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特開2022-101005単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いる集塵装置及び単結晶引上げ装置の部品の清掃方法
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  • 特開-単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いる集塵装置及び単結晶引上げ装置の部品の清掃方法 図1A
  • 特開-単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いる集塵装置及び単結晶引上げ装置の部品の清掃方法 図1B
  • 特開-単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いる集塵装置及び単結晶引上げ装置の部品の清掃方法 図1C
  • 特開-単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いる集塵装置及び単結晶引上げ装置の部品の清掃方法 図1D
  • 特開-単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いる集塵装置及び単結晶引上げ装置の部品の清掃方法 図2
  • 特開-単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いる集塵装置及び単結晶引上げ装置の部品の清掃方法 図3A
  • 特開-単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いる集塵装置及び単結晶引上げ装置の部品の清掃方法 図3B
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  • 特開-単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いる集塵装置及び単結晶引上げ装置の部品の清掃方法 図5
  • 特開-単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いる集塵装置及び単結晶引上げ装置の部品の清掃方法 図6
  • 特開-単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いる集塵装置及び単結晶引上げ装置の部品の清掃方法 図7
  • 特開-単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いる集塵装置及び単結晶引上げ装置の部品の清掃方法 図8
  • 特開-単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いる集塵装置及び単結晶引上げ装置の部品の清掃方法 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101005
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いる集塵装置及び単結晶引上げ装置の部品の清掃方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20220629BHJP
   C30B 15/00 20060101ALI20220629BHJP
   B08B 5/04 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C30B29/06 502Z
C30B15/00 Z
B08B5/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215331
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】沖田 憲治
【テーマコード(参考)】
3B116
4G077
【Fターム(参考)】
3B116AA46
3B116AB52
3B116BB72
3B116BB77
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EG28
4G077PA11
(57)【要約】
【課題】単結晶引上げ装置の部品の清掃時にクリーンルーム内に粉塵が飛散するのを抑制することが可能な集塵装置を提供する。
【解決手段】本発明の集塵装置100は、単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いられ、集塵機10と、集塵機10の両側に位置する一対のフレーム42A,42Bと、集塵機10の両側に各々少なくとも1つ以上配置されるパネル50,60,70,80と、を有する。フレーム/パネル間や、パネル/パネル間を連結するヒンジの作用で、パネル50,60,70,80が、集塵機の吸引面14とともに、単結晶引上げ装置の被清掃部品の周囲に位置する開放状態と、パネル50,60,70,80が、集塵機の側面に近接して位置する格納状態と、を実現可能である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いる集塵装置であって、
吸引面を有する集塵機と、
前記集塵機の前記吸引面の両側にそれぞれ位置し、鉛直面を有する第1パネル及び第2パネルと、
を有し、前記第1パネル及び前記第2パネルが、前記集塵機の前記吸引面とともに、前記単結晶引上げ装置の被清掃部品の周囲に位置する開放状態と、前記第1パネル及び前記第2パネルが、前記集塵機の側面に近接して位置する格納状態と、を実現可能であることを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
前記集塵機の前記吸引面の両側にそれぞれ位置する第1フレーム及び第2フレームからなる一対のフレームをさらに有し、
前記第1パネルは前記第1フレームと第1ヒンジを介して連結され、
前記第2パネルは前記第2フレームと第2ヒンジを介して連結され、
前記第1及び第2ヒンジにより、前記開放状態と前記格納状態とを実現可能である、請求項1に記載の集塵装置。
【請求項3】
前記第1及び第2ヒンジが水平可動ヒンジである、請求項2に記載の集塵装置。
【請求項4】
