(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エポキシ樹脂により形成された下地(ii)、並びに、ラジカル重合性樹脂(A)、芳香環の含有量が40質量%以下であるラジカル重合性単量体(B)、硬化剤(C)、及び、硬化促進剤(D)を含有するラジカル重合性樹脂組成物により形成された上塗り層(iv)を有する土木建築用構造体であって、前記ラジカル重合性樹脂(A)が、ウレタン(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上の樹脂であり、前記ラジカル重合性単量体(B)が、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上の単量体であることを特徴とする土木建築用構造体。
前記硬化剤(C)が、ジアシルパーオキサイド化合物、ハイドロパーオキサイド化合物、及びケトンパーオキサイド化合物からなる群より選ばれる1種以上である請求項1記載の土木建築用構造体。
舗道(i)上に、エポキシ樹脂を塗布して下地(ii)を形成し、次いで前記下地(ii)上に骨材(iii)を散布し、更にその上に、ラジカル重合性樹脂(A)、芳香環を有し、芳香環の含有量が40質量%以下であるラジカル重合性単量体(B)、硬化剤(C)、及び、硬化促進剤(D)を含有するラジカル重合性樹脂組成物による上塗り層(iv)を形成することにより得られる滑り止め舗装構造体の製造方法であって、前記ラジカル重合性樹脂(A)が、ウレタン(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上の樹脂であることを特徴とする滑り止め舗装構造体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の土木建築用構造体は、エポキシ樹脂により形成された下地(ii)、並びに、
ラジカル重合性樹脂(A)、芳香環の含有量が40質量%以下であるラジカル重合性単量体(B)、硬化剤(C)、及び、硬化促進剤(D)を含有するラジカル重合性樹脂組成物により形成された上塗り層(iv)を有するものである。
【0012】
前記エポキシ樹脂としては、滑り止め舗装として使用される公知のエポキシ樹脂を用いることができ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等を用いることができる。これらの中でも、滑り止め舗装に圧倒的に用いられているものは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。また、前記エポキシ樹脂としては、滑り止め舗装に用いられる場合には、常温での硬化性を向上するため、硬化促進剤としてフェノール化合物を樹脂組成物中0.1〜5質量%、及び、好ましく硬化剤としてアミン化合物を樹脂組成物中1〜50質量%の範囲で配合されていることが一般的である(例えば、特許第3874167号公報、樹脂舗装技術協会「ニート工法 樹脂系すべり止め舗装要領書(2013年度版)」等を参照。)。
【0013】
前記エポキシ樹脂を用いて下地(ii)を形成する方法としては、例えば、前記エポキシ樹脂を、刷毛、金鏝、レーキ等を使用して基材や舗道に塗布する方法が挙げられる(例えば、樹脂舗装技術協会「ニート工法 樹脂系すべり止め舗装要領書(2013年度版)」を参照。)。
【0014】
前記下地(ii)上に設けられる前記ラジカル重合性樹脂組成物は、ラジカル重合性樹脂(A)、芳香環の含有量が40質量%以下であるラジカル重合性単量体(B)、硬化剤(C)、及び、硬化促進剤(D)を含有するものであることが必須である。なかでも、前記特定のラジカル重合性単量体(B)を用いることが、前記エポキシ樹脂により形成された下地(ii)上でも優れた常温硬化性を発現する上で重要である。前記ラジカル重合性単量体(B)の芳香環の含有量が40質量%以下であることにより、前記エポキシ樹脂に配合されているフェノール化合物が、ラジカル重合性樹脂組成物中に溶解しにくくなり、ラジカル重合性樹脂組成物の硬化阻害を引き起こさないことが、優れた常温硬化性が得られるメカニズムであると考えられる。前記ラジカル重合性単量体(B)の代わりに、芳香環の含有量が40質量%を超える単量体を用いた場合には、芳香環がリッチとなり前記エポキシ樹脂に配合されているフェノール化合物と化学的構造が類似し溶解性が向上するためラジカル重合性樹脂組成物の硬化阻害が引き起こされる。
【0015】
なお、前記ラジカル重合性単量体(B)の芳香環の含有量は、前記ラジカル重合性単量体(B)を構成する全ての単量体の合計質量に対する、芳香環の含有量を、分子量を基に算出した値を示す。なお、前記計算にあたっては、芳香環の分子量として、有機基を除いた、置換基として水素原子のみを有するベンゼン環やナフタレン環の分子量を用いることとする。例えば、トルエンであれば、メチル基を1つ除いた水素原子を5つ有するベンゼン環の分子量、ジフェニルメタンジイソシアネートであれば、イソシアネート基とメチレン基を除いた水素原子を4つ有するベンゼン環の分子量、トリレンジイソシアネートであれば、メチル基を2つ除いた水素原子を4つ有するベンゼン環の分子量を用いることとする。
