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特開2022-100818加飾フィルム、加飾成型体、加飾パネル、及び、電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100818
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】加飾フィルム、加飾成型体、加飾パネル、及び、電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20220629BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220629BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20220629BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B32B3/30
B32B7/023
B32B9/00 Z
G02B5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215030
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 優香
(72)【発明者】
【氏名】早田 佑一
【テーマコード(参考)】
2H148
4F100
【Fターム(参考)】
2H148FA01
2H148FA04
2H148FA09
2H148FA15
4F100AK21
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AK42A
4F100AK51
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CA18B
4F100DD04B
4F100EC182
4F100EH46B
4F100EJ173
4F100EJ39B
4F100EJ423
4F100EJ65
4F100GB41
4F100HB00
4F100JB14
4F100JB14B
4F100JL10
4F100JN06B
4F100JN10B
(57)【要約】
【課題】奥行き感に優れた視認性を有する加飾フィルム、及び、その応用を提供する。
【解決手段】基材と、凸構造を有する反射層とを有し、加飾フィルムの面方向に垂直な方向で上記凸構造を裁断した断面において、正の傾斜角の平均ΦAVEが最も大きくなる方向を第一の方向とするとき、第一の方向の正の傾斜角の平均ΦAVEが互いに異なる領域A及び領域Bを面内に有し、上記断面における上記領域A及び上記領域B内での正の傾斜角の取りうる範囲がそれぞれ、正の傾斜角の平均ΦAVEに対して、±10°以内である加飾フィルム、及び、その応用。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
凸構造を有する反射層とを有し、
加飾フィルムの面方向に垂直な方向で前記凸構造を裁断した断面において、正の傾斜角の平均ΦAVEが最も大きくなる方向を第一の方向とするとき、第一の方向の正の傾斜角の平均ΦAVEが互いに異なる領域A及び領域Bを面内に有し、
前記断面における前記領域A内での正の傾斜角の取りうる範囲及び前記領域B内での正の傾斜角の取りうる範囲がそれぞれ、正の傾斜角の平均ΦAVEに対して、±10°以内である
加飾フィルム。
【請求項2】
前記加飾フィルムの面方向における前記領域A及び前記領域Bがそれぞれ、直径100μmの円以上の大きさである領域を含む請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項3】
前記断面における前記凸構造の断面形状が、正の傾斜角の極大点及び極小点を含む請求項1又は請求項2に記載の加飾フィルム。
【請求項4】
前記断面において、近接する2つの前記極小点間の距離又は近接する2つの前記極大点間の距離dが、10μm以上100μm未満である領域を有する請求項3に記載の加飾フィルム。
【請求項5】
前記領域A及び前記領域Bの正の傾斜角の平均ΦAVEがそれぞれ、3°以上20°以下である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【請求項6】
前記領域A及び前記領域Bの正の傾斜角の平均ΦAVEがそれぞれ、3°以上15°以下である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【請求項7】
前記領域Aの正の傾斜角の平均ΦAVEと前記領域Bの正の傾斜角の平均ΦAVEとの差が、3°以上である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【請求項8】
加飾フィルムの面方向に垂直な方向で前記凸構造を裁断した断面において、正の傾斜角の平均ΦAVEが前記領域A及び前記領域Bと異なる領域Cを更に有する請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【請求項9】
前記加飾フィルムの面方向における前記領域Cが、直径100μmの円以上の大きさである請求項8に記載の加飾フィルム。
【請求項10】
前記領域Cの正の傾斜角の平均ΦAVEが、3°以上20°以下である請求項8又は請求項9に記載の加飾フィルム。
【請求項11】
前記反射層が、コレステリック配向状態の液晶を含む請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【請求項12】
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の加飾フィルム又はその成型物を備える加飾成型体。
【請求項13】
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の加飾フィルム又はその成型物を備える加飾パネル。
【請求項14】
請求項13に記載の加飾パネルを備える電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加飾フィルム、加飾成型体、加飾パネル、及び、電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成型体の表面に加飾フィルムを配置して、樹脂成型体の表面を所望の色相に着色したり、又は樹脂成型体の表面に所望の模様を設けたりした加飾成型体が知られている。加飾成型体は、例えば、金型内に加飾フィルムを予め配置して、その金型内に基材樹脂を射出成型することにより得られ、樹脂成型体の表面に加飾フィルムが一体化された構造を有する。金型内に加飾フィルムを予め配置した後、基材樹脂の射出成型を行うことを、一般に、フィルムインサート成型、或いは、単にインサート成型と称することがある。また、加飾成型体は、成型後の成型体に加飾フィルムを張り付けることにより製造してもよい。
【0003】
従来の加飾シートとしては、特許文献1に記載されたものが知られている。
特許文献1には、視認側表面と、上記視認側表面と反対側の非視認側表面を有するパターン化されたコレステリック液晶反射層を有し、上記パターン化されたコレステリック液晶反射層が、第1のパターン化されたコレステリック液晶反射層と、上記第1のパターン化されたコレステリック液晶反射層の上に積層された、第2のパターン化されたコレステリック液晶反射層を有し、上記第1のパターン化されたコレステリック液晶反射層のパターン形状と、上記第2のパターン化されたコレステリック液晶反射層のパターン形状が一致しており、上記第1のパターン化されたコレステリック液晶反射層が、特性反射のピーク波長が400nm以上700nm以下である第1の円偏光を反射し、上記第2のパターン化されたコレステリック液晶反射層が、特性反射のピーク波長が400nm以上700nm以下であり、第1の円偏光とは特性反射のピーク波長が違う第2の円偏光を反射し、上記パターン化されたコレステリック液晶反射層の400nm以上700nm以下の波長領域における光の反射率がそれぞれ5%以上であり、かつ上記波長領域における光の反射率の平均が10%以上である加飾シートが記載されている。
【0004】
また、従来の発色構造体としては、特許文献2に記載されたものが知られている。
特許文献2には、凹凸構造と、上記凹凸構造上に2層以上の層からなる積層体とを有する発色構造体において、上記積層体を構成する隣接する2層は、同じ波長帯の光を透過し、且つ、上記波長帯の光に対して異なる屈折率を持つ材料で構成され、上記積層体は、上記波長帯の一部の波長の光を選択的に反射されるように設計され、上記凹凸構造は複数の凸部を配列することで構成され、上記凸部の第1方向における線幅は上記波長帯の波長以下であり、上記第1方向と直交する第2方向における線長が上記第1方向の線幅よりも長く、上記第1方向及び上記積層体の積層方向との断面にて、単位領域あたりの上記複数の凸部の構造高さは、上記波長帯の波長以下の高さであり、かつ第一構造高さ又は第二構造高さ又は上記第一構造高さと上記第二構造高さを足し合わせた高さである第三構造高さの少なくともいずれか2種類以上を備えることを特徴とする発色構造体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-205988号公報
【特許文献2】特開2017-227902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、奥行き感に優れた視認性を有する加飾フィルムを提供することである。
本開示の他の一実施形態が解決しようとする課題は、上記加飾フィルムを含む加飾成型体、又は、上記加飾フィルムを含む加飾パネルを提供することである。
本開示の他の一実施形態が解決しようとする課題は、上記加飾パネル含む電子デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 基材と、凸構造を有する反射層とを有し、加飾フィルムの面方向に垂直な方向で上記凸構造を裁断した断面において、正の傾斜角の平均ΦAVEが最も大きくなる方向を第一の方向とするとき、第一の方向の正の傾斜角の平均ΦAVEが互いに異なる領域A及び領域Bを面内に有し、上記断面における上記領域A内での正の傾斜角の取りうる範囲及び上記領域B内での正の傾斜角の取りうる範囲がそれぞれ、正の傾斜角の平均ΦAVEに対して、±10°以内である加飾フィルム。
<2> 上記加飾フィルムの面方向における上記領域A及び上記領域Bがそれぞれ、直径100μmの円以上の大きさである領域を含む<1>に記載の加飾フィルム。
<3> 上記断面における上記凸構造の断面形状が、正の傾斜角の極大点及び極小点を含む<1>又は<2>に記載の加飾フィルム。
<4> 上記断面において、近接する2つの上記極小点間の距離又は近接する2つの上記極大点間の距離dが、10μm以上100μm未満である領域を有する<3>に記載の加飾フィルム。
<5> 上記領域A及び上記領域Bの正の傾斜角の平均ΦAVEがそれぞれ、3°以上20°以下である<1>~<4>のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
<6> 上記領域A及び上記領域Bの正の傾斜角の平均ΦAVEがそれぞれ、3°以上15°以下である<1>~<5>のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
<7> 上記領域Aの正の傾斜角の平均ΦAVEと上記領域Bの正の傾斜角の平均ΦAVEとの差が、3°以上である<1>~<6>のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
<8> 加飾フィルムの面方向に垂直な方向で上記凸構造を裁断した断面において、正の傾斜角の平均ΦAVEが上記領域A及び上記領域Bと異なる領域Cを更に有する<1>~<7>のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
<9> 上記加飾フィルムの面方向における上記領域Cが、直径100μmの円以上の大きさである<8>に記載の加飾フィルム。
<10> 上記領域Cの正の傾斜角の平均ΦAVEが、3°以上20°以下である<8>又は<9>に記載の加飾フィルム。
<11> 上記反射層が、コレステリック配向状態の液晶を含む<1>~<10>のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
<12> <1>~<11>のいずれか1つに記載の加飾フィルム又はその成型物を備える加飾成型体。
<13> <1>~<11>のいずれか1つに記載の加飾フィルム又はその成型物を備える加飾パネル。
<14> <13>に記載の加飾パネルを備える電子デバイス。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、奥行き感に優れた視認性を有する加飾フィルムを提供することができる。
本開示の他の一実施形態によれば、上記加飾フィルムを含む加飾成型体、又は、上記加飾フィルムを含む加飾パネルを提供することができるが提供される。
本開示の他の一実施形態によれば、上記加飾パネルを含む電子デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示に係る加飾フィルムの一例を示す概略断面図である。
図2図2は、本開示に係る加飾フィルムの一例を示す概略断面図である。
図3図3は、本開示に係る加飾成型体の一例を示す概略断面図である。
図4図4は、本開示に係る加飾成型体の一例を示す概略断面図である。
図5図5は、本開示に係る加飾成型体の一例を示す概略断面図である。
図6図6は、本開示に係る加飾パネルの一例を示す概略断面図である。
図7図7は、凸基材パターン(A)の一例を示す概略図である。
図8図8は、凸基材パターン(B)の一例を示す概略図である。
図9図9は、光学マスクパターンの一例を示す概略図である。
図10図10は、本開示に係るディスプレイ向け加飾パネルの一例を示す概略断面図である。
図11図11は、本開示に係る加飾フィルムの一例における反射層の凸構造を有する領域を拡大した拡大模式図である。
図12図12は、図11における方向A~方向Cの模式断面図及び傾斜角Φを示す模式図である。
図13図13は、反射層の形状、受光角度、及び、反射率との関係を模式的に示す模式図である。
図14図14は、本開示に係る加飾フィルムの面方向における各領域の形状の一例を示す模式図である。
図15図15は、本開示に係る加飾フィルムの面方向における各領域の形状の他の一例を示す模式図である。
図16図16は、本開示に係る加飾フィルムの面方向における各領域の形状の更に他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る加飾フィルムについて説明する。但し、本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。本開示の実施形態について図面を参照して説明する場合、重複する構成要素及び符号については、説明を省略することがある。図面において同一の符号を用いて示す構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。図面における寸法の比率は、必ずしも実際の寸法の比率を表すものではない。
【0011】
本開示における基(原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本開示における「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
本開示における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光:Extreme Ultraviolet)、X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。
本開示における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及びEUV光等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による露光も含む。
本開示において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0012】
本開示において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表す。
本開示において、樹脂成分の重量平均分子量(Mw)、樹脂成分の数平均分子量(Mn)、及び樹脂成分の分散度(分子量分布ともいう)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー(株)製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶媒:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー(株)製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0013】
本開示において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において「全固形分」とは、組成物の全組成から溶媒を除いた成分の総質量をいう。また、「固形分」とは、組成物の全組成から溶媒を除いた成分であり、例えば、25℃において固体であっても、液体であってもよい。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0014】
(加飾フィルム)
本開示に係る加飾フィルムは、基材と、凸構造を有する反射層とを有し、加飾フィルムの面方向に垂直な方向で上記凸構造を裁断した断面において、正の傾斜角の平均ΦAVEが最も大きくなる方向を第一の方向とするとき、第一の方向の正の傾斜角の平均ΦAVEが互いに異なる領域A及び領域Bを面内に有し、上記断面における上記領域A内での正の傾斜角の取りうる範囲及び上記領域B内での正の傾斜角の取りうる範囲がそれぞれ、正の傾斜角の平均ΦAVEに対して、±10°以内である。
【0015】
本開示に係る加飾フィルムの用途としては、特に制限はなく、例えば、電子デバイス(例えば、ウエアラブルデバイス、及びスマートフォン)、家電製品、オーディオ製品、コンピュータ、ディスプレイ、車載製品、時計、アクセサリー、光学部品、扉、窓ガラス、及び建材の加飾に用いることができる。中でも、本開示に係る加飾フィルムは、電子デバイス(例えば、ウエアラブルデバイス、及びスマートフォン)の加飾に好適に用いることができる。また、本開示に係る加飾フィルムは、立体成型性にも優れることから、例えば、立体成型及びインサート成型のような成型に用いられる、成型用加飾フィルムとして好適であり、立体成型用加飾フィルムとしてより好適である。
【0016】
従来、家電、電子機器、及び携帯電話のような物品に使用されている表面加飾には、例えば、印刷、塗装、蒸着、又はめっきが用いられてきた。しかしながら、例えば、機能性付与、環境負荷の問題、及び張り替え可能性の側面から、加飾フィルムを使用することによる加飾技術が多く用いられるようになってきた。一方で、使用者の嗜好の広がりから、鉱石を模倣した意匠に対する需要が高まっている。中でも、オパールのように、光沢感(例えば、ガラスや鏡のように、特定の角度方向にのみ強く光を反射し、それ以外の観察角度で急に暗く見える性質)を有しつつ、観察角度を変えると反射する箇所が移り替わって見える意匠は、奥行き感を得られることから、求められている意匠の1つであり、上記のような意匠を得るための加飾技術の導入が求められていた。また、特開2001-105795号公報には、コレステリック液晶性高分子層が転写層として積層されているホットスタンプ箔が記載されているが、正反射角度でのみ反射光が視認でき、観察角度によって反射する位置が移り替わる効果を得ることができなかった。また、特開2017-97114号公報には、コレステリック液晶層に凹凸加工を施すことで、再帰反射性を向上させる記載があるが、加飾フィルムとしての使用、及びその効果については、言及されていない。
