(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101914
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20220630BHJP
B65D 1/42 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B65D1/02 221
B65D1/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216297
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 大彌
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】金坂 直之
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA01
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA18
3E033CA02
3E033CA05
3E033DA04
3E033DC03
3E033EA05
3E033FA03
3E033GA02
(57)【要約】
【課題】角張って凸状をなすよう外側に膨らむ部分を胴部に有する樹脂製容器について、樹脂製容器内に陰圧が生じても当該部分のへこみを抑制できる樹脂製容器を提供する。
【解決手段】樹脂製容器1は、底部10の外周縁から立ち上がる中空の胴部11内に内容物を収容するものであって、胴部11は、外側に凸状をなして膨らむ膨出部を正面部110に含み、膨出部は、上下方向に延びる複数のパネル部1100が左右方向に隣り合うパネル部1100との境界が角張るようにつなげられて形成されており、複数のパネル部1100は、隣り合うパネル部1100の境界に当該境界に沿って上下方向に延びる凹状の溝1101が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部の外周縁から立ち上がる中空の胴部内に内容物を収容する樹脂製容器であって、
前記胴部は、外側に凸状をなして膨らむ膨出部を少なくとも周方向の一部に含み、
前記膨出部は、上下方向に延びる複数のパネル部が左右方向に隣り合うパネル部との境界が角張るようにつなげられて形成されており、
前記複数のパネル部は、隣り合うパネル部の境界に当該境界に沿って上下方向に延びる凹状の溝が設けられている、樹脂製容器。
【請求項2】
前記溝は、底が丸みを帯びた形状を呈する、請求項1に記載の樹脂製容器。
【請求項3】
前記溝は、上下方向の両端から中央に向かって横幅が次第に拡がる、請求項1又は2に記載の樹脂製容器。
【請求項4】
前記胴部は、正面部、背面部及び左右の側面部を含み、正背面視の横幅よりも側面視の横幅が小さい扁平状に形成されており、
前記膨出部は、前記正面部を構成する、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲料、薬剤、化粧品等の内容物を収容する容器として樹脂製のものが多用されている。例えば、芳香剤や消臭剤等の液状薬剤を揮散する薬剤揮散器において、液状薬剤を収容するために樹脂製容器が用いられている。樹脂製容器の製造に当たっては、コストダウンや環境問題のため、厚みを薄くすることにより容器あたりの樹脂使用量の低減が行われている。
【0003】
ここで、樹脂製容器の胴部(底部の外周縁から立ち上がる内容物の収容空間を区画する部分)を薄肉化すると、胴部の機械的強度が低下する。そのため、樹脂製容器内に陰圧が生じると胴部がへこんだり、さらに胴部のへこみに追随して樹脂製容器全体を被覆する外装フィルムもへこんだり歪んだりして、樹脂製容器のデザイン性が損なわれる。この胴部のへこみは、胴部において外側に凸状をなして膨らむように形成されかつ横幅の大きい部分に顕著に生じ、当該部分は正背面に対して左右の側面の幅が小さい扁平状の樹脂製容器の正面側に多く見られる。胴部の正面側の部分(正面部)は、店頭陳列時に購買者に特に目に付く部分であるため、正面部にへこみが生じると樹脂製容器のデザイン性に多大な悪影響を与える。
【0004】
そこで、胴部の凹みが生じやすい正面部に補強リブを設けることで、胴部の機械的強度を高める技術が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、胴部の正面部が全体的に滑らかに湾曲して凸状をなすよう外側に膨らむ樹脂製容器について、その機械的強度を高めるための技術である。この種の樹脂製容器は、デザインに応じて様々な形状に形成され、例えば胴部の正面部が全体的に角張って凸状をなすよう外側に膨らむ形状をなす樹脂製容器について、特許文献1に記載の補強リブを適用しても、胴部の機械的強度を十分に高めることができない。
【0007】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、全体的に角張って凸状をなすよう外側に膨らむ部分を胴部に有する樹脂製容器について、樹脂製容器内に陰圧が生じても当該部分のへこみを抑制できる樹脂製容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、底部の外周縁から立ち上がる中空の胴部内に内容物を収容する樹脂製容器に関する。本発明の樹脂製容器は、前記胴部は、外側に凸状をなして膨らむ膨出部を少なくとも周方向の一部に含み、前記膨出部は、上下方向に延びる複数のパネル部が左右方向に隣り合うパネル部との境界が角張るようにつなげられて形成されており、前記複数のパネル部は、隣り合うパネル部の境界に当該境界に沿って上下方向に延びる凹状の溝が設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の樹脂製容器において好ましくは、前記溝は、横断面視形状がU字形状である、ことを特徴とするように構成することができる。
【0010】
また、本発明の樹脂製容器において好ましくは、前記溝は、上下方向の両端から中央に向かって横幅が次第に拡がる、ことを特徴とするように構成することができる。
【0011】
