(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板上に第1のワイヤを介して第1の半導体素子が電気的に接続されると共に、前記第1の半導体素子上に、前記第1の半導体素子の面積よりも大きい第2の半導体素子が圧着されてなる半導体装置において、前記第2の半導体素子を圧着すると共に、前記第1のワイヤ及び前記第1の半導体素子を埋め込むために用いられる、100℃における0.1秒後のずり応力緩和率が40〜85%である、フィルム状接着剤。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。なお、本明細書における「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味する。
【0020】
(フィルム状接着剤)
図1は、本実施形態に係るフィルム状接着剤10を模式的に示す断面図である。フィルム状接着剤10は、熱硬化性であり、半硬化(Bステージ)状態を経て、硬化処理後に完全硬化物(Cステージ)状態となり得る接着剤組成物をフィルム状に成形してなるものである。
【0021】
フィルム状接着剤10は、100℃における0.1秒後のずり応力緩和率が40〜85%である。ブリードを抑制しつつ、接続信頼性に優れる半導体装置をより得易くなるという観点から、ずり応力緩和率は50〜80%であることが好ましく、60〜70%であることがより好ましい。なお、ずり応力緩和率は、後述のとおり(a)〜(f)成分の種類及び量を調整することにより、調整することが可能である。
【0022】
フィルム状接着剤10は、120℃におけるずり粘度が5000Pa・s以下であることが好ましい。良好な埋め込み性をより得易くなるという観点から、ずり粘度は3000Pa・s以下であることがより好ましい。ずり粘度の下限は特に限定されないが、過度な流動性を抑制するという観点から200Pa・sとすることができる。ずり粘度は、例えば動的粘弾性測定装置を用いて測定することができる。
【0023】
フィルム状接着剤10の含有成分は特に限定されないが、例えば、(a)熱硬化性成分、(b)熱可塑性成分、(c)無機フィラー、(d)有機フィラー、(e)硬化促進剤、(f)その他の成分、等を含むことができる。これら(a)〜(f)成分の種類及び量を調整することにより、フィルム状接着剤10の特性を調整することができる。
【0024】
(a)熱硬化性成分
熱硬化性成分としては熱硬化性樹脂が挙げられる。特に、半導体素子を実装する場合に要求される耐熱性及び耐湿性の観点から、熱硬化性成分としてエポキシ樹脂、フェノール樹脂等が好ましい。
【0025】
例えばエポキシ樹脂としては、芳香環含有エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等の、一般に知られているエポキシ樹脂を用いることができる。また、エポキシ樹脂は多官能エポキシ樹脂であってもよい。エポキシ樹脂としては、具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、これらのビスフェノール型エポキシ樹脂を変性させた二官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フルオレン変性エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ナフタレン変性エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0026】
エポキシ樹脂としては、例えば、ダイセル株式会社製のCelloxideシリーズ、新日化エポキシ製造株式会社製のYDFシリーズ及びYDCNシリーズ、DIC株式会社製のHP−7000L、株式会社プリンテック製のVG−3101L等が挙げられる。
【0027】
また、フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、フェノール環上の水素をアリール基で置換した変性フェノール樹脂等が挙げられる。なお、フェノール樹脂としては、耐熱性の観点から、85℃、85%RHの恒温恒湿槽に48時間投入後の吸水率が2質量%以下で、熱重量分析計(TGA)で測定した350℃での加熱質量減少率(昇温速度:5℃/min、雰囲気:窒素)が5質量%未満のものが好ましい。
【0028】
フェノール樹脂としては、例えば、エア・ウォーター株式会社製のHEシリーズ、群栄化学工業株式会社製のレヂトップシリーズ等が挙げられる。
【0029】
