(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電荷輸送性物質と、電子受容性ドーパント物質と、有機溶媒とを含み、
前記電子受容性ドーパント物質が、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸およびナフタレンテトラスルホン酸から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記電荷輸送性物質が、下記式(H1)で示されるアニリン誘導体、下記式(H2)で示されるアニリン誘導体および下記式(H3)で示されるチオフェン誘導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする電荷輸送性ワニス。
【化1】
〔式(H1)中、
R1〜R4は、水素原子であり、かつ、R5およびR6は、同時にジフェニルアミノ基であり、kおよびlは、それぞれ独立して、1〜5の整数である。
式(H2)中、R
7〜R
10は、それぞれ独立して、水素原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、チオール基、リン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のチオアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基、Z
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数7〜20のアラルキル基、または炭素数1〜20のアシル基を表し、R
11〜R
14は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、フラニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、チエニル基(これらの基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、チオール基、リン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のチオアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基または炭素数1〜20のアシル基で置換されていてもよい。)、または式(H4)で表される基を表し(ただし、R
11〜R
14の少なくとも1つは水素原子である。)、mは、2〜5の整数を表す。Z
1およびZ
2は上記と同じ意味を表す。
【化2】
式(H4)中、R
15〜R
18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、チオール基、リン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のチオアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基、Z
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数7〜20のアラルキル基、または炭素数1〜20のアシル基を表し、R
19およびR
20は、それぞれ独立して、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、フラニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、チエニル基(これらの基は、互いに結合して環を形成してもよく、また、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、チオール基、リン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のチオアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または炭素数1〜20のアシル基で置換されていてもよい。)を表す。Z
1およびZ
2は上記と同じ意味を表す。
式(H3)中、R
21〜R
24は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基、Z
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜20のアシル基、スルホン酸基、−NHY
1、−NY
2Y
3、−OY
4、−SY
5または−SiY
6Y
7Y
8を表し、Y
1〜Y
8は、それぞれ独立して、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基、またはZ
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、XおよびYは、それぞれ独立して、Z
2で置換されていてもよい、チオフェン環を表し、ジチイン環に含まれる2つの硫黄原子は、それぞれ独立してSO基またはSO
2基であってもよい。p、qおよびrは、それぞれ独立して0または1以上の整数で、p+q+r≦20を満足する数である。Z
1およびZ
2は上記と同じ意味を表す。〕
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る電荷輸送性ワニスは、電荷輸送性物質と、電子受容性ドーパント物質と、有機溶媒とを含み、電子受容性ドーパント物質が、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸およびナフタレンテトラスルホン酸から選ばれる少なくとも1種のナフタレンポリスルホン酸を含む。
