(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正テーブルは、さらに、前記血液検体の採取日から分析日までの日数、及び、前記液体検体採取管のキャップの閉めトルクの少なくともいずれかに基づいて作成される、請求項11に記載の血液分析方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自己採血により採取された血液は、血液採血管、及び、血液採血管を包装する包装容器で密閉されて医療機関又は検査機関に郵送され検査が行われる。この時、血液採血管及び包装容器の密閉が充分でないと、郵送時に血液採血管内の液体が蒸発し、精度の高い検査ができていなかった。また、密閉性を高めるため、血液採血管のボトルとキャップをテープで巻くことも考えられるが、血液を取り出す際の作業が煩雑であった。
【0006】
上記の特許文献1においては、チャック部及び熱シールで包装容器を密閉することが記載されているが、熱シールを行うためにはその装置が必要であり、また、チャックを確実に行うかはユーザーに依存するため、密閉性を確実に維持しているとは言い難かった。また、熱シール部を切り取り、チャックを開けるため、採血管の取り出しも容易でなかった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、液体検体採取管を包装する包装容器の密閉性と、液体検体採取管から液体を取り出す取り出し容易性を両立させた包装容器を提供することを目的とする。また、この包装容器を有する血液検査キット、及び、検査キットを用いた血液分析方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を達成するために、本発明に係る包装容器は、液体検体採取管を包装する包装容器であって、袋本体部と舌片部とを有し、袋本体部は、内側の空間を画定する第1面と、第2面と、を備え、一端側に開口部が設けられた包装袋であり、舌片部は、第1面の開口部側から連続して延びて形成され、袋本体部及び舌片部は、外側にアルミ蒸着層を有し、第2面の上に、開口部から離間して設けられた粘着部と、粘着部と開口部との間に、舌片部を開口部側に折る折り返し部と、を有し、舌片部の長さをa、開口部から折り返し部までの長さをb、及び、折り返し部から粘着部までの長さをcとしたとき、以下の関係式を満たす。
【0009】
a<b+c
本発明によれば、包装容器の各部の長さを、上記式を満たすように設計することで、ユーザー(検査対象者)が、液体検体採取管を包装容器内に挿入し、包装容器を折り返して粘着部で接着し、密閉する際に、開口部で折り返す、すなわち、舌片部のみで折り返した場合は、折り返した舌片部が粘着部に届かないことになる。粘着部に、折り返した袋本体部又は舌片部を接着させるためには、袋本体部を折り返す必要があるため、袋本体部を折り返すことで、開口部を確実に密閉することができる。また、包装容器で密閉することができるので、液体検体採取管は、キャップで密閉することで、液体の蒸発を防止することができ、液体検体採取管からの液体検体の取り出しも容易に行うことができる。
【0010】
本発明の一態様は、粘着部は、包装容器の開口方向に幅を有して設けられており、粘着部の幅をdとしたとき、以下の関係式を満たすことが好ましい。
【0011】
c<b<c+d
a+b>c+d
この態様によれば、まず、c<b<c+dの式を満たすことで、折り返し部で袋本体部を折り返した際に、開口部を粘着部に貼り合わせることができる。これにより、開口部を粘着部で確実に封止することができるので、包装容器内を確実に密閉することができる。また、a+b>c+dの式を満たすことで、袋本体部を折り返した際に、舌片部の先端を、粘着部を超えて配置させることができる。したがって、舌片部の先端は、粘着部に貼り付いていないので、舌片部の先端を持って、包装容器の開封を容易に行うことができる。
【0012】
本発明の一態様は、袋本体部の第2面に、袋本体部を折り返し部で折り返した際の舌片部の先端の位置を示す到達位置が示されていることが好ましい。
【0013】
この態様によれば、舌片部の先端の位置を示す到達位置を示すことで、ユーザーが舌片部の先端をこの到達位置に合わせることで、開口部と粘着部の位置を所定の位置に合わせることができる。舌片部の先端を到達位置に合わせた際に、開口部が粘着部で貼り合わさるように設計することで、開口部を粘着部で密閉することができる。
【0014】
本発明の一態様は、袋本体部に、包装容器を密閉する作業手順が示されており、作業手順は、袋本体部を折り返し、開口部を粘着部の位置に貼り付ける手順であることが好ましい。
【0015】
この態様によれば、袋本体部に作業手順を示すことで、取り扱い説明書を読まない検査対象者に対して、包装作業の注意喚起を行うことができる。
【0016】
本発明の一態様は、折り返し部に折り目を有することが好ましい。
【0017】
この態様によれば、折り返し部に折り目を有するため、包装容器で包装する際に、検査対象者が折り返し部で確実に折り返すことができる。したがって、折り返し部で折り返した際に、粘着部の位置で開口部が貼り合わさるように設計することで、開口部を粘着部で密閉することができる。
【0018】
本発明の一態様は、袋本体部の折り返し部に対応する第1面の位置に、折り返し位置が示されていることが好ましい。
【0019】
この態様によれば、第1面に折り返し位置を示すことで、折り返し部で折り返した後においても、第1面に示された折り返し位置で確認しながら包装することができる。
【0020】
本発明の一態様は、舌片部の第1面側に粘着部を有することが好ましい。
【0021】
この態様によれば、舌片部の第1面側に粘着部を有することで、第2面に設けられた粘着部に袋本体部を貼り合わせた後、さらに、袋本体部を折り返して、第1面側の粘着部に貼り合わせることで、包装容器内の密閉を確実に行うことができる。
【0022】
本発明の一態様は、袋本体部の第2面上の開口部と反対側の端部から粘着部までの長さが、液体検体採取管の長手方向の長さより長いことが好ましい。
【0023】
この態様によれば、液体検体採取管を包装容器の開口と反対側の端部まで挿入した際に、粘着部と液体検体採取管が重なることがないので、粘着部を平面の状態で袋本体部又は舌片部と貼り合わせることができるので、隙間なく貼り合わせることができる。
【0024】
本発明の一態様は、開口部から粘着部を挟んで反対側の位置で、袋本体部の側部に、切り欠き部を有することが好ましい。
【0025】
この態様によれば、切り欠き部を設け、切り欠き部から包装容器を開封することで、包装容器内の液体検体採取管の取り出しを容易に行うことができる。
