(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100417
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
G01N35/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019051200
(22)【出願日】2019-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田上 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】坂下 敬道
(72)【発明者】
【氏名】野田 和広
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CC17
2G058GB02
(57)【要約】
【課題】反応容器に分注された検体または試薬の重量を、高精度にかつ安価に確認できる自動分析装置を提供する。
【解決手段】自動分析装置は、検体および試薬を収容可能な反応容器(108)と、反応容器の全重量を支持する支持部と、反応容器および支持部の全重量を測定する重量測定部とを備える。支持部および重量測定部の構成は、各実施例に示すように様々に設計可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体および試薬を収容可能な反応容器と、
前記反応容器の全重量を支持する支持部と、
前記反応容器および前記支持部の全重量を測定する重量測定部と
を備える、自動分析装置。
【請求項2】
前記重量測定部は、前記自動分析装置に対して固定される重量測定機構に含まれ、
前記自動分析装置は、前記反応容器を、前記重量測定機構へと移動させる反応容器移動部を備え、
前記支持部は、前記重量測定機構に設けられる、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記自動分析装置は、前記反応容器を引き上げる反応容器移動部を備え、
前記支持部および前記重量測定部は、前記反応容器移動部に設けられ、
前記支持部は、前記反応容器を引き上げる際に前記反応容器を把持する把持部として構成される、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記自動分析装置は、前記反応容器を移動させる反応容器移動部と、前記反応容器を引き上げる反応容器引上部とを備え、
前記支持部および前記重量測定部は、前記反応容器引上部に設けられる、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記反応容器は、前記反応容器の側面に張り出し部を備え、
前記支持部は、前記張り出し部を支持することによって前記反応容器を支持し、
前記重量測定部は、前記支持部が前記張り出し部を支持した状態で、前記全重量を測定する、
請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記支持部は、弾性的に開閉可能な開閉部を備え、
前記開閉部は、水平方向に、かつ前記反応容器の移動方向に対して垂直な方向に、開閉可能である、
請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記自動分析装置は、
前記全重量を記憶する記憶部と、
前記反応容器に前記検体または前記試薬が分注される際に、分注前の前記全重量と、分注後の前記全重量とに基づき、分注された前記検体または前記試薬の重量を算出する、重量計算部と
を備える、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記自動分析装置は、前記検体または前記試薬の前記重量に基づき、前記検体または前記試薬の体積を算出する、体積計算部を備える、請求項7に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記自動分析装置は、
前記検体または前記試薬について、規定量範囲を記憶する記憶部と、
前記検体または前記試薬の前記重量と、前記規定量範囲とに基づき、前記検体または前記試薬の量が前記規定量範囲内であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定の結果を出力する出力部と
を備える、請求項7又は8に記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液、尿等の生体由来試料に含まれる測定対象成分の定性・定量分析を行うため、試料(サンプル)に試薬を添加し、生化学的な反応をさせることによって濃度を測定する、自動分析装置が公知である。自動分析装置の例は、特許文献1~4に記載される。
【0003】
このような自動分析装置は、測定結果の再現性向上および測定の迅速化が図れるため、大病院、検査センタ等に普及している。その理由の一つとして、用手法と比較して、生化学的反応や抗原抗体反応に必要なサンプルと試薬とを高精度かつ迅速に自動分注可能であるという点が挙げられる。濃度測定は、規定液量のサンプルと試薬とを混合することによる反応により正確に行われるため、分注装置における分注量の正確性、再現性は分析性能の信頼性を確保するために重要である。特に、輸血を目的とした血液サンプルに対する血液検査においては、輸血による感染症のリスクを可能な限り低減することが好ましく、感染症項目の分析性能の信頼性が高度に求められる。
【0004】
分析結果の信頼性が特に高度に求められる自動分析装置においては、装置内での分析工程について期待どおりの動作が実施されたかどうかを監視することにより、間接的に分析結果の正しさの確証を行うことが一般的である。特に、分析結果の正しさは、分析時の検体の液量および分析試薬の液量が期待どおりに混合されることが大前提になっており、分析結果の信頼性向上は、期待される分析工程が正しく実施されたかを確認することで実現できる。例えば検体分注時にフィブリンなどと検体を同時に分注すると、規定量の検体を分注することができない場合がある。
【0005】
分注装置においては、細いプローブ配管に接続する配管内の圧力を陰圧にすることで検体をブローブ配管に吸い込み、検体容器から検体をプローブ内に移すことで分注を実現する場合がある。このとき、プローブ配管内およびプローブ内の圧力を監視することで、フィブリンによる詰まりを監視する技術が知られている。このように、分析工程には、規定量の検体と試薬とをそれぞれ別容器から反応容器へ分注する分注工程が含まれる。
【0006】
従来手法では、停止動作や流路状態監視など、分注機構の動作の正しさを確認することで、間接的に検体や試薬の量の確認を実現している。しかし、そのような分注機構の動作の結果として期待液量が正しく反応容器へ分注されたかを、直接的に、高精度にかつ安価に確認する手段がなかった。
【0007】