【0016】
前記ラジカル重合性樹脂(A)としては、例えば、公知のウレタン(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレー
ト等を用いることができる。これらの樹脂は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0017】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基とアクリロイル基の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル化合物」とは、アクリル化合物とメタクリル化合物の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル単量体」とは、アクリル単量体とメタクリル単量体の一方又は両方をいう。
【0018】
前記ラジカル重合性樹脂(A)の数平均分子量としては、機械的強度をより一層向上できる点から、500〜50,000の範囲であることがより好ましい。なお、前記ラジカル重合性樹脂(A)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0019】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0020】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0021】
前記ラジカル重合性単量体(B)としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アク
リレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等を用いることができる。これらの(メタ)アクリル単量体は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ラジカル重合性樹脂組成物の常温硬化性をより一層向上できる点から、芳香環の含有量が35質量%以下である(メタ)アクリル単量体を用いることが好ましく、芳香環の含有量が10質量%以下である(メタ)アクリル単量体を用いることがより好ましく、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上の(メタ)アクリル単量体を用いることが更に好ましい。
【0022】
前記ラジカル重合性樹脂(A)と前記ラジカル重合性単量体(B)との質量比[(A)/(B)]としては、常温硬化性、及び機械的強度をより一層向上できる点から、10/90〜95/5の範囲であることが好ましく、30/70〜70/30の範囲がより好ましい。
【0023】
前記硬化剤(C)及び前記硬化促進剤(D)は、ラジカル重合性樹脂組成物を常温にて硬化させる上で必須の成分である。
【0024】
前記硬化剤(C)としては、常温で優れた硬化性が得られる点で、有機過酸化物を用いることが好ましく、ジアシルパーオキサイド化合物、パーオキシエステル化合物、ハイドロパーオキサイド化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物、ケトンパーオキサイド化合物、パーオキシケタール化合物、アルキルパーエステル化合物、パーカーボネート化合物等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記エポキシ樹脂に配合されているフェノール化合物によるラジカル重合性樹脂組成物の硬化阻害をより一層抑制できる点から、ジアシルパーオキサイド化合物、ハイドロパーオキサイド化合物及びケトンパーオキサイド化合物からなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましく、ジアシルパーオキサイド化合物、及び/又はハイドロパーオキサイド化合物を用いることがより好ましく、過酸化ベンゾイル、及び/又は、クメンハイドロパーオキサイドを用いることが更に好ましい。
【0025】
前記ジアシルパーオキサイド化合物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化トルイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記エポキシ樹脂に配合されているフェノール化合物によるラジカル重合性樹脂組成物の硬化阻害をより一層抑制できる点から、過酸化ベンゾイルを用いることが好ましい。
【0026】
