(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
精神疾患を含む病気の解明や薬の開発に、ラットやマウス等の小動物を用いた動物実験が行われている。動物実験の研究成果は、遺伝子解析、脳機能解析、又は行動解析により検証されている。本発明は、小動物等の移動体の行動を計測する行動解析に関する。
【0003】
従来技術として、移動体にセンサーを取り付けその信号を受信して計測する方法がある。小動物にセンサーを取り付けることは、小動物にセンサー取り付けに伴う負荷を与えることになり、また小動物がセンサーを外してしまう危険性があるなど行動解析に用いるには課題がある。
【0004】
小動物にセンサーを取り付けない行動解析として非特許文献1には、人間による直接目視、あるいはビデオ撮影、赤外線による記録する方法が記載されている。人間による直接目視による観察は、実験者の負担が大きいため観察時間が限られるので行動解析には課題がある。また、ビデオ撮影、赤外線による記録する方法は、長時間の観察を可能にするが、飼育ケージに入れられた小動物に適用した場合、飼育ケージに付随する餌や水を与える機器等が障害となり、小動物の全行動をビデオ撮影や赤外線により記録することが困難である。また、昼夜の明るさの変化も障害になる。
【0005】
一方、特許文献1には、振動センサーを取り付けた台の上に小動物を入れた飼育ケージを乗せ、小動物に音波等の刺激を与え、刺激を与えた時間のみ振動記録し行動解析する判定装置が記載されている。しかし、小動物への投薬等の「刺激」の効果は持続的で長時間に渡るので、この判定装置を用いることには課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は上記のような従来の評価方法の問題を解決し、投薬等の「刺激」を与えた小動物等の行動を長時間に渡って計測し行動解析に寄与できるフォースプレート、移動体の計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により上記の課題を解決できる。
発明1は、移動体を乗せ重量を計測するフォースプレートにおいて、3個又は4個のロードセルの上部にプレートを配し、プレート上で、3個又は4個のロードセルを頂点とする三角形又は四角形の面内を移動する1つの移動体によるロードセルの信号を測定する測定部と、信号をサンプリング周期毎に計測し、移動体のプレート上の位置座標、位置座標に応じた単位移動距離及びその累積値を計測する演算部と、を有することを特徴とするフォースプレートである。
発明2は、演算部において、測定部の出力信号に対して、周波数0.5〜1Hz以上の信号をカットするデジタルLPFを有することを特徴とする発明1に記載するフォースプレートである。
発明3は、デジタルLPFを介した出力信号から、サンプリング周期を1〜5秒として、位置座標、位置座標に応じた移動速度を計測し、移動速度に5〜10mm/sを範囲とする閾値を設定し、閾値以下をカットし、単位移動距離を計測する閾値処理と、を有することを特徴とする発明1又は2に記載するフォースプレートである。
発明4は、一匹の小動物を飼育する飼育ケージを上に乗せ、小動物の単位移動距離及びその累積値を計測することを特徴とする発明1至3のいずれか1項に記載するフォースプレートである。
発明5は、移動体を乗せ重量を計測するフォースプレートにおいて、3個又は4個のロードセルの上部にプレートを配し、プレート上で、3個又は4個のロードセルを頂点とする三角形又は四角形の面内を移動する1つの移動体によるロードセルの信号をサンプリング周期毎に計測し、移動体のプレート上の位置座標、位置座標に応じた単位移動距離及びその累積値を計測することを特徴とする移動体の計測方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフォースプレート又は移動体の計測方法を用いることで、動物実験に用いるラット等の小動物の行動を長時間計測し記録することができる。よって、昼夜を問わず、餌や水及びその補給機器、更に底に敷かれたおが屑等の障害物を有する飼育ケージの中で、これらの障害物の影響を受けないで小動物の行動を記録できる。また、フォースプレートの計測データにはノイズが含まれているので、そのまま積算したのでは正確な移動距離が計測できないが、計測データにローパスフィルタと閾値処理を用いることで、小動物の移動距離を高い精度で計測できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0013】
