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特開2022-102101樹脂組成物の製造方法、絶縁電線の製造方法およびケーブルの製造方法
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  • 特開-樹脂組成物の製造方法、絶縁電線の製造方法およびケーブルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102101
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】樹脂組成物の製造方法、絶縁電線の製造方法およびケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20220630BHJP
   C08L 23/28 20060101ALI20220630BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20220630BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220630BHJP
   H01B 13/14 20060101ALI20220630BHJP
   H01B 13/24 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CES
C08L23/28
C08L23/04
C08K3/04
H01B13/14 Z
H01B13/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216633
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 龍太
(72)【発明者】
【氏名】濱川 修一
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 充記
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
5G325
5G327
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AB04
4F070AC04
4F070AE03
4F070AE06
4F070FA17
4F070FB07
4F070FC03
4J002BB05X
4J002BB24W
4J002DA036
4J002FD206
4J002GQ00
5G325JA02
5G325JC02
5G327BC04
(57)【要約】
【課題】塩素化ポリエチレンとエチレンαオレフィン共重合体の相溶性を向上し、凝集体の発生を低減する。
【解決手段】(a)塩素化ポリエチレンとエチレンαオレフィン共重合体とを混合することにより第1混合物を得る工程、(b)前記第1混合物に、さらにエチレンαオレフィン共重合体を添加し、混合することにより、第2混合物よりなる樹脂組成物を形成する工程、を、有し、前記(a)工程における前記塩素化ポリエチレンの添加量は、前記ベースポリマー100質量部に対して、20質量部以上60質量部以下であり、前記(a)工程および前記(b)工程における前記エチレンαオレフィン共重合体の添加量の合計は、前記ベースポリマー100質量部中の含有割合が40質量部以上80質量部以下であり、前記(a)工程における前記塩素化ポリエチレンの添加量と前記エチレンαオレフィン共重合体の添加量との質量比は、1:0.875~1.125である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化ポリエチレンとエチレンαオレフィン共重合体とをベースポリマーとして有する樹脂組成物の製造方法であって、
(a)塩素化ポリエチレンとエチレンαオレフィン共重合体とを混合することにより第1混合物を得る工程、
(b)前記第1混合物に、さらにエチレンαオレフィン共重合体を添加し、混合することにより、第2混合物よりなる樹脂組成物を形成する工程、
を有し、
前記(a)工程における前記塩素化ポリエチレンの添加量は、前記ベースポリマー100質量部に対して、20質量部以上60質量部以下であり、
前記(a)工程および前記(b)工程における前記エチレンαオレフィン共重合体の添加量の合計は、前記ベースポリマー100質量部中の含有割合が40質量部以上80質量部以下であり、
前記(a)工程における前記塩素化ポリエチレンの添加量と前記エチレンαオレフィン共重合体の添加量との質量比は、1:0.875~1.125である、樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂組成物の製造方法において、
