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特開2022-100739ポリエーテルポリオールの製造方法、ポリウレタンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100739
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】ポリエーテルポリオールの製造方法、ポリウレタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/04 20060101AFI20220629BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C08G65/04
C08G18/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214910
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 清太
【テーマコード(参考)】
4J005
4J034
【Fターム(参考)】
4J005AA02
4J005BB01
4J005BB02
4J034BA03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DC02
4J034DG02
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG16
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034RA08
(57)【要約】
【課題】ポリエーテルポリオールの単位容積あたりの生産量及び単位時間あたりの生産量が向上し、反応設備を小型化でき、複数種のポリエーテルポリオールを製造する場合でも生産性が低下しにくいポリエーテルポリオールの製造方法の提供。
【解決手段】開始剤、触媒及び環状エーテルを含む混合物が反応する反応部21と、反応部21と接して設けられている冷却部22とを有する管型反応器20を用い、冷却部22によって反応部21を冷却しながら、反応部21内で混合物を攪拌することを特徴とするポリエーテルポリオールの製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開始剤及び触媒の存在下で少なくとも1種以上の環状エーテルを開環付加重合させるポリエーテルポリオールの製造方法であって、
開始剤、触媒及び環状エーテルを含む混合物が反応する反応部と、前記反応部と接して設けられている冷却部とを有する管型反応器を用い、
前記冷却部によって前記反応部を冷却しながら、前記反応部内で前記混合物を攪拌することを特徴とする、ポリエーテルポリオールの製造方法。
【請求項2】
前記反応部内で前記管型反応器の長手方向と平行に配置されたシャフトの表面に設けられた掻き取り刃を、前記反応部内で回転させて前記混合物を攪拌する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記管型反応器の冷却部による冷却能力が、500kW/m以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
反応部への環状エーテルの供給量が、反応部の容積に対して20kg/min/m以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
環状エーテルを開環付加重合させる際の圧力が、0.8MPa以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記管型反応器には、環状エーテルのフィードポートが複数形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
開始剤が、炭素数が1~32の炭化水素における1つの水素原子が水酸基に置換された1価のアルコール;炭素数が1~16の炭化水素における2~8個の水素原子が水酸基に置換され、かつ、前記炭化水素における1~4個の炭素原子は酸素原子に置換されていてもよい多価アルコール;水酸基価が10~750のポリオキシアルキレンモノオール;及び水酸基価が10~1600のポリオキシアルキレンポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
環状エーテルの炭素数が、2~4である、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
ポリエーテルポリオールの水酸基価換算分子量が、300~100000である、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
触媒が、複合金属シアン化物錯体触媒である、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記管型反応器を用いて触媒を活性化した後に、環状エーテルを開環付加重合させる、請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
反応部の出口側から得られたポリエーテルポリオールの一部を開始剤として、反応部の入口側に供給する、請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法でポリエーテルポリオールを製造し、次いで、前記ポリエーテルポリオールに環状エーテルをさらに開環付加重合させる、ポリエーテルポリオールの製造方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の製造方法でポリエーテルポリオールを製造し、次いで、前記ポリエーテルポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させる、ポリウレタンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテルポリオールの製造方法、ポリウレタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水酸基等の活性水素含有基を有する開始剤に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルを開環付加重合させるポリエーテルポリオールの製造方法が知られている。例えば、水酸化カリウム等のアルカリ触媒を用いる場合、グリセリン、プロピレングリコール、低分子量のポリエーテルポリオール等の低分子量の開始剤に環状エーテルを開環付加重合させることができる。
アルカリ触媒の他にも、ポリエーテルポリオールの製造に使用される触媒として、複合金属シアン化物錯体触媒(DMC触媒)が知られている。DMC触媒を使用すると、環状エーテルの開環付加重合の反応速度がアルカリ触媒と比較して高くなる。
【0003】
しかし、低分子量の開始剤に環状エーテルを開環付加重合させる場合、DMC触媒は活性を示しにくく、重合反応が進行しにくい。そのため分子量が500~3000程度の中間体のポリエーテルポリオールを事前に準備し、この中間体を開始剤としてDMC触媒の存在下で環状エーテルの開環付加重合を行うことがある(例えば、特許文献1)。
一方で、低分子量の開始剤の濃度が低ければ、DMC触媒の存在下でも環状エーテルの開環付加重合反応が進行し得る。この性質を利用して、循環式のポリエーテルポリオールの製造方法が提案されている(例えば、特許文献2~4)。
循環式のポリエーテルポリオールの製造方法では、開環付加重合反応によって得られるポリエーテルポリオールの一部を開始剤として反応器の入口側に戻しながら、低分子量の開始剤及び環状エーテルをさらに供給する。そのため、DMC触媒の活性を維持しながら低分子量の開始剤に環状エーテルを開環付加重合させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2019-529631号公報
【特許文献2】特表2001-506284号公報
【特許文献3】国際公開第03/062301号
【特許文献4】国際公開第2009/143103号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、環状エーテルの開環付加重合反応の際には大きな反応熱が生じるにもかかわらず、従来の製造方法では反応器の冷却能力が不充分である。そのため特許文献1~4の製造方法では、放熱量を確保するために反応器の容積を大きく設計する必要があり、反応器、製造設備が大型化してしまう。したがって、同一の製造設備で分子量、組成等が異なる複数種のポリエーテルポリオールを製造しようとすると、ポリエーテルポリオールの品種を切り替えた際に、変更前の品種のポリエーテルポリオールが混入した廃液が多量に発生し、生産性が低下する。
加えて、従来の製造方法では、反応器が過熱状態とならないように環状エーテルの供給量が制限されることから、大型の反応器の容積を充分に活用できない。そのため、ポリエーテルポリオールの単位時間あたりの生産量に加えて、単位容積あたりの生産量にも改善の余地がある。
【0006】
本発明は、ポリエーテルポリオールの単位容積あたりの生産量及び単位時間あたりの生産量が向上し、反応設備を小型化でき、複数種のポリエーテルポリオールを製造する場合でも生産性が低下しにくいポリエーテルポリオールの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 開始剤及び触媒の存在下で少なくとも1種以上の環状エーテルを開環付加重合させるポリエーテルポリオールの製造方法であって、開始剤、触媒及び環状エーテルを含む混合物が反応する反応部と、前記反応部と接して設けられている冷却部とを有する管型反応器を用い、前記冷却部によって前記反応部を冷却しながら、前記反応部内で前記混合物を攪拌することを特徴とする、ポリエーテルポリオールの製造方法。
[2] 前記反応部内で前記管型反応器の長手方向と平行に配置されたシャフトの表面に設けられた掻き取り刃を、前記反応部内で回転させて前記混合物を攪拌する、[1]の製造方法。
[3] 前記管型反応器の冷却部による冷却能力が、500kW/m以上である、[1]又は[2]の製造方法。
[4] 反応部への環状エーテルの供給量が、反応部の容積に対して20kg/min/m以上である、[1]~[3]のいずれかの製造方法。
[5] 環状エーテルを開環付加重合させる際の圧力が、0.8MPa以上である、[1]~[4]のいずれかの製造方法。