【0017】
従来、光沢感を得るためには平坦性を向上させる必要があるが、平坦な面では正反射方向でしか反射光を視認できず、様々な観察角度で反射光を視認することとの両立は困難であり、例えば、オパールのような、奥行きのある視認性を有する加飾フィルムを作製することは困難であった。
本発明者らが詳細に検討した結果、上記態様とすることにより、奥行き感に優れた視認性を有する加飾フィルムが得られることを本発明者らは見出した。
詳細な機構は不明であるが、加飾フィルムの面方向に垂直な方向で凸構造を裁断した断面において、正の傾斜角の平均ΦAVEが互いに異なる領域A及び領域Bを面内に有し、上記断面における上記領域A内での正の傾斜角の取りうる範囲及び上記領域B内での正の傾斜角の取りうる範囲がそれぞれ、正の傾斜角の平均ΦAVEに対して、±10°以内であることより、凸構造によって、光沢感(特定の角度方向にのみ強く光を反射し、それ以外の観察角度で急に暗く見える性質)を有しつつ、入射光の反射方向が変化し、観察角度ごとに反射領域が変化するため、例えば、とある観察角度では領域Aが明るく見え、異なる観察角度では領域Aが急に暗く見えつつも領域Bが明るく見え、見る角度によって別の領域が光るため、奥行き感が得られると推定している。
【0018】
また、光沢感及び奥行き感が生じると推定される反射層の形状、受光角度、及び、反射率との関係を、図13に模式的に示す。
図13(a)は、平坦な面での受光角度と反射率との関係を示した模式図である。
図13(a)では、正反射角度でのみ反射光が視認でき、観察角度を変えると急に暗くなる。観察角度によって反射する位置が移り替わる効果を得ることができない。
図13(b)は、微細な凹凸を有する面での受光角度と反射率との関係を示した模式図である。
図13(b)では、観察角度を変えてもあまり暗くならないが、光沢感に乏しく、奥行き感も感じられない。
図13(c)は、領域A及び領域Bを有する平坦な面での受光角度と反射率との関係を示した模式図である。
図13(c)では、領域A及び領域Bとも正反射角度でのみ反射光が視認でき、観察角度を変えると急に暗くなる。観察角度によって反射する位置が移り替わる効果を得ることができない。
図13(d)は、本開示における上記領域A及び上記領域Bを有する面での受光角度と反射率との関係を示した模式図である。
図13(d)では、とある観察角度では領域Aが明るく見え、異なる観察角度では上記領域Aが急に暗く見えつつも上記領域Bが明るく見え、見る角度によって別の領域が光るため、光沢感及び奥行き感が得られる。
【0019】
<基材>
本開示に係る加飾フィルムは、基材を有する。基材は、支持体であってもよい。基材としては、例えば、立体成型及びインサート成型のような成型に用いられる基材として従来公知の基材を特に制限なく使用でき、成型への適性に応じて、適宜、選択されればよい。また、基材の形状及び材質は、特に制限はなく、所望に応じ適宜選択すればよい。基材は、成型容易性、及び、チッピング耐性の観点から、樹脂基材であることが好ましく、樹脂フィルムであることがより好ましい。
【0020】
具体的な基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン-アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、アクリル-ポリカーボネート樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、及びアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)のような樹脂を含む樹脂フィルムが挙げられる。中でも、基材は、成型加工性、及び、強度の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂、ポリカーボネート、又は、ポリプロピレンであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂、又は、ポリカーボネートであることがより好ましい。また、基材は、2層以上の積層樹脂基材であってもよい。例えば、アクリル樹脂層とポリカーボネート層とを含む積層フィルムが好ましく挙げられる。
【0021】
基材は、必要に応じ、添加物を含有していてもよい。このような添加物としては、例えば、潤滑剤(例えば、鉱油、炭化水素、脂肪酸、アルコール、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、金属石けん、天然ワックス、及びシリコーン)、無機難燃剤(例えば、水酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウム)、ハロゲン系の有機難燃剤、リン系の有機難燃剤、有機又は無機の充填剤(例えば、金属粉、タルク、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ガラス繊維、カーボン繊維、及び木粉)、酸化防止剤、紫外線防止剤、滑剤、分散剤、カップリング剤、発泡剤、着色剤、及び上述した樹脂以外のエンジニアリングプラスチックが挙げられる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、及びポリフェニレンエーテルが挙げられる。
【0022】
基材は、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、テクノロイ(登録商標)シリーズ(アクリル樹脂フィルム又はアクリル樹脂/ポリカーボネート樹脂積層フィルム、住友化学(株)製)、ABSフィルム(オカモト(株)製)、ABSシート(積水成型工業(株)製)、テフレックス(登録商標)シリーズ(PETフィルム、帝人フィルムソリューション(株)製)、ルミラー(登録商標)易成型タイプ(PETフィルム、東レ(株)製)、及びピュアサーモ(ポリプロピレンフィルム、出光ユニテック(株)製)を挙げることができる。
【0023】
基材の厚さは、例えば、作製する成型物の用途、及び、取り扱い性に応じて決定され、特に制限はない。基材の厚さの下限としては、1μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上が更に好ましく、30μm以上が特に好ましい。基材の厚さの上限としては、500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下が特に好ましい。
【0024】
<反射層>
本開示に係る加飾フィルムは、凸構造を有する反射層を有し、加飾フィルムの面方向に垂直な方向で上記凸構造を裁断した断面において、正の傾斜角の平均ΦAVEが最も大きくなる方向を第一の方向とするとき、第一の方向の正の傾斜角の平均ΦAVEが互いに異なる領域A及び領域Bを面内に有し、上記断面における上記領域A及び上記領域B内での正の傾斜角の取りうる範囲がそれぞれ、正の傾斜角の平均ΦAVEに対して、±10°以内である。
【0025】
本開示における上記第一の方向を決定する方法を、以下に示す。
上記凸構造を、加飾フィルムの面方向に垂直な方向の任意の面(方向として360°存在する。)で裁断し、正の傾斜角の平均ΦAVEが最も大きくなる方向を求める。
正の傾斜角の平均ΦAVEの算出方法は、上記凸構造を含む半径100μmの円以上の大きさである領域について、1つの方向で上記凸構造を裁断した断面における凸構造部分の傾斜角を0°以上の部分のみ平均値をとり、上記正の傾斜角の平均ΦAVEとする。なお、傾斜角が負である部分は、正の傾斜角の平均ΦAVEの算出からは除外する。
また、上記正の傾斜角は、加飾フィルムの面方向に対する角度であり、90°を超え180°未満の部分は、上記正の傾斜角の測定方向とは、反対方向の傾斜角とし、負の傾斜角90°未満~0°を超える部分とする。
正の傾斜角の平均ΦAVEの算出方法として、具体的には、加飾フィルムの面方向に垂直な方向の任意の面(方向として360°存在する。)で、ミクロトーム(例えば、大和光機工業(株)製、RX-860)を用いて裁断する。裁断方向について、加飾フィルム表面を顕微鏡(例えば、オリンパス(株)製、BX53M)で観察し、裁断方向をある程度予測することができる。裁断した断面を、走査電子顕微鏡(例えば、(株)日立ハイテク製、SU3800)を用いて観察することで、断面形状を測定し、上記のようにΦAVEを算出する。
また、上記以外の断面形状の測定方法としては、レーザー顕微鏡(例えば、(株)キーエンス製VK-X1000)を用いて凸構造の表面形状を測定する方法などが挙げられ、また、凸構造を立体的に計測できる場合は、立体形状から断面形状を算出してもよい。
【0026】
図11及び図12を参照して、更に具体的に説明する。
図11は、本開示に係る加飾フィルムの一例における反射層の凸構造を有する領域を拡大した拡大模式図である。
図11における反射層の凸構造は、図11の上下方向が長手方向である線状凸構造が複数形成されている。
図11における方向A、方向B又は方向Cで上記凸構造を裁断した断面をそれぞれ図12に示す。
図12に示すように、方向Aにおける凸構造の断面は、30°及び-20°の傾斜角Φを有している。
方向Aにおいて、正の傾斜角の平均ΦAVEを求めると、30°となる。上述したように、負の傾斜角である-20°は除外して計算する。
また、図12に示すように、方向Bにおける凸構造の断面は、20°及び-10°の傾斜角Φを有している。
方向Bにおいて、正の傾斜角の平均ΦAVEを求めると、20°となる。上述したように、負の傾斜角である-10°は除外して計算する。
更に、図12に示すように、方向Cにおける凸構造の断面は、平坦であり、傾斜角Φは0°である。
方向Cにおいて、正の傾斜角の平均ΦAVEを求めると、0°となる。
同様の操作を360°(第一の方向がある程度予測される場合は、省略も可能)にて行い、正の傾斜角の平均ΦAVEが最も大きくなる方向である第一の方向を求める。
図11及び図12に示す凸構造を有する領域においては、上記第一の方向のΦAVEが30°である。
【0027】
上記領域Aにおける正の傾斜角の平均ΦAVEが最も大きくなる方向と、上記第一の方向とは、同じであっても、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
上記領域Bにおける正の傾斜角の平均ΦAVEが最も大きくなる方向と、上記第一の方向とは、同じであっても、異なっていてもよいが、異なることが好ましい。
また、上記領域Aにおける正の傾斜角の平均ΦAVEが最も大きくなる方向と、上記領域Bにおける正の傾斜角の平均ΦAVEが最も大きくなる方向とは、同じであっても、異なっていてもよい。同じである場合は、正の傾斜角の平均ΦAVEの値が、上記領域Aと上記領域Bとで互いに異なる値であればよい。
【0028】
本開示において、凸構造とは、特定の平面に対して、凸状の起伏が形成されていることを意味する。
なお、本開示に係る加飾フィルムは、上記反射層が凸構造を有していればよく、加飾フィルム自体の表面は、平坦なもの(好ましくは、高さ1μm以上の凸構造を表面に有しないこと)であってもよい。
上記凸構造の面方向における形状については、特に制限はないが、例えば、線状構造、渦巻き状構造、同心円状構造、波線状構造等、種々の形状が挙げられる。
なお、本開示における線状とは、特定方向に長さを持った形状を有していることを意味する。具体的には、長さ(L)と平均線幅(W)の比(L/W)が5以上である形態などが好ましく挙げられる。
また、上記凸構造の断面形状についても、特に制限はないが、例えば、加飾フィルムの面方向に垂直な方向かつ凸構造の長手方向に垂直な方向の断面形状が、三角形状、台形状、半円状、半楕円形状、丸みを帯びた三角形状(例えば、断面形状が三角関数の一周期の形状など)等、種々の形状が挙げられる。
例えば、加飾フィルムの面内に、複数の線状凸構造が並ぶ領域と、上記領域の線状凸構造とは長手方向の異なる複数の線状凸構造が並ぶ領域とを有する場合、それぞれの領域が視認する方向により一方の領域が明るく、他方の領域が暗くなる視認性を有する加飾フィルムが得られる。
また、例えば、加飾フィルムの面内に、同心円状の凸構造を有する領域を有する場合、上記領域が上記同心円の中心から放射状に明暗部分が生じ、視認する方向により明暗部分が変化する視認性を有する加飾フィルムが得られる。
【0029】
例えば、図7又は図8に記載の凸構造が好適に挙げられる。
図7は、同心円状の凸構造を形成した領域Aの一例を示す模式図である。
図7では、加飾フィルムの面方向に垂直な方向、かつ凸構造が形成されている側(上面)から見た模式図であり、直径50mmの領域に同心円状の凸構造が形成されている。
図8は、複数の線状凸構造を形成した領域Aの一例(領域A1)を示す模式図である。
図8では、加飾フィルムの面方向に垂直な方向、かつ凸構造が形成されている側から見た模式図であり、線状凸構造の長手方向のことなる複数の線状凸構造を形成した凸構造を形成した10mm×10mmの2種の領域(領域A2及び領域B2)が上記面方向に50mm×50mmの大きさで敷き詰められた例を示す模式図である。
【0030】
中でも、奥行き感のある視認性、及び、視認方向による色味変化の観点から、領域A及び領域Bはそれぞれ、複数の線状凸構造が並ぶ領域であることが好ましい。
【0031】
凸構造は、周期的なピッチで有することが好ましい。ピッチは、凸構造において隣り合う凸部の間隔である。凸部と凸部との間隔は、凸部の高さの最高点の間の距離である。
例えば、凸構造が半球形状である場合、ピッチは、最近接する2つの半球状の凸部の頂点間距離に相当する。例えば、凸構造が三角形状である場合、ピッチは最近接する2つの三角形状の凸部の頂点間距離に相当する。
また、凸構造が半球形状である場合、上記断面における凸構造部分のある点における傾斜角は、上記点における接線の傾斜角である。
【0032】
凸構造の高さ(H)は、反射色の視認性、及び、加飾フィルムの取り扱い性の観点から、1μm~1mmであることが好ましく、1μm~100μmであることがより好ましく、2μm~30μmであることが更に好ましく、3μm~20μmであることが特に好ましく、3μm~10μmであることが最も好ましい。
本開示において、レーザー顕微鏡(例えば、(株)キーエンス製のVK-X1000)を用いて得られる凸面の隣接する極大部と極小部の高度差の面内平均値を凸構造の高さとして採用する。測定対象面は、露出した反射層の凸構造の表面(すなわち、凸面)とする。ただし、反射層を覆う層が凸構造を有し、かつ、反射層を覆う層の凸構造が反射層の凸構造と実質的に同一であるとみなせる場合には、反射層を覆う層の凸構造の高さを反射層の凸構造の高さとして採用してもよい。
【0033】
凸構造の幅(W)は、光沢性の向上、及び、凸構造の視認性を抑制する観点から、5μm~150μmであることが好ましく、10μm~100μmであることがより好ましく、20μm~50μmであることが特に好ましい。
本開示において、レーザー顕微鏡(例えば、(株)キーエンス製のVK-X1000)を用いて得られる凸部の極小部と極小部間距離の面内平均値を凸構造の幅として採用する。測定対象面は、露出した反射層の凸構造の表面(すなわち、凸面)とする。ただし、反射層を覆う層が凸構造を有し、かつ、反射層を覆う層の凸構造が反射層の凸構造と実質的に同一であるとみなせる場合には、反射層を覆う層の凸構造の幅を反射層の凸構造の幅として採用してもよい。
【0034】
凸構造の長さ(L)は、特に制限はなく、所望に応じ適宜選択することができるが、光沢感を得る観点から、5μm以上であることが好ましく、10μm~100mであることがより好ましく、30μm~20mであることが更に好ましく、50μm~10mであることが特に好ましい。
本開示において、線状凸構造の長さ(L)はレーザー顕微鏡(例えば、(株)キーエンス製のVK-X1000)等を用いて観察することで測定できる。測定対象面は、露出した反射層の凸構造の表面(すなわち、凸面)とする。ただし、反射層を覆う層が凸構造を有し、かつ、反射層を覆う層の凸構造が反射層の凸構造と実質的に同一であるとみなせる場合には、反射層を覆う層の凸構造の幅を反射層の凸構造の幅として採用してもよい。
【0035】
凸構造の幅と凸構造の高さとの比(幅:高さ)は、視野角によって色変化に富む視認性を得ること、及び、光輝性の観点から、20:1~1:2が好ましく、10:1~1:0.8がより好ましく、8:1~1:1が更に好ましく、4:1~1:1.2が特に好ましい。
【0036】
反射層の厚さHに対する反射層の凸構造の高さHとの比は、H/H>0.1、0.5<H/H<200であることが好ましく、1<H/H<100であることがより好ましく、5<H/H<50であることが特に好ましい。
なお、反射層の厚さとは、反射層の上面と下面との距離を表す。
【0037】
本開示に係る加飾フィルムが線状凸構造を有する場合、線状凸構造の長さ(L)と平均線幅(W)との比(L/W)は、5以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることが更に好ましく、20以上であることが特に好ましい。上記範囲により、光輝性が高く、視野角によって色変化に富む視認性が得られる。
【0038】
上記加飾フィルムの面方向における上記領域A及び上記領域B等の各領域の形状は、特に制限はなく、所望の形状で形成することができ、例えば、円形、多角形、星型、楕円形、十字形、不定形等が挙げられるが、オパール状の意匠性を得る観点から、三角形、四角形、五角形、及び、六角形であることが好ましい。
【0039】
また、上記加飾フィルムの面方向における上記領域A及び上記領域B等の各領域の形状の一例を、図14図16にそれぞれ示す。
図14は、加飾フィルムの面方向において、三角形、四角形、五角形、六角形、又は頂点の数が7以上の多角形の領域A~領域E及び凸構造のない領域が密集した形状の例である。
図15は、加飾フィルムの面方向において、同じ大きさの四角形の領域A~領域E及び凸構造のない領域が密集した形状の例である。また、一部は、四角形の同じ領域がくっついて、長方形等のより大きな領域を形成している。
図16は、加飾フィルムの面方向において、大きさが異なっていてもよい、五角形の領域A、十字形の領域B及び十字形の領域Cがまだらに配置されている例である。
【0040】
上記加飾フィルムの面方向における上記領域A及び上記領域Bはそれぞれ、奥行き感のある視認性の観点から、直径50μmの円以上の大きさである領域を含むことが好ましく、直径70μmの円以上の大きさである領域を含むことがより好ましく、直径90μmの円以上の大きさである領域を含むことが更に好ましく、直径100μmの円以上の大きさである領域を含むことが特に好ましい。
上記加飾フィルムの面方向における上記領域A及び上記領域Bはそれぞれ、同一領域内での観察角度のずれを抑制し、領域内での反射率差を小さくする観点から、直径5cmの円以下の大きさである領域を含むことが好ましく、直径3cmの円以下の大きさである領域を含むことがより好ましく、直径2cmの円以下の大きさである領域を含むことが特に好ましい。