前記塩素化ポリエチレンの塩素化度は、20質量%以上45質量%以下であり、
前記エチレンαオレフィン共重合体は、エチレンと、炭素数が3~8のαオレフィンコモノマーとの共重合体である、樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の樹脂組成物の製造方法において、
前記(a)工程において、ベースポリマー100質量部に対し、10質量部以上30質量部以下のカーボンブラックを添加する、樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
導体に絶縁層となる樹脂組成物を被覆する工程を有する絶縁電線の製造方法であって、
前記樹脂組成物の製造工程として請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法を有する、絶縁電線の製造方法。
【請求項5】
導体と前記導体の外周に形成された絶縁層とを有するコア部に、シース層となる樹脂組成物を被覆する工程を有するケーブルの製造方法であって、
前記樹脂組成物の製造工程として請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法を有する、ケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物の製造方法、絶縁電線の製造方法およびケーブルの製造方法、特に塩素化ポリエチレンとエチレンαオレフィン共重合体とを有する樹脂組成物の製造方法および係る樹脂組成物を用いた絶縁電線やケーブルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
絶縁電線の絶縁層やケーブルのシース層として、難燃性に優れた樹脂である塩素化ポリエチレンと、エチレンとαオレフィンとの共重合体(以下、エチレンαオレフィン共重合体という)と、を混合した樹脂組成物が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、塩素化ポリエチレン、エチレンαオレフィン共重合体およびカーボンブラックを混合して樹脂成形用マスターバッチを得る工程と、得られた樹脂成形用マスターバッチに、さらに、エチレンαオレフィン共重合体を混合して樹脂組成物を得る工程とを含むことを特徴とする樹脂組成物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-90703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、難燃性に優れた樹脂である塩素化ポリエチレンと、エチレンαオレフィン共重合体との混合物をベースポリマーとした樹脂組成物を絶縁電線の絶縁層やケーブルのシース層として採用することを検討している。しかしながら、塩素化ポリエチレンと、エチレンαオレフィン共重合体との混合においては、これらの粘度の差が大きいことから、相溶性が悪く、樹脂組成物中に塩素化ポリエチレンの凝集体が生じやすいという問題があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、塩素化ポリエチレンとエチレンαオレフィン共重合体との相溶性を向上し、凝集体の発生を低減することができる樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。また、塩素化ポリエチレンとエチレンαオレフィン共重合体との相溶性を向上し、凝集体の発生を低減した樹脂組成物を用いることで、特性の良好な絶縁電線やケーブルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の一態様の樹脂組成物の製造方法は、塩素化ポリエチレンとエチレンαオレフィン共重合体とをベースポリマーとして有する樹脂組成物の製造方法であって、(a)塩素化ポリエチレンとエチレンαオレフィン共重合体とを混合することにより第1混合物を得る工程、(b)前記第1混合物に、さらにエチレンαオレフィン共重合体を添加し、混合することにより、第2混合物よりなる樹脂組成物を形成する工程、を有し、前記(a)工程における前記塩素化ポリエチレンの添加量は、前記ベースポリマー100質量部に対して、20質量部以上60質量部以下であり、前記(a)工程および前記(b)工程における前記エチレンαオレフィン共重合体の添加量の合計は、前記ベースポリマー100質量部中の含有割合が40質量部以上80質量部以下であり、前記(a)工程における前記塩素化ポリエチレンの添加量と前記エチレンαオレフィン共重合体の添加量との質量比は、1:0.875~1.125である。
