(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100570
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】静電チャック及びその製造方法、基板固定装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220629BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214620
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】村松 佑亮
(72)【発明者】
【氏名】竹元 啓一
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131BB03
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB12
5F131EB18
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
(57)【要約】
【課題】均熱性をさらに向上した静電チャックを提供する。
【解決手段】本静電チャックは、吸着対象物が載置される載置面を有する基体と、前記基体の前記載置面とは反対側に位置する裏面に直接形成された熱拡散層と、前記熱拡散層の前記基体とは反対側に、前記熱拡散層と接するように配置された絶縁層と、前記絶縁層に内蔵された発熱体と、を有し、前記熱拡散層は、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い材料から形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着対象物が載置される載置面を有する基体と、
前記基体の前記載置面とは反対側に位置する裏面に直接形成された熱拡散層と、
前記熱拡散層の前記基体とは反対側に、前記熱拡散層と接するように配置された絶縁層と、
前記絶縁層に内蔵された発熱体と、を有し、
前記熱拡散層は、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い材料から形成されている、静電チャック。
【請求項2】
前記熱拡散層は、前記裏面の全体に成膜されている、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記熱拡散層の熱伝導率は、400W/m・k以上である、請求項1又は2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記熱拡散層の材料は、銅、銅合金、銀、又は銀合金である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の静電チャック。
【請求項5】
基体の一方の面に、熱拡散層を直接成膜する工程と、
前記熱拡散層の前記基体とは反対側の面に、第1の絶縁樹脂フィルムを直接配置する工程と、
前記第1の絶縁樹脂フィルム上に、金属箔を配置する工程と、
前記金属箔をパターニングして発熱体を形成する工程と、
前記第1の絶縁樹脂フィルム上に、前記発熱体を被覆する第2の絶縁樹脂フィルムを配置する工程と、
前記第1の絶縁樹脂フィルム及び前記第2の絶縁樹脂フィルムを硬化させ、前記熱拡散層と直接接合された絶縁層を形成する工程と、を有し、
前記熱拡散層は、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い材料から形成される、静電チャックの製造方法。
【請求項6】
ベースプレートと、
前記ベースプレートの一方の面に搭載された請求項1乃至4の何れか一項に記載の静電チャックと、を有する基板固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャック及びその製造方法、基板固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSI等の半導体装置を製造する際に使用される成膜装置(例えば、CVD装置やPVD装置等)やプラズマエッチング装置は、ウェハを真空の処理室内に精度良く保持するためのステージを有する。
【0003】
