(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100129
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】レジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/38 20060101AFI20220628BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20220628BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G03F7/38 511
G03F7/039 501
G03F7/38 501
G03F7/20 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214304
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】星野 学
【テーマコード(参考)】
2H196
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H196BA11
2H196DA01
2H196EA06
2H196FA01
2H196FA02
2H196GA03
2H197CA06
2H197CE10
2H197JA13
2H197JA24
2H225AM14P
2H225AM30P
2H225AM99P
2H225AN59P
2H225CA12
2H225CB18
2H225CC03
2H225CC20
2H225CD05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】パターンの明瞭性を確保し、現像残渣を低減しうるレジストパターン形成方法。
【解決手段】単量体単位(I)と、単量体単位(II)とを有する共重合体を含むポジ型レジスト組成物を被加工物上に塗布する工程と、120℃~250℃の温度で乾燥してレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を露光する工程と、90℃~150℃での加熱と真空紫外線の照射との少なくとも一方であるポスト露光処理を行う工程と、レジスト膜を現像する工程と、を含む、レジストパターン形成方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
〔式(I)中、Xは、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルスルホニル基、アルコキシ基、ニトロ基、アシル基、アルキルエステル基又はハロゲン化アルキル基であり、Lは、単結合又は2価の連結基であり、Arは、置換基を有していてもよい芳香環基である。〕
で表される単量体単位(A)と、下記式(II):
【化2】
〔式(II)中、R
1は、アルキル基であり、R
2は、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボキシル基又はハロゲン化カルボキシル基であり、pは、0以上5以下の整数であり、R
2が複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。〕
で表される単量体単位(B)とを有する共重合体、及び溶剤を含むポジ型レジスト組成物を被加工物上に塗布する工程と、
前記被加工物上に塗布されたポジ型レジスト組成物を、120℃以上250℃以下の温度で乾燥してレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
前記露光後の前記レジスト膜に対して、90℃以上150℃以下の温度での加熱と、真空紫外線の照射との少なくとも一方であるポスト露光処理を行う工程と、
前記ポスト露光処理後のレジスト膜を現像する工程と、
を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項2】
前記現像を、照射量が0.60Ethでの残膜率が0.850超となる条件で行う、請求項1に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項3】
前記現像を、照射量が0.80Ethでの残膜率が0.600以上となる条件で行う、請求項1又は2に記載のレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造等の分野において、電子線などの電離放射線や紫外線(極端紫外線(EUV:Extreme ultraviolet)を含む。)などの短波長の光(以下、電離放射線と短波長の光とを合わせて「電離放射線等」と称することがある。)の照射により主鎖が切断されて現像液に対する溶解性が増大する共重合体が、主鎖切断型のポジ型レジストとして使用されている。
【0003】
具体的には、例えば特許文献1には、電離放射線等に対する感度及び耐熱性に優れる主鎖切断型のポジ型レジストとして、α-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位と、α-メチルスチレン単位とを含有する共重合体よりなるポジ型レジストが開示されている。このような共重合体及び溶剤を含むポジ型レジスト組成物を乾燥して被加工物の上にレジスト膜を形成し、得られたレジスト膜を露光し、次いで露光後のレジスト膜を現像することで、被加工物の上にレジストパターンを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、主鎖切断型のポジ型レジストにおいては、得られるレジストパターンが明瞭であること、すなわち、レジスト膜が残って(残膜して)いる部分と、溶解している部分との境界が明瞭であることが求められる。具体的には、より明瞭性の高いレジストパターン形成を可能とする観点からは、レジストには、照射量が特定量に至らなければ現像液に溶解せず、特定量に至った時点で速やかに主鎖が切断され現像液に溶解される特性を有すること、すなわち電離放射線等の照射量の常用対数と、現像後のレジストの残膜厚との関係を示す感度曲線の傾きの大きさを表すγ値を高めることが求められている。
またレジストパターンの形成に際しては、レジストパターンのスペース部分に意図せず残留する残渣(以下、「レジスト残渣」と称する。)の発生を抑制することが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、レジストパターンの明瞭性を確保しつつ、レジスト残渣の量を低減することも可能なレジストパターン形成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、所定の単量体を用いて形成した共重合体を含有するポジ型レジスト組成物からレジストパターンを形成するに際し、ポジ型レジスト組成物を乾燥してレジスト膜を得る際の乾燥温度を所定の範囲内とし、加えて露光後のレジスト膜に対して、所定の温度範囲内での加熱及び/又は真空紫外線の照射を行うことで、レジストパターンに求められる明瞭性を確保しつつ、レジスト残渣の量を低減しうることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、この発明は上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のレジストパターン形成方法は、下記式(I):
【化1】
〔式(I)中、Xは、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルスルホニル基、アルコキシ基、ニトロ基、アシル基、アルキルエステル基又はハロゲン化アルキル基であり、Lは、単結合又は2価の連結基であり、Arは、置換基を有していてもよい芳香環基である。〕
で表される単量体単位(A)と、下記式(II):
【化2】
〔式(II)中、R
1は、アルキル基であり、R
2は、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボキシル基又はハロゲン化カルボキシル基であり、pは、0以上5以下の整数であり、R
2が複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。〕で表される単量体単位(B)とを有する共重合体、及び溶剤を含むポジ型レジスト組成物を被加工物上に塗布する工程と、前記被加工物上に塗布されたポジ型レジスト組成物を、120℃以上250℃以下の温度で乾燥してレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を露光する工程と、前記露光後の前記レジスト膜に対して、90℃以上150℃以下の温度での加熱と、真空紫外線の照射との少なくとも一方であるポスト露光処理を行う工程と、前記ポスト露光処理後のレジスト膜を現像する工程と、を含むことを特徴とする。このように、上述した所定の共重合体と溶剤とを含むポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する際の乾燥温度を上述した範囲内とし、露光後のレジスト膜に対して上述した少なくとも何れかのポスト露光処理を行うことで、明瞭性が確保され、且つレジスト残渣の量が少ないレジストパターンを得ることができる。
