(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物、およびそれらを含有する化粧料、水中油型の化粧料を実施するための好ましい形態について説明する。
なお、以下の実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0019】
[酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子]
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子は、紫外線遮蔽粒子の表面が酸化ケイ素被膜で被覆されてなり、酸化ケイ素被膜の表面に、アルキル基、アルケニル基およびシクロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基が存在し、官能基の含有量が0.01質量%以上かつ0.30質量%以下である。
【0020】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子は、詳細には、紫外線遮蔽粒子と、その紫外線遮蔽粒子の表面を被覆する酸化ケイ素被膜と、を有し、酸化ケイ素被膜の表面(最表面)に、アルキル基、アルケニル基およびシクロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有するシリカ(酸化ケイ素(SiO
2))化合物からなる薄膜が存在している。すなわち、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子では、酸化ケイ素被膜は、酸化ケイ素と上記の官能基(詳細には、上記の官能基を有する化合物)を含む。これにより、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子では、酸化ケイ素被膜の表面に、アルキル基、アルケニル基およびシクロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基が存在する。また、官能基を有するシリカ化合物とは、シリカの表面が、後述する有機ケイ素化合物等によって表面処理されたものである。すなわち、官能基を有するシリカ化合物とは、シリカの表面に、有機ケイ素化合物等に由来するアルキル基、アルケニル基およびシクロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有するものである。
【0021】
アルキル基、アルケニル基およびシクロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基は、油成分との相溶性を向上できるものであれば特に限定されない。
【0022】
アルキル基は、炭素原子数が1以上かつ8以下のものであることが好ましく、1以上かつ6以下のものであることがより好ましく、1以上かつ4以下のものであることがさらに好ましく、1以上かつ2以下のものであることが最も好ましい。
アルキル基の炭素原子数が1以上かつ8以下であることにより、酸化ケイ素被膜の親水性を過度に損なわず、かつ、酸化ケイ素被膜の表面に、アルキル基、アルケニル基およびシクロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を過度に存在させることを抑制できる。そのため、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を水系の化粧料や水中油型の化粧料に用いた場合に、所望の紫外線遮蔽性を得ることができる。
【0023】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子において、その全量(100質量%)に対する、アルキル基、アルケニル基およびシクロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種の含有量は、0.01質量%以上かつ0.30質量%以下であり、0.02質量%以上かつ0.25質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上かつ0.20質量%以下であることがより好ましく、0.02質量%以上かつ0.10質量%以下であることがさらに好ましい。官能基が2種以上含有されている場合には、これらの官能基の合計含有量が上記範囲であることが好ましい。
アルキル基、アルケニル基およびシクロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基の含有量が上記の範囲であることにより、酸化ケイ素被膜の親水性を過度に損なわず、かつ、酸化ケイ素被膜の表面に、アルキル基、アルケニル基およびシクロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を過度に存在させることを抑制できる。そのため、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を水系の化粧料や水中油型の化粧料に用いた場合に、所望の紫外線遮蔽性を得ることができる。
【0024】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子において、その全量(100質量%)に対する、紫外線遮蔽粒子の含有量は、50質量%以上かつ95質量%以下であることが好ましく、60質量%以上かつ90質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上かつ80質量%以下であることがさらに好ましい。
紫外線遮蔽粒子の含有量が上記の範囲であることにより、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を水系の化粧料や水中油型の化粧料に用いた場合に、所望の紫外線遮蔽性が得られる。また、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を水系の化粧料や水中油型の化粧料に混合することができる。
【0025】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子において、その全量(100質量%)に対する、酸化ケイ素の含有量は、3質量%以上かつ45質量%以下であることが好ましく、10質量%以上かつ40質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上かつ35質量%以下であることがさらに好ましい。紫外線遮蔽粒子中の金属イオンの溶出を抑制する観点においては、酸化ケイ素の含有量は、15質量%以上であることが好ましい。所望の紫外線遮蔽性を得る観点においては、酸化ケイ素の含有量は30質量%以下であることが好ましい。紫外線遮蔽粒子の平均一次粒子径が50nm以下である場合には、酸化ケイ素の含有量は、3質量%以上かつ45質量%以下であることが好ましい。また、紫外線遮蔽粒子の平均一次粒子径が50nmを超える場合には、酸化ケイ素の含有量は、1質量%以上かつ35質量%以下であることが好ましい。
【0026】
紫外線遮蔽粒子としては、紫外線を遮蔽できる金属酸化物粒子であれば特に限定されない。このような紫外線遮蔽粒子としては、例えば、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子および酸化セリウム粒子からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、酸化亜鉛粒子と酸化チタン粒子は、化粧料用の紫外線遮蔽粒子として汎用されている点で好ましい。
【0027】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子においては、酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3、酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ
4環境における存在比をQ
4としたとき、Q
3+Q
4≧0.6かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5であることが好ましい。さらに、この酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率が3%以下となる程度に、紫外線遮蔽粒子全体を酸化ケイ素被膜が均一に被覆していることが好ましい。この酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率は2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
酸化ケイ素被膜は、「酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ
3環境における存在比をQ
3、酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ
4環境における存在比をQ
4としたとき、Q
3+Q
4≧0.6かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5」を満たすほど、縮合度の高いものであればよい。
なお、緻密な酸化ケイ素被膜の「緻密さ」と酸化ケイ素の「縮合度」との間には密接な関係があり、酸化ケイ素の縮合度が高くなればなるほど酸化ケイ素被膜の緻密性が高まることとなる。
すなわち、ここでいう緻密な酸化ケイ素被膜の「緻密な」とは、Q
3+Q
4≧0.6かつQ
4/(Q
3+Q
4)≧0.5を満たすほど、酸化ケイ素の縮合度が高い状態の酸化ケイ素被膜のことを意味する。
酸化ケイ素被膜が緻密であることにより、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子から、紫外線遮蔽粒子中の金属イオンが溶出することを抑制できる。
【0029】
酸化ケイ素の縮合度については、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を、固体
29Si MAS−核磁気共鳴(NMR)分光法によりNMRスペクトルを測定し、このNMRスペクトルのピーク面積比からQ
0、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4それぞれの環境に帰属されるシグナルの面積比を測定することで容易に知ることができる。
ここで、Q
n(n=0〜4)とは、酸化ケイ素の構成単位であるSiO
4四面体単位の酸素原子のうちの架橋酸素原子、すなわち、2つのSiと結合している酸素原子の数に応じて決まる化学的構造のことである。
これらQ
0、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4それぞれの環境に帰属されるシグナルの面積比を、Q
