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特開2022-102438シリカ粒子及びその用途、並びにシリカ粒子の製造方法
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  • 特開-シリカ粒子及びその用途、並びにシリカ粒子の製造方法 図1
  • 特開-シリカ粒子及びその用途、並びにシリカ粒子の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102438
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】シリカ粒子及びその用途、並びにシリカ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/193 20060101AFI20220630BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20220630BHJP
   A61K 8/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
C01B33/193
A61K8/25
A61K8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217167
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390005728
【氏名又は名称】AGCエスアイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 肇
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅史
(72)【発明者】
【氏名】福本 浩大
(72)【発明者】
【氏名】有働 武司
【テーマコード(参考)】
4C083
4G072
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4G072AA25
4G072BB05
4G072BB15
4G072DD02
4G072DD03
4G072DD04
4G072HH21
4G072JJ12
4G072JJ13
4G072JJ15
4G072JJ30
4G072JJ34
4G072KK01
4G072KK07
4G072KK09
4G072MM02
4G072MM21
4G072MM22
4G072MM23
4G072MM31
4G072MM32
4G072MM36
4G072MM40
4G072SS01
4G072TT01
4G072TT09
4G072TT11
4G072TT30
4G072UU07
4G072UU12
4G072UU15
4G072UU30
(57)【要約】
【課題】安全性が高く、見かけ密度が小さく、さらに隠蔽性の高い新規なシリカ粒子を提供すること。
【解決手段】粒子内部に長軸の長さが200nm以上3μm以下の空隙を複数個内包し、{吸油量(cm/100g)/100}/細孔容積(cm/g)の値が1.5以上であるシリカ粒子とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子内部に長軸の長さが200nm以上3μm以下の空隙を複数個内包し、{吸油量(cm/100g)/100}/細孔容積(cm/g)の値が1.5以上であるシリカ粒子。
【請求項2】
平均円形度が0.80以上である、請求項1に記載のシリカ粒子。
【請求項3】
表面が親水性である、請求項1又は2に記載のシリカ粒子。
【請求項4】
シリカ粒子の体積基準による累積粒度分布における50%粒子径(D50)が3~500μmである、請求項1~3のいずれか1項に記載のシリカ粒子。
【請求項5】
前記細孔容積が2.0cm/g未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載のシリカ粒子。
【請求項6】
粒子強度が1MPa以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のシリカ粒子。
【請求項7】
前記シリカ粒子にL表色系におけるa値が14以上15以下の赤褐色の酸化鉄(III)粉末を30質量%の割合で混合して混合粉末を得たとき、前記混合粉末のa値が6.0以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載のシリカ粒子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のシリカ粒子を含む白色顔料。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のシリカ粒子を含む化粧品。
【請求項10】
テンプレート粒子を含むケイ酸ナトリウム水溶液を液滴化した後にシリカを析出させ、前記テンプレート粒子を除去し、前記テンプレート粒子が除去されたシリカを洗浄し、乾燥する、シリカ粒子の製造方法。
【請求項11】
テンプレート粒子をケイ酸ナトリウム水溶液中に混合した混合液を分散相とし、界面活性剤を含む有機相を連続相として、前記分散相と前記連続相を混合して撹拌乳化し、前記分散相を液滴化した乳化液を得て、前記乳化液をゲル化して、前記テンプレート粒子を内包したシリカを含むシリカスラリーを得て、前記シリカスラリーに酸を加えて、前記テンプレート粒子を除去し、前記テンプレート粒子が除去されたシリカを洗浄し、乾燥する、シリカ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記テンプレート粒子が、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム及び炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項10又は11に記載のシリカ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ粒子及びその用途、並びにシリカ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子状のシリカは、触媒、乾燥剤、研磨剤として、また、樹脂フィラーや化粧料の原料等として各種分野で使用されている。シリカ粒子の種類としては、一つの粒子の内部に網目状の連続した微細孔を有するシリカ(多孔質シリカ)、一つの粒子の内部に一つの中空部分を持つ構造を有するシリカ(中空シリカ)、粒子内部に実質的に空隙を有さないシリカ(中実シリカ)等があり、それぞれの用途に応じて使い分けがされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、断熱性に優れ、かつ嵩密度を低減した球状金属酸化物粉末が提案されており、真空断熱材の芯材や、各種充填用途、添加用途、化粧品用途等に用いることが記載されている。特許文献1には、金属酸化物としてシリカが例示され、金属酸化物粉末は、球状の独立粒子を主成分とし、BET法による比表面積が400m/g以上1000m/g以下であり、BJH法による細孔容積が2mL/g以上8mL/g以下であり、吸油量が250mL/100g以上であることを特徴とする。
