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特開2022-101584放射線検出器、放射線画像撮影装置及び放射線検出器の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101584
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】放射線検出器、放射線画像撮影装置及び放射線検出器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20220629BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
G01T1/20 L
G01T1/20 G
G01T1/20 E
A61B6/00 300Q
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062629
(22)【出願日】2022-04-04
(62)【分割の表示】P 2020508241の分割
【原出願日】2019-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2018051691
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018219697
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019022081
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩切 直人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宗貴
(72)【発明者】
【氏名】中津川 晴康
(72)【発明者】
【氏名】赤松 圭一
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
【Fターム(参考)】
2G188BB02
2G188CC15
2G188CC17
2G188CC22
2G188CC25
2G188DD05
2G188DD11
2G188DD12
2G188DD31
2G188DD35
2G188DD42
2G188DD44
2G188DD45
2G188DD47
4C093AA03
4C093CA02
4C093CA38
4C093EB11
4C093EB12
4C093EB20
4C093EC56
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シンチレータの重量によって生じる基板の撓みに起因する画素の損傷のリスクを低減する。
【解決手段】放射線検出器は、可撓性を有する基板と、基板に設けられ、光電変換素子をそれぞれ含む複数の画素と、基板に積層されたシンチレータと、基板の撓みを抑制する撓み抑制部材と、を含む。画素のサイズをX、基板の撓みによる画素の限界変形量をZ、シンチレータの重量によって基板に生じる撓みの曲率半径をRとしたとき、R≧X/2Zを満たす剛性を、撓み抑制部材が有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する基板と、
前記基板に設けられ、光電変換素子をそれぞれ含む複数の画素と、
前記基板に積層されたシンチレータと、
前記基板の撓みを抑制する撓み抑制部材と、
を含み、
前記画素のサイズをX、前記基板の撓みによる前記画素の限界変形量をZ、前記シンチレータの重量によって前記基板に生じる撓みの曲率半径をRとしたとき、
R≧X/2Z
を満たす剛性を、前記撓み抑制部材が有する
放射線検出器。
【請求項2】
前記シンチレータは、前記基板の第1の面の側に積層され、
前記撓み抑制部材は、前記基板の第1の面の側とは反対側の第2の面の側及び前記シンチレータの、前記基板と接する面の側とは反対側の面の側の少なくとも一方に積層されている
請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記撓み抑制部材は、前記基板の前記第2の面の側、及び前記シンチレータの前記基板と接する面の側とは反対側の面の側の双方に積層されている
請求項2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記撓み抑制部材は、前記基板よりも高い剛性を有する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記撓み抑制部材は、前記シンチレータが延在する範囲よりも広い範囲に亘って延在している
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記基板は、可撓性の配線が接続される接続領域を有し、
前記撓み抑制部材は、前記接続領域の少なくとも一部及び前記シンチレータを覆う領域に設けられている
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記撓み抑制部材は、曲げ弾性率が1000MPa以上3500MPa以下である
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記シンチレータの熱膨張率に対する前記撓み抑制部材の熱膨張率の比が0.5以上2以下である
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記撓み抑制部材の熱膨張率は30ppm/K以上80ppm/K以下である
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項10】
前記撓み抑制部材は、アクリル、ポリカーボネート、及びポリエチレンテレフタレートの少なくとも一つを含んで構成されている
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項11】
前記シンチレータの端部を跨ぐ領域に設けられ、前記撓み抑制部材による撓み抑制効果を補強する補強部材を更に含む
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項12】
前記補強部材は、前記基板よりも高い剛性を有する
請求項11に記載の放射線検出器。
【請求項13】
前記補強部材は、前記撓み抑制部材と同一の材料で構成されている
請求項11または請求項12に記載の放射線検出器。
【請求項14】
前記基板は、樹脂フィルムを含んで構成されている
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項15】
前記基板は、平均粒子径が0.05μm以上2.5μm以下の無機材料からなる微粒子を含む微粒子層を有する樹脂材料からなる基材を含んで構成され、
前記微粒子層は、前記基板の前記複数の画素が設けられた第1の面とは反対側の第2の面の側に設けられている
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項16】
前記微粒子は、前記樹脂材料を構成する元素よりも原子番号が大きく且つ原子番号が30以下の元素を含む
請求項15に記載の放射線検出器。
【請求項17】
前記基板は、300℃以上400℃以下における熱膨張率が20ppm/K以下である
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項18】
前記基板は、前記基板の厚さを25μmとした場合の400℃におけるMD方向の熱収縮率が0.5%以下、及び500℃における弾性率が1GPa以上の少なくとも一方を満たす
請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項19】
前記基板と、前記シンチレータとの間に設けられ、前記基板の熱膨張率と前記シンチレータの熱膨張率との間の熱膨張率を有する緩衝層を更に含む
請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項20】
請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の放射線検出器と、
前記画素に蓄積された電荷の読み出しを行う読み出し部と、
前記画素から読み出された電荷に基づいて画像データを生成する生成部と、
を含む放射線画像撮影装置。
【請求項21】
放射線が入射する放射線入射面を有し、前記放射線検出器を収容する筐体を更に含み、
前記基板及び前記シンチレータのうち、前記基板が前記放射線入射面の側に配置されている
請求項20に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項22】
可撓性を有する基板に光電変換素子をそれぞれ含む複数の画素を形成する工程と、
前記基板にシンチレータを形成する工程と、
前記基板の撓みを抑制する撓み抑制部材を配置する工程と、
を含み、
前記画素のサイズが大きくなる程、前記撓み抑制部材の剛性を高くする
放射線検出器の製造方法。
【請求項23】
前記画素のサイズをX、前記基板の撓みによる前記画素の限界変形量をZ、前記シンチレータの重量によって前記基板に生じる撓みの曲率半径をRとしたとき、
R≧X/2Z
を満たす剛性を、前記撓み抑制部材が有する
請求項22に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、放射線検出器、放射線画像撮影装置及び放射線検出器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線画像撮影装置に関する技術として、例えば以下の技術が知られている。特開2012-173275号公報(特許文献1)には、放射線を蛍光に変換するシンチレータ、及びシンチレータの放射線入射側に設けられた光検出部を有する放射線画像検出装置本体と、放射線画像検出装置本体の放射線入射側に配置されて被写体を支持する支持部材とを備えた放射線画像検出装置が記載されている。光検出部は、蛍光を電気信号として検出する薄膜部と、薄膜部のシンチレータ側とは反対側に設けられ、支持部材に接合された補強部材を有する。
【0003】
特表2017-532540号公報(特許文献2)には、相互接続によって接合された第1のモジュール方式検出器および第2のモジュール方式検出器を含む検出部が記載されている。第1及び第2のモジュール方式検出器は可撓性を有する。第1及び第2のモジュール方式検出器の受光面の反対側には、補強材が装着されており、補強材は、補強材の装着位置に近接したモジュール方式検出器の屈曲を防止するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射線画像撮影装置に用いられる放射線検出器として、基板と、基板に設けられた光電変換素子をそれぞれ含む複数の画素と、基板に積層されたシンチレータと、を含むものが知られている。近年、放射線検出器を構成する基板の材料として、樹脂フィルム等の可撓性を有する材料が用いられている。基板が可撓性を有する場合、例えば、放射線検出器の製造工程において、基板をハンドリングする際に、基板に積層されたシンチレータの重量によって、基板に比較的大きな局所的な撓みが生じるおそれがある。画素を構成する光電変換素子は、アモルファスシリコン等の曲げ応力に対して脆弱な材料で構成されていることから、基板に大きな撓みが生じると画素が損傷するおそれがある。
【0005】
開示の技術は、一つの側面として、シンチレータの重量によって生じる基板の撓みに起因する画素の損傷のリスクを、画素のサイズに応じて剛性が定められる撓み抑制部材を使用しない場合と比較して低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の第1の態様に係る放射線検出器は、可撓性を有する基板と、基板に設けられ、光電変換素子をそれぞれ含む複数の画素と、基板に積層されたシンチレータと、基板の撓みを抑制する撓み抑制部材と、を含み、画素のサイズをX、基板の撓みによる画素の限界変形量をZ、シンチレータの重量によって基板に生じる撓みの曲率半径をRとしたとき、R≧X/2Zを満たす剛性を、撓み抑制部材が有する。
【0007】
開示技術の第2の態様に係る放射線検出器において、シンチレータは、基板の第1の面の側に積層され、撓み抑制部材は、基板の第1の面の側とは反対側の第2の面の側及びシンチレータの、基板と接する面の側とは反対側の面の側の少なくとも一方に積層されている。
【0008】
開示技術の第3の態様に係る放射線検出器において、撓み抑制部材は、基板の第2の面の側、及びシンチレータの基板と接する面の側とは反対側の面の側の双方に積層されている。
【0009】
開示技術の第4の態様に係る放射線検出器において、撓み抑制部材は、基板よりも高い剛性を有する。
【0010】
開示技術の第5の態様に係る放射線検出器において、撓み抑制部材は、シンチレータが延在する範囲よりも広い範囲に亘って延在している。
【0011】
開示技術の第6の態様に係る放射線検出器において、基板は、可撓性の配線が接続される接続領域を有し、撓み抑制部材は、前記接続領域の少なくとも一部及び前記シンチレータを覆う領域に設けられている。
【0012】
開示技術の第7の態様に係る放射線検出器において、撓み抑制部材は、曲げ弾性率が1000MPa以上3500MPa以下である。
【0013】
開示技術の第8の態様に係る放射線検出器において、シンチレータの熱膨張率に対する撓み抑制部材の熱膨張率の比が0.5以上2以下である。
【0014】
開示技術の第9の態様に係る放射線検出器において、撓み抑制部材の熱膨張率は30ppm/K以上80ppm/K以下である。
【0015】
開示技術の第10の態様に係る放射線検出器において、撓み抑制部材は、アクリル、ポリカーボネート、及びポリエチレンテレフタレートの少なくとも一つを含んで構成されている。
【0016】
開示技術の第11の態様に係る放射線検出器は、シンチレータの端部を跨ぐ領域に設けられ、撓み抑制部材による撓み抑制効果を補強する補強部材を更に含む。
【0017】
開示技術の第12の態様に係る放射線検出器において、補強部材は、基板よりも高い剛性を有する。
【0018】
開示技術の第13の態様に係る放射線検出器において、補強部材は、撓み抑制部材と同一の材料で構成されている
【0019】
開示技術の第14の態様に係る放射線検出器において、基板は、樹脂フィルムを含んで構成されている。
【0020】
開示技術の第15の態様に係る放射線検出器において、基板は、平均粒子径が0.05μm以上2.5μm以下の無機材料からなる微粒子を含む微粒子層を有する樹脂材料からなる基材を含んで構成され、微粒子層は、基板の前記複数の画素が設けられた第1の面とは反対側の第2の面の側に設けられている。
【0021】
開示技術の第16の態様に係る放射線検出器において、微粒子は、樹脂材料を構成する元素よりも原子番号が大きく且つ原子番号が30以下の元素を含む。
【0022】
開示技術の第17の態様に係る放射線検出器において、基板は、300℃以上400℃以下における熱膨張率が20ppm/K以下である。
【0023】
開示技術の第18の態様に係る放射線検出器において、基板は、基板の厚さを25μmとした場合の400℃におけるMD方向の熱収縮率が0.5%以下、及び500℃における弾性率が1GPa以上の少なくとも一方を満たす。
【0024】
開示技術の第19の態様に係る放射線検出器において、基板と、シンチレータとの間に設けられ、基板の熱膨張率とシンチレータの熱膨張率との間の熱膨張率を有する緩衝層を更に含む。
【0025】
開示技術の第20の態様に係る放射線画像撮影装置は、第1乃至第19の態様のいずれかに係る放射線検出器と、画素に蓄積された電荷の読み出しを行う読み出し部と、画素から読み出された電荷に基づいて画像データを生成する生成部と、を含む。
【0026】
開示技術の第21の態様に係る放射線画像撮影装置は、放射線が入射する放射線入射面を有し、放射線検出器を収容する筐体を更に含み、基板及びシンチレータのうち、基板が放射線入射面の側に配置されている。
【0027】
開示の技術の第22の態様に係る放射線検出器の製造方法は、可撓性を有する基板に光電変換素子をそれぞれ含む複数の画素を形成する工程と、基板にシンチレータを形成する工程と、基板の撓みを抑制する撓み抑制部材を配置する工程と、を含み、画素のサイズが大きくなる程、撓み抑制部材の剛性を高くする。
【0028】
開示技術の第23の態様に係る製造方法において、画素のサイズをX、基板の撓みによる画素の限界変形量をZ、シンチレータの重量によって基板に生じる撓みの曲率半径をRとしたとき、R≧X/2Zを満たす剛性を、撓み抑制部材が有する。
【発明の効果】
【0029】
開示の技術の第1の態様によれば、画素のサイズに応じて剛性が定められる撓み抑制部材を使用しない場合と比較して、シンチレータの重量によって生じる基板の撓みに起因する画素の損傷のリスクを低減することが可能となる。
【0030】
開示の技術の第2の態様によれば、撓み抑制部材による撓み抑制効果を効果的に発揮することができる。
【0031】
開示の技術の第3の態様によれば、基板の撓みによって画素が損傷するリスクを更に低減することができる。
【0032】
開示の技術の第4の態様によれば、撓み抑制部材による撓み抑制効果を効果的に発揮することができる。
【0033】
開示の技術の第5の態様によれば、撓み抑制部材による撓み抑制効果を効果的に発揮することができる。
【0034】
開示の技術の第6の態様によれば、撓み抑制部材による撓み抑制効果を効果的に発揮することができる。
【0035】
開示の技術の第7の態様によれば、撓み抑制部材として好ましい剛性を有することができる。
【0036】
開示の技術の第8の態様によれば、シンチレータの熱膨張率に対する撓み抑制部材の熱膨張率の比が上記の範囲にない場合と比較して、基板とシンチレータとが剥離するリスクを抑制することができる。
【0037】
開示の技術の第9の態様によれば、撓み抑制部材の熱膨張率が上記の範囲にない場合と比較して、基板とシンチレータとの剥離の発生するリスクを抑制することができる。
【0038】
開示の技術の第10の態様によれば、撓み抑制部材が他の材料を含んで構成される場合と比較して、撓み抑制部材による撓み抑制効果を効果的に発揮することができ、また、基板とシンチレータとの剥離の発生するリスクを抑制することができる。
【0039】
開示の技術の第11の態様によれば、補強部材を含まない場合と比較して、基板の、シンチレータ端部に対応する部分における撓みを抑制することができる。
【0040】
開示の技術の第12の態様によれば、撓み抑制部材による撓み抑制効果を補強する効果が効果的に発揮される。
【0041】
開示の技術の第13の態様によれば、撓み抑制部材による撓み抑制効果を補強する効果が効果的に発揮される。
【0042】
開示の技術の第14の態様によれば、基板の材料としてガラス基板を用いる場合と比較して、放射線検出器の軽量化及び低コスト化を図ることができ、更に、衝撃によって基板が破損するリスクを低減することができる。
【0043】
開示の技術の第15の態様によれば、基板が微粒子層を含まない場合と比較して、基板内で発生した後方散乱線を抑制することができる。
【0044】
開示の技術の第16の態様によれば、微粒子の原子番号が上記の範囲にない場合と比較して、また後方散乱線の抑制を効果的に行うことができ、また微粒子層における放射線の吸収を抑制することができる。
【0045】
開示の技術の第17の態様によれば、基板の熱膨張率が上記の範囲にない場合と比較して、基板上への画素の形成を適切に行うことができる。
【0046】
開示の技術の第18の態様によれば、基板の熱収縮率及び弾性率が上記範囲にない場合と比較して、基板上への画素の形成を適切に行うことができる。
【0047】
開示の技術の第19の態様によれば、緩衝層を含まない場合と比較して、基板とシンチレータとの界面に作用する熱応力を抑制することが可能となる。
【0048】
開示の技術の第20の態様によれば、画素のサイズに応じて剛性が定められる撓み抑制部材を使用しない場合と比較して、シンチレータの重量によって生じる基板の撓みに起因する画素の損傷のリスクを低減することが可能となる。
【0049】
開示の技術の第21の態様によれば、基板及びシンチレータのうち、シンチレータが放射線入射面の側に配置されている場合と比較して、放射線画像の解像度を高めることができる。
【0050】
開示の技術の第22の態様によれば、画素のサイズに応じて剛性が定められる撓み抑制部材を使用しない場合と比較して、シンチレータの重量によって生じる基板の撓みに起因する画素の損傷のリスクを低減することが可能となる。
【0051】
開示の技術の第23の態様によれば、シンチレータの重量によって基板に生じる撓みに起因する画素の損傷リスクの低減を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】開示の技術の実施形態に係る放射線画像撮影装置の構成の一例を示す斜視図である。
図2】開示の技術の実施形態に係る放射線画像撮影装置の構成の一例を示す断面図である。
図3】開示の技術の実施形態に係る放射線画像撮影装置の電気的構成の一例を示す図である。
図4】開示の技術の実施形態に係る基板が円弧状に撓んでいる状態の一例を示す図である。
図5A】開示の技術の実施形態に係る画素の外形の一例を示す図である。
図5B】開示の技術の実施形態に係る画素の外形の一例を示す図である。
図5C】開示の技術の実施形態に係る画素の外形の一例を示す図である。
図6A】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の製造方法の一例を示す断面図である。
図6B】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の製造方法の一例を示す断面図である。
図6C】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の製造方法の一例を示す断面図である。
図6D】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の製造方法の一例を示す断面図である。
図7A】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図7B】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図8A】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図8B】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図8C】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図9】シンチレータの重量によって生じる基板の撓みの状態の一例を示す断面図である。
図10】開示の技術の実施形態に係る基板の構成の一例を示す断面図である。
図11A】微粒子層を有する基材内で発生する後方散乱線を示す断面図である。
図11B】微粒子層を有さない基材内で発生する後方散乱線を示す断面図である。