(原理:ロードセル4個)
移動体の質量Wは、ロードセル11の出力をWi(i=1〜4)とすると、式(1)で示される。よって、長方形のプレート13の幅をl、高さをhとすると、プレート13の左下を原点とした場合の移動体の位置座標(x、y)は、式(2)、(3)で示される。Wi(i=1〜4)、幅l、高さhは、測定値である。
【数1】
【0014】
よって、4個のロードセルの上部にプレート13を配し、プレート上で4個のロードセルを頂点とする四角形の面内を移動する1つの移動体によるロードセルの信号を計測すれば、移動体の位置座標(x、y)は計算できる。尚、4個のロードセルを頂点とする四角形は、長方形に限らず正方形、平行四辺形、台形、その他四辺形であれば、移動体の位置座標(x、y)は計算できる。プレート13は、4個のロードセルを頂点とする四角形より大きく、4個のロードセルに接するように配される。
【0015】
(原理:ロードセル3個)
移動体の質量をW、ロードセル11の出力をWi(i=1〜3)とすると、、式(1)で示される。よって、直角三角形のプレート13の幅をl、高さをhとすると、プレート13の左下を原点とした場合の移動体の位置座標(x、y)は、式(2)、(3)で示される。Wi(i=1〜4)、幅l、高さhは、測定値である。
【数2】
【0016】
よって、3個のロードセルの上部にプレート13を配し、プレート上で3個のロードセルを頂点とする三角形の面内を移動する1つの移動体によるロードセルの信号を計測すれば、移動体の位置座標(x、y)は計算できる。尚、3個のロードセルを頂点とする三角形は、直角三角形に限らず正三角形、二等辺三角形、その三角形であれば、移動体の位置座標(x、y)は計算できる。プレート13は、3個のロードセルを頂点とする三角形より大きく、3個のロードセルに接するように配される。
【0017】
(実施形態)
フォースプレート1は、測定部10と演算部20を有する。
【0018】
図3に、プレート13を外した測定部10の平面図を示す。ロードセル11は4個使用している。各ロードセルの信号検出部をS1、S2、S3、S4で示す。S1を原点とし、S1からS2の線をX軸、S1からSの線をY軸とする。測定部10には、電源12、増幅回路15、ローパスフィルタ回路(以下、LPF回路と記す。)17、A/D変換回路18、計測用コンピュータ19を有する。尚、プレート13は、4個のロードセル11上に接して取り付けられる。
【0019】
図4に、測定部10の処理フローを示す。ステップS101にて、移動体3の移動にともなうロードセル11の出力信号を検出するが、出力信号の変化は小さい。よって、ステップS102にて、出力信号はオペアンプを用いた増幅回路15により増幅される。増幅倍率は、ロードセル11の出力信号の大きさとA/D変換回路18の入力レンジに依存し、通常数百倍から1万倍程度である。本実施形態では、入力信号は517倍に増幅される。ステップS103にて、オペアンプを用いた遮断周波数19.4Hzの2次LPF回路17を用いて高周波ノイズを低減させる。ここで、回路の電源12に用いる交流電源(AC100V、50Hz又は60Hz)のノイズ低減が主目的なので、遮断周波数は10〜20Hz程度とした。ステップS104にて、LPF回路17の出力信号を12bitのA/D変換回路18でデジタル信号に変換される。ステップS105にて、デジタル信号に変換された出力信号は、フォースプレート1に搭載された計測用コンピュータ19へ、5〜10Hzの測定周波数(測定周期0.2〜0.1秒)で、計測データとして記録される。ステップS101〜S105は、各ロードセル11にて行われる。
【0020】
電源12については、フォースプレート1の外に設置した交流電源を直流電源に変換する電源から直流を供給しても良い。この場合、2次LPF回路17の機能は不要である。
【0021】
図5に、ステップS102、ステップS103の例を示す。
【0022】
図6に、演算部20の処理フローを示す。