本発明において、電荷輸送性物質の分子量は、特に限定されるものではないが、導電性という点を考慮すると、200〜2,000が好ましく、下限として好ましくは300以上、より好ましくは400以上であり、溶媒に対する溶解性向上という点を考慮すると、上限として好ましくは1,500以下、より好ましくは1,000以下である。
【0011】
電荷輸送性物質としては、公知の電荷輸送性物質から適宜選択して用いればよいが、アニリン誘導体、チオフェン誘導体が好ましく、特にアニリン誘導体が好ましい。
これらアニリン誘導体およびチオフェン誘導体の具体例としては、例えば、国際公開第2005/043962号、国際公開第2013/042623号、国際公開第2014/141998号等に開示されたものが挙げられる。
【0012】
より具体的には、下記式(H1)〜(H3)で示されるものが挙げられる。
【0014】
なお、式(H1)で表されるアニリン誘導体は、その分子内に下記式で示されるキノンジイミン構造を有する酸化型アニリン誘導体(キノンジイミン誘導体)であってもよい。アニリン誘導体を酸化してキノンジイミン誘導体とする方法としては、国際公開第2008/010474号、国際公開第2014/119782号記載の方法等が挙げられる。
【0016】
式(H1)中、R
1〜R
6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基、Z
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基、−NHY
1、−NY
2Y
3、−OY
4、または−SY
5基を表し、Y
1〜Y
5は、それぞれ独立して、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基、またはZ
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、Z
1は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、またはZ
3で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、Z
2は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、またはZ
3で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基を表し、Z
3は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、またはアミノ基を表し、kおよびlは、それぞれ独立して、1〜5の整数である。
【0017】
式(H2)中、R
7〜R
10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、チオール基、リン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のチオアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基、Z
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数7〜20のアラルキル基、または炭素数1〜20のアシル基を表し、R
11〜R
14は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、フラニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、チエニル基(これらの基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、チオール基、リン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のチオアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基または炭素数1〜20のアシル基で置換されていてもよい。)、または式(H4)で表される基を表す(ただし、R
11〜R
14の少なくとも1つは水素原子である。)、mは、2〜5の整数を表す。Z
1およびZ
2は上記と同じ意味を表す。
【0019】
式(H4)中、R
15〜R
18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、チオール基、リン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のチオアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基、Z
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数7〜20のアラルキル基、または炭素数1〜20のアシル基を表し、R
19およびR
20は、それぞれ独立して、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、フラニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、チエニル基(これらの基は、互いに結合して環を形成してもよく、また、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、チオール基、リン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のチオアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または炭素数1〜20のアシル基で置換されていてもよい。)を表す。Z
1およびZ
