(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100881
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】日射遮蔽用合わせ構造体
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20220629BHJP
C01G 41/00 20060101ALI20220629BHJP
C01B 33/20 20060101ALI20220629BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20220629BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220629BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C03C27/12 L
C01G41/00 A
C01B33/20
B60J1/00 H
B32B7/023
B32B27/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215132
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】酒匂 美夏
(72)【発明者】
【氏名】長南 武
【テーマコード(参考)】
4F100
4G048
4G061
4G073
【Fターム(参考)】
4F100AA17A
4F100AA17B
4F100AA17C
4F100AG00A
4F100AG00B
4F100AK23C
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK42A
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4F100AK45A
4F100AK45B
4F100BA03
4F100BA06
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4F100GB32
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4F100YY00A
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4F100YY00C
4G048AA03
4G048AB02
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4G061AA21
4G061BA02
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4G061CB05
4G061CB12
4G061CB16
4G061CB19
4G061CD18
4G073BA30
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4G073BD21
4G073CD04
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4G073FD01
4G073FD24
4G073GA01
4G073GA05
4G073GA11
4G073GA33
4G073GB09
4G073UA20
(57)【要約】
【課題】近赤外線吸収特性および可視光透過性を有し、耐候性にも優れた日射遮蔽用合わせ構造体を提供する。
【解決手段】板ガラス、板状プラスチックから選択された2枚の合わせ板と、
2枚の合わせ板間に配置された中間層と、を有し、
合わせ板、および中間層から選択された1以上の部材が日射遮蔽機能材料粒子を含有し、
日射遮蔽機能材料粒子が、一般式M
xW
yO
z(M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iから選択される1種類以上の元素、0.001≦x/y≦1、3.0<z/y)で表記される複合タングステン酸化物の粒子を含有する日射遮蔽用合わせ構造体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板ガラス、板状プラスチックから選択された2枚の合わせ板と、
前記2枚の合わせ板間に配置された中間層と、を有し、
前記合わせ板、および前記中間層から選択された1以上の部材が日射遮蔽機能材料粒子を含有しており、
前記日射遮蔽機能材料粒子が、一般式MxWyOz(ただし、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、3.0<z/y)で表記される複合タングステン酸化物の粒子を含有する日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項2】
前記M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snから選択される1種類以上の元素を含有する請求項1に記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項3】
前記複合タングステン酸化物の粒子が、六方晶、正方晶、および立方晶から選択される1種類以上の結晶構造の結晶を含む請求項1または請求項2に記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項4】
前記M元素がCs、Rbから選択される1種類以上の元素を含有し、
前記複合タングステン酸化物は、六方晶の結晶構造を備え、
前記複合タングステン酸化物の格子定数は、a軸が7.3850Å以上7.4186Å以下、c軸が7.5600Å以上7.6240Å以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項5】
前記中間層が、合成樹脂を含有する少なくとも1層の中間膜を含み、
前記中間層は、前記中間膜として、前記合成樹脂と、前記合成樹脂中に配置された前記日射遮蔽機能材料粒子とを含有する日射遮蔽中間膜を少なくとも1層有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項6】
前記中間層が、合成樹脂を含む少なくとも1層の中間膜を有し、
前記中間層は、前記中間膜として、
前記合成樹脂を含有する支持中間膜と、
前記支持中間膜の少なくとも一方の表面上に形成された、前記合成樹脂と、前記合成樹脂中に配置された前記日射遮蔽機能材料粒子とを含有する日射遮蔽中間膜とを有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項7】
前記支持中間膜が、延性を有する樹脂フィルムである請求項6に記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項8】
前記中間層が、合成樹脂を含む少なくとも1層の中間膜を有し、
前記中間層は、前記中間膜として、延性を有する樹脂フィルムであり、前記樹脂フィルム内に前記日射遮蔽機能材料粒子を含有する日射遮蔽中間膜を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項9】
前記合成樹脂が、ビニル系樹脂またはアイオノマー樹脂である請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項10】
前記板状プラスチックは、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、およびポリエチレンテレフタレート樹脂から選択された1種類以上の樹脂を含む請求項1から請求項9のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日射遮蔽用合わせ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用などに用いられる安全ガラスとして、2枚の板ガラス間に日射遮蔽層を挟み込んで合わせガラスとした日射遮蔽用合わせ構造体が提案されていた。係る日射遮蔽用合わせ構造体は、入射する太陽エネルギーを遮断して冷房負荷や人の熱暑感の軽減を目的としたものである。
【0003】
例えば、特許文献1には、一対の板ガラス間に粒径0.1μm以下の酸化スズまたは酸化インジウムのいずれかである熱線遮蔽性金属酸化物を含有する軟質樹脂層を介在させた合わせガラスが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、少なくとも2枚の透明ガラス板状体の間に中間膜層を有する合せガラスにおいて、該中間膜層の中に粒径が0.2μm以下の機能性超微粒子を分散せしめてなるものとしたことを特徴とする合せガラスが開示されている。そして、機能性超微粒子として、Sn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、Moの金属、酸化物、窒化物、硫化物あるいはSbやFのドープ物の各単独物、もしくはこれらの中から少なくとも2種以上を選択してなる複合物、またはさらに当該各単独物もしくは複合物に有機樹脂物を含む混合物または有機樹脂物を被覆した被膜物が挙げられている。
【0005】
しかし、特許文献1および特許文献2に開示されている従来の合わせガラスは、いずれも高い可視光透過率が求められたときの日射遮蔽機能が十分でないという問題点が存在した。
【0006】
そこで本件特許出願人は、日射遮蔽機能を有する微粒子として、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.0<x/y<3.0)で表記されるタングステン酸化物の微粒子および/または一般式MxWyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子を含む中間層を、板ガラス、プラスチック、日射遮蔽機能を有する粒子を含むプラスチックから選ばれた2枚の合わせ板間に介在させて成る日射遮蔽合わせ構造体を提案している。特許文献3に記載したように、複合タングステン酸化物粒子が適用された日射遮蔽用合わせガラスは、可視光透過率76.0%以下での日射透過率は全て50.0%未満に改善されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-217500号公報
【特許文献2】特開平8-259279号公報
【特許文献3】国際公開第2005/087680号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、日射遮蔽用合わせ構造体について、近年では耐候性などの性能も求められるようになっている。
【0009】
本発明の一側面では、近赤外線吸収特性および可視光透過性を有し、耐候性にも優れた日射遮蔽用合わせ構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面では、板ガラス、板状プラスチックから選択された2枚の合わせ板と、
前記2枚の合わせ板間に配置された中間層と、を有し、
前記合わせ板、および前記中間層から選択された1以上の部材が日射遮蔽機能材料粒子を含有しており、
前記日射遮蔽機能材料粒子が、一般式MxWyOz(ただし、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、3.0<z/y)で表記される複合タングステン酸化物の粒子を含有する日射遮蔽用合わせ構造体を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面では、近赤外線吸収特性および可視光透過性を有し、耐候性にも優れた日射遮蔽用合わせ構造体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1で用いたハイブリッドプラズマ反応装置の説明図。
【
図2】実施例2で用いた高周波プラズマ反応装置の説明図。
【
図3】日射遮蔽用合わせ構造体の一構成例の断面図。
【
図4】日射遮蔽用合わせ構造体の他の構成例の断面図。
【
図5】日射遮蔽用合わせ構造体の他の構成例の断面図。
【
図6】日射遮蔽用合わせ構造体の他の構成例の断面図。
【
図7】日射遮蔽用合わせ構造体の他の構成例の断面図。
【
図8】日射遮蔽用合わせ構造体の他の構成例の断面図。
【
図9】日射遮蔽用合わせ構造体の他の構成例の断面図。
【
図10】日射遮蔽用合わせ構造体の他の構成例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態に係る日射遮蔽用合わせ構造体に好適に用いることができる日射遮蔽機能材料粒子、およびその製造方法について、「1.日射遮蔽機能材料粒子」、「2.日射遮蔽機能材料粒子の製造方法」でまず説明する。その後、「3.日射遮蔽用合わせ構造体」、および「4.日射遮蔽機能材料粒子の分散液、添加液、塗布液の製造方法」において、本実施形態の日射遮蔽用合わせ構造体、および日射遮蔽用合わせ構造体を製造する際に用いることができる分散液等の製造方法について詳細に説明する。
1.日射遮蔽機能材料粒子
本実施形態に係る日射遮蔽機能材料粒子は、一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物の粒子を含有できる。
【0014】
なお、上記一般式中のM元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iから選択される1種類以上の元素である。Wはタングステン、Oは酸素である。x、y、zは、0.001≦x/y≦1、3.0<z/yを満たすことができる。
【0015】
耐候性に優れた日射遮蔽用合わせ構造体とするためには、用いる日射遮蔽機能材料粒子について、耐候性に優れた粒子とすることが考えられる。そこで、耐候性に優れた日射遮蔽機能材料粒子とするために、本発明の発明者らは鋭意研究を行った。なお、本明細書において耐候性に優れるとは、高温環境下に置かれた場合でも、近赤外線吸収特性が大きく変化しないことを意味する。
【0016】
一般に、自由電子を含む材料は、太陽光線の領域周辺である波長200nmから2600nmの電磁波に対しプラズマ振動による反射吸収応答を示すことが知られている。そして、当該自由電子を含む材料の粉末を、光の波長より小さい粒子とすると、可視光領域(波長380nm以上780nm以下)の幾何学散乱が低減されて、可視光領域の透明性が得られることが知られている。なお、本明細書において「透明性」とは、可視光領域の光に対して散乱が少なく透過性が高いという意味で用いている。
【0017】
一般式WO3-aで表されるタングステン酸化物や、三酸化タングステンにNa等の陽性元素を添加したいわゆるタングステンブロンズは、導電性材料であり、自由電子を含む材料であることが知られている。そして、これらの材料は、単結晶等の分析により、近赤外線領域の光に対する自由電子の応答が示唆されている。
【0018】