このようなステージとして、例えば、ベースプレートに搭載された静電チャックにより、吸着対象物であるウェハを吸着保持する基板固定装置が提案されている。静電チャックは、例えば、発熱体や、発熱体からの熱を均一化させる金属層を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年は、静電チャックに、さらなる均熱性向上が求められており、従来の構造では均熱性向上の要求を満足することは困難であった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、均熱性をさらに向上した静電チャックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本静電チャックは、吸着対象物が載置される載置面を有する基体と、前記基体の前記載置面とは反対側に位置する裏面に直接形成された熱拡散層と、前記熱拡散層の前記基体とは反対側に、前記熱拡散層と接するように配置された絶縁層と、前記絶縁層に内蔵された発熱体と、を有し、前記熱拡散層は、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い材料から形成されている。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、均熱性をさらに向上した静電チャックを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
【
図2】本実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図(その1)である。
【
図3】本実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図(その2)である。
【
図4】本実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
[基板固定装置の構造]
図1は、本実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面図である。
図1を参照すると、基板固定装置1は、主要な構成要素として、ベースプレート10と、接着層20と、静電チャック30とを有している。
【0012】
ベースプレート10は、静電チャック30を搭載するための部材である。ベースプレート10の厚さは、例えば、20~50mm程度とすることができる。ベースプレート10は、例えば、アルミニウムから形成され、プラズマを制御するための電極等として利用することもできる。ベースプレート10に所定の高周波電力を給電することで、発生したプラズマ状態にあるイオン等を静電チャック30上に吸着されたウェハに衝突させるためのエネルギーを制御し、エッチング処理を効果的に行うことができる。
【0013】
ベースプレート10の内部には、水路15が設けられている。水路15は、一端に冷却水導入部15aを備え、他端に冷却水排出部15bを備えている。水路15は、基板固定装置1の外部に設けられた冷却水制御装置(図示せず)に接続されている。冷却水制御装置(図示せず)は、冷却水導入部15aから水路15に冷却水を導入し、冷却水排出部15bから冷却水を排出する。水路15に冷却水を循環させベースプレート10を冷却することで、静電チャック30上に吸着されたウェハを冷却することができる。ベースプレート10には、水路15の他に、静電チャック30上に吸着されたウェハを冷却する不活性ガスを導入するガス路等を設けてもよい。
【0014】
静電チャック30は、吸着対象物であるウェハを吸着保持する部分である。静電チャック30の平面形状は、例えば、円形とすることができる。静電チャック30の吸着対象物であるウェハの直径は、例えば、8、12、又は18インチ程度とすることができる。
【0015】
静電チャック30は、接着層20を介して、ベースプレート10の一方の面に搭載されている。接着層20としては、例えば、シリコーン系接着剤を用いることができる。接着層20の厚さは、例えば、2mm程度とすることができる。接着層20の熱伝導率は2W/mK以上とすることが好ましい。接着層20は、複数の接着層が積層した積層構造としてもよい。例えば、接着層20を熱伝導率が高い接着剤と弾性率が低い接着剤とを組み合わせた2層構造とすることで、アルミニウム製のベースプレートとの熱膨張差から生じるストレスを低減させる効果が得られる。
【0016】
静電チャック30は、基体31と、静電電極32と、熱拡散層33と、絶縁層34と、発熱体35とを有している。静電チャック30は、例えば、ジョンセン・ラーベック型静電チャックである。但し、静電チャック30は、クーロン力型静電チャックであってもよい。
【0017】
基体31は誘電体であり、吸着対象物が載置される載置面31aを有する。基体31としては、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスを用いることができる。基体31の厚さは、例えば、1~10mm程度、基体31の比誘電率(1kHz)は、例えば、9~10程度とすることができる。
