(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも、基布(i)、接着層(ii)、表皮層(iii)を有する合成皮革であって、前記接着層(ii)が、請求項1又は2記載のウレタン樹脂水分散体により形成されたものであることを特徴とする合成皮革。
(x)請求項1又は2記載のウレタン樹脂水分散体中の水を乾燥する工程、(y)乾燥物を基布にラミネートする工程、及び、(z)100〜150℃で更に加熱する工程を有することを特徴とする合成皮革の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のウレタン樹脂水分散体は、ウレタン樹脂(A)、水(B)、架橋剤(C)を含有するものであり、前記ウレタン樹脂(A)の50℃における粘度が、15,000〜34,000Pa・sの範囲であり、100℃における粘度が、1,000〜10,000Pa・sの範囲であり、150℃における粘度が、100〜1,300Pa・sの範囲であることを特徴とするものである。
【0011】
前記ウレタン樹脂(A)は、基布に染み込みすぎず(以下「耐染み込み性」と略記する。)、優れた剥離強度、及び、即剥離性を得る上で、50℃における粘度が、15,000〜34,000Pa・sの範囲であり、100℃における粘度が、1,000〜10,000Pa・sの範囲であり、150℃における粘度が、100〜1,300Pa・sの範囲であることが必須である。
【0012】
また、より一層優れた耐染み込み性、剥離強度、及び、即剥離性が得られる点から、前記ウレタン樹脂(A)の50℃における粘度は、50℃における粘度が、25,000〜33,000Pa・sの範囲であり、100℃における粘度が、2,000〜7,000Pa・sの範囲であり、150℃における粘度が、150〜1,000Pa・sの範囲が好ましい。
【0013】
前記ウレタン樹脂(A)の前記3つの規定粘度を係る範囲に調整する方法としては、主にウレタン樹脂(A)の重量平均分子量により調整する方法が挙げられる。
【0014】
前記ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量としては、65,000〜125,000の範囲であることが好ましく、80,000〜120,000の範囲がより好ましい。なお、前記ウレタン樹脂(A)の数平均分子量or重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定し得られた値を示す。また、前記ウレタン樹脂(A)として2種以上を用いる場合には、その平均値を示す。
【0015】
前記ウレタン樹脂(A)は、水(B)に分散し得るものであり、例えば、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等の親水性基を有するウレタン樹脂;乳化剤で強制的に水(B)中に分散したウレタン樹脂などを用いることができる。これらのウレタン樹脂(A)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記アニオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、カルボキシル基を有する化合物及びスルホニル基を有する化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を原料として用いる方法が挙げられる。
【0017】
前記カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−吉草酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記スルホニル基を有する化合物としては、例えば、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,6−ジアミノベンゼンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホン酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記カルボキシル基及びスルホニル基は、ウレタン樹脂組成物中で、一部又は全部が塩基性化合物に中和されていてもよい。前記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミン;モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン;ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム等を含む金属塩基化合物などを用いることができる。
【0020】
前記カチオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、アミノ基を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
【0021】
前記アミノ基を有する化合物としては、例えば、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン等の1級及び2級アミノ基を有する化合物;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン、N−メチルジアミノエチルアミン、N−エチルジアミノエチルアミン等のN−アルキルジアミノアルキルアミンなどの3級アミノ基を有する化合物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記ノニオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、オキシエチレン構造を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
【0023】
