(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102171
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】化合物、組成物及びポリマー
(51)【国際特許分類】
C07D 323/00 20060101AFI20220630BHJP
C08G 63/08 20060101ALI20220630BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
C07D323/00 CSP
C08G63/08
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020216745
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】イライジャ ボルツ
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 敦久
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 英知
【テーマコード(参考)】
4C022
4J029
4J200
【Fターム(参考)】
4C022NA01
4J029AA02
4J029AE01
4J029AE11
4J029AE13
4J029EH01
4J029HE01
4J200AA03
4J200BA17
4J200EA10
4J200EA11
(57)【要約】
【課題】熱成形性及び生分解性が良好なポリヒドロキシアルカノエート樹脂の原料として有用な化合物、該化合物を含有する組成物、及び該組成物を開環重合して得られるポリマーの提供。
【解決手段】一般式(1)で表される化合物、該化合物を含有する組成物、及び該組成物を開環重合して得られるポリマー(式中、各Rはそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基である。mは0~2の整数である。)。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
[式中、各Rはそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基である。mは0~2の整数である。]
【請求項2】
【請求項3】
【請求項4】
下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有する組成物。
【化4】
[式中、各Rはそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基である。mは0~2の整数である。]
【請求項5】
請求項4に記載の組成物を開環重合して得られるポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、組成物及びポリマーに関する。より具体的には、本発明は、3-ヒドロキシプロパネート環状体化合物、該化合物を含有する組成物、及び該組成物を開環重合して得られるポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの大量廃棄による地球環境悪化の社会課題に対し、あらゆる状況下(淡水/海洋中、コンポスト、土壌中)で生分解性を有する樹脂を材料とした、サステナブルな製品群(コーティング剤、インキ、接着剤、シート、フィルム、積層体、成型体)の需要が高まっている。
【0003】
淡水/海洋中、コンポスト、土壌、全ての環境下で生分解性を示す樹脂として、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が挙げられる。
PHAの合成方法としては、例えば、特許文献1には、3-ヒドロキシプロパン環状体を開環重合してポリマーを合成する方法が記載されている。また、非特許文献1には、ピバロラクトン(2,2-ジメチルプロパン酸)の環状オリゴマーを合成し、該環状オリゴマーを開環重合する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of Organic Chemistry 1995,60,6826-6828
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが検討した結果、特許文献1に記載の方法で得られたPHAは、一般的に150度付近で熱分解するため、重合反応の温度上限が150度程度であること、また、溶融温度と熱分解温度が近く、加工時に熱分解が進行するため、熱成形性が低いという問題があった。一方、非特許文献1に記載の方法で得られたPHAは、熱分解温度が200度以上であるため、重合反応の温度上限が200度以上であり、熱成形性は良好であるが、生分解性に劣るという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、熱成形性及び生分解性が良好なポリヒドロキシアルカノエート樹脂の原料として有用な化合物、該化合物を含有する組成物、及び該組成物を開環重合して得られるポリマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を包含する。
(1)下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
[式中、各Rはそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基である。mは0~2の整数である。]
(2)下記式(2)で表される化合物。
