(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100502
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】デバイスチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214512
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】仲野 力
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA05
5F063BA22
5F063CB03
5F063CB05
5F063CB13
5F063CB15
5F063CB23
5F063CB25
5F063CC37
5F063DE03
5F063DE34
(57)【要約】 (修正有)
【課題】クラック等の損傷のない高品質なデバイスチップの製造方法を提供する。
【解決手段】ウエーハ1を分割して個々のデバイスチップを製造するデバイスチップの製造方法であって、ウエーハ1を保持できるチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハ1を切削できる切削ブレード34を回転可能に備えた切削ユニットと、を備えた切削装置を準備する準備工程と、該チャックテーブルで該ウエーハ1を保持するウエーハ保持工程と、第1の分割予定ラインに沿って該切削ブレード34でウエーハ1を切削し、ハーフカット溝13を形成するハーフカット溝形成工程と、第2の分割予定ラインに沿って切削ブレードでウエーハ1を切削し、第1の分割溝を形成する第1のフルカット工程と、第1の分割予定ラインに沿って切削ブレード34でウエーハ1を切削し、第2の分割溝を形成し、個々のデバイスチップを形成する第2のフルカット工程と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に沿って設定された複数の第1の分割予定ラインと、該第1の方向と交差する第2の方向に沿った設定された複数の第2の分割予定ラインと、によって区画された各領域にそれぞれデバイスが形成された表面を備えたウエーハを分割して個々のデバイスチップを製造するデバイスチップの製造方法であって、
ウエーハを保持できるチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削できる切削ブレードを回転可能に備えた切削ユニットと、撮像ユニットと、を備えた切削装置を準備する準備工程と、
該表面側に保護部材が配設された該ウエーハの該表面側を該チャックテーブルに向けて該ウエーハを該チャックテーブルに載せ、該チャックテーブルで該ウエーハを保持するウエーハ保持工程と、
該第1の分割予定ラインに沿って該切削ブレードで該ウエーハを切削し、ハーフカット溝を形成するハーフカット溝形成工程と、
該ハーフカット溝形成工程の後、該第2の分割予定ラインに沿って該切削ブレードで該ウエーハを切削し、該保護部材に至る第1の分割溝を形成する第1のフルカット工程と、
該第1のフルカット工程の後、該第1の分割予定ラインに沿って該切削ブレードで該ウエーハを切削し、該保護部材に至る第2の分割溝を形成し、個々のデバイスチップを形成する第2のフルカット工程と、
を含むことを特徴とするデバイスチップの製造方法。
【請求項2】
該ウエーハの裏面は、金属膜で被覆されており、
該撮像ユニットは、赤外線カメラを搭載しており、
該ウエーハの該裏面を被覆する該金属膜の外周部を切削してリング状に該金属膜を除去する金属膜除去工程と、
該金属膜除去工程の後、該撮像ユニットを該金属膜が除去された領域の上方に位置づけて、該ウエーハを通して該ウエーハの該表面側を撮像して該表面に設定された該第1の分割予定ライン及び該第2の分割予定ラインを検出する分割予定ライン検出工程と、
を該ウエーハ保持工程の後、該ハーフカット溝形成工程の前に実施することを特徴とする請求項1記載のデバイスチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体等の材料で形成されたウエーハを切削して分割し、デバイスチップを製造するデバイスチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やパソコン等の電子機器に使用されるデバイスチップの製造工程では、まず、半導体等の材料からなるウエーハの表面に互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)を設定する。そして、分割予定ラインで区画される各領域にIC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integration)等のデバイスを形成する。その後、ウエーハを裏面側から研削して薄化し、分割予定ラインに沿って分割すると、個々のデバイスチップが形成される。
【0003】