(a)熱硬化性成分としてエポキシ樹脂及びフェノール樹脂を併用する場合、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂の配合比は、それぞれエポキシ当量と水酸基当量の当量比で0.70/0.30〜0.30/0.70となるのが好ましく、0.65/0.35〜0.35/0.65となるのがより好ましく、0.60/0.40〜0.40/0.60となるのがさらに好ましく、0.60/0.40〜0.50/0.50となるのが特に好ましい。配合比が上記範囲内であることで、優れた硬化性、流動性等を有するフィルム状接着剤10が得易くなる。
【0030】
なお、硬化後における半導体装置の反りを抑制するという観点から、硬化速度の異なる熱硬化性樹脂を組み合わせることが好ましい。具体的には、上記に例示したエポキシ樹脂及びフェノール樹脂のうち、例えば(a1)軟化点が60℃以下又は常温で液体であるもの(硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されない)と、(a2)軟化点が60℃超(常温で固体)であるものと、を組み合わせて用いることが好ましい。なお、ここでいう常温とは5〜35℃を意味する。
【0031】
(a1)成分の含有量は、(a)成分の全質量を基準として10〜50質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。これにより、埋め込み性と、ダイシング、ピックアップ等のプロセス適性とを両立し易くなる。
【0032】
(a2)成分の含有量は、(a)成分の全質量を基準として10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。これにより、製膜性、流動性、応力緩和性等を調整し易くなる。なお、(a2)成分の含有量の上限は特に限定されないが、(a)成分の全質量を基準として90質量%とすることができる。
【0033】
なお、(a)成分として脂環式エポキシ樹脂を用いることで、ずり応力緩和率を所望の範囲に調整し易くなる。脂環式エポキシ樹脂を用いる場合、その含有量の目安は、(a)成分の全質量を基準として30〜100質量%とすることができる(すなわち、(a)成分の全量が脂環式エポキシ樹脂であっても良い)。
【0034】
(a)成分の重量平均分子量は、200〜5000であることが好ましい。これにより、ずり応力緩和率を所望の範囲に調整し易くなる。
【0035】
(b)熱可塑性成分
(b)熱可塑性成分としては、架橋性官能基を有するモノマー比率が高く分子量が低い熱可塑性成分と、架橋性官能基を有するモノマー比率が低く分子量が高い熱可塑性成分との併用が好ましい。特に後者の熱可塑性成分が一定量以上含まれることが好ましい。
【0036】
(b)成分としては、熱可塑性樹脂であるアクリル樹脂(アクリル系樹脂)が好ましく、さらに、ガラス転移温度Tgが−50℃〜50℃であり、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基又はグリシジル基を架橋性官能基として有する官能性モノマーを重合して得られる、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体等のアクリル樹脂がより好ましい。
【0037】
このようなアクリル樹脂として、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エポキシ基含有アクリルゴム等を使用することができ、エポキシ基含有アクリルゴムがより好ましい。エポキシ基含有アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、主として、ブチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体、エチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体等からなる、エポキシ基を有しているアクリルゴムである。
【0038】
なお、(b)成分の架橋性官能基としては、エポキシ基の他、アルコール性又はフェノール性水酸基、カルボキシル基等の架橋性官能基が挙げられる。
【0039】
(b)成分において、高い接着力が発現し易く、また150℃/1時間加熱後の引張弾性率を低くし易い観点から、架橋性官能基を有するモノマー単位はモノマー単位全量に対し5〜15モル%であることが好ましく、5〜10モル%がより好ましい。
【0040】