2は上記と同じ意味を表す。
【0020】
式(H3)中、R
21〜R
24は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基、Z
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜20のアシル基、スルホン酸基、−NHY
1、−NY
2Y
3、−OY
4、−SY
5または−SiY
6Y
7Y
8を表し、Y
1〜Y
8は、それぞれ独立して、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基、またはZ
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、XおよびYは、それぞれ独立して、Z
2で置換されていてもよい、チオフェン環を表し、ジチイン環に含まれる2つの硫黄原子は、それぞれ独立してSO基またはSO
2基であってもよい。p、qおよびrは、それぞれ独立して0または1以上の整数で、p+q+r≦20を満足する数である。Z
1およびZ
2は上記と同じ意味を表す。
【0021】
上記各式において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等の炭素数3〜20の環状アルキル基などが挙げられる。
【0022】
炭素数2〜20のアルケニル基の具体例としては、エテニル基、n−1−プロペニル基、n−2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、n−1−ブテニル基、n−2−ブテニル基、n−3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−エチルエテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、n−1−ペンテニル基、n−1−デセニル基、n−1−エイコセニル基等が挙げられる。
【0023】
炭素数2〜20のアルキニル基の具体例としては、エチニル基、n−1−プロピニル基、n−2−プロピニル基、n−1−ブチニル基、n−2−ブチニル基、n−3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、n−1−ペンチニル基、n−2−ペンチニル基、n−3−ペンチニル基、n−4−ペンチニル基、1−メチル−n−ブチニル基、2−メチル−n−ブチニル基、3−メチル−n−ブチニル基、1,1−ジメチル−n−プロピニル基、n−1−ヘキシニル基、n−1−デシニル基、n−1−ペンタデシニル基、n−1−エイコシニル基等が挙げられる。
【0024】
炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基等が挙げられる。
【0025】
炭素数7〜20のアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基等が挙げられる。
【0026】
炭素数2〜20のヘテロアリール基の具体例としては、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フラニル基、3−フラニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、4−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基、2−チアゾリル基、4−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、4−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基等が挙げられる。
【0027】
炭素数1〜20のハロアルキル基としては、上記炭素数1〜20のアルキル基の水素原子の少なくとも1つを、ハロゲン原子で置換したものが挙げられるが、中でも、フルオロアルキル基が好ましく、パーフルオロアルキル基がより好ましい。
その具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル基、ノナフルオロブチル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0028】
炭素数1〜20のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、c−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキソキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−エイコサニルオキシ基等が挙げられる。
【0029】
炭素数1〜20のチオアルコキシ(アルキルチオ)基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、n−ノニルチオ基、n−デシルチオ基、n−ウンデシルチオ基、n−ドデシルチオ基、n−トリデシルチオ基、n−テトラデシルチオ基、n−ペンタデシルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基、n−ヘプタデシルチオ基、n−オクタデシルチオ基、n−ノナデシルチオ基、n−エイコサニルチオ基等が挙げられる。
【0030】
炭素数1〜20のアシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0031】
式(H1)において、R
1〜R
6は、水素原子、ハロゲン原子、Z
1で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z