一般に、三酸化タングステン(WO3)中には有効な自由電子が存在しないため近赤外線領域の吸収反射特性が少なく、近赤外線吸収材料としては有効ではない。ここで、三酸化タングステンのタングステンに対する酸素の比率を3より低減することによって、当該タングステン酸化物中に自由電子が生成されることが知られている。
【0019】
また、当該タングステン酸化物へ、M元素を添加して、複合タングステン酸化物とすることも従来からなされている。当該構成により、複合タングステン酸化物中に自由電子が生成され、近赤外線領域に自由電子由来の吸収特性が発現し、波長1000nm付近の近赤外線吸収材料として有効となるためである。
【0020】
本発明の発明者らは、耐候性に優れた日射遮蔽機能材料粒子とするため、タングステン酸化物や、複合タングステン酸化物についてさらなる研究を行った。その結果、一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物の粒子を含有する日射遮蔽機能材料粒子において、上記一般式中のy、zに関して3.0<z/yとすることで、近赤外線吸収特性と耐候性を両立できることを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
本実施形態の日射遮蔽機能材料粒子は、上述のように一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物の粒子を含有できる。本実施形態の日射遮蔽機能材料粒子は、上記一般式で表記される複合タングステン酸化物の粒子から構成することもできる。ただし、この場合でも、製造工程等で混入する不可避成分を含有することを排除するものではない。
【0022】
ここで、上記一般式におけるM元素は、安定性を高める観点から、既述の様に、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iから選択される1種類以上の元素であることが好ましい。特に、近赤外線吸収材料としての光学特性、耐候性を特に向上させる観点からは、M元素は、アルカリ金属、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、4B族元素、5B族元素に属するものが、より好ましい。
【0023】
複合タングステン酸化物の粒子が、六方晶の結晶構造を有する結晶を含有する場合、当該粒子の可視光領域の透過率が特に向上し、近赤外線領域の吸収が特に向上する。六方晶の結晶構造は、WO6単位で形成される8面体が、6個集合して六角形の空隙(トンネル)が構成され、当該空隙中にM元素が配置して1箇の単位を構成し、この1箇の単位が多数集合することで構成されている。
【0024】
なお、複合タングステン酸化物の粒子が六方晶の結晶構造を有する結晶を含有する場合に限定されず、例えば上記単位構造、すなわちWO6単位で形成される8面体が、6個集合して六角形の空隙が構成され、当該空隙中にM元素が配置した構造を有していれば可視光領域の透過率を特に向上させ、近赤外線領域の吸収を特に向上させることができる。このため、複合タングステン酸化物の粒子は、六方晶の結晶構造を有する結晶を含有せず、上記単位構造を有するのみであっても、高い効果を得ることができる。
【0025】
上述のように、複合タングステン酸化物の粒子が、六角形の空隙にM元素の陽イオンが添加された構造を含有するとき、近赤外線領域の吸収が特に向上する。ここで、一般的には、イオン半径の大きなM元素を添加したとき六方晶や、上記構造が形成され易い。具体的には、複合タングステン酸化物が、M元素として、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snから選択される1種類以上の元素を含有する場合に、六方晶や、上記構造が形成され易い。このため、複合タングステン酸化物の粒子は、M元素として、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snから選択される1種類以上の元素を含有することが好ましく、M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snから選択される1種類以上の元素であることがより好ましい。
【0026】
さらに、これらイオン半径の大きなM元素のうちでもCs、Rbから選択される1種類以上を含有する複合タングステン酸化物の粒子においては、六方晶や、上記構造が形成され易く、近赤外線領域の吸収と可視光領域の透過とを両立し、かつ特に高い性能を発揮できる。
【0027】
六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物の粒子が均一な結晶構造を有する場合、1モルのタングステンに対するM元素の含有割合を示すx/yは、0.2以上0.5以下が好ましく、さらに好ましくは0.33である。x/yの値が0.33となることで、元素Mが六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。
【0028】
複合タングステン酸化物の粒子が、上述の六方晶以外の、例えば正方晶や、立方晶等の結晶を含有する場合も近赤外線吸収材料として有効である。
【0029】
そして、立方晶、正方晶のそれぞれの複合タングステン酸化物にも構造に由来した元素Mの添加量の好適な範囲、上限があり、1モルのタングステンに対するM元素の含有割合であるx/yの上限値は、立方晶の場合は1モルであり、正方晶の場合は0.5モル程度である。なお、M元素の種類等により上記1モルのタングステンに対するM元素の含有割合であるx/yの上限値は変化するが、正方晶の場合、工業的製造が容易なのは、0.5モル程度である。
【0030】
ただし、これらの構造は、単純に規定することが困難であり、当該範囲は特に基本的な範囲を示した例であることから、本発明がこれに限定されるわけではない。
【0031】
複合タングステン酸化物の粒子が含有する結晶の構造によって、近赤外線領域の吸収位置が変化する傾向があり、この近赤外線領域の吸収位置は、立方晶よりも正方晶の結晶の方が長波長側に移動し、さらに六方晶の結晶は正方晶の結晶よりも長波長側に移動する傾向がある。また、当該吸収位置の変動に付随して、可視光領域の吸収は六方晶の結晶が最も少なく、次に正方晶の結晶であり、立方晶の結晶はこの中では最も大きい。このため、要求される性能等に応じて、含有する結晶系を選択することが好ましい。例えば、より可視光領域の光を透過して、より近赤外線領域の光を吸収することが求められる用途に用いる場合、複合タングステン酸化物の粒子は、六方晶の結晶を含有することが好ましい。ただし、ここで述べた光学特性の傾向は、あくまで大まかな傾向であり、添加元素の種類や、添加量、酸素量によっても変化するものであり、本発明がこれに限定されるわけではない。
【0032】
当該複合タングステン酸化物に対し、上述した酸素量の制御と、自由電子を生成する元素Mの添加とを併用することで、より効率の良い耐候性に優れた近赤外線吸収材料を得ることができる。酸素量の制御と、自由電子を生成する元素の添加とを併用した近赤外線吸収材料である複合タングステン酸化物の一般式を、MxWyOzと記載したとき、x、y、は、0.001≦x/y≦1とすることができ、0.20≦x/y≦0.37を満たすことが好ましい。
【0033】
また、上記一般式のy、zは、3.0<z/yの関係を満たし、3.0<z/y<3.4を満たすことが好ましく、3.0<z/y<3.3を満たすことがより好ましく、3.0<z/y<3.22を満たすことがさらに好ましい。
【0034】
本出願人の検討によれば、六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物粒子は、z/y=3の時、x/yの値が0.33となることで、元素Mが六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。
【0035】
本実施形態に係る日射遮蔽機能材料粒子が含有する複合タングステン酸化物粒子は、z/yが3を超えることが、化学分析で確認されている。その一方、粉末X線回折法で、本実施形態に係る日射遮蔽機能材料粒子が含有する複合タングステン酸化物粒子は、z/y=3としたときに正方晶、立方晶、六方晶の少なくともいずれかのタングステンブロンズ構造をとる場合があることが確認されている。従って、本実施形態に係る日射遮蔽機能材料粒子が含有する複合タングステン酸化物の粒子は、六方晶、正方晶、および立方晶から選択される1種類以上の結晶構造の結晶を含有することが好ましい。上記結晶構造の結晶を含有することで、特に優れた近赤外線吸収特性と、可視光透過特性を示すことができる。
【0036】
ところで、z/y値が3を超える場合の酸素原子は、複合タングステン酸化物の粒子の結晶に入り込んでいると考えられる。結果的に結晶に酸素原子が入り込むことで、熱や湿気に晒されても、複合タングステン酸化物の粒子の結晶が変質することなく、優れた耐候性を実現できると考えられる。
【0037】
本実施形態に係る日射遮蔽機能材料粒子が含有する複合タングステン酸化物の粒子の結晶構造は、粉末X線回折法(θ-2θ法)によりX線回折パターンで確認することができる。
【0038】
本実施形態の日射遮蔽機能材料粒子は、波長350nm以上600nm以下の範囲に極大値を有し、波長800nm以上2100nm以下の範囲に極小値を有する光の透過特性を示し、優れた近赤外線吸収効果と耐候性を発揮できる。本実施形態の日射遮蔽機能材料粒子は、波長440nm以上600nm以下の範囲に極大値を有し、波長1150nm以上2100nm以下の範囲に極小値を有することがより好ましい。
【0039】
また、本実施形態に係る日射遮蔽機能材料粒子は、その粒子径が100nm以下であることが好ましい。より優れた近赤外線吸収特性を発揮させる観点から、当該粒子径は10nm以上100nm以下がより好ましく、10nm以上80nm以下がさらに好ましく、10nm以上60nm以下が特に好ましく、10nm以上40nm以下が最も好ましい。日射遮蔽機能材料粒子の粒子径が10nm以上40nm以下の範囲であれば、最も優れた近赤外線吸収特性が発揮される。
【0040】
ここで、粒子径とは凝集していない個々の日射遮蔽機能材料粒子がもつ径、すなわち個別粒子の粒子径である。
【0041】
ここでの粒子径は、日射遮蔽機能材料粒子の凝集体の径を含むものでなく、分散粒子径とは異なるものである。
【0042】
ここでの粒子径は、例えば日射遮蔽機能材料粒子を分散させた状態で、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて、複数個の粒子の粒子径を測定し、算出できる。なお、日射遮蔽機能材料粒子は通常不定形であることから、該粒子に外接する最小の円の直径を、該粒子の粒子径とすることができる。例えば透過型電子顕微鏡を用いて上述のように複数の粒子の粒子径を粒子毎に測定した場合に、全ての粒子の粒子径が上記範囲を満たすことが好ましい。測定する粒子の数は特に限定されないが、例えば10個以上50個以下であることが好ましい。
【0043】
また、優れた近赤外線吸収特性を発揮させる観点から、複合タングステン酸化物粒子の結晶子径は10nm以上100nm以下であることが好ましく、10nm以上80nm以下であることがより好ましく、10nm以上60nm以下であることがさらに好ましく、10nm以上40nm以下であることが特に好ましい。結晶子径が10nm以上40nm以下の範囲であれば、特に優れた近赤外線吸収特性が発揮されるからである。日射遮蔽機能材料粒子が含有する複合タングステン酸化物粒子の結晶子径は、粉末X線回折法(θ-2θ法)により測定したX線回折パターンから、リートベルト法を用いて算出することができる。
【0044】
複合タングステン酸化物粒子が含有する複合タングステン酸化物の一般式を既述のようにMxWyOzとする。そして、M元素がCs、Rbから選択される1種類以上の元素を含有し、複合タングステン酸化物が六方晶の結晶構造を備える場合、該複合タングステン酸化物の格子定数は、a軸が7.3850Å以上7.4186Å以下、c軸が7.5600Å以上7.6240Å以下であることが好ましい。複合タングステン酸化物について上記格子定数とすることで、近赤外線吸収特性と耐候性とについて特に優れた特性を実現できる。なお、上記の場合、M元素は、Cs、Rbから選択される1種類以上の元素からなることがより好ましい。上記格子定数はリートベルト法を用いて算出できる。
【0045】
また、本実施形態に係る複合タングステン酸化物の粒子を含有する日射遮蔽機能材料粒子分散体は近赤外線領域、特に波長1000nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調は青色系から緑色系となる物が多い。
【0046】
本実施形態の日射遮蔽機能材料粒子の分散粒子径は、その使用目的によって、各々選定することができる。まず、透明性を保持した応用に使用する場合は、800nm以下の分散粒子径を有していることが好ましい。これは、分散粒子径が800nm以下の粒子は、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光領域の視認性を保持し、同時に効率良く透明性を保持することができるからである。
【0047】
特に可視光領域の透明性を重視する場合は、さらに粒子による散乱を考慮することが好ましい。なお、当該分散粒子径とは、日射遮蔽機能材料粒子の凝集体の径を含むものであり、既述の粒子径とは異なるものである。
【0048】
上記粒子による散乱の低減を重視するとき、本実施形態の日射遮蔽機能材料粒子の分散粒子径は200nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下がさらに好ましい。これは、分散粒子径が小さければ、幾何学散乱もしくはミー散乱による、波長380nm以上780nm以下の可視光領域の光の散乱が低減される結果、本実施形態の日射遮蔽機能材料粒子を含む分散体が曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られなくなるのを回避できるからである。すなわち、分散粒子径が200nm以下になると、上記幾何学散乱もしくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる。レイリー散乱領域では、散乱光は分散粒子径の6乗に比例するため、分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上するからである。さらに分散粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、分散粒子径が小さい方が好ましく、分散粒子径が10nm以上あれば工業的な製造は容易である。
【0049】
上記分散粒子径を800nm以下とすることにより、日射遮蔽機能材料粒子を媒体中に分散させた日射遮蔽機能材料粒子分散体のヘイズ(ヘイズ値)は、可視光透過率85%以下で10%以下とすることができる。特に、分散粒子径を100nm以下とすることにより、ヘイズを1%以下とすることができる。