0、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4と表記する。ただし、Q
0+Q
1+Q
2+Q
3+Q
4=1である。
【0030】
酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率が3%以下であることが好ましいとした理由を以下に述べる。その理由は、このブリリアントブルーの分解率が3%以下であれば、紫外線遮蔽粒子の光触媒活性が抑制されていることとなるので、紫外線遮蔽粒子を覆っている酸化ケイ素被膜の均質性も高いことを意味するからである。ここで、紫外線遮蔽粒子を覆っている酸化ケイ素被膜の均質性が高いとは、被覆むらがないこと、被膜が局在化していないこと、ピンホール等がないことを示す。ブリリアントブルーの分解率は、紫外線遮蔽粒子の光触媒活性の指標として用いられる。紫外線遮蔽粒子の光触媒反応は、基本的に紫外線遮蔽粒子の表面にて起こる。すなわち、紫外線遮蔽粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率が低いということは、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の表面に、紫外線遮蔽粒子が露出している箇所が少ないことを示す。
【0031】
ブリリアントブルーの分解率の測定方法は、次の通りである。
まず、ブリリアントブルーを所定の含有量(例えば、5ppm)にしたブリリアントブルー水溶液を調製し、このブリリアントブルー水溶液からスクリュー管に所定量採取し、この採取したブリリアントブルー水溶液に、紫外線遮蔽粒子換算で、この水溶液の質量の1質量%の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を投入し、超音波分散して懸濁液を調製する。
次いで、この懸濁液に、紫外線照射ランプを用いて、所定の波長の紫外線を所定距離(例えば、10cm)から所定時間(例えば、6時間)照射する。
紫外線照射ランプとしては、例えば、殺菌ランプGL20(波長253.7nm、紫外線出力7.5W:東芝社製)を用いることができる。
【0032】
次いで、この紫外線が照射された懸濁液から上澄み液を採取し、原子吸光光度法により、上記のブリリアントブルー水溶液および上澄み液それぞれの吸光光度スペクトルを測定する。
そして、これらの測定値を用いて、下記の式(1)によりブリリアントブルーの分解率Dを算出する。
D=(A0−A1)/A0 ・・・(1)
(但し、A0はブリリアントブルー水溶液(5ppm)の吸光光度スペクトルの吸収極大波長(630nm)における吸光度、A1は上澄み液の吸光光度スペクトルの吸収極大波長における吸光度である。)
【0033】
なお、紫外線遮蔽粒子として通常の酸化亜鉛粒子(平均粒子径35nm;住友大阪セメント社製)について、上記の方法に基づいてブリリアントブルーの分解率を測定した結果、90%であった。これにより、この酸化亜鉛粒子(平均粒子径35nm;住友大阪セメント社製)では、光触媒活性があるとブリリアンブルーの分解率が高いことが確認された。
【0034】
酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の平均一次粒子径は、1nm以上かつ2μm以下であることが好ましく、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子が所望の透明性と紫外線遮蔽性を得るために、前記の範囲内で適宜調整される。本実施形態の酸化ケイ素被膜紫外線遮蔽粒子を配合した日焼け止め等の化粧料を塗布した場合の透明性を向上させたい場合には、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の平均一次粒子径は、1nm以上かつ50nm以下であることが好ましい。一方、紫外線遮蔽性を向上させたい場合には、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の平均一次粒子径は、50nm以上かつ2μm以下であることが好ましい。
【0035】
なお、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子における「平均一次粒子径」とは、以下の方法で求められる数値である。すなわち、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて観察した場合に、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を所定数、例えば、200個、あるいは100個を選び出す。そして、これら酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子各々の最長の直線部分(最大長径)を測定し、これらの測定値を加重平均する。
なお、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではない。この凝集体を構成している酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子(一次粒子)を所定数測定し、平均一次粒子径とする。
【0036】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を水素イオン指数5の水溶液に0.05質量%となるように1時間浸漬したとき、前記の水溶液中に溶出する紫外線遮蔽粒子中の金属イオンの溶出率は60質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
ここで、金属イオンの溶出率が60質量%以下であることが好ましいとした理由は、金属イオンの溶出率が60質量%を超えると、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子自体の安定性が低下し、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を化粧料に適用した場合に、溶出する金属イオンが、有機系紫外線遮蔽剤、増粘剤等の水溶性高分子等と反応し、化粧料としての性能の低下、変色、粘度の増減等を生じるので好ましくないからである。
【0037】
金属イオンの溶出率は、例えば、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子をpH=5の緩衝液に0.05質量%となるように分散し、1時間撹拌した後、固液分離を行い、液相の金属濃度をICP発光分析装置にて測定することにより得られる。
pH=5の緩衝液としては、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を分散させることができる緩衝液であれば特に限定されず、例えば、0.1mol/Lのフタル酸水素カリウム水溶液500mLと、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液226mLとを混合した後、水を加えて全体量を1000mLとした緩衝液が好適に用いられる。
【0038】
紫外線遮蔽粒子の平均一次粒子径は、所望の透明性と紫外線遮蔽性に応じて適宜調整される。透明性を向上させたい場合には、紫外線遮蔽粒子の平均一次粒子径は、1nm以上かつ50nm以下であることが好ましい。一方、紫外線遮蔽性を向上させたい場合には、紫外線遮蔽粒子の平均一次粒子径は、50nm以上かつ500nm以下であることが好ましい。透明性と紫外線遮蔽性を向上させたい場合には、紫外線遮蔽粒子の平均一次粒子径は、25nm以上かつ250nm以下であることが好ましい。
【0039】
このような緻密な酸化ケイ素被膜を有する酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の製造方法は、国際公開第2014/171322号に詳述されている。この製造方法によれば、酸化亜鉛粒子を、アルコキシシラン、または、ケイ酸ナトリウムおよびアルコキシシランを用いて、紫外線遮蔽粒子の表面を酸化ケイ素被膜で被覆し、200℃〜600℃で焼成することにより、緻密な酸化ケイ素被膜を有する、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子が得られる。
なお、平均一次粒子径が50nm以上の紫外線遮蔽粒子を用いる場合には、150℃〜600℃で焼成してもよい。
【0040】
また、本実施形態の酸化ケイ素被膜には、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種が含有されていることが好ましい。理由は次の通りである。
【0041】
酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率が3%以下になるよう、紫外線遮蔽粒子の表面全体を均一にシリカ被膜で被覆するには、ケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属を含む材料を用いて酸化ケイ素被膜を形成することが好ましい。しかし、このアルカリ金属が酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子に残存していると、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を水と混合させたときにアルカリイオンが溶出し、pHや粘度を大きく変動させてしまい、化粧料としての品質安定性が損なわれてしまう。
【0042】
そこで、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属を、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種にて置換することにより、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属は、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の酸化ケイ素被膜から除去される。
一方、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属と置換されたMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種は、置換後には、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の酸化ケイ素被膜中に存在する。これらの置換されたMg、Ca、Baは、水への溶解度が低いケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム等として存在する。
【0043】