【0004】
また、特許文献2には、稠密なシリカシェルからなる中空粒子の製造方法が提案されており、当該稠密シリカの中空粒子は、15~800m/g程度のBET比表面積、シリカ100g当たり500ml以上のDOP吸油量、及び2~10nm以下程度のシェル厚を示すことが記載されている。特許文献2には、このような稠密シリカの中空粒子が、中空充填剤や吸収剤に使用できることが記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、可視光線領域の光を反射させることができる球状の多孔性無機粒子を製造する方法が記載されており、50nm以上のマクロ気孔を含む多孔性無機粒子を製造することが記載されている。特許文献3には、多孔性無機粒子がフォトニック結晶またはUV反射物質、CO吸着物質などの多様な分野に応用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2012/147812号
【特許文献2】特表2000-500113号公報
【特許文献3】特表2020-525375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
化粧品に用いられる無機白色顔料は、求められる特性の一つとして下地の隠蔽性がある。近年、肌の質感を向上させるために、感触が良好で、安全性が高く、かつ隠蔽性の高い無機白色顔料が求められている。
隠蔽性の高い無機白色顔料として知られている二酸化チタンは、粒子密度が大きく重いため感触が悪い、発がん性物質の可能性がある、光触媒作用があり皮膚表面へのダメージが懸念される等の欠点がある。
【0008】
これに対し、シリカ粒子は、粒子の大きさや粒子密度を調整でき、かつ安全性が高いため、化粧品への応用が期待される。しかし、従来のシリカ粒子は下地の隠蔽性が十分ではなく更なる改善が望まれている。
【0009】
そこで、本発明は、安全性が高く、見かけ密度が小さく、さらに隠蔽性の高い新規なシリカ粒子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題に鑑み検討したところ、粒子内部に長軸の長さが200nm以上である空隙を複数個内包するシリカ粒子により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明は、下記<1>~<12>に関するものである。
<1>粒子内部に長軸の長さが200nm以上3μm以下の空隙を複数個内包し、{吸油量(cm/100g)/100}/細孔容積(cm/g)の値が1.5以上であるシリカ粒子。
<2>平均円形度が0.80以上である、前記<1>に記載のシリカ粒子。
<3>表面が親水性である、前記<1>又は<2>に記載のシリカ粒子。
<4>シリカ粒子の体積基準による累積粒度分布における50%粒子径(D50)が3~500μmである、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載のシリカ粒子。
<5>前記細孔容積が2.0cm/g未満である、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載のシリカ粒子。
<6>粒子強度が1MPa以上である、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載のシリカ粒子。
<7>前記シリカ粒子にL表色系におけるa*値が14以上15以下の赤褐色の酸化鉄(III)粉末を30質量%の割合で混合して混合粉末を得たとき、前記混合粉末のa値が6.0以下である、前記<1>~<6>のいずれか1つに記載のシリカ粒子。
<8>前記<1>~<7>のいずれか1つに記載のシリカ粒子を含む白色顔料。
<9>前記<1>~<7>のいずれか1つに記載のシリカ粒子を含む化粧品。
<10>テンプレート粒子を含むケイ酸ナトリウム水溶液を液滴化した後にシリカを析出させ、前記テンプレート粒子を除去し、前記テンプレート粒子が除去されたシリカを洗浄し、乾燥する、シリカ粒子の製造方法。
<11>テンプレート粒子をケイ酸ナトリウム水溶液中に混合した混合液を分散相とし、界面活性剤を含む有機相を連続相として、前記分散相と前記連続相を混合して撹拌乳化し、前記分散相を液滴化した乳化液を得て、前記乳化液をゲル化して、前記テンプレート粒子を内包したシリカを含むシリカスラリーを得て、前記シリカスラリーに酸を加えて、前記テンプレート粒子を除去し、前記テンプレート粒子が除去されたシリカを洗浄し、乾燥する、シリカ粒子の製造方法。
<12>前記テンプレート粒子が、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム及び炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つである、前記<10>又は<11>に記載のシリカ粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシリカ粒子は、粒子内部に長軸の長さが200nm以上3μm以下の空隙を複数個内包するので、見かけ密度が小さくなるため、軽い粒子となる。また、可視光領域(400~800nm)の光の散乱面が増え、粒子の散乱性が向上するため、隠蔽性の高い粒子となる。また、シリカにより構成されるので安全性も高い。よって、化粧品に好適に用いることができ、化粧品に用いた場合には、下地の隠蔽性が高く、肌に対する遮蔽力に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、例4で得られたシリカ粒子の割断面の走査型電子顕微鏡像(SEM像)を示す。