【0026】
本発明の一態様は、包装袋がガセット袋であることが好ましい。
【0027】
この態様によれば、包装袋をガセット袋とすることで、包装容器に厚みをもたせることができる。したがって、液体検体採取管を包装容器にいれた状態においても、粘着部を平面の状態で袋本体部又は舌片部と貼り合わせることができるので、隙間なく貼り合わせることができる。
【0028】
本発明の目的を達成するために、本発明に係る血液検査キットは、血液検体を採取するための血液採取器具と、採取した血液検体を希釈するための希釈液と、希釈された血液検体から血漿成分を回収する分離手段を有する液体検体採取管と、上記記載の包装容器と、を含み、血液中に恒常的に存在する標準成分、又は、希釈液が含有する血液中に存在しない標準成分を用いて血液検体中の対象成分の濃度を分析するための血液検査キットである。
【0029】
本発明の血液検査キットによれば、上記記載の包装容器を用いることで、包装された液体検体採取管内の血液の蒸発を抑えることができるので、高い精度で分析を行うことができる。
【0030】
本発明の目的を達成するために、本発明に係る血液分析方法は、上記記載の血液検査キットを用いる血液分析方法であって、包装容器の密閉状態における血液検体の蒸発率に基づいて補正テーブルを作成し、補正テーブルに基づいて、血液検体の補正パラメータを設定し、血液検体中の対象成分の濃度を補正パラメータにより補正する。
【0031】
本発明によれば、上記記載の包装容器を用いることで、血液の蒸発を抑えることができるため、包装容器の密閉状態に対する血液検体の蒸発率の値を低くすることができ、また、蒸発率のバラツキを小さくすることができる。したがって、補正パラメータを設定し、対象成分の濃度を補正することで、より高い精度で分析することができる。
【0032】
本発明の一態様において、補正テーブルは、さらに、血液検体の採取日から分析日までの日数、及び、液体検体採取管のキャップの閉めトルクの少なくともいずれかに基づいて作成されることが好ましい。
【0033】
この態様は、補正テーブルを作成するパラメータの例を示したものであり、上記のパラメータを用いることで、液体検体採取管内の蒸発量との関係で、精度良く補正を行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の包装用容器によれば、舌片部の長さを、開口部から粘着部までの長さより短くすることで、折り返した舌片部又は袋本体部を粘着部で貼り合わせるためには、袋本体部から折り返す必要がある。したがって、包装容器の袋本体部で折り返すことで、袋本体部の内側の空間の密閉性を高めることができる。包装容器の密閉性を高めることで、液体検体採取管の密閉性が弱くても、液体の蒸発を抑えることができる。このように、液体検体採取管の密閉性を高める必要がないので、シールテープなどを用いる必要がなく、液体検体の取り出しも容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面にしたがって、本発明に係る包装容器、検体検査キット、及び、血液分析方法について説明する。なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。血液中に恒常的に存在する標準成分のことを、外部標準物質又は外部標準ということがある。また、血液中に存在しない標準成分のことを、内部標準物質又は内部標準ということがある。
【0037】
<血液検査キット>
まず、本発明の血液検査キットについて説明する。
図1は、血液検査キットの一例を示す構成図である。
図1に示す血液検査キット600は、封止部材514が設けられたキャップ512、シリンダ510、血液採取器具200、ランセット100、希釈液入りの収容器具400を備える。また、採取した血液を含む液体検体採取管を郵送するために包装する包装容器10を備える。なお、
図1に示す血液検査キット600においては、収容器具400にシリンダ510を挿入し、キャップ512で収容器具400を密閉したものが液体検体採取管となる。
【0038】
キャップ512、シリンダ510、血液採取器具200、ランセット100、収容器具400、及び包装容器10は、ケース602に収納される。血液検査キット600は、図示しない絆創膏、及び消毒布を備えていてもよい。
【0039】
以下、血液検査キット600の各構成について説明する。
【0040】
[収容器具]
図2は、血液検体の希釈物を収容するための収容器具の構成の一例を示す断面図である。
図2に示されるように、収容器具400は、透明な材質の円筒形状の採血容器410を有する。採血容器410の上端側には、外面に螺子部412が形成され、内面に係止部414が突設されている。また、採血容器410の下端部には、下端側に突出する円錐形状の底部416が形成されている。底部416の周囲に円筒形状の脚部418が形成されている。「上」及び「下」とは、脚部418を載置面に設置した状態における「上」及び「下」を意味する。
【0041】
脚部418は、血液の分析検査時に使用するサンプルカップ(不図示)と同一外径を有しており、好ましくは、その下端の対向する位置にそれぞれ鉛直方向にスリット溝420が形成されている。さらに、採血容器410には、
図2に示されているように、所要量、例えば、500mm
3の希釈液422が収容されることが好ましい。
【0042】
図2に示すように、収容器具400を使用前は、採血容器410の上端開口が、キャップ424によりパッキン426を介して密閉されることが好ましい。
【0043】
[血液中に恒常的に存在する標準成分]
血漿成分の希釈倍率の高い希釈血漿の希釈後の対象成分について、希釈前の血液の血漿中に存在する濃度を正確に分析するためには、希釈液中にあらかじめ存在する物質の濃度の変化率から求める方法を採用することができる。また、血液中に恒常的に存在する標準成分を用いて血液検体中の対象成分の濃度を分析する方法を採用することも可能である。より少量の血液から血液成分を分析する場合には、血液中に恒常的に存在する標準成分を用いる方法を採用する場合に、測定誤差の小さい測定が可能となるため好ましい。したがって本発明の血液検査キットとしては、血液中に恒常的に存在する標準成分を用いて血液検体中の対象成分の濃度を分析するための、血液検査キットであることが好ましい態様の一つである。
【0044】
ここで、標準成分を「用いて」とは、標準成分についての標準値(血液中に恒常的に存在する標準成分を用いる場合には、恒常値)に基づき、対象成分の濃度を分析するための希釈倍率を決定する意である。したがって、血液中に恒常的に存在する標準成分を用いて血液検体中の対象成分の濃度を分析する場合には、血液中に恒常的に存在する標準成分の恒常値(標準値)に基づき希釈倍率を決定し、対象成分の濃度を分析することでもある。