前記吸引面に対して前記第1パネルが位置する側には、前記第1パネルを含めて複数のパネルが配置され、隣接するパネル同士は第3ヒンジを介して連結され、及び/又は、前記吸引面に対して前記第2パネルが位置する側には、前記第2パネルを含めて複数のパネルが配置され、隣接するパネル同士は第4ヒンジを介して連結され、
前記第1乃至第4ヒンジにより、前記全てのパネルが、前記集塵機の前記吸引面とともに、前記単結晶引上げ装置の被清掃部品の周囲に位置する開放状態と、前記全てのパネルが、前記集塵機の側面に近接して折り畳まれて位置する格納状態と、を実現可能である、請求項2又は3に記載の集塵装置。
【請求項5】
前記第3及び第4ヒンジが水平可動ヒンジである、請求項4に記載の集塵装置。
【請求項6】
前記第3及び第4ヒンジのうち、前記吸引面から最も離れて位置する最外パネルと、当該最外パネルと隣接するパネルとを連結するヒンジは、水平上下可動ヒンジである、請求項5に記載の集塵装置。
【請求項7】
前記集塵機を収容する台車をさらに備え、
前記第1フレーム及び前記第2フレームは、前記台車の一部を構成する、請求項2~6のいずれか一項に記載の集塵装置。
【請求項8】
前記台車の下部にキャスターが設けられた、請求項7に記載の集塵装置。
【請求項9】
前記台車が非磁性体材料からなる、請求項7又は8に記載の集塵装置。
【請求項10】
前記集塵機の両側面において、前記台車には保持フックが配置され、
前記格納状態では、前記全てのパネルが前記保持フックに引っ掛かり固定され、
前記格納状態から前記開放状態へと移行する際には、前記吸引面から最も離れて位置する最外パネルを前記保持フックから外し、その後、前記全てのパネルを水平方向に移動させる、請求項7~9のいずれか一項に記載の集塵装置。
【請求項11】
前記吸引面の下端が、床から50mm以上150mm以下の範囲にある、請求項1~10のいずれか一項に記載の集塵装置。
【請求項12】
前記全てのパネルを構成するフレームが非磁性体材料からなる、請求項1~11のいずれか一項に記載の集塵装置。
【請求項13】
前記全てのパネルの鉛直面には、無塵布及び静電ビニールシートの一方又は両方が張られている、請求項1~12のいずれか一項に記載の集塵装置。
【請求項14】
前記吸引面から最も離れて位置する最外パネルには、その下部に、前記開放状態において当該パネルを床面に対して固定するためのストッパーが設けられている、請求項1~13のいずれか一項に記載の集塵装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の集塵装置を用いた単結晶引上げ装置の部品の清掃方法であって、
前記全てのパネルが、前記集塵機の前記吸引面とともに、前記単結晶引上げ装置の被清掃部品の周囲に位置するように、前記集塵装置を配置し、
前記集塵機を作動させた状態で、前記被清掃部品の清掃を行う、単結晶引上げ装置の部品の清掃方法。
【請求項16】
前記被清掃部品が、前記単結晶引上げ装置のカーボン部材である、請求項15に記載の単結晶引上げ装置の部品の清掃方法。
【請求項17】
前記カーボン部材が、前記単結晶引上げ装置のヒーターである、請求項16に記載の単結晶引上げ装置の部品の清掃方法。
【請求項18】
前記被清掃部品が、前記単結晶引上げ装置の石英部材である、請求項15に記載の単結晶引上げ装置の部品の清掃方法。
【請求項19】
前記被清掃部品が、前記単結晶引上げ装置のメインチャンバーである、請求項15に記載の単結晶引上げ装置の部品の清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いる集塵装置、及びこれを用いた単結晶引上げ装置の部品の清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶シリコンインゴットの代表的な製造方法として、チョクラルスキー法(CZ法)を挙げることができる。CZ法では、図9に示すような、クリーンルーム内に設置したシリコン単結晶引上げ装置1000を用いる。単結晶の引上げ中には、石英ルツボ116Aに含まれる酸素とシリコン融液とが反応してシリコン酸化物(SiOX)が生成する。このシリコン酸化物が気化して、メインチャンバー110内の不活性ガスの流れに沿って移動する過程で冷却され固化して、メインチャンバー110の内壁面や、メインチャンバー110内の各部材(例えばヒーター124)の表面に付着し、これが時間の経過とともに徐々に堆積する。そのため、単結晶の引上げが終了した後、シリコン単結晶引上げ装置1000を解体して、この付着物を取り除く清掃、すなわち解体清掃を行う。その際、メインチャンバー110とプルチャンバー111とを分離し、チャンバー内空間をクリーンルーム内雰囲気に開放した上で、各種の被清掃部品を清掃する。つまり、メインチャンバー110の内壁面の清掃や、メインチャンバー110内の各部材(例えばヒーター124)の清掃は、クリーンルーム内雰囲気下で行われる。よって、クリーンルーム内で被清掃部品の周囲には、取り除いた付着物が粉塵となって舞うことになる。
【0003】
一般的に、シリコン単結晶引上げ装置等の単結晶引上げ装置は、特許文献1に示すようなクリーンルーム内に設置される。クリーンルーム内には、粉塵の拡散を抑制して清浄度を維持するべく、ダウンフローが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-159751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような単結晶引上げ装置の部品の清掃時には、通常の引上げ装置からの発塵よりも遥かに多量の粉塵が生じ、被清掃部品の周辺に舞うことになる。このような、多量の粉塵が生じる状況下ではどうしても、クリーンルームのダウンフローだけでは、クリーンルーム内に粉塵が拡散することを抑制することは難しく、クリーンルーム内の清浄度が低下するという課題がある。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、単結晶引上げ装置の部品の清掃時にクリーンルーム内に粉塵が飛散するのを抑制することが可能な集塵装置、及びこれを用いた単結晶引上げ装置の部品の清掃方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨構成は以下のとおりである。
[1]単結晶引上げ装置の部品の清掃時に用いる集塵装置であって、