近年、高齢化に伴う医療費の上昇により、分析に関わる検査コスト低減要求が高く、一回の分析に使用する検体および試薬の液量の低減を実現した自動分析装置が実現されている。混合される液量は、数マイクロリットルから数十マイクロリットルの範囲である。また、このような液量を収容し規定の反応を実現するために、容器が小型化している。また、容器にかかるコストを低減するため、容器自体の体積を低減するなど、反応容器自体の重量も反応液の重量と同じ程度に小さくなってきている。従って、特にこのような容器を含めた反応液の重量を正確に測定するためには、高精度な重量測定を実現する必要がある。
【0008】
一方で、検査を行う施設には、クリニックや病院内の検査室、検査を専門とした大規模な検査センタなどがあり、必要とされる処理数は、1時間あたり50テスト~500テストと幅がある。自動分析装置においては、正確な分析のためにサンプルや試薬を規定の時間内に混合することが要求され、分析サイクルの一サイクル内で、検体分注および試薬分注が規定の決められた順番で実施されることが一般的である。たとえば2種類の試薬を用いる場合には、検体分注工程、第一試薬分注工程、および第二試薬分注工程の合計3工程を一サイクルとして実施する必要があり、各分注工程について重量測定工程を入れた場合には、単純計算で合計6工程を一サイクルとして実施する必要がある。この場合において、1時間あたり50テスト~500テストを実現するためには、単純計算で、1工程に充てられる時間は1.2秒~12秒程度となる。このように、処理能力に応じて重量測定に使用できる時間に幅がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2015/072358号
【特許文献2】特開平11-094840
【特許文献3】特開2017-090242
【特許文献4】特開2002-350450
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、従来の技術では、反応容器に分注された検体または試薬の重量を、高精度にかつ安価に確認する手段がないという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、反応容器に分注された検体または試薬の重量を、高精度にかつ安価に確認できる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る自動分析装置は、
検体および試薬を収容可能な反応容器と、
前記反応容器の全重量を支持する支持部と、
前記反応容器および前記支持部の全重量を測定する重量測定部と
を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、反応容器に分注された検体または試薬の重量を、高精度にかつ安価に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】複数の分析動作を並列的に実行する場合の処理の進行の例
【
図3】実施例1に係る支持部および重量測定部の構成の例
【
図4】複数の分析動作を並列的に実行する場合の、重量測定を含む処理の進行の例
【
図5】実施例2に係る支持部および重量測定部の構成の例
【
図6】実施例3に係る支持部および重量測定部の構成の例
【
図7】実施例4に係る支持部および重量測定部の構成の例
【
図8】試薬プローブが第一試薬を分注する場合の動作例
【
図11】実施例7に係る自動分析装置の動作を説明する図
【
図12】実施例8に係る自動分析装置の動作を説明する図
【
図13】
図12の規定量範囲を用いた判定処理および出力処理の例
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
[実施例1]
まず、
図1および
図2を用いて本発明の実施例の前提となる自動分析に係る処理の具体例を説明し、次に、
図3および
図4を用いて実施例に係る重量測定部の構成について説明する。
【0016】
図1に、実施例1に係る自動分析装置の構成の例を示す。自動分析装置は、検体および試薬を収容可能な反応容器(108)を備える。また、自動分析装置は、反応容器(108)を移動させる反応容器移動部として、第一反応容器搬送本体部(105)および第二反応容器搬送本体部(124)を備える。反応容器(108)は、自動分析装置(より厳密には、たとえば装置筐体(110))に対して移動可能である。
【0017】
反応容器架設部(109)に置かれた反応容器(108)は、第一反応容器搬送本体部(105)によって、反応容器架設部(109)から、第一反応容器架設ポジション(119)へと移動され設置される。
【0018】
反応容器架設部(109)上に置かれた使い捨ての検体チップ(104)は、第一反応容器搬送本体部(105)の反応容器搬送部横移動機構(106)、および反応容器搬送部縦移動機構(107)によって移動し、検体チップ装着部(111)へと移動され設置される。
【0019】
検体プローブ(103)は回転し、検体チップ装着部(111)にて検体チップ(104)をプローブ先端へ装着する。検体容器(102)は、搬送部(100)によって検体設置部(101)上へと搬送される。検体容器(102)に入った検体は、検体プローブ(103)で吸引される。
【0020】
反応容器設置部(118)は回転し、第一反応容器架設ポジション(119)に設置された反応容器(108)を検体分注位置(120)まで移動させる。検体プローブ(103)は検体を吸引した後に回転し、検体分注位置(120)において規定液量の検体を反応容器(108)へ吐出する。検体を吐出した後、検体プローブ(103)はさらに回転し、検体チップ廃棄部(112)で使用済みの検体チップ(104)を廃棄する。
【0021】
試薬ディスク(114)上の試薬ボトル(115)は、試薬ディスク(114)の回転によって回転移動する。試薬ボトル(115)が試薬吸引位置(116)にある時に、試薬プローブ(113)によって試薬ボトル(115)から第一試薬が吸引される。次に、反応容器設置部(118)が回転し、反応容器(108)を試薬分注位置(122)まで移動させる。
【0022】
次に、試薬プローブ(113)は回転し、試薬分注位置(122)において規定液量の第一試薬を吐出する。反応容器設置部(118)は、37℃などの一定の温度となるよう温度制御されており、第一試薬は、検体内の特定抗原とのみ特異的に結合する抗体を含んでおり、反応容器設置部(118)に設置された反応容器(108)内において、検体と第一試薬とが抗原抗体反応を起こす。
【0023】
第一試薬はあらかじめ抗体と蛍光物質が結合した成分となっている。一定時間が経過し、抗原抗体反応が十分進行した後、反応容器設置部(118)は、再度、試薬分注位置(122)へと反応容器(108)を移動させる。
【0024】
次に、試薬プローブ(113)は第二試薬を試薬ボトル(115)から吸引する。ここで、第一試薬の試薬ボトルと、第二試薬の試薬ボトルとは、個別に設けられていてもよい。試薬プローブ(113)は、試薬分注位置(122)において、反応容器(108)に第二試薬を分注する。
【0025】