また、本発明の樹脂製容器において好ましくは、前記胴部は、正面部、背面部及び左右の側面部を含み、正背面視の横幅よりも側面視の横幅が小さい扁平状に形成されており、前記膨出部は、前記正面部を構成する、ことを特徴とするように構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、全体的に角張って凸状をなすよう外側に膨らむ部分を胴部に有する樹脂製容器について、樹脂製容器内に陰圧が生じても当該部分のへこみを抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図5】本実施形態の樹脂製容器の平面側から視た横断面図(
図1のX1-X1断面図)である。
【
図6】本実施形態の樹脂製容器の正面側から視た縦断面図(
図2のX2-X2断面図)である。
【
図7】本実施形態の樹脂製容器の側面側から視た縦断面図(
図2のX3-X3断面図)である。
【
図8】本実施形態の樹脂製容器(キャップ付き)及びカバーの斜視図である。
【
図9】本実施形態の樹脂製容器にカバーを装着した状態の正面側から視た縦断面図である。
【
図10】本実施形態の樹脂製容器にカバーを装着した状態の側面側から視た縦断面図である。
【
図11】本実施形態の樹脂製容器を用いた薬剤揮散器(カバーは非装着)の使用状態を示す正面図(樹脂製容器は正面側から視た縦断面図)である。
【
図12】
図8のカバーの正面側から視た縦断面図である。
【
図13】
図8のカバーの側面側から視た縦断面図である。
【
図14】
図8のカバーの第一凸部及び第二凸部をそれぞれ拡大して示す部分縦断面図である。
【
図15】
図8のカバーの一部(第二凸部)を拡大して示す底面側から視た部分横断面図である。
【
図16】本実施形態の樹脂製容器にカバーを装着する際の第一凸部及び第二凸部が第一凹部及び第二凹部にそれぞれ入り込む様子を説明する部分縦断面図である。
【
図17】本実施形態の樹脂製容器にカバーを装着する際の第一凸部及び第二凸部が第一凹部及び第二凹部にそれぞれ入り込む様子を説明する部分縦断面図である。
【
図18】本実施形態の樹脂製容器について、(A)はカバーを装着しさらに外装フィルムで包装した状態の正面図であり、(B)は外装フィルムのカバーを覆う部分をカバーから剥がす様子を示す正面図である。
【
図19】本実施形態の樹脂製容器について、カバーを装着しさらに外装フィルムで包装した状態で二つ並べた場合の側面図である。
【
図20】従来技術の樹脂製容器について、カバーを装着しさらに外装フィルムで包装した状態で二つ並べた場合の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
樹脂製容器の概要
本発明の樹脂製容器は、飲料、薬剤、化粧品等の内容物を収容する容器として使用され、例えば薬剤揮散器の薬剤容器として使用される。薬剤揮散器は、薬剤容器、吸液芯材、キャップ及びカバーを備え、芳香剤や消臭剤等の液状薬剤を収容した薬剤容器内に吸液芯材を挿入し、吸液芯材の毛細管現象により薬液を吸い上げて薬液の薬剤成分を外部空間に揮散させる構成のものを例示することができる。なお、本発明の樹脂製容器の上述の使用目的はあくまでも一例である。
【0015】
以下、本発明の樹脂製容器の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1~
図7は、本実施形態の樹脂製容器1を示し、
図8~
図10は、本実施形態の樹脂製容器1にカバーを装着した状態を示し、
図11は、本実施形態の樹脂製容器1を薬剤揮散器に用いた例の使用状態(カバー非装着)を示す。なお、本開示では、自立する樹脂製容器1の高さ方向を上下方向、
図1に示す樹脂製容器1の正面から見た横幅方向を左右方向、
図4に示す樹脂製容器1の側面から見た横幅方向(
図1に示す樹脂製容器1の正面から見た奥行き方向)を前後方向、とする。
【0016】
樹脂製容器の全体構成の説明
樹脂製容器1は、
図1~
図7に示すように、上端に開口を有するとともに中空かつ有底の容器である。樹脂製容器1は、好ましくは一部又は全体が透明又は半透明であり、これにより外部から内容物の残量を確認することができる。樹脂製容器1の素材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の弾性変形可能な合成樹脂材料で形成することができる。樹脂製容器1は、公知のブロー成形で製造することができ、例えばインジェクションブロー成形、すなわち、プリフォームをインジェクション成形法により製造した後、このプリフォ-ムを樹脂製容器1の外形に対応した成形面を有する金型に挿入し、延伸ブロー成形法によりプリフォームを膨らませる成形法を用いることができる。樹脂製容器1の厚みは、特に限定されないが、例えば0.2mm以上2mm以下とすることができる。
【0017】
樹脂製容器1は、底部10と、底部10の外周縁から立ち上がる中空の胴部11と、胴部11と対向するよう胴部11の上端に連なる肩部12と、肩部12の中央に上方に延びるように連なる筒状の口部13とを含む。底部10上の胴部11により囲まれた空間が内容物の収容空間である。
【0018】
口部の説明
樹脂製容器1の口部13は、
図1~
図7に示すように、特に限定されないが円筒状を呈し、内壁面及び外壁面の横断面視形状は円形状である。なお、本開示において横断面視形状とは、水平方向に沿った断面の形状である。また、縦断面視形状とは、鉛直方向に沿った断面の形状である。
【0019】
口部13は、上下両端が開口しており、上端の開口130が内容物の注出入口であり、下端の開口が肩部12及び胴部11との連通口である。口部13には、上端の開口130を塞ぐことができるキャップ2が取り外し可能に装着される。口部13の外壁面の上部には、雄ねじ(図示せず)が設けられる。この雄ねじは、キャップ2(
図8及び
図9に示す)の雌ねじ(図示せず)と螺合し、これにより、口部13に装着したキャップ2を口部13から容易に外れないよう両者を連結可能である。なお、口部13にキャップ2を装着して両者を連結する手段は特に限定されず、その他の種々の公知の手段を用いることができる。また、口部13に雄ねじ等の連結手段を設けず、単にキャップ2内に口部13を嵌め込むだけでもよい。
【0020】
口部13に装着されるキャップ2は、
図8及び
