特許第6988686号(P6988686)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6988686ヒートシール剤、ヒートシール性フィルム及び包装材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6988686
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】ヒートシール剤、ヒートシール性フィルム及び包装材料
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20211220BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20211220BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20211220BHJP
   C09J 127/06 20060101ALI20211220BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20211220BHJP
   C09J 129/02 20060101ALI20211220BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20211220BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20211220BHJP
【FI】
   C09J201/00
   B65D65/40 D
   C09J167/00
   C09J127/06
   C09J175/04
   C09J129/02
   C09J11/06
   C09J7/30
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-97065(P2018-97065)
(22)【出願日】2018年5月21日
(65)【公開番号】特開2019-203040(P2019-203040A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2021年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 真
(72)【発明者】
【氏名】波多 清実
【審査官】 宮地 慧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−072312(JP,A)
【文献】 特開2005−325153(JP,A)
【文献】 特開平04−139239(JP,A)
【文献】 特開2004−244494(JP,A)
【文献】 特開2009−286920(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/124445(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B65D
B32B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール性樹脂成分と、脂肪族ジオール成分とを有し、前記脂肪族ジオール成分が、2級水酸基を有する炭素原子数10以上の脂肪族ジオールを含有することを特徴とするヒートシール剤。
【請求項2】
前記ヒートシール性樹脂成分が、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂又はエチレン−ビニルアルコール系樹脂である請求項1に記載のヒートシール剤。
【請求項3】
硬化剤を含有する請求項1または2に記載のヒートシール剤。
【請求項4】
2級水酸基を有する炭素原子数10以上の脂肪族ジオールがオクタデカン−1,12−ジオールである請求項1または2に記載のヒートシール剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のヒートシール剤を基材上に設けてなることを特徴とするヒートシール性フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載のヒートシール性フィルムを用いることを特徴とする包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒートシール剤及びそれを用いたヒートシール性フィルム、包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療用具包装体や食品包装において、アルミニウム箔、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリオレフィン等のプラスチックフィルムにヒートシール剤をコーティングしたヒートシール性フィルムが利用されている。
【0003】
ヒートシール性フィルムは、積み重ねてあるいはロール状に巻き取った状態での保存や流通時、あるいは成形加工時には接着性を発現せず、加熱(ヒートシール)することで初めて接着性を発現することが求められる。従って通常は、ヒートシール性樹脂としてポリエステル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、またはエチレン−ビニルアルコール共重合体等の熱可塑性樹脂が使用されている。またヒートシール時にこれら熱可塑性樹脂が3次元架橋できるような、反応性基を有する熱可塑性樹脂と硬化剤とを組み合わせたものも知られている。
【0004】
一方近年、内容物に高温をかけられない冷蔵食品、例えばチーズやソーセージ等の個包装材にヒートシール性フィルムが所望されるようになり、従来のヒートシール温度よりも低い、例えば80℃でのヒートシールが可能なヒートシール剤が求められている。
しかしながらヒートシール温度を低下させるほど、ブロッキング性(フィルム、シートなどを巻き取りあるいは重ねて貯蔵した際相互に密着し離れにくくなる現象)や滑り性が低下するという問題があった。
【0005】
80℃でのヒートシールが可能なヒートシール剤として、熱可塑樹脂に固形可塑剤を添加したヒートシール剤が知られている(例えば特許文献1 段落0014参照)。しかしながら該ヒートシール剤では所望する耐ブロッキング性が得られないことがあった。