なお、本発明において、「置換基を有していてもよい」とは、「無置換の、又は、置換基を有する」を意味する。
また、本発明において、乾燥及び加熱(以下、これらをまとめて「加熱等」という。)の際の「温度」とは、対象を熱源(ホットプレート等)に接触させて加熱等する場合は、熱源の温度を意味し、熱源から媒体(空気等)を介して対象を加熱等する場合は、媒体の温度(例えば、雰囲気温度)を意味する。
【0009】
ここで、本発明のレジストパターン形成方法は、前記現像を、照射量が0.60Ethでの残膜率が0.850超となる条件で行うことが好ましい。照射量が0.60Ethでの残膜率が0.850超となる条件で現像を行えば、得られるレジストパターンの明瞭性を十分に向上させることができる。
また、本発明のレジストパターン形成方法は、前記現像を、照射量が0.80Ethでの残膜率が0.600以上となる条件で行うことが好ましい。照射量が0.80Ethでの残膜率が0.600以上となる条件で現像を行えば、得られるレジストパターンの明瞭性を十分に向上させることができる。
【0010】
なお、本発明において、「Eth」は、レジストの感度を表す指標であり、電離放射線等を照射して現像液に溶解させたレジストの残膜率を概ね0とすることが可能な、電離放射線等の総照射量の目安となる。また「照射量が0.60Ethでの残膜率」とは、Ethに0.60を乗じた照射量、すなわちEthの60%の照射量におけるレジスト膜の残膜率(0≦残膜率≦1.00)を意味し、「照射量が0.80Ethでの残膜率」とは、Ethに0.80を乗じた照射量、すなわちEthの80%の照射量におけるレジスト膜の残膜率(0≦残膜率≦1.00)を意味する。
照射量が0.6Ethでの残膜率が0.850超であること、及び/又は、照射量が0.80Ethでの残膜率が0.600以上であることはすなわち、Ethの60%及び/又は80%の照射量におけるレジストの溶解が非常に高いレベルで抑制されるということを意味する。よって上記残膜率を満たす条件で現像を行えば、γ値を十分に高めて、得られるレジストパターンの明瞭性を十分に向上させることができる。
そして、本発明において、「Eth」、並びに「照射量が0.60Ethでの残膜率」及び「照射量が0.80Ethでの残膜率」は、何れも実施例に記載の方法を用いて算出することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレジストパターン形成方法によれば、得られるレジストパターンの明瞭性を確保しつつ、レジスト残渣の量を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明のレジストパターン形成方法は、電子線などの電離放射線や紫外線などの短波長の光の照射により主鎖が切断されて低分子量化する、主鎖切断型のポジ型レジストを使用するレジストパターンの形成方法である。
【0013】
また、本発明のレジストパターン形成方法で形成したレジストパターンは、当該レジストパターンをマスクとして被加工物をエッチングし、被加工物にパターンを形成するエッチング方法に用いることができる。
このようなレジストパターン形成方法及びエッチング方法は、例えばビルドアップ基板などのプリント基板を製造する際などに好適に用いることができる。
【0014】
(レジストパターン形成方法)
本発明のレジストパターン形成方法は、共重合体を含むポジ型レジスト組成物を被加工物上に塗布する工程(塗布工程)と、被加工物上のポジ型レジスト組成物を乾燥してレジスト膜を形成する工程(レジスト膜形成工程)と、レジスト膜を露光する工程と(露光工程)、露光後のレジスト膜に対してポスト露光処理を施す工程(ポスト露光処理工程)と、ポスト露光処理後のレジスト膜を現像する工程(現像工程)とを少なくとも含む。
なお、本発明のレジストパターン形成方法は、上述した塗布工程、レジスト膜形成工程、露光工程、ポスト露光処理工程、及び現像工程以外の工程を含んでいてもよい。具体的には、レジストパターン形成方法は、塗布工程の前に、被加工物である基板上に下層膜を形成する工程(下層膜形成工程)を含んでいてもよい。また、レジストパターン形成方法は、現像工程の後に現像液を除去する工程(現像液除去工程)を含んでいてもよい。さらに、レジストパターン形成方法は、レジスト膜形成工程と露光工程の間に、レジスト膜に真空紫外線を照射する工程(前照射工程)を含んでいてもよい。くわえて、レジストパターン形成方法は、現像工程の後、現像工程と現像液除去工程の間、及び/又は現像液除去工程の後に、現像膜に真空紫外線を照射する工程(後照射工程)を含んでいてもよい。
【0015】
ここで、本発明のレジストパターン形成方法では、ポジ型レジスト組成物に含まれる共重合体として、上述した単量体単位(A)及び単量体単位(B)を有する共重合体を用い、レジスト膜形成工程においてポジ型レジスト組成物を所定温度で乾燥してレジスト膜を形成し、そしてポスト露光処理工程において、露光後のレジスト膜に対し所定温度での加熱及び/又は真空紫外線の照射を行うことを特徴とする。
【0016】
上述した共重合体は、電離放射線等(例えば、電子線、KrFレーザー、ArFレーザー、EUVレーザーなど)が照射された際に主鎖が容易に切断されて低分子量化する。そして、本発明のレジストパターン形成方法では、上述したレジスト膜形成工程及びポスト露光処理工程を行うため、明瞭性が確保され、且つレジスト残渣の量が少ないレジストパターンを得ることができる。
また、本発明のレジストパターンの形成方法を用いれば、一連のレジストパターンの形成過程において発生しうるレジストパターンの倒れ(パターン倒れ)を抑制することができる。
【0017】
<ポジ型レジスト組成物>
本発明のレジストパターン形成方法に用いるポジ型レジスト組成物は、ポジ型レジストとして以下に詳述する所定の共重合体を含み、溶剤を更に含有する。また、ポジ型レジスト組成物は、任意に、レジスト組成物に配合され得る既知の添加剤を更に含有する。
なお、ポジ型レジスト組成物は、ポジ型レジストとして所定の共重合体以外の重合体を含有していてもよいが、通常、所定の共重合体のみをポジ型レジストとして含有している。
【0018】
<<共重合体>>
ポジ型レジスト組成物に含まれる共重合体は、所定の単量体単位(A)及び単量体単位(B)を有する。
なお、共重合体は、単量体単位(A)及び単量体単位(B)以外の任意の単量体単位を含んでいてもよいが、共重合体を構成する全単量体単位中で単量体単位(A)及び単量体単位(B)が占める割合は、合計で90モル%以上であることが好ましく、100モル%である(即ち、共重合体は単量体単位(A)及び単量体単位(B)のみを含む)ことがより好ましい。
【0019】
[単量体単位(A)]
ここで、単量体単位(A)は、下記式(I):
【化3】
〔式(I)中、Xは、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルスルホニル基、アルコキシ基、ニトロ基、アシル基、アルキルエステル基又はハロゲン化アルキル基であり、Lは、単結合又は2価の連結基であり、Arは、置換基を有していてもよい芳香環基である。〕
で表され、下記式(III):
【化4】
〔式(III)中、X、L及びArは、式(I)と同様である。〕で表される単量体(a)に由来する構造単位である。
【0020】
ここで、式(I)及び式(III)中のXを構成し得るハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子又はアスタチン原子などが挙げられる。また、式(I)及び式(III)中のXを構成し得るアルキルスルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基又はエチルスルホニル基などが挙げられる。更に、式(I)及び式(III)中のXを構成し得るアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基などが挙げられる。また、式(I)及び式(III)中のXを構成し得るアシル基としては、ホルミル基、アセチル基又はプロピオニル基などが挙げられる。更に、式(I)及び式(III)中のXを構成し得るアルキルエステル基としては、メチルエステル基又はエチルエステル基などが挙げられる。そして、式(I)及び式(III)中のXを構成し得るハロゲン化アルキル基としては、例えば、ハロゲン原子の数が1個以上3個以下のハロゲン化メチル基などが挙げられる。
中でも、主鎖切断型のポジ型レジストとして有用な共重合体を効率的に得る観点からは、Xは、ハロゲン原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
【0021】
また、式(I)及び式(III)中のLを構成し得る、2価の連結基としては、特に限定されることなく、例えば、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基などが挙げられる。
【0022】