(b)成分の重量平均分子量は、20万〜100万であることが好ましく、50万〜100万であることがより好ましい。これにより、ずり応力緩和率を所望の範囲に調整し易くなる。また、特に(b)成分の重量平均分子量が50万以上であると成膜性を向上させる効果が一段と良好になる。(b)成分の重量平均分子量が100万以下であると、未硬化状態のフィルム状接着剤10のずり粘度を低減し易くなるため、埋込性がより良好になる。また、未硬化状態のフィルム状接着剤10の切削性が改善し、ダイシングの品質がより良好になる場合がある。
【0041】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、標準ポリスチレンによる検量線を用いて得られるポリスチレン換算値である。
【0042】
(b)成分全体のガラス転移温度Tgは−20℃〜40℃であることが好ましく、−10℃〜30℃であることが好ましい。これにより、ダイシング時にフィルム状接着剤10が切断し易くなるため樹脂くずが発生し難く、フィルム状接着剤10の接着力と耐熱性とを高くし易く、また未硬化状態のフィルム状接着剤10の高い流動性を発現し易くなる。
【0043】
ガラス転移温度Tgは、熱示差走査熱量計(例えば、株式会社リガク製「Thermo Plus 2」)を用いて測定することができる。
【0044】
(b)成分の含有量は、(a)成分を100質量部としたとき、20〜160質量部であることが好ましく、50〜120質量部であることがより好ましい。(b)成分の含有量が上記下限値以上であることにより、フィルム状接着剤10の可とう性の低下を抑制し易くなるとともに、硬化後には低弾性化して半導体装置(パッケージ)の反りを抑制し易くなる。一方、(b)成分の含有量が上記上限値以下であることにより、未硬化状態のフィルム状接着剤10の流動性が上昇し、埋込性をより良好にすることができる。なお、(b)成分の含有量が上記範囲内であることで、ずり応力緩和率を所望の範囲に調整し易くなる。
【0045】
(c)無機フィラー
(c)成分としては、Bステージ状態におけるフィルム状接着剤10のダイシング性の向上、フィルム状接着剤10の取扱い性の向上、熱伝導性の向上、ずり粘度(溶融粘度)の調整、チクソトロピック性の付与、接着力の向上等の観点から、シリカフィラー等が好ましい。
【0046】
(c)成分は、未硬化状態のフィルム状接着剤10のダイシング性を向上し、硬化後の接着力を十分に発現させる目的で、平均粒径の異なる2種類以上のフィラーを含むことが好ましい。(c)成分は、例えば未硬化状態のフィルム状接着剤10のダイシング性向上を目的とした(c1)平均粒径が0.2μm以上の第1のフィラーと、硬化後の接着力を十分に発現させることを目的とした(c2)平均粒径が0.2μm未満の第2のフィラーを含むことが好ましい。
【0047】
平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、アセトンを溶媒として分析した場合に得られる値とする。第1及び第2のフィラーの平均粒径は、粒度分布測定装置で分析した場合に、それぞれのフィラーが含まれていることが判別できる程度に、その差が大きいことがより好ましい。
【0048】
(c1)成分の含有量は、(c)成分の全質量を基準として30質量%以上であることが好ましい。(c1)成分の含有量が30質量%以上であることにより、フィルムの破断性の悪化、未硬化状態のフィルム状接着剤10の流動性の悪化を抑制し易くなる。なお、(c1)成分の含有量の上限は特に限定されないが、(c)成分の全質量を基準として95質量%とすることができる。
【0049】
(c2)成分の含有量は、(c)成分の全質量を基準として5質量%以上であることが好ましい。(c2)成分の含有量が5質量%以上であることにより、硬化後の接着力を向上させ易い。なお、(c2)成分の含有量の上限は、適度な流動性を確保する観点から、(c)成分の全質量を基準として30質量%とすることができる。
【0050】
(c)成分の含有量は、(a)成分を100質量部としたとき、10〜90質量部であることが好ましく、40〜70質量部であることがより好ましい。(c)成分の含有量が上記下限値以上であることにより、未硬化状態のフィルム状接着剤10のダイシング性の悪化、硬化後の接着力の低下を抑制し易いという傾向がある。一方、(c)成分の含有量が上記上限値以下であることにより、未硬化状態のフィルム状接着剤10の流動性の低下、硬化後の弾性率の上昇を抑制し易いという傾向がある。なお、(c)成分の含有量が上記範囲内であることで、ずり応力緩和率を所望の範囲に調整し易くなる。
【0051】
(d)有機フィラー
(d)成分としては、フィルム状接着剤10のダイシング性の向上、フィルム状接着剤10の取扱い性の向上、ずり粘度(溶融粘度)の調整、接着力の向上、硬化後の応力緩和性等の観点から、スチレン−PMMA変性ゴムフィラー、シリコーン変性ゴムフィラー等が好ましい。(d)成分の平均粒径は、硬化後の接着力を十分に発現し易くする観点から0.2μm以下であることが好ましい。