図11に示すように、平面視円形状の天面部20と、上面部の外周縁から垂下する周面部21とを含む。キャップ2は、特に限定されないが、弾性変形可能な合成樹脂材料で形成される。周面部21は、樹脂製容器1の口部13を内側に入れ込むことが可能であり、周面部21の内壁面の下部には、口部13の外壁面に設けられた雄ねじ(図示せず)と螺合する雌ねじ(図示せず)が設けられる。天面部20の下面には、下方に突き出る突起22が設けられる。
【0021】
樹脂製容器1の口部13の説明に戻って、
図1~
図7に示すように、口部13の外壁面の下部には、一対の括れ部131が設けられている。一対の括れ部131は、口部13の一部を内側に凹状にへこませることで形成される。一対の括れ部131は互いに向き合うように配置される。一対の括れ部131により、口部13の内部空間が狭められており、一対の括れ部131の間には平面視矩形状の空隙132が形成される。
【0022】
ここで、樹脂製容器1を薬剤揮散器の薬剤容器に使用する場合、空隙132から吸液芯材3が樹脂製容器1内に挿入される。樹脂製容器1内に挿入された吸液芯材3は、
図11に示すように、上端側の一部分が樹脂製容器1から上方に突き出るように引き上げられることで、樹脂製容器1内の内容物(液状薬剤)を毛細管現象により吸い上げて外部空間に揮散する。このとき、空隙132の横断面視形状が吸液芯材3の横断面視形状よりも小さいことにより、一対の括れ部131により吸液芯材3が押圧されながら吸液芯材3は一対の括れ部131により挟持される。これにより、吸液芯材3は引き上げられた状態で保持される。
【0023】
吸液芯材3は、特に限定されないが細長い帯状を呈する。吸液芯材3の素材は、毛細管現象により樹脂製容器1内の液状薬剤を吸い上げることができ、かつ、吸い上げた液状薬剤を外部空間に揮散させることができる限り、特に限定されない。例えばナイロン、レーヨン、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリエチレン、パルプ等の種々の繊維質材料を吸液芯材3の素材として挙げることができ、これらの材料は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。吸液芯材3は、特に限定されないが、エアレイド法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、スパンレース法等によって製造される不織布が好適である。
【0024】
吸液芯材3は、特に限定されないが、
図11に示すように、長さ方向の一部分が引き上げ部材4に巻き付けられることで引き上げ部材4に装着され、引き上げ部材4に装着された状態で樹脂製容器1内に挿入される。吸液芯材3の長さ方向の他部分は引き上げ部材4から垂れ下がり、その下端が樹脂製容器1の底部10上に当接している。
【0025】
引き上げ部材4は、樹脂製容器1の口部13の空隙132から樹脂製容器1内へと挿入され、口部13に上下方向にスライド移動可能に装着される。引き上げ部材4の上方へのスライド移動により、樹脂製容器1内から吸液芯材3が引き上げられる。引き上げ部材4は、特に限定されないが、弾性変形可能な合成樹脂材料で形成される。引き上げ部材4は、キャップ2の天面部20に回転可能かつ着脱可能に連結され、キャップ2に吊り下げ状態で保持される。
【0026】
引き上げ部材4は、
図11に示すように、上辺部40及び一対の側辺部41を有する正面視矩形状の枠材である。一対の側辺部41は上辺部40の両端から下方に延びる。上辺部40の下方には、一対の側辺部41の間を上辺部40と平行に延びる上下一対の梁部(図示せず)が設けられ、上下一対の梁部に吸液芯材3が巻き付けられる。
【0027】
上辺部40の長さ、つまり一対の側辺部41の間の長さは、樹脂製容器1の口部13の内径よりもやや小さく、これにより、引き上げ部材4は、口部13の空隙132から樹脂製容器1内に挿入される。上辺部40には、キャップ2の天面部20から下方に突き出る突起22が回転自在に嵌まる環状の嵌合部42が設けられ、これにより、引き上げ部材4はキャップ2に対して回転可能かつ着脱可能である。
【0028】
一対の側辺部41の下端には、外側に突き出る係合爪43が設けられる。各係合爪43は、引き上げ部材4を上方へスライド移動させた際に、後述する樹脂製容器1の肩部12の対応する隆起部123に係合し、引き上げ部材4がそれ以上、上方にスライド移動するのを規制する。
【0029】
肩部の説明
樹脂製容器1の肩部12は、
図1~
図7に示すように、平面視形状が口部13よりも一回り大きいとともに胴部11よりも一回り小さく、胴部11との間に段差を有する。肩部12は、特に限定されないが多角形状(本実施形態では十二角形状)を呈しており、口部13の下端に連なる上段面部120と、上段面部120の外周縁から下方に延びるように連なる側面部121と、側面部121の下端と胴部11の上端を連結する水平かつ平坦な下段面部122とを含む。
【0030】
上段面部120は、特に限定されないが、口部13から側面部121に向かう方向に低く傾斜している。上段面部130には、口部13の周囲に、周方向に間隔をあけて複数の隆起部123が設けられる。複数の隆起部123は、好ましくは等しい間隔をあけて配置され、本実施形態では2つの隆起部123が180度おきに配置される。隆起部123は、上段面部121の一部を凸状に盛り上がらせることで形成され、上段面部121の他の部分よりも一段高く位置する。隆起部123は、上面部分が口部13から径方向に沿って離れる向きの長さ(横幅)よりも口部13の周方向に沿う長さ(奥行き)が大きい平面視略長方形状を呈し、口部13の下端に水平かつ平坦に連なる。隆起部123は、
図11に示すように、上述の樹脂製容器1内に挿入した引き上げ部材4を上方へスライド移動させた際に、引き上げ部材4の対応する係合爪43を上面部分にて引っ掛けてとめることが可能であり、引き上げ部材4が樹脂製容器1から抜け出るのを抑制する。
【0031】
なお、上段面部120に複数の隆起部123を設けず、樹脂製容器1内に挿入した引き上げ部材4を上方へスライド移動させた際に、引き上げ部材4の複数の係合爪43を上段面部120に係合させてもよい。ただし、この場合には、上段面部120が側面部121の方に低く傾斜しているので、引き上げ部材4の複数の係合爪43は上段面部120に係合した際に内側に変位しやすくなり、上段面部120との係合が外れやすくなる。これに対して、上段面部120に水平かつ平坦な上面部分を含む隆起部123を設けることで、引き上げ部材4の複数の係合爪43が対応する隆起部123に係合した際に内側に変位しにくくなり、上段面部120との係合を強固にすることができる。