図2図2は、例4で得られたシリカ粒子の走査型電子顕微鏡像(SEM像)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について説明するが、以下の説明における例示によって本発明は限定されない。
【0015】
<シリカ粒子>
本発明のシリカ粒子は、粒子内部に長軸の長さが200nm以上3μm以下の空隙を複数個内包し、{吸油量(cm/100g)/100}/細孔容積(cm/g)の値が1.5以上であるものである。シリカ粒子の内部に空隙があることは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により粒子の断面を観察することにより確認できる。
【0016】
なお、空隙の長軸の長さは、例えば、シリカ粒子の割断面をSEMで撮影し、SEM写真における空隙の開口部の最も長い距離を測定することで求められる。
【0017】
本発明のシリカ粒子の内部には、長軸の長さが200nm以上3μm以下の空隙が複数個含まれている。シリカと空気の界面で可視光が拡散するので、シリカ粒子の内部に空隙があると光が散乱しやすくなるが、空隙が小さすぎると光の散乱は起こらない。長軸の長さが200nm以上の空隙を内包することにより、光の散乱を起こさせることができる。また、製造可能なシリカ粒子の大きさを考慮し、長軸の長さは3μm以下とする。
粒子内部の空隙の長軸の長さは、200nm以上であり、300nm以上が好ましく、400nm以上がより好ましく、また、3μm以下であり、2μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。
【0018】
可視光はシリカと空気の界面で散乱するため、界面が多いほど可視光を散乱させることができ、隠蔽性が向上する。よって、シリカ粒子の内部に長軸の長さが200nm以上3μm以下の空隙が複数個あることで、可視光の散乱性が向上する。
長軸の長さが200nm以上3μm以下の空隙の個数は、一つの粒子内に2個以上あればよく、シリカ粒子の大きさ(粒径)及び空隙の大きさ(長軸の長さ)に応じて適宜調整できる。
【0019】
本発明において、シリカ粒子の細孔容積は、2.0cm/g未満であることが好ましい。ここで、細孔容積とは、細孔直径が1~100nmの細孔に由来する細孔容積を意味する。長軸の長さが200nm以上3μm以下の空隙の周りに細孔直径が1~100nmの細孔(空隙)を有することでみかけ粒子密度は小さくなる。すなわち、シリカ粒子が軽い粒子となり感触が向上するほか、仮に液を吸っても大きい空隙の空気相が維持されるので隠蔽性が維持できる。細孔容積が大きすぎると粒子強度が低下する場合があり、用途が限られることになるので、2.0cm/g未満であることが好ましい。
細孔容積は、1.9cm/g以下であることがより好ましく、1.8cm/g以下がさらに好ましく、1.7cm/g以下が特に好ましい。シリカ粒子の細孔容積の下限値は特に限定されないが、シリカ粒子が未焼成品の場合は、0.9cm/g以上であることが好ましく、0.95cm/g以上がより好ましく、1.0cm/g以上がさらに好ましい。
【0020】
シリカ粒子が焼成品である場合は、細孔直径が1~100nmの細孔(空隙)を焼成により収縮させて、細孔容積を0.3cm/g以下とすることができる。前記細孔が少ないと、長軸の長さが200nm以上3μm以下の空隙に液が浸透しにくく、シリカ粒子の軽さと隠蔽性を維持できる。
【0021】
なお、細孔容積は、窒素吸着法によりBJH法を用いて算出できる。
【0022】
シリカ粒子は、吸油量が30~500cm/100gであることが好ましい。吸油量が30cm/100g以上であるとみかけ密度を小さくして軽い粒子とすることができ、また、多少の皮脂を吸っても高隠蔽性を維持できるので化粧品用途に好適に使用でき、吸油量が500cm/100g以下であると高い粒子強度を維持できる。
吸油量は、50cm/100g以上であることがより好ましく、100cm/100g以上がさらに好ましく、250cm/100g以上が特に好ましく、また、450cm/100g以下であることがより好ましく、400cm/100g以下がさらに好ましく、350cm/100g以下が特に好ましい。
【0023】
吸油量は、JIS K 5101に準じて測定できる。具体的には、試料全体が一塊となるまで練りながら、試料に煮アマニ油を加えていく。吸油量は、試料全体が一塊となったときの、試料100gあたりの煮アマニ油の容積で表わす。以下、この測定法による吸油量を、単に吸油量という。
【0024】
本発明において、{吸油量(cm/100g)/100}/細孔容積(cm/g)(以下、「(吸油量/100)/細孔容積」という。)で表される、シリカ粒子1g当たりの細孔容積に対する吸油量は1.5以上である。細孔容積に対する(吸油量/100)の比が1より大きいことは、粒子内部の可視光を散乱できる空隙が多いことを示す。前記(吸油量/100)/細孔容積の値が1.5以上であると、粒子内部の可視光を散乱できる空隙が特に多いことを示しているので、粒子表面での可視光の散乱が多くなり、十分な隠蔽性を得ることができる。
(吸油量/100)/細孔容積の値は、1.5以上であり、1.6以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、また、粒子強度に影響を与えない限り特に限定されないが、500以下であることが好ましい。
【0025】
本発明のシリカ粒子は、窒素吸着法に基づいて求められる比表面積が1m/g以上であることが好ましい。比表面積が1m/g以上であると、触媒担体として使用したときに活性点を増やすことができる。
比表面積は、10m/g以上であることがより好ましく、50m/g以上がさらに好ましく、100m/g以上が特に好ましく、また上限は特に限定されない。
【0026】
なお、比表面積は、窒素吸着法により吸着等温線を得た後、BETの理論を用いて算出できる。
【0027】
本発明のシリカ粒子の形状は、特に限定されないが、球状であることが好ましい。シリカ粒子の形状が球状であると、皮膚に接触した際に滑らかな使用感が得られるので、化粧品用途に好適である。また、触媒担体用途、特にポリオレフィン製造用の触媒担体用途においても触媒担体の形状と同じ形状のポリマー粒子が生成することから、球状粒子が求められている。さらに、充填性の面からも球状粒子が好ましい。
【0028】
本発明のシリカ粒子は、平均円形度が0.80以上であることが好ましい。平均円形度が0.80以上であると粒子の形状が球状に近くなるので、様々な用途に好適に用いることができる。