[6] 前記管型反応器には、環状エーテルのフィードポートが複数形成されている、[1]~[5]のいずれかの製造方法。
[7] 開始剤が、炭素数が1~32の炭化水素における1つの水素原子が水酸基に置換された1価のアルコール;炭素数が1~16の炭化水素における2~8個の水素原子が水酸基に置換され、かつ、前記炭化水素における1~4個の炭素原子は酸素原子に置換されていてもよい多価アルコール;水酸基価が10~750のポリオキシアルキレンモノオール;及び水酸基価が10~1600のポリオキシアルキレンポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、[1]~[6]のいずれかの製造方法。
[8] 環状エーテルの炭素数が、2~4である、[1]~[7]のいずれかの製造方法。
[9] ポリエーテルポリオールの水酸基価換算分子量が、300~100000である、[1]~[8]のいずれかの製造方法。
[10] 触媒が、複合金属シアン化物錯体触媒である、[1]~[9]のいずれかの製造方法。
[11] 前記管型反応器を用いて触媒を活性化した後に、環状エーテルを開環付加重合させる、[1]~[10]のいずれかの製造方法。
[12] 反応部の出口側から得られたポリエーテルポリオールの一部を開始剤として、反応部の入口側に供給する、[1]~[11]のいずれかの製造方法。
[13] [1]~[12]のいずれかの製造方法でポリエーテルポリオールを製造し、次いで、前記ポリエーテルポリオールに環状エーテルをさらに開環付加重合させる、ポリエーテルポリオールの製造方法。
[14] [1]~[13]のいずれかの製造方法でポリエーテルポリオールを製造し、次いで、前記ポリエーテルポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させる、ポリウレタンの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリエーテルポリオールの単位容積あたりの生産量及び単位時間あたりの生産量が向上し、反応設備を小型化でき、複数種のポリエーテルポリオールを製造する場合でも生産性が低下しにくいポリエーテルポリオールの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ポリエーテルポリオールの製造方法の一例を説明するための系統図である。
図2】管型反応器の一例を説明するための断面図である。
図3】ポリエーテルポリオールの製造方法の一例を説明するための系統図である。
図4】ポリエーテルポリオールの製造方法の一例を説明するための系統図である。
図5】ポリエーテルポリオールの製造方法の一例を説明するための系統図である。
図6】ポリエーテルポリオールの製造方法の一例を説明するための系統図である。
図7】ポリエーテルポリオールの製造方法の一例を説明するための系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書における以下の用語の意味は以下の通りである。
「水酸基価」及び「水酸基価換算分子量」は実施例に記載の方法によって求められる値である。
数値範囲を示す「~」は、~の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0011】
本発明のポリエーテルポリオールの製造方法では、開始剤及び触媒の存在下で少なくとも1種以上の環状エーテルを開環付加重合させる。
開始剤に開環付加させる環状エーテルとしては、反応性の点から、炭素数が2~4の環状エーテルが好ましく、炭素数が2~4のアルキレンオキシドがより好ましい。
環状エーテルとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、エピクロルヒドリン、スチレンオキシド、テトラヒドロフラン、2,3-エポキシ-1-プロパノール、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
開始剤は、水酸基等の活性水素含有基を有する化合物である。開始剤としては、炭素数が1~32の炭化水素における1つの水素原子が水酸基に置換された炭素数が1~32の1価のアルコール;炭素数が1~16の炭化水素における2~8個の水素原子が水酸基に置換され、かつ、前記炭化水素における1~4個の炭素原子は酸素原子に置換されていてもよい炭素数が1~16の多価アルコール;水酸基価が10~750のポリオキシアルキレンモノオール;及び水酸基価が10~1600のポリオキシアルキレンポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が、反応性の観点から好ましい。
これらの他にも開始剤として、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン等のアミン類;フェノール樹脂、ノボラック樹脂等の水酸基を有する樹脂を用いてもよい。
【0013】
前記炭素数が1~32の1価のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、オクチルアルコール、2-エチルヘキサノール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ノナデシルアルコール等の飽和脂肪族モノオール;オクテニルアルコール、デセニルアルコール、ドデセニルアルコール、トリデセニルアルコール、ペンタデセニルアルコール、オレイルアルコール、ガドレイルアルコール、リノレイルアルコール等の不飽和脂肪族モノオール;エチルシクロヘキシルアルコール、プロピルシクロヘキシルアルコール、オクチルシクロヘキシルアルコール、ノニルシクロヘキシルアルコール、アダマンチルアルコール等の環状脂肪族モノオールが挙げられる。なかでも炭素数が1~4の1価のアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールがより好ましい。
前記炭素数が1~16の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、meso-エリスリトール、メチルグルコシド、グルコース、スクロース、ソルビトール等が挙げられる。
【0014】
これら開始剤は、その分子量に基づいて低分子量の開始剤と高分子量の開始剤とに分類できる。開始剤がポリオキシアルキレンモノオール、ポリオキシアルキレンポリオール等のポリエーテルポリオールである場合、水酸基価換算分子量をポリエーテルポリオールの分子量の指標として使用できる。例えば、水酸基あたりの分子量が200未満のポリエーテルポリオールを「低分子量の開始剤」とし、水酸基あたりの分子量が200以上のポリエーテルポリオールを「高分子量の開始剤」とすることができる。
開始剤がポリエーテルポリオール以外の化合物である場合、式量を分子量の指標として使用できる。例えば、分子量が500未満の化合物を「低分子量の開始剤」とし、分子量が500以上の化合物を「高分子量の開始剤」とすることができる。
【0015】
触媒としては、水酸化カリウム等のアルカリ触媒;複合金属シアン化物錯体触媒(以下、「DMC触媒」と記載する。)が挙げられる。反応がより早く進行する点で、DMC触媒が好ましい。
DMC触媒は有機配位子を有する。有機配位子としてはt-ブチルアルコール(以下、「TBA」と記載する。)、n-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコール、t-ペンチルアルコール、iso-ペンチルアルコール、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(グライムともいう。)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライムともいう。)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライムともいう。)、iso-プロピルアルコール、ジオキサンが挙げられる。ジオキサンは、1,4-ジオキサンでも1,3-ジオキサンでもよいが、1,4-ジオキサンが好ましい。有機配位子は1種でもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、より分子量分布が狭く、低粘度のポリエーテルポリオールが得られやすく、また、反応がより早く進行する点で、有機配位子としてTBAを有するDMC触媒が好ましい。
【0016】
本発明のポリエーテルポリオールの製造方法では、開始剤、触媒及び環状エーテルを含む混合物が反応する反応部と、前記反応部と接して設けられている冷却部とを有する管型反応器を用いる。
管型反応器は、化学反応を行うための管状の反応器であるとも言える。管状の反応器において、管の長手方向の第1の端部側を化学反応の反応物を主に供給するための「入口側」とし、長手方向の第2の端部側を化学反応の生成物を主に取り出すための「出口側」とすることができる。
【0017】
管型反応器における化学反応として、主に、環状エーテルが触媒の存在下で開始剤に開環付加重合する反応がある。ただし、本発明はこの開環付加重合反応に限定されない。例えば、触媒がDMC触媒である場合、管型反応器を用いて下記の3種類の化学反応を行うこともできる。
・環状エーテルによってDMC触媒を活性化する反応(DMC触媒の活性化)。
・低分子量の開始剤に環状エーテルを開環付加重合させ、低分子量の開始剤に結合したポリオキシアルキレン鎖を伸長する反応(低分子量の開始剤の伸長)。
・ポリオキシアルキレン鎖を有するポリエーテルポリオールに環状エーテルをさらに開環付加重合させ、分子量を高くする反応(ポリエーテルポリオールの分子量の調整)。
【0018】
以下、図面を参照しながらいくつかの実施形態について説明する。
第1の実施形態では、環状エーテルの開環付加重合反応について詳細に説明する。また、第2~第6の実施形態では、DMC触媒の活性化、低分子量の開始剤の伸長、ポリエーテルポリオールの分子量の調整の3種類の反応について詳細に説明する。
以下の説明で使用する図面の寸法比は、説明の便宜上実際の寸法比と異なっている場合があり、本発明はこれに限定されない。
【0019】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法を説明するための系統図である。
図1に示すポリエーテルポリオールの製造設備1Aは、開始剤及び触媒を少なくとも含む開始剤組成物が流れる開始剤組成物供給ライン4と;環状エーテルが流れる環状エーテル供給ライン5と;冷媒が流れる冷媒供給ライン6と;開始剤、触媒及び環状エーテルを含む混合物が反応する反応部21及び反応部21を冷却する冷却部22を有する管型反応器20と;管型反応器20に設けられたモーター9と;熱交換後の冷媒が排出される冷媒排出ライン7と;ポリエーテルポリオールを含む生成物が流れる製品ライン8と;を有する。