【0050】
なお、日射遮蔽機能材料粒子分散体の光の散乱は、日射遮蔽機能材料粒子の凝集を考慮する必要があり、分散粒子径で検討する必要がある。
2.日射遮蔽機能材料粒子の製造方法
日射遮蔽機能材料粒子の製造方法の構成例について説明する。本実施形態の日射遮蔽機能材料粒子の製造方法によれば、既述の日射遮蔽機能材料粒子を製造できる。このため、既に説明した事項については一部説明を省略する。
【0051】
本実施形態の日射遮蔽機能材料粒子が含有する既述の一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物粒子は、例えば以下の固相反応法や、プラズマ法により製造できる。
【0052】
以下、それぞれの方法について説明する。
(1)固相反応法
固相反応法により複合タングステン酸化物粒子を製造する場合、以下の工程を有することができる。
【0053】
タングステン化合物とM元素化合物とを混合し、原料混合物を調製する(混合工程)。なお、原料混合物における、M元素とタングステンとの物質量比(モル比)が、目的とする複合タングステン酸化物の粒子の上記一般式におけるxとyとの比となるように配合、混合することが好ましい。
【0054】
混合工程で得られた原料混合物を、酸素を含む雰囲気中で熱処理する(第1熱処理工程)。
【0055】
第1熱処理工程後に得られた熱処理物を、還元性ガス雰囲気もしくは還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中、または不活性ガス雰囲気中で熱処理する(第2熱処理工程)。
【0056】
第2熱処理工程後、必要に応じて日射遮蔽機能材料粒子を所望の粒子径とするように粉砕処理等を行うこともできる。
【0057】
以上の工程により得られた複合タングステン酸化物粒子を含む、本実施形態の日射遮蔽機能材料粒子は、十分な近赤外線吸収力を有し、日射遮蔽機能材料粒子として好ましい性質を有している。また、耐候性に優れた日射遮蔽機能材料粒子とすることができる。
【0058】
以下、各工程について詳述する。
(混合工程)
混合工程に供するタングステン化合物としては、例えばタングステン酸(H2WO4)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種類以上を用いることができる。
【0059】
また、混合工程に供するM元素化合物としては、例えばM元素の酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩から選ばれる1種類以上を用いることができる。
【0060】
混合工程において、タングステン化合物と、M元素化合物との混合に当たっては、得られる原料混合物中のM元素(M)と、タングステン(W)との物質量比(M:W)が、目的とする一般式MxWyOzのx:yと等しくなるように各原料を配合し、混合することが好ましい。
【0061】
混合方法は特に限定されず、湿式混合、乾式混合のいずれを用いることもできる。湿式混合の場合、湿式混合後に得られた混合液を乾燥することによって、M元素化合物とタングステン化合物との混合粉体が得られる。湿式混合後の乾燥温度や時間は特に限定されない。
【0062】
乾式混合は、市販の擂潰機、ニーダー、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー等の公知の混合装置で行えばよく、混合時間や混合速度等の混合条件については特に限定されない。
(第1熱処理工程)
第1熱処理工程における熱処理温度は特に限定されないが、複合タングステン酸化物粒子が結晶化する温度よりも高いことが好ましい。具体的には例えば500℃以上1000℃以下が好ましく、500℃以上800℃以下がより好ましい。
(第2熱処理工程)
第2熱処理工程では、既述の様に還元性ガス雰囲気中、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中、あるいは不活性ガス雰囲気中で500℃以上1200℃以下の温度で熱処理を行うことができる。
【0063】
第2熱処理工程で還元性ガスを用いる場合、還元性ガスの種類は特に限定されないが水素(H2)が好ましい。また、還元性ガスとして水素を用いる場合、その濃度は焼成温度と出発原料の物量等に応じて適宜選択すればよく特に限定されない。例えば、20vol%以下、好ましくは10vol%以下、より好ましくは7vol%以下である。還元性ガスの濃度が20vol%以下であれば、急速な還元による日射遮蔽機能を有しないWO2が生成するのを回避できるからである。
(2)プラズマ法
本実施形態の日射遮蔽機能材料粒子が含有する既述の一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物粒子は、例えばプラズマ法により製造することもできる。プラズマ法により、日射遮蔽機能材料粒子を作製する場合、以下の工程を有することができる。
【0064】
出発原料として、タングステン化合物とM元素化合物との原料混合物、または一般式MxWyOz´で表される複合タングステン酸化物前駆体を調製する(原料調製工程)。
【0065】
原料調製工程で調製した出発原料を、キャリアガスと共に、プラズマ中に供給し、蒸発、凝縮過程を経て、目的とする複合タングステン酸化物粒子を生成する(反応工程)。
(原料調製工程)
出発原料として、タングステン化合物とM元素化合物との原料混合物を調製する場合、タングステン化合物とM元素化合物との原料混合物における、M元素(M)とタングステン(W)との物質量比(M:W)が、目的とする複合タングステン酸化物の既述の一般式におけるxとyとの比x:yと等しくなるように各原料を配合、混合することが好ましい。
【0066】
タングステン化合物、M元素化合物としては、固相反応法で説明したものと同様の材料を好適に用いることができるため、ここでは説明を省略する。
【0067】
また、一般式MxWyOz´で表される複合タングステン酸化物前駆体においては、Mは既述のM元素、Wはタングステン、Oは酸素とすることができ、x、y、z´は、0.001≦x/y≦1、2.0<z´/yを満たすことが好ましい。
【0068】
一般式MxWyOz´で表される複合タングステン酸化物前駆体は、例えば既述の固相反応法で合成できる。係る複合タングステン酸化物前駆体におけるx/yは、目的とする一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物の粒子におけるx/yと合致した材料であることが好ましい。
(反応工程)
反応工程において出発原料を搬送するキャリアガスとしては、不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いることができる。
【0069】
プラズマは、例えば不活性ガス単独もしくは不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気中で発生させることができる。プラズマは特に限定されないが、熱プラズマが好ましい。該プラズマ中に供給された原料は瞬時に蒸発し、蒸発した原料はプラズマ尾炎部に至る過程で凝縮し、プラズマフレーム外で急冷凝固されて、複合タングステン酸化物の粒子を生成する。プラズマ法によれば、例えば結晶相が単相の複合タングステン酸化物の粒子を生成できる。
【0070】
本実施形態の日射遮蔽機能材料粒子の製造方法で用いるプラズマは、例えば、直流アークプラズマ、高周波プラズマ、マイクロ波プラズマ、低周波交流プラズマのいずれか、もしくはこれらの重畳したもの、あるいは直流プラズマに磁場を印加した電気的な方法によるもの、大出力レーザーによるもの、大出力電子ビームやイオンビームによって得られるものであることが好ましい。いずれの熱プラズマを用いる場合でも、10000K以上、より望ましくは10000K以上25000K以下の高温部を有する熱プラズマであり、特に、粒子の生成時間を制御できるプラズマであることが好ましい。
【0071】
プラズマ法による、本実施形態の日射遮蔽機能材料粒子の製造方法における反応工程の具体的な構成例について、
図1を用いながら説明する。
【0072】
図1に示した装置は、直流プラズマ装置と高周波プラズマ装置を重畳させたハイブリッドプラズマ反応装置10である。
【0073】
ハイブリッドプラズマ反応装置10は、水冷石英二重管11と、水冷石英二重管11と接続された反応容器12を有している。また、反応容器12には真空排気装置13が接続されている。
【0074】
水冷石英二重管11の上方には直流プラズマトーチ14が設けられ、直流プラズマトーチ14には、プラズマ発生用ガス供給口15が設けられている。
【0075】
プラズマ領域の外側に水冷石英二重管11の内壁に沿って、高周波プラズマ発生用および石英管保護用のシースガスを供給できるように構成されており、水冷石英二重管11の上方のフランジにはシースガス導入口16が設けられている。
【0076】
水冷石英二重管11の周囲には、高周波プラズマ発生用の水冷銅コイル17が配置されている。
【0077】
直流プラズマトーチ14近傍には、原料粉末キャリアガス供給口18が設けられ、原料粉末を供給する原料粉末供給装置19と配管で接続されている。
【0078】
プラズマ発生用ガス供給口15、シースガス導入口16、原料粉末供給装置19には、配管により、ガス供給装置20を接続し、ガス供給装置20から所定のガスを各部材に供給できるように構成できる。なお、必要に応じて、装置内の部材を冷却したり、所定の雰囲気にできるように上記部材以外にも供給口を設けておき、上記ガス供給装置20と接続しておくこともできる。
【0079】
上記ハイブリッドプラズマ反応装置10を用いた複合タングステン酸化物の粒子の製造方法の構成例を説明する。
【0080】
まず、真空排気装置13により、水冷石英二重管11内と反応容器12内とで構成される反応系内を真空引きする。この際の真空度は特に限定されないが、例えば約0.1Pa(約0.001Torr)まで真空引きできる。反応系内を真空引きした後、ガス供給装置20からアルゴンガスを供給し、当該反応系内をアルゴンガスで満たすことができる。例えば反応系内を1気圧のアルゴンガス流通系とすることが好ましい。
【0081】
さらにその後、反応容器12内にプラズマガスを供給できる。プラズマガスとしては特に限定されないが、例えばアルゴンガス、アルゴンとヘリウムとの混合ガス(Ar-He混合ガス)、アルゴンと窒素との混合ガス(Ar-N2混合ガス)、ネオン、ヘリウム、キセノンから選択されるいずれかのガスを用いることができる。
【0082】
プラズマガスの供給流量についても特に限定されないが、例えば、好ましくは3L/min以上30L/min以下、より好ましくは3L/min以上15L/min以下の流量でプラズマ発生用ガス供給口15から導入できる。そして、直流プラズマを発生できる。
【0083】
一方、プラズマ領域の外側に水冷石英二重管11の内壁に沿って、高周波プラズマ発生用および石英管保護用のシースガスをシースガス導入口16から旋回状に供給できる。シースガスの種類や、供給速度についても特に限定されないが、例えばアルゴンガスを20L/min以上50L/min以下と、水素ガス1L/min以上5L/min以下とを流し、高周波プラズマを発生させる。
【0084】
そして、高周波プラズマ発生用の水冷銅コイル17に高周波電源を加えることができる。高周波電源の条件は特に限定されないが、例えば周波数4MHz程度の高周波電源を、15kW以上50kW以下加えることができる。
【0085】
このようなハイブリッドプラズマを発生させた後、キャリアガスを用い、原料を、原料粉末供給装置19により原料粉末キャリアガス供給口18から導入できる。キャリアガスについても特に限定されないが、例えば1L/min以上8L/min以下のアルゴンガスと0.001L/min以上0.8L/min以下の酸素ガスとからなる混合ガスを用いることができる。
【0086】
プラズマ中に供給される出発原料となる原料混合物、あるいは複合タングステン酸化物前駆体をプラズマ中に導入して反応を行う。出発原料の原料粉末キャリアガス供給口18からの供給速度は特に限定されないが、例えば1g/min以上50g/min以下の割合で供給することが好ましく、1g/min以上20g/min以下がより好ましい。
【0087】
出発原料の供給速度を50g/min以下とすることで、プラズマ火炎の中心部を通過する出発原料の割合を十分に高くし、未反応物や中間生成物の割合を抑制し、所望の複合タングステン酸化物粒子の生成割合を高くできる。また、出発原料の供給速度を1g/min以上とすることで生産性を高めることができる。
【0088】
プラズマ中に供給される出発原料は、プラズマ中で瞬時に蒸発し、凝縮過程を経て、平均一次粒子径が100nm以下の複合タングステン酸化物粒子が生成する。
【0089】
なお、本実施形態の製造方法によって得られる複合タングステン酸化物粒子の粒径は、プラズマ出力や、プラズマ流量、供給する原料粉末の量などによって容易に制御できる。
【0090】
反応後、生成した複合タングステン酸化物粒子は,反応容器12に堆積するので、これを回収できる。
【0091】
以上に、本実施形態の日射遮蔽機能材料粒子の製造方法について説明したが、係る製造方法により得られた日射遮蔽機能材料粒子は、例えば以下の方法により、評価、確認できる。
【0092】
例えば、上記日射遮蔽機能材料粒子の製造方法により得られた日射遮蔽機能材料粒子の構成元素の化学定量分析を実施できる。分析方法は特に限定されないが、例えばM元素やタングステンは、プラズマ発光分光分析法で、酸素は不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法で分析することができる。
【0093】
また、日射遮蔽機能材料粒子が含有する複合タングステン酸化物粒子の結晶構造は、粉末X線回折法で確認することができる。
【0094】
日射遮蔽機能材料粒子の粒子径はTEM観察や動的光散乱法に基づく粒径測定によって確認できる。
3.日射遮蔽用合わせ構造体
次に本実施形態の日射遮蔽用合わせ構造体について説明する。
【0095】
本実施形態の日射遮蔽用合わせ構造体(以下、「合わせ構造体」とも記載する。)は、板ガラス、板状プラスチックから選択された2枚の合わせ板と、該2枚の合わせ板間に配置された中間層と、を有する。すなわち、本実施形態の日射遮蔽用合わせ構造体は、中間層を、2枚の合わせ板間に介在させた構造を有する。そして、本実施形態の日射遮蔽用合わせ構造体は、合わせ板、および中間層から選択された1以上の部材が日射遮蔽機能材料粒子を含むことができる。具体的には、合わせ板、および中間層のいずれか一方、もしくは両方が日射遮蔽機能材料粒子を含むことができる。また、合わせ板が日射遮蔽機能材料粒子を含む場合、例えば2枚の合わせ板のいずれか一方、もしくは2枚の合わせ板が共に日射遮蔽機能材料粒子を含むことができる。
【0096】