図12】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図13】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図14】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図15】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図16】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図17】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図18】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図19】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図20】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図21】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図22】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図23】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図24】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図25】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図26】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図27】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図28】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図29】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図30】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図31】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図32】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図33】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図34】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図35】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図36】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図37】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図38】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図39】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図40】開示の技術の実施形態に係る撓み抑制部材の構造の一例を示す平面図である。
図41】開示の技術の実施形態に係る撓み抑制部材の構造の一例を示す斜視図である。
図42】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図43】開示の技術の実施形態に係る撓み抑制部材の構造の一例を示す平面図である。
図44】開示の技術の実施形態に係る撓み抑制部材の構造の一例を示す平面図である。
図45】開示の技術の実施形態に係る放射線画像撮影装置の構成の一例を示す断面図である。
図46】開示の技術の実施形態に係る放射線画像撮影装置の構成の一例を示す断面図である。
図47】開示の技術の実施形態に係る放射線画像撮影装置の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。
【0054】
[第1の実施形態]
図1は、開示の技術の実施形態に係る放射線画像撮影装置10の構成の一例を示す斜視図である。放射線画像撮影装置10は、可搬型の電子カセッテの形態を有する。放射線画像撮影装置10は、放射線検出器30(FPD: Flat Panel Detectors)と、制御ユニット12と、支持板16と、放射線検出器30、制御ユニット12及び支持板16を収容する筐体14と、を含んで構成されている。
【0055】
筐体14は、例えば、X線等の放射線の透過性が高く、軽量で耐久性の高い炭素繊維強化樹脂(カーボンファイバー)により構成されたモノコック構造を有する。筐体14の上面は、放射線源(図示せず)から出射され、被写体(図示せず)を透過した放射線が入射する放射線入射面15とされている。筐体14内には、放射線入射面15側から順に、放射線検出器30、支持板16が配置されている。
【0056】
支持板16は、信号処理等を行う集積回路チップが搭載された回路基板19(図2参照)を支持しており、筐体14に固定されている。制御ユニット12は、筐体14内の端部に配置されている。制御ユニット12は、バッテリ(図示せず)及び制御部29(図3参照)を含んで構成されている。
【0057】
図2は、放射線画像撮影装置10の構成の一例を示す断面図である。放射線検出器30は、可撓性を有する基板34と、基板34の表面に設けられ、光電変換素子36(図3参照)をそれぞれ含む複数の画素41と、基板34に積層されたシンチレータ32と、基板34の撓みを抑制する撓み抑制部材60と、を有する。
【0058】
基板34は、可撓性を有するフレキシブル基板である。本明細書において、基板34が可撓性を有するとは、矩形状の基板34の4辺のうち1辺を固定したときに、基板34の重量により、基板34の固定辺から10cm離れた部位の高さが、固定辺の高さよりも2mm以上低くなることを意味する。例えば、基板34の材料として、樹脂基板、金属箔基板、厚さ0.1mm程度の薄ガラスを用いることができ、特に高耐熱性ポリイミドフィルムであるXenomax(登録商標)等の樹脂フィルムを好適に用いることができる。基板34の材料として樹脂フィルムを用いることで、基板34の材料としてガラス基板を用いる場合と比較して、放射線検出器30の軽量化及び低コスト化を図ることができ、更に、衝撃によって基板34が破損するリスクを低減することができる。複数の画素41は、それぞれ、基板34の第1の面S1に設けられている。
【0059】
基板34の厚さは、基板34の硬度及び大きさ等に応じて、所望の可撓性が得られる厚さであればよい。基板34が樹脂材料からなる基材を含んで構成される場合、基板34の厚さは、例えば5μm以上125μm以下が好ましく、20μm以上50μm以下がより好ましい。
【0060】
なお、基板34の300℃以上400℃以下における熱膨張率(CTE:Coefficient of Thermal Expansion)が、光電変換素子36を構成する材料(例えばアモルファスシリコン)の熱膨張係数(±5ppm/K程度)と同程度であることが好ましく、具体的には、20ppm/K以下であることが好ましい。また、基板34は、厚さを25μmとした場合の、400℃におけるMD(Machine Direction)方向の熱収縮率が0.5%以下であることが好ましい。また、基板34は、300℃以上400℃以下の温度領域において、一般的なポリイミドが有する転移点を有していないことが好ましく、500℃における弾性率が1GPa以上であることが好ましい。基板34が上記の特性を有することで、基板34上への画素41の形成に伴う熱処理に耐えることが可能となり、基板34上への画素41の形成を適切に行うことができる。
【0061】
また、基板34が、ポリイミド等の樹脂材料からなる基材を含んで構成される場合、図10に示すように、樹脂材料からなる基材が、平均粒子径が0.05μm以上2.5μm以下である無機材料からなる複数の微粒子34Pを含む微粒子層34Lを有していることが好ましい。また、微粒子層34Lは、基板34の、画素41が設けられている第1の面S1とは反対側の第2の面S2の側に設けられていることが好ましい。すなわち、微粒子34Pは、基板34の第2の面S2の側に偏在していることが好ましい。微粒子34Pは、基板34の表面に凹凸を生じさせる場合があり、従って、微粒子層34Lの表面に画素41を形成することが困難となる。微粒子層34Lを、基板34の第2の面S2の側に配置することで、第1の面S1の平坦性を確保することができ、画素41の形成が容易となる。
【0062】
微粒子34Pの材料としては、原子番号が、基板34の基材を構成する各元素の原子番号よりも大きく且つ30以下である元素を含む無機材料であることが好ましい。例えば、基板34の基材が、C、H、O及びN等を含む、ポリイミド等の樹脂材料により構成されている場合、微粒子34Pは、原子番号が、樹脂材料の構成元素(C、H、O及びN)の原子番号よりも大きく且つ30以下である元素を含む無機材料であることが好ましい。このような微粒子34Pの具体例としては、原子番号14のシリコンの酸化物であるSiO、原子番号12のMgの酸化物であるMgO、原子番号13のAlの酸化物であるAl、及び原子番号22のTiの酸化物であるTiO等が挙げられる。また、上記のような特性を有し且つ微粒子層34Lを有する樹脂シートの具体例としては、XENOMAX(登録商標)が挙げられる。
【0063】
なお、本実施形態における上記の厚みについては、マイクロメーターを用いて測定した。熱膨張率については、JIS K7197:1991に則して測定した。なお測定は、基板34の主面から、15度ずつ角度を変えて試験片を切り出し、切り出した各試験片について熱膨張率を測定し、最も高い値を基板34の熱膨張率とした。熱膨張率の測定は、MD(Machine Direction)方向およびTD(Transverse Direction)方向のそれぞれについて、-50℃~450℃において10℃間隔で行い、(ppm/℃)を(ppm/K)に換算した。熱膨張率の測定には、MACサイエンス社製 TMA4000S装置を用い、サンプル長さを10mm、サンプル幅を2mm、初荷重を34.5g/mm、昇温速度を5℃/min、及び雰囲気をアルゴンとした。弾性率については、K 7171:2016に則して測定した。なお測定は、基板34の主面から、15度ずつ角度を変えて試験片を切り出し、切り出した各試験片について引っ張り試験を行い、最も高い値を基板34の弾性率とした。
【0064】
シンチレータ32は、基板34の第1の面S1の側に積層されている。シンチレータ32は、照射された放射線を光に変換する蛍光体を含む。シンチレータ32は、一例としてCsI:Tl(タリウムが添加されたヨウ化セシウム)を含む柱状結晶の集合体によって構成されている。CsI:Tlの柱状結晶は、例えば気相成長法によって基板34上に直接形成することができる。なお、基板34とは別の基板に形成したCsI:Tlの柱状結晶を、基板34に貼り付けてもよい。また、シンチレータ32の材料としてGdS:Tb(テルビウムが添加された酸硫化ガドリニウム)を用いることができる。複数の画素41を構成する光電変換素子36(図3参照)の各々は、シンチレータ32から発せられた光に基づいて電荷を生成する。
【0065】
シンチレータ32の、基板34と接する面S6とは反対側の面S3及びS面3と交差する面S4は、反射膜50によって覆われている。反射膜50は、シンチレータ32から発せられた光を基板34側に反射させる機能を有する。反射膜50の材料として、例えば、Alを用いることができる。反射膜50は、シンチレータ32の面S3及び面S4を覆い且つシンチレータ32の周辺部において基板34上をも覆っている。なお、反射膜50が設けられていなくても放射線画像撮影装置10において所望の画質の放射線画像を得ることができる場合には、反射膜50を省略することが可能である。
【0066】
本実施形態において、放射線画像撮影装置10は、放射線の入射側に基板34を配置する、表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)による撮影方式を採用している。表面読取方式を採用することで、放射線の入射側にシンチレータ32を配置する、裏面読取方式(PSS: Penetration Side Sampling)を採用した場合と比較して、シンチレータ32における強発光位置と画素41との間の距離を短くすることができ、その結果、放射線画像の解像度を高めることができる。なお、放射線画像撮影装置10は、裏面読取方式を採用するものであってもよい。
【0067】
支持板16は、シンチレータ32の放射線入射側とは反対側に配置されている。支持板16とシンチレータ32との間には、隙間が設けられている。支持板16は、筐体14の側部に固定されている。支持板16のシンチレータ32側とは反対側の面には、回路基板19が設けられている。回路基板19には、画像データを生成する信号処理部26や、信号処理部26により生成された画像データを記憶する画像メモリ28等が搭載されている。
【0068】
回路基板19と基板34とは、フレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuit)やTCP(Tape Carrier Package)またはCOF(Chip On Film)にプリントされた可撓性のケーブル20を介して電気的に接続されている。ケーブル20上には、画素41から読み出された電荷を電気信号に変換するチャージアンプ24が搭載されている。回路基板19と基板34とを電気的に接続する、図2において図示されていない、別のフレキシブルプリント基板上には、ゲート線駆動部22(図3参照)が搭載されている。
【0069】
撓み抑制部材60は、基板34の第1の面S1とは反対側の第2の面S2の側に積層されている。撓み抑制部材60は、基板34がシンチレータ32を支持するのに必要な剛性を、基板34に付与する役割を担う。すなわち、撓み抑制部材60を設けることで、撓み抑制部材60を設けない場合と比較して、シンチレータ32の重量による基板34の撓みが抑制される。撓み抑制部材60は、シンチレータ32が延在する範囲よりも広い範囲に亘って延在している。すなわち、平面視における撓み抑制部材60の面積は、シンチレータ32の面積よりも大きく、撓み抑制部材60が延在する範囲の内側に、シンチレータ32が配置されている。従って、撓み抑制部材60の平面方向における端部は、シンチレータ32の平面方向における端部よりも外側に位置している。これにより、シンチレータ32の重量による基板34の撓みを抑制する効果が促進される。また、基板34は、ケーブル20が接続される接続領域80を基板34の外周部に有する。撓み抑制部材60は、接続領域80の少なくとも一部及びシンチレータ32を覆う領域に設けられている。可撓性のケーブル20が接続される接続領域80においても、基板34は撓みを生じやすくなるが、接続領域80の少なくとも一部を覆う領域に撓み抑制部材60が設けられることで、基板34の接続領域80における撓みを抑制することが可能となる。
【0070】
撓み抑制部材60は、基板34の撓みを抑制する観点から、基板34よりも高い剛性を有していることが好ましい。撓み抑制部材60は、曲げ弾性率が、1000MPa以上3500MPa以下の素材を用いた部材であることが好ましい。撓み抑制部材60を構成する素材の曲げ弾性率を1000MPa以上とすることで、撓み抑制部材60における、基板34の撓み抑制する機能が効果的に発揮される。撓み抑制部材60を構成する素材の曲げ弾性率を3500MPa以下とすることで、例えば、放射線検出器30の製造工程において、基板34に撓み抑制部材60を取り付けた後に、基板34を支持する支持体(図示せず)を基板から剥離する場合、基板34が適度に撓むので支持体の基板34からの剥離が容易となる。なお、曲げ弾性率の測定方法は、JIS K 7171:2016に規定される測定方法を適用することができる。また、撓み抑制部材60の曲げ剛性は、3600Pa・cm以上、196000Pa・cm以下であることが好しい。また、撓み抑制部材60の厚さは、0.1mm程度が好ましい。
【0071】
撓み抑制部材60の熱膨張率は、30ppm/K以上80ppm/K以下であることが好ましい。また、撓み抑制部材60の熱膨張率は、シンチレータ32の熱膨張率に近いことが好ましい。具体的には、シンチレータ32の熱膨張率C1に対する撓み抑制部材60の熱膨張率C2の比(C2/C1)が、0.5以上2以下であることが好ましい。撓み抑制部材60の熱膨張率が上記の条件を満たすことで、加熱時及び発熱時等において基板34とシンチレータ32とが剥離するリスクを抑制することができる。例えば、シンチレータ32が主としてCsI:Tlを含んで構成されている場合、シンチレータ32の熱膨張率は50ppm/Kである。この場合、熱膨張率が60ppm/K~80ppm/Kであるポリ塩化ビニル(PVC)、熱膨張率が70ppm/K~80ppm/Kであるアクリル、熱膨張率が65~70ppm/Kであるポリエチレンテレフタレート(PET)、熱膨張率が65ppm/Kであるポリカーボネート(PC)、及び熱膨張率が45ppm/K~70ppm/Kであるテフロン(登録商標)等が、撓み抑制部材60の材料として用いることができる。上述した曲げ弾性率を考慮すると、撓み抑制部材60の材料としては、アクリル、PET及びPCの少なくとも1つを含む材料であることが好ましい。
【0072】
撓み抑制部材60の他の候補材料として、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、シリコーン樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂を用いることができる。また、撓み抑制部材60の材料として、アルミニウム、鉄、またはこれらの合金等の金属を用いることもできる。また、撓み抑制部材60の材料として、樹脂及び金属を積層した積層体を用いることもできる。撓み抑制部材60の、基板34との接触面とは反対側の面S5は、接着層18を介して筐体14の内壁に貼り付けられている。
【0073】
図3は、放射線画像撮影装置10の電気的構成の一例を示す図である。基板34の第1の面S1には、複数の画素41がマトリクス状に配置されている。画素41の各々は、シンチレータ32から発せられた光に基づいて電荷を発生させる光電変換素子36と、光電変換素子36において生成された電荷を読み出す際にオン状態とされるスイッチング素子としてのTFT(Thin Film Transistor)42とを含んでいる。光電変換素子36は、例えば、アモルファスシリコンによって構成されるフォトダイオードであってもよい。
【0074】
基板34の第1の面S1には、画素41の配列に沿って一方向(行方向)に伸びるゲート線43と、ゲート線43の伸びる方向と交差する方向(列方向)に伸びる信号線44が設けられている。画素41の各々は、ゲート線43と信号線44との各交差部に対応して設けられている。
【0075】
ゲート線43の各々は、ゲート線駆動部22に接続されている。ゲート線駆動部22は、制御部29から供給される制御信号に基づいて、画素41に蓄積された電荷の読み出しを行う。信号線44の各々は、チャージアンプ24に接続されている。チャージアンプ24は複数の信号線44の各々に対応して設けられている。チャージアンプ24は、画素41から読み出された電荷に基づいて電気信号を生成する。チャージアンプ24の出力端子は、信号処理部26に接続されている。信号処理部26は、制御部29から供給される制御信号に基づいて、チャージアンプ24から供給される電気信号に対して所定の処理を施すことで、画像データを生成する。信号処理部26には、画像メモリ28が接続されている。画像メモリ28は、制御部29から供給される制御信号に基づいて信号処理部26によって生成された画像データを記憶する。
【0076】
制御部29は、有線または無線の通信部(図示せず)を介して、放射線源と接続されたコンソール(図示せず)と通信して、ゲート線駆動部22、信号処理部26及び画像メモリ28を制御することで、放射線画像撮影装置10の動作を制御する。制御部29は、例えばマイクロコンピュータを含んで構成されていてもよい。なお、ゲート線駆動部22は、開示の技術における読み出し部の一例である。信号処理部26は、開示の技術における生成部の一例である。
【0077】
以下に、放射線画像撮影装置10の動作の一例について説明する。放射線源(図示せず)から出射され被写体を透過した放射線が放射線画像撮影装置10の放射線入射面15から入射すると、シンチレータ32は、放射線を吸収して可視光を発する。画素41を構成する光電変換素子36は、シンチレータ32から発せられた光を電荷に変換する。光電変換素子36によって生成された電荷は、対応する画素41に蓄積される。光電変換素子36によって生成された電荷の量は、対応する画素41の画素値に反映される。
【0078】
放射線画像を生成する場合、ゲート線駆動部22は、制御部29から供給される制御信号に基づいて、ゲート線43を介してゲート信号をTFT42に供給する。TFT42は、このゲート信号により行単位でオン状態とされる。TFT42がオン状態とされることにより画素41に蓄積された電荷が信号線44に読み出され、チャージアンプ24に供給される。チャージアンプ24は、信号線44に読み出された電荷に基づいて電気信号を生成し、これを信号処理部26に供給する。
【0079】
信号処理部26は、複数のサンプルホールド回路、マルチプレクサ、アナログデジタル変換器(いずれも図示せず)を備えている。複数のサンプルホールド回路は、複数の信号線44の各々に対応して設けられている。チャージアンプ24から供給された電気信号は、サンプルホールド回路で保持される。個々のサンプルホールド回路で保持された電気信号は、マルチプレクサを介してアナログデジタル変換器に入力され、デジタル信号に変換される。信号処理部26は、アナログデジタル変換器によって生成されたデジタル信号と画素41の位置情報とを対応付けたデータを画像データとして生成し、画像データを画像メモリ28に供給する。画像メモリ28は、信号処理部26によって生成された画像データを記憶する。
【0080】
基板34は可撓性を有しているため、例えば、放射線検出器30の製造工程において基板34をハンドリングする際に、シンチレータ32の重量によって、基板34に比較的大きな局所的な撓みが生じるおそれがある。基板34に大きな撓みが生じると、基板34の表面に設けられた画素41が損傷するおそれがある。
【0081】
図4は、基板34が、円弧状に撓んでいる状態を示す図である。図4においてRは基板34に生じた撓みの曲率半径であり、Xは基板34に形成された画素41のサイズである。すなわち、画素41の一端部である点Aと、画素41の他端部である点Bとの距離(線分ABの長さ)が、画素41のサイズXである。
【0082】
なお、画素41のサイズとして光電変換素子36のサイズを適用してもよい。また、画素41のサイズとして、画素41(光電変換素子36)の最長部の長さを適用してもよい。例えば、図5A図5B図5Cにそれぞれ示すように、画素41(光電変換素子36)の外形が、正方形、長方形または正六角形等の多角形である場合、画素41の対角線の長さを画素41のサイズXとして適用してもよい。また、画素41の1辺の長さを画素41(光電変換素子36)のサイズXとして適用してもよい。この場合において、画素41の外形が長方形である場合等、画素41が長辺と短辺とを含む場合、長辺の長さを画素41(光電変換素子36)のサイズとして適用することが好ましい。
【0083】
図4においてZは基板34の撓みによる画素41の変形量である。すなわち、変形量Zは、画素41の一端部(点A)における接線Lと、画素41の他端部(点B)との間の距離(線分BCの長さ)に相当する。図4においてθは、弧ABを含む扇形の中心角に相当する。
【0084】
画素41のサイズXは、円弧状に撓む基板34の、当該円弧の弦ABの長さに相当する。従って、画素41のサイズXは、下記の(1)式によって表わすことができる。
X=2Rsin(θ/2) ・・・(1)
一方、∠BACは、θ/2であるから、下記の(2)式を導くことができる。
sin(θ/2)=Z/X ・・・(2)
(2)式を(1)式に代入すると、下記の(3)式及び(4)式を導くことができる
X=2R×Z/X ・・・(3)
R=X/2Z ・・・(4)
【0085】
ここで、画素41が損傷に至らない変形量Zの最大値(以下、限界変形量という)をZとした場合、基板34の撓みの曲率半径Rを下記の(5)式の範囲に制限することで、画素41の損傷のリスクを低減することができる。