【0032】
側面部121は、特に限定されないが、
図1~
図7に示すように、上段面部120に連なる上端よりも下段面部122に連なる下端の方が外側に位置するよう裾広がり状に傾斜している。側面部121と上段面部120の角には、周方向に間隔をあけて複数の張出部124が設けられる。複数の張出部124は、好ましくは等しい間隔をあけて配置され、本実施形態では4つの張出部124が90度おきに配置される。張出部124は、上段面部120の一部を凸状に盛り上がらせるとともに、側面部121の一部を外側に凸状に張り出させることで形成され、上段面部120から水平かつ平坦に外側に突き出る平面視矩形状の水平部分と、当該水平部分の先端から垂下する正面視矩形状の鉛直部分とを含み、側面視は略直角三角形状を呈する。
【0033】
肩部12の上段面部120及び側面部121は、角が鈍角をなしている。そのため、樹脂製容器1を床等に落とす等して上段面部120及び側面部121の角に衝撃が加わると、角が容易にへこんで樹脂製容器1が損傷するおそれがある。これに対して、上段面部120及び側面部121の角に複数の張出部124を設けることで、張出部124の角は直角であり衝撃に強いうえ、樹脂製容器1を床等に落とす等しても複数の張出部124に衝撃が加わることで張出部124はへこみにくく、上段面部120及び側面部121の角もへこまないために、樹脂製容器1が損傷するのを抑制することができる。
【0034】
側面部121の下端には、周方向に間隔をあけて複数の凹部125が設けられる。複数の凹部125は、好ましくは等しい間隔をあけて配置され、本実施形態では4つの凹部125が90度おきに配置されており、4つの張出部124の直下に位置している。凹部125は、側面部121の一部を内側に凹状にへこませることで形成される。凹部125は、特に限定されないが、周方向に長く延びる細長い形状(横長形状)を呈する。
【0035】
樹脂製容器1を薬剤揮散器の薬剤容器に使用する場合、樹脂製容器1にはカバー5が任意に装着される。樹脂製容器1の複数の凹部125は、カバー5に設けられた複数(本実施形態では4つ)の凸部52(
図12及び
図13に示す)が入り込むことが可能である。
図16及び
図17に示すように、詳細は後述するが、凹部125に入り込んだ凸部52を凹部125が引っ掛けてとめることにより、樹脂製容器1に装着されたカバー5が樹脂製容器1から容易に外れないよう両者を連結可能である。
【0036】
樹脂製容器1の複数の凹部125は、
図6~
図8に示すように、それぞれに入り込むカバー5の凸部52の高さ位置や縦幅(上下方向の長さ)に応じてその縦幅(上下方向の長さ、具体的には下段面部122の上面から上方に延びる長さ)が異なっている。本実施形態では、4つの凹部125のうち、樹脂製容器1の正面側及び背面側に位置する一対の凹部125(以下、「第一凹部125A」とも称する)の方が、樹脂製容器1の左右の側面側に位置する一対の凹部125(以下、「第二凹部125B」とも称する。)よりも、縦幅が大きい。
【0037】
ここで、カバー5は、
図8~
図10、
図12及び
図13に示すように、薬剤揮散器のデザイン的な観点から吸液芯材3の樹脂製容器1から突き出る部分を外部から視認し難くするため、樹脂製容器1に任意に装着される。カバー5には複数の揮散孔53が形成されており、カバー5を樹脂製容器1に装着した状態では、吸液芯材3から揮散した液状薬剤の薬剤成分はカバー5のそれぞれの揮散孔53を通過して外部空間に放出される。
【0038】
カバー5は、特に限定されないが、弾性変形可能な合成樹脂材料で形成され、天面部50と、天面部50の外周縁から垂下する周面部51とを含む。天面部50及び/又は周面部51には、吸液芯材3により吸い上げられて揮散する液状薬剤の薬剤成分を外部空間に放出するための複数の揮散孔53が形成される。
【0039】
周面部51は、樹脂製容器1の肩部12を内側に嵌め込むことが可能であり、肩部12は周面部51内に嵌め込まれる。周面部51の内周面の下端には内側に突き出る複数の凸部52が周方向に間隔をあけて設けられる。複数の凸部52は、好ましくは等しい間隔をあけて配置され、本実施形態では4つの凸部52が90度おきに配置される。凸部52は、樹脂製容器1の肩部12の対応する凹部125に係合可能である。凸部52は、特に限定されないが、周方向に長く延びる細長い形状(横長形状)を呈する。
【0040】
複数の凸部52は、
図12~
図14に示すように、周面部51の上下方向において少なくも二つの異なる高さ位置に分かれて設けられている。つまり、複数の凸部52には、周面部51の下端からの高さが最も高い位置H1にある凸部(最上位の高さ位置に設けられた凸部)52と、周面部51の下端からの高さが最も低い位置H2にある凸部(最下位の高さ位置に設けられた凸部)52とが少なくとも存在している。本開示では、最上位の高さ位置H1に設けられた凸部52を第一凸部52Aと称し、最下位の高さ位置H2に設けられた凸部52を第二凸部52Bと称する。本実施形態では、4つの凸部52のうち、樹脂製容器1の正面側及び背面側に位置する凹部125(縦幅の大きな第一凹部125A)に入り込む凸部52が第一凸部52Aであり、樹脂製容器1の左右の側面側に位置する凹部125(縦幅の小さな第二凹部125B)に入り込む凸部52が第二凸部52Bであり、第二凸部52Bよりも第一凸部52Aの方が上方に位置する。なお、本実施形態では、複数の凸部52は、第一凸部52A及び第二凸部52Bの二種類であるが、第一凸部52A及び第二凸部52Bの間の異なる高さ位置に他の凸部52が存在していてもよい。
【0041】
また、複数の凸部52は、縦幅(上下方向の長さ)が異なる複種に分けられている。つまり、縦幅が最も大きい凸部52と、縦幅が最も小さい凸部52とが少なくとも存在している。本実施形態では、4つの凸部52のうち、第一凸部52Aの縦幅D1が最も大きく、第二凸部52Bの縦幅D2が最も小さく、第二凸部52Bよりも第一凸部52Aの方が縦幅が大きい。なお、本実施形態では、複数の凸部52は、縦幅が最も大きい凸部52(第一凸部52A)と縦幅が最も小さい凸部52(第二凸部52B)との二種類であるが、その間の異なる縦幅を有する他の凸部52が存在していてもよい。
【0042】
図16及び
