(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101930
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】端子付き電線および端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20220630BHJP
H01R 4/02 20060101ALI20220630BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
H01B7/00 306
H01R4/02 C
H01B13/00 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216324
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】達川 永吾
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 健作
【テーマコード(参考)】
5E085
5G309
【Fターム(参考)】
5E085BB01
5E085BB11
5E085CC03
5E085DD04
5E085FF11
5E085HH11
5E085HH15
5E085JJ06
5G309FA04
5G309FA06
(57)【要約】
【課題】端子からの絶縁被覆部の離脱および絶縁被覆部の破損を防止することができる端子付き電線および端子付き電線の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様である端子付き電線は、電線導体部と、前記電線導体部を被覆する絶縁被覆部とを有する被覆電線と、前記電線導体部のうち前記絶縁被覆部を除去して露出させた端末部である導体露出部が接合される導体接合部と、前記絶縁被覆部の除去際を含む被覆先端部が接合される被覆接合部とを有する端子と、を備える。前記被覆先端部は、硬化性樹脂によって前記被覆接合部に接合されている。前記硬化性樹脂の伸縮率の値は、前記絶縁被覆部を構成する被覆材料の成形収縮率の値以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線導体部と、前記電線導体部を被覆する絶縁被覆部とを有する被覆電線と、
前記電線導体部のうち前記絶縁被覆部を除去して露出させた端末部である導体露出部が接合される導体接合部と、前記絶縁被覆部の除去際を含む被覆先端部が接合される被覆接合部とを有する端子と、
を備え、
前記被覆先端部は、硬化性樹脂によって前記被覆接合部に接合され、
前記硬化性樹脂の伸縮率の値は、前記絶縁被覆部を構成する被覆材料の成形収縮率の値以上である、
ことを特徴とする端子付き電線。
【請求項2】
前記被覆材料は結晶性材料からなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の端子付き電線。
【請求項3】
前記硬化性樹脂は、前記被覆電線の幅よりも幅広に塗布されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の端子付き電線。
【請求項4】
前記硬化性樹脂は、前記端子の前記被覆接合部側の端部から少なくとも前記絶縁被覆部の除去際に至る端子領域に亘り、前記被覆接合部の接合面から前記被覆先端部の外周面の50%以上を覆う位置まで塗布されている、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の端子付き電線。
【請求項5】
前記硬化性樹脂は、前記端子領域に亘り、前記被覆接合部の接合面から前記被覆先端部の外周面の全域を覆う位置まで塗布されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の端子付き電線。
【請求項6】
前記硬化性樹脂は、前記絶縁被覆部の除去際と前記導体露出部の全体とを覆う、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の端子付き電線。
【請求項7】
前記被覆電線は、前記電線導体部の横断面が扁平状をなす扁平電線である、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の端子付き電線。
【請求項8】
前記電線導体部は、並列に配列された複数の素線からなる、
ことを特徴とする請求項7に記載の端子付き電線。
【請求項9】
前記被覆電線の前記導体露出部は、溶接によって前記端子の前記導体接合部に接合されている、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一つに記載の端子付き電線。
【請求項10】
前記硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、光硬化性樹脂、嫌気硬化性樹脂または湿気硬化性樹脂である、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一つに記載の端子付き電線。
【請求項11】
前記硬化性樹脂は、熱硬化性、常温硬化性、光硬化性、嫌気硬化性および湿気硬化性のうち少なくとも2つの硬化反応を行う樹脂である、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一つに記載の端子付き電線。
【請求項12】
前記被覆材料は、成形収縮率が1%以上の結晶性樹脂からなり、
前記硬化性樹脂は、-50℃以上150℃以下の温度環境下で伸縮率が4%以上の硬化性樹脂である、
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一つに記載の端子付き電線。
【請求項13】
前記被覆電線の長手方向における前記被覆接合部の長さは、10mm以上20mm以下である、
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一つに記載の端子付き電線。
【請求項14】
前記電線導体部の横断面の面積は、10mm2以上100mm2以下である、