2で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、−NHY
1、−NY
2Y
3、−OY
4、または−SY
5が好ましく、この場合において、Y
1〜Y
5は、Z
1で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基またはZ
2で置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基が好ましく、Z
1で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基またはZ
2で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基がより一層好ましい。
特に、R
1〜R
6は、水素原子、フッ素原子、メチル基、フェニル基またはジフェニルアミノ基(Y
2およびY
3がフェニル基である−NY
2Y
3)がより好ましく、R
1〜R
4が水素原子であり、かつ、R
5およびR
6が同時に水素原子またはジフェニルアミノ基がより一層好ましい。
【0032】
とりわけ、R
1〜R
6およびY
1〜Y
5においては、Z
1は、ハロゲン原子またはZ
3で置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基が好ましく、フッ素原子またはフェニル基がより好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換の基であること)がより一層好ましく、また、Z
2は、ハロゲン原子またはZ
3で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、フッ素原子または炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換の基であること)がより一層好ましい。
また、Z
3は、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換の基であること)がより一層好ましい。
kおよびlとしては、式(H1)で表されるアニリン誘導体の溶解性を高める観点から、好ましくは、k+l≦8であり、より好ましくは、k+l≦5である。
【0033】
式(H2)において、R
7〜R
10は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
また、式(H2)で表されるアニリン誘導体の溶媒に対する溶解性を高めるとともに、得られる薄膜の均一性を高めることを考慮すると、R
11およびR
13が共に水素原子であることが好ましい。
特に、R
11およびR
13が共に水素原子であり、R
12およびR
14が、それぞれ独立して、フェニル基(このフェニル基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、チオール基、リン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のチオアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または炭素数1〜20のアシル基で置換されていてもよい。)、または上記式(H4)で表される基であることが好ましく、R
11およびR
13が、共に水素原子であり、R
12およびR
14が、それぞれ独立して、フェニル基、またはR
19'およびR
20'が共にフェニル基である下記式(H4′)で表される基であることがより好ましく、R
11およびR
13が、共に水素原子であり、R
12およびR
14が、共にフェニル基であることがより一層好ましい。
また、mとしては、化合物の入手容易性、製造の容易性、コスト面などを考慮すると、2〜4が好ましく、溶媒への溶解性を高めることを考慮すると、2または3がより好ましく、化合物の入手容易性、製造の容易性、製造コスト、溶媒への溶解性、得られる薄膜の透明性等のバランスを考慮すると、2が最適である。
【0035】
式(H3)において、R
21〜R
24としては、水素原子、フッ素原子、スルホン酸基、炭素数1〜8のアルキル基、−OY
4基、−SiY
6Y
7Y
8基が好ましく、水素原子がより好ましい。
また、p、qおよびrは、当該化合物の溶解性を高めるという点から、それぞれ1以上、かつ、p+q+r≦20が好ましく、それぞれ1以上、かつ、p+q+r≦10がより好ましい。さらに、高い電荷輸送性を発現させるという点から、それぞれ1以上、かつ、5≦p+q+rが好ましく、qが1、pおよびrがそれぞれ1以上、かつ、5≦p+q+rがより好ましい。
【0036】
式(H1)〜(H3)で表されるアニリン誘導体またはチオフェン誘導体は、市販品を用いても、上記各公報に記載されている方法等の公知の方法によって製造したものを用いてもよいが、いずれの場合も電荷輸送性ワニスを調製する前に、再結晶や蒸着法などによって精製したものを用いることが好ましい。精製したものを用いることで、当該ワニスから得られた薄膜を備えた有機光電変換素子の特性をより高めることができる。再結晶にて精製する場合、溶媒としては、例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどを用いることができる。
【0037】
本発明の電荷輸送性ワニスにおいて、式(H1)〜(H3)で表される電荷輸送性物質としては、式(H1)〜(H3)で表される化合物から選ばれる1種の化合物(すなわち、分子量分布の分散度が1)を単独で用いてもよく、2以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