上記加飾フィルムの面方向における上記領域A及び上記領域Bの面積の上限値はそれぞれ、特に制限はないが、50mm以下であることが好ましい。
また、上記加飾フィルムの面方向における上記領域Aは、2以上有していてもよく、それぞれの大きさも特に制限はなく、全て同じ大きさであっても、2以上が異なる大きさであってもよい。また、上記領域Bについても同様である。
【0041】
本開示に係る加飾フィルムは、薄膜の加飾フィルムでの奥行き感のある視認性、及び、視認方向による色味変化の観点から、上記断面における上記凸構造の断面形状が、正の傾斜角の極大点及び極小点を含むことが好ましい。
また、本開示に係る加飾フィルムは、薄膜の加飾フィルムでの奥行き感のある視認性、及び、視認方向による色味変化の観点から、上記領域A及び上記領域Bにおいてそれぞれ、複数の凸構造を含む領域であることが好ましい。
【0042】
本開示に係る加飾フィルムは、奥行き感のある視認性、干渉による虹ムラの抑制、及び、視認方向による色味変化の観点から、上記断面において、近接する2つの上記極小点間の距離又は近接する2つの上記極大点間の距離dが、5μm以上200μm未満である領域を有することが好ましく、10μm以上100μm未満である領域を有することがより好ましく、15μm以上60μm未満である領域を有することが特に好ましい。
なお、上記距離dの平均値は、上述したピッチと同義である。
【0043】
また、本開示に係る加飾フィルムにおいては、上記領域A及び上記領域Bの正の傾斜角の平均ΦAVEがそれぞれ、反射領域での視認性、奥行き感の複雑性、及び、視認方向による色味変化の観点から、3°以上25°以下であることが好ましく、3°以上20°以下であることがより好ましく、3°以上15°以下であることが特に好ましい。
【0044】
本開示に係る加飾フィルムにおいて、上記領域Aの正の傾斜角の平均ΦAVEと上記領域Bの正の傾斜角の平均ΦAVEとの差は、反射領域での視認性、奥行き感のある視認性、及び、視認方向による色味変化の観点から、0.5°以上であることが好ましく、1°以上であることがより好ましく、3°以上であることが更に好ましく、3°以上20°以下であることが特に好ましい。
【0045】
本開示に係る加飾フィルムは、奥行き感の複雑性の観点から、加飾フィルムの面方向に垂直な方向で上記凸構造を裁断した断面において、正の傾斜角の平均ΦAVEが上記領域A及び上記領域Bと異なる領域Cを更に有することが好ましく、正の傾斜角の平均ΦAVEが上記領域A~領域Cと異なる領域Dを更に有することがより好ましい。
また、本開示に係る加飾フィルムは、奥行き感の複雑性の観点から、加飾フィルムの面方向に垂直な方向で上記凸構造を裁断した断面において、正の傾斜角の平均ΦAVEが上記領域A、上記領域B、上記領域C、上記領域D、・・・・・・と異なる領域xを更に有していることが好ましい。
上記領域xは、本開示に係る加飾フィルムにおける各領域の正の傾斜角の平均ΦAVEとは異なる正の傾斜角の平均ΦAVEを有する領域である。
本開示に係る加飾フィルムは、正の傾斜角の平均ΦAVEが互いに異なる領域を2種以上有していればよく、奥行き感の複雑性の観点から、2種~100種有していることが好ましく、2種~10種有していることがより好ましく、2種~5種有していることが更に好ましく、3種~5種有していることが特に好ましい。
【0046】
上記領域C及び上記領域Dの好ましい態様はそれぞれ、後述する以外、上記領域Aの好ましい態様と同様である。
【0047】
上記領域Aの正の傾斜角の平均ΦAVE>上記領域Bの正の傾斜角の平均ΦAVEである場合、視認性、奥行き感のある視認性、及び、視認方向による色味変化の観点から、上記領域Aの正の傾斜角の平均ΦAVEが5°以上25°以下であり、かつ、上記領域Bの正の傾斜角の平均ΦAVEが3°以上12°以下であることが好ましく、上記領域Aの正の傾斜角の平均ΦAVEが6°以上20°以下であり、かつ、上記領域Bの正の傾斜角の平均ΦAVEが3°以上10°以下であることがより好ましく、上記領域Aの正の傾斜角の平均ΦAVEが6°以上10°以下であり、かつ、上記領域Bの正の傾斜角の平均ΦAVEが3°以上5°以下であることが特に好ましい。
【0048】
また、上記領域Cの正の傾斜角の平均ΦAVE>上記領域Aの正の傾斜角の平均ΦAVE>上記領域Bの正の傾斜角の平均ΦAVEである場合、視認性、奥行き感のある視認性、及び、視認方向による色味変化の観点から、上記領域Aの正の傾斜角の平均ΦAVEが5°以上15°以下であり、上記領域Bの正の傾斜角の平均ΦAVEが3°以上12°以下であり、かつ、上記領域Cの正の傾斜角の平均ΦAVEが8°以上25°以下であることが好ましく、上記領域Aの正の傾斜角の平均ΦAVEが6°以上12°以下であり、上記領域Bの正の傾斜角の平均ΦAVEが3°以上6°未満であり、かつ、上記領域Cの正の傾斜角の平均ΦAVEが10°以上20°以下であることがより好ましく、上記領域Aの正の傾斜角の平均ΦAVEが6°以上10°未満であり、上記領域Bの正の傾斜角の平均ΦAVEが3°以上5°以下であり、かつ、上記領域Cの正の傾斜角の平均ΦAVEが10°以上15°以下であることが特に好ましい。
【0049】
本開示に係る加飾フィルムは、上記加飾フィルムの面方向における上記領域A以外の領域を有していてもよく、1種以上の上記領域Aとは異なる凸構造を有する領域を有していてもよいし、凸構造のない領域を有していてもよい。
また、本開示に係る加飾フィルムは、視認性、及び、視認方向による色味変化の観点から、上記領域Aとは上記第二の方向が異なる領域Bを面内に更に有することが好ましく、上記領域A及び上記領域Bとは上記第二の方向が異なる領域Cを面内に更に有することがより好ましく、上記領域A~Cとは上記第二の方向が異なる領域Dを面内に更に有することが更に好ましい。
また、上記領域B~Dはそれぞれ、視認性、及び、視認方向による色味変化の観点から、上記正の傾斜角の平均ΦAVEに対して、±10°以内である領域であることが好ましい。
【0050】
本開示に係る加飾フィルムにおける上記領域A~上記領域Dを含む正の傾斜角の平均ΦAVEに対して、±10°以内である領域の上記加飾フィルムの面内における総面積は、視認性、光輝性、オパール状の視認性、及び、視認方向による色味変化の観点から、20面積%~100面積%であることが好ましく、30面積%~100面積%であることがより好ましく、40面積%~100面積%であることが更に好ましく、50面積%~95面積%であることが特に好ましい。
【0051】
上記領域Aと上記領域Bとの上記加飾フィルムの面方向における距離は、特に制限はないが、光る領域の移り替わりを視認しやすくする観点から、3cm以下であることが好ましく、1cm以下であることがより好ましく、5mm以下であることが特に好ましい。上記距離の下限値は、0mm、すなわち、上記領域Aと上記領域Bとが接していてもよい。
【0052】
上記領域A内の上記凸構造を上記加飾フィルムの面方向に垂直な方向かつ上記第一の方向で裁断した断面形状において、正の傾斜角の極大点と極小点との中間高さ地点H1/2における傾斜角Φ1/2は、正面から視認した場合、例えば、卓上及び展示された状態で視認した場合の光輝性の観点から、3°以上60°未満であることが好ましく、3°以上20°未満であることがより好ましく、3°以上7°未満であることが特に好ましい。
なお、上記極大点及び上記極小点の位置は、例えば、上記断面形状が半円状の凸構造である場合、半円状の凸構造の頂点部分が極大点、半円状の円弧と直径との接点部分が極小点となる。また、その場合、中間高さ地点H1/2は、半円状の凸構造の高さの半分の高さの位置となる。
【0053】
また、上記領域A内の上記凸構造を上記加飾フィルムの面方向に垂直な方向かつ上記第一の方向で裁断した断面形状において、正の傾斜角の極大点と極小点との中間高さ地点H1/2における傾斜角Φ1/2は、斜め方向、特に面に垂直な方向から45°以上斜め方向から視認した場合、例えば、加飾フィルムにより加飾された加飾物を手に持って傾けて視認した場合の光輝性の観点から、60°以上であることが好ましく、60°以上90°未満であることがより好ましく、60°以上75°未満であることが特に好ましい。
【0054】
上記領域A内の上記凸構造を上記加飾フィルムの面方向に垂直な方向かつ上記第一の方向で裁断した断面形状において、傾斜角Φが0°以上3°未満となる領域の面積割合は、明暗部分における暗部をより暗くしコントラストを強める観点から、上記領域Aの全面積に対し、50%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましく、25%以下であることが特に好ましい。上記面積割合の下限値は、0%である。
【0055】
また、上記領域A内の上記凸構造を上記加飾フィルムの面方向に垂直な方向かつ上記第一の方向で裁断した断面形状において、傾斜角Φが3°以上45°未満となる領域の面積割合は、明暗部分における明部をより明るくしコントラストを強める観点から、上記領域Aの全面積に対し、40%以上であることが好ましく、50%以上90%以下であることがより好ましく、60%以上80%以下であることが特に好ましい。
【0056】
更に、上記領域A内の上記凸構造を上記加飾フィルムの面方向に垂直な方向かつ上記第一の方向で裁断した断面形状において、傾斜角Φが3°以上7°未満となる領域の面積割合は、正面から視認した場合の明暗部分における明部をより明るくしコントラストを強める観点から、20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上90%以下であることが特に好ましい。
【0057】
また、上記領域A等の各領域において、複数凸構造を有する場合の隣接する凸構造同士の頂点間距離はそれぞれ独立に、光輝性、視認性、視認方向による色味変化、及び、干渉により虹模様の発生を抑制する観点から、5μm以上200μm未満であることが好ましく、10μm以上100μm未満であることがより好ましく、20μm以上50μm未満であることが特に好ましい。
【0058】
反射層における凸構造の形成方法としては、特に制限はないが、例えば、あらかじめ線状凸構造に対応する形状が形成された型を作製し、凸構造を有しない反射層が積層された基材に対し、凸形状を転写する方法、及び反射層の形成前の基材に、上記凸形状を転写した後、反射層を凸形状に沿って変形させる方法が好適に挙げられる。いずれの場合も、基材上に、凸形状に追随が容易な、後述する樹脂層を設けることもできる。転写方法としては、例えば、型を直接基材に加圧する方法、ロール式ラミネーターを用いて加圧する方法、及び真空ラミネーターを用いて加圧する方法が挙げられる。
また、反射層における凸構造の形成方法としては、凸構造を有する基材に対し、無機粒子等の無機化合物をスパッタリングすることにより形成する方法も挙げられる。
【0059】
反射層は、選択反射波長の中心波長を300nm以上1,500nm以下の範囲に有することが好ましい。
反射層は、光輝性、視認性、及び、視認方向による色味変化の観点から、コレステリック配向状態の液晶(単に「コレステリック液晶」ともいう。)を含むことが好ましい。
反射層としては、例えば、コレステリック液晶を含む層(以下、「コレステリック液晶層」ともいう。)、平板状金属粒子を含む層、光学多層膜、及びクロミック材料を含む層が挙げられる。上記した反射層の中でも、光輝性、及び、視認方向による色味変化の観点から、コレステリック液晶層、又は、光学多層膜を含む層が好ましく、視認方向による色味変化がより増大する観点から、コレステリック液晶層がより好ましい。
【0060】
<<液晶組成物>>
コレステリック液晶層は、液晶組成物を硬化してなる層である。液晶組成物は、液晶化合物を含む組成物である。本開示に用いられる液晶化合物としては、成型加工性、及び仮支持体剥離性の観点から、エチレン性不飽和基を1つ有するか又は環状エーテル基を1つ有するコレステリック液晶化合物を少なくとも用いることが好ましい。コレステリック液晶層を形成するための液晶組成物は、例えば、エチレン性不飽和基を1つ有するか又は環状エーテル基を1つ有するコレステリック液晶化合物を、液晶組成物の全固形分に対し、25質量%以上含み、更に、その他の成分(例えば、カイラル剤、配向制御剤、重合開始剤、及び配向助剤)を含有していてもよい。
【0061】
-エチレン性不飽和基を1つ有するか又は環状エーテル基を1つ有するコレステリック液晶化合物-
液晶組成物は、液晶化合物として、エチレン性不飽和基を1つ有するか又は環状エーテル基を1つ有するコレステリック液晶化合物(以下、「特定液晶化合物」ともいう。)を25質量%以上含むことが好ましい。
【0062】
特定液晶化合物におけるエチレン性不飽和基としては、特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルエステル基、及びビニルエーテル基が挙げられる。エチレン性不飽和基は、反応性の観点から、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、又は、芳香族ビニル基であることが好ましく、(メタ)アクリロキシ基、又は、(メタ)アクリルアミド基であることがより好ましく、(メタ)アクリロキシ基であることが特に好ましい。
【0063】
特定液晶化合物における環状エーテル基は、特に制限はないが、反応性の観点から、エポキシ基、又は、オキセタニル基であることが好ましく、オキセタニル基であることが特に好ましい。
【0064】
特定液晶化合物は、反応性、並びに、成型後における反射率変化抑制及び色味変化抑制の観点から、エチレン性不飽和基を1つ有するコレステリック液晶化合物であることが好ましい。液晶組成物は、エチレン性不飽和基を1つ有するコレステリック液晶化合物を、液晶組成物の全固形分に対し、25質量%以上含むことがより好ましい。
【0065】
なお、特定液晶化合物は、エチレン性不飽和基、及び、環状エーテル基の両方を1つの分子内に有してもよいが、エチレン性不飽和基の数が1つであるか、環状エーテル基の数が1つであるものとする。また、特定液晶化合物におけるエチレン性不飽和基の数が1つであれば、例えば、上記特定液晶化合物は、1つのエチレン性不飽和基と1つ以上の環状エーテル基とを有する化合物であってもよい。
【0066】
液晶組成物がエチレン性不飽和基を1つ有するコレステリック液晶化合物を含む場合、上記液晶組成物は、成型後における反射率変化抑制及び色味変化抑制の観点から、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましく、光ラジカル重合開始剤を含むことがより好ましい。
【0067】
液晶組成物が環状エーテル基を1つ有するコレステリック液晶化合物を含む場合、上記液晶組成物は、成型後における反射率変化抑制、及び、色味変化抑制の観点から、カチオン重合開始剤を含むことが好ましく、光カチオン重合開始剤を含むことがより好ましい。
【0068】
特定液晶化合物は、成型後における反射率変化抑制及び色味変化抑制の観点から、エチレン性不飽和基、及び、環状エーテル基の両方を有するコレステリック液晶化合物であることが好ましく、1つのエチレン性不飽和基と1つの環状エーテル基とを有するコレステリック液晶化合物であることがより好ましい。
【0069】
特定液晶化合物は、液晶構造を有する化合物であれば、棒状液晶化合物であっても、円盤状液晶化合物であってもよい。特定液晶化合物は、コレステリック液晶層における螺旋構造のピッチの調整容易性、並びに、成型後における反射率変化抑制及び色味変化抑制の観点から、棒状液晶化合物であることが好ましい。
【0070】
棒状液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、又は、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶化合物だけではなく、液晶性高分子化合物も用いることができる。棒状液晶化合物としては、「Makromol. Chem., 190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)」、米国特許第4683327号明細書、米国特許第5622648号明細書、米国特許第5770107号明細書、国際公開第1995/022586号、国際公開第1995/024455号、国際公開第1997/000600号、国際公開第1998/023580号、国際公開第1998/052905号、特開平1-272551号公報、特開平6-16616号公報、特開平7-110469号公報、特開平11-80081号公報、及び、特開2001-328973号公報に記載の化合物のうち、エチレン性不飽和基を1つ有するか又は環状エーテル基を1つ有する化合物を用いることができる。更に、棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報及び特開2007-279688号公報に記載の化合物のうち、エチレン性不飽和基を1つ有するか又は環状エーテル基を1つ有する化合物を好ましく用いることができる。コレステリック液晶層は、棒状液晶化合物の重合によって配向を固定してなる層であることがより好ましい。
【0071】
円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報又は特開2010-244038号公報に記載の化合物のうち、エチレン性不飽和基を1つ有するか又は環状エーテル基を1つ有する化合物を好ましく用いることができる。
【0072】
特定液晶化合物として具体的には、下記に示す化合物が好ましく挙げられるが、これらに限定されないことは言うまでもない。
【0073】
【化1】
【0074】
【化2】
【0075】
【化3】
【0076】
【化4】
【0077】
【化5】
【0078】
【化6】
【0079】
【化7】
【0080】
液晶組成物は、特定液晶化合物を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。特定液晶化合物の含有量は、液晶組成物の全固形分に対し、25質量%以上であることが好ましい。特定液晶化合物の含有量が25質量%以上であると、成型後における反射率の変化が小さい加飾フィルムが得られる。また、特定液晶化合物の含有量は、成型後における反射率変化抑制及び色味変化抑制の観点から、液晶組成物の全固形分に対し、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上99質量%以下であることが更に好ましく、80質量%以上98質量%以下であることが特に好ましい。
【0081】
-他のコレステリック液晶化合物-
液晶組成物は、特定液晶化合物以外の他のコレステリック液晶化合物(以下、単に「他の液晶化合物」ともいう。)を含んでいてもよい。他の液晶化合物としては、例えば、エチレン性不飽和基及び環状エーテル基を有しないコレステリック液晶化合物、2つ以上のエチレン性不飽和基を有し、かつ、環状エーテル基を有しないコレステリック液晶化合物、2つ以上の環状エーテル基を有し、かつ、エチレン性不飽和基を有しないコレステリック液晶化合物、及び、2つ以上のエチレン性不飽和基及び2つ以上の環状エーテル基を有するコレステリック液晶化合物が挙げられる。他の液晶化合物は、成型後における反射率変化抑制及び色味変化抑制の観点から、エチレン性不飽和基及び環状エーテル基を有しないコレステリック液晶化合物、2つ以上のエチレン性不飽和基を有し、かつ、環状エーテル基を有しないコレステリック液晶化合物、及び、2つ以上の環状エーテル基を有し、かつ、エチレン性不飽和基を有しないコレステリック液晶化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和基及び環状エーテル基を有しないコレステリック液晶化合物、2つのエチレン性不飽和基を有し、かつ、環状エーテル基を有しないコレステリック液晶化合物、及び、2つの環状エーテル基を有し、かつ、エチレン性不飽和基を有しないコレステリック液晶化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることがより好ましく、エチレン性不飽和基及び環状エーテル基を有しないコレステリック液晶化合物、及び、2つのエチレン性不飽和基を有し、かつ、環状エーテル基を有しないコレステリック液晶化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが特に好ましい。