前記オキシエチレン構造を有する化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール等のオキシエチレン構造を有するポリエーテルポリオールを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記強制的に水(B)中に分散するウレタン樹脂を得る際に用いることができる乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン性乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン性乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン性乳化剤などを用いることができる。これらの乳化剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記ウレタン樹脂(A)としては、より一層優れた水分散安定性、耐加水分解性、剥離強度、即剥離性、及び、耐光性が得られる点から、アニオン性基を有するウレタン樹脂、及び/又は、ノニオン性基を有するウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0026】
前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料の使用量としては、ウレタン樹脂(A)の親水性基の濃度を調整して、より一層優れた水分散安定性、耐加水分解性、剥離強度、即剥離性、及び、耐光性が得られる点から、前記ウレタン樹脂(A)を構成する原料中0.01〜10質量%の範囲が好ましく、0.1〜5質量%の範囲がより好ましい。
【0027】
前記ポリイソシアネート(a1)としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、分子間力が強く、より一層優れた剥離強度が得られ、ウレタン樹脂(A)の粘度を好ましい範囲に調整しやすい点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、トルエンジイソシアネート、及び/又は、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0028】
前記ポリオール(a2)として、は、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ダイマージオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水分散安定性、耐加水分解性、剥離強度、即剥離性、及び、耐光性をより一層向上できる点から、ポリエーテルポリオール、及び/又はポリカーボネートポリオールが好ましく、ポリテトラメチレングリコール、及び/又は、ポリカーボネートポリオールがより好ましい。
【0029】
前記ポリオール(a2)の数平均分子量としては、より一層優れた剥離強度、皮膜の機械的強度、及び、耐加水分解性が得られる点から、500〜10,000の範囲であることが好ましく、800〜5,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリオール(a2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0030】
前記ポリオール(a2)には、必要に応じて、鎖伸長剤(a3)(カルボキシル基およびスルホニル基を有しないものであり、分子量が50以上500未満のもの。)を併用してもよい。前記鎖伸長剤としては、例えば、水酸基を有する鎖伸長剤、アミノ基を有する鎖伸長剤等を用いることができる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記水酸基を有する鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等の芳香族ポリオール化合物;水などを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記アミノ基を有する鎖伸長剤としては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等を用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記鎖伸長剤(a3)を用いる場合の使用量としては、皮膜の耐久性をより一層向上できる点から、ウレタン樹脂(A)を構成する各原料の合計質量中0.5〜40質量%の範囲であることが好ましく、1〜20質量%の範囲がより好ましい。
【0034】
前記ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、例えば、前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料、前記芳香族ポリイソシアネート(a1)、ポリオール(a2)、及び、必要に応じて前記鎖伸長剤(a3)を一括に仕込み反応させる方法等が挙げられる。これらの反応は、例えば、50〜100℃の温度で3〜10時間行う方法が挙げられる。
【0035】
前記ポリオール(a2)と前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料、並びに、前記鎖伸長剤(a3)を用いる場合にはそれが有する水酸基及びアミノ基の合計と、前記芳香族ポリイソシアネート(a1)が有するイソシアネート基とのモル比[(イソシアネート基)/(水酸基及びアミノ基の合計)]としては、0.8〜1.2の範囲であることが好ましく、0.9〜1.1の範囲がより好ましい。
【0036】
前記前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、前記ウレタン樹脂(A)に残存するイソシアネート基を失活させることが好ましい。前記イソシアネート基を失活させる場合には、メタノール等の水酸基を有するアルコールを用いることが好ましい。前記アルコールを用いる場合の使用量としては、ウレタン樹脂(A)100質量部に対し、0.001〜10質量部の範囲であることが好ましい。
【0037】