【0052】
(d)成分の含有量は、(c)成分を100質量部としたとき、0〜50質量部であることが好ましく、0〜30質量部であることがより好ましい。必要に応じ(d)成分を所定量含有させることにより、埋め込み性を向上しつつ応力緩和率を抑え易いという傾向がある。
【0053】
(e)硬化促進剤
良好な硬化性を得る目的で、(e)硬化促進剤を用いることが好ましい。(e)成分としては、反応性の観点からイミダゾール系の化合物が好ましい。なお、(e)成分の反応性が高すぎると、フィルム状接着剤10の製造工程中の加熱によりずり粘度が上昇し易くなるだけではなく、経時による劣化を引き起こし易い傾向がある。一方、(e)成分の反応性が低すぎると、フィルム状接着剤10の硬化性が低下し易い傾向がある。フィルム状接着剤10が十分硬化されないまま製品内に搭載されると、十分な接着性が得られず、半導体装置の接続信頼性を悪化させる可能性がある。
【0054】
(e)成分を含有させることで、フィルム状接着剤10の硬化性がより向上する。一方、(e)成分の含有量が多すぎる場合には、フィルム状接着剤10の製造工程中の加熱によりずり粘度が上昇し易くなるだけではなく、経時による劣化を引き起こし易い傾向がある。このような観点から、(e)成分の含有量は、(a)成分を100質量部としたとき、0〜0.20質量部であることが好ましい。
【0055】
(f)その他の成分
上記成分以外に、接着性向上の観点から、本技術分野において使用され得るその他の成分をさらに適量用いてもよい。そのような成分としては、例えばカップリング剤が挙げられる。カップリング剤としては、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0056】
(フィルム状接着剤)
フィルム状接着剤10は、例えば上記成分を含む接着剤組成物のワニスを基材フィルム上に塗布することによりワニスの層を形成する工程、加熱乾燥によりワニスの層から溶媒を除去する工程、基材フィルムを除去する工程、により得ることができる。
【0057】
ワニスは、上記成分を含む接着剤組成物を有機溶媒中で混合、混練等して調製することができる。混合及び混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を用いることができる。これらの機器は適宜組み合わせて用いることができる。ワニスの塗布は、例えばコンマコーター、ダイコータ―等により行うことができる。ワニスの加熱乾燥条件は、使用した有機溶媒が充分に揮散する条件であれば特に制限はなく、例えば60〜200℃で0.1〜90分間とすることができる。
【0058】
有機溶媒としては、上記成分を均一に溶解、混練又は分散できるものであれば制限はなく、従来公知のものを使用することができる。このような溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、Nメチルピロリドン、トルエン、キシレン等が挙げられる。乾燥速度が速く、価格が安い点でメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等を使用することが好ましい。
【0059】
上記基材フィルムとしては、特に制限はなく、例えば、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)、ポリプロピレンフィルム(OPP(Oriented PolyPropylene)フィルム等)、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルム等が挙げられる。
【0060】
フィルム状接着剤10の厚さは、第1のワイヤ及び第1の半導体素子、並びに基板の配線回路等の凹凸を十分に埋め込めるよう、20〜200μmであることが好ましい。また、厚さが20μm以上であることで十分な接着力を得易くなり、200μm以下であることで半導体装置の小型化の要求に応え易くなる。このような観点から、フィルム状接着剤10の厚さは30〜200μmであることがより好ましく、40〜150μmであることがさらに好ましい。
【0061】
厚いフィルム状接着剤10を得る方法としては、フィルム状接着剤10同士を貼り合わせる方法が挙げられる。
【0062】
(接着シート)
接着シート100は、
図2に示すように、基材フィルム20上にフィルム状接着剤10を備えるものである。接着シート100は、フィルム状接着剤10を得る工程において、基材フィルム20を除去しないことで得ることができる。
【0063】
接着シート110は、