[2][1]に記載の樹脂組成物の製造方法において、前記塩素化ポリエチレンの塩素化度は、20質量%以上45質量%以下であり、前記エチレンαオレフィン共重合体は、エチレンと、炭素数が3~8のαオレフィンコモノマーとの共重合体である。
[3][1]または[2]に記載の樹脂組成物の製造方法において、前記(a)工程において、ベースポリマー100質量部に対し、10質量部以上30質量部以下のカーボンブラックを添加する。
[4]導体に、絶縁層となる樹脂組成物を被覆する工程を有する絶縁電線の製造方法であって、前記樹脂組成物の製造工程として[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法を有する。
[5]導体と前記導体の外周に形成された絶縁層とを有するコア部に、シース層となる樹脂組成物を被覆する工程を有するケーブルの製造方法であって、前記樹脂組成物の製造工程として[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物の製造方法によれば、塩素化ポリエチレンとエチレンαオレフィン共重合体の相溶性を向上し、凝集体の発生を低減することができる。また、本発明の絶縁電線の製造方法によれば、絶縁層となる樹脂組成物の混練工程時における凝集体の発生を低減でき、良好な特性の絶縁電線の製造方法を提供することができる。また、本発明のケーブルの製造方法によれば、シース層となる樹脂組成物の混練工程時における凝集体の発生を低減でき、良好な特性のケーブルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】バンバリーミキサーの構成を示す断面図である。
図2】絶縁電線の構成を示す断面図である。
図3】ケーブルの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
(樹脂組成物)
本実施の形態の樹脂組成物は、ベースポリマーとして、塩素化ポリエチレンとエチレンαオレフィン共重合体とを有する。また、本実施の形態の樹脂組成物は、添加剤として、顔料、フィラー、可塑剤、酸化防止剤、滑剤、難燃剤、安定剤等を含んでいてもよい。
【0011】
(塩素化ポリエチレン)
塩素化ポリエチレンとしては、特にその粒子径を制限するものではないが、粒子径分布を累積分布として表し、横軸を粒子径として粗大な粒子の側をゼロとして右下がりとなるグラフを作成する場合に、本実施の形態に係る塩素化ポリエチレンは、1100μm以上の粗大な粒子が無く、かつ累積分布20%の粒子(D20)が700μm以下である粒子を用いることが好ましい。このような粒子としては、Chemical Inspection & Regulation Service 社製のCM3685を挙げることができる。
【0012】
また、塩素化ポリエチレンの塩素化度は20~40質量%が好ましい。塩素化ポリエチレンのベースポリマー中の含有割合はベースポリマー100質量部に対して20質量部以上60質量部以下であることが好ましい。
【0013】
(エチレンαオレフィン共重合体)
エチレンαオレフィン共重合体としては、例えば、エチレンと炭素数が3~8のαオレフィンコモノマーとからなる共重合体を用いることができる。中でもエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることが好ましい。また、エチレンαオレフィン共重合体のベースポリマー中の含有割合は、ベースポリマー100質量部に対して40質量部以上80質量部以下であることが好ましい。
【0014】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施の形態の樹脂組成物の製造方法は、第1混練工程において、塩素化ポリエチレンと、エチレンαオレフィン共重合体とを混合し第1混練物(第1混合物とも言う)を形成し、第2混練工程において、第1混練物に、さらに、エチレンαオレフィン共重合体を混合して第2混練物(第2混合物とも言う)である樹脂組成物を得るものである。
【0015】
このように、塩素化ポリエチレンとエチレンαオレフィン共重合体とを混練する工程を、複数の工程に分けて、エチレンαオレフィン共重合体を分割投与することにより、最初の混練工程における樹脂組成物の粘度を低下させることができ、混練中の樹脂の自己発熱による温度上昇を抑制することができる。その結果、塩素化ポリエチレンとエチレンαオレフィン共重合体との相溶性を向上でき、塩素化ポリエチレンの凝集体の発生を低減することができる。
【0016】
そして、最初の混練工程において、塩素化ポリエチレンの添加量とエチレンαオレフィン共重合体の添加量との質量比は、1:0.875~1.125であることが好ましい。
【0017】