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一つに記載の端子付き電線。
【請求項15】
電線導体部と前記電線導体部を被覆する絶縁被覆部とを有する被覆電線の前記絶縁被覆部の端末部を除去して、前記電線導体部の端末部を露出させる除去工程と、
前記電線導体部の露出させた端末部である導体露出部と、前記絶縁被覆部の除去際を含む被覆先端部とを端子に接合する接合工程と、
を含み、
前記被覆先端部は、硬化性樹脂によって前記端子に接合され、
前記硬化性樹脂の伸縮率の値は、前記絶縁被覆部を構成する被覆材料の成形収縮率の値以上である、
ことを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線および端子付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被覆電線の端末部に端子を備えた端子付き電線が知られている。一般に、被覆電線は、単一または複数の素線からなる電線導体部と、当該電線導体部を被覆する絶縁性樹脂からなる絶縁被覆部とによって構成されている。このような被覆電線のうち、電線導体部の端末部は、絶縁被覆部の一部を除去することによって露出した状態にされる。端子付き電線は、電線導体部のうち露出した端末部(導体露出部)と、絶縁被覆部のうち除去際を含む端末部(被覆先端部)とを端子に接合することによって製造される。
【0003】
例えば、特許文献1には、扁平状の被覆電線である扁平電線の端末部のうち、導体露出部がワイヤバレルによって端子に圧着接合され、且つ、被覆先端部がインシュレーションバレルによって当該端子に圧着接合されている端子付き電線が開示されている。また、特許文献2には、ワイヤバレル片の間隔を扁平電線の導体露出部の幅寸法よりも長くすることでワイヤバレル片による導体露出部のカシメ付けを確実に行えるようにし、且つ、インシュレーションバレル片の間隔を絶縁被覆部の幅寸法よりも長くすることでインシュレーションバレル片による絶縁被覆部のカシメ付けを確実に行えるようにした端子付き電線が開示されている。
【0004】
このような端子付き電線は、例えば、車両に搭載されるワイヤハーネスに用いられる。近年、自動車等の車両の分野においては、ハイブリッド自動車や電気自動車等に代表される電動化や、自動運転システムやコネクテッドカー等に代表される多機能化或いは高機能化が急速に進んでいる。このため、車両用のワイヤハーネスには、大電流を通電し得る端子付き電線が用いられる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-124135号公報
【特許文献2】特開2011-14283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した車両用のワイヤハーネスを始め、多種多様な用途において、大電流を通電し得る端子付き電線には、多くの場合、太物電線または扁平電線が被覆電線として用いられている。このような被覆電線の絶縁被覆部には、例えば、ポリエチレンや架橋ポリエチレン等の結晶性樹脂が用いられる。一般に、結晶性樹脂は、非結晶性樹脂に比べて成形収縮率が大きいものの、耐熱性および耐薬品性に優れているため、高い信頼性を得るという観点から、特に大電流を通電し得る端子付き電線の絶縁被覆部の材料として用いられる傾向にある。このような絶縁被覆部は、例えば結晶性樹脂の押出成形により、電線導体部を覆うように成形される。
【0007】
一方、結晶性樹脂からなる絶縁被覆部では、押出成形時の残留応力や成形金型の冷却による熱ひずみに起因して、成形後に収縮が生じる。しかしながら、上述した従来の端子付き電線では、被覆電線の端末部のうち絶縁被覆部の被覆先端部をインシュレーションバレルによって拘束することにより、絶縁被覆部が端子に圧着接合されている。このため、インシュレーションバレルによって拘束された状態の絶縁被覆部が収縮してしまい、この結果、絶縁被覆部がインシュレーションバレルから離脱して端子から外れる恐れがある。或いは、絶縁被覆部のうちインシュレーションバレルに拘束された部分と拘束されていない部分との間で応力集中が生じ、これにより、絶縁被覆部が破損する恐れがある。
【0008】
特に、端子付き電線の被覆電線が太物電線または扁平電線である場合、絶縁被覆部の成形に用いられる結晶性樹脂の目付量が多いことから、絶縁被覆部に生じる押出成形時の残留応力や熱ひずみが大きくなり、この結果、絶縁被覆部の成形後の収縮が顕著となる。中でも、扁平電線の場合は、押出成形時の加圧が扁平断面の長辺側へ集中するため、上述した絶縁被覆部の成形後の収縮がより顕著となり、当該収縮に起因する絶縁被覆部の離脱や破損もより顕著となる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、端子からの絶縁被覆部の離脱および絶縁被覆部の破損を防止することができる端子付き電線および端子付き電線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、上記目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線は、電線導体部と、前記電線導体部を被覆する絶縁被覆部とを有する被覆電線と、前記電線導体部のうち前記絶縁被覆部を除去して露出させた端末部である導体露出部が接合される導体接合部と、前記絶縁被覆部の除去際を含む被覆先端部が接合される被覆接合部とを有する端子と、を備え、前記被覆先端部は、硬化性樹脂によって前記被覆接合部に接合され、前記硬化性樹脂の伸縮率の値は、前記絶縁被覆部を構成する被覆材料の成形収縮率の値以上である、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記被覆材料は結晶性材料からなる、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記硬化性樹脂は、前記被覆電線の幅よりも幅広に塗布されている、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