吸引面を有する集塵機と、
前記集塵機の前記吸引面の両側にそれぞれ位置し、鉛直面を有する第1パネル及び第2パネルと、
を有し、前記第1パネル及び前記第2パネルが、前記集塵機の前記吸引面とともに、前記単結晶引上げ装置の被清掃部品の周囲に位置する開放状態と、前記第1パネル及び前記第2パネルが、前記集塵機の側面に近接して位置する格納状態と、を実現可能であることを特徴とする集塵装置。
【0008】
[2]前記集塵機の前記吸引面の両側にそれぞれ位置する第1フレーム及び第2フレームからなる一対のフレームをさらに有し、
前記第1パネルは前記第1フレームと第1ヒンジを介して連結され、
前記第2パネルは前記第2フレームと第2ヒンジを介して連結され、
前記第1及び第2ヒンジにより、前記開放状態と前記格納状態とを実現可能である、上記[1]に記載の集塵装置。
【0009】
[3]前記第1及び第2ヒンジが水平可動ヒンジである、上記[2]に記載の集塵装置。
【0010】
[4]前記吸引面に対して前記第1パネルが位置する側には、前記第1パネルを含めて複数のパネルが配置され、隣接するパネル同士は第3ヒンジを介して連結され、及び/又は、前記吸引面に対して前記第2パネルが位置する側には、前記第2パネルを含めて複数のパネルが配置され、隣接するパネル同士は第4ヒンジを介して連結され、
前記第1乃至第4ヒンジにより、前記全てのパネルが、前記集塵機の前記吸引面とともに、前記単結晶引上げ装置の被清掃部品の周囲に位置する開放状態と、前記全てのパネルが、前記集塵機の側面に近接して折り畳まれて位置する格納状態と、を実現可能である、上記[2]又は[3]に記載の集塵装置。
【0011】
[5]前記第3及び第4ヒンジが水平可動ヒンジである、上記[4]に記載の集塵装置。
【0012】
[6]前記第3及び第4ヒンジのうち、前記吸引面から最も離れて位置する最外パネルと、当該最外パネルと隣接するパネルとを連結するヒンジは、水平上下可動ヒンジである、上記[5]に記載の集塵装置。
【0013】
[7]前記集塵機を収容する台車をさらに備え、
前記第1フレーム及び前記第2フレームは、前記台車の一部を構成する、上記[2]~[6]のいずれか一項に記載の集塵装置。
【0014】
[8]前記台車の下部にキャスターが設けられた、上記[7]に記載の集塵装置。
【0015】
[9]前記台車が非磁性体材料からなる、上記[7]又は[8]に記載の集塵装置。
【0016】
[10]前記集塵機の両側面において、前記台車には保持フックが配置され、
前記格納状態では、前記全てのパネルが前記保持フックに引っ掛かり固定され、
前記格納状態から前記開放状態へと移行する際には、前記吸引面から最も離れて位置する最外パネルを前記保持フックから外し、その後、前記全てのパネルを水平方向に移動させる、上記[7]~[9]のいずれか一項に記載の集塵装置。
【0017】
[11]前記吸引面の下端が、床から50mm以上150mm以下の範囲にある、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の集塵装置。
【0018】
[12]前記全てのパネルを構成するフレームが非磁性体材料からなる、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の集塵装置。
【0019】
[13]前記全てのパネルの鉛直面には、無塵布及び静電ビニールシートの一方又は両方が張られている、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の集塵装置。
【0020】
[14]前記吸引面から最も離れて位置する最外パネルには、その下部に、前記開放状態において当該パネルを床面に対して固定するためのストッパーが設けられている、上記[1]~[13]のいずれか一項に記載の集塵装置。
【0021】
[15]上記[1]~[14]のいずれか一項に記載の集塵装置を用いた単結晶引上げ装置の部品の清掃方法であって、
前記全てのパネルが、前記集塵機の前記吸引面とともに、前記単結晶引上げ装置の被清掃部品の周囲に位置するように、前記集塵装置を配置し、
前記集塵機を作動させた状態で、前記被清掃部品の清掃を行う、単結晶引上げ装置の部品の清掃方法。
【0022】
[16]前記被清掃部品が、前記単結晶引上げ装置のカーボン部材である、上記[15]に記載の単結晶引上げ装置の部品の清掃方法。
【0023】
[17]前記カーボン部材が、前記単結晶引上げ装置のヒーターである、上記[16]に記載の単結晶引上げ装置の部品の清掃方法。
【0024】
[18]前記被清掃部品が、前記単結晶引上げ装置の石英部材である、上記[15]に記載の単結晶引上げ装置の部品の清掃方法。
【0025】
[19]前記被清掃部品が、前記単結晶引上げ装置のメインチャンバーである、上記[15]に記載の単結晶引上げ装置の部品の清掃方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明の集塵装置及びこれを用いた単結晶引上げ装置の部品の清掃方法によれば、単結晶引上げ装置の部品の清掃時にクリーンルーム内に粉塵が飛散するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】本発明の一実施形態による集塵装置100を示す図であり、4枚のパネルを開放した状態の斜視図である。
図1B】本発明の一実施形態による集塵装置100を示す図であり、4枚のパネルを格納した状態の斜視図である。
図1C】本発明の一実施形態による集塵装置100を示す図であり、4枚のパネルを開放した状態の模式的な側面図である。
図1D】集塵装置100において、パネルを格納した状態で固定するための保持フック94の構造を示す図である。
図2】集塵装置100に用いられる集塵機10の内部構造を示す断面図である。
図3A】ヒーター124を清掃する際に、ヒーター124に対する集塵装置100の設置状態を示す斜視図である。
図3B】上図は、ヒーター124を清掃する際に、ヒーター124に対する集塵装置100の設置状態を示す上面図であり、下図は、集塵装置100の非使用時に4枚のパネルが折り畳まれた格納状態を示す上面図である。
図4】メインチャンバー110を清掃する際に、メインチャンバー110に対する集塵装置100の設置状態を示す斜視図である。
図5】本発明の他の実施形態による集塵装置200を示す側面図である。