ウエーハの分割は、例えば、円環状の切削ブレードが装着された切削装置で実施される。切削装置は、被加工物となるウエーハを保持できるチャックテーブルと、切削ブレードを備えチャックテーブルに保持されたウエーハを切削できる切削ユニットと、を備える。
【0004】
ここで、ウエーハは、予め裏面側が金属膜で被覆される場合がある。裏面側が金属膜で被覆されたウエーハを表面側から切削ブレードで切削して分割溝を形成すると、裏面側に達した分割溝の縁にバリと呼ばれる金属の突起が発生しやすい傾向にある。そこで、バリの低減するために、裏面側を上方に向けた状態でチャックテーブルにウエーハを載せ、切削ブレードでウエーハを裏面側から切削する(特許文献1参照)。
【0005】
ここで、金属膜で被覆されていないウエーハであれば、ウエーハを通して表面側を撮影できる赤外線カメラを使用することでウエーハを裏面側から切削する際に分割予定ラインの位置を特定できる。しかしながら、ウエーハが金属膜で被覆されていると、赤外線が金属膜で遮蔽されるため、分割予定ラインの位置を特定できない。そこで、予めウエーハの外周部で部分的に金属膜を除去し、金属膜が除去された領域でウエーハの表面側を撮影することで分割予定ラインの位置を特定する(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-227251号公報
【特許文献2】特開2020-136445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
裏面側に形成された金属膜や表面側に形成されたデバイス等により、ウエーハには反りを与えるような大きな応力が印加される場合がある。反りを与えるような応力が働くウエーハを裏面側から切削すると、ウエーハの表面側に達した分割溝の縁にチッピングと呼ばれる欠けや、クラックと呼ばれる割れが生じることがある。
【0008】
特に、一つの方向に沿った複数の分割予定ラインに沿ってウエーハを切削する工程の後、これに交差する他の方向に沿った複数の分割予定ラインに沿って切削する工程を実施するとき、最初の工程で形成される分割溝の縁で品質が低くなる傾向が確認された。
【0009】
これは、最初の工程で分割溝が形成されることによりウエーハにかかる応力に方向による偏りが生じ、次の工程でウエーハが切削される際に、切削ブレードの切り込み方向(加工送り方向)に沿った応力が低減されていることに起因すると考えられる。換言すると、最初の工程ではウエーハにかかる応力に偏りが生じておらず、切削ブレードの切り込み方向に沿った大きな応力がウエーハにかかった状態でウエーハが切削されるため、形成される分割溝の縁でクラックが生じやすくなると考えられる。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、クラック等の損傷のない高品質なデバイスチップを製造するデバイスチップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、第1の方向に沿って設定された複数の第1の分割予定ラインと、該第1の方向と交差する第2の方向に沿った設定された複数の第2の分割予定ラインと、によって区画された各領域にそれぞれデバイスが形成された表面を備えたウエーハを分割して個々のデバイスチップを製造するデバイスチップの製造方法であって、ウエーハを保持できるチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削できる切削ブレードを回転可能に備えた切削ユニットと、撮像ユニットと、を備えた切削装置を準備する準備工程と、該表面側に保護部材が配設された該ウエーハの該表面側を該チャックテーブルに向けて該ウエーハを該チャックテーブルに載せ、該チャックテーブルで該ウエーハを保持するウエーハ保持工程と、該第1の分割予定ラインに沿って該切削ブレードで該ウエーハを切削し、ハーフカット溝を形成するハーフカット溝形成工程と、該ハーフカット溝形成工程の後、該第2の分割予定ラインに沿って該切削ブレードで該ウエーハを切削し、該保護部材に至る第1の分割溝を形成する第1のフルカット工程と、該第1のフルカット工程の後、該第1の分割予定ラインに沿って該切削ブレードで該ウエーハを切削し、該保護部材に至る第2の分割溝を形成し、個々のデバイスチップを形成する第2のフルカット工程と、を含むことを特徴とするデバイスチップの製造方法が提供される。
【0012】
好ましくは、該ウエーハの裏面は、金属膜で被覆されており、該撮像ユニットは、赤外線カメラを搭載しており、該ウエーハの該裏面を被覆する該金属膜の外周部を切削してリング状に該金属膜を除去する金属膜除去工程と、該金属膜除去工程の後、該撮像ユニットを該金属膜が除去された領域の上方に位置づけて、該ウエーハを通して該ウエーハの該表面側を撮像して該表面に設定された該第1の分割予定ライン及び該第2の分割予定ラインを検出する分割予定ライン検出工程と、を該ウエーハ保持工程の後、該ハーフカット溝形成工程の前に実施する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係るデバイスチップの製造方法よると、ウエーハをフルカットして最初の分割溝を形成する前に、この分割溝に交差する方向に沿ってウエーハを切削してハーフカット溝を形成する。この場合、ウエーハにかかる応力に偏りが生じた状態でウエーハに最初の分割溝を形成できるため、最初に形成される分割溝の縁にクラックが生じにくくなり、該分割溝の品質も高くなる。