記硬化性樹脂は、前記端子の前記被覆接合部側の端部から少なくとも前記絶縁被覆部の除去際に至る端子領域に亘り、前記被覆接合部の接合面から前記被覆先端部の外周面の50%以上を覆う位置まで塗布されている、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記硬化性樹脂は、前記端子領域に亘り、前記被覆接合部の接合面から前記被覆先端部の外周面の全域を覆う位置まで塗布されている、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記硬化性樹脂は、前記絶縁被覆部の除去際と前記導体露出部の全体とを覆う、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記被覆電線は、前記電線導体部の横断面が扁平状をなす扁平電線である、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記電線導体部は、並列に配列された複数の素線からなる、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記被覆電線の前記導体露出部は、溶接によって前記端子の前記導体接合部に接合されている、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、光硬化性樹脂、嫌気硬化性樹脂または湿気硬化性樹脂である、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記硬化性樹脂は、熱硬化性、常温硬化性、光硬化性、嫌気硬化性および湿気硬化性のうち少なくとも2つの硬化反応を行う樹脂である、ことを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記被覆材料は、成形収縮率が1%以上の結晶性樹脂からなり、前記硬化性樹脂は、-50℃以上150℃以下の温度環境下で伸縮率が4%以上の硬化性樹脂である、ことを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記被覆電線の長手方向における前記被覆接合部の長さは、10mm以上20mm以下である、ことを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記電線導体部の横断面の面積は、10mm2以上100mm2以下である、ことを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る端子付き電線の製造方法は、電線導体部と前記電線導体部を被覆する絶縁被覆部とを有する被覆電線の前記絶縁被覆部の端末部を除去して、前記電線導体部の端末部を露出させる除去工程と、前記電線導体部の露出させた端末部である導体露出部と、前記絶縁被覆部の除去際を含む被覆先端部とを端子に接合する接合工程と、を含み、前記被覆先端部は、硬化性樹脂によって前記端子に接合され、前記硬化性樹脂の伸縮率の値は、前記絶縁被覆部を構成する被覆材料の成形収縮率の値以上である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、端子からの絶縁被覆部の離脱および絶縁被覆部の破損を防止することが可能な端子付き電線を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る端子付き電線の一構成例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す端子付き電線を上方から見た上面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す端子付き電線のA-A線断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態1に係る端子付き電線の製造方法の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態2に係る端子付き電線の一構成例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す端子付き電線を上方から見た上面図である。
【
図7】
図7は、
図5に示す端子付き電線のB-B線断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態3に係る端子付き電線の一構成例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、
図8に示す端子付き電線を上方から見た上面図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態4に係る端子付き電線の一構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明に係る端子付き電線および端子付き電線の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一または対応する要素には同一の符号が付されている。
【0028】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係る端子付き電線の構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る端子付き電線の一構成例を示す模式図である。
図1には、本実施形態1に係る端子付き電線1をその幅方向から見た図が示されている。
図2は、
図1に示す端子付き電線を上方から見た上面図である。
図3は、
図1に示す端子付き電線のA-A線断面図である。
【0029】
図1~3に示すように、本実施形態1に係る端子付き電線1は、被覆電線10と、端子20とを備える。また、端子付き電線1は、被覆電線10の絶縁被覆部15の先端部と端子20とを接合している硬化性樹脂30の硬化物を備える。なお、端子付き電線1には、説明の便宜上、
図1~3に示すように長手方向X、幅方向Yおよび高さ方向Zが設定されている。これらの長手方向X、幅方向Yおよび高さ方向Zは、端子付き電線1を限定するものではない。