【化2】
(3)下記式(3)で表される化合物。
【化3】
(4)下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有する組成物。
【化4】
[式中、各Rはそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基である。mは0~2の整数である。]
(5)前記(4)に記載の組成物を開環重合して得られるポリマー。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱成形性及び生分解性が良好なポリヒドロキシアルカノエート樹脂の原料として有用な化合物、該化合物を含有する組成物、及び該組成物を開環重合して得られるポリマーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例3に係る化合物の熱処理前後のNMRスペクトルである。
【
図2】実施例3に係る化合物の熱処理前後のゲルパーミエーションクロマトグラフの測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<化合物>
本実施形態の化合物は、下記一般式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」ともいう)である。
なお、本明細書及び本特許請求の範囲において、化学式で表される構造によっては、不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがある。その場合は一つの化学式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0012】
【化5】
[式中、各Rはそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基である。mは0~2の整数である。]
【0013】
前記式(1)中、Rにおける炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基又はこれらの異性体等が挙げられる。
なかでも、Rにおける炭素数1~10のアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
前記式(1)中、mは0~2の整数であり、好ましくは1又は2であり、より好ましくは1である。
【0014】
本実施形態において、化合物(1)としては、下記式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」ともいう)及び下記式(3)で表される化合物(以下、「化合物(3)」ともいう)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
【0016】
<化合物の製造方法>
本実施形態の化合物(1)は、下記一般式(1a)で表される化合物(以下、「化合物(1a)」ともいう)の自己縮合により得られる。
【0017】
【化7】
[式中、各Rはそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基である。mは0~2の整数である。]
【0018】
前記式(1a)中、Rは前記式(1)中のRと同様である。
化合物(1a)の自己縮合の反応温度は特に限定されないが、例えば100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上が更に好ましく、そして、180℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましい。これらの数値範囲の上限と下限はいずれの組み合わせでも用いることができる。化合物(1a)の自己縮合の反応温度は、100~180℃が好ましく、120~160℃がより好ましく、130~150℃が更に好ましい。
化合物(1a)の自己縮合の反応時間は特に限定されないが、例えば12時間以上が好ましく、20時間以上がより好ましく、24時間以上が更に好ましく、そして、72時間以下が好ましく、60時間以下がより好ましく、48時間以下が更に好ましい。これらの数値範囲の上限と下限はいずれの組み合わせでも用いることができる。化合物(1a)の自己縮合の反応時間は、12~72時間が好ましく、20~60時間がより好ましく、24~60時間が更に好ましい。
【0019】
化合物(1a)の自己縮合は、触媒の存在下で行ってもよい。該触媒としては、例えば、2,2-ジブチル-1,3,2-ジオキソスタノラン、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、オルガノ株式会社のIR120B-Hなどの強酸性型陽イオン交換樹脂等が挙げられる。
また、化合物(1a)の自己縮合は、キシレン、ベンゼン、トルエン等の有機溶媒の存在下で行ってもよい。
【0020】
反応終了後、反応液中の化合物(1)を単離、精製してもよい。
単離、精製には、従来公知の方法が利用でき、例えば濃縮、溶媒抽出、蒸留、結晶化、再結晶、クロマトグラフィー等をいずれか単独で、又はこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記のようにして得られた化合物(1)の構造は、1H-核磁気共鳴(NMR)スペクトル法、13C-NMRスペクトル法、19F-NMRスペクトル法、赤外線吸収(IR)スペクトル法、質量分析(MS)法、元素分析法、X線結晶回折法等の一般的な有機分析法により確認できる。
【0021】
<組成物>