【0082】
他の液晶化合物としては、公知のコレステリック液晶化合物を用いることができる。他の液晶化合物における棒状液晶化合物としては、例えば、「Makromol. Chem., 190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)」、米国特許第4683327号明細書、米国特許第5622648号明細書、米国特許第5770107号明細書、国際公開第1995/022586号、国際公開第1995/024455号、国際公開第1997/000600号、国際公開第1998/023580号、国際公開第1998/052905号、特開平1-272551号公報、特開平6-16616号公報、特開平7-110469号公報、特開平11-80081号公報、及び、特開2001-328973号公報に記載の化合物を用いることができる。更に、他の液晶化合物における棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報又は特開2007-279688号公報に記載の化合物を好ましく用いることができる。他の液晶化合物における円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報又は特開2010-244038号公報に記載の化合物を好ましく用いることができる。
【0083】
液晶組成物は、他の液晶化合物を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。他の液晶化合物の含有量は、成型後における反射率変化抑制及び色味変化抑制の観点から、液晶組成物の全固形分に対し、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。なお、他の液晶化合物の含有量の下限値は、0質量%である。
【0084】
-カイラル剤(光学活性化合物)-
液晶組成物は、コレステリック液晶層形成の容易性、及び、螺旋構造のピッチの調整容易性の観点から、カイラル剤(すなわち、光学活性化合物)を含むことが好ましい。カイラル剤は、コレステリック液晶層における螺旋構造を誘起する機能を有する。カイラル剤は、液晶化合物によって誘起する螺旋のよじれ方向又は螺旋ピッチが異なるため、目的に応じて選択すればよい。カイラル剤としては、特に制限はなく、公知の化合物(例えば、「液晶デバイスハンドブック」、第3章4-3項、TN(twisted nematic)、STN(Super-twisted nematic)用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載された化合物)、イソソルビド、及びイソマンニド誘導体を用いることができる。カイラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物又は面性不斉化合物もカイラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物又は面性不斉化合物の例には、ビナフチル化合物、ヘリセン化合物、又は、パラシクロファン化合物が好ましく挙げられる。
【0085】
液晶組成物は、成型後における反射率変化抑制の観点から、カイラル剤として、重合性基を有するカイラル剤を含むことが好ましく、重合性基を含むカイラル剤、及び、重合性基を有しないカイラル剤を含むことがより好ましい。重合性基としては、重合可能な基であれば特に制限はないが、反応性、及び、成型後における反射率変化抑制の観点から、エチレン性不飽和基、又は、環状エーテル基であることが好ましく、エチレン性不飽和基であることがより好ましい。カイラル剤におけるエチレン性不飽和基及び環状エーテル基の好ましい態様は、上述した特定液晶化合物におけるエチレン性不飽和基及び環状エーテル基の好ましい態様とそれぞれ同様である。
【0086】
カイラル剤がエチレン性不飽和基、又は、環状エーテル基を有する場合、反応性、及び、成型後における反射率変化抑制の観点から、特定液晶化合物が有するエチレン性不飽和基、又は、環状エーテル基と、カイラル剤が有するエチレン性不飽和基、又は、環状エーテル基とは同種の基(例えば、エチレン性不飽和基、好ましくは(メタ)アクリロキシ基)であることが好ましく、同じ基であることがより好ましい。
【0087】
重合性基を有するカイラル剤は、反応性、及び、成型後における反射率変化抑制の観点から、2つ以上の重合性基を有するカイラル剤であることが好ましく、2つ以上のエチレン性不飽和基を有するカイラル剤、又は、2つ以上の環状エーテル基を有するカイラル剤であることがより好ましく、2つ以上のエチレン性不飽和基を有するカイラル剤であることが特に好ましい。
【0088】
カイラル剤は、コレステリック液晶化合物であってもよい。
【0089】
なお、後述するように、コレステリック液晶層を製造する際に、光照射によってコレステリック液晶層の螺旋ピッチの大きさを制御する場合、液晶組成物は、光に感応しコレステリック液晶層の螺旋ピッチを変化させ得るカイラル剤(以下、「感光性カイラル剤」ともいう。)を含むことが好ましい。感光性カイラル剤とは、光を吸収することにより構造が変化し、コレステリック液晶層の螺旋ピッチを変化させ得る化合物である。このような化合物としては、光異性化反応、光二量化反応、及び、光分解反応の少なくとも1つを起こす化合物が好ましい。光異性化反応を起こす化合物とは、光の作用で立体異性化又は構造異性化を起こす化合物をいう。光異性化反応を起こす化合物としては、例えば、アゾベンゼン化合物、及びスピロピラン化合物が挙げられる。また、光二量化反応を起こす化合物とは、光の照射によって、二つの基の間に付加反応を起こして環化する化合物をいう。光二量化反応を起こす化合物としては、例えば、桂皮酸誘導体、クマリン誘導体、カルコン誘導体、及びベンゾフェノン誘導体が挙げられる。また、光としては、特に制限はなく、例えば、紫外光、可視光、及び赤外光が挙げられる。
【0090】
感光性カイラル剤としては、下記式(CH1)で表されるカイラル剤が好ましく挙げられる。下記式(CH1)で表されるカイラル剤は、光照射時の光量に応じてコレステリック液晶相の螺旋ピッチ(例えば、螺旋周期、及びねじれ周期)などの配向構造を変化させ得る。
【0091】
【化8】
【0092】
式(CH1)中、ArCH1及びArCH2はそれぞれ独立に、アリール基又は複素芳香環基を表し、RCH1及びRCH2はそれぞれ独立に、水素原子又はシアノ基を表す。
【0093】
式(CH1)におけるArCH1及びArCH2はそれぞれ独立に、アリール基であることが好ましい。式(CH1)のArCH1及びArCH2におけるアリール基の総炭素数は、6~40であることが好ましく、6~30であることがより好ましい。アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、シアノ基、又は、複素環基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、又は、アリールオキシカルボニル基がより好ましい。
【0094】
ArCH1及びArCH2としては、下記式(CH2)又は式(CH3)で表されるアリール基が好ましい。
【0095】
【化9】
【0096】
式(CH2)及び式(CH3)中、RCH3及びRCH4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、又は、シアノ基を表し、LCH1及びLCH2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、又は、ヒドロキシ基を表し、nCH1は0~4の整数を表し、nCH2は0~6の整数を表し、*は式(CH1)におけるエチレン不飽和結合を形成するCとの結合位置を表す。
【0097】
式(CH2)及び式(CH3)におけるRCH3及びRCH4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、又は、アシルオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又は、アシルオキシ基であることがより好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
式(CH2)及び式(CH3)におけるLCH1及びLCH2はそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルコキシ基、又は、ヒドロキシ基であることが好ましい。
式(CH2)におけるnCH1は、0又は1であることが好ましい。
式(CH3)におけるnCH2は、0又は1であることが好ましい。
【0098】
式(CH1)のArCH1及びArCH2における複素芳香環基の総炭素数は、4~40であることが好ましく、4~30であることがより好ましい。複素芳香環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、又は、シアノ基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、又は、アシルオキシ基がより好ましい。複素芳香環基としては、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、又は、ベンゾフラニル基が好ましく、ピリジル基、又は、ピリミジニル基がより好ましい。
【0099】
式(CH1)中、RCH1及びRCH2はそれぞれ独立に、水素原子であることが好ましい。
【0100】
液晶組成物は、カイラル剤を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。カイラル剤の含有量は、使用する特定液晶化合物の構造や螺旋構造の所望のピッチに応じ適宜選択することができる。カイラル剤の含有量は、コレステリック液晶層形成の容易性、螺旋構造のピッチの調整容易性、及び、成型後における反射率変化抑制の観点から、液晶組成物の全固形分に対し、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。
【0101】
液晶組成物がカイラル剤として重合性基を有するカイラル剤を含有する場合、重合性基を有するカイラル剤の含有量は、成型後における反射率変化抑制の観点から、液晶組成物の全固形分に対し、0.2質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上8質量%以下であることが更に好ましく、1.5質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0102】
液晶組成物がカイラル剤として重合性基を有しないカイラル剤を含有する場合、重合性基を有しないカイラル剤の含有量は、成型後における反射率変化抑制の観点から、液晶組成物の全固形分に対し、0.2質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。
【0103】
また、コレステリック液晶層におけるコレステリック液晶の螺旋構造のピッチ、並びに、後述する選択反射波長及びその範囲は、使用する液晶化合物の種類だけでなく、カイラル剤の含有量を調製することによっても、容易に変化させることができる。一概には言えないが、液晶組成物におけるカイラル剤の含有量が2倍になると、上記ピッチが1/2、及び、上記選択反射波長の中心値も1/2となる場合がある。
【0104】
-重合開始剤-
液晶組成物は、重合開始剤を含むことが好ましく、光重合開始剤を含むことがより好ましい。
【0105】
液晶組成物がエチレン性不飽和基を1つ有するコレステリック液晶化合物を含む場合、上記液晶組成物は、成型後における反射率変化抑制及び色味変化抑制の観点から、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましく、光ラジカル重合開始剤を含むことがより好ましい。
【0106】
液晶組成物が環状エーテル基を1つ有するコレステリック液晶化合物を含む場合、上記液晶組成物は、成型後における反射率変化抑制、及び、色味変化抑制の観点から、カチオン重合開始剤を含むことが好ましく、光カチオン重合開始剤を含むことがより好ましい。
【0107】
液晶組成物は、重合開始剤として、ラジカル重合開始剤、又は、カチオン重合開始剤のどちらか一方のみを含むことが好ましい。
【0108】
重合開始剤としては、公知の重合開始剤を用いることができる。また、重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤の例としては、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、及び米国特許第2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル化合物(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、及び米国特許第2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン化合物及びフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、及び米国特許第4239850号明細書記載)、並びにオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)が挙げられる。
【0109】
光ラジカル重合開始剤としては、公知の光ラジカル重合開始剤を用いることができる。光ラジカル重合開始剤としては、α-ヒドロキシアルキルフェノン化合物、α-アミノアルキルフェノン化合物、又はアシルホスフィンオキサイド化合物が好ましく挙げられる。
【0110】
光カチオン重合開始剤としては、公知の光カチオン重合開始剤を用いることができる。光カチオン重合開始剤としては、ヨードニウム塩化合物、又はスルホニウム塩化合物が好ましく挙げられる。
【0111】
液晶組成物は、重合開始剤を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。重合開始剤の含有量は、使用する特定液晶化合物の構造及び螺旋構造の所望のピッチに応じ適宜選択することができる。重合開始剤の含有量は、コレステリック液晶層形成の容易性、螺旋構造のピッチの調整容易性、重合速度、及び、コレステリック液晶層の強度の観点から、液晶組成物の全固形分に対し、0.05質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上2質量%以下であることが更に好ましく、0.2質量%以上1質量%以下であることが特に好ましい。
【0112】
-架橋剤-
液晶組成物は、硬化後のコレステリック液晶層の強度向上及び耐久性向上のため、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、例えば、紫外線、熱、又は湿気で硬化する架橋剤が好適に使用できる。架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、4,4-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ビウレット型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;及びビニルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物が挙げられる。また、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、コレステリック液晶層の強度及び耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。
【0113】
液晶組成物は、架橋剤を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。架橋剤の含有量は、コレステリック液晶層の強度及び耐久性の観点から、液晶組成物の全固形分に対し、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、3質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0114】
-多官能重合性化合物-
液晶組成物は、成型後における反射率変化抑制の観点から、多官能重合性化合物を含むことが好ましく、同種の重合性基を有する多官能重合性化合物を含むことがより好ましい。多官能重合性化合物としては、上述した他のコレステリック液晶化合物における、2つ以上のエチレン性不飽和基を有し、かつ、環状エーテル基を有しないコレステリック液晶化合物、2つ以上の環状エーテル基を有し、かつ、エチレン性不飽和基を有しないコレステリック液晶化合物、及び、2つ以上のエチレン性不飽和基及び2つ以上の環状エーテル基を有するコレステリック液晶化合物、上述したカイラル剤における2つ以上の重合性基を有するカイラル剤、並びに上記架橋剤が挙げられる。
【0115】
液晶組成物は、多官能重合性化合物として、2つ以上のエチレン性不飽和基を有し、かつ、環状エーテル基を有しないコレステリック液晶化合物、2つ以上の環状エーテル基を有し、かつエチレン性不飽和基を有しないコレステリック液晶化合物、及び、2つ以上の重合性基を有するカイラル剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、2つ以上の重合性基を有するカイラル剤を含むことがより好ましい。
【0116】
液晶組成物は、多官能重合性化合物を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。多官能重合性化合物の含有量は、成型後における反射率変化抑制の観点から、液晶組成物の全固形分に対し、0.5質量%以上70質量%以下であることが好ましく、1質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましく、2質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。
【0117】
-その他の添加剤-
液晶組成物は、必要に応じて、上述した成分以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、公知の添加剤を用いることができ、例えば、界面活性剤、重合禁止剤、酸化防止剤、水平配向剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、着色剤、及び金属酸化物粒子を挙げることができる。
【0118】
また、液晶組成物は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケトン類(例えば、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン)、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、及びエーテル類が挙げられる。溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が特に好ましい。また、上述の成分が溶媒として機能していてもよい。