特に、正孔捕集層の透明性を高めるという点から、式(H2)で示されるアニリン誘導体を用いることが好ましく、中でも上記mが2であるベンジジン誘導体を用いることがより好ましく、下記式(g)で示されるジフェニルベンジジンを用いることがより一層好ましい。
【0038】
本発明で好適に用いることができる電荷輸送性物質の具体例としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本発明の電荷輸送性ワニスは、上記電荷輸送性物質に加え、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸およびナフタレンテトラスルホン酸から選ばれる少なくとも1種のナフタレンポリスルホン酸を含む電子受容性ドーパント物質を含む。
ナフタレンポリスルホン酸の具体例としては、1,5−ナフタレンジスルホン酸、2,7−ナフタレンジスルホン酸等のナフタレンジスルホン酸、1,3,5−ナフタレントリスルホン酸,1,3,6−ナフタレントリスルホン酸等のナフタレントリスルホン酸、1,4,5,7−ナフタレンテトラスルホン酸等のナフタレンテトラスルホン酸などが挙げられるが、中でも、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸が好ましい。
【0043】
また、上記ナフタレンポリスルホン酸に加え、得られる薄膜の用途に応じ、得られる有機光電変換素子の光電変換効率の向上等を目的として、その他の電子受容性ドーパント物質を含んでいてもよい。
その他の電子受容性ドーパント物質は、電荷輸送性ワニスに使用する少なくとも一種の溶媒に溶解するものであれば、特に限定されない。
【0044】
その他の電子受容性ドーパント物質の具体例としては、塩化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機強酸;塩化アルミニウム(III)(AlCl
3)、四塩化チタン(IV)(TiCl
4)、三臭化ホウ素(BBr
3)、三フッ化ホウ素エーテル錯体(BF
3・OEt
2)、塩化鉄(III)(FeCl
3)、塩化銅(II)(CuCl
2)、五塩化アンチモン(V)(SbCl
5)、五フッ化砒素(V)(AsF
5)、五フッ化リン(PF
5)、トリス(4−ブロモフェニル)アルミニウムヘキサクロロアンチモナート(TBPAH)等のルイス酸;ベンゼンスルホン酸、トシル酸、カンファスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、国際公開第2005/000832号に記載されている1,4−ベンゾジオキサンジスルホン酸化合物、国際公開第2006/025342号に記載されているナフタレンまたはアントラセンスルホン酸化合物、特開2005−108828号公報に記載されているジノニルナフタレンスルホン酸化合物等のアリールスルホン酸化合物などの有機強酸;7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)、ヨウ素等の有機酸化剤、国際公開第2010/058777号に記載されているリンモリブデン酸、リンタングステン酸、リンタングストモリブデン酸等のヘテロポリ酸等の無機酸化剤などが挙げられ、それぞれを組み合わせて使用してもよい。
【0045】
電荷輸送性ワニスの調製に用いる有機溶媒としては、上記電荷輸送性物質および電子受容性ドーパント物質を良好に溶解し得る高溶解性溶媒を用いることができる。高溶解性溶媒は1種単独で、または2種以上混合して用いることができ、その使用量は、ワニスに使用する溶媒全体に対して5〜100質量%とすることができる。
【0046】
このような高溶解性溶媒としては、例えば、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0047】
これらの中でも、アミド系溶媒であるN−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましく、N,N−ジメチルアセトアミドがより好ましい。
【0048】
電荷輸送性物質および電子受容性ドーパント物質は、いずれも上記有機溶媒に完全に溶解しているか、均一に分散している状態となっていることが好ましく、高い光電変換効率の有機光電変換素子を与える正孔捕集層を再現性よく得ることを考慮すると、これらの物質は上記有機溶媒に完全に溶解していることがより好ましい。
【0049】
本発明の電荷輸送性ワニスは、25℃で10〜200mPa・s、特に35〜150mPa・sの粘度を有し、常圧で沸点50〜300℃、特に150〜250℃の高粘度有機溶媒を、少なくとも一種類含有することが好ましい。
【0050】
高粘度有機溶媒は、特に限定されるものではなく、例えば、シクロヘキサノール、エチレングリコール、1,3−オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、へキシレングリコールなどが挙げられる。
【0051】
本発明の電荷輸送性ワニスに使用される溶媒全体に対する高粘度有機溶媒の添加割合は、固体が析出しない範囲内であることが好ましく、固体が析出しない限りにおいて、添加割合は、5〜80質量%であることが好ましい。
【0052】
さらに、塗布面に対する濡れ性の向上、溶媒の表面張力の調整、極性の調整、沸点の調整等の目的で、熱処理時に膜の平坦性を付与し得るその他の溶媒を、ワニスに使用する溶媒全体に対して1〜90質量%、好ましくは1〜50質量%の割合で混合することもできる。
【0053】
このような溶媒としては、例えば、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルカルビトール、ジアセトンアルコール、γ−ブチロラクトン、エチルラクテート、n−ヘキシルアセテートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