本実施形態の組成物は、前記化合物(1)を少なくとも1種含有する。更に必要に応じて前記化合物(1)以外の他の環状エステル(以下、単に「他の環状エステル」ともいう)、触媒、及び、溶媒を含んでいても良い。
【0022】
本実施形態の組成物に含まれる化合物(1)は、1種単独でもよく、2種以上であってもよい。該組成物を開環重合して得られるポリマーの生分解性向上の観点から、本実施形態の組成物に含まれる化合物(1)は、前記化合物(2)及び前記化合物(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本実施形態の組成物中の化合物(1)の含有量は、該組成物を構成する全成分の合計(100重量%)に対して、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、そして、100重量%以下が好ましく、99重量%以下がより好ましい。これらの数値範囲の上限と下限はいずれの組み合わせでも用いることができる。本実施形態の組成物中の化合物(1)の含有量は、触媒及び溶媒との合計(100重量%)に対して、5~100重量%が好ましく、10~99重量%がより好ましい。
本実施形態の組成物中の化合物(1)の含有量が上記の好ましい範囲内であると、高分子量ポリマーの合成がより良好になりやすい。
【0023】
<他の環状エステル>
他の環状エステルとしては特に限定しないが、脂肪族環状エステルを挙げることができる。
脂肪族環状エステルとしては、一種類の分子が環状化した環状エステルであってもよく、二つ以上の複数種の分子が環状化した環状エステルであってもよい。
【0024】
<一種類の分子が環状化した環状エステル>
一種類の分子が環状化した環状エステルとして、特に限定しないが、ラクチド、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ヘキサノラクトン又はカプロラクトン等が挙げられる。なお、上記の化合物は、置換基を有していてもよい。
【0025】
<二つ以上の複数種の分子が環状化した環状エステル>
二つ以上の複数種の分子が環状化した環状エステルとして、特に限定しないが、乳酸、ヒドロキシプロパン酸、ヒドロキシブタン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘキサン酸、ヒドロキシヘプタン酸などのヒドロキシ酸を含む環状エステル等が挙げられる。なお、上記の他の繰り返し単位を誘導する化合物は、置換基を有していてもよい。
【0026】
他の環状エステルは、1種単独でもよく、2種以上であってもよい。
本実施形態の組成物が他の環状エステルを含む場合、他の環状エステルの含有量は、該組成物を構成する全成分の合計(100重量%)に対して、0重量%より多く、そして、95重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましい。これらの数値範囲の上限と下限はいずれの組み合わせでも用いることができる。本実施形態の組成物が他の環状エステルを含む場合、他の環状エステルの含有量は、該組成物を構成する全成分の合計(100重量%)に対して、0重量%超~95重量%が好ましく、0重量%超~85重量%以下がより好ましい。
他の環状エステルの含有量が上記の好ましい範囲内であると、生分解性がより良好になりやすい。
【0027】
<触媒>
触媒としては特に限定しないが、一般的に環状ポリエステルの開環重合に用いる触媒であれば良い。特に限定しないが、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三塩化ヨウ素、四塩化スズ、テトライソプロポキシチタン、メタンスルホン酸等が挙げられる。
【0028】
触媒は、1種単独でもよく、2種以上であってもよい。
本実施形態の組成物が触媒を含む場合、触媒の含有量は、該組成物を構成する全成分の合計(100重量%)に対して1重量ppm以上が好ましく、10重量ppm以上がより好ましく、そして、1000重量ppm以下が好ましく、500重量ppm以下がより好ましい。これらの数値範囲の上限と下限はいずれの組み合わせでも用いることができる。本実施形態の組成物が触媒を含む場合、触媒の含有量は、該組成物を構成する全成分の合計(100重量%)に対して1~1000重量ppmが好ましく、10~500重量ppmがより好ましい。
触媒の含有量が上記の好ましい範囲内であると、化合物(1)の重合反応が進行しやすい。
【0029】
<溶媒>
溶媒としては特に限定しないが、当該組成物を溶解する溶媒であれば良い。例えば、トルエン、キシレン、オルトジクロロベンゼン、ジフェニルエーテルなどが挙げられる。
溶媒は、1種単独でもよく、2種以上であってもよい。
本実施形態の組成物が溶媒を含む場合、溶媒の含有量は該組成物を構成する全成分の合計(100重量%)に対して、0重量%より多く、そして、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。これらの数値範囲の上限と下限はいずれの組み合わせでも用いることができる。本実施形態の組成物が溶媒を含む場合、溶媒の含有量は該組成物を構成する全成分の合計(100重量%)に対して、0重量%超~10重量%が好ましく、0重量%超~5重量%がより好ましい。
【0030】
<ポリマー>
本実施形態のポリマーは、前記組成物を開環重合して得られる。
前記組成物の開環重合の反応温度は特に限定されないが、例えば10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましく、そして、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、160℃以下が更に好ましい。これらの数値の上限と下限はいずれの組み合わせでも用いられる。前記組成物の開環重合の反応温度は、10~200℃が好ましく、20~180℃がより好ましく、30~160℃が更に好ましい。