日射遮蔽機能材料粒子としては既述の日射遮蔽機能材料粒子を用いることができるため、ここでは説明を省略する。
【0097】
以下、本実施形態の合わせ構造体が有する部材について説明する。
(1)合わせ板
本実施形態の合わせ構造体において、合わせ板は、中間層をその両側から挟み合わせる板であり、可視光領域において透明な、板ガラスや、板状プラスチックを用いることができる。板状プラスチックは、既述の日射遮蔽機能材料粒子を含むこともできるため、日射遮蔽機能材料粒子を含む板状プラスチックとすることもできる。
【0098】
詳細に説明すると合わせ板には、例えば可視光域において光を透過する光学特性を備えた板ガラスや、板状プラスチックを用いることができる。
【0099】
既述の板ガラス、板状のプラスチックから選ばれる2枚の合わせ板とは、板ガラスと板ガラスの場合、板ガラスと板状プラスチックの場合、板状プラスチックと板状プラスチックの場合、の各構成を含むものである。なお、上述のように板状プラスチックは日射遮蔽機能材料粒子を含むこともできる。例えば2枚の合わせ板が、2枚の板状プラスチックから構成される場合、いずれか1枚の板状プラスチック、または2枚の板状プラスチックが、日射遮蔽機能材料粒子を含んでいても良い。
【0100】
日射遮蔽用合わせ構造体の合わせ板に板状プラスチックを用いる場合の当該プラスチックの材質は、当該日射遮蔽用合わせ構造体の用途に合わせて適宜に選択され、特に限定されるものではない。例えば、日射遮蔽用合わせ構造体を、自動車等の輸送機器に用いる場合は、当該輸送機器の運転者や搭乗者の透視性を確保する観点から、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂といった透明樹脂が好ましい。すなわち、板状プラスチックは、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、およびポリエチレンテレフタレート樹脂から選択された1種類以上の樹脂を含むことが好ましい。板状プラスチックが、ポリカーボネート樹脂等の上記樹脂群から選択された1種類以上の樹脂を含むことで、透視性を高めることができる。
【0101】
ただし、板状プラスチックに用いるプラスチックの材質は係る樹脂に限定されない。該プラスチックには、他にも、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の任意の樹脂を使用可能である。
【0102】
本実施形態の合わせ構造体に用いる合わせ板の形態例として、以下の形態Aと、形態Bとが挙げられる。
【0103】
形態Aとして、合わせ板として、板ガラスや上記板状プラスチックをそのまま用いる形態が挙げられる。
【0104】
形態Bとして、板状プラスチックに日射遮蔽機能材料粒子を含有させて、日射遮蔽機能材料粒子を含む板状プラスチックとして用いる形態が挙げられる。
【0105】
次に、形態Bにおいて、プラスチックに日射遮蔽機能材料粒子を含有させる方法について説明する。
(日射遮蔽機能材料粒子を含む板状プラスチックの製造方法)
日射遮蔽機能材料粒子をプラスチック(樹脂)に練り込むときは、プラスチックを該プラスチックの融点付近の温度(例えば200~300℃前後)まで加熱し、日射遮蔽機能材料粒子をプラスチックと混合する。そして、プラスチックと日射遮蔽機能材料粒子との混合物をペレット化し、該ペレットを所望の方式でフィルムやシート状等の所望の形状に成形することができる。ペレットを成形する方法としては特に限定されないが、例えば、押し出し成形法、インフレーション成形法、溶液流延法、キャスティング法等が挙げられる。この時のフィルム形状や、シート形状、ボード形状等を有する板状プラスチックの厚さは、合わせ構造体の使用目的に応じて適宜選定すればよい。プラスチックに対する日射遮蔽機能材料粒子の添加量は、板状プラスチックの厚さや必要とされる光学特性、機械特性等に応じて任意に選択できる。日射遮蔽機能材料粒子の、プラスチックに対する添加量は、一般的に該プラスチックに対して50重量%以下が好ましい。
(2)中間層
次に、本実施形態の合わせ構造体が有する中間層について説明する。
【0106】
中間層は、例えば中間膜を有することができる。中間膜は、可視光領域において光を透過する光学特性、耐貫通能力を備えた力学的特性を考慮した膜であることが好ましい。中間膜は樹脂材料を含有でき、該樹脂材料には合成樹脂を用いることが好ましい。
【0107】
そして、中間層は、既述のように日射遮蔽機能材料粒子を含むこともできる。
【0108】
中間層の形態例として以下7つの形態が挙げられる。
【0109】
形態1として、中間層が、日射遮蔽機能材料粒子を含有する中間膜で構成される形態が挙げられる。
【0110】
形態2として、中間層が2層以上の中間膜からなり、2層以上の中間膜のうち、少なくとも1層の中間膜が日射遮蔽機能材料粒子を含有する形態が挙げられる。
【0111】
形態3として、中間層が、少なくとも一方の合わせ板の内側の面に配置された日射遮蔽機能材料粒子を含む日射遮蔽層と、該日射遮蔽層に積層した中間膜とを有する形態が挙げられる。
【0112】
形態4として、以下のいずれかの形態が挙げられる。(イ)中間層が、延性を有する樹脂フィルム基板と、該延性を有する樹脂フィルム基板の片面上に配置された日射遮蔽機能材料粒子を含む日射遮蔽層と、を含む2層以上中間膜の積層体を有する形態。(ロ)中間層が、延性を有する樹脂フィルム基板を含む2層以上の中間膜の積層体を有し、該延性を有する樹脂フィルム基板が内部に日射遮蔽機能材料粒子を含む日射遮蔽層である形態。
【0113】
形態5として、中間層が、中間膜と、該中間膜の一方の面に配置され、日射遮蔽機能材料粒子を含む日射遮蔽層とを有する形態が挙げられる。
【0114】
形態6として、中間層が、接着剤層と、日射遮蔽機能材料粒子を含む日射遮蔽層と、剥離層とを有する積層体と、該積層体の剥離層側に1層または2層以上の中間膜をさらに有する形態が挙げられる。係る形態では、中間層は、一方の合わせ板の内側の面に、上記接着剤層により接着される。
【0115】
形態7として、中間層が日射遮蔽機能材料粒子を含有しない形態が挙げられる。
【0116】
上記形態1~形態6の中間層は、合成樹脂を含有する少なくとも1層の中間膜を含み、該中間層は、上記中間膜として、合成樹脂と、合成樹脂中に配置された日射遮蔽機能材料粒子とを含有する日射遮蔽中間膜を少なくとも1層有する形態といえる。
【0117】
中でも形態4の(イ)、形態5の中間層は、合成樹脂を含む少なくとも1層の中間膜を有し、該中間層は、上記中間膜として、合成樹脂を含有する支持中間膜と、支持中間膜の少なくとも一方の表面上に形成された、合成樹脂と、合成樹脂中に配置された日射遮蔽機能材料粒子とを含有する日射遮蔽中間膜とを有する形態といえる。特に形態4の(イ)の場合、支持中間膜が延性を有する樹脂フィルムとなる。
【0118】
また、形態4の(ロ)の中間層は、合成樹脂を含む少なくとも1層の中間膜を有し、該中間層は、上記中間膜として、延性を有する樹脂フィルムであり、該樹脂フィルム内に日射遮蔽機能材料粒子を含有する日射遮蔽中間膜を有する形態といえる。
(中間膜)
中間層が有することができる中間膜の構成について説明する。
【0119】
中間膜は、可視光域において透過する光学特性、耐貫通能力を備えた力学的性質、材料コストの観点から合成樹脂を含むことが好ましく、合成樹脂は、ビニル系樹脂またはアイオノマー樹脂であることがより好ましい。中間層が複数の中間膜を有する場合、各中間膜が含有する合成樹脂は同じであってもよく、異なっていても良い。
【0120】
上記ビニル系樹脂としては特に限定されず、例えばポリビニルブチラールに代表されるポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、塩化ビニル-エチレン-グリシジルアクリレート共重合体、塩化ビニル-グリシジルメタクリレート共重合体、塩化ビニル-グリシジルアクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリ酢酸ビニルエチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール-ポリビニルブチラール混合物等が挙げられる。ただし、合わせ板に用いられるガラスやプラスチックとの接着性や、透明性などの観点から、中間膜が合成樹脂としてビニル系樹脂を含有する場合、該合成樹脂は、ポリビニルブチラールに代表されるポリビニルアセタールやエチレン-酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
【0121】
上記アイオノマー樹脂としては特に限定されず、公知のさまざまなアイオノマー樹脂を用いることができ、合わせ構造体の使用用途等に応じて任意に樹脂を選択することができる。アイオノマー樹脂としては例えば、エチレン系アイオノマーや、スチレン系アイオノマー、アイオノマーエラストマー、パーフルオロカーボンアイオノマー、ウレタンアイオノマー等が知られており、上述のように用途や要求される性能等に応じて任意のアイオノマー樹脂を選択して用いることができる。また、合わせ構造体の中間膜に用いるアイオノマー樹脂は1種類のみとすることもできるが、2種類以上のアイオノマー樹脂を組み合わせて用いることもできる。
【0122】
本実施形態の合わせ構造体は、例えば自動車や建造物の窓材、ビニールハウスのフィルム等として好適に用いることができる。このため、合わせ構造体の中間膜に含まれるアイオノマー樹脂は、透明性に優れ、高い可視光透過率と低いヘイズ値を持ち、耐貫通性、耐候性に優れることが好ましい。また、該中間膜を合わせ板上に直接配置する場合には、合わせ板に対する密着性にも優れていることが好ましい。
【0123】
以上のような観点から、アイオノマー樹脂はエチレン系アイオノマーを含有することがより好ましく、特にアイオノマー樹脂はエチレン系アイオノマーであることがさらに好ましい。
【0124】
また、アイオノマー樹脂に含まれる金属イオンについても特に限定されるものではなく、例えば、亜鉛、マグネシウム、リチウム、カリウム、ナトリウムから選択される1種類以上の金属イオンを含有するアイオノマー樹脂を用いることができる。特に、亜鉛イオンを含有するアイオノマー樹脂を好ましく用いることができる。
【0125】
アイオノマー樹脂としては具体的には例えば、エチレン・アクリル酸・アクリル酸エステル共重合体の金属元素アイオノマー、エチレン・アクリル酸・メタクリル酸エステル共重合体の金属元素アイオノマー、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸エステル共重合体の金属元素アイオノマー、エチレン・メタクリル酸・メタクリル酸エステル共重合体の金属元素アイオノマーなどが挙げられる。なお、いずれのアイオノマー樹脂においても含まれる金属イオンは特に限定されず、例えば亜鉛、マグネシウム、リチウム、カリウム、ナトリウムから選択される1種類以上の金属のイオンを含有することができる。
【0126】
アイオノマー樹脂としてより具体的には例えば、Dupont社のサーリン(Surlyn)(登録商標)シリーズ、三井・デュポンポリケミカル社のハイミラン(Hi-Milan)(登録商標)シリーズ、Exxon Mobil Chemical社のIOTEK(登録商標)シリーズ等を好ましく用いることができる。
【0127】
中間膜の形成方法には公知の方法を用いることができ、例えば、カレンダーロール法、押出法、キャスティング法、インフレーション法等を用いることができる。
【0128】
中間膜が、日射遮蔽機能材料粒子とビニル系樹脂とを含む場合、該中間膜は例えば以下の手順により製造できる。例えば日射遮蔽機能材料粒子が可塑剤に分散された添加液をビニル系樹脂に添加し、混練して上記粒子が均一に分散したビニル系樹脂組成物を調製する。次いで、調製されたビニル系樹脂組成物をシート状に成形することで中間膜を製造できる。なお、ビニル系樹脂組成物をシート状に成形する際には、必要に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線遮蔽材等を配合し、また、シートの貫通性制御のために例えば金属塩等の接着力調整剤を配合してもよい。
【0129】
合わせ構造体の構成について、以下、中間膜としてビニル系樹脂を用いた場合を例としながら、上述した合わせ板の形態A、形態Bと、中間層の形態1~形態7とをそれぞれ組み合わせた各形態例について、
図3~
図10を参照しながら説明する。なお、
図3~
図10は、日射遮蔽用合わせ構造体の模式的な断面図である。
【0130】
以下の説明で、形態A-1のように表記する場合、形態Aと形態1とを組み合わせた構成であることを意味する。
(形態A-1)
図3に、形態A-1の日射遮蔽用合わせ構造体の一例の断面図を示す。
図3に示すように、形態A-1の日射遮蔽用合わせ構造体501は、2枚の合わせ板51により中間層521を挟み込んでいる。中間層521は、日射遮蔽機能材料粒子611と、合成樹脂612とを含有する中間膜621、すなわち日射遮蔽中間膜により構成されている。日射遮蔽機能材料粒子611は、合成樹脂612内に分散して含有されることが好ましい。
【0131】
図3に示すように合わせ板として板ガラスや、日射遮蔽機能材料粒子を含有しない板状プラスチックを用い、中間層521が、合成樹脂と日射遮蔽機能材料粒子とを含有する中間膜で構成される日射遮蔽用合わせ構造体は、例えば以下のようにして製造される。
【0132】
日射遮蔽機能材料粒子が可塑剤に分散された添加液を、ビニル系樹脂に添加してビニル系樹脂組成物を調製し、このビニル系樹脂組成物をシート状に成形して日射遮蔽中間膜のシートを得る。次いで、この日射遮蔽中間膜のシートを、板ガラス、板状プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の間に挟み込んで貼り合わせることにより日射遮蔽用合わせ構造体とする。
【0133】
上記説明では、可塑剤中に日射遮蔽機能材料粒子を分散した可塑剤分散液である添加液を用いた場合を例にして説明したが、係る形態に限定されない。例えば、可塑剤以外の分散媒に日射遮蔽機能材料粒子を分散した分散液をビニル系樹脂に添加し、可塑剤は別に添加する方法でビニル系樹脂組成物を調製してもよい。
【0134】
以上の手順により、可視光透過性に優れつつも、高い日射遮蔽特性、すなわち高い近赤外線吸収特性を有し、ヘイズ値が小さい日射遮蔽用合わせ構造体を製造できる。さらにここで説明した製造方法によれば、日射遮蔽用合わせ構造体の製造が容易で、生産コストの安価な日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。また、既述の日射遮蔽機能材料粒子を用いているため、耐候性に優れた日射遮蔽用合わせ構造体とすることができる。
(形態B-1)
次に、形態Bと形態1とを組み合わせた形態の合わせ構造体について説明する。
【0135】