第二試薬は、前記抗原とのみ特異的に結合する抗体を含む試薬となっており、あらかじめ抗体と磁性粒子が結合した成分となっている。時間が経過し、抗原抗体反応が一定程度進行することで、検体中に存在する抗原には、磁性粒子と蛍光発光体に結合した最終反応物が十分量生成されている。
【0026】
次に、反応容器設置部(118)は、第二反応容器架設ポジション(121)まで回転移動する。第二反応容器搬送本体部(124)は、反応容器設置部(118)の反応容器(108)を反応容器洗浄位置(126)まで移動させる。
【0027】
反応容器洗浄位置(126)において、反応容器中の反応液内で抗体と結合した磁性粒子の磁性を利用し、反応容器の外側に設置した磁石で容器内に補足した状態で反応溶液を廃棄する。これによって、抗原以外の検体由来の物質を洗い流し除去し、最終反応物のみ反応溶液内に残存させるB/F分離を実施する。
【0028】
洗浄試薬プローブ(129)は、バッファ液を反応容器洗浄位置(126)にて吐出する。次に、第二反応容器搬送本体部(124)が、反応容器(108)を、反応容器設置部(118)の第二反応容器架設ポジション(121)まで移動させる。なお、第二反応容器搬送本体部(124)は、第二反応容器搬送部横移動機構(128)によって移動させることが可能である。
【0029】
なお、自動分析装置は、反応容器洗浄槽(125)および洗浄プローブ洗浄槽(117)を備えてもよい。
【0030】
次に、反応容器設置部(118)は回転し、反応容器(108)を反応容器分析吸引位置(123)まで移動させる。反応液吸引プローブ(132)は、反応容器分析吸引位置(123)にある反応容器(108)から反応液を吸引する。次に、反応液吸引プローブ(132)は、反応液を反応液分析部(130)へと送液し、蛍光体の発光量を測定する。
【0031】
上述のような一連の動作は、機構動作制御部(133)によって制御される。分析動作制御部(134)は、蛍光体の発光量を取得し、発光量に基づいて分析を行い、分析結果を出力する。分析の際には、たとえば、検体の量を表す情報(規定液量情報)と、蛍光体の発光量および抗原の数が比例するという原理とが利用される。
【0032】
ここまでが、検体について測定を行うための1回の分析動作の単位の例である。自動分析装置は、一度に複数回の分析動作を実施することができる。また、自動分析装置は、複数の分析動作を同時進行的に実施できるように、パイプライン的に機構動作制御部(133)が動作制御することができる。このような構成により、滞りなく複数検体の分析処理が可能となる。
【0033】
ここで、分析動作にかかる時間について説明する。1回の分析動作は、検体分注工程、第一試薬分注工程、第二試薬分注工程、洗浄工程、分析工程という5つの工程を含み、相当程度の時間を要する。たとえば1回の分析動作に10分を要するとすると仮定すると、複数の分析動作を逐次的に実行する場合には、3回の分析動作を行うためには30分が必要となる。
【0034】
図2に、複数の分析動作を並列的に実行する場合の処理の進行の例を示す。各検体に対して5つの工程が必要である。まず、時刻1において検体1の処理1を実行する。次に、時刻2において、検体1の処理2と、検体2の処理1とを同時に実行する。次に、時刻3において、検体1の処理3と、検体2の処理2と、検体3の処理1とを同時に実行する。
図2の太枠内に示すように、時刻5において、全ての処理1~5が、それぞれ異なる検体について同時に実行されることになる。このように検体1から検体5までを処理することにより、5個の検体に対して5個の処理を並行して実行することができ、複数の分析動作を30分よりも短い時間で実行することができる。
【0035】
説明のため、処理1を検体分注工程、処理2を第一試薬分注工程、処理3を第二試薬分注工程、処理4を洗浄工程、処理5を分析工程とすると、
図1に示したとおり、全ての処理工程で反応容器設置部(118)が共有されている。これを実現するために、反応容器設置部(118)には複数の反応容器(108)が設置され、反応容器設置部(118)が回転することにより、各反応容器(108)が各時刻において適切な位置に移動される。これらの位置は、検体分注位置(120)と、試薬分注位置(122)と、第二反応容器架設ポジション(121)と、反応容器分析吸引位置(123)とを含む。
【0036】
1回の分析動作を60秒で完了させる場合、すなわち分析動作を60秒周期で実行する場合には、各工程に割り当てることができる時間は平均12秒となる。
【0037】
次に、実施例1に係る重量測定部の構成および動作について説明する。
図1に示すように、実施例1に係る自動分析装置は、第一反応容器重量測定機構(127)および第二反応容器重量測定機構(131)を備える。これらの重量測定機構は、自動分析装置(より厳密には、たとえば装置筐体(110))に対して固定される。
【0038】
図3に、実施例1に係る支持部および重量測定部の構成の例を示す。この例はたとえば第二反応容器重量測定機構(131)の構成を表す。
図3では、反応容器(108)が第二反応容器重量測定機構(131)に設置された状態の断面を示している。反応容器(108)は、反応液(301)を含んでいるとする。
【0039】
第二反応容器重量測定機構(131)は、装置筐体(110)と、反応容器収容部(300)と、接続部(302)と、歪体(303)と、歪センサ(304)と、歪体固定部(305)とを備える。歪センサ(304)は、本実施例における重量測定部である。
【0040】
反応容器収容部(300)および接続部(302)は一体として固定されており、反応容器(108)の全体すなわち全重量を支持する支持部として構成される。
図3の例では、反応容器(108)を収容することによって支持している。
【0041】
反応容器収容部(300)は、接続部(302)を介して歪体(303)に結合される。歪体(303)は、接続部(302)および歪体固定部(305)とのみ接続する。説明の簡単にするため、歪体(303)はここでは湾曲した直方体の梁形状としているが、歪体(303)形状および構成は、接続部からの重量によって歪むものであれば任意に設計可能である。たとえばダイヤフラムのような形状であってもよい。
【0042】
歪体(303)には歪センサ(304)が取り付けられている。歪センサ(304)は、歪体(303)の歪量を測定することができる。歪センサ(304)の出力についてはとくに図示しないが、たとえば
図1の重量測定制御部(135)に対して歪量を表す信号が送信されるよう構成されている。
【0043】
反応容器収容部(300)は、底部および周壁部を備えており、反応容器(108)が他のいかなる支持構造等にも接触しない状態で、反応容器(108)を支持することが可能な構成である。このため、反応容器収容部(300)は、反応容器(108)と、存在する場合にはその内容物との、全重量を支持することができる。
【0044】