前記組成物の開環重合の反応時間は特に限定されないが、例えば1時間以上が好ましく、12時間以上がより好ましく、15時間以上が更に好ましく、そして、72時間以下が好ましく、48時間以下がより好ましく、30時間以下が更に好ましい。これらの数値範囲の上限と下限はいずれの組み合わせでも用いることができる。前記組成物の開環重合の反応時間は、1~72時間が好ましく、12~48時間がより好ましく、15~30時間が更に好ましい。
【0031】
前記組成物の開環重合は、触媒の存在下で行ってもよい。該触媒としては、例えば、有機触媒、無機触媒、または有機金属触媒、例えば、有機金属錯体等が挙げられる。触媒は遷移金属触媒であってもよい。遷移金属は、例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミン基、アラルキルアミン基、またはそれらの組み合わせなどの有機基に配位することができる。触媒は亜鉛アルコキシド錯体であってもよい。
【0032】
本実施形態において、開環重合は、下記一般式(z-1)で表される亜鉛化合物(以下、「化合物(z-1)」ともいう)を触媒として用いてもよい。
【0033】
【化8】
[式中、各Rcはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基である。]
【0034】
本実施形態において、化合物(z-1)は、下記一般式(z-1-1)で表される化合物(以下、「化合物(z-1-1)」ともいう)であることが好ましい。
【0035】
【0036】
本実施形態のポリマーは、典型的には、前記化合物(1)から誘導される、下記式(p1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(p1)」ともいう)を有する。
【0037】
【化10】
[式中、Rは前記式(1)中のRと同様である。]
【0038】
本実施形態のポリマーが有する繰り返し単位(p1)は、1種でもよく2種以上でもよい。
ポリマー中の繰り返し単位(p1)の割合は、ポリマーを構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、5モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、そして、100モル%以下が好ましく、100モル%であってもよい。これらの数値範囲の上限と下限はいずれの組み合わせでも用いることができる。ポリマー中の繰り返し単位(p1)の割合は、ポリマーを構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、5~100モル%が好ましく、15~100モル%がより好ましい。
繰り返し単位(p1)の割合を上記の好ましい範囲内とすることにより、ポリマーの生分解性が良好となりやすい。
【0039】
本実施形態のポリマーは、繰り返し単位(p1)以外の他の繰り返し単位(以下、単に「他の繰り返し単位」ともいう)を有してもよい。上記の他の繰り返し単位を誘導する化合物は、置換基を有していてもよい。
他の繰り返し単位を誘導する化合物が環状化合物である場合、前記組成物の開環重合と同時に共重合してもよく、前記組成物の開環重合の後に共重合してもよい。また、前記組成物の開環重合で得たポリエステルを第2のポリエステルとエステル交換することで他の繰り返し単位を導入してもよい。
他の繰り返し単位としては、特に限定しないが、一種類の分子が環状化した環状エステルから誘導される繰り返し単位であってもよく、二つ以上の複数種の分子が環状化した環状エステルから誘導される繰り返し単位等であってもよい。
【0040】
<一種類の分子が環状化した環状エステルから誘導される繰り返し単位>
一種類の分子が環状化した環状エステルから誘導される繰り返し単位としては、ラクチド、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ヘキサノラクトン、又はカプロラクトンから誘導される繰り返し単位等が挙げられる。なお、他の繰り返し単位を誘導する化合物は、置換基を有していてもよい。
【0041】
<二つ以上の複数種の分子が環状化した環状エステルから誘導される繰り返し単位>
二つ以上の複数種の分子が環状化した環状エステルから誘導される繰り返し単位としては、乳酸、ヒドロキシプロパン酸、ヒドロキシブタン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘキサン酸、ヒドロキシヘプタン酸などのヒドロキシ酸を含む環状エステル等から誘導される繰り返し単位が挙げられる。なお、上記の他の繰り返し単位を誘導する化合物は、置換基を有していてもよい。
【0042】
本実施形態のポリマーが有してもよい繰り返し単位は、1種でもよく2種以上でもよい。
本実施形態のポリマーが他の繰り返し単位を有する場合、ポリマー中の他の繰り返し単位の割合は、ポリマーを構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、855モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、そして、100モル%未満が好ましく、99モル%以下がより好ましい。これらの数値範囲の上限と下限はいずれの組み合わせでも用いることができる。本実施形態のポリマーが他の繰り返し単位を有する場合、ポリマー中の他の繰り返し単位の割合は、ポリマーを構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、5モル%~100モル%未満が好ましく、15モル%~99モル%がより好ましい。
