(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101775
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】誘導加熱コイル及びこれを用いた単結晶製造装置
(51)【国際特許分類】
C30B 13/20 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
C30B13/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216056
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】下村 庫一
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CE03
4G077CE04
4G077EG20
4G077HA12
4G077ND03
(57)【要約】
【課題】流路内での冷却水の流れの偏りを抑制してコイルの振動現象及び酸化膜の付着によるコイル導体の劣化を防止する。
【解決手段】誘導加熱コイル20は、円環状のコイル本体21と、コイル本体21の中央に設けられた開口部22から外周端に向かって延在するスリット23と、コイル本体21の内部に形成された円環状の冷却水の流路25と、スリット23を挟んで互いに近接するコイル本体21の周方向の一端及び他端にそれぞれ設けられた流路25の入口25A及び出口25Bと、流路25の途中に設けられ、流路25の外周側の冷却水の流れを内周側に誘導する少なくとも一つの整流部材26とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FZ法による単結晶の製造に用いられる誘導加熱コイルであって、
円環状のコイル本体と、
前記コイル本体の中央に設けられた開口部から前記コイル本体の外周端に向かって延在するスリットと、
前記コイル本体の内部に形成された円環状の冷却水の流路と、
前記スリットを挟んで互いに近接する前記コイル本体の周方向の一端及び他端にそれぞれ設けられた前記流路の入口及び出口と、
前記流路の途中に設けられ、前記流路の外周側の冷却水の流れを内周側に誘導する少なくとも一つの整流部材とを備えることを特徴とする誘導加熱コイル。
【請求項2】
前記入口から前記出口に向かう方向を順方向とした前記流路の周方向における前記整流部材の形成位置は、前記スリットの位置を基準として160°以降の領域内に設定されている、請求項1に記載の誘導加熱コイル。
【請求項3】
前記整流部材は、前記スリットの位置を基準として180°の位置に設けられている、請求項2に記載の誘導加熱コイル。
【請求項4】
前記整流部材は、前記スリットの位置を基準として180°の位置に設けられた第1整流部材と、前記スリットの位置を基準として270°の位置に設けられた第2整流部材を含む、請求項2に記載の誘導加熱コイル。
【請求項5】
前記整流部材は前記コイル本体と一体的に形成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の誘導加熱コイル。
【請求項6】
FZ法による単結晶の製造に用いられる単結晶製造装置であって、
原料ロッドを回転可能及び昇降可能に支持する上軸と、
前記上軸の下方に配置され、種結晶を回転可能及び昇降可能に支持する下軸と、
前記原料ロッドを加熱する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の誘導加熱コイルとを備えることを特徴とする単結晶製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FZ法(Floating Zone法)による単結晶の製造に用いられる誘導加熱コイル及びこれを用いた単結晶製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶の製造方法としてFZ法が知られている。FZ法は、多結晶シリコンからなる原料ロッドの一部を加熱して溶融帯を生成し、溶融帯の上方及び下方にそれぞれ位置する原料ロッド及び種結晶を徐々に降下させることにより、種結晶の上方に大きな単結晶を成長させる方法である。FZ法ではCZ法(Czochralski法)のように石英ルツボを使用しないため、酸素濃度が低い単結晶を製造することができる。
【0003】
FZ法において多結晶シリコン原料の加熱には誘導加熱方式が用いられる。誘導加熱コイルに高周波電流を流したときに発生する磁界をシリコン原料に印加したとき、シリコン原料中には電磁誘導によって渦電流が流れ、渦電流によるジュール熱が発生する。誘導加熱方式ではこのジュール熱を利用してシリコン原料を加熱する。