なお、比較例として、反応容器収容部が反応容器の底部のみを支持し、他の独立した構造が反応容器の側面を支持する(たとえば壁にもたせかけるように支持する)ような構成では、側面において静止摩擦が発生するため、反応容器収容部は反応容器の全重量を支持することができない場合がある。
【0045】
次に、第二反応容器重量測定機構(131)を用いた重量測定動作の例について説明する。検体プローブ(103)が検体を検体分注位置(120)で分注した後、反応容器設置部(118)が回転し、反応容器(108)を第一反応容器架設ポジション(119)へと移動させる。次に、第一反応容器搬送本体部(105)が、反応容器(108)を、第一反応容器架設ポジション(119)から第二反応容器重量測定機構(131)へと移動させる。
【0046】
反応容器(108)は、反応容器収容部(300)によって、反応液(301)がこぼれないよう支持される。歪体(303)が、接続部(302)から伝わる重量を受けて歪み、その歪んだ量(または歪の変化量)が、歪センサ(304)によって計測される。
【0047】
より詳しくは、反応容器(108)が存在しない状態では、歪センサ(304)は、反応容器収容部(300)および接続部(302)のみの重量に応じて歪体(303)に発生する歪量を測定する。また、反応容器(108)が反応容器収容部(300)によって支持されている状態では、歪センサ(304)は、反応容器収容部(300)と、接続部(302)と、反応容器(108)と、存在する場合にはその内容物(たとえば反応液(301))との重量に応じて歪体(303)に発生する歪量を測定する。
【0048】
図3の例では、歪体(303)において歪センサ(304)が取り付けられる位置は、歪体(303)が歪体固定部(305)と接続する部分(根本)付近である。このようにすると、もっとも歪が大きくなる位置で歪を測定することができる。しかしながら、歪センサ(304)の位置はこれに限定されず、重量に応じて歪む場所であれば、歪体(303)の表面、裏面、その他任意の位置に取り付けることができる。
【0049】
歪量について説明する。歪体(303)をステンレス製(ヤング率(E)193GPa)の板ばねの梁で構成した場合、梁の先端に印加される力F[N]と梁の反対側の先端の表面に発生する歪量εとの関係は、以下の式で表されることが知られている。
【数1】
ただし、bは歪体(303)の幅であり、たとえばb=6[mm]である。Lは歪体(303)の長さであり、たとえばL=40[mm]である。hは歪体(303)の厚みであり、たとえばh=0.5[mm]である。
【0050】
検体量に相当する反応溶液の液量が4μlの場合、一例として歪量は0.032μSTとなる。歪センサ(304)として120Ωの抵抗体(ゲージファクタ2)を用いた場合には、抵抗値の変化は約8μΩとなる。
【0051】
歪センサ(304)は、この抵抗値の変化量を表す信号を重量測定制御部(135)に送信する。歪センサ(304)は、抵抗値の変化量を、電気信号に変換してから送信してもよい。抵抗値の変化は、たとえばブリッジ回路によってDC信号として電圧変換してもよいし、周波数回路を接続してそのインピーダンス変化に変換してもよい。
【0052】
このようにして、第一反応容器重量測定機構(127)および第二反応容器重量測定機構(131)は、反応容器(108)、反応容器収容部(300)および接続部(302)の全重量を測定する。この場合において、反応容器(108)に内容物が収容されている場合には、その内容物の重量も全重量に含まれる。
【0053】
自動分析装置は、歪量から重量への変換を行ってもよい。変換に係る具体的な処理は、歪センサに関する公知技術等に基づき、適宜設計することができる。また、各段階において測定された重量から特定成分の重量を算出するための方法も、公知技術に基づいて適宜設計することができる。
【0054】
歪体(303)の形状や材料は、振動制定時間や検出回路系のノイズ状況を考慮し、任意に設計可能である。別の形状や材料でもよい。たとえば、同じ材料を使用して、同じ重量変化に対して歪量を変更したい場合は、板ばねの幅(b)を半分にすれば、歪が2倍になる。また、形状を同じとするのであれば、ヤング率が異なる金属材料や、樹脂材料を用いてもよい。
【0055】
第二反応容器重量測定機構(131)の位置は
図1に示すものに限定されない。反応容器(108)を反応容器設置部(118)から移動することができる範囲であれば、任意の位置に配置してもよい。なお、第一反応容器重量測定機構(127)は、第二反応容器搬送本体部(124)が移動可能な範囲内に配置されており、第二反応容器搬送本体部(124)は、反応容器(108)を、第一反応容器重量測定機構(127)へと移動させることができる。
【0056】
ここでは検体分注後の重量測定を例にして説明したが、分析動作の他の段階での重量測定も同様に可能である。たとえば第一試薬または第二試薬を分注した後に重量を測定してもよい。たとえば、試薬プローブ(113)が反応容器(108)に試薬分注位置(122)で第一試薬もしくは第二試薬を分注した後に、反応容器設置部(118)が回転して反応容器(108)を第一反応容器架設ポジション(119)もしくは第二反応容器架設ポジション(121)に移動させ、その後に反応容器(108)が第一反応容器重量測定機構(127)もしくは第二反応容器重量測定機構(131)へと移動されることにより、重量を測定することができる。また、洗浄試薬プローブ(129)によってバッファが分注された後の反応液の重量測定も、検体プローブおよび試薬プローブによる分注後の反応液を測定する場合と同様にして実行することができる。さらに、反応容器(108)に検体が分注される前の状態(たとえば空の状態)で、同様の重量測定を行ってもよい。
【0057】
このように、実施例1に係る自動分析装置によれば、反応容器(108)に分注された検体または試薬の重量を、高精度にかつ安価に確認できる。
【0058】
図4に、複数の分析動作を並列的に実行する場合の、重量測定を含む処理の進行の例を示す。
図2と同様に、処理1を検体分注工程、処理2を第一試薬分注工程、処理3を第二試薬分注工程、処理4を洗浄工程、処理5を分析工程とする。さらに、
図4では、処理Gを重量測定工程とする。10個の検体に対する分析動作が示されている。
【0059】
図4に示したとおり、処理1~処理5それぞれの工程の後で重量測定工程(処理G)が実施されるので、1つの検体について必要な処理は全部で10工程となる。処理1(検体分注工程)を、60秒に1回、繰り返し実施した場合(処理能力60テスト/h)には、10工程を60秒で完了させる必要があり、各工程に割り当てることができる時間は平均6秒となる。
【0060】
図4の例では、説明のため全ての処理1~処理5それぞれの工程の後に重量測定を実施する例を示した。しかし、重量測定は1サイクル中に少なくとも1回実施されればよい。また、処理能力を優先したい場合等には、ある特定の分注工程後のみ重量測定を実施してもよい。
【0061】
また、装置由来の機構振動が重量測定部に与える影響を小さくするため、装置の機構部が動作していない時間帯で重量測定を行ってもよい。また、歪体固定部(305)は
