(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102377
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】コンクリートパネル用の穿孔装置
(51)【国際特許分類】
B28D 1/14 20060101AFI20220630BHJP
B28D 7/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B28D1/14
B28D7/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217067
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】399117730
【氏名又は名称】住友金属鉱山シポレックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】飯田 好孝
(72)【発明者】
【氏名】杉原 淳
【テーマコード(参考)】
3C069
【Fターム(参考)】
3C069AA04
3C069BA09
3C069BC04
3C069CA07
3C069DA00
3C069EA01
3C069EA02
(57)【要約】
【課題】コンクリートパネルの内部に埋設されている埋込金物の埋設位置を検知して、検知された埋設位置に正確に且つ速やかに穿孔することができる、穿孔装置を提供することこと。
【解決手段】前記穿孔具11及び金属探知機器12を、両者のXY水平面上における位置関係が固定されている状態で保持する、穿孔機器保持部13と、穿孔機器誘導部14と、を備えてなり、穿孔機器誘導部14は、埋込金物3の埋設想定位置の近傍に穿孔機器保持部13を誘導する、第1誘導処理と、金属探知機器12が検出した埋込金物3の「真の位置情報」、及び、穿孔具11と金属探知機器12との水平位置の偏差を示す「偏差情報」に基づいて、穿孔具11が埋込金物3の「実際の埋設位置」の直上に位置することとなるように穿孔機器保持部13の位置を調整する、第2誘導処理と、を行う、穿孔装置1とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートパネル用の穿孔装置であって、
穿孔具と、
金属探知機器と、
前記穿孔具及び前記金属探知機器を、両者のXY水平面上における位置関係が固定されている状態で保持する、穿孔機器保持部と、
前記穿孔機器保持部を前記XY水平面上におけるX方向及びY方向に移動させる穿孔機器誘導部と、を備えてなり、
前記穿孔機器誘導部は、
埋込金物の埋設想定位置の近傍に前記穿孔機器保持部を誘導する、第1誘導処理と、
前記金属探知機器が検出した前記埋込金物の実際の埋設位置を示す真の位置情報、及び、前記穿孔具と前記金属探知機器との水平位置の偏差を示す偏差情報に基づいて、前記穿孔具が前記埋設位置の直上に位置することとなるように前記穿孔機器保持部の位置を自動的に調整する、第2誘導処理と、を行う、穿孔装置。
【請求項2】
前記穿孔機器誘導部が、前記第1誘導処理及び前記第2誘導処理を連続して自動的に実行する、
請求項1に記載の穿孔装置。
【請求項3】
前記穿孔具が、前記第2誘導処理の完了後に、自動的に穿孔処理を実行する、
を連続して自動的に実行する、
請求項2に記載の穿孔装置。
【請求項4】
前記金属探知機器が、X方向及び/又はY方向に沿って直列配置される複数の磁気センサー素子からなる、磁気センサーである、
請求項1から3の何れかに記載の穿孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートパネル用の穿孔装置に関する。本発明は、詳しくは、軽量気泡コンクリート(ALC)パネル等のコンクリートパネルの内部に埋設されている埋込金物の開口部を、パネル表面に開口させるための穿孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、軽量気泡コンクリート(ALC)パネル等のコンクリートパネルの内部に埋設されている埋込金物(特許文献1参照)の開口部(ナット部分)を、パネル表面に露出させるために、ドリル等によるコンクリートパネルへの穿孔加工が行われている。この埋込金物の位置は、コンクリートパネルの外部からは視認できないため、コンクリートパネルへの埋込金物の埋設位置に係る設計値に基づいて穿孔位置を推定して穿孔する作業が行われている。
【0003】
