ましく、8〜100μmであることがより好ましい。内層(C)の厚みは2〜60μmであることが好ましく、3〜45μmであることがより好ましい。
【0043】
本発明のシーラントフィルムは、上記外層(A)、中間層(B)及び内層(C)が順に積層された積層フィルムであるが、当該層間には本発明の効果を損なわない範囲で、ガスバリア層や易接着層等の他の任意の層を設けてもよい。
【0044】
本発明のシーラントフィルムの各層中には、本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤を配合してもよい。当該添加剤としては、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、顔料等を例示できる。
【0045】
本発明のシーラントフィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、多層フィルムの各層に用いる樹脂(二種以上の樹脂や添加剤を含有する樹脂混合物を含む)を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で積層した後、インフレーション法やTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。この共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、費用対効果にも優れたフィルムが得られるので好ましい。
【0046】
[レトルト用包装材]
本発明のシーラントフィルムは、レトルト用包装材として使用する場合、シーラントフィルムの外層(A)側表面に、他の基材フィルムを貼りあわせて使用できる。他の基材フィルムとしては、特に限定されるものではないが、本発明の効果を容易に発現させる観点から、プラスチック基材、特には二軸延伸された樹脂フィルムを用いることが好ましい。また透明性を必要としない用途の場合はアルミ箔を組み合わせて使用することもできる。
【0047】
延伸された樹脂フィルムとしては、例えば、二軸延伸ポリエステル(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリアミド(PA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を中心層とした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、アルミナ蒸着PET、シリカ蒸着PET、アルミナ・シリカ二元蒸着PET、シリカ蒸着PA、アルミナ蒸着PA等が挙げられる。これらは、単独あるいは複合化して使用しても良い。
【0048】
本発明のシーラントフィルムと、延伸された各種の基材フィルムを貼りあわせる方法としては、主に二つの加工方法が使用されている。一つは、本発明のシーラントフィルム、又は基材フィルムのラミネート面に必要に応じてアンカーコート剤を塗布し、加熱溶融されたポリマー膜(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)を、本発明のシーラントフィルムと基材フィルムのラミネート面の間に薄膜状に押し出して圧着、積層させる、押出ラミネート法である。もう一つは、基材フィルムのラミネート面に接着剤を塗布した後、本発明のシーラントフィルムと基材フィルムを圧着、積層させるドライラミネート法であるが、レトルト包装に使用する場合ドライラミネート法が好ましい。
【0049】
ラミネート用の接着剤は、ポリオール/イソシアネートによる硬化が一般的であり、レトルト用途等の高機能用途には多く利用されている。また従来、貼り合わせはアルミ箔とシーラントフィルムの組み合わせが一般的であったが、各種の透明蒸着フィルムが市販されるようになっており、内容物の視認性向上の要求から、透明蒸着フィルムとシーラントフィルムの貼り合わせも多くなっている。
【0050】
ラミネート用接着剤に用いられるポリオールとしては、例えば、後述するポリオールそのもの、或いはポリオールと後述するポリカルボン酸類とを反応させて得られるポリエステルポリオール、或いは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の活性水素原子を2個有する化合物類を開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマー類を付加重合したポリエーテル類等が挙げられる。
【0051】
前記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ダイマージオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等のグリコール類、プロピオラクトン、ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の活性水素原子を2個有する化合物類を開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマー類を付加重合したポリエーテル類等が挙げられる。
【0052】
前記ポリカルボン酸類としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体、ダイマー酸等の多塩基酸類が挙げられる。