ステップS201にて、計測用コンピュータ19に記録した計測データがホストPC25に転送される。ホストPC25は、演算部20を有する。ステップS202にて、移動体3特に小動物41が静止している状態でも出力信号に現れる振動を低減させるために、遮断周波数0.8HzのデジタルLPF21を用いる。ここで、遮断周波数は、高すぎると振動が低減できず、低すぎると移動距離の誤差が大きくなるため、0.5〜1.0Hz程度とする。ステップS203にて、測定周期毎の移動体の位置座標及び移動速度を計測する。ステップS204にて、このまま位置座標の差分を積算すると正しい移動距離が計測できないため、サンプリング周期2秒前の位置座標と現在の位置座標の差から単位時間当たりの移動速度を計測し、閾値処理23を用いて、閾値7.5mm/s以下の場合は移動距離を積算しない処理を行う。ここで、この閾値は、移動体3特に小動物41が停止している時と移動している時の実験データに基づき、5〜10mm/sの範囲から選択する。ステップS204にて、移動距離を計測する。
【0023】
図7は、フォースプレート1の4つのロードセルの内1つの出力信号を示す。
図7(ア)は、フォースプレート1上に重り(静止物)を置いている場合の生データである。静止荷重であるにも関わらず、出力信号は64.5gを中心に±2.5g程度振動している。静止物なので、本来なら出力は一定となって欲しいのだが、計測システムの特性で、どうしても一定の幅でノイズが出てしまう。
図7(イ)は、この振動の影響を抑えるため、出力信号に遮断周波数0.8HzのデジタルLPF21を使用したデータを示す。ステップS202で行っている。これにより、出力信号に現れる振動を±1.5g程度に低減させることができる。
【0024】
ここで、デジタルLPF21の遮断周波数の範囲は、0.5〜1.0Hzが良い。即ち、対象物が静止物で動かないなら、遮断周波数を小さくすればノイズの幅は小さくでる。しかし、遮断周波数を小さくしすぎると、対象物が移動した時に、動いたことが正確に計測できなくなる。発明者らは、
図11、12に示す鉄道模型を用いた実験により、対象物が移動しても、ある程度正確に計測できる値として、遮断周波数の範囲0.5〜1Hzを特定した。
【0025】
ここで、本実施形態の特徴は、移動体3を乗せたフォースプレート1により、移動体3のフォースプレート1上の重心位置を計測し、重心の移動距離より移動体3の移動距離を計測し、更に移動距離の累積値を計測し長時間に渡る移動距離を正確に計測することである。このためノイズの影響を更に小さくして、移動体3の重心動揺(重心は変化するが移動していない状態)と移動状態を識別する必要がある。
本実施形態では、移動速度を計測するサンプリング周期と計測した移動速度に閾値を用いて、ノイズの影響を更に小さくし重心動揺をカットして移動距離を計測した。
【0026】
(サンプリング周期)
移動距離を計測するために一定のサンプリング周期(数秒前)と現在との位置の差分から移動速度を計測した。即ち、移動速度の計測は、距離を時間で割るが、サンプリング周期が5Hzなら0.2秒に1回、サンプリング周期が10Hzなら0.1秒に1回位置を計測する。
よって、測定部10の測定周期に対して演算部20のサンプリング周期は異なる値とし大きくさせた。即ち、測定周期毎の差分により移動速度も測定できるが、ノイズの影響の影響により、位置の計測値が大きくバラツキ、その結果として測定周期で測定した移動速度のバラつきが大きくなる。
よって、演算部20のサンプリング周期について、
図11、12に示す鉄道模型を用いた実験により検証し、単位移動距離を計測するサンプリング周期として1〜5秒が適切であることを見出した。即ち、1〜5秒前の位置と現在位置から算出すると鉄道模型を用いた実測値に対して誤差を小さくすることができる。1秒以上であれば、サンプリング周期における移動距離、速のバラつきは小さい。また、5秒以内であれば、計測した移動速度から計測される距離と実際の移動距離との差が小さい。
図9は、サンプリング周期を2秒とし、2秒前と現在の位置データから求めた移動速度を示す。これはノイズの影響を小さくしている。
【0027】
(閾値によるカット:重心動揺を抑制)
図9の計測した移動速度に対して閾値処理23による処理を導入する。こ処理により、移動速度に閾値を設けることで移動と停止の状況を判断し、移動していると判断された場合のみ単位移動距離を積算する。