図3では装置筐体(110)と直接的に接続しているけれども、装置からの振動により歪センサにノイズが乗る場合は、減衰のための振動減衰材料や弾性体を介して接続してもよい。
【0062】
また、歪センサ(304)またはその周辺において、通電直後にセンサ検出系の自己発熱等により信号出力の再現性が悪くなる場合には、通電直後の時間帯を避け、重量計算のもとになる歪センサ(304)からの信号取得タイミングを任意に選択してもよい。
【0063】
[実施例2]
図5に、実施例2に係る支持部および重量測定部の構成の例を示す。本実施例では、支持部および重量測定部は、反応容器移動部(たとえば第一反応容器搬送本体部(105)および第二反応容器搬送本体部(124))に設けられる。反応容器移動部に固定されていてもよい。
【0064】
この例はたとえば第一反応容器搬送本体部(105)に係る構成を示す。第一反応容器搬送本体部(105)は、重量測定部としての歪センサ(304)を備える。
【0065】
反応容器(108)に検体を分注した後、反応容器設置部(118)が、検体分注位置(120)から第一反応容器架設ポジション(119)へ反応容器(108)を移動する。第一反応容器搬送本体部(105)は、反応容器(108)を、反応容器設置部(118)の第一反応容器架設ポジション(119)へ移動する。
【0066】
第一反応容器搬送本体部(105)は、把持部を備えており、反応容器(108)を移動させる際に、反応容器(108)を把持して引き上げることができる。把持部は、たとえば第一把持部(502)および第二把持部(504)によって構成され、これら2つの把持部が両側から反応容器(108)を挟み込むことで、反応容器(108)を引き上げる際に把持できるように構成されている。
【0067】
図5(a)に示すように、解放時には第一把持部(502)および第二把持部(504)の間隔が比較的大きく、反応容器(108)は把持されない。一方、
図5(b)に示すように、移動時には第一把持部(502)および第二把持部(504)の間隔が比較的小さく、反応容器(108)が把持される。把持力は、たとえば反応容器(108)およびその内容物の重量を、摩擦により十分保持できる程度に設計される。
【0068】
このような動作を可能とするために、たとえば第一ばね(503)が用いられる。第一ばね(503)の両端は、それぞれ第一把持部(502)および第二把持部(504)に固定されており、互いを近づける向きに付勢する。
【0069】
一方、第一反応容器搬送本体部(105)は、筐体(500)と、開閉機構爪(505)と、開閉機構とを備える。開閉機構は、開閉機構本体(507)と、開閉機構シリンダ(506)とを備えており、開閉機構シリンダ(506)が移動することにより開閉機構が伸縮するよう構成される。開閉機構は筐体(500)に固定される。
【0070】
また、第二ばね(508)の両端が、それぞれ筐体(500)および開閉機構爪(505)に固定されており、互いを近づける向きに付勢する。
図5(a)に示すように、解放時には開閉機構シリンダ(506)が開閉機構本体(507)内部へ収納されており、開閉機構シリンダ(506)は開閉機構爪(505)と接触していない。
【0071】
この状態では、開閉機構爪(505)は第二ばね(508)によって筐体(500)に向かって引き付けられる。このため、第二把持部(504)は第一把持部(502)と反対の方向へと押し出され、第一把持部(502)と第二把持部(504)との間に、反応容器(108)が挿入されるのに十分な空間を作り出している。
【0072】
図5(b)に示すように、移動時、すなわち、第一反応容器搬送本体部(105)が反応容器(108)をつかむ場合には、開閉機構シリンダ(506)が開閉機構本体(507)より押し出され、これによって、開閉機構爪(505)が、第二ばね(508)の力に打ち勝って筐体(500)と反対の方向に押し出される。
【0073】
この時、第一ばね(503)は、開閉機構爪(505)によって引き延ばされていた力が解放されることによって収縮する。これによって、第一把持部(502)と第二把持部(504)とが、その間にある反応容器(108)を挟みこみ把持する。
【0074】
第一把持部(502)は、接続部(501)を介してのみ歪体(303)と接続している。接続部(501)は、把持部の一部を構成するものであってもよい。本実施例では、接続部(501)と、第一把持部(502)と、第二把持部(504)と、第一ばね(503)とが、反応容器(108)の全体すなわち全重量を支持する支持部を構成する。
【0075】
第一反応容器搬送本体部(105)が鉛直方向へ移動することによって、反応容器(108)は反応容器設置部(118)より引き上げられる。この時、反応容器(108)の重量に応じた歪が歪体(303)に発生する。歪体(303)は、歪体固定部(305)とのみ接続しており、歪体(303)に設けた歪センサ(304)によって反応容器(108)の重量に応じた信号が出力される。
【0076】
このように、実施例2に係る自動分析装置によれば、実施例1と同様に、反応容器(108)に分注された検体または試薬の重量を、高精度にかつ安価に確認できる。
【0077】
[実施例3]
図6に、実施例3に係る支持部および重量測定部の構成の例を示す。実施例3に係る自動分析装置は、反応容器移動部(すなわち第一反応容器搬送本体部(105)および第二反応容器搬送本体部(124))とは別体の反応容器引上部を備える点で、実施例2と相違する。
【0078】
反応容器引上部は、反応容器(108)を引き上げるために設けられる。引き上げられた反応容器(108)は、反応容器移動部によってさらに移動することができる。本実施例では、支持部および重量測定部は、反応容器引上部に設けられる。
【0079】
支持部および重量測定部の構成は、実施例2と同様である。解放時には開閉機構本体(610)の開閉機構シリンダ(609)は開閉機構本体(610)内部へ収納されており、開閉機構シリンダ(609)は開閉機構爪(608)と接触していない。開閉機構爪(608)は第三ばね(611)によって引上機構筐体(600)へ引き付けられており、その力によって第二把持部(607)を第一把持部(605)と反対側へ押し出している。これによって、第一把持部(605)と第二把持部(607)との間に、反応容器(108)が入るだけの十分な空間を作り出している。
【0080】
重量測定時、すなわち反応容器(108)をつかむ場合には、開閉機構シリンダ(609)が開閉機構本体(610)より押し出され、開閉機構爪(608)が第三ばね(611)の力に打ち勝って引上機構筐体(600)と反対の方向に押し出される。この時第一ばね(606)および第二ばね(613)は、第一把持部(605)と第二把持部(607)をつないでおり、開閉機構爪(608)によって引き延ばされていた力が解放されることによって収縮することで、第一把持部(605)と第二把持部(607)の間にある反応容器(108)を挟みこみ把持する。
【0081】