【0030】
被覆電線10は、
図1~3に示すように、電線導体部11と、この電線導体部11を被覆する絶縁被覆部15とを有する。電線導体部11は、例えば、長手方向Xに延伸する複数の素線14によって構成され、被覆電線10の一例である太物電線の導体部をなす。電線導体部11は、複数の素線14を束ねたものであってもよいし、複数の素線14を撚り合わせたもの(撚線)であってもよい。電線導体部11の材料(すなわち素線14の材料)としては、例えば、純度の高いアルミニウム(Al)やアルミニウム合金(Al合金)等が挙げられる。また、本実施形態1において、
図3に示す電線導体部11の横断面の面積(横断面積)は、これら複数の素線14の横断面積の総和に相当する。例えば、電線導体部11の横断面積は、10mm
2(10sq)以上100mm
2(100sq)以下である。
【0031】
絶縁被覆部15は、絶縁性樹脂である被覆材料によって構成され、
図1~3に示すように、電線導体部11の外周に形成されている。本実施形態1において、絶縁被覆部15は、電線導体部11の端末部を除く長手方向Xの全域を被覆している。詳細には、電線導体部11の端末部(
図1、2に示す導体露出部12)を絶縁被覆部15から露出させるために、絶縁被覆部15のうち長手方向Xの端末部が除去されている。
【0032】
端子20は、被覆電線10が接合される端子金具である。詳細には、端子20は、例えば銅または銅合金等の金属材料によって構成され、
図1、2に示すように、被覆電線10の端末部が接合される導体接合部21と被覆接合部22とを有する。また、端子20は、導体接合部21の長手方向Xの前方側に端子先端部23を備える。端子先端部23は、本実施形態1に係る端子付き電線1を他の端子付き電線または電源等の端子に接続するための端子部分である。この端子先端部23には、他の端子に接続するための構造(例えば
図2に示す円形の貫通孔)が設けられている。
【0033】
導体接合部21は、端子20のうち、被覆電線10の導体露出部12が接合される部分である。本実施形態1において、導体露出部12は、被覆電線10の電線導体部11のうち、絶縁被覆部15を除去して露出させた端末部である。端子20の導体接合部21には、
図1、2に示すように、導体露出部12のうち長手方向Xの後方側の基端部13aと長手方向Xの前方側の先端部13bとの間の中間部(接合対象部)が接合されている。また、この導体接合部21には、
図1、2に示すように、導体露出部12の接合対象部を収めるための一対の側壁部21a、21bが設けられている。一対の側壁部21a、21bは、互いに端子20の幅方向Yに対向するように、導体接合部21の幅方向Yの両端部に各々立設されている。これら側壁部21a、21bの各々の寸法は、導体接合部21に接合する被覆電線10の導体露出部12の寸法に応じて設定される。
【0034】
被覆接合部22は、端子20のうち、被覆電線10の被覆先端部16が接合される部分である。本実施形態1において、被覆先端部16は、被覆電線10の絶縁被覆部15のうち、導体露出部12を露出させるために除去された絶縁被覆部15(詳細には絶縁被覆部15の端末部)の除去際17を含む部分である。
図1、2に示すように、端子20の被覆接合部22には、被覆電線10のうち少なくとも被覆先端部16が接合されている。例えば、本実施形態1では、被覆先端部16と導体露出部12の基端部13a(詳細には絶縁被覆部15の除去際17から延出する部分)とが、被覆接合部22に接合されている。
【0035】
また、本実施形態1において、被覆電線10の被覆先端部16は、硬化性樹脂30によって端子20の被覆接合部22に接合されている。詳細には、
図1~3に示すように、硬化性樹脂30は、被覆接合部22の接合面上に、被覆電線10の幅W1よりも幅広に塗布されている。
図3に示すように、被覆電線10の幅W1は、高さ方向Zの各位置に応じて取り得る被覆先端部16の幅方向Yの各長さのうち最大値である。例えば、被覆先端部16の横断面が円形である場合、幅W1は、この被覆先端部16の外径に相当する。
【0036】
例えば
図1~3に示すように、硬化性樹脂30は、端子20の被覆接合部22側の端部(すなわち長手方向Xの後端部22a)から少なくとも絶縁被覆部15の除去際17に至る端子領域に亘り、被覆電線10の幅W1よりも幅広に塗布されている。この際、硬化性樹脂30は、上記端子領域に亘り、被覆接合部22の接合面(すなわち
図3に示す高さ方向Zの位置P0)から被覆先端部16の外周面の50%以上を覆う位置P1まで塗布されている。本実施形態1では、例えば
図1、2に示すように、硬化性樹脂30は、端子20の後端部22aから絶縁被覆部15の除去際17を経て導体露出部12の基端部13aに至る上記端子領域に亘り、塗布されている。
【0037】
なお、硬化性樹脂30の高さ方向Zの位置P1が被覆先端部16の幅W1を取り得る高さ方向Zの位置である場合、硬化性樹脂30は、被覆先端部16の外周面の50%を覆った状態になる。
【0038】
上述したように端子20の被覆接合部22の接合面上に塗布された硬化性樹脂30は、硬化物となって被覆電線10の被覆先端部16と端子20の被覆接合部22とを接合する。硬化性樹脂30の硬化物が被覆電線10における絶縁被覆部15の収縮変形に追従して上記被覆先端部16と被覆接合部22との接合状態を保持する、という観点から、硬化性樹脂30の伸縮率の値は、被覆電線10の絶縁被覆部15を構成する被覆材料の成形収縮率の値以上である。本発明において、硬化性樹脂の伸縮率(%)は、硬化性樹脂自体が有する伸縮特性を表す値である。被覆材料の成形収縮率(%)は、押出成形によって被覆電線の絶縁被覆部に成形された被覆材料の、押出成形時の基準状態に対する押出成形後の収縮状態の収縮率である。
【0039】
上述した被覆材料は、絶縁被覆部15の耐熱性および耐薬品性を高めるという観点から、結晶性材料からなることが好ましく、中でも、成形収縮率が1%以上の結晶性材料からなることが特に好ましい。このような結晶性材料としては、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等、成形収縮率が1%以上4%以下である結晶性樹脂が挙げられる。