【0004】
FZ法で使用する誘導加熱コイルは、溶融シリコンからの熱輻射を受けて温度が上昇して溶損するおそれがあるため、冷却が必要である。誘導加熱コイルの水冷構造に関し、例えば特許文献1には、冷却水を流通させる冷却水流路を内部に備えた誘導加熱コイルが記載されている。また、誘導加熱コイルの冷却効率を改善するため、冷却水流路内に洗浄液を流通させて冷却水流路の内部表面の酸化膜を除去することが記載されている。
【0005】
特許文献2には、誘導加熱コイルを冷却する冷却水が流通し、冷却水による酸化を防止する被膜が形成された冷却水路を内部に備えた誘導加熱コイルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-117254号公報
【特許文献2】特開2012-101980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した水冷式の誘導加熱コイルにおいて、コイル全体の冷却効率を高めるためには、冷却水の流路の幅を広くすることが好ましい。しかし、流路の幅を広くすると、流路内で冷却水の流れに偏りが生じ、冷却水の澱みが発生した部分の水温が上昇して沸騰する。誘導加熱コイル内で冷却水が沸騰するとコイルが振動し、コイルの外表面に付着したパーティクルが振動を受けて移動して結晶成長界面に落下するおそれがある。結晶成長界面に落下したパーティクルは単結晶の有転位化の原因となる。また、冷却水の澱みによるコイルの部分的な温度上昇はコイルの熱変形の原因となり、またコイルの温度上昇によって流路の内表面に酸化膜が形成されてコイルが劣化する。
【0008】
したがって、本発明の目的は、流路内での冷却水の流れの偏りを抑制してコイルの振動現象及び酸化膜の付着によるコイル導体の劣化を防止することが可能な誘導加熱コイル及びこれを用いた単結晶製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明による誘導加熱コイルは、円環状のコイル本体と、前記コイル本体の中央開口部から前記コイル本体の外周端に向かって延びるスリットと、前記コイル本体の内部に形成された円環状の冷却水の流路と、前記スリットを挟んで互いに近接する前記コイル本体の周方向の一端及び他端にそれぞれ設けられた前記流路の入口及び出口と、前記流路の途中に設けられ、前記流路の外周側の冷却水の流れを内周側に誘導する少なくとも一つの整流部材とを備えることを特徴とする
【0010】
本発明によれば、冷却水の流路内に整流部材を設置することで冷却水の流れが流路内の外周側に偏ることを防止することができ、これにより流路内の冷却水の澱みを解消することができる。したがって、流路内の温度上昇を抑制して冷却水の沸騰によるコイルの振動を抑制し、これによりパーティクルの落下による単結晶の有転位化を防止することができる。さらに、冷却水の澱みによるコイルの部分的な温度上昇で発生する熱歪みや流路内の酸化膜の付着も低減できる。
【0011】
本発明において、前記入口から前記出口に向かう方向を順方向とした前記流路の周方向における前記整流部材の形成位置は、前記スリットの位置を基準として160°以降の領域内に設定されていることが好ましい。冷却水の流れの偏りは160度以降の領域で大きくなる傾向が見られる。そのため、整流部材を160度以降の領域に設けることにより、流路内の冷却水の澱みを解消することができる。
【0012】
本発明において、前記整流部材は、前記スリットの位置を基準として180°の位置に設けられていることが好ましい。これにより、冷却水の流れが流路内の外周側に偏る現象を抑制する効果を高めることができる。
【0013】
本発明において、前記整流部材は、前記スリットの位置を基準として180°の位置に設けられた第1整流部材と、前記スリットの位置を基準として270°の位置に設けられた第2整流部材を含むことが好ましい。これにより、冷却水の流れの偏りを抑制する効果を高めることができる。
【0014】
前記整流部材は前記コイル本体と一体的に形成されていることが好ましい。これにより、整流部材を容易に形成することができ、また整流部材を有する誘導加熱コイルの低コスト化を図ることができる。
【0015】