第一把持部(605)は接続部(604)を介してのみ歪体(602)と接続している。本実施例では、接続部(604)と、第一把持部(605)と、第二把持部(607)と、第一ばね(606)と、第二ばね(613)とが、反応容器(108)の全体すなわち全重量を支持する支持部を構成する。
【0082】
また、本実施例では、引上機構筐体(600)と、引き上げ駆動部(612)と、歪体(602)と、歪体固定部(603)と、接続部(604)と、第一把持部(605)と、第二把持部(607)と、第一ばね(606)と、第二ばね(613)とが、反応容器(108)を引き上げる反応容器引上部を構成する。なお引き上げ駆動部(612)はたとえば装置筐体(110)に固定されている。
【0083】
引上機構筐体(600)が引き上げ駆動部(612)によって鉛直方向へ移動することによって、反応容器(108)は反応容器設置部(118)より引き上げられる。この時、反応容器(108)の重量に応じた歪が歪体(602)に発生する。歪体(602)は、歪体固定部(603)とのみ接続しており、歪体(602)に設けた歪センサ(601)すなわち重量測定部によって、反応容器(108)の重量に応じた信号が出力される。
【0084】
このように、実施例3に係る自動分析装置によれば、実施例1と同様に、反応容器(108)に分注された検体または試薬の重量を、高精度にかつ安価に確認できる。
【0085】
このような反応容器引上部は、自動分析装置において複数の位置に設置することができる。たとえば、検体分注位置(120)、試薬分注位置(122)、反応容器洗浄位置(126)、および反応容器分析吸引位置(123)に設置し、分析動作サイクル中の任意の時点において反応容器(108)の重量を測定することが可能である。
【0086】
実施例1では、検体分注工程を60秒に1回、繰り返し実施した場合(処理能力60テスト/h)、10個の工程それぞれに割り当てることができる時間は平均6秒であった。ここで、処理能力500テスト/hの自動分析装置に対応しようとした場合には、同方式であると検体分注工程を7.2秒に1回実施する必要があり、10個の工程それぞれに割り当てることができる時間はわずかに平均0.72秒となってしまう。このような場合には、反応容器移動部によって重量測定のために反応容器を移動させる時間を確保することが困難である。
【0087】
これに対し、実施例3によれば、たとえば分注の動作中に反応容器(108)を引き上げておくことにより、重量測定を短時間で実施することが可能となる。重量測定を実施することによる時間的影響は、反応容器引上部による引き上げ時間が追加になるのみである。
【0088】
[実施例4]
図7に、実施例4に係る支持部および重量測定部の構成の例を示す。実施例4に係る自動分析装置では、実施例3と同様に、支持部および重量測定部が反応容器引上部に設けられる。
【0089】
自動分析装置は、一対の引上作用部(707)を備える。各引上作用部(707)は、それぞれ対応する引上部腕(706)、それぞれ対応する引上部腕柱(705)、および、共通する引き上げ肩部(704)によって、歪体(702)と接続している。
【0090】
本実施例では、引上作用部(707)、引上部腕(706)、引上部腕柱(705)、および共通する引き上げ肩部(704)が、反応容器(108)の全体すなわち全重量を支持する支持部を構成する。
【0091】
歪体(702)は、装置筐体(700)と接続した歪体固定部(701)と端部で固定されており、歪センサ(703)すなわち重量測定部が歪体(702)上に取り付けられている。
【0092】
本実施例では、歪体固定部(701)、歪体(702)、引き上げ肩部(704)、引上部腕柱(705)、引上部腕(706)、および引上作用部(707)が、反応容器(108)を引き上げる反応容器引上部を構成する。
【0093】
引上作用部(707)は、反応容器設置部(118)上空の位置に設置される。より具体的には、検体分注位置(120)、試薬分注位置(122)、第二反応容器架設ポジション(121)、反応容器分析吸引位置(123)などの上空の位置に設置される。
【0094】
図8に、試薬プローブ(113)が第一試薬を分注する場合の動作例を示す。第二試薬または検体が分注される場合も同様である。本実施例では、反応容器(108)は、その側面に張り出し部(800)を備えており、引上作用部(707)は、この張り出し部(800)を支持することによって、反応容器(108)を支持することができる。
【0095】
図8(a)の状態では、反応容器(108)は引き上げられていない。反応容器設置部(118)が回転し、反応容器(108)を試薬分注位置(122)へと移動させると、反応容器(108)の張り出し部(800)が、反応容器設置部(118)の回転動作とともに、矢印に示すように引上作用部(707)の上へ乗り上げ、反応容器設置部(118)から引き上げられて、
図8(b)に示す状態となる。
【0096】
反応容器(108)が引き上げられる距離は、引上作用部(707)の形状に依存して決まる。引上作用部(707)の形状は、反応容器(108)が反応容器設置部(118)とまったく接触しなくなる高さにまで引き上げることができる形状であれば何でもよい。
【0097】
このように、実施例4によれば、反応容器設置部(118)が回転することに応じ、自動的に反応容器(108)が引き上げられるので、より効率的に重量を測定することができる。
【0098】
重量測定部は、
図8(b)に示すように引上作用部(707)が張り出し部(800)を支持した状態で、反応容器(108)および支持部の全重量を測定する。
【0099】
また、引上作用部(707)の曲率は、反応容器設置部(118)の回転速度に応じて設計されてもよい。たとえば、引き上げに伴い反応容器(108)内の反応液が飛び出さないような引き上げ速度となるように決定される。
【0100】
また、
図8では反応容器の張り出し形状を張り出し部(800)のように反応容器外形から肩となるように張り出す形状で説明したが、張り出し部の形状は、反応容器(108)の全体を支持できるような形状であれば任意に設計可能である。たとえば、引上作用部(707)の形状に合わせ、反応容器(108)が横方向に進入する際に鉛直方向に引き上げる力が発生しうる形状とすることができる。具体例として、
図8では反応容器(108)の外周にテーパー面(801)が形成されているが、このテーパー面(801)を張り出し部として機能し、引上作用部(707)によって支持されるように構成してもよい。
【0101】
また、引上作用部(707)は、反応容器(108)を引き上げる際に滑らかに引き上げることが可能となるように、表面を研磨した状態が好ましい。もしくは、引上作用部(707)において、張り出し部(800)と接触する部分に、ベアリングなどを備えてもよい。
【0102】
[実施例5]
図9に、実施例5に係る支持部の構成の例を示す。実施例5は、実施例4において、引上作用部(707)および引上部腕(706)の構成を変更したものである。