そして、置換基を有していてもよいアルキレン基のアルキレン基としては、特に限定されることなく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基などの鎖状アルキレン基、及び、1,4-シクロヘキシレン基などの環状アルキレン基が挙げられる。中でも、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基などの炭素数1~6の鎖状アルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基などの炭素数1~6の直鎖状アルキレン基がより好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などの炭素数1~3の直鎖状アルキレン基が更に好ましい。
また、置換基を有していてもよいアルケニレン基のアルケニレン基としては、特に限定されることなく、例えば、エテニレン基、2-プロペニレン基、2-ブテニレン基、3-ブテニレン基などの鎖状アルケニレン基、及び、シクロヘキセニレン基などの環状アルケニレン基が挙げられる。中でも、アルケニレン基としては、エテニレン基、2-プロペニレン基、2-ブテニレン基、3-ブテニレン基などの炭素数2~6の直鎖状アルケニレン基が好ましい。
【0023】
上述した中でも、電離放射線等に対する感度を十分に向上させる観点からは、2価の連結基としては、置換基を有していてもよいアルキレン基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1~6の鎖状アルキレン基がより好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1~6の直鎖状アルキレン基が更に好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1~3の直鎖状アルキレン基が特に好ましい。
【0024】
また、電離放射線等に対する感度を更に向上させる観点からは、式(I)及び式(III)中のLを構成し得る2価の連結基は、電子吸引性基を1つ以上有することが好ましい。中でも、2価の連結基が置換基として電子吸引性基を有するアルキレン基又は置換基として電子吸引性基を有するアルケニレン基である場合、電子吸引性基は、式(I)及び式(III)中のカルボニル炭素に隣接するOと結合する炭素に結合していることが好ましい。
【0025】
なお、電離放射線等に対する感度を十分に向上させ得る電子吸引性基としては、特に限定されることなく、例えば、フッ素原子、フルオロアルキル基、シアノ基及びニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。また、フルオロアルキル基としては、特に限定されることなく、例えば、炭素数1~5のフルオロアルキル基が挙げられる。中でも、フルオロアルキル基としては、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0026】
そして、電離放射線等に対する感度を十分に向上させる観点からは、式(I)及び式(III)中のLとしては、メチレン基、シアノメチレン基、トリフルオロメチルメチレン基又はビス(トリフルオロメチル)メチレン基が好ましく、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基がより好ましい。
【0027】
また、式(I)及び式(III)中のArとしては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基が挙げられる。
【0028】
そして、芳香族炭化水素環基としては、特に限定されることなく、例えば、ベンゼン環基、ビフェニル環基、ナフタレン環基、アズレン環基、アントラセン環基、フェナントレン環基、ピレン環基、クリセン環基、ナフタセン環基、トリフェニレン環基、o-テルフェニル環基、m-テルフェニル環基、p-テルフェニル環基、アセナフテン環基、コロネン環基、フルオレン環基、フルオラントレン環基、ペンタセン環基、ペリレン環基、ペンタフェン環基、ピセン環基、ピラントレン環基などが挙げられる。
【0029】
また、芳香族複素環基としては、特に限定されることなく、例えば、フラン環基、チオフェン環基、ピリジン環基、ピリダジン環基、ピリミジン環基、ピラジン環基、トリアジン環基、オキサジアゾール環基、トリアゾール環基、イミダゾール環基、ピラゾール環基、チアゾール環基、インドール環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、キノキサリン環基、キナゾリン環基、フタラジン環基、ベンゾフラン環基、ジベンゾフラン環基、ベンゾチオフェン環基、ジベンゾチオフェン環基、カルバゾール環基等が挙げられる。
【0030】
更に、Arが有し得る置換基としては、特に限定されることなく、例えば、アルキル基、フッ素原子及びフルオロアルキル基が挙げられる。そして、Arが有し得る置換基としてのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの炭素数1~6の鎖状アルキル基が挙げられる。また、Arが有し得る置換基としてのフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロプロピル基などの炭素数1~5のフルオロアルキル基が挙げられる。
【0031】
中でも、電離放射線等に対する感度を十分に向上させる観点からは、式(I)及び式(III)中のArとしては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基が好ましく、非置換の芳香族炭化水素環基がより好ましく、ベンゼン環基(フェニル基)が更に好ましい。
【0032】
そして、電離放射線等に対する感度を十分に向上させる観点からは、上述した式(I)で表される単量体単位(A)を形成し得る、上述した式(III)で表される単量体(a)としては、α-クロロアクリル酸ベンジル及びα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチルが好ましく、α-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチルがより好ましい。即ち、共重合体は、α-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位及びα-クロロアクリル酸ベンジル単位の少なくとも一方を有することが好ましく、α-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位を有することがより好ましい。
【0033】
なお、共重合体を構成する全単量体単位中の単量体単位(A)の割合は、特に限定されることなく、例えば30モル%以上70モル%以下とすることができる。中でも、単量体単位(A)の割合は、50モル%以上であることが好ましく、50モル%超であることがより好ましく、52モル%以上であることが更に好ましく、60モル%以下であることが好ましく、55モル%以下であることがより好ましく、54モル%以下であることが更に好ましい。単量体単位(A)の割合が上記範囲内であれば、レジストパターンの明瞭性を更に向上させることができる。
【0034】
[単量体単位(B)]
単量体単位(B)は、下記式(II):
【化5】
〔式(II)中、R
1は、アルキル基であり、R
2は、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボキシル基又はハロゲン化カルボキシル基(-C(=O)-X;Xはハロゲン原子)であり、pは、0以上5以下の整数であり、R
2が複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。〕
で表され、下記式(IV):
【化6】
〔式(IV)中、R
1及びR
2、並びに、pは、式(II)と同様である。〕で表される単量体(b)に由来する構造単位である。
【0035】
ここで、式(II)及び式(IV)中のR1~R2を構成し得るアルキル基としては、特に限定されることなく、例えば非置換の炭素数1~5のアルキル基が挙げられる。中でも、R1~R2を構成し得るアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0036】
また、式(II)及び式(IV)中のR2を構成し得るハロゲン原子としては、特に限定されることなく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。中でも、ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0037】
更に、式(II)及び式(IV)中のR2を構成し得るハロゲン化アルキル基としては、特に限定されることなく、例えば炭素数1~5のフルオロアルキル基が挙げられる。中でも、ハロゲン化アルキル基としては、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0038】
また、式(II)及び式(IV)中のR2を構成し得るハロゲン化カルボキシル基としては、特に限定されることなく、例えば塩化カルボキシル基(-C(=O)-Cl)、フッ化カルボキシル基(-C(=O)-F)、臭化カルボキシル基(-C(=O)-Br)などが挙げられる。
【0039】