置換の結果、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率は、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の質量百分率より大となる。そのため、この酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を水相に混合しても、アルカリ金属の溶出が抑制され、pHや粘度の変動を抑制することができ、化粧料としての品質安定性を維持することができる。
【0044】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子は、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を含有していることが好ましい。
酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子における、酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率は、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の質量百分率より大であることが好ましい。さらに、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の質量百分率の、酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率に対する比(アルカリ金属の質量百分率/Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率)は、0.001以上かつ0.6以下であることが好ましく、0.01以上かつ0.5以下であることがより好ましく、0.1以上かつ0.4以下であることがさらに好ましい。
本実施形態において、アルカリ金属とは、一般的に知られているものを指し、具体的には、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)およびフランシウム(Fr)からなる群から選択される少なくとも1種を意味する。
【0045】
ここで、酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率を、酸化ケイ素被膜に含まれるアルカリ金属の質量百分率より大とした理由は、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の初期における水素イオン指数(pH)の変動要因は、紫外線遮蔽粒子から溶出される金属イオンではなく、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属イオンの溶出が主要因であるからである。
【0046】
酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子における酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の質量百分率は、0.8質量%以下であることが好ましく、0.6質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることがさらに好ましい。
酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の質量百分率の下限値は任意に選択できる。アルカリ金属の質量百分率は0質量%でもよく、他の例を挙げれば、例えば、0.0001質量%以上や0.001質量%以上等であってもよい。
【0047】
酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子における酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率は、0.01質量%以上かつ1質量%以下であることが好ましい。
【0048】
酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子(酸化ケイ素被膜)に含まれるアルカリ金属、Mg、CaおよびBaの質量百分率(質量%)は、原子吸光分析法により測定することができる。
【0049】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子によれば、水系の化粧料に適用されても、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子同士の凝集が抑制され、紫外線遮蔽性に優れる。
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子によれば、水中油型化粧料の水相に適用されても、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子同士の凝集が抑制され、紫外線遮蔽性に優れる。
【0050】
[酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の製造方法]
本実施形態における酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の製造方法の一例を説明する。
本実施形態における酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の製造方法は、例えば、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の表面を、所定の有機ケイ素化合物で表面処理する表面処理工程を有する製造方法である。
酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子は、紫外線遮蔽粒子の表面にアルカリ金属を含有する酸化ケイ素を被覆してなる複合粒子と、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種とを、水を含む溶液中にて混合し、この酸化ケイ素中に含まれるアルカリ金属を、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種にて置換する工程(以下、「置換工程」と言う。)により作製されたものを用いてもよい。
【0051】
なお、置換工程前のアルカリ金属を含有する酸化ケイ素を被覆してなる紫外線遮蔽粒子、または、置換工程後のMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を含む酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子と、アルコキシシランおよび10量体以下のアルコキシシランのオリゴマーのうち少なくとも1種と、触媒と、水とを添加し、30分以上かつ24時間以下、これらの混合物を撹拌して反応させ、焼成することにより、より縮合度の高い酸化ケイ素被膜が形成される工程を設けてもよい。この工程は、表面処理工程と別に行ってもよく、同時に行ってもよい。
次に、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の製造方法について詳細に説明する。
【0052】
アルカリ金属を含有する酸化ケイ素を被覆してなる紫外線遮蔽粒子としては、ケイ酸ソーダ等のアルカリ金属を含有するケイ酸塩と、紫外線遮蔽粒子と、を反応させて、紫外線遮蔽粒子の表面に酸化ケイ素を被覆させたものを用いてもよい。あるいは、市販品の酸化ケイ素で被覆された紫外線遮蔽粒子を用いてもよい。
紫外線遮蔽粒子の表面に酸化ケイ素を被覆させる方法としては、例えば、特開平03−183620号公報、特開平11−256133号公報、特開平11−302015号公報、特開2007−016111号公報等に記載されている方法を用いることができる。
【0053】
紫外線遮蔽粒子の表面を酸化ケイ素で被覆する方法は、必要に応じて選択されるが、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、紫外線遮蔽粒子と水を混合し、次いで、水中に紫外線遮蔽粒子を超音波分散し、紫外線遮蔽粒子を含む水系懸濁液を調製する。
次いで、この紫外線遮蔽粒子を含む水系懸濁液を加温し、この懸濁液を撹拌しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を加え、10分〜60分間静置する。
次いで、この懸濁液を撹拌しながら、希硫酸等の酸を添加してpHを5〜9に調整し、30分〜5時間静置する。
次いで、この反応液を固液分離し、得られた反応物を水等の溶媒を用いて洗浄し、さらに、100℃〜200℃程度にて乾燥し、アルカリ金属を含有する酸化ケイ素で被覆された紫外線遮蔽粒子を得る。
【0054】
「置換工程」
置換工程は、紫外線遮蔽粒子の表面を、アルカリ金属を含有する酸化ケイ素で被覆する工程の後に行う必要がある。その理由は、アルカリ金属を含むケイ酸塩と、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種とを、単に水を含む溶液中で混合すると、不純物としてケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムおよびケイ酸バリウムの少なくとも1種の沈殿が生成するからである。そこで、置換工程は、ケイ酸塩を中和反応等させることによって、紫外線遮蔽粒子の表面を酸化ケイ素で被覆する工程の後から、乾燥工程の後までの、いずれかの段階に組み込むことが好ましい。そのような方法によれば、反応プロセスを低減することができ、低コストにて、本実施形態における酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を作製することができる。
【0055】
置換工程では、最初に、アルカリ金属を含有する酸化ケイ素で被覆された紫外線遮蔽粒子と、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種とを、水を含む溶液中に加え、混合する。
水を含む溶液としては、特に限定されず、必要に応じて選択される。水を含む溶液としては、例えば、水、または、水および水と相溶可能な溶媒を混合してなる溶液が用いられる。
水と相溶可能な溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のプロトン性極性溶媒、アセトン、テトラヒドロフラン等の非プロトン性極性溶媒が好ましい。これらの中でも、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のプロトン性極性溶媒がより好ましい。
【0056】
この混合処理における反応温度は、特に限定されず、必要に応じて調整される。酸化ケイ素が被覆された紫外線遮蔽粒子と、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種と、水を含む溶液と、を含む混合液中の溶媒の凝固点以上であればよい。
また、混合液を静置したままでも反応は進行するが、反応効率を高めるためには、混合液を撹拌しながら反応させることが好ましい。