図6】本発明のさらに他の実施形態による集塵装置を示す側面図である。
図7】ヒーター清掃時の気中パーティクル数の測定結果を示すグラフである。
図8】メインチャンバー清掃時の気中パーティクル数の測定結果を示すグラフである。
図9】シリコン単結晶引上げ装置1000の構成を模式的に示す、引上げ軸Xに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(単結晶引上げ装置)
まず、図9を参照して、本発明の一実施形態において解体清掃の対象となる単結晶引上げ装置の一例であるシリコン単結晶引上げ装置1000の構成について説明する。
【0029】
シリコン単結晶引上げ装置1000は、メインチャンバー110、プルチャンバー111、ルツボ116、シャフト118、シャフト駆動機構120、筒状の熱遮蔽体122、筒状のヒーター124、筒状の断熱体126、シードチャック128、引上げワイヤ130、ワイヤ昇降機構132、及び一対の電磁石134を有する。
【0030】
メインチャンバー110は、内部にルツボ116が収容される有底円筒形状のチャンバーである。プルチャンバー111は、メインチャンバー110と同一の中心軸を有し、メインチャンバー110の上方に設けられる、メインチャンバー110よりも小径の円筒形状のチャンバーである。メインチャンバー110とプルチャンバー111との間にはゲートバルブ112が設けられ、このゲートバルブ112の開閉により、メインチャンバー110及びプルチャンバー111内の空間は、互いに連通・遮断される。プルチャンバー111の上部には、Arガスなどの不活性ガスをメインチャンバー110内に導入するガス導入口113が設けられる。また、メインチャンバー110の底部には、図示しない真空ポンプの駆動によりメインチャンバー110内の気体を吸引して排出するガス排出口114が設けられる。
【0031】
ルツボ116は、メインチャンバー110の中心部に配置され、シリコン融液Mを収容する。ルツボ116は、石英ルツボ116Aと黒鉛ルツボ116Bの二重構造を有する。石英ルツボ116Aは、シリコン融液Mを内面で直接支持する。黒鉛ルツボ116Bは、石英ルツボ116Aの外側で石英ルツボ116Aを支持する。
【0032】
シャフト118は、メインチャンバー110の底部を鉛直方向に貫通して、ルツボ116を上端で支持する。そして、シャフト駆動機構120は、シャフト118を介してルツボ116を回転させつつ昇降させる。
【0033】
熱遮蔽体122は、ルツボ116の上方に、シリコン融液Mから引き上げられる単結晶シリコンインゴットIを囲むように設けられる。
【0034】
筒状のヒーター124は、メインチャンバー110内でルツボ116を囲うように位置する。ヒーター124は、カーボンを素材とする抵抗加熱式ヒーターが一般的であり、ルツボ116内に投入されるシリコン原料を溶融してシリコン融液Mを形成し、さらに、形成したシリコン融液Mを維持するための加熱を行う。
【0035】
筒状の断熱体126は、熱遮蔽体122の上端よりも下方で、ヒーター124の外周面とは離間して、メインチャンバー110の内側面に沿って設けられる。断熱体126は、メインチャンバー110内の特に熱遮蔽体122よりも下方の領域に保熱効果を付与し、ルツボ116内のシリコン融液Mを維持しやすくする機能を有する。
【0036】
ルツボ116の上方には、種結晶Sを保持するシードチャック128を下端で保持する引上げワイヤ130がシャフト118と同軸上に配置され、ワイヤ昇降機構132が、引上げワイヤ130をシャフト118と逆方向または同一方向に所定の速度で回転させつつ昇降させる。
【0037】
一対の電磁石134は、メインチャンバー110の外側でルツボ116を包含する高さ範囲に、引上げ軸Xに対して左右対称に位置する。この一対の電磁石34のコイルに電流を流すことによって、シリコン融液Mに対して水平の磁場分布を形成する水平磁場を発生させることができる。図1では、水平磁場を発生させる一対の電磁石34を示したが、これに代えて、シリコン融液Mに対してカスプ型の磁場分布を形成するカスプ磁場を発生させる電磁石を配置してもよい。結晶育成の際にシリコン融液Mに対して磁場を印可させない場合には、電磁石は不要である。
【0038】
既述のとおり、単結晶の引上げ中には、メインチャンバー110の内壁面や、メインチャンバー110内の各部材(例えばヒーター124)の表面には、シリコン酸化物(SiOX)からなる付着物が徐々に堆積する。そのため、単結晶の引上げが終了した後、シリコン単結晶引上げ装置1000を解体して、この付着物を取り除く清掃、すなわち解体清掃を行う。その際、メインチャンバー110とプルチャンバー111とを分離し、チャンバー内空間をクリーンルーム内雰囲気に開放した上で、各種の被清掃部品を清掃する。つまり、メインチャンバー110の内壁面の清掃や、メインチャンバー110内の各部材(例えばヒーター124)の清掃は、クリーンルーム内雰囲気下で行われる。よって、クリーンルーム内で被清掃部品の周囲には、取り除いた付着物が粉塵となって舞うことになる。本発明の一実施形態による集塵装置は、シリコン単結晶引上げ装置1000の部品の清掃時に、被清掃部品の周囲に舞っている粉塵がクリーンルーム内に拡散するのを抑制するためのものである。
【0039】
(集塵装置)
図1A~D、図2、及び図3A,Bを参照して、本発明の一実施形態による集塵装置100を説明する。集塵装置100は、例えばシリコン単結晶引上げ装置1000の解体清掃時のような、シリコン単結晶引上げ装置1000の部品の清掃時に用いられる。集塵装置100は、主たる構成要素として、集塵機10、台車40、及び4枚のパネル50,60,70,80を有する。
【0040】
なお、本発明において、「水平可動ヒンジ」とは、単一の回転軸を有する一軸ヒンジを意味し、回転軸が鉛直方向となるように設置された場合には水平方向に自由度を有する。また、「水平上下可動ヒンジ」とは、単一の回転軸を有し、かつ、当該回転軸に沿った両方向にスライド可能なヒンジを意味し、回転軸が鉛直方向となるように設置された場合には、水平方向に加えて上下方向(鉛直方向)にも自由度を有する。なお、水平上下可動ヒンジは水平可動ヒンジの一種であり、水平可動ヒンジに含まれる。
【0041】
[集塵機]
図2を参照して、集塵機10の内部構造を説明する。集塵機10は、筐体12と、その内部に位置する送風ファン22と、を有し、送風ファン22によって形成される気流の上流側から3段階のフィルター14,16,28が設置された構造を有する。