そして、共重合体の調製の容易性及び電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(II)及び式(IV)中のR1は、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0040】
また、共重合体の調製の容易性及び電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(II)及び式(IV)中のpは、0又は1であることが好ましい。
【0041】
さらに、式(II)及び式(IV)中のpが1~5の何れかである場合、式(II)及び式(IV)中のR2は、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0042】
そして、上述した式(II)で表される単量体単位(B)を形成し得る、上述した式(IV)で表される単量体(b)としては、特に限定されることなく、例えば、以下の(b-1)~(b-12)等のα-メチルスチレン及びその誘導体が挙げられる。
【化7】
【0043】
なお、共重合体の調製の容易性、及び、電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させる観点からは、単量体単位(B)は、α-メチルスチレン又は4-メチル-α-メチルスチレンに由来する構造単位であることが好ましい。即ち、共重合体は、α-メチルスチレン単位又は4-メチル-α-メチルスチレン単位を有することが好ましい。
【0044】
そして、共重合体を構成する全単量体単位中の単量体単位(B)の割合は、特に限定されることなく、例えば30モル%以上70モル%以下とすることができる。中でも、単量体単位(B)の割合は、40モル%以上であることが好ましく、45モル%以上であることがより好ましく、46モル%以上であることが更に好ましく、50モル%以下であることが好ましく、50モル%未満であることがより好ましく、48モル%以下であることが更に好ましい。単量体単位(B)の割合が上記範囲内であれば、レジストパターンの明瞭性を更に向上させることができる。
【0045】
[共重合体の性状]
そして、共重合体は、重量平均分子量(Mw)が、100,000超であることが好ましく、110,000以上であることがより好ましく、150,000以上であることが更に好ましい。共重合体の重量平均分子量が上記範囲内であれば、レジストパターンの明瞭性を更に向上させることができる。
なお、共重合体の重量平均分子量の上限は特に限定されないが、ポジ型レジスト組成物を調製する際にろ過が困難になるのを抑制する観点からは、500,000以下であることが好ましい。
【0046】
また、共重合体の数平均分子量(Mn)は、70,000以上であることが好ましく、110,000以上であることがより好ましく、400,000以下であることが好ましく、300,000以下であることがより好ましい。共重合体の数平均分子量が上記下限値以上であれば、レジストパターンの明瞭性を更に向上させることができる。また、共重合体の数平均分子量が上記上限値以下であれば、ポジ型レジスト組成物の調製が容易である。
【0047】
そして、共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.20以上であることが好ましく、1.30以上であることがより好ましく、1.40以上であることが更に好ましく、1.50以上であることが特に好ましく、2.00以下であることが好ましく、1.90以下であることがより好ましい。
【0048】
ここで、本発明において、「重量平均分子量」及び「数平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用し、標準ポリスチレン換算値として測定することができ、「分子量分布」は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)を算出して求めることができる。
【0049】
また、明瞭性に優れるレジストパターンを効率的に形成する観点からは、共重合体は、以下の(1)~(4)の少なくとも一つを満たすことが好ましく、(1)~(4)の全てを満たすことがより好ましい。
(1)分子量が10,000未満の成分の割合が1.5%未満、好ましくは1.3%以下である。
(2)分子量が50,000未満の成分の割合が30%未満、好ましくは20%以下である。
(3)分子量が100,000未満の成分の割合が70%未満、好ましくは65%以下、より好ましくは30%以下である。
(4)分子量が200,000超の成分の割合が8.0%超、好ましくは30%以上である。
【0050】
<<共重合体の調製方法>>
そして、上述した単量体単位(A)及び単量体単位(B)を有する共重合体は、例えば、単量体(a)と単量体(b)とを含む単量体組成物を重合させた後、得られた共重合体を回収し、任意に精製することにより調製することができる。
なお、共重合体の組成、分子量分布、重量平均分子量及び数平均分子量は、重合条件(例えば、重合温度、重合時間、並びに、重合開始剤の種類及び量など)及び精製条件を変更することにより調整することができる。具体的には、例えば、重量平均分子量及び数平均分子量は、重合温度を低くすれば、大きくすることができる。また、重量平均分子量及び数平均分子量は、重合時間を短くすれば、大きくすることができる。更に、精製を行えば、分子量分布を小さくすることができる。
【0051】
ここで、共重合体の調製に用いる単量体組成物としては、単量体(a)及び単量体(b)を含む単量体成分と、溶媒と、任意に添加される重合開始剤と、任意に添加される添加剤との混合物を用いることができる。そして、単量体組成物の重合に際して、重合の方法として、乳化重合を好適に採用することができる。乳化重合の実施に際して用いる溶媒としては、水が好適である。また、乳化重合にて用いる界面活性剤としては、半硬化牛脂脂肪酸カリ石鹸等の、高級脂肪酸のアルカリ塩よりなる陰イオン性界面活性剤を好適に用いることができる。また、乳化重合に際して用いる重合開始剤としては、過硫酸カリウムなどの水溶性開始剤を好適に用いることができる。さらに、乳化重合に際して、炭酸ナトリウムなどの緩衝剤を任意で用いることができる。
【0052】
また、単量体組成物を重合して得られた重合物は、そのまま共重合体として使用してもよいが、特に限定されることなく、重合物を含む溶液にテトラヒドロフラン等の良溶媒を添加した後、良溶媒を添加した溶液をメタノール等の貧溶媒中に滴下して重合物を凝固させることにより回収することができる。
【0053】
なお、得られた重合物を精製する場合に用いる精製方法としては、特に限定されることなく、再沈殿法やカラムクロマトグラフィー法などの既知の精製方法が挙げられる。中でも、精製方法としては、再沈殿法を用いることが好ましい。
なお、重合物の精製は、複数回繰り返して実施してもよい。
【0054】
そして、再沈殿法による重合物の精製は、例えば、得られた重合物をテトラヒドロフラン等の良溶媒に溶解した後、得られた溶液を、テトラヒドロフラン等の良溶媒とメタノール等の貧溶媒との混合溶媒に滴下し、重合物の一部を析出させることにより行うことが好ましい。このように、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中に重合物の溶液を滴下して精製を行えば、良溶媒及び貧溶媒の種類や混合比率を変更することにより、得られる共重合体の分子量分布、重量平均分子量及び数平均分子量を容易に調整することができる。具体的には、例えば、混合溶媒中の良溶媒の割合を高めるほど、混合溶媒中で析出する共重合体の分子量を大きくすることができる。
【0055】
なお、再沈殿法により重合物を精製する場合、共重合体としては、所望の性状を満たせば、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中で析出した重合物を用いてもよいし、混合溶媒中で析出しなかった重合物(即ち、混合溶媒中に溶解している重合物)を用いてもよい。ここで、混合溶媒中で析出しなかった重合物は、濃縮乾固などの既知の手法を用いて混合溶媒中から回収することができる。
【0056】
<<溶剤>>
ポジ型レジスト組成物が含む溶剤としては、上述した共重合体を溶解可能な溶剤であれば特に限定されることはなく、例えば特許第5938536号公報に記載の溶剤などの既知の溶剤を用いることができる。中でも、適度な粘度のポジ型レジスト組成物を得てポジ型レジスト組成物の塗工性を向上させる観点からは、溶剤としては、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン又は酢酸イソアミルを用いることが好ましい。
【0057】
<<ポジ型レジスト組成物の調製>>
ポジ型レジスト組成物は、上述した共重合体、溶剤、及び任意に用い得る既知の添加剤を混合することにより調製することができる。その際、混合方法は特に限定されず、公知の方法により混合すればよい。また、各成分を混合後、混合物をろ過して調製してもよい。
【0058】