【0053】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、イソシアネート基を分子内に少なくとも2つ有する有機化合物が挙げられる。有機ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのポリイソシアネート;これらのポリイソシアネートのアダクト体、これらのポリイソシアネートのビュレット体、または、これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体などのポリイソシアネートの誘導体(変性物)などが挙げられる。
【0054】
また、前記イソシアネートと前記ポリオールとをイソシアネート基が過剰となる混合比で反応したものを用いてもよい。
【0055】
接着剤において、前記ポリオールの水酸基当量と前記ポリイソシアネートのイソシアネート当量との当量比ポリオール/イソシアネートが0.5〜5.0であることが好ましい。
【0056】
本発明の包装材は、上記シーラントフィルムをシーラントとし、当該シーラントフィルムの外層(A)側に基材フィルムをラミネートする構成により、良好なシール性と、好適な裂け性による良好な開封性を実現できる。また、好適な耐熱性や耐破袋性を実現できることから、高温殺菌処理時にもヒートシール層となる内層(C)同士の融着や、外観ムラを抑制できる。このため、本発明のシーラントフィルムを各種基材と積層して形成される包装材は、レトルト食品用の包装材として好適に適用できる。
【0057】
本発明の包装材は、平袋型、自立性包装袋(スタンディングパウチ)型、チュ−ブ型等の各種形状への製袋して包装袋として好適に使用できる。具体的には、例えば、フィルム状の包装材1枚をシーラント層同士が対向するように折り重ね、または、本発明のフィルム状の包装材2枚をシーラント層同士が対向するように重ね合わせ、その周辺端部をヒートシールして、レトルト食品等の包装袋(レトルトパウチ)に製袋できる。また、必要に応じて、VノッチやIノッチ等の開封開始部を設けてもよい。
【0058】
本発明の包装材及び当該包装材を使用したレトルト食品用包装袋は、ボイル、レトルト殺菌等の高温熱水条件下での処理を必要とする食品の包装に好適に使用でき、例えば、カレー、シチュー、スープ、調理用ソース等の各種のレトルト食品包装用途に好適に適用できる。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
外層、中間層及び内層の各層を形成する樹脂成分として、各々下記の樹脂を使用して、各層を形成する樹脂混合物を調整した。これら混合物を3台の押出機に各々供給して250℃で溶融した。溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成が、外層/中間層/内層の3層構成で、各層の厚み比率が25/50/25%の総厚50μmの積層フィルムを得た。
【0060】
外層:エチレン−αオレフィン共重合体(MFR3.0g/10分(190℃、21.18N)、密度0.942g/cm
3)(以下、「LLDPE(1)」と称する)100質量%
中間層:LLDPE(1)75質量%、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(MFR10g/10分(230℃、21.18N)、ガラス転移温度(Tg)78℃)(以下、「COC(1)」と称する)25質量%
内層 :LLDPE(1)60質量%、高密度ポリエチレン(MFR8g/10分(190℃、21.18N)、密度0.960g/cm
3)(以下、「HDPE」と称する。)40質量%
【0061】
(実施例2)
中間層に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
中間層:LLDPE(1)70質量%、COC(1)30質量%
【0062】
(実施例3)
中間層に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
中間層:LLDPE(1)65質量%、COC(1)35質量%
【0063】
(実施例4)
中間層に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
中間層:LLDPE(1)75質量%、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(MFR10g/10分(230℃、21.18N)、ガラス転移温度(Tg)120℃)(以下、「COC(2)」と称する。)25質量%
【0064】
(実施例5)
外層/中間層/内層の厚み比率を20/60/20%とした以外は実施例2と同様にして積層フィルムを得た。
【0065】
(実施例6)
外層/中間層/内層の厚み比率を15/70/15%とした以外は実施例2と同様にして積層フィルムを得た。
【0066】
(実施例7)
外層/中間層/内層の厚み比率を30/40/30%とした以外は実施例2と同様にして積層フィルムを得た。
【0067】
(実施例8)
内層に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例2と同様にして積層フィルムを得た。
内層:エチレン−αオレフィン共重合体(MFR2.5g/10分(190℃、21.18N)、密度0.925g/cm
3)(以下、「LLDPE(2)」と称する。)50質量%、HDPE50質量%
【0068】
(実施例9)