本発明の電荷輸送性ワニスには、得られる有機光電変換素子の電子ブロック性を向上させる観点から、有機シラン化合物を添加してもよい。
有機シラン化合物としては、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン等が挙げられるが、とりわけ、アリールトリアルコキシシラン、アリールジアルコキシシラン、フッ素原子含有トリアルコキシシラン、フッ素原子含有ジアルコキシシラン化合物が好ましく、式(S1)または(S2)で表されるシラン化合物がより好ましい。
【0055】
【化8】
(式中、Rは、炭素数1〜6のフルオロアルキル基を表す。)
【0056】
炭素数1〜6のフルオロアルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
【0057】
ジアルコキシシラン化合物の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0058】
トリアルコキシシラン化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、トリエトキシ(4−(トリフルオロメチル)フェニル)シラン、ドデシルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、トリエトキシフルオロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、トリエトキシ−2−チエニルシラン、3−(トリエトキシシリル)フラン等が挙げられる。
【0059】
有機シラン化合物を用いる場合、その含有量は、本発明の電荷輸送性ワニスの電荷輸送性物質および電子受容性ドーパント物質に対して、通常0.1〜200質量%程度であるが、好ましくは、1〜100質量%、より好ましくは、5〜50質量%である。
【0060】
本発明の電荷輸送性ワニスの固形分濃度は、ワニスの粘度および表面張力等や、作製する薄膜の厚み等を勘案して適宜設定されるものではあるが、通常、0.1〜10.0質量%程度であり、好ましくは0.5〜5.0質量%、より好ましくは1.0〜3.0質量%である。
なお、固形分とは、電荷輸送性ワニスを構成する、有機溶媒以外の成分を意味する。
また、電荷輸送性物質と電子受容性ドーパント物質の物質量(mol)比も、発現する電荷輸送性、電荷輸送性物質の種類等を考慮して適宜設定されるものではあるが、通常、電荷輸送性物質1に対し、電子受容性ドーパント物質0.1〜10、好ましくは0.2〜5.0、より好ましくは0.5〜3.0である。
そして、本発明において用いる電荷輸送性ワニスの粘度は、作製する薄膜の厚み等や固形分濃度を考慮し、塗布方法に応じて適宜調節されるものではあるが、通常25℃で0.1〜50mPa・s程度である。
【0061】
本発明の電荷輸送性ワニスを調製する際、固形分が溶媒に均一に溶解または分散する限り、電荷輸送性物質、電子受容性ドーパント物質、有機溶媒を任意の順序で混合することができる。すなわち、例えば、有機溶媒に電荷輸送性物質を溶解させた後、その溶液に電子受容性ドーパント物質を溶解させる方法、有機溶媒に電子受容性ドーパント物質を溶解させた後、その溶液に電荷輸送性物質を溶解させる方法、電荷輸送性物質と電子受容性ドーパント物質とを混合した後、その混合物を有機溶媒に投入して溶解させる方法のいずれも、固形分が有機溶媒に均一に溶解または分散する限り、採用することができる。
【0062】
また、通常、電荷輸送性ワニスの調製は、常温、常圧の不活性ガス雰囲気下で行われるが、ワニス中の化合物が分解したり、組成が大きく変化したりしない限り、大気雰囲気下(酸素存在下)で行ってもよく、加熱しながら行ってもよい。
【0063】
以上説明した電荷輸送性ワニスを、有機光電変換素子の陽極に塗布して焼成することで、本発明の正孔捕集層を形成できる。
塗布の際、ワニスの粘度と表面張力、所望する薄膜の厚さ等を考慮し、ドロップキャスト法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等の各種ウェットプロセス法の中から最適なものを採用すればよい。
【0064】
通常、塗布は、常温、常圧の不活性ガス雰囲気下で行われるが、ワニス中の化合物が分解したり、組成が大きく変化したりしない限り、大気雰囲気下(酸素存在下)で行ってもよく、加熱しながら行ってもよい。
膜厚は、通常1〜200nm程度であるが、好ましくは3〜100nm程度、より好ましくは3〜30nmである。膜厚を変化させる方法としては、ワニス中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の溶液量を変化させたりするなどの方法がある。
【0065】
以下、本発明の電荷輸送性ワニスを用いた有機光電変換素子の製造方法について説明する。
[陽極層の形成]:透明基板の表面に陽極材料の層を形成して透明電極を製造する工程
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)等の金属酸化物や、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体などの高電荷輸送性有機化合物を用いることができる。また、透明基板としては、ガラスあるいは透明樹脂からなる基板を用いることができる。
陽極材料の層(陽極層)の形成方法は、陽極材料の性質に応じて適宜選択され、通常、昇華性化合物を用いたドライプロセス(蒸着法)か電荷輸送性化合物を含むワニスを用いたウェットプロセス(特にスピンコート法かスリットコート法)のいずれかが採用される。