【0040】
一方、硬化性樹脂30は、絶縁被覆部15の被覆材料が成形収縮率1%以上の結晶性材料からなる場合、-50℃以上150℃以下の温度環境下で伸縮率が4%以上の硬化性樹脂であることが好ましい。このような硬化性樹脂30としては、例えば、ウレタン系の硬化性樹脂(UV硬化型ウレタン樹脂等)、アクリレート系の硬化性樹脂等が挙げられる。また、硬化性樹脂30は、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、光硬化性樹脂、嫌気硬化性樹脂または湿気硬化性樹脂であってもよいし、熱硬化性、常温硬化性、光硬化性、嫌気硬化性および湿気硬化性のうち少なくとも2つの硬化反応を行う樹脂であってもよい。
【0041】
また、絶縁被覆部15が上述のように成形収縮率1%以上4%以下の結晶性樹脂からなる場合、例えば、被覆電線10の線長(長手方向Xの長さ)が1m以上5m以下であれば、絶縁被覆部15は、当該結晶性樹脂の押出成形後に長手方向Xへ10mm以上収縮する可能性がある。このため、被覆接合部22の接合面上に絶縁被覆部15の被覆先端部16を確実に位置させるという観点から、被覆電線10の長手方向Xにおける被覆接合部22の長さの下限値は、10mm以上であることが好ましい。
【0042】
一方、被覆接合部22の長手方向Xの長さが過度に長い場合、端子20の重量や、被覆接合部22と被覆先端部16とを接合する硬化性樹脂30の硬化物の重量が過度に増大してしまう。さらには、被覆接合部22の接合面上に塗布される硬化性樹脂30の塗布コストが、過度に増大してしまう。このため、端子20や硬化性樹脂30の重量増を回避し且つ硬化性樹脂30の塗布コストの増加を回避するという観点から、被覆電線10の長手方向Xにおける被覆接合部22の長さの上限値は、20mm以下であることが好ましい。
【0043】
以上より、被覆電線10の長手方向Xにおける被覆接合部22の長さは、10mm以上20mm以下であることが好ましい。中でも、被覆接合部22のうち端子20の後端部22aから絶縁被覆部15の除去際17に至る端子領域の長手方向Xの長さが、10mm以上20mm以下であることが特に好ましい。
【0044】
つぎに、本発明の実施形態1に係る端子付き電線1の製造方法について説明する。
図4は、本発明の実施形態1に係る端子付き電線の製造方法の一例を示す模式図である。この端子付き電線1(
図1~3参照)の製造方法は、被覆電線10のうち電線導体部11の端末部を絶縁被覆部15から露出させる除去工程と、被覆電線10の導体露出部12と被覆先端部16とを端子20に接合する接合工程と、を含む。
【0045】
詳細には、
図4に示すように、端子付き電線1の製造方法では、上記除去工程が行われる。この除去工程では、電線導体部11と当該電線導体部11を被覆する絶縁被覆部15とを有する被覆電線10のうち、絶縁被覆部15の端末部18を剥ぎ取る等して除去する。これにより、電線導体部11の端末部である導体露出部12を絶縁被覆部15から露出させる(状態S1)。
【0046】
上記除去工程を実行後、端子付き電線1の製造方法では、
図4に示すように、上記接合工程が行われる。この接合工程では、被覆電線10のうち、電線導体部11の露出させた端末部である導体露出部12と、絶縁被覆部15の剥ぎ際(
図1、2に示す除去際17)を含む被覆先端部16と、を端子20に接合する(状態S2)。
【0047】
詳細には、
図4に示すように、導体露出部12は、端子20の導体接合部21に接合される。この際、導体露出部12の接合対象部は、導体接合部21の側壁部21a、21bの間に配置される。導体露出部12の接合対象部は、
図2に示す導体露出部12の基端部13aと先端部13bとの間の中間部である。導体露出部12の接合対象部は、例えば、溶接によって端子20の導体接合部21に接合される(状態S3)。この溶接の手法として、超音波接合等が挙げられる。
【0048】
また、
図4に示すように、被覆先端部16は、硬化性樹脂30によって端子20の被覆接合部22に接合される。詳細には、被覆先端部16は、端子20の被覆接合部22の接合面上に配置される。続いて、この被覆接合部22の接合面上には、硬化性樹脂30が塗布される。この硬化性樹脂30として、絶縁被覆部15を構成する被覆材料の成形収縮率の値以上の伸縮率の値を有する硬化性樹脂が用いられる。例えば、硬化性樹脂30は、端子20の被覆接合部22側の端部(すなわち
図1、2に示す長手方向Xの後端部22a)から少なくとも絶縁被覆部15の除去際17に至る端子領域に亘り、被覆電線10の幅W1(
図3参照)よりも幅広に塗布される。本実施形態1において、硬化性樹脂30は、上記端子領域に亘り、被覆接合部22の接合面から被覆先端部16の外周面の50%以上を覆う位置P1(
図3参照)まで塗布される。このように塗布された硬化性樹脂30は、熱硬化、常温硬化、光硬化、嫌気硬化および湿気硬化のうち少なくとも1つの硬化反応によって硬化される。この硬化性樹脂30の硬化物により、被覆先端部16は、端子20の被覆接合部22に接合される(状態S3)。
【0049】
なお、上述した被覆電線10と端子20との接合工程において、導体露出部12と端子20の導体接合部21との接合は、硬化性樹脂30による被覆先端部16と端子20の被覆接合部22との接合の先に行われてもよいし、後に行われてもよいし、並行して行われてもよい。
【0050】
以上、説明したように、本発明の実施形態1では、電線導体部11と当該電線導体部11を被覆する絶縁被覆部15とを有する被覆電線10のうち、電線導体部11の端末部であって絶縁被覆部15を除去して露出させた導体露出部12が、端子20の導体接合部21に接合され、且つ、絶縁被覆部15の除去際17を含む被覆先端部16が、硬化性樹脂30によって端子20の被覆接合部22に接合されており、この硬化性樹脂30の伸縮率の値は、絶縁被覆部15を構成する被覆材料の成形収縮率の値以上である。
【0051】