【0014】
したがって、本発明の一態様によると、クラック等の損傷のない高品質なデバイスチップを製造するデバイスチップの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1(A)は、ウエーハの表面を模式的に示す斜視図であり、
図1(B)は、ウエーハの裏面を模式的に示す斜視図である。
【
図3】金属膜除去工程を模式的に示す斜視図である。
【
図4】ハーフカット溝形成工程を模式的に示す斜視図である。
【
図5】第1のフルカット工程を模式的に示す斜視図である。
【
図6】第2のフルカット工程を模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図7(A)は、一例に係るデバイスチップの製造方法の各工程の流れを示すフローチャートであり、
図7(B)は、他の一例に係るデバイスチップの製造方法の各工程の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係るデバイスチップの製造方法について説明する。本実施形態に係るデバイスチップの製造方法では、半導体等の材料で形成されたウエーハを加工する。
【0017】
まず、被加工物となるウエーハについて説明する。
図1(A)は、ウエーハ1の表面1a側を模式的に示す斜視図であり、
図1(B)は、ウエーハ1の裏面1b側を模式的に示す斜視図である。ウエーハ1は、例えば、シリコン、SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)等の半導体等の材料で形成された円板状のウエーハである。なお、ウエーハ1は、サファイア、ガラス、石英等の材料で形成されてもよい。
【0018】
ウエーハ1の表面1aには、ストリートと呼ばれる互いに交差する複数の分割予定ライン3が設定されている。より詳細には、ウエーハ1の表面1aには、第1の方向に沿った複数の第1の分割予定ライン3aと、該第1の方向に交差する第2の方向に沿った複数の第2の分割予定ライン3bと、が設定される。ウエーハ1の表面1aの分割予定ライン3により区画された各領域には、IC、LSI等のデバイス5が形成されている。ウエーハ1が分割予定ライン3に沿って分割されると、複数のデバイスチップが製造される。
【0019】
分割予定ライン3に沿ったウエーハ1の分割は、例えば、
図2に示す切削装置2で実施される。
図2は、切削装置2を模式的に示す斜視図である。切削装置2は、円環状の切削ブレード34を備える切削ユニット32と、ウエーハ1を保持するチャックテーブル20と、チャックテーブル20に保持されたウエーハ1を撮影して分割予定ライン3の位置を検出する撮像ユニット30と、を備える。
【0020】
ここで、ウエーハ1の裏面1b側には金属膜1c(
図1参照)が形成される場合がある。表面1a側を上方に向けた状態でウエーハ1をチャックテーブル20で保持して、切削ブレード34でウエーハ1を分割予定ライン3に沿って切削すると、バリとよばれる金属突起が裏面1b側に形成されるため、形成されるデバイスチップの品質が低くなる。そこで、裏面1b側を上方に向けた状態でウエーハ1をチャックテーブル20で保持して、裏面1b側から切削ブレード34を切り込ませてウエーハ1を分割する。
【0021】
ウエーハ1を切削装置2に搬入する際には、例えば、ウエーハ1の表面1a側に該ウエーハ1よりも大きな径を有するテープ状の保護部材9を貼着する。保護部材9は、ダイシングテープとも呼ばれる。保護部材9は、可撓性を有するフィルム状の基材層と、機材層の一方の面に設けられた接着層(糊層)と、を備える。
【0022】
保護部材9の外周部には、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属で形成されたリングフレーム7の内周部が貼り付けられる。リングフレーム7は、ウエーハ1の径よりも大きな径の開口部を有する。リングフレーム7に保護部材9を貼り、リングフレームの開口部中で露出した保護部材9をウエーハ1の表面1a側に貼り付けることで、フレームユニット11が形成される。このとき、金属膜1cが形成されたウエーハ1の裏面1b側が上方に露出される。
【0023】
次に、本実施形態に係る切削装置2について説明する。切削装置2の基台4の角部には、カセット6aが載置されるカセットテーブル6が設けられている。カセットテーブル6は、昇降機構(不図示)により上下方向(Z軸方向)に昇降可能である。
図2では、カセットテーブル6に載置されたカセット6aの輪郭を二点鎖線で示している。
【0024】