また、前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、有機溶剤を用いてもよい。前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物などを用いることができる。これらの有機溶媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、前記有機溶剤は、ウレタン樹脂組成物を得る際には蒸留法等によって除去されることが好ましい。
【0038】
前記水(B)としては、例えば、例えば、イオン交換水、蒸留水、水道水等を用いることができる。これらの中でも、不純物の少ないイオン交換水を用いることが好ましい。前記水(B)の含有量としては、作業性、塗工性、及び保存安定性の点から、ウレタン樹脂水分散体中20〜90質量%の範囲であることが好ましく、40〜80質量%の範囲がより好ましい。
【0039】
前記架橋剤(C)としては、例えば、カルボジイミド架橋剤、ポリイソシアネート架橋剤、メラミン架橋剤、エポキシ架橋剤等を用いることができる。これらの中でも、より一層優れた耐染み込み性が得られる点から、ポリイソシアネート架橋剤が好ましい。
【0040】
前記架橋剤(C)の使用量としては、例えば、前記ウレタン樹脂(A)100質量部に対して、1〜15質量部の範囲が挙げられる。
【0041】
本発明のウレタン樹脂水分散体は、前記ウレタン樹脂(A)、前記水(B)、及び、前記架橋剤(C)を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0042】
前記その他の添加剤としては、例えば、ウレタン化触媒、中和剤、架橋剤、シランカップリング剤、増粘剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤、顔料、染料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0043】
以上、本発明のウレタン樹脂水分散体は、水を含有するものであり、環境対応型のものである。また、前記ウレタン樹脂水分散体は、基布に染み込みすぎず、剥離強度、及び、即剥離性に優れるものである。よって、前記ウレタン樹脂水分散体は、合成皮革の接着層形成材料として好適に用いることができる。
【0044】
次に、本発明の合成皮革について説明する。前記合成皮革は、少なくとも、基布(i)、接着層(ii)、表皮層(iii)を有する合成皮革であり、前記接着層(ii)が、前記ウレタン樹脂水分散体により形成されたものである。
【0045】
前記基布(i)としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、絹、羊毛、グラスファイバー、炭素繊維、それらの混紡繊維等による不織布、織布、編み物などを用いることができる。
【0046】
前記接着層(ii)の厚さとしては、例えば、30〜60μmの範囲が挙げられる。
【0047】
前記表皮層(iii)を形成する材料としては、例えば、公知の水性ウレタン樹脂、溶剤系ウレタン樹脂、無溶剤ウレタン樹脂、水性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。これらの樹脂は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記合成皮革としては、前記層以外にも、必要に応じて、中間層、湿式多孔層、表面処理層等を設けてもよい。
【0049】
次に、前記合成皮革の製造方法について説明する。
【0050】
前記合成皮革の製造方法としては、(x)前記ウレタン樹脂水分散体中の水を乾燥する工程、(y)乾燥物を基布にラミネートする工程、及び、(z)100〜150℃で更に加熱する工程を有することが好ましい。
【0051】
具体的には、離型紙上に表皮層を形成した後に、(x)前記表皮層上に前記ウレタン樹脂水分散体を塗工し、水を乾燥し、ドライな接着層を形成し、(y)該接着層を基布に基布に張り合わせ、その後、(z)100〜150℃で、2〜30分間加熱し、前記ウレタン樹脂(A)と前記架橋剤(C)とを完全硬化させ、即剥離性に優れる合成皮革を得ることができる。前記(z)工程の後は、必要に応じてエージング工程を設けてもよい。前記エージング工程では、例えば、熱風乾燥、熱シリンダー等を使用する方法が挙げられる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0053】
[合成例1]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:1,000)500質量部、15質量部、メチルエチルケトン428質量部を加え、均一に混合した後、トルエンジイソシアネート(以下「TDI」と略記する。)117質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させた。次いで、1,3−ブタンジオールを11質量部加え、70℃で約1時間反応させて反応を終了させ、ウレタンポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。次いで、前記方法で得られたウレタンポリマーのメチルエチルケトン溶液にN,N−ジメチルエタノールアミン10質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水964質量部を加えた後、メチルエチルケトンを減圧下留去することによって、ウレタン樹脂水分散体(U−1)(不揮発分;40質量%、重量平均分子量;55,000)を得た。
【0054】