図9(a)は上方向から見た支持部の一部の断面図であり、
図9(b)は側方向から見た支持部の一部の断面図である。
【0103】
実施例5において、支持部は、弾性的に開閉可能な開閉部を備える。
図9の例では、開閉部は2本の腕によって構成される。第一の腕は、水平な長手方向に伸びる第一ばね部(900)と、第一水平引込ガイド(902)と、第一固定ガイド(904)と、第三固定ガイド(906)と、第三水平引込ガイド(908)とを備える。第一ばね部(900)は、水平面内において、長手方向と垂直な方向にたわむことができる。
【0104】
同様に、第二の腕は、水平な長手方向に伸びる第二ばね部(901)と、第二水平引込ガイド(903)と、第二固定ガイド(905)と、第四固定ガイド(907)と、第四水平引込ガイド(909)とを備える。第二ばね部(901)は、水平面内において、長手方向と垂直な方向にたわむことができる。
【0105】
図9に示す開閉部は、第一ばね部(900)および第二ばね部(901)がたわむことにより、水平方向に、かつ反応容器(108)の移動方向に対して垂直な方向に、開閉可能となるよう構成されている。
【0106】
本実施例に係る引上作用部は、第一固定ガイド(904)、第二固定ガイド(905)、第三固定ガイド(906)および第四固定ガイド(907)によって構成される。
【0107】
反応容器設置部(118)が反応容器(108)を回転移動に伴って時計回り方向(CW方向)に移動させたとする。反応容器(108)の外壁(たとえば張り出し部であるが、張り出し部より下の部分であってもよい)が、第三水平引込ガイド(908)および第四水平引込ガイド(909)に沿って進入する。
【0108】
この時、第一ばね部(900)および第二ばね部(901)に、互いに反対方向へ変形する応力が発生し、反応容器(108)の外壁に沿って、第三水平引込ガイド(908)と第四水平引込ガイド(909)とが水平方向へと広がる。これに伴い、反応容器(108)は、引上作用部(すなわち、第一固定ガイド(904)、第二固定ガイド(905)、第三固定ガイド(906)、および、第四固定ガイド(907))によって形成される支持空間へと移動する。
【0109】
それと同時に、反応容器(108)は、第一引上ガイド(910)に沿って反応容器設置部(118)から上方へ引き上げられ、引上作用部に乗り換える。この状態で、重量測定部により、反応容器(108)および支持部の全重量が測定される。
【0110】
ここで、実施例5によれば、反応容器(108)が4つの固定ガイドによって囲まれた支持空間に固定されるので、より安定した状態で重量測定を行うことができる。
【0111】
重量測定後、反応容器設置部(118)が時計回り方向に回転する場合には、反応容器(108)は第一水平引込ガイド(902)および第二水平引込ガイド(903)に向かって移動し、第二引上ガイド(911)に沿って、引上作用部から反応容器設置部(118)へと自重で落下するようガイドされる。
【0112】
一方、重量測定後、反応容器設置部(118)が反時計回り方向(CCW方向)に回転する場合には、反応容器(108)は第三水平引込ガイド(908)および第四水平引込ガイド(909)に向かって移動し、第一引上ガイド(910)に沿って、引上作用部から反応容器設置部(118)へと自重で落下するようガイドされる。
【0113】
反応容器設置部(118)が反応容器(108)を、引上作用部へと反時計回り方向(CCW方向)に引き上げる場合には、反応容器(108)は、第一水平引込ガイド(902)および第二水平引込ガイド(903)に沿って進入する。
【0114】
この時、第一ばね部(900)および第二ばね部(901)に、互いに反対方向へ変形する応力が発生し、反応容器(108)の外壁に沿って、第一水平引込ガイド(902)と第二水平引込ガイド(903)とが水平方向へ広がる。これに伴い、反応容器(108)は、引上作用部(すなわち、第一固定ガイド(904)、第二固定ガイド(905)、第三固定ガイド(906)、および、第四固定ガイド(907))によって形成される支持空間へと移動する。
【0115】
それと同時に、反応容器(108)は、第二引上ガイド(911)に沿って反応容器設置部(118)から上方へ引き上げられ、引上作用部に乗り換える。この状態で、重量測定部により、反応容器(108)および支持部の全重量が測定される。重量測定後の動作は、時計回り方向の動作と同様であるので、説明を省略する。
【0116】
なお、第一ばね部(900)および第二ばね部(901)は、たとえば実施例4(
図7)における引上部腕(706)の一部として設けてもよい。また、引上部腕(706)に、各水平引込ガイドによって発生する応力によって変形する部位を設けた構成であれば、具体的構成は任意に設計可能である。たとえば、変形するばね部は、
図7で示した引き上げ肩部(704)および引上部腕柱(705)内に設けてもよく、引き上げ肩部(704)と引上部腕柱(705)との接続部に設けてもよく、引上部腕柱(705)と引上部腕(706)との接続部に設けてもよい。
【0117】
[実施例6]
図10に、実施例6に係る支持部の動作の例を示す。支持部の構成は、たとえば実施例4(
図7および
図8)または実施例5(
図9)と同様にすることができる。
【0118】
図10は、反応容器(108)が反応容器設置部(118)に設置されてから廃棄されるまでの工程の流れを示す。反応容器(108)にまだ第一試薬が分注されていないタイミングにおいて反応容器(108)等の重量を測定した重量1と、第一試薬が分注された後に反応容器(108)等の重量を測定した重量2との差分を計算すれば、正味の第一試薬の重量を計算することができる。
【0119】
また、引き続き、追加で第二試薬の分注が実施される場合には、第二試薬が分注された後に反応容器(108)等の重量を測定した重量3と、上記の重量2との差分を計算することで、正味の第二試薬の重量を計算することができる。
【0120】
重量の計算は、重量計算部によって行われてもよい。すなわち、自動分析装置は、反応容器(108)に検体または各試薬が分注される際に、分注前の重量と、分注後の重量とに基づき、分注された検体または各試薬の重量を算出する、重量計算部を備えてもよい。重量計算部は、たとえば重量測定制御部(135)に構成される。
【0121】
なお、本実施例において、自動分析装置は、各タイミングで測定された重量を記憶する記憶部を備えてもよい。記憶部は、たとえば重量測定制御部(135)に構成される。
【0122】
このように、分注工程と並行して反応容器(108)等の重量を測定することが可能となるため、分析処理の速度にほとんど影響を与えることなく、反応液等の重量測定を実現することができる。
【0123】
[実施例7]
図11を用いて、実施例7に係る自動分析装置の動作を説明する。重量測定制御部(135)に、分注される各成分(たとえば液体)の比重を表す情報が予め登録されている。
【0124】
