(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記一般式(A1)で表される有機金属錯体及びマグネシウムの存在下においてハロシラン化合物を反応させることを含む質量平均分子量5000以下のポリシラン化合物の製造方法であって、製造される前記ポリシラン化合物が環状ポリシランである、製造方法。
MpLp/q (A1)
(上記一般式(A)中、Mpは、p価の金属カチオンを表し、Lはq価の有機配位子を表し、p及びqは各々独立に1以上の整数を表す。)
前記ポリシラン化合物中のX線光電子分光法により測定される99eV以上104eV以下の結合エネルギー範囲に最大検出ピーク高さを有するスペクトルをピーク分離して求められる下記(1X)及び(2X)のピークの面積の和に対する下記(2X)の比である、下記式(3X)で表される割合が0.4以下である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
(1X)・・・結合エネルギーが99.0eV以上99.5eV以下の範囲に最大ピーク高さを有するピークの面積
(2X)・・・結合エネルギーが100eV以上104eV以下の範囲に最大ピーク高さを有するピークの面積
(3X)・・・(2X)/[(1X)+(2X)]
ポリシラン化合物中のX線光電子分光法により測定される99eV以上104eV以下の結合エネルギー範囲に最大検出ピーク高さを有するスペクトルをピーク分離して求められる下記(1X)及び(2X)のピークの面積の和に対する下記(2X)の比である、下記式(3X)で表される割合が0.4以下であり、前記ポリシラン化合物中の、Zn、Cu又はFeである金属それぞれの含有量が500ppb以下である質量平均分子量300以上2500以下のポリシラン化合物であって、半導体プロセスにおけるギャップフィル材料用のポリシラン化合物。
(1X)・・・結合エネルギーが99.0eV以上99.5eV以下の範囲に最大ピーク高さを有するピークの面積
(2X)・・・結合エネルギーが100eV以上104eV以下の範囲に最大ピーク高さを有するピークの面積
(3X)・・・(2X)/[(1X)+(2X)]
ポリシラン化合物中のX線光電子分光法により測定される99eV以上104eV以下の結合エネルギー範囲に最大検出ピーク高さを有するスペクトルをピーク分離して求められる下記(1X)及び(2X)のピークの面積の和に対する下記(2X)の比である、下記式(3X)で表される割合が0.4以下であり、前記ポリシラン化合物中の、Zn、Cu又はFeである金属それぞれの含有量が500ppb以下である質量平均分子量5000以下の環状ポリシラン化合物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施態様について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施態様に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
また、本明細書において、「〜」は特に断りがなければ以上から以下を表す。
【0012】
<ポリシラン化合物の製造方法>
第1の態様に係るポリシラン化合物の製造方法は、上記一般式(A1)で表される有機金属錯体及びマグネシウムの存在下においてハロシラン化合物を反応させることを含むポリシラン化合物の製造方法である。
第1の態様に係るポリシラン化合物の製造方法によれば、上記一般式(A1)で表される有機金属錯体を用いることにより、残存金属を少なくし得る。
また、製造されるポリシラン化合物の質量平均分子量として5000以下を達成し、ギャップフィル特性も改善し得る。
【0013】
(有機金属錯体)
第1の態様に係るポリシラン化合物の製造方法は、ハロシラン化合物の反応は下記一般式(A1)で表される有機金属錯体の存在下において行う。
M
pL
p/q (A1)
(上記一般式(A1)中、M
pは、p価の金属カチオンを表し、Lはq価の有機配位子を表し、p及びqは各々独立に1以上の整数を表す。)
【0014】
p価の金属カチオンM
pを構成する金属原子としては、鉄、銀、アルミニウム、ビスマス、セリウム、コバルト、銅、ジスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、ガリウム、ガドリニウム、ハフニウム、ホルミウム、インジウム、イリジウム、ランタン、ルテチウム、マンガン、モリブデン、ネオジム、ニッケル、オスミウム、パラジウム、プロメチウム、プラセオジム、白金、レニウム、ロジウム、ルテニウム、サマリウム、スカンジウム、スズ、テルビウム、チタン、ツリウム、バナジウム、クロム、タンタル、イッテルビウム、金、水銀タングステン、イットリウム、亜鉛及びジルコニウムよりなる群から選択される金属が挙げられる。
pとしては、1〜4の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましく、2又は3であることが更に好ましい。
qとしては、1〜4の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましい。
q価の有機配位子Lとしては、アセチルアセトナト等のβ-ジケトナト配位子、オレフィン、共役ケトン、ニトリル、アミン、カルボキシラト配位子、一酸化炭素、ホスフィン、ホスフィナイト、ホスホナイト、ホスファイト等の有機配位子が挙げられる。q価の有機配位子Lはキレート配位子であってもよい。
【0015】
上記有機金属錯体としては、下記一般式(A2)で表される有機金属錯体であることが好ましい。
【化1】
(上記一般式(A2)中、Mは、鉄、銀、アルミニウム、ビスマス、セリウム、コバルト、銅、ジスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、ガリウム、ガドリニウム、ハフニウム、ホルミウム、インジウム、イリジウム、ランタン、ルテチウム、マンガン、モリブデン、ネオジム、ニッケル、オスミウム、パラジウム、プロメチウム、プラセオジム、白金、レニウム、ロジウム、ルテニウム、サマリウム、スカンジウム、スズ、テルビウム、チタン、ツリウム、バナジウム、クロム、タンタル、イッテルビウム、金、水銀タングステン、イットリウム、亜鉛及びジルコニウムよりなる群から選択される金属を表し、R
a1は、各々独立して、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又はアリールオキシアルキル基を表し、R
a2は、水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基又はアラルキル基を表わす。pは1以上の整数を表す。)
【0016】
R
a1及びR
a2で表わされる飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基、2−ドデシルヘキサデシル基、トリアコンチル基、ドトリアコンチル基、テトラコンチル基などの炭素数1〜40の直鎖状または分岐状アルキル基、さらに、これらがハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルコキシ基(下記に記載するものなど)、シリル基(下記に記載するものなど)などの置換基の1種または2種以上で置換されたアルキル基、たとえばクロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル基、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル基、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピル基、トリメチルシリルメチル基など;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基などの炭素数3〜18の単環または2環以上の多環の環状飽和炭化水素基、さらにこれら環状飽和炭化水素基がアルキル基(上記したものなど)、アリール基(上記したものなど)などの置換基の1種または2種以上で置換されたもの、例えば、4−t−ブチルシクロヘキシル基、4−フェニルシクロへキシル基など;または上記環状飽和炭化水素基を有するアルキル基(上記したものなど)、たとえばシクロヘキシルメチル基、アダマンチルエチル基などが挙げられる。
【0017】
R
a1及びR
a2で表わされる不飽和炭化水素基としては、ビニル基、エチニル基、アリル基、1−プロペニル基、プロパルギル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デカニル基、ドデカニル基、オクタデカニル基などの炭素数2〜18の直鎖状または分岐状アルケニル基、アルキニル基、さらに、これらの不飽和炭化水素基が、ハロゲン原子(上記したものなど)、アルコキシ基(下記に記載するものなど)、シリル基(下記に記載するものなど)、アリール基(下記に記載するものなど)の置換基の1種または2種以上で置換されたもの、たとえば、2−トリフルオロメチルエテニル基、2−トリフルオロメチルエチニル基、3−メトキシ−1−プロペニル基、3−メトキシ−1−プロピニル基、2−トリメチルシリルエテニル基、2−トリメチルシリルエチニル基、2−フェニルエテニル基、2−フェニルエチニル基など;シクロプロペニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基などの炭素数3〜18の環状不飽和炭化水素基;上記環状不飽和炭化水素基を有するアルキル基(上記したものなど)、たとえばシクロヘキセニルエチル基などが挙げられる。
【0018】
R
a1及びR
a2で表わされる芳香族炭化水素基としては、フェニル基、および、トリル基、ブチルフェニル基、ブトキシフェニル基などのアルキル基、アルコキシ基、アミノ基などの1種または2種以上で置換された置換フェニル基などが挙げられる。
【0019】
R
a1及びR
a2で表わされるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、ブチルフェネチル基、フェニルプロピル基、メトキシフェニルプロピル基などが挙げられ、ヘテロアラルキル基としては、ピリジルメチル基、ピリジルエチル基などが挙げられる。
【0020】
R
a1で表わされるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基などの炭素数1〜18のアルコキシ基が挙げられ、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、およびトリルオキシ基、ブチルフェノキシ基などアルキル基などの置換基で置換された置換フェノキシ基などが挙げられる。
【0021】
R
a1で表わされるアラルキルオキシ基としては、ベンジロキシ基、フェネチロキシ基などが挙げられ、アリールオキシアルキル基としては、フェノキシプロピル基、フェノキシブチル基などが挙げられる。
【0022】
R
a1として好ましいものは、炭素数が1〜30の飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基などであり、さらに好ましいものは、炭素数が1〜15のアルキル基、フェニル基などであり、特に好ましいものは、メチル基である。
【0023】
R