【0045】
血液中に恒常的に存在する標準成分は、例えば、ナトリウムイオン、塩化物イオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、総タンパク、及びアルブミン等が挙げられる。血液検体の血清及び血漿中に含まれるこれらの標準成分の濃度は、ナトリウムイオン濃度は、134mmol/Lから146mmol/L(平均値:142mmol/L)、塩化物イオン濃度は、97mmol/Lから107mmol/L(平均値:102mmol/L)、カリウムイオン濃度は、3.2mmol/Lから4.8mmol/L(平均値:4.0mmol/L)、マグネシウムイオン濃度は、0.75mmol/Lから1.0mmol/L(平均値:0.9mmol/L)、カルシウムイオン濃度は、4.2mmol/Lから5.1mmol/L(平均値:4.65mmol/L)、総タンパク濃度は、6.7g/100mlから8.3g/100ml(平均値:7.5g/100mL)、アルブミン濃度は、4.1g/100mLから5.1g/100mL(平均値:4.6g/100mL)である。実施形態では、対象者の痛みを和らげるために採血する血液量が非常に少ない場合における対象成分の測定を可能にするためのものであり、微量の血液を希釈液で希釈した際に、希釈液中に存在する「血液中に恒常的に存在する標準成分」の濃度を精度よく測定する必要がある。希釈倍率が高くなると、もともと血液中に存在する成分の希釈液中の濃度が低下し、希釈倍率によっては濃度測定時に、測定誤差を含む可能性がある。したがって、微量な血液成分を希釈倍率高く希釈したときに、上記標準成分を十分に精度高く検出するためには、微量な血液中に高い濃度で存在する標準成分を測定することが好ましい。本発明では、血液検体中に恒常的に存在する成分の中でも高濃度に存在する、ナトリウムイオン(Na
+)又は塩化物イオン(Cl
−)を用いることが好ましい。さらには、上述の血液中に恒常的に存在する標準成分の中でも血液中に存在する量が一番高いナトリウムイオンを測定することが最も好ましい。ナトリウムイオンは、平均値が標準値(基準範囲の中央値)を表し、その値は、142mmol/Lであり、血漿中の総陽イオンの90モル%以上を占める。
【0046】
[血漿中に存在しない標準成分]
実施形態の好ましい態様の一つは、血液中に存在しない標準成分を用いて血液検体中の対象成分の濃度を分析するための、血液検査キットである。このような血液検査キットは、血液中に恒常的に存在する標準成分とともに、血液中に存在しない標準成分を用いるためのものであってもよく、血液中に恒常的に存在する標準成分を用いずに、血液中に存在しない標準成分を単独で用いるためのものであってもよい。
【0047】
いずれの場合も、血液中に存在しない標準成分は、後述する希釈液に所定の濃度になるように添加して用いることができる。血液中に存在しない標準成分としては、血液検体中に全く含まれないか、若しくは含まれていたとしても極微量である物質を使用することができる。血液中に存在しない標準成分としては、血液検体中の対象成分の測定に干渉を与えない物質、血液検体中の生体酵素の作用を受けて分解しない物質、希釈中で安定な物質、血球膜を透過せず血球中に含まれない物質、緩衝液の保存容器に吸着しない物質、精度良く測定できる検出系が利用できる物質を用いることが好ましい。
【0048】
血液中に存在しない標準成分としては、希釈液に添加した状態で長期間保管しても安定した物質が好ましい。血液中に存在しない標準成分の例としては、グリセロール三リン酸、アルカリ金属としてLi、Rb、Cs、又はFr、そしてアルカリ土類金属としてはSr、Ba、又はRaが挙げられ、Li及びグリセロール三リン酸が好ましい。
【0049】
これらの血液中に存在しない標準成分は、血液希釈後の濃度測定時に第二の試薬を添加することで発色させ、その発色濃度から希釈血液中の濃度を求めることができる。例えば、希釈液に添加したリチウムイオンの測定は、キレート比色法(ハロゲン化ポルフィリンキレート法:パーフルオロ−5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン)を利用して生化学自動分析装置で大量試料を微量の試料で容易に測定できる。
【0050】
[希釈液]
血液検査キットは、採取した血液検体を希釈するための希釈液を含む。希釈液は、血液検査キットが血液中に恒常的に存在する標準成分を用いて、血液検体中の対象成分の濃度を分析するためのものである場合、血液中に恒常的に存在する標準成分を含有しない。「含有しない」とは、「実質的に含有しない」ことを意味する。ここで、「実質的に含有しない」とは、希釈倍率を求める時に使用する恒常性のある物質をまったく含まないか、あるいは含まれていたとしても、血液検体を希釈した後の希釈液の恒常性のある物質の測定に影響を及ぼさない程度の極微量の濃度で含まれる場合を意味する。血液中に恒常的に存在する標準成分として、ナトリウムイオン又は塩化物イオンを用いる場合には、希釈液としては、ナトリウムイオン又は塩化物イオンを実質的に含有しない希釈液を使用する。
【0051】
血液のpHは、健常者では通常pH7.30からpH7.40程度で一定に保たれていることから、対象成分の分解や変性を防止するために、希釈液は、pH6.5からpH8.0の範囲、好ましくはpH7.0からpH7.5の範囲、さらに好ましくはpH7.3からpH7.4の範囲のpH域で緩衝作用を有する緩衝液であることが好ましく、希釈液は、pHの変動を抑える緩衝成分を含有する緩衝液であることが好ましい。
【0052】
従来、緩衝液の種類としては、酢酸緩衝液(Na)、リン酸緩衝液(Na)、クエン酸緩衝液(Na)、ホウ酸緩衝液(Na)、酒石酸緩衝液(Na)、Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン)緩衝液(Cl)、Hepes([2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸])緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(Na)等が知られている。これらの中でpH7.0からpH8.0付近の緩衝液としては、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、Hepes緩衝液が代表的なものである。しかしながら、リン酸緩衝液はリン酸のナトリウム塩が含まれていること、Tris緩衝液は、解離pKaは8.08であるため、pH7.0からpH8.0付近で緩衝能を持たせるためには通常は塩酸と組み合わせて使用されること、Hepesのスルホン酸の解離のpKaは7.55であるが、イオン強度一定での緩衝溶液を調整するため、通常は水酸化ナトリウムと塩化ナトリウムとHEPESの混合物が用いられることから、これらはpHを一定に保つ作用を有する緩衝液としては有用であるが、実施形態において外部標準物質として用いることが好ましい物質であるナトリウムイオンあるいは塩化物イオンを含有するため、血液検査キットが血液中に恒常的に存在する標準成分を用いて血液検体中の対象成分の濃度を分析するためのものである場合、適用は好ましくない。