【0119】
液晶組成物における溶媒の含有量は、特に制限はなく、所望の塗布性が得られる溶媒の含有量に調整すればよい。液晶組成物の全質量に対する固形分の含有量は、特に制限はないが、1質量%~90質量%であることが好ましく、5質量%~80質量%であることがより好ましく、10質量%~80質量%であることが特に好ましい。コレステリック液晶層を形成する際の硬化時における液晶組成物の溶媒の含有量は、液晶組成物の全固形分に対し、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。また、液晶組成物を硬化してなるコレステリック液晶層における溶媒の含有量は、コレステリック液晶層の全質量に対し、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0120】
-液晶組成物の塗布及び硬化-
コレステリック液晶層の形成において、液晶組成物は、例えば、対象物(例えば、上述の基材、及び後述の配向層)の上に塗布して使用される。液晶組成物の塗布は、例えば、液晶組成物を溶媒により溶液状態としたり、又は加熱による溶融液等の液状物とした後、ロールコーティング方式、グラビア印刷方式、スピンコート方式などの適宜な方式により行うことができる。液晶組成物の塗布は、例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、及びダイコーティング法のような種々の方法によって行うこともできる。また、インクジェット装置を用いて、液晶組成物をノズルから吐出して、塗布膜(塗布により形成された膜状の液晶組成物をいう。)を形成することもできる。
【0121】
液晶組成物の塗布の後、液晶組成物の硬化により、コレステリック液晶層を形成する。液晶組成物の硬化により、液晶化合物(例えば、上述の特定液晶化合物)の分子の配向状態を維持して固定する。液晶組成物の硬化は、液晶化合物が有する重合性基(例えば、エチレン性不飽和基、又は環状エーテル基)の重合反応により実施することが好ましい。液晶組成物の成分として溶媒を使用した場合、液晶組成物の塗布後であって、硬化のための重合反応前に、塗布膜を公知の方法で乾燥することが好ましい。例えば放置によって塗布膜を乾燥してもよく、又は加熱によって塗布膜を乾燥してもよい。液晶組成物の塗布及び乾燥後において、液晶組成物中の液晶化合物が配向していればよい。
【0122】
-コレステリック液晶層の層構成-
本開示に係る加飾フィルムは、成型後における反射率変化抑制の観点から、コレステリック液晶層を2層以上有することが好ましい。また、2層以上のコレステリック液晶層の組成はそれぞれ、同じであっても、異なってもよい。本開示に係る加飾フィルムがコレステリック液晶層を2層以上有する場合、本開示に係る加飾フィルムは、エチレン性不飽和基を1つ有するか又は環状エーテル基を1つ有するコレステリック液晶化合物(すなわち、特定液晶化合物)を、液晶組成物の全固形分に対し、25質量%以上含む液晶組成物を硬化してなる層を少なくとも1層有していればよい。成型後における反射率変化抑制の観点から、2層以上のコレステリック液晶層がいずれも、エチレン性不飽和基を1つ有するか又は環状エーテル基を1つ有するコレステリック液晶化合物を、液晶組成物の全固形分に対し、25質量%以上含む液晶組成物を硬化してなる層であることが好ましい。
【0123】
また、例えば、本開示に係る加飾フィルムがコレステリック液晶層を2層有する場合、成型後における反射率変化抑制の観点から、上記基材の各面上にそれぞれ、コレステリック液晶層を有することが好ましい。
【0124】
<<反射層の選択反射性>>
反射層は、選択反射波長の中心波長を300nm以上1,500nm以下の範囲に有することが好ましい。本開示において、「選択反射波長の中心波長」とは、対象となる物(例えば、反射層)における光の透過率の最小値かつ極小値をTmin(単位:%)とした場合、下記の式で表される半値透過率T1/2(単位:%)を示す2つの波長の平均値をいう。ただし、上記2つの波長のうち1つ目の波長は、上記Tminを示す波長よりも短い波長を含む波長域における最大波長とし、上記2つの波長のうち2つ目の波長は、上記Tminを示す波長よりも長い波長を含む波長域における最小波長とする。透過率は、分光光度計(例えば、(株)島津製作所製、分光光度計UV-2100)を用いて測定する。選択反射波長の中心波長は、380nm以上780nm以下の範囲、又は780nmを超え1,500nm以下の範囲に含まれてもよい。
半値透過率を求める式:T1/2=100-(100-Tmin)÷2
【0125】
反射層は、380nm~1,500nmの波長範囲に極大反射波長を有することが好ましい。極大反射波長が含まれる波長範囲は、加飾フィルムへの利用の観点から、380nm~1,200nmであることが好ましく、400nm~1,000nmであることがより好ましく、420nm~900nmであることが特に好ましい。
【0126】
反射層の厚みは、強度、及び、耐久性の観点から、0.2μm~150μmであることが好ましく、0.5μm~100μmであることがより好ましく、1μm~50μmであることが更に好ましく、1μm~10μmであることが特に好ましい。
また、上記凸構造部分における反射層の厚みは、強度、及び、耐久性の観点から、0.5μm~150μmであることが好ましく、0.8μm~100μmであることがより好ましく、1μm~50μmであることが更に好ましく、2μm~10μmであることが特に好ましい。
【0127】
<配向層>
本開示に係る加飾フィルムは、コレステリック液晶層に接する配向層を有していてもよい。配向層は、液晶化合物を含む層(以下、「液晶層」ともいう。)の形成の際、液晶組成物中の液晶化合物の分子を配向させるために用いられる。配向層は例えば液晶層の形成の際に用いられるため、液晶層を含まない加飾フィルムにおいては、配向層が含まれていてもいなくてもよい。
【0128】
配向層は、例えば、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物(例えば、SiO)の斜方蒸着、又はマイクログルーブを有する層の形成によって設けることができる。更には、電場の付与、磁場の付与、或いは光照射により配向機能が生じる配向層も知られている。支持体及び液晶層のような下層の材料によっては、配向層を設けなくても、下層を直接配向処理(例えば、ラビング処理)することで、配向層として機能させることもできる。そのような下層となる支持体の一例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)を挙げることができる。また、液晶層の上に直接層(以下、本段落において「上層」という。)を積層する場合、下層の液晶層が配向層として振舞い上層の作製のための液晶化合物を配向させることができる場合もある。このような場合、配向層を設けなくても、また、特別な配向処理(例えば、ラビング処理)を実施しなくても上層の液晶化合物を配向することができる。
【0129】
以下、配向層の好ましい例として、ラビング処理配向層及び光配向層を説明する。
【0130】
<<ラビング処理配向層>>
ラビング処理配向層は、ラビング処理によって配向性が付与された配向層である。ラビング処理配向層に用いることができるポリマーの例には、例えば特開平8-338913号公報の段落0022に記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール、並びにポリ(N-メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、及びポリカーボネートが含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。ラビング処理配向層に用いることができるポリマーとしては、水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N-メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、及び変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールがより好ましく、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0131】
ラビング処理配向層を用いて液晶化合物を配向する方法においては、例えば、ラビング処理配向層のラビング処理面にコレステリック液晶層形成用組成物(液晶組成物の一形態である。)を塗布して、液晶化合物の分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向層に含まれるポリマーとコレステリック液晶層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向層に含まれるポリマーを架橋させることで、コレステリック液晶層を形成することができる。配向層の膜厚は、0.1μm~10μmの範囲にあることが好ましい。
【0132】
-ラビング処理-
コレステリック液晶層形成用組成物が塗布される、配向層、支持体、又は、そのほかの層の表面は、必要に応じてラビング処理をしてもよい。ラビング処理は、一般にはポリマーを主成分とする膜の表面を、紙又は布で一定方向に擦ることにより実施することができる。ラビング処理の一般的な方法については、例えば、「液晶便覧」(丸善社発行、平成12年10月30日)に記載されている。
【0133】
ラビング密度を変える方法としては、「液晶便覧」(丸善社発行)に記載されている方法を用いることができる。ラビング密度(L)は、下記式(A)で定量化されている。
式(A):L=Nl(1+2πrn/60v)
式(A)中、Nはラビング回数、lはラビングローラーの接触長、πは円周率、rはローラーの半径、nはローラーの回転数(rpm:revolutions per minute)、vはステージ移動速度(秒速)である。
【0134】
ラビング密度を高くするためには、ラビング回数を増やす、ラビングローラーの接触長を長くする、ローラーの半径を大きくする、ローラーの回転数を大きくする、又はステージ移動速度を遅くすればよく、一方、ラビング密度を低くするためには、この逆にすればよい。また、ラビング処理の条件としては、特許第4052558号公報の記載を参照することもできる。
【0135】
<<光配向層>>
光配向層は、光照射によって配向性が付与された配向層である。光配向層に用いられる光配向材料は、多数の文献等に記載がある。光配向材料としては、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号公報、及び特許第4151746号公報に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報、及び特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミド及び/又はアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、及び特許第4205198号公報に記載の光架橋性シラン誘導体、並びに特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報、及び特許第4162850号公報に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又はエステルが好ましい例として挙げられる。特に好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又は、エステルである。
【0136】
例えば、上記材料から形成した層に、直線偏光照射又は非偏光照射を施し、光配向層を製造する。本開示において、「直線偏光照射」とは、光配向材料に光反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光配向材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。好ましくは、光照射に用いる光のピーク波長が200nm~700nmであり、より好ましくは光のピーク波長が400nm以下の紫外光である。
【0137】
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばランプ(例えば、タングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプ、及びカーボンアークランプ)、各種のレーザー(例えば、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、及びYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザー)、発光ダイオード、及び陰極線管を挙げることができる。
【0138】
直線偏光を得る手段としては、偏光板(例えば、ヨウ素偏光板、二色色素偏光板、及びワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例えば、グラントムソンプリズム)及びブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、又は、偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルター及び波長変換素子を用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0139】
照射する光は、直線偏光の場合、配向層の上面又は下面に対して垂直又は斜めに光を照射する方法が採用される。光の入射角度は、光配向材料によって異なるが、好ましくは0°~90°(垂直)、より好ましくは40°~90°である。非偏光を利用する場合には、配向層の上面又は下面に対して斜めに非偏光を照射する。非偏光の入射角度は、好ましくは10°~80°、より好ましくは20°~60°、特に好ましくは30°~50°である。照射時間は、好ましくは1分~60分、より好ましくは1分~10分である。
【0140】
<樹脂層>
本開示に係る加飾フィルムは、基材と反射層との間に、樹脂層を有することが好ましい。例えば、反射層に圧力を印加し、凹凸構造を付与する際、樹脂層が変形することで、反射層が型として使用される凹凸に追随しやすくなる。
【0141】
樹脂層の厚みは、0.2μm~100μmであることが好ましく、0.5μm~70μmであることがより好ましく、1.0μm~50μmであることが更に好ましい。
【0142】
樹脂層の25℃における弾性率は、0.000001GPa~3GPaであることが好ましく、0.00001~1GPaであることがより好ましく、0.0001~0.5GPaであることが更に好ましい。弾性率は、ナノインデンター装置(例えば、ナノインデンターG200、KLA社製)によって測定する。
【0143】
樹脂層は、バインダー樹脂を主成分として含むことが好ましい。バインダー樹脂としては、制限されず、公知の樹脂を適用することができる。バインダー樹脂としては、所望の色を得る観点から、透明な樹脂であることが好ましく、具体的には、全光透過率が80%以上の樹脂が好ましい。全光透過率は、分光光度計(例えば、(株)島津製作所製、分光光度計UV-2100)により測定することができる。
【0144】
バインダー樹脂としては、制限されず、公知の樹脂を適用することができる。バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ウレタン樹脂、及びポリオレフィンが挙げられる。バインダー樹脂は、特定の単量体の単独重合体であってもよく、又は特定の単量体と他の単量体との共重合体であってもよい。
【0145】
バインダー樹脂は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。樹脂層中のバインダー樹脂の含有量は、成形加工性の観点から、樹脂層の全質量に対して、5質量%~70質量%であることが好ましく、10質量%~60質量%であることがより好ましく、20質量%~60質量%であることが特に好ましい。
【0146】
樹脂層として、公知の粘着剤又は接着剤を用いることもできる。
【0147】
<<粘着剤>>
粘着剤の例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤が挙げられる。また、粘着剤の例として、「「剥離紙・剥離フィルム及び粘着テープの特性評価とその制御技術」、情報機構、2004年、第2章」に記載のアクリル系粘着剤、紫外線(UV)硬化型粘着剤、及びシリコーン粘着剤が挙げられる。なお、本開示においてアクリル系粘着剤とは、(メタ)アクリルモノマーの重合体(すなわち、(メタ)アクリルポリマー)を含む粘着剤をいう。樹脂層が粘着剤を含む場合には、更に、樹脂層に粘着付与剤が含まれていてもよい。
【0148】
<<接着剤>>
接着剤としては、例えば、ウレタン樹脂接着剤、ポリエステル接着剤、アクリル樹脂接着剤、エチレン酢酸ビニル樹脂接着剤、ポリビニルアルコール接着剤、ポリアミド接着剤、及びシリコーン接着剤が挙げられる。接着強度がより高いという観点から、ウレタン樹脂接着剤又はシリコーン接着剤が好ましい。
【0149】
<<樹脂層の形成方法>>
樹脂層の形成方法は制限されない。樹脂層は、例えば、樹脂層形成用組成物を用いて形成することができる。樹脂層形成用組成物は、例えば、樹脂層の原材料を混合することによって調製することができる。樹脂層形成用組成物の塗布方法としては、例えば、液晶組成物の塗布方法と同じ方法を利用することができる。
【0150】
<<添加剤>>
樹脂層は、上記の成分以外に、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、制限されず、公知の添加剤を適用することができる。添加剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0017、及び特開2009-237362号公報の段落0060~段落0071に記載の界面活性剤、特許第4502784号公報の段落0018に記載の熱重合防止剤(重合禁止剤ともいう。好ましくはフェノチアジンが挙げられる。)、並びに特開2000-310706号公報の段落0058~段落0071に記載の添加剤が挙げられる。
【0151】
<着色層>
本開示に係る加飾フィルムは、着色層を有することが好ましい。また、ある実施形態において、加飾フィルムは、着色層をコレステリック液晶層を介して視認するための加飾フィルムであることが好ましい。着色層は、有色の(すなわち、無色透明でない)層であればよい。着色層は、不透明な着色層(好ましくは全光透過率が10%以下である着色層)であることが好ましい。また、着色層の色は、黒、灰、白、赤、橙、黄、緑、青、又は紫であってもよい。黒色の着色層であると、反射光の強度が小さく、色変化がより強調されるため、好ましい。白色の着色層であると、反射層を透過した光が着色層で反射し、補色を用いた色味変化を得られる観点で好ましい。例えば、反射層が緑色光を選択反射する場合、補色であるマゼンタ色を用いた色味が表現できる。
【0152】