a2として好ましいものは、水素原子、炭素数が1〜18の飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基などであり、さらに好ましいものは、水素原子、炭素数が1〜10のアルキル基、フェニル基、フェニルエチル基などであり、特に好ましいものは、水素原子である。
R
a1はメチル基を表し、R
a2は水素原子を表すことが好ましい。
pの好ましい例としては上述の通りである。
【0024】
金属錯体としては、上記の金属MとR
a1及びR
a2の組み合わせにより種々の金属錯体が挙げられる。具体例を例示すると、アセチルアセトナト銀(I)、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)アルミニウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ビスマス(III)、トリス(アセチルアセトナト)セリウム(III)、ビス(アセチルアセトナト)コバルト(II)、トリス(アセチルアセトナト)コバルト(III)、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)コバルト(III)、トリス(3−メチル−2,4−ペンタンジオナト)コバルト(III)、トリス(3−フェニル−2,4−ペンタンジオナト)コバルト(III)、トリス(3−(1−フェニルエチル)−2,4−ペンタンジオナト)コバルト(III)、ビス(ベンゾイルアセトン)コバルト(II)ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)コバルト(II)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)コバルト(III)、ビス(アセチルアセトナト)銅(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオナト)銅(II)、トリス(2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオナト)コバルト(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−(1−フェニルエチル)−3,5−ヘプタンジオナト)コバルト(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−フェニル−3,5−ヘプタンジオナト)コバルト(III)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)銅(II)、ビス(トリフルオロアセチルアセトナト)銅(II)、トリス(アセチルアセトナト)ジスプロシウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)エルビウム(III)、トリス(2,2,6,6,−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)エルビウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)ユーロピウム(III)、ビス(アセチルアセトナト)鉄(II)、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)鉄(III)、トリス(3−メチル−2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)、トリス(3−フェニル−2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)、トリス(3−(1−フェニルエチル)−2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)鉄(III)、トリス(2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオナト)鉄(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−(1−フェニルエチル)−3,5−ヘプタンジオナト)鉄(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−フェニル−3,5−ヘプタンジオナト)鉄(III)、テトラキス(アセチルアセトナト)ハフニウム(IV)、トリス(アセチルアセトナト)ガリウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)ガドリニウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)ホルミウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)ランタン(III)、トリス(アセチルアセトナト)ルテチウム(III)、ビス(アセチルアセトナト)マンガン(II)、トリス(アセチルアセトナト)マンガン(III)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)マンガン(II)、ビス(アセチルアセトナト)ジオキソモリブデン(IV)、トリス(アセチルアセトナト)ネオジム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオナト)ネオジム(III)、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオナト)ニッケル(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ニッケル(II)、ビス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)ニッケル(II)、ビス(3−メチル−2,4−ペンタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(3−フェニル−2,4−ペンタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(3−(1−フェニルエチル)−2,4−ペンタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−(1−フェニルエチル)−3,5−ヘプタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−フェニル−3,5−ヘプタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)パラジウム(II)、ビス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)パラジウム(II)、ビス(3−メチル−2,4−ペンタンジオナト)パラジウム(II)、ビス(3−フェニル−2,4−ペンタンジオナト)パラジウム(II)、ビス(3−(1−フェニルエチル)−2,4−ペンタンジオナト)パラジウム(II)、ビス(2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオナト)パラジウム(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−(1−フェニルエチル)−3,5−ヘプタンジオナト)パラジウム(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−フェニル−3,5−ヘプタンジオナト)パラジウム(II)、トリス(アセチルアセトナト)プロメチウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)プラセオジム(III)、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)プラセオジム(III)、ビス(アセチルアセトナト)白金(II)、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)スカンジウム(III)、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)スカンジウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオナト)スカンジウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)サマリウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)サマリウム(III)、ビス(アセチルアセトナト)スズ(II)、トリス(アセチルアセトナト)テルビウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)テルビウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ツリウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)バナジウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)イットリウム(III)、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)イットリウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)イットリウム(III)、ビス(アセチルアセトナト)亜鉛(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)亜鉛(II)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)亜鉛(II)、テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム(IV)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ジルコニウム(IV)、テトラキス(トリフルオロアセチルアセトナト)ジルコニウム(IV)などが挙げられる。
これら有機金属錯体は、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。有機金属錯体として、あらかじめ合成した金属錯体を使用してもよく、系中で製造したものを使用してもよい。
【0025】
上記有機金属錯体の使用量は、ハロシラン化合物に対して、0.0001〜10モル倍の範囲が好ましく、より好ましくは0.0005〜1モル倍の範囲、特に好ましくは0.001〜0.1モル倍の範囲である。
【0026】
(マグネシウム)
第1の態様に係るポリシラン化合物の製造方法において、ハロシラン化合物の反応はマグネシウムの存在下において行う。
マグネシウムはハロシラン化合物を脱ハロゲン縮重合させる還元剤として機能し得る(「マグネシウム還元法」、WO98/29476号公報、特開2003−277507号公報に記載の方法など)。
マグネシウムとしては、金属マグネシウム(マグネシウム単体)の形態、マグネシウム合金の形態であってもよく、これらの混合物などであってもよい(以下、単に「マグネシウム成分」ともいう。)。
マグネシウム合金の種類は特に制限されず、慣用のマグネシウム合金、例えば、アルミニウム、亜鉛、希土類元素(スカンジウム、イットリウムなど)などの成分を含むマグネシウム合金が例示できる。