一方、耐ブロッキング性や滑り性を改良するために、多価アルコールをポリウレタン樹脂の原料とした例もしられている(例えば特許文献2 段落0029参照)。しかしながら、使用原料の重量平均分子量によっては、耐ブロッキング性や滑り性が確保できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−244494号公報
【特許文献2】特開2014−004799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、低温ヒートシール性に優れ、且つ耐ブロッキング性や滑り性に優れるヒートシール性フィルム、それに使用するヒートシール剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ヒートシール性樹脂成分と、特定の脂肪族ジオール成分とを有するヒートシール剤が前記課題を解決することを見出した。
【0009】
即ち本発明は、ヒートシール性樹脂成分と、脂肪族ジオール成分とを有し、前記脂肪族ジオール成分が、2級水酸基を有する炭素原子数10以上の脂肪族ジオールを含有するヒートシール剤を提供する。
【0010】
また本発明は、前記記載のヒートシール剤を基材上に設けてなるヒートシール性フィルムを提供する。
【0011】
また本発明は、前記記載のヒートシール性フィルムを用いる包装材料を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヒートシール剤を使用することで、低温ヒートシール性に優れ、且つ耐ブロッキング性や滑り性に優れるヒートシール性フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(ヒートシール性樹脂成分)
本発明で使用するヒートシール性樹脂成分は、特に限定はなく、ヒートシールに使用される公知の熱可塑性樹脂を使用することができる。具体的には、室温以下では粘着性を生じない、軟化温度が少なくとも40℃以上の熱可塑性樹脂が好ましい。またガラス転移温度は少なくとも−10℃以上の熱可塑性樹脂が好ましい。
このような熱可塑性樹脂としては例えば、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、スチレン−アクリル酸エステル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、ブタジエン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−ビニルアルコール系樹脂、エチレン−アクリル酸エステル系樹脂、エチレン−アクリル酸系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン−イソプレン系樹脂等が挙げられる。
中でも、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂又はエチレン−ビニルアルコール系樹脂が好ましい。
【0014】
また、前記熱可塑性樹脂として水酸基やグリシジル基、カルボキシル基等の反応性基をグラフトまたはペンダントさせた熱可塑性樹脂からなる主剤と、前記反応性基と熱反応しうるイソシアネート硬化剤やポリアミン硬化剤等の硬化剤とを組み合わせた組成物も使用することができる。例えば反応性基をグラフトまたはペンダントさせたポリエステル系樹脂、反応性基をグラフトまたはペンダントさせたポリエーテル系樹脂、反応性基をグラフトまたはペンダントさせたポリウレタン系樹脂、反応性基をグラフトまたはペンダントさせたエポキシ樹脂、反応性基をグラフトまたはペンダントさせたポリオール系樹脂等の主剤と、イソシアネート硬化剤、ポリアミン硬化剤等の硬化剤との組み合わせを挙げることができる。
【0015】
具体的には例えば、ポリエチレングリコール等のポリオール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリエーテルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヒマシ油の水素添加物であるヒマシ硬化油、ヒマシ油のアルキレンオキサイド5〜50モル付加体等のヒマシ油系ポリオール等が挙げられる。
【0016】
また、硬化剤の例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の分子構造内に芳香族構造を持つポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートのNCO基の一部をカルボジイミドで変性した化合物;これらのポリイソシアネートに由来するアルファネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の分子構造内に脂環式構造を持つポリイソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の直鎖状脂肪族ポリイソシアネート、及びこのアルファネート化合物;これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体;これらのポリイソシアネートに由来するアロファネート体;これらのポリイソシアネートに由来するビゥレット体;トリメチロールプロパン変性したアダクト体;前記した各種のポリイソシアネートとポリオール成分との反応生成物であるポリイソシアネート等の多官能イソシアネートや、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘプタエチレンオクタミン、オクタエチレンノナミン、ノナエチレンデカミン、ピペラジンあるいは、炭素原子数が2〜6のアルキル鎖を有するN−アミノアルキルピペラジン等のポリエチレンポリアミンや、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン、もしくはIPDA)等のアミン化合物が挙げられる。
【0017】
(脂肪族ジオール成分)
本発明で使用する脂肪族ジオール成分は、2級水酸基を有する炭素原子数10以上の脂肪族ジオールを含有することが特徴である。