【0053】
血液検査キットが血液中に恒常的に存在する標準成分を用いて 血液検体中の対象成分の濃度を分析するためのものである場合、用いる緩衝液としては、ナトリウムイオン又は塩化物イオンを含有しない(「含有しない」の意味は、すでに述べたとおりである。)ことが好ましい。このような緩衝液は好ましくは、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、2−エチルアミノエタノール、N−メチル−D−グルカミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミノアルコール化合物、並びにGood’s緩衝液(グッドバッファー)でpKaが7.4付近の緩衝剤であるHEPESとも称する2−[4−(2−ヒドロキシエチル−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸)(pKa=7.55)、TESとも称するN−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(pKa=7.50)、MOPSとも称する3−モルホリノプロパンスルホン酸(pKa=7.20)、及びBESとも称する(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(pKa=7.15)からなる群から選択される緩衝剤を含む希釈液である。上記の中でも、2−アミノー2−メチル−1−プロパノール(AMP)とHEPES、TES、MOPS又はBESとの組み合わせが好ましく、さらに、2−アミノー2−メチル−1−プロパノール(AMP)とHEPESとの組み合わせが最も好ましい。なおpKaは、酸解離定数を表す。
【0054】
上記緩衝液を調製するためには、アミノアルコールとGood‘s緩衝液を1:2から2:1、好ましくは1:1.5から1.5:1、さらに好ましくは1:1の濃度比で混合すればよい。緩衝液の濃度は限定されないが、アミノアルコール又はGood‘s緩衝液の濃度は、0.1mmol/Lから1000mmol/L、好ましくは、1mmol/Lから500mmol/L、さらに好ましくは10mmol/Lから100mmol/Lである。
【0055】
緩衝液中には、分析対象成分を安定に保つことを目的にキレート剤、界面活性剤、抗菌剤、防腐剤、補酵素、糖類等が含有されていてもよい。キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)塩、クエン酸塩、シュウ酸塩等が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤又は非イオン界面活性剤が挙げられる。防腐剤としては、例えば、アジ化ナトリウムや抗生物質等が挙げられる。補酵素としては、ピリドキサールリン酸、マグネシウム、亜鉛等が挙げられる。赤血球安定化剤の糖類としては、マンニトール、デキストロース、オリゴ糖等が挙げられる。特に、抗生物質の添加により、手指採血時に手指表面から一部混入する細菌の増殖を抑えることができ、細菌による生体成分の分解を抑制し、生体成分の安定化を図ることができる。
【0056】
緩衝液はまた、血液中に存在しない標準成分を用いて対象成分を分析するための血液検査キットにおいては、この血液中に存在しない標準成分を含む。後述する内部標準物質を含まず、血液分析の測定系に干渉を与えないことも重要である。
【0057】
全血を希釈するとの観点からは、緩衝液の浸透圧を血液と同等(285mOsm/kg(mOsm/kgは、溶液の水1kgが持つ浸透圧で、イオンのミリモル数をあらわす))又はそれ以上とすることにより血球の溶血を防止することができる。浸透圧は、対象成分の測定、及び血液中に恒常的に存在する標準成分の測定に影響しない塩類、糖類又は緩衝剤等により、等張に調整することができる。緩衝液の浸透圧は、浸透圧計により測定することができる。
【0058】
血液検査として、肝機能、腎機能、メタボリズムなど、特定の臓器、特定の疾患を検査する場合には、臓器や疾患に特有の複数の測定対象成分の情報を入手して、臓器の状態、生活習慣の予測などを行うために、一般的には、複数の測定対象成分の分析が同時に行われる。例えば、肝臓の状態を検査するためには、一般的には、ALT(アラニントランスアミナーゼ)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、γ―GTP(γグルタミルトランスペプチダーゼ)、ALP(アルカリホスファターゼ)、総ビリルビン、総タンパク、アルブミン等、数種類以上もの物質の血液中の濃度が測定される。このように、複数の対象成分をいつの血液検体から測定するためには、再測定の可能性も考慮して、希釈された血液の量はある程度必要となる。したがって、採取した血液を希釈する希釈液は、ある程度の量を確保することが重要である。しかしながら、被検者の侵襲性を少しでも低く抑えることを考慮すると、採血量は微量となるため、希釈倍率は例えば、7倍程度以上の高倍率となる。
【0059】
(血液採取器具)
図3は、血液採取器具200の斜視図である。
図3に示されるように、血液採取器具200は、一方に開口212が画定されているケース210と、開口212の側に着脱自在に保持されるファイバーロッド202とを備える。ケース210は、開口212の側から他方の側に、ファイバーロッド202を収容する先端収容部214、中央部216、フランジ部218、及び、基端収容部220を備える。基端収容部220は、開口222を有し、開口222から押出ロッド240が挿入される。ケース210は、一体成形物であり、開口212と開口222とは貫通する。
【0060】
ファイバーロッド202は、先端収容部214に着脱自在に保持される。先端収容部214には、ファイバーロッド202の空間204に挿通される部材213を備え、これにより、ファイバーロッド202が保持される。中央部216は、ロックレバー300を有する。押出ロッド240には、ロックレバー300のレバー318の先端と係合する開口(不図示)を有し、レバー318のレバー操作部322を移動させることで、レバー318の先端と開口のとの係合が解除され、押出ロッド240を長手方向に移動させることで、ファイバーロッド202を先端収容部214から外すことができる。