ここで、混合物のろ過方法としては、特に限定されず、例えばフィルターを用いてろ過することができる。フィルターとしては特に限定されず、例えば、フルオロカーボン系、セルロース系、ナイロン系、ポリエステル系、炭化水素系等のろ過膜が挙げられる。中でも、共重合体の調製時に使用することのある金属配管等から金属等の不純物がポジ型レジスト組成物中に混入するのを効果的に防ぐ観点からは、フィルターを構成する材料として、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、テフロン(登録商標)等のポリフルオロカーボン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリイミド、ナイロン、及びポリエチレンとナイロンとの複合膜等が好ましい。フィルターとして、例えば、米国特許第6103122号に開示されているものを使用してもよい。また、フィルターは、CUNO Incorporated製のZeta Plus(登録商標)40Q等として市販されている。さらに、フィルターは、強カチオン性もしくは弱カチオン性のイオン交換樹脂を含むものであってもよい。ここで、イオン交換樹脂の平均粒度は、特に限定されないが、好ましくは2μm以上10μm以下である。カチオン交換樹脂としては、例えば、スルホン化されたフェノール-ホルムアルデヒド縮合物、スルホン化されたフェノール-ベンズアルデヒド縮合物、スルホン化されたスチレン-ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン化されたメタクリル酸-ジビニルベンゼンコポリマー、及び他のタイプのスルホン酸もしくはカルボン酸基含有ポリマー等が挙げられる。カチオン交換樹脂には、H+対イオン、NH4
+対イオン又はアルカリ金属対イオン、例えばK+及びNa+対イオンが供される。そして、カチオン交換樹脂は、水素対イオンを有することが好ましい。このようなカチオン交換樹脂としては、H+対イオンを有するスルホン化されたスチレン-ジビニルベンゼンコポリマーであって、Purolite社のMicrolite(登録商標)PrCHが挙げられる。このようなカチオン交換樹脂は、Rohm and Haas社のAMBERLYST(登録商標)として市販されている。
さらに、フィルターの孔径は、0.001μm以上1μm以下であることが好ましい。フィルターの孔径が上記範囲内であれば、ポジ型レジスト組成物中に金属等の不純物が混入するのを十分に防ぐことができる。
【0059】
<被加工物>
レジストパターンを形成する被加工物としては、レジストパターンを利用して加工される基板などが挙げられる。なお、基板は、後述の下層膜形成工程を経て形成される下層膜を備えていてもよい。
【0060】
<<基板>>
基板としては、特に限定されることなく、プリント基板の製造等に用いられる、絶縁層と、絶縁層上に設けられた銅箔とを有する基板;及び、基板上に遮光層が形成されてなるマスクブランクスなどを用いることができる。
【0061】
基板の材質としては、例えば、金属(シリコン、銅、クロム、鉄、アルミニウム等)、ガラス、酸化チタン、二酸化ケイ素(SiO2)、シリカ、マイカ等の無機物;SiN等の窒化物;SiON等の酸化窒化物;アクリル、ポリスチレン、セルロース、セルロースアセテート、フェノール樹脂等の有機物等が挙げられる。中でも、基板の材質として金属が好ましい。基板として例えばシリコン基板、二酸化ケイ素基板又は銅基板、好ましくはシリコン基板又は二酸化ケイ素基板を用いることで、シリンダー構造の構造体を形成することができる。
【0062】
また、基板の大きさ及び形状は特に限定されるものではない。なお、基板の表面は平滑であってもよく、曲面や凹凸形状を有していてもよく、薄片形状などの基板であってもよい。
【0063】
さらに、基板の表面には、必要に応じて表面処理が施されていてもよい。例えば基板の表層に水酸基を有する基板の場合、水酸基と反応可能なシラン系カップリンク剤を用いて基板の表面処理を行うことができる。これにより、基板の表層を親水性から疎水性に変化させて、基板と下層膜、あるいは基板とレジスト膜との密着性を高めることができる。この際、シラン系カップリング剤としては特に限定されないが、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0064】
<下層膜形成工程>
本発明のレジストパターン形成方法が任意に含む下層膜形成工程では、上述した基板上に下層膜を設けることができる。基板上に下層膜を設けることで基板の表面が疎水化される。これにより、基板とレジスト膜との親和性を高くして、基板とレジスト膜との密着性を高めることができる。下層膜は、無機系の下層膜であってもよく、有機系の下層膜であってもよい。
【0065】
無機系の下層膜は、基板上に無機系材料を塗布し、焼成等を行うことにより形成することができる。無機系材料としては、例えば、シリコン系材料等が挙げられる。
【0066】
有機系の下層膜は、基板上に有機系材料を塗布して塗膜を形成し、乾燥させることにより形成することができる。有機系材料としては、光や電子線に対する感受性を有するものに限定されず、例えば半導体分野及び液晶分野等で一般的に使用されるレジスト材料や樹脂材料を用いることができる。中でも、有機系材料としては、エッチング、特にドライエッチング可能な有機系の下層膜を形成可能な材料であることが好ましい。このような有機系材料であれば、レジスト膜を加工して形成されるパターンを用いて有機系の下層膜をエッチングすることにより、パターンを下層膜へ転写して、下層膜のパターンを形成することができる。中でも、有機系材料としては、酸素プラズマエッチング等のエッチングが可能な有機系の下層膜を形成できる材料が好ましい。有機系の下層膜の形成に用いる有機系材料としては、例えば、Brewer Science社のAL412等が挙げられる。
【0067】
上述した有機系材料の塗布は、スピンコート又はスピンナー等を用いた従来公知の方法により行うことができる。また塗膜を乾燥させる方法としては、有機系材料に含まれる溶媒を揮発させることができるものであればよく、例えばベークする方法等が挙げられる。その際、ベーク条件は特に限定されないが、ベーク温度は80℃以上300℃以下であることが好ましく、200℃以上300℃以下であることがより好ましい。また、ベーク時間は30秒以上であることが好ましく、60秒以上であることがより好ましく、500秒以下であることが好ましく、400秒以下であることがより好ましく、300秒以下であることが更に好ましく、180秒以下であることが特に好ましい。そして、塗膜の乾燥後における下層膜の厚さは特に限定されないが、10nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0068】
<塗布工程>
塗布工程では、上述した基板などの被加工物の上(下層膜を形成した場合には下層膜の上)に、上述したポジ型レジスト組成物を塗布する。ポジ型レジスト組成物の塗布方法としては、特に限定されることなく、レジスト膜の形成に一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0069】
<レジスト膜形成工程>
レジスト膜形成工程では、上述した塗布工程で被加工物上に塗布されたポジ型レジスト組成物を加熱(プリベーク)により乾燥し、レジスト膜を形成する。
レジスト膜形成工程における加熱温度(プリベーク温度)は、120℃以上250℃以下であることが必要であり、140℃以上であることが好ましい。プリベーク温度が120℃以上であれば、であると、溶剤を十分に除去することができ、またレジストパターンの明瞭性を十分に確保することができる。一方、プリベーク温度が250℃以下であれば、プリベークによりレジスト膜中の共重合体の分子量(重量平均分子量)が過度に低下することもなく、また得られるレジスト膜の減膜を抑制することができる。
【0070】
またレジスト膜形成工程における加熱時間(プリベーク時間)は、10秒以上であることが好ましく、20秒以上であることがより好ましく、40秒以上であることが更に好ましく、5分以下であることが好ましく、3分以下であることがより好ましく、2分以下であることが更に好ましい。プリベーク時間が上記範囲内であれば、レジストパターンの明瞭性を更に向上させることができる。
【0071】
なお、レジスト膜形成工程で形成されたレジスト膜中の共重合体の重量平均分子量(Mw)は、プリベーク前のポジ型レジスト組成物中の共重合体の重量平均分子量(Mw)との差異が小さい方が好ましい。なお、レジスト膜中の重量平均分子量(Mw)は、100,000超であることが好ましく、共重合体の重量平均分子量は、110,000以上であることがより好ましく、150,000以上であることが更に好ましく、500,000以下であることが好ましい。
【0072】
<露光工程>
露光工程では、レジスト膜形成工程で形成したレジスト膜に対し、電離放射線等を照射して、所望のパターンを描画する。
なお、電離放射線等の照射には、電子線描画装置やレーザー描画装置などの既知の描画装置を用いることができる。例えばEUVの照射には、EQ-10M(ENERGETIQ社製)、NXE(ASML社製)などの既知の露光装置を用いることができる。
【0073】
<ポスト露光処理工程>
ポスト露光処理工程では、露光工程で露光されたレジスト膜に対して、加熱(ポスト露光ベーク、PEB)及び/又は真空紫外線の照射の少なくとも一方のポスト露光処理を行う。