マグネシウム成分の形状としては、ハロシラン化合物の反応を損なわない限り特に限定されないが、粉粒状(粉体、粒状体など)、リボン状体、切削片状体、塊状体、棒状体、板状体(平板状など)などが例示され、特に、粉体、粒状体、リボン状体、切削片状体などであることが好ましい。マグネシウム(例えば、粉粒状のマグネシウム)の平均粒径は、例えば、1〜10000μm、好ましくは10〜7000μm、さらに好ましくは15〜5000μm(例えば、20〜3000μm)であってもよい。
上記マグネシウム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
マグネシウム成分の使用量は、ハロシラン化合物のハロゲン原子に対して、マグネシウム換算で、1〜20当量であることが好ましく、1.1〜14当量であることがより好ましく、1.2〜10当量であることが更に好ましく、1.2〜5当量であることが特に好ましい。
また、マグネシウムの使用量は、ハロシラン化合物に対してモル数でマグネシウムとして1〜20倍であることが好ましく、1.1〜14倍であることがより好ましく、1.2〜10倍であることが更に好ましく、1.2〜5倍であることが特に好ましい。
【0028】
(ハロシラン化合物)
第1の態様に係るポリシラン化合物の製造方法において、ハロシラン化合物としては下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
X
nSiR
4−n (1)
(式中、nは2〜4の整数であり、n個のXは、各々独立に、ハロゲン原子であり、(4−n)個のRは、各々独立に、水素原子、有機基又はシリル基である。)
【0029】
Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられ、塩素原子又は臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0030】
Rで表される有機基としては、アルキル基[メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル及びt−ブチル基などの炭素原子数1〜10のアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基、特に炭素数1〜4のアルキル基など)]、シクロアルキル基(シクロヘキシル基などの炭素原子数5〜8のシクロアルキル基、特に炭素原子数5〜6のシクロアルキル基)、アルケニル基[エテニル基、プロペニル基、ブテニル基などの炭素原子数2〜10のアルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜6のアルケニル基、特に炭素数2〜4のアルケニル基など)]、シクロアルケニル基[1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の炭素原子数5〜10のシクロアルケニル基(好ましくは炭素原子数5〜8のシクロアルケニル基、特に炭素数5〜7のシクロアルケニル基など)]、アリール基(フェニル、ナフチル基などの炭素原子数6〜10のアリール基、)、アラルキル基[ベンジル、フェネチル基などのC
6−10アリール−C
1−6アルキル基(C
6−10アリール−C
1−4アルキル基など)]、アミノ基、N−置換アミノ基(上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基などで置換されたN−モノ又はジ置換アミノ基など)などが挙げられる。上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を構成するアリール基などは、1又は複数の置換基を有していてもよい。このような置換基としては、上記例示のアルキル基(特に炭素原子数1〜6のアルキル基など)などが挙げられる。このような置換基を有する有機基としては、例えば、トリル基(メチルフェニル基)、キシレニル基(2,6−ジメチルフェニル基)、エチルフェニル基、メチルナフチル基などのC
1−6アルキル−C
6−10アリール基(好ましくはモノ、ジ又はトリC
1−4アルキル−C
6−10アリール基、特にモノ又はジC
1−4アルキルフェニル基など)などが挙げられる。
【0031】
シリル基は、上記アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基及びアルコキシ基などで置換された置換シリル基が挙げられる。
【0032】
nが2の場合(ジハロシラン化合物)において、Rとしては、アルキル基、アリール基などの炭化水素基が好ましい。
【0033】
代表的なジハロシラン化合物としては、例えば、ジアルキルジハロシラン(ジメチルジクロロシランなどのジC
1−10アルキルジハロシラン、好ましくはジC
1−6アルキルジハロシラン、さらに好ましくはジC
1−4アルキルジハロシランなど)、モノアルキルモノアリールジハロシラン(メチルフェニルジクロロシランなどのモノC
1−10アルキルモノC
6−12アリールジハロシラン、好ましくはモノC
1−6アルキルモノC6−10アリールジハロシラン、さらに好ましくはモノC
1−4アルキルモノC
6−8アリールジハロシランなど)、ジアリールジハロシラン(ジフェニルジクロロシランなどのジC
6−12アリールジハロシラン、好ましくはジC
6−10アリールジハロシラン、さらに好ましくはジC
6−8アリールジハロシランなど)などが挙げられる。ジハロシラン化合物としてはジアルキルジハロシラン又はモノアルキルモノアリールジハロシランが好ましい。ジハロシラン化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0034】
nが3の場合(トリハロシラン化合物)において、Rとしては、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、アラルキル基などの炭化水素基が好ましく、特にアルキル基又はアリール基が好ましい。
【0035】
代表的なトリハロシラン化合物としては、アルキルトリハロシラン(メチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、t−ブチルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシランなどのC
1−10アルキルトリハロシラン、好ましくはC
1−6アルキルトリハロシラン、さらに好ましくはC
1−4アルキルトリハロシランなど)、シクロアルキルトリハロシラン(シクロヘキシルトリハロシランなどのモノC
6−10シクロアルキルトリハロシランなど)、アリールトリハロシラン(フェニルトリクロロシラン、トリルトリクロロシラン、キシリルトリクロロシランなどのC
6−12アリールトリハロシラン、好ましくはC
6−10アリールトリハロシラン、さらに好ましくはC
6−8アリールトリハロシランなど)などが挙げられる。トリハロシラン化合物には、アルキルトリハロシラン又はアリールトリハロシランが好ましい。
トリハロシラン化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0036】
nが4の場合(テトラハロシラン化合物)の具体例としては、例えば、テトラクロロシラン、ジブロモジクロロシラン、テトラブロモシランなどが挙げられる。テトラハロシラン化合物は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
なお、テトラハロシラン化合物は、モノ、ジ又はトリハロシラン化合物と組み合わせて使用することが好ましい。
【0037】
また、ハロシラン化合物としてはモノハロシラン化合物であってもよい。代表的なモノハロシランとしては、例えば、トリアルキルモノハロシラン(トリメチルクロロシランなどのトリC
1−10アルキルモノハロシラン、好ましくはトリC
1−6アルキルモノハロシラン、さらに好ましくはトリC
1−4アルキルモノハロシランなど)、ジアルキルモノアリールモノハロシラン(ジメチルフェニルクロロシランなどのジC
1−10アルキルモノC
6−12アリールモノハロシラン、好ましくはジC
1−6アルキルモノC
6−10アリールモノハロシラン、さらに好ましくはジC
1−4アルキルモノC
6−8アリールモノハロシランなど)、モノアルキルジアリールモノハロシラン(メチルジフェニルクロロシランなどのモノC
1−10アルキルジC
6−12アリールモノハロシラン、好ましくはモノC
1−6アルキルジC
6−10アリールモノハロシラン、さらに好ましくはモノC
1−4アルキルジC
6−8アリールモノハロシランなど)、トリアリールモノハロシラン(トリフェニルクロロシランなどのトリC
6−12アリールモノハロシラン、好ましくはトリC
6−10アリールモノハロシラン、さらに好ましくはトリC
6−8アリールモノハロシランなど)などが挙げられる。モノハロシラン化合物は、単独で又は二種以上組合せて使用できる。
【0038】
これらのハロシラン化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0039】
ハロシラン化合物は、ジハロシラン化合物及びトリハロシラン化合物から選択された少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
【0040】
なお、ハロシラン化合物が、トリハロシラン化合物及び/又はテトラハロシラン化合物を含む場合、ネットワーク状(網目状又は分岐鎖状)のポリシラン化合物を生成し得る。ネットワーク状のポリシラン化合物を得る場合、代表的なハロシラン(又はその組み合わせ)としては、(a)アルキルトリハロシラン(例えば、アルキルトリハロシラン単独、メチルトリハロシランとC
2−10アルキルトリハロシランとの組み合わせ、C
2−10アルキルトリハロシランなど)、(b)アリールトリハロシラン(例えば、アリールトリハロシラン単独)、(c)アリールトリハロシランとジハロシラン(例えば、モノアルキルモノアリールジハロシランなど)との組み合わせなどが挙げられる。
【0041】
ハロシラン化合物において、ジハロシラン化合物及びトリハロシラン化合物から選択された少なくとも1種の割合(使用割合)は、ハロシラン全体に対して、50モル%以上(例えば、60モル%以上)、好ましくは70モル%以上(例えば、80モル%以上)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば、95モル%以上)であってもよい。
【0042】
なお、ネットワーク状のポリシランを得る場合などにおいて、トリハロシラン化合物の割合(使用割合)は、ハロシラン化合物全体の30モル%以上(例えば、40モル%以上)、好ましくは50モル%以上(例えば、60モル%以上)、さらに好ましくは70モル%以上(例えば、75モル%以上)、特に80モル%以上であってもよい。
【0043】
また、ジハロシラン化合物とトリハロシラン化合物とを組み合わせる場合、これらの割合は、前者/後者(モル比)=99/1〜1/99、好ましくは90/10〜2/98(例えば、85/15〜2/98)、さらに好ましくは80/20〜3/97(例えば、70/30〜4/96)、特に60/40〜5/95(例えば、50/50〜7/93)であってもよく、通常50/50〜5/95(例えば、45/55〜7/93、好ましくは40/60〜10/90、さらに好ましくは30/70〜88/12)であってもよい。
【0044】