前記ハイドロパーオキサイド化合物としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記エポキシ樹脂に配合されているフェノール化合物によるラジカル重合性樹脂組成物の硬化阻害をより一層抑制できる点から、クメンハイドロパーオキサイド及び/又はジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを用いることが好ましく、クメンハイドロパーオキサイドを用いることがより好ましい。
【0027】
前記ケトンパーオキサイド化合物としては、例えば、アセチルアセトンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジエチルケトンパーオキサイド、メチルプロピルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、エチルアセテートパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシュクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記エポキシ樹脂に配合されているフェノール化合物によるラジカル重合性樹脂組成物の硬化阻害をより一層抑制できる点から、メチルエチルケトンパーオキサイド及び/又はアセチルアセトンパーオキサイドを用いることが好ましく、メチルエチルケトンパーオキサイドを用いることがより好ましい。
【0028】
前記硬化剤(C)の使用量としては、常温硬化性の点から、前記ラジカル重合性樹脂(A)及び前記ラジカル重合性単量体(B)の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲であることが好ましく、0.1〜5質量部の範囲であることがより好ましい。
【0029】
前記硬化促進剤(D)は、前記硬化剤(C)の有機過酸化物をレドックス反応によって分解し、活性ラジカルの発生を容易にする作用のある物質であることが好ましく、例えば、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト等の有機酸のコバルト塩;オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等の有機酸塩;バナジウムアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート化合物;アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン、N,N−置換−p−トルイジン、4−(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジンのエチレンオキサイド付加物、N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン等のアミン化合物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記エポキシ樹脂に配合されているフェノール化合物によるラジカル重合性樹脂組成物の硬化阻害をより一層抑制できる点から、有機酸のコバルト塩、及び/又は、アミン化合物を用いることが好ましく、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、及び、トルイジン化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を用いることがより好ましい。
【0030】
前記硬化促進剤(D)の使用量としては、常温硬化性の点から、前記ラジカル重合性樹脂(A)及び前記ラジカル重合性単量体(B)の合計100質量部に対して、0.001〜5質量部の範囲であることが好ましく、0.01〜3質量部の範囲であることがより好ましい。
【0031】
前記ラジカル重合性樹脂組成物は、前記(A)〜(D)成分を必須に含有するものであるが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0032】
前記その他の添加剤としては、例えば、石油ワックス、顔料、チキソ性付与剤、酸化防止剤、溶剤、充填剤、補強材、難燃剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ラジカル重合性樹脂組成物の優れた表面乾燥性を得る上では、石油ワックスを用いることが好ましい。
【0033】
前記石油ワックスは、ラジカル重合性樹脂組成物の塗膜表面に偏析し、酸素によるラジカル重合の硬化阻害を防止するものであり、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等を用いることができる。これらの石油ワックスは単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、前記石油ワックスの融点としては、42〜73℃の範囲であることが好ましく、46〜66℃の範囲であることがより好ましい。なお、前記石油ワックスの融点は、JISK2235:2009に準拠して測定された値を示す。