また、上記第1混練工程や第2混練工程において、添加剤を添加してもよい。添加剤としては、前述したように、顔料、フィラー、可塑剤、酸化防止剤、滑剤、難燃剤、安定剤等が挙げられる。
【0018】
(添加剤)
添加剤のうち、顔料として、カーボンブラックを用いることができる。特に、カーボンブラックは、熱導電性が高く、混練中の混合物の自己発熱により発生した熱を放散し、混合物の温度上昇を抑制して混練工程時における凝集体の発生を低減する働きがあるため、第1混練工程において添加することが好ましい。また、カーボンブラックの添加量としては、ベースポリマー100質量部に対して10質量部以上30質量部以下であることが好ましい。カーボンブラックの種類に制限はないが、例えばMTカーボンを用いることができる。
【0019】
このように、添加剤のうち、熱導電性が高い添加剤においては、上記カーボンブラックのような効果を奏するため、第1混練工程において添加することが好ましい。
【0020】
添加剤のうち、フィラーとして、タルクを用いることができる。タルクの添加量としては、ベースポリマー100質量部に対して10質量部以上30質量部以下であることが好ましい。タルクとしては、例えばハイフィラー#16を用いることができる。
【0021】
(混練装置)
樹脂組成物形成用の混練装置に制限はないが、バンバリーミキサー、二軸連続押出機、加圧式ニーダー等を用いることができる。混練時において、自己発熱による樹脂の温度上昇を抑えるために、混練部の外周に冷却部を有する混練装置を用いることが好ましい。例えば、混練部(混練容器)の外周に冷媒(水やガスなど)を循環させることにより、混練物の温度上昇を抑えることができる。特に、樹脂組成物の温度が180℃を超える場合には、塩素化ポリエチレンの脱塩酸を引き起して粘度が上昇するため、未相溶の塩素化ポリエチレンを主体とする凝集体が生じやすい。特に、塩素化度が20~45質量%の場合には、脱塩酸が生じやすく、樹脂組成物の温度が180℃を超えないように混練部の温度を制御することが好ましい。
【0022】
図1は、バンバリーミキサーの構成を示す断面図である。図1に示すバンバリーミキサーは、材料を混練する混練部Aを有する。材料Mは、混練部Aの上方にある供給部Bから供給される。材料Mは、ホッパー111から投入され、ホッパー111と連通するシリンダ部113を通り、ウエイト(ラム)115によりチャンバー117内へ送り込まれる。チャンバー117内には、2つのローター119が回転可能に配置されている。また、チャンバー117の底部には、混練物を取り出すための開閉扉(図示せず)が設けられている。また、チャンバー117の外周には、冷却水などの冷却媒が通る流路123が設けられている(ジャケット水冷構造)。
【0023】
ローター119は、軸Cを中心とした回転運動をするように構成されており、それぞれのローターには、混練羽(混練翼)Wが設けられている。混練羽Wは、ローター119の周面から突出しており、図1の断面においては、1の混練羽Wしか記載されていないが、ローター119の周面に複数設けられる。例えば、混練羽Wが4つ設けられたローターは、4枚羽ローターと呼ばれ、混練性の高いローターとして好ましい。
【0024】
図1に示すバンバリーミキサーを用いて、本実施の形態の樹脂組成物を製造することができる。例えば、第1混練工程において、塩素化ポリエチレンと、エチレンαオレフィン共重合体と、カーボンブラックなどの添加剤をホッパー111から投入し、ウエイト115を下降させ、上記材料をチャンバー内へ送り込むとともに、チャンバー内を閉鎖空間とする。この後、ローターを回転させることで、上記材料を混練することにより、第1混練物を得る。この際、流路123に冷却水を通しながら混練することが好ましい。
【0025】
次いで、第2混練工程において、ウエイト115を上昇させ、上記第1混練物に、エチレンαオレフィン共重合体と、他の添加剤をホッパー111から投入し、ウエイト115を下降させ、上記材料をチャンバー内へ送り込むとともに、チャンバー内を閉鎖空間とする。この後、ローターを回転させることで、上記材料を混練することにより、第2混練物(樹脂組成物)を得る。この際、流路に冷却水を通しながら混練することが好ましい。
【0026】
このように、エチレンαオレフィン共重合体を分割投与することにより、塩素化ポリエチレンとエチレンαオレフィン共重合体との相溶性を向上させ、塩素化ポリエチレンの凝集体の発生を低減することができる。
【0027】
また、上記工程によれば、1つのバンバリーミキサーにより、第1、第2混練工程が可能であり、第2混練物(樹脂組成物)を生産性良く製造することができる。
【0028】