しかしながら、実際には、設計値の誤差等により穿孔位置とナット位置が正確に一致しておらず、設計値通りの位置で穿孔しても、上記の開口部が適切に露出しない不具合が少なからず発生していた。このような不具合を解消するために、コンクリートパネルへの穿孔前に埋込金物の開口部の埋設位置を正確に検知する手段が模索されていた。
【0004】
コンクリート構造物の内部の埋設物の位置を探索する技術的手段として、例えば、予備孔に、金属感知センサーを備えた探知棒を挿入してコンクリート構造物に配筋されている鉄筋を探索する方法(特許文献2参照)や、ECTセンサーをコンクリート構造物に開けた試掘孔に挿入する方法(特許文献3参照)等が知られている。
【0005】
上記各方法によれば、コンクリートパネルの内部の埋設物の位置を検知することは可能である。しかしながら、コンクリートパネルの内部に埋設されている埋込金物の開口部を確実にパネル表面に開口させるためには、上記各手段によって、埋設位置を探知した後に、更に、穿孔具を適切な開口位置に正確に配置する手順を経る必要がある。このような、煩雑さを解消して、穿孔作業を行う作業の作業効率を更に向上させることが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-248636号公報
【特許文献2】特開2007-178365号公報
【特許文献3】特開2009-168768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、コンクリートパネルの内部に埋設されている埋込金物の埋設位置を検知して、検知された埋設位置に正確に且つ速やかに穿孔することができる、穿孔装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、穿孔装置を、金属探知機器と穿孔具とが穿孔機器保持部に一体的に保持されている構成とし、穿孔具の最終的な配置位置を、金属探知機器が検出した埋込金物の実際の埋設位置を示す「真の位置情報」、及び、前記穿孔具と前記金属探知機器との位置の差異を示す「偏差情報」に基づいて、自動的に調整する穿孔装置とすることによって、上記課題を解決し得ることに想到し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1) コンクリートパネル用の穿孔装置であって、穿孔具と、金属探知機器と、前記穿孔具及び前記金属探知機器を、両者のXY水平面上における位置関係が固定されている状態で保持する、穿孔機器保持部と、前記穿孔機器保持部を前記XY水平面上におけるX方向及びY方向に移動させる穿孔機器誘導部と、を備えてなり、前記穿孔機器誘導部は、埋込金物の埋設想定位置の近傍に前記穿孔機器保持部を誘導する、第1誘導処理と、前記金属探知機器が検出した前記埋込金物の実際の埋設位置を示す真の位置情報、及び、前記穿孔具と前記金属探知機器との水平位置の偏差を示す偏差情報に基づいて、前記穿孔具が前記埋設位置の直上に位置することとなるように前記穿孔機器保持部の位置を自動的に調整する、第2誘導処理と、を行う、穿孔装置。
【0010】
(1)の穿孔装置によれば、コンクリートパネルの内部に埋設されている埋込金物の埋設位置を検知して、検知された埋設位置に正確に且つ速やかに穿孔することができる。
【0011】
(2) 前記穿孔機器誘導部が、前記第1誘導処理及び前記第2誘導処理を連続して自動的に実行する、(1)に記載の穿孔装置。
【0012】
(2)の穿孔装置によれば、(1)に記載の穿孔装置による穿孔作業において、埋込金物位置の埋設位置の探索作業が全て自動的に行われる。これにより、コンクリートパネルへの穿孔作業の作業効率を更に高めることができる。
【0013】
(3) 前記穿孔具が、前記第2誘導処理の完了後に、自動的に穿孔処理を実行する、(2)に記載の穿孔装置。
【0014】
(3)の穿孔装置によれば、(2)に記載の穿孔装置による穿孔作業において、埋込金物位置の埋設位置の探索から穿孔までの一連の作業が全て自動的に行われる。これにより、コンクリートパネルへの穿孔作業の作業効率を更に高めることができる。
【0015】
(4) 前記金属探知機器が、X方向及び/又はY方向に沿って直列配置される複数の磁気センサー素子からなる、磁気センサーである、(1)から(3)の何れかに記載の穿孔装置。
【0016】