形態B-1の合わせ構造体は、少なくとも一方の合わせ板として日射遮蔽機能材料粒子を含有する板状プラスチックを用いており、中間層は、日射遮蔽機能材料粒子と、合成樹脂とを含有する中間膜により構成されている。日射遮蔽機能材料粒子は、合成樹脂内に分散して含有されることが好ましい。
【0136】
このため、日射遮蔽機能材料粒子を含有しない2枚の板ガラス、板状プラスチックの少なくとも1枚を、日射遮蔽機能材料粒子を含有する板状プラスチックに代替する以外は、形態A-1の合わせ構造体と同様の構成を有し、同様にして製造できる。
【0137】
形態B-1の合わせ構造体も形態A-1の合わせ構造体と同様に、可視光透過性に優れつつも、高い日射遮蔽特性、すなわち高い近赤外線吸収特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体とすることができる。さらにここで説明した製造方法によれば、日射遮蔽用合わせ構造体の製造が容易で、生産コストの安価な日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。また、既述の日射遮蔽機能材料粒子を用いているため、耐候性に優れた日射遮蔽用合わせ構造体とすることができる。
(形態A-2)
次に形態Aと形態2とを組み合わせた形態A-2の合わせ構造体について説明する。
【0138】
図4に形態A-2の日射遮蔽用合わせ構造体502の一例の断面図を示す。
図4に示すように、日射遮蔽用合わせ構造体502は、2枚の合わせ板51により中間層522を挟み込んでいる。中間層522は、日射遮蔽機能材料粒子611と、合成樹脂612とを含有する中間膜621(第1中間膜)と、日射遮蔽機能材料粒子611を含有しない中間膜622(第2中間膜)とを有している。中間膜621は日射遮蔽機能材料粒子を含有しており、日射遮蔽中間膜となる。
【0139】
中間層522において、中間膜621は、中間膜622に挟みこまれた構成を有している。
【0140】
図4に示す合わせ構造体502においては、合わせ板51として板ガラスや日射遮蔽機能材料粒子を含有しない板状プラスチックを用いている。そして、中間層522は、2層以上の中間膜を有し、少なくともその内の1層は日射遮蔽機能材料粒子を含有する中間膜621により構成されている。
【0141】
図4に示す合わせ構造体502は、例えば、以下のようにして製造される。形態A-1で既述の、日射遮蔽機能材料粒子が可塑剤に分散された添加液をビニル系樹脂に添加してビニル系樹脂組成物を調製する。そして、該ビニル系樹脂組成物をシート状に成形して、中間膜621となる日射遮蔽中間膜のシートを得る。次いで、日射遮蔽中間膜のシートを、日射遮蔽機能材料粒子を含まない他の中間膜のシートと積層するか、日射遮蔽機能材料粒子を含まない2層の中間膜のシート間に介在させて中間層522となる積層体とする。次いで、中間層522となる積層体を、板ガラス、板状プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の間に挟み込んで貼り合わせることにより日射遮蔽用合わせ構造体とすることができる。
【0142】
なお、形態A-1の場合と同様に、中間膜621を製造する際、可塑剤以外の分散媒に日射遮蔽機能材料粒子を分散された分散液をビニル系樹脂に添加し、可塑剤を別に添加する方法でビニル系樹脂組成物を調製してもよい。これにより可視光透過性に優れつつも、高い日射遮蔽特性、すなわち高い近赤外線吸収特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。また、既述の日射遮蔽機能材料粒子を用いているため、耐候性に優れた日射遮蔽用合わせ構造体とすることができる。
【0143】
形態A-2の合わせ構造体によれば、日射遮蔽機能材料粒子を含まない中間膜用シートと、板ガラス、板状プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板との接着性を高めることができるので、日射遮蔽用合わせ構造体の強度が適度に高まり好ましい。
【0144】
形態A-2の合わせ構造体は、上記構成に限定されない。例えば、少なくとも片面にスパッタ法等によってAl膜やAg膜等を形成したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを作製し、当該PETフィルムを、上記中間膜間に介在させて中間層を構成することもできる。また、日射遮蔽機能材料粒子を含まない中間膜622のシートに適宜な添加剤を添加することにしても良い。これら、フィルムの介在や中間膜への添加剤の添加により、UVカット、色調調整等の機能付加を行うことができる。
(形態B-2)
次に形態Bと形態2とを組み合わせた形態B-2の合わせ構造体について説明する。
【0145】
形態B-2の合わせ構造体は、少なくとも一方の合わせ板として日射遮蔽機能材料粒子を含有した板状プラスチックを用いている。そして、中間層が、2層以上の中間膜を有し、2層以上の中間膜のうち、少なくとも1層の中間膜を、日射遮蔽機能材料粒子を含有する中間膜により構成できる。
【0146】
形態B-2の日射遮蔽用合わせ構造体は、日射遮蔽機能材料粒子を含有しない2枚の板ガラス、板状プラスチックの少なくとも1枚を、日射遮蔽機能材料粒子を含有する板状プラスチックに代替する以外は、形態A-2と同様にして製造できる。
【0147】
これにより可視光透過性に優れつつも、高い日射遮蔽特性、すなわち高い近赤外線吸収特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。また、既述の日射遮蔽機能材料粒子を用いているため、耐候性に優れた日射遮蔽用合わせ構造体とすることができる。
【0148】
形態B-2の合わせ構造体によっても、形態A-2と同様に、日射遮蔽機能材料粒子を含まない中間膜用シートと、板ガラス、板状プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板との接着性を高めることができる。このため、日射遮蔽用合わせ構造体の強度が適度に高まり好ましい。
(形態A-3)
次に形態Aと形態3とを組み合わせた形態A-3の合わせ構造体について説明する。
【0149】
図5に、形態A-3に係る日射遮蔽用合わせ構造体の一例の断面図を示す。
図5に示すように、日射遮蔽用合わせ構造体503は、2枚の合わせ板51にて中間層523を挟み込んだ構造を有する。当該中間層523は、日射遮蔽機能材料粒子を含有しない中間膜622と、中間膜622上に配置された日射遮蔽機能材料粒子611と、合成樹脂631とを含有する日射遮蔽層63とを有する。
【0150】
図5に示す合わせ構造体503は、合わせ板51として板ガラスや、日射遮蔽機能材料粒子を含有しない板状プラスチックを用いている。そして、中間層523は、少なくとも一方の板ガラスまたは板状プラスチックの内側の面51Aに配置された、合成樹脂631と、日射遮蔽機能材料粒子611とを含有する日射遮蔽層63と、日射遮蔽層63に重ねられた中間膜622とを有する。なお、日射遮蔽層63も中間膜であり、日射遮蔽中間膜に当たる。ただし、日射遮蔽層63は後述するように、一方の合わせ板51を支持体として用いて形成されており、形態1、形態2の場合よりも膜厚が薄い中間膜とすることもできる。
【0151】
図5に示した日射遮蔽用合わせ構造体503は、例えば、以下のようにして製造される。可塑剤もしくは分散媒に日射遮蔽機能材料粒子が分散された添加液へ、適宜なバインダー成分を配合して塗布液を調製する。バインダー成分としては、シリケート等の無機バインダーあるいはアクリル系、ビニル系、ウレタン系の有機バインダー等が挙げられる。調製された塗布液を用いて、少なくとも一方の合わせ板51の内側に位置する面51Aへ日射遮蔽層を形成する。次に、日射遮蔽機能材料粒子を含まない樹脂組成物をシート状に成形して中間膜のシートを得る。そして、得られた中間膜のシートを、日射遮蔽層が形成された少なくとも一方の合わせ板51の内側に位置する面51A側と、日射遮蔽層が形成されていないもう一方の合わせ板51との間に挟み込んで貼り合わせる。以上の操作により、日射遮蔽用合わせ構造体とする方法が挙げられる。
【0152】
当該方法によれば、日射遮蔽用合わせ構造体中における日射遮蔽層の膜厚を薄く設定することができる。そして、当該膜厚を薄く設定することにより、日射遮蔽層が赤外線の吸収効果に加えて反射効果も発揮するので、日射遮蔽用合わせ構造体の日射遮蔽特性の向上を図ることができる。これにより可視光透過性に優れつつも、高い日射遮蔽特性、すなわち高い近赤外線吸収特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。また、既述の日射遮蔽機能材料粒子を用いているため、耐候性に優れた日射遮蔽用合わせ構造体とすることができる。
【0153】
さらに、日射遮蔽機能材料粒子を含まない中間膜用シートに適宜な添加剤を添加することで、UVカット、色調調整、等の機能付加を行なうこともできる。
(形態B-3)
次に形態Bと形態3とを組み合わせた形態B-3の合わせ構造体について説明する。
【0154】
形態B-3の合わせ構造体は、少なくとも一方の合わせ板として日射遮蔽機能材料粒子を含有した板状プラスチックを用いている。そして、中間層が、少なくとも一方の合わせ板の内側の面に形成された日射遮蔽機能材料粒子が含まれる日射遮蔽層と、当該日射遮蔽層に重ねられた中間膜とを有する。
【0155】
形態B-3の日射遮蔽用合わせ構造体は、日射遮蔽機能材料粒子を含有しない2枚の板ガラス、板状プラスチックの少なくとも1枚を、日射遮蔽機能材料粒子を含有する板状プラスチックに代替する以外は、形態A-3と同様にして製造できる。
【0156】
当該方法によっても、形態A-3と同様に、日射遮蔽用合わせ構造体中における日射遮蔽層の膜厚を薄く設定することができる。そして、当該膜厚を薄く設定することにより、日射遮蔽層が赤外線の吸収効果に加えて反射効果も発揮するので、日射遮蔽用合わせ構造体の日射遮蔽特性の向上を図ることができる。これにより可視光透過性に優れつつも、高い日射遮蔽特性、すなわち高い近赤外線吸収特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。また、既述の日射遮蔽機能材料粒子を用いているため、耐候性に優れた日射遮蔽用合わせ構造体とすることができる。
さらに、日射遮蔽機能材料粒子を含まない中間膜用シートに適宜な添加剤を添加することで、UVカット、色調調整、等の機能付加を行なうことができる。
(形態A-4)
次に形態Aと形態4とを組み合わせた形態A-4の合わせ構造体について説明する。
(イ)
図6に、形態A-4のうち(イ)に係る日射遮蔽用合わせ構造体504の一例の断面図を示す。すなわち、中間層が、延性を有する樹脂フィルム基板と、該延性を有する樹脂フィルム基板の片面上に配置された日射遮蔽機能材料粒子を含む日射遮蔽層と、を含む2層以上の中間膜の積層体を有する形態になる。
【0157】
図6に示すように、日射遮蔽用合わせ構造体504は、2枚の合わせ板51にて中間層524を挟み込んでいる。当該中間層524において、延性を有する樹脂フィルム64上に日射遮蔽機能材料粒子611と合成樹脂631を含む日射遮蔽層63が形成されている。そして、中間層524は、当該樹脂フィルム64と日射遮蔽層63との積層体(日射遮蔽フィルム)が日射遮蔽機能材料粒子を含有しない中間膜622に挟み込まれて構成されている。なお、延性を有する樹脂フィルム64、および日射遮蔽層63も中間膜であり、それぞれ支持中間膜、日射遮蔽中間膜に当たる。ただし、日射遮蔽層63は後述するように、延性を有する樹脂フィルム64を支持体として用いて形成されており、形態1、形態2の場合よりも膜厚が薄い中間膜とすることもできる。
【0158】
また、延性を有する樹脂、延性を有する樹脂フィルムの延性の程度については特に限定されず、合わせ構造体の構成や、合わせ構造体に要求される延性の程度等に応じて選択できる。
【0159】
図6に示すように合わせ板として板ガラスや日射遮蔽機能材料粒子を含有しない板状プラスチックを用い、中間層が、延性を有する樹脂フィルム基板と、該延性を有する樹脂フィルム基板の片面上に配置された日射遮蔽機能材料粒子を含む日射遮蔽層と、を含む2層以上の中間膜の積層体を含む日射遮蔽用合わせ構造体は、例えば、以下のようにして製造される。
【0160】
例えば、可塑剤もしくは分散媒に日射遮蔽機能材料粒子が分散された分散液、もしくは添加液に適宜バインダー成分を配合して調製した塗布液を用いて、延性を有する樹脂フィルムの片面に日射遮蔽層を形成する。バインダー成分としては、シリケート等の無機バインダーあるいはアクリル系、ビニル系、ウレタン系の有機バインダー等が挙げられる。
【0161】
当該延性を有する樹脂フィルム基板の片面上に日射遮蔽層を形成する際、樹脂フィルム表面に対し、樹脂バインダーとの結着性向上を目的として、予めコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー層コート処理などによる表面処理を施してもよい。
【0162】
さらに、日射遮蔽機能材料粒子を含まないビニル系樹脂組成物をシート状に成形して中間膜のシートを得ることができる。上記片面に日射遮蔽層が形成された延性を有する樹脂フィルム基板を、当該日射遮蔽機能材料粒子を含まない中間膜のシートの間に配置して中間層とすることが好ましい。当該構成を採ることで、片面に日射遮蔽層が形成された延性を有する樹脂フィルム基板と、合わせ板との間での接着性を容易に調整できる。ここで、2層以上の積層した中間膜の内の1層に、日射遮蔽機能材料粒子や、UVカット、色調調整、等の効果を有する適宜な添加剤を含有させても勿論よい。
【0163】
そして、得られた中間層524を、板ガラス、板状プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板51の間に挟み込んで貼り合わせることにより日射遮蔽用合わせ構造体504とすることができる。
(ロ)中間層が、延性を有する樹脂フィルム基板を含む2層以上の中間膜の積層体を有し、該延性を有する樹脂フィルム基板が内部に日射遮蔽機能材料粒子を含む日射遮蔽層である形態について説明する。
【0164】
図7に、形態A-4のうち(ロ)に係る日射遮蔽用合わせ構造体505の一例の断面図を示す。すなわち、中間層が、延性を有する樹脂フィルム基板を含む2層以上の中間膜の積層体を有し、該延性を有する樹脂フィルム基板が内部に日射遮蔽機能材料粒子を含む日射遮蔽層である形態になる。
【0165】
図7に示すように、当該日射遮蔽用合わせ構造体505は、2枚の合わせ板51にて中間層525を挟み込んでいる。
【0166】
中間層525は、日射遮蔽機能材料粒子611と延性を有する樹脂651を含む、延性を有する樹脂フィルム65(日射遮蔽フィルム)を有している。そして、
図7では、延性を有する樹脂フィルム65が日射遮蔽機能材料粒子を含有しない中間膜622に挟み込まれて構成されている。なお、延性を有する樹脂フィルム65も中間膜であり、日射遮蔽中間膜に当たる。
【0167】