図17に示すように、カバー5を樹脂製容器1に装着するためにカバー5を樹脂製容器1に対して真上から近付けると、カバー5の複数の凸部52は、まず、最下位の高さ位置に設けられた第二凸部52Bが樹脂製容器1の肩部12(本実施形態では張出部124)に突き当たってこれを乗り越える(
図16(A))。その後、最上位の高さ位置に設けられた第一凸部52Aが樹脂製容器1の肩部12(本実施形態では張出部124)に突き当たってこれを乗り越える(
図16(B))。そして、最下位の高さ位置に設けられた第二凸部52Bが樹脂製容器1の対応する凹部125(第二凹部125B)に入り込んだ後(
図17(C))、最上位の高さ位置に設けられた第一凸部52Aが樹脂製容器1の対応する凹部125(第一凹部125A)に入り込んで当該凹部125(第一凹部125A)と最終的に係合する(
図17D)。これにより、樹脂製容器1に装着したカバー5を樹脂製容器1から容易に取り外せないように樹脂製容器1に固定できる。
【0043】
また、カバー5を樹脂製容器1から取り外すためにカバー5を樹脂製容器1から真上に引き離すと、図示は省略するが、カバー5の複数の凸部52は、まず、最上位の高さ位置に設けられた第一凸部52Aが樹脂製容器1の対応する凹部125(第一凹部125A)から抜け出て、その後、最下位の高さ位置に設けられた第二凸部52Bが樹脂製容器1の対応する凹部125(第二凹部125B)から抜け出て最終的に係合が解除される。これにより、樹脂製容器1からカバー5を取り外すことができる。
【0044】
ここで、カバー5に設けられた複数の凸部52が全て同じ高さに配置されていると、カバー5を樹脂製容器1に装着する際にカバー5の全ての凸部52を樹脂製容器1の全ての凹部125に一斉に入り込ませて係合させる必要があるので、カバー5を樹脂製容器1に装着しにくい。また、カバー5を樹脂製容器1から取り外す際にも、カバー5の全ての凸部52を樹脂製容器1の全ての凹部125から一斉に抜け出させて係合を解除する必要があるので、カバー5を樹脂製容器1から取り外しにくい。
【0045】
これに対して、本実施形態では、複数の凸部52は、周面部51の上下方向において少なくとも二つの異なる高さ位置に分かれてカバー5に設けられており、カバー5を樹脂製容器1に装着する際には、カバー5に設けられた全ての凸部52を樹脂製容器1の全ての凹部125に一斉に入り込ませて係合させず、まずは、最も下方に位置する凸部52(第二凸部52B)をガイドとして対応する凹部125(第二凹部125B)に入り込ませた後、最も上方に位置する凸部52(第一凸部52A)を対応する凹部125(第一凹部125A)に入り込ませて最終的に係合させるので、樹脂製容器1にカバー5を装着しやすくすることができる。また、カバー5を樹脂製容器1から取り外す際も、カバー5の全ての凸部52を樹脂製容器1の全ての凹部125から一斉に抜け出させて係合を解除させず、最も上方に位置する凸部52(第一凸部52A)を先に対応する凹部125(第一凹部125A)から抜け出させて、その後に最も下方に位置する凸部52(第二凸部52B)を対応する凹部125(第二凹部125B)から抜け出させて最終的に係合を解除するので、樹脂製容器1からカバー5を取り外しやすくすることができる。
【0046】
加えて、本実施形態では、最終的に係合する第一凸部52Aは縦幅が大きく、対応する凹部125(第一凹部125A)に強く係合して当該凹部125(第一凹部125A)から抜け出しにくくなっている。そのため、カバー5を樹脂製容器1に装着した際にカバー5を樹脂製容器1に対して強固に固定でき、例えばカバー5を把持して樹脂製容器1を持ち上げたときにカバー5から樹脂製容器1が脱落するのを抑制することができる。
【0047】
カバー5は、上述の通り、最上位の高さ位置に設けられた第一凸部52Aが対応する第一凹部125Aに入り込んで係合することで、樹脂製容器1に固定される。そのため、カバー5は、最上位の高さ位置に設けられた第一凸部52Aを複数備えることが好ましく、複数の第一凸部52Aが等しい間隔をあけて配置されることがより好ましい。本実施形態では、一対の第一凸部52Aが対向して(180度おきに)配置されている。
【0048】
また、第一凸部52Aは、
図12に示すように、好ましくは横幅方向の中央部分520が両端部分よりも内側に大きく突き出ている。第一凸部52Aの中央部分520についてカバー5の周面部51の内壁面からの突出長さが長く形成されていることにより、カバー5を樹脂製容器1に装着した際に、第一凸部52Aはこの中央部分において樹脂製容器1の対応する凹部125(第一凹部125A)に対して深く入り込んで、当該凹部125(第一凹部125A)に強く係合する。そのため、カバー5を樹脂製容器1に対して強固に固定できる。なお、第一凸部52Aは、必ずしも横幅方向の中央部分520が両端部分よりも内側に大きく突き出ている必要はない。
【0049】
カバー5は、最下位の高さ位置に設けられた第二凸部52がガイドとして機能することで、カバー5を樹脂製容器1に対して装着しやすくすることができる。そのため、カバー5は、最下位の高さ位置に設けられた第二凸部52Bを複数備えることが好ましく、複数の第二凸部52Bが等しい間隔をあけて配置されることがより好ましい。これにより、カバー5を樹脂製容器1にがたつくことなく装着することができる。本実施形態では、一対の第二凸部52Bが対向して(180度おきに)配置されている。なお、樹脂製容器1の複数の凹部125は、上述の通りにそれぞれに入り込むカバー5の対応する凸部52の高さ位置・縦幅に応じてその縦幅が設定される。
【0050】
また、第二凸部52Bは、
図13及び
図15に示すように、好ましくは横幅方向の中央部分に切欠部521が設けられており、左右二つの部分に分断されている。第二凸部52Bが左右二つの部分に分断されていることにより、カバー5を樹脂製容器1に装着する際及びカバー5を樹脂製容器1から取り外す際に、カバー5の第二凹部52Bはスムーズに樹脂製容器1の対応する凹部125(第二凹部125B)に入り込んだり、対応する凹部125(第二凹部125B)から抜け出るようになる。そのため、樹脂製容器1に対してカバー5を着脱するのを容易にすることができる。なお、第二凸部52Bは、必ずしも横幅方向の中央部分に切欠部521を設ける必要はない。
【0051】
カバー5の天面部50や周面部51には、吸液芯材3により吸い上げられて揮散する液状薬剤の薬剤成分を外部空間に放出するための複数の揮散孔53が形成される。