内層に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例2と同様にして積層フィルムを得た。
内層:エチレン−αオレフィン共重合体(MFR3.5g/10分(190℃、21.18N)、密度0.933g/cm
3)(以下、LLDPE(3)と称する。)70質量%、HDPE30質量%
【0069】
(実施例10)
外層/中間層/内層の厚み比率を35/30/35%とした以外は実施例2と同様にして積層フィルムを得た。
【0070】
(実施例11)
外層/中間層/内層の厚み比率を10/80/10%とした以外は実施例2と同様にしてシーラントフィルムを得た。
【0071】
(比較例1)
中間層に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
中間層:LLDPE(1)100質量%
【0072】
(比較例2)
内層に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
内層:LLDPE(3)100質量%
【0073】
(比較例3)
外層及び中間層に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
外層:LLDPE(3)100質量%
中間層:LLDPE(3)75質量%、COC(1)25質量%
【0074】
(比較例4)
中間層に使用する樹脂成分を下記とし、外層/中間層/内層の厚み比率を25/50/25%とした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
中間層:LLDPE(1)85質量%、COC(1)15質量%
【0075】
(比較例5)
中間層に使用する樹脂成分を下記とし、外層/中間層/内層の厚み比率を40/20/40%とした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
中間層:LLDPE(1)50質量%、COC(1)50質量%
【0076】
上記実施例及び比較例にて得られた積層フィルム(シーラントフィルム)につき、以下の評価を行った。得られた結果は下表に示した。
【0077】
(1)引き裂き強度
JIS K7128−1(トラウザー法)に従い、23℃、50%Rhの恒温室内にて流れ方向の引き裂き強度を測定した。
5N以下 〇 ; 引き裂き性に優れる
5N超 × ; 引き裂き性劣る
【0078】
(2)直進カット性
フィルムの流れ方向の長さが150mm、幅方向の長さが50mmの試験片を用い、幅方向の中央に15mm幅の切れ込みを10mm入れ、切れ込みの先端の幅(W0)を実測する。切れ込みの先端部に、予め用意した厚み0.3mm、幅15mm、長さ160mmのポリエステルシートをテープで貼り付ける。貼り付けたポリエステルシートを180°方向に折り返し、その先端部と反対側の切れ込み部を除いた試験片を引っ張り試験機に取り付け、300mm/minのスピードで、100mm引き裂き、その終点の幅(W1)を実測する。この時、以下の式から保持率を求め、直進カット性の指標とした。
保持率[%]= W1/W0×100
100±20% 〇 ; 直進カット性に優れる
100±30%超 × ; 直進性は無い
【0079】
(3)シール強度
厚さ25μmの二軸延伸ポリアミドフィルム上に、ワイヤーバーを用いて、塗布厚みが3.5g/m
2となるようにポリエステル系接着剤を塗布する。接着剤を乾燥後、シーラントフィルムを貼り合わせ、40℃で24時間乾燥し、ヒートシール試験用ラミネートフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、160℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした試験片を作成し、オートクレーブを用いて、121℃、30分の加熱処理を施した。加熱処理後の試験片を15mm幅に裁断し、引張試験機にて、シール強度を測定した。40N/15mm以上であれば、通常に使用できる。
【0080】
(4)内面融着
(3)と同様にしてラミネートフィルムを得た。得られたフィルムのシールどうしを重ねて、オートクレーブを用いて、121℃、30分の加熱処理を施した。加熱処理後の試験片を常温まで冷却した後
15mm幅に裁断し、引張試験機にて剥離強度を測定した。
1N/15mm以下 〇 ; 耐熱性に優れる
1N/15mmを超える × ; 耐熱性に劣る
【0081】
(5)外観ムラ
(3)と同様にしてラミネートフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、内寸が100mm×150mm(ヒートシール幅10mm)となるように製袋加工し、水200mlを密封した。水を封入した製袋品を121℃、30分レトルト処理した後、外観ムラの状態を目視で評価した。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
上記表より明らかなとおり、実施例1〜11の本願発明のシーラントフィルムは、引き裂きが容易な引き裂き強度と良好な直進カット性を有し、かつ、高温処理時にも内面融着や外観ムラが生じないものであった。一方、比較例のシーラントフィルムは好適な引き裂き性が得られないものであった。また、比較例2、3のシーラントフィルムは外観ムラが発生し、また、比較例2のものは内面融着も生じるものであった。