【0042】
集塵機10の前面には、第1段階のフィルターとしてプレフィルター14が設置される。プレフィルター14は、粒径が概ね5μm以上の粉塵を捕捉する機能を有する。このプレフィルター14が、集塵機10の前面において、鉛直方向に沿った吸引面となる。
【0043】
プレフィルター14よりも下流には、第2段階のフィルターとして、中性能フィルター16が、フィルターパッキン18を介してプレフィルター14と平行に設置される。中性能フィルター16は、粒径が概ね1μm以上の粉塵を捕捉する機能を有する。筐体12内における中性能フィルター16の下流には、第1内部空間20があり、当該空間に送風ファン22が位置する。送風ファン22は、プレフィルター14を介して空気を吸引して形成された気流を上方向に変換する。送風ファン22の上方には、筐体12の一部として仕切り板12Aがあり、その上方に第2内部空間26がある。送風ファン22によって上方向に変換された気流は、連結部材24を経由して第2内部空間26へと送られる。
【0044】
第2内部空間26の最下流には、第3段階のフィルターとして、HEPAフィルター28が、フィルターパッキン30を介して水平に設置される。HEPAフィルター28は、粒径が概ね0.3μm以上の粉塵を捕捉する機能を有する。
【0045】
集塵機10は、その前面に位置する吸引面(プレフィルター14)から、粉塵を含む空気を吸引し、3段階のフィルター14,16,28で粉塵を捕捉しつつ、上部(HEPAフィルター28)から、粒径が0.3μm以上の粉塵を含まない清浄な空気を放出する。シリコン単結晶引上げ装置1000の部品の清掃時に、集塵機10の吸引面(プレフィルター14)は被清掃部品に近接して位置する。効率的な粉塵の捕捉を実現する観点から、吸引面(プレフィルター14)は、縦(高さ):600~1000mm×横(幅):600~1200mm程度の矩形を有することが好ましい。
【0046】
集塵機10の下部には、4つ以上のキャスター32が設けられることが好ましい。これにより、後述の台車40とともに、集塵機10をクリーンルーム内で自由に移動させることができる。
【0047】
吸引面の下端は、床から50mm以上150mm以下の範囲にあることが好ましい。吸引面が床に近いと、地下ピットから、塵、埃等のパーティクル密度が高い汚れた空気をクリーンルームのダウンフローに対して逆流する形で吸い上げてしまうおそれがある。吸引面の下端を床から所定の距離だけ離すことで、地下ピットからの汚れた空気の吸い上げを抑制することができる。
【0048】
[台車]
図1A,Cを参照して、台車40は、複数のフレームによって直方体形状の骨格を有し、その中に集塵機10を収容する。台車40の前面には、集塵機10の吸引面(プレフィルター14)の両側にそれぞれ位置する第1フレーム及び第2フレームとして、鉛直方向に延びる第1縦フレーム42A及び第2縦フレーム42Bからなる一対のフレームが配置される。上フレーム42Cは、第1縦フレーム42A及び第2縦フレーム42Bの上端同士を連結する。下フレーム42Dは、第1縦フレーム42A及び第2縦フレーム42Bの下端同士を連結する。第1縦フレーム42A、第2縦フレーム42B、上フレーム42C、及び下フレーム42Dによって、矩形の骨格が形成される。さらに、中間フレーム42Eは、第1縦フレーム42A及び第2縦フレーム42Bの中間部分同士を連結する。第1縦フレーム42A及び第2縦フレーム42Bの長さは、後述のパネル50,60,70,80の長さと同じである。集塵機10の吸引面(プレフィルター14)は、第1縦フレーム42A、第2縦フレーム42B、中間フレーム42E、及び下フレーム42Dによって囲われる。そのため、下フレーム42D、中間フレーム42E、及び上フレーム42Cの長さは、プレフィルター14の幅とほぼ同じである。集塵機10の吸引面(プレフィルター14)の上方、すなわち、第1縦フレーム42A、第2縦フレーム42B、中間フレーム42E、及び上フレーム42Cによって囲われる部分には、無塵布又は静電ビニールシートが張られていることが好ましい。これにより、粉塵を集塵機10内に導きやすくなり、粉塵がクリーンルーム内に拡散するのをより十分に抑制することができる。なお、「第1フレーム及び第2フレーム」は、本実施形態の第1縦フレーム42A及び第2縦フレーム42Bにしめすような棒状のフレームに限定されず、連結されるパネルが倒れない強度を有す形状であれば良く、棒状、リング状の他、集塵機10を覆うような幅広の板状のものであってもよい。
【0049】
側下フレーム44A及び側下フレーム44Bは、下フレーム42Dの両端からそれぞれ下フレーム42Dに直角かつ水平方向に延在する。図1Cに示すように、側下フレーム44A及び側下フレーム44Bの両端部分には、キャスター46が設けられることが好ましい。これにより、上述の集塵機10とともに、台車40をクリーンルーム内で自由に移動させることができる。その際、作業者は、台車40の後部に設けられた把持部48を持って、台車40を容易に移動させることができる。
【0050】
[パネル]
図1A,Cを参照して、第1パネルとしてのパネル50は、第1ヒンジとしての水平可動ヒンジ58A,58Bを介して台車40の第1縦フレーム42Aと連結され、鉛直面を有する。パネル50は、鉛直方向に延びる第1縦フレーム52A及び第2縦フレーム52Bからなる一対のフレームと、第1縦フレーム52A及び第2縦フレーム52Bの上端同士を連結する上フレーム52Cと、第1縦フレーム52A及び第2縦フレーム52Bの下端同士を連結する下フレーム52Dと、を有し、これらの4つのフレームによって、矩形の骨格が形成される。さらに、中間フレーム52Eは、任意の構成であるが、第1縦フレーム52A及び第2縦フレーム52Bの中間部分同士を連結する。パネル50は、第1縦フレーム52Aが上下一対の水平可動ヒンジ58A,58Bを介して台車40の第1縦フレーム42Aと連結されることによって、台車40と連結されており、水平可動ヒンジ58A,58Bの作用によって、台車40の第1縦フレーム42Aを中心として水平方向に可動する。
【0051】