このため、被覆電線の被覆先端部をインシュレーションバレルによって拘束して端子の被覆接合部に圧着接合している従来の端子付き電線とは異なり、被覆電線10の被覆先端部16と端子20の被覆接合部22とを接合する硬化性樹脂30の硬化物が、被覆先端部16の成形後の収縮に追従して伸長することができる。したがって、たとえ被覆先端部16に成形後の収縮が生じたとしても、硬化性樹脂30による被覆電線10の被覆先端部16と端子20の被覆接合部22との接合を保持しながら、被覆先端部16と硬化性樹脂30の硬化物との間における応力集中を緩和することができる。この結果、端子付き電線1の端子20から被覆電線10の絶縁被覆部15が離脱する事態と、当該絶縁被覆部15が破損する事態とを防止することができる。
【0052】
(実施形態2)
つぎに、本発明の実施形態2に係る端子付き電線の構成について説明する。
図5は、本発明の実施形態2に係る端子付き電線の一構成例を示す模式図である。
図5には、本実施形態2に係る端子付き電線1Aをその幅方向から見た図が示されている。
図6は、
図5に示す端子付き電線を上方から見た上面図である。
図7は、
図5に示す端子付き電線のB-B線断面図である。
【0053】
図5~7に示すように、本実施形態2に係る端子付き電線1Aは、上述した実施形態1に係る端子付き電線1の硬化性樹脂30の硬化物に代えて硬化性樹脂30Aの硬化物を備える。すなわち、本実施形態2に係る端子付き電線1Aにおいて、被覆電線10の被覆先端部16は、硬化性樹脂30Aによって端子20の被覆接合部22に接合されている。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0054】
硬化性樹脂30Aは、
図5~7に示すように、被覆接合部22の接合面上に、被覆電線10における絶縁被覆部15の除去際17全体を覆い且つ被覆電線10の幅W1よりも幅広に塗布されている。詳細には、硬化性樹脂30Aは、端子20の後端部22aから少なくとも絶縁被覆部15の除去際17に至る端子領域に亘り、被覆接合部22の接合面(すなわち
図7に示す高さ方向Zの位置P0)から被覆先端部16の外周面の全域を覆う位置P2まで塗布されている。本実施形態2では、例えば
図5、6に示すように、硬化性樹脂30Aは、端子20の後端部22aから絶縁被覆部15の除去際17を経て導体露出部12の基端部13aに至る上記端子領域に亘り、塗布されている。このように塗布された硬化性樹脂30Aは、被覆先端部16の外周面と除去際17の開口端とを含む全体を覆う。
【0055】
上述したように端子20の被覆接合部22の接合面上に塗布された硬化性樹脂30Aは、硬化物となって被覆電線10の被覆先端部16と端子20の被覆接合部22とを接合するとともに、絶縁被覆部15の除去際17全体と導体露出部12の基端部13aのうち被覆先端部16からの延出端部全体とを覆う。なお、硬化性樹脂30Aの伸縮率の値および構成樹脂は、上述した実施形態1における硬化性樹脂30と同じである。
【0056】
また、本発明の実施形態2に係る端子付き電線1Aの製造方法は、被覆電線10の導体露出部12と被覆先端部16とを端子20に接合する接合工程における硬化性樹脂30Aの塗布以外、上述した実施形態1と同じである。
【0057】
詳細には、
図5~7に示すように、本実施形態2における接合工程において、硬化性樹脂30Aは、端子20の後端部22aから少なくとも絶縁被覆部15の除去際17に至る端子領域に亘り、被覆接合部22の接合面から被覆先端部16の外周面の全域を覆う位置P2(
図3参照)まで塗布される。
【0058】
以上、説明したように、本発明の実施形態2では、被覆電線10のうち絶縁被覆部15の被覆先端部16が硬化性樹脂30Aによって端子20の被覆接合部22に接合されるとともに、この硬化性樹脂30Aが被覆先端部16の全体を覆うようにし、その他を実施形態1と同様に構成している。このため、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受するとともに、硬化性樹脂30Aによる被覆電線10の被覆先端部16と端子20の被覆接合部22との接合強度をより増大させることができる。さらには、被覆先端部16の除去際17の開口端を硬化性樹脂30Aによって塞ぐことができ、これにより、絶縁被覆部15内への液体の侵入を防ぐことができ、この結果、絶縁被覆部15内での電線導体部11の腐食を防止することができる。
【0059】
(実施形態3)
つぎに、本発明の実施形態3に係る端子付き電線の構成について説明する。
図8は、本発明の実施形態3に係る端子付き電線の一構成例を示す模式図である。
図8には、本実施形態3に係る端子付き電線1Bをその幅方向から見た図が示されている。
図9は、
図8に示す端子付き電線を上方から見た上面図である。
図10は、
図8に示す端子付き電線のC-C線断面図である。
【0060】
図8~10に示すように、本実施形態3に係る端子付き電線1Bは、上述した実施形態2に係る端子付き電線1Aの被覆電線10に代えて扁平状の被覆電線10Aを備え、硬化性樹脂30Aの硬化物に代えて硬化性樹脂30Bの硬化物を備える。すなわち、本実施形態3に係る端子付き電線1Bにおいて、被覆電線10Aの被覆先端部16Aは、硬化性樹脂30Bによって端子20の被覆接合部22に接合されている。その他の構成は実施形態2と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0061】
被覆電線10Aは、
図8~10に示すように、電線導体部11Aと、この電線導体部11Aを被覆する絶縁被覆部15Aとを有する。電線導体部11Aは、幅方向Yに長い扁平状の導体部である。すなわち、被覆電線10Aは、電線導体部11Aの横断面が扁平状をなす扁平電線である。例えば
図10に示すように、電線導体部11Aは、並列に配列された複数の素線14からなる。なお、
図10に示す電線導体部11Aの一例では、長手方向Xに延伸する7本の素線14が、幅方向Yに長い列をなすよう並列配置されている。電線導体部11Aを構成する素線14の配置数は、
図10に例示する7本に限定されず、2本以上であってもよい。これら複数の素線14がなす列数は、