図3に示すように、接着シート100の基材フィルム20とは反対側の面にさらにカバーフィルム30を備えるものである。カバーフィルム30としては、例えば、PETフィルム、PEフィルム、OPPフィルム等が挙げられる。
【0064】
フィルム状接着剤10は、ダイシングテープ上に積層されてもよい。これにより得られるダイシング・ダイボンディング一体型接着シートを用いることで、半導体ウェハへのラミネート工程を一度に行うことができ、作業の効率化が可能である。
【0065】
ダイシングテープとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムなどが挙げられる。ダイシングテープには、必要に応じて、プライマー処理、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理等の表面処理が行われていてもよい。
【0066】
ダイシングテープは粘着性を有するものが好ましい。このようなダイシングテープとしては、上記プラスチックフィルムに粘着性を付与したもの、上記プラスチックフィルムの片面に粘着剤層を設けたものが挙げられる。
【0067】
このようなダイシング・ダイボンディング一体型接着シートとしては、
図4に示す接着シート120及び
図5に示す接着シート130が挙げられる。接着シート120は、
図4に示すように、引張テンションを加えたときの伸びを確保できる基材フィルム40上に粘着剤層50が設けられたダイシングテープ60を支持基材とし、ダイシングテープ60の粘着剤層50上に、フィルム状接着剤10が設けられた構造を有している。接着シート130は、
図5に示すように、接着シート120においてフィルム状接着剤10の表面にさらに基材フィルム20が設けられた構造を有している。
【0068】
基材フィルム40としては、ダイシングテープについて記載した上記プラスチックフィルムが挙げられる。また、粘着剤層50は、例えば、液状成分及び熱可塑性成分を含み適度なタック強度を有する樹脂組成物を用いて形成することができる。ダイシングテープ60を得るには、当該樹脂組成物を基材フィルム40上に塗布し乾燥して粘着剤層50を形成する方法、PETフィルム等の他のフィルム上に一旦形成した粘着剤層50を基材フィルム40と貼り合せる方法等が挙げられる。
【0069】
ダイシングテープ60上にフィルム状接着剤10を積層する方法としては、上記の接着剤組成物のワニスをダイシングテープ60上に直接塗布し乾燥する方法、ワニスをダイシングテープ60上にスクリーン印刷する方法、予めフィルム状接着剤10を作製し、これをダイシングテープ60上に、プレス、ホットロールラミネートにより積層する方法等が挙げられる。連続的に製造でき、効率がよい点で、ホットロールラミネートによる積層が好ましい。
【0070】
ダイシングテープ60の厚さは、特に制限はなく、フィルム状接着剤10の厚さ、ダイシング・ダイボンディング一体型接着シートの用途等によって適宜、当業者の知識に基づいて定めることができる。なお、ダイシングテープ60の厚さが60μm以上であることで、取扱い性の低下、エキスパンドによる破れ等を抑制し易いる傾向がある。一方、ダイシングテープの厚さが180μm以下であることで、経済性と取扱い性の良さを両立し易い。
【0071】
(半導体装置)
図6は、半導体装置を示す断面図である。
図6に示すように、半導体装置200は、第1の半導体素子Wa上に、第2の半導体素子Waaが積み重ねられた半導体装置である。詳細には、基板14に、第1のワイヤ88を介して1段目の第1の半導体素子Waが電気的に接続されると共に、第1の半導体素子Wa上に、第1の半導体素子Waの面積よりも大きい2段目の第2の半導体素子Waaがフィルム状接着剤10を介して圧着されることで、第1のワイヤ88及び第1の半導体素子Waがフィルム状接着剤10に埋め込まれてなるワイヤ埋込型の半導体装置である。また、半導体装置200では、基板14と第2の半導体素子Waaとがさらに第2のワイヤ98を介して電気的に接続されると共に、第2の半導体素子Waaが封止材42により封止されている。
【0072】
第1の半導体素子Waの厚さは、10〜170μmであり、第2の半導体素子Waaの厚さは20〜400μmである。フィルム状接着剤10内部に埋め込まれている第1の半導体素子Waは、半導体装置200を駆動するためのコントローラチップである。
【0073】