シリカ粒子の平均円形度は0.90以上であることがより好ましく、0.95以上がさらに好ましい。円形度の上限は特に限定されず、1であることが最も好ましい。
【0029】
なお、円形度は、粒子画像解析装置(例えば、マルバーン社製、Morphologi4)により得られた画像を、上記装置に付属の画像解析ソフトを用いて粒子の面積と周長を求め、下記式に当てはめて算出できる。平均円形度は、3万個の粒子の平均値を求めたものである。
円形度=投影面積の等しい円の周長/粒子の周長
投影面積の等しい円の周長:ある粒子を真上から観察したとき、下の平面に映った粒子の影の面積を求め、この面積に等しい円を計算し、その円の輪郭の長さ
粒子の周長:粒子を真上から観察したとき、下の平面に映った粒子の影の輪郭の長さ
【0030】
シリカ粒子の体積基準による累積粒度分布における50%粒子径(D50)は、3~500μmであることが好ましい。本発明のシリカ粒子を得る場合、50%粒子径(D50)が3μm未満のシリカ粒子は製造が困難であり、また、500μmを超えると使用用途が限定されてしまい、例えば化粧品用途に使用する場合には粒子が大きすぎて使用感が悪くなる虞があるため500μm以下が好ましい。50%粒子径(D50)が前記範囲であると、様々な分野の用途に使用できるため好ましい。
50%粒子径(D50)は、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上がさらに好ましく、20μm以上が特に好ましく、また、300μm以下であることがより好ましく、100μm以下がさらに好ましく、50μm以下が特に好ましい。
【0031】
なお、50%粒子径(D50)は、粒子画像解析装置(例えば、マルバーン社製、Morphologi4)を用いて、円形度0.90以上の粒子を3万個測定し、50%体積換算粒子径として算出できる。
【0032】
また、本発明のシリカ粒子は、粒子強度が1MPa以上であることが好ましい。粒子強度が1MPa以上であると、粒子が崩壊し難い強度を有するので、様々な用途に適用できる。
粒子強度は、1.5MPa以上であることがより好ましく、2.0MPa以上がさらに好ましく、2.5MPa以上が特に好ましく、特に上限は限定されない。
【0033】
なお、シリカ粒子の強度は、微小圧縮試験機(例えば、株式会社島津製作所製、MCT-510)を用いて測定できる。本発明において、粒子強度は、40個のシリカ粒子の圧縮強度を測定し、その平均値により求める。
【0034】
本発明のシリカ粒子は、粒子の表面が親水性であることが好ましい。粒子の表面が親水性であると、シリカ粒子には有機成分が少ないか含まれていないため、環境に悪影響がなく、様々の分野に使用できる。
【0035】
なお、粒子の表面が親水性であることは、水への分散試験により確認できる。例えば、水100gに対し、シリカ粒子の粉末5gを添加し、均一に撹拌した後24時間静置し、24時間後にシリカ粒子の9割以上が水中に沈んでいるものをシリカ粒子が親水性であると判断する。沈んだシリカ粒子の割合については、24時間静置後に沈降粒子を回収して乾燥し、得られたシリカ粒子の質量から算出する。
【0036】
また、本発明のシリカ粒子は、シリカ粒子にL表色系におけるa値が14以上15以下の赤褐色の酸化鉄(III)粉末(例えば、関東化学株式会社製、鹿特級)を30質量%の割合で混合して混合粉末を得たとき、前記混合粉末のa値が6.0以下であることが好ましい。なお、L表色系とは、1976年に国際照明委員会(CIE)により規格化されたものである。
【0037】
上記の測定方法では、シリカ粒子の遮蔽性を評価できる。前記a値が6.0以下であると、光の散乱性が高く、遮蔽力に優れると評価できる。
前記a値は、5.0以下であることがより好ましく、4.5以下がさらに好ましく、4.0以下が特に好ましく、また、a値は小さいほど好ましいため、下限値は0であることが好ましい。
【0038】
なお、粉末のa値は、例えば、分光色差計(例えば、日本電色工業株式会社製、SE7700)を用いて測定できる。分光色差計での測定では、混合粉末を7.5mm以上の厚みになるように投入して測定する。
【0039】
<シリカ粒子の製造方法>
本発明のシリカ粒子は、テンプレート粒子を含むケイ酸ナトリウム水溶液を液滴化した後にシリカを析出させることでテンプレート粒子を内包した球状シリカ粒子を作製し、得られたテンプレート粒子を内包した球状シリカ粒子からテンプレート粒子を除去することで得られる。
例えば以下のような方法である。
【0040】
本発明のシリカ粒子の第1の製造方法は、テンプレート粒子をケイ酸ナトリウム水溶液中に混合した混合液を分散相とし、界面活性剤を含む有機相を連続相として、前記分散相と前記連続相を混合して撹拌乳化し、前記分散相を液滴化した乳化液を得て(工程(1-1))、前記乳化液をゲル化してシリカを析出させ、前記テンプレート粒子を内包した球状シリカを含むシリカスラリーを得て(工程(1-2))、前記シリカスラリーに酸を加えて、前記テンプレート粒子を除去し(工程(1-3))、前記テンプレート粒子が除去されたシリカを洗浄し、乾燥する(工程(1-4))ことを含む。
【0041】
また、第2の製造方法は、テンプレート粒子を含むケイ酸ナトリウム水溶液と酸を混合した混合液をシリカが析出する前に短い時間で噴霧し、空気中で液滴化させ、その後シリカを析出させてテンプレート粒子を内包した球状シリカを得て(工程(2-1))、このテンプレート粒子を内包したシリカからテンプレート粒子を除去し(工程(2-2))、前記テンプレート粒子が除去されたシリカを洗浄し、乾燥する(工程(2-3))ことを含む。
【0042】
(第1の製造方法)
第1の製造方法における工程(1-1)では、テンプレート粒子をケイ酸ナトリウム水溶液中に混合した混合液を分散相とし、界面活性剤を含む有機相を連続相とし、分散相と連続相を混合して撹拌し、乳化液を得る。
分散相と連続相を撹拌乳化することにより、油中水滴型(W/O)エマルション(乳化液)が得られる。連続相中で分散相は液滴化し、液滴はケイ酸ナトリウム水溶液の液滴中にテンプレート粒子が存在する状態となる。
【0043】