図10に例示する一列に限定されず、複数列であってもよい。また、電線導体部11Aは、複数の素線14を扁平状に束ねたものであってもよいし、複数の素線14を扁平状に撚り合わせたものであってもよい。このような電線導体部11Aの材料および横断面積は、上述した実施形態1、2と同じである。
【0062】
絶縁被覆部15Aは、絶縁性樹脂である被覆材料によって構成され、
図8~10に示すように、電線導体部11Aの外周に沿って扁平状に形成されている。本実施形態3において、絶縁被覆部15Aは、電線導体部11Aの端末部を除く長手方向Xの全域を被覆している。詳細には、電線導体部11Aの端末部(
図8、9に示す導体露出部12A)を絶縁被覆部15Aから露出させるために、絶縁被覆部15Aのうち長手方向Xの端末部が除去されている。なお、絶縁被覆部15Aを構成する被覆材料は、上述した実施形態1、2における絶縁被覆部15と同じである。
【0063】
本実施形態3において、端子20の導体接合部21には、被覆電線10Aの導体露出部12Aが接合されている。導体露出部12Aは、被覆電線10Aの電線導体部11Aのうち、絶縁被覆部15Aを除去して露出させた端末部である。例えば
図8、9に示すように、導体露出部12Aのうち長手方向Xの後方側の基端部13cと長手方向Xの前方側の先端部13dとの間の中間部(接合対象部)が、端子20の導体接合部21に接合されている。
【0064】
また、本実施形態3において、端子20の被覆接合部22には、被覆電線10Aのうち少なくとも被覆先端部16Aが硬化性樹脂30Bによって接合されている。被覆先端部16Aは、被覆電線10Aの絶縁被覆部15Aのうち、導体露出部12Aを露出させるために除去された絶縁被覆部15A(詳細には絶縁被覆部15Aの端末部)の除去際17Aを含む部分である。例えば
図8、9に示すように、被覆先端部16Aと導体露出部12Aの基端部13a(詳細には絶縁被覆部15Aの除去際17Aから延出する部分)とが、硬化性樹脂30Bによって被覆接合部22に接合されている。
【0065】
硬化性樹脂30Bは、
図8~10に示すように、被覆接合部22の接合面上に、被覆電線10Aの幅W2よりも幅広に塗布されている。被覆電線10Aの幅W2は、
図10に示すように、高さ方向Zの各位置に応じて取り得る被覆先端部16Aの幅方向Yの各長さのうち最大値である。例えば、被覆先端部16Aの横断面が幅方向Yに長い扁平形状である場合、幅W2は、この被覆先端部16Aにおける幅方向Yの両端部間の長さに相当する。
【0066】
例えば
図8~10に示すように、硬化性樹脂30Bは、端子20の後端部22aから少なくとも絶縁被覆部15Aの除去際17Aに至る端子領域に亘り、被覆電線10Aの幅W2よりも幅広に塗布されている。本実施形態3において、硬化性樹脂30Bは、上記端子領域に亘り、被覆接合部22の接合面(すなわち
図10に示す高さ方向Zの位置P0)から被覆先端部16Aの外周面の全域を覆う位置P3まで塗布されている。例えば
図8、9に示すように、硬化性樹脂30Bは、端子20の後端部22aから絶縁被覆部15Aの除去際17Aを経て導体露出部12Aの基端部13cに至る上記端子領域に亘り、塗布されている。
【0067】
上述したように端子20の被覆接合部22の接合面上に塗布された硬化性樹脂30Bは、硬化物となって被覆電線10Aの被覆先端部16Aと端子20の被覆接合部22とを接合するとともに、絶縁被覆部15Aの除去際17A全体と導体露出部12Aの基端部13cのうち被覆先端部16Aからの延出端部全体とを覆う。なお、硬化性樹脂30Bの伸縮率の値および構成樹脂は、上述した実施形態1、2における硬化性樹脂30、30Aと同じである。
【0068】
また、本発明の実施形態3に係る端子付き電線1Bの製造方法は、端子20に接合する被覆電線10Aが扁平電線であること以外、上述した実施形態2と同じである。すなわち、端子付き電線1Bの製造方法において、除去工程は、
図4に示す被覆電線10(太物電線)を被覆電線10A(扁平電線)に置き換えた工程と同じである。接合工程は、実施形態2における被覆電線10を被覆電線10Aに置き換え、硬化性樹脂30Aを硬化性樹脂30Bに置き換えたものと同じである。すなわち、この接合工程において、硬化性樹脂30Bは、端子20の後端部22aから少なくとも絶縁被覆部15Aの除去際17Aに至る端子領域に亘り、被覆接合部22の接合面から被覆先端部16Aの外周面の全域を覆う位置P3(
図10参照)まで塗布され、その後、硬化される。
【0069】
以上、説明したように、本発明の実施形態3では、端子20に接合する被覆電線10Aを扁平電線とし、この被覆電線10Aのうち絶縁被覆部15Aの被覆先端部16Aが硬化性樹脂30Bによって端子20の被覆接合部22に接合されるようにし、その他を実施形態2と同様に構成している。このため、端子20に扁平電線(被覆電線10A)を接合した場合であっても、上述した実施形態2と同様の作用効果を享受することができる。
【0070】
(実施形態4)
つぎに、本発明の実施形態4に係る端子付き電線の構成について説明する。
図11は、本発明の実施形態4に係る端子付き電線の一構成例を示す模式図である。
図11には、本実施形態4に係る端子付き電線1Cをその幅方向から見た図が示されている。
図12は、
図11に示す端子付き電線を上方から見た上面図である。
【0071】
図11、12に示すように、本実施形態4に係る端子付き電線1Cは、上述した実施形態3に係る端子付き電線1Bの硬化性樹脂30Bの硬化物に代えて硬化性樹脂30Cの硬化物を備える。すなわち、本実施形態4に係る端子付き電線1Cにおいて、被覆電線10Aの被覆先端部16Aは、硬化性樹脂30Cによって端子20の被覆接合部22に接合されている。その他の構成は実施形態3と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0072】
硬化性樹脂30Cは、
図11、12に示すように、端子20の接合側の面上に、被覆電線10Aの端末部全体を覆うように塗布されている。詳細には、硬化性樹脂30Cは、端子20の後端部22aから絶縁被覆部15Aの除去際17Aを経て導体露出部12Aの先端部13d全体に至る端子領域に亘り、端子20の接合側の面から導体露出部12Aおよび被覆先端部16Aの外周面の全域を覆う高さ位置(例えば