基板14は、表面に回路パターン84,94がそれぞれ二箇所ずつ形成された有機基板90からなる。第1の半導体素子Waは、回路パターン94上に接着剤41を介して圧着されており、第2の半導体素子Waaは、第1の半導体素子Waが圧着されていない回路パターン94、第1の半導体素子Wa、及び回路パターン84の一部を覆うようにフィルム状接着剤10を介して基板14に圧着されている。基板14上の回路パターン84,94に起因する凹凸は、フィルム状接着剤10により埋め込まれている。そして、樹脂製の封止材42により、第2の半導体素子Waa、回路パターン84及び第2のワイヤ98が封止されている。
【0074】
(半導体装置の製造方法)
半導体装置は、基板上に第1のワイヤを介して第1の半導体素子を電気的に接続する第1のダイボンド工程と、第1の半導体素子の面積よりも大きい第2の半導体素子の片面に、100℃における0.1秒後のずり応力緩和率が40〜85%であるフィルム状接着剤を貼付するラミネート工程と、フィルム状接着剤が貼付された第2の半導体素子を、フィルム状接着剤が第1の半導体素子を覆うように載置し、フィルム状接着剤を圧着することで、第1のワイヤ及び第1の半導体素子をフィルム状接着剤に埋め込む第2のダイボンド工程と、を備える、半導体装置の製造方法により製造される。以下、半導体装置200の製造手順を例として、具体的に説明する。
【0075】
まず、
図7に示すように、基板14上の回路パターン94上に、接着剤41付き第1の半導体素子Waaを圧着し、第1のワイヤ88を介して基板14上の回路パターン84と第1の半導体素子Waとを電気的に接続する(第1のダイボンド工程)。
【0076】
次に、半導体ウェハ(例えば8インチサイズ)の片面に、接着シート100をラミネートし、基材フィルム20を剥がすことで、半導体ウェハの片面にフィルム状接着剤10を貼り付ける。そして、フィルム状接着剤10にダイシングテープ60を貼り合わせた後、所定サイズ(例えば7.5mm角)にダイシングし、ダイシングテープ60を剥離することにより、
図8に示すように、フィルム状接着剤10が貼付した第2の半導体素子Waaを得る(ラミネート工程)。
【0077】
ラミネート工程は、50〜100℃で行うことが好ましく、60〜80℃で行うことがより好ましい。ラミネート工程の温度が50℃以上であると、半導体ウェハと良好な密着性を得ることができる。ラミネート工程の温度が100℃以下であると、ラミネート工程中にフィルム状接着剤10が過度に流動することが抑えられるため、厚さの変化等を引き起こすことを防止できる。
【0078】
ダイシング方法としては、回転刃を用いてブレードダイシングする方法、レーザーによりフィルム状接着剤10又はウェハとフィルム状接着剤10の両方を切断する方法、また常温又は冷却条件下での伸張など汎用の方法などが挙げられる。
【0079】
そして、フィルム状接着剤10が貼付した第2の半導体素子Waaを、第1の半導体素子Waがワイヤ88を介して接続された基板14に圧着する。具体的には、
図9に示すように、フィルム状接着剤10が貼付した第2の半導体素子Waaを、フィルム状接着剤10が第1の半導体素子Waを覆うように載置し、次いで、
図10に示すように、第2の半導体素子Waaを基板14に圧着させることで基板14に第2の半導体素子Waaを固定する(第2のダイボンド工程)。第2のダイボンド工程は、フィルム状接着剤10を80〜180℃、0.01〜0.50MPaの条件で0.5〜3.0秒間圧着することが好ましい。
【0080】
第2のダイボンド工程において生じ得る空隙を除去することを目的として、第2のダイボンド工程後に、フィルム状接着剤10を60〜175℃、0.3〜0.7MPaの条件で、5分間以上加圧及び加熱する工程を実施してもよい。これにより、歩留まりを安定させながら、より容易に半導体装置を製造することができる。
【0081】
次いで、
図11に示すように、基板14と第2の半導体素子Waaとを第2のワイヤ98を介して電気的に接続した後、回路パターン84、第2のワイヤ98及び第2の半導体素子Waa全体を、封止材42で170〜180℃、5〜8MPaの条件にて封止する(封止工程)。このような工程を経ることで半導体装置200を製造することができる。
【0082】
上記のとおり、半導体装置200は、基板上に第1のワイヤを介して第1の半導体素子が電気的に接続されると共に、第1の半導体素子上に、第1の半導体素子の面積よりも大きい第2の半導体素子が圧着されてなる半導体装置において、第2の半導体素子を圧着すると共に、第1のワイヤ及び第1の半導体素子を埋め込むために用いられる、100℃における0.1秒後のずり応力緩和率が40〜85%である、フィルム状接着剤を用いて製造される。100℃における0.1秒後のずり応力緩和率が40%以上であるフィルム状接着剤を用いることで、ワイヤ、半導体素子等の形状に追従することができ、埋込性を確保することが可能となる。また、ずり応力緩和率が85%以下であるフィルム状接着剤を用いることで、圧着時にフィルム形状を留めておくことができ、ブリードを抑制することが可能となる。