基台4の上面のカセットテーブル6に隣接する位置には、Y軸方向(左右方向、割り出し送り方向)に平行な状態を維持しながら互いに接近、離隔される一対のガイドレール8を含む仮置きテーブル10が設けられている。また、基台4の上面の仮置きテーブル10に隣接する位置には、カセットテーブル6に載置されたカセット6aに収容されたフレームユニット11をカセット6aから搬出する搬出ユニット12が設けられている。搬出ユニット12は、リングフレーム7を把持できる把持部を前面に有する。
【0025】
カセット6aに収容されたフレームユニット11を搬出する際には、搬出ユニット12をカセット6aに向けて移動させ、該把持部でリングフレーム7を把持し、その後、搬出ユニット12をカセット6aから離れる方向に移動させる。すると、カセット6aからフレームユニット11が仮置きテーブル10に引き出される。このとき、一対のガイドレール8をX軸方向に互い近接する方向に連動させて移動させ、該一対のガイドレール8でリングフレーム7を挟み込むと、フレームユニット11を所定の位置に位置付けられる。
【0026】
基台4の上面のカセットテーブル6に隣接する位置には、X軸方向(前後方向、加工送り方向)に長い開口4aが形成されている。開口4a内には、図示しないボールねじ式のX軸移動機構(加工送りユニット)と、X軸移動機構の上部を覆う蛇腹状の防塵防滴カバー26と、が配設されている。
【0027】
X軸移動機構は、X軸移動テーブル16の下部に接続されており、このX軸移動テーブル16をX軸方向に移動させる機能を有する。例えば、X軸移動テーブル16は、カセットテーブル6に近接する搬出入領域と、後述の切削ユニット32の下方の加工領域と、の間を移動する。
【0028】
X軸移動テーブル16上には、テーブルベース18と、該テーブルベース18に載るチャックテーブル20と、が設けられている。チャックテーブル20の上部には、ポーラス板(不図示)が設けられており、該ポーラス板には、チャックテーブル20内に形成された吸引路(不図示)の一端が接続されている。吸引路の他端には、吸引源(不図示)が接続されている。吸引源を動作させると、ポーラス板の表面に負圧が生じる。これにより、ポーラス板の表面は、ウエーハ1を吸引して保持する保持面22として機能する。
【0029】
チャックテーブル20の下方には、チャックテーブル20を所定の回転軸の周りに回転させる回転駆動機構(不図示)が設けられている。また、チャックテーブル20の径方向外側には、リングフレーム7を把持するクランプ24が設けられている。チャックテーブル20は、上述したX軸移動機構によってX軸方向に移動する。
【0030】
仮置きテーブル10からチャックテーブル20へのフレームユニット11の搬送は、基台4の上面の仮置きテーブル10及び開口4aに隣接する位置に設けられた第1の搬送ユニット14により実施される。第1の搬送ユニット14は、基台4の上面から上方に突き出た昇降可能であるとともに回転可能な軸部と、軸部の上端から水平方向に伸長した腕部と、腕部の先端下方に設けられた保持部と、を有する。
【0031】
第1の搬送ユニット14で仮置きテーブル10からチャックテーブル20へフレームユニット11を搬送する際には、X軸移動テーブル16を移動させてチャックテーブル20を搬出入領域に位置付ける。そして、仮置きテーブル10に仮置きされているフレームユニット11のリングフレーム7を該保持部で保持し、フレームユニット11を持ち上げて、該軸部を回転させてフレームユニット11をチャックテーブル20の上方に移動させる。
【0032】
その後、フレームユニット11を下降させてチャックテーブル20の保持面22に載せる。そして、クランプ24でリングフレーム7を固定するとともに、チャックテーブル20でフレームユニット11の保護部材9を介してウエーハ1を吸引保持する。
【0033】
切削装置2は、X軸移動テーブル16の搬出入領域から加工領域への移動経路の上方に、開口4aを横切るように配設された支持構造28を備える。そして、支持構造28には下方に向いた撮像ユニット30が設けられている。撮像ユニット30は、例えば、赤外線カメラである。
【0034】
撮像ユニット30は、チャックテーブル20に吸引保持されたウエーハ1を裏面1b側から撮像し、表面1aに設定された分割予定ライン3の位置及び向きを検出する。ただし、後述の通り、ウエーハ1を透過した赤外線を撮像ユニット30で撮影するに際し、赤外線を遮蔽する金属膜1cをウエーハ1の裏面1bから部分的に除去しておくとよい。
【0035】
ウエーハ1の切削が実施される加工領域には、チャックテーブル20に保持されたフレームユニット11のウエーハ1を切削する切削ユニット32が設けられている。切削ユニット32は、円環状の切り刃を外周に備える切削ブレード34と、先端部に切削ブレード34が装着され該切削ブレード34の回転軸となるY軸方向に沿ったスピンドル36と、を備える。
【0036】
スピンドル36の基端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドル36の一端部に装着された切削ブレード34は、この回転駆動源が生じる力によって回転する。切削ブレード34は、アルミニウム等で形成された環状の基台と、該基台の外周部に固定された環状の切り刃と、を備える。切り刃は、例えば、ダイヤモンド等の砥粒を樹脂や金属等の結合材で固定することによって形成される。