延性を有する樹脂フィルム65は、例えば以下のようにして製造できる。延性を有する樹脂651を、その融点付近の温度(200℃以上300℃以下前後)で加熱し、日射遮蔽機能材料粒子と混合して混合物を調製する。さらに、当該延性を有する樹脂と日射遮蔽機能材料粒子との混合物をペレット化し、所定の方式でフィルムやボード等を形成する。例えば、押し出し成形法、インフレーション成形法、溶液流延法、キャスティング法などにより形成可能である。この時のフィルムやボード等の厚さは、使用目的に応じて適宜選定すればよい。当該延性を有する樹脂651に添加する日射遮蔽機能材料粒子611の量は、基材の厚さや必要とされる光学特性、機械特性に応じて可変であるが、一般的に樹脂に対して50重量%以下が好ましい。
【0168】
さらに、日射遮蔽機能材料粒子を含まないビニル系樹脂組成物をシート状に成形して中間膜622のシートを得ることができる。内部に日射遮蔽機能材料粒子を含む延性を有する樹脂フィルム65を、当該2枚の中間膜622のシートの間に配置して中間層525とすることができる。
【0169】
そして、得られた中間層525を、板ガラス、板状プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板51の間に挟み込んで貼り合わせることにより日射遮蔽用合わせ構造体505とすることができる。
【0170】
ここで、2層以上の積層した中間膜622のうちの少なくとも1層に日射遮蔽機能材料粒子を含有させても勿論よい。さらに、所望により、当該日射遮蔽機能材料粒子を含まない中間膜622へ、UVカット、色調調整、等の効果を有する適宜な添加剤を自在且つ容易に添加することができ、多機能を有する日射遮蔽用合わせ構造体を得ることができる。
【0171】
上記(イ)、(ロ)にて説明した製造方法によっても、日射遮蔽用合わせ構造体中における日射遮蔽層の膜厚を薄く設定することができる。そして、当該膜厚を薄く設定することにより、日射遮蔽層が赤外線の吸収効果に加えて反射効果も発揮するので、日射遮蔽特性の向上を図ることができる。これにより可視光透過性に優れつつも、高い日射遮蔽特性、すなわち高い近赤外線吸収特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造できる。また、既述の日射遮蔽機能材料粒子を用いているため、耐候性に優れた日射遮蔽用合わせ構造体とすることができる。
【0172】
さらに、日射遮蔽機能材料粒子を含まない中間膜のシートに適宜な添加剤を添加することで、UVカット、色調調整等の機能付加を行なうことができる。
(形態B-4)
次に形態Bと形態4とを組み合わせた形態B-4の合わせ構造体について説明する。
【0173】
形態B-4の合わせ構造体は、少なくとも一方の合わせ板として日射遮蔽機能材料粒子を含有した板状プラスチックを用いることができる。
【0174】
そして、中間層として、以下のいずれかの構成を有することができる。中間層が、延性を有する樹脂フィルム基板の片面上に形成された日射遮蔽機能材料粒子が含まれる日射遮蔽層と、2層以上の積層した中間膜とを有する。または、中間層が、延性フィルム基板の内部に日射遮蔽機能材料粒子が含まれる日射遮蔽層と、2層以上の積層した中間膜とを有する。
【0175】
形態B-4の日射遮蔽用合わせ構造体は、日射遮蔽機能材料粒子を含有しない2枚の板ガラス、プラスチックの少なくとも1枚を、日射遮蔽機能材料粒子を含有する板状プラスチックに代替する以外は、形態A-4と同様に製造することができる。
【0176】
当該方法によっても、形態A-4と同様に、日射遮蔽用合わせ構造体中における日射遮蔽層の膜厚を薄く設定することができる。そして、当該膜厚を薄く設定することにより、日射遮蔽層が赤外線の吸収効果に加えて反射効果も発揮するので、日射遮蔽特性の向上を図ることができる。これにより可視光透過性に優れつつも、高い日射遮蔽特性、すなわち高い近赤外線吸収特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。また、既述の日射遮蔽機能材料粒子を用いているため、耐候性に優れた日射遮蔽用合わせ構造体とすることができる。さらに、日射遮蔽機能材料粒子を含まない中間膜のシートに適宜な添加剤を添加することで、UVカット、色調調整、等の機能付加を行なうことができる。
(形態A-5)
次に形態Aと形態5とを組み合わせた形態A-5の合わせ構造体について説明する。
【0177】
図8に、形態A-5に係る日射遮蔽用合わせ構造体の一例の断面図を示す。
図8に示すように、形態A-5の日射遮蔽用合わせ構造体506は、2枚の合わせ板51にて中間層526を挟み込んでいる。当該中間層526は、日射遮蔽機能材料粒子611と、合成樹脂612とを含有する中間膜621(第1中間膜)と、日射遮蔽機能材料粒子を含有しない中間膜622(第2中間膜)と、を有する。中間膜621は日射遮蔽機能材料粒子を含有しており、日射遮蔽中間膜となる。
【0178】
図8に示した、合わせ板として板ガラスや日射遮蔽機能材料粒子を含有しない板状プラスチックを用い、中間層が、中間膜の一方の面に日射遮蔽機能材料粒子が含まれる日射遮蔽中間膜が形成されたものである日射遮蔽用合わせ構造体は、例えば、以下のようにして製造される。
【0179】
まず、可塑剤もしくは分散媒に日射遮蔽機能材料粒子が分散された添加液や分散液にバインダー成分を配合して塗布液を調製する。なお、バインダー成分としては、例えばシリケート等の無機バインダーあるいはアクリル系、ビニル系、ウレタン系の有機バインダー等を用いることができる。
【0180】
次いで、上記塗布液を、日射遮蔽機能材料粒子を含まない樹脂組成物をシート状に成形した中間膜シートの一方の面に塗布して日射遮蔽中間膜(日射遮蔽層)を形成して日射遮蔽層付中間膜を得る。
【0181】
そして、日射遮蔽層付中間膜を、板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の間に挟み込んで貼り合わせることにより日射遮蔽用合わせ構造体とすることができる。
【0182】
上記方法によれば、日射遮蔽機能材料粒子を含む膜を中間膜のシートの表面に形成しているので、当該日射遮蔽機能材料粒子へ、さらにフィラー等の添加物を所望に応じて添加することができ、日射遮蔽特性の向上を図ることができる。これにより可視光透過性に優れつつも、高い日射遮蔽特性、すなわち高い近赤外線吸収特性を有し、ヘイズ値が小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。また、既述の日射遮蔽機能材料粒子を用いているため、耐候性に優れた日射遮蔽用合わせ構造体とすることができる。
(形態B-5)
次に形態Bと形態5とを組み合わせた形態B-5の合わせ構造体について説明する。
【0183】
形態B-5の日射遮蔽用合わせ構造体は、少なくとも一方の合わせ板として日射遮蔽機能材料粒子を含有した板状プラスチックを用いることができる。そして、中間層として、中間膜の一方の面に日射遮蔽機能材料粒子が含まれる日射遮蔽層が形成されたものを用いることができる。
【0184】
形態B-5の日射遮蔽用合わせ構造体は、日射遮蔽機能材料粒子を含有しない2枚の板ガラス、プラスチックの少なくとも1枚を、日射遮蔽機能材料粒子を含有するプラスチックに代替する以外は、形態A-5と同様に製造することができる。
【0185】
当該方法によっても、日射遮蔽機能材料粒子を含む膜を中間膜のシートの表面に形成しているので、当該日射遮蔽機能材料粒子へ、さらにフィラー等の添加物を所望に応じて添加することができ、日射遮蔽特性の向上を図ることができる。これにより可視光透過性に優れつつも、高い日射遮蔽特性、すなわち高い近赤外線吸収特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。また、既述の日射遮蔽機能材料粒子を用いているため、耐候性に優れた日射遮蔽用合わせ構造体とすることができる。
(形態A-6)
次に形態Aと形態6とを組み合わせた形態A-6の合わせ構造体について説明する。
【0186】
合わせ板として板ガラスや、日射遮蔽機能材料粒子を含有しない板状プラスチックを用いている。そして、上記2枚の合わせ板の一方の内側の面に、中間層の一部を構成する、接着剤層、日射遮蔽機能材料粒子を含む日射遮蔽層、剥離層の順に積層された積層体の接着剤層が接着している。上記中間層は、上記積層体の剥離層側へ積層体と重なり合う中間膜または2層以上の積層した中間膜をさらに有している。
【0187】
つまり、形態A-6の合わせ構造体は、一方の合わせ板/接着剤層/日射遮蔽機能材料粒子を含む日射遮蔽層/剥離層/中間膜または2層以上の積層した中間膜/他方の合わせ板の順に積層した構造を有している。なお、接着剤層、日射遮蔽層、剥離層も中間膜である。
【0188】
形態A-6の合わせ構造体は、例えば、以下のようにして製造できる。係る製造工程を
図9(A)~
図9(C)を用いて説明する。
図9(A)~
図9(C)は、形態A-6に係る合わせ構造体の一例の、製造工程における断面図を示す。
【0189】
まず、
図9(A)に示すように、フィルムシート67の一方の面に剥離層66を形成し、この剥離層66上に日射遮蔽機能材料粒子611と合成樹脂631を含む日射遮蔽層63を形成する。日射遮蔽層63上に接着剤層68を形成して積層体とし転写フィルム69を得る。
【0190】
フィルムシート67としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、フッ素などの合成樹脂フィルム、紙、セロファンなどが挙げられる。
【0191】
剥離層66の材料としては、例えば、ワックス、アクリル系樹脂、ポリビニルブチラールに代表されるポリビニルアセタールなどが挙げられる。
【0192】
接着剤層68の材料としては、例えば、ポリビニルブチラールに代表されるポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、塩化ビニル-エチレン-グリシジルアクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリアミド、ポリメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0193】
そして、転写フィルム69の接着剤層68を、一方の合わせ板51の内側の面に加圧下で接着した後、転写フィルム69からフィルムシート67を剥離する。すると、剥離層66の効果により転写フィルム69から、フィルムシート67のみが剥離される。
【0194】
フィルムシート67を剥離した状態が日射遮蔽フィルムであり
図9(B)に示す。このフィルムシート67の剥離の後、上述した中間膜622または2層以上の積層した中間膜を介して、もう一方の板ガラスまたはプラスチックの合わせ板51の内側の面と加圧下で接着させる。これにより、
図9(C)に示す日射遮蔽用合わせ構造体507とすることができる。
【0195】
得られる形態A-6に係る日射遮蔽用合わせ構造体507の一例は、
図9(C)に示すように当該2枚の合わせ板51にて中間層527を挟み込んでいる。そして、当該中間層527は、日射遮蔽材料機能粒子を含有しない中間膜622、剥離層66、日射遮蔽機能材料粒子611を含む日射遮蔽層63、接着剤層68から構成される。
【0196】
上記方法により、可視光透過性に優れつつも、高い日射遮蔽特性、すなわち高い近赤外線吸収特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。さらに上記方法は、日射遮蔽用合わせ構造体の製造が容易で、生産コストの安価な日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。また、既述の日射遮蔽機能材料粒子を用いているため、耐候性に優れた日射遮蔽用合わせ構造体とすることができる。また、当該方法によれば、容易に膜厚の薄い日射遮蔽層を製造することができ、さらに、中間膜、剥離層や接着剤層へ、適宜な添加剤を加えることで、UVカット、色調調整等の機能付加を行なうことができる。
(形態B-6)
次に形態Bと形態6とを組み合わせた形態B-6の合わせ構造体について説明する。
【0197】
形態B-6の日射遮蔽用合わせ構造体は、少なくとも一方の合わせ板として日射遮蔽機能材料粒子を含む板状プラスチックを用いることができる。
【0198】
そして、上記2枚の合わせ板の一方の内側の面に、中間層の一部を構成する、接着剤層、日射遮蔽機能材料粒子を含む日射遮蔽層、剥離層の順に積層された積層体の接着剤層が接着している。上記中間層は、上記積層体の剥離層側へ積層体と重なり合う中間膜または2層以上の積層した中間膜をさらに有している。
【0199】
つまり、形態B-6の合わせ構造体は、一方の合わせ板/接着剤層/日射遮蔽機能材料粒子が含まれる日射遮蔽層/剥離層/中間膜または2層以上の積層した中間膜/他方の合わせ板の順に積層した構造を有している。
【0200】
形態B-6の日射遮蔽用合わせ構造体は、日射遮蔽機能材料粒子を含有しない2枚の板ガラス、プラスチックの少なくとも1枚を、日射遮蔽機能材料粒子を含有するプラスチックに代替する以外は、形態A-6と同様に製造することができる。
【0201】
上記方法により、可視光透過性に優れつつも、高い日射遮蔽特性、すなわち高い近赤外線吸収特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。さらに上記方法は、日射遮蔽用合わせ構造体の製造が容易で、生産コストの安価な日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。また、既述の日射遮蔽機能材料粒子を用いているため、耐候性に優れた日射遮蔽用合わせ構造体とすることができる。また、当該方法によっても、容易に膜厚の薄い日射遮蔽層を製造することができ、さらに、剥離層や接着剤層へ、適宜な添加剤を加えることで、UVカット、色調調整等の機能付加を行なうことができる。
(形態B-7)
次に形態Bと形態7とを組み合わせた形態B-7の合わせ構造体について説明する。
【0202】
図10に、形態B-7に係る日射遮蔽用合わせ構造体の一例の断面図を示す。
図10に示すように、形態B-7の日射遮蔽用合わせ構造体508は、日射遮蔽機能材料粒子611を含有する合わせ板70と、当該粒子を含有しない合わせ板51とで、中間層528を挟み込んでいる。中間層528は、日射遮蔽機能材料粒子を含有しない中間膜622により形成されている。
【0203】
少なくとも一方の合わせ板として日射遮蔽機能材料粒子を含有する板状プラスチックを用い、中間層が、日射遮蔽機能材料粒子を含まない、例えば、ビニル系樹脂を含む中間膜により構成された日射遮蔽用合わせ構造体は、例えば、以下のようにして製造される。
【0204】
可塑剤をビニル系樹脂に添加してビニル系樹脂組成物を調製し、このビニル系樹脂組成物をシート状に成形して中間膜用シートを得る。当該中間膜用シートを挟み込む少なくとも一方の合わせ板として日射遮蔽機能材料粒子を含有した板状プラスチックを用い、他方の合わせ板にガラス板、または板状プラスチックを用いればよい。