他の繰り返し単位の割合を上記の好ましい範囲内とすることにより、ポリマーの熱分解温度の向上は良好となりやすい。
【0043】
本実施形態のポリマーの質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではなく、500以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、10,000以上がさらに好ましく、そして、100,000以下が好ましい。これらの数値範囲の上限と下限はいずれの組み合わせでも用いることができる。本実施形態のポリマーの質量平均分子量(Mw)は、500~100,000が好ましく、5,000~100,000がより好ましく、10,000~100,000が更に好ましい。
本実施形態のポリマーの質量平均分子量(Mw)が上記の好ましい範囲内であると、ポリマーの熱分解温度を高めやすく、生分解性も良好となりやすい。
【0044】
本実施形態のポリマーの分散度(Mw/Mn)は、特に限定されず、1.1~10.0が好ましく、1.1~5.0がより好ましく、1.1~3.0が特に好ましい。尚、Mnは数平均分子量を示す。
【0045】
本実施形態のポリマーは、熱分解温度が100℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることが更に好ましい。
ポリマーの熱分解温度が上記の好ましい範囲の下限値以上であると、熱成形性が向上しやすい。
ポリマーの熱分解温度の上限値は特に限定されないが、典型的には250℃以下である。
【0046】
本実施形態の化合物は、C2位に置換基Rが導入されている。そのため、本実施形態の化合物は、C2位におけるプロトン脱離による熱分解が起こりにくく、熱分解温度が向上していると推測される。
また、本実施形態のポリマーは、繰り返し単位(p1)が2~4ユニット、好ましくは3ユニット連なった共重合体とすることが可能である。そのため、本実施形態のポリマーは、生分解性が向上していると推測される。
【0047】
<ポリマーの用途>
本発明によるポリマーは、熱成形性及び生分解性が良好であり、様々な用途に使用できる。本発明によるポリマーの用途としては、例えば、コーティング剤、インキ、接着剤、シート、フィルム、積層体、成形体等が挙げられる。
【0048】
<コーティング剤>
コーティング剤は、本発明によるポリマーを含有し、更に必要に応じて、その他の樹脂、水、有機溶剤などのその他の成分を含有する。
【0049】
コーティング剤は、種々の基材上に適用できる。コーティング剤の用途の一例について説明する。
コーティング剤は、例えば、食品包装容器の基材の表面コートに用いられる。基材としては、例えば、スチレン系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ナイロン系樹脂フィルム等のプラスチックフィルム、またはこれらの積層体などが挙げられる。基材としては、例えば、紙、金属蒸着フィルム、アルミニウム箔等が挙げられる。コーティング剤は、生分解性の基材に対して好適に用いられる。生分解性の基材とは、例えば、紙、ポリエステル系のフィルム、ポリオレフィン系のフィルム、デンプン系フィルム等が挙げられる。
コーティング剤は、インキ、または接着剤等として用いることができる。
【0050】
<インキ>
インキは、本発明によるポリマーと、着色剤とを含有し、更に必要に応じて、顔料分散剤、水、有機溶剤などのその他の成分を含有する。
インキは、例えば、印刷インキである。
インキは、例えば、水性インキであってもよいし、水を含有しないインキ(溶剤系インキ)であってもよい。
【0051】
<接着剤>
接着剤は、本発明によるポリマーを含有し、更に必要に応じて、その他の樹脂、硬化剤、有機溶剤などのその他の成分を含有する。
接着剤は、上記の各種基材にラミネートして、主として食品、医薬品、洗剤等の包装材料に使用する複合フィルムを製造する際に用いるラミネート用接着剤組成物としても使用可能である。
そのような接着剤は、例えば、本発明によるポリマーと、ポリマーポリオールと、ポリイソシアネートとを含有する2液硬化型接着剤や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体からなる1液型接着剤が使用できる。これらの接着剤は溶剤型、無溶剤型、水性型、アルコール型接着剤を必要に応じて使用できる。
【0052】
<シート>
本発明によるシートは、本発明によるポリマーを含有する樹脂組成物を用いてなる。
樹脂組成物は、本発明によるポリマーの他に、他の樹脂、各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、熱安定化剤などが挙げられる。
シートとしては、例えば、無延伸シート、二軸延伸シート、発泡シートなどが挙げられる。
本発明によるシートの用途としては、特に限定されないが、例えば、食品包装用容器、建設材料、家庭電化製品、雑貨など幅広く用いることができる。
【0053】
<フィルム>
本発明によるフィルムは、本発明によるポリマーを含有する樹脂組成物を用いてなる。
樹脂組成物は、本発明によるポリマーの他に、他の樹脂、各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、熱安定化剤などが挙げられる。