具体的には、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、オクタデカン−1,12−ジオール(別名ヒドロキシステアリルアルコール)、1,2−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−テトラデカンジオール、1,2−ヘプタデカンジオール、1,2−ヘキサデカンジオール、1,2−ノナデカンジオール、1,2−オクタデカンジオール等が挙げられる。中でもオクタデカン−1,12−ジオールが好ましい。
【0018】
前記脂肪族ジオール成分は、前記ヒートシール性樹脂成分の固形分1に対し0.003〜0.05の割合となるように配合することが好ましく、0.01〜0.025の割合となるように配合することがなお好ましい。
【0019】
(その他の成分)
本発明のヒートシール剤は、本発明の効果を損なわない範囲において、適宜添加剤を使用することができる。例えば、有機溶剤、固形可塑剤、パラフィンワックス、カルナバワックス等のワックス類、帯電防止剤、紫外線吸収剤、ポリスチレン系、ポリメタクリル酸エステル系の有機ポリマー微粒子、二酸化ケイ素等の無機微粒子などの公知のアンチブロッキング剤等を用いることができる。
【0020】
(溶剤)
本発明において有機溶剤は、ヒートシール剤を希釈し塗工しやすくするために添加される。具体的には溶解性の高いトルエン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n−ヘキサン、シクロヘキサン等を使用して希釈してもよい。近年の溶剤規制の観点からは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n−ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。これらの中でも溶解性の点から酢酸エチルやメチルエチルケトン(MEK)が好ましく用いられ、特に酢酸エチルが好ましい。規制を受けない溶剤だけを用いても、低温時の溶液が安定している。有機溶剤の使用量は所要される粘度によるが概ね20〜80質量%の範囲で使用することが多い。
【0021】
(固形可塑剤)
本発明で使用する固形可塑剤としては、熱可塑性樹脂と相溶して軟化して接着性を向上させる極性を持つエステル化合物が好ましく選ばれる。ジシクロヘキシルフタレート等のフタル酸エステル化合物も用いられ得るが安全衛生面から安息香酸エステル化合物、ヒンダードフェノールエステル化合物、脂肪酸エステル化合物等が好ましく用いられる。
【0022】
固形可塑剤の融点は、50℃以下で耐ブロッキング性を低下させ、150℃以上でヒートシール温度が高温となる傾向があることから、50〜150℃であることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。さらに固形可塑剤の分子量は、加熱した際にスムーズに溶融して熱可塑性樹脂を軟化させ、さらに揮発を防ぐ点から、200〜1000の範囲であることが好ましい。
【0023】
好ましい固形可塑剤として用いられる安息香酸エステル化合物としては安息香酸スクロース、安息香酸ジエチレングリコールエステル、安息香酸グリセリド、安息香酸ペンタエリトリットエステル、安息香酸トリメチロールエタンエステル、安息香酸トリメチロールプロパンエステル等が挙げられる。
【0024】
好ましい固形可塑剤として用いられるヒンダードフェノールエステル化合物としては、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコールビス〔3−(3 ,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート〕、1 ,6−ヘキサンジオールビス〔3 −(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1 ,6−ヘキサンジオールビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオールビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、チオビス〔エチレン3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、チオビス〔エチレン3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、チオビス〔エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が挙げられる。特に好ましい固体可塑剤としては、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオールビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、チオビス〔エチレン3−(3 ,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が挙げられる。
【0025】
好ましい固形可塑剤として用いられる脂肪酸エステル化合物としては、例えばミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸などのエチレングリコール、ブタンヂオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオールとのエステル化物、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの二塩基酸のラウリルアルコール、ステアリルアルコールのエステル化物がある。
【0026】
(基材)
本発明で使用する基材は、特に限定されることなく通常包装材で使用されるような公知のフィルムを使用することができるが、本発明の効果を容易に発現させる観点から、高剛性、高光沢を有するプラスチック基材、特には二軸延伸された樹脂フィルムを用いることが好ましい。また透明性を必要としない用途の場合はアルミ箔、アルミ蒸着層を単独あるいは組み合わせて使用することもできる。