分散相に用いるテンプレート粒子は、ケイ酸ナトリウム水溶液中で溶解せず、かつ、酸で溶解するような物質を用いる。テンプレート粒子としては、例えば、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、硫酸を使ってテンプレート粒子を溶解除去できるという観点から、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。硫酸は不揮発性の酸であり、揮発性酸である塩酸、硝酸、フッ酸等に比べ、安全性と設備保護の観点から好ましい。
【0044】
テンプレート粒子の大きさは、得られるシリカ粒子の粒子内部の空隙の大きさに影響するため、所望の大きさのテンプレート粒子を用いればよい。具体的に、粒子の50%粒子径(D50)が200nm~3μmの範囲のテンプレート粒子を用いることが好ましく、300nm~2μmがより好ましく、400nm~1μmがさらに好ましい。
【0045】
ケイ酸ナトリウム水溶液は、ケイ酸成分が、SiOに換算したSiO濃度で3~35質量%の範囲であることが好ましい。ケイ酸ナトリウム水溶液中のケイ酸成分は、主にSiOの形態で含まれるため、SiOに換算したSiO濃度として表す。
ケイ酸ナトリウム水溶液中のケイ酸成分の濃度が前記範囲であると、高い生産効率でシリカ粒子を製造できる。
ケイ酸ナトリウム水溶液中のケイ酸成分の濃度は、生産性が高い、かつ、球形度が高い粒子が得られるという観点から、5質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上が特に好ましい。また、小粒径の粒子を得やすいという観点から、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下が特に好ましい。
【0046】
また、ケイ酸ナトリウム水溶液中のケイ酸とナトリウムの割合は、SiO/NaO(モル比)で2~4であることが好ましい。SiO/NaO(モル比)が前記範囲のケイ酸ナトリウム水溶液は容易に入手でき、例えば、3号ケイ酸ソーダ(AGCエスアイテック株式会社製、SiO/NaO=3)、2号ケイ酸ソーダ(AGCエスアイテック株式会社製、SiO/NaO=2.5)、1号ケイ酸ソーダ(AGCエスアイテック株式会社製、SiO/NaO=2)等が挙げられる。
【0047】
テンプレート粒子は、ケイ酸ナトリウム水溶液中に1~35質量%の範囲で混合することが好ましい。テンプレート粒子の使用量が少なすぎると1つの粒子あたりに長軸の長さが200nm以上3μm以下の空隙を複数個内包できない場合があり、また多すぎるとシリカ粒子内部の空隙が多くなり過ぎて粒子強度が低くなることがある。
テンプレート粒子の使用量は、ケイ酸ナトリウム水溶液中、5~33質量%であることがより好ましく、10~31質量%がさらに好ましく、15~30質量%が特に好ましい。
【0048】
ケイ酸ナトリウム水溶液には、任意にその他の成分を含ませてもよい。その他の成分としては、例えば、細孔径分布の調整を目的として、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム等を用いることができる。
【0049】
連続相に用いる有機相は、ケイ酸ナトリウム水溶液に対して溶解度が低いものであることが好ましく、溶解度を有さないものがより好ましい。
有機相を構成する有機液体として、例えば、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン等の炭素数9~12の飽和直鎖炭化水素、イソノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン等の炭素数9~12の飽和分岐鎖炭化水素、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-オクテン、イソオクテン等の炭素数6~8の脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン等の炭素数1~8の脂環式炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素類、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-プチル、酢酸イソブチル、酢酸-n-アミル、酢酸イソアミル、乳酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル等のエステル類、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル等の含フッ素化合物類等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、n-デカン、n-ノナン、n-ドデカン、n-ウンデカン等の炭素数9~12の飽和直鎖炭化水素、イソノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン等の飽和分岐炭化水素が好ましい。
【0050】
また、有機相を構成する有機液体の引火点としては、20~80℃のものが好ましく、30~60℃のものがより好ましい。また、不燃性または難燃性の有機液体が好ましい。
引火点が20℃未満の飽和炭化水素を有機液体とした場合、引火点が低いため、防火上、作業環境上の対策が必要である。有機液体の引火点が20℃以上であることで、防火性を高めて作業環境を改善することができる。一方、80℃以下であることで、揮発性を十分に得て、シリカ粒子を有機相から回収する際に、シリカ粒子に有機液体が付着して混入することを防止できる。
【0051】
有機相には、乳化剤として界面活性剤を添加する。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0052】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。
これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、モノオレイン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。
【0053】
界面活性剤の使用量は、界面活性剤の種類、界面活性剤の親水性あるいは疎水性の程度を表す指標であるHLB(Hydrophile-lipophile balance)、目的とするシリカ粒子の粒径などの条件により適宜選択できる。具体的に、有機相中に0.1~5.0質量%の範囲で含有させることが好ましく、0.1~3.0質量%がより好ましく、0.1~1.0質量%がさらに好ましい。