R≧X/2Z ・・・(5)
例えば、画素41のサイズXが150μmであり、画素41の限界変形量Zが0.05μmである場合、基板34の撓みの曲率半径Rを225mm以上とすることで、画素41の損傷のリスクを低減することができる。
なお損傷を受けやすい部分は膜厚が厚い部分や脆性が高い部分である。例えば、光電変換素子36がアモルファスシリコン層に形成されるフォトダイオードを含む場合、このアモルファスシリコン層は、損傷を受けやすい。この場合、アモルファスシリコン層は、その厚さは0.5~2.5μm程度であり、画素41の中で特に厚さが厚く、限界変形量Zが小さい。
【0086】
本実施形態に係る放射線検出器30において、撓み抑制部材60は、基板34の端部を固定した状態において、シンチレータ32の重量によって基板34に生じる撓みの曲率半径Rが(5)式を満たす剛性を有する。換言すれば、撓み抑制部材60の剛性は、基板34の端部を固定した状態において、シンチレータ32の重量によって基板34に生じる撓みの曲率半径Rが(5)式を満たすように調整されている。すなわち、撓み抑制部材60の剛性が、画素41のサイズに応じて定められる。これにより、例えば、放射線検出器30の製造工程において基板34をハンドリングする際に、シンチレータ32の重量によって基板34に生じた撓みにより画素41が損傷するリスクを、(5)式を満たさない場合と比較して、低減することができる。例えば、画素41のサイズXが大きくなる程、許容される曲率半径Rは大きくなるので、高い剛性を備えた撓み抑制部材60が用いられる。
【0087】
撓み抑制部材60の剛性は、例えば、撓み抑制部材60の厚さ、密度、弾性率等によって調整することができる。また、撓み抑制部材60の剛性は、撓み抑制部材60を構成する材料の選択によっても調整することが可能である。
【0088】
以下に、放射線検出器30の製造方法について説明する。図6A図6Dは、放射線検出器30の製造方法の一例を示す断面図である。
【0089】
はじめに、基板34の第1の面S1に複数の画素41を形成する(図6A)。なお、基板34を支持するための支持体(図示せず)により基板34を支持した状態で、画素41の形成を行ってもよい。
【0090】
次に、基板34の第1の面S1とは反対側の第2の面S2に撓み抑制部材60を貼り付ける(図6B)。撓み抑制部材60は、シンチレータ32の重量によって基板34に生じる撓みの曲率半径Rが(5)式を満たす剛性を有する。例えば、画素41のサイズXが大きくなる程、撓み抑制部材60の剛性が高められる。
【0091】
次に、基板34の第1の面S1上にシンチレータ32を形成する(図6C)。シンチレータ32は、例えば気相成長法を用いて、TlをドープしたCsIの柱状結晶を基板34上に直接成長させることにより形成することができる。なお、基板34とは別の基板に形成したCsI:Tlの柱状結晶を、基板34に貼り付けてもよい。また、シンチレータ32の材料としてGdS:Tb(テルビウムが添加された酸硫化ガドリニウム)を用いることができる。
【0092】
次に、シンチレータ32の、基板34と接する面S6とは反対側の面S3及び面S3と交差する面S4を覆う反射膜50を形成する(図6D)。反射膜50の材料として、例えば、Alを用いることができる。反射膜50は、シンチレータ32の周辺部において基板34上をも覆うように形成される。
【0093】
開示の技術の実施形態に係る放射線検出器30及び放射線画像撮影装置10によれば、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の重量によって生じる基板34の撓みの曲率半径Rが(5)式を満たす剛性を有する。従って、シンチレータ32の重量によって生じる基板34の撓みの曲率半径Rは、(5)式に示される範囲に制限される。従って、例えば放射線検出器30の製造工程において基板34をハンドリングする際に、シンチレータ32の重量によって基板34に撓みが生じたとしても、画素41が損傷するリスクを、開示の技術を適用しない場合と比較して、低減することができる。
【0094】
ここで、図11A図11Bは、それぞれ、放射線の読み取り方式としてISS方式を適用した放射線画像撮影装置10の部分的な構成の一例を示す断面図である。図11A及び図11Bは、それぞれ、基板34が、ポリイミド等の樹脂材料からなる基材を含んで構成される場合であり、図11Aは、基板34が微粒子層34Lを含む場合であり、図11Bは、基板34が微粒子層を含まない場合である。ISS方式が適用される場合、基板34及びシンチレータ32のうち、基板34が、筐体14の放射線入射面15側に配置される。すなわち、放射線入射面15に入射した放射線Rは、基板34を透過した後、シンチレータ32に入射する。
【0095】
原子番号が比較的小さいC、H、O及びN等を構成元素として有する樹脂材料を含む基板34に放射線が入射すると、コンプトン効果によって後方散乱線Rbが比較的多く発生し、被写体200の側に漏洩するおそれがある。図11Aに示すように、原子番号が樹脂材料の構成元素(C、H、O及びN)の原子番号よりも大きい元素を含む無機材料からなる微粒子34Pを含む微粒子層34Lが基板34に設けられることで、基板34内で発生した後方散乱線Rbを、微粒子層34Lにおいて吸収することが可能となる。これにより、基板34が微粒子層を含まない場合(図11B参照)と比較して、被写体200の側に漏洩する後方散乱線Rbの量を抑制することが可能となる。なお、微粒子34Pを構成する元素の原子番号が大きくなる程、後方散乱線Rbを吸収する効果が高くなる一方、放射線の吸収量も多くなり、シンチレータ32に到達する放射線の線量が小さくなる。従って、微粒子34Pを構成する元素の原子番号は、30以下であることが好ましい。
【0096】
なお、上記の実施形態では、撓み抑制部材60を、基板34の第2の面S2の側に設ける場合を例示したが、開示の技術は、この態様に限定されるものではない。例えば図7Aに示すように、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の基板34と接する面S6とは反対側の面S3の側に積層されていてもよい。この構成によれば、撓み抑制部材60を基板34の第2の面S2の側に設ける場合と略同様の効果を得ることができる。
【0097】
また、図7Bに示すように、撓み抑制部材60は、基板34の第2の面S2の側及びシンチレータ32の基板34と接する面S6の側とは反対側の面S3の側の双方に積層されていてもよい。撓み抑制部材60を、基板34の第2の面S2の側及びシンチレータ32の、基板34と接する面S6の側とは反対側の面S3の側の少なくとも一方に積層することで、撓み抑制部材60による撓み抑制効果が促進される。また、図7Bに示すように、撓み抑制部材60を、基板34の第2の面S2の側及びシンチレータ32の面S3の側の双方に積層することで、撓み抑制部材60による撓み抑制効果を更に促進させることができ、基板34の撓みによって画素41が損傷するリスクを更に低減することができる。なお、基板34の第2の面S2の側及びシンチレータ32の面S3の側の双方に撓み抑制部材60を積層する場合、放射線の入射側である基板34の第2の面S2の側に積層される撓み抑制部材60の方が、シンチレータ32の面S3の側に積層される撓み抑制部材60よりも、放射線の吸収量が少ないことが好ましい。
【0098】
[第2の実施形態]
図8Aは、開示の技術の第2の実施形態に係る放射線検出器30Aの構成の一例を示す断面図である。放射線検出器30Aは、撓み抑制部材60による撓み抑制効果を補強する補強部材70を更に含む点が、第1の実施形態に係る放射線検出器30と異なる。
【0099】
図8Aに示す構成において、撓み抑制部材60は、基板34の第2の面S2の側に設けられており、補強部材70は、撓み抑制部材60の、基板34と接する面の側とは反対側の面S5の側に設けられている。補強部材70は、シンチレータ32の平面方向における端部(外縁、エッジ)32Eを跨ぐ領域に設けられている。すなわち、補強部材70は、撓み抑制部材60の面S5の側において、シンチレータ32が存在する領域と、シンチレータ32が存在しない領域の境界を跨いだ状態で、撓み抑制部材60に設けられている。補強部材70は、撓み抑制部材60による撓み抑制効果を補強する観点から、基板34よりも高い剛性を有していることが好ましい。補強部材70における曲げ弾性率及び熱膨張率の好ましい範囲は、撓み抑制部材60と同じである。補強部材70は、例えば、撓み抑制部材60と同じ材料で構成されていてもよいし、撓み抑制部材60よりも高い剛性を有する材料で構成されていてもよい。
【0100】
ここで、図9は、シンチレータ32の重量によって生じる基板34の撓みの状態の一例を示す断面図である。図9に示すように、基板34のシンチレータ32が延在する領域は、シンチレータ32の剛性により基板34の撓み量は比較的小さい。一方、基板34のシンチレータ32の端部32Eに対応する部分においては、基板34の撓み量が比較的大きい。基板34の撓み量が大きい部分においては、撓み量が小さい部分と比較して画素41が損傷するリスクが高くなる。
【0101】
開示の技術の第2の実施形態に係る放射線検出器30Aによれば、撓み抑制部材60による撓み抑制効果を補強する補強部材70が、シンチレータ32の端部32Eを跨ぐ領域に設けられている。これにより、補強部材70を設けない場合と比較して、基板34のシンチレータ32の端部32Eに対応する部分における撓みを抑制することができる。従って、補強部材70を設けない場合と比較して、画素41が損傷するリスクを低減することができる。
【0102】
なお、図8Bに示すように、撓み抑制部材60がシンチレータ32の基板34と接する面S6とは反対側の面S3上に設けられている場合、補強部材70は、基板34の第2の面S2上に設けられていてもよい。また、図8Cに示すように、撓み抑制部材60が基板34の第2の面S2上及びシンチレータ32の面S3上の双方に設けられている場合、補強部材70は、撓み抑制部材60の基板34と接する面の側とは反対側の面S5上に設けられていてもよい。図8B及び図8Cに示すいずれの構成においても、補強部材70は、シンチレータ32の端部(外縁、エッジ)32Eを跨ぐ領域に設けられている。すなわち、図8Bに示す構成において、補強部材70は、基板34の第2の面S2の側において、シンチレータ32が存在する領域と、シンチレータ32が存在しない領域の境界を跨いだ状態で、基板34に設けられている。図8Cに示す構成において、補強部材70は、撓み抑制部材60の面S5の側において、シンチレータ32が存在する領域と、シンチレータ32が存在しない領域の境界を跨いだ状態で、撓み抑制部材60に設けられている。
【0103】
[第3の実施形態]
図12は、開示の技術の第3の実施形態に係る放射線検出器30Bの構成の一例を示す断面図である。放射線検出器30Bは、基板34とシンチレータ32との間に設けられた緩衝層90を有する。緩衝層90は、基板34の熱膨張率とシンチレータ32の熱膨張率との間の熱膨張率を有する。緩衝層90として、例えば、ポリイミド膜及びパリレン膜を用いることができる。基板34の材料として、XENOMAX(登録商標)を用いた場合には、基板34として例えばガラス基板を用いた場合と比較して、基板34とシンチレータ32との間の熱膨張率の差が大きくなり、基板34とシンチレータ32との界面に作用する熱応力が過大となる。基板34とシンチレータ32との間に緩衝層90を設けることで、基板34とシンチレータ32との界面に作用する熱応力を抑制することが可能となる。
【0104】
[その他の実施形態]
図13図33は、それぞれ、撓み抑制部材60がシンチレータ32の基板34と接する面とは反対側の面の側に積層された場合における、撓み抑制部材60の設置形態の例を示す断面図である。図13図33において、基板34上の複数の画素41が設けられた領域である画素領域41Aが示されている。
【0105】
シンチレータ32を気相堆積法を用いて形成した場合、図13図33に示すように、シンチレータ32は、その外縁に向けて厚さが徐々に薄くなる傾斜を有して形成される。以下において、製造誤差及び測定誤差を無視した場合の厚さが略一定とみなせる、シンチレータ32の中央領域を中央部33Aという。また、シンチレータ32の中央部33Aの平均厚さに対して例えば90%以下の厚さを有する、シンチレータ32の外周領域を周縁部33Bという。すなわち、シンチレータ32は、周縁部33Bにおいて基板34に対して傾斜した傾斜面を有する。
【0106】
図13図33に示すように、シンチレータ32と撓み抑制部材60との間には、粘着層51、反射膜50、接着層52、保護層53及び接着層54が設けられていてもよい。
【0107】
粘着層51は、シンチレータ32の中央部33A及び周縁部33Bを含むシンチレータ32の表面全体を覆っている。粘着層51は、反射膜50をシンチレータ32上に固定する機能を有する。粘着層51は、光透過性を有していることが好ましい。粘着層51の材料として、例えば、アクリル系粘着剤、ホットメルト系粘着剤、及びシリコーン系接着剤を用いることが可能である。アクリル系粘着剤としては、例えば、ウレタンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート、及びエポキシアクリレート等が挙げられる。ホットメルト系粘着剤としては、例えば、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)、EAA(エチレンとアクリル酸の共重合樹脂)、EEA(エチレン-エチルアクリレート共重合樹脂)、及びEMMA(エチレン-メタクリル酸メチル共重合体)等の熱可塑性プラスチックが挙げられる。粘着層32の厚さは、2μm以上7μm以下であることが好ましい。粘着層32の厚さを2μm以上とすることで、反射膜50をシンチレータ32上に固定する効果を十分に発揮することができる。更に、シンチレータ32と反射膜50との間に空気層が形成されるリスクを抑制することができる。シンチレータ32と反射膜50との間に空気層が形成されると、シンチレータ32から発せられた光が、空気層とシンチレータ32との間、及び空気層と反射膜50との間で反射を繰り返す多重反射を生じるおそれがある。また、粘着層32の厚さを7μm以下とすることで、MTF(Modulation Transfer Function)及びDQE(Detective Quantum Efficiency)の低下を抑制することが可能となる。
【0108】
反射膜50は、粘着層51の表面全体を覆っている。反射膜50は、シンチレータ32で変換された光を反射する機能を有する。反射膜50は有機系材料によって構成されていることが好ましい。反射膜50の材料として、例えば、白PET(Polyethylene Terephthalate)、TiO、Al、発泡白PET、ポリエステル系高反射シート、及び鏡面反射アルミ等を用いることができる。なお白PETとは、PETに、TiOや硫酸バリウム等の白色顔料を添加したものである。また、ポリエステル系高反射シートとは、薄いポリエステルのシートを複数重ねた多層構造を有するシート(フィルム)である。また、発泡白PETとは、表面が多孔質になっている白PETである。反射膜50の厚さは、10μm以上40μm以下であることが好ましい。
【0109】
接着層52は反射膜50の表面全体を覆っている。接着層52の端部は、基板34の表面にまで延在している。すなわち、接着層52は、その端部において基板34に接着している。接着層52は、反射膜50及び保護層53をシンチレータ32に固定する機能を有する。接着層52の材料として、粘着層51の材料と同じ材料を用いることが可能であるが、接着層52が有する接着力は、粘着層51が有する接着力よりも大きいことが好ましい。
【0110】
保護層53は、接着層52の表面全体を覆っている。すなわち、保護層53は、シンチレータ32の全体を覆うとともに、その端部が基板34の一部を覆うように設けられている。保護層53は、シンチレータ32への水分の浸入を防止する防湿膜として機能する。保護層53の材料として、例えば、PET、PPS(PolyPhenylene Sulfide:ポリフェニレンサルファイド)、OPP(Oriented PolyPropylene:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)、PEN(PolyEthylene Naphthalate:ポリエチレンナフタレート)、PI等の有機材料を含む有機膜を用いることができる。また、保護層53として、ポリエチレンテレフタレート等の絶縁性のシート(フィルム)に、アルミ箔を接着させる等してアルミを積層したアルペット(登録商標)のシートを用いてもよい。
【0111】
撓み抑制部材60は、保護層53の表面に接着層54を介して設けられている。接着層54の材料として、例えば、粘着層51及び接着層54の材料と同じ材料を用いることが可能である。
【0112】
図13に示す例では、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33A及び周縁部33Bに対応する領域に延在しており、撓み抑制部材60の外周部は、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に沿うように折り曲げられている。撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33Aに対応する領域及び周縁部33Bに対応する領域の双方において、接着層54を介して保護層53に接着されている。図13に示す例では、撓み抑制部材60の端部は、シンチレータ32の周縁部33Bに対応する領域に配置されている。
【0113】
図14に示すように、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33Aに対応する領域にのみ設けられていてもよい。この場合、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33Aに対応する領域において接着層54を介して保護層53に接着される。
【0114】
図15に示すように、撓み抑制部材60がシンチレータ32の中央部33A及び周縁部33Bに対応する領域に延在している場合において、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の外周部における傾斜に沿った折り曲げ部を有していなくてもよい。この場合、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33Aに対応する領域において、接着層54を介して保護層53に接着される。シンチレータ32の周縁部33Bに対応する領域において、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間には、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に応じた空間が形成される。
【0115】
ここで、基板34の外周部の接続領域80に設けられる端子35には、ケーブル20が接続される。基板34は、ケーブル20を介して制御基板(図45参照)に接続される。基板34に撓みが生じた場合、ケーブル20が基板34から剥離したり、位置ズレを生じたりするおそれがある。この場合、ケーブル20と基板34との接続をやり直す作業が必要となる。このケーブル20と基板34との接続をやり直す作業をリワークと呼ぶ。図13図15に示すように、撓み抑制部材60の端部をシンチレータ32の端部よりも内側に配置することで、撓み抑制部材60が、接続領域80の近傍にまで延在している場合と比較して、容易にリワークを行うことができる。
【0116】
図16図19に示すように、撓み抑制部材60は、その端部が、シンチレータ32の端部よりも外側に配置され、且つ基板34上にまで延在する接着層52及び保護層53の端部に揃うように設けられていてもよい。なお、撓み抑制部材60の端部の位置と、接着層52及び保護層53の端部の位置とが完全に一致していることを要しない。
【0117】
図16に示す例では、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33Aに対応する領域において、接着層54を介して保護層53に接着されており、シンチレータ32の周縁部33Bに対応する領域及び更にその外側の領域において、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間には、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に応じた空間が形成されている。
【0118】
図17に示す例では、シンチレータ32の周縁部33Bに対応する領域及び更にその外側の領域において、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材55が設けられている。充填材55の材料は特に限定されず、例えば、樹脂を用いることが可能である。なお、図17に示す例では、撓み抑制部材60を充填材55に固定するために、接着層54が撓み抑制部材60と充填材55との間の全域に設けられている。
【0119】
充填材55を形成する方法は特に限定されない。例えば、粘着層51、反射膜50、接着層52及び保護層53で覆われたシンチレータ32上に、接着層54及び撓み抑制部材60を順次形成した後、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間に形成された空間に、流動性を有する充填材55を注入し、充填材55を硬化させてもよい。また、例えば、基板34上にシンチレータ32、粘着層51、反射膜50、接着層52及び保護層53を順次形成した後、充填材55を形成し、粘着層51、反射膜50、接着層52及び保護層53で覆われたシンチレータ32及び充填材55を覆うように、接着層54及び撓み抑制部材60を順次形成してもよい。
【0120】
このように、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間に形成された空間に、充填材55を充填することで、図16に示す形態と比較して、撓み抑制部材60のシンチレータ32(保護層53)からの剥離を抑制することができる。更に、シンチレータ32は、撓み抑制部材60及び充填材55の双方により基板34に固定される構造となるため、シンチレータ32の基板34からの剥離を抑制することが可能となる。
【0121】
図18に示す例では、撓み抑制部材60の外周部は、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に沿うように折り曲げられており、且つ接着層52及び保護層53が基板34上を覆う部分をも覆っている。また、撓み抑制部材60の端部は、接着層52及び保護層53の端部に揃っている。なお、撓み抑制部材60の端部の位置と、接着層52及び保護層53の端部の位置とが完全に一致していることを要しない。
【0122】
撓み抑制部材60、接着層54、保護層53及び接着層52の端部は、封止部材57によって封止されている。封止部材57は、基板34の表面から撓み抑制部材60の表面に亘る領域であり、且つ画素領域41Aを覆わない領域に設けられていることが好ましい。封止部材57の材料として、樹脂を用いることができ、特に熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、アクリル糊、及びウレタン系の糊等を封止部材57として用いることができる。撓み抑制部材60は、保護層53と比較して剛性が高く、撓み抑制部材60の折り曲げ部において、折り曲げを解消しようとする復元力が作用し、これによって保護層53が剥離するおそれがある。撓み抑制部材60、接着層54、保護層53及び接着層52の端部を封止部材57によって封止することで、保護層53の剥離を抑制することが可能となる。
【0123】