ポスト露光処理を行うことで、レジスト膜の露光部分における分子量分布の均一化、並びに露光部分の平滑化が促進されるためと推察されるが、レジスト残渣の量を低減することができる。またポスト露光処理を行うことで、レジストパターンの強度が向上するためと推察されるが、パターン倒れを抑制することができる。
なお、ポスト露光処理工程では、加熱と、真空紫外線の照射の双方を行ってもよい。例えば、レジスト膜を加熱した後、加熱後のレジスト膜に対して真空紫外線を照射してもよい。
【0074】
<<加熱(ポスト露光ベーク)>>
加熱によるポスト露光処理を行う場合、ポスト露光処理工程における加熱温度(ポスト露光ベーク温度)は、90℃以上150℃以下であることが必要であり、100℃以上であることが好ましい。ポスト露光ベーク温度が90℃以上であれば、レジスト残渣の量を低下させ、またパターン倒れを抑制することができる。一方、ポスト露光ベーク温度が150℃以下であれば、主鎖切断した共重合体の溶融によるレジストパターンの不明瞭化及び消失を抑制することができる。
【0075】
また加熱によるポスト露光処理を行う場合、ポスト露光処理工程における加熱時間(ポスト露光ベーク時間)は、10秒以上であることが好ましく、20秒以上であることがより好ましく、40秒以上であることが更に好ましく、5分以下であることが好ましく、3分以下であることがより好ましく、2分以下であることが更に好ましい。ポスト露光ベーク時間が上記範囲内であれば、レジスト残渣の量を一層低減しつつ、パターン倒れを十分に抑制することができる。
【0076】
<<真空紫外線の照射>>
真空紫外線の照射によるポスト露光処理を行う場合、真空紫外線の波長は、10nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることが更に好ましく、200nm以下であることが好ましく、180nm以下であることがより好ましい。波長が上記範囲内の真空紫外線を用いることで、上述したレジスト膜の露光部分における分子量分布の均一化、並びに露光部分の平滑化が一層促進され、またレジスト膜中の共重合体が有するカルボニル基(-CO-)の架橋反応が促進されるためと推察されるが、レジスト残渣の量を一層低減しつつ、パターン倒れを十分に抑制することができる。
【0077】
真空紫外線の照射によるポスト露光処理を行う場合、真空紫外線の照射時間は特に限定されず、例えば1秒以上100秒以下とすることができる。また真空紫外線の照射は、既知の装置を用いて行うことができる。
【0078】
<現像工程>
現像工程では、ポスト露光処理工程を経たレジスト膜を現像し、被加工物上に現像膜を形成する。
ここで、レジスト膜の現像は、例えば、レジスト膜を現像液に接触させることで行うことができる。レジスト膜と現像液とを接触させる方法は、特に限定されることなく、現像液中へのレジスト膜の浸漬やレジスト膜への現像液の塗布等の既知の手法を用いることができる。
【0079】
<<現像条件>>
現像は、レジストパターンの明瞭性を十分に向上させる観点から、照射量が0.60Ethでの残膜率が0.850超となる条件で行うことが好ましく、0.900以上となる条件で行うことがより好ましい。
また、現像は、レジストパターンの明瞭性を十分に向上させる観点から、照射量が0.80Ethでの残膜率が0.600以上となる条件で行うことが好ましく、0.700以上となる条件で行うことがより好ましい。
なお上述した残膜率を満たす現像条件は、現像液の種類、現像液の温度、及び現像時間などを調整し、特許第6790359号、特許第6575141号に記載された手法などにより決定することができる。
【0080】
[現像液]
現像液は、上述した共重合体の性状等に応じて適宜選定することができる。具体的に、現像液の選定に際しては、露光工程を実施する前のレジスト膜を溶解しない一方で、露光工程及びポスト露光ベーク工程を経たレジスト膜の露光部を溶解しうる現像液を選択することが好ましい。また、現像液は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で混合して用いてもよい。
【0081】
そして、現像液としては、例えば、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(CF3CFHCFHCF2CF3)、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロヘキサン等のハイドロフルオロカーボン、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン、1,1-ジクロロ-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロパン(CF3CF2CHCl2)、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン(CClF2CF2CHClF)等のハイドロクロロフルオロカーボン、メチルノナフルオロブチルエーテル(CF3CF2CF2CF2OCH3)、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル(CF3CF2CF2CF2OC2H5)、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(CF3CF2CF(OCH3)C3F7)等のハイドロフルオロエーテル、及び、CF4、C2F6、C3F8、C4F8、C4F10、C5F12、C6F12、C6F14、C7F14、C7F16、C8F18、C9F20等のパーフルオロカーボンなどのフッ素系溶剤;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール等のアルコール;酢酸アミル、酢酸ヘキシルなどのアルキル基を有する酢酸エステル;フッ素系溶剤とアルコールとの混合物;フッ素系溶剤とアルキル基を有する酢酸エステルとの混合物;アルコールとアルキル基を有する酢酸エステルとの混合物;フッ素系溶剤とアルコールとアルキル基を有する酢酸エステルとの混合物;などを用いることができる。これらの中でも、EUVリソグラフィによって微細なレジストパターンを高解像度でより効率的に形成する観点から、アルコールが好ましく、炭素数が2以上6以下のアルコールがより好ましく、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノールが更に好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。
なお、現像液は、使用の前にろ過してもよい。そして、ろ過方法としては、例えば上述した「ポジ型レジスト組成物の調製」の項で説明した、フィルターを用いたろ過方法が挙げられる。
【0082】
[現像時間及び温度]
なお、現像時の現像液の温度は、特に限定されないが、例えば21℃以上25℃以下とすることができる。また、現像時間は、例えば、15秒以上4分以下とすることができる。
【0083】
<現像液除去工程>
本発明のレジストパターン形成方法が任意に含む現像液除去工程では、現像されたレジスト膜から現像液を除去し、被加工物にレジストパターンを形成する。
現像液の除去は、窒素などの気体を用いたエアブロー、又はリンス液を用いたリンス処理によって行うことができる。
ここで、リンス処理において、現像されたレジスト膜とリンス液とを接触させる方法としては、特に限定されることなく、リンス液中へのレジスト膜の浸漬やレジスト膜へのリンス液の塗布等の既知の手法を用いることができる。
【0084】
リンス液としては、現像されたレジスト膜に付着した現像液やレジストの残渣を除去可能なものであれば、特に限定されることなく、任意のリンス液を用いることができる。
【0085】
なお、リンス時のリンス液の温度は、特に限定されないが、例えば21℃以上25℃以下とすることができる。また、リンス時間は、例えば、5秒以上3分以下とすることができる。
【0086】
上述したリンス液は、使用の前にろ過してもよい。そして、ろ過方法としては、例えば上述した「ポジ型レジスト組成物の調製」の項で説明した、フィルターを用いたろ過方法が挙げられる。
【0087】
<前照射工程>
本発明のレジストパターン形成方法が任意に含む前照射工程では、露光工程に先んじて、レジスト膜形成工程で得られたレジスト膜に対して真空紫外線を照射する。レジスト膜に真空紫外線を照射することで、最終的に得られるレジストパターンの強度を向上してパターン倒れを抑制することができる。
なお、レジスト膜に照射する真空紫外線の波長、及び真空紫外線の照射時間は、特に限定されず、「ポスト露光処理工程」における真空紫外線の照射の際と同様とすることができる。
【0088】
<後照射工程>
本発明のレジストパターン形成方法が任意に含む後照射工程では、被加工物上に形成された現像膜に対して真空紫外線を照射する。現像膜に真空紫外線を照射することで、最終的に得られるレジストパターンの強度を向上してパターン倒れを抑制することができる。
なお、現像膜に照射する真空紫外線の波長、及び真空紫外線の照射時間は、特に限定されず、「ポスト露光処理工程」における真空紫外線の照射の際と同様とすることができる。