【0052】
樹脂製容器1の肩部12の説明に戻って、
図1~
図7に示すように、下段面部122は、側面部121の下端から外側に水平かつ平坦に延びて胴部11の上端と連なる。下段面部122は、
図9及び
図10に示すように、樹脂製容器1にカバー5を装着した際に、カバー5の周面部51の下端が突き当たる。カバー5の周面部51は、樹脂製容器1の胴部11との境界(周面部51の下端)において、周方向の全周にわたって胴部11との間に段差がなく、すなわち、周面部51の下端の底面視の輪郭と胴部11の上端の平面視の輪郭が一致又はほぼ一致していて、外壁面同士がほぼフラットに連なっている。
【0053】
なお、周面部51は、必ずしも周方向の全周にわたって胴部11との間に段差がない必要はなく、胴部11との境界(周面部51の下端)において胴部11との間に多少の段差があってもよく、周面部51の外壁面が胴部11の外壁面より内側に位置していてもよいし外側に位置していてもよい。
【0054】
胴部の説明
樹脂製容器1の胴部11は、
図1~
図7に示すように、対向する正面部110及び背面部111と、対向する左右の側面部112,113とを含む。また、胴部11は、正面部110及び左右の側面部112,113の間に位置する正面側の一対の連結部114と、背面部111及び左右の側面部112,113の間に位置する背面側の一対の連結部115とをさらに含む。胴部11は、底部10及び肩部12の間で、正面部110、連結部114、側面部112、連結部115、背面部111、連結部115、側面部113及び連結部114を順に周方向に筒状につなげて形成されている。
【0055】
胴部11は、好ましくは正背面視の横幅(左右方向の長さ)に対して側面視の横幅(前後方向の長さ)が短い扁平形状を呈する。これにより、樹脂製容器1を把持しやすく、また、樹脂製容器1のデザイン性を向上できるうえ、正面部110及び背面部111に外装フィルム6(
図18に示す)の大きな表示面積を確保することが可能である。また、胴部11の高さ(上下方向の長さ)は、好ましくは正背面視の横幅よりも短い。これにより、樹脂製容器1の高さが低くなるため、樹脂製容器1の高さが高い場合と比べて、容器内部に陰圧が生じた場合に樹脂製容器1の凹みを抑制することが可能である。胴部11の高さとしては、好ましくは正背面視の横幅の2倍以内である。
【0056】
正面部110は、左右方向に並設された複数のパネル部1100により構成される。本実施形態では、三つのパネル部1100により正面部110が構成される。パネル部1100は、特に限定されないが、上下方向に長い正面視長方形状を呈する。複数のパネル部1100は、隣り合うパネル部1100との境界が角張るようにつなげられている。つまり、正面部110は、横断面視において、隣り合うパネル部1100が鈍角を作るようにV字状につながれていて、全体的に多角に折れ曲がった形状を呈する。これにより、正面部110には、左右方向に隣り合うパネル部1100の境界に上下方向に延びる稜線(角)が存在している。正面部110の横断面視において隣り合うパネル部1100が作る鈍角は、必ずしも先が尖っている必要はなく、先が丸みを帯びていてもよい。このように、正面部110は、上下方向に延びる複数のパネル部1100が左右方向に隣り合うパネル部と1100の境界が角張るようにつなげられて形成されていることにより、外側に凸状をなして膨らむ膨出部とされている。パネル部110は、側面側からの縦断面視において、肩部12から底部10に向かって鉛直に真っ直ぐ延びており、パネル部110は平坦面に形成されている。なお、パネル部110は、前記縦断面視において、例えば肩部12から底部10に向かって外側に凸状をなして湾曲していてもよく、パネル部110は凸曲面に形成されていてもよい。
【0057】
正面部110には、隣り合うパネル部1100の境界に当該境界に沿って上下方向に延びる凹状の溝1101が設けられている。溝1101は、胴部11の一部を内側に凹状にへこませることで形成される。溝1101の横断面視形状は、特に限定されず、V字状やコ字状等の底が角張った形状であってもよいが、好ましくはU字状や半円状等の底が丸みを帯びた形状を呈する。
【0058】
樹脂製容器1をインジェクションブロー成形により製造するには、まず、インジェクション成形によりプリフォームを製造するが、この際にプリフォームを複数の樹脂層を積層して成形した場合、溝1101の横断面視形状がV字状等の底が角張った形状であると、溝1101の部分で積層された樹脂層の間に隙間ができやすい。そのため、プリフォームを金型から取り出す際に、一部の樹脂層が剥がれてしまうおそれがあるが、溝1101の横断面視形状がU字状等の底が丸みを帯びた形状であると、溝1101の部分で積層された樹脂層の間に隙間ができにくいため、プリフォームを金型から取り出す際に、一部の樹脂層が剥がれてしまうのを抑制することができる。
【0059】
正面部110に左右方向に間隔をあけて複数の溝1101が存在することにより、二つの溝1101によってパネル部1100が挟まれるので、パネル部1100は柱状のリブとなってその機械的強度が高められる。胴部11において正面部110は特に表面積の大きい部分であり、さらに外側に凸状をなして膨らんでいることで、パネル部1100は機械的強度が低く、樹脂製容器1内に陰圧が生じるとパネル部1100が非常にへこみやすい。そのため、正面部110において機械的強度の高い部分である隣り合うパネル部1100の境界(角)に溝1101を設けることで、正面部110の機械的強度を全体的に高めることができる。なお、左右方向の両端のパネル部1100については、隣り合う連結部114との境界(角)に当該境界に沿って上下方向に延びる溝1101が設けられており、当該パネル部1100についても二つの溝1101によって挟まれてその機械的強度が高められている。
【0060】
溝1101の深さは、特に限定されないが、当該深さが大きいとパネル部1100の機械的強度を良好に向上できる一方、当該深さが大きすぎると樹脂製容器1の成型が難しくなるため、好ましくは1mm以上10mm以下であり、より好ましくは2mm以上4mm以下である。
【0061】
溝1101の長さ(上下方向の長さ)は、特に限定されないが、当該長さが大きいとパネル部1100の機械的強度を全体的に向上できる一方、当該長さが大きすぎると見た目を損なうため、好ましくは胴部11の高さ(上下方向の長さ)の1/5*以上9/10以下であり、より好ましくは3/5以上4/5以下である。