図19に示す例では、図17に示す形態と同様、シンチレータ32の周縁部33Bに対応する領域及び更にその外側の領域において、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材55が設けられている。また、シンチレータ32の端部に対応する領域において、撓み抑制部材60の表面に更に別の撓み抑制部材60Aが、接着層54Aを介して積層されている。より具体的には、撓み抑制部材60Aは、シンチレータ32の端部(外縁、エッジ)を跨ぐ領域に設けられている。撓み抑制部材60Aは、撓み抑制部材60と同一の材料で構成されていてもよい。図9に示すように、シンチレータ32の端部においては、基板34の撓み量が比較的大きい。シンチレータ32の端部に対応する領域において、撓み抑制部材60及び60Aによる積層構造を形成することで、シンチレータ32の端部における基板34の撓みを抑制する効果を促進させることが可能となる。
【0124】
図16図19に示すように、撓み抑制部材60の端部がシンチレータ32の端部よりも外側に配置され且つ接着層52及び保護層53の端部に揃うように設けられる場合においても、撓み抑制部材60が、接続領域80の近傍にまで延在している場合と比較して、容易にリワークを行うことができる。
【0125】
図20図23に示すように、撓み抑制部材60は、その端部が、基板34上にまで延在する接着層52及び保護層53の端部よりも外側であり、且つ基板34の端部よりも内側に位置するように設けられていてもよい。
【0126】
図20に示す例では、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33Aに対応する領域において、接着層54を介して保護層53に接着されており、シンチレータ32の周縁部33Bに対応する領域及び更にその外側の領域において、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間には、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に応じた空間が形成されている。
【0127】
図21に示す例では、撓み抑制部材60の端部がスペーサ39によって支持されている。すなわち、スペーサ39の一端は基板34の第1の面S1に接続され、スペーサ39の他端は接着層56を介して撓み抑制部材60の端部に接続されている。基板34との間に空間を形成しつつ延伸する撓み抑制部材60の端部をスペーサ39によって支持することで、撓み抑制部材60の剥離を抑制することが可能となる。また、基板34の端部近傍にまで撓み抑制部材60による撓み抑制効果を作用させることができる。なお、スペーサ39を設けることに代えて、図17に示す例に倣って、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材を充填してもよい。
【0128】
図22に示す例では、撓み抑制部材60の外周部が、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に沿うように折り曲げられており、且つ接着層52及び保護層53が基板34上を覆う部分、及びその外側の基板34上をも覆っている。すなわち、接着層52及び保護層53の端部が、撓み抑制部材60によって封止されている。撓み抑制部材60の基板34上に延在する部分は、接着層54を介して基板34に接着されている。このように、接着層52及び保護層53の端部を撓み抑制部材60によって覆うことで、保護層53の剥離を抑制することが可能である。なお、図18に記載の例に倣って、封止部材を用いて、撓み抑制部材60の端部を封止してもよい。
【0129】
図23に示す例では、撓み抑制部材60の端部がスペーサ39によって支持されている形態において、撓み抑制部材60の表面の、シンチレータ32の端部に対応する領域に、更に別の撓み抑制部材60Aが、接着層54Aを介して積層されている。より具体的には、撓み抑制部材60Aは、シンチレータ32の端部(外縁、エッジ)を跨ぐ領域に設けられている。撓み抑制部材60Aは、撓み抑制部材60と同一の材料で構成されていてもよい。図9に示すように、シンチレータ32の端部においては、基板34の撓み量が比較的大きい。シンチレータ32の端部に対応する領域において、撓み抑制部材60及び60Aによる積層構造を形成することで、シンチレータ32の端部における基板34の撓みを抑制する効果を促進させることが可能となる。なお、スペーサ39を設けることに代えて、図17に示す例に倣って、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材を充填してもよい。
【0130】
図24図28に示すように、撓み抑制部材60は、その端部が、基板34の端部に揃うように設けられていてもよい。なお、撓み抑制部材60の端部の位置と基板34の端部の位置とが完全に一致していることを要しない。
【0131】
図24に示す例では、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33Aに対応する領域において、接着層54を介して保護層53に接着されており、シンチレータ32の周縁部33Bに対応する領域及び更にその外側の領域において、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間には、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に応じた空間が形成されている。
【0132】
図25に示す例では、撓み抑制部材60の端部がスペーサ39によって支持されている。すなわち、スペーサ39の一端は、基板34の端部に設けられるケーブル20に接続され、スペーサ39の他端は接着層56を介して撓み抑制部材60の端部に接続されている。基板34との間に空間を形成しつつ延伸する撓み抑制部材60の端部を、スペーサ39によって支持することで、撓み抑制部材60の剥離を抑制することが可能となる。また、基板34の端部近傍にまで撓み抑制部材60による撓み抑制効果を作用させることができる。
【0133】
図26に示す例では、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材55が充填されている。本実施形態において、ケーブル20と端子35との接続部が充填材55によって覆われている。このように、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材55が充填されることで、図24に示す形態と比較して、撓み抑制部材60のシンチレータ32(保護層53)からの剥離を抑制することができる。更に、シンチレータ32は、撓み抑制部材60及び充填材55の双方により基板34に固定される構造となるため、シンチレータ32の基板34からの剥離を抑制することが可能となる。また、ケーブル20と端子35との接続部が充填材55によって覆われることで、ケーブル20の剥離を抑制することが可能となる。
【0134】
図27に示す例では、撓み抑制部材60の外周部が、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に沿うように折り曲げられており、且つ接着層52及び保護層53が基板34上を覆う部分、その外側の基板上、及び端子35とケーブル20との接続部をも覆っている。撓み抑制部材60の基板34上及びケーブル20上に延在する部分は、それぞれ、接着層54を介して基板34及びケーブル20に接着されている。ケーブル20と端子35との接続部が撓み抑制部材60によって覆われることで、ケーブル20の剥離を抑制することが可能となる。また、ケーブル20の他端には、電子部品を搭載した制御基板が接続されることが想定されることから、ケーブル20と端子35との接続部において、基板34に比較的大きな撓みが生じるおそれがある。ケーブル20と端子35との接続部が、撓み抑制部材60によって覆われることで、当該部分における基板34の撓みを抑制することが可能となる。
【0135】
図28に示す例では、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材55が充填されている。また、シンチレータ32の端部に対応する領域において、撓み抑制部材60の表面に更に別の撓み抑制部材60Aが、接着層54Aを介して積層されている。より具体的には、撓み抑制部材60Aは、シンチレータ32の端部(外縁、エッジ)を跨ぐ領域に設けられている。撓み抑制部材60Aは、撓み抑制部材60と同一の材料で構成されていてもよい。図9に示すように、シンチレータ32の端部においては、基板34の撓み量が比較的大きい。シンチレータ32の端部に対応する領域において、撓み抑制部材60及び60Aによる積層構造を形成することで、シンチレータ32の端部における基板34の撓みを抑制する効果を促進させることが可能となる。
【0136】
図29図33に示すように、撓み抑制部材60は、その端部が、基板34の端部よりも外側に位置するように設けられていてもよい。
【0137】
図29に示す例では、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33Aに対応する領域において、接着層54を介して保護層53に接着されており、シンチレータ32の周縁部33Bに対応する領域及び更にその外側の領域において、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間には、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に応じた空間が形成されている。
【0138】
図30に示す例では、撓み抑制部材60の端部がスペーサ39によって支持されている。すなわち、スペーサ39の一端は、基板34の端部に設けられるケーブル20に接続され、スペーサ39の他端は接着層56を介して撓み抑制部材60の端部に接続されている。基板34との間に空間を形成しつつ延伸する撓み抑制部材60の端部を、スペーサ39によって支持することで、撓み抑制部材60の剥離を抑制することが可能となる。また、基板34の端部近傍にまで撓み抑制部材60による撓み抑制効果を作用させることができる。
【0139】
図31に示す例では、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材55が充填されている。本実施形態において、ケーブル20と端子35との接続部が充填材55によって覆われている。このように、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材55が充填されることで、図29に示す形態と比較して、撓み抑制部材60のシンチレータ32(保護層53)からの剥離を抑制することができる。更に、シンチレータ32は、撓み抑制部材60及び充填材55の双方により基板34に固定される構造となるため、シンチレータ32の基板34からの剥離を抑制することが可能となる。また、ケーブル20と端子35との接続部が充填材55によって覆われることで、ケーブル20の剥離を抑制することが可能となる。
【0140】
図32に示す例では、撓み抑制部材60の外周部が、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に沿うように折り曲げられており、且つ接着層52及び保護層53が基板34上を覆う部分、その外側の基板上、及び端子35とケーブル20との接続部をも覆っている。撓み抑制部材60の基板34上及びケーブル20上に延在する部分は、それぞれ、接着層54を介して基板34及びケーブル20に接着されている。ケーブル20と端子35との接続部が撓み抑制部材60によって覆われることで、ケーブル20の剥離を抑制することが可能となる。また、ケーブル20の他端には、電子部品を搭載した制御基板が接続されることが想定されることから、ケーブル20と端子35との接続部において、基板34に比較的大きな撓みが生じるおそれがある。ケーブル20と端子35との接続部が、撓み抑制部材60によって覆われることで、当該部分における基板34の撓みを抑制することが可能となる。
【0141】
図33に示す例では、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材55が充填されている。また、シンチレータ32の端部に対応する領域において、撓み抑制部材60の表面に更に別の撓み抑制部材60Aが、接着層54Aを介して積層されている。より具体的には、撓み抑制部材60Aは、シンチレータ32の端部(外縁、エッジ)を跨ぐ領域に設けられている。撓み抑制部材60Aは、撓み抑制部材60と同一の材料で構成されていてもよい。図9に示すように、シンチレータ32の端部においては、基板34の撓み量が比較的大きい。シンチレータ32の端部に対応する領域において、撓み抑制部材60及び60Aによる積層構造を形成することで、シンチレータ32の端部における基板34の撓みを抑制する効果を促進させることが可能となる。
【0142】
ここで、放射線検出器30の製造工程においては、ガラス基板等の支持体に、可撓性を有する基板34を貼り付け、基板34上にシンチレータ32を積層した後、支持体を基板34から剥離する。このとき、可撓性を有する基板34に撓みが生じ、これによって基板34上に形成された画素41が損傷するおそれがある。支持体を基板34から剥離する前に、図13図33に例示したような形態でシンチレータ32上に撓み抑制部材60を積層しておくことで、支持体を基板34から剥離する際に生じる基板34の撓みを抑制することができ、画素41の損傷のリスクを低減することが可能となる。
【0143】
図34図39は、それぞれ、撓み抑制部材が基板34のシンチレータ32と接する第1の面S1とは反対側の第2の面S2の側に設けられる場合における、撓み抑制部材の設置形態の例を示す断面図である。
【0144】
図34図39に示す例では、それぞれ、基板34の第2の面S2の略全体が、接着層54を介して撓み抑制部材60に接している。すなわち、撓み抑制部材60の面積と、基板34の面積は略同じである。撓み抑制部材60の基板34側の面とは反対側の面には、更に別の撓み抑制部材60Aが、接着層54Aを介して積層されている。撓み抑制部材60Aは、撓み抑制部60と同一の材料で構成されていてもよい。放射線検出器30の撮影方式として表面読取方式(ISS)が適用される場合、撓み抑制部材60Aと画素領域41Aとが重なる部分の面積を極力小さくするために、撓み抑制部材60Aは、基板34の外周部にのみ設けられていることが好ましい。すなわち、撓み抑制部材60Aは、図34図39に示すように、画素領域41Aに対応する部分に開口61を有する環状であってもよい。このように、基板34の外周部に、撓み抑制部材60及び60Aによる積層構造を形成することで、比較的撓みが生じやすい基板34の外周部の剛性を補強することができる。
【0145】
図34図36に示す例では、撓み抑制部材60Aは、シンチレータ32の端部(外縁、エッジ)を跨ぐ領域に設けられている。図9に示すように、シンチレータ32の端部においては、基板34の撓み量が比較的大きい。シンチレータ32の端部に対応する領域において、撓み抑制部材60及び60Aによる積層構造を形成することで、シンチレータ32の端部における基板34の撓みを抑制する効果を促進させることが可能となる。
【0146】
放射線検出器30の撮影方式として表面読取方式(ISS)が適用される場合において、図34に示すように、撓み抑制部材60Aの一部が画素領域41Aと重なる場合には、撓み抑制部材60Aの材質によっては、画像に影響を与えるおそれがある。従って、撓み抑制部材60Aの一部が画素領域41Aと重なる場合には、撓み抑制部材60Aの材料としてプラスチックを用いることが好ましい。
【0147】
図35及び図36に示すように、撓み抑制部材60Aが、シンチレータ32の端部(外縁、エッジ)を跨ぎ、且つ画素領域41Aと重ならない形態(すなわち、撓み抑制部材60Aの開口61の端部が、画素領域41Aの外側に配置されている形態)が最も好ましい。図35に示す例では、撓み抑制部材60Aの開口61の端部の位置と、画素領域41Aの端部の位置とが略一致している。図36に示す例では、撓み抑制部材60Aの開口61の端部が、画素領域41Aの端部とシンチレータ32の端部との間に配置されている。
【0148】
また、撓み抑制部材60Aの開口61の端部の位置が、図37に示すように、シンチレータ32の端部の位置と略一致していてもよく、また、図38に示すように、シンチレータ32の端部よりも外側に配置されていてもよい。この場合、撓み抑制部材60Aが、シンチレータ32の端部(外縁、エッジ)を跨ぐ構造となっていないため、シンチレータ32の端部における基板34の撓みを抑制する効果は低下するおそれがある。しかしながら、ケーブル20と端子35との接続部が存在する基板34の外周部において、撓み抑制部材60及び60Aによる積層構造が形成されることで、ケーブル20と端子35との接続部における基板34の撓みを抑制する効果は維持される。
【0149】
図39に示す例では、撓み抑制部材60の面積が基板34の面積よりも大きく、撓み抑制部材60の端部が基板34の端部よりも外側に配置されている。この形態によれば、撓み抑制部材60の、基板34からはみ出した部分を筐体14にネジ止めするなどして、放射線検出器30を筐体14の内部に固定することが可能となる。
【0150】
なお、図34図39では、撓み抑制部材60Aの外側の端部の位置と、基板34の端部の位置とが略一致している形態を例示したが、この態様に限定されない。撓み抑制部材60Aの外側の端部は、基板34の端部よりも外側または内側に配置されていてもよい。
【0151】
また、図34図39では、基板34の第2の面S2の側に、撓み抑制部材60及び60Aによる積層構造を形成する形態を例示したが、この態様に限定されない。例えば、図13図33に例示されるような形態で、撓み抑制部材60がシンチレータ32側に設けられる場合には、基板34の第2の面S2の側には、基板34の外周部を補強する撓み抑制部材60Aのみを設けることとしてもよい。
【0152】
図40は、撓み抑制部材60の構造の一例を示す平面図である。撓み抑制部材60は、その主面に複数の貫通孔62を有していてもよい。貫通孔62の大きさ及びピッチは、撓み抑制部材60において所望の剛性が得られるように定められる。
【0153】
撓み抑制部材60が複数の貫通孔62を有することで、撓み抑制部材60の、シンチレータ32側または基板34側との接合面に導入される空気を貫通孔62から排出させることが可能となる。これにより、撓み抑制部材60の、シンチレータ32側または基板34側との接合面における気泡の発生を抑制することが可能となる。
【0154】
撓み抑制部材60の、シンチレータ32側または基板34側との接合面に導入される空気を排出させる手段が存在しない場合には、上記接合面に気泡が発生するおそれがある。例えば、放射線画像撮影装置10の稼働時における熱により、上記接合面に生じた気泡が膨張すると、撓み抑制部材60と、シンチレータ32側または基板34側との密着性が低下する。これにより撓み抑制部材60による撓み抑制効果が十分に発揮されないおそれがある。図40に示すように、複数の貫通孔62を有する撓み抑制部材60を用いることで、上記のように、撓み抑制部材60の、シンチレータ32側または基板34側との接合面における気泡の発生を抑制することができるので、撓み抑制部材60とシンチレータ32側または基板34側との密着性を維持することが可能となり、撓み抑制部材60による撓み抑制効果を維持することが可能となる。
【0155】
図41は、撓み抑制部材60の構造の他の例を示す斜視図である。図41に示す例では、撓み抑制部材60は、シンチレータ32側または基板34側との接合面に凹凸構造を有する。この凹凸構造は、図41に示すように、互いに平行に配置された複数の溝63を含んで構成されていてもよい。撓み抑制部材60は、例えば、図42に示すように、複数の溝63による凹凸構造を有する面が、反射膜50で覆われたシンチレータ32に接合される。このように、撓み抑制部材60がシンチレータ32側または基板34側との接合面に凹凸構造を有することで、撓み抑制部材60とシンチレータ32側または基板34側との接合部に導入される空気を溝63から排出させることが可能となる。これにより、図40に示す形態と同様、撓み抑制部材60の、シンチレータ32側または基板34側との接合面における気泡の発生を抑制することが可能となる。これにより、撓み抑制部材60とシンチレータ32側または基板34側との密着性を維持することが可能となり、撓み抑制部材60による撓み抑制効果を維持することが可能となる。
【0156】
図43及び図44は、それぞれ、撓み抑制部材60の構造の他の例を示す平面図である。図43及び図44に示すように、撓み抑制部材60は、複数の断片64に分断されていてもよい。撓み抑制部材60は、図43に示すように、複数の断片64が、一方向に配列するように分断されていてもよい。また、撓み抑制部材60は、図44に示すように、複数の断片64が、縦方向及び横方向に配列するように分断されていてもよい。
【0157】
撓み抑制部材60の面積が大きくなる程、撓み抑制部材60の、シンチレータ32側または基板34側との接合面に気泡が発生しやすくなる。図43及び図44に示すように、撓み抑制部材60を複数の断片64に分断することで、撓み抑制部材60の、シンチレータ32側または基板34側との接合面における気泡の発生を抑制することが可能となる。これにより、撓み抑制部材60とシンチレータ32側または基板34側との密着性を維持することが可能となり、撓み抑制部材60による撓み抑制効果を維持することが可能となる。
【0158】
図45図47は、それぞれ、放射線画像撮影装置10の他の構成例を示す図である。放射線画像撮影装置10は、筐体14と、筐体14の内部に収容された放射線検出器30、制御基板81及び電源部82を含んで構成されている。
【0159】
制御基板81は、図3に示された、制御部29、画像メモリ28、ゲート線駆動部22、チャージアンプ24及び信号処理部26を構成する電子部品の一部または全部が搭載される基板である。制御基板81は、可撓性を有する基板34よりも剛性の高いリジッド基板であってもよい。電源部82は、制御基板81に搭載された電子部品に電力線83を介して電力を供給する。
【0160】
筐体14は、軽量であり、X線の吸収率が低く、且つ高剛性であることが好ましく、撓み抑制部材60よりも弾性率が十分に高い材料により構成されることが好ましい。筐体14の材料として、曲げ弾性率が10000MPa以上である材料を用いることが好ましい。筐体14の材料として、20000~60000MPa程度の曲げ弾性率を有するカーボンまたはCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)を好適に用いることができる。
【0161】
放射線画像撮影装置10による放射線画像の撮影においては、筐体14の放射線入射面15に被写体からの荷重が印加される。撓み抑制部材60が、例えば軟質プラスチック等の弾性率が比較的低い材料により構成される場合において、筐体14の剛性が不足する場合、被写体からの荷重により基板34に撓みが生じ、画素41が損傷する等の不具合が発生するおそれがある。10000MPa以上の曲げ弾性率を有する材料からなる筐体14内部に、撓み抑制部材60を備えた放射線検出器30が収容されることで、撓み抑制部材60が、例えば軟質プラスチック等の弾性率が比較的低い材料により構成される場合においても、被写体からの荷重による基板34の撓みを抑制することが可能となる。撓み抑制部材60と筐体14の内壁面とを密着させることで、被写体からの荷重による基板34の撓みを抑制する効果を更に促進させることができる。この場合、撓み抑制部材60と筐体14の内壁面とが接着層を介して接着されていてもよいし、接着層を介さずに単に接触しているだけでもよい。
【0162】