界面活性剤の含有量が有機相中0.1質量%以上であることで、均一に乳化させることができ、エマルションをより安定化することができる。一方、5.0質量%以下であることで、最終製品であるシリカ粒子に界面活性剤が付着して混入するのを防止できる。分散相の粘度が低い場合、均一に乳化するためには界面活性剤の濃度がより低い方が好ましい。
【0054】
乳化液は、連続相に分散相を加えて撹拌することにより得られる。分散相は、連続相を撹拌しながら添加することが好ましい。
撹拌方法としては従来公知の方法が使用でき、ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル、超音波乳化機、ホモディスパー等の乳化装置を使用できる。
【0055】
例えばホモジナイザーを用いて乳化させる場合、目標とする液滴径ができるような乳化条件で撹拌乳化させればよい。
【0056】
例えばホモミキサーを用いて乳化させる場合、1,000~24,000rpmの速度で1~10分間撹拌乳化させればよい。
【0057】
また、撹拌乳化時の液温は、10~40℃であることが好ましく、10~35℃がより好ましく、10~30℃がさらに好ましい。
【0058】
工程(1-2)では、工程(1-1)で乳化させた乳化液をゲル化して、シリカを析出させ、テンプレート粒子を内包したシリカを含むシリカスラリーを得る。
ゲル化する方法としては、例えば、撹拌下で酸を加えることが挙げられる。これにより、ケイ酸ナトリウム水溶液のpHが下がり、シリカの一次粒子が析出する。析出した一次粒子は凝集するので、テンプレート粒子を内包したシリカの二次粒子が生成する。酸を加える条件としては、ゲル化終了時点で球状粒子が得られ、かつ、二相分離後の水相pHが中性付近、好ましくはpH7~10になるような条件であればよい。
【0059】
使用する酸としては、無機酸、有機酸のいずれを使用してもよく、硫酸、塩酸、炭酸等の無機酸がより好ましく、操作の容易さから炭酸ガスを使用するのが最も好ましい。
【0060】
反応液は、テンプレート粒子を内包したシリカが析出した水相と油相に分かれるので、油相を除去してシリカスラリーを得る。
油相の除去は、従来公知の方法により行うことができ、例えば、デカンテーション、減圧ろ過、加圧ろ過、膜分離、遠心分離等が挙げられる。
【0061】
工程(1-3)では、工程(1-2)で得られたシリカスラリーに酸を加えて、テンプレート粒子を除去する。
【0062】
使用できる酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸、過塩素酸、臭化水素酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸等が挙げられる。中でも、安全性と設備保護の観点から、硫酸を使用するのが好ましい。
【0063】
酸は、シリカスラリーのpHが3以下になるまで添加するのが好ましい。これによりテンプレート粒子が溶解し、シリカから除去され、シリカ粒子内部にテンプレート粒子由来の空隙が出来る。
pHは、1.5~2.5であることが好ましく、1.5~2.0がより好ましい。
【0064】
工程(1-4)では、テンプレート粒子が除去されたシリカを洗浄し、乾燥する。
シリカを洗浄する洗浄液としては、水;エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等の有機溶媒等が挙げられる。
【0065】
洗浄液の温度は、10~100℃であることが好ましく、20~90℃がより好ましく、30~80℃がさらに好ましい。
【0066】
シリカを十分に洗浄した後は乾燥させる。乾燥は、従来公知の方法で行えばよい。乾燥方法としては、真空乾燥、自然乾燥、温風乾燥等が挙げられ、例えば、噴霧乾燥機、気流乾燥機、棚段乾燥機、真空乾燥機、キルン等を用いることができる。
【0067】
乾燥の条件としては、洗浄液を除去して乾燥できればよく、採用する乾燥方法に応じて適宜調整すればよい。
【0068】
(第2の製造方法)
第2の製造方法における工程(2-1)では、テンプレート粒子を含むケイ酸ナトリウム水溶液と酸を混合した混合液をシリカが析出する前に短い時間で噴霧し、空気中で液滴化させた後にシリカを析出させてテンプレート粒子を内包した球状シリカを得る。
【0069】
テンプレート粒子としては、第1の製造方法と同様であり、ケイ酸ナトリウム水溶液中で溶解せず、かつ、酸で溶解するような物質を用いる。テンプレート粒子としては、例えば、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、硫酸を使ってテンプレート粒子を溶解除去できるという観点から、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。硫酸は不揮発性の酸であり、揮発性酸である塩酸、硝酸、フッ酸等に比べ、安全性と設備保護の観点から好ましい。
【0070】
テンプレート粒子の大きさも第1の製造方法と同様であり、所望の大きさのテンプレート粒子を用いればよい。具体的に、粒子の50%粒子径(D50)が200nm~3μmの範囲のテンプレート粒子を用いることが好ましく、300nm~2μmがより好ましく、400nm~1μmがさらに好ましい。
【0071】
ケイ酸ナトリウム水溶液も第1の製造方法と同様のものを使用でき、ケイ酸成分が、SiOに換算したSiO濃度で3~35質量%の範囲であることが好ましい。
ケイ酸ナトリウム水溶液中のケイ酸成分の濃度が前記範囲であると、高い生産効率でシリカ粒子を製造できる。
ケイ酸ナトリウム水溶液中のケイ酸成分の濃度は、生産性が高い、かつ、球形度が高い粒子が得られるという観点から、5質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上が特に好ましい。また、小粒径の粒子を得やすいという観点から、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下が特に好ましい。
【0072】
また、ケイ酸ナトリウム水溶液中のケイ酸とナトリウムの割合は、SiO/NaO(モル比)で2~4であることが好ましい。SiO/NaO(モル比)が前記範囲のものとして、前記した市販のものが容易に入手できる。
【0073】
テンプレート粒子は、ケイ酸ナトリウム水溶液中に1~35質量%の範囲で混合することが好ましい。テンプレート粒子の使用量が少なすぎると1つの粒子あたりに長軸の長さが200nm以上3μm以下の空隙を複数個内包できない場合があり、また多すぎるとシリカ粒子内部の空隙が多くなり過ぎて粒子強度が低くなることがある。