【0062】
溝1101の横幅(左右方向の長さ)は、特に限定されないが、当該長さが大きすぎるとパネル部の横幅が少なくなり圧力吸収効果が減ってしまい、該長さが小さすぎると機械的強度不足となるため、好ましくは1mm以上15mm以下であり、より好ましくは3mm以上10mm以下である。
【0063】
隣り合う溝1101の間隔、つまりは、パネル部1100の横幅は、特に限定されないが、当該間隔が小さいとパネル部1100の機械的強度を良好に向上できる一方、当該間隔が小さすぎると圧力吸収効果が減ってしまうため、好ましくは5mm以上40mm以下であり、より好ましくは10mm以上25mm以下である。
【0064】
溝1101は、好ましくは上下方向の両端から中央に向かって横幅が次第に拡がる。パネル部1100は肩部12及び底部10の角から最も離れた上下方向中央の部分が特に機械的強度が低く凹みやすい。溝1101の上下方向の中央をより横幅を大きくすることで、パネル部1100の上下方向中央の部分の機械的強度を効果的に高めることができ、へこみにくくすることができる。なお、溝1101は、必ずしも上下方向の両端から中央に向かって横幅が次第に拡がる必要はなく、上下方向の全長にわたって横幅が均一であってもよい。
【0065】
背面部111は、特に限定されないが、左右の側縁が左右方向の外側に凸状をなして湾曲している。また、背面部111は、特に限定されないが、側面側からの縦断面視において、肩部12から底部10に向かって内側に凹状をなして湾曲しており、背面部11は凹曲面に形成されている一方で、横断面視において、一方の連結部115から他方の連結部115に向かって外側に凸状をなして湾曲している。背面部111は、凹曲面に形成されていることにより、その機械的強度が高められており、へこみにくい構造とされている。
【0066】
背面部111は、
図7に示すように、側面側からの縦断面視において、好ましくは下端部1110が外側に最も突き出ている。つまりは、前記縦断面視において肩部12から底部10に向かって内側に凹状をなして湾曲する背面部111においては、上端部1111よりも下端部1110の方が外側に位置する。これにより、樹脂製容器1は、
図19に示すように、背面部111の真向かいに他の樹脂製容器1を並べた際に、下端部1110が他の樹脂製容器1に当接するのに対し、上端部1111は他の樹脂製容器1に当接せずに他の樹脂製容器1との間に隙間を生じる。
【0067】
なお、下端部1110とは、下端を含む一部分又は下端よりも多少上方の一部分のことを意味し、背面部111が前記縦断面視において例えば上端部1111よりも下端部1110の方が外側に位置するよう傾斜する場合は、下端部1110が外側に最も突き出ることになる。また、背面部111が前記縦断面視において例えば肩部12から底部10に向かっておおよそ鉛直に真っ直ぐ延びる場合には、背面部111の上下方向の中央よりも下方の一部分において外側に最も突き出ていればよい。
【0068】
左右の側面部112,113は、特に限定されないが、
図6に示すように、正面側からの縦断面視において、肩部12から底部10に向かって外側に凸状をなして湾曲しており、左右の側面部112,113は凸曲面に形成されている一方で、横断面視において、左右の側面部112,113は、連結部114から連結部115に向かって水平に真っ直ぐ延びている。左右の側面部112,113は横幅(前後方向の長さ)が小さいことにより、その機械的強度の低下が抑制されて、へこみにくい構造とされている。
【0069】
連結部114,115は、その形状は特に限定されず、正面部110及び左右の側面部112,113の間、背面部111及び左右の側面部112,113の間をつなぐ形状とされている。
【0070】
底部の説明
樹脂製容器1の底部10は、
図1~
図7に示すように、胴部11の下端を塞ぐ。底部10は、特に限定されないが、中央部分100が外周縁部分101よりも収容空間に向けて隆起している。これにより、水平な台上に樹脂製容器1を安定して載置可能である。
【0071】
外装フィルムの説明
樹脂製容器1は、
図18に示すように、カバー5が装着された状態において、少なくとも胴部11及びカバー5を覆うようにして外装フィルム6で包装されている。外装フィルム6は、特に限定されないが、カバー5及び胴部11を囲むように筒状に配置され、加熱により収縮することで胴部11及びカバー5に巻き付くもの(シュリンクフィルム)を用いることができる。外装フィルム6には、商品名、商品説明、絵柄等の表示や装飾が施され、樹脂製容器1の正面部110に当たる領域には特に商品名や商品アピ-ルの図案等の広告・宣伝のための表示や装飾が施される。
【0072】
外装フィルム6には、カバー5を覆う部分60と樹脂製容器1の胴部11を覆う部分61とを容易に分断できるように、両部分60,61の間にミシン目等の易分断線62が周方向に全周にわたって設けられている。これにより、ユーザは外装フィルム6のカバー5を覆う部分60だけを分離してカバー5から剥がすことで、樹脂製容器1に外装フィルム6を被覆させたままで樹脂製容器1からカバー5を取り外すことができる。外装フィルム6の易分断線62は、樹脂製容器1の胴部11とカバー5の周面部51との境界(周面部51の下端)と近接するように外装フィルム6に設けられる。なお、外装フィルム6の易分断線62の位置は、前記境界(周面部51の下端)に完全一致している必要はなく、上下方向に多少(例えば10mm程度)位置ずれしていてもよい。また、外装フィルム6のカバー5を覆う部分60には、易分断線62と直交するミシン目等の易分断線63が設けられている。
【0073】
樹脂製容器の作用・効果
上述の本実施形態の樹脂製容器1によると、胴部11は、外側に凸状をなして膨らむ膨出部を正面部110に含み、正面部110は、上下方向に延びる複数のパネル部1100が左右方向に隣り合うパネル部1100との境界が角張るようにつなげられて形成されており、複数のパネル部1100は、隣り合うパネル部1100の境界に当該境界に沿って上下方向に延びる凹状の溝1101が設けられている。正面部110に左右方向に間隔をあけて複数の溝1101が存在することにより、正面部110において機械的強度の低いパネル部1100が二つの溝1101によって挟まれるので、パネル部1100は柱状のリブとなってその機械的強度が高められる。よって、正面部110の機械的強度を全体的に高めることができるので、全体的に角張って凸状をなすよう外側に膨らむ正面部110を胴部11に有する樹脂製容器1について、樹脂製容器1内に陰圧が生じても正面部110のへこみを抑制できる。樹脂製容器1は、胴部11の正面部110を全体的に角張った凸状とすることでデザイン性が向上し、表面積が大きくかつ購買者の目に付く正面部110のへこみを抑制できるので、樹脂製容器1のデザイン性が損なわれるのを抑制できる。