フィルムとしては、例えば、無延伸フィルム、二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルムなどが挙げられ、例えば、フィルム原材料のペレットを押出機で溶融後、T-ダイやインフレーション法により成膜することで作製できる。T-ダイ法の場合、ロールの速度差で縦延伸を、テンターを用いて横延伸を行うことにより二軸延伸フィルムが得られる。
【0054】
<積層体>
本発明による積層体は、本発明によるシート、及び本発明によるフィルムから選ばれる少なくとも1種を有し、更に必要に応じて印刷層、樹脂フィルムなどのその他の構成を有する。
積層体は、例えば、本発明によるシート、及び本発明によるフィルムから選ばれる少なくとも1種の片面又は両面に、機械強度や耐薬性の向上付与などのためにフィルムやシートを貼り合わせて得られる。具体的には、シートやフィルムの表面側及び裏面側の少なくともいずれかにポリスチレン系インフレーションフィルムを熱ラミネーションしたり、オレフィン系フィルム(CPP)を、接着剤を用いて貼り合わせたりして得られる。
使用される接着剤としては、特に限定されないが、例えば、本発明の接着剤であってもよいし、公知の接着剤であってもよい。
【0055】
<成形体>
本発明による成形体は、本発明によるシート、本発明によるフィルム、及び本発明による積層体から選ばれる少なくとも1種を成形して得られる。
成形体は、例えば、本発明によるシート、本発明によるフィルム、又は本発明による積層体を熱成形して得られる。熱成形方法としては、例えば、熱板接触加熱成形法、真空成形法、真空圧空成形法、プラグアシスト成形法等が挙げられ、特に熱源に赤外線ヒーターを用いた間接加熱成形を好ましく用いることができる。
【実施例0056】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0057】
<化学構造の評価>
本願実施例において合成物の化学構造は核磁気共鳴(NMR)を用い、下記の条件により同定した。
・1H-NMR
測定装置:JEOL RESONANCE製「JNM-ECM400S」
磁場強度:400MHz
積算回数:16回
溶媒:重水素化クロロホルム(CDCl3)、重水素化クロロホルム/重水素化トリフルオロ酢酸(CDCl3/CF3COOD)
試料濃度:2mg/0.5ml
・13C-NMR
測定装置:JEOL RESONANCE製「JNM-ECM400S」
磁場強度:100MHz
積算回数:1000回
溶媒:重水素化クロロホルム
試料濃度:2mg/0.5ml
【0058】
<分子量の評価1>
本願実施例において合成物の分子量は熱分解ガスクロマトグラフ質量分析(Py-GCMS)を用い、下記の条件により測定した値である。
測定装置:Agilent GC7890B MSD5977B
加熱炉温度:300℃、0.5分
イオン化法:CI法(ガス種:メタン、メチルアミン)
・GC環境
カラム:Ultra Alloy-5(0.25mm×30M,0.25μm)
条件:気化室320℃,圧力17.69psi,トータル流量49.5mL/min,スプリット比30:1,オーブン温度40℃(2min hold)→340℃(10℃/min,8min hold)
・MS環境
条件:MSAux-2 280℃,イオン源:300℃,四重極:150℃,スキャンモード,取込時間0-40min,質量範囲m/z35-650(EI) m/z80-650(CI)
【0059】
<分子量の評価2>
本願実施例において樹脂の分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、下記の条件により測定した値である。
測定装置:システムコントローラー Waters 600 Controller
送液ポンプ Waters Model Code 60F
RI(示差屈折計)検出器 Waters 2414
オートサンプラー Waters 717plus Autosampler
データ処理:Waters Empower3
(測定条件)
・条件1
測定条件:カラム温度 40℃
溶離液 クロロホルム(CHCl3)
流速 1.0ml/分
標準:ポリスチレン
カラム: Shodex GPC LF-G 1本
Shodex GPC LF-804 4本
試料:樹脂固形分換算で0.4質量%のクロロホルム溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
・条件2
測定条件:カラム温度 50℃
溶離液 ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)
流速 0.5ml/分
標準:ポリメチルメタクリレート
カラム: Shodex GPC HFIP-804 4本
試料:樹脂固形分換算で0.4質量%のヘキサフルオロイソプロパノール溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0060】
<熱分解性の評価>
本願実施例において、樹脂の熱分解性は20mL試験管に樹脂試料20mgを仕込み、ホットプレート上で180℃に加熱したヒートブロックを使用して試験管内の樹脂を15分間加熱処理した後に、核磁気共鳴(NMR)およびゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)の測定結果を基に下記基準で評価した。
評価基準:
A:熱処理前後でNMRおよびGPC測定結果共に変化はなかった。
B:熱処理前後でNMRおよびGPC測定結果のうち少なくとも1つで変化があった。
【0061】
<生分解性の評価>