【0020】
開始剤組成物供給ライン4は、開始剤組成物を管型反応器20の反応部21の入口側に供給する。開始剤組成物は、開始剤及び触媒を少なくとも含む。開始剤組成物の組成は、使用する触媒、所望する製品としてのポリエーテルポリオール等に応じて適宜変更できる。
例えば、開始剤組成物中の触媒としてアルカリ触媒を用いる場合、低分子量の開始剤を用いることができる。低分子量の開始剤とは、例えば、プロピレングリコール、グリセリン等の分子量が500未満である化合物;水酸基あたりの分子量が200未満であるポリエーテルポリオールである。
例えば、開始剤組成物中の触媒としてDMC触媒を用いる場合、DMC触媒の活性を維持する点から開始剤としては、水酸基あたりの分子量が200以上のポリエーテルポリオールが好ましい。開始剤として用いるポリエーテルポリオールは、プロピレングリコール、グリセリン等の単量体の開始剤に環状エーテルを開環付加重合して事前に調製してもよい。
DMC触媒を用いる場合、DMC触媒の活性の点から開始剤組成物は、開始剤及びDMC触媒に加えて酸を含んでいてもよい。酸としては有機酸であっても無機酸であってもよい。有機酸としては、例えば、クエン酸、シュウ酸、オクチル酸、乳酸、酢酸が挙げられる。無機酸としては、例えば、リン酸、硝酸、硫酸、塩酸が挙げられる。
また、開始剤組成物は、酸化防止剤をさらに含んでいてもよい。酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-クレゾール(BHT);Irganox1010(BASF社製品名、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート])、Irganox1076(BASF社製品名、3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル)、Irganox1135(BASF社製品名、オクチル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロ肉桂酸)等のヒンダードフェノール;Tinuvin765(BASF社製品名、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6―ペンタメチル-4-ピペリジル))、ノンフレックスDCD(セイコーケミカル社製品名、4,4’-ビス(α,α―ジメチルベンジル)ジフェニルアミン)等のヒンダードアミンが挙げられる。
【0021】
環状エーテル供給ライン5は、環状エーテルを管型反応器20の反応部21内に供給する。環状エーテル供給ライン5の端部は複数(3つ)に分岐し、管型反応器20には、長手方向に間隔を空けながら環状エーテルのフィードポートが複数形成されている。そのため、環状エーテルの極端な濃度のバラつきが反応部21内の長手方向において生じにくく、反応部21内で得られるポリエーテルポリオールの分子量分布が過度に広がりにくくなる。
後述の第2~第6の実施形態のように、環状エーテルを開始剤と混合した状態で供給する場合、フィードポートから環状エーテル及び開始剤が供給される。
【0022】
管型反応器20においては、フィードポートの数は3つであるが、フィードポートの数は特に限定されない。フィードポートの数は1~50でもよく、1~20でもよく、1~10でもよい。
また、フィードポートの位置、孔径は特に限定されない。反応部21内の環状エーテルの局所的な濃度の調整、触媒活性の制御を目的として、管型反応器20の長手方向の位置を考慮しながらフィードポートの間隔、孔径を適宜変更できる。
【0023】
図2は、管型反応器の一例を示す断面図である。図2は、管型反応器20の長手方向に垂直な断面図である。図2に示すように管型反応器20は、開始剤、触媒及び環状エーテルを含む混合物が反応する反応部21と;反応部21を冷却する冷却部22と;を有する。
【0024】
反応部21は、管型反応器20の長手方向と平行に延びた管状部材23と;管状部材23の内側で管型反応器20の長手方向と平行に配置されたシャフト24と;シャフト24の表面に設けられた掻き取り刃25,25と;管状部材23とシャフト24とで区画された管状部材23の内側の反応空間28の圧力を調整するための排圧弁(図示略)と;反応空間28内の混合物の液温を測定するための温度計(図示略)と;を有する。
管状部材23はフィードポートを介して環状エーテル供給ライン5と接続され、反応空間28に環状エーテルが供給される。加えて、反応空間28には開始剤組成物供給ライン4(図1)から開始剤組成物が供給される。そのため、反応空間28内には環状エーテル及び開始剤組成物が存在し、開始剤、触媒及び環状エーテルを含む混合物が調製される。その後、混合物は反応空間28内で反応し、触媒の存在下で開始剤に環状エーテルが開環付加重合し、ポリエーテルポリオールが生成する。
混合物が、触媒としてDMC触媒を含み、かつ、開始剤として高分子量の開始剤と低分子量の開始剤の両方を含む場合、DMC触媒の活性の点から、供給する低分子量の開始剤の割合は、供給する環状エーテルに対して24質量%以下とするのが好ましく、20質量%以下とするのがより好ましく、16質量%以下とするのがさらに好ましい。
【0025】
シャフト24の断面の中心は、管状部材23の断面の中心と一致する。シャフト24はモーター9(図1)と接続されているため、モーター9の駆動力により管型反応器20の長手方向を回転の軸方向として回転する。
掻き取り刃25,25は、互いに対向する位置にそれぞれ設けられ、管型反応器20の長手方向にわたって延びるようにシャフト24の表面に設けられている。掻き取り刃25,25は、シャフト24の回転により反応部21内の管状部材23の内壁の表面に押し付けられながら、シャフト24の中心軸を中心とした円の周方向に回転する。
【0026】
冷却部22は、管型反応器20の長手方向に延びた管状のジャケット26と;ジャケット26の外側に管型反応器20の長手方向に延びるように設けられた断熱部材27と;を有する。
ジャケット26は、環状エーテル供給ライン5を避けて管状部材23の外側に設けられ、管状部材23と部分的な二重管構造を形成している。また、ジャケット26には冷媒供給ライン6及び冷媒排出ライン7が接続されている。そして、ジャケット26の内側には、ジャケット26と管状部材23とで区画された内部空間29が形成されている。
ジャケット26は、冷媒供給ライン6から冷媒排出ライン7に向かって内部空間29を通過する冷媒によって、管状部材23を外側から冷却する。冷媒は特に限定されない。例えば、シリコンオイル、重油、水、液体窒素が挙げられる。
【0027】
冷却部22は反応部21と接して設けられているため、内部空間29内の冷媒と反応空間28内の混合物との間で管状部材23を介して熱交換する。そのため反応空間28内においては、管状部材23の内壁(伝熱面)の表面付近の液体が冷却部22によって最初に冷却され、優先的に温度が低下する。冷却部22によって反応部21を冷却しながら、反応部21内で混合物を攪拌することで、管状部材23の内壁の付近の液体を随時入れ替えることができる。その結果、反応空間28内の混合物と内部空間29内の冷媒との間の熱交換効率がよくなり、混合物全体を効率よく冷却できる。
したがって、管型反応器20は従来法における反応器よりも優れた冷却能力を発揮し、反応部21内の混合物を短時間で効率よく冷却できる。
【0028】
加えて、本実施形態では、反応部21内で管型反応器20の長手方向と平行に配置されたシャフト24の表面に設けられた掻き取り刃25,25を回転させて反応空間28内の混合物を攪拌できる。そのため、伝熱面となる管状部材23の内壁の表面付近の液体は、掻き取り刃25,25によって強制的に掻き取られながら混合物全体の中に取り込まれる。その結果、管状部材23の内壁の表面付近の液体が攪拌によって強制的に随時入れ替わるため、混合物全体の冷却効率がさらに向上し、反応空間28内の混合物と内部空間29内の冷媒との間の熱交換効率がさらによくなり、さらに優れた冷却能力が達成される。
【0029】
反応部21の反応空間28への環状エーテルの供給量は、反応部21の容積(すなわち反応空間28の体積)に対して20kg/min/m以上が好ましく、28~90kg/min/mがより好ましく、40~80kg/min/mがさらに好ましい。環状エーテルの供給量が前記下限値以上であると、ポリエーテルポリオールの単位容積あたりの生産量及び単位時間あたりの生産量がさらに高くなる。環状エーテルの供給量が前記上限値以下であると、混合物の反応によって発生する反応熱を制御しやすい。
【0030】
環状エーテルを開環付加重合させる際の反応部21内の反応空間28の圧力は、0.8MPa以上が好ましく、1.3MPa以上がより好ましく、2.2MPa以上がさらに好ましい。反応部21内の反応空間28の圧力が前記下限値以上であると、反応空間28内の混合物を均一な状態に保ちやすい。そのため、例えば反応空間28において気液の比重差等により不均一な状態で重合反応が進行してしまうことを抑制でき、ポリエーテルポリオールの分子量分布を狭く制御しやすくなる。環状エーテルを開環付加重合させる際の反応空間28の圧力の上限値は、管型反応器20の耐圧性能を考慮して設定すればよく、特に限定されない。
【0031】
環状エーテルを開環付加重合させる際の温度は、100~180℃が好ましく、110~170℃がより好ましく、120~160℃がさらに好ましい。開環付加重合の温度が前記下限値以上であると、反応係数が高くなりやすく、開環付加重合反応が進行しやすい。開環付加重合の温度が前記上限値以下であると、環状エーテルを液体の状態で撹拌しやすくなり、反応部21をさらに効率よく冷却しやすい。また、DMC触媒を用いる場合には、触媒が失活しにくい。
【0032】
管型反応器20の冷却部による冷却能力は、500kW/m以上が好ましく、700kW/m以上がより好ましく、1000kW/m以上がさらに好ましい。
管型反応器20の冷却部による冷却能力は、反応部の単位容積あたりの冷却量Q[kW/m]として求めることができる。冷却量Qは、混合物が反応する際の発熱量Q[kW]と顕熱H[kW]の総和との差を反応部の容積V[m]で除した値であり、下式1により算出できる。
【0033】
【数1】
【0034】
式1中のQ、すなわち、混合物が反応する際の発熱量Qは下式2により算出できる。
【0035】
【数2】
【0036】