例えば、前述の特許文献1に係る技術によれば、まず、初期材料を二軸連続押出機に投入し、樹脂成形用マスターバッチを製造した後、樹脂成形用マスターバッチに対してエチレン酢酸ビニル共重合体等を上記二軸連続押出機と同じタイプの押出機を用いて混練するといった工程が必要となるのに対し、本実施の形態においては、1の混練装置により第1、第2混練工程を行うことが可能であり、第2混練物(樹脂組成物)を生産性良く製造することができる。
【0029】
(絶縁電線)
本実施の形態の樹脂組成物は、絶縁電線の絶縁層として用いることができる。図2は、絶縁電線を示す断面図である。図2に示すように、絶縁電線10は、導体1と、導体1の周囲に被覆される絶縁層2とを有している。
【0030】
導体1としては、通常用いられる金属線、例えば銅線、銅合金線のほか、アルミニウム線、金線、銀線などを用いることができる。また、導体1として、金属線の周囲に錫やニッケルなどの金属めっきを施したものを用いてもよい。さらに、導体1として、金属線を撚り合わせた撚り導体を用いることもできる。
【0031】
例えば、導体1の外周に本実施の形態の樹脂組成物を被覆し、絶縁層2を形成することにより、絶縁電線を形成することができる。
【0032】
(ケーブル)
本実施の形態の樹脂組成物は、ケーブルのシース層として用いることができる。図3は、ケーブルを示す断面図である。図3に示すように、ケーブル20は、導体1と、導体1の周囲に被覆される絶縁層2を有する絶縁電線10と、この絶縁電線10の外周に設けられたシース層3とを有する。ケーブル20は、複数本の絶縁電線10を有していてもよく、絶縁電線10が撚られた撚り線を有していてもよい。この撚り線とシース層3との間には、介在4や巻きテープ5などが設けられていてもよい。シース層3の内側の部分をコア部という場合がある。
【0033】
例えば、コア部の外周に本実施の形態の樹脂組成物を被覆し、シース層3を形成することにより、ケーブルを形成することができる。
【0034】
[実施例]
次いで、実施例に基づき本実施の形態をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
<第1混練工程>
粉状体の塩素化ポリエチレン(CPE、商品名 CM3685)40質量部と、ペレット状のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA、商品名 EVA260)60質量部中の40質量部と、最終ベースポリマー量(CPE40質量部とEVA60質量部の和)100質量部に対してカーボンブラック(MTカーボン)16質量部と、その他の添加剤30質量部とを、バンバリーミキサー(チャンバー容量76L、図1参照)を用いて混練した。その他の添加剤は、安定剤(JER828)1質量部、安定剤(マグセラー1)6質量部、安定剤(ブルガノックスHS/LG)1質量部、難燃剤(三酸化アンチモン)3質量部、滑剤(ステアリン酸バリウム)1質量部、タルク(ハイフィラー#16)16質量部、DCP(ジクミルパーオキサイド)2質量部の合計30質量部である。
【0036】
具体的には、上記材料をホッパー111から投入し、ウエイト115を下降させ、上記材料をチャンバー117内へ送り込むとともに、チャンバー117内を閉鎖空間とし、ローター119を回転させることにより、上記材料を混練した。ここでは、4枚羽ローターを用い、ローター119の回転速度60rpmとし、チャンバー内の温度が140℃となるまで混練し、第1混練物を得た。この第1混練工程においては、流路に冷却水を通しながら混練した。
【0037】
<第2混練工程>
次いで、上記第1混練物に、ペレット状のエチレン酢酸ビニル共重合体(商品名 EVA260)60質量部中の残りの20質量部を添加し、バンバリーミキサー(図1参照)を用いて混練した。
【0038】
具体的には、ウエイト115を上昇させ、上記第1混練物上に、ホッパー111からペレット状のエチレン酢酸ビニル共重合体を添加し、ウエイト115を下降させチャンバー117内を閉鎖空間とし、ローター119を回転させることにより、第2混練物(樹脂組成物)を得た。ここでは、4枚羽ローターを用い、ローター119の回転速度45rpmとし、2分間混練した後、ローターの回転速度65rpmとし、チャンバー内の温度が145℃となるまで混練し、第2混練物(樹脂組成物)を得た。この第2混練工程においては、流路に冷却水を通しながら混練した。
【0039】
(実施例2)
実施例1においては、エチレン酢酸ビニル共重合体(商品名 EVA260)を第1混練工程において40質量部添加し、第2混練工程において20質量部添加したが、第1混練工程の添加量を35質量部とし、第2混練工程の添加量を25質量部とする以外は実施例1の場合と同様にして第2混練物(樹脂組成物)を得た。実施例1、2の場合のエチレン酢酸ビニル共重合体の添加量を表1に示す。
【0040】
(比較例1~4)