図10に示す高さ方向Zの位置P3)まで塗布されている。なお、端子20の接合側の面は、端子20の高さ方向Z(厚さ方向)の両面のうち、導体接合部21および被覆接合部22の各接合面を含む面である。
【0073】
上述したように塗布された硬化性樹脂30Cは、
図11、12に示すように、硬化物となって被覆電線10Aの被覆先端部16Aと端子20の被覆接合部22とを接合するとともに、絶縁被覆部15Aの除去際17Aおよび導体露出部12Aの全体を覆う。なお、硬化性樹脂30Cの伸縮率の値および構成樹脂は、上述した実施形態1~3における硬化性樹脂30、30A、30Bと同じである。
【0074】
また、本発明の実施形態4に係る端子付き電線1Cの製造方法は、被覆電線10Aの導体露出部12Aと被覆先端部16Aとを端子20に接合する接合工程における硬化性樹脂30Cの塗布以外、上述した実施形態3と同じである。
【0075】
詳細には、
図11、12に示すように、本実施形態4における接合工程において、硬化性樹脂30Cは、端子20の後端部22aから絶縁被覆部15Aの除去際17Aを経て導体露出部12Aの先端部13d全体に至る端子領域に亘り、導体露出部12Aおよび被覆先端部16Aの全体を覆う高さ位置まで塗布される。
【0076】
以上、説明したように、本発明の実施形態4では、被覆電線10Aのうち絶縁被覆部15Aの被覆先端部16Aが硬化性樹脂30Cによって端子20の被覆接合部22に接合されるとともに、この硬化性樹脂30Cが被覆電線10Aの導体露出部12Aおよび被覆先端部16Aの全体を覆うようにし、その他を実施形態3と同様に構成している。このため、上述した実施形態3と同様の作用効果を享受するとともに、硬化性樹脂30Cによる被覆電線10Aの被覆先端部16Aと端子20の被覆接合部22との接合強度をより一層増大させることができる。さらには、絶縁被覆部15Aの除去際17Aと当該除去際17Aから延出(露出)する導体露出部12Aとの全体を硬化性樹脂30Cによって塞ぐことができ、これにより、導体露出部12Aを含む電線導体部11A全体に対する液体の付着を防ぐことができ、この結果、絶縁被覆部15A内の電線導体部11Aの腐食のみならず、絶縁被覆部15Aから露出させた導体露出部12Aの腐食をも防止することができる。
【0077】
なお、上述した実施形態1~4では、被覆電線の導体露出部を溶接によって端子の導体接合部に接合した場合を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、端子にワイヤバレルを設け、当該ワイヤバレルで被覆電線の導体露出部を拘束する(かしめる)ことにより、当該導体露出部を端子の導体接合部に圧着接合してもよい。或いは、被覆電線の導体露出部と端子の導体接合部との接合手法は、超音波接合等の溶接やワイヤバレルでの圧着接合以外の手法であってもよい。
【0078】
また、上述した実施形態1~4では、導体接合部の幅方向両端部に一対の側壁部が設けられた端子を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、端子の被覆接合部の幅方向両端部に、幅方向に対向する一対の側壁部が設けられ、当該一対の側壁部の間に被覆電線の被覆先端部が硬化性樹脂によって接合されてもよい。この場合、被覆接合部の一対の側壁部は、導体接合部の一対の側壁部を被覆接合部側へ延長させたものであってもよいし、導体接合部の一対の側壁部とは独立したものであってもよい。
【0079】
また、上述した実施形態1~4では、被覆電線の絶縁被覆部を構成する絶縁材料として結晶性材料からなるものを例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上記絶縁材料は、非結晶性材料からなるものであってもよい。
【0080】
また、上述した実施形態1~4では、被覆電線の電線導体部を複数の素線によって構成していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、被覆電線の電線導体部は、横断面が円形状をなす太径の単一素線によって構成されてもよいし、横断面が扁平形状をなす単一素線(平角素線)によって構成されてもよい。また、被覆電線は、上述した太物電線または扁平電線であってもよいし、これら以外の被覆電線(細径の被覆電線等)であってもよい。
【0081】
また、上述した実施形態1~4では、AlまたはAl合金からなる電線導体部を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、被覆電線の電線導体部は、銅または銅合金等、AlまたはAl合金以外の金属材からなるものであってもよい。また、被覆電線の端末部が接合される端子(端子金具)は、銅または銅合金からなるものに限定されず、これら以外の金属材からなるものであってもよい。
【0082】
また、本発明は、上述した実施形態1~4によって限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。例えば、本発明に係る端子付き電線は、上述した実施形態1に係る端子付き電線1の被覆電線10(太物電線)を実施形態3における被覆電線10A(扁平電線)に置き換えたもの(実施形態1、3の組み合わせ)であってもよいし、上述した実施形態4に係る端子付き電線1Cの被覆電線10A(扁平電線)を実施形態1における被覆電線10(太物電線)に置き換えたもの(実施形態1、4の組み合わせ)であってもよい。その他、上述した実施形態1~4に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1、1A、1B、1C 端子付き電線
10、10A 被覆電線
11、11A 電線導体部
12、12A 導体露出部
13a、13c 基端部
13b、13d 先端部
14 素線
15、15A 絶縁被覆部
16、16A 被覆先端部
17、17A 除去際
18 端末部
20 端子
21 導体接合部
21a、21b 側壁部
22 被覆接合部
22a 後端部
23 端子先端部
30、30A、30B、30C 硬化性樹脂
P0、P1、P2、P3 位置
X 長手方向
Y 幅方向
Z 高さ方向