ハロシラン化合物は、できるだけ高純度であることが好ましい。例えば、液体のハロシラン化合物については、水素化カルシウムなどの乾燥剤を用いて乾燥し、蒸留して使用することが好ましく、固体のハロシラン化合物については、再結晶法などにより、精製して使用することが好ましい。
【0045】
なお、原料混合物(反応液)中のハロシラン化合物の濃度(基質濃度)は、例えば、0.05〜20mol/l程度、好ましくは0.1〜15mol/l程度、さらに好ましくは0.2〜5mol/l程度であってもよい。
【0046】
(金属ハロゲン化物)
第1の態様に係るポリシラン化合物の製造方法は、上記有機金属錯体及びマグネシウムとともに、更に金属ハロゲン化物の存在下において上記ハロシラン化合物を反応させてもよい。
金属ハロゲン化物としては、多価金属ハロゲン化物、例えば、遷移金属(例えば、サマリウムなどの周期表3A族元素、チタンなどの周期表4A族元素、バナジウムなどの周期表5A族元素、鉄、ニッケル、コバルト、パラジウムなどの周期表8族元素、銅などの周期表1B族元素、亜鉛などの周期表2B族元素など)、周期表3B族金属(アルミニウムなど)、周期表4B族金属(スズなど)などの金属のハロゲン化物(塩化物、臭化物又はヨウ化物など)が挙げられる。金属ハロゲン化物を構成する上記金属の価数は、特に制限されないが、好ましくは2〜4価、特に2又は3価である。これらの金属ハロゲン化物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0047】
金属ハロゲン化物としては、鉄、アルミニウム、亜鉛、銅、スズ、ニッケル、コバルト、バナジウム、チタン、パラジウム、サマリウムなどから選択された少なくとも一種の金属の塩化物又は臭化物が好ましい。
【0048】
このような金属ハロゲン化物としては、例えば、塩化物(FeCl
2、FeCl
3などの塩化鉄;AlCl
3、ZnCl
2、SnCl
2、CoCl
2、VCl
2、TiCl
4、PdCl
2、SmCl
2など)、臭化物(FeBr
2、FeBr
3などの臭化鉄など)、ヨウ化物(SmI
2など)などが例示できる。これらの金属ハロゲン化物のうち、塩化物(例えば、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)などの塩化鉄、塩化亜鉛など)及び臭化物が好ましい。通常、塩化鉄及び/又は塩化亜鉛、特に塩化亜鉛などが使用される。
【0049】
金属ハロゲン化物の使用量としては、ハロシラン化合物に対して、0.001〜10モル倍の範囲が好ましく、より好ましくは0.001〜1モル倍の範囲、特に好ましくは0.001〜0.1モル倍の範囲である。
【0050】
また、反応液中の金属ハロゲン化物の濃度は、通常、0.001〜6モル/L程度であり、好ましくは0.005〜4モル/L、さらに好ましくは0.01〜3モル/L程度であってもよい。
【0051】
(非プロトン性溶媒)
第1の態様に係るポリシラン化合物の製造方法におけるハロシラン化合物の反応は、溶媒(反応溶媒)中で行うことが好ましく、非プロトン性溶媒中で行うことがより好ましい。
溶媒(反応溶媒)としての非プロトン性溶媒には、例えば、エーテル類(1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテルなどの環状又は鎖状C
4−6エーテル)、カーボネート類(プロピレンカーボネートなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、シクロオクタンなどの鎖状又は環状炭化水素類)などが含まれる。
【0052】
これらの非プロトン性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて混合溶媒として使用できる。これらの溶媒のうち、少なくとも極性溶媒[例えば、エーテル類[例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,4−ジオキサンなど(特に、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)]]を使用することが好ましい。極性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよく、極性溶媒と非極性溶媒とを組み合わせてもよい。
【0053】
第1の態様に係るポリシラン化合物の製造方法において、塩基、及び酸よりなる群から選択される少なくとも1種を含む水溶液に、上記反応後の液(反応液)を接触させて精製することにより上記ポリシラン化合物を得ることを更に含むことが好ましい。
上記ポリシラン化合物を塩基又は酸に接触させて精製処理することにより、ハロゲン原子(例えば、ハロゲンイオン(塩化物イオン等)、ポリシラン化合物中に残存するSi−Cl)等の夾雑物を除去することができ、また、ポリシラン化合物の低分子量化を促進することができ、上記ポリシラン化合物の溶剤溶解性を向上することができる。
また、酸は、上記ハロシラン化合物の反応のクエンチャーとしても機能し得る。
また、上記ポリシラン化合物を下記金属ハロゲン化物に接触させて精製処理することにより、ポリシラン化合物中に残存する金属原子(例えば、Mg、Zn、Cu、Fe等)を除去することができる。
処理温度は−50℃〜溶媒の沸点程度が好ましく、室温〜100℃がさらに好ましい。
【0054】
また、使用する塩基としては塩基性を呈する化合物であれば種々用いることができるが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等の無機塩基類、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、塩化メチルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム等のアルキル金属類、Cr、Ga、Fe(Fe(II)、Fe(III))、Cd、Co、Ni、Sn、Pb、Cu(Cu(II)、Cu(I))、Ag、Pd、Pt、Auなどの金属(又は金属イオン)で構成される金属ハロゲン化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等のアルコキシド類、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)等の有機塩基類を用いることができる。反応温度は−50℃〜溶媒の沸点程度が好ましく、室温〜100℃がさらに好ましい。
使用する酸としては種々用いることができるが、塩化水素等の無機酸を用いることができる。
【0055】
ここで、上記塩基又は酸処理に用いる溶剤としては種々用いることができるが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール系溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0056】
また、環状骨格含アセテート化合物も上記塩基又は酸処理に用いる溶剤として好ましく用いることができる。
環状骨格含アセテート化合物としては、本発明の効果を損なわない環状骨格を有するアセテート系溶剤である限り特に制限はないが、下記式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートであることが好ましい。
【化2】
(式(S1)中、R
s1は、それぞれ独立に、アルキル基であり、pは1〜6の整数であり、qは0〜(p+1)の整数である。)
R
s1で表されるアルキル基としては炭素原子数1〜3のアルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基が挙げられる。
【0057】
式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートの具体例としては、シクロプロピルアセテート、シクロブチルアセテート、シクロペンチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、シクロヘプチルアセテート、及びシクロオクチルアセテートが挙げられる。
これらの中では、入手容易性等の観点から、シクロヘキシルアセテートが好ましい。
【0058】
第1の態様に係るポリシラン化合物の製造方法によれば、ポリシラン化合物を収率50%以上で得ることができ、収率70%以上であることが好ましい。
【0059】
<ポリシラン化合物>
第1の態様に係るポリシラン化合物の製造方法によれば、質量平均分子量(Mw)5000以下のポリシラン化合物が製造することができる。
本明細書において質量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算による測定値である。
上記ポリシラン化合物のMwとしては、ギャップフィル性の観点から、4000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、2500以下であることが更に好ましい。
上記ポリシラン化合物のMwの下限値としては本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、300以上であることが好ましく、400以上であることがより好ましく、500以上であることが更に好ましく、600以上であることが特に好ましく、700以上であることが最も好ましい。
【0060】
第1の態様に係るポリシラン化合物の製造方法によれば、直鎖状ポリシラン、分岐状ポリシラン及び環状ポリシランよりなる群から選択される少なくとも1種のポリシラン化合物を製造することができる。特に、環状ポリシラン化合物を選択的に製造することもできる。
環状ポリシラン化合物は、化学構造及び化学性質上、好ましくはMw5000以下のポリシラン化合物となり得る。
上記ポリシラン化合物としては、例えば、Si原子数3〜40のポリシラン化合物が挙げられ、Si原子数5〜30のポリシラン化合物であることが好ましい。
上記ポリシラン化合物は、下記一般式(T−1)及び(T−2)で表されるポリシラン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
(R
t10R
t11R
t12Si)
t1(R
t13R
t14Si)
t2(R
t15Si)
t3(Si)
t4 (T−1)
(上記一般式中、R
t10、R
t11、R
t12、R
t13、R
t14及びR
t15は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基又は有機基である。t1、t2、t3及びt4は、それぞれ独立に、モル分率であり、t1+t2+t3+t4=1、0≦t1≦1、0≦t2≦1、0≦t3≦1及び0≦t4≦1である。)
【化3】
(上記一般式(T−2)中、R
t16及びR
t17は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基又は有機基を表す。Uは3〜20の整数を表す。)、
R
t10〜R
t17で表される有機基としては、Rで表される有機基として前述した具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。
R
t10〜R
t17で表される有機基としては、例えば、特開2003−261681号公報段落0031に記載の方法により任意の有機基を導入することもできる。
【0061】
第2の態様に係るポリシラン化合物は、ポリシラン化合物中のX線光電子分光法により測定したシロキサン結合(Si−O)の下記式で表される割合が0.5以下であることが好ましい。