また、着色層は、重合性化合物を硬化してなる層であってもよく、又は重合性化合物及び重合開始剤を含む層であってもよい。着色層は、保存性、及び、着色層と他の層との密着性の観点から、重合性化合物を硬化してなる層であることが好ましく、ウレタン結合、及び、炭素数が2又は3のアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の部分構造を有する2官能又は3官能重合性化合物を少なくとも硬化してなる層であることがより好ましい。
【0153】
<<着色剤>>
着色層は、視認性の観点から、着色剤を含むことが好ましく、耐久性の観点から、着色剤として、顔料を含むことがより好ましい。着色剤としては、特に制限はなく、目的とする色相の着色剤を適宜選択して用いることができる。着色剤としては、例えば、顔料、及び染料が挙げられ、顔料が好ましい。また、顔料は、粒子形状の顔料であることが好ましい。顔料としては、従来公知の種々の無機顔料及び有機顔料を用いることができる。
【0154】
無機顔料としては、例えば、特開2005-7765号公報の段落0015及び段落0114に記載の無機顔料が挙げられる。具体的な無機顔料としては、例えば、白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及び硫酸バリウム)、及び黒色顔料(例えば、カーボンブラック、チタンブラック、チタンカーボン、酸化鉄、及び黒鉛)が挙げられる。例えば、酸化鉄、バリウムイエロー、カドミウムレッド、及びクロムイエローのような公知の有彩色顔料も使用できる。
【0155】
有機顔料としては、例えば、特開2009-256572号公報の段落0093に記載の有機顔料が挙げられる。具体的な有機顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 177、179、224、242、254、255、264等の赤色顔料、C.I.Pigment Yellow 138、139、150、180、185等の黄色顔料、C.I.Pigment Orange 36、38、71等の橙色顔料、C.I.Pigment Green 7、36、58等の緑色顔料、C.I.Pigment Blue 15:6等の青色顔料、及びC.I.Pigment Violet 23等の紫色顔料が挙げられる。
【0156】
その他、着色層は、顔料として、光透過性及び光反射性を有する顔料(所謂、光輝性顔料)の粒子を含んでいてもよい。光輝性顔料は、着色層の形成方法が着色層を露光する工程を含む場合には、露光による硬化を妨げない範囲において用いられることが好ましい。
【0157】
着色剤は、それぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、無機顔料の粒子と有機顔料の粒子とを併用してもよい。着色層中の着色剤の含有量は、目的とする色相の発現(例えば、白化の抑制)、及び着色層の金型に対する形状追従性の維持の点から、着色層の全質量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、5質量%~50質量%であることがより好ましく、10質量%~40質量%であることが更に好ましい。ここで、本開示における「白化」とは、着色層が、マット感が付与されたような白っぽい色味を呈するように変化することを指す。
【0158】
<<重合性化合物>>
本開示において用いられる着色層は、重合性化合物を含んでもよい。重合性化合物は、重合性基を有する化合物である。
【0159】
重合性基としては、例えば、エチレン性不飽和基、及びエポキシ基が挙げられ、硬化性等の観点から、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。また、重合性基としては、ラジカル重合性基が好ましい。
【0160】
重合性化合物としては、ウレタン結合、ウレア結合、炭素数が2又は3のアルキレンオキシ基、及び、炭素数が6~12の炭化水素基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の部分構造を有する2官能又は3官能重合性化合物(以下、「特定重合性化合物」ともいう)が好ましく、ウレタン結合を部分構造に含む化合物がより好ましい。
【0161】
-ウレタン結合を有する2官能又は3官能重合性化合物-
ウレタン結合を有する2官能又は3官能重合性化合物(以下、「特定重合性化合物1」ともいう。)としては、ウレタンオリゴマーが好ましい。ウレタン結合における窒素原子は、2置換(窒素原子上の基の1つが水素原子)であっても、3置換であってもよい。また、特定重合性化合物1は、ウレタン樹脂鎖を有することが好ましい。
【0162】
ウレタンオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、脂肪族系ウレタン(メタ)アクリレート、及び芳香族系ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。詳しくは、オリゴマーハンドブック(古川淳二監修、(株)化学工業日報社)を参照することができ、ここに記載のウレタンオリゴマーは、目的に応じて適宜選択し、着色層の形成に用いることができる。
【0163】
特定重合性化合物1の一種であるウレタンオリゴマーの分子量は、800~2,000であることが好ましく、1,000~2,000であることがより好ましい。
【0164】
特定重合性化合物1の一種であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、市販品を用いてもよい。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの市販品としては、例えば、新中村化学工業(株)製のU-2PPA、及びUA-122P;サートマー・ジャパン(株)製のCN964A85、CN964、CN959、CN962、CN963J85、CN965、CN982B88、CN981、CN983、CN991、CN991NS、CN996、CN996NS、CN9002、CN9007、CN9178、及びCN9893;並びにダイセル・オルネクス(株)製のEBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL284、EBECRYL4858、EBECRYL210、EBECRYL8402、EBECRYL8804、及びEBECRYL8800-20R(以上、商品名)が挙げられる。なお、「EBECRYL」はいずれも登録商標である。
【0165】
<<分散剤>>
着色層に含まれる顔料の分散性を向上する観点から、着色層は、分散剤を含有してもよい。着色層が分散剤を含むことにより、形成される着色層における顔料の分散性が向上し、得られる加飾フィルムにおける色相の均一化が図れる。
【0166】
分散剤としては、顔料の種類、形状などに応じて適宜選択して用いることができるが、高分子分散剤であることが好ましい。高分子分散剤としては、例えば、シリコーンポリマー、アクリルポリマー、及びポリエステルポリマーが挙げられる。
【0167】
加飾フィルムに耐熱性を付与したい場合には、例えば、分散剤として、グラフト型シリコーンポリマー等のシリコーンポリマーを用いることが好適である。
【0168】
分散剤の重量平均分子量は、1,000~5,000,000であることが好ましく、2,000~3,000,000であることがより好ましく、2,500~3,000,000であることが特に好ましい。重量平均分子量が1,000以上であると、顔料の分散性がより向上する。
【0169】
分散剤としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、BASFジャパン社のEFKA 4300(アクリル系高分子分散剤)、花王(株)製のホモゲノールL-18、ホモゲノールL-95、及びホモゲノールL-100、日本ルーブリゾール(株)製のパース20000、及びソルスパース24000、並びにビックケミー・ジャパン(株)製のDISPERBYK-110、DISPERBYK-164、DISPERBYK-180、及びDISPERBYK-182が挙げられる。なお、「ホモゲノール」、「ソルスパース」、及び「DISPERBYK」はいずれも登録商標である。
【0170】
着色層が分散剤を含む場合、分散剤は、1種のみの分散剤を含んでもよく、2種以上の分散剤を含んでもよい。分散剤の含有量は、着色剤100質量部に対して、1質量部~30質量部であることが好ましい。
【0171】
<<重合開始剤>>
着色層は、重合開始剤を含んでもよい。重合開始剤としては、露光に対する感度を高める点から、光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落0031~段落0042に記載の重合開始剤、及び特開2015-014783号公報の段落0064~段落0081に記載のオキシム系重合開始剤を用いることができる。
【0172】
具体的な光重合開始剤としては、例えば、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(例えば、IRGACURE(登録商標)OXE-01、BASF社製)、[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-オン-1-(O-アセチルオキシム)(例えば、IRGACURE(登録商標)OXE-02、BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(例えば、IRGACURE(登録商標)379EG、BASF社製)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(例えば、IRGACURE(登録商標)907、BASF社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(例えば、IRGACURE(登録商標)127、BASF社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1(例えば、IRGACURE(登録商標)369、BASF社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(例えば、IRGACURE(登録商標)1173、BASF社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、IRGACURE(登録商標)184、BASF社製)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(例えば、IRGACURE(登録商標)651、BASF社製)、オキシムエステル系重合開始剤である商品名:Lunar 6(DKSHジャパン(株)製)、2,4-ジエチルチオキサントン(例えば、カヤキュアDETX-S、日本化薬(株)製)、並びにフルオレンオキシム系重合開始剤であるDFI-091、及びDFI-020(ともにダイトーケミックス社製)が挙げられる。
【0173】
中でも、トリクロロメチルトリアジン系化合物などのハロゲン含有重合開始剤以外の他の開始剤を用いることが硬化感度を高める観点から好ましく、α-アミノアルキルフェノン系化合物、α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物などのオキシム系重合開始剤がより好ましい。
【0174】
重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対し、0.1質量部~15質量部であることが好ましく、0.5質量部~10質量部であることがより好ましい。
【0175】
<<バインダー樹脂>>
着色層は、着色層の硬化収縮を低減させる等の観点から、バインダー樹脂を含むことが好ましい。バインダー樹脂としては、特に制限されず、公知の樹脂を適宜選択できる。バインダー樹脂としては、目的とする色相を得る点から、透明な樹脂であることが好ましく、具体的には、全光透過率が80%以上の樹脂が好ましい。全光透過率は、分光光度計(例えば、(株)島津製作所製、分光光度計UV-2100)により測定することができる。
【0176】
バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、及び、オレフィン樹脂が挙げられる。中でも、透明性の観点から、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、又は、ポリエステル樹脂が好ましく、アクリル樹脂、又は、シリコーン樹脂がより好ましい。更に、耐熱性の観点からは、シリコーン樹脂が好ましい。
【0177】
本開示において「アクリル樹脂」とは、(メタ)アクリロイル基を有するアクリルモノマーに由来する構成単位を含む樹脂を指す。(メタ)アクリロイル基とは、メタクリロイル基及びアクリロイル基を包含する概念である。アクリル樹脂には、例えば、アクリル酸の単独重合体、メタクリル酸の単独重合体、アクリル酸エステルの単独重合体、メタクリル酸エステルの単独重合体、アクリル酸と他のモノマーとの共重合体、メタクリル酸と他のモノマーとの共重合体、アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体、メタクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体、及びウレタン骨格を側鎖に有するウレタン変性の共重合体に包含される。アクリル樹脂としては、例えば、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体のグリシジルメタクリレート付加物、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸のランダム共重合体、アリルメタクリレート/メタクリル酸の共重合体、及びベンジルメタクリレート/メタクリル酸/ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体が挙げられる。
【0178】
シリコーン樹脂としては、公知のシリコーン樹脂を用いることができ、例えば、メチル系ストレートシリコーン樹脂、メチルフェニル系ストレートシリコーン樹脂、アクリル樹脂変性シリコーン樹脂、エステル樹脂変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂変性シリコーン樹脂、アルキッド樹脂変性シリコーン樹脂及びゴム系のシリコーン樹脂が挙げられる。中でも、メチル系ストレートシリコーン樹脂、メチルフェニル系ストレートシリコーン樹脂、アクリル樹脂変性シリコーン樹脂、又は、ゴム系のシリコーン樹脂が好ましく、メチル系ストレートシリコーン樹脂、メチルフェニル系ストレートシリコーン樹脂、又は、ゴム系のシリコーン樹脂がより好ましい。
【0179】
シリコーン樹脂は市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製のKR-300、KR-311、KR-251、X-40-2406M、及びKR-282が挙げられる。
【0180】
ポリエステル樹脂としては、例えば、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルが挙げられる。線状飽和ポリエステルの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、及びポリエチレン-2,6-ナフタレートが挙げられる。
【0181】
バインダー樹脂の含有量は、着色層の硬化収縮を低減させる点から、着色層の全質量に対して、5質量%~70質量%が好ましく、10質量%~60質量%がより好ましく、20質量%以上60質量%が更に好ましい。また、特定重合性化合物を含む重合性化合物の総量に対するバインダー樹脂の総量の割合、即ち、重合性化合物の総量/バインダー樹脂の総量は、0.3~1.5であることが好ましく、0.5~1.0であることがより好ましい。
【0182】
<<その他の成分>>
着色層は、上記の成分以外にも、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、公知の添加剤を用いることができ、例えば、特許第4502784号公報の段落0017、及び特開2009-237362号公報の段落0060~段落0071に記載の界面活性剤、特許第4502784号公報の段落0018に記載の熱重合防止剤(重合禁止剤ともいう。好ましくはフェノチアジン)、更に、特開2000-310706号公報の段落0058~0071に記載のその他の添加剤が挙げられる。
【0183】
<<着色層の形成>>
着色層の形成方法は、特に制限はないが、着色層形成用組成物を用いて形成することが好ましい。着色層形成用組成物は、着色剤を含むことが好ましく、着色剤及び有機溶剤を含むことがより好ましい。また、着色層形成用組成物は、上述した他の成分を更に含んでもよい。着色層形成用組成物は、例えば、有機溶剤と、着色剤等の着色層に含まれる成分と、を混合することにより調製することができる。着色層に含まれる成分の含有量については、着色層の全質量に対する含有量(質量%)として記載されているが、これらの成分が着色層形成用組成物に含まれる場合、その含有量を、着色層形成用組成物の全固形分に対する含有量(質量%)と読み替えるものとする。
【0184】
また、着色層形成用組成物が着色剤として顔料を含む場合、予め、顔料とその分散剤とを含む顔料分散液を調製しておき、この顔料分散液を用いて、着色層形成用組成物を調製することが、顔料の均一分散性、及び、分散安定性をより高める観点から好ましい。
【0185】
着色層形成用組成物は、上記方法により予め調製したものを使用してもよいし、市販品等を使用してもよいし、塗布の直前に着色層形成用組成物を調製してもよい。
【0186】
-有機溶剤-
有機溶剤としては、通常用いられる有機溶剤を特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類等の有機溶剤が挙げられる。また、米国特許出願公開第2005/282073号明細書の段落0054、及び段落0055に記載のSolventと同様のメチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、メチルイソブチルケトン、乳酸エチル、乳酸メチル等も、着色層形成用組成物における有機溶剤として好適に用いることができる。中でも、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(エチルカルビトールアセテート)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ブチルカルビトールアセテート)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン等が着色層形成用組成物における有機溶剤として好ましく用いられる。これらの有機溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、有機溶剤の含有量は、特に制限はないが、着色層形成用組成物(例えば、塗布液)の全質量に対して、5質量%~90質量%であることが好ましく、30質量%~70質量%であることがより好ましい。
【0187】
<接着層>
本開示に係る加飾フィルムは、加飾フィルムを貼りつける筐体への密着性、又は層間の密着性の観点から、接着層を有することが好ましい。接着層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。接着層としては、例えば、公知の粘着剤又は接着剤を含む層が挙げられる。
【0188】
<<粘着剤>>