エチレン酢酸ビニル共重合体(商品名 EVA260)の第1混練工程の添加量と、第2混練工程の添加量とを表1に示す割合で変化させる以外は、実施例1の場合と同様にして第2混練物(樹脂組成物)を得た。
【0041】
(評価1)
(混練性)
上記第1混練工程および第2混練工程における混練性について目視により評価した。評価結果を表1に示す。
【0042】
(絶縁電線)
実施例1、2、比較例1、2について、得られた第2混練物(樹脂組成物)を押出成形装置を用いて直径1mmの撚線導体の上に1mm厚に被覆することにより絶縁層を形成し、絶縁電線を得た。
【0043】
(評価2)
絶縁電線の外観は絶縁電線の表面を触わることで凹凸の有無(塩素化ポリエチレンの凝集体の有無)を確認した。触診により凹凸が確認される場合には不良、確認されない場合には良好と判断した。評価結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、EVAについて、第1混練工程の添加量と、第2混練工程の添加量とが、(60質量部、0質量部)の比較例1においては、第1混練工程および第2混練工程とも正常に終了したものの、評価2(絶縁電線の外観)において、凹凸、即ち、塩素化ポリエチレンの凝集体が確認され、不良となった。
【0046】
表1に示すように、EVAについて、第1混練工程の添加量と、第2混練工程の添加量とが、(50質量部、10質量部)の比較例2においては、第1混練工程および第2混練工程とも正常に終了したものの、評価2(絶縁電線の外観)において、凹凸、即ち、塩素化ポリエチレンの凝集体が確認され、不良となった。
【0047】
表1に示すように、EVAについて、第1混練工程の添加量と、第2混練工程の添加量とが、(40質量部、20質量部)の実施例1においては、第1混練工程および第2混練工程とも正常に終了し、かつ、評価2(絶縁電線の外観)においても、凹凸、即ち、塩素化ポリエチレンの凝集体が確認されず、良好となった。
【0048】
表1に示すように、EVAについて、第1混練工程の添加量と、第2混練工程の添加量とが、(35質量部、25質量部)の実施例2においては、第1混練工程および第2混練工程とも正常に終了し、かつ、評価2(絶縁電線の外観)においても、凹凸、即ち、塩素化ポリエチレンの凝集体が確認されず、良好となった。
【0049】
表1に示すように、EVAについて、第1混練工程の添加量と、第2混練工程の添加量とが、(30質量部、30質量部)の比較例3においては、第1混練工程において、急激に温度が上昇し、十分な混練ができなかった(※1)。また、温度上昇を無視して混練を継続した場合には前述したように塩素化ポリエチレンの脱塩酸により塩素化ポリエチレンを主体とする凝集体が生じやすく、評価2(絶縁電線の外観)において、凹凸、即ち、塩素化ポリエチレンの凝集体が確認され、不良となる。
【0050】
表1に示すように、EVAについて、第1混練工程の添加量と、第2混練工程の添加量とが、(0質量部、60質量部)の比較例4においては、第1混練工程においては、材料が練りつかず、EVA添加後の第2混練工程において始めて混練が可能となるものの(※2)、比較例1の場合と同様に、評価2(絶縁電線の外観)において、凹凸、即ち、塩素化ポリエチレンの凝集体が確認され、不良となる。
【0051】
よって、第1混練工程において、塩素化ポリエチレン(CPE)の添加量が40質量部であることから、塩素化ポリエチレン(CPE)の添加量とエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)の添加量との比は、40:40~40:35、即ち、1:1~0.875が好ましいことが判明した。
【0052】
本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0053】
例えば、上記実施例においては、混練装置としてバンバリーミキサー(図1参照)を用いたが、加圧式ニーダーを用いてもよい。加圧式ニーダーは、バンバリーミキサーと類似の構造であり、例えば、加圧式ニーダーで上記樹脂組成物を製造する場合には、冷却水により混練部を冷却しながら第1混練工程において、上記材料を投入し、樹脂温度が140℃に到達するまで混練した後、第2混練工程において、上記材料を投入し、ローター回転数を低下させて145℃まで混練し、樹脂組成物を製造することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 導体
2 絶縁層
3 シース
4 介在
5 巻きテープ
10 電線
20 ケーブル
111 ホッパー
113 シリンダ部
115 ウエイト(ラム)
117 チャンバー
119 ローター
123 流路
A 混練部
B 供給部
M 材料
W 混練羽
図1
図2
図3