(4)の穿孔装置によれば、(1)から(3)の何れかに記載の穿孔装置による穿孔作業における第2誘導処理の実行時に、より精密に埋込金物の開口部の位置を検知して、より高い精度で、正確に穿孔具を埋込金物の埋設位置の直上に誘導することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コンクリートパネルの内部に埋設されている埋込金物をパネル表面に開口させるための穿孔装置であって、パネル内に埋設されている埋込金物の開口部を、パネル表面に露出させるために、埋込金物のパネルの面方向における埋設位置を検知して、尚且つ、速やかに検知された位置に正確に穿孔することができる、穿孔装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の穿孔装置の構成の一例を模式的に示す図面である。
【
図2】
図1の穿孔装置の動作(第1誘導処理)の一例を模式的に示す図面である。
【
図3】
図1の穿孔装置の動作(第2誘導処理の一部が完了した状態)の一例を模式的に示す図面(処理対象パネルのX方向に直交する方向から視た図面)である。
【
図4】
図1の穿孔装置の動作(第2誘導処理の一部が完了した状態)の一例を模式的に示す図面(処理対象パネルのY方向に直交する方向から視た図面)である。
【
図5】
図1の穿孔装置の動作(第2誘導処理が完了して穿孔処理が行われている状態)の一例を模式的に示す図面(処理対象パネルのX方向に直交する方向から視た図面)である。
【
図6】
図1の穿孔装置の動作(第2誘導処理が完了して穿孔処理が行われている状態)の一例を模式的に示す図面(処理対象パネルのY方向に直交する方向から視た図面)である。
【
図7】
図1の穿孔装置の機器保持の構成を模式的に示す平面図である。
【
図8】本発明の穿孔装置の実施対象となるコンクリートパネルに埋設されている埋込金物の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の「コンクリートパネル用の穿孔装置(以下、単に「穿孔装置」とも言う)」の実施形態について説明する。但し、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
<穿孔装置>
図1から
図6の各図に示す穿孔装置1は、コンクリートパネルの内部に埋設されている埋込金物3の開口部をパネル表面に開口させる装置である。穿孔装置1は、上記各図に示される通り、穿孔具11、金属探知機器12、穿孔機器保持部13、穿孔機器誘導部14を、最小限の構成として備える。
【0021】
[穿孔具]
穿孔具11は、処理対象とするコンクリートパネル2の内部に埋設されている埋込金物3の開口部をパネル表面に開口させるためにコンクリートパネル2に孔を開ける機能を有する。例えば、
図3~6の各図に示されているように、回転軸112と、その一方の先端に接合される切削刃111とを有する穿孔具11、或いは、従来公知のその他の各種のコンクリート用の穿孔具によって、穿孔装置1を構成することができる。
【0022】
[金属探知機器]
金属探知機器12は、コンクリートパネル2に接触せずに、当該コンクリートパネルの外部から当該コンクリートパネルの内部に埋設されている埋込金物3の「実際の埋設位置」を示す「真の位置情報」を検出する機能を有する。金属探知機器12は、そのような金属探知機能を有する、従来公知の各種の金属探知機器によって構成することができる。但し、穿孔装置1を構成する金属探知機器は、複数の磁気センサー素子121が、X方向及び/又はY方向に沿って直列配置、或いは、XY方向に沿ったマトリクス状の配置されている金属探知機器(磁気センサー)12(
図7参照)であることが好ましい。尚、金属探知機器が磁気センサー12である場合、上記の複数の磁気センサー素子121の配置は、複数列における千鳥状配置とすることがより好ましい。
【0023】
[穿孔機器保持部]
穿孔機器保持部13は、穿孔具11と、金属探知機器12とを、両者のXY水平面上における位置関係が固定されている状態で保持する。穿孔機器保持部13の材料、形状及び構成については、コンクリートパネル2への穿孔動作を含めて穿孔装置1の全ての動作の実行時において、穿孔具11と、金属探知機器12とを、安定的に上記態様で保持することができる強度を有する材料、形状及び構成からなるものとする。尚、穿孔機器保持部13を、穿孔具11と、金属探知機器12とを、必要に応じて交換可能な態様で保持することができる構造とすることがより好ましい。
【0024】
[穿孔機器誘導部]
穿孔機器誘導部14は、金属探知機器12が、埋込金物3の設計上の埋設位置である「埋設想定位置」の近傍に位置することとなるように穿孔機器保持部13を誘導する第1誘導処理と、穿孔具11が、埋込金物3の「実際の埋設位置」の直上に位置することとなるように穿孔機器保持部13の位置を自動的に調整する第2誘導処理と、を順次行う。