式2中、hmAOは、環状エーテルの1モルあたりの発熱量であり、MAOは環状エーテルの分子量であり、qmAOは、環状エーテルの供給量である。例えば、環状エーテルがプロピレンオキシドである場合、hmPOは72.8[kJ/mol]であり、MPOは、58.1[g/mol]である。
【0037】
式1中のH、すなわち、混合物が反応する際の顕熱H[kW]は下式3により算出できる。
【0038】
【数3】
【0039】
式3中、Cは比熱であり、Tは反応温度であり、Tは管型反応器20内に供給する際の環状エーテルの温度であり、qは環状エーテルの供給量である。
【0040】
管型反応器20で得られたポリエーテルポリオールは、管型反応器20の出口側と接続された製品ライン8(図1)から回収できる。反応部21の出口側から得られるポリエーテルポリオールは、水酸基あたりの分子量が200未満の低分子量のポリエーテルポリオールと;水酸基あたりの分子量が200以上の高分子量のポリエーテルポリオールと;を含み得る。これら低分子量のポリエーテルポリオール、高分子量のポリエーテルポリオールは、それぞれ低分子量の開始剤、高分子の開始剤としてさらなる開環付加重合反応に使用してもよい。低分子量のポリエーテルポリオール、高分子量のポリエーテルポリオールを開始剤としてさらなる開環付加重合反応を行うと、これらのポリエーテルポリオール、の分子量を高めること、分子量分布を狭くすることができる。
したがって、製品となるポリエーテルポリオールの水酸基価換算分子量は特に限定されず、製品に求められる性状、用途等に応じて適宜変更できる。例えば、ポリエーテルポリオールの水酸基価換算分子量は、300~100000でもよく、500~80000でもよく、1000~50000でもよい。
【0041】
製造設備1Aは、製品ライン8に設けられたポリエーテルポリオールの図示略の貯留槽をさらに有してもよい。図示略の貯留槽は、例えば、内部の貯留液を攪拌する撹拌翼と;貯留液に酸化防止剤を添加する酸化防止剤添加部と;貯留液に酸を添加する酸添加部と;を備えて構成できる。
酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-クレゾール(BHT);Irganox1010(BASF社製品名、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート])、Irganox1076(BASF社製品名、3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル)、Irganox1135(BASF社製品名、オクチル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロ肉桂酸)等のヒンダードフェノール;Tinuvin765(BASF社製品名、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル))、ノンフレックスDCD(セイコーケミカル社製品名、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン)等のヒンダードアミンが挙げられる。酸化防止剤を添加する場合の添加量は、得られたポリエーテルポリオールに対して50~5000ppmが好ましく、500~4000ppmがより好ましい。
酸としては有機酸であっても無機酸であってもよい。有機酸としては、例えば、クエン酸、シュウ酸、オクチル酸、乳酸、酢酸が挙げられる。無機酸としては、例えば、リン酸、硝酸、硫酸、塩酸が挙げられる。酸を添加する場合の添加量は、得られたポリエーテルポリオールに対して0ppm超5ppm以下が好ましい。
【0042】
(第1の実施形態の作用効果)
以上説明した第1の実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法では、開始剤、触媒及び環状エーテルを含む混合物が管型反応器20内で反応し、環状エーテルの開環付加重合に伴う反応熱が発生する。
図2を用いて説明したように本実施形態では、冷却部22によって反応部21を冷却しながら反応部21の反応空間28内の混合物を攪拌するため、管状部材23の内壁の表面、すなわち伝熱面の付近の液体を強制的に入れ替えることができる。そのため、反応部21内の混合物と冷却部22内の冷媒との間の熱交換効率がよくなり、混合物全体を短時間で効率よく冷却できる。その結果、従来技術の製造方法で使用される反応器よりも冷却能力が高くなるため、反応熱を優れた冷却効率で除去できる。
【0043】
したがって本実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法によれば、放熱量の確保のために管型反応器20の容積を大きく設計する必要がなくなり、管型反応器20、製造設備を小型化できる。そのため、同一の製造設備で分子量、組成等が異なる複数種のポリエーテルポリオールを製造する場合には、ポリエーテルポリオールの品種の切り替えの際に変更前の品種の製品が混入した廃液の量が少なくなり、複数種のポリエーテルポリオールを製造する際の生産性がよくなる。また、製造設備の設置面積、設置コストも削減できるという利点もある。
加えて、反応熱を優れた冷却効率で除去できる本実施形態の製造方法によれば、管型反応器20の温度が過熱状態となることを防ぎやすいため、環状エーテルの供給量を増やすことができる。したがって、ポリエーテルポリオールの単位容積あたりの生産量及び単位時間あたりの生産量を高くすることができ、ポリエーテルポリオールの生産性がよくなる。
【0044】
特に、掻き取り刃25,25は管型反応器20の長手方向にわたって延びるように設けられていることから、管状部材23の内壁(伝熱面)の付近の液体を長手方向にわたって強制的に入れ替えながら攪拌できる。そのため掻き取り刃25,25を回転させて混合物を攪拌すると、管型反応器20の反応部21内の混合物を長手方向にわたって全体的にくまなく、優れた冷却能力で冷却できる。
加えて管型反応器20の長手方向には間隔を空けながら環状エーテルのフィードポートが複数形成されている。よって、フィードポートによる環状エーテルの供給とその反応に伴う発熱を、長手方向で分散させることができる。その結果、環状エーテルの供給量を全体的に増やすことができ、ポリエーテルポリオールの生産性をさらに高めることができる。
【0045】
同一の製造設備で品種の異なる複数種のポリエーテルポリオールを製造する場合の操作として、例えば、下記の操作が挙げられる。下記の操作は1種を単独で実行してもよく、2種以上を併用してもよい。
・ポリエーテルポリオールのオキシアルキレン基の種類及び構成単位を変更する場合、環状エーテル供給ライン内のアルキレンオキシドの種類を変更する。
・ポリエーテルポリオールのオキシアルキレン基の構成単位の組成を変更する場合、環状エーテル供給ライン内の複数種のアルキレンオキシドの各供給量を変更する。
・ポリエーテルポリオールの分子量を変更する場合、開始剤とアルキレンオキシドとの量比を変更する。
・ポリエーテルポリオールの官能基数を変更する場合、開始剤の官能基数を変更する。
【0046】
<第2の実施形態>
図3は、第2の実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法を説明するための系統図である。
以下の実施形態においては、触媒がDMC触媒である場合を例として説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。また、以下の図面及び説明において、同じ機能の構成については、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0047】
図3に示すポリエーテルポリオールの製造設備1Bは、スラリー状のDMC触媒が流れる触媒供給ライン10と;触媒供給ライン10と接続された管型反応器20と;環状エーテルが流れる環状エーテル供給ライン11と;低分子量の開始剤が流れる開始剤供給ライン12と;環状エーテル供給ライン11及び開始剤供給ライン12の合流点G1の下流側に設けられたラインミキサー13と;ラインミキサー13と管型反応器20とを接続する分岐ライン14と;反応部21の出口側から得られるポリエーテルポリオールの一部を、合流点G2の下流側の触媒供給ライン10を介して反応部21の入口側に供給する循環ライン15と;循環ライン15に設けられた循環用ポンプ(図示略)と;冷媒供給ライン6と;冷媒排出ライン7と;モーター9と;循環ライン15の途中から分岐した製品ライン18と;を有する。
ラインミキサー13は、環状エーテルと開始剤とを混合できる形態であれば特に限定されない。ラインミキサー13としては、例えば、スタティックミキサー等が挙げられる。
分岐ライン14は、ラインミキサー13で混合された環状エーテル及び低分子量の開始剤を、管型反応器20の複数のフィードポートのそれぞれを介して反応部21内に供給する。
【0048】
(DMC触媒の活性化)
触媒供給ライン10内のスラリー状のDMC触媒は、ポリエーテルポリオール等の分散媒に新鮮な(未使用の)DMC触媒を分散させたスラリーである。スラリー状のDMC触媒は反応部20内に連続的に供給される。
一方、環状エーテル供給ライン11内の環状エーテルは、合流点G1を経由してラインミキサー13に供給された後、ラインミキサー13によって低分子量の開始剤と混合される。そのため環状エーテルは、低分子量の開始剤と混合された状態で分岐ライン14及び各フィードポートを介して管型反応器20内に連続的に供給される。
管型反応器20内で新鮮なDMC触媒と環状エーテルが混合されると、新鮮なDMC触媒が環状エーテルによって活性化される。
【0049】
ここで、管型反応器20内には、反応部21の出口側から得られたポリエーテルポリオールの一部が開始剤として、反応部21の入口側に循環ライン15によって供給される。そのため、管型反応器20内には、開始剤(管型反応器20で得られたポリエーテルポリオールを主に含む。)、新鮮なDMC触媒及び環状エーテルを含む混合物eが存在する。本実施形態によれば、冷却部22によって反応部21を冷却しながら、管型反応器20の反応部21内の混合物eを攪拌することで、触媒の活性化の際に発生する熱を優れた冷却効率で除去できる。
【0050】
(低分子量の開始剤の伸長)
開始剤供給ライン12内の低分子量の開始剤は、ラインミキサー13によって環状エーテルと混合された状態で管型反応器20内に供給される。加えて、管型反応器20内には上述の「(DMC触媒の活性化)」で説明したように、活性化したDMC触媒が存在する。そのため、管型反応器20の反応部21内では低分子量の開始剤、活性化したDMC触媒及び環状エーテルを含む混合物fが反応し、低分子量の開始剤に環状エーテルが開環付加重合する。