【0062】
第1の態様に係るポリシラン化合物の製造方法によれば、上記ポリシラン化合物中のX線光電子分光法により測定される99eV以上104eV以下の結合エネルギー範囲に最大検出ピーク高さを有するスペクトルをピーク分離して求められる下記(1X)及び(2X)のピークの面積の和に対する下記(2X)の比である、下記式(3X)で表される割合を0.4以下とすることができ、0.35以下であることが好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましく、0.1以下であることが特に好ましく、0.05以下であることが最も好ましい。
(1X)・・・結合エネルギーが99.0eV以上99.5eV以下の範囲に最大ピーク高さを有するピークの面積
(2X)・・・結合エネルギーが100eV以上104eV以下の範囲に最大ピーク高さを有するピークの面積
(3X)・・・(2X)/[(1X)+(2X)]
【0063】
ピークの強度(Intensity)を測定し、上記(1X)及び(2X)の各結合エネルギー範囲でピーク分離して求められるピークの面積について、(2X)の結合エネルギーが100eV以上104eV以下の範囲に最大ピーク高さを有するピークの面積から、Si−O及びSi−Cの含有割合がわかる。また、(1X)の結合エネルギーが99.0eV以上99.5eV以下の範囲に最大ピーク高さを有するピークの面積から、Si−Siの含有割合がわかる。
【0064】
ポリシラン化合物がSi−Cだけでなく、Si−Oを含む場合、100eV以上104eV以下の範囲にはピーク分離後、2つの最大ピーク高さを有するピークが重なって表れるが、第2の態様に係るポリシラン化合物は、100eV以上104eV以下の範囲にはピーク分離後、1つの最大ピーク高さを有するピークしか現れないことが好ましく、理想的には1つのピークしか現れないことから、実質的にSi−O結合は含まれないと考えられる。
また、従来のポリシラン化合物がSi−Cだけでなく、Si−Oを含む場合、100eV以上104eV以下の範囲にはピーク分離後、最大ピーク高さを有するピークが2つ重なって表れるため面積比が大きくなるため、上記式で表される割合が0.4を超える。
【0065】
第1の態様に係るポリシラン化合物の製造方法によれば、上記有機金属錯体がハロゲン原子を含むものではないことから、シロキサン結合、シラノール基等の副反応物の生成を抑制することができ、ポリシラン化合物中のシロキサン結合(Si−O)の存在量を低減することができ、マイクロクラック発生抑制等の膜の性能を向上することができる。
【0066】
第1の態様に係るポリシラン化合物の製造方法によれば、ポリシラン化合物中の残存金属の含有量を低減することができ、ポリシラン化合物中の金属の含有量を500ppb以下とすることができ、400ppb以下であることが好ましく、100ppb以下であることがより好ましく、50ppb以下であることが更に好ましく、10ppb以下であることが特に好ましい。
上記範囲内とすることにより、上記ポリシラン化合物を含む膜等の光電子材料としての性能低下を防ぐことができる。
【0067】
<組成物>
第3の態様に係る組成物は、第2の態様のポリシラン化合物を含む組成物である。
また、第3の態様に係る組成物は熱硬化性組成物であってもよいし、熱硬化性組成物ではなくてもよい。
また、第3の態様に係る組成物は感放射線性組成物であってもよいし感放射線性組成物ではなくてもよく、露光により現像液に対して可溶化するポジ型の感放射線性組成物であってもよいし、露光により現像液に対して不溶化するネガ型の感放射線性組成物であってもよい。
上記放射線の光源としては、紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯等の紫外線を発する光源等が挙げられる。
【0068】
(溶剤)
第3の態様に係る組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては、上記環状骨格含アセテート化合物、
メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−アミルケトン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;
γ−ブチロラクトン等のラクトン環含有有機溶媒;
エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、上記多価アルコール類又は上記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体;
ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;
アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤;
N,N,N’,N’−テトラメチルウレア、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等の窒素含有有機溶媒;
が挙げられる。
【0069】
中でも、上記環状骨格含アセテート化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア(TMU)、及びブタノールが好ましい。
これらの溶剤は、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0070】
第3の態様に係る組成物が、マイクロクラックを抑制する点又は誘電率の低いシリカ系被膜を形成しやすい点で、第3の態様に係る組成物の水分量は0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.3質量%未満が特に好ましい。
第3の態様に係る組成物の水分は、溶剤に由来する場合が多い。このため、第3の態様に係る組成物の水分量が上記の量となるように、溶剤が脱水されていることが好ましい。
【0071】
溶剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。製膜性の点から、溶剤は、第3の態様に係る組成物の固形分濃度が、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%となるように用いられる。
【0072】
(その他の成分)
第3の態様に係る組成物は、第1の態様に係るポリシラン化合物以外のポリシランを含んでもよい。例えば、薬品耐性向上等の点で、Mwの高いポリシラン化合物(以下、単に「高分子量ポリシラン」ともいう。)が挙げられ、高分子量ポリシランのMwとしては、例えば5000超100000以下であり、好ましくは6000〜60000程度である。
【0073】
第3の態様に係る組成物は、加工性向上の点で、ポリシラン化合物以外のケイ素含有樹脂を含んでいてもよい。ポリシラン化合物以外のケイ素含有樹脂としては、ポリシロキサン樹脂又はポリシラン構造(I−1)とポリシロキサン構造(I−2)とを有するポリシラン−ポリシロキサン樹脂が挙げられる。ポリシラン化合物以外のケイ素含有樹脂のMwとしては、500〜20000が好ましく、1000〜10000がより好ましく、2000〜8000が更に好ましい。
なお、上記ポリシラン−ポリシロキサン樹脂は、例えば、第1の態様に係るポリシラン化合物を、溶剤中、上述した塩基性条件下で処理した後に、下記一般式(A−1−1)〜(A−1−4)で表されるケイ素化合物よりなる群から選択される少なくとも1種のケイ素化合物並びに上記ケイ素化合物の加水分解物、縮合物及び加水分解縮合物よりなる群から選択される少なくとも1種とを加水分解縮合反応させることにより製造することができる。
R
1R
2R
3SiX
1 (A−1−1)
R
4R
5SiX
22 (A−1−2)
R
6SiX
33 (A−1−3)
SiX
44 (A−1−4)
(上記一般式中、X
1〜X
4は、それぞれ独立に、加水分解性基であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立に、水素原子又は有機基であり、該有機基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0074】
X
1〜X
4で表される加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子又はイソシアネート基(NCO)等が挙げられ、アルコキシ基であることが好ましい。
上記アルコキシ基としては、炭素原子数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0075】
R
1〜R
6で表される有機基としては、炭素数1〜30の有機基が挙げられ、アルキル基[メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル基及びt−ブチル基などの炭素原子数1〜10のアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基、特に炭素数1〜4のアルキル基など)]、シクロアルキル基(シクロヘキシル基などの炭素原子数5〜8のシクロアルキル基、特に炭素原子数5〜6のシクロアルキル基)、アルケニル基[エテニル基、プロペニル基、ブテニル基などの炭素原子数2〜10のアルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜6のアルケニル基、特に炭素数2〜4のアルケニル基など)]、シクロアルケニル基[1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の炭素原子数5〜10のシクロアルケニル基(好ましくは炭素原子数5〜8のシクロアルケニル基、特に炭素数5〜7のシクロアルケニル基など)]、アリール基(フェニル、ナフチル基などの炭素原子数6〜10のアリール基、)、アラルキル基[ベンジル、フェネチル基などのC
6−10アリール−C
1−6アルキル基(C
6−10アリール−C
1−4アルキル基など)]、アミノ基、N−置換アミノ基(上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基などで置換されたN−モノ又はジ置換アミノ基など)などが挙げられる。上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を構成するアリール基などは、1又は複数の置換基を有していてもよい。このような置換基としては、上記例示のアルキル基(特に炭素原子数1〜6のアルキル基など)、上記例示のアルコキシ基などが挙げられる。このような置換基を有する有機基としては、例えば、トリル、キシレニル、エチルフェニル、メチルナフチル基などのC
1−6アルキル−C
6−10アリール基(好ましくはモノ、ジ又はトリC
1−4アルキル−C
6−10アリール基、特にモノ又はジC
1−4アルキルフェニル基など);メトキシフェニル、エトキシフェニル、メトキシナフチル基などのC
1−10アルコキシC
6−10アリール基(好ましくはC
1−6アルコキシC
6−10アリール基、特にC
1−4アルコキシフェニル基など)などが挙げられる。
【0076】
また、上記一般式(A−1−3)で表されるケイ素化合物は、下記式(A−3)で表されるケイ素化合物であってもよい。
HOOC−U−Z−Y−Si(OR
a)
3 (A−3)