図45及び図46に示す例では、放射検出器30、制御基板81及び電源部82が図中横方向に並置されている構成が例示されている。図46に示すように、筐体14の内部空間における、放射線検出器30が収容される領域の厚さを、制御基板81及び電源部82が収容される領域の厚さよりも薄くしてもよい。これにより、放射線検出器30の厚さに応じた極薄型の可搬型電子カセッテを構成することが可能となる。放射線検出器30が収容される領域と、制御基板81及び電源部82が収容される領域との間の段差を緩和するために、筐体14は、これらの2つの領域を接続する部分において傾斜部14Aを有していることが好ましい。筐体14が傾斜部14Aを有することで、放射線画像撮影装置10を、被写体である患者の下に挿入した状態で用いる場合、患者の違和感を低減することが可能となる。
【0163】
図47に示す例では、筐体14の内部空間において、放射線検出器30の基板34と略同じサイズの基台37が、基板34と重なる位置に設けられており、基台37上に制御基板81及び電源部82が設けられている。この構成によれば、放射検出器30、制御基板81及び電源部82が図中横方向に並置される場合と比較して、放射線画像撮影装置10の平面視におけるサイズを小さくすることができる。
【0164】
日本出願特願2018-051691号、特願2018-219697号、及び特願2019-022081号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0165】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0166】
10 放射線画像撮影装置
12 制御ユニット
14 筐体
14A 傾斜部
15 放射線入射面
16 支持板
18 接着層
19 回路基板
20 ケーブル
22 ゲート線駆動部
24 チャージアンプ
26 信号処理部
28 画像メモリ
29 制御部
30、30A、30B 放射線検出器
32 シンチレータ
32E 端部
33A 中央部
33B 周縁部
34 基板
34P 微粒子
34L 微粒子層
35 端子
36 光電変換素子
37 基台
39 スペーサ
41 画素
41A 画素領域
42 TFT
43 ゲート線
44 信号線
50 反射膜
51 粘着層
52、54、54A、56 接着層
53 保護層
55 充填材
57 封止部材
60、60A 撓み抑制部材
61 開口
62 貫通孔
63 溝
64 断片
70 補強部材
80 接続領域
81 制御基板
82 電源部
83 電力線
90 緩衝層
L 接線
R 曲率半径
S1 第1の面
S2 第2の面
S3、S4、S5、S6 面
X 画素のサイズ
Z 変形量
限界変形量
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
【手続補正書】
【提出日】2022-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、放射線検出器、放射線画像撮影装置及び放射線検出器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線画像撮影装置に関する技術として、例えば以下の技術が知られている。特開2012-173275号公報(特許文献1)には、放射線を蛍光に変換するシンチレータ、及びシンチレータの放射線入射側に設けられた光検出部を有する放射線画像検出装置本体と、放射線画像検出装置本体の放射線入射側に配置されて被写体を支持する支持部材とを備えた放射線画像検出装置が記載されている。光検出部は、蛍光を電気信号として検出する薄膜部と、薄膜部のシンチレータ側とは反対側に設けられ、支持部材に接合された補強部材を有する。
【0003】
特表2017-532540号公報(特許文献2)には、相互接続によって接合された第1のモジュール方式検出器および第2のモジュール方式検出器を含む検出部が記載されている。第1及び第2のモジュール方式検出器は可撓性を有する。第1及び第2のモジュール方式検出器の受光面の反対側には、補強材が装着されており、補強材は、補強材の装着位置に近接したモジュール方式検出器の屈曲を防止するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射線画像撮影装置に用いられる放射線検出器として、基板と、基板に設けられた光電変換素子をそれぞれ含む複数の画素と、基板に積層されたシンチレータと、を含むものが知られている。近年、放射線検出器を構成する基板の材料として、樹脂フィルム等の可撓性を有する材料が用いられている。基板が可撓性を有する場合、例えば、放射線検出器の製造工程において、基板をハンドリングする際に、基板に積層されたシンチレータの重量によって、基板に比較的大きな局所的な撓みが生じるおそれがある。画素を構成する光電変換素子は、アモルファスシリコン等の曲げ応力に対して脆弱な材料で構成されていることから、基板に大きな撓みが生じると画素が損傷するおそれがある。
【0005】
開示の技術は、一つの側面として、シンチレータの重量によって生じる基板の撓みに起因する画素の損傷のリスクを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の第1の態様に係る放射線検出器は、可撓性を有する基板と、基板に設けられ、光電変換素子をそれぞれ含む複数の画素と、基板に積層されたシンチレータと、基板の撓みを抑制する撓み抑制部材と、を含み、撓み抑制部材の曲げ弾性率が1000MPa以上3500MPa以下である。
【0007】
開示の技術の第2の態様に係る放射線検出器において、前記撓み抑制部材の曲げ剛性は、3600Pa・cm4以上、196000Pa・cm4以下である。
【0008】
開示技術の第3の態様に係る放射線検出器において、シンチレータの熱膨張率に対する撓み抑制部材の熱膨張率の比が、0.5以上2以下である。
【0009】
開示技術の第4の態様に係る放射線検出器において、撓み抑制部材の熱膨張率は、30ppm/K以上80ppm/K以下である。
【0010】
開示技術の第5の態様に係る放射線検出器において、放射線検出器は、基板の熱膨張率とシンチレータの熱膨張率との間の熱膨張率を有する基板とシンチレータとの間に設けられた緩衝層を有する。
【0011】
開示技術の第6の態様に係る放射線検出器において、緩衝層は、シンチレータの基板と接する面における、基板の画素領域に対向する部分にわたって設けられている。
【0012】
開示技術の第7の態様に係る放射線検出器において、基板の、シンチレータが積層された面とは反対側の面に撓み抑制部材が積層されている。
【0013】
開示技術の第8の態様に係る放射線検出器において、シンチレータの、基板と接する面とは反対側の面に撓み抑制部材が積層されている。
【0014】
開示技術の第9の態様に係る放射線検出器において、基板の、シンチレータが積層された面とは反対側の面である第1の面、及びシンチレータの、基板と接する面とは反対側の面である第2の面の双方に撓み抑制部材が積層されており、第1の面に積層される撓み抑制部材の方が、第2の面に積層される撓み抑制部材よりも、放射線の吸収量が少ない。
【0015】
開示技術の第10の態様に係る放射線検出器において、放射線が、基板の、シンチレータが積層された面とは反対側の面側から入射する配置とされている。
【0016】
開示技術の第11の態様に係る放射線検出器において、撓み抑制部材が、基板の、シンチレータが積層された面とは反対側の面の外周部にのみ設けられ、基板における複数の画素が設けられた画素領域に対応する部分に開口を有する環状となっている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】開示の技術の実施形態に係る放射線画像撮影装置の構成の一例を示す斜視図である。
図2】開示の技術の実施形態に係る放射線画像撮影装置の構成の一例を示す断面図である。
図3】開示の技術の実施形態に係る放射線画像撮影装置の電気的構成の一例を示す図である。
図4】開示の技術の実施形態に係る基板が円弧状に撓んでいる状態の一例を示す図である。
図5A】開示の技術の実施形態に係る画素の外形の一例を示す図である。
図5B】開示の技術の実施形態に係る画素の外形の一例を示す図である。
図5C】開示の技術の実施形態に係る画素の外形の一例を示す図である。
図6A】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の製造方法の一例を示す断面図である。
図6B】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の製造方法の一例を示す断面図である。
図6C】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の製造方法の一例を示す断面図である。
図6D】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の製造方法の一例を示す断面図である。
図7A】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図7B】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図8A】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図8B】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図8C】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図9】シンチレータの重量によって生じる基板の撓みの状態の一例を示す断面図である。
図10】開示の技術の実施形態に係る基板の構成の一例を示す断面図である。
図11A】微粒子層を有する基材内で発生する後方散乱線を示す断面図である。
図11B】微粒子層を有さない基材内で発生する後方散乱線を示す断面図である。
図12】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図13】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図14】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図15】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図16】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図17】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図18】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図19】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図20】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図21】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図22】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図23】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図24】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図25】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図26】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図27】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図28】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図29】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図30】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図31】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図32】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図33】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図34】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図35】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図36】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図37】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図38】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図39】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図40】開示の技術の実施形態に係る撓み抑制部材の構造の一例を示す平面図である。
図41】開示の技術の実施形態に係る撓み抑制部材の構造の一例を示す斜視図である。
図42】開示の技術の実施形態に係る放射線検出器の構成の一例を示す断面図である。
図43】開示の技術の実施形態に係る撓み抑制部材の構造の一例を示す平面図である。
図44】開示の技術の実施形態に係る撓み抑制部材の構造の一例を示す平面図である。
図45】開示の技術の実施形態に係る放射線画像撮影装置の構成の一例を示す断面図である。
図46】開示の技術の実施形態に係る放射線画像撮影装置の構成の一例を示す断面図である。
図47】開示の技術の実施形態に係る放射線画像撮影装置の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、開示の技術の実施形態に係る放射線画像撮影装置10の構成の一例を示す斜視図である。放射線画像撮影装置10は、可搬型の電子カセッテの形態を有する。放射線画像撮影装置10は、放射線検出器30(FPD: Flat Panel Detectors)と、制御ユニット12と、支持板16と、放射線検出器30、制御ユニット12及び支持板16を収容する筐体14と、を含んで構成されている。
【0020】
筐体14は、例えば、X線等の放射線の透過性が高く、軽量で耐久性の高い炭素繊維強化樹脂(カーボンファイバー)により構成されたモノコック構造を有する。筐体14の上面は、放射線源(図示せず)から出射され、被写体(図示せず)を透過した放射線が入射する放射線入射面15とされている。筐体14内には、放射線入射面15側から順に、放射線検出器30、支持板16が配置されている。
【0021】
支持板16は、信号処理等を行う集積回路チップが搭載された回路基板19(図2参照)を支持しており、筐体14に固定されている。制御ユニット12は、筐体14内の端部に配置されている。制御ユニット12は、バッテリ(図示せず)及び制御部29(図3参照)を含んで構成されている。
【0022】
図2は、放射線画像撮影装置10の構成の一例を示す断面図である。放射線検出器30は、可撓性を有する基板34と、基板34の表面に設けられ、光電変換素子36(図3参照)をそれぞれ含む複数の画素41と、基板34に積層されたシンチレータ32と、基板34の撓みを抑制する撓み抑制部材60と、を有する。
【0023】
基板34は、可撓性を有するフレキシブル基板である。本明細書において、基板34が可撓性を有するとは、矩形状の基板34の4辺のうち1辺を固定したときに、基板34の重量により、基板34の固定辺から10cm離れた部位の高さが、固定辺の高さよりも2mm以上低くなることを意味する。例えば、基板34の材料として、樹脂基板、金属箔基板、厚さ0.1mm程度の薄ガラスを用いることができ、特に高耐熱性ポリイミドフィルムであるXenomax(登録商標)等の樹脂フィルムを好適に用いることができる。基板34の材料として樹脂フィルムを用いることで、基板34の材料としてガラス基板を用いる場合と比較して、放射線検出器30の軽量化及び低コスト化を図ることができ、更に、衝撃によって基板34が破損するリスクを低減することができる。複数の画素41は、それぞれ、基板34の第1の面S1に設けられている。
【0024】
基板34の厚さは、基板34の硬度及び大きさ等に応じて、所望の可撓性が得られる厚さであればよい。基板34が樹脂材料からなる基材を含んで構成される場合、基板34の厚さは、例えば5μm以上125μm以下が好ましく、20μm以上50μm以下がより好ましい。
【0025】
なお、基板34の300℃以上400℃以下における熱膨張率(CTE:Coefficient of Thermal Expansion)が、光電変換素子36を構成する材料(例えばアモルファスシリコン)の熱膨張係数(±5ppm/K程度)と同程度であることが好ましく、具体的には、20ppm/K以下であることが好ましい。また、基板34は、厚さを25μmとした場合の、400℃におけるMD(Machine Direction)方向の熱収縮率が0.5%以下であることが好ましい。また、基板34は、300℃以上400℃以下の温度領域において、一般的なポリイミドが有する転移点を有していないことが好ましく、500℃における弾性率が1GPa以上であることが好ましい。基板34が上記の特性を有することで、基板34上への画素41の形成に伴う熱処理に耐えることが可能となり、基板34上への画素41の形成を適切に行うことができる。
【0026】
また、基板34が、ポリイミド等の樹脂材料からなる基材を含んで構成される場合、図10に示すように、樹脂材料からなる基材が、平均粒子径が0.05μm以上2.5μm以下である無機材料からなる複数の微粒子34Pを含む微粒子層34Lを有していることが好ましい。また、微粒子層34Lは、基板34の、画素41が設けられている第1の面S1とは反対側の第2の面S2の側に設けられていることが好ましい。すなわち、微粒子34Pは、基板34の第2の面S2の側に偏在していることが好ましい。微粒子34Pは、基板34の表面に凹凸を生じさせる場合があり、従って、微粒子層34Lの表面に画素41を形成することが困難となる。微粒子層34Lを、基板34の第2の面S2の側に配置することで、第1の面S1の平坦性を確保することができ、画素41の形成が容易となる。
【0027】
微粒子34Pの材料としては、原子番号が、基板34の基材を構成する各元素の原子番号よりも大きく且つ30以下である元素を含む無機材料であることが好ましい。例えば、基板34の基材が、C、H、O及びN等を含む、ポリイミド等の樹脂材料により構成されている場合、微粒子34Pは、原子番号が、樹脂材料の構成元素(C、H、O及びN)の原子番号よりも大きく且つ30以下である元素を含む無機材料であることが好ましい。このような微粒子34Pの具体例としては、原子番号14のシリコンの酸化物であるSiO、原子番号12のMgの酸化物であるMgO、原子番号13のAlの酸化物であるAl、及び原子番号22のTiの酸化物であるTiO等が挙げられる。また、上記のような特性を有し且つ微粒子層34Lを有する樹脂シートの具体例としては、XENOMAX(登録商標)が挙げられる。
【0028】
なお、本実施形態における上記の厚みについては、マイクロメーターを用いて測定した。熱膨張率については、JIS K7197:1991に則して測定した。なお測定は、基板34の主面から、15度ずつ角度を変えて試験片を切り出し、切り出した各試験片について熱膨張率を測定し、最も高い値を基板34の熱膨張率とした。熱膨張率の測定は、MD(Machine Direction)方向およびTD(Transverse Direction)方向のそれぞれについて、-50℃~450℃において10℃間隔で行い、(ppm/℃)を(ppm/K)に換算した。熱膨張率の測定には、MACサイエンス社製 TMA4000S装置を用い、サンプル長さを10mm、サンプル幅を2mm、初荷重を34.5g/mm、昇温速度を5℃/min、及び雰囲気をアルゴンとした。弾性率については、K 7171:2016に則して測定した。なお測定は、基板34の主面から、15度ずつ角度を変えて試験片を切り出し、切り出した各試験片について引っ張り試験を行い、最も高い値を基板34の弾性率とした。
【0029】
シンチレータ32は、基板34の第1の面S1の側に積層されている。シンチレータ32は、照射された放射線を光に変換する蛍光体を含む。シンチレータ32は、一例としてCsI:Tl(タリウムが添加されたヨウ化セシウム)を含む柱状結晶の集合体によって構成されている。CsI:Tlの柱状結晶は、例えば気相成長法によって基板34上に直接形成することができる。なお、基板34とは別の基板に形成したCsI:Tlの柱状結晶を、基板34に貼り付けてもよい。また、シンチレータ32の材料としてGdS:Tb(テルビウムが添加された酸硫化ガドリニウム)を用いることができる。複数の画素41を構成する光電変換素子36(図3参照)の各々は、シンチレータ32から発せられた光に基づいて電荷を生成する。
【0030】
シンチレータ32の、基板34と接する面S6とは反対側の面S3及びS面3と交差する面S4は、反射膜50によって覆われている。反射膜50は、シンチレータ32から発せられた光を基板34側に反射させる機能を有する。反射膜50の材料として、例えば、Alを用いることができる。反射膜50は、シンチレータ32の面S3及び面S4を覆い且つシンチレータ32の周辺部において基板34上をも覆っている。なお、反射膜50が設けられていなくても放射線画像撮影装置10において所望の画質の放射線画像を得ることができる場合には、反射膜50を省略することが可能である。
【0031】
本実施形態において、放射線画像撮影装置10は、放射線の入射側に基板34を配置する、表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)による撮影方式を採用している。表面読取方式を採用することで、放射線の入射側にシンチレータ32を配置する、裏面読取方式(PSS: Penetration Side Sampling)を採用した場合と比較して、シンチレータ32における強発光位置と画素41との間の距離を短くすることができ、その結果、放射線画像の解像度を高めることができる。なお、放射線画像撮影装置10は、裏面読取方式を採用するものであってもよい。
【0032】
支持板16は、シンチレータ32の放射線入射側とは反対側に配置されている。支持板16とシンチレータ32との間には、隙間が設けられている。支持板16は、筐体14の側部に固定されている。支持板16のシンチレータ32側とは反対側の面には、回路基板19が設けられている。回路基板19には、画像データを生成する信号処理部26や、信号処理部26により生成された画像データを記憶する画像メモリ28等が搭載されている。
【0033】
回路基板19と基板34とは、フレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuit)やTCP(Tape Carrier Package)またはCOF(Chip On Film)にプリントされた可撓性のケーブル20を介して電気的に接続されている。ケーブル20上には、画素41から読み出された電荷を電気信号に変換するチャージアンプ24が搭載されている。回路基板19と基板34とを電気的に接続する、図2において図示されていない、別のフレキシブルプリント基板上には、ゲート線駆動部22(図3参照)が搭載されている。
【0034】