【0074】
また、本実施形態の樹脂製容器1によると、隣り合うパネル部1100の境界に設けられた溝1101は、横断面視形状がU字形状である。これにより、樹脂製容器1をインジェクションブロー成形により製造するにあたり、プリフォームを金型から取り出す際に、溝1101の部分でプリフォームを構成する一部の樹脂層が剥がれてしまう等、プリフォームが損傷するのを抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態の樹脂製容器1によると、隣り合うパネル部1100の境界に設けられた溝1101は、上下方向の両端から中央に向かって横幅が次第に拡がる。これにより、パネル部1100において、特に機械的強度の低い上下方向中央の部分の機械的強度を効果的に高めることができ、パネル部1100を一層へこみにくくすることができる。
【0076】
また、本実施形態の樹脂製容器1によると、胴部11の背面部111においてその下端部1110が縦断面視で外側に最も突き出る。これにより、樹脂製容器1は、
図19に示すように、背面部111の真向かいに他の樹脂製容器1を並べた際に、背面部111の下端部1110が他の樹脂製容器1に当接する一方で上端部1111は他の樹脂製容器1に当接せず、胴部11とカバー5との境界B(カバー5の下端)は他の樹脂製容器1との間に隙間Sを生じる。
【0077】
ここで、樹脂製容器1は、カバー5が装着されて外装フィルム6により包装された状態で段ボール箱の中に複数並べて搬送されたり、店頭において複数並べて展示されるのが一般的である。このとき、
図20に示すように、隣り合う二つの樹脂製容器1´の一部分同士が接触する場合があるが、樹脂製容器1´とカバー5´との境界B(カバー5´の下端)が隣り合う樹脂製容器1´と接触すると、接触により外装フィルム6´の易分断線62´がダメージを受ける。特に外装フィルム6´の易分断線62´が樹脂製容器1´とカバー5´との境界B(カバー5´の下端)にあると、外装フィルム6´の易分断線62´はダメージを受けることで破損しやすく、外装フィルム6´が意図せずに破断するおそれがある。これに対して、本実施形態の樹脂製容器1では、胴部11の下端部1110において隣り合う樹脂製容器1と接触するので、外装フィルム6の易分断線62が樹脂製容器1とカバー5との境界B(カバー5の下端)と近接する位置にあっても、樹脂製容器1の搬送中や展示中に外装フィルム6の易分断線62に隣り合う樹脂製容器1が接触しないため、易分断線62がダメージを受けて外装フィルム6が破断するのを防止することができる。
【0078】
また、本実施形態の樹脂製容器1によると、胴部11の背面部111において下端部1110が最も外側に突き出ているので、背面部111の真向かいに他の樹脂製容器1を並べることによって外装フィルム6の易分断線62がダメージを受けるのを防止できるので、樹脂製容器1を効率よく並べることができる。そのうえ、この突き出た下端部1110が樹脂製容器1の展示中等に購買者に目に付くことを抑制でき、樹脂製容器1のデザイン性の低下を抑制できる。
【0079】
また、本実施形態の樹脂製容器1によると、胴部11の背面部111が縦断面視で内側に凹状をなして湾曲している。これにより、背面部111の下端部1110が最も外側に突き出ているとしても、樹脂製容器1のデザイン性に悪影響を及ぼさない。
【0080】
樹脂製容器の変形例
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0081】
上述の実施形態では、胴部11が扁平形状を呈しているが、必ずしも扁平形状を呈している必要はない。
【0082】
また、上述の実施形態では、隣り合うパネル部1100の境界が角張るように複数のパネル部1100をつなげて形成した膨出部を、胴部11の正面部110に設けているが、胴部11の周方向の他の部分に前記膨出部及び溝1101を設けてもよい。さらには、胴部11の全部分に前記膨出部及び溝1101を設けてもよい。
【0083】
また、上述の実施形態では、樹脂製容器1の背面部111は下端部1110が縦断面視で外側に最も突き出るが、必ずしも外側に最も突き出る必要はない。
【0084】
また、上述の実施形態では、樹脂製容器1の口部13に一対の括れ部131が設けられているが、一対の括れ部131は必ずしも口部13に設ける必要はない。
【0085】
また、上述の実施形態では、樹脂製容器1の肩部12に複数の隆起部123、張出部124及び凹部125が設けられているが、これらは必ずしも肩部12に設ける必要はない。
【0086】
また、上記実施形態では、樹脂製容器1は、底部10、胴部11、肩部12及び口部13で構成されているが、底部10及び胴部11を含んでいれば、いかなる構造のものであってもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、樹脂製容器1は、胴部11上にカバー5が装着されるが、胴部11の上端側の一部分をカバー5の内側に嵌め込むことで胴部11にカバー5を装着するようにしてもよい。カバー5の周面部51は、その下端において周方向の全周にわたって胴部11との間に段差がなくてもよいし、胴部11との間に多少の段差があってもよい。
【0088】
また、上述の実施形態では、カバー5に設けられた複数の凸部52は、高さ位置が異なる複数種の凸部52で構成されているが、凸部52は全て同じ高さに配置されていてもよい。また、カバー5に設けられた複数の凸部52は、縦幅が異なる複数種の凸部52で構成されているが、凸部52は全て同じ縦幅に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1:樹脂製容器、10:底部、11:胴部、110:正面部、111:背面部、112,113:側面部、1100:パネル部、1101:溝。