図1A及び図3Bを参照して、集塵機10の吸引面(プレフィルター14)に対してパネル50の反対側には、第2パネルとしてのパネル70が配置される。パネル70は、第2ヒンジとしての水平可動ヒンジを介して台車40の第2縦フレーム42Bと連結され、鉛直面を有する。パネル70の構成と、台車40の第2縦フレーム42Bに対する接続構造は、前段落に説明したパネル50と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
図1A,Cを参照して、パネル60(第3パネル)は、第3ヒンジとしての水平上下可動ヒンジ68A,68Bを介してパネル50と連結され、鉛直面を有する。パネル60は、鉛直方向に延びる第1縦フレーム62A及び第2縦フレーム62Bからなる一対のフレームと、第1縦フレーム62A及び第2縦フレーム62Bの上端同士を連結する上フレーム62Cと、第1縦フレーム62A及び第2縦フレーム62Bの下端同士を連結する下フレーム62Dと、を有し、これらの4つのフレームによって、矩形の骨格が形成される。さらに、中間フレーム62Eは、任意の構成であるが、第1縦フレーム62A及び第2縦フレーム62Bの中間部分同士を連結する。パネル60は、第1縦フレーム62Aが上下一対の水平上下可動ヒンジ68A,68Bを介してパネル50の第2縦フレーム52Bと連結されることによって、パネル50と連結されており、水平上下可動ヒンジ68A,68Bの作用によって、パネル50の第2縦フレーム52Bを中心として水平方向に可動する。また、パネル60は、水平上下可動ヒンジ68A,68Bの作用によって、パネル50の第2縦フレーム52Bに対して上下(鉛直方向)にも可動する。
【0053】
図1A及び図3Bを参照して、集塵機10の吸引面(プレフィルター14)に対してパネル60の反対側には、パネル80(第4パネル)が配置される。パネル80は、第4ヒンジとしての水平上下可動ヒンジを介してパネル70と連結され、鉛直面を有する。パネル80の構成と、パネル70に対する接続構造は、前段落に説明したパネル60と同様であるため、説明を省略する。
【0054】
[パネルの開放状態と格納状態]
図1A,B及び図3A,Bを参照して、本実施形態による集塵装置100では、水平可動ヒンジ58A,58B及び水平上下可動ヒンジ68A,68Bによって、全てのパネル50,60,70,80が、集塵機10の吸引面(プレフィルター14)とともに、シリコン単結晶引上げ装置1000の被清掃部品(図3A,Bではヒーター124)の周囲に位置する開放状態(図1A及び図3B上図)と、全てのパネル50,60,70,80が、集塵機10の側面に近接して折り畳まれて位置する格納状態(図1B及び図3B下図)と、を実現可能である。シリコン単結晶引上げ装置1000の部品の清掃時には、全てのパネル50,60,70,80が、集塵機10の吸引面(プレフィルター14)とともに、シリコン単結晶引上げ装置1000の被清掃部品(図3A,Bではヒーター124)の周囲に位置するように、集塵装置100を配置する。これにより、シリコン単結晶引上げ装置1000の部品の清掃時に、被清掃部品の周囲に舞っている粉塵がクリーンルーム内に拡散するのを抑制することができる。
【0055】
パネル50,60,70,80の鉛直方向長さ(高さ)は、各パネルがクリーンルーム内の気流を十分に遮断して、被清掃部品の周囲にクリーンルーム内の気流が入らないようにし、粉塵を集塵機10内に導きやすくする観点から、1000mm以上とすることが好ましく、1500mm以上とすることがより好ましく、1800mm以上とすることがさらに好ましい。また、パネル50,60,70,80の鉛直方向長さ(高さ)は、各パネルの操作性の観点から、2500mm以下とすることが好ましく、2000mm以下とすることがより好ましい。また、パネル50,60,70,80の鉛直方向長さ(高さ)は、互いに等しいことが好ましい。
【0056】
パネル数が4である本実施形態の場合、パネル50,60,70,80の水平方向長さ(幅)は、各パネルが被清掃部品を十分に囲う観点から、600mm以上とすることが好ましく、800mm以上とすることがより好ましい。また、パネル50,60,70,80の水平方向長さ(幅)は、各パネルの操作性の観点から、1200mm以下とすることが好ましく、1000mm以下とすることがより好ましい。また、パネル50,60,70,80の水平方向長さ(幅)は、互いに等しいことが好ましい。
【0057】
図1A~Cに加えて図1Dも参照して、集塵機10の両側面における台車40の下部(すなわち、側下フレーム44A,44B)には、保持フック94が配置される。保持フック94は、水平面を有するプレート94Aと、このプレート94Aの先端から鉛直方向上側に突出した突出部94Bとを有する。
【0058】
ここで、既述のとおり、吸引面から最も離れて位置する最外パネルであるパネル60は、当該パネル60と隣接するパネル50と水平上下可動ヒンジ68A,68Bを介して連結されている。よって、パネル60は、水平上下可動ヒンジ68A,68Bによって、突出部94Bに引っかかる下位置と、突出部94Bに引っかからない上位置とを取ることができる。下位置/上位置間の変更は、作業者が、パネル60の中間フレーム62Eに設けられた取っ手92を持ってパネル60を上下させることにより、行うことができる。他方で、パネル50は、その下フレーム52Dが台車40の側下フレーム44Aと同じ高さに位置していることから、突出部94Bに引っかからない高さに位置している。パネル50は、水平可動ヒンジ58A,58Bによって台車40と連結されているため、上下には可動しない。なお、台車40の側下フレーム44Aは、キャスター46の存在により、床面から60~100mm程度の高さに位置する。
【0059】
格納状態では、パネル50,60がプレート94A上に位置する。そして、最外パネルであるパネル60が下位置に位置することによって、パネル60が突起部94Bによって動きを阻害されるため、パネル50,60は保持フック94にて固定される。これが、図1B及び図3下図に示す状態である。
【0060】
格納状態から開放状態へと移行する際には、作業者が最外パネルであるパネル60を上に持ち上げることで、水平上下可動ヒンジ68A,68Bの作用によってパネル60を上位置に変更した状態で、パネル60が突起部94Bを越すように動かし、パネル60を保持フック94から外す。その後、パネル50,60を水平方向に移動させる。
【0061】
最外パネルであるパネル60には、その下部に、バネ付きの固定用ストッパー90が設けられている。これにより、開放状態において、パネル60を床面に対して固定することができる。これが、図1A及び図3B上図に示す状態である。