撓み抑制部材60は、基板34の第1の面S1とは反対側の第2の面S2の側に積層されている。撓み抑制部材60は、基板34がシンチレータ32を支持するのに必要な剛性を、基板34に付与する役割を担う。すなわち、撓み抑制部材60を設けることで、撓み抑制部材60を設けない場合と比較して、シンチレータ32の重量による基板34の撓みが抑制される。撓み抑制部材60は、シンチレータ32が延在する範囲よりも広い範囲に亘って延在している。すなわち、平面視における撓み抑制部材60の面積は、シンチレータ32の面積よりも大きく、撓み抑制部材60が延在する範囲の内側に、シンチレータ32が配置されている。従って、撓み抑制部材60の平面方向における端部は、シンチレータ32の平面方向における端部よりも外側に位置している。これにより、シンチレータ32の重量による基板34の撓みを抑制する効果が促進される。また、基板34は、ケーブル20が接続される接続領域80を基板34の外周部に有する。撓み抑制部材60は、接続領域80の少なくとも一部及びシンチレータ32を覆う領域に設けられている。可撓性のケーブル20が接続される接続領域80においても、基板34は撓みを生じやすくなるが、接続領域80の少なくとも一部を覆う領域に撓み抑制部材60が設けられることで、基板34の接続領域80における撓みを抑制することが可能となる。
【0035】
撓み抑制部材60は、基板34の撓みを抑制する観点から、基板34よりも高い剛性を有していることが好ましい。撓み抑制部材60は、曲げ弾性率が、1000MPa以上3500MPa以下の素材を用いた部材であることが好ましい。撓み抑制部材60を構成する素材の曲げ弾性率を1000MPa以上とすることで、撓み抑制部材60における、基板34の撓み抑制する機能が効果的に発揮される。撓み抑制部材60を構成する素材の曲げ弾性率を3500MPa以下とすることで、例えば、放射線検出器30の製造工程において、基板34に撓み抑制部材60を取り付けた後に、基板34を支持する支持体(図示せず)を基板から剥離する場合、基板34が適度に撓むので支持体の基板34からの剥離が容易となる。なお、曲げ弾性率の測定方法は、JIS K 7171:2016に規定される測定方法を適用することができる。また、撓み抑制部材60の曲げ剛性は、3600Pa・cm以上、196000Pa・cm以下であることが好しい。また、撓み抑制部材60の厚さは、0.1mm程度が好ましい。
【0036】
撓み抑制部材60の熱膨張率は、30ppm/K以上80ppm/K以下であることが好ましい。また、撓み抑制部材60の熱膨張率は、シンチレータ32の熱膨張率に近いことが好ましい。具体的には、シンチレータ32の熱膨張率C1に対する撓み抑制部材60の熱膨張率C2の比(C2/C1)が、0.5以上2以下であることが好ましい。撓み抑制部材60の熱膨張率が上記の条件を満たすことで、加熱時及び発熱時等において基板34とシンチレータ32とが剥離するリスクを抑制することができる。例えば、シンチレータ32が主としてCsI:Tlを含んで構成されている場合、シンチレータ32の熱膨張率は50ppm/Kである。この場合、熱膨張率が60ppm/K~80ppm/Kであるポリ塩化ビニル(PVC)、熱膨張率が70ppm/K~80ppm/Kであるアクリル、熱膨張率が65~70ppm/Kであるポリエチレンテレフタレート(PET)、熱膨張率が65ppm/Kであるポリカーボネート(PC)、及び熱膨張率が45ppm/K~70ppm/Kであるテフロン(登録商標)等が、撓み抑制部材60の材料として用いることができる。上述した曲げ弾性率を考慮すると、撓み抑制部材60の材料としては、アクリル、PET及びPCの少なくとも1つを含む材料であることが好ましい。
【0037】
撓み抑制部材60の他の候補材料として、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、シリコーン樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂を用いることができる。また、撓み抑制部材60の材料として、アルミニウム、鉄、またはこれらの合金等の金属を用いることもできる。また、撓み抑制部材60の材料として、樹脂及び金属を積層した積層体を用いることもできる。撓み抑制部材60の、基板34との接触面とは反対側の面S5は、接着層18を介して筐体14の内壁に貼り付けられている。
【0038】
図3は、放射線画像撮影装置10の電気的構成の一例を示す図である。基板34の第1の面S1には、複数の画素41がマトリクス状に配置されている。画素41の各々は、シンチレータ32から発せられた光に基づいて電荷を発生させる光電変換素子36と、光電変換素子36において生成された電荷を読み出す際にオン状態とされるスイッチング素子としてのTFT(Thin Film Transistor)42とを含んでいる。光電変換素子36は、例えば、アモルファスシリコンによって構成されるフォトダイオードであってもよい。
【0039】
基板34の第1の面S1には、画素41の配列に沿って一方向(行方向)に伸びるゲート線43と、ゲート線43の伸びる方向と交差する方向(列方向)に伸びる信号線44が設けられている。画素41の各々は、ゲート線43と信号線44との各交差部に対応して設けられている。
【0040】
ゲート線43の各々は、ゲート線駆動部22に接続されている。ゲート線駆動部22は、制御部29から供給される制御信号に基づいて、画素41に蓄積された電荷の読み出しを行う。信号線44の各々は、チャージアンプ24に接続されている。チャージアンプ24は複数の信号線44の各々に対応して設けられている。チャージアンプ24は、画素41から読み出された電荷に基づいて電気信号を生成する。チャージアンプ24の出力端子は、信号処理部26に接続されている。信号処理部26は、制御部29から供給される制御信号に基づいて、チャージアンプ24から供給される電気信号に対して所定の処理を施すことで、画像データを生成する。信号処理部26には、画像メモリ28が接続されている。画像メモリ28は、制御部29から供給される制御信号に基づいて信号処理部26によって生成された画像データを記憶する。
【0041】
制御部29は、有線または無線の通信部(図示せず)を介して、放射線源と接続されたコンソール(図示せず)と通信して、ゲート線駆動部22、信号処理部26及び画像メモリ28を制御することで、放射線画像撮影装置10の動作を制御する。制御部29は、例えばマイクロコンピュータを含んで構成されていてもよい。なお、ゲート線駆動部22は、開示の技術における読み出し部の一例である。信号処理部26は、開示の技術における生成部の一例である。
【0042】
以下に、放射線画像撮影装置10の動作の一例について説明する。放射線源(図示せず)から出射され被写体を透過した放射線が放射線画像撮影装置10の放射線入射面15から入射すると、シンチレータ32は、放射線を吸収して可視光を発する。画素41を構成する光電変換素子36は、シンチレータ32から発せられた光を電荷に変換する。光電変換素子36によって生成された電荷は、対応する画素41に蓄積される。光電変換素子36によって生成された電荷の量は、対応する画素41の画素値に反映される。
【0043】
放射線画像を生成する場合、ゲート線駆動部22は、制御部29から供給される制御信号に基づいて、ゲート線43を介してゲート信号をTFT42に供給する。TFT42は、このゲート信号により行単位でオン状態とされる。TFT42がオン状態とされることにより画素41に蓄積された電荷が信号線44に読み出され、チャージアンプ24に供給される。チャージアンプ24は、信号線44に読み出された電荷に基づいて電気信号を生成し、これを信号処理部26に供給する。
【0044】
信号処理部26は、複数のサンプルホールド回路、マルチプレクサ、アナログデジタル変換器(いずれも図示せず)を備えている。複数のサンプルホールド回路は、複数の信号線44の各々に対応して設けられている。チャージアンプ24から供給された電気信号は、サンプルホールド回路で保持される。個々のサンプルホールド回路で保持された電気信号は、マルチプレクサを介してアナログデジタル変換器に入力され、デジタル信号に変換される。信号処理部26は、アナログデジタル変換器によって生成されたデジタル信号と画素41の位置情報とを対応付けたデータを画像データとして生成し、画像データを画像メモリ28に供給する。画像メモリ28は、信号処理部26によって生成された画像データを記憶する。
【0045】
基板34は可撓性を有しているため、例えば、放射線検出器30の製造工程において基板34をハンドリングする際に、シンチレータ32の重量によって、基板34に比較的大きな局所的な撓みが生じるおそれがある。基板34に大きな撓みが生じると、基板34の表面に設けられた画素41が損傷するおそれがある。
【0046】
図4は、基板34が、円弧状に撓んでいる状態を示す図である。図4においてRは基板34に生じた撓みの曲率半径であり、Xは基板34に形成された画素41のサイズである。すなわち、画素41の一端部である点Aと、画素41の他端部である点Bとの距離(線分ABの長さ)が、画素41のサイズXである。
【0047】
なお、画素41のサイズとして光電変換素子36のサイズを適用してもよい。また、画素41のサイズとして、画素41(光電変換素子36)の最長部の長さを適用してもよい。例えば、図5A図5B図5Cにそれぞれ示すように、画素41(光電変換素子36)の外形が、正方形、長方形または正六角形等の多角形である場合、画素41の対角線の長さを画素41のサイズXとして適用してもよい。また、画素41の1辺の長さを画素41(光電変換素子36)のサイズXとして適用してもよい。この場合において、画素41の外形が長方形である場合等、画素41が長辺と短辺とを含む場合、長辺の長さを画素41(光電変換素子36)のサイズとして適用することが好ましい。
【0048】
図4においてZは基板34の撓みによる画素41の変形量である。すなわち、変形量Zは、画素41の一端部(点A)における接線Lと、画素41の他端部(点B)との間の距離(線分BCの長さ)に相当する。図4においてθは、弧ABを含む扇形の中心角に相当する。
【0049】
画素41のサイズXは、円弧状に撓む基板34の、当該円弧の弦ABの長さに相当する。従って、画素41のサイズXは、下記の(1)式によって表わすことができる。
X=2Rsin(θ/2) ・・・(1)
一方、∠BACは、θ/2であるから、下記の(2)式を導くことができる。
sin(θ/2)=Z/X ・・・(2)
(2)式を(1)式に代入すると、下記の(3)式及び(4)式を導くことができる
X=2R×Z/X ・・・(3)
R=X/2Z ・・・(4)
【0050】
ここで、画素41が損傷に至らない変形量Zの最大値(以下、限界変形量という)をZとした場合、基板34の撓みの曲率半径Rを下記の(5)式の範囲に制限することで、画素41の損傷のリスクを低減することができる。
R≧X/2Z ・・・(5)
例えば、画素41のサイズXが150μmであり、画素41の限界変形量Zが0.05μmである場合、基板34の撓みの曲率半径Rを225mm以上とすることで、画素41の損傷のリスクを低減することができる。
なお損傷を受けやすい部分は膜厚が厚い部分や脆性が高い部分である。例えば、光電変換素子36がアモルファスシリコン層に形成されるフォトダイオードを含む場合、このアモルファスシリコン層は、損傷を受けやすい。この場合、アモルファスシリコン層は、その厚さは0.5~2.5μm程度であり、画素41の中で特に厚さが厚く、限界変形量Zが小さい。
【0051】
本実施形態に係る放射線検出器30において、撓み抑制部材60は、基板34の端部を固定した状態において、シンチレータ32の重量によって基板34に生じる撓みの曲率半径Rが(5)式を満たす剛性を有する。換言すれば、撓み抑制部材60の剛性は、基板34の端部を固定した状態において、シンチレータ32の重量によって基板34に生じる撓みの曲率半径Rが(5)式を満たすように調整されている。すなわち、撓み抑制部材60の剛性が、画素41のサイズに応じて定められる。これにより、例えば、放射線検出器30の製造工程において基板34をハンドリングする際に、シンチレータ32の重量によって基板34に生じた撓みにより画素41が損傷するリスクを、(5)式を満たさない場合と比較して、低減することができる。例えば、画素41のサイズXが大きくなる程、許容される曲率半径Rは大きくなるので、高い剛性を備えた撓み抑制部材60が用いられる。
【0052】
撓み抑制部材60の剛性は、例えば、撓み抑制部材60の厚さ、密度、弾性率等によって調整することができる。また、撓み抑制部材60の剛性は、撓み抑制部材60を構成する材料の選択によっても調整することが可能である。
【0053】
以下に、放射線検出器30の製造方法について説明する。図6A図6Dは、放射線検出器30の製造方法の一例を示す断面図である。
【0054】
はじめに、基板34の第1の面S1に複数の画素41を形成する(図6A)。なお、基板34を支持するための支持体(図示せず)により基板34を支持した状態で、画素41の形成を行ってもよい。
【0055】
次に、基板34の第1の面S1とは反対側の第2の面S2に撓み抑制部材60を貼り付ける(図6B)。撓み抑制部材60は、シンチレータ32の重量によって基板34に生じる撓みの曲率半径Rが(5)式を満たす剛性を有する。例えば、画素41のサイズXが大きくなる程、撓み抑制部材60の剛性が高められる。
【0056】
次に、基板34の第1の面S1上にシンチレータ32を形成する(図6C)。シンチレータ32は、例えば気相成長法を用いて、TlをドープしたCsIの柱状結晶を基板34上に直接成長させることにより形成することができる。なお、基板34とは別の基板に形成したCsI:Tlの柱状結晶を、基板34に貼り付けてもよい。また、シンチレータ32の材料としてGdS:Tb(テルビウムが添加された酸硫化ガドリニウム)を用いることができる。
【0057】
次に、シンチレータ32の、基板34と接する面S6とは反対側の面S3及び面S3と交差する面S4を覆う反射膜50を形成する(図6D)。反射膜50の材料として、例えば、Alを用いることができる。反射膜50は、シンチレータ32の周辺部において基板34上をも覆うように形成される。
【0058】
開示の技術の実施形態に係る放射線検出器30及び放射線画像撮影装置10によれば、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の重量によって生じる基板34の撓みの曲率半径Rが(5)式を満たす剛性を有する。従って、シンチレータ32の重量によって生じる基板34の撓みの曲率半径Rは、(5)式に示される範囲に制限される。従って、例えば放射線検出器30の製造工程において基板34をハンドリングする際に、シンチレータ32の重量によって基板34に撓みが生じたとしても、画素41が損傷するリスクを、開示の技術を適用しない場合と比較して、低減することができる。
【0059】
ここで、図11A図11Bは、それぞれ、放射線の読み取り方式としてISS方式を適用した放射線画像撮影装置10の部分的な構成の一例を示す断面図である。図11A及び図11Bは、それぞれ、基板34が、ポリイミド等の樹脂材料からなる基材を含んで構成される場合であり、図11Aは、基板34が微粒子層34Lを含む場合であり、図11Bは、基板34が微粒子層を含まない場合である。ISS方式が適用される場合、基板34及びシンチレータ32のうち、基板34が、筐体14の放射線入射面15側に配置される。すなわち、放射線入射面15に入射した放射線Rは、基板34を透過した後、シンチレータ32に入射する。
【0060】
原子番号が比較的小さいC、H、O及びN等を構成元素として有する樹脂材料を含む基板34に放射線が入射すると、コンプトン効果によって後方散乱線Rbが比較的多く発生し、被写体200の側に漏洩するおそれがある。図11Aに示すように、原子番号が樹脂材料の構成元素(C、H、O及びN)の原子番号よりも大きい元素を含む無機材料からなる微粒子34Pを含む微粒子層34Lが基板34に設けられることで、基板34内で発生した後方散乱線Rbを、微粒子層34Lにおいて吸収することが可能となる。これにより、基板34が微粒子層を含まない場合(図11B参照)と比較して、被写体200の側に漏洩する後方散乱線Rbの量を抑制することが可能となる。なお、微粒子34Pを構成する元素の原子番号が大きくなる程、後方散乱線Rbを吸収する効果が高くなる一方、放射線の吸収量も多くなり、シンチレータ32に到達する放射線の線量が小さくなる。従って、微粒子34Pを構成する元素の原子番号は、30以下であることが好ましい。
【0061】
なお、上記の実施形態では、撓み抑制部材60を、基板34の第2の面S2の側に設ける場合を例示したが、開示の技術は、この態様に限定されるものではない。例えば図7Aに示すように、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の基板34と接する面S6とは反対側の面S3の側に積層されていてもよい。この構成によれば、撓み抑制部材60を基板34の第2の面S2の側に設ける場合と略同様の効果を得ることができる。
【0062】
また、図7Bに示すように、撓み抑制部材60は、基板34の第2の面S2の側及びシンチレータ32の基板34と接する面S6の側とは反対側の面S3の側の双方に積層されていてもよい。撓み抑制部材60を、基板34の第2の面S2の側及びシンチレータ32の、基板34と接する面S6の側とは反対側の面S3の側の少なくとも一方に積層することで、撓み抑制部材60による撓み抑制効果が促進される。また、図7Bに示すように、撓み抑制部材60を、基板34の第2の面S2の側及びシンチレータ32の面S3の側の双方に積層することで、撓み抑制部材60による撓み抑制効果を更に促進させることができ、基板34の撓みによって画素41が損傷するリスクを更に低減することができる。なお、基板34の第2の面S2の側及びシンチレータ32の面S3の側の双方に撓み抑制部材60を積層する場合、放射線の入射側である基板34の第2の面S2の側に積層される撓み抑制部材60の方が、シンチレータ32の面S3の側に積層される撓み抑制部材60よりも、放射線の吸収量が少ないことが好ましい。
【0063】
[第2の実施形態]
図8Aは、開示の技術の第2の実施形態に係る放射線検出器30Aの構成の一例を示す断面図である。放射線検出器30Aは、撓み抑制部材60による撓み抑制効果を補強する補強部材70を更に含む点が、第1の実施形態に係る放射線検出器30と異なる。
【0064】
図8Aに示す構成において、撓み抑制部材60は、基板34の第2の面S2の側に設けられており、補強部材70は、撓み抑制部材60の、基板34と接する面の側とは反対側の面S5の側に設けられている。補強部材70は、シンチレータ32の平面方向における端部(外縁、エッジ)32Eを跨ぐ領域に設けられている。すなわち、補強部材70は、撓み抑制部材60の面S5の側において、シンチレータ32が存在する領域と、シンチレータ32が存在しない領域の境界を跨いだ状態で、撓み抑制部材60に設けられている。補強部材70は、撓み抑制部材60による撓み抑制効果を補強する観点から、基板34よりも高い剛性を有していることが好ましい。補強部材70における曲げ弾性率及び熱膨張率の好ましい範囲は、撓み抑制部材60と同じである。補強部材70は、例えば、撓み抑制部材60と同じ材料で構成されていてもよいし、撓み抑制部材60よりも高い剛性を有する材料で構成されていてもよい。
【0065】
ここで、図9は、シンチレータ32の重量によって生じる基板34の撓みの状態の一例を示す断面図である。図9に示すように、基板34のシンチレータ32が延在する領域は、シンチレータ32の剛性により基板34の撓み量は比較的小さい。一方、基板34のシンチレータ32の端部32Eに対応する部分においては、基板34の撓み量が比較的大きい。基板34の撓み量が大きい部分においては、撓み量が小さい部分と比較して画素41が損傷するリスクが高くなる。
【0066】
開示の技術の第2の実施形態に係る放射線検出器30Aによれば、撓み抑制部材60による撓み抑制効果を補強する補強部材70が、シンチレータ32の端部32Eを跨ぐ領域に設けられている。これにより、補強部材70を設けない場合と比較して、基板34のシンチレータ32の端部32Eに対応する部分における撓みを抑制することができる。従って、補強部材70を設けない場合と比較して、画素41が損傷するリスクを低減することができる。
【0067】
なお、図8Bに示すように、撓み抑制部材60がシンチレータ32の基板34と接する面S6とは反対側の面S3上に設けられている場合、補強部材70は、基板34の第2の面S2上に設けられていてもよい。また、図8Cに示すように、撓み抑制部材60が基板34の第2の面S2上及びシンチレータ32の面S3上の双方に設けられている場合、補強部材70は、撓み抑制部材60の基板34と接する面の側とは反対側の面S5上に設けられていてもよい。図8B及び図8Cに示すいずれの構成においても、補強部材70は、シンチレータ32の端部(外縁、エッジ)32Eを跨ぐ領域に設けられている。すなわち、図8Bに示す構成において、補強部材70は、基板34の第2の面S2の側において、シンチレータ32が存在する領域と、シンチレータ32が存在しない領域の境界を跨いだ状態で、基板34に設けられている。図8Cに示す構成において、補強部材70は、撓み抑制部材60の面S5の側において、シンチレータ32が存在する領域と、シンチレータ32が存在しない領域の境界を跨いだ状態で、撓み抑制部材60に設けられている。
【0068】
[第3の実施形態]
図12は、開示の技術の第3の実施形態に係る放射線検出器30Bの構成の一例を示す断面図である。放射線検出器30Bは、基板34とシンチレータ32との間に設けられた緩衝層90を有する。緩衝層90は、基板34の熱膨張率とシンチレータ32の熱膨張率との間の熱膨張率を有する。緩衝層90として、例えば、ポリイミド膜及びパリレン膜を用いることができる。基板34の材料として、XENOMAX(登録商標)を用いた場合には、基板34として例えばガラス基板を用いた場合と比較して、基板34とシンチレータ32との間の熱膨張率の差が大きくなり、基板34とシンチレータ32との界面に作用する熱応力が過大となる。基板34とシンチレータ32との間に緩衝層90を設けることで、基板34とシンチレータ32との界面に作用する熱応力を抑制することが可能となる。
【0069】
[その他の実施形態]
図13図33は、それぞれ、撓み抑制部材60がシンチレータ32の基板34と接する面とは反対側の面の側に積層された場合における、撓み抑制部材60の設置形態の例を示す断面図である。図13図33において、基板34上の複数の画素41が設けられた領域である画素領域41Aが示されている。
【0070】
シンチレータ32を気相堆積法を用いて形成した場合、図13図33に示すように、シンチレータ32は、その外縁に向けて厚さが徐々に薄くなる傾斜を有して形成される。以下において、製造誤差及び測定誤差を無視した場合の厚さが略一定とみなせる、シンチレータ32の中央領域を中央部33Aという。また、シンチレータ32の中央部33Aの平均厚さに対して例えば90%以下の厚さを有する、シンチレータ32の外周領域を周縁部33Bという。すなわち、シンチレータ32は、周縁部33Bにおいて基板34に対して傾斜した傾斜面を有する。
【0071】
図13図33に示すように、シンチレータ32と撓み抑制部材60との間には、粘着層51、反射膜50、接着層52、保護層53及び接着層54が設けられていてもよい。
【0072】
粘着層51は、シンチレータ32の中央部33A及び周縁部33Bを含むシンチレータ32の表面全体を覆っている。粘着層51は、反射膜50をシンチレータ32上に固定する機能を有する。粘着層51は、光透過性を有していることが好ましい。粘着層51の材料として、例えば、アクリル系粘着剤、ホットメルト系粘着剤、及びシリコーン系接着剤を用いることが可能である。アクリル系粘着剤としては、例えば、ウレタンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート、及びエポキシアクリレート等が挙げられる。ホットメルト系粘着剤としては、例えば、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)、EAA(エチレンとアクリル酸の共重合樹脂)、EEA(エチレン-エチルアクリレート共重合樹脂)、及びEMMA(エチレン-メタクリル酸メチル共重合体)等の熱可塑性プラスチックが挙げられる。粘着層32の厚さは、2μm以上7μm以下であることが好ましい。粘着層32の厚さを2μm以上とすることで、反射膜50をシンチレータ32上に固定する効果を十分に発揮することができる。更に、シンチレータ32と反射膜50との間に空気層が形成されるリスクを抑制することができる。シンチレータ32と反射膜50との間に空気層が形成されると、シンチレータ32から発せられた光が、空気層とシンチレータ32との間、及び空気層と反射膜50との間で反射を繰り返す多重反射を生じるおそれがある。また、粘着層32の厚さを7μm以下とすることで、MTF(Modulation Transfer Function)及びDQE(Detective Quantum Efficiency)の低下を抑制することが可能となる。