(上記一般式(A−3)中、Uは、芳香族環基又は脂環基から2個の環炭素原子のそれぞれ1個の水素原子を除去することにより生成する2価の基又は分岐鎖及び/若しくは二重結合を有していても良いアルキレン基を表し、Zは−NHCO−又は−CONH−を表し、Yは、単結合、アルキレン基、アリーレン基又は−R
Y1−NH−R
Y2−(式中、R
Y1及びR
Y2はそれぞれ独立にアルキレン基を表す。)を表し、R
aはそれぞれ独立に炭化水素基を表す。ただし、U及び/又はYは、(メタ)アクリル基、ビニル基及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を置換基として有していてもよい。)
【0077】
上記Uにおける芳香族環としては、炭素数1〜2の置換基を有していてもよい炭素数6〜10の芳香環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、トリル基、キシリル基等)を挙げることができる。
上記Uにおける脂環としては、炭素数5〜10の脂環(例えば、単環シクロアルキル基、単環シクロアルケニル基、2環式アルキル基、篭型アルキル基等が挙げられ、具体的には、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環、ジシクロペンタジエン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、キュバン環、バスケタン環等)を挙げることができる。
上記Uにおける分岐鎖及び/若しくは二重結合を有していても良いアルキレン基としては、炭素数1〜4のアルキレン基が挙げられ、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ビニレン基、(2−オクテニル)エチレン基、(2,4,6−トリメチル−2−ノネニル)エチレン基等のアルキレン基、二重結合を有するアルキレン基又は炭素数1〜9の分岐鎖を有するアルキレン基を挙げることができる。
【0078】
上記Yにおけるアルキレン基としては、炭素数1〜6のアルキレン基が挙げられ、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等を挙げることができる。上記Yにおけるアリーレン基としては、炭素数6〜10のものが好ましい。このようなものとしては、例えば、フェニレン基(オルト、メタ又はパラ等)、ナフチレン基(1,4−、1,5−、2,6−等)等を挙げることができる。上記Yにおける−R
Y1−NH−R
Y2−としては、具体的には、例えば、−CH
2−NH−CH
2−、−(CH
2)
2−NH−(CH
2)
2−、−(CH
2)
3−NH−(CH
2)
3−、−CH
2−NH−(CH
2)
2−、−(CH
2)
2−NH−CH
2−、−(CH
2)
2−NH−(CH
2)
3−、−(CH
2)
3−NH−(CH
2)
2−、−CH
2−NH−(CH
2)
3−、−(CH
2)
3−NH−CH
2−等を挙げることができる。
【0079】
ポリシロキサン樹脂としては、上記一般式(A−1−1)〜(A−1−4)で表されるケイ素化合物よりなる群から選択される少なくとも1種のケイ素化合物の加水分解物、縮合物及び加水分解縮合物よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0080】
上記の第1の態様に係るポリシラン化合物以外の樹脂(以下、他のSi樹脂)は、単独でも複数種を組み合わせて用いてもよい。
上記他のSi樹脂を含む場合、第3の態様に係る組成物における第1の態様に係るポリシラン化合物と他のSi樹脂の配合比(質量比)は、用途に応じて適宜変更すればよく、例えば、1:99〜99:1であり、好ましくは10:90〜90:10である。
【0081】
第3の態様に係る組成物は、アルカリ性の水溶液又は溶液への溶解促進剤として、1分子中に2個以上の水酸基又はカルボキシル基を有する有機化合物を含んでいてもよい。このような有機化合物として、下記に示す化合物を挙げることができる。
【化4】
【化5】
【化6】
【0082】
なお、上記構造式中のEは水素原子、メチル基、又はヒドロキシメチル基であり、R
15はメチレン基、カルボニル基、又はフェニレン基であり、nは3以上100未満の整数である。naは1〜3の自然数を示し、nbは1以上の自然数を示し、ncは2〜4の自然数を示し、ndは2以上の自然数を示す。
上記構造式にはエナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るが、各構造式はこれらの立体異性体のすべてを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0083】
上記有機化合物は1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。この使用量は、第3の態様に係る組成物の溶剤を除いた固形分全量に対して、好ましくは0.001〜50質量%、より好ましくは0.01〜30質量%である。
このような有機化合物を添加することで、上記組成物を用いて形成された膜の崩壊が加速され剥離が容易になる。
【0084】
第3の態様に係る組成物には、安定性を向上させるため、炭素数が1〜30の1価又は2価以上の有機酸を含んでいてもよい。このとき添加する酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、クエン酸等が挙げられる。これらの中でも特に、シュウ酸、マレイン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸等が好ましい。また、安定性を保つため、2種類以上の酸を混合して使用してもよい。上記有機酸を組成物のpHに換算して、好ましくは0≦pH≦7、より好ましくは0.3≦pH≦6.5、さらに好ましくは0.5≦pH≦6となるように配合することがよい。
【0085】
また、第3の態様に係る組成物は、安定剤として環状エーテルを置換基として有する1価又は2価以上のアルコール、又はエーテル化合物を含んでいてもよい。用いることができる安定剤として、具体的には、特開2009−126940号公報(0180)〜(0184)段落に記載されている安定剤が挙げられる。
【0086】
第3の態様に係る組成物は、水を含んでいてもよい。水を添加することで、リソグラフィー性能が向上する。第3の態様に係る組成物の溶剤成分における水の含有率は0質量%を超え50質量%未満が好ましく、より好ましくは0.3〜30質量%、さらに好ましくは0.5〜20質量%である。
【0087】
第3の態様に係る組成物は、光酸発生剤を含んでいてもよい。用いることができる光酸発生剤として、具体的には、特開2009−126940号公報(0160)〜(0179)段落に記載されている光酸発生剤が挙げられる。
【0088】
第3の態様に係る組成物は、必要に応じて界面活性剤を含んでいてもよい。用いることができる界面活性剤として、具体的には、特開2009−126940号公報(0185)段落に記載されている界面活性剤が挙げられる。
【0089】
第3の態様に係る組成物は、熱架橋促進剤を含んでいてもよい。用いることができる熱架橋促進剤として、具体的には、特開2007−302873号公報に記載されている熱架橋促進剤が挙げられる。熱架橋促進剤として、例えば、リン酸塩化合物やホウ酸塩化合物が挙げられる。このようなリン酸塩化合物としては、例えばリン酸アンモニウム、リン酸テトラメチルアンモニウム、リン酸テトラブチルアンモニウム等のアンモニウム塩、リン酸トリフェニルスルホニウム等のスルホニウム塩が挙げられる。また、このようなホウ酸塩化合物としては、例えばホウ酸アンモニウム、ホウ酸テトラメチルアンモニウム、ホウ酸テトラブチルアンモニウム等のアンモニウム塩、ホウ酸トリフェニルスルホニウム等のスルホニウム塩が挙げられる。
なお、上記熱架橋促進剤は1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、熱架橋促進剤の添加量は、上記組成物の溶剤を除いた固形分全量に対して、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜40質量%である。
【0090】
第3の態様に係る組成物は、その他の種々の硬化剤を含んでいてもよい。
硬化剤としては、例えば、ブレンステッド酸;イミダゾール類;有機アミン類;有機リン化合物及びその複合体;ルイス酸の有機アミン錯体;アミジン類;光又は熱により塩基成分を発生する硬化剤等が挙げられる。
【0091】
(用途)
第3の態様に係る組成物は、残存金属が少なく、シロキサン化の抑制(制御)されたポリシラン化合物を含むので、半導体、ディスプレイ又は太陽電池等の製造プロセス用の材料に好適に用いることができる。例えば、各種基板(金属酸化物含有膜、各種金属含有膜を含む。)を保護する保護膜又は層間膜を形成する用途として使用し得る。
上記各種基板としては、半導体基板、液晶ディスプレイ、有機発光ディスプレイ(OLED)、電気泳動ディスプレイ(電子ペーパー)、タッチパネル、カラーフィルター、バックライトなどのディスプレイ材料の基板(金属酸化物含有膜、各種金属含有膜を含む。)、太陽電池の基板(金属酸化物含有膜、各種金属含有膜を含む。)、光センサ等の光電変換素子の基板(金属酸化物含有膜、各種金属含有膜を含む。)、光電素子の基板(金属酸化物含有膜、各種金属含有膜を含む。)が挙げられる。
また、第3の態様に係る組成物における基材成分(樹脂成分)が実質的に第1の態様に係るポリシラン化合物のみで構成される場合は、特に、ギャップフィル特性に優れるため、半導体基板の表面に微細な溝を形成させ、その溝の内部に第3の態様に係る組成物を充填して、溝の両側に形成される素子の間を電気的に分離するトレンチ・アイソレーション構造を含め、絶縁膜、パッシベーション膜、平坦化膜、保護膜などを形成する用途として使用し得る。
【0092】
<膜及び上記膜を備える基板>
第4の態様に係る膜は、第2の態様のポリシラン化合物を含む膜である。
第5の態様に係る基板は、第2の態様のポリシラン化合物を含む膜を備える基板である。
第4の態様に係る膜は、上述のように、トレンチ・アイソレーション構造を含めた、絶縁膜、パッシベーション膜、平坦化膜又は保護膜であることが好ましい。
第4の態様に係る膜を形成する方法としては本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、必要に応じ任意の基板上に、ロールコータ、リバースコータ、バーコータ等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコータ等の非接触型塗布装置を用いて塗布する方法が挙げられる。
基板としては特に制限はないが、例えば、半導体基板、液晶ディスプレイ、有機発光ディスプレイ(OLED)、電気泳動ディスプレイ(電子ペーパー)、タッチパネル、カラーフィルター、バックライトなどのディスプレイ材料の基板(金属酸化物含有膜、各種金属含有膜を含む。)、太陽電池の基板(金属酸化物含有膜、各種金属含有膜を含む。)、光センサ等の光電変換素子の基板(金属酸化物含有膜、各種金属含有膜を含む。)、光電素子の基板(金属酸化物含有膜、各種金属含有膜を含む。)の他、ガラス基板、石英基板、透明又は半透明の樹脂基板(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリイミド、ポリアミドイミド等の耐熱性の材料等)、金属、シリコン基板等が挙げられる。