【0061】
基端収容部220は、血液採取器具200の軸線方向に沿って、スライド溝228を有し、押出ロッド240に向けられた突起242を、スライド溝228に挿入することで、押出ロッド240が軸線方向を中心に回転することを規制する。
【0062】
血液採取器具200による血液検体の採取は、検査対象者本人が、上述した採血用ランセットを用いて指先などを傷つけて皮膚外にでた血液検体に、血液採取器具200のケース210に保持されるファイバーロッド202を接触させる。ファイバーロッド202の空隙に血液検体が吸収されるので、血液検体をファイバーロッド202に採取することができる。ファイバーロッド202が全体に赤くなったことを確認した時点で、血液検体の採取を終了する。
【0063】
(血液検体の希釈物)
収容器具400の採血容器410からキャップ424を取り外す。採血容器410の上端開口から、血液採取器具200により血液検体を吸収したファイバーロッド202を、希釈液422に投入する。採血容器410の上端開口をキャップ424により密封する。
【0064】
図4に示されるように、採血容器410の上部を持ち、採血容器410を振り子状に数十回振り、ファイバーロッド202から血液検体を希釈液422に放出する。血液検体を希釈液422に溶け込ませることにより、血液検体の希釈物が収容器具400に収容される。
【0065】
希釈液422が全体として赤くなれば、採血容器410を振ることを終える。
【0066】
[分離器具]
血液採取器具200により採取された血液検体は、分析が行われるまで、希釈された状態で、収容器具400の中で長時間経過する可能性がある。その間に、例えば赤血球の溶血が起こると、血球内に存在する物質や酵素などが血漿あるいは血清中に溶出して検査結果に影響を与えたり、溶出したヘモグロビンが有する吸収により、分析対象成分の光学的な吸収などの光情報で分析対象成分量を測定する場合に影響を及ぼす可能性がある。したがって、溶血を防止することが好ましい。そのため、血液検体の希釈物から血漿成分を分離回収するための分離器具を血液検査キットに含む。分離器具の好ましい例は、分離膜である。分離膜は、例えば血液検体の希釈物に圧力を加えることによって、血球成分は分離膜で捕獲し、血漿成分を通過させて、血球を分離して血漿成分を回収するように用いることができる。この場合、抗凝固剤を用いることが好ましい。また、測定の精度を確保するために、分離膜を通過した血漿が血球側へ逆流しないことが好ましく、そのためには具体的には、特開2003−270239号公報に記載の、逆流防止手段をキットの構成要素とすることができる。
【0067】
図5は、分離器具を有する保持器具の一例を示す図である。
図5に示す保持器具500は、
図1に示すキャップ512と、シリンダ510を組み合わせて構成される。シリンダ510は、収容器具400の採血容器410に嵌挿可能である。キャップ512は、収容器具400に螺合可能であり、キャップ512の下端には、シリンダ510内の血漿が採血容器410内に逆流することを防止する封止部材514を備える。
【0068】
シリンダ510は透明な材質製で円筒形状を有している。シリンダ510の上端部542には拡径部516が形成されている。拡径部516は薄肉部518を介して本体部520と接続されている。シリンダ510の下端部には、縮径部522が形成されている。縮径部522の内面には係止突起部524が形成されている。さらに、縮径部522の下端部には外鍔部526が形成されている。外鍔部526の下端開口部は分離器具として機能する濾過膜528により覆われている。濾過膜528は血液中の血漿の通過を許容し、血球の通過を阻止するよう構成される。縮径部522の外周にはシリコンゴム製のカバー530が装着されている。
【0069】
キャップ512は、略円筒形状の摘み部532と、摘み部532と同心で下方に延びる心棒部534とで構成されている。摘み部532の内側上端部にはシリンダ510の拡径部516が嵌合可能な円筒状の空間536が形成され、その下方は螺刻され、螺子に螺合可能となっている。心棒部534はその下端部538がピン状に形成され、下端部538に封止部材514が着脱可能に設けられている。封止部材514はシリコンゴム製である。封止部材514の下端部が外鍔状に形成された略円柱状を成し、外周にわたり段差部540が形成されている。摘み部532は頂部544を有し、頂部544の内面と拡径部516とは接触する。
【0070】
次に、
図6に示されるように、ファイバーロッド202と血液検体の希釈物が収容された採血容器410から、キャップ424、及びパッキン426を採血容器410から取外す。この状態において、キャップ512が取り付けられたシリンダ510を採血容器410内に嵌挿する。
【0071】
次に、
図7に示されるように、摘み部532を螺子部412に螺合させる。最初、摘み部532とシリンダ510とが回転する。採血容器410の係止部414が、シリンダ510の外周面に形成されたストッパ部(不図示)に係止すると、シリンダ510の回転が拘束され、薄肉部518はねじりにより破断する。この結果、シリンダ510は本体部520と拡径部516とに分離される。さらに摘み部532を回転させると、本体部520の上端部542が拡径部516の内側の空間536に入り込む。摘み部532の頂部544の内面によりシリンダ510は下方に押圧されるようになるので、シリンダ510はさらに降下する。
【0072】
シリンダ510の降下に伴い、シリンダ510に保持される濾過膜528は、採血容器410の底部416の側に移動する。その際、濾過膜528を通って血漿がシリンダ510の側に移動し、血球は濾過膜528を通過できずに採血容器410の側に残る。
【0073】
カバー530の外径はシリンダ510の本体部520の外径より大きいので、シリンダ510は採血容器410の内面に密着した状態で降下する。したがって、シリンダ510を採血容器410に嵌挿させる過程で、採血容器410の中の希釈液422が採血容器410とシリンダ510との隙間を通って外部に漏出するおそれはない。
【0074】
摘み部532を最下部まで螺子部412に螺合させると、封止部材514は縮径部522に嵌合する。採血容器410とシリンダ510との間の流路は封止部材514により密閉される。封止部材514は、逆流に起因する血漿と血球の混合を防止する。
【0075】