【0037】
また、切削装置2は、加工送り方向(X軸方向)に直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って切削ユニット32を移動させる割り出し送りユニット(不図示)を支持構造28の内部に備える。加工送りユニットと、割り出し送りユニットと、を作動させるとウエーハ1を吸引保持するチャックテーブル20と、切削ユニット32と、を相対的に移動できる。
【0038】
チャックテーブル20で保持されたフレームユニット11に含まれるウエーハ1に回転する切削ブレード34を切り込ませると、ウエーハ1が切削されて表面1aに達する分割溝が形成される。すべての分割予定ライン3に沿ってウエーハ1を切削すると、ウエーハ1が分割されて個々のデバイスチップが形成される。その後、チャックテーブル20は、X軸移動機構により搬出入領域に移動される。
【0039】
基台4の上面の仮置きテーブル10及び開口4aに隣接する位置には開口4bが形成されており、開口4bには加工後のフレームユニット11を洗浄する洗浄ユニット38が収容されている。洗浄ユニット38は、フレームユニット11を保持するスピンナテーブルを備えている。
【0040】
切削装置2は、搬出入領域に位置付けられたチャックテーブル20から洗浄ユニット38にフレームユニット11を搬送する第2の搬送ユニット40を備える。第2の搬送ユニット40は、Y軸方向に沿って移動可能な腕部と、腕部の先端下方に設けられた保持部と、を有する。
【0041】
第2の搬送ユニット40でチャックテーブル20から洗浄ユニット38へフレームユニット11を搬送する際には、まず、フレームユニット11を該保持部で保持する。そして、腕部をY軸方向に沿って移動させ、フレームユニット11を洗浄ユニット38のスピンナテーブルの上に載せる。その後、スピンナテーブルでフレームユニット11を保持してウエーハ1を洗浄する。
【0042】
洗浄ユニット38でウエーハ1を洗浄する際には、スピンナテーブルを回転させながらウエーハ1の表面に向けて洗浄用の流体(代表的には、水とエアーとを混合した混合流体)を噴射する。そして、洗浄ユニット38で洗浄されたフレームユニット11は、カセットテーブル6に載るカセット6aに収容される。
【0043】
カセット6aにフレームユニット11を収容する際には、第1の搬送ユニット14を使用して洗浄ユニット38から仮置きテーブル10にフレームユニット11を搬送する。そして、搬出ユニット12をカセット6aに向けて移動させてフレームユニット11をカセット6aに押し入れる。
【0044】
このように、切削装置2では、カセット6aからフレームユニット11が搬出され、フレームユニット11がチャックテーブル20で吸引保持され、フレームユニット11に含まれるウエーハ1が切削ユニット32で切削される。その後、フレームユニット11が洗浄ユニット38で洗浄されてカセット6aに再び収容される。切削装置2では、カセット6aから次々にフレームユニット11が搬出され、チャックテーブル20上において切削ユニット32で次々にウエーハ1が切削される。
【0045】
切削ブレード34でウエーハ1が切削される際には、まず、ウエーハ1を保持するチャックテーブル20を保持面22に垂直な軸のまわりに回転させ、切削装置2の加工送り方向(X軸方向)と、ウエーハ1の分割予定ライン3の向きと、を合わせる。例えば、第1の方向に沿った第1の分割予定ライン3aの向きを加工送り方向に合わせる。
【0046】
そして、切削ブレード34を回転させながら切削ブレード34の下端が保護部材9に至るまで切削ユニット32を下降させ、その後、チャックテーブル20をX軸方向に沿って移動させる。すると、切削ブレード34がウエーハ1に切り込み、ウエーハ1に分割溝が形成される。その後、切削ユニット32を上昇させ、同様に複数の第1の分割予定ライン3aに沿って次々に切削ブレード34でウエーハ1を切削する。
【0047】
そして、すべての第1の分割予定ライン3aに沿ってウエーハ1に分割溝を形成した後、チャックテーブル20を回転させて、未切削の分割予定ライン3の向きをX軸方向に合わせる。すなわち、第2の方向に沿った第2の分割予定ライン3bの向きを加工送り方向に合わせる。そして、同様にすべての第2の分割予定ライン3bに沿ってウエーハ1を切削して分割溝を形成する。すると、ウエーハ1が個々のデバイスチップに分割される。
【0048】
ここで、裏面1b側が金属膜1cで被覆され、表面1a側にデバイス5が形成されていると、ウエーハ1には反りを与えるような応力がかかる。この状態でウエーハ1を切削して分割溝を形成すると、ウエーハ1の表面1a側に達した分割溝の縁にチッピングと呼ばれる欠けや、クラックと呼ばれる割れが生じることがある。特に、最初の工程で形成される分割溝の縁で品質が低くなる傾向が確認される。
【0049】