反応時間は、特に限定されず、必要に応じて選択される。反応時間は、1時間以上が好ましい。
【0057】
この混合処理により、酸化ケイ素が被覆された紫外線遮蔽粒子中のアルカリ金属は、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種にて置換されて、酸化ケイ素が被覆された紫外線遮蔽粒子から混合液中に溶出する。一方、アルカリ金属と置換したMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種のイオンは、アルカリ金属との置換により酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子に取り込まれ、その結果、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を含む酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子となる。
【0058】
混合液中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の含有量は、特に限定されず、必要に応じて選択される。酸化ケイ素が被覆された紫外線遮蔽粒子中のNa、K等のアルカリイオンを、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種のイオンにてイオン交換するためには、混合液中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の含有量は、酸化ケイ素が被覆された紫外線遮蔽粒子中のアルカリ金属のモル当量の総和以上であることが好ましい。
【0059】
Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を供するための原料としては、これらの元素を含む無機塩であればよく、特に限定されない。Mgを供するための原料としては、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等が挙げられる。Caを供するための原料としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等が挙げられる。Baを供するための原料としては、例えば、塩化バリウム、硝酸バリウム等が好適に用いられる。
これらの原料は、固体のまま用いてもよく、水溶液とした状態で用いてもよい。
【0060】
この置換工程により生成した酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を含有する混合液を、固液分離し、再度、得られた酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子と、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種とを、水を含む溶液中で混合させ、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛中のアルカリ金属と、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種との置換工程を行ってもよい。この置換工程は、複数回繰り返してもよい。
【0061】
なお、シリカ被膜をより緻密化する場合には、置換工程により生成した酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を含有する混合液に、アルコキシシランおよび10量体以下のアルコキシシランのオリゴマーのうち少なくとも1種と、触媒とを添加して混合し、150℃以上かつ600℃未満℃にて、熱処理してもよい。
【0062】
「表面処理工程」
表面処理工程は、下記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物を表面処理できる方法であれば特に限定されない。表面処理工程では、乾式法を用いてもよく、湿式法を用いてもよい。
X
nSi(OR)
4−n・・・(2)
(式中、Xはアルキル基、アルケニル基またはシクロアルキル基であり、Rは水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、nは整数であり、0<n<4。)
【0063】
表面処理工程としては、例えば、上記の置換工程により生成した酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子と、上記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物と、溶媒と、を混合する方法が挙げられる。表面処理工程は、室温で行ってもよく、加温して行ってもよい。
【0064】
有機ケイ素化合物の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリプロポキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリブトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリイソプロポキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリプロポキシシラン、sec−ブチルトリイソプロポキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリプロポキシシラン、t−ブチルトリイソプロポキシシラン等のアルキルアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン等のアルケニルアルコキシシラン;シクロプロピルトリメトキシシラン、シクロプロピルトリエトキシシラン、シクロプロピルトリプロポキシシラン、シクロプロピルトリイソプロポキシシラン、シクロブチルトリメトキシシラン、シクロブチルトリエトキシシラン、シクロブチルトリプロポキシシラン、シクロブチルトリイソプロポキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリプロポキシシラン、シクロペンチルトリイソプロポキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリプロポキシシラン、シクロヘキシルトリイソプロポキシシラン等のシクロアルキルシランが挙げられる。
【0065】
次に、表面処理工程により生成した酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を含有する混合液を、常圧濾過、減圧濾過、加圧濾過、遠心分離等により固液分離する。得られた固形物を水等の溶媒を用いて洗浄することにより、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子が得られる。
【0066】
このようにして得られた酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子は、水を含んでいるため、この水を除くために乾燥させることが好ましい。
酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の乾燥温度は、特に限定されない。通常、100℃以上の温度にて、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を乾燥することが好ましい。また、80℃以下の温度にて乾燥する場合には、減圧乾燥が好ましい。
以上の工程により、本実施形態における酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を作製することができる。
【0067】
シリカ被膜をより緻密化する工程と、表面処理工程とを同時に行う場合には、例えば、以下のように行えばよい。
置換工程前の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子または置換工程により生成した酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を含有する混合液に、アルコキシシランおよび10量体以下のアルコキシシランのオリゴマーのうち少なくとも1種と、触媒と、上記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物とを添加して、混合する。混合は室温で行ってもよく、加温して行ってもよい。
次いで、この混合液から固液分離により液体を除去して乾燥し、得られた乾燥物を200℃以上かつ600℃未満の熱処理(焼成)を行うことによっても、本実施形態における酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を作製することができる。
【0068】
[酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物]
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物は、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子と、水と、を含有する。
【0069】
水は、化粧料に一般的に使用される水であれば特に限定されず、純水、イオン交換水、蒸留水、精製水、超純水、天然水、アルカリイオン水、深層水等が用いられる。
酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物における水の含有量は、所望の特性に応じて適宜調整される。酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物の使用感向上の観点から、水の含有量は、10質量%以上かつ99質量%以下であることが好ましく、20質量%以上かつ95質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上かつ94質量%以下であることがさらに好ましい。
【0070】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物において、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の平均分散粒子径は、10nm以上かつ2μm以下であることが好ましく、20nm以上かつ800nm以下であることがより好ましく、25nm以上かつ500nm以下であることがさらに好ましい。
酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の平均分散粒子径が10nm以上であれば、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の結晶性が低くなることがないため、充分な紫外線遮蔽性を示すことができる。一方、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の平均分散粒子径が2μm以下であれば、ぎらつき、きしみ等が生じることがなく、化粧料に処方した場合の使用の感触が向上するとともに、分散安定性が向上し、安定な組成物が得られる。
なお、本実施形態において、平均分散粒子径とは、動的光散乱法によって測定される二次粒子径の平均値を意味する。
透明な酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物を得るという観点においては、平均分散粒子径は10nm以上かつ200nm以下であることが好ましい。
【0071】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物における酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の含有量は、所望の紫外線遮蔽性能を得るために適宜調整すればよく、特に限定されない。酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の含有量は、1質量%以上かつ80質量%以下であることが好ましく、20質量%以上かつ70質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上かつ60質量%以下であることがさらに好ましい。
ここで、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の含有量を1質量%以上かつ80質量%以下が好ましいとした。その理由は、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の含有量が1質量%以上であれば、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物が十分な紫外線遮蔽性能を示すことができる。その結果、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物を化粧料等に配合する際に、所望の紫外線遮蔽性能を示すためには大量の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物を添加する必要がなく、製造コストの増加を抑えることができる。一方、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の含有量が80質量%以下であれば、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物の粘性が増加することがなく、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の分散安定性が保たれ、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の沈降を抑えることができる。
【0072】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物は、クエン酸等の化粧料で使用される弱酸またはpH緩衝液を添加して、pHを6〜7に調整してもよい。このような弱酸を添加することで、長期にわたって組成物のpHを7以下に保持することができる。
【0073】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物は、その特性を損なわない範囲において、分散剤、安定剤、水溶性バインダー、水溶性ビニルポリマー、増粘剤、アルコール類等の、一般的に用いられる添加剤を含んでいてもよい。
水系組成物の分散安定性を向上させる観点においては、水溶性ビニルポリマーおよびアルコール類の少なくとも一方を含有することが好ましい。
【0074】
分散剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、オルガノアルコキシシランやオルガノクロロシラン等のシランカップリング剤、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等の変性シリコーンが好適に用いられる。これらの分散剤の種類や量は、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の粒子径や目的とする分散媒の種類に応じて適宜選択すればよく、上記分散剤のうち1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0075】
水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシセルロース、ポリアクリル酸等を用いることができる。
【0076】
水溶性ビニルポリマーとは、水と任意の割合で混合でき、化粧料に使用できるビニルポリマーであれば特に限定されない。
このような水溶性のビニルポリマーとしては、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アクリル酸アルキル/メタクリル酸/ポリオキシエチレン共重合体等を用いることができる。これらの水溶性のビニルポリマーは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
カルボキシビニルポリマーとしては、例えば、Carbopol(登録商標)940、Carbopol(登録商標)941、Carbopol(登録商標)980、Carbopol(登録商標)981、Carbopol(登録商標)Ultrez10(Lubrizol Advanced Materials社製)の商品名で知られているものが挙げられる。
【0078】
アルキル変性カルボキシビニルポリマーとしては、例えば、Carbopol(登録商標)1342、PEMULEN(登録商標)TR−1、PEMULEN(登録商標)TR−2(Lubrizol Advanced Materials社製)の商品名で知られているものが挙げられる。
【0079】
アクリル酸アルキル/メタクリル酸/ポリオキシエチレン共重合体としては、例えば、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス−20)クロスポリマーが挙げられる。また、アクリル酸アルキル/メタクリル酸/ポリオキシエチレン共重合体として、ローム&ハース社から市販されているアキュリン(登録商標)22、アキュリン(登録商標)28、アキュリン(登録商標)88が挙げられる。
これらのアクリル酸アルキル/メタクリル酸アルキル/ポリオキシエチレン共重合体の中でも、べたつきがなく使用感がよい点で、特に、アキュリン(登録商標)22(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマーが好適である。
【0080】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物が水溶性のビニルポリマーを含有する場合には、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子100質量部に対する水溶性のビニルポリマーの含有量が0.02質量部以上かつ6.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上かつ5.0質量部以下であることがより好ましく、0.2質量部以上かつ4.5質量部以下であることがさらに好ましい。
酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子100質量部に対する水溶性のビニルポリマーの含有量が0.02質量部以上であれば、分散安定性が確保され、均一な組成物が得られる。一方、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子100質量部に対する水溶性のビニルポリマーの含有量が6.0質量部以下であれば、粘度が適度な範囲となり、撹拌が容易であるため、均一な組成物が得られる。
【0081】
また、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物において、水溶性のビニルポリマーの含有量は、0.01質量%以上かつ1.0質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上かつ0.75質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上かつ0.5質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物において、各成分の合計含有量は100質量%であり、各成分の合計含有量が100質量%を超えることはない。
【0082】
増粘剤としては、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物を化粧料に適用する場合に、化粧料に使用される増粘剤であればよく、特に限定されない。増粘剤としては、例えば、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルブミン、デンプン等の天然の水溶性高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボマー(カルボキシビニルポリマー)、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキシド等の合成高分子、ベントナイト、ラポナイト、ヘクトライト等の無機鉱物等が好適に用いられる。これらの増粘剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの増粘剤の中でも、合成高分子が好ましく、カルボマー(カルボキシビニルポリマー)がより好ましい。
【0083】
ここで、増粘剤としてカルボマーを用いる場合、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物におけるカルボマーの含有量は、0.01質量%以上かつ10質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上かつ3質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物におけるカルボマーの含有量が0.01質量%以上であれば、増粘効果が得られる。一方、カルボマーの含有量が10質量%以下であれば、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物の粘度が高くなり過ぎることを抑えることができるため、化粧料に適用した場合に、肌に塗り広げて塗布した際の肌への乗りがよく、使用感が低下する等の不具合が生じることがない。
【0084】