自動分析装置は、体積計算部を備える。この体積計算部は、検体または各試薬の重量に基づき、検体または各試薬の体積を算出する。たとえば、検体について計算された重量を、検体の比重で除算することにより、検体の体積を算出することができる。体積計算部は、たとえば重量測定制御部(135)に構成される。
【0125】
なお、
図11では説明のために具体的な数値を記載したが、これらの数値はあらかじめ任意に設定することができる。
【0126】
実施例7によれば、検体および各試薬の重量のみならず、体積も自動的に測定することができる。
【0127】
[実施例8]
図12および
図13を用いて、実施例8に係る自動分析装置の動作を説明する。自動分析装置は記憶部を備え、この記憶部は、検体または各試薬について、
図12に示すような規定量範囲を記憶する。記憶部は、たとえば重量測定制御部(135)に構成される。なお、
図12の例では規定量範囲は体積の範囲であるが、規定量範囲は重量の範囲であってもよい。
【0128】
この規定量範囲は、各成分の許容可能な誤差の範囲を表すものである。規定量範囲は、
図12の例では各成分について「範囲1」および「範囲2」の2通りの規定量範囲が登録されているが、規定量範囲は各成分について1通りであってもよく、3通り以上であってもよい。また、記憶部は、検体または各試薬について、標準とする量(標準量。たとえば標準体積量)を記憶してもよい。
【0129】
自動分析装置は、判定部および出力部を備える。判定部および出力部は、たとえば重量測定制御部(135)に構成される。判定部は、検体または各試薬の重量と、規定量範囲とに基づき、検体または各試薬の量が規定量範囲内であるか否かを判定する。また、出力部は、判定部による判定の結果を出力する。
【0130】
図13に、
図12の規定量範囲を用いた判定処理および出力処理の例を示す。
図12の例では、範囲2は範囲1よりも幅が大きい。判定部は、まず検体または各試薬の標準量と、測定された検体または各試薬の量との差分が、範囲1に含まれるか否かを判定する。差分が範囲1に含まれる場合には、出力部は判定結果としてフラグを出力しない。
【0131】
差分が範囲1を超える場合には、判定部は、差分が範囲2に含まれるか否かを判定する。差分が範囲2に含まれる場合には、出力部は判定結果としてフラグを出力する。このフラグは、たとえば規定量が吸引できなかった可能性があることを表す。出力されたフラグは、記憶部に記憶されてもよいし、使用者に対して(表示装置等を用いて)出力されてもよい。このような状況は、フィブリンを吸引したことによる短時間的な流路閉塞によって発生する可能性がある。
【0132】
差分が範囲2を超える場合には、出力部は判定結果として、後続の処理をキャンセルする信号を出力する。これは、装置において配管異常などのハード異常が発生した場合等に対応する。
【0133】
例えばある分析において、第一試薬の標準体積量が60μlであり、第一試薬の重量に基づいて計算された体積量が20μlであるとする。誤差は-40μlとなり、範囲2を超えるので、以降の処理がキャンセルされる。
【0134】
また、例えば検体の標準体積量が30μlであり、重量に基づいて計算された体積量が28μlであるとする。この場合には誤差は-2μlであり、範囲1を超えるが範囲2に含まれるので、分析結果にフラグが付与される。
【0135】
なお、
図12では説明のために具体的な数値を記載したが、これらの数値はあらかじめ任意に設定することができる。また、判定部による判定の分岐条件も任意に設計可能であり、試薬毎に性能に与える影響を考慮して種類毎に異なる分岐条件を定義してもよい。
【0136】
このように、実施例8によれば、検体または各試薬の量が正常でなかった場合に、適切な処理を行うことができる。
【0137】
[変形例]
実施例1~7において、以下のような変形を加えることができる。
反応容器(108)を移動させる反応容器移動部は、1つ以上であればよい。たとえば、第一反応容器搬送本体部(105)および第二反応容器搬送本体部(124)の一方を省略してもよいし、3つ以上の反応容器移動部を設けてもよい。
【0138】
また、反応容器(108)および支持部の全重量を測定する重量測定部は、1つ以上であればよい。たとえば、実施例1では第一反応容器重量測定機構(127)および第二反応容器重量測定機構(131)の一方を省略してもよいし、3つ以上の重量測定部を設けてもよい。
【0139】
重量測定部として用いられる歪センサは、任意の方式のものを用いることができる。たとえば、部材の形状が変化することで物性が変化するという原理を利用した方式のものを用いることができる。より具体的には、部材の伸縮度合いの変化によって起こる電気抵抗値の変化を測定する方式のものであってもよい。または、レーザー光や超音波等を用い、歪の大きさ(距離の変化)を測定する方式のものであってもよい。
【0140】
さらに、重量測定部には歪センサ以外の重量センサを用いてもよい。たとえば、測定対象の重量と釣り合う力を発生させ、その力の大きさや、その力を発生させるための制御量を測定することにより、測定対象の重量を取得するような方式の重量センサを用いることができる。
【符号の説明】
【0141】
105 第一反応容器搬送本体部(反応容器移動部)
108 反応容器
124 第二反応容器搬送本体部(反応容器移動部)
127 第一反応容器重量測定機構(重量測定機構)
131 第二反応容器重量測定機構(重量測定機構)
135 重量測定制御部(記憶部、重量計算部、体積計算部、判定部、出力部)
300 反応容器収容部(支持部)
302 接続部(支持部)
304 歪センサ(重量測定部)
501 接続部(支持部)
502 第一把持部(支持部、把持部)
504 第二把持部(支持部、把持部)
600 引上機構筐体(反応容器引上部)
601 歪センサ(重量測定部)
602 歪体(反応容器引上部)
603 歪体固定部(反応容器引上部)
604 接続部(支持部、反応容器引上部)
605 第一把持部(支持部、反応容器引上部)
607 第二把持部(支持部、反応容器引上部)
606 第一ばね(支持部、反応容器引上部)
612 引き上げ駆動部(反応容器引上部)
613 第二ばね(支持部、反応容器引上部)
701 歪体固定部(反応容器引上部)
702 歪体(反応容器引上部)
703 歪センサ(重量測定部)
704 引き上げ肩部(反応容器引上部)
705 引上部腕柱(反応容器引上部)
706 引上部腕(反応容器引上部)
707 引上作用部(反応容器引上部)
800 張り出し部
801 テーパー面(張り出し部)
900 第一ばね部(支持部、開閉部)
901 第二ばね部(支持部、開閉部)
902 第一水平引込ガイド(支持部、開閉部)
903 第二水平引込ガイド(支持部、開閉部)
904 第一固定ガイド(支持部、開閉部)
905 第二固定ガイド(支持部、開閉部)
906 第三固定ガイド(支持部、開閉部)
907 第四固定ガイド(支持部、開閉部)
908 第三水平引込ガイド(支持部、開閉部)
909 第四水平引込ガイド(支持部、開閉部)
910 第一引上ガイド(支持部、開閉部)
911 第二引上ガイド(支持部、開閉部)