テンプレート粒子の使用量は、ケイ酸ナトリウム水溶液中、5~33質量%であることがより好ましく、10~31質量%がさらに好ましく、15~30質量%が特に好ましい。
【0074】
ケイ酸ナトリウム水溶液には、任意にその他の成分を含ませてもよい。その他の成分としては、例えば、細孔径分布の調整を目的として、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム等を用いることができる。
【0075】
酸は、無機酸、有機酸のいずれを使用してもよい。中でも、硫酸、塩酸、炭酸等の無機酸がより好ましい。
【0076】
テンプレート粒子を含むケイ酸ナトリウム水溶液と混合させる酸は、テンプレート粒子を含むケイ酸ナトリウム水溶液に対し、水溶液のpHが中性付近、好ましくは7~10になるように加える。
【0077】
なお、第2の製造方法では、テンプレート粒子を含むケイ酸ナトリウム水溶液と酸とを混合した混合液は、シリカが析出する前に短時間で噴霧処理する。混合液を短時間で噴霧して液滴化する方法としては、例えば、スプレー法、超音波霧化、大きな液滴を高速流体と衝突させて微粒化させる方法等による方法等が挙げられる。
【0078】
液滴化させた後にシリカを析出させる方法としては、空気中での滞留時間を長くする、温度を上げて乾燥させる、酸性ガス中に噴霧する、等が挙げられる。
【0079】
これにより、テンプレート粒子を内包した球状シリカが得られる。
【0080】
次に、テンプレート粒子を内包した球状シリカ粒子に酸を加えて、テンプレート粒子を除去する(工程2-2)。
【0081】
使用できる酸としては、第1の製造方法と同様であり、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸、過塩素酸、臭化水素酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸等が挙げられる。中でも、安全性と設備保護の観点から、硫酸を使用するのが好ましい。
【0082】
酸は、シリカスラリーのpHが3以下になるまで添加することが好ましい。これによりテンプレート粒子が溶解し、シリカから除去され、シリカ粒子内部にテンプレート粒子由来の空隙が出来る。
pHは、1.5~2.5であることが好ましく、1.5~2.0がより好ましい。
【0083】
次工程では、テンプレート粒子が除去されたシリカを洗浄し、乾燥する(工程2-3)。
【0084】
シリカを洗浄する洗浄液としては、水;エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等の有機溶媒等が挙げられる。
【0085】
洗浄液の温度は、10~100℃であることが好ましく、20~90℃がより好ましく、30~80℃がさらに好ましい。
【0086】
シリカを十分に洗浄した後は乾燥させる。乾燥は、第1の製造方法と同様であり、従来公知の方法で行えばよい。乾燥方法としては、真空乾燥、自然乾燥、温風乾燥等が挙げられ、例えば、噴霧乾燥機、気流乾燥機、棚段乾燥機、真空乾燥機、キルン等を用いることができる。
【0087】
乾燥の条件としては、洗浄液を除去して乾燥できればよく、採用する乾燥方法に応じて適宜調整すればよい。
【0088】
本発明の製造方法では、第1の製造方法の工程(1-4)及び第2の製造方法の工程(2-3)で得られたシリカ粒子を焼成する工程をさらに含んでもよい。シリカ粒子を焼成することで、シリカ粒子の強度を高めることができる。なお、焼成後のシリカ粒子はすべて非晶質となる。
【0089】
シリカ粒子を焼成する温度は、粒子強度を高めるという観点から、800℃以上であることが好ましく、850℃以上がより好ましく、900℃以上がさらに好ましい。また、200nm以上の空隙を粒子内に残す、結晶質シリカの生成を防ぐ、粒子同士の融着を防ぐという観点から、1100℃以下であることが好ましい。
【0090】
また、焼成時間は、粒子強度を高めるという観点から、1時間以上であることが好ましく、2時間以上がより好ましく、3時間以上がさらに好ましい。また、200nm以上の空隙を粒子内に残す、結晶質シリカの生成を防ぐ、粒子同士の融着を防ぐという観点から、6時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましく、4時間以下がさらに好ましい。
【0091】
<シリカ粒子の用途>
本発明のシリカ粒子は、各種分野の材料として使用できる。例えば、化粧品用途、触媒担持用途、断熱材用途等が挙げられる。
【0092】
化粧品用途では、乾粉での隠蔽性が高いことを特徴とするため、フィニッシングパウダーやルースファンデーション、プレストファンデーション等、乾粉の状態で利用できる化粧品材料としての性能向上が期待できる。本発明のシリカ粒子の周りに比較的小さな空隙を有するため、汗や皮脂がある状態での隠蔽性にも優れる。また、本発明のシリカ粒子は空隙率が高く軽い粒子となることから、軽さが求められるマスカラへの利用や、軽量感が加わることによる新感触も期待できる。また、可視光を散乱させるため白色顔料としても利用できる。
【0093】
触媒担持用途では、担体を崩壊させながらポリマー重合を行うような場合には、易崩壊性にもつながり、反応速度を向上できる。
【0094】
そして、断熱材用途では、本発明のシリカ粒子は空隙率が高いため、高い断熱性能が期待できる。
【実施例0095】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の説明において、共通する成分は同じものを用いている。
また、例1~5は実施例であり、例6~8は比較例、例9は試験に使用した酸化鉄(III)である。
【0096】
(例1)
分散相として、3号ケイ酸ソーダ(AGCエスアイテック株式会社製、ケイ酸ナトリウム水溶液、SiO/NaO(モル比)=3)を、蒸留水で薄めてSiO濃度を24質量%としたものに、テンプレート粒子である水酸化マグネシウム(神島化学工業株式会社製、マグシーズX-6F、50%粒子径0.8μm)を撹拌混合して得たスラリーを用いた。
連続相として、n-デカン(東ソー株式会社製、HC-250、C1022)に予め界面活性剤としてモノオレイン酸ソルビタン(三洋化成株式会社製、イオネットS80)を0.7質量%溶解させたものを用いた。
連続相の界面活性剤入りn-デカンをホモジナイザー(株式会社マイクロテック・ニチオン製、ヒスコトロン、ジェネレーターシャフトNS-30UG/20P)で撹拌しながら、分散相の水酸化マグネシウム入りケイ酸ソーダスラリーを加えて8,000rpmで5分間撹拌乳化した。