【0205】
上記方法により、可視光透過性に優れつつも、高い日射遮蔽特性、すなわち高い近赤外線吸収特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。さらに上記方法は、日射遮蔽用合わせ構造体の製造が容易で、生産コストの安価な日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。また、既述の日射遮蔽機能材料粒子を用いているため、耐候性に優れた日射遮蔽用合わせ構造体とすることができる。さらに、中間膜、および他方の合わせ板から選択された1以上の部材へ適宜な添加剤を加えることで、UVカット、色調調整等の機能付加を行うこともできる。
4.日射遮蔽機能材料粒子の分散液、添加液、塗布液の製造方法
既述の中間膜等を形成する際に用いることができる日射遮蔽機能材料粒子の分散液、添加液、塗布液の製造方法について説明する。
【0206】
日射遮蔽機能材料粒子の分散液、添加液の製造方法は特に限定されず、日射遮蔽機能材料粒子が可塑剤もしくは分散媒中に均一に分散できる方法であれば任意の方法を用いることができる。例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザーなどを用いた粉砕・分散処理方法を挙げることができ、日射遮蔽機能材料粒子を可塑剤もしくは分散媒に分散することによって、本実施形態の日射遮蔽用合わせ構造体の製造に適用できる分散液、添加液を調製できる。
【0207】
日射遮蔽機能材料粒子を分散させる分散媒としては特に限定されるものではなく、日射遮蔽層等を形成する条件およびビニル系樹脂組成物やアイオノマー樹脂組成物を調製する際に配合される樹脂等に合わせて適宜選択することが可能である。分散媒としては、例えば水やエタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン等のケトン類、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールの化合物等から選択された1種類以上の有機溶媒が使用可能である。また、必要に応じて酸やアルカリを添加してpH調整してもよい。さらに、上記塗布液中における粒子の分散安定性を一層向上させるため、各種の界面活性剤、カップリング剤等の添加も勿論よい。
【0208】
上述の分散媒を用い、日射遮蔽機能材料粒子分散液等を調製できる。
【0209】
添加液は、上記分散媒の代わりに可塑剤に日射遮蔽機能材料粒子を分散した液である。前述のビニル系樹脂の可塑性を調整する可塑剤についても特に限定されず、例えばジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、アジピン酸-ジ-2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソデシル、エポキシ脂肪酸モノエステル、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキソエート、セバシン酸ジブチル、ジブチルセバケート等から選択された1種類以上を用いることができる。
【0210】
なお、可塑剤を、分散媒として用いると、可塑剤は粘度が高いので、日射遮蔽機能材料粒子の分散を阻害する場合がある。係る場合、分散液の分散媒を可塑剤に置換することで可塑剤を分散媒とした添加液を製造できる。
【0211】
塗布液は、前述の分散液や添加液に適宜バインダー成分を配合して調製される。塗布液の分散媒等は、該バインダー成分に合わせて選択できる。
【0212】
バインダー成分としては、例えば無機バインダーや、有機バインダーを用いることができ、任意に選択できる。
【0213】
バインダー成分として無機バインダーを用いる場合、当該無機バインダーとして、珪素、ジルコニウム、チタン、若しくはアルミニウムの金属アルコキシドやこれらの部分加水分解縮重合物あるいはオルガノシラザンが挙げられる。
【0214】
また、バインダー成分として有機バインダーを用いる場合、当該有機バインダーとして、スチレン系、アクリル系、UV硬化樹脂、ビニル系、ウレタン系、エポキシ系の樹脂を用いることができる。これら樹脂は、モノマーやオリゴマーとして配合しても、これら樹脂を塗布液の溶媒に溶解して用いても良い。塗布液に有機バインダーとしてモノマーやオリゴマーを添加する場合、塗布する際の塗布液には硬化剤など、モノマーなどの硬化に必要な薬剤を添加、含有しても良い。
【0215】
無機バインダーとして、珪素、ジルコニウム、チタン、もしくはアルミニウムの金属アルコキシド、およびその加水分解重合物を用いる場合、塗布液の塗布後の基材加熱温度を例えば100℃以上とすることが好ましい。基材加熱温度を100℃以上とすることで、塗膜中に含まれるアルコキシドまたはその加水分解重合物の重合反応をほとんど完結させることができる。重合反応をほとんど完結させることで、膜中に水や有機溶媒が残留することを抑制し、加熱後の膜の可視光透過率を高めることができる。このため、上記加熱温度は100℃以上が好ましく、さらに好ましくは塗布液中の分散媒や可塑剤等の沸点以上である。
【0216】
該分散液、添加液および塗布液中における、日射遮蔽機能材料粒子の分散の状況を評価する指標として分散粒子径がある。分散粒子径とは、溶媒中に分散している日射遮蔽機能材料粒子が凝集して生成した凝集粒子の径を意味するものであり、市販されている種々の粒度分布計で測定することができる。例えば、動的光散乱法を原理とした大塚電子製ELS-8000にて測定することで求めることができる。
【0217】
上記分散液や、添加液、塗布液を適宜な透明基材上に塗布して被膜を形成する場合、当該塗布方法は特に限定されない。当該塗布方法は、例えば、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、ロールコート法、流し塗りなど、分散液や塗布液を平坦かつ薄く均一に塗布できる方法であればいずれの方法でもよい。
【0218】
本実施形態の日射遮蔽機能材料粒子の分散液、添加液、および塗布液における分散の状態は、日射遮蔽機能材料粒子を分散媒中に分散した時の日射遮蔽機能材料粒子の分散状態を測定することで確認できる。例えば、本実施形態の日射遮蔽機能材料粒子が、分散媒中において粒子および粒子の凝集状態として存在する液から試料をサンプリングし、市販されている種々の粒度分布計で測定することで確認することができる。粒度分布計としては、例えば、動的光散乱法を原理とした大塚電子株式会社製ELS-8000等の公知の測定装置を用いることができる。
【0219】
日射遮蔽機能材料粒子の分散粒子径は、光学特性の観点から800nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。
【0220】
日射遮蔽機能材料の分散粒子径の下限値は特に限定されないが、例えば10nm以上であることが好ましい。
【0221】
日射遮蔽機能材料粒子は、分散媒や可塑剤等の中に均一に分散していることが好ましい。
【0222】
日射遮蔽機能材料粒子の分散粒子径を800nm以下とすることで、例えば日射遮蔽機能材料粒子分散液を用いて製造される近赤外線吸収膜(近赤外線遮蔽膜)や成形体(板、シート等)が、単調に透過率の減少した灰色系になることを回避できるからである。
【0223】
なお、分散粒子径とは、日射遮蔽機能材料粒子分散液中に分散した日射遮蔽機能材料粒子の単体粒子や、当該日射遮蔽機能材料粒子が凝集した凝集粒子の粒子径を意味するものである。
【実施例0224】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1]
水36gにCs2CO323.5gを溶解し、これをH2WO4109gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、実施例1に係る原料混合物を得た(原料調製工程)。
【0225】
次に、原料調製工程で調製した原料混合物を用いて、
図1に示す直流プラズマと高周波プラズマを重畳させたハイブリッドプラズマ反応装置10を用い、反応工程を実施した。
【0226】
まず、真空排気装置13により反応系内を約0.1Pa(約0.001torr)まで真空引きした後、アルゴンガスで完全に置換して1気圧のアルゴン流通系とした。
【0227】
プラズマ発生用ガス供給口15よりアルゴンガス8L/minを流し、直流プラズマを発生させた。このときの直流電源入力は6kWである。
【0228】
さらに、水冷石英二重管11の内壁に沿って、高周波プラズマ発生用および石英管保護用のガスとして、シースガス導入口16より螺旋状にアルゴンガス40L/minと水素ガス3L/minを流し、高周波プラズマを発生させた。
【0229】
このときの高周波電源入力は45kWとした。このようなハイブリッドプラズマを発生させた後、3L/minのアルゴンガスと0.01L/minの酸素ガスとの混合ガスをキャリアガスとして、原料粉末供給装置19より実施例1に係る原料混合物を2g/minの供給速度でプラズマ中に供給した。
【0230】
その結果、原料は瞬時に蒸発し、プラズマ尾炎部で凝縮して微粒化した。反応容器12の底で、日射遮蔽機能材料粒子である粒子(セシウム酸化タングステン粒子a)を回収した。
【0231】
回収したセシウム酸化タングステン粒子aの粒子径をTEM観察により求めたところ、評価を行った30個の粒子の粒子径は、10nm以上50nm以下であることが確認できた。なお、評価を行う粒子に外接する最小の円の直径を、該粒子の粒子径として、粒子径を算出した。
【0232】
回収したセシウム酸化タングステン粒子aについてのCs、W、O定量分析の結果、それぞれ14.7wt%、65.5wt%、18.3wt%であり、前記定量分析から算出した化学式は、Cs0.31WO3.21であることを確認できた。表1の組成の欄に分析結果を示している。
【0233】
なお、M元素、すなわちCsは、フレーム原子吸光装置(VARIAN社製、型式:SpectrAA 220FS)により評価した。Wは、ICP発光分光分析装置(島津製作所製、型式:ICPE9000)により評価した。Oは、酸素窒素同時分析計(LECO社製、型式:ON836)により評価した。以下、他の実施例、比較例についても同様である。
【0234】
セシウム酸化タングステン粒子aについて、粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社PANalytical製X'Pert-PRO/MPD)を用いて、粉末X線回折法(θ-2θ法)によりX線回折パターンを測定した。得られたX線回折パターンからセシウム酸化タングステン粒子aに含まれる化合物の結晶構造を特定したところ、六方晶のCs0.3WO3と同じピークが確認された。上記のように、X線回折パターンにより、得られた複合タングステン酸化物の結晶構造を特定できる。本実施例の場合、上述のように複合タングステン酸化物の粒子が含有する化合物の結晶構造が、類似する六方晶の複合タングステン酸化物のピークと一致する。このため、本実施例で得られた複合タングステン酸化物、すなわちセシウム酸化タングステンの結晶構造は、六方晶であることが確認できる。
【0235】
セシウム酸化タングステン粒子aを5重量%と、高分子系分散剤を5重量%と、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを90重量%と秤量し、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーで1時間解砕した。これにより、日射遮蔽材料粒子分散液を調製した。また、日射遮蔽機能材料粒子分散液から溶媒を除去した後の結晶子径は、25nmであった。また、格子定数はa軸が7.4099Åで、c軸が7.6090Åであった。結晶子径、および格子定数は、リートベルト法により算出した。これらの評価結果は表2に示す。
【0236】
次に、得られた分散液(A液)をポリビニルブチラールに添加し、そこへ可塑剤としてトリエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレートを加え、セシウム酸化タングステン粒子aの濃度が0.036質量%、ポリビニルブチラール濃度が71.1質量%となるように中間膜用組成物を調製した。調製された当該組成物をロールで混練して、0.76mm厚のシート状に成形し中間膜を作製した。作製された中間膜を、100mm×100mm×約2mm厚のグリーンガラス基板2枚の間に挟み込み、80℃に加熱して仮接着した後、140℃、14kg/cm2のオートクレーブにより本接着を行い、合わせ構造体Aを作製した。
【0237】
下記評価方法で実施例1に係る日射遮蔽用合わせ構造体Aを評価した。
<耐熱性評価>
得られた合わせ構造体Aについて、大気中120℃に125時間保持する耐熱性試験を実施して、日射遮蔽構造体の可視光透過率と日射透過率のΔ値を評価した。
【0238】
可視光透過率と日射透過率とは、日立製作所(株)製の分光光度計U-4000を用いて測定し、JIS R 3106(2019)に従って算出した。上記日射透過率は熱線遮蔽性能を示す指標である。
【0239】
可視光透過率と、日射透過率とは、耐熱性試験の前後で評価し、可視光透過率のΔ値は、(耐熱性試験後の可視光透過率)-(耐熱性試験前の可視光透過率)により算出される。表1中Δ可視光透過率としてΔ値を示している。日射透過率のΔ値は、(耐熱性試験後の日射透過率)-(耐熱性試験前の日射透過率)により算出される。表1中Δ日射透過率としてΔ値を示している。
【0240】
各Δ値は1.0%以下であれば耐熱性に優れていることを意味する。Δ値が1.0%より大きければ耐熱性が劣っていることを意味する。当該評価結果を表1に示す。
【0241】
表1中に示した可視光透過率、日射透過率は耐熱性試験前の評価結果になる。
【0242】
【0243】
【表2】
[実施例2]
図2に示す高周波プラズマ反応装置30を用い、日射遮蔽機能材料粒子を調製した。
【0244】
高周波プラズマ反応装置30は、水冷石英二重管31と、水冷石英二重管31と接続された反応容器32を有している。また、反応容器32には真空排気装置33が接続されている。
【0245】
水冷石英二重管31の上方にはプラズマ発生用ガス供給口34が設けられている。
【0246】
水冷石英二重管31の内壁に沿って、高周波プラズマ発生用、および石英管保護用のシースガスを供給できるように構成されており、水冷石英二重管31の上方のフランジにはシースガス導入口36が設けられている。
【0247】
水冷石英二重管31の周囲には、高周波プラズマ発生用の水冷銅コイル37が配置されている。
【0248】
プラズマ発生用ガス供給口34近傍には、原料粉末キャリアガス供給口38が設けられ、原料粉末を供給する原料粉末供給装置39と配管で接続されている。
【0249】