【0073】
反射膜50は、粘着層51の表面全体を覆っている。反射膜50は、シンチレータ32で変換された光を反射する機能を有する。反射膜50は有機系材料によって構成されていることが好ましい。反射膜50の材料として、例えば、白PET(Polyethylene Terephthalate)、TiO、Al、発泡白PET、ポリエステル系高反射シート、及び鏡面反射アルミ等を用いることができる。なお白PETとは、PETに、TiOや硫酸バリウム等の白色顔料を添加したものである。また、ポリエステル系高反射シートとは、薄いポリエステルのシートを複数重ねた多層構造を有するシート(フィルム)である。また、発泡白PETとは、表面が多孔質になっている白PETである。反射膜50の厚さは、10μm以上40μm以下であることが好ましい。
【0074】
接着層52は反射膜50の表面全体を覆っている。接着層52の端部は、基板34の表面にまで延在している。すなわち、接着層52は、その端部において基板34に接着している。接着層52は、反射膜50及び保護層53をシンチレータ32に固定する機能を有する。接着層52の材料として、粘着層51の材料と同じ材料を用いることが可能であるが、接着層52が有する接着力は、粘着層51が有する接着力よりも大きいことが好ましい。
【0075】
保護層53は、接着層52の表面全体を覆っている。すなわち、保護層53は、シンチレータ32の全体を覆うとともに、その端部が基板34の一部を覆うように設けられている。保護層53は、シンチレータ32への水分の浸入を防止する防湿膜として機能する。保護層53の材料として、例えば、PET、PPS(PolyPhenylene Sulfide:ポリフェニレンサルファイド)、OPP(Oriented PolyPropylene:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)、PEN(PolyEthylene Naphthalate:ポリエチレンナフタレート)、PI等の有機材料を含む有機膜を用いることができる。また、保護層53として、ポリエチレンテレフタレート等の絶縁性のシート(フィルム)に、アルミ箔を接着させる等してアルミを積層したアルペット(登録商標)のシートを用いてもよい。
【0076】
撓み抑制部材60は、保護層53の表面に接着層54を介して設けられている。接着層54の材料として、例えば、粘着層51及び接着層54の材料と同じ材料を用いることが可能である。
【0077】
図13に示す例では、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33A及び周縁部33Bに対応する領域に延在しており、撓み抑制部材60の外周部は、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に沿うように折り曲げられている。撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33Aに対応する領域及び周縁部33Bに対応する領域の双方において、接着層54を介して保護層53に接着されている。図13に示す例では、撓み抑制部材60の端部は、シンチレータ32の周縁部33Bに対応する領域に配置されている。
【0078】
図14に示すように、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33Aに対応する領域にのみ設けられていてもよい。この場合、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33Aに対応する領域において接着層54を介して保護層53に接着される。
【0079】
図15に示すように、撓み抑制部材60がシンチレータ32の中央部33A及び周縁部33Bに対応する領域に延在している場合において、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の外周部における傾斜に沿った折り曲げ部を有していなくてもよい。この場合、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33Aに対応する領域において、接着層54を介して保護層53に接着される。シンチレータ32の周縁部33Bに対応する領域において、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間には、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に応じた空間が形成される。
【0080】
ここで、基板34の外周部の接続領域80に設けられる端子35には、ケーブル20が接続される。基板34は、ケーブル20を介して制御基板(図45参照)に接続される。基板34に撓みが生じた場合、ケーブル20が基板34から剥離したり、位置ズレを生じたりするおそれがある。この場合、ケーブル20と基板34との接続をやり直す作業が必要となる。このケーブル20と基板34との接続をやり直す作業をリワークと呼ぶ。図13図15に示すように、撓み抑制部材60の端部をシンチレータ32の端部よりも内側に配置することで、撓み抑制部材60が、接続領域80の近傍にまで延在している場合と比較して、容易にリワークを行うことができる。
【0081】
図16図19に示すように、撓み抑制部材60は、その端部が、シンチレータ32の端部よりも外側に配置され、且つ基板34上にまで延在する接着層52及び保護層53の端部に揃うように設けられていてもよい。なお、撓み抑制部材60の端部の位置と、接着層52及び保護層53の端部の位置とが完全に一致していることを要しない。
【0082】
図16に示す例では、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33Aに対応する領域において、接着層54を介して保護層53に接着されており、シンチレータ32の周縁部33Bに対応する領域及び更にその外側の領域において、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間には、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に応じた空間が形成されている。
【0083】
図17に示す例では、シンチレータ32の周縁部33Bに対応する領域及び更にその外側の領域において、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材55が設けられている。充填材55の材料は特に限定されず、例えば、樹脂を用いることが可能である。なお、図17に示す例では、撓み抑制部材60を充填材55に固定するために、接着層54が撓み抑制部材60と充填材55との間の全域に設けられている。
【0084】
充填材55を形成する方法は特に限定されない。例えば、粘着層51、反射膜50、接着層52及び保護層53で覆われたシンチレータ32上に、接着層54及び撓み抑制部材60を順次形成した後、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間に形成された空間に、流動性を有する充填材55を注入し、充填材55を硬化させてもよい。また、例えば、基板34上にシンチレータ32、粘着層51、反射膜50、接着層52及び保護層53を順次形成した後、充填材55を形成し、粘着層51、反射膜50、接着層52及び保護層53で覆われたシンチレータ32及び充填材55を覆うように、接着層54及び撓み抑制部材60を順次形成してもよい。
【0085】
このように、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間に形成された空間に、充填材55を充填することで、図16に示す形態と比較して、撓み抑制部材60のシンチレータ32(保護層53)からの剥離を抑制することができる。更に、シンチレータ32は、撓み抑制部材60及び充填材55の双方により基板34に固定される構造となるため、シンチレータ32の基板34からの剥離を抑制することが可能となる。
【0086】
図18に示す例では、撓み抑制部材60の外周部は、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に沿うように折り曲げられており、且つ接着層52及び保護層53が基板34上を覆う部分をも覆っている。また、撓み抑制部材60の端部は、接着層52及び保護層53の端部に揃っている。なお、撓み抑制部材60の端部の位置と、接着層52及び保護層53の端部の位置とが完全に一致していることを要しない。
【0087】
撓み抑制部材60、接着層54、保護層53及び接着層52の端部は、封止部材57によって封止されている。封止部材57は、基板34の表面から撓み抑制部材60の表面に亘る領域であり、且つ画素領域41Aを覆わない領域に設けられていることが好ましい。封止部材57の材料として、樹脂を用いることができ、特に熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、アクリル糊、及びウレタン系の糊等を封止部材57として用いることができる。撓み抑制部材60は、保護層53と比較して剛性が高く、撓み抑制部材60の折り曲げ部において、折り曲げを解消しようとする復元力が作用し、これによって保護層53が剥離するおそれがある。撓み抑制部材60、接着層54、保護層53及び接着層52の端部を封止部材57によって封止することで、保護層53の剥離を抑制することが可能となる。
【0088】
図19に示す例では、図17に示す形態と同様、シンチレータ32の周縁部33Bに対応する領域及び更にその外側の領域において、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材55が設けられている。また、シンチレータ32の端部に対応する領域において、撓み抑制部材60の表面に更に別の撓み抑制部材60Aが、接着層54Aを介して積層されている。より具体的には、撓み抑制部材60Aは、シンチレータ32の端部(外縁、エッジ)を跨ぐ領域に設けられている。撓み抑制部材60Aは、撓み抑制部材60と同一の材料で構成されていてもよい。図9に示すように、シンチレータ32の端部においては、基板34の撓み量が比較的大きい。シンチレータ32の端部に対応する領域において、撓み抑制部材60及び60Aによる積層構造を形成することで、シンチレータ32の端部における基板34の撓みを抑制する効果を促進させることが可能となる。
【0089】
図16図19に示すように、撓み抑制部材60の端部がシンチレータ32の端部よりも外側に配置され且つ接着層52及び保護層53の端部に揃うように設けられる場合においても、撓み抑制部材60が、接続領域80の近傍にまで延在している場合と比較して、容易にリワークを行うことができる。
【0090】
図20図23に示すように、撓み抑制部材60は、その端部が、基板34上にまで延在する接着層52及び保護層53の端部よりも外側であり、且つ基板34の端部よりも内側に位置するように設けられていてもよい。
【0091】
図20に示す例では、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33Aに対応する領域において、接着層54を介して保護層53に接着されており、シンチレータ32の周縁部33Bに対応する領域及び更にその外側の領域において、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間には、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に応じた空間が形成されている。
【0092】
図21に示す例では、撓み抑制部材60の端部がスペーサ39によって支持されている。すなわち、スペーサ39の一端は基板34の第1の面S1に接続され、スペーサ39の他端は接着層56を介して撓み抑制部材60の端部に接続されている。基板34との間に空間を形成しつつ延伸する撓み抑制部材60の端部をスペーサ39によって支持することで、撓み抑制部材60の剥離を抑制することが可能となる。また、基板34の端部近傍にまで撓み抑制部材60による撓み抑制効果を作用させることができる。なお、スペーサ39を設けることに代えて、図17に示す例に倣って、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材を充填してもよい。
【0093】
図22に示す例では、撓み抑制部材60の外周部が、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に沿うように折り曲げられており、且つ接着層52及び保護層53が基板34上を覆う部分、及びその外側の基板34上をも覆っている。すなわち、接着層52及び保護層53の端部が、撓み抑制部材60によって封止されている。撓み抑制部材60の基板34上に延在する部分は、接着層54を介して基板34に接着されている。このように、接着層52及び保護層53の端部を撓み抑制部材60によって覆うことで、保護層53の剥離を抑制することが可能である。なお、図18に記載の例に倣って、封止部材を用いて、撓み抑制部材60の端部を封止してもよい。
【0094】
図23に示す例では、撓み抑制部材60の端部がスペーサ39によって支持されている形態において、撓み抑制部材60の表面の、シンチレータ32の端部に対応する領域に、更に別の撓み抑制部材60Aが、接着層54Aを介して積層されている。より具体的には、撓み抑制部材60Aは、シンチレータ32の端部(外縁、エッジ)を跨ぐ領域に設けられている。撓み抑制部材60Aは、撓み抑制部材60と同一の材料で構成されていてもよい。図9に示すように、シンチレータ32の端部においては、基板34の撓み量が比較的大きい。シンチレータ32の端部に対応する領域において、撓み抑制部材60及び60Aによる積層構造を形成することで、シンチレータ32の端部における基板34の撓みを抑制する効果を促進させることが可能となる。なお、スペーサ39を設けることに代えて、図17に示す例に倣って、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材を充填してもよい。
【0095】
図24図28に示すように、撓み抑制部材60は、その端部が、基板34の端部に揃うように設けられていてもよい。なお、撓み抑制部材60の端部の位置と基板34の端部の位置とが完全に一致していることを要しない。
【0096】
図24に示す例では、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33Aに対応する領域において、接着層54を介して保護層53に接着されており、シンチレータ32の周縁部33Bに対応する領域及び更にその外側の領域において、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間には、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に応じた空間が形成されている。
【0097】
図25に示す例では、撓み抑制部材60の端部がスペーサ39によって支持されている。すなわち、スペーサ39の一端は、基板34の端部に設けられるケーブル20に接続され、スペーサ39の他端は接着層56を介して撓み抑制部材60の端部に接続されている。基板34との間に空間を形成しつつ延伸する撓み抑制部材60の端部を、スペーサ39によって支持することで、撓み抑制部材60の剥離を抑制することが可能となる。また、基板34の端部近傍にまで撓み抑制部材60による撓み抑制効果を作用させることができる。
【0098】
図26に示す例では、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材55が充填されている。本実施形態において、ケーブル20と端子35との接続部が充填材55によって覆われている。このように、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材55が充填されることで、図24に示す形態と比較して、撓み抑制部材60のシンチレータ32(保護層53)からの剥離を抑制することができる。更に、シンチレータ32は、撓み抑制部材60及び充填材55の双方により基板34に固定される構造となるため、シンチレータ32の基板34からの剥離を抑制することが可能となる。また、ケーブル20と端子35との接続部が充填材55によって覆われることで、ケーブル20の剥離を抑制することが可能となる。
【0099】
図27に示す例では、撓み抑制部材60の外周部が、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に沿うように折り曲げられており、且つ接着層52及び保護層53が基板34上を覆う部分、その外側の基板上、及び端子35とケーブル20との接続部をも覆っている。撓み抑制部材60の基板34上及びケーブル20上に延在する部分は、それぞれ、接着層54を介して基板34及びケーブル20に接着されている。ケーブル20と端子35との接続部が撓み抑制部材60によって覆われることで、ケーブル20の剥離を抑制することが可能となる。また、ケーブル20の他端には、電子部品を搭載した制御基板が接続されることが想定されることから、ケーブル20と端子35との接続部において、基板34に比較的大きな撓みが生じるおそれがある。ケーブル20と端子35との接続部が、撓み抑制部材60によって覆われることで、当該部分における基板34の撓みを抑制することが可能となる。
【0100】
図28に示す例では、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材55が充填されている。また、シンチレータ32の端部に対応する領域において、撓み抑制部材60の表面に更に別の撓み抑制部材60Aが、接着層54Aを介して積層されている。より具体的には、撓み抑制部材60Aは、シンチレータ32の端部(外縁、エッジ)を跨ぐ領域に設けられている。撓み抑制部材60Aは、撓み抑制部材60と同一の材料で構成されていてもよい。図9に示すように、シンチレータ32の端部においては、基板34の撓み量が比較的大きい。シンチレータ32の端部に対応する領域において、撓み抑制部材60及び60Aによる積層構造を形成することで、シンチレータ32の端部における基板34の撓みを抑制する効果を促進させることが可能となる。
【0101】
図29図33に示すように、撓み抑制部材60は、その端部が、基板34の端部よりも外側に位置するように設けられていてもよい。
【0102】
図29に示す例では、撓み抑制部材60は、シンチレータ32の中央部33Aに対応する領域において、接着層54を介して保護層53に接着されており、シンチレータ32の周縁部33Bに対応する領域及び更にその外側の領域において、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間には、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に応じた空間が形成されている。
【0103】
図30に示す例では、撓み抑制部材60の端部がスペーサ39によって支持されている。すなわち、スペーサ39の一端は、基板34の端部に設けられるケーブル20に接続され、スペーサ39の他端は接着層56を介して撓み抑制部材60の端部に接続されている。基板34との間に空間を形成しつつ延伸する撓み抑制部材60の端部を、スペーサ39によって支持することで、撓み抑制部材60の剥離を抑制することが可能となる。また、基板34の端部近傍にまで撓み抑制部材60による撓み抑制効果を作用させることができる。
【0104】
図31に示す例では、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材55が充填されている。本実施形態において、ケーブル20と端子35との接続部が充填材55によって覆われている。このように、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材55が充填されることで、図29に示す形態と比較して、撓み抑制部材60のシンチレータ32(保護層53)からの剥離を抑制することができる。更に、シンチレータ32は、撓み抑制部材60及び充填材55の双方により基板34に固定される構造となるため、シンチレータ32の基板34からの剥離を抑制することが可能となる。また、ケーブル20と端子35との接続部が充填材55によって覆われることで、ケーブル20の剥離を抑制することが可能となる。
【0105】
図32に示す例では、撓み抑制部材60の外周部が、シンチレータ32の周縁部33Bにおける傾斜に沿うように折り曲げられており、且つ接着層52及び保護層53が基板34上を覆う部分、その外側の基板上、及び端子35とケーブル20との接続部をも覆っている。撓み抑制部材60の基板34上及びケーブル20上に延在する部分は、それぞれ、接着層54を介して基板34及びケーブル20に接着されている。ケーブル20と端子35との接続部が撓み抑制部材60によって覆われることで、ケーブル20の剥離を抑制することが可能となる。また、ケーブル20の他端には、電子部品を搭載した制御基板が接続されることが想定されることから、ケーブル20と端子35との接続部において、基板34に比較的大きな撓みが生じるおそれがある。ケーブル20と端子35との接続部が、撓み抑制部材60によって覆われることで、当該部分における基板34の撓みを抑制することが可能となる。
【0106】
図33に示す例では、シンチレータ32(保護層53)と撓み抑制部材60との間、及び基板34と撓み抑制部材60との間に形成された空間に充填材55が充填されている。また、シンチレータ32の端部に対応する領域において、撓み抑制部材60の表面に更に別の撓み抑制部材60Aが、接着層54Aを介して積層されている。より具体的には、撓み抑制部材60Aは、シンチレータ32の端部(外縁、エッジ)を跨ぐ領域に設けられている。撓み抑制部材60Aは、撓み抑制部材60と同一の材料で構成されていてもよい。図9に示すように、シンチレータ32の端部においては、基板34の撓み量が比較的大きい。シンチレータ32の端部に対応する領域において、撓み抑制部材60及び60Aによる積層構造を形成することで、シンチレータ32の端部における基板34の撓みを抑制する効果を促進させることが可能となる。
【0107】
ここで、放射線検出器30の製造工程においては、ガラス基板等の支持体に、可撓性を有する基板34を貼り付け、基板34上にシンチレータ32を積層した後、支持体を基板34から剥離する。このとき、可撓性を有する基板34に撓みが生じ、これによって基板34上に形成された画素41が損傷するおそれがある。支持体を基板34から剥離する前に、図13図33に例示したような形態でシンチレータ32上に撓み抑制部材60を積層しておくことで、支持体を基板34から剥離する際に生じる基板34の撓みを抑制することができ、画素41の損傷のリスクを低減することが可能となる。
【0108】
図34図39は、それぞれ、撓み抑制部材が基板34のシンチレータ32と接する第1の面S1とは反対側の第2の面S2の側に設けられる場合における、撓み抑制部材の設置形態の例を示す断面図である。
【0109】