このようにして、血液から分離された血漿成分を含む液体検体採取管550を包装容器10に入れ、包装容器10の開口部を密閉し、医療機関又は検査機関に郵送する。液体検体採取管550は、収容器具400、シリンダ510、及び、キャップ512の組み合わせに対応する。
【0076】
血液検査キットは、100μL以下の採血量であっても、測定精度よく分析対象成分を分析できる方法を実現可能とするものである。対象者に、100μL以下の少ない採血量でも精度よく測定することが可能であることや、血液採取器具200のファイバーロッド202によりどの程度まで血液検体を採取すべきか、等の情報が記載された取り扱い説明書を含む血液検査キットであることが好ましい。
【0077】
なお、
図5から
図7は、シリンダ510とキャップ512を組み合わせた後、収容器具400に嵌挿する態様で説明したが、これに限定されない。シリンダ510とキャップ512とを別々に組み合わせることで、液体検体採取管550を構成してもよい。まず、シリンダ510を、血液検体を含む収容器具400内に嵌挿し、シリンダ510を収容器具400の下方に押圧することで、シリンダ510を収容器具400内で降下させる。このとき、血漿が濾過膜528を通って、シリンダ510の側に移動する。血液検体から十分な血漿成分をシリンダ510内に移動させたのち、キャップ512を収容器具400と螺合させることで、収容器具400とシリンダ510を密閉する。また、キャップ512に設けられた封止部材514により、採血容器410とシリンダ510との間の流路を密閉する。このようにして、液体検体採取管550を構成してもよい。
【0078】
図8は、
図7に示す液体検体採取管550の外観図である。以下に、この液体検体採取管を包装する包装容器について説明する。
【0079】
<包装容器>
次に、上記の血液検査キット600を用いて血液を採血した液体検体採取管550を包装する包装容器10について説明する。なお、採取する液体として、血液を例に説明するが、本発明においては、血液に限定されず、自分で検体を採取する検査、例えば、尿、鼻水、唾液、便等に適用することができる。また、液体検体採取管550として、収容器具400にシリンダ510を挿入し、キャップ512で収容器具400を密閉したものを液体検体採取管としているが、これに限定されない。例えば、収容器具400に検体を投入し、キャップで密閉した収容器具400を液体検体採取管として包装して検査してもよい。
【0080】
図9は、包装容器の斜視図である。
図10は、包装容器を第2面から見た平面図である。
図11は、
図10において、折り返し部で袋本体部を折り返した図である。
【0081】
図9及び
図10に示すように、包装容器10は、袋本体部12及び舌片部14から構成される。袋本体部12は、液体検体採取管550を収納するための内側の空間を画定する第1面(
図13に符号“16”で示す)及び第2面18を備え、その一端側に開口部20を有する包装袋である。袋本体部12の開口部20以外の端部は、例えば、ヒートシール等で密着されている。また、舌片部14は、第1面16の開口部20側から連続して延びて形成されている。
【0082】
袋本体部12及び舌片部14は、外側にアルミ蒸着層を有する。アルミ蒸着層は、一般的な方法で形成することができ、例えば、巻取り式真空蒸着機を用い、ウエブ状の基材に、1400℃前後に加熱された蒸発源中のアルミニウムを真空度10
−2Pa程度に保持された真空ドラム中で蒸着することで得られる。袋本体部12及び舌片部14の外側にアルミ蒸着層を設けることで、包装容器10内からの水分の蒸発、及び、包装容器10外からの水分の侵入を防止することができる。
【0083】
包装容器を構成する材料としては、アルミ蒸着層を有する多層フィルムとすることができ、アルミ蒸着層以外のフィルムとしては、PE(polyethylene)フィルム、及び、PET(polyethylene terephthalate)フィルムを用いることができる。
【0084】
また、
図10に示すように、第2面18には、折り返した第2面18及び舌片部14とを貼り合わせる粘着部22が開口部20から離間して設けられる。粘着部22は、粘着剤を付与することで、形成される。粘着剤としては、一般的な粘着剤を用いることができ、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、及びシリコーン系樹脂等をベースポリマーとした粘着剤を用いることができる。粘着部22には、通常、剥離可能なシールが貼付されており、使用時にこのシールを剥離することで第2面18及び舌片部14と貼り合わせることができる。
【0085】
また、第2面18には、開口部20と粘着部22との間に折り返し部24を有する。なお、折り返し部24は、検査対象者が、袋本体部12を折り返すことにより決まる位置であり、第2面18に折り返し部24として線などの目印があってもよく、目印がなくてもよい。目印としては、直線、又は、点線等の線を記載してもよく、また、折り目をつけておいてもよい。折り目をつけておくことで、折り返し部24で検査対象者が確実に折り返すので、包装容器10の密閉を確実に行うことができる。
【0086】
包装容器10の各部の長手方向の長さは、次の関係式を満たす。舌片部14の長さ(開口部20から舌片部14の先端までの長さ)をa、開口部20から折り返し部24までの長さをb、折り返し部24から粘着部22までの長さをcとした時、
a<b+c (1)
を満たす。上記式(1)を満たすことで、舌片部14のみ(例えば、開口部20の位置)で折り返した場合、舌片部14が粘着部22まで届かないため、検査対象者は、再度、第1面16と第2面18とを重ねて折り返すことになる。このように、舌片部14のみで折り返すことを防止し、第1面16と第2面18とを重ねて折り返すことで、包装容器10の密閉性を高めることができる。
【0087】
また、粘着部22の幅(包装容器の開口方向の幅)をdとした時、次の関係式を満たすことが好ましい。
【0088】
c<b<c+d (2)
a+b>c+d (3)
上記式(2)を満たすことで、
図11に示すように、舌片部14を折り返し部24で折り返した際に、開口部20を粘着部22の位置とすることができるので、開口部20を確実に密閉することができる。また、式(3)を満たすことで、舌片部14を折り返し部24で折り返した際に、舌片部14の先端を、粘着部22を超えて配置することができる。したがって、包装容器10内の液体検体採取管を取り出す時、舌片部14の先端を持って粘着部22から剥離することで、容易に、液体検体採取管を取り出すことができる。
【0089】