粘着剤の例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤が挙げられる。また、粘着剤の例として、「剥離紙・剥離フィルム及び粘着テープの特性評価とその制御技術」、情報機構、2004年、第2章に記載のアクリル系粘着剤、紫外線(UV)硬化型粘着剤、及びシリコーン粘着剤が挙げられる。接着層が粘着剤を含む場合には、更に、接着層に粘着付与剤が含まれていてもよい。
【0189】
<<接着剤>>
接着剤としては、例えば、ウレタン樹脂接着剤、ポリエステル接着剤、アクリル樹脂接着剤、エチレン酢酸ビニル樹脂接着剤、ポリビニルアルコール接着剤、ポリアミド接着剤、及びシリコーン接着剤が挙げられる。接着強度がより高いという観点から、ウレタン樹脂接着剤又はシリコーン接着剤が好ましい。
【0190】
ある実施形態にかかる加飾フィルムにおいては、着色層の厚み(T2)、反射層(好ましくはコレステリック液晶層)の厚み(T3)、及び接着層の厚み(T4)の関係が、T4<10(T2+T3)を満足することが好ましい。上記関係を満たすことで、薄膜で、光輝性、及び視認性に優れる加飾フィルムが得られる。より好ましくは、T4<8(T2+T3)、更に好ましくは、T4<5(T2+T3)、特に好ましくは、T4<3(T2+T3)である。
【0191】
<<接着層の形成方法>>
接着層の形成方法としては、特に限定されず、接着層が形成された保護フィルムを、接着層と対象物(例えば、反射層、配向層、又は着色層)とが接するようにラミネートする方法、接着層を単独で対象物(例えば、反射層、配向層、又は着色層)に接するようにラミネートする方法、及び粘着剤又は接着剤を含む組成物を対象物(例えば、反射層、配向層、又は着色層)の上に塗布する方法が挙げられる。ラミネート方法としては、公知の方法を利用することができる。塗布方法としては、液晶組成物の塗布方法と同様の方法が好ましく挙げられる。
【0192】
加飾フィルムにおける接着層の厚みとしては、粘着力及びハンドリング性の両立の点で、2μm~40μmが好ましく、3μm~25μmがより好ましく、4μm~20μmが更に好ましく、4μm~15μmが特に好ましい。
【0193】
<その他の層>
本開示に係る加飾フィルムは、上述した以外のその他の層を有していてもよい。その他の層としては、例えば、加飾フィルムにおいて公知の層である、自己修復層、帯電防止層、防汚層、防電磁波層、及び導電性層が挙げられる。本開示に係る加飾フィルムにおけるその他の層は公知の方法により形成することができる。例えば、これらの層に含まれる成分を含む組成物(層形成用組成物)を層状に付与し、乾燥する方法等が挙げられる。
【0194】
<<カバーフィルム>>
本開示に係る加飾フィルムは、基材を基準に反射層側の最外層として、汚れの防止等を目的として、カバーフィルムを有していてもよい。カバーフィルムとしては、可撓性を有し、剥離性が良好な材料であれば特に制限なく使用され、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルムが挙げられる。カバーフィルムは、例えば、対象物(例えば、反射層)に貼り付けることによって加飾フィルムに導入される。カバーフィルムの貼り付け方法としては、特に制限されず、公知の貼り付け方法が挙げられ、例えば、カバーフィルムを対象物(例えば、反射層)の上にラミネートする方法が挙げられる。
【0195】
<加飾フィルムの層構成>
ここで、加飾フィルムの層の構成の例について図1及び図2をそれぞれ用いて説明する。ただし、加飾フィルムの層構成は、各図に示される層構成に制限されるものではない。図1は、本開示に係る加飾フィルムの層構成の一例を示す概略断面図である。図1に示される加飾フィルム20は、基材22と、基材22上に着色層24と、着色層24上に配向層26と、配向層26上にコレステリック液晶層(反射層)28と、コレステリック液晶層28上に粘着層30と、を有する。
【0196】
図2は、本開示に係る加飾フィルムの層構成の一例を示す概略断面図である。図2に示される加飾フィルム50は、着色層32と、着色層32上に基材34と、基材34上に樹脂層36と、樹脂層36上に配向層38と、配向層38上にコレステリック液晶層(反射層)40と、を有する。
【0197】
<加飾フィルムの製造方法>
本開示に係る加飾フィルムの製造方法は制限されない。例えば、基材上に反射層及び必要に応じて反射層以外の層を設けることで、少なくとも基材と反射層とを有する加飾フィルムを製造することができる。各層の形成方法としては、既述の方法を利用することができる。2つ以上の層を含む複数の積層体を事前に製造し、複数の積層体を重ね合わせて製造してもよい。
【0198】
(加飾方法、及び、加飾物)
本開示に係る加飾方法は、本開示に係る加飾フィルムを用いた加飾方法であれば、特に制限はない。本開示に係る加飾方法は、例えば、加飾フィルムの反射層側の面と、凸構造を有する透明体の凸面とをラミネート又は成型加工プロセスにより、貼り付ける工程を含むことが好ましい。本開示に係る加飾物は、本開示に係る加飾フィルムを用いた加飾物であり、本開示に係る加飾方法により得られた加飾物であることが好ましい。
【0199】
加飾フィルムの反射層側の面と、凸構造を有する透明体の凸面とを貼り付ける工程において、加飾フィルムの反射層を有する面の表面、及び/又は、凸構造を有する透明体の凸面を、事前に活性化処理することが好ましい。事前活性化処理により、密着性が向上する。活性化処理の例としては、コロナ処理、プラズマ処理、及びシランカップリング材処理が挙げられる。コロナ処理が生産プロセス簡便性の観点で、最も好ましい。
【0200】
(加飾成型体)
本開示に係る加飾成型体は、本開示に係る加飾フィルム又はその成型物を備える。加飾成型体は、加飾物の一形態である。上記によれば、奥行き感に優れた視認性を有する加飾成型体が提供される。
また、本開示に係る加飾成型体における本開示に係る加飾フィルムの成型物は、加飾成型体の成型の際に一緒に成型した成型物であっても、別途成型した成型物であってもよい。
【0201】
<基材>
本開示に係る加飾成型体は、基材を含む。基材としては、例えば、上記「加飾フィルム」の項で説明した基材を用いることができる。基材の好ましい態様は、上記「加飾フィルム」の項で説明した基材の好ましい態様と同じである。基材は、凸構造を有してもよい。
【0202】
<反射層>
本開示に係る加飾成型体は、反射層を含む。反射層は、凸構造を有する。反射層としては、上記「加飾フィルム」の項で説明した反射層を用いることができる。反射層の好ましい態様は、上記「加飾フィルム」の項で説明した反射層の好ましい態様と同じである。ある実施形態において、反射層は、コレステリック液晶を含む層であることが好ましい。
【0203】
<樹脂層>
本開示に係る加飾成型体は、基材と反射層との間に樹脂層を含むことが好ましい。樹脂層は、特に反射層における凸構造の形成に寄与する。例えば、樹脂層によれば、反射層に凸構造を付与するための型として使用される凸構造を有する表面(すなわち、凸面)に対する反射層の追従性を向上することができる。この結果、反射層に対して所望の凸構造を容易に付与することができる。
【0204】
樹脂層としては、上記「加飾フィルム」の項で説明した樹脂層を用いることができる。樹脂層の好ましい態様は、上記「加飾フィルム」の項で説明した樹脂層の好ましい態様と同じである。樹脂層は、凸構造を有してもよい。樹脂層は、反射層の凸構造と同じ凸構造を有することが好ましい。
【0205】
樹脂層の厚みは、反射層の凸構造の深さ(高さ)に対して、0.5倍~10倍であることが好ましく、0.8倍~8倍であることがより好ましく、1倍~5倍であることが特に好ましい。
【0206】
<着色層>
本開示に係る加飾成型体は、着色層を含むことが好ましい。着色層としては、上記「加飾フィルム」の項で説明した着色層を用いることができる。着色層の好ましい態様は、上記「加飾フィルム」の項で説明した着色層の好ましい態様と同じである。着色層は、凸構造を有してもよい。
【0207】
着色層の位置は制限されない。ある実施形態において、着色層は、基材と反射層との間に配置されていることが好ましい。すなわち、ある実施形態に係る加飾成型体は、基材と、着色層と、反射層と、をこの順で含むことが好ましい。ある実施形態において、着色層は、基材の反射層とは反対側に配置されていることが好ましい。すなわち、ある実施形態に係る加飾成型体は、着色層と、基材と、反射層と、をこの順で含むことが好ましい。
【0208】
<配向層>
本開示に係る加飾成型体は、配向層を含んでもよい。配向層は、反射層(好ましくはコレステリック液晶層)に接していることが好ましい。配向層としては、上記「加飾フィルム」の項で説明した配向層を用いることができる。配向層の好ましい態様は、上記「加飾フィルム」の項で説明した配向層の好ましい態様と同じである。配向層は、凸構造を有してもよい。
【0209】
<接着層>
本開示に係る加飾成型体は、接着層を含んでもよい。接着層は、加飾成型体の表面に配置されてもよい。接着層は、加飾成型体に含まれる任意の2つの層の間に配置されてもよい。接着層としては、上記「加飾フィルム」の項で説明した接着層を用いることができる。接着層の好ましい態様は、上記「加飾フィルム」の項で説明した接着層の好ましい態様と同じである。接着層は、凸構造を有してもよい。
【0210】
<凸構造を有する透明体>
本開示に係る加飾成型体は、凸構造を有する透明体を含むことが好ましい。中でも、樹脂基材と、樹脂基材の少なくとも一方の面に設けられた硬化性組成物の硬化物によって、凸形状が形成されたシートを有することが好ましい。
【0211】
(樹脂基材)
樹脂基材としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等のシート又はフィルムが挙げられる。
アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene Terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN:Polyethylene Naphthalate)等が挙げられる。
【0212】
樹脂基材の厚みは、特に制限はなく、50μm以上300μm以下の範囲が好ましく、高温で均一に成型(賦形)する場合、50μm以上200μm以下の範囲がより好ましい。上記範囲であると、樹脂基材が破れにくく、成型加工時における取扱い中(例えば、運搬中)に割れが発生しにくく、3次元成型時にも割れにくい。
【0213】
樹脂基材は、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、三菱レイヨン(株)製のアクリル樹脂フィルム(アクリプレンHBS010P(PMMAフィルム)、厚み:125μm)、東レ(株)製のポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(ルミラーS10、厚み:100μm)、帝人化成(株)製のポリカーボネート樹脂フィルム(ユーピロンH-3000、厚み125μm)等を用いることができる。
【0214】
凸構造を有する透明体は、硬化性樹脂組成物を準備する工程(組成物準備工程)と、光若しくは熱硬化性組成物を活性エネルギー線の照射、又は、加熱により硬化し、成型用シートを作製する工程(シート作製工程)、及び、金型又は木型等の型を用いて、硬化性組成物を所望の形状に成型する工程を含むことが好ましい。
【0215】
具体的には、例えば、所望とする凸形状に加工された金型を用意し、金型に硬化性組成物を流し込み、必要に応じて乾燥させた後、硬化性組成物を硬化させてもよい。これにより、目的とする形状に成型された成型物が安定的に得られる。
【0216】
次に、活性エネルギー線が照射されることでラジカルが発生し、重合性化合物の重合反応が進行することによって硬化する。これにより、硬化性組成物の硬化物である凸形状が形成される。
凸形状の成型に当たり、硬化性組成物を硬化させる前にあらかじめ樹脂基材を硬化性組成物と接触させた後、硬化性組成物の硬化を行うようにしてもよい。樹脂基材と硬化性組成物とを接触させた状態で硬化させることで、硬化収縮による密着性の向上がより期待でき、組成に由来する密着効果に加え、樹脂基材に対する密着性の向上がより効果的に図られる。
【0217】
凸構造を形成するための金型は、切削や、エッチングなど、公知の方法によって作製できる。本開示においては、視野角によって反射率変化に富む視認性が得やすいことから、切削により作製した金型を用いることが好ましい。
【0218】
<その他の層>
本開示に係る加飾成型体は、上記した層以外のその他の層を含んでもよい。その他の層としては、例えば、上記「加飾フィルム」の項で説明したその他の層を用いることができる。
【0219】
本開示に係る加飾成型体は、凸構造を有する表面(すなわち、凸面)を有する透明体を含んでもよい。ある実施形態において、加飾成型体は、基材と、反射層と、凹凸構造を有する表面を有する透明体と、をこの順で含むことが好ましい。使用者は、例えば、透明体から基材へ向かう方向に加飾成型体を観察することで、光輝性が高く、視認方向によらず均一な色味を観察することができる。透明体は、反射層(好ましくはコレステリック液晶層)に接していることが好ましい。透明体は、他の層(例えば、配向層)を介して反射層に接してもよい。透明体の凸面は、反射層を向いていることが好ましい。透明体としては、例えば、透明な樹脂、及びガラスが挙げられる。
【0220】
<加飾成型体の層構成>
加飾成型体の層構成の例について、図3図4、及び図5をそれぞれ用いて説明する。ただし、加飾成型体の層構成は、各図に示される層構成に制限されるものではない。
【0221】
図3は、本開示に係る加飾成型体一例を示す概略断面図である。図3に示される加飾成型体70は、基材22と、着色層24と、配向層26と、コレステリック液晶層(反射層)28と、接着層30と、線状凸構造を有する透明体60と、をこの順に有する。透明体60は、透明体の一形態である。
【0222】
図4は、本開示に係る加飾成型体の一例を示す概略断面図である。図4に示される加飾成型体80は、着色層32と、基材34と、樹脂層36と、配向層38と、コレステリック液晶層(反射層)40と、線状凸構造を有する透明体60と、をこの順に有する。
【0223】
図5は、本開示に係る加飾成型体の一例を示す概略断面図である。図5に示される加飾成型体90は、着色層32と、基材34と、樹脂層36と、コレステリック液晶層(反射層)40と、配向層38と、線状凸構造を有する透明体60と、をこの順に有する。
【0224】
図10は、本開示に係るディスプレイ用加飾成型体の一例を示す概略断面図である。図10に示される加飾成型体120は、1/4波長板の位相差層110と、基材34と、樹脂層36と、コレステリック液晶層(反射層)40と、配向層38と、線状凸構造を有する透明体60と、1/4波長板の位相差層112と、粘着層114と、液晶軸対象偏光コンバーター116とをこの順に有する。
【0225】
<加飾成型体の製造方法>
本開示に係る加飾成型体の製造方法は、本開示に係る加飾フィルムを用いる方法であることが好ましい。本開示に係る加飾成型体の製造方法は、加飾フィルムの反射層側に凸構造を有する透明体に貼り付ける工程が好ましい。本開示に係る加飾フィルムは、立体成型性にも優れるため、加飾成型体の製造に好適に用いることができ、例えば、熱ラミネート、立体成型、及び、インサート成型よりなる群から選ばれた少なくとも1種の成型により加飾成型体を製造する際に特に好適である。また、本開示に係る加飾フィルムによれば、成型後の成型体に張り付けることにより加飾成型体とすることも可能である。加飾成型体の作製に際して、本開示に係る加飾フィルムを用いることで、より複雑な形状、より小さな形状等の金型にも適用可能となり、加飾成型体の用途の幅を広げることができる。加飾フィルムを用いて得られる加飾成型体の層構成は、加飾フィルムの層構成が反映される。言い換えると、加飾フィルムを用いて得られる加飾成型体は、加飾フィルムに含まれる各層を含む。
【0226】
また、成型としては、立体成型も好適に挙げられる。立体成型としては、例えば、熱成型、真空成型、圧空成型、及び真空圧空成型が好適に挙げられる。真空成型の方法としては、特に制限されるものではないが、立体成型を、真空下の加熱した状態で行う方法が好ましい。真空とは、室内を減圧し、100Pa以下の真空度とした状態を指す。立体成型する際の温度は、用いる成型用基材に応じ適宜設定すればよいが、60℃以上の温度域であることが好ましく、80℃以上の温度域であることがより好ましく、100℃以上の温度域であることが更に好ましい。立体成型する際の温度の上限は、200℃であることが好ましい。立体成型する際の温度とは、立体成型に供される成型用基材の温度を指し、成型用基材の表面に熱電対を付すことで測定される。
【0227】
真空成型は、成型分野で広く知られている真空成型技術を利用して行うことができ、例えば、日本製図器工業(株)製のFormech508FSを用いて真空成型してもよい。
【0228】
以下、加飾成型体の製造方法について具体的に説明する。本開示に係る加飾成型体の製造方法は、基材と、反射層と、を少なくとも有する加飾フィルムを用意する工程と、凸構造を有する表面に上記反射層を接触させ、上記反射層に0.01MPa以上の圧力を印加し、上記反射層に凸構造を付与する工程と、を含むことが好ましい。凸構造を有する表面は、反射層に凸構造を付与するための型として機能する。凹凸構造を有する表面に反射層を接触させて反射層を加圧することで、凸構造を有する表面に沿って反射層が変形する。この結果、反射層に凸構造が付与される。
【0229】
加飾フィルムの層構成は、目的とする加飾成型体の層構成に応じて決定すればよい。例えば、基材と、反射層と、上記基材と上記反射層との間に樹脂層と、を有する加飾フィルムを用いることで、上記基材と、上記樹脂層と、上記反射層と、をこの順で含む加飾成型体が得られる。
【0230】
凸構造を有する表面は、種々の物品の外側の面によって画定される。凸構造を有する表面は、例えば、金型の表面であってもよく、又は金型以外の物品の表面であってもよい。
【0231】
凸構造を有する表面に反射層を接触させる過程においては、凸構造を有する表面に反射層を近づけてもよく、又は反射層に凸構造を有する表面を近づけてもよい。他の層(例えば、配向層)を介して、凸構造を有する表面に反射層を接触させてもよい。
【0232】
反射層に印加される圧力は、0.1MPa以上であることが好ましく、0.3MPa以上であることがより好ましく、0.5MPa以上であることが特に好ましい。反射層に印加される圧力の上限は制限されない。反射層に印加される圧力の上限は、例えば、反射層の加工性、及び加飾フィルムの厚さに応じて決定すればよい。反射層に印加される圧力は、10MPa以下であることが好ましく、3MPa以下であることがより好ましく、1MPa以下であることが特に好ましい。
【0233】
反射層に圧力を印加する方法としては、制限されず、公知の方法を利用することができる。圧力の印加方法としては、例えば、圧縮空気を用いる方法、及びプレス機械を用いる方法が挙げられる。
【0234】
加飾成型体の製造方法においては、凸構造を有する表面を有する物品として、例えば、上記した凸構造を有する表面(すなわち、凸面)を有する透明体を用いてもよい。例えば、ある実施形態に係る加飾成型体の製造方法は、基材と、選択反射波長の中心波長を300nm以上1,500nm以下の範囲に有する反射層と、を少なくとも有する加飾フィルムを用意する工程と、凸構造を有する表面を有する透明体と上記加飾フィルムとを重ね合わせることで上記凸構造を有する上記表面に上記反射層を接触させ、上記反射層に対して0.01Mpa以上の圧力を印加し、上記反射層に凸構造を付与する工程と、を含むことが好ましい。反射層に凸構造を付与した後、透明体は除去されても除去されなくてもよい。透明体が除去されない場合、透明体は、例えば、加飾成型体の外側の層として配置される。