このように第2の実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法では、管型反応器20を用いてDMC触媒を活性化した後、同じ管型反応器20を用いて環状エーテルを開環付加重合させることで、低分子量の開始剤の伸長反応を行うことができる。
したがって本実施形態によれば、冷却部22によって反応部21を冷却しながら、管型反応器20の反応部21内の混合物fを攪拌することで、低分子量の開始剤の伸長の際に発生する反応熱を優れた冷却効率で除去できる。
【0051】
反応部21の出口側から得られたポリエーテルポリオールの一部は、循環ライン15内を流れ、合流点G2でスラリー状のDMC触媒と混合され、反応部21の入口側に供給される。反応部21の出口側から得られた循環ライン15を流れるポリエーテルポリオールの残部は製品ライン18を流れる。
加えて、管型反応器20内には環状エーテルが連続的に供給され、活性化したDMC触媒も存在する。そのため反応部21内では、管型反応器20で得られたポリエーテルポリオール(開始剤)、活性化したDMC触媒及び環状エーテルを含む混合物gが反応し、循環ライン15によって供給されたポリエーテルポリオールにも環状エーテルがさらに開環付加重合する。
したがって、第2の実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法では、管型反応器20の反応部21の出口側から得られたポリエーテルポリオールの一部を開始剤として、同じ管型反応器20の反応部21の入口側に供給することで、低分子量のポリエーテルポリオールの分子量を高くすることができる。また、開始剤としてDMC触媒と併用可能な高分子量のポリエーテルポリオールの事前準備のためにアルカリ触媒を使用する必要がなくなり、開始剤からアルカリ触媒を中和等によって事前に除去する必要もなくなる。
【0052】
(第2の実施形態の作用効果)
以上説明した第2の実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法では、冷却能力が高く、反応熱を優れた冷却効率で除去できる管型反応器20を用いて、低分子量の開始剤、触媒及び環状エーテルを含む混合物を反応させる。そのため、第1の実施形態と同様の作用効果を得ながら、DMC触媒の活性化、低分子量の開始剤の伸長の各反応を行うことができる。
したがって、これらの反応のいずれにおいても環状エーテルの供給により発生する熱を効率よく除去できる。また、これらの反応に際しては、混合物e、混合物f、混合物gにおける低分子量の開始剤、高分子量の開始剤の各割合を循環ライン15の供給量によって調整できる。
【0053】
<第3の実施形態>
図4は、第3の実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法を説明するための系統図である。図4に示すポリエーテルポリオールの製造設備1Cは、図3のポリエーテルポリオールの製造設備1Bと下記の点で相違する。
図3の環状エーテル供給ライン11の代わりに、環状エーテルが流れる環状エーテル供給ライン16を有すること。
図3では分岐ライン14が管型反応器20側で3つに分岐しているのに対し、図4では分岐ライン14が管型反応器20側で2つに分岐していること。
【0054】
環状エーテル供給ライン16は、分岐点D1でライン16aとライン16bとに分岐する。ライン16aは、管型反応器20の反応部21内に環状エーテルを供給する。一方、ライン16bは、合流点G3の下流側の開始剤供給ライン12を介して環状エーテルをラインミキサー13に供給する。
開始剤供給ライン12は、低分子量の開始剤をラインミキサー13に供給する。製造設備1Cにおいて分岐ライン14は、ラインミキサー13によって混合された状態の低分子量の開始剤及び環状エーテルを管型反応器20の反応部21内に供給する。
第3の実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法でも、第2の実施形態と同様に、冷却部22によって反応部21を冷却しながら、混合物e、混合物f、混合物gを攪拌できる。
【0055】
(第3の実施形態の作用効果)
以上説明した第3の実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法では、第2の実施形態と同様に、DMC触媒の活性化、低分子量の開始剤の伸長の各反応を行うことができ、第2の実施形態と同様の作用効果が得られる。
加えて、第3の実施形態においては、低分子量の開始剤を含まない状態の環状エーテルをライン16aによって単独で反応部21内に供給できる。低分子量の開始剤はDMC触媒の活性を阻害する恐れがあるところ、反応設備1Cによれば、低分子量の開始剤を含まない状態の環状エーテルによってDMC触媒を活性化できる。
したがって、図4の反応設備1Cにおいては、図3の反応設備1Bと比較してDMC触媒が活性化した状態を安定して維持できる。その結果、ポリエーテルポリオールの生産速度を高くする場合、低分子量の開始剤を用いてポリエーテルポリオールを生産する場合のいずれの場合においても、ポリエーテルポリオールの単位時間あたりの生産量がさらに高くなる。
【0056】
<第4の実施形態>
図5は、第4の実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法を説明するための系統図である。図5に示すポリエーテルポリオールの製造設備2Aは、触媒供給ライン10と;環状エーテル供給ライン11と;環状エーテル供給ライン11の分岐点D2から分岐した分岐ライン30と;触媒供給ライン10及び分岐ライン30と接続された管型反応器20Aと;開始剤供給ライン12と;ラインミキサー13と;分岐ライン14と;分岐ライン14と接続された管型反応器20Bと;管型反応器20Aと管型反応器20Bとを接続する接続ライン31と;冷媒供給ライン6と;冷媒供給ライン6から管型反応器20A,20Bに冷媒をそれぞれ供給する冷媒供給ライン6a,6bと;管型反応器20A,20Bにそれぞれ接続された冷媒排出ライン7,7と;管型反応器20A,20Bにそれぞれ設けられたモーター9,9と;管型反応器20Bの反応部21の出口側から得られるポリエーテルポリオールの一部を、合流点G4の下流側の触媒供給ライン10を介して管型反応器20Aの反応部21の入口側に供給する循環ライン32と;循環ライン32に設けられた循環用ポンプ(図示略)と;循環ライン32の途中から分岐した製品ライン33と;を有する。
【0057】
管型反応器20A,20Bは、いずれも反応部21と冷却部22とを有し、第1の実施形態で説明した管型反応器20と同一の構成である。本実施形態においては管型反応器20A,20Bを用いて行う反応の種類が原則としてそれぞれ異なるため、異なる符号(20A,20B)を用いる。
第4の実施形態では、管型反応器20Aを用いてDMC触媒の活性化、ポリエーテルポリオールの分子量の調整の2種類の反応を主に行うことができ、管型反応器20Bを用いて低分子量の開始剤の伸長を主に行うことができる。
【0058】
まず、管型反応器20Aを用いて行う触媒の活性化について説明する。
管型反応器20Aの反応部21内には、触媒供給ライン10からスラリー状の新鮮なDMC触媒が供給される。このスラリー状の新鮮なDMC触媒は、環状エーテル供給ライン11から分岐ライン30を介して供給される環状エーテルによって活性化される。
ここで、製造設備2Aにおいては、管型反応器20Bで得られたポリエーテルポリオールの一部が開始剤として管型反応器20Aに供給される。そのため、管型反応器20Aの反応部21内には、開始剤(ポリエーテルポリオール)、新鮮なDMC触媒及び環状エーテルを含む混合物Aが存在する。
第4の実施形態においては、管型反応器20Aの冷却部22によって反応部21を冷却しながら、管型反応器20Aの反応部21内の混合物Aを攪拌することで、触媒の活性化の際に発生する熱を優れた冷却効率で除去できる。
【0059】
次に、管型反応器20Bを用いて行う低分子量の開始剤の伸長について説明する。
管型反応器20Bの反応部21内には、環状エーテルが低分子量の開始剤と混合された状態で分岐ライン14を介して管型反応器20内に連続的に供給される。加えて、管型反応器20Bの反応部21内には、管型反応器20Aを用いて活性化されたDMC触媒が供給される。そのため、管型反応器20Bの反応部21内では、低分子量の開始剤、活性化したDMC触媒及び環状エーテルを含む混合物Bが反応し、低分子量の開始剤に環状エーテルが開環付加重合する。
【0060】
このように第4の実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法では、管型反応器20Aを用いてDMC触媒を活性化した後、触媒の活性化に用いた管型反応器とは別個の管型反応器20Bを用いて環状エーテルを開環付加重合させることで、低分子量の開始剤の伸長反応を行うことができる。
加えて、管型反応器20Bの冷却部22によって反応部21を冷却しながら、管型反応器20Bの反応部21内の混合物Bを攪拌することで、低分子量の開始剤の伸長の際に発生する反応熱を優れた冷却効率で除去できる。
【0061】
管型反応器20A内には環状エーテルが分岐ライン30を介して連続的に供給されている。加えて、管型反応器20Aの反応部21の入口側には、管型反応器20Bの反応部21の出口側から得られたポリエーテルポリオールの一部が循環ライン32によって供給される。この循環ライン32からのポリエーテルポリオールの供給によって、DMC触媒の活性を維持して環状エーテルの開環付加重合が進行するように混合物の組成、濃度比を調整できる。そのため、管型反応器20Aの反応部21内では、開始剤、活性化したDMC触媒及び環状エーテルを含む混合物A’が速やかに反応する。
このように、管型反応器20Aの冷却部22によって反応部21を冷却しながら、管型反応器20Aの反応部21内の混合物A’を攪拌することで、ポリエーテルポリオールの製造の際に発生する反応熱を優れた冷却効率で除去できる。
【0062】
反応設備2Aにおいては、管型反応器20Bには開始剤供給ライン12から低分子量の開始剤が供給される一方で、管型反応器20Aにはその管型反応器20Bで伸長した開始剤、すなわちポリエーテルポリオールが開始剤として供給される。