また、透明電極として市販品も好適に用いることができ、この場合、素子の歩留を向上させる観点からは、平滑化処理がされている基盤を用いることが好ましい。市販品を用いる場合、本発明の有機光電変換素子の製造方法は、陽極層を形成する工程を含まない。
使用する透明電極は、洗剤、アルコール、純水等で洗浄してから使用することが好ましい。例えば、陽極基板では、使用直前にUVオゾン処理、酸素−プラズマ処理等の表面処理を施すことが好ましい(陽極材料が有機物を主成分とする場合、表面処理を行わなくともよい)。
【0066】
[正孔捕集層の形成]:陽極材料の層上に正孔捕集層を形成する工程
上記方法に従い、陽極材料の層上に、本発明の電荷輸送性ワニスを用いて正孔捕集層を形成する。
【0067】
[活性層の形成]:正孔捕集層上に活性層を形成する工程
活性層は、n型半導体材料からなる薄膜であるn層と、p型半導体材料からなる薄膜であるp層とを積層したものであっても、これら材料の混合物からなる非積層薄膜であってもよい。
n型半導体材料としては、フラーレン、[6,6]−フェニル−C
61−酪酸メチルエステル(PC
61BM)、[6,6]−フェニル−C
71−酪酸メチルエステル(PC
71BM)等が挙げられる。一方、p型半導体材料としては、レジオレギュラーポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、PTB7、PDTP−DFBT、特開2009−158921号公報および国際公開第2010/008672号に記載されているようなチエノチオフェンユニット含有ポリマー類等の、主鎖にチオフェン骨格を含むポリマー、CuPC,ZnPC等のフタロシアニン類、テトラベンゾポルフィリン等のポルフィリン類などが挙げられる。
これらの中でも、n型材料としては、PC
61BM、PC
71BMが、p型材料としては、PTB7等の主鎖にチオフェン骨格を含むポリマー類が好ましい。
なお、ここでいう「主鎖にチオフェン骨格」とはチオフェンのみからなる2価の芳香環、またはチエノチオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾジチオフェン、ナフトチオフェン、ナフトジチオフェン、アントラチオフェン、アントラジチオフェン等のような1以上のチオフェンを含む2価の縮合芳香環を表し、これらは上記R
1〜R
6で示される置換基で置換されていてもよい。
活性層の形成方法は、n型半導体あるいはp型半導体材料の性質に応じて適宜選択され、通常、昇華性化合物を用いたドライプロセス(特に蒸着法)か、材料を含むワニスを用いたウェットプロセス(特にスピンコート法かスリットコート法)のいずれかが採用される。
【0068】
【化9】
(式中、n1およびn2は、繰り返し単位数を示し、正の整数を表す。)
【0069】
[電子捕集層の形成]:活性層上に電子捕集層を形成する工程
必要に応じて、活性層と陰極層の間に電子捕集層を形成してもよい。
電子捕集層を形成する材料としては、酸化リチウム(Li
2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al
2O
3)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF
2)、フッ化ストロンチウム(SrF
2)等が挙げられる。
電子捕集層の形成方法は、その材料の性質に応じて適宜選択され、通常、昇華性化合物を用いたドライプロセス(特に蒸着法)か、材料を含むワニスを用いたウェットプロセス(特にスピンコート法かスリットコート法)のいずれかが採用される。
【0070】
[陰極層の形成]:電子捕集層上に陰極層を形成する工程
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム−リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、バリウム、銀、金等が挙げられ、複数の陰極材料を積層したり、混合したりして使用することができる。
陰極層の形成方法は、その材料の性質に応じて適宜選択されるが、通常、ドライプロセス(特に蒸着法)が採用される。
【0071】
[キャリアブロック層の形成]
必要に応じて、光電流の整流性をコントロールすること等を目的として、任意の層間にキャリアブロック層を設けてもよい。
キャリアブロック層を形成する材料としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
キャリアブロック層の形成方法は、その材料の性質に応じて適宜選択され、通常、昇華性化合物を用いる場合は蒸着法が、材料が溶解したワニスを用いる場合はスピンコート法か、スリットコート法のいずれかが採用される。
【0072】
上記で例示した方法によって作製された有機光電変換素子は、大気による素子劣化を防ぐために、再度グローブボックス内に導入して窒素等の不活性ガス雰囲気下で封止操作を行い、封止された状態で有機光電変換素子としての機能を発揮させたり、その特性の測定を行ったりすることができる。
封止法としては、端部にUV硬化樹脂を付着させた凹型ガラス基板を、不活性ガス雰囲気下、有機光電変換素子の成膜面側に付着させ、UV照射によって樹脂を硬化させる方法や、真空下、スパッタリング等の手法によって膜封止タイプの封止を行う方法などが挙げられる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、使用した装置は以下のとおりである。
(1)グローブボックス:米国VAC社製グローブボックスシステム
(2)蒸着装置:アオヤマエンジニアリング(株)製、真空蒸着装置
(3)測定装置:(株)小坂研究所製、全自動微細形状測定機ET−4000A
(4)電流値測定に用いた装置:アジレント(株)製、4156Cプレシジョン半導体パラメータ・アナライザ
(5)光電流測定に用いた光源装置:分光計器(株)製、SM−250ハイパーモノライトシステム