すなわち、第1の方向に沿った第1の分割予定ライン3aに沿ってウエーハ1を切削した後に第2の方向に沿った第2の分割予定ライン3bに沿ってウエーハ1を切削すると、第1の方向に沿ってウエーハ1に形成される分割溝の品質が低くなる。そして、先に第2の方向に沿った第2の分割予定ライン3bに沿ってウエーハ1を分割する場合には、第2の方向に沿ってウエーハ1に形成される分割溝の品質が低くなる。
【0050】
これは、最初の工程で分割溝が形成されることによりウエーハ1にかかる応力に方向による偏りが生じ、次の工程でウエーハ1が切削される際に、切削ブレード34の切り込み方向(加工送り方向)に沿った応力が低減されていることに起因すると考えられる。換言すると、最初の工程ではウエーハ1にかかる応力に偏りが生じておらず、切削ブレード34の切り込み方向に沿った大きな応力がウエーハ1にかかった状態でウエーハ1が切削されるため、形成される分割溝の縁でクラックが生じやすくなると考えられる。
【0051】
そこで、本実施形態に係るデバイスチップの製造方法では、切削ブレード34でウエーハ1に最初に分割溝を形成する際にも予めウエーハ1かかる応力に偏りを生じさせる。以下、本実施形態に係るデバイスチップの製造方法の各工程について説明する。
図7(B)は、本実施形態に係るデバイスチップの製造方法の各工程の流れを示すフローチャートである。
【0052】
まず、本実施形態に係るデバイスチップの製造方法では、
図2に示す切削装置2を準備する準備工程S10を実施する。上述の通り、切削装置2は、ウエーハ1を保持できるチャックテーブル20と、該チャックテーブル20に保持されたウエーハ1を切削できる切削ブレード34を回転可能に備えた切削ユニット32と、を備える。
【0053】
また、切削装置2は、チャックテーブル20と切削ユニット32とをX軸方向に相対的に加工送りする加工送りユニットと、チャックテーブル20と切削ユニット32とをX軸方向に直行するY軸方向に相対的に割り出し送りする割り出し送りユニットと、を備える。さらに、切削装置2は、チャックテーブル20に吸引保持されたウエーハ1を撮像する撮像ユニット30を備える。
【0054】
次に、ウエーハ保持工程S20を実施する。ウエーハ保持工程S20では、表面1a側に保護部材9が配設されたウエーハ1の表面1a側をチャックテーブル20に向けてウエーハ1をチャックテーブル20に載せる。ウエーハ1は、搬出ユニット12及び第1の搬送ユニット14等によりカセット6aからチャックテーブル20上に搬送される。そして、チャックテーブル20の吸引源を作動させ、保護部材9を介してウエーハ1をチャックテーブル20で吸引保持する。このとき、ウエーハ1の裏面1b側が上方に露出する。
【0055】
その後、チャックテーブル20を保持面22に垂直な軸の周りに回転させ、ウエーハ1の第1の分割予定ライン3aを加工送り方向(X軸方向)に合わせる。なお、第1の分割予定ライン3aの検出は、撮像ユニット30により実施される。撮像ユニット30は、例えば、赤外線カメラであり、上方からウエーハ1を通して表面1a側を観察し、第1の分割予定ライン3aの向き及び位置を検出する。
【0056】
ここで、ウエーハ1の裏面1b側が金属膜1cで覆われている場合、撮像ユニット30でウエーハ1を通してウエーハ1の表面1a側を撮影できない。これは、金属膜1cが赤外線を透過しないためである。そこで、分割予定ライン3の検出を実施する前に、一部の金属膜1cを除去する金属膜除去工程S21が実施されるとよい。
【0057】
図3は、金属膜除去工程S21を模式的に示す斜視図である。
図3等では、チャックテーブル20の本体と、二点鎖線で輪郭が示された切削ブレード34を除く切削ユニット32と、が省略されている。金属膜除去工程S21では、ウエーハ1の裏面1bを被覆する金属膜1cの外周部1dを切削してリング状に該金属膜1cを除去する。ウエーハ1の外周部1dは、表面1aにデバイス5が形成されておらず、外周余剰領域と呼ばれる。この領域において金属膜1cを除去しても、ウエーハ1から製造されるチップに影響はない。
【0058】
金属膜除去工程S21では、まず、切削ブレード34をウエーハ1の外周部1dの上方に位置付ける。このとき、Y軸方向におけるウエーハ1の端部の上方に切削ブレード34を位置付けるとよい。そして、切削ブレード34の回転を開始し、切削ブレード34を下降させる。すると、切削ブレード34が金属膜1cに接触して金属膜1cが切削される。このとき、切削ブレード34の下端が金属膜1cの下方に達したところで切削ブレード34の下降を終了する。
【0059】
その後、チャックテーブル20を保持面22に垂直な軸の周りに1回転させると、外周部1dに沿って金属膜1cが除去される。金属膜除去工程S21を実施すると、外周部1dに沿った環状領域においてウエーハ1の裏面1bが上方に露出する。そのため、この領域において、撮像ユニット30でウエーハ1を通して表面1a側の観察が可能となる。
【0060】
金属膜除去工程S21の後、分割予定ライン検出工程S22を実施する。撮像ユニット30を金属膜1cが除去された領域の上方に位置づけて、ウエーハ1を通して該ウエーハ1の表面1a側を撮像して表面1aに設定された第1の分割予定ライン3a及び第2の分割予定ライン3bを検出する。