【0062】
なお、上記ではパネル50,60の格納状態及び開放状態について説明したが、パネル60,70の格納状態及び開放状態についても同様である。
【0063】
[パネル及び台車の素材]
全てのパネル50,60,70,80を構成するフレーム及び台車40は、非磁性体材料からなること、すなわち磁石に吸引されないことが好ましい。これにより、シリコン単結晶引上げ装置1000の電磁石134によって吸引されないという、安全性を確保することができる。例えば、各パネルを構成するフレームは、アルミニウムからなるものとすることができ、台車40は、ステンレス鋼(SUS304)からなるものとすることができる。
【0064】
[パネルの鉛直面]
全てのパネル50,60,70,80の鉛直面には、無塵布及び静電ビニールシートの一方又は両方が張られていることが好ましい。これにより、各パネルに粉塵が付着しにくくなり、粉塵を集塵機10内に導きやすくなり、粉塵がクリーンルーム内に拡散するのをより十分に抑制することができる。例えば、図1Cを参照して、パネル上部54,64には、透明の静電ビニールシートを張り、パネル下部56,66には無塵布を張ることができる。このようにすれば、作業者がパネル上部54,64を介して、その内外を視認することができる。
【0065】
(単結晶引上げ装置の部品の清掃方法)
図3A,B及び図4を参照して、本発明の一実施形態によるシリコン単結晶引上げ装置1000の部品の清掃方法を説明する。図3A,Bは、被清掃部品が、シリコン単結晶引上げ装置1000のヒーター124である場合を示す。図4は、被清掃部品が、シリコン単結晶引上げ装置1000のメインチャンバー110である場合を示す。
【0066】
本実施形態によるシリコン単結晶引上げ装置1000の部品の清掃方法では、既述の集塵装置100を用いる。図3A,B及び図4に示すように、全てのパネル50,60,70,80が、集塵機の吸引面(プレフィルター14)とともに、シリコン単結晶引上げ装置の被清掃部品(図3A,Bではヒーター124、図4ではメインチャンバー110)の周囲に位置するように、集塵装置100を配置する。図3A,Bの場合、集塵機の吸引面(プレフィルター14)とヒーター124とは、同程度の高さに位置し、対向している。図4の場合、メインチャンバー110は、その下端が床面から700~1000mm程度の高さとなるように宙づりにされた状態で清掃される。そのため、集塵機の吸引面(プレフィルター14)は、メインチャンバー110の下方の空間と対向している。
【0067】
そして、集塵機10を作動させた状態で、被清掃部品の清掃を行う。具体的には、図3A,Bの場合、作業者が、ヒーター124の外側かつパネル50,60,70,80の内側の位置で、吸引機能付きブラシを用いてヒーター124を吸引しながら擦って、ヒーター124に堆積した付着物を除去する。図4の場合、作業者が、宙づりにされたメインチャンバー110の内側に入って、吸引機能付きブラシを用いてメインチャンバー110の内壁面を吸引しながら擦って、当該内壁面に堆積した付着物を除去する。これにより、シリコン単結晶引上げ装置1000の部品の清掃時に、被清掃部品の周囲に舞っている粉塵がクリーンルーム内に拡散するのを抑制することができる。
【0068】
本実施形態では、クリーンルーム内における、集塵機10の吸引面(プレフィルター14)から離れる方向の気流を各パネルが遮断して、粉塵を集塵機10内に導きやすくできればよい。その観点からは、被清掃部品の周囲に密閉空間を形成する必要はなく、被清掃部品の周囲は開放系とすることができる。すなわち、パネル50,60,70,80が、ヒーター124の周囲全体を囲う必要はない。ただし、図3Bに示すように、パネル50,60,70,80が、ヒーター124の半分以上を囲うこと、すなわち、図3Bのような鉛直上方向から見て、ヒーター124の中心が、パネル60とパネル80の先端同士を結んだ線よりも集塵機10に近い側に位置することが好ましい。図3Bのように、集塵機10の吸引面(プレフィルター14)に対向する領域にはパネルが存在しなくてもよい。本段落の内容は、ヒーター124に替えてメインチャンバー110の場合にも適用される。
【0069】
なお、被清掃部品は、ヒーター124及びメインチャンバー110に限定されない。被清掃部品は、ヒーター124に加えて、熱遮蔽体122、断熱体126、黒鉛ルツボ116B、ルツボ受け皿、スピルトレイ(図示せず)など、単結晶引上げ装置の任意のカーボン部材であり得る。また、被清掃部品は、パージチューブ(図示せず)など、単結晶引上げ装置の任意の石英部材であり得る。
【0070】
(集塵装置の変形例)
図5を参照して、本発明の他の実施形態による集塵装置200は、図1Cに示す集塵装置100におけるパネル50を複数のパネル50A~Gに分割した態様である。パネル50とは反対側のパネル70に関しても、同様に分割することができる。複数のパネル50A~Gは、隣接するパネル同士が第3ヒンジとしての水平可動ヒンジを介して連結している。図1Cと同様に、最外パネルであるパネル60は、隣接するパネル50Gと水平上下可動ヒンジ68A,68Bを介して連結している。このように、パネルの数に関わらず、吸引面から最も離れて位置する最外パネルと、当該最外パネルと隣接するパネルとを連結する水平可動ヒンジを、水平上下可動ヒンジとすれば、既述のような格納状態と開放状態との遷移を実現することができる。図5に示す実施形態では、各パネル50A~Gの水平方向長さ(幅)は、150~250mm程度と、図1Cのパネル50の水平方向長さ(幅)よりも短くすることができる。そのため、格納状態と開放状態との遷移の際に、各パネルの取り回しに優れている。
【0071】
なお、集塵機10の吸引面(プレフィルター14)に対する片側あたりのパネルの数は、集塵装置100では2つであり、集塵装置200では8つであるが、特に限定されず、少なくとも1つ以上であればよく、また、好適には3~4つである。パネルの数に関わらず、片側あたりのパネルの合計の水平方向長さ(幅)は、各パネルが被清掃部品を十分に囲う観点から、1200mm以上とすることが好ましく、1600mm以上とすることがより好ましい。また、片側あたりのパネルの合計の水平方向長さ(幅)は、各パネルの操作性の観点から、2400mm以下とすることが好ましく、2000mm以下とすることがより好ましい。一枚のパネルの幅は、操作性の観点から1200mm以下とすることが好ましく、1000mm以下とすることがより好ましい。