本願実施例において、樹脂の生分解性は豚膵臓リパーゼを含有するリン酸緩衝液中での樹脂の重量減少を基に下記基準で評価した。防腐剤としてアジ化ナトリウムを添加したリパーゼ含有リン酸緩衝溶液と樹脂0.3gを蓋つき試験管に仕込み、密閉状態で25℃相対湿度65%の恒温恒湿槽で2か月間静置した。2か月経過後に樹脂を引き上げ、乾燥後の重量を測定して減少率を算出した。
評価基準:
A:重量減少は10%以上であった。
B:重量減少はなかった。
【0062】
(実施例1)
(合成例1:R-3-ヒドロキシイゾブチレート環状三量体)
【化11】
容量1Lの4つ口丸底フラスコにメチル(R)-(-)-3-ヒドロキシイソブチレート30.0g(253mmol)、2,2-ジブチル-1,3,2-ジオキソスタノラン7.44g(25.3mmol)、および、キシレン600mlを窒素雰囲気下で仕込み、事前に乾燥処理した4Åのモレキュラーシーブを詰めたソックスレー装置を使用して、24時間攪拌下で加熱還流した。エバポレーターでキシレンを揮発除去した後、冷却管を具備した昇華装置を使用して残差を110℃1mmHg下で精製し、上記式(C-1)で表す化合物(C-1)を14.3g(収率65%)得た。
1H-NMR 400MHz (CDCl
3):4.3ppm(triplet,1H), 4.05ppm(pair of doublets 1H),2.9ppm(multiplet, 1H),1.15ppm(doublet,3H)
13C-NMR 400MHz(CDCl
3):173.7ppm(C1,C=O),66.2ppm(C3,CH2),39.3ppm(C2,CH),13.3ppm(C2,CH3)
Py-GC-MS:[M+H]
+=259,[M+CH
3NH
2]=290
【0063】
(合成例2:ポリ-R-3-ヒドロキシイゾブチレート)
【化12】
米国特許第7714097号明細書記載の環状体の代わりに合成例1で得た3-ヒドロキシイゾブチレート環状三量体(化合物(C-1))を用いた以外は該特許記載の合成法と同様の操作によりポリ-R-3-ヒドロキシイゾブチレート(式(P-1)で表される化合物)を得た。容量100mLの乾燥処理済みの丸底フラスコに合成例1で得たR-3-ヒドロキシイゾブチレート環状三量体300mg(1.1mmol)、クロロホルム1mLを窒素雰囲気下で仕込み、攪拌下で米国特許第7714097号明細書記載の亜鉛触媒のストック溶液(100μL,0.11mmol)を添加した。反応液をメタノールへ添加後、析出物を真空乾燥して、上記式(P-1)で表される化合物(P-1)を280mg(収率93%)得た。
1H-NMR 400MHz(CDCl
3):4.2ppm(broad,2H),2.8ppm(multiplet,1H),1.1ppm(doublet,3H)
13C-NMR 400MHz(CDCl
3):173.3(C1,C=O),65.7ppm(C3,CH2),39.0ppm(C2,CH),13.8ppm(C2,CH3)
GPC(CHCl
3):Mn=2952,Mw=8175,Mp=8454,分散度=2.7
熱分解性および生分解性の評価結果は表1に記す。
【0064】
(実施例2)
(合成例3:S-3-ヒドロキシイゾブチレート環状三量体)
【化13】
合成例1でメチル(R)-(-)-3-ヒドロキシイソブチレートの代わりに、メチル(S)-(-)-3-ヒドロキシイソブチレートを用いた以外は同様の手法により、上記式(C-2)で表す化合物(C-2)を2.5g(収率57%)得た。
1H-NMR 400MHz(CDCl
3):4.3ppm(triplet,1H),4.05ppm(pair of doublets 1H),2.9ppm(multiplet,1H),1.15ppm(doublet,3H)
13C-NMR 400MHz(CDCl
3):173.7ppm(C1,C=O),66.2ppm(C3,CH2),39.3ppm(C2,CH),13.3ppm(C2,CH3)
Py-GC-MS:[M+H]
+=259,[M+CH
3NH
2]=290
【0065】
(合成例4:ポリ-S-3-ヒドロキシイゾブチレート)
【化14】
合成例2でR-3-ヒドロキシイゾブチレート環状三量体メチルの代わりに、S-3-ヒドロキシイゾブチレート環状三量体(化合物(C-2))を用いた以外は同様の手法により、上記式(P-2)で表す化合物(P-2)を85mg(収率28%)得た。
1H-NMR 400MHz(CDCl
3):4.2ppm(broad,2H),2.8ppm(multiplet,1H),1.1ppm(doublet,3H)
13C-NMR 400MHz(CDCl
3):173.3(C1,C=O),65.7ppm(C3,CH2),39.0ppm(C2,CH),13.8ppm(C2,CH3)
GPC(CHCl
3):Mn=3072,Mw=7685,Mp=5365,分散度=2.5
熱分解性および生分解性の評価結果は表1に記す。
【0066】
(実施例3)
(合成例5:ラセミ型-3-ヒドロキシイゾブチレート環状三量体)
【化15】
Helvetica Chimica Acta vol. 76 (1993) pg 2004-2033記載の操作と同様の操作により上記式(C-3)で表す化合物(C-3)を1.3g(収率21%)得た。
1H-NMR 400MHz(CDCl
3):4.47-3.81ppm(series of multiplets,2H),2.9ppm(multiplet, 1H),1.15ppm(multiplet, 3H) contains mixture of 2 chiral and 2 meso cyclic trimers.