また、本発明による単結晶製造装置は、原料ロッドを回転可能及び昇降可能に支持する上軸と、前記上軸の下方に配置され、種結晶を回転可能及び昇降可能に支持する下軸と、前記原料ロッドを加熱する上述した本発明による誘導加熱コイルとを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、冷却水の流路内に整流部材を設置することで冷却水の流れが流路内の外周側に偏ることを防止することができ、これにより流路内の冷却水の澱みを解消することができる。したがって、流路内の温度上昇を抑制して冷却水の沸騰によるコイルの振動を抑制し、これによりパーティクルの落下による単結晶の有転位化を防止することができる。さらに、冷却水の澱みによるコイルの部分的な温度上昇で発生する熱歪みや流路内の酸化膜の付着も低減できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、流路内での冷却水の流れの偏りを抑制してコイルの振動現象及び酸化膜の付着によるコイル導体の劣化を防止することが可能な誘導加熱コイル及びこれを用いた単結晶製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態による単結晶製造装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施の形態による誘導加熱コイルの構成を示す略斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した誘導加熱コイルの内部構造を示す略平面断面図である。
【
図4】
図4は、
図2及び
図3に示した誘導加熱コイルの略側面断面図であって、
図4(a)は
図3のX-X'線に沿った側面断面図、
図4(b)は
図3のY-Y'線に沿った略側面断面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示した誘導加熱コイルの変形例を示す略平面断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施の形態による誘導加熱コイルの内部構造を示す略平面断面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示した誘導加熱コイルの略側面断面図であって、
図7(a)は
図6のX-X'線に沿った側面断面図、
図7(b)は
図6のY-Y'線に沿った略側面断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3の実施の形態による誘導加熱コイルの内部構造を示す略断面図であって、
図8(a)は略平面断面図、
図8(b)は
図8(a)のY-Y'線に沿った略側面断面図である。
【
図9】
図9は、従来の誘導加熱コイルの内部構造を示す略平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態による単結晶製造装置の構成を示す模式図である。
【0021】
図1に示すように、この単結晶製造装置1は、FZ法によりシリコン単結晶を育成するための装置であって、原料ロッド2、種結晶3及び種結晶3上に成長するシリコン単結晶4が収容される反応炉10と、原料ロッド2を回転可能及び昇降可能に支持する上軸11と、種結晶3及びシリコン単結晶4を回転可能及び昇降可能に支持する下軸12と、原料ロッド2の下端部を加熱する誘導加熱コイル20と、結晶成長が進んで大型化したシリコン単結晶4のテーパー部4aに当接してその重量を支える単結晶重量保持具14と、原料ロッド2とシリコン単結晶4との間の溶融帯5(シリコン融液)にドープガスを供給するガスドープ装置15とを備えている。
【0022】
原料ロッド2はモノシラン等のシリコン原料を精製して得られた高純度多結晶シリコンからなり、原料ロッド2の上端部は原料保持具16を介して上軸11の下端部に取り付けられている。種結晶3の下端部は種結晶保持具17を介して下軸12の上端部に取り付けられている。上軸11及び下軸12は、図示しない駆動機構によってそれぞれ回転及び昇降駆動される。
【0023】
誘導加熱コイル20は、原料ロッド2又は溶融帯5を取り囲む略1ターンの高周波コイルであり、図示しない高周波発振器に接続されている。誘導加熱コイル20は主に銅又は銀からなることが好ましい。誘導加熱コイル20に高周波電流を流すことにより、原料ロッド2の一部は誘導加熱されて溶融帯5が生成される。こうして生成された溶融帯5に種結晶3を融着させた後、原料ロッド2及びシリコン単結晶4を回転させながら下降させることにより、溶融帯5からシリコン単結晶4を成長させることができる。
【0024】
図2は、本発明の第1の実施の形態による誘導加熱コイル20の構成を示す略斜視図である。また
図3は、
図2に示した誘導加熱コイル20の内部構造を示す略平面断面図である。
図4は、
図2及び