さらに、次の関係式(4)を満たすことで、折り返し部24で折った場合に、開口部20を粘着部22の幅の中央部に配置することができる。したがって、折り返し部24から少しずれた位置で、折り返したとしても、開口部20を粘着部22の上に配置することができる。
【0090】
2(b−c)≒d (4)
長さa、b、c及びdの具体的な数値として、例えば、a=20mm、b=16mm、c=8mm、d=16mmとすることができる。
【0091】
また、第2面18には、袋本体部12を折り返した際に、舌片部14の先端となる位置を示す到達位置26が示されていることが好ましい。このとき、開口部20及び粘着部22の位置は、舌片部14の先端を到達位置26に合わせて折り返した際に、粘着部22に開口部20が配置されるように設計することが好ましい。到達位置26を第2面18に示すことで、開口部20を粘着部22で確実に密閉することができる。
【0092】
袋本体部12には、包装容器10を密閉するための作業手順を示す手順表28が記載されていることが好ましい。
図12は、作業手順が記載された手順表28の一例を示す図である。なお、
図9においては、第2面18に記載されているが、第1面16に記載されていてもよい。手順表28は、袋本体部12に直接記載されていてもよく、シールなどで貼り付けられていてもよい。
【0093】
図12に示す手順表は、
図12における左側から、(1)液体検体採取管550を包装容器10に挿入する図、(2)粘着部22に貼付されたシールは剥がす図、(3)袋本体部12を折り返し、開口部20(折り返した第2面18と舌片部14)と粘着部22とを貼り付ける図、である。袋本体部12に作業の手順表28を記載することで、取り扱い説明書を読まない検査対象者に対しても、包装容器10の包装手順を注意喚起することができる。
【0094】
また、包装容器10内に液体検体採取管550を挿入した際に、粘着部22は、挿入した液体検体採取管550と重ならない位置に配置されていることが好ましい。すなわち、
図10に示すように、第2面18上において、開口部20と反対側の端部32から粘着部22までの長さをfとしたとき、長さfが液体検体採取管550の長手方向の長さより長いことが好ましい。このような構成とすることで、粘着部22に袋本体部12及び舌片部14を貼り合わせる時に、粘着部22を平面状体で貼り合わせることができるので、密着性を高めることができる。なお、本明細書において、「第1面上」及び「第2面上」という場合は、包装容器10の外側の面上のことをいう。
【0095】
さらに、包装容器10は、包装容器10の長手方向において、粘着部22を挟んで開口部20と反対側の位置であり、かつ、袋本体部12の側部34の少なくともいずれか一方に切り欠き部36を有することが好ましい。切り欠き部36は、包装容器10の開封を補助するために設けられ、
図10に示すような三角形状の切り込みを入れる、線状の切り込みを入れる、等を挙げることができる。切り欠き部36を設けることで、切り欠き部36から包装容器10の開封を容易に行うことができ、包装容器10からの液体検体採取管550の取り出しを容易に行うことができる。切り欠き部36としては、切り欠き部36から包装容器10を幅方向に開放することができれば良い。
【0096】
図13は、
図10の状態において、包装容器を第1面から見た平面図である。第1面16上で、第2面18の折り返し部24に対応する位置に折り返し位置40を設けてもよい。袋本体部12を折り返した時に、第1面16が外側となるため、第1面16に折り返し位置40を設けることで、袋本体部12の折り返し位置を目視で確認することができる。したがって、所望の位置で確実に折り返すことができる。
【0097】
また、舌片部14の第1面16側に、粘着剤が付与された粘着部42を設けてもよい。折り返し部24で袋本体部12を折り返すことで、舌片部14の第1面16に設けられた粘着部42が、袋本体部12の第2面18側にくる。さらに、袋本体部12を折り返し、粘着部42と貼り合わせることで、密閉性を向上させることができる。粘着剤としては、第2面18に設けられた粘着部22を形成する粘着剤と同様の粘着剤を用いることができる。
【0098】
図14は、他の実施形態を示す包装容器の斜視図である。
図14に示す包装容器50は、袋本体部52が、内部の空間を画定する第1面16と第2面18と、第1面16及び第2面18の側部に接して設けられた一対のマチ部15、15と、底面部17と、を備えるガセット袋である点が、上記実施形態の包装容器10と異なっている。袋本体部52をガセット袋とすることで、包装容器50に厚みを持たせることができるので、液体検体採取管を挿入することで、包装容器50が膨らみ、粘着部22が波打つことを防止することができる。したがって、粘着部22を平面状体で、袋本体部52及び舌片部54で貼り合わせることができる。
【0099】
本発明の包装容器10、50によれば、包装容器10、50で確実に密閉することができるので、検査での誤差を少なくし、分析の精度を高めることができる。また、包装容器10、50で確実に密閉することができれば、例えば、液体検体採取管でのキャップ512の閉めつけが不十分であったとしても、検体の蒸発を防止することができる。
【0100】
<血液分析方法>
本実施形態の血液検査キットを用いた血液分析方法について説明する。血液分析方法は、検査対象者(患者、被験者)自身が、ランセットを用いて指先などを傷つけて皮膚外にでた血液を採取する自己採血で実施することが好ましい。
【0101】
本分析対象となる生体試料は血液であり、血液とは、血清又は血漿を含む概念である。好ましくは、検査対象者より微量の血液を採取し、緩衝液で希釈した後、フィルタや遠心分離により血球を分離することにより得られた血漿又は血清を用いることができる。血液検体の成分としては、分離手段により血液検体から分離された血漿成分であることが好ましい。血液検体の起源はヒトに限定されず、ヒト以外の動物(非ヒト動物)である哺乳類、鳥類、魚類等であっても良い。ヒト以外の動物としては、例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、クマ、パンダ等が挙げられる。好ましくは、生体試料の起源はヒトである。
【0102】
血液分析方法の第一の態様としては、血液検体中に恒常的に存在する標準成分を用いて、対象成分の濃度の分析を行う。血液検体中に恒常的に存在する標準成分については、上記の説明が、ここでもそのまま当てはまる。
【0103】