【0072】
また、全てのパネルを開放状態とした時に、集塵機の吸引面の直ぐ横に配置されるパネル(第1パネルあるいは第2パネル)と床面の間には、50mm以上150mmの隙間があることが好ましい。これにより、地下ピットからの汚れた空気の吸い上げを抑制することができる。
【0073】
図6を参照して、集塵装置100,200において、台車40の上フレーム42Cと水平可動ヒンジ96を介して連結された上パネル95をさらに設けることも好ましい。上パネル95は、開放状態(清掃時)では水平方向に位置し、格納状態では鉛直方向に位置する。このようにすることで、上パネル95がクリーンルーム内の気流を十分に遮断して、粉塵を集塵機10内により確実に導きやすくすることができる。
【実施例0074】
(集塵装置)
図1A~Dに示す集塵装置を用意した。図2に示す集塵機の吸引面(プレフィルター)は、縦(高さ):1000mm×横(幅):1000mmの矩形を有する。また、4つのパネルは、鉛直方向長さ(高さ):1700mm×水平方向長さ(幅):800mmの矩形を有する。吸引面の下端の床面からの高さと、開放状態での各パネル下端の床面からの高さは、ともに100mmである。各パネルを構成するフレームは、アルミニウムからなるものとし、台車は、SUS304からなるものとした。各パネルの上部には、透明の静電ビニールシートを張り、各パネルの下部には無塵布を張った。また、プレフィルターの上方にも、透明の静電ビニールシートを張った。
【0075】
(ヒーターの清掃)
発明例では、図3A及び図3B上図に示すように、ヒーターに対して集塵装置を配置した。そして、集塵機を作動させた状態で、作業者が、吸引機能付きブラシを用いてヒーターを吸引しながら擦って、ヒーターに堆積した付着物を除去した。比較例では、集塵装置を配置せずに、同様に、作業者が、吸引機能付きブラシを用いてヒーターを吸引しながら擦って、ヒーターに堆積した付着物を除去した。なお、ヒーターは、外径1000mm、高さ900mmの寸法を有する。
【0076】
発明例及び比較例ともに、ヒーター清掃時のクリーンルーム内のパーティクル数(最大値)を測定した。具体的には、集塵装置を配置しない場合にヒーターに対する気流の風下となる位置において、ヒーター清掃の間、1分間隔でパーティクル数の測定を行い、得られた測定値の中の最大値を採用した。結果を図7に示す。図7に示すように、発明例では比較例よりも大幅にパーティクル数を低減でき、特に、粒径0.3μm以上0.5μm未満のパーティクルの数を500未満に抑えることができた。
【0077】
(メインチャンバーの清掃)
発明例では、図4に示すように、宙づりにされたメインチャンバーに対して集塵装置を配置した。そして、集塵機を作動させた状態で、作業者が、メインチャンバーの内側に入って、吸引機能付きブラシを用いてメインチャンバーの内壁面を吸引しながら擦って、当該内壁面に堆積した付着物を除去した。比較例では、集塵装置を配置せずに、同様に、作業者が、メインチャンバーの内側に入って、吸引機能付きブラシを用いてメインチャンバーの内壁面を吸引しながら擦って、当該内壁面に堆積した付着物を除去した。なお、メインチャンバーは、外径1500mmであり、その下端が床面から1000mmの高さとなるように宙づりされている。
【0078】
発明例及び比較例ともに、メインチャンバー清掃時のクリーンルーム内のパーティクル数(最大値)を測定した。具体的には、集塵装置を配置しない場合にメインチャンバーに対する気流の風下となる位置において、メインチャンバー清掃の間、1分間隔でパーティクル数の測定を行い、得られた測定値の中の最大値を採用した。結果を図8に示す。図8に示すように、発明例では比較例よりも大幅にパーティクル数を低減でき、特に、粒径0.3μm以上0.5μm未満のパーティクルの数を200未満に抑えることができた。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の集塵装置及びこれを用いたシリコン単結晶引上げ装置の部品の清掃方法によれば、シリコン単結晶引上げ装置の部品の清掃時にクリーンルーム内に粉塵が飛散するのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0080】
100 集塵装置
200 集塵装置
10 集塵機
12 筐体
12A 仕切り板
14 プレフィルター(吸引面)
16 中性能フィルター
18 フィルターパッキン
20 第1内部空間
22 送風ファン
24 連結部材
26 第2内部空間
28 HEPAフィルター
30 フィルターパッキン
32 キャスター
40 台車
42A 第1縦フレーム
42B 第2縦フレーム
42C 上フレーム
42D 下フレーム
42E 中間フレーム
44A 側下フレーム
44B 側下フレーム
46 キャスター
48 把持部
50 パネル(第1パネル)
52A 第1縦フレーム
52B 第2縦フレーム
52C 上フレーム
52D 下フレーム
52E 中間フレーム
54 パネル上部
56 パネル下部
58A 水平可動ヒンジ(第1ヒンジ)
58B 水平可動ヒンジ(第1ヒンジ)
60 パネル(第3パネル)
62A 第1縦フレーム
62B 第2縦フレーム
62C 上フレーム
62D 下フレーム
62E 中間フレーム
64 パネル上部
66 パネル下部
68A 水平上下可動ヒンジ(第3ヒンジ)
68B 水平上下可動ヒンジ(第3ヒンジ)
70 パネル(第2パネル)
80 パネル(第4パネル)
90 固定用ストッパー
92 取っ手
94 保持フック
94A プレート
94B 突出部
95 上パネル
96 水平可動ヒンジ
1000 シリコン単結晶引上げ装置
110 メインチャンバー
111 プルチャンバー
112 ゲートバルブ
113 ガス導入口
114 ガス排出口
116 ルツボ
116A 石英ルツボ
116B 黒鉛ルツボ
118 シャフト
120 シャフト駆動機構
122 熱遮蔽体
124 ヒーター
126 断熱体
128 シードチャック
130 引上げワイヤ
132 ワイヤ昇降機構
134 電磁石
S 種結晶
M シリコン融液
I 単結晶シリコンインゴット
X 引上げ軸
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9