このように、管型反応器20A、管型反応器20Bにおいては、開環付加重合反応における主な開始剤として供給される化合物の分子量がそれぞれ異なる。そのため、管型反応器20Bにおいては、管型反応器20Aと比較して分子量の低いポリエーテルポリオールが生成する。さらに、管型反応器20Bには接続ライン31によって管型反応器20Aの反応部21で得られたポリエーテルポリオールが供給される。
したがって、製品ライン33から取り出されるポリエーテルポリオールの分子量分布は広くなる傾向がある。製造設備2Aにおいて、分子量分布の狭いポリエーテルポリオールを製品として回収するためには、接続ライン31の途中からポリエーテルポリオールを抜き出すことが好ましい。
【0063】
(第4の実施形態の作用効果)
以上説明した第4の実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法では、冷却能力が高く、反応熱を優れた冷却効率で除去できる管型反応器20A、20Bを用いて、DMC触媒の活性化、低分子量の開始剤の伸長、ポリエーテルポリオールの分子量の調整の各反応を行うことができる。そのため、これら3種類の反応のいずれにおいても環状エーテルの供給により発生する熱が効率よく除去される。その結果、管型反応器を小型化でき、複数種のポリエーテルポリオールを製造する際の生産性を高めることができ、ポリエーテルポリオールの単位容積あたりの生産量及び単位時間あたりの生産量を高くすることができる。
【0064】
<第5の実施形態>
図6は、第5の実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法を説明するための系統図である。
図6に示すポリエーテルポリオールの製造設備2Bは、触媒供給ライン10と;環状エーテル供給ライン16と;開始剤供給ライン12と;ラインミキサー13と;分岐ライン14(図4参照)と;触媒供給ライン10、ライン16a及び分岐ライン14と接続された管型反応器20Cと;管型反応器20Cの反応部21の出口側から得られるポリエーテルポリオールの一部を、合流点G2の下流側の触媒供給ライン10を介して管型反応器20Cの反応部21の入口側に供給する循環ライン15と;循環ライン15に設けられた循環用ポンプ(図示略)と;環状エーテル供給ライン5と;環状エーテル供給ライン5と接続された管型反応器20Dと;管型反応器20Cの反応部21の出口側から得られるポリエーテルポリオールの残部を管型反応器20Dの反応部21の入口側に供給する接続ライン34と;冷媒供給ライン6と;冷媒供給ライン6から管型反応器20C,20Dに冷媒をそれぞれ供給する冷媒供給ライン6c,6dと;管型反応器20C,20Dにそれぞれ接続された冷媒排出ライン7,7と;管型反応器20C,20Dにそれぞれ設けられたモーター9,9と;管型反応器20Dの反応部21の出口側と接続された製品ライン8と;を有する。
【0065】
管型反応器20C,20Dは、いずれも反応部21と冷却部22とを有し、第1の実施形態で説明した管型反応器20と同一の構成である。本実施形態においては管型反応器20C,20Dを用いて行う反応の種類が原則としてそれぞれ異なるため、異なる符号(20C,20D)を用いる。
第5の実施形態では、管型反応器20Cを用いてDMC触媒の活性化、低分子量の開始剤の伸長の2種類の反応を主に行うことができ、管型反応器20Dを用いてポリエーテルポリオールの分子量の調整を主に行うことができる。
【0066】
まず、管型反応器20Cを用いて行う触媒の活性化について説明する。
管型反応器20Cの反応部21内には、触媒供給ライン10からスラリー状の新鮮なDMC触媒が供給される。管型反応器20Cの反応部21内では、スラリー状の新鮮なDMC触媒が、ライン16a及び分岐ライン14(図4参照)を介して供給される環状エーテルによって活性化される。
このように反応設備2Bにおいては、低分子量の開始剤を含まない状態の環状エーテルをライン16aによって単独で管型反応器20Cの反応部21内に供給できる。そのため、反応設備2Bにおいては、図3の反応設備1Bと比較してDMC触媒が活性化した状態を安定して維持できる。その結果、ポリエーテルポリオールの生産速度を高くする場合、低分子量の開始剤を用いてポリエーテルポリオールを生産する場合のいずれの場合においても、ポリエーテルポリオールの単位時間あたりの生産量がさらに高くなる。
【0067】
ここで、製造設備2Bにおいては、管型反応器20Cの出口側から得られたポリエーテルポリオールの一部が開始剤として管型反応器20Cの入口側に循環ライン15によって供給される。このとき、管型反応器20Cの反応部21内には、開始剤(管型反応器20Cで得られたポリエーテルポリオールに加えて、開始剤供給ライン12から供給される低分子量の開始剤を含み得る。)、新鮮なDMC触媒及び環状エーテルを含む混合物Cが存在する。第5の実施形態においては、管型反応器20Cの冷却部22によって反応部21を冷却しながら、管型反応器20Cの反応部21内の混合物Cを攪拌することで、触媒の活性化の際に発生する熱を優れた冷却効率で除去できる。
【0068】
次に、管型反応器20Cを用いて行う低分子量の開始剤の伸長について説明する。
管型反応器20Cの反応部21内には、環状エーテルが低分子量の開始剤と混合された状態で分岐ライン14を介して連続的に供給される。加えて、管型反応器20Cの反応部21内には、触媒供給ライン10から新鮮なDMC触媒が連続的に供給され、環状エーテルによって活性化される。そのため、管型反応器20Cの反応部21内では、低分子量の開始剤、活性化したDMC触媒及び環状エーテルを含む混合物Cが反応し、低分子量の開始剤に環状エーテルが開環付加重合する。
【0069】
このように第5の実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法では、管型反応器20Cを用いてDMC触媒を連続的に活性化した後、触媒の活性化に用いた管型反応器と同じ管型反応器20Cを用いて環状エーテルを開環付加重合させ、低分子量の開始剤の伸長反応を行うことができる。そして、管型反応器20Cの冷却部22によって反応部21を冷却しながら、管型反応器20Cの反応部21内の混合物Cを攪拌することで、低分子量の開始剤の伸長の際に発生する反応熱を優れた冷却効率で除去できる。
【0070】
次に、管型反応器20Dを用いて行うポリエーテルポリオールの分子量の調整について説明する。
管型反応器20Dの反応部21の入口側には、管型反応器20Cの反応部21の出口側から得られたポリエーテルポリオールの残部が、接続ライン34を介して供給される。このとき、管型反応器20Dには、管型反応器20Cで活性化されたDMC触媒が接続ライン34を介して供給される。加えて、管型反応器20D内には環状エーテルが環状エーテル供給ライン5から連続的に供給されている。
したがって、管型反応器20Dの反応部21内では、管型反応器20Cで得られたポリエーテルポリオール(開始剤)、活性化したDMC触媒及び環状エーテルを含む混合物Dが反応し、管型反応器20Cから供給されたポリエーテルポリオールに環状エーテルが開環付加重合する。
第5の実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法では、管型反応器20Dの冷却部22によって反応部21を冷却しながら、管型反応器20Dの反応部21内の混合物Dを攪拌することで、ポリエーテルポリオールの分子量の調整の際に発生する反応熱を優れた冷却効率で除去できる。
【0071】
ここで、管型反応器20D内には、新鮮なDMC触媒が触媒供給ライン10から管型反応器20C及び接続ライン34を介して、管型反応器20Cで活性化されずに供給されることがあり得る。そのため、管型反応器20D内には、開始剤(主に、ポリエーテルポリオールを含む。)、新鮮なDMC触媒及び環状エーテルを含む混合物D’が存在することがある。よって、管型反応器20D内でも、DMC触媒の活性化が起こり得る。
第5の実施形態においては、この混合物D’を攪拌することで、触媒の活性化の際に発生する熱と開始剤に環状エーテルが反応してポリエーテルポリオールを合成する際に発生する熱とを優れた冷却効率で管型反応器20Dにおいて除去できる。
【0072】
(第5の実施形態の作用効果)
以上説明したように第5の実施形態においては、管型反応器20Cを用いてDMC触媒の活性化、低分子量の開始剤の伸長を行うことができる。加えて、管型反応器20Cにおいては、得られたポリエーテルポリオールの一部を開始剤として、同じ管型反応器20Cの反応部21の入口側に供給するため、ポリエーテルポリオールの分子量をある程度高くすることができる。その後、管型反応器20Dにおいて、管型反応器20Cで得られたポリエーテルポリオールの分子量を調整できることから、低分子量の開始剤を使用する場合でも、製品ライン8から取り出されるポリエーテルポリオールの分子量を高くし、しかもその分子量分布を狭くすることができる。
【0073】
<第6の実施形態>
図7は、第6の実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法を説明するための系統図である。
図7に示すポリエーテルポリオールの製造設備3は、触媒供給ライン10と;環状エーテル供給ライン11と;分岐ライン30と;触媒供給ライン10及び分岐ライン30と接続された管型反応器20Eと;開始剤供給ライン12と;ラインミキサー13と;分岐ライン14と;分岐ライン14と接続された管型反応器20Fと;管型反応器20Eと管型反応器20Fとを接続する接続ライン31と;管型反応器20Fの反応部21の出口側から得られるポリエーテルポリオールの一部を、合流点G4の下流側の触媒供給ライン10を介して管型反応器20Eの反応部21の入口側に供給する循環ライン32と;循環ライン32に設けられた循環用ポンプ(図示略)と;環状エーテル供給ライン11から分岐点D3で分岐した環状エーテル供給ライン5と;環状エーテル供給ライン5と接続された管型反応器20Gと;管型反応器20Fの反応部21の出口側から得られるポリエーテルポリオールの残部を管型反応器20Gの反応部21の入口側に供給する接続ライン34と;冷媒供給ライン6と;冷媒供給ライン6から管型反応器20E,20F,20Gに冷媒をそれぞれ供給する冷媒供給ライン6e,6f,6gと;管型反応器20E,20F,20Gにそれぞれ接続された冷媒排出ライン7,7,7と;管型反応器20E,20F,20Gにそれぞれ設けられたモーター9,9,9と;管型反応器20Gの反応部21の出口側と接続された製品ライン8と;を有する。
【0074】