【0025】
穿孔機器誘導部14は、上記の2段階の誘導処理が自動的に実行されるように、その動作を制御する制御機構を備えるものとする。このような制御機構は、例えば、公知の電子制御機器と当該制御機器に適した各種のプログラムによって、適宜、所望の態様で構成することがとできる。
【0026】
(第1誘導処理)
穿孔機器誘導部14による第1誘導処理は、埋込金物3の設計上の埋設位置である「埋設想定位置」を示す「仮の位置情報」に基づいて実行される。又、この処理は、穿孔機器誘導部14の動作を制御する上記の制御機構に、上記の「埋設想定位置」を示す「仮の位置情報」が入力されることによって自動的に実行されるようにすることが好ましい。
【0027】
第1誘導処理の具体的な動作例は
図1~2に示す通りである。即ち、この第1誘導処理においては、穿孔機器保持部13を、
図1の初期状態から、X方向に略x
1、Y方向に略y
1、それぞれ水平に移動させることによって、
図2に示すように、埋込金物3の設計上の埋設位置である「埋設想定位置」に移動させる。
【0028】
(第2誘導処理)
穿孔機器誘導部14による第2誘導処理は、金属探知機器12が検出した埋込金物3の「実際の埋設位置」を示す「真の位置情報」、及び、穿孔具11と金属探知機器12との水平位置の偏差を示す「偏差情報」に基づいて実行される。又、この処理は、穿孔機器誘導部14の動作を制御する制御機構に、上記両情報が入力されることによって自動的に実行されるようにする。
【0029】
第2誘導処理において穿孔機器保持部13の位置を最終調整するために、必要となる埋込金物3の「実際の埋設位置」を示す「真の位置情報」は、第1誘導処理によって埋込金物3の「埋設想定位置」の近傍に誘導された金属探知機器12によって、同位置周辺を走査することによって検出する。この走査を、例えば、
図7に示すように、磁気センサー素子121がマトリクス状に配置されている金属探知機器(磁気センサー)12を、埋込金物3の「埋設想定位置」の近傍範囲において、適切に直線運動或いは必要に応じて複数回往復運動させることによって、上記の「真の位置情報」を検出することができる。
【0030】
第2誘導処理の具体的な動作例は
図3~6に示す通りである。即ち、この第2誘導処理においては、先ず、第一段階の予備的誘導として、
図3及び
図4に示すように、金属探知機器12が検出した埋込金物3の「実際の埋設位置」を示す「真の位置情報」に応じて、金属探知機器12が、埋込金物3の「実際の埋設位置」の直上に位置することとなるように穿孔機器保持部13を誘導する。ここで、「金属探知機器12が埋込金物3の「実際の埋設位置」の直上に位置する」とは、詳しくは、
図3及び
図4に示すように、予め規定された金属探知機器12の底面の中心付近の任意の定点である検出基準点120(
図7参照)が、埋込金物3の開口部30の埋設位置の直上に位置するように移動させることを意味する。
【0031】
そして、上記の第2誘導処理においては、上記の予備的誘導に続く最終位置調整として、
図5及び
図6に示すように、穿孔具11と金属探知機器12との水平位置の偏差を示す「偏差情報」に基づいて、穿孔具11が埋込金物3の「実際の埋設位置」の直上に位置することとなるように穿孔機器保持部13の位置を最終調整する。尚、「穿孔具11が埋込金物3の「実際の埋設位置」の直上に位置する」とは、詳しくは、
図5及び
図6に示すように、穿孔具11(より正確には、各図において黒丸で示されている切削刃111の先端中心部)が、埋込金物3の開口部30の中心の直上に位置するように移動させることを意味する。
【0032】
例えば、
図7に示す場合における、(x
0、y
0)が、穿孔具11と金属探知機器12との水平位置の偏差を示す「偏差情報」である。上記の最終位置調整は、この場合、穿孔機器保持部13の位置を、X方向にx
0、Y方向にy
0、移動させる態様で実行される。
【0033】
但し、穿孔機器保持部13の上記の予備的誘導と最終位置調整とは、必ずしも別途の動作として順を追って行うことが必須ではない。例えば、見かけ上、第1誘導処理後に、上記の予備的誘導を経ずに、穿孔具11が直接的に上記の「実際の埋設位置」の直上に来るような態様で第2誘導処理が行われていたとしても、金属探知機器12が検出した上記の「真の位置情報」と、上記の「偏差情報」の両情報が、穿孔機器保持部13の位置の最終位置の決定に寄与する態様で、穿孔具11の位置の最終調整が実質的に行われている限り、そのような実施形態も、当然に本発明の技術的範囲に含まれる。
【0034】
<コンクリートパネルの穿孔方法>