また、増粘剤としてカルボマーを用いる場合の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有組成物における水素イオン指数(pH)は5以上かつ10以下であることが好ましく、6以上かつ10以下であることがより好ましく、7以上かつ9以下であることがさらに好ましい。本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物におけるpHを上記の範囲内とすることにより、粘度等の経時変化を抑制することができる。
【0085】
アルコール類としては、化粧料に使用できるものであれば特に限定されず、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、オクタノール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール等の炭素原子数1〜6の一価アルコールまたは多価アルコール等を用いることができる。
これらのアルコール類の中でも、グリセリンは化粧料の感触改善や保湿効果で、化粧料に汎用されている点で好ましい。
【0086】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物にアルコール類が含有されている場合には、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子100質量部に対するアルコール類の含有量が10質量部以上かつ100質量部以下であることが好ましく、20質量部以上かつ50質量部以下であることがより好ましい。
酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子100質量部に対するアルコール類の含有量が10質量部以上であれば、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の分散性をより向上させることができる。一方、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子100質量部に対するアルコール類の含有量が100質量部以下であれば、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物を化粧料に配合した際のべたつきや感触の悪化を抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物において、アルコール類の含有量は、0.1質量%以上かつ30質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上かつ25質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上かつ20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0088】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物は、促進条件下、例えば、40℃にて保管した場合であって、かつ300時間経過後に測定した粘度を、初期条件下での粘度低下後の粘度にて、例えば、15時間後の粘度にて割った値が0.8以上かつ1.2以下であることが好ましい。
このように、促進条件下、すなわち300時間後の粘度を初期粘度低下後の粘度にて割った値を、上記の範囲内とすることにより、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物の粘度を中長期に亘って維持することができる。
【0089】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物における酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の含有量を5質量%とし、この組成物を用いて厚み12μmの塗膜を形成した場合に、その塗膜の波長450nmの光に対する透過率は、40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。
また、この塗膜のSPF(Sun Protection Factor)値は、6.0以上であることが好ましく、6.5以上であることがより好ましい。
塗膜の透過率およびSPF値は、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を5質量%含有する酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物を、石英基板上にバーコーターにて塗布して、厚みが12μmの塗膜を形成し、この塗膜の分光透過率をSPFアナライザー UV−1000S(Labsphere社製)にて測定することにより求めることができる。
【0090】
また、この透過率から吸光スペクトルを算出し、吸光スペクトルの290nmから長波長側へ積分し、積分面積が290nm〜400nm全体の積分面積の90%となる波長を臨界波長として算出することができる。臨界波長は、長波長側であるほどUVAの遮蔽性能が高く、375nm以上であることが好ましく、378nm以上であることがより好ましく、380nm以上であることがさらに好ましい。
【0091】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物の製造方法は、上記の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を水中に分散させることができればよく、特に限定されない。
このような分散に用いられる分散方法としては、公知の分散装置を用いた分散方法を用いることができる。分散装置としては、例えば、攪拌機の他、ジルコニアビーズを用いたビーズミル、ボールミル、ホモジナイザー、超音波分散機、混練機、三本ロールミル、自転・公転ミキサー等を用いた分散方法が好適に用いられる。
分散処理に要する時間としては、上記の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を水に均一に分散させるのに十分な時間であればよい。
【0092】
本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物によれば、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子を含んでいるため、水系の化粧料に適用されても、紫外線遮蔽性に優れる。
【0093】
[化粧料]
本実施形態の化粧料は、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子および本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物の少なくとも一方と、化粧品基剤原料と、を含有してなる。
本実施形態の化粧料は、水を含有していることが好ましい。
【0094】
ここで、化粧品基剤原料とは、化粧品の本体を形成する諸原料を意味し、油性原料、水性原料、界面活性剤、粉体原料等が挙げられる。
油性原料としては、例えば、油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油類等が挙げられる。
水性原料としては、精製水、アルコール、増粘剤等が挙げられる。
粉末原料としては、有色顔料、白色顔料、パール剤、体質顔料等が挙げられる。
【0095】
本実施形態の化粧料は、例えば、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子や本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物を、乳液、クリーム、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドー等の化粧品基剤原料に、公知の方法で配合することにより得られる。
また、本実施形態の化粧料は、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子または本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物を油相または水相に配合して、O/W型またはW/O型のエマルションとしてから、化粧品基剤原料と配合することによっても得られる。
【0096】
化粧料における酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の含有量は所望の特性に応じて適宜調整すればよく、例えば、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の含有量の下限は、0.01質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよい。また、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の含有量の上限は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。
【0097】
本実施形態の化粧料によれば、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子および本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物の少なくとも一方を含有しているため、紫外線遮蔽性に優れる。
【0098】
[水中油型の化粧料]
本実施形態の水中油型の化粧料は、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子および本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物の少なくとも一方を水相に含有してなる。
【0099】
本実施形態の水中油型の化粧料は、水相に本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子および本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物の少なくとも一方を含み、油相には油成分が含有された水中油型のエマルションである。
水相には、必要に応じて、分散剤、安定剤、水溶性バインダー(水溶性高分子)、増粘剤、アルコール等、一般的に水系の化粧料で用いられる添加剤を含んでいてもよい。
油相には、必要に応じて、油溶性防腐剤、紫外線吸収剤、油溶性薬剤、油溶性色素類、油溶性蛋白質類、植物油、動物油、溶媒等、一般的に化粧料で用いられる添加剤を適宜含んでいてもよい。
【0100】
油成分は、化粧料に用いられものであれば特に限定されず、所望の有機系紫外線遮蔽剤を溶解することができるものが適宜選択される。