【0061】
これにより、切削装置2において第1の分割予定ライン3a及び第2の分割予定ライン3bに沿った切削加工が可能となる。本実施形態に係るデバイスチップの製造方法では、ウエーハ保持工程S20を実施した後、次に説明するハーフカット溝形成工程S30を実施する前に金属膜除去工程S21及び分割予定ライン検出工程S22を実施するとよい。
【0062】
次に、第1の分割予定ライン3aに沿って切削ブレード34でウエーハ1を切削し、ハーフカット溝を形成するハーフカット溝形成工程S30を実施する。
図4は、ハーフカット溝形成工程S30を模式的に示す斜視図である。
図4では、チャックテーブル20の本体等を省略している。
【0063】
ハーフカット溝形成工程S30を実施する際、予め、チャックテーブル20を保持面22に垂直な軸の周りに回転させ、ウエーハ1の第1の分割予定ライン3aを加工送り方向(X軸方向)に合わせる。そして、ウエーハ1の一つの第1の分割予定ライン3aの延長線の上方に切削ブレード34を位置付け、切削ブレード34の回転を開始し、切削ブレード34を下降させる。このとき、切削ブレード34の下端をウエーハ1の表面1aの高さ位置と裏面1bの高さ位置の間の所定の高さ位置に位置付ける。
【0064】
このときの切削ブレード34の下端の高さ位置は、ウエーハ1に形成されるハーフカット溝13の底面の高さ位置となる。ここで、ハーフカット溝13の底面は、ウエーハ1の表面1a及び裏面1bの中間の高さ位置とすることが好ましい。
【0065】
次に、加工送りユニットを作動させてチャックテーブル20をX軸方向に沿って加工送りすると、ウエーハ1が第1の分割予定ライン3aに沿って切削され、ウエーハ1にハーフカット溝13が形成される。そして、割り出し送りユニットを作動させて切削ユニット32をY軸方向に沿って割り出し送りし、他の第1の分割予定ライン3aに沿ってウエーハ1を同様に切削する。こうして、切削を繰り返してすべての第1の分割予定ライン3aに沿ってウエーハ1にハーフカット溝13を形成する。
【0066】
第1の方向に沿った複数の第1の分割予定ライン3aに沿ってハーフカット溝13が形成されると、ウエーハ1に働く応力に方向による偏りが生じる。このように、本実施形態に係るデバイスチップの製造方法では、最初にウエーハ1に分割溝を形成する前にウエーハ1に働く応力に偏りを生じさせる。
【0067】
ハーフカット溝形成工程S30の後、第2の分割予定ライン3bに沿って切削ブレード34でウエーハ1を切削し、保護部材9に至る第1の分割溝を形成する第1のフルカット工程S40を実施する。
図5は、第1のフルカット工程S40を模式的に示す斜視図である。第1の分割予定ライン3aに沿ったハーフカット溝13を形成した後、第2の分割予定ライン3bに沿ってウエーハ1を切削するために、チャックテーブル20を回転させ、第2の分割予定ライン3bの向きを加工送り方向(X軸方向)に合わせる。
【0068】
第1のフルカット工程S40では、切削ブレード34を第2の分割予定ライン3bの延長線の上方に位置付け、切削ブレード34の回転を開始し、切削ブレード34を下降させる。第1のフルカット工程S40では、ウエーハ1を分断する第1の分割溝15を形成するために、切削ブレード34をウエーハ1の表面1aよりも下方の保護部材9に切り込ませる。すなわち、切削ブレード34の下端が保護部材9の上面及び下面の間の高さ位置に位置付けられるように切削ユニット32を下降させる。
【0069】
その後、加工送りユニットを作動させてチャックテーブル20をX軸方向に沿って加工送りすると、ウエーハ1が第2の分割予定ライン3bに沿って切削され、ウエーハ1に第1の分割溝15が形成される。そして、割り出し送りユニットを作動させて切削ユニット32をY軸方向に沿って割り出し送りし、他の第2の分割予定ライン3bに沿ってウエーハ1を同様に切削する。こうして、切削を繰り返してすべての第2の分割予定ライン3bに沿ってウエーハ1に第1の分割溝15を形成する。
【0070】
第1のフルカット工程S40の後、第1の分割予定ライン3aに沿って切削ブレード34でウエーハ1を切削し、保護部材9に至る第2の分割溝を形成し、個々のデバイスチップを形成する第2のフルカット工程S50を実施する。
図6は、第2のフルカット工程S50を模式的に示す斜視図である。
【0071】
第2の分割予定ライン3bに沿った第1の分割溝15を形成した後、第1の分割予定ライン3aに沿ってウエーハ1を切削するために、チャックテーブル20を回転させ、第1の分割予定ライン3aの向きを加工送り方向(X軸方向)に合わせる。
【0072】
第2のフルカット工程S50では、切削ブレード34を第1の分割予定ライン3aの延長線の上方に位置付け、切削ブレード34の回転を開始し、切削ブレード34を下降させる。第2のフルカット工程S50においても、切削ブレード34の下端が保護部材9の上面及び下面の間の高さ位置に位置付けられるように切削ユニット32を下降させる。
【0073】