図11、12に示す鉄道模型を用いた実験により、閾値は、5〜10mm/sの範囲として、閾値以下をカットすることとした。即ち、5mm/s以下でカットを行うと、重心移動などの実際には動いていない移動速度を距離にカウントしてしまう。よって、計測値は実測値より大きくなった。一方、10mm/s以上では、動いた移動速度もカットしてしまう。よって、計測値は実測地より小さくなった。
【0028】
(実施例1)
図8において、飼育ケージ40に小動物41としてラットを一匹いれて、フォースプレート1(
図3に示す測定部10使用)上に置いた場合の、4個のロードセル11の出力信号にデジタルLPF21の遮断周波数0.8Hzを適用し、式(2)、(3)より計測した小動物3の位置座標を示す。同時に小動物3の活動のビデオ撮影を行い小動物3の移動の有無を観察した。観察によると、時刻0秒〜70秒、150秒〜600秒は静止(移動していない)、70秒〜150秒は飼育ケージ40内をゆっくり移動していた。
【0029】
よって、
図9において、0秒〜70秒及び150秒〜600秒の間は静止していると判断され、70秒〜150秒の間は移動していると判断される閾値として、7.5mm/sを選定した。
図10に、閾値処理23により、デジタルLPF21の遮断周波数0.8Hz、サンプリング周期を2秒、閾値7.5mm/s以下をカットして単位移動距離を計測し、その累積した移動距離(累積値)を示す。小動物3が移動した時刻70秒〜150秒間の移動距離0.3mに対して、静止していた0秒〜70秒は0.01m、150秒〜600秒は0.03mとなった。この計測値は、ビデオ撮影による超動物3の移動状態と近似している。よって、閾値によるカットにより、重心動揺を抑制ができた。
【0030】
(実施例2)
図11は、フォースプレート1上に、レール31及び鉄道模型30を載置した状態を示す。 レール幅9mmのNゲージのレール31と鉄道模型30を用いた。フォースプレート1のプレート13の上にNゲージのレールを敷設した。半径103mmの曲線レールと長さ140mmの直線レールを組み合わせ、一周927mmの楕円軌道を作製した。また、鉄道模型30にはおもりを追加して重量を124gとした。移動距離の実測値(単位移動距離の累積値に相当)は、鉄道模型のレールの周回回数から計算した。また、計測値はフォースプレート1から計測した。
【0031】
ここで、鉄道模型は、長い時間の静止状態(停止)では重心動揺は起こらないが、移動時、停止時の前後は、加減速による加速度の影響や曲線部での遠心力の影響、あるいはレールの歪みによる車両の振動の影響により、レールに掛かる荷重が変動するため重心動揺が起こっている。
よって、
図12に鉄道模型による移動・停止を繰り返した場合の移動距離の計測結果を示す。移動と停止は手動で制御し、繰り返し周期は約8秒で、約4秒間移動し、約4秒間停止を約20回(約160秒間)繰り返した。移動速度を計測するサンプリング周期は、範囲1〜5秒に対して2秒とした。閾値は、5〜10mm/sの範囲に対して、閾値7.5m/s以下をカットした。この場合、計測値は8.28m、実測値は8.34mであり、計測値は実測値によく一致した。
サンプリング周期は、ローパスフィルタと同じような効果があり、サンプリング周期を短くするとより短時間での周波数の高い変化を検知し、サンプリング周期を長くすると高周波は含まない平均的な移動速度が検知される。よって、2秒の計測結果(最も誤差が少ない状態と推定)に対する移動速度の計測誤差は、1秒にすると高めに数%、5秒にすると低めに数%誤差が出る。
閾値の範囲についての単位移動距離の累積値の計測値誤差を検討する。閾値7.5m/sの単位移動距離の累積値の計測値(最も誤差が少ない状態と推定)に対して、5m/sにすると計測値が長めに数%、10m/sにすると短めに数%誤差がでる。
単位移動速度及びその累積値を計測するサンプリング周期と閾値の値は関連する。よって、サンプリング周期の範囲を1〜5秒、及び閾値の範囲を5〜10mm/sとすることにより単位移動距離の累積値である計測値の実測値に他する誤差が10%以内にすることができる。
【0032】
図13及び表1は、鉄道模型30による長時間の移動距離の測定結果を示す。レール31は、一周927mmであるので、鉄道模型30の周回回数をカウントして移動距離を計算した。これを実際の移動距離(実測値)として、フォースプレート1の出力信号から計算した測定値(計測値)と比較した。