このような油成分としては、高級アルコール、高級脂肪酸、および、高級アルコールと高級脂肪酸が結合してなる脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種を含有するものが好ましい。油成分がこれらの成分を含有することで、ハリ感や保湿感が向上するとともに、これらの効果の持続性が向上する。また、メトキシ桂皮酸エチルヘキシルのように液体の有機系紫外線吸収剤を油成分として用いることもできる。
【0101】
高級アルコールとしては、例えば、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、フィトステロール等が好適に用いられる。これらの高級アルコールは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
高級脂肪酸としては、例えば、炭素原子数12〜24の飽和または不飽和の脂肪酸を用いることが好ましく、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リノール酸、アラキドン酸等が好適に用いられる。これらの高級脂肪酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、ジステアリン酸グリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸ステアリル、イソステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、オレイン酸エチル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、オクタン酸セチル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ラウリン酸ヘキシル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル等が好適に用いられる。これらの脂肪酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態では、水相と油相の分離を抑制する観点から、脂肪酸エステルのエステル価は低い方が好ましい。具体的には、脂肪酸エステルとしては、エステル価が95〜170のものを用いることが好ましい。このような脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸オクチルドデシル(エステル価100〜111)、2−エチルヘキサン酸セチル(エステル価135〜160)等が挙げられる。
【0104】
本実施形態の水中油型の化粧料は、キレート剤を含有することが好ましい。キレート剤を含有することにより、水中油型の化粧料の経時による水素指数変動をより抑制することができる。
キレート剤としては、化粧料に用いられものであれば特に限定されない。キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、クエン酸、フィチン酸、ポリリン酸、メタリン酸等が用いられる。これらの中でも、汎用性が高い点から、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が好ましい。
【0105】
水中油型の化粧料におけるキレート剤の含有量は、所望の性能に合わせて適宜調整されるが、例えば、0.01質量%以上かつ1.0質量%以下であることが好ましい。
ここで、キレート剤の含有量が0.01質量%以上であれば、水中油型の化粧料において、所望の特性が得られる。一方、キレート剤の含有量が1.0質量%以下であれば、水中油型の化粧料を安全に使用できる。例えば、化粧料においてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の配合量は、医薬部外品原料規格において1.0質量%以下に規制されている。
【0106】
本実施形態の水中油型の化粧料は、油相に有機系紫外線遮蔽剤を含有することが好ましい。
有機系紫外線遮蔽剤としては、化粧料に用いられものであれば特に限定されない。有機系紫外線遮蔽剤としては、例えば、アントラニラート類、ケイ皮酸誘導体、サリチル酸誘導体、ショウノウ誘導体、ベンゾフェノン誘導体、β,β’−ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンザルマロナート誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、イミダゾリン類、ビスベンゾアゾリル誘導体、p−アミノ安息香酸(PABA)誘導体、メチレンビス(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)誘導体、チヌビン等が挙げられる。有機系紫外線遮蔽剤としては、前記の群から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0107】
本実施形態の水中油型の化粧料中の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の平均分散粒子径は、10nm以上かつ2μm以下であることが好ましく、20nm以上かつ800nm以下であることがより好ましく、25nm以上かつ500nm以下であることがさらに好ましい。
酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の平均分散粒子径が10nm以上であれば、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の結晶性が低くなることがないため、充分な紫外線遮蔽性を示すことができる。一方、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子の平均分散粒子径が2μm以下であれば、ぎらつき、きしみ等が生じることがなく、使用の感触が向上するとともに、分散安定性が向上し、安定な水中油型の化粧料が得られる。
【0108】
本実施形態の水中油型の化粧料は、上記の成分に加えて、他の成分を適宜添加すること等により、乳液、クリーム、日焼け止め料、ファンデーション、美容液、化粧下地料、口紅等の形態にして用いてもよい。
他の成分としては、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機系紫外線遮蔽剤、有機系紫外線遮蔽剤、美白剤、増粘剤等、化粧料に一般的に用いられる添加剤や化粧品基剤原料等が挙げられる。
【0109】
本実施形態の水中油型の化粧料によれば、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子および本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物の少なくとも一方を含有しているため、紫外線遮蔽性に優れる。
【0110】
[水中油型の化粧料の製造方法]
本実施形態の水中油型の化粧料の製造方法は、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子および本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物の少なくとも一方が水相に含有され、油成分が油相に含有された水中油型(O/W)の化粧料を作製できる方法であれば特に限定されない。
【0111】
例えば、水と、本実施形態の酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物と、pH調整剤と、乳化剤と、をあらかじめ混合して水相用の混合物とする。そして、この水相用の混合物に油成分を加えて混合し、水中油型のエマルションとすることで、本実施形態の水中油型の化粧料を作製することができる。
【0112】
なお、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物に、アルキル変性カルボキシビニルポリマーやアクリル酸アルキル/メタクリル酸/ポリオキシエチレン共重合体が含有されている場合には、アルキル部分が乳化剤の役割を果たすため、乳化剤を添加しなくてもよい。
【0113】
乳化剤としては、水中油型のエマルションを作製するのに、化粧料で使用できるものであれば特に限定されない。例えば、親水性の界面活性剤を好適に用いることができ、親水性の界面活性剤としては、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン(以下、「POE」と略す。)ソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビット脂肪酸エステル類、POEグリセリン脂肪酸エステル類、POE脂肪酸エステル類、POEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POEヒマシ油、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0114】
有機系紫外線遮蔽剤を含有させる場合には、油成分と有機系紫外線遮蔽剤をあらかじめ混合しておいてから、水相用の混合物に混合して乳化させればよい。
【実施例】
【0115】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0116】
[実施例1]
酸化亜鉛粒子(平均粒子径35nm;住友大阪セメント製)と水を混合し、次いで、超音波分散を行い、酸化亜鉛の含有量が20質量%の酸化亜鉛水系懸濁液を調製した。
次いで、この酸化亜鉛水系懸濁液を、この酸化亜鉛水系懸濁液中の酸化亜鉛粒子の質量に対して、酸化ケイ素換算で20質量%のケイ酸ソーダを含むケイ酸ソーダ水溶液に加え、強く撹拌し、懸濁液とした。
【0117】
次いで、この懸濁液を60℃に加温し、この懸濁液を撹拌しながら希塩酸を徐々に添加してpHを6.5〜7に調整した。その後、2時間静置し、その後、さらに、この懸濁液中の酸化亜鉛粒子の質量と同質量の塩化カルシウム水溶液(塩化カルシウム2水和物25質量%)を加えて撹拌し、さらに2時間静置した。
次いで、この懸濁液を遠心分離機により固液分離し、得られた固形物を水にて洗浄した。その後、この固形物を150℃にて乾燥し、さらに500℃にて2時間、熱処理(焼成)を行い、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を作製した。
次いで、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛と2−プロパノールを混合し、次いで、その混合物を超音波分散し、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量が10質量%の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛2−プロパノール懸濁液を調製した。
【0118】