また、レジストパターン形成方法が上述する現像液除去工程を含む場合、後照射工程は、現像工程の後であれば、現像液除去工程の前と後の何れに行ってもよいし、現像液除去工程の前と後の両方に行ってもよい。
【0089】
(エッチング方法)
上述したレジストパターンの形成方法で得られたレジストパターンをマスクとして被加工物(例えば、下層膜及び/又は基板)をエッチングし、被加工物にパターンを形成することができる。
エッチング回数は特にされず、1回でも複数回であってもよい。また、エッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよいが、ドライエッチングが好ましい。ドライエッチングは、公知のドライエッチング装置を用いて行うことができる。ドライエッチングに使用するエッチングガスとしては、エッチングされる下層膜や基板の元素組成等により適宜選択することができる。エッチングガスとして、例えばCHF3、CF4、C2F6、C3F8、SF6等のフッ素系ガス;Cl2、BCl3等の塩素系ガス;O2、O3、H2O等の酸素系ガス;H2、NH3、CO、CO2、CH4、C2H2、C2H4、C2H6、C3H4、C3H6、C3H8、HF、HI、HBr、HCl、NO、NH3、BCl3等の還元性ガス;He、N2、Ar等の不活性ガスなどが挙げられる。これらのガスは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、無機系の下層膜のドライエッチングには、通常、酸素系ガスが用いられる。また、基板のドライエッチングには、通常、フッ素系ガスが用いられ、フッ素系ガスと不活性ガスとを混合したものが好適に用いられる。
【0090】
さらに、必要に応じて、基板をエッチングする前、又は、基板をエッチングした後に、基板上に残存する下層膜を除去してもよい。基板をエッチングする前に下層膜を除去する場合、下層膜はパターンが形成された下層膜であってもよく、パターンが形成されていない下層膜であってもよい。
【0091】
ここで、下層膜を除去する方法としては、例えば上述したドライエッチング等が挙げられる。また、無機系の下層膜の場合には、塩基性液又は酸性液等の液体、好ましくは塩基性の液体を下層膜に接触させて下層膜を除去してもよい。ここで、塩基性液としては、特に限定されず、例えば、アルカリ性過酸化水素水等が挙げられる。アルカリ性過酸化水素水を用いてウェット剥離により下層膜を除去する方法としては、下層膜とアルカリ性過酸化水素水とが加熱条件下で一定時間接触できる方法であれば特に限定されず、例えば下層膜を加熱したアルカリ性過酸化水素水に浸漬する方法、加熱環境下で下層膜にアルカリ性過酸化水素水を吹き付ける方法、加熱したアルカリ性過酸化水素水を下層膜に塗工する方法等が挙げられる。これらのうちのいずれかの方法を行った後、基板を水洗し、乾燥させることで、下層膜が除去された基板を得ることができる。
【0092】
以下に、上述した本発明のレジストパターン形成方法によりレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをマスクとして、被加工物(例えば、下層膜及び/又は基板)を上記エッチング方法によりエッチングする一連の流れについて、例を挙げて説明する。なお、本発明のレジストパターン形成方法及びエッチング方法は、以下の例に示す方法に限定されるものではない。
【0093】
<第一の態様>
第一の態様では、EUVを用いたレジストパターン形成方法によりレジストパターンを形成し、次いでエッチングを行う。具体的には、第一の態様は、下層膜形成工程と、塗布工程と、レジスト膜形成工程と、露光工程と、現像工程と、現像液除去工程と、エッチング工程とを少なくとも含む。
【0094】
まず、下層膜形成工程において、基板上に無機系材料を塗布し、焼成を行うことにより無機系の下層膜を形成する。
次いで、塗布工程において、下層膜形成工程で形成した無機系の下層膜の上にポジ型レジスト組成物を塗布する。
そして、レジスト膜形成工程において、無機系の下層膜の上のポジ型レジスト組成物を塗布し、乾燥させてレジスト膜を形成する。
それから、露光工程において、レジスト膜形成工程で形成したレジスト膜に対してEUVを照射して、所望のパターンを描画する。
さらに、現像工程において、露光工程で露光されたレジスト膜と現像液とを接触させてレジスト膜を現像し、下層膜上にレジストパターンを形成する。
そして、現像液除去工程において、現像工程で現像されたレジスト膜と、リンス液とを接触させて現像されたレジスト膜をリンスする。
それから、エッチング工程において、上記レジストパターンをマスクとして下層膜をエッチングし、下層膜にパターンを形成する。
次いで、パターンが形成された下層膜をマスクとして基板をエッチングして、基板にパターンを形成する。
【0095】
<第二の態様>
第二の態様では、電子線を用いたレジストパターン形成方法によりレジストパターンを形成し、次いでエッチングを行う。具体的には、第二の態様は、塗布工程と、レジスト膜形成工程と、露光工程と、現像工程と、現像液除去工程と、エッチング工程とを少なくとも含む。
【0096】
まず、塗布工程において、基板の上にポジ型レジスト組成物を塗布する。
次いで、レジスト膜形成工程において、基板の上のポジ型レジスト組成物を乾燥させてレジスト膜を形成する。
そして、露光工程において、レジスト膜形成工程で形成したレジスト膜に対して電子線を照射して、所望のパターンを描写する。
さらに、現像工程において、露光工程で露光されたレジスト膜と現像液とを接触させてレジスト膜を現像し、基板上にレジストパターンを形成する。
そして、現像液除去工程において、現像工程で現像されたレジスト膜と、リンス液とを接触させて現像されたレジスト膜をリンスする。
それから、エッチング工程において、上記レジストパターンをマスクとして基板をエッチングし、基板にパターンを形成する。
【実施例0097】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、実施例及び比較例において、共重合体の重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分布、共重合体中の各分子量の成分の割合は、下記の方法で測定した。
【0098】
<重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分布>
実施例、比較例で得られた共重合体についてゲル浸透クロマトグラフィーを用いて重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。具体的には、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー社製、HLC-8220)を使用し、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を標準ポリスチレン換算値として求めた。そして、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
<共重合体中の各分子量の成分の割合>
ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー社製、HLC-8220)を使用し、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、共重合体のクロマトグラムを得た。そして、得られたクロマトグラムから、ピークの総面積(A)、分子量が10,000未満の成分のピークの面積の合計(B)、分子量が50,000未満の成分のピークの面積の合計(C)、分子量が100,000未満の成分のピークの面積の合計(D)、分子量が200,000超の成分のピークの面積の合計(E)を求めた。そして、下記式を用いて各分子量の成分の割合を算出した。
分子量が10,000未満の成分の割合(%)=(B/A)×100
分子量が50,000未満の成分の割合(%)=(C/A)×100
分子量が100,000未満の成分の割合(%)=(D/A)×100
分子量が200,000超の成分の割合(%)=(E/A)×100
【0099】
(実施例1)
<共重合体の調製>
<<半硬化牛脂脂肪酸カリ石鹸の固形分18%の水溶液の調製>>
イオン交換水100gを用意し、撹拌しながら70℃まで昇温して、水酸化カリウム(49%水溶液)を8.40g添加した。次に、牛脂45°硬化脂肪酸HFA(日油社製)19.6gを1.28g/分の添加速度で添加して、その後、ケイ酸カリウムを0.126g添加した。そして80℃で2時間以上撹拌して、半硬化牛脂脂肪酸カリ石鹸の固形分18%の水溶液を得た。
<<重合物の合成>>
撹拌子を入れたガラス製のアンプルに、単量体(a)としてのα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル(下式)3.00gと、単量体(b)としてのα-メチルスチレン1.066gとを加えた。さらに、同じアンプルに、上記で調製した半硬化牛脂脂肪酸カリ石鹸の固形分18%の水溶液0.5463gに対してイオン交換水6.771gを加えたものを添加して、単量体組成物としてからアンプルを密封し、窒素ガスで加圧及び脱圧を10回繰り返して系内の酸素を除去した。
【化8】