【0018】
静電電極32は、薄膜電極であり、基体31に内蔵されている。静電電極32は、基板固定装置1の外部に設けられた電源に接続され、電源から所定の電圧が印加されると、ウェハとの間に静電気による吸着力を発生させる。これにより、静電チャック30の基体31の載置面31a上にウェハを吸着保持することができる。吸着保持力は、静電電極32に印加される電圧が高いほど強くなる。静電電極32は、単極形状でも、双極形状でも構わない。静電電極32の材料としては、例えば、タングステン、モリブデン等を用いることができる。
【0019】
熱拡散層33は、基体31の載置面31aとは反対側に位置する裏面に直接形成されている。つまり、熱拡散層33は、接着層等を介さずに、基体31の裏面に接している。熱拡散層33は、発熱体35の発する熱を均一化して拡散する層であり、絶縁層34よりも熱伝導率の高い材料から形成されている。熱拡散層33の熱伝導率は、400W/m・k以上であることが好ましい。このような熱伝導率を達成できる材料としては、例えば、銅(Cu)、銅合金、銀(Ag)、銀合金等の金属やカーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0020】
熱拡散層33は、基体31の裏面の全体に形成されていることが好ましい。すなわち、熱拡散層33は、基体31の裏面にベタ状に形成されることが好ましく、パターニングされたり開口部を有したりしないことが好ましい。このようにすることで、熱拡散層33は、均熱性を向上する効果を十分に発揮できる。熱拡散層33の厚さは、例えば、数nm~数100μm程度とすることができる。熱拡散層33の下面は絶縁層34の上面と接している。
【0021】
なお、従来の静電チャックでは、熱拡散層として機能する金属層等が接着層を介して基体に固定されていたり、金属層が所定形状にパターニングされたりしており、十分な均熱性が達成できていなかった。
【0022】
絶縁層34は、熱拡散層33の基体31とは反対側に、熱拡散層33と接するように配置されている。絶縁層34は、熱拡散層33と発熱体35とを絶縁する層である。絶縁層34としては、例えば、高熱伝導率及び高耐熱性を有するエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等を用いることができる。絶縁層34の熱伝導率は3W/mK以上とすることが好ましい。絶縁層34にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、絶縁層34の熱伝導率を向上させることができる。又、絶縁層34のガラス転移温度(Tg)は250℃以上とすることが好ましい。又、絶縁層34の厚さは100~150μm程度とすることが好ましく、絶縁層34の厚さばらつきは±10%以下とすることが好ましい。
【0023】
発熱体35は、絶縁層34に内蔵されている。発熱体35の周囲は、絶縁層34に被覆され、外部から保護されている。発熱体35は、基板固定装置1の外部から電圧を印加することで発熱し、基体31の載置面31aが所定の温度となるように加熱する。発熱体35は、例えば、基体31の載置面31aの温度を250℃~300℃程度まで加熱することができる。発熱体35の材料としては、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、コンスタンタン(Cu/Ni/Mn/Feの合金)等を用いることができる。発熱体35の厚さは、例えば、20~100μm程度とすることができる。発熱体35は、例えば、同心円状のパターンとすることができる。
【0024】
なお、発熱体35と絶縁層34との高温下での密着性を向上するため、発熱体35の少なくとも一つの面(上下面の一方又は双方)が粗化されていることが好ましい。もちろん、発熱体35の上下面の両方が粗化されていてもよい。この場合、発熱体35の上面と下面で異なる粗化方法を用いてもよい。粗化の方法は特に限定されないが、エッチングによる方法、カップリング剤系の表面改質技術を用いる方法、波長355nm以下のUV-YAGレーザによるドット加工を用いる方法等を例示することができる。
【0025】
[基板固定装置の製造方法]
図2~
図4は、本実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図である。
図2~
図4を参照しながら、基板固定装置1の製造工程について、静電チャックの形成工程を中心に説明する。なお、
図2(a)~
図4(a)は、
図1とは上下を反転した状態で描いている。
【0026】
まず、