その後、加工送りユニットを作動させてチャックテーブル20をX軸方向に沿って加工送りすると、ウエーハ1が第1の分割予定ライン3aに沿って切削され、ウエーハ1に第2の分割溝17が形成される。そして、割り出し送りユニットを作動させて切削ユニット32をY軸方向に沿って割り出し送りし、他の第1の分割予定ライン3aに沿ってウエーハ1を同様に切削する。こうして、切削を繰り返してすべての第1の分割予定ライン3aに沿ってウエーハ1に第2の分割溝17を形成する。
【0074】
ここで、ウエーハ1には、先に第1の分割予定ライン3aに沿ったハーフカット溝13が形成されている。そこで、第2のフルカット工程S50では、ハーフカット溝13の形成位置に切削ブレード34を切り込ませることで該ハーフカット溝13を含む第2の分割溝17を形成するとよい。この場合、ハーフカット溝13が形成されていない位置でウエーハ1を切削するよりもウエーハ1にかかる切削負荷は小さくなる。そのため、形成される第2の分割溝17の周囲においてウエーハ1に損傷が生じにくくなる。
【0075】
ウエーハ1を第1の分割予定ライン3a及び第2の分割予定ライン3bに沿って切削し、第2の分割溝17及び第1の分割溝15を形成すると、ウエーハ1が個々のデバイスチップに分割される。すなわち、デバイスチップが製造される。
【0076】
以上に説明するように、本実施形態に係るデバイスチップの製造方法によると、ウエーハ1をフルカットして第2の方向に沿った第1の分割溝15を形成する前に、この第2の方向に交差する第1の方向に沿ってウエーハ1を切削してハーフカット溝13を形成する。ウエーハ1に第1の方向に沿ったハーフカット溝13が形成されていると、ウエーハ1に反りを与えるように働く応力に方向による偏りが生じる。
【0077】
そのため、第1のフルカット工程S40を実施する際には、切削ブレード34の切り込み方向(加工送り方向)となる第2の方向に沿った応力が低減されている。この場合、ウエーハ1にかかる応力に偏りが生じた状態でウエーハ1に最初の第1の分割溝15を形成できるため、最初に形成される第1の分割溝15の縁にクラック等の損傷が生じにくくなり、第1の分割溝15の品質が高くなる。
【0078】
その後、第1の分割予定ライン3aに沿ってウエーハ1に第2の分割溝17を形成する際には、先行して形成された第1の分割溝15により、ウエーハ1にかかる応力に偏りが生じた状態となる。そのため、第2のフルカット工程S50で形成される第2の分割溝17の縁にもクラック等の損傷が生じにくくなり、第2の分割溝17の品質も高くなる。したがって、本実施形態に係るデバイスチップの製造方法によると、ウエーハ1を高品質に切削でき、形成されるすべての分割溝15,17の品質が高くなり、高品質なデバイスチップを製造できる。
【0079】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上述の実施形態においては、ウエーハ1の裏面1b側に金属膜1cが形成され、金属膜1cによりウエーハ1に反りを与えるような応力が働いている場合について説明した。しかしながら、本発明の一態様はこれに限定されない。
【0080】
すなわち、本発明の一態様に係るデバイスチップの製造方法で加工されるウエーハはこれに限定されず、裏面1b側に金属膜1cが形成されていなくてもよく、他の理由によりウエーハ1に応力が働いていてもよい。また、ウエーハ1には、反りを与えるような強い応力が生じている必要はない。
【0081】
例えば、ウエーハ1の表面1aに有機樹脂膜が設けられ、該有機樹脂膜によりウエーハ1に反りを与える応力が働いていてもよい。この場合においても、本発明の一態様によると、ハーフカット溝13を先行してウエーハ1に形成して応力の偏りを生じさせることで、ウエーハ1を高品質に加工でき、高品質なデバイスチップを製造できる。
【0082】
なお、裏面1b側に金属膜1cが形成されていない場合、撮像ユニット30でウエーハ1を通して表面1a側を観察して分割予定ライン3a,3bの位置を特定するために金属膜1cを除去する金属膜除去工程S21が不要となる。
図7(A)は、金属膜除去工程S21等を実施しない場合における本発明の一態様に係るデバイスチップの製造方法の各工程の流れを示すフローチャートである。
【0083】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0084】
1 ウエーハ
1a 表面
1b 裏面
1c 金属膜
1d 外周部
3,3a,3b 分割予定ライン
5 デバイス
7 リングフレーム
9 保護部材
11 フレームユニット
13 ハーフカット溝
15,17 分割溝
2 切削装置
4 基台
4a,4b 開口
6 カセットテーブル
6a カセット
8 ガイドレール
10 仮置きテーブル
12 搬出ユニット
14,40 搬送ユニット
16 X軸移動テーブル
18 テーブルベース
20 チャックテーブル
22 保持面
24 クランプ
26 防塵防滴カバー
28 支持構造
30 撮像ユニット
32 切削ユニット
34 切削ブレード
36 スピンドル
38 洗浄ユニット