【0083】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、以下のようにその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行ってもよい。
【0084】
半導体装置200において、基板14は、表面に回路パターン84,94がそれぞれ二箇所ずつ形成された有機基板90であったが、基板14としてはこれに限られず、リードフレームなどの金属基板を用いてもよい。
【0085】
半導体装置200は、第1の半導体素子Wa上に第2の半導体素子Waaが積層されており、二段に半導体素子が積層された構成を有していたが、半導体装置の構成はこれに限られない。第2の半導体素子Waaの上に第3の半導体素子をさらに積層されていても構わないし、第2の半導体素子Waaの上に複数の半導体素子がさらに積層されていても構わない。積層される半導体素子の数が増加するにつれて、得られる半導体装置の容量を増やすことができる。
【0086】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、ラミネート工程において、半導体ウェハの片面に、
図2に示す接着シート100をラミネートし、基材フィルム20を剥がすことで、フィルム状接着剤10を貼り付けていたが、ラミネート時に用いる接着シートはこれに限られない。接着シート100の代わりに、
図4及び5に示すダイシング・ダイボンディング一体型接着シート120,130を用いることができる。この場合、半導体ウェハをダイシングする際にダイシングテープ60を別途貼り付ける必要がない。
【0087】
ラミネート工程において、半導体ウェハではなく、半導体ウェハを個片化して得られた半導体素子を、接着シート100にラミネートしても構わない。この場合、ダイシング工程を省略することができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
(実施例及び比較例)
表1及び表2(単位:質量部)に従い、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂及びフェノール樹脂、並びに無機フィラーをそれぞれ秤量して組成物を得て、さらにシクロヘキサノンを加えて撹拌混合した。これに、熱可塑性樹脂であるアクリルゴムを加えて撹拌した後、さらにカップリング剤及び硬化促進剤を加えて各成分が均一になるまで撹拌し、ワニスを得た。なお、表中の各成分の品名は下記のものを意味する。
【0090】
(エポキシ樹脂)
Celloxide 2021P:(商品名、ダイセル株式会社製、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:エポキシ当量126、常温で液体、分子量236)
YDF−8170C:(商品名、新日化エポキシ製造株式会社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂:エポキシ当量159、常温で液体、重量平均分子量約310)
YDCN−700−10:(商品名、新日化エポキシ製造株式会社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:エポキシ当量210、軟化点75〜85℃)
HP−7000L:(商品名、DIC株式会社製、ジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂:エポキシ当量242〜252、軟化点:50〜60℃)
VG−3101L:(商品名、株式会社プリンテック製、多官能エポキシ樹脂:エポキシ当量210、軟化点39〜46℃)
【0091】
(フェノール樹脂)
HE−100C−30:(商品名、エア・ウォーター株式会社製、フェノール樹脂:水酸基当量175、軟化点79℃、吸水率1質量%、加熱質量減少率4質量%)
レヂトップPSM−4326:(商品名、群栄化学工業株式会社製、フェノール樹脂:水酸基当量105、軟化点118〜122℃、吸水率1質量%)
【0092】
(無機フィラー)
SC2050−HLG:(商品名、アドマテックス株式会社製、シリカフィラー分散液:平均粒径0.50μm)
アエロジルR972:(商品名、日本アエロジル株式会社製、シリカ:平均粒径0.016μm)。
【0093】
(アクリルゴム)
HTR−860P−3CSP:(サンプル名:ナガセケムテックス株式会社製、アクリルゴム:重量平均分子量80万、グリシジル官能基モノマー比率3モル%、Tg12℃)