【0074】
[1]活性層用組成物の調製
[調製例1]
PTB7(ワンマテリアル社製)20mgおよびPCBM(フロンティアカーボン社製、製品名:nanom spectra E100)30mgが入ったサンプル瓶の中にクロロベンゼン2.0mL加え、80℃のホットプレート上で15時間撹拌した。この溶液を室温まで放冷した後、1,8−ジヨードオクタン(東京化成工業(株)製)60μLを加えて撹拌し、活性層用組成物A1を得た。
【0075】
[2]電荷輸送性ワニスの調製
[実施例1−1]
式[1]で示されるN,N′−ジフェニルベンジジン(東京化成工業(株)製、以下同様)322.5mg(0.959mmol)と式[2]で示される1,3,6−ナフタレントリスルホン酸(富山薬品工業(株)製)188.3mg(0.511mmol)との混合物に、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAc)12.5gを加え、室温で超音波を照射しながら撹拌して溶解させた。さらにそこへ、シクロヘキサノール(以下、CHN)12.5gを加えて撹拌し、褐色溶液を得た。
得られた褐色溶液を、孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して、電荷輸送性ワニスB1を得た。
【0076】
【化10】
【0077】
[実施例1−2]
N,N′−ジフェニルベンジジン60.5mg(0.180mmol)と式[3]で示される1,5−ナフタレンジスルホン酸(東京化成工業(株)製)41.5mg(0.144mmol)との混合物に、DMAc2.5gを加え、室温で超音波を照射しながら撹拌して溶解させた。さらにそこへ、CHN2.5gを加えて撹拌し、褐色溶液を得た。
得られた褐色溶液を、孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して、電荷輸送性ワニスB2を得た。
【0078】
【化11】
【0079】
[比較1−1]
N,N′−ジフェニルベンジジン51.3mg(0.153mmol)と式[4]で示される2−ナフタレンスルホン酸(東京化成工業(株)製)50.8mg(0.244mmol)との混合物に、DMAc2.5gを加え、室温で超音波を照射しながら撹拌して溶解させた。さらにそこへ、CHN2.5gを加えて撹拌し、褐色溶液を得た。
得られた褐色溶液を、孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して、電荷輸送性ワニスC1を得た。
【0080】
【化12】
【0081】
[比較例1−2]
N,N′−ジフェニルベンジジン58.3mg(0.173mmol)と式[5]で示されるベンゼンスルホン酸(東京化成工業(株)製)43.9mg(0.277mmol)との混合物に、DMAc2.5gを加え、室温で超音波を照射しながら撹拌して溶解させた。さらにそこへ、CHN2.5gを加えて撹拌し、褐色溶液を得た。
得られた褐色溶液を、孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して、電荷輸送性ワニスC2を得た。
【0082】
【化13】
【0083】
[3]正孔捕集層および有機光電変換素子の作製
[実施例2−1]
正極となるITO透明導電層を2mm×20mmのストライプ状にパターニングした20mm×20mmのガラス基板を15分間UV/オゾン処理した後、基板上に、実施例1−1で得られた電荷輸送性ワニスB1をスピンコート法により塗布した。このガラス基板を、ホットプレートを用いて、50℃で5分間、さらに230℃で20分間加熱して正孔捕集層を形成した。
その後、不活性ガスにより置換されたグローブボックス中で、調製例1で得られた活性層用組成物A1を、形成した正孔捕集層上に滴下し、スピンコート法により成膜した。
次に、有機半導体層が形成された基板と負極用マスクを真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が1×10
-3Pa以下になるまで排気し、抵抗加熱法によって、負極となるアルミニウム層を80nmの厚さに蒸着した。
最後に、ホットプレートで80℃,10分間加熱し、ストライプ状のITO層とアルミニウム層とが交差する部分の面積が2mm×2mmであるOPV素子を作製した。
【0084】
[実施例2−2]
電荷輸送性ワニスB1の代わりに、電荷輸送性ワニスB2を用いた以外は、実施例2−1と同様の方法で、OPV素子を作製した。
【0085】
[比較例2−1]
電荷輸送性ワニスB1の代わりに、電荷輸送性ワニスC1を用いた以外は、実施例2−1と同様の方法で、OPV素子を作製した。
【0086】
[比較例2−2]
電荷輸送性ワニスB1の代わりに、電荷輸送性ワニスC2を用いた以外は実施例2−1と同様の方法で、OPV素子を作製した。
【0087】
[5]特性評価
上記で作製した各OPV素子について、短絡電流密度(Jsc〔mA/cm
2〕)、開放電圧(Voc〔V〕)、曲線因子(FF)、および光電変換効率(PCE〔%〕)の評価を行った。結果を表1に示す。なお光電変換効率は、下式により算出した。
PCE〔%〕=Jsc〔mA/cm
2〕×Voc〔V〕×FF÷入射光強度(100〔mW/cm
2〕)×100
【0088】
【表1】
【0089】
表1に示されるとおり、ナフタレンモノスルホン酸(比較例2−1)やベンゼンスルホン酸(比較例2−2)を電子受容性ドーパント物質として用いたワニスから作製した電荷輸送性薄膜を備えるOPV素子より、ナフタレントリスルホン酸(実施例2−1)やナフタレンジスルホン酸(実施例2−2)を電子受容性ドーパント物質として含むワニスから作製した電荷輸送性薄膜を備える素子の方が、高い変換効率を示していることがわかる。