図3に示した誘導加熱コイル20の略側面断面図であって、
図4(a)は
図3のX-X'線に沿った側面断面図、
図4(b)は
図3のY-Y'線に沿った略側面断面図である。
【0025】
図2~
図4に示すように、誘導加熱コイル20は、略扁平円環状のコイル導体からなるコイル本体21と、コイル本体21の中央に設けられた開口部22と、開口部22から外周端まで半径方向に延在するスリット23と、スリット23を挟んで互いに近接するコイル本体21の周方向の一端及び他端にそれぞれ設けられた一対の端子電極24A,24Bとを備えている。スリット23は周方向に近接する一対の端子電極24A,24Bの間に配置されており、一対の端子電極24A,24Bの接続位置を周方向に分断している。コイル本体21は一対の端子電極24A,24Bを介して高周波発振器に接続されている。通常、コイル本体21の外径は原料ロッド2及びシリコン単結晶4の直径(直胴部4bの直径)よりも大きく、コイル本体21の内径(開口部22の直径)は原料ロッド2及びシリコン単結晶4の直径よりも小さい。
【0026】
図3及び
図4に示すように、誘導加熱コイル20は水冷構造を有しており、コイル本体21の内部には円環状の冷却水の流路25が設けられている。流路25の入口25Aは、スリット23によって分断されたコイル本体21の周方向の一端側に設けられた一方の端子電極24Aの下面に設けられており、流路25の出口25Bは、コイル本体21の周方向の他端側に設けられた他方の端子電極24Bの下面に設けられている。
図3に示すように、入口25Aから流路25内に送り込まれた冷却水は、矢印で示すように環状の流路25を通ってコイル本体21の開口部22の周りを時計回りで周回して出口25Bから排出される。
【0027】
誘導加熱コイル20の冷却効果を高めるため、流路25の幅W0は、コイル本体21の機械的強度及び電気的特性を確保できる限りにおいてできるだけ広いことが好ましい。このように流路25の幅W0を広くすると、流路25の入口25A付近では幅方向全体に均等な流れが発生するが、出口25B側に近づくにつれて冷却水の流れの偏りが徐々に大きくなり、流路25の後半では冷却水の流れが外周側で強くなり、内周側で弱くなる。そのため、流路25の内周側では冷却水の澱みが大きくなり、冷却水の沸騰によるコイルの振動や流路内の酸化膜の付着の問題がある。
【0028】
このような冷却水の流れの偏りを防止するため、本実施形態では流路25の途中に整流部材26を設けている。整流部材26は、流路25の外周面から内周方向に突出する部材であり、コイル本体21と一体的に構成されている。整流部材26は流路25の外周側での冷却水の流れを内周側へ誘導する役割を果たす。整流部材26の幅W1は流路25の幅W0の0.2倍以上0.8倍以下であることが好ましく、0.3倍以上0.6倍以下であることが特に好ましい。
【0029】
本実施形態において、流路25の途中に設けた整流部材26の個数は一つであって、コイル中心を挟んでスリット23とは反対側の位置に設けられている。すなわち、コイル本体21の中心位置から見てスリット23がある方向を0°(基準方位)とし、入口25Aから出口25Bに向かって冷却水が流れる時計回りの方向を順方向とするとき、整流部材26はその方位角が180°の位置に設けられている。整流部材26の形成位置は冷却水の流れの偏りを抑制できる限りにおいて特に限定されず、160°以降の領域に設けられていればよく、160°から200°までの範囲内に設けられていることが好ましい。冷却水の流れの偏りは、160°以降の領域で大きくなる傾向があるからである。
【0030】
図9に示すように、流路25内に整流部材26がまったく設けられていない場合、冷却水の流れは流路25を進むにつれて徐々に変化し、流路25の後半では冷却水の流れが外周側で強くなり、内周側で非常に弱くなり、内周側で冷却水の澱みが大きくなる。冷却水の澱みが大きくなると冷却水が沸騰し、誘導加熱コイル20の振動が大きくなる。この振動は、誘導加熱コイル20に付着したパーティクルを落下させる原因となる。誘導加熱コイル20から落下して溶融帯5に取り込まれたパーティクルは単結晶の有転位化の原因となる。またコイル本体21の部分的な温度上昇により熱歪みや酸化膜25xの付着によるコイル導体の劣化の問題もある。
【0031】
しかし、
図3及び
図4に示すように流路25の途中に整流部材26を設けた場合には、外周側に偏って流れる冷却水を内周側に誘導することができるので、冷却水の流れの偏りを防止することができる。したがって、冷却水の沸騰によるコイルの振動を防止することができ、コイル本体21の上面に付着したパーティクルがコイル本体21から落下して溶融シリコンに取り込まれることによる単結晶の有転位化を防止することができる。また、コイルの熱変形及び流路25の内表面の熱酸化によるコイルの劣化を防止することができる。