HTR−860P−3CSP Mw:50:(サンプル名:ナガセケムテックス株式会社製、アクリルゴム:重量平均分子量50万、グリシジル官能基モノマー比率3モル%、Tg12℃)
HTR−860P−30B−CHN:(サンプル名、ナガセケムテックス株式会社製、アクリルゴム:重量平均分子量23万、グリシジル官能基モノマー比率8質量%、Tg−7℃)
【0094】
(カップリング剤)
A−189:(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)
A−1160:(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン)
【0095】
(硬化促進剤)
キュアゾール2PZ−CN:(商品名、四国化成工業株式会社製、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
次に、得られたワニスを100メッシュのフィルターでろ過し、真空脱泡した。真空脱泡後のワニスを、基材フィルムである、離型処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ38μm)上に塗布した。塗布したワニスを、90℃で5分間、続いて140℃で5分間の2段階で加熱乾燥した。こうして、PETフィルム上に、Bステージ状態にある厚さ60μmのフィルム状接着剤を備えた接着シートを得た。
【0099】
<各種物性の評価>
得られたフィルム状接着剤について下記のとおり評価をした。評価結果を表3及び表4に示す。
【0100】
[ずり応力緩和率測定]
基材フィルムを剥離除去したフィルム状接着剤を複数枚貼り合わせ、厚さ方向に10mm角に打ち抜いた。これにより10mm角、厚さ360μmの、フィルム状接着剤の評価用サンプルを得た。動的粘弾性装置ARES(TA社製)に直径8mmの円形アルミプレート治具をセットし、この治具で上記評価用サンプルを挟み込んだ。その後、評価用サンプルを室温(30℃)から最大で60℃/分の昇温速度で100℃まで昇温した後、10%の歪を与えて0.1秒経過後のずり応力を記録した。この応力を初期応力で規格化し、応力緩和率を算出した。
【0101】
[ずり粘度測定]
ずり応力緩和率測定と同様にして、評価用サンプルに対し5%の歪みを周波数1Hzで与えながら、5℃/分の昇温速度で室温(30℃)から140℃まで昇温させながらずり粘度を測定した。そして、120℃での測定値を記録した。
【0102】
[圧着後埋込性評価]
接着シートのフィルム状接着剤を2枚貼り合わせて厚さ120μmとし、これを厚さ100μmの半導体ウェハ(8インチ)に70℃で貼り付けた。次に、それらを7.5mm角にダイシングして、接着シート付き半導体素子を得た。
一方、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム(日立化成株式会社製、HR−9004−10(厚さ10μm))を、厚さ50μmの半導体ウェハ(8インチ)に70℃で貼り付けた。次に、それらを3.0mm角にダイシングして、上記の一体型フィルム付きチップを得た。一体型フィルム付きチップを、表面凹凸が最大6μmである評価用基板に、120℃、0.20MPa、2秒間の条件で圧着した後、120℃で2時間加熱して一体型フィルムを半硬化させた。これによりチップ付き基板を得た。
得られたチップ付き基板に、接着シート付き半導体素子を、120℃、0.20MPa、1.5秒間の条件で圧着した。この際、先に圧着しているチップが、接着シート付き半導体素子の真ん中にくるように位置合わせをした。
加熱後室温まで自然放冷した構造体を、超音波C−SCAN画像診断装置(インサイト株式会社製、品番IS350、プローブ:75MHz)にて分析し、圧着後埋込性を確認した。圧着後埋込性は以下の基準により評価した。
◎:圧着フィルム面積に対する空隙面積の割合が3%未満。
○:圧着フィルム面積に対する空隙面積の割合が3%以上5%未満。
△:圧着フィルム面積に対する空隙面積の割合が5%以上8%未満。
×:圧着フィルム面積に対する空隙面積の割合が8%以上。
【0103】
[ブリード量評価]
圧着後埋込性評価にて得られた構造体を、光学顕微鏡を用いて真上から観察した。そして、半導体素子の縁を始点として、圧着により半導体素子の縁から押し出されたフィルム状接着剤の縁までの距離を測長した。測長は顕微鏡付属の画像解析ソフトを用いて行い、測長された距離の最大値をブリード量とした。なお、圧着後埋込性が×及び△の例については評価を行わなかった。
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】