図2(a)に示す工程では、グリーンシートにビア加工を行う工程、ビアに導電ペーストを充填する工程、静電電極となるパターンを形成する工程、他のグリーンシートを積層して焼成する工程、表面を平坦化する工程等を含む周知の製造方法により、静電電極32を内蔵する基体31を作製する。
【0027】
次に、
図2(b)に示す工程では、基体31の一方の面に、熱拡散層33を直接成膜する。熱拡散層33は、例えば、銅や銀等の金属を用い、スパッタ法、無電解めっき法、スプレーコーティング法等により、基体31の一方の面に直接成膜できる。熱拡散層33は、基体31の一方の面の全面に成膜することが好ましい。熱拡散層33をスパッタ法で成膜した場合、熱拡散層33の厚さは10nm以上500nm以下程度となる。スパッタ法で成膜した熱拡散層33は膜厚が均一となるため、均熱性を向上する効果が高い。ここで、膜厚が均一とは、熱拡散層33の最厚部と最薄部の差が10%以下の場合をいう。
【0028】
なお、熱拡散層33を成膜する前に、基体31に表面処理を行うことが好ましい。表面処理は、例えば、洗浄と逆スパッタ処理とする。例えば、洗浄は純水に浸漬させ超音波洗浄し、IPAによって置換されたのち真空乾燥を行う。さらに、例えば、スパッタを行う直前にはArガスを使用した逆スパッタにより基体31の一方の面のカーボンなどの汚れを除去した後、スパッタリングの工程を行う。
【0029】
次に、
図2(c)に示す工程では、熱拡散層33の基体31とは反対側の面(
図2(c)では上面)に、絶縁樹脂フィルム341を直接配置する。絶縁樹脂フィルム341は、真空中でラミネートすると、ボイドの巻き込みを抑制できる点で好適である。絶縁樹脂フィルム341は、硬化させずに、半硬化状態(B-ステージ)としておく。半硬化状態である絶縁樹脂フィルム341の粘着力により、絶縁樹脂フィルム341は熱拡散層33上に仮固定される。
【0030】
絶縁樹脂フィルム341としては、例えば、高熱伝導率及び高耐熱性を有するエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等を用いることができる。絶縁樹脂フィルム341の熱伝導率は3W/mK以上とすることが好ましい。絶縁樹脂フィルム341にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、絶縁樹脂フィルム341の熱伝導率を向上させることができる。又、絶縁樹脂フィルム341のガラス転移温度は250℃以上とすることが好ましい。又、熱伝導性能を高める(熱伝導速度を速める)観点から、絶縁樹脂フィルム341の厚さは60μm以下とすることが好ましく、絶縁樹脂フィルム341の厚さばらつきは±10%以下とすることが好ましい。
【0031】
次に、
図3(a)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム341上に金属箔351を配置する。金属箔351は最終的に発熱体35となる層であるため、金属箔351の材料は、既に例示した発熱体35の材料と同様である。金属箔351の厚さは、エッチングによる配線形成性を考慮し、100μm以下とすることが好ましい。金属箔351は、半硬化状態である絶縁樹脂フィルム341の粘着力により、絶縁樹脂フィルム341上に仮固定される。
【0032】
なお、絶縁樹脂フィルム341上に配置する前に、金属箔351の少なくとも一つの面(上下面の一方又は双方)を粗化しておくことが好ましい。もちろん、金属箔351の上下面の両方が粗化されていてもよい。この場合、金属箔351の上面と下面で異なる粗化方法を用いてもよい。粗化の方法は特に限定されないが、エッチングによる方法、カップリング剤系の表面改質技術を用いる方法、波長355nm以下のUV-YAGレーザによるドット加工を用いる方法等を例示することができる。
【0033】
又、ドット加工を用いる方法では、金属箔351の必要な領域を選択的に粗化することができる。そこで、ドット加工を用いる方法では、金属箔351の全領域に対して粗化を行う必要はなく、最低限、発熱体35として残す領域に対して粗化を行えば足りる(つまり、エッチングで除去される領域に対してまで粗化を行う必要はない)。
【0034】
次に、
図3(b)に示す工程では、金属箔351をパターニングして発熱体35を形成する。発熱体35は、例えば、同心円状のパターンとすることができる。具体的には、例えば、金属箔351上の全面にレジストを形成し、レジストを露光及び現像し、発熱体35として残す部分のみを被覆するレジストパターンを形成する。次に、レジストパターンに被覆されていない部分の金属箔351をエッチングにより除去する。例えば、金属箔351の材料が銅である場合には、金属箔351を除去するエッチング液としては、塩化第二銅エッチング液や塩化第二鉄エッチング液等を用いることができる。
【0035】