管型反応器20E,20F,20Gは、いずれも反応部21と冷却部22とを有し、第1の実施形態で説明した管型反応器20と同一の構成である。本実施形態においては管型反応器20E,20F,20Gを用いて行う反応の種類が原則としてそれぞれ異なるため、異なる符号(20E,20F,20G)を用いる。
第6の実施形態では、管型反応器20Eを用いてDMC触媒の活性化を主に行うことができる。また、管型反応器20Fを用いて低分子量の開始剤の伸長を主に行うことができる。そして、管型反応器20Gを用いてポリエーテルポリオールの分子量の調整を主に行うことができる。
【0075】
まず、管型反応器20Eを用いて行う触媒の活性化について説明する。
管型反応器20Eにおいては、触媒供給ライン10から供給されるスラリー状の新鮮なDMC触媒が、分岐ライン30を介して供給される環状エーテルによって活性化される。
製造設備3においては、管型反応器20Fで得られたポリエーテルポリオールの一部が、開始剤として管型反応器20Eに循環ライン32によって供給される。このとき、管型反応器20Eの反応部21内には、開始剤(管型反応器20Fで得られたポリエーテルポリオールを主に含む。)、新鮮なDMC触媒及び環状エーテルを含む混合物Eが存在する。
したがって第6の実施形態においては、管型反応器20Eの冷却部22によって反応部21を冷却しながら、管型反応器20Eの反応部21内の混合物Eを攪拌することで、触媒の活性化の際に発生する熱を優れた冷却効率で除去できる。
【0076】
次に、管型反応器20Fを用いて行う低分子量の開始剤の伸長について説明する。
管型反応器20Fの反応部21内には、環状エーテルが低分子量の開始剤と混合された状態で分岐ライン14を介して管型反応器20内に連続的に供給される。加えて、管型反応器20Fの反応部21内には、管型反応器20Eで活性化されたDMC触媒が供給される。そのため、管型反応器20Fの反応部21内では、低分子量の開始剤、活性化したDMC触媒及び環状エーテルを含む混合物Fが反応し、低分子量の開始剤に環状エーテルが開環付加重合する。
【0077】
第6の実施形態においては、循環ライン32によって管型反応器20Fの反応部21の出口側から得られたポリエーテルポリオールの一部を開始剤として、管型反応器20Eの反応部21の入口側に供給できる。そのため、管型反応器20Eにおいてもポリエーテルポリオールの分子量をさらに高くする反応を行うこともできる。
【0078】
次に、管型反応器20Gを用いて行うポリエーテルポリオールの分子量の調整について説明する。
管型反応器20Gの反応部21の入口側には、管型反応器20Fの反応部21の出口側から得られたポリエーテルポリオールの残部が、接続ライン34を介して供給される。そのため、管型反応器20Gには、管型反応器20Eで活性化されたDMC触媒が、管型反応器20F及び接続ライン34を介して供給される。加えて、管型反応器20G内には環状エーテルが環状エーテル供給ライン5から連続的に供給されている。
したがって、管型反応器20Gの反応部21内では、管型反応器20Fで得られたポリエーテルポリオール(開始剤)、活性化したDMC触媒及び環状エーテルを含む混合物Gが反応し、管型反応器20Fから供給されたポリエーテルポリオールに環状エーテルが開環付加重合する。
第6の実施形態に係るポリエーテルポリオールの製造方法では、管型反応器20Fの冷却部22によって反応部21を冷却しながら、管型反応器20Gの反応部21内の混合物Gを攪拌することで、ポリエーテルポリオールの分子量の調整の際に発生する反応熱を優れた冷却効率で除去できる。
【0079】
(第6の実施形態の作用効果)
第6の実施形態においては、管型反応器20Fで得られたポリエーテルポリオールの一部を開始剤として、管型反応器20Eの反応部21の入口側に供給できる。そのため、管型反応器20E、管型反応器20F及び循環ライン32の間でポリエーテルポリオール循環させることができる。
したがって、第6の実施形態によれば、管型反応器20E、管型反応器20Fを用いてポリエーテルポリオールの分子量をある程度高くすることができる。その後、管型反応器20Gをさらに用いてポリエーテルポリオールの分子量を調整できるため、第5の実施形態と同様に、低分子量の開始剤を使用する場合でも、製品ライン8から取り出されるポリエーテルポリオールの分子量を高くし、しかもその分子量分布を狭くすることができる。
【0080】
加えて、第6の実施形態においては、第5の実施形態と異なり、触媒の活性化と低分子量の開始剤の伸長が管型反応器20E,20Fとそれぞれ別個の管型反応器において行われる。そのため第6の実施形態においては、DMC触媒が活性化した状態を安定して維持でき、ポリエーテルポリオールの生産速度を高くする場合、低分子量の開始剤を用いてポリエーテルポリオールを生産する場合のいずれの場合においても、ポリエーテルポリオールの単位時間あたりの生産量がさらに高くなる。
管型反応器20G内でも、図6の管型反応器20Dと同様にDMC触媒の活性化が起こり得るため、触媒の活性化の際に発生する熱を優れた冷却効率で管型反応器20Gにおいても除去できる。
【0081】
<用途>
本発明の方法により得られたポリエーテルポリオールは、冷媒、冷凍機油等の機能油;ポリウレタンの原料;ポリエーテルポリオールの末端の水酸基を反応性ケイ素基に変換した変成シリコーンポリマー等のシーリング剤の原料として使用できる。
ポリウレタンは、本発明の製造方法でポリエーテルポリオールを製造し、次いで、前記ポリエーテルポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させることで得られる。ポリウレタンは、例えば、ウレタンフォーム(硬質ウレタンフォーム、軟質ウレタンフォーム)、ウレタンプレポリマー、ウレタンエラストマー、ウレタン樹脂系接着剤として利用できる。
変成シリコーンポリマー及びウレタンプレポリマーは、例えば、特開2015-214605号明細書の段落[0074]~[0086]に記載される方法で製造できる。
【0082】
ポリイソシアネート化合物は特に限定されない。ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート;アラルキルポリイソシアネート;脂肪族ポリジイソシアネート;脂環式ポリイソシアネート;これらのポリイソシアネートの各種変性体(イソシアネート基を2個有する変性体)が挙げられる。ポリイソシアネートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
芳香族ポリイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、3,5-トリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗MDI)等が挙げられる。
アラルキルポリイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリジイソシアネートとしては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ポリジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0083】
<変形例>
以上いくつかの実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。本明細書に開示の実施形態は、その他の様々な形態で実施可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更が可能である。
【0084】
例えば上述の実施形態では、反応部21の外側の表面に冷却部22が接して設けられている管型反応器20を用いたが、冷却部は反応部に接して設けられていればよい。そのため、本発明の他の一例では、冷却部の外側の表面に反応部が接して設けられているような管型反応器を用いてもよい。
【0085】
他にも上述の実施形態の管型反応器20においては、シャフト24、管状部材23(反応部)、ジャケット26(冷却部)が同心円状に配置されているが、シャフト、管状部材、ジャケットの断面の形状は、円形に限定されず、楕円形でもよく多角形でもよい。また、シャフト、管状部材、ジャケットのそれぞれの断面の形状は互いに同一である必要はなく、円形と楕円形、円形と多角形、楕円形と多角形等の組み合わせのように互いに異なる形状を組み合わせてもよい。
【0086】
他にも上述の実施形態の管型反応器20においては、掻き取り刃25,25が互いに対向するように2つ設けられている形態であるが、掻き取り刃の数は2つに限定されず、1つでもよく、3つ以上でもよい。複数の掻き取り刃を用いる場合、掻き取り刃同士は、シャフト24の周方向において等間隔で設けられもよく、等間隔でない間隔で設けられてもよい。
また、管型反応器20において掻き取り刃25の形状は、シャフト24の表面で管型反応器20の長手方向に延びた直線型であるが、掻き取り刃の形状は特に限定されない。掻き取り刃の形状は、例えば、シャフトの表面で螺旋状に設けられたスパイラル型でもよい。いずれの形状でも、掻き取り刃が管状部材の伝熱面と接触していることが好ましい。
【実施例0087】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。例1~4は実施例であり、例5、6は比較例である。
【0088】
<測定方法>
(水酸基価(OHV))
水酸基価はJIS-K1557-1に準拠して測定した。
【0089】
(水酸基価換算分子量)
水酸基価換算分子量は、水酸基価(OHV)を用いて、下式4により算出した。
(水酸基価換算分子量)=(56100/水酸基価)×(開始剤における活性水素基の数) ・・・式4
【0090】
(冷却部による冷却能力)
冷却部による冷却能力は、反応部の単位容積あたりの冷却量Q[kW/m]として求めた。冷却量Qは、管型反応器の内部温度を一定として運転した場合の熱量の増加量、すなわち、発熱量Qと顕熱Hの総和の差を反応器の伝熱面の面積で除した値であり、下式5により算出した。
【0091】
【数4】
【0092】
(環状エーテルの開環付加重合反応の際の発熱量Q)
環状エーテルの開環付加重合反応の際の発熱量Q[kW]は、下式6により算出した。
【0093】
【数5】
式6中、hmAOは、環状エーテル1モルあたりの発熱量であり、MAOは環状エーテルの分子量であり、hmAOは、環状エーテルの1mol数あたりの発熱量であり、qmAOは環状エーテルの供給量である。
実施例において、hmPOは72.8[kJ/mol]とし、MPOは58.1[g/mol]とした。
【0094】
(環状エーテルの開環付加重合反応の際の顕熱H)