【0034】
前記ラジカル重合性樹脂組成物により上塗り層(iv)を形成する方法としては、前記下地(ii)上に、刷毛、金鏝、レーキ等を使用して塗布する方法;スプレー等を使用して散布する方法などが挙げられる。
【0035】
前記ラジカル重合性樹脂組成物の塗布又は散布する量としては、例えば、0.1〜5kg/m
2の範囲である。
【0036】
前記ラジカル重合性樹脂組成物は、常温での硬化性に優れるものであり、前記塗布又は散布後、常温にて、例えば10分〜1時間で硬化する。
【0037】
以上、本発明の土木建築用構造体は、エポキシ樹脂により形成された下地の上にラジカル重合性樹脂組成物による上塗り層を設けても優れた常温硬化性を示すものである。よって、本発明の土木建築用構造体は滑り止め舗装構造体として好適に用いることができるものであり、骨材の脱離抑制効果を向上できるものである。
【0038】
次に、本発明の滑り止め舗装構造体の製造方法について説明する。
【0039】
前記滑り止め舗装構造体の製造方法は、舗道(i)上に、エポキシ樹脂を塗布して下地(ii)を形成し、次いで前記下地(ii)上に骨材(iii)を散布し、更にその上に、ラジカル重合性樹脂(A)、芳香環を有し、芳香環の含有量が40質量%以下であるラジカル重合性単量体(B)、硬化剤(C)、及び、硬化促進剤(D)を含有するラジカル重合性樹脂組成物による上塗り層(iv)を形成することを必須要件とする。
【0040】
前記舗道(i)とは舗装された道路であり、例えば、アスファルト舗道、コンクリート舗道、アスファルトコンクリート舗道、鋼板舗道等を用いることができる。
【0041】
前記舗道(i)上に、前記エポキシ樹脂を用いて下地(ii)を形成する方法としては、例えば、前記エポキシ樹脂を、刷毛、金鏝、レーキ等を使用して舗道(i)上に塗布する方法が挙げられる(例えば、樹脂舗装技術協会「ニート工法 樹脂系すべり止め舗装要領書(2013年度版)」を参照。)。前記エポキシ樹脂の塗布量としては、例えば、0.5〜3kg/m
2の範囲である。
【0042】
前記下地(ii)上に散布する骨材(iii)としては、例えば、砕石、砂利、スラグ、珪砂、セラサンド、セラミック、ガラス、炭化珪素等を用いることができる。前記骨材(iii)の粒径としては、例えば0.01〜5mmの範囲である。
【0043】
前記骨材(iii)を前記下地(ii)上に散布する方法としては、例えば、スコップ、スプレッター等を使用する方法が挙げられる。
【0044】
前記骨材(iii)の散布量としては、例えば、0.5〜10kg/m
2の範囲である。前記散布後には、必要に応じて、前記骨材(iii)の余剰分を回収することが好ましい。
【0045】
前記骨材(iii)の散布後には、前記ラジカル重合性樹脂組成物をスプレー等を使用して散布することにより上塗り層(iv)を形成することができる。
【0046】
前記ラジカル重合性樹脂組成物の散布量としては、例えば、0.1〜5kg/m
2の範囲である。
【0047】
前記ラジカル重合性樹脂組成物は、常温での硬化性に優れるものであり、前記塗布又は散布後、常温にて、例えば10分〜1時間で硬化する。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0049】
[合成例1]エポキシ樹脂(EPO−1)の合成
主剤が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、硬化剤が、オレイルアミン20質量部、メタキシレンジアミンのフェノールとホルムアルデヒドとによる変性物48質量部、キシレン樹脂30質量部、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール2部を混合したものであり、主剤と硬化剤とを質量で等量となるように混合させることでエポキシ樹脂(EPO−1)を得た。
【0050】
[合成例2]エポキシメタクリレート(A−1)の合成
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口及び還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物であるエポキシ当量が185g/eq.であるエポキシ樹脂1,850質量部、メタクリル酸860質量部、ハイドロキノン1.36質量部、及びトリエチルアミン10.8質量部を仕込み、120℃まで昇温させ、同温度で10時間反応させ、酸価3.5mgKOH/gのエポキシメタクリレート(A−1)を得た。
【0051】
[合成例3]ウレタンメタクリレート(A−2)の合成