具体的には、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)、アルミ箔、PE(ポリエチレン)、VMPET(アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート)、A−PET(非晶性ポリエチレンテレフタレート)、紙、PS(ポリスチレン)、ナイロン、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)を原料、あるいはこれらを複数組み合わせたフィルムを使用することができる。
【0027】
(ヒートシール性フィルムの製造方法)
本発明のヒートシール性フィルムは本発明のヒートシール剤を基材上に設けてなる。本発明のヒートシール剤はそのまま前記基材上に塗工しても良いし、前記基材との間に一層以上のプライマー層を設けても良い。使用されるプライマー種については特に制限はない。
また塗工方法は、公知の方法、例えばグラビアコーター、リバースコーター、キスコーター、エアナイフコーター、メイヤーバーコーター、ロールコーター、ディップコーター等により行うことができる。また、塗工は目的に応じてフィルムの片面のみもしくは両面に施すことができる。更には、オフライン(フィルム成形後に塗工)、インライン(フィルム成形時に塗工) の何れの方法もとりうる。
また、前記基材上に印刷インキをグラビア印刷又はフレキソ印刷したものを使用してもよく、この場合であっても良好な外観を呈することができる。前述の印刷インキは溶剤型、水性型又は活性エネルギー線硬化型インキを使用することがきる。
【0028】
本発明で使用するヒートシール剤を用いた場合、ヒートシールした後、常温または加温下で、12〜72時間で接着剤が硬化し、実用物性を発現する。
乾燥条件についても特に制限はない。透明なフィルムが形成される温度であればよく、通
常は熱風乾燥機などが用いられ、乾燥温度は50〜180℃(塗工方法による)、乾燥時間は1秒〜5分程度である。また必要に応じて、後処理として、乾燥後にコロナ放電処理などを施しても良い。
塗工量についても特に制限はないが、0.5〜5.0g/mが好ましい。塗工量が少量である場合は塗膜欠陥等を生じて充分なヒートシール性が得られず、一方で塗工量が多量である場合はヒートシール時間と熱量が膨大となりコストの割には効果がない。
【0029】
(包装材)
本発明のヒートシール性フィルムを用いた包装材としては、食品、薬品、化粧品、サニタリー、工業部品、雑貨、雑誌等の用途に用いる包装袋、容器、容器の蓋材等が挙げられる。具体的な態様としては、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、ピロー包装袋、ゲーベルトップ型の有底容器、テトラクラッシク、ブリュックタイプ、チューブ容器、紙カップ、蓋材、など種々ある。また、本発明の包装体に易開封処理や再封性手段を適宜設けてあってもよい。
【0030】
前記包装袋は、本発明のヒートシール性フィルムのヒートシール剤の層同士を重ねてヒートシール、あるいはヒートシール剤の層剤とヒートシール可能な別の基材とを重ね合わせてヒートシールすることにより得ることができる。
【0031】
以下、実施例により、具体的に本発明を説明する。
【実施例】
【0032】
(実施例1〜6及び比較例1〜2)
表1に示す配合量で混合しヒートシール剤とした。30μ厚硬質アルミ箔(東洋アルミニウム株式会社製)に前記ヒートシール剤をワイヤーバーにて塗工し、120℃で60秒乾燥させることによって、ヒートシール剤の塗工量約5.0g/mのヒートシール性フィルムを得た。
【0033】
上記ヒートシール性フィルムにおけるヒートシール強度、耐ブロッキング性、滑り性の評価結果を表1に示した。
【0034】
(判定方法)
(ヒートシール強度)
熱傾斜式ヒートシールテスター(テスター産業(株)製)を用い、シール温度80〜180℃(20℃間隔)で圧力1kg/cm 、時間1秒で塗工面同士をヒートシールした。サンプル幅を15mmとし、引張り速度200mm/minで180°ピール強度を測定し、これをヒートシール強度とした。1.0N /15mm以上あれば実用レベルとみなせる。
【0035】
(耐ブロッキング性)
4cm角にカッティングしたテストピースの塗工面/塗工面(以下、F/F)または塗工面/非塗工面(以下、F/B)を重ね合せ、40℃ において、荷重5kgをかけ、24時間静置した。室温に戻した後、テストピース剥離時の塗膜の状態、基材フィルムの破れ方などを目視で5段階評価した。
5:易剥離。
4:剥離可能、剥離時にパリパリと音がする。
3:剥離可能、剥離後の塗膜に跡残りあり。
2:剥離困難、基材破壊なし。
1:剥離困難、基材破壊あり。
【0036】
(滑り性)
8cm角にカッティングしたテストピースの塗工面/塗工面(以下、F/F)または塗工面/非塗工面(以下、F/B)を重ね合せ、室温において、荷重200gをかけ、静摩擦係数及び動摩擦係数を測定した。静摩擦係数及び動摩擦係数がいずれも0.70以下であれば、滑り性に優れるといえる。
【0037】
(経時安定性)
表1に示す配合量で混合したヒートシール剤を4℃の環境下で1週間保存した後の状
態を評価した。
〇 : 析出物無し
× : 析出物有り
【0038】
【表1】



【0039】
表1中、略語は次の通りである。
VINNOL H15/45M(Wacker社製):塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂
パンデックスTR−02(DIC社製):ウレタン系樹脂
デガランP−24(エボニック社製):アクリル樹脂
エリーテルUE−3240(ユニチカ社製):ポリエステル系樹脂
バイロン500(東洋紡社製):ポリエステル系樹脂
バイロンGK−880(東洋紡社製):ポリエステル系樹脂
タケネートD−110N(三井化学社製):溶剤含有イソシアネート末端ウレタン樹脂
【0040】
以上の結果より、実施例1〜6は、低温シール性を保持しつつ耐ブロッキング性、滑り性ともに良好な結果となった。すなわち、本発明の多価アルコールを滑材として用いることで、低温ヒートシール性を確保しつつ優れた耐ブロッキング性、滑り性が発現できるといえる。また、溶液の低温安定性に優れる。一方、比較例1、2は多価アルコールを滑材として含有しない組成であり、耐ブロッキング性と滑り性に劣る。