以下、本発明の穿孔装置(穿孔装置1)を用いて行なう「コンクリートパネルの穿孔方法」(以下、単に「コンクリートパネルの穿孔方法」とも言う)の実施態様について説明する。尚、以下においては、本発明の最も好ましい実施態様として、穿孔処理を行うコンクリートパネル2が軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)である場合について、その実施態様の詳細を説明する。
【0035】
穿孔装置1を用いて行なう「コンクリートパネルの穿孔方法」においては、上述した通り、穿孔機器誘導部14による2段階の誘導処理、即ち、第1誘導処理と第2誘導処理によって、穿孔機器保持部13が、ALCパネル2上を適切に水平移動して、その結果、穿孔機器保持部13に固定されている穿孔具11が、埋込金物3の開口部の「実際の埋設位置」の直上の位置に正確に誘導される。そして、この位置に正確に配置された穿孔具11によってALCパネル2に穿孔する穿孔処理を引き続き速やかに行うことにより、ALCパネル2の表面に、コンクリートパネルの内部に埋設されている埋込金物3の開口部30を正確且つ速やかに開口させることができる。尚、第1誘導処理と第2誘導処理とは、穿孔機器誘導部14によって連続して自動的に実行されるように制御されるようにすることが好ましい。
【0036】
(第1誘導処理)
第1誘導処理では、穿孔機器誘導部14によって、穿孔機器保持部13が、ALCパネル2における埋込金物3の設計上の埋設位置である「埋設想定位置」に誘導される。この第1誘導処理は、上述の通り、ALCパネル2における埋込金物3の設計上の埋設位置である「埋設想定位置」を示す「仮の位置情報」に基づいて制御される。
【0037】
(第2誘導処理)
第1誘導処理に続く第2誘導処理では、穿孔具11が、コンクリートパネル(ALCパネル)2における埋込金物3の「実際の埋設位置」の直上の位置に配置されることとなるように、穿孔機器保持部13の位置が最終調整される。この第2誘導処理は、金属探知機器12が検出した埋込金物3の「実際の埋設位置」を示す「真の位置情報」と穿孔具11と金属探知機器12との水平位置の偏差を示す「偏差情報」に基づいて制御される。
【0038】
尚、第2誘導処理において穿孔機器保持部13の位置を最終調整するために必要な埋込金物3の「真の位置情報」は、第1誘導処理によって埋込金物3の「埋設想定位置」の近傍に誘導された金属探知機器12によって、同位置周辺を走査することによって検出する。
【0039】
(穿孔処理)
上記2段階の誘導処理の完了後、即ち、第1誘導処理と、これに続く第2誘導処理によって、埋込金物3の「実際の埋設位置」の直上の位置に穿孔具11が配置された後に穿孔具11をそのまま押し下げることによって、ALCパネル2への穿孔を行う(
図5、6)。
【0040】
(軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル))
尚、「コンクリートパネルの穿孔方法」の好ましい実施対象である軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)は、製造工程において、例えば、
図8に示すような形状の埋込金物3がパネル内に配設されている鉄筋に固着された状態で、材料スラリーを注入して、発泡硬化させることにより、埋込金物3が埋設されたALCパネルとして得ることができるものである。
【0041】
(埋込金物)
又、埋込金物3は、
図8(a)及び(b)に示すように、埋込金物3のナット部分の先端の開口部30の周辺に、パネル製造時のスラリーの流入を防ぐためのキャップ32を装着したものであることが好ましい。埋込金物の本体31としては、予めALCパネル2等の内部に埋設した状態で、開口部30を、パネル表面に露出させて用いる金物であればよく、上述の特許文献1に開示されている埋込金物等を含め、その他公知の各種の埋込金物が得段の制限なく本発明の装置・方法による穿孔加工の適用対象となる。キャップ32は、穿孔が容易な樹脂製のものとすることが好ましいが、このキャップ部を異方性ゴムマグネット等、所謂ゴム磁石で形成することにより、磁気センサーで、埋込金物の水平位置を探索しやすいようにすることもできる。
【符号の説明】
【0042】
1 穿孔装置
11 穿孔具
111 切削刃
112 回転軸
12 金属探知機器(磁気センサー)
121 磁気センサー素子
120 検出基準点
13 穿孔機器保持部
14 穿孔機器誘導部
2 コンクリートパネル(軽量気泡コンクリートパネル)
3 埋込金物
31 埋込金物の本体
32 キャップ
30 開口部