その後、レジストパターンを剥離液により剥離することにより、絶縁樹脂フィルム341の所定位置に発熱体35が形成される(フォトリソグラフィ法)。フォトリソグラフィ法により発熱体35を形成することにより、発熱体35の幅方向の寸法のばらつきを低減することが可能となり、発熱分布を改善することができる。なお、エッチングにより形成された発熱体35の断面形状は、例えば、略台形状とすることができる。この場合、絶縁樹脂フィルム341に接する面と、その反対面との配線幅の差は、例えば、10~50μm程度とすることができる。発熱体35の断面形状をシンプルな略台形状とすることにより、発熱分布を改善することができる。
【0036】
次に、
図3(c)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム341上に、発熱体35を被覆する絶縁樹脂フィルム342を配置する。絶縁樹脂フィルム342は、真空中でラミネートすると、ボイドの巻き込みを抑制できる点で好適である。絶縁樹脂フィルム342材料は、例えば、絶縁樹脂フィルム341と同様とすることができる。但し、絶縁樹脂フィルム341の厚さは、発熱体35を被覆できる範囲内で適宜決定することができ、必ずしも絶縁樹脂フィルム341と同じ厚さにする必要はない。
【0037】
次に、
図4(a)に示す工程では、絶縁樹脂フィルム341及び342を基体31側に押圧しながら、絶縁樹脂フィルム341及び342を硬化温度以上に加熱して硬化させる。これにより、絶縁樹脂フィルム341及び342が一体化して絶縁層34となり、熱拡散層33と直接接合された絶縁層34が形成される。また、発熱体35の周囲は、絶縁層34に被覆される。常温に戻った時のストレスを考慮し、絶縁樹脂フィルム341及び342の加熱温度は、200℃以下とすることが好ましい。以上により、静電チャック30が完成する。
【0038】
なお、絶縁樹脂フィルム341及び342を基体31側に押圧しながら加熱硬化させることにより、発熱体35の有無の影響による絶縁層34の上面(静電チャック30と接しない側の面)の凹凸を低減して平坦化することができる。絶縁層34の上面の凹凸は、7μm以下とすることが好ましい。絶縁層34の上面の凹凸を7μm以下とすることにより、次工程で絶縁層34と接着層20との間に気泡を巻き込むことを防止できる。つまり、絶縁層34と接着層20との間の接着性が低下することを防止できる。
【0039】
次に、
図4(b)に示す工程では、予め水路15等を形成したベースプレート10を準備し、ベースプレート10上に接着層20(未硬化)を形成する。そして、
図4(a)に示す静電チャック30を上下反転させ、接着層20を介して、ベースプレート10上に配置し、接着層20を硬化させる。これにより、ベースプレート10上に接着層20を介して静電チャック30が積層された基板固定装置1が完成する。
【0040】
このように、静電チャック30では、基体31の裏面に熱拡散層33が直接形成されているため、発熱体35の発する熱を基体31に均一に伝わりやすくすることができる。すなわち、静電チャック30では、基体と金属層等との間に接着層等が介在していた従来の構造と比べて、均熱性をさらに向上することが可能となる。
【0041】
また、熱拡散層33を基体31の裏面の全体に形成することで、発熱体35の発する熱を基体31の全体に均一に拡散することができる。また、熱拡散層33の熱伝導率を400W/m・k以上とすることで、基体31の水平方向に対して素早く熱を拡散することができる。そして、熱拡散層33によって均一に拡散された熱は、基体31を均一に加熱することができる。
【0042】
また、基体31の裏面に直接成膜された熱拡散層33は、金属箔を貼り付けて作製した場合等とは異なり、膜厚が均一となる。そのため、均熱性を向上する効果が高い。
【0043】
また、発熱体35を内蔵した絶縁層34が熱拡散層33と接するように配置されていることで、発熱体35の発する熱を効率よく熱拡散層33に伝えることができる。
【0044】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0045】
例えば、本発明に係る基板固定装置の吸着対象物としては、半導体ウェハ(シリコンウエハ等)以外に、液晶パネル等の製造工程で使用されるガラス基板等を例示することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 基板固定装置
10 ベースプレート
15 水路
15a 冷却水導入部
15b 冷却水排出部
20 接着層
30 静電チャック
31 基体
31a 載置面
32 静電電極
33 熱拡散層
34 絶縁層
35 発熱体
341、342 絶縁樹脂フィルム
351 金属箔