次いで、この懸濁液を60℃に加温し、この懸濁液を撹拌しながらアンモニア水および水を添加して、懸濁液のpHを10〜11に調整した。なお、水の添加量は、後に添加するテトラエトキシシラン2−プロパノール溶液中のテトラエトキシシランに対して120質量%となるようにした。
【0119】
さらに、この懸濁液に、テトラエトキシシラン2−プロパノール溶液を、テトラエトキシシランの滴下量が酸化ケイ素に換算して酸化亜鉛の全質量に対して15質量%となるように、ゆっくり滴下した。
次いで、この懸濁液に、メチルトリエトキシシランを、酸化亜鉛粒子の全質量に対して0.5質量%(酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子中にアルキル基が0.04質量%)となるように、ゆっくり滴下し、6時間撹拌を継続した。
反応終了後、この懸濁液を遠心分離機により固液分離し、得られた固形物を150℃にて乾燥した。次いで、この乾燥物を500℃にて3時間、熱処理(焼成)を行い、実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を得た。
【0120】
「酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子含有水系組成物の作製」
水とアルキル変性カルボキシビニルポリマー(商品名:PEMULEN TR−1、Lubrizol Advanced Materials社製)0.2質量部を混合し、2.5mol/L水酸化ナトリウムでpHを6.0に調整したジェル46.0質量部と、得られた実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子50質量部と、グリセリン4.0質量部とを、ホモディスパーにて混合し、実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子含有水系組成物を得た。
【0121】
[水系組成物中における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の分散性の評価]
カルボマー(商品名:Carbopol Ultrez 10 polymer、Lubrizol Advanced Materials社製)1.5gを純水に溶解し、次いで、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、カルボマーを1.5質量%含有するpH7.5のカルボキシビニルポリマージェルを得た。
実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子含有水系組成物10質量部と、得られたカルボキシビニルポリマージェル90質量部とを混合した。この混合液を2枚のスライドガラスではさみ、光学顕微鏡で観察した。
その結果、観察された酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の凝集物のうち、最大の粒子径は20μmであった。結果を
図1および表1に示す。
【0122】
[水系組成物のSPF評価]
上述の「水系組成物中における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の分散性の評価」と同様にして、実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子含有水系組成物10質量部と、pH7.5のカルボキシビニルポリマージェル90質量部とを混合した。その混合液を用いて、石英基板上に厚み12μmとなるように薄膜を形成し、その薄膜の分光透過率をSPFアナライザー UV−1000S(Labsphere社製)にて測定した。結果を
図2に示す。SPF値は8.2であった。
【0123】
[水系組成物の粘度の安定性評価]
実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子含有水系組成物を作製した後(0時間)のpHと粘度を測定した。この組成物を40℃で保管し、所定の時間毎にpHと粘度を測定した。結果を表2および
図3に示す。
【0124】
「水中油型の化粧料の作製」
水79.1質量部と、PEG−60水添ヒマシ油0.6質量部と、アルキル変性カルボキシビニルポリマー(商品名:PEMULEN TR−1、Lubrizol Advanced Materials社製)0.3質量部とを混合した。
次いで、この混合物に1.8mol/L水酸化カリウムを混合することでpHを7.0に調整し、ジェルを作製した。
次いで、得られたジェルにメトキシケイヒ酸エチルヘキシル10.0質量部を添加し、ホモディスパーにて混合した。
次いで、得られた混合物に、実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子含有水系組成物10.0質量部を添加し、ホモディスパーにて混合することにより、酸化ケイ素被覆紫外線遮蔽粒子含有水系組成物を水相に含有してなる、実施例1の水中油型の化粧料を得た。
【0125】
[水中油型の化粧料中における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の分散性の評価]
「人工皮脂の作製」
オレイン酸5.0質量部と、スクワラン5.0質量部と、オリーブ油5.0質量部とを混合し、人工皮脂を作製した。
【0126】
「分散性の評価」
実施例1の水中油型化粧料6.5質量部と、人工皮脂2.5質量部とを混合した。この混合液を2枚のスライドガラスで挟み、光学顕微鏡で観察した。
その結果、観察された酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の凝集物のうち、最大の粒子径は25μmであった。結果を
図7に示す。
【0127】
[紫外線遮蔽性の評価]
ヘリオプレート(商品名:HELIOPLATE HD6、Helioscreen社製)に上記で作製した人工皮脂を、0.5mg/cm
2となるように塗布し、30分乾燥させた。
次いで、実施例1の水中油型化粧料を、1.3mg/cm
2となるように塗布し、15分乾燥させて塗膜を形成した。この塗膜のSPF値をSPFアナライザー UV−1000S(Labsphere社製)にて測定した。
その結果、SPF値は、13.3であった。
【0128】
[実施例2]
実施例1において、メチルトリエトキシシランを酸化亜鉛粒子の全質量に対して1.0質量%(酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子中にアルキル基が0.08質量%)となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例2の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子含有水系組成物を得た。
【0129】
水系組成物中における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の分散性を、実施例1と同様に評価した。その結果、観察された酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の凝集物のうち、最大の粒子径は30μmであった。結果を
図4に示す。
【0130】
水系組成物を用いて形成した薄膜の分光透過率を実施例1と同様にして測定した。結果を
図2に示す。SPF値は6.9であった。
【0131】
水系組成物のpHと粘度を実施例1と同様にして測定した。結果を
図3と表2に示す。
【0132】
[実施例3]
実施例1において、メチルトリエトキシシランを酸化亜鉛粒子の全質量に対して3.0質量%(酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子中にアルキル基が0.25質量%)となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例3の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子含有水系組成物を得た。
【0133】
水系組成物中における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の分散性を、実施例1と同様に評価した。その結果、観察された酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の凝集物のうち、最大の粒子径は30μmであった。結果を
図5に示す。
【0134】
水系組成物を用いて形成した薄膜の分光透過率を実施例1と同様にして測定した。結果を
図2に示す。SPF値は6.2であった。
【0135】
[比較例1]
実施例1において、メチルトリエトキシシランを酸化亜鉛粒子の全質量に対して0質量%(酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子中にアルキル基が0質量%)となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比較例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子含有水系組成物を得た。
【0136】
水系組成物中における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の分散性を、実施例1と同様に評価した。その結果、観察された酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の凝集物のうち、最大の粒子径は80μmであった。結果を
図6に示す。
【0137】
水系組成物を用いて形成した薄膜の分光透過率を実施例1と同様にして測定した。結果を
図2に示す。SPF値は3.3であった。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
実施例1〜実施例3と比較例1を比較すると、酸化ケイ素被膜の表面に、アルキル基、アルケニル基およびシクロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を存在させることにより、水系化粧料で広く用いられているpH7.5のカルボキシビニルポリマージェルと混合した時に酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子が凝集することが抑制され、塗膜にした場合のSPF値が向上することが確認された。
また、水中油型の化粧料に適用した場合でも、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子が凝集することが抑制され、塗膜にした場合のSPF値も高いことが確認された。水中油型の化粧料の評価は、人工皮脂との混合や、人工皮脂上に塗布して行われているため、実際の使用状況に近い。すなわち、人の肌に適用されても効果が得られる可能性が極めて高いことが確認された。