13C-NMR 400MHz(CDCl
3):174.0,173.8,173.7,173.6ppm(C1,C=O),66.7,66.6,66.4,66.1ppm(C3,CH2),39.3ppm,38.9,38.7(C2,CH),13.4,13.3-13.2ppm(2 peaks),13.0(C2,CH3) contains mixture of 2 chiral and 2 meso cyclic trimers.
Py-GC-MS:[M+H]
+=259,[M+CH
3NH
2]=290
【0067】
(合成例6:ポリ-ラセミ型-3-ヒドロキシブチレート)
【化16】
合成例2でR-3-ヒドロキシイゾブチレート環状三量体メチルの代わりに、ラセミ型-3-ヒドロキシイゾブチレート環状三量体(化合物(C-3))を用いた以外は同様の手法により、上記式(P-3)で表す化合物(P-3)を123mg(収率41%)得た。
1H-NMR 400MHz(CDCl
3):4.3-4.1ppm(multiplet,2H),2.8ppm(multiplet,1H),1.1ppm(doublet,3H)
13C-NMR 400MHz(CDCl
3):173.2(C1,C=O),65.6ppm(C3,CH2),39.9ppm(C2,CH),13.8ppm(C2,CH3)
GPC(CHCl
3):Mn=4976,Mw=18443,Mp=20710,分散度=3.7
熱分解性および生分解性の評価結果は表1に記す。また、
図1は、化合物(P-3)の熱処理前後のNMRスペクトルを示す。また、
図2は、化合物(P-3)の熱処理前後のゲルパーミエーションクロマトグラフの測定結果を示すグラフである。
【0068】
(比較例1)
(合成例7:ポリ3-ヒドロキシプロパネート)
【化17】
100ml試験管にベータプロピオラクトン5g(69.3mmol)、水酸化カリウム4mg(6.1mmol)を窒素雰囲気下で仕込み、5日間50℃下で加熱攪拌した。生成物をメタノール20mlに浸して攪拌洗浄を2回した後、40℃1mmHg下で減圧乾燥して上記式(P-4)で表す化合物(P-4)を2.4g(収率48%)得た。
1H-NMR 400MHz(CDCl
3):4.2ppm(triplet,2H),2.7ppm(triplet,2H)
13C-NMR 400MHz(CDCl
3):171ppm(C1 position),61ppm(C2 position) 33ppm (C2 position)
GPC(CHCl
3):Mn=3250,Mw=4245,Mp=4100,分散度=1.3
【0069】
(比較例2)
(合成例8:ピバロラクトン)
【化18】
容量1Lの4つ口丸底フラスコに3-クロロピバル酸50g(366mmol)、クロロホルム100ml、および、2N水酸化ナトリウム水溶液330g(659mmol)を窒素雰囲気下で仕込み、40℃加熱下で3時間攪拌した。クロロホルム層を水100gで2回分液洗浄後、エバポレーターでクロロホルムを揮発除去した。冷却管を具備した100ml丸底フラスコを使用して濃縮物を50℃7hPa下で蒸留し、上記式(C-4)で表す化合物(C-4)を10g(収率20%)得た。
1H-NMR 400MHz(CDCl
3):4.10ppm(singlet 2H),1.43ppm(singlet 6H)
13C-NMR 400MHz(CDCl
3):173.2ppm(C1,C=O),83.1ppm(C3,CH2),42.8ppm(C2,C),27.1ppm(C2,CH3)
【0070】
(合成例9:ポリピバロラクロン)
【化19】
100ml試験管に合成例10で得たピバロラクトン(化合物(C-4))5g(50mmol)、水酸化カリウム4mg(61mmol)を窒素雰囲気下で仕込み、5日間50℃加熱攪拌した。生成物をメタノール20mlに浸した攪拌洗浄を2回した後、40℃1mmHg下で減圧乾燥して上記式(P-5)で表す化合物(P-5)を4.8g(収率96%)得た。
1H-NMR 400MHz(CDCl
3/CF
3COOD):4.18ppm(singlet 2H),1.24ppm(singlet 6H)
13C-NMR 400MHz(CDCl
3/CF
3COOD):175.9ppm(C1,C=O),73.2ppm(C3,CH2),40.4ppm(C2,C),21.4ppm(C2,CH3)
GPC(HFIP):Mn=4683,Mw=56939,Mp=47054,分散度=12.2
【0071】