環状エーテルの開環付加重合反応の際の顕熱H[kW]は、下式7により算出した。
【0095】
【数6】
式7中、Cは比熱であり、Tは反応温度であり、Tは投入した際の環状エーテルの温度であり、qは環状エーテルの供給量である。
【0096】
<開始剤1の合成>
複金属シアン化物錯体触媒のスラリー(以下、「TBA-DMC触媒」と記載する。)を特許6510098号の段落[0048]に記載の方法で調製した。
触媒として水酸化カリウムを用いて、プロピレングリコール(以下、「PG」と記載する。)にプロピレンオキシド(以下、「PO」と記載する。)を開環付加重合させ、水酸基価換算分子量1000のポリオキシプロピレンジオール(以下、「ポリオールa」と記載する)を得た。ポリオールaの15kgをバッチ式反応器に入れ、ポリオールaに対して100ppmのTBA-DMC触媒を添加し、130℃で10分間TBA-DMC触媒を活性化した。反応器の圧力が降下し、触媒が活性化されたことを確認した後、さらにPOを添加し、開環付加重合反応を行い、水酸基価換算分子量が2000のポリオキシプロピレンジオール(以下、「ポリオールb」と記載する。)を得た。ポリオールb中にはTBA-DMC触媒が50ppm含まれていた。ポリオールbにさらにポリオールbに対して50ppmのTBA-DMC触媒を添加して、開始剤1を得た。
【0097】
<例1>
例1においては、図1で説明した反応設備1Aを用いた。図2で示した管型反応器20における反応空間28の容積は1.5L、管状部材23の伝熱面の面積は0.14mとした。2つの掻き取り刃25,25の形状は直線型とし、反応部21には、長手方向に6個の環状エーテルのフィードポートを形成した。
この反応設備を用いて、シャフト24を周速1.5m/secで回転させながら、130℃に加温した開始剤1を流量0.22kg/minで管型反応器20の反応部21の入口側に供給し、反応空間28の圧力が1.3MPaになるよう調整した(図2参照)。6個のフィードポートの合計の供給流量が0.11kg/minとなるように、POを各フィードポートから反応空間28内に供給した。
次いで、反応空間28内の温度が130℃で維持されるように、冷媒供給ライン6から冷媒を内部空間29に供給した。反応空間28内の温度が130℃となった時を反応開始点として、反応開始点から60分間反応させ、反応部21の出口側からポリオール1(水酸基価38.5mgKOH/g、水酸基価換算分子量2914)を得た。得られたポリオール1に対してIrganox1076(BASF社製品名、3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル)を500ppm添加して混合した。
例1において、ポリオール1の生産量は0.33kg/minであった。環状エーテル(PO)の発熱量、環状エーテルの顕熱、冷却部による冷却能力、単位容積当たりのポリエーテルポリオールの生産量を表1に示す。ここで、POをフィードする際の外気温は25℃であり、POの比熱Cは2.15(kJ/kgK)とした(以下同様)。
【0098】
<例2>
例2においては、図3で説明した反応設備1Bを用い、例1と同様の管型反応器20を使用した。ただし、反応設備1Bにおいて分岐ライン14の分岐の数は6つとした。
循環ライン15は使用せず、ライン10からポリオール1を流量0.33kg/minで反応部21の入口側に供給した。一方、ラインミキサー13によってPO及びPGを混合し、得られた混合液を6個のフィードポートを介して反応部21内にそれぞれ供給した。ここで、6個のフィードポートによるPOの合計流量を0.11kg/minとし、6個のフィードポートによるPGの合計流量を0.0087kg/minとした。
次いで、反応空間28内の温度が130℃で維持されるように、冷媒供給ライン6から冷媒を内部空間29に供給した。反応部と接触する部分におけるシリコンオイルの温度は112℃であった。
反応空間28内の温度が130℃となった時を反応開始点として、反応開始点から60分間反応させ、反応部21の出口側からポリオール2(水酸基価57.5mgKOH/g、水酸基価換算分子量1951)を得た。ポリオール2の生産量は0.449kg/minであった。環状エーテルの発熱量、環状エーテルの顕熱、開始剤の顕熱、冷却部による冷却能力、単位容積当たりのポリエーテルポリオールの生産量を表1に示す。
【0099】
<例3>
例3においては、図7で説明した反応設備3を用いた。3つの管型反応器20E,20F,20Gは、例1の管型反応器20と同じものを使用した。
まず、管型反応器20E,20F,20G、接続ライン31、接続ライン34及び循環ライン32内に開始剤1を供給し、反応部内及び各ラインを排気して気相がない状態とした。次いで、循環用ポンプを起動し、設備内で開始剤1を流量0.22kg/minで循環させた。その後、触媒供給ライン10から、TBA-DMCを204mg/min(固形分10.2mg/min)となるように供給した。また、管型反応器20Eの各フィードポートから、各フィードポートから供給されるPOの合計流量が0.11kg/minとなるようにPOを供給した。管型反応器20Fのフィードポートからは、PO及びPGを含む混合液を流量0.1187kg/minで供給した。当該混合液の供給の際には、POの合計流量が0.11kg/minとなり、PGの合計流量が0.0087kg/minとなるようにした。管型反応器20Gの各フィードポートからは、管型反応器20Eと同様に、各フィードポートから供給されるPOの合計流量が0.11kg/minとなるようにPOを供給した。
各管型反応器20E,20F,20Gの内温の平均温度が130℃となった時を反応開始点として、反応開始点から120分間反応させた。製品ライン8からポリオール3(水酸基価38.0mgKOH/g、水酸基価換算分子量2952)を得た。ポリオール3の生産量は0.339kg/minであった。環状エーテルの発熱量、環状エーテルの顕熱、開始剤の顕熱、冷却部による冷却能力、単位容積当たりのポリエーテルポリオールの生産量を表1に示す。
【0100】
<例4>
PGの合計流量を0.0087kg/minから0.0014kg/minとし、反応開始点から120分間反応させた以外は例3と同様にして、製品ライン8からポリオール4(水酸基価6.7mgKOH/g、水酸基価換算分子量16746)を得た。ポリオール4の生産量は0.3319kg/minであった。環状エーテルの発熱量、環状エーテルの顕熱、開始剤の顕熱、冷却部による冷却能力、単位容積当たりのポリエーテルポリオールの生産量を表1に示す。
【0101】
<例5>
特許文献2の例4と同様にして、水酸基価28.0mgKOH/g(水酸基価換算分子量4000)のポリオールC1を得た。
環状エーテルの発熱量、環状エーテルの顕熱、開始剤の顕熱、冷却部による冷却能力、単位容積当たりのポリエーテルポリオールの生産量を表1に示す。反応条件は、以下の通りである。
・反応容積:1L
・POの供給量:0.0196kg/min
・開始剤:PG
・開始剤の供給量:0.0004kg/min
・反応温度:130℃
・反応時間:50分
【0102】
<例6>
特許文献3の例4と同様にして、水酸基価33.9mgKOH/g(水酸基価換算分子量4965)のポリオールC2を得た。
環状エーテルの発熱量、環状エーテルの顕熱、開始剤の顕熱、冷却部による冷却能力、単位容積当たりのポリエーテルポリオールの生産量を表1に示す。反応条件は、以下の通りである。
・反応容積:0.5L
・POの供給量:0.0084kg/min
・開始剤:ポリオキシプロピレントリオール(分子量1000)
・開始剤の供給量:0.002kg/min
・反応温度:120℃
・反応時間:48分
【0103】
【表1】
【0104】
例1~4では例5、6と比較して優れた冷却能力を実現できた。また、単位容積あたりの生産量も例1~4では例5、6と比較して高い。これらの結果に示すように、優れた冷却能力、単位容積あたりの生産量の向上を実現できたことから、反応器の小型化を期待でき、複数種のポリエーテルポリオールを製造する場合でも生産性が低下しにくくなると期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明によれば、ポリエーテルポリオールの単位容積あたりの生産量及び単位時間あたりの生産量が向上し、反応設備を小型化でき、複数種のポリエーテルポリオールを製造する場合でも生産性が低下しにくいポリエーテルポリオールの製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0106】
1A,1B,1C,2A,2B,3…反応設備、4…開始剤組成物供給ライン、5,111,16…環状エーテル供給ライン、6…冷媒供給ライン、7…冷媒排出ライン、8,18,33…製品ライン、9…モーター、10…触媒供給ライン、12…開始剤供給ライン、13…ラインミキサー、14,30…分岐ライン、15,32…循環ライン、20(20A,20B,20C,20D,20E,20F)…管型反応器、21…反応部、22…冷却部、23…管状部材、24…シャフト、25…掻き取り刃、26…ジャケット、27…断熱部材、28…反応空間、29…内部空間、31,34…接続ライン、D…分岐点、G…合流点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0096
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0096】
<開始剤1の合成>
複金属シアン化物錯体触媒のスラリー(以下、「TBA-DMC触媒」と記載する。)を特許6510098号の段落[0048]に記載の方法で調製した。
触媒として水酸化カリウムを用いて、プロピレングリコール(以下、「PG」と記載する。)にプロピレンオキシド(以下、「PO」と記載する。)を開環付加重合させ、水酸基価換算分子量1000のポリオキシプロピレンジオール(以下、「ポリオールa」と記載する)を得た。ポリオールaの15kgをバッチ式反応器に入れ、ポリオールaに対して100ppmのTBA-DMC触媒を添加し、POを750g添加し、130℃で10分間TBA-DMC触媒を活性化した。反応器の圧力が降下し、触媒が活性化されたことを確認した後、さらにPOを14520g添加し、開環付加重合反応を行い、水酸基価換算分子量が2000のポリオキシプロピレンジオール(以下、「ポリオールb」と記載する。)を得た。ポリオールb中にはTBA-DMC触媒が50ppm含まれていた。ポリオールbにさらにポリオールbに対して50ppmのTBA-DMC触媒を添加して、開始剤1を得た。