【0032】
図5は、
図3に示した誘導加熱コイル20の変形例を示す略平面断面図である。
【0033】
図5に示すように、冷却水はコイル本体21内の流路25を反時計回りに流れてもよい。この場合、流路25の入口25Aは、スリット23の右側に位置する他方の端子電極24Bに設けられ、流路25の出口25Bはスリット23の左側に位置する一方の端子電極24Aに設けられる。このように、入口25Aから出口25Bに向かって冷却水が流れる方向(順方向)が反時計回りとなる場合、スリット23の位置を基準とした整流部材26の周方向の位置も反時計回りの方位角として定義される。すなわち、コイル本体21の中心位置から見てスリット23がある方向を0°(基準方位)とし、入口25Aから出口25Bに向かって冷却水が流れる反時計回りの方向を順方向とするとき、整流部材26の形成位置は160°以降の領域に設けられていればよく、160°から200°までの範囲内に設けられていることが好ましい。
【0034】
図6は、本発明の第2の実施の形態による誘導加熱コイル20の内部構造を示す略平面断面図である。また
図7は、
図6に示した誘導加熱コイル20の略側面断面図であって、
図7(a)は
図6のX-X'線に沿った側面断面図、
図7(b)は
図6のY-Y'線に沿った略側面断面図である。
【0035】
図6及び
図7に示すように、本実施形態による誘導加熱コイル20の特徴は、コイル本体21内の冷却水の流路25内に二つの整流部材26A,26Bが設けられている点にある。第1整流部材26Aは、第1の実施の形態と同様に180°の位置に設けられており、第2整流部材26Bは、第1整流部材26Aと流路25の出口25B(或いはスリット23の位置)との中間位置である270°の位置に設けられている。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0036】
上記のように、第1整流部材26Aの設置位置は180°の位置に限定されず、160°以降の領域に設けられていればよく、160°から200°までの範囲内に設けられていることが好ましい。また第2整流部材26Bの設置位置は第1整流部材26Aと流路25の出口25B(或いはスリット23の位置)との中間位置に限定されず、当該中間位置から少し離れた位置に設けられていてもよい。
【0037】
本実施形態において、第1整流部材26Aと第2整流部材26Bの形状および大きさは同じであるが、第2整流部材26Bの形状及び/又は大きさを第1整流部材26Aと異ならせてもよい。
【0038】
このように、本実施形態においては、流路25内に二つの整流部材26A,26Bを設けているので、冷却水の整流効果を高めることができる。したがって、冷却水の沸騰によるコイルの振動及び流路25の内表面の熱酸化によるコイルの劣化を防止することができる。
【0039】
図8は、本発明の第3の実施の形態による誘導加熱コイル20の内部構造を示す略断面図であって、
図8(a)は略平面断面図、
図8(b)は
図8(a)のY-Y'線に沿った略側面断面図である。
【0040】
図8(a)及び(b)に示すように、本実施形態による誘導加熱コイル20の特徴は、整流部材26が複数の小さな突起部で構成されている点にある。複数の突起部は、流路25の外周側領域を完全に遮断しないので、冷却水は流路25の外周側領域にも流れるが、整流部材26が冷却水の流れに対する抵抗となるので、外周側での冷却水の強い流れを抑えることができ、また冷却水の流れを内周側に誘導することができる。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0042】
例えば、上記実施形態においては流路25内に一つ又は二つの整流部材を用いているが、本発明において整流部材の個数は特に限定されず、三つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 単結晶製造装置
2 原料ロッド
3 種結晶
4 シリコン単結晶
4a シリコン単結晶のテーパー部
4b シリコン単結晶の直胴部
5 溶融帯
10 反応炉
11 上軸
12 下軸
14 単結晶重量保持具
15 ガスドープ装置
16 原料保持具
17 種結晶保持具
20 誘導加熱コイル
21 コイル本体
22 開口部
23 スリット
24 スリット
24A 端子電極
24B 端子電極
25 流路
25A 流路の入口
25B 流路の出口
26,26A,26B 整流部材