図34図39に示す例では、それぞれ、基板34の第2の面S2の略全体が、接着層54を介して撓み抑制部材60に接している。すなわち、撓み抑制部材60の面積と、基板34の面積は略同じである。撓み抑制部材60の基板34側の面とは反対側の面には、更に別の撓み抑制部材60Aが、接着層54Aを介して積層されている。撓み抑制部材60Aは、撓み抑制部60と同一の材料で構成されていてもよい。放射線検出器30の撮影方式として表面読取方式(ISS)が適用される場合、撓み抑制部材60Aと画素領域41Aとが重なる部分の面積を極力小さくするために、撓み抑制部材60Aは、基板34の外周部にのみ設けられていることが好ましい。すなわち、撓み抑制部材60Aは、図34図39に示すように、画素領域41Aに対応する部分に開口61を有する環状であってもよい。このように、基板34の外周部に、撓み抑制部材60及び60Aによる積層構造を形成することで、比較的撓みが生じやすい基板34の外周部の剛性を補強することができる。
【0110】
図34図36に示す例では、撓み抑制部材60Aは、シンチレータ32の端部(外縁、エッジ)を跨ぐ領域に設けられている。図9に示すように、シンチレータ32の端部においては、基板34の撓み量が比較的大きい。シンチレータ32の端部に対応する領域において、撓み抑制部材60及び60Aによる積層構造を形成することで、シンチレータ32の端部における基板34の撓みを抑制する効果を促進させることが可能となる。
【0111】
放射線検出器30の撮影方式として表面読取方式(ISS)が適用される場合において、図34に示すように、撓み抑制部材60Aの一部が画素領域41Aと重なる場合には、撓み抑制部材60Aの材質によっては、画像に影響を与えるおそれがある。従って、撓み抑制部材60Aの一部が画素領域41Aと重なる場合には、撓み抑制部材60Aの材料としてプラスチックを用いることが好ましい。
【0112】
図35及び図36に示すように、撓み抑制部材60Aが、シンチレータ32の端部(外縁、エッジ)を跨ぎ、且つ画素領域41Aと重ならない形態(すなわち、撓み抑制部材60Aの開口61の端部が、画素領域41Aの外側に配置されている形態)が最も好ましい。図35に示す例では、撓み抑制部材60Aの開口61の端部の位置と、画素領域41Aの端部の位置とが略一致している。図36に示す例では、撓み抑制部材60Aの開口61の端部が、画素領域41Aの端部とシンチレータ32の端部との間に配置されている。
【0113】
また、撓み抑制部材60Aの開口61の端部の位置が、図37に示すように、シンチレータ32の端部の位置と略一致していてもよく、また、図38に示すように、シンチレータ32の端部よりも外側に配置されていてもよい。この場合、撓み抑制部材60Aが、シンチレータ32の端部(外縁、エッジ)を跨ぐ構造となっていないため、シンチレータ32の端部における基板34の撓みを抑制する効果は低下するおそれがある。しかしながら、ケーブル20と端子35との接続部が存在する基板34の外周部において、撓み抑制部材60及び60Aによる積層構造が形成されることで、ケーブル20と端子35との接続部における基板34の撓みを抑制する効果は維持される。
【0114】
図39に示す例では、撓み抑制部材60の面積が基板34の面積よりも大きく、撓み抑制部材60の端部が基板34の端部よりも外側に配置されている。この形態によれば、撓み抑制部材60の、基板34からはみ出した部分を筐体14にネジ止めするなどして、放射線検出器30を筐体14の内部に固定することが可能となる。
【0115】
なお、図34図39では、撓み抑制部材60Aの外側の端部の位置と、基板34の端部の位置とが略一致している形態を例示したが、この態様に限定されない。撓み抑制部材60Aの外側の端部は、基板34の端部よりも外側または内側に配置されていてもよい。
【0116】
また、図34図39では、基板34の第2の面S2の側に、撓み抑制部材60及び60Aによる積層構造を形成する形態を例示したが、この態様に限定されない。例えば、図13図33に例示されるような形態で、撓み抑制部材60がシンチレータ32側に設けられる場合には、基板34の第2の面S2の側には、基板34の外周部を補強する撓み抑制部材60Aのみを設けることとしてもよい。
【0117】
図40は、撓み抑制部材60の構造の一例を示す平面図である。撓み抑制部材60は、その主面に複数の貫通孔62を有していてもよい。貫通孔62の大きさ及びピッチは、撓み抑制部材60において所望の剛性が得られるように定められる。
【0118】
撓み抑制部材60が複数の貫通孔62を有することで、撓み抑制部材60の、シンチレータ32側または基板34側との接合面に導入される空気を貫通孔62から排出させることが可能となる。これにより、撓み抑制部材60の、シンチレータ32側または基板34側との接合面における気泡の発生を抑制することが可能となる。
【0119】
撓み抑制部材60の、シンチレータ32側または基板34側との接合面に導入される空気を排出させる手段が存在しない場合には、上記接合面に気泡が発生するおそれがある。例えば、放射線画像撮影装置10の稼働時における熱により、上記接合面に生じた気泡が膨張すると、撓み抑制部材60と、シンチレータ32側または基板34側との密着性が低下する。これにより撓み抑制部材60による撓み抑制効果が十分に発揮されないおそれがある。図40に示すように、複数の貫通孔62を有する撓み抑制部材60を用いることで、上記のように、撓み抑制部材60の、シンチレータ32側または基板34側との接合面における気泡の発生を抑制することができるので、撓み抑制部材60とシンチレータ32側または基板34側との密着性を維持することが可能となり、撓み抑制部材60による撓み抑制効果を維持することが可能となる。
【0120】
図41は、撓み抑制部材60の構造の他の例を示す斜視図である。図41に示す例では、撓み抑制部材60は、シンチレータ32側または基板34側との接合面に凹凸構造を有する。この凹凸構造は、図41に示すように、互いに平行に配置された複数の溝63を含んで構成されていてもよい。撓み抑制部材60は、例えば、図42に示すように、複数の溝63による凹凸構造を有する面が、反射膜50で覆われたシンチレータ32に接合される。このように、撓み抑制部材60がシンチレータ32側または基板34側との接合面に凹凸構造を有することで、撓み抑制部材60とシンチレータ32側または基板34側との接合部に導入される空気を溝63から排出させることが可能となる。これにより、図40に示す形態と同様、撓み抑制部材60の、シンチレータ32側または基板34側との接合面における気泡の発生を抑制することが可能となる。これにより、撓み抑制部材60とシンチレータ32側または基板34側との密着性を維持することが可能となり、撓み抑制部材60による撓み抑制効果を維持することが可能となる。
【0121】
図43及び図44は、それぞれ、撓み抑制部材60の構造の他の例を示す平面図である。図43及び図44に示すように、撓み抑制部材60は、複数の断片64に分断されていてもよい。撓み抑制部材60は、図43に示すように、複数の断片64が、一方向に配列するように分断されていてもよい。また、撓み抑制部材60は、図44に示すように、複数の断片64が、縦方向及び横方向に配列するように分断されていてもよい。
【0122】
撓み抑制部材60の面積が大きくなる程、撓み抑制部材60の、シンチレータ32側または基板34側との接合面に気泡が発生しやすくなる。図43及び図44に示すように、撓み抑制部材60を複数の断片64に分断することで、撓み抑制部材60の、シンチレータ32側または基板34側との接合面における気泡の発生を抑制することが可能となる。これにより、撓み抑制部材60とシンチレータ32側または基板34側との密着性を維持することが可能となり、撓み抑制部材60による撓み抑制効果を維持することが可能となる。
【0123】
図45図47は、それぞれ、放射線画像撮影装置10の他の構成例を示す図である。放射線画像撮影装置10は、筐体14と、筐体14の内部に収容された放射線検出器30、制御基板81及び電源部82を含んで構成されている。
【0124】
制御基板81は、図3に示された、制御部29、画像メモリ28、ゲート線駆動部22、チャージアンプ24及び信号処理部26を構成する電子部品の一部または全部が搭載される基板である。制御基板81は、可撓性を有する基板34よりも剛性の高いリジッド基板であってもよい。電源部82は、制御基板81に搭載された電子部品に電力線83を介して電力を供給する。
【0125】
筐体14は、軽量であり、X線の吸収率が低く、且つ高剛性であることが好ましく、撓み抑制部材60よりも弾性率が十分に高い材料により構成されることが好ましい。筐体14の材料として、曲げ弾性率が10000MPa以上である材料を用いることが好ましい。筐体14の材料として、20000~60000MPa程度の曲げ弾性率を有するカーボンまたはCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)を好適に用いることができる。
【0126】
放射線画像撮影装置10による放射線画像の撮影においては、筐体14の放射線入射面15に被写体からの荷重が印加される。撓み抑制部材60が、例えば軟質プラスチック等の弾性率が比較的低い材料により構成される場合において、筐体14の剛性が不足する場合、被写体からの荷重により基板34に撓みが生じ、画素41が損傷する等の不具合が発生するおそれがある。10000MPa以上の曲げ弾性率を有する材料からなる筐体14内部に、撓み抑制部材60を備えた放射線検出器30が収容されることで、撓み抑制部材60が、例えば軟質プラスチック等の弾性率が比較的低い材料により構成される場合においても、被写体からの荷重による基板34の撓みを抑制することが可能となる。撓み抑制部材60と筐体14の内壁面とを密着させることで、被写体からの荷重による基板34の撓みを抑制する効果を更に促進させることができる。この場合、撓み抑制部材60と筐体14の内壁面とが接着層を介して接着されていてもよいし、接着層を介さずに単に接触しているだけでもよい。
【0127】
図45及び図46に示す例では、放射検出器30、制御基板81及び電源部82が図中横方向に並置されている構成が例示されている。図46に示すように、筐体14の内部空間における、放射線検出器30が収容される領域の厚さを、制御基板81及び電源部82が収容される領域の厚さよりも薄くしてもよい。これにより、放射線検出器30の厚さに応じた極薄型の可搬型電子カセッテを構成することが可能となる。放射線検出器30が収容される領域と、制御基板81及び電源部82が収容される領域との間の段差を緩和するために、筐体14は、これらの2つの領域を接続する部分において傾斜部14Aを有していることが好ましい。筐体14が傾斜部14Aを有することで、放射線画像撮影装置10を、被写体である患者の下に挿入した状態で用いる場合、患者の違和感を低減することが可能となる。
【0128】
図47に示す例では、筐体14の内部空間において、放射線検出器30の基板34と略同じサイズの基台37が、基板34と重なる位置に設けられており、基台37上に制御基板81及び電源部82が設けられている。この構成によれば、放射検出器30、制御基板81及び電源部82が図中横方向に並置される場合と比較して、放射線画像撮影装置10の平面視におけるサイズを小さくすることができる。
【0129】
(付記1)
放射線検出器は、可撓性を有する基板と、基板に設けられ、光電変換素子をそれぞれ含む複数の画素と、基板に積層されたシンチレータと、基板の撓みを抑制する撓み抑制部材と、を含み、画素のサイズをX、基板の撓みによる画素の限界変形量をZ 、シンチレータの重量によって基板に生じる撓みの曲率半径をRとしたとき、R≧X /2Z を満たす剛性を、撓み抑制部材が有する。
【0130】
(付記2)
放射線検出器において、シンチレータは、基板の第1の面の側に積層され、撓み抑制部材は、基板の第1の面の側とは反対側の第2の面の側及びシンチレータの、基板と接する面の側とは反対側の面の側の少なくとも一方に積層されている。
【0131】
(付記3)
放射線検出器において、撓み抑制部材は、基板の第2の面の側、及びシンチレータの基板と接する面の側とは反対側の面の側の双方に積層されている。
【0132】
(付記4)
放射線検出器において、撓み抑制部材は、基板よりも高い剛性を有する。
【0133】
(付記5)
放射線検出器において、撓み抑制部材は、シンチレータが延在する範囲よりも広い範囲に亘って延在している。
【0134】
(付記6)
放射線検出器において、基板は、可撓性の配線が接続される接続領域を有し、撓み抑制部材は、前記接続領域の少なくとも一部及び前記シンチレータを覆う領域に設けられている。
【0135】
(付記7)
放射線検出器において、撓み抑制部材は、曲げ弾性率が1000MPa以上3500MPa以下である。
【0136】
(付記8)
放射線検出器において、シンチレータの熱膨張率に対する撓み抑制部材の熱膨張率の比が0.5以上2以下である。
【0137】
(付記9)
放射線検出器において、撓み抑制部材の熱膨張率は30ppm/K以上80ppm/K以下である。
【0138】
(付記10)
放射線検出器において、撓み抑制部材は、アクリル、ポリカーボネート、及びポリエチレンテレフタレートの少なくとも一つを含んで構成されている。
【0139】
(付記1)
放射線検出器は、シンチレータの端部を跨ぐ領域に設けられ、撓み抑制部材による撓み抑制効果を補強する補強部材を更に含む。
【0140】
(付記12)
放射線検出器において、補強部材は、基板よりも高い剛性を有する。
【0141】
(付記13)
放射線検出器において、補強部材は、撓み抑制部材と同一の材料で構成されている
【0142】
(付記14)
放射線検出器において、基板は、樹脂フィルムを含んで構成されている。
【0143】
(付記15)
放射線検出器において、基板は、平均粒子径が0.05μm以上2.5μm以下の無機材料からなる微粒子を含む微粒子層を有する樹脂材料からなる基材を含んで構成され、微粒子層は、基板の前記複数の画素が設けられた第1の面とは反対側の第2の面の側に設けられている。
【0144】
(付記16)
放射線検出器において、微粒子は、樹脂材料を構成する元素よりも原子番号が大きく且つ原子番号が30以下の元素を含む。
【0145】
(付記17)
放射線検出器において、基板は、300℃以上400℃以下における熱膨張率が20ppm/K以下である。
【0146】
(付記18)
放射線検出器において、基板は、基板の厚さを25μmとした場合の400℃におけるMD方向の熱収縮率が0.5%以下、及び500℃における弾性率が1GPa以上の少なくとも一方を満たす。
【0147】
(付記19)
放射線検出器において、基板と、シンチレータとの間に設けられ、基板の熱膨張率とシンチレータの熱膨張率との間の熱膨張率を有する緩衝層を更に含む。
【0148】
(付記20)
放射線画像撮影装置は、付記1乃至付記19のいずれかに係る放射線検出器と、画素に蓄積された電荷の読み出しを行う読み出し部と、画素から読み出された電荷に基づいて画像データを生成する生成部と、を含む。
【0149】
(付記21)
放射線画像撮影装置は、放射線が入射する放射線入射面を有し、放射線検出器を収容する筐体を更に含み、基板及びシンチレータのうち、基板が放射線入射面の側に配置されている。
【0150】
(付記22)
放射線検出器の製造方法は、可撓性を有する基板に光電変換素子をそれぞれ含む複数の画素を形成する工程と、基板にシンチレータを形成する工程と、基板の撓みを抑制する撓み抑制部材を配置する工程と、を含み、画素のサイズが大きくなる程、撓み抑制部材の剛性を高くする。
【0151】
(付記23)
製造方法において、画素のサイズをX、基板の撓みによる画素の限界変形量をZ 、シンチレータの重量によって基板に生じる撓みの曲率半径をRとしたとき、R≧X /2Z を満たす剛性を、撓み抑制部材が有する。
【0152】
付記1によれば、画素のサイズに応じて剛性が定められる撓み抑制部材を使用しない場合と比較して、シンチレータの重量によって生じる基板の撓みに起因する画素の損傷のリスクを低減することが可能となる。
【0153】
付記2によれば、撓み抑制部材による撓み抑制効果を効果的に発揮することができる。
【0154】
付記3によれば、基板の撓みによって画素が損傷するリスクを更に低減することができる。
【0155】
付記4によれば、撓み抑制部材による撓み抑制効果を効果的に発揮することができる。
【0156】
付記5によれば、撓み抑制部材による撓み抑制効果を効果的に発揮することができる。
【0157】
付記6によれば、撓み抑制部材による撓み抑制効果を効果的に発揮することができる。
【0158】
付記7によれば、撓み抑制部材として好ましい剛性を有することができる。
【0159】
付記8によれば、シンチレータの熱膨張率に対する撓み抑制部材の熱膨張率の比が上記の範囲にない場合と比較して、基板とシンチレータとが剥離するリスクを抑制することができる。
【0160】
付記9によれば、撓み抑制部材の熱膨張率が上記の範囲にない場合と比較して、基板とシンチレータとの剥離の発生するリスクを抑制することができる。
【0161】
付記10によれば、撓み抑制部材が他の材料を含んで構成される場合と比較して、撓み抑制部材による撓み抑制効果を効果的に発揮することができ、また、基板とシンチレータとの剥離の発生するリスクを抑制することができる。
【0162】
付記11によれば、補強部材を含まない場合と比較して、基板の、シンチレータ端部に対応する部分における撓みを抑制することができる。
【0163】
付記12によれば、撓み抑制部材による撓み抑制効果を補強する効果が効果的に発揮される。
【0164】
付記13によれば、撓み抑制部材による撓み抑制効果を補強する効果が効果的に発揮される。
【0165】
付記14によれば、基板の材料としてガラス基板を用いる場合と比較して、放射線検出器の軽量化及び低コスト化を図ることができ、更に、衝撃によって基板が破損するリスクを低減することができる。
【0166】
付記15によれば、基板が微粒子層を含まない場合と比較して、基板内で発生した後方散乱線を抑制することができる。
【0167】
付記16によれば、微粒子の原子番号が上記の範囲にない場合と比較して、また後方散乱線の抑制を効果的に行うことができ、また微粒子層における放射線の吸収を抑制することができる。
【0168】
付記17によれば、基板の熱膨張率が上記の範囲にない場合と比較して、基板上への画素の形成を適切に行うことができる。
【0169】
付記18によれば、基板の熱収縮率及び弾性率が上記範囲にない場合と比較して、基板上への画素の形成を適切に行うことができる。
【0170】
付記19によれば、緩衝層を含まない場合と比較して、基板とシンチレータとの界面に作用する熱応力を抑制することが可能となる。
【0171】
付記20によれば、画素のサイズに応じて剛性が定められる撓み抑制部材を使用しない場合と比較して、シンチレータの重量によって生じる基板の撓みに起因する画素の損傷のリスクを低減することが可能となる。
【0172】
付記21によれば、基板及びシンチレータのうち、シンチレータが放射線入射面の側に配置されている場合と比較して、放射線画像の解像度を高めることができる。
【0173】
付記22によれば、画素のサイズに応じて剛性が定められる撓み抑制部材を使用しない場合と比較して、シンチレータの重量によって生じる基板の撓みに起因する画素の損傷のリスクを低減することが可能となる。
【0174】
付記23によれば、シンチレータの重量によって基板に生じる撓みに起因する画素の損傷リスクの低減を担保することができる。
【0175】
日本出願特願2018-051691号、特願2018-219697号、及び特願2019-022081号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0176】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0177】
10 放射線画像撮影装置
12 制御ユニット
14 筐体
14A 傾斜部
15 放射線入射面
16 支持板
18 接着層
19 回路基板
20 ケーブル
22 ゲート線駆動部
24 チャージアンプ
26 信号処理部
28 画像メモリ
29 制御部
30、30A、30B 放射線検出器
32 シンチレータ
32E 端部
33A 中央部
33B 周縁部
34 基板
34P 微粒子
34L 微粒子層
35 端子
36 光電変換素子
37 基台
39 スペーサ
41 画素
41A 画素領域
42 TFT
43 ゲート線
44 信号線
50 反射膜
51 粘着層
52、54、54A、56 接着層
53 保護層
55 充填材
57 封止部材
60、60A 撓み抑制部材
61 開口
62 貫通孔
63 溝
64 断片
70 補強部材
80 接続領域
81 制御基板
82 電源部
83 電力線
90 緩衝層
L 接線
R 曲率半径
S1 第1の面
S2 第2の面
S3、S4、S5、S6 面
X 画素のサイズ
Z 変形量
限界変形量
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する基板と、
前記基板に設けられ、光電変換素子をそれぞれ含む複数の画素と、
前記基板に積層されたシンチレータと、
前記基板の撓みを抑制する撓み抑制部材と、
を含み、
前記撓み抑制部材の曲げ弾性率が1000MPa以上3500MPa以下である放射線検出器。
【請求項2】
前記撓み抑制部材の曲げ剛性は、3600Pa・cm4以上、196000Pa・cm4以下である請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記シンチレータの熱膨張率に対する前記撓み抑制部材の熱膨張率の比が、0.5以上2以下である請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記撓み抑制部材の熱膨張率は、30ppm/K以上80ppm/K以下である請求項3に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記放射線検出器は、前記基板の熱膨張率と前記シンチレータの熱膨張率との間の熱膨張率を有する前記基板と前記シンチレータとの間に設けられた緩衝層を有することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記緩衝層は、前記シンチレータの前記基板と接する面における、前記基板の画素領域に対向する部分にわたって設けられていることを特徴とする請求項5に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記基板の、前記シンチレータが積層された面とは反対側の面に前記撓み抑制部材が積層されていることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記シンチレータの、前記基板と接する面とは反対側の面に前記撓み抑制部材が積層されていることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記基板の、前記シンチレータが積層された面とは反対側の面である第1の面、及び前記シンチレータの、前記基板と接する面とは反対側の面である第2の面の双方に撓み抑制部材が積層されており、前記第1の面に積層される撓み抑制部材の方が、前記第2の面に積層される撓み抑制部材よりも、放射線の吸収量が少ないことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項10】
放射線が、前記基板の、前記シンチレータが積層された面とは反対側の面側から入射する配置とされていることを特徴とする請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項11】
前記撓み抑制部材が、前記基板の、前記シンチレータが積層された面とは反対側の面の外周部にのみ設けられ、前記基板の画素領域に対応する部分に開口を有する環状となっていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の放射線検出器。