プラズマ発生用ガス供給口34、シースガス導入口36、原料粉末供給装置39は、配管により、ガス供給装置40と接続し、ガス供給装置40から所定のガスを各部材に供給できるように構成できる。なお、必要に応じて、装置内の部材を冷却したり、所定の雰囲気にできるように上記部材以外にも供給口を設けておき、上記ガス供給装置40と接続しておくこともできる。
【0250】
本実施例ではまず、プラズマ発生用ガス供給口34より、アルゴンガス30L/minを流し、シースガス導入口36より螺旋状にアルゴンガス40L/minと水素ガス3L/minの流量で混合して供給し、高周波プラズマを発生させた。このときの高周波電源入力は45kWとした。
【0251】
次に、3L/minのアルゴンガスと0.01L/minの酸素ガスとの混合ガスをキャリアガスとして、原料粉末供給装置39より、実施例1で調製した原料混合物を2g/minの割合でプラズマ中に供給した。
【0252】
その結果、反応容器32の底で回収された日射遮蔽機能材料粒子の粒子径は、TEM観察より10nm以上50nm以下であった。
【0253】
得られた実施例2に係る日射遮蔽機能材料粒子のX線回折パターンを粉末X線回折法(θ-2θ法)により測定した。得られたX線回折パターンから当該粒子に含まれる結晶構造を特定したところ、六方晶のCs0.3WO3と同じピークが確認された。
【0254】
そして、実施例2に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0255】
結果を表1、表2に示す。
[実施例3]
実施例2において、5L/minのアルゴンガスと0.01L/minの酸素ガスとの混合ガスをキャリアガスとした点以外は、実施例2と同様にして実施例3に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例3に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0256】
結果を表1、表2に示す。
[実施例4]
4L/minのアルゴンガスと0.01L/minの酸素ガスとの混合ガスをキャリアガスとした点以外は、実施例2と同様にして実施例4に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例4に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0257】
結果を表1、表2に示す。
[実施例5]
5L/minのアルゴンガスと0.02L/minの酸素ガスとの混合ガスをキャリアガスとした点以外は、実施例2と同様にして実施例5に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例5に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0258】
結果を表1、表2に示す。
[実施例6]
4.5L/minのアルゴンガスと0.02L/minの酸素ガスとの混合ガスをキャリアガスとし、かつ実施例1で調製した原料混合物を2.5g/minの割合でプラズマ中に供給した点以外は、実施例2と同様にして実施例6に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例6に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0259】
結果を表1、表2に示す。
[実施例7]
水50gにLi2CO36.65gを溶解し、これをH2WO4150gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、実施例7に係る原料混合物を得た。
【0260】
実施例7に係る原料混合物を、実施例2と同様にプラズマ中に供給した点以外は、実施例2と同様の操作で実施例7に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例7に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0261】
結果を表1に示す。
[実施例8]
水43gにNa2CO32.74gを溶解し、これをH2WO4130gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、実施例8に係る原料混合物を得た。
【0262】
実施例8に係る原料混合物を、実施例2と同様にプラズマ中に供給した点以外は、実施例2と同様の操作で実施例8に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例8に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0263】
結果を表1に示す。
[実施例9]
水59gにK2CO313.43gを溶解し、これをH2WO4180gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、実施例9に係る原料混合物を得た。
【0264】
実施例9に係る原料混合物を、実施例2と同様にプラズマ中に供給した点以外は、実施例2と同様の操作で実施例9に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例9に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0265】
結果を表1に示す。
[実施例10]
水50gにRb2CO322.17gを溶解し、これをH2WO4150gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、実施例10に係る原料混合物を得た。
【0266】
実施例10に係る原料混合物を、実施例2と同様にプラズマ中に供給した点以外は、実施例2と同様の操作で実施例10に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例10に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0267】
結果を表1に示す。
[実施例11]
水40gにCu(NO3)23H2Oを30.16g溶解し、これをH2WO4120gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、実施例11に係る原料混合物を得た。
【0268】
実施例11に係る原料混合物を、実施例2と同様にプラズマ中に供給した点以外は、実施例2と同様の操作で実施例11に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例11に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0269】
結果を表1に示す。
[実施例12]
水40gにAg2CO30.66gを溶解し、これをH2WO4120gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、実施例12に係る原料混合物を得た。
【0270】
実施例12に係る原料混合物を、実施例2と同様にプラズマ中に供給した点以外は、実施例2と同様の操作で実施例12に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例12に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0271】
結果を表1に示す。
[実施例13]
水53gにCaCO36.42gを溶解し、これをH2WO4 160gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、実施例13に係る原料混合物を得た。
【0272】
実施例13に係る原料混合物を、実施例2と同様にプラズマ中に供給した点以外は、実施例2と同様の操作で実施例13に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例13に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0273】
結果を表1に示す。
[実施例14]
水59gにSrCO38.50gを溶解し、これをH2WO4180gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、実施例14に係る原料混合物を得た。
【0274】
実施例14に係る原料混合物を、実施例2と同様にプラズマ中に供給した点以外は、実施例2と同様の操作で実施例14に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例14に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0275】
結果を表1に示す。
[実施例15]
水40gにBaCO313.26gを溶解し、これをH2WO4120gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、実施例15に係る原料混合物を得た。
【0276】
実施例15に係る原料混合物を、実施例2と同様にプラズマ中に供給した点以外は、実施例2と同様の操作で実施例15に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例15に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0277】
結果を表1に示す。
[実施例16]
In2O31.67gとH2WO4150gを擂潰機で十分混合し、実施例16に係る原料混合物を得た。
【0278】
実施例16に係る原料混合物を、実施例2と同様にプラズマ中に供給した点以外は、実施例2と同様の操作で実施例16に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例16に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0279】
結果を表1に示す。
[実施例17]
水180gにTlNO312.15gを溶解し、これをH2WO460gに添加して十分攪拌した後、乾燥し、実施例17に係る原料混合物を得た。
【0280】
実施例17に係る原料混合物を、実施例2と同様にプラズマ中に供給した点以外は、実施例2と同様の操作で実施例17に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例17に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0281】
結果を表1に示す。
[実施例18]
SnO217.18gとH2WO4150gを擂潰機で十分混合し、実施例18に係る原料混合物を得た。
【0282】
実施例18に係る原料混合物を、実施例2と同様にプラズマ中に供給した点以外は、実施例2と同様の操作で実施例18に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例18に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0283】
結果を表1に示す。
[実施例19]
Yb2O317.98gとH2WO4120gを擂潰機で十分混合し、実施例19に係る原料混合物を得た。
【0284】
実施例19に係る原料混合物を、実施例2と同様にプラズマ中に供給した点以外は、実施例2と同様の操作で実施例19に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例19に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0285】
結果を表1に示す。
[実施例20]
日産化学社製スノ-テックスSを17.25gと、H2WO4150gとを擂潰機で十分混合した後、乾燥し、実施例20に係る原料混合物を得た。
【0286】
実施例20に係る原料混合物を、実施例2と同様にプラズマ中に供給した点以外は、実施例2と同様の操作で実施例20に係る日射遮蔽機能材料粒子を製造した。そして、実施例20に係る日射遮蔽機能材料粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして分散液、合わせ構造体を作製し評価した。
【0287】
結果を表1に示す。
[比較例1]
水50gに、炭酸セシウム(Cs2CO3)55.45gを溶解して、溶液を得た。当該溶液を、タングステン酸(H2WO4)286gに添加して十分攪拌混合した後、攪拌しながら乾燥した。なお、乾燥物中のWとCsとのモル比はW:Cs=1:0.33である。
【0288】
当該乾燥物を、N2ガスをキャリアガスとした5%H2ガス雰囲気下、800℃で5.5時間焼成した、その後、当該供給ガスをN2ガスのみに切り替えて、室温まで降温して比較例1に係る日射遮蔽機能材料粒子である、セシウム酸化タングステン粒子を得た。
【0289】
得られた比較例1に係る日射遮蔽機能材料粒子のX線回折パターンを粉末X線回折法(θ-2θ法)により測定した。得られたX線回折パターンから当該粒子に含まれる結晶構造を特定したところ、六方晶のCs0.3WO3と同じピークが確認された。なお、比較例1に係る日射遮蔽機能材料粒子は、実施例1で得られた粒子aに比べて粗い粒子であった。
【0290】
比較例1に係る日射遮蔽機能材料粒子を5重量%と、高分子系分散剤を5重量%と、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル90重量%を秤量し、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカー(浅田鉄工社製)に装填し、20時間、粉砕・分散処理することによって比較例1に係る日射遮蔽機能材料粒子分散液を調製した。比較例1に係る日射遮蔽機能材料粒子分散液を用いた点以外は、実施例1と同様にして合わせ構造体を作製し評価した。評価結果を表1に示す。
【0291】
また、比較例1に係る日射遮蔽機能材料粒子分散液から溶媒を除去した後に得られた日射遮蔽機能材料粒子である複合タングステン酸化物粒子について、結晶子径、格子定数を求めた。なお、結晶子径は9nmであった。
【0292】
評価結果を表1、表2に示す。
(まとめ)
表1から明らかなように、実施例1から実施例20に係る日射遮蔽機能材料粒子は、含有する複合タングステン酸化物の一般式MxWyOzにおけるzとyについて、3.0<z/yの関係を満たしていた。そして、実施例1から実施例20に係る合わせ構造体はΔ値が、可視光透過率、日射透過率のいずれに関しても1.0%以下であり耐候性に優れることも確認できた。
【0293】
また、表1に示すように、実施例1から実施例20の合わせ構造体は、可視光透過率が70%程度の際に、日射透過率が50%程度以下になっていることを確認できた。すなわち、十分な近赤外線吸収特性および可視光透過性を有することも確認できた。