基板の厚さは、特に限定されるものではなく、パターン形成体の使用態様に応じて適宜選択することができる。
【0093】
上記塗布後の塗膜は乾燥(プリベーク)することが好ましい。乾燥方法は、特に限定されず、例えば、(1)ホットプレートにて80〜120℃、好ましくは90〜100℃の温度にて60〜120秒間乾燥させる方法、(2)室温にて数時間〜数日間放置する方法、(3)温風ヒータや赤外線ヒータ中に数十分間〜数時間入れて溶剤を除去する方法等が挙げられる。
【0094】
上記乾燥後の塗膜は、紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射して露光してもしなくてもよい。照射するエネルギー線量は特に制限はないが、例えば30〜2000mJ/cm
2程度が挙げられる。露光する工程は、後述の焼成する工程の代わり又は焼成する工程とともに行ってもよい。また、露光する工程では、例えば、形成された塗布膜を選択的に露光してもよく、選択的露光工程を含む場合は、現像する工程を含んでいてもよい。また、例えば、形成された塗布膜に対し、インプリントリソグラフィーを行ってもよい。インプリントリソグラフィーを行う場合は、例えば;
第3の態様の組成物を基板上に塗布して、塗布膜を形成する工程と、
所定のパターンの凹凸構造が形成されたモールドを塗布膜に対し押圧する工程と、
露光する工程とを含む方法が挙げられる。
露光する工程は、モールドが塗布膜に押圧された状態で、第3の態様の組成物からなる塗布膜に対して行われる。露光による硬化後、前記モールドを剥離することで、モールドの形状に応じてパターニングされた第4の態様に係る膜を得ることができる。
【0095】
上記乾燥後、露光後又は現像後の塗膜は、膜物性を高める点で焼成(ポストベーク)することが好ましい。焼成温度は下層基板や使用用途にもよるが、例えば、200〜1000℃の範囲であり、200℃〜500℃が好ましく、200〜250℃であることがより好ましい。焼成雰囲気は特に限定されず、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲下、真空下、又は減圧下であってもよい。大気下であってもよいし、酸素濃度を適宜コントロールしてもよい。焼成時間は、適宜変更すればよく、例えば、10分〜120分程度である。
【0096】
第4及び第5の態様における膜の膜厚としては、10〜3000nmであることが好ましく、50〜1500nmであることがより好ましく、100〜1000nmであることが更に好ましい。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0098】
〔実施例1〕
三方コックを装着した内容積1000mlの丸型フラスコに、粒状(粒径20〜1000μm)のマグネシウム25gと、触媒としてトリス(アセチルアセトナト)鉄(III)2.1gを仕込み、50℃で1mmHg(=133kPa)に加熱減圧して、反応器(フラスコ)内部を乾燥した後、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、予めナトリウム―ベンゾフェノンケチルで乾燥したテトラヒドロフラン(THF)500mlを加え、25℃で約60分間撹拌した。この反応混合物に、予め蒸留により精製したメチルフェニルジクロロシラン63.5g(0.3mol)をシリンジで加え、25℃で約24時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に1N(=1モル/L)の塩酸1000mlを投入し、さらにトルエン500mlで抽出した。トルエン相を純水200mlで10回洗浄し、トルエン相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、トルエンを留去することにより、直鎖状のメチルフェニルシラン重合体(質量平均分子量2000)を28.4g得た(収率63%)。
【0099】
〔実施例2〕
三方コックを装着した内容積1000mlの丸型フラスコに、粒状(粒径20〜1000μm)のマグネシウム25gと、触媒としてトリス(アセチルアセトナト)鉄(III)2.1gを仕込み、50℃で1mmHgに加熱減圧して、反応器内部を乾燥した後、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したTHF500mlを加え、25℃で約60分間撹拌した。この反応混合物に、予め蒸留により精製したメチルフェニルジクロロシラン63.5g(0.3mol)をシリンジで加え、25℃で約24時間撹拌した。
得られた直鎖状のメチルフェニルシラン重合体をトルエン150gとテトラヒドロフラン150gとの混合溶液に溶解し、さらに塩化銅(II)(CuCl
2)を10質量%の割合で含む塩化銅水溶液200gを混合して60分間攪拌したのち、直鎖状のメチルフェニルシラン重合体を含む有機相と塩化銅を含む水相とを分離した。そして、直鎖状のメチルフェニルシラン重合体を含む有機相を、純水200mlで3回洗浄した後、溶媒成分を留去し、直鎖状のメチルフェニルシラン重合体(質量平均分子量2000)を32.4g得た(収率72.6%)。
【0100】
〔実施例3〕
三方コックを装着した内容積1000mlの丸型フラスコに、粒状(粒径20〜1000μm)のマグネシウム25gと、触媒としてトリス(アセチルアセトナト)鉄(III)2.1gを仕込み、50℃で1mmHgに加熱減圧して、反応器内部を乾燥した後、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したテトラヒドロフラン500mlを加え、室温(25℃)で約30分間撹拌した。この反応混合物に、予め蒸留により精製したフェニルトリクロロシラン105.8g(0.50mol)を加え、20℃で約18時間撹拌した。反応終了後、トルエン300mlを加えた後、反応によって生成した塩化マグネシウム、余剰のマグネシウムを減圧濾過により除去した。ろ液を純水200mlで10回洗浄し、トルエン相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、トルエン及びテトラヒドロフランを留去することにより、分岐状のポリフェニルシラン50gを得た。
反応終了後、反応混合物に1N(=1モル/L)の塩酸1000mlを投入し、さらにトルエン500mlで抽出した。トルエン相を純水200mlで10回洗浄し、トルエン相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、トルエンを留去することにより、分岐状のポリフェニルシラン(質量平均分子量2000)を38.2g得た(収率72%)。
【0101】
〔実施例4〕
三方コックを装着した内容積1000mlの丸型フラスコに、粒状(粒径20〜1000μm)のマグネシウム25gと、触媒としてトリス(アセチルアセトナト)鉄(III)2.1gを仕込み、50℃で1mmHgに加熱減圧して、反応器(フラスコ)内部を乾燥した後、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したテトラヒドロフラン500mlを加え、室温で約30分間撹拌した。この反応混合物に、予め蒸留により精製したフェニルトリクロロシラン105.8g(0.50mol)を加え、20℃で約18時間撹拌した。反応終了後、トルエン300mlを加えた後、減圧濾過により反応によって生成した塩化マグネシウム、余剰のマグネシウムを除去した。ろ液を純水200mlで10回洗浄し、トルエン相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、トルエン及びテトラヒドロフランを留去することにより、分岐状のポリフェニルシラン50gを得た。
得られた分岐状のポリフェニルシランをトルエン150gとテトラヒドロフラン150gとの混合溶液に溶解し、さらに塩化銅(II)(CuCl
2)を10質量%の割合で含む塩化銅水溶液200gを混合して60分間攪拌したのち、分岐状のポリフェニルシランを含む有機相と塩化銅を含む水相とを分離した。そして、分岐状のポリフェニルシランを含む有機相を、純水200mlで3回洗浄した後、溶媒成分を留去し、分岐状のポリフェニルシラン(質量平均分子量2000)を41.9g得た(収率79%)。
【0102】
〔実施例5〕
三方コックを装着した内容積1000mlの丸型フラスコに、粒状(粒径20〜1000μm)のマグネシウム25gと、触媒としてトリス(アセチルアセトナト)鉄(III)2.1gを仕込み、50℃で1mmHgに加熱減圧して、反応器内部を乾燥した後、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したTHF500mlを加え、25℃で約60分間撹拌した。この反応混合物に、予め蒸留により精製したフェニルトリクロロシラン63.5g(0.3mol)とジメチルジクロロシラン34.5g(0.3mol)とをシリンジで加え、25℃で約24時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に1N(=1モル/L)の塩酸1000mlを投入し、さらにトルエン500mlで抽出した。トルエン相を純水200mlで10回洗浄し、トルエン相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、トルエンを留去することにより、分岐状のフェニルシラン−メチルシラン共重合体(前者/後者(モル比)=1/1)を得た(質量平均分子量3000)。
得られた分岐状のフェニルシラン−ジメチルシラン共重合体をトルエン150gとテトラヒドロフラン150gとの混合溶液に溶解し、さらに塩化銅(II)(CuCl
2)を10質量%の割合で含む塩化銅水溶液200gを混合して60分間攪拌したのち、分岐状のフェニルシラン−ジメチルシラン共重合体を含む有機相と塩化銅を含む水相とを分離した。そして、分岐状のフェニルシラン−ジメチルシラン共重合体を含む有機相を、純水200mlで3回洗浄した後、溶媒成分を留去し、フェニルシラン−メチルシラン共重合体(質量平均分子量2000)を36.6g得た(収率74%)。
【0103】
〔実施例6〕
三方コックを装着した内容積1000mlの丸型フラスコに、粒状(粒径20〜1000μm)のマグネシウム25gと、触媒としてトリス(アセチルアセトナト)鉄(III)2.1gを仕込み、50℃で1mmHgに加熱減圧して、反応器内部を乾燥した後、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したテトラヒドロフラン500mlを加え、室温で約30分間撹拌した。この反応混合物に、予め蒸留により精製したメチルフェニルジクロロシラン63.5g(0.3mol)を加え、20℃で約6時間撹拌した。反応終了後、トルエン300mlを加えた後、減圧濾過により反応によって生成した塩化マグネシウム、余剰のマグネシウムを除去した。ろ液を純水200mlで10回洗浄し、トルエン相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、トルエン及びテトラヒドロフランを留去することにより、環状のメチルフェニルシラン重合体50gを得た。
反応終了後、反応混合物に1N(=1モル/L)の塩酸1000mlを投入し、さらにトルエン500mlで抽出した。トルエン相を純水200mlで10回洗浄し、トルエン相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、トルエンを留去することにより、環状のメチルフェニルシラン重合体(質量平均分子量700)を31g得た(収率86%)。