そして、系内を75℃に加温し、1時間重合反応を行った。次に、系内にテトラヒドロフラン10gを加え、得られた溶液をメタノール300mL中に滴下して重合物を析出させた。その後、析出した重合物をろ過で回収した。なお、得られた重合物は、α-メチルスチレン単位とα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位とを50モル%ずつ含む共重合体であった。
[重合物の精製]
その後、ろ過により回収した重合物を10gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、得られた溶液をTHFとメタノール(MeOH)との混合溶媒100g(THF:MeOH(質量比)=30:70)に滴下し、白色の凝固物(α-メチルスチレン単位及びα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位を含有する共重合体)を析出させた。その後、析出した共重合体を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の共重合体を得た。次いで、ろ過により回収した重合物を10gのTHFに溶解させ、得られた溶液をTHFとMeOHとの混合溶媒100g(THF:MeOH(質量比)=33:67)に滴下し、白色の凝固物を析出させた。更に、ろ過により回収した重合物を10gのTHFに溶解させ、得られた溶液をTHFとMeOHとの混合溶媒100g(THF:MeOH(質量比)=33:67)に滴下し、白色の凝固物(α-メチルスチレン単位及びα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位を含有する共重合体)を析出させた。
得られた共重合体は、重量平均分子量が363,867であり、数平均分子量が267,588であり、分子量分布が1.360であった。
また得られた共重合体における各分子量の成分の割合は、以下の通りであった。
分子量が10,000未満の成分の割合(%)=0.00%
分子量が50,000未満の成分の割合(%)=0.10%
分子量が100,000未満の成分の割合(%)=1.69%
分子量が200,000超の成分の割合(%)=87.68%
<ポジ型レジスト組成物の調製>
得られた共重合体を溶剤としての酢酸イソアミル(東京化成工業株式会社製)に溶解させ、共重合体の濃度が2質量%であるレジスト溶液(ポジ型レジスト組成物)を調製した。
<感度曲線の作成>
スピンコーター(ミカサ製、MS-A150)を使用し、ポジ型レジスト組成物を直径4インチのシリコンウェハ上に塗布した(塗布工程)。そして、塗布したポジ型レジスト組成物を温度120℃のホットプレートで1分間加熱して、シリコンウェハ上にレジスト膜を形成した(レジスト膜形成工程)。レジスト膜の厚さは50nmであった。なお、レジスト膜に含まれる共重合体の重量平均分子量及び数平均分子量、並びにレジスト膜の密度(膜密度)を測定した。プリベーク後の重量平均分子量及び分子量分布、並びに膜密度を表1に示す。
そして、電子線描画装置(エリオニクス社製、ELS-S50)を用いて、電子線の照射量が互いに異なるパターン(寸法500μm×500μm)をレジスト膜上に複数描画し(露光工程)、更に、露光後のレジスト膜を、90℃のホットプレートで1分間加熱した(ポスト露光処理工程)。ポスト露光処理後のレジスト膜について、現像液としてイソプロピルアルコールを用いて温度23℃で1分間の現像処理を行った(現像工程)。その後、窒素ブローにより現像液を除去してレジストパターンを形成した(現像液除去工程)。
なお、電子線の照射量は、4μC/cm
2から200μC/cm
2の範囲内で4μC/cm
2ずつ異ならせた。
次に、描画した部分のレジスト膜の厚みを光学式膜厚計(SCREENセミコンダクタソリューション社製、ラムダエース)で測定し、電子線の総照射量の常用対数と、現像後のレジスト膜の残膜率(=(現像後のレジスト膜の膜厚/シリコンウェハ上に形成したレジスト膜の膜厚)との関係を示す感度曲線を作成した。
<明瞭性(γ値)>
上記のようにして得られた感度曲線(横軸:電子線の総照射量の常用対数、縦軸:レジスト膜の残膜率(0≦残膜率≦1.00))について、下記の式を用いてγ値を求めた。なお、下記の式中、E
0は、残膜率0.20~0.80の範囲において感度曲線を二次関数にフィッティングし、得られた二次関数(残膜率と総照射量の常用対数との関数)に対して残膜率0を代入した際に得られる総照射量の対数である。また、E
1は、得られた二次関数上の残膜率0の点と残膜率0.50の点とを結ぶ直線(感度曲線の傾きの近似線)を作成し、得られた直線(残膜率と総照射量の常用対数との関数)に対して残膜率1.00を代入した際に得られる総照射量の対数である。そして、下記式は、残膜率0と1.00との間での上記直線の傾きを表している。
【数1】
γ値の値が大きいほど、感度曲線の傾きが大きく、明瞭性の高いパターンを良好に形成し得ることを示す。
<Eth、照射量が0.60Eth及び0.80Ethでの残膜率>
上記γ値の算出の際に得られた直線(感度曲線の傾きの近似線)の残膜率が0となる際の、電子線の総照射量Eth(μC/cm
2)を求めた。そして、感度曲線から、照射量が0.60Ethでの残膜率、照射量が0.80Ethでの残膜率を読み取った。結果を表1に示す。
<レジスト残渣の量(残渣低減)>
上記感度曲線を用いて下記のように評価を行った。
残膜率0.2超0.8以下の範囲(第一の範囲)における感度曲線の接線の傾きの絶対値の最少値をS1、残膜率0.2以下の範囲(第二の範囲)における感度曲線の接線の傾きの絶対値の最少値をS2とし、S1とS2を比較して下記の基準で評価した。なおS2がS1以下ということは、感度曲線の第二の範囲にショルダーが存在し、レジスト残渣が多く存在することを意味する。
A:S2>S1である
B:S2≦S1である
<パターン倒れ抑制>
スピンコーター(ミカサ製、MS-A150)を使用し、ポジ型レジスト組成物を、直径4インチのシリコンウェハ上に厚さ50nmになるように塗布した(塗布工程)。次いで、塗布したポジ型レジスト組成物を温度120℃のホットプレートで1分間加熱して、シリコンウェハ上にレジスト膜を形成した(レジスト膜形成工程)。レジスト膜の厚さは50nmであった。そして、電子線描画装置(エリオニクス社製、ELS-S50)を用いてレジスト膜を最適露光量(Eop)で露光して、パターンを描画した(露光工程)。露光後のレジスト膜を、90℃のホットプレートで1分間加熱した(ポスト露光処理工程)。ポスト露光処理後のレジスト膜について、現像液としてイソプロピルアルコールを用いて温度23℃で1分間の現像処理を行った(現像工程)。その後、窒素ブローにより現像液を除去して、レジストパターンを形成した(現像液除去工程)。
そして、形成したレジストパターンのパターン倒れの有無を観察した。なお、最適露光量(Eop)は、それぞれEthの約2倍の値を目安として、適宜設定した。また、レジストパターンのライン(未露光領域)とスペース(露光領域)は、それぞれ20nmとした。
そして、以下の基準に従ってパターン倒れ抑制を評価した。
A:パターン倒れ無し
B:パターン倒れ有り
【0100】
(実施例2~121)
プリベーク温度、プリベーク時間、ポスト露光ベーク温度及びポスト露光ベーク時間の少なくとも何れかを表1~4のように変更した以外は実施例1と同様にして、共重合体の調製、ポジ型レジスト組成物の調製及びレジストパターンの形成を行い、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1~4に示す。
【0101】
(比較例1~64)
プリベーク温度、プリベーク時間、ポスト露光ベーク温度及びポスト露光ベーク時間の少なくとも何れかを表5~6のように変更、又はポスト露光処理(ポスト露光ベーク)を行わなかった以外は実施例1と同様にして、共重合体の調製、ポジ型レジスト組成物の調製及びレジストパターンの形成を行い、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を5~6に示す。
なお、比較例1では、プリベーク温度を90℃と低いためレジスト膜形成工程において溶剤を十分に除去することができず、レジスト膜を良好に形成することができなかった。
また、比較例13、25、28、31、34、37、40、43、46、49、51、53、55、57、59、61、63では、ポスト露光ベーク温度が160℃と高いため、現像工程においてレジストパターンが消失した。
さらに、比較例64では、プリベーク温度が260℃と高いため、レジスト膜工程において共重合体が炭化してしまい、レジスト膜を良好に形成することができなかった。
【0102】
なお、各表に示すレジスト膜の「減膜率」は、各実施例及び比較例においてレジスト膜形成工程で得られたレジスト膜の厚みをTとした場合に、Tと実施例1のレジスト膜の厚さ(50nm)を用いて、減膜率(%)=(50-T)/50×100で算出される。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
表1~4より、実施例1~121では、明瞭性にすぐれ且つレジスト残渣の量が低減されたレジストパターンを形成できていることが分かる。また実施例1~121では、レジストパターンの倒れを抑制できていることが分かる。