[合成例2]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流 メチルエチルケトン3,281質量部及びオクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、ポリカーボネートポリオール(日本ポリウレタン株式会社製「ニッポラン980R」、数平均分子量;2,000)1,000質量部と、DMPA17質量部と、エチレングリコール47質量部と、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」と略記する。)344質量部と、を溶液粘度が20,000mPa・sに達するまで70℃で反応させた後、メタノール3質量部を加えて反応を停止させてウレタン樹脂のメチルエチルケトン溶液を得た。このウレタン樹脂溶液に、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(Hydrophile−Lipophile Balance(以下、「HLB」と略記する);14、オキシエチレン基の平均付加モル数;10)70質量部と、トリエチルアミン13質量部を混合させた後に、イオン交換水800質量部を加えて転相乳化させることで前記ウレタン樹脂が水に分散した乳化液を得た。
次いで、前記乳化液からメチルエチルケトンを留去することによって、ウレタン樹脂水分散体(U−2)(不揮発分;40質量%、重量平均分子量;200,000)を得た。
【0055】
[合成例3]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:1,000)500質量部、15質量部、メチルエチルケトン428質量部を加え、均一に混合した後、トルエンジイソシアネート(以下「TDI」と略記する。)117質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させた。次いで、1,3−ブタンジオールを11質量部加え、70℃で約1時間反応させて反応を終了させ、ウレタンポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。次いで、前記方法で得られたウレタンポリマーのメチルエチルケトン溶液にN,N−ジメチルエタノールアミン10質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水964質量部を加えた後、メチルエチルケトンを減圧下留去することによって、ウレタン樹脂水分散体(U−3)(不揮発分;40質量%、重量平均分子量;113,000)を得た。
【0056】
[実施例1〜4、及び、比較例1〜3]
<合成皮革の製造>
表皮層用の水性ウレタン樹脂組成物(DIC株式会社製「ハイドランWLS−250」)を100質量部、水分散性黒色顔料(DIC株式会社製「ダイラックHS−9530」)を10質量部、会合型増粘剤(DIC株式会社製「ハイドラン アシスター T10」)を1質量部からなる配合液をフラット離型紙(味の素株式会社製「DN−TP−155T」)上に乾燥後の膜厚が30μmとなる様に塗布し、70℃で2分間、さらに120℃で2分間乾燥させた。
次いで、表1の配合表に示す材料からなる配合液を固形分膜厚が50μmとなるように塗布し、70℃で3分間乾燥させた。T/R起毛布とラミネートした後、130℃、10分の条件にて熱処理し、離型紙を剥離して合成皮革を得た。
【0057】
[数平均分子量、重量平均分子量の測定方法]
実施例および比較例で用いたポリオールの数平均分子量、ウレタン樹脂の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定し得られた値を示す。
【0058】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0059】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0060】
[ウレタン樹脂(A)の粘度の測定方法]
架橋剤を含めないウレタン樹脂水分散体の乾燥物に対し、レオメーター(Anton−Paar社製「MCR−302」)を使用して、粘度測定をしつつ、常温から150℃まで、5℃/分の温度変化にて加熱した。
【0061】
[剥離強度の測定方法]
実施例及び比較例で得られた合成皮革の上に、2.5cm幅のホットメルトテープ(サン化成株式会社製「BW−2」)を載置し、150℃で3分間加熱し、接着した。帆とメルトテープの幅に沿って試料を切断した。この試料の一部を剥離し、基材とホットメルトテープをチャックで挟み、オートグラフ(株式会社島津製作所製「AG−1」)で剥離強度を測定し、1cm幅に換算した。1kgf/cm以上であるものは剥離強度に優れると判断した。
【0062】
[即剥離性の測定方法]
合成皮革を作製した直後に表皮層上に5円玉を載せて、その上から1kgの荷重をかけ、一晩静置した後、荷重と5円玉を除去して、合成皮革の表面を観察し、以下のように評価した。
「T」;5円玉の模様が確認されない。
「F」;5円玉の模様が確認される。
【0063】
[耐染み込み性の評価方法]
1.電子顕微鏡による評価
合成皮革の断面を電子顕微鏡(日立タイテクテクノロジー株式会社製走査型電子顕微鏡「SU3500」、倍率;200倍)を使用して観察し、以下のように評価した。
「T」;接着層を有し、接着層の一部が基布に染み込んでいる。
「F」;接着層がすべて基布に染み込んでいる、又は、接着剤層が基布に全く染み込んでいない。
【0064】
2.屈曲性による評価
合成皮革を屈曲性試験機にて、25℃、10満開の条件にて屈曲試験を行い、以下のように評価した。
「T」;合成皮革に損傷がない。
「F」;合成皮革が破損している。
【0065】
【表1】
【0066】
表1中の略語は以下のものである。
「増粘剤1」;会合型増粘剤(DIC株式会社製「ハイドラン アシスター T10」)
「架橋剤1」;ポリイソシアネート架橋剤(DIC株式会社製「ハイドラン アシスター C5」)
【0067】
本発明のウレタン樹脂水分散体である実施例1〜4は、基布に染み込みすぎず、剥離強度、及び、即剥離性に優れることが分かった。
【0068】
一方、比較例1は、ウレタン樹脂(A)の50℃における粘度が、本発明で規定する範囲を下回る態様であるが、ウレタン樹脂が基布に染み込みすぎており、剥離強度が不良であった。
【0069】
比較例2は、ウレタン樹脂(A)の150℃における粘度が、本発明で規定する範囲を上回る態様であるが、ウレタン樹脂の基布への染み込みが不足しており、剥離強度が不良であった。
【0070】
比較例3は、ウレタン樹脂(A)のウレタン樹脂(A)の150℃における粘度が、本発明で規定する範囲を上回る態様であるが、ウレタン樹脂の基布への染み込みが不足しており、剥離強度が不良であった。