得られた乳化液をスリーワンモーターで撹拌しながら炭酸ガスを1.0L/minの速度で20分間吹き込むことでシリカを析出させた。その後、油相を除去して得たシリカゲルを含有する水相を室温で撹拌しながら、硫酸をpH2になるまで添加してテンプレートの除去を行なった。テンプレート除去後のスラリーは温水でろ過洗浄を行ない、スプレードライヤー(日本ビュッヒ株式会社製、ミニスプレードライヤーB290)で乾燥し、例1のシリカ粒子を得た。
【0097】
(例2)
例1で得られたシリカ粒子を、5℃/minの昇温速度で1050℃まで昇温し、4時間焼成した。その後、室温まで冷却することで例2のシリカ粒子を得た。
【0098】
(例3)
例1で得られたシリカ粒子を、5℃/minの昇温速度で1100℃まで昇温し、4時間焼成した。その後、室温まで冷却することで例3のシリカ粒子を得た。
【0099】
(例4)
テンプレート粒子として炭酸マグネシウム(神島化学工業株式会社製、マグサーモMS-S、50%粒子径1.5μm)を用いた以外は、例1と同様の方法で例4のシリカ粒子を得た。
【0100】
(例5)
例4で得られたシリカ粒子を、5℃/minの昇温速度で1000℃まで昇温し、4時間焼成した。その後、室温まで冷却することで例5のシリカ粒子を得た。
【0101】
(例6)
市販の多孔質シリカであるAGCエスアイテック株式会社製「サンスフェアH-121」を用いた。
【0102】
(例7)
市販の多孔質シリカであるAGCエスアイテック株式会社製「サンスフェアH-122」を用いた。
【0103】
市販の無孔質シリカであるAGCエスアイテック株式会社製「サンスフェアNP-100」を用いた。
【0104】
(例9)
市販の酸化鉄(III)粉末(関東化学株式会社製、鹿特級、赤褐色粉末)を用いた。
【0105】
例1~8のシリカ粒子について、下記に従い、シリカ粒子の物性を測定した。結果を表1に示す。なお、例9は色度評価に用いた材料である。
【0106】
<粒子内部の空隙の大きさと個数>
シリカ粒子の粉末を2枚のスライドガラスで挟んで擦りつぶすことで意図的に粒子を割った後、卓上走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JCM-7000)を用いて粒子の割断面を観察した。空隙の開口部における長軸の長さを測定し、200nm以上3μm以下の空隙が複数個あるか否かを確認した。200nm以上3μm以下の空隙が複数個ある場合を空隙「有」と評価し、200nm以上3μm以下の空隙がないか1個の場合を空隙「無」と評価した。
なお、例4のシリカ粒子については、割断面のSEM写真を図1に、外観のSEM写真を図2に示す。
【0107】
<平均円形度>
円形度は、粒子画像解析装置(例えば、マルバーン社製、Morphologi4)により得られた画像を、上記装置に付属の画像解析ソフトを用いて粒子の面積と周長を求め、下記式に当てはめて算出した。3万個のシリカ粒子の円形度の平均値を求めたものを平均円形度とした。
円形度=投影面積の等しい円の周長/粒子の周長
投影面積の等しい円の周長:ある粒子を真上から観察したとき、下の平面に映った粒子の影の面積を求め、この面積に等しい円を計算し、その円の輪郭の長さ
粒子の周長:粒子を真上から観察したとき、下の平面に映った粒子の影の輪郭の長さ
【0108】
<50%粒子径(D50)(μm)>
50%粒子径(D50)は、粒子画像解析装置(マルバーン社製、Morphologi4)より、円形度0.90以上の粒子を3万個測定し、50%体積換算粒子径として算出した。
【0109】
<比表面積(m/g)>
比表面積は、自動比表面積/細孔分布測定装置(株式会社島津製作所製、トライスターII 3020シリーズ)を用い、窒素吸着法による相対圧0~0.99で測定した結果を、BET法で解析して求めた。
【0110】
<細孔容積(cm/g)>
細孔容積は、比表面積と同様に自動比表面積/細孔分布測定装置(株式会社島津製作所製、トライスターII 3020シリーズ)を用い、窒素吸着法による相対圧0~0.99で測定した結果を、BJH法で解析して求めた。
【0111】
<吸油量(cm/100g)>
吸油量は、JIS K 5101に準じて測定した。
試料であるシリカ粒子全体が一塊となるまで練りながら、試料に煮アマニ油を加えていき、試料全体が一塊になったときの、試料100gあたりの煮アマニ油の容積を求めた。
【0112】
<粒子強度(MPa)>
粒子強度は、微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、MCT-510)を用いて、1試料あたり40個のシリカ粒子の圧縮強度を測定し、その平均値として求めた。
【0113】
<粒子表面の性質>
水100gに対し、シリカ粒子の粉末5gを添加し、均一に撹拌した後、24時間静置した。24時間後にシリカ粒子の9割以上が水中に沈んでいるものをシリカ粒子が親水性であると判断し、親水性「有」と評価した。24時間後のシリカ粒子の沈降量が9割未満のものを親水性「無」と評価した。沈んだシリカ粒子の割合については、24時間静置後に沈降粒子を回収して乾燥し、得られたシリカ粒子の質量から算出した。
【0114】
<a値、L値、WB値(-)>
シリカ粒子の粉末に、例9の酸化鉄(III)粉末(a値:14.9)を30重量%の割合で加えてよく混合し、混合粉末を得た。混合粉末を測定用の丸セル(直径35mm×高さ15mm)に半分以上の嵩になるように投入し、分光色差計(日本電色工業株式会社製、SE7700)を用いて測定した。
値は色味の強弱を示し、+側に大きいほど赤味が強く、-側に大きいほど緑味が強く、6.0以下であると酸化鉄(III)の色味(赤み)が抑えられていると判断できる。L値は色の明るさを示し、大きいほど明るく、小さいほど暗い。WB値は白度を示し、大きいほど白く、小さいほど黒い。
【0115】
【表1】
【0116】
例1~5のシリカ粒子は、粒子内部に200nm以上3μm以下の空隙を複数有しており、かつ(吸油量/100)/細孔容積の値が1.5以上であった。表1からわかるとおり、例1~5のシリカ粒子を用いた評価では、色度評価によるa値が6.0以下であり、酸化鉄(III)の赤みが抑えられており、このことから、例1~5のシリカ粒子は例6~8のシリカ粒子に比べて可視光の散乱性が高く、下地の遮蔽性に優れるものであることがわかった。
図1
図2