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口及び還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量:984.2)2,461質量部、トリレンジイソシアネート739.5質量部、イソホロンンジイソシアネート166.8質量部を仕込み、窒素雰囲気下で80℃まで昇温し、3時間反応させ、イソシアネート基当量が697になったところで50℃まで冷却した。その後、トルハイドロキノン0.3質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート657.7質量部を加え、90℃まで再度昇温し、3時間反応させることで、残存イソシアネート基が0.0343質量%のウレタンメタクリレート(A−2)を得た。
【0053】
[実施例
4]
【0054】
[常温硬化性の評価1]
コンクリート舗装板上に、合成例1で得られたエポキシ樹脂(EPO−1)を用いて下
地を作製した。その後、合成例
3で得られた
ウレタンメタクリレート(A−
2)60質量
部、ジシクロペンテニルオキシメタクリレート(以下、「DCPMA」と略記する。)40質量部、ナフテン酸コバルト0.5質量部、p−トルイジンのエチレンオキサイド2モル付加物(以下、「PTD」と略記する。)0.4質量部、過酸化ベンゾイル(以下、「BPO」と略記する。)2質量部、パラフィンワックス0.4質量部を混合したラジカル重合性樹脂組成物を、前記下地上に0.2kg/m2塗布し、JISK5665:2011の8.12「タイヤ付着性」に準拠して、1時間以内に前記ラジカル重合性樹脂組成物が硬化・乾燥しているか確認した。なお、硬化・乾燥している場合は「○」、乾燥していない場合は「×」とし、前記「×」の場合は、後述する[常温硬化性の評価2]を行わなかった。
【0055】
[常温硬化性の評価2]
コンクリート舗装板上に、合成例1で得られたエポキシ樹脂(EPO−1)を用いて下地を作製した。その後、合成例
3で得られた
ウレタンメタクリレート(A−
2)60質量部、DCPMA40質量部、ナフテン酸コバルト0.5質量部、PTD0.4質量部、BPO2質量部、パラフィンワックス0.4質量部を混合したラジカル重合性樹脂組成物を、前記下地上に0.2kg/m2塗布し、JISK5665:2011の8.12「タイヤ付着性」に準拠して、タイヤに前記ラジカル重合性樹脂組成物による塗膜が付着しなくなった時間を測定した。
次に、スレート板上に、前記ラジカル重合性樹脂組成物を、0.2kg/m2塗布し、JISK5665:2011の8.12「タイヤ付着性」に準拠して、タイヤに前記ラジカル重合性樹脂組成物による塗膜が付着しなくなった時間を測定した。
得られた2つの時間から、硬化時間の比(エポキシ樹脂の下地に対する硬化時間/スレート板の下地に対する硬化時間)を算出することで、常温硬化性を評価した。なお、前記硬化時間の比が1を超えて1.3未満である場合には「○」、1.3以上1.4未満である場合には「△」、1.4以上である場合は著しく硬化時間が増加しており使用可能レベルではないため「×」と評価した。
【0056】
[骨材の脱離抑制の評価]
コンクリート舗装板上に、合成例1で得られたエポキシ樹脂(EPO−1)を用いて半
硬化の下地を作製した。次いで、スコップでサラサンドA粒を1kg/m
2で散布し、硬
化後余剰の骨材を回収した。その後、合成例
3で得られた
ウレタンメタクリレート(A−
2)60質量部、DCPMA40質量部、ナフテン酸コバルト0.5質量部、PTD0.4質量部、BPO2質量部、パラフィンワックス0.4質量部を混合したラジカル重合性樹脂組成物を、0.2kg/m
2散布した後養生した。その後、得られた積層体の上で約3tの四輪車で据え切りをハンドル5往復させた後の状態を確認し、下地の露出がないものを「○」、下地の露出があるものを「×」と評価した。
【0057】
[実施例5〜6、比較例1〜4]
用いるラジカル重合性樹脂組成物を表1〜2に示す通りに変更した以外は、実施例
4と
同様にして[常温硬化性の評価1]、[常温硬化性の評価2]、及び、[骨材の脱離抑制の評価]試験を行った。
以上
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
表1〜2中の略語について説明する。
「DCPMA」:ジシクロペンテニルオキシメタクリレート
「PhOHMA」:フェノキシメタクリレート
「BZMA」:ベンジルメタクリレート
「ST」:スチレン
【0061】
本発明の土木建築用構造体は、優れた常温硬化性を示すことが分かった。また、骨材の脱落抑制効果も確認できた。
【0062】
一方、比較例1〜4は、芳香環の含有量が40質量%を超えるラジカル重合性単量体を用いた態様であるが、エポキシ樹脂により形成された下地上では、スレート板上に形成された下地上と比べて、常温硬化性が著しく遅くなった。