実験時間は150分とし、静止30分・移動45分・静止25分・移動40分、静止10分の5区間を連続して計測した。鉄道模型が停止していた時刻0分〜30分、75分〜100分、及び140分〜150分の区分では移動距離は計測されていない。鉄道模型が移動していた時刻30分〜75分の間は383周走行して実移動距離は355m(実測値)、計測移動距離(計測値)は365mで102.8%、時刻100分〜140分の間は309周走行して実移動距離(実測値)は286m、計測移動距離(計測値)は289mで101.0%、実験時間全体では150分の間に692周走行して実移動距離(実測値)が642m、計測移動距離(計測値)が654m、101.9%であった.150分の実験において計測移動距離(計測値)の誤差は2%程度であり、長時間の実験でも高い精度で移動距離が計測できることが確認できた。
【表1】
【0033】
デジタルLPF21と閾値処理23を用いたフォースプレート1は、移動体3の精度の高い移動距離の計測が可能であることを、鉄道模型を用いることで、精度を定量的に検証した。
【0034】
(実施例3)
フォースプレート1を用いることで、小動物41の移動距離を、明るさの変化や障害物の影響を受けず計測可能である。実施例3は、発明者らがラットやマウス等の小動物を用いて生理学的な研究を実施している研究者に依頼して行った。
図14は、フォースプレート1上に、1匹の小動物41を入れた飼育ケージ40を載置した状態を示す。
【0035】
図15は、小動物41としてラットを選定し、ラットの1日24時間の移動距離の計測結果を示す。実験開始時間は18時45分、実験終了時間は翌日の18時45分である。計測条件は、測定周波数10Hzでデータを記録、デジタルLPF21の遮断周波数は0.8Hz、サンプリング周期2秒で移動速度を測定し,閾値処理の閾値は7.5mm/sとした。
図15の横軸は時刻を示し、縦軸は1時間ごとの単位移動距離の累積値を棒グラフで示した。ラットの24時間の総移動距離である単位移動距離の累積値は165mであった。実験開始後1時間、夜の21時から22時ころ、朝の4時から8時ころの活動が活発であること、それ以外の夜間も1時間当たり数m程度は活動しているのに対し、昼間の9時から18時の間は活動量が少ないようすが確認された。ラットが夜行性である特徴も示している。
従来、特定のフィールドや実験装置内での短時間の行動計測の結果は報告されているが、飼育ケージ40内での1日24時間の活動を記録した例は少なく、貴重な精度の高いデータである。
【0036】
実施例3では、長時間ラットの行動計測を自動的に行うために、本実施形態のフォースプレート1を用い、デジタルLPF21(ノイズを低減)及び閾値処理23(重心動揺の影響を抑制)を導入した。即ち、デジタルLPF21にて遮断周波数0.8Hzの1次のローパスフィルタ、閾値処理23にて7.5mm/sをカットする処理を導入することで、ラットが移動しているのか静止しているのかを判断し、正確な単位移動距離及びその累積値(累積移動距離)を計測した。ラットの24時間の長時間行動計測実験を実施した結果、飼育ケージ内の木屑などの障害物、飼育ケージ上の餌や水などの遮蔽物、昼夜の明るさの違いなどの悪条件の中、総移動距離・時間ごと移動距離により、ラットの活動の様子を高精度で自動的に記録することに成功し、1日24時間で移動距離165mという結果を得た。新しいケージに入った1〜2時間の活動が活発なことや、夜行性と言われるとおり、夜間から朝にかけての移動量が多く、昼間の移動量は少ない傾向が確認された。
【0037】
以上、実施形態及び実施例により、フォースプレート1は、4個のロードセルの上部にプレート13を配し、プレート13上でロードセル11を頂点とする四角形の面内を移動する1つの移動体3によるロードセル11の信号を測定する測定部10と、信号をサンプリング周期毎に計測し、移動体3のプレート13上の位置座標、位置座標に応じた単位移動距離及びその累積値を計測する演算部20とを有する。
ここで、演算部20において、測定部10の出力信号に対して、周波数0.5〜1Hz以上の信号をカットするデジタルLPF21を有する。更にデジタルLPF21を介した出力信号から、サンプリング周期を1〜5秒として、位置座標、位置座標に応じた移動速度を計測し、移動速度に5〜10mm/sを範囲とする閾値を設定し、閾値以下をカットし、単位移動距離を計測する閾値処理23とを有する。これにより、計測した単位移動距離及びその累積値は、鉄道模型を用いた実測値と誤差が±10%以内とすることができる。