【0235】
<用途>
上記のようにして得られた加飾成型体の用途としては、特に制限はなく、加飾成型体は種々の物品に用いることができる、加飾成型体の用途としては、例えば、電子デバイス(例えば、ウエアラブルデバイス、及びスマートフォン)の内外装、自動車の内外装、電気製品の内外装、及び包装容器が特に好適に挙げられる。
【0236】
(加飾パネル)
本開示に係る加飾パネルは、本開示に係る加飾フィルム又はその成型物を備え、本開示に係る加飾フィルムを備えることが好ましい。
また、本開示に係る加飾パネルは、本開示に係る加飾成型体を含むことが好ましい。加飾パネルにおける加飾成型体は、上記「加飾成型体」の項で説明した加飾成型体と同義である。
【0237】
加飾パネルは、例えば、加飾成型体の反射層側の表面と加飾パネルの表層部となる部材の表面とを接着させることで製造することができる。加飾パネルの表層部となる部材としては、例えば、ガラスパネルが挙げられる。加飾成型体と加飾パネルの表層部となる部材との接着には、例えば、上記した接着層を用いることができる。加飾成型体と他の部材とを組み合わせず、加飾成型体を単独で加飾パネルとして用いてもよい。
【0238】
加飾パネルの層構成の例について、図6を用いて説明する。ただし、加飾パネルの層構成は、図6に示される層構成に制限されるものではない。図6は、本開示に係る加飾パネルの一例を示す概略断面図である。図6に示される加飾パネル100は、着色層32と、基材34と、樹脂層36と、コレステリック液晶層(反射層)40と、配向層38と、凸構造を有する透明体60と、接着層42と、ガラスパネル44と、をこの順に有する。
【0239】
加飾パネルの形状は制限されない。加飾パネルの形状は、例えば、用途に応じて決定すればよい。加飾パネルは、例えば、平板状であってもよい。また、加飾パネルは、曲面を有してもよい。
【0240】
加飾パネルは、例えば、種々の物品(例えば、電子デバイス、自動車、及び電気製品)の内外装に用いることができる。例えば、図6に示される加飾パネル100を電子デバイスの筐体として用いる場合、筐体の内側から外側に向かって、着色層32、基材34、樹脂層36、コレステリック液晶層(反射層)40、配向層38、凸構造を有する透明体60、接着層42、及びガラスパネル44を配置することが好ましい。使用者は、ガラスパネル44から着色層32へ向かう方向に加飾パネル100を観察することで、光輝性が高く、視認方向によらず均一な色味を観察することができる。
【0241】
(電子デバイス)
本開示に係る電子デバイスは、本開示に係る加飾パネルを備える。電子デバイスとしては、例えば、ウエアラブルデバイス、及びスマートフォンが挙げられる。電子デバイスにおける加飾パネルは、上記「加飾パネル」の項で説明した加飾パネルと同義である。加飾パネルは、電子デバイスの筐体として用いられることが好ましい。
【0242】
電子デバイスの製造方法は、制限されず、公知の方法を利用することができる。電子デバイスの筐体として加飾パネルを用いる場合、加飾パネルを含む筐体の内部に電子デバイスの各種電子部品を収容することで、加飾パネルを含む電子デバイスを製造することができる。
【実施例0243】
以下に実施例を挙げて本開示を更に具体的に説明する。本開示の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0244】
(実施例1)
<支持体の準備>
支持体として、コスモシャインA4100(PET、厚さ:50μm、易接着層を片面に有するフィルム、東洋紡(株)製、A4サイズ)を2枚準備した。以下、2つの支持体を、それぞれ、支持体1A、及び支持体1Bという。
【0245】
〔配向層形成用塗布液1の組成〕
・下記に示す変性ポリビニルアルコール:28質量部
・クエン酸エステル(AS3、三共化学(株)製):1.2質量部
・光重合開始剤(イルガキュア2959、BASF社製):0.84質量部
・グルタルアルデヒド:2.8質量部
・水:699質量部
・メタノール:226質量部
【0246】
・変性ポリビニルアルコール(下記化合物、各構成単位の右下の数字は、モル比を表す。)
【0247】
【化10】
【0248】
<積層体1-1の作製>
上記支持体1Aの易接着層が形成されていない面に、配向層形成用塗布液1をワイヤーバーコーターで塗布した。その後、塗布された配向層形成用塗布液1を100℃で120秒間乾燥し、層厚が0.5μmの配向層1を作製した。
【0249】
上記作製した配向層1に対して、配向層1の短辺方向を基準に反時計回りに31.5°回転させた方向にラビング処理(レーヨン布、圧力:0.1kgf(0.98N)、回転数:1,000rpm(revolutions per minute)、搬送速度:10m/min、回数:1往復)を施した。
【0250】
<コレステリック液晶層1の形成>
上記作製した配向層1に対して、配向層1の短辺方向を基準に反時計回りに31.5°回転させた方向にラビング処理(レーヨン布、圧力:0.1kgf(0.98N)、回転数:1,000rpm(revolutions per minute)、搬送速度:10m/分、回数:1往復)を施した。下記に示すコレステリック液晶層形成用塗布液1に含まれる成分を、25℃に保温された容器中にて、撹拌、溶解させ、コレステリック液晶層形成用塗布液1(液晶組成物1)を調製した。
【0251】
〔コレステリック液晶層形成用塗布液1の組成〕
・メチルエチルケトン:150.6質量部
・液晶化合物1(棒状液晶化合物):92質量部
・光重合開始剤A(IRGACURE 907、BASF社製):0.50質量部
・カイラル剤A:4.00質量部
・カイラル剤B:4.00質量部
・下記界面活性剤F1:0.027質量部
【0252】
液晶化合物1(単官能):下記棒状液晶化合物。なお、ラジカル重合系の場合、オキセタニル基(カチオン重合性官能基)がついていても、アクリロキシ基(ラジカル重合性基)が1つのみ有するため、単官能と定義する。カチオン重合系であっても同様である。
【0253】
【化11】
【0254】
カイラル剤A(2官能):下記化合物
【0255】
【化12】
【0256】
カイラル剤B(0官能):下記化合物。なお、下記化合物中、Buはn-ブチル基を表す。
【0257】
【化13】
【0258】
界面活性剤F1:下記化合物
【0259】
【化14】
【0260】
上記、ラビング処理された配向層1の表面に、調製したコレステリック液晶層形成用塗布液1を、ワイヤーバーコーターを用いて塗布し、85℃で120秒間乾燥した。形成された積層体のコレステリック液晶層の表面に対して、露光量70mJ/cm(i線)で全面露光することで、層厚が3.0μmのコレステリック液晶層1を形成することで積層体1-1を形成した。積層体1-1は、支持体1Aと、配向層1と、コレステリック液晶層1と、をこの順で有する。
【0261】
<積層体1-2の作製>
別に用意した、コスモシャインA4100(すなわち、支持体1B)の易接着層が形成された面に、アクリル系粘着剤(SKダインSG-50Y、綜研化学(株)製)を、コンマコーターを用いて塗布し、120℃で2分間乾燥し、層厚が20μmの樹脂層1(接着層)を形成することで、積層体1-2を形成した。積層体1-2は、支持体1Bと、樹脂層1と、を有する。
【0262】
<積層体1-3の作製>
上記、樹脂層1とコレステリック液晶層1とが接するように、積層体1-1と、積層体1-2とをラミネーターで貼り合わせた。積層体1-1側のPETフィルム(すなわち、支持体1A)を剥離することで、支持体1B/樹脂層1/コレステリック液晶層1/配向層1がこの順で積層された、積層体1-3を得た。
【0263】
<黒色顔料分散液の調製>
以下の黒色顔料分散液の組成となるようにカーボンブラック、分散剤、ポリマー及び溶剤を混合し、3本ロールとビーズミルを用いて黒色顔料分散液を得た。なお、マイクロトラックFRA(ハネウェル社)を用いて測定したカーボンブラックの平均粒子径は、163nmであった。
【0264】
-黒色顔料分散液の組成-
・特許第5320652号公報の段落0036~段落0042の記載に従って作製した樹脂被覆カーボンブラック:20.0質量%
・分散剤1(下記構造):1.0質量%
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28(モル比)のランダム共重合体物、重量平均分子量:3.0万):6.0質量%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:73.0質量%
【0265】
【化15】
【0266】
<着色層形成用塗布液1の組成>
・黒色顔料分散液:30質量部
・重合性化合物1:サートマー・ジャパン(株)製、ウレタンアクリレートオリゴマー、CN-996NS:25質量部
・バインダー樹脂3:ウレタン変性アクリルポリマー(ポリオール含有)35質量%酢酸エチル/エチルメチルケトン/イソプロピルアルコール溶液:25質量部
・光重合開始剤(イルガキュア2959、BASF社製):1.0質量部
・メチルエチルケトン:19質量部
【0267】
<積層体1の作製>
上記、積層体1-3の支持体1Bの上に、着色層形成用塗布液1をワイヤーバーコーターを用いて塗布し、100℃で10分間乾燥した。形成された積層体の着色層の表面に対して、露光量500mJ/cm(i線)で全面露光し、層厚が4μmの着色層1(黒色の着色層)を形成することで、積層体1を形成した。積層体1は、着色層1と、支持体1Bと、樹脂層1と、コレステリック液晶層(反射層)1と、配向層1と、をこの順で有する。
【0268】
<成型加工>
積層体1の配向層1の表面に、卓上コロナ処理装置(TEC-8XA、春日電機(株)製、設定出力70W、操作速度1m/分、回数:5往復)を用いてコロナ処理を行った後、凸パターンを有する透明体(厚み2mm、幅50mm、長さ50mm)を型として用い、上記透明体の凸面に積層体1の配向層1の表面を接触させ、圧空成型加工(TOM成型)を施すことで成型体1(すなわち、加飾成型体)を得た。領域Aの複数の線状凸構造及び領域Bの複数の線状凸構造は、表1及び表2における実施例1欄に記載の形状であった。圧空成型加工には、TOM成型機NGF-0510-R(布施真空(株)製)を使用し、成型温度は120℃、延伸倍率は、最も高い部分で30%であった。圧空成型加工における圧力は、0.3MPaであった。
【0269】
<正の傾斜角の平均ΦAVEの測定>
加飾フィルムの面方向に垂直な方向の任意の面(方向として360°存在する。)で、ミクロトーム(例えば、大和光機工業(株)製、RX-860)を用いて裁断した。裁断方向について、加飾フィルム表面を顕微鏡(オリンパス(株)製、BX53M)で観察し、裁断方向をある程度予測することができる。裁断した断面を、走査電子顕微鏡((株)日立ハイテク製、SU3800)を用いて観察することで、断面形状を測定し、ΦAVEを算出した。
【0270】
<性能評価>
-奥行き感-
紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)製、V-750)及び自動絶対反射率測定ユニット(日本分光(株)製、ARMV-919)を用い、波長範囲380nm~780nmの反射率を測定した。反射率は、横軸を波長、縦軸を反射率としたときの反射スペクトルの最大値を示す。入射角及び受光角は、入射角0°~-45°、受光角-90°~90°の範囲内で測定した。縦軸を反射率、横軸を受光角(又は入射角)として測定結果をプロットしたとき、反射率が極大値を示す受光角度(又は入射角度)を極大反射角度とする。以下の基準に従って、奥行き感について評価した。評価結果として、Aであることが好ましい。
A:極大反射角度が互いに異なる領域A及び領域Bを面内に有する
B:極大反射角度が互いに異なる領域A及び領域Bを面内に有さない
【0271】
-反射領域の視認性-
得られた成型体を0°~90°の角度から視認した際に、反射領域の視認しやすさについて以下の基準に従って評価した。
評価結果として、Cであることが好ましく、Bがより好ましく、Aであることが特に好ましい。
A:正面方向から視認した際に、特定の角度Aで反射する領域Aを容易に視認でき、かつ、角度Aとは異なる角度Bで反射する領域Bを容易に視認できる
B:正面方向~斜め方向に傾けて視認した際に、特定の角度Aで反射する領域Aを容易に視認でき、かつ、角度Aとは異なる角度Bで反射する領域Bを容易に視認できる
C:正面方向~真横方向に大きく傾けて視認した際に、特定の角度Aで反射する領域Aを容易に視認でき、かつ、角度Aとは異なる角度Bで反射する領域Bを容易に視認できる
D:特定の角度Aで反射する領域Aを容易に視認でき、かつ、角度Aとは異なる角度Bで反射する領域Bがわずかに視認される、又は、特定の角度Aで反射する領域Aがわずかに視認され、かつ、角度Aとは異なる角度Bで反射する領域Bがわずかに視認される
【0272】
-干渉による虹ムラ-
得られた成型体を視認した際、虹色のムラが視認されるかについて評価を行った。評価結果として、Aであることが好ましい。
A:虹色のムラが視認されない
B:虹色のムラが視認される
【0273】
-凸構造の視認性の評価-
得られた成型体を視認した際の、凸構造の視認性について評価を行った。評価結果として、Aであることが好ましい。
A:凸構造の形状が視認されない
B:凸構造の形状が視認される
【0274】
-色味変化の視野角依存性(視野角により大きな色味変化が得られるか評価)-
得られた成型体について、0°及び45°の角度から視認した際の色味の変化(例えば、0°方向で黄色、45°方向で青色等)について、評価を行った。評価結果として、Aであることが好ましい。
A:0°方向から視認した場合と45°方向から視認した場合とで、大きな色味の変化がある
B:0°方向から視認した場合と45°方向から視認した場合とでは、色味の変化がわずかに確認される、又は、確認できない
【0275】
-奥行き感の複雑性-
得られた成型体を0°~90°の角度から視認した際の反射の変化(例えば、5°方向で領域Aが光を反射し、30°方向で領域Bが反射する等)について、以下の基準に従って評価した。
A:特定の角度A、角度Aとは3度以上異なる角度B、角度A及び角度Bとは更に3度以上異なる角度Cのそれぞれの角度で反射する領域A~領域Cを容易に視認できる
B:特定の角度A、角度Aとは3度以上異なる角度B、角度A及び角度Bとは更に3度以上異なる角度Cのそれぞれの角度で反射する領域A~領域Cをわずかに視認できる、又は、視認できない
【0276】
表1及び表2に評価結果を示す。
【0277】
(実施例2~13)
実施例1において凸パターンを変化させて得た成型体2~13を用いて評価を行った。実施例2~13の評価結果を合わせて表2に示す。
また、実施例13においては、反射層を以下の方法により作製した。
凸形状を有する基材の凸形状面に対し、スパッタ製膜装置(例えば、(株)シンクロン製、RAS-1100C)を用いて酸化ニオブを100nmの厚みで成膜した。酸化ニオブ層の上に、酸化ケイ素を100nmの厚みで成膜した。酸化ニオブと酸化ケイ素とを交互に成膜する作業を繰り返し、計8層になるまで積層し、反射層を形成した。
【0278】
(比較例1)
実施例1におけるラビング処理された配向層1の表面に、コレステリック液晶層形成用塗布液1を塗布せず、コレステリック液晶層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の手法で成型体C1を作製した。
【0279】
(比較例2)
凸パターンを有する透明体の代わりに、凸パターンを有さない(平滑な)PET基材(A4300、東洋紡(株)製、厚さ50μm)を用いて、成型体C2を作製した。
【0280】
(比較例3及び4)
透明体の凸構造の断面形状を表1の条件に変更して、成型体C3及びC4をそれぞれ作製した。
【0281】
比較例1~4の評価結果を合わせて表1に示す。
【0282】
【表1】
【0283】
【表2】
【0284】
なお、表1及び表2における各領域のサイズ(μm)の値は、加飾フィルムの面方向において、その領域が含むことができる円の直径の最大値を表す。
【0285】
表1及び表2に示すように、本開示に係る加飾フィルムである実施例1~11の加飾フィルムは、比較例1~4の加飾フィルムに比べ、視認方向によって色味変化に富む加飾フィルムであった。
【0286】
(実施例14:ディスプレイ加飾用フィルム)
実施例10において、ラビング処理された配向層1の表面に、調製したコレステリック液晶層形成用塗布液1を、ワイヤーバーコーターで塗布し、85℃で120秒間乾燥した後、図9に示す、マスクパターン越しに、30mJ/cmの露光量のメタルハライドランプ((株)GSユアサ製MAL625NAL)の光を、液晶層の部分に照射して、反射波長の異性化処理を行ったこと、及び、黒層を形成しないこと、以外は、実施例10と同様にして、成型体A-1を作製した。上記プロセス後、液晶層は、青~赤色のグラデーション色の反射パターンを呈していた。
更に、基材の液晶層を形成した面とは反対の面に、特開2017-215558号公報の段落0170~0171に記載の方法にて、1/4波長板の位相差層をコレステリック液晶層に、転写して形成し、成型体A-2を形成した。
更に、特開2017-215558号公報の段落0170~0171に記載の方法にて、線状凸パターン(A)を有する透明体側に、1/4波長板の位相差層を線状凸パターン(A)を有する透明体の(凸パターンの無い平滑面側)に転写して、積層し成型体A-3を形成した。
この際それぞれの1/4波長板は、液晶層を直線偏光が透過した際に、透過率が最大になるよう、配置した。
更に、線状凸パターン(A)を有する透明体側に積層した、1/4波長板の位相差層上に、アクリル系粘着剤(SKダインSG-50Y、綜研化学(株)製)を、コンマコーターを用いて塗布し、120℃で2分間乾燥し、層厚が20μmの樹脂層A-4(接着層)を形成した。
更に、樹脂層A-4上に、液晶軸対象偏光コンバーター(RADPOL4、ARCoptix社製)を室温下、シリコンゴムローラーで擦り付けて、貼合し、成型体A-5を形成した。
【0287】
成型体A-5をipad-pro(アップル社製、液晶ディスプレイ)のディスプレイ表示部上に、液晶軸対象偏光コンバーターが最表面に来るように設置した。この際、ディスプレイから出力される直線偏光の透過率が最大になる向きで配置した。ディスプレイの表示がONの場合に、液晶軸対象コンバーターの透過光が直線偏光になるように設定すると、ディスプレイの表示画像がはっきりと視認され、加飾フィルムの模様がほとんど視認されなかった。一方、ディスプレイの表示がOFFの場合に、液晶軸対象コンバーターが全光線透過になるよう設定すると、加飾フィルムの反射色(オパール状)がはっきりと視認され、また、光輝性が高く、視野角に応じてオパール状の反射色の変化に富む絵柄が視認された。
【符号の説明】
【0288】
20:加飾フィルム
22:基材
24:着色層
26:配向層
28:コレステリック液晶層(反射層)
30:接着層
32:着色層
34:基材
36:樹脂層
38:配向層
40:コレステリック液晶層(反射層)
42:接着層
44:ガラスパネル
50:加飾フィルム
60:凹凸構造を有する透明体
70:加飾成型体
80:加飾成型体
90:加飾成型体
100:加飾パネル
110:1/4波長板の位相差層
112:1/4波長板の位相差層
114:接着層
116:加飾成型体
L:光源
S:観測位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16