検査対象者の血液中における血漿成分の占有率は、容積の比率で約55%であるが、検査対象者の塩分摂取量の変化などで変動する。そのため、実施形態においては、血漿中に恒常的に存在する標準成分の標準値を用いて血漿の希釈倍率を算出し、算出した希釈倍率を用いて血液検体中の血漿中の対象成分の濃度を分析する。希釈倍率を算出する方法としては、血漿の希釈液中の外部標準物質(例えば、ナトリウムイオンなど)の測定値(濃度X)と、血液検体の血漿中に含まれる上記外部標準物質(例えば、ナトリウムイオンなど)の既知濃度値(濃度Y;ナトリウムイオンの場合には142mmol/L)とから、血液検体中の血漿成分の希釈倍率(Y/X)を算出することにより希釈倍率を求めることができる。この希釈倍率を用いて、血漿の希釈液中の対象成分の測定値(濃度Z)を測定し、この測定値に希釈倍率を掛け合わせることにより、実際に血液検体の血漿中に含まれる分析対象成分の濃度[Z×(Y/X)]を測定することが可能となる。
【0104】
ナトリウムイオンなどの濃度は、例えば、炎光光度法、ガラス電極法、滴定法、イオン選択電極法、酵素活性法等により測定することができる。特に好ましい態様において、ナトリウムイオンの測定はβ−ガラクトシダーゼがナトリウムイオンで活性化することを利用し、緩衝液で希釈された試料のナトリウムイオン濃度とガラクトシダーゼ活性が比例関係にあることを利用した酵素的測定法が採用される。
【0105】
また、部材に由来する標準成分の量を規定した血液検査キットが実際に使用されているか、また、血液の希釈と血漿の回収の方法が正常に行われているか確証するためには、血漿中の別の標準成分から独立に希釈倍率を追加的に求めて、その値が上で求めた希釈倍率と一致することを確認することが好ましい。一致するとは、2つの測定値(a,b)において、それらの差のそれらの平均値に対する割合、すなわち|a−b|/{(a+b)/2}×100が、20%以下であることであり、好ましくは10%以下であることであり、より好ましくは5%以下であることである。これにより、血液検体中の対象成分の濃度の分析が正常に行われていることの検証が可能となる。ここで、ナトリウムイオン又は塩化物イオン以外の血漿中に恒常的に存在する標準成分の例としては、総タンパク又はアルブミンから選択されることが好ましく、総タンパクであることがより好ましい。総タンパクの測定法は、ビューレット法や、紫外吸収法、ブレッドフォード法、ローリー法、ビシンコニン酸(Bicinchoninic Acid:BCA)法、蛍光法など公知の方法があり、測定試料の特性や感度、試料量などに応じて適宜使用する方法を選択することができる。
【0106】
血液分析方法の第二の態様としては、血液中に存在しない標準成分を用いて、対象成分の濃度の分析を行う。この場合、血液中に存在しない標準成分を含む希釈液を含む血液検査キットを用いる。
【0107】
血液分析方法の第三の態様としては、血液中に恒常的に存在する標準成分、及び血液中に存在しない標準成分を用いて、対象成分の濃度の分析を行う。2つの標準成分を併用することで、より信頼性の高い分析方法とすることができる。
【0108】
このとき、血液検体の希釈倍率は、血液中に恒常的に存在する標準成分としてナトリウムイオンを、血液中に存在しない標準成分としてリチウムイオンを用い、ナトリウムイオンの測定をβ−ガラクトシダーゼ活性が比例関係にあることを利用した酵素活性法(後述)で行い、リチウムイオンの測定をキレート比色法(後述)で行う場合には、下記式1から4のいずれかの式で算出することができる。
【0110】
上記式において、A、B、C、D、B’及びXは、以下のように定義される。
A : 緩衝液を発色させた際の吸光度
B : 血漿添加後の吸光度変化量
C : 血漿ナトリウム中央値142 mmol/Lの吸光度
D : 血漿希釈後のナトリウムイオン濃度における吸光度
B’: 血漿ナトリウムの吸光度から算出した希釈倍率による、希釈血漿中の血液中に存在しない標準成分の吸光度の補正値
X : 血漿希釈倍数
希釈率を求める際のもう一つの算出方法として、二乗平均法を用いた式5で算出し、希釈液中の分析対象成分の濃度に、式5で算出した希釈率を乗じて血液検体の成分中の対象成分の濃度を分析する態様も好ましい。
【0112】
血液検体の成分中の対象成分の濃度は、希釈液中の対象成分の濃度から、上記希釈倍率に基づいて算出できる。
【0113】
また、本発明の包装容器10、50を用いることで、液体検体採取管550のキャップ512の閉め方による検査対象者の差による影響を小さくすることができるので、キャップ512の閉め方によるバラツキを抑えることができる。したがって、補正パラメータを用いて補正を行うことで、より精度の高い分析を行うことができる。
【0114】
図15は、液体検体採取管のキャップの閉めトルクと、包装容器による保管の有無による7日後の蒸発率を示す表図である。本発明の包装容器10、50で液体検体採取管を保管することで、閉めトルクの強さによる蒸発率の変化を抑えることができる。
【0115】
このように、本実施形態の血液分析方法においては、事前に、
図15に示すような、包装容器の密閉状態における血液検体の蒸発率に基づいた補正テーブルを作成しておき、この補正テーブルに基づいて血液検体の補正パラメータを設定し、検査を行う血液検体中の対象成分の濃度を補正パラメータにより補正することで、精度の高い分析を行うことができる。補正テーブルは、
図15に示すように、液体検体採取管のキャップの閉めトルク、及び、血液検体の採取日から分析日までの日数等に基づいて作成されることが好ましく、少なくともいずれかに基づいて作成されることが好ましい。液体検体採取管のキャップの閉めトルクは、測定して求めても良く、また、液体検体採取管とキャップに目盛りを設け、この目盛りと閉めトルクの関係式を事前に測定して求め、この関係式から目盛りを用いて求めてもよい。
【0116】
本発明の包装容器を用いることで、保管(郵送)による蒸発量を低く抑えることができる。したがって、補正パラメータで実際の蒸発量に近い数値を考慮して、蒸発前の血液検体の成分量の算出も可能となる。
【0117】
本実施形態の分析方法における、分析の対象成分は限定されず、生体試料中に含まれるあらゆる物質が対象となる。例えば臨床診断に用いられる血液中の生化学検査項目、腫瘍マーカーや肝炎のマーカー等各種疾患のマーカー等が挙げられ、タンパク質、糖、脂質、低分子化合物等が挙げられる。また、測定は物質濃度だけでなく、酵素等の活性を有する物質の活性も対象となる。各対象成分の測定は、公知の方法で行うことができる。
【0118】
ナトリウムイオンの測定ではナトリウムイオンにより酵素ガラクトシダーゼは酵素活性が活性化することから、緩衝液で希釈された非常に低濃度ナトリウムイオン(24mmol/L以下)試料を数μLで測定する酵素的測定法が使用できる。この方法は生化学・免疫自動分析装置に適応でき、ナトリウムイオン測定のために別の測定機器を必要としない点で効率性が高く経済的である。