【0104】
〔比較例1〕
三方コックを装着した内容積1000mlの丸型フラスコに、粒状(粒径20〜1000μm)のマグネシウム25.0g、無水塩化亜鉛(ZnCl
2)16.2gを仕込み、50℃で1mmHgに加熱減圧して、反応器内部を乾燥した後、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したTHF500mlを加え、25℃で約60分間撹拌した。この反応混合物に、予め蒸留により精製したメチルフェニルジクロロシラン63.5g(0.3mol)をシリンジで加え、25℃で約24時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に1N(=1モル/L)の塩酸1000mlを投入し、さらにトルエン500mlで抽出した。トルエン相を純水200mlで10回洗浄し、トルエン相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、トルエンを留去することにより、メチルフェニルシラン重合体(質量平均分子量6000)を21.6g得た(収率60%)。
【0105】
〔比較例2〕
三方コックを装着した内容積1000mlの丸型フラスコに、粒状(粒径20〜1000μm)のマグネシウム25.0g、無水塩化亜鉛(ZnCl
2)16.2gを仕込み、50℃で1mmHgに加熱減圧して、反応器内部を乾燥した後、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したテトラヒドロフラン(THF)500mlを加え、25℃で約60分間撹拌した。この反応混合物に、予め蒸留により精製したメチルフェニルジクロロシラン63.5g(0.3mol)をシリンジで加え、25℃で約24時間撹拌した。
得られた直鎖状のフェニルシラン−ジメチルシラン共重合体をトルエン150gとテトラヒドロフラン150gとの混合溶液に溶解し、さらに塩化銅(II)(CuCl
2)を10質量%の割合で含む塩化銅水溶液200gを混合して60分間攪拌したのち、直鎖状のフェニルシラン−ジメチルシラン共重合体を含む有機相と塩化銅を含む水相とを分離した。そして、直鎖状のフェニルシラン−ジメチルシラン共重合体を含む有機相を、純水200mlで3回洗浄した後、溶媒成分を留去し、直鎖状のフェニルシラン−ジメチルシラン共重合体(質量平均分子量3000)21.6gを得た(収率60%)。
【0106】
〔比較例3〕
三方コックを装着した内容積1000mlの丸型フラスコに、粒状(粒径20〜1000μm)のマグネシウム25.0g、無水塩化リチウム21.4g、第2塩化鉄4.1gを仕込み、50℃で1mmHgに加熱減圧して、反応混合物を乾燥した後、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したテトラヒドロフラン500mlを加え、室温で約30分間撹拌した。この反応混合物に、予め蒸留により精製したメチルフェニルジクロロシラン105.8g(0.50mol)を加え、20℃で約18時間撹拌した。反応終了後、トルエン300mlを加えた後、減圧濾過により反応によって生成した塩化マグネシウム、余剰のマグネシウムを除去した。ろ液を純水200mlで10回洗浄し、トルエン相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、トルエン、テトラヒドロフランを留去することにより、直鎖状のメチルフェニルシラン重合体50gを得た。
得られた直鎖状のメチルフェニルシラン重合体をトルエン150gとテトラヒドロフラン150gとの混合溶液に溶解し、さらに塩化銅(II)(CuCl
2)を10質量%の割合で含む塩化銅水溶液200gを混合して60分間攪拌したのち、直鎖状のメチルフェニルシラン重合体を含む有機相と塩化銅を含む水相とを分離した。そして、直鎖状のメチルフェニルシラン重合体を含む有機相を、純水200mlで3回洗浄した後、溶媒成分を留去し、直鎖状のメチルフェニルシラン重合体(質量平均分子量2000)36gを得た(収率60%)。
【0107】
〔比較例4〕
三方コックを装着した内容積1000mlの丸型フラスコに、粒状(粒径20〜1000μm)のマグネシウム25.0g、無水塩化亜鉛(ZnCl
2)16.2gを仕込み、50℃で1mmHgに加熱減圧して、反応混合物を乾燥した後、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したテトラヒドロフラン500mlを加え、室温で約30分間撹拌した。この反応混合物に、予め蒸留により精製したフェニルトリクロロシラン105.8g(0.50mol)を加え、20℃で約18時間撹拌した。反応終了後、トルエン300mlを加えた後、減圧濾過により反応によって生成した塩化マグネシウム、余剰のマグネシウムを除去した。ろ液を純水200mlで10回洗浄し、トルエン相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、トルエン及びテトラヒドロフランを留去することにより、分岐状のポリフェニルシラン50gを得た。
反応終了後、反応混合物に1N(=1モル/L)の塩酸1000mlを投入し、さらにトルエン500mlで抽出した。トルエン相を純水200mlで10回洗浄し、トルエン相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、トルエンを留去することにより、分岐状のポリフェニルシラン重合体(質量平均分子量2000)を38.2g得た(収率60%)。
【0108】
〔比較例5〕
三方コックを装着した内容積1000mlの丸型フラスコに、粒状(粒径20〜1000μm)のマグネシウム25.0g、無水塩化亜鉛(ZnCl
2)16.2gを仕込み、50℃で1mmHgに加熱減圧して、反応混合物を乾燥した後、乾燥アルゴンガスを反応器内に導入し、予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したテトラヒドロフラン500mlを加え、室温で約30分間撹拌した。この反応混合物に、予め蒸留により精製したフェニルトリクロロシラン105.8g(0.50mol)を加え、20℃で約18時間撹拌した。反応終了後、トルエン300mlを加えた後、減圧濾過により反応によって生成した塩化マグネシウム、余剰のマグネシウムを除去した。ろ液を純水200mlで10回洗浄し、トルエン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、トルエン及びテトラヒドロフランを留去することにより、分岐状のポリフェニルシラン50gを得た。
得られた分岐状のポリフェニルシランをトルエン150gとテトラヒドロフラン150gとの混合溶液に溶解し、さらに塩化銅(II)(CuCl
2)を10質量%の割合で含む塩化銅水溶液200gを混合して60分間攪拌したのち、分岐状のポリフェニルシランを含む有機相と塩化銅を含む水相とを分離した。そして、分岐状のポリフェニルシランを含む有機相を、純水200mlで3回洗浄した後、溶媒成分を留去し、分岐状のポリフェニルシラン重合体(質量平均分子量2000)を31.8g得た(収率60%)。
【0109】
実施例1〜6及び比較例1〜5を下記表1にまとめる。
【表1】
【0110】
実施例1〜6及び比較例1〜5で得られたポリシラン化合物について、下記方法に従って、Zn、Cu、Fe各々の含有量、ギャップフィル特性及びシロキサン結合(Si−O)割合について評価した。
【0111】
<Zn、Cu、Fe各々の含有量評価>
実施例1〜6及び比較例1〜5で得られたポリシラン化合物におけるZn、Cu、Fe各々の含有量は、ICP−MS(Inductively coupled plasma mass spectroscopy)を用いて測定した。結果を表2に示す。
(評価基準)
〇:Zn、Cu、Fe各々について含有量が500ppb以下
×:Zn、Cu、Fe各々について含有量が500ppb超
【0112】
<ギャップフィル特性評価>
実施例1〜6及び比較例1〜5で得られたポリシラン化合物を、ポリシラン化合物の濃度が5質量%となるようにシクロヘキシルアセテート中に溶解し、得られた各ポリシラン化合物溶液(ポリシラン化合物を含む組成物)を用いて以下の評価方法に従ってギャップフィル特性を評価した。
(評価基準)
ライン幅40nmスペース幅15nmであって高さ(スペースの深さ)が85nmの繰り返しのトレンチパターンが形成されているシリコンウエハに、各ポリシラン化合物溶液を、ポストベーク後の膜厚が約100nm(トレンチパターンの底面からの高さは約185nm)になるように塗布し、100℃100秒でプリベークした後、350℃30分で焼成(ポストベーク)を行い、ポリシラン化合物膜を得た。断面部分を、0.4%のフッ酸水溶液に1分間浸漬した後、断面形状をSEMで観測した。下記基準に従って評価した。
〇:ポリシラン化合物膜が、トレンチパターン部に均質に埋め込まれている。
×:トレンチパターン部にポリシラン化合物膜の埋め込み不良が観測される。
【0113】
<シロキサン結合(Si−O)及びSi−C結合の割合評価>
実施例1〜6及び比較例1〜5で得られたポリシラン化合物についてXPS分析を行い、99eV以上104eV以下の結合エネルギー範囲に最大検出ピーク高さを有するスペクトルをピーク分離し、結合エネルギーが100eV以上104eV以下の範囲に最大ピーク高さを有するピークの面積(2X)(シロキサン結合(Si−O)とSi−C結合に由来するピーク面積)と、結合エネルギーが99.0eV以上99.5eV以下の範囲であるピーク面積(1X)(Si−Siに由来するピーク面積)とを算出し、下記式(3X)で表される割合を算出し、以下の基準で評価した。
(1X)・・・結合エネルギーが99.0eV以上99.5eV以下の範囲に最大ピーク高さを有するピークの面積
(2X)・・・結合エネルギーが100eV以上104eV以下の範囲に最大ピーク高さを有するピークの面積
(3X)・・・(2X)/[(1X)+(2X)]
【0114】
(評価基準)
◎:15%以下
〇:15%超40%以下
×:40%超
結果を表2に示す。
なお、表2中、「Si−Oピーク」が無しとは、100eV以上104eV以下の範囲において帰属されたピークが1つであることを意味する。「Si−Oピーク」が有りとは、100eV以上102eV以下の範囲において帰属されたピークが2つであることを意味する。
【0115】
【表2】
【0116】
表2に示した結果から明らかなように、ポリシラン化合物の製造に有機金属錯体を使用せずに塩化亜鉛を使用した比較例1、2、4及び5はポリシラン化合物中にZnが残存していた。
また、ポリシラン化合物の製造に有機金属錯体を使用せずに塩化銅により精製処理を行った比較例2、3及び5はポリシラン化合物中にCuが残存しており、また、ポリシラン化合物中のシロキサン結合(Si−O)及びSi−C結合の割合が40%を超えていた。
また、ポリシラン化合物の製造に有機金属錯体を使用せずに塩化鉄を使用した比較例2及び3はポリシラン化合物中にFeが残存していた。
一方、有機金属錯体を用いてポリシラン化合物を製造した実施例1〜6はいずれも、ポリシラン化合物のMwが5000以下であり、ポリシラン化合物中のZn、Cu及びFeの残存量が低く、シロキサン結合(Si−O)及びSi−C結合の含有割合も15%以下であった。また、